次に、第1実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、画像形成装置の一例としてのレーザプリンタ1は、本体筐体2と、シート供給部3と、露光装置4と、現像剤像形成部5と、定着器8と、温度検知部9と、制御部100とを備えている。
シート供給部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、紙などのシートSが収容されるシートトレイ31と、圧板32と、シート供給機構33とを備えている。シート供給部3は、シートトレイ31内のシートSを圧板32によりシート供給機構33に寄せ、シート供給機構33により現像剤像形成部5に向けて供給する。
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しない光源装置、ポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。露光装置4は、光源装置から出射された画像データに基づく光ビーム(二点鎖線参照)を感光体ドラム61の表面で高速走査することで、感光体ドラム61の表面を露光する。
現像剤像形成部5は、シートSに現像剤像を形成する機器であり、露光装置4の下方に配置されている。現像剤像形成部5は、プロセスカートリッジとして、本体筐体2の前部に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能に装着される。現像剤像形成部5は、感光体カートリッジ6と、現像カートリッジ7とから構成されている。
感光体カートリッジ6は、感光体ドラム61と、コロナ帯電器である帯電器62と、転写ローラ63とを備えている。現像カートリッジ7は、感光体カートリッジ6に対して着脱自在であり、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、乾式トナーからなる現像剤を収容する収容部74と、アジテータ75とを備えている。
現像剤像形成部5は、感光体ドラム61の表面を帯電器62により一様に帯電する。その後、感光体ドラム61の表面が露光装置4から出射された光ビームにより露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、収容部74内の現像剤は、アジテータ75により攪拌されながら、供給ローラ72に供給され、供給ローラ72から現像ローラ71に供給される。そして、現像剤は、現像ローラ71の回転に伴って、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
現像剤像形成部5は、現像ローラ71上に担持された現像剤を、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給する。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上に現像剤像が形成される。その後、シートSが感光体ドラム61と転写ローラ63との間を通過することで、感光体ドラム61上の現像剤像がシートS上に転写される。
定着器8は、シートSに形成された現像剤像を定着する機器であり、現像剤像形成部5の後方に配置されている。定着器8は、加熱部81と、加圧部82と、ヒータ83とを有している。
加熱部81は、回転可能な回転部材81Aを含む。回転部材81Aは、金属からなる円筒状の加熱ローラである。加熱部81は、ヒータ83により加熱されることで、シートSを加熱するように構成されている。
加圧部82は、芯金の周囲に弾性層が設けられた加圧ローラである。加圧部82は、加熱部81に接触して押圧された状態で配置され、加熱部81との間でシートSを挟む。加圧部82は、駆動力が入力されることで回転し、回転部材81Aを従動回転させる。
ヒータ83は、加熱部81を加熱する熱源である。ヒータ83は、フィラメント83Aを有し、輻射熱によって加熱部81を加熱する。ヒータ83は、加熱部81の内側に配置されている。ヒータ83のフィラメント83Aは、温度が高くなるほど、抵抗値が大きくなる特性を有している。
定着器8は、シートSを加熱部81と加圧部82との間を通過させることにより、シートS上に転写された現像剤像をシートSに定着する。現像剤像が定着されたシートSは、搬送ローラ23,24により排紙トレイ22上に排出される。
制御部100は、定着器8など、レーザプリンタ1の各部を制御する装置であり、単一または複数の電気回路で構成されている。制御部100は、レーザプリンタ1の各部に制御信号や駆動電圧を出力することで、各部の制御を実行する。図2に示すように、制御部100は、CPU110、ROM120、RAM130、ヒータコントローラ140、スイッチング回路150などを備えている。
CPU110は、レーザプリンタ1の各部の動作タイミングを指令したり、ヒータコントローラ140に定着器8の目標温度としての指令値を送ったりする処理を行う。
