以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
〔実施例1〕
まず、図10を参照し、本発明の画像加熱装置を具備する画像形成装置の全体構成を説明する。
図10の画像形成装置において、コピー機能時は、原稿の画像情報を読み取るイメージスキャナ10からの画像情報に基づいた画像を、記録材としての用紙P上に形成する。
プリンタ機能時は、不図示のパーソナルコンピュータ等の外部装置にて作成されたプリントデータを受信するプリンタ受信手段11を有する。そして、不図示の通信回線を介して、画像形成装置がプリントデータを受信し、プリントデータからの画像情報に基づいた画像を、用紙P上に形成する。
不図示の通信回線を介して送信されてきたファクシミリデータを受信するファクシミリ送受信手段12を有し、ファクシミリ機能時は不図示の通信回線を介して画像形成装置がファクシミリデータを受信する。そして、ファクシミリデータからの画像情報に基づいた画像を、用紙P上に形成する。
次に、図10の画像形成装置における画像形成方法に関して説明する。
図10の画像形成装置は、感光ドラム1が矢印I方向に回転し、帯電装置(例えば帯電ローラ)2により、例えばマイナスに一様均一に感光ドラム1表面が帯電される(例えば帯電電位:−400V)。次に、露光装置3が画像情報に応じた例えばレーザー光3aを感光ドラム1表面に照射することにより、感光ドラム1上に静電潜像が形成される(例えば、露光部電位:−50V)。
次に感光ドラム1上の静電潜像は、現像装置4のバイアスが印加されて回転する現像スリーブ4a(例えば、DC:−250V、AC:1KVpp/2.5KHz)により、マイナスに帯電されたトナーKが現像される。このようにして、感光ドラム1上のレーザー光を照射した部位にトナーK画像が形成される。
感光ドラム1上のトナーK画像は、転写装置(例えば転写ローラ)5に印加されたプラス電圧(例えば、DC:+2KV)により、給紙カセット9から取り出されて経路Jを通り、転写部に搬送された用紙P上に静電的に転写される。その後、トナーK画像を担持した用紙Pは、分離装置(例えば除電針)6に印加されたマイナス電圧(例えば、DC:−1KV)により、用紙Pのプラス電荷が除電されることで、感光ドラム1から記録材Pが分離される。そして、トナーK画像を担持した用紙Pは、定着装置100に搬送され、熱及び圧力を受けて、トナーK画像が用紙P上に定着される。定着工程終了後の用紙Pは、経路Lのフェイスアップ排紙、又は経路Mのフェイスダウン排紙を選択して、排紙される。
一方、転写工程が終了した感光ドラム1は、感光ドラム1上の転写残トナーをクリーニング装置7により除去した後、再び帯電装置2により一様均一に帯電され、次の画像形成に備える。
次に、図1の定着装置に関して説明する。
図1で示すように、定着装置100は、定着部材(加熱部材)としての定着ローラ101、加圧部材としての加圧ローラ102を備える。そして、定着ローラ101を加熱する加熱源としてのハロゲンヒータ111a及び111b、加圧ローラ102を加熱するハロゲンヒータ112a及び112bを備える。更に、定着ローラ101表面の長手方向中央部(第1位置)の温度を検知する第1温度検知部材としての第1温度センサ121a、端部(第2位置)の温度を検知する第2温度検知部材としての第2温度センサ121bを備える。そして、加圧ローラ102表面の中央部の温度を検知する温度センサ122a及び端部の温度を検知する122bを備える。
また、ハロゲンヒータ111a、111b、112a、112bへ電力を供給する電源131、ハロゲンヒータ111a、111b、112a、112bへ供給される電力を制御する電力制御手段としてのヒータ制御部130を備える。なお、長手方向とは、用紙Pの搬送方向に垂直な方向である。