ROM120には、レーザプリンタ1の各部を制御するためのプログラムや各種設定情報などのデータが記憶されている。
RAM130は、CPU110が各種のプログラムを実行する際の作業領域や、データの一時的な記憶領域として利用される。
ヒータコントローラ140は、定着器8の目標温度と、温度検知部9が検知した検知温度Tとに基づき、スイッチング回路150のデューティ比を設定する。本実施形態において、CPU110とヒータコントローラ140は、単一の半導体素子として集積されている。
スイッチング回路150は、設定されたデューティ比で交流電圧をスイッチングすることで、ヒータ83に通電する。
温度検知部9は、定着器8の温度を検知するセンサである。本実施形態において、温度検知部9は、加熱部81の表面との間に所定の間隔をあけた状態で加熱部81の表面に対向して配置され、定着器8の温度として、加熱部81の温度を検知する。温度検知部9は、加熱部81の温度に応じた信号を制御部100に出力する。制御部100は、温度検知部9から出力された信号から、定着器8の温度としての検知温度Tを取得する。温度検知部9としては、例えば、温度に応じて電気抵抗が変化するサーミスタを用いることができる。
制御部100は、定着器8によりシートSに現像剤像を定着する場合に、定着器8の温度(検知温度T)が定着目標温度TT2となるようにヒータ83への通電を制御する印刷制御を実行する。一例として、定着目標温度TT2は、200℃である。なお、本明細書で示す具体的な数値は、あくまでも一例であり、発明を限定するものではない。
ヒータ83のフィラメント83Aは、定着器8の温度が定着目標温度TT2となるようにヒータ83への通電が行われている状態では、温度が2000℃程度となり、常温の状態よりも抵抗値が大きくなっている。
制御部100は、印刷制御において、定着目標温度TT2と検知温度Tとの偏差に応じたデューティ比でヒータ83に通電する。また、制御部100は、印刷制御において、検知温度Tが定着目標温度TT2を超えた場合は、デューティ比を0%に設定してヒータ83への通電を停止する。
なお、本実施形態において、印刷制御におけるデューティ比の設定の方法は、特に限定されない。例えば、定着目標温度TT2と検知温度Tとの偏差から、PI制御やPID制御などの手法を用いて印刷制御におけるデューティ比(ヒータ83の操作量)を設定してもよい。また、後述する待機制御におけるデューティ比の設定の場合と同様に、定着目標温度TT2と検知温度Tとの偏差と、デューティ比との関係を示すテーブルを予め設定しておき、定着目標温度TT2と検知温度Tとの偏差から、このテーブルを参照して印刷制御におけるデューティ比を設定してもよい。
制御部100は、印刷制御を実行する場合、すなわち、シートSに現像剤像を定着する場合は、加熱部81の回転部材81Aを回転させる。具体的には、制御部100は、印刷制御を実行する場合、加圧部82に駆動力を入力して加圧部82を回転させ、これによって、回転部材81Aを従動回転させる。これにより、ヒータ83により加熱された加熱部81と、加熱部81に押圧された加圧部82との間で、現像剤像が転写されたシートSを搬送しながら現像剤像をシートS上に定着することができる。
制御部100は、定着器8の待機状態において、検知温度Tが第1温度T1未満となった場合にヒータ83に通電し、検知温度Tが第2温度T2を超えた場合にヒータ83への通電を停止する待機制御を実行する。ここで、定着器8の待機状態とは、シートSに現像剤像を定着していない状態であって、次回、シートSに現像剤像を定着する場合に定着器8の温度を短時間で定着目標温度TT2まで加熱できるように、定着器8を保温して待機する状態である。
第1温度T1は、印刷制御のときの定着目標温度TT2よりも低い温度である。一方、第2温度T2は、定着目標温度TT2よりも低い温度であって、かつ、第1温度T1よりも高い温度である。一例として、第1温度T1は、150℃であり、第2温度T2は、152〜158℃(第1温度T1+2〜8℃)のうちから設定される一の値(整数値)である。
制御部100は、待機制御において、検知温度Tが第1温度T1未満となった場合、待機目標温度TT1と検知温度Tとの偏差ΔTに応じたデューティ比でヒータ83に通電する。本実施形態において、待機目標温度TT1は、第1温度T1であり、偏差ΔTは、検知温度Tから第1温度T1を引いた値である。
制御部100は、待機制御において、偏差ΔTの絶対値(第1温度T1と検知温度Tの差)が大きいほど、言い換えると、検知温度Tが低いほど、デューティ比を大きくする比例制御を実行する。具体的には、制御部100は、待機制御において、予め設定された、偏差ΔTとデューティ比との関係を示す図3に示すようなテーブルに基づき、待機制御におけるデューティ比を設定する。例えば、制御部100は、偏差ΔTが−2℃以上の場合、デューティ比を33%に設定する。また、制御部100は、偏差ΔTが−8℃以上かつ−7℃未満の場合、デューティ比を67%に設定する。
制御部100は、待機制御において、検知温度Tが第1温度T1(待機目標温度TT1)以上となった場合、デューティ比を固定する。具体的には、制御部100は、検知温度Tが第1温度T1以上となった場合、今回のデューティ比を前回のデューティ比と同じ値とし、デューティ比を変更しない。これにより、検知温度Tが第1温度T1以上となった後は、デューティ比が、検知温度Tが第1温度T1以上となったときのデューティ比に維持されることとなる。
制御部100は、待機制御において、検知温度Tが第1温度T1よりも高い第2温度T2を超えた場合は、デューティ比を0%に設定してヒータ83への通電を停止する。
制御部100は、待機制御において、検知温度Tが第2温度T2を超えてヒータ83への通電を停止した後における検知温度Tの最大値であるピーク温度TPを検出する。そして、制御部100は、検出したピーク温度TPが予め設定された目標ピーク温度TTPよりも高い場合、次回のピーク温度TPが今回のピーク温度TPよりも低くなるように待機制御の条件を変更する。また、制御部100は、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPよりも低い場合、次回のピーク温度TPが今回のピーク温度TPよりも高くなるように待機制御の条件を変更する。
具体的には、制御部100は、待機制御において、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPよりも高い場合、次回の第2温度T2を今回の第2温度T2よりも低くする。また、制御部100は、待機制御において、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPよりも低い場合、次回の第2温度T2を今回の第2温度T2よりも高くする。
より詳しく説明すると、本実施形態において、目標ピーク温度TTPは、一例として、170±2℃である。そして、制御部100は、待機制御において、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最大値TTPH(172℃)よりも高い場合、次回の第2温度T2を、今回の第2温度T2から1℃を引いた値とする。また、制御部100は、待機制御において、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最小値TTPL(168℃)よりも低い場合、次回の第2温度T2を、今回の第2温度T2に1℃を足した値とする。また、制御部100は、待機制御において、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの範囲内(最小値TTPL以上かつ最大値TTPH以下)である場合、次回の第2温度T2を、今回の第2温度T2と同じ値とする。
さらに、本実施形態においては、制御部100は、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPよりも高い場合であっても、今回の第2温度T2が、第2温度T2の設定可能な温度範囲のうちの最低値T2L(152℃)である場合には、次回の第2温度T2として、今回の第2温度T2を維持する。つまり、次回の第2温度T2を、第2温度T2の最低値T2Lとする。また、制御部100は、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPよりも低い場合であっても、今回の第2温度T2が、第2温度T2の設定可能な温度範囲のうちの最高値T2H(158℃)である場合には、次回の第2温度T2として、今回の第2温度T2を維持する。つまり、次回の第2温度T2を、第2温度T2の最高値T2Hとする。
制御部100は、レーザプリンタ1の電源が入れられた場合や、印刷制御が終了した場合(詳しくは、印刷ジョブの処理が終了した場合)に、待機制御を開始する。具体的には、レーザプリンタ1の電源が入れられた場合、制御部100は、定着器8の目標温度を、待機目標温度TT1に設定して待機制御を開始する。また、印刷制御が終了した場合、制御部100は、定着器8の目標温度を、定着目標温度TT2から待機目標温度TT1に変更して待機制御を開始する。
制御部100は、待機制御を開始するときに、第2温度T2を初期値にリセットする。詳しくは、制御部100は、待機制御を開始するときに、第2温度T2の初期値を、第2温度T2の設定可能な温度範囲のうち、最も低い値である最低値T2L(152℃)に設定する。
制御部100は、待機制御を実行しているときに、印刷すべき画像データを含む印刷ジョブが入力されると、画像データをドットイメージに展開する。そして、この展開が完了すると、制御部100は、定着器8の目標温度を、待機目標温度TT1から定着目標温度TT2に変更して待機制御を終了し、印刷制御を開始する。