定着ローラ101は、不図示の駆動源によって、矢印A方向に所定の速度、例えば500mm/secの周速で回転駆動されるようになっている。定着ローラ101は、例えば外径74mm、肉厚6mm、長さ350mmの金属製円筒状芯金(本実施例では、アルミニウム製)上に、耐熱性弾性層としてのシリコーンゴムが3mmの厚さで被覆される。更に弾性層上には、トナーとの離型性向上のため、耐熱性離型層としてのフッ素系樹脂(本実施例では、PFAチューブ)が100μmの厚さで被覆されている。
本実施例では、弾性層を被覆した定着ローラ101を用いたが、弾性層の無い金属製円筒状芯金上に離型層を被覆した定着ローラでも良い。
又、定着ローラ101の芯金の内部には、ハロゲンヒータ111a及び111bが配置されている。
定着ローラ101の表面温度は、定着ローラ101に接触する第1温度センサ121aまたは第2温度センサ121bに検知される。ヒータ制御部131は、第1温度センサ121aまたは第2温度センサ121bの検知温度(結果)に基づいて電源131を制御し、ハロゲンヒータ111a及び111bをON/OFF制御する。
加圧ローラ102は、定着ローラ101に不図示の加圧手段により、所定の圧力で加圧されて、定着ローラ101とニップNを形成している。そして、矢印B方向に所定の速度、例えば500mm/secの周速で、定着ローラ101と従動回転されるようになっている。
加圧ローラ102は、例えば外径54mm、厚み3mm、長さ350mmの金属製円筒状芯金上に、耐熱性弾性層としてのシリコーンゴムが3mmの厚さで被覆される。更に弾性層上には、トナーとの離型性向上のため、耐熱性離型層としてのフッ素系樹脂が100μmの厚さで被覆されている。本実施例の加圧ローラ102は、芯金は鉄製であり、耐熱性離型層はPFAチューブである。
又、加圧ローラ102の内部には、加熱源としてのハロゲンヒータ112a及び112bが配置されている。
加圧ローラ102の表面温度は、加圧ローラ102に接触する温度センサ122aまたは122bに検知される。
ヒータ制御部131は、温度センサ122aまたは第2温度センサ122bの検知結果に基づいて電源131を制御し、ハロゲンヒータ112a及び112bをON/OFF制御する。
なお、このニップNに、画像形成装置によって未定着トナーKを担持させた用紙Pを搬送して、ニップNの熱及び圧力によって、用紙P上にトナーKを定着させる。
図2で示すように、定着装置100は、定着ローラ101及び加圧ローラ102の長手方向のほぼ中央部を用紙Pが通紙される中央基準の定着装置である。定着ローラ101の外周面には、最小幅Eの用紙P2の通紙部E内に第1温度センサ121aを配置し、定着ローラ101端部に第2温度センサ121bを配置して、定着ローラ101の表面温度を検知する。
第2温度センサ121bは、本実施例では、非通紙部の定着ローラ101温度を測定する目的から、最大幅Dの用紙P1の非通紙部Fに配置する。
図3で示すように、最大幅Dの非通紙部昇温を検知する必要が無く、最大幅Dよりも小さい幅の用紙の非通紙部昇温のみを検知する場合には、第2温度センサ121bは、最小幅Eの用紙P2の非通紙域で、最大幅Dの通紙域内、に配置しても良い。また、好ましくは最大幅Dの通紙域内端部に配置する構成でも良い。
ここで、図1に戻り、本実施例の温度制御を行うヒータ制御部130を説明する。ヒータ制御部130は、マイクロコンピュータ(CPU)、記憶手段としてのメモリ(ROM)等を含み、第1温度センサ121a及び第2温度センサ121bからの検知信号を所定時間毎に検知して、検知温度に変換する。そして、その検知温度に基づいて、ヒータ制御手段130によってハロゲンヒータ111a及び111bへの通電量を制御することにより、定着ローラ101の温度を所定の温度に制御する。例えば、検知温度が目標温度よりも低い場合には、ハロゲンヒータ111a及び111bへ所定電力を通電(ON)して定着ローラ101温度を上昇させる。検知温度が目標温度よりも高い場合には、ハロゲンヒータ111a及び111bへの通電を遮断(OFF)して定着ローラ101温度を低下させる。
図4は、画像形成装置の電源ONから、縦軸に定着ローラ101の第1温度センサ121aの検知温度、横軸に時間経過における定着装置の状態を示す模式図である。