また、制御部100は、待機制御を開始した時点から、印刷制御を実行することなく、予め設定された所定の待機時間が経過すると、待機制御を終了し、ヒータ83への通電を停止するスリープ制御を実行する。
制御部100は、待機制御またはスリープ制御を実行する場合は、加熱部81の回転部材81Aを回転させない。具体的には、制御部100は、待機制御またはスリープ制御を実行する場合、加圧部82に駆動力を入力しない。これにより、加圧部82が回転しないので、回転部材81Aも回転しない。
次に、制御部100における待機制御の動作について、フローチャートを参照しながら説明する。
図4に示すように、レーザプリンタ1の電源が入れられたり、印刷制御が終了したりして待機制御の開始条件が満たされると、制御部100は、待機制御を開始する。待機制御を開始すると、制御部100は、まず、第2温度T2を初期値(第2温度T2の最低値T2L)に設定する(S10)
次に、制御部100は、フラグFが1であるか否かを判定する(S11)。ここで、フラグFは、ヒータ83に通電しているとき、つまり、ヒータONのときに1に設定され、ヒータ83への通電を停止しているとき、つまり、ヒータOFFのときに0に設定される。
フラグFが1である場合(S11,Yes)、制御部100は、検知温度Tが第1温度T1未満であるか否かを判定する(S21)。そして、検知温度Tが第1温度T1未満である場合(S21,Yes)、制御部100は、第1温度T1と検知温度Tとの偏差ΔTから、図3に示すテーブルを参照して、デューティ比を設定する(S22)。そして、制御部100は、設定したデューティ比でヒータ83に通電し、ヒータ83を制御する(S24)。
その後、制御部100は、待機制御の終了条件が満たされたか否かを判定する(S41)。例えば、印刷ジョブが入力されたり、待機制御を開始した時点から所定の待機時間が経過したりした場合には、制御部100は、待機制御の終了条件が満たされたと判定し(S41,Yes)、待機制御を終了する。一方、制御部100は、待機制御の終了条件が満たされていない場合(S41,No)は、ステップS11に戻る。
ステップS21において、検知温度Tが第1温度T1未満でない場合(S21,No)、制御部100は、検知温度Tが第2温度T2を超えているか否かを判定する(S23)。そして、検知温度Tが第2温度T2を超えていない場合(S23,No)、制御部100は、デューティ比を変更することなく、そのデューティ比でヒータ83に通電し、ヒータ83を制御する(S24)。一方、検知温度Tが第2温度T2を超えている場合(S23,Yes)、制御部100は、ヒータ83への通電を停止してヒータ83をOFFにし(S25)、フラグFを0に設定する(S26)。その後、制御部100は、ステップS41に進み、以後の処理を実行する。
ステップS11において、フラグFが1でない場合(フラグFが0である場合)(S11,No)、制御部100は、検知温度Tが第1温度T1未満であるか否かを判定する(S31)。そして、検知温度Tが第1温度T1未満である場合(S31,Yes)、制御部100は、第1温度T1と検知温度Tとの偏差ΔTから、図3に示すテーブルを参照して、デューティ比を設定する(S32)。そして、制御部100は、ヒータ83をONにして、設定したデューティ比でヒータ83に通電し、ヒータ83を制御するとともに(S33)、フラグFを1に設定する(S34)。その後、制御部100は、ステップS41に進み、以後の処理を実行する。
ステップS31において、検知温度Tが第1温度T1未満でない場合(S31,No)、制御部100は、ピーク温度TPを測定する(S35)。そして、ピーク温度TPを検出しない場合(S35,No)、制御部100は、ステップS41に進み、以後の処理を実行し、ピーク温度TPを検出した場合(S35,Yes)、制御部100は、待機制御の条件を変更する条件変更処理を実行する(S100)。
図5に示すように、制御部100は、ステップS100において、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最大値TTPHよりも高いか否かを判定する(S101)。そして、検出したピーク温度TPが最大値TTPHよりも高い場合(S101,Yes)、制御部100は、第2温度T2を、今回の第2温度T2から1℃を引いた値に設定する(S111)。そして、制御部100は、ステップS111で設定した第2温度T2と、第2温度T2の最低値T2Lを比較し、大きい方を次回の第2温度T2に設定し(S112)、待機制御の条件変更処理を終了する。
一方、検出したピーク温度TPが最大値TTPH以下の場合(S101,No)、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最小値TTPLよりも低いか否かを判定する(S102)。そして、検出したピーク温度TPが最小値TTPLよりも低い場合(S102,Yes)、制御部100は、第2温度T2を、今回の第2温度T2に1℃を足した値に設定する(S121)。そして、制御部100は、ステップS121で設定した第2温度T2と、第2温度T2の最高値T2Hを比較し、小さい方を次回の第2温度T2に設定し(S122)、待機制御の条件変更処理を終了する。
また、検出したピーク温度TPが最小値TTPL以上の場合(S102,No)、すなわち、検出したピーク温度TPが最小値TTPL以上かつ最大値TTPH以下の場合、制御部100は、第2温度T2を変更することなく、待機制御の条件変更処理を終了する。なお、ステップS101とステップS102の処理順は、逆であってもよい。
制御部100は、ステップS100で決定した第2温度T2を、図4のステップS23における検知温度Tとの比較の処理で使用する。
以上説明した本実施形態によれば、図6の時刻t13に示すように、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最大値TTPHよりも高い場合、次回の第2温度T2を今回の第2温度T2よりも低くするので、次回のヒータ83への通電時間TM3(時刻t14〜t15)を今回のヒータ83への通電時間TM1(時刻t11〜t12)よりも短くすることができ、定着器8の加熱時間を短くすることができる。これにより、図6の時刻t16に示すように、ヒータ83への通電を停止した後において、次回のピーク温度TPの上昇を抑えることができるので、次回のピーク温度TPを今回のピーク温度TP(時刻t13)よりも低くすることができる。
また、これにより、今回のヒータ83への通電を終了してから次回のヒータ83への通電を開始するまでの時間TM2(時刻t12〜t14)よりも、次回のヒータ83への通電を終了してからさらに次回のヒータ83への通電を開始するまでの時間TM4(時刻t15〜t17)が短くなるので、ヒータ83のフィラメント83Aの温度が低下しすぎることを抑制することができる。
また、図7の時刻t23に示すように、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最小値TTPLよりも低い場合、次回の第2温度T2を今回の第2温度T2よりも高くするので、次回のヒータ83への通電時間TM7(時刻t24〜t25)を今回のヒータ83への通電時間TM5(時刻t21〜t22)よりも長くすることができ、定着器8の加熱時間を長くすることができる。これにより、図7の時刻t26に示すように、ヒータ83への通電を停止した後において、次回のピーク温度TPを上げることができるので、次回のピーク温度TPを今回のピーク温度TP(時刻t23)よりも高くすることができる。
また、これにより、今回のヒータ83への通電を終了してから次回のヒータ83への通電を開始するまでの時間TM6(時刻t22〜t24)よりも、次回のヒータ83への通電を終了してからさらに次回のヒータ83への通電を開始するまでの時間TM8(時刻t25〜t27)が長くなるので、ヒータ83への通電と通電停止の繰り返しが多頻度となることを抑制することができる。
このように、本実施形態によれば、ピーク温度TPを、所定の範囲、具体的には、目標ピーク温度TTP付近に収めることができるので、定着器8の温度がピーク温度TPから第1温度T1まで低下する時間を安定させることができる。これにより、ヒータ83への通電が停止される時間を安定させることができるので、ヒータ83のフィラメント83Aの温度が低下しすぎることによるフィラメント83Aの抵抗値が大きく下がることを抑制することができ、次回のヒータ83への通電開始時に突入電流が大きくなることを抑制することができる。
また、ピーク温度TPを所定の範囲に収めることができることで、例えば、ヒータ83への通電を停止する期間を一定とする場合と比較して、ピーク温度TPが大きく変動することを抑制することができる。これにより、定着器8の温度の変動を抑制することができる。
また、制御部100は、待機制御を開始するときに、第2温度T2の初期値を、第2温度T2の設定可能な温度範囲のうち最も低い値に設定するので、第2温度T2を初期値に設定した直後のピーク温度TPが大きくなりすぎることを抑制することができる。これにより、ヒータ83への通電が停止される時間が長くなりすぎないので、ヒータ83のフィラメント83Aの温度が低下しすぎることによるフィラメント83Aの抵抗値が大きく下がることを抑制することができ、次回のヒータ83への通電開始時に突入電流が大きくなることを抑制することができる。
また、制御部100は、検知温度Tが第1温度T1(待機目標温度TT1)以上となった場合に、デューティ比を固定して、デューティ比を検知温度Tが第1温度T1以上となったときのデューティ比に維持するので、検知温度Tが待機目標温度TT1以上となった後の定着器8の温度の上昇勾配を安定させることができる。これにより、ピーク温度TPの変動をより抑制することができるので、定着器8の温度の変動をより抑制することができる。
また、制御部100は、待機制御を実行する場合に、加熱部81の回転部材81Aを回転させないので、待機制御の実行中において、加熱部81の熱が加圧部82に奪われにくくなる。これにより、次回、シートSに現像剤像を定着する場合に、加熱部81を定着目標温度TT2まで加熱するときのヒータ83への投入電力を低減することができる。
次に、第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態と異なる点について詳細に説明する。
本実施形態において、第2温度T2は、固定値である。一例として、第2温度T2は、155℃(第1温度T1+5℃)である。
そして、本実施形態において、制御部100は、待機制御において、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPよりも高い場合、次回のピーク温度TPが今回のピーク温度TPよりも低くなるように、第2温度T2を小さくする代わりに、次回の偏差ΔTに応じたデューティ比を今回の偏差ΔTに応じたデューティ比よりも小さくする。また、制御部100は、待機制御において、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPよりも低い場合、次回のピーク温度TPが今回のピーク温度TPよりも高くなるように、第2温度T2を大きくする代わりに、次回の偏差ΔTに応じたデューティ比を今回の偏差ΔTに応じたデューティ比よりも大きくする。
より詳しく説明すると、制御部100は、待機制御において、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの範囲内(最小値TTPL以上かつ最大値TTPH以下)である場合、図3に示す第1テーブルに基づき、デューティ比を設定する。例えば、制御部100は、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの範囲内の場合であって、偏差ΔTが−2℃以上の場合、デューティ比を33%に設定する。また、制御部100は、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの範囲内の場合であって、偏差ΔTが−8℃以上かつ−7℃未満の場合、デューティ比を67%に設定する。
また、制御部100は、待機制御において、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最大値TTPHよりも高い場合、図8(a)に示す第2テーブルに基づき、デューティ比を設定する。例えば、制御部100は、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最大値TTPHよりも高い場合であって、偏差ΔTが−3℃以上の場合、デューティ比を33%に設定する。また、制御部100は、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最大値TTPHよりも高い場合であって、偏差ΔTが−9℃以上かつ−8℃未満の場合、デューティ比を67%に設定する。
また、制御部100は、待機制御において、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最小値TTPLよりも低い場合、図8(b)に示す第3テーブルに基づき、デューティ比を設定する。例えば、制御部100は、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最小値TTPLよりも低い場合であって、偏差ΔTが−1℃以上の場合、デューティ比を33%に設定する。また、制御部100は、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最小値TTPLよりも低い場合であって、偏差ΔTが−7℃以上かつ−6℃未満の場合、デューティ比を67%に設定する。
ここで、図3に示す第1テーブルは、例えば、偏差ΔTが−2℃以上の場合に、デューティ比を33%とし、偏差ΔTが−3℃以上かつ−2℃未満の場合に、デューティ比を40%とするように設定されているが、図8(a)に示す第2テーブルは、偏差ΔTが−3℃以上の場合に、デューティ比を33%とするように設定されている。また、図3に示す第1テーブルは、例えば、偏差ΔTが−5℃以上かつ−4℃未満の場合に、デューティ比を50%とするように設定されているが、図8(a)に示す第2テーブルは、同じ偏差ΔTの場合に、デューティ比を43%と小さくするように設定されている。
すなわち、図8(a)に示す第2テーブルは、図3に示す第1テーブルよりも、偏差ΔTに応じたデューティ比が小さくなるように設定されている。そのため、偏差ΔTが同じ値の場合、図8(a)に示す第2テーブルを参照して設定されたデューティ比は、図3に示す第1テーブルを参照して設定されたデューティ比よりも値が小さくなる。
また、図3に示す第1テーブルは、例えば、偏差ΔTが−2℃以上の場合に、デューティ比を33%とするように設定されているが、図8(b)に示す第3テーブルは、偏差ΔTが−1℃以上の場合に、デューティ比を33%とし、偏差ΔTが−2℃以上かつ−1℃未満の場合に、デューティ比を40%とするように設定されている。また、図3に示す第1テーブルは、例えば、偏差ΔTが−5℃以上かつ−4℃未満の場合に、デューティ比を50%とするように設定されているが、図8(b)に示す第3テーブルは、同じ偏差ΔTの場合に、デューティ比を57%と大きくするように設定されている。
すなわち、図8(b)に示す第3テーブルは、図3に示す第1テーブルよりも、偏差ΔTに応じたデューティ比が大きくなるように設定されている。そのため、偏差ΔTが同じ値の場合、図8(b)に示す第3テーブルを参照して設定されたデューティ比は、図3に示す第1テーブルを参照して設定されたデューティ比よりも値が大きくなる。
次に、本実施形態の制御部100における待機制御の動作について説明する。
本実施形態の待機制御において、基本的な処理は、第1実施形態(図4参照)と同様である。一方、待機制御の条件変更処理(S100)は、第1実施形態と異なっている。
具体的には、図9に示すように、制御部100は、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最大値TTPHよりも高いか否かを判定する(S101)。そして、検出したピーク温度TPが最大値TTPHよりも高い場合(S101,Yes)、制御部100は、デューティ比を設定するためのテーブルとして、図8(a)に示す第2テーブルを選択し(S132)、待機制御の条件変更処理を終了する。
一方、検出したピーク温度TPが最大値TTPH以下の場合(S101,No)、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最小値TTPLよりも低いか否かを判定する(S102)。そして、検出したピーク温度TPが最小値TTPLよりも低い場合(S102,Yes)、制御部100は、デューティ比を設定するためのテーブルとして、図8(b)に示す第3テーブルを選択し(S133)、待機制御の条件変更処理を終了する。
また、検出したピーク温度TPが最小値TTPL以上の場合(S102,No)、すなわち、検出したピーク温度TPが最小値TTPL以上かつ最大値TTPH以下の場合、制御部100は、デューティ比を設定するためのテーブルとして、図3に示す第1テーブルを選択し(S131)、待機制御の条件変更処理を終了する。
制御部100は、図4のステップS22およびステップS32の処理において、第1温度T1と検知温度Tとの偏差ΔTから、ステップS100で選択したテーブルを参照してデューティ比を設定する。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
すなわち、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最大値TTPHよりも高い場合、次回の偏差ΔTに応じたデューティ比を今回の偏差ΔTに応じたデューティ比よりも小さくするので、次回のヒータ83への通電時に加熱部81に与えられる単位時間あたりの熱量を小さくすることができる。これにより、次回のヒータ83への通電を停止した後において、次回のピーク温度TPの上昇を抑えることができるので、次回のピーク温度TPを今回のピーク温度TPよりも低くすることができる。
また、検出したピーク温度TPが目標ピーク温度TTPの最小値TTPLよりも低い場合、次回の偏差ΔTに応じたデューティ比を今回の偏差ΔTに応じたデューティ比よりも大きくするので、次回のヒータ83への通電時に加熱部81に与えられる単位時間あたりの熱量を大きくすることができる。これにより、次回のヒータ83への通電を停止した後において、次回のピーク温度TPを上げることができるので、次回のピーク温度TPを今回のピーク温度TPよりも高くすることができる。
このように、本実施形態によっても、ピーク温度TPを所定の範囲に収めることができるので、次回のヒータ83への通電開始時に突入電流が大きくなることを抑制しつつ、定着器8の温度の変動を抑制することができる。
また、本実施形態においても、制御部100は、検知温度Tが第1温度T1(待機目標温度TT1)以上となった場合に、デューティ比を固定するので、検知温度Tが待機目標温度TT1以上となった後の定着器8の温度の上昇勾配を安定させることができる。これにより、ピーク温度TPの変動をより抑制して、定着器8の温度の変動をより抑制することができる。
以上に実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、待機目標温度TT1が第1温度T1と同じ温度であったが、これに限定されず、異なる温度であってもよい。
また、前記実施形態では、待機制御において、第1温度T1(待機目標温度TT1)と検知温度Tとの偏差ΔTに応じたデューティ比を、図3などに示したテーブルを参照して設定する構成であったが、これに限定されない。例えば、待機目標温度と検知温度との偏差から、PI制御やPID制御などの手法を用いてデューティ比(ヒータの操作量)を設定する構成であってもよい。
また、前記実施形態では、待機制御を開始するときに第2温度T2を初期値にリセットする構成であったが、これに限定されない。例えば、待機制御を終了するときに第2温度を初期値にリセットする構成であってもよいし、スリープ制御が開始されてヒータへの通電が停止されたときに第2温度を初期値にリセットする構成であってもよい。すなわち、本発明において、待機制御を開始するときに、第2温度の初期値を第2温度の最低値に設定するとは、待機制御を開始する時点で第2温度をリセットする構成だけはなく、待機制御を開始する前に第2温度をリセットしておき、次回、待機制御を開始するときに、すでに、第2温度が初期値としての第2温度の最低値となっている構成を含む。
また、前記実施形態では、第2温度T2の初期値を、第2温度T2の設定可能な温度範囲のうち最も低い値に設定する構成であったが、これに限定されない。例えば、第2温度の初期値を、第2温度の設定可能な温度範囲のうち中央値に設定する構成であってもよい。また、前記実施形態では、第2温度T2の設定可能な温度が1℃刻みであったが、これに限定されず、例えば、第2温度の設定可能な温度は、0.5℃刻みや0.1℃刻みなどのように、前記実施形態よりも細かい刻みであってもよい。また、第2温度の設定可能な温度は、2℃刻みなどのように、前記実施形態よりも大きい刻みであってもよい。
また、前記実施形態では、第1温度T1が定着目標温度TT2よりも低い温度であったが、これに限定されず、例えば、第1温度は、定着目標温度と同じ温度であってもよい。すなわち、制御部は、待機制御において、定着器の温度を定着目標温度に保つ構成であってもよい。
また、前記実施形態では、目標ピーク温度TTPが168〜172℃などのような所定の温度範囲であったが、これに限定されない。例えば、目標ピーク温度は、170℃などのような一の値であってもよい。
また、前記実施形態では、待機制御を実行する場合に、加熱部81の回転部材81Aを回転させない構成であったが、これに限定されず、待機制御を実行する場合に、回転部材81Aを回転させる構成であってもよい。
また、前記実施形態では、回転部材81Aとして加熱ローラを例示したが、これに限定されず、例えば、回転部材は、ベルト定着方式の定着器に設けられる無端状の加熱ベルトなどであってもよい。また、前記実施形態では、加圧部82として加圧ローラを例示したが、これに限定されず、例えば、加圧部は、無端状の加圧ベルトを含む加圧ユニットなどであってもよい。
また、前記実施形態では、温度検知部9が、加熱部81の温度を検知するように設けられていたが、これに限定されず、例えば、加圧部など、定着器の加熱部以外の部分の温度を検知するように設けられていてもよい。また、温度検知部は、ヒータの温度を直接検知するように設けられていてもよい。また、温度検知部は、サーミスタ以外の温度センサなどであってもよい。また、温度センサは、非接触式の温度センサであってもよいし、接触式の温度センサであってもよい。
また、前記実施形態では、ヒータ83として、輻射熱を利用するハロゲンヒータを例示したが、これに限定されず、例えば、抵抗体の発熱を利用するセラミックヒータやカーボンヒータなどであってもよい。また、ヒータは、加熱部の内側ではなく、加熱部の外側に配置されていてもよい。
また、前記実施形態では、画像形成装置として、シートSにモノクロの画像を形成するレーザプリンタ1を例示したが、これに限定されず、例えば、シートにカラーの画像を形成可能に構成されたプリンタであってもよい。また、画像形成装置は、プリンタに限定されず、例えば、フラットベッドスキャナなどの原稿読取装置を備える複写機や複合機などであってもよい。
また、前記実施形態では、現像剤像形成部5としてプロセスカートリッジを例示したが、これに限定されない。例えば、画像形成装置が、シートにカラーの画像を形成可能であり、配列された複数の感光体ドラムを有するプロセスユニットと、複数の感光体ドラムに形成された現像剤像をシートに転写するための転写ベルトなどを有する転写ユニットとを備える場合には、現像剤像形成部は、プロセスユニットと転写ユニットを含む構成とすることができる。
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素は、適宜組み合わせて実施することが可能である。