図4で示すように、画像形成装置の電源ON(H1)で定着装置100のハロゲンヒータ111a、111b、112a、111bが点灯して、定着ローラ101を室温から待機温度、例えば200℃まで昇温させるH1〜H2が立上状態である。
立上状態において、例えば、定着ローラ温度が室温〜150℃までは、定着ローラ101の回転駆動を停止したままで昇温させる。そして、150℃〜200℃までは、定着ローラ101及び加圧ローラ102を回転駆動して昇温させることで、定着ローラ101及び加圧ローラ102の周方向の温度ムラを低減させている。立上状態では、ヒータ制御部130は、第1温度センサ121aの検知温度に応じて温度制御を行う。
H2で待機温度まで到達すると、定着ローラ101を待機温度に温度制御するH2〜H3の待機状態に移行する。待機状態に移行すると定着装置100は定着動作が可能になり、画像形成装置は画像形成可能となる、待機状態の時は、本発明の特徴となる待機制御によって定着ローラ101の温度制御が行われる。待機制御については後述するが、第1温度センサの検知温度(出力)に応じて、ヒータ制御部130が温度制御を行うために参照する温度センサを第1温度センサ121aと第2温度センサ121bの一方が選択される。なお、上述の立上状態では、第1温度センサ121aの検知温度に応じて、ヒータ制御部130は温度制御を行う。H3で定着(加熱)動作が開始され、定着ローラ101を定着温度、例えば180℃に温度制御するH3〜H4の定着状態に移行する。定着状態に移行すると、ヒータ制御部130は、立上状態と同様に、第1温度センサ121aの検知温度に応じて定着ローラ101の温度制御を行う。なお、定着温度とは、定着(加熱)動作中の定着ローラ101の温度である。
定着(加熱)動作終了後H4〜H5で再び待機状態に移行し、上述の待機制御によって定着ローラ101の温度制御を行う。待機状態が所定時間以上継続した場合、定着装置100のハロゲンヒータ111a、111b、112a、111bをOFFするH5〜スリープ状態に移行する。
ここで、図5を参照し、本発明の特徴である待機制御について説明する。
待機制御は定着装置100が待機状態にあるときの定着ローラ101の温度制御である。図5に、ヒータ制御部130が実行する制御のフローチャートを示す。
定着装置100のヒータ制御部130は、定着装置100が待機状態になると(S1)、第1温度センサ121aの検知温度を待機温度1、例えば200℃と比較する(S2)。
S2において、第1温度センサ121aの検知温度が待機温度1(200℃)未満の場合(S2でNO)、定着ローラ101中央部の第1温度センサ121aを用いて、定着ローラ101中央部の温度が待機温度1(200℃)となるように、温度制御する。具体的には、電源131により、ハロゲンヒータ111a及び111bへ所定電力を通電(ON)して、定着ローラ101温度を上昇させる。そして、待機状態を継続するか判断して(S5)、他制御に移行する場合(S5でNO)、例えば定着動作を行う定着制御や、省電力のためにヒータをOFFするスリープ制御に移行する場合には、待機制御を終了して、他制御に移行する。待機状態を継続する場合(S5でYES)、S2に戻って第1温度センサ121aの検知温度を待機温度1と比較するフローが繰り返される。
S2において、第1温度センサ121aの検知温度が待機温度1(200℃)以上の場合(S2でYES)、定着ローラ101端部の第2温度センサ121bを用いて、定着ローラ101端部の温度が待機温度2、例えば190℃となるように、温度制御する。具体的には、第2温度センサ121bの検知温度が190℃未満の場合、電源131により、ハロゲンヒータ111a及び111bへ所定電力を通電(ON)して、定着ローラ101温度を上昇させる。第2温度センサ121bの検知温度が190℃以上の場合、電源131により、ハロゲンヒータ111a及び111bへの通電を遮断(OFF)して、定着ローラ101温度を低下させる。そして、待機制御を継続するか判断して(S5)、他制御に移行する場合(S5でNO)、待機制御を終了して、他制御に移行する。待機制御を継続する場合(S5でYES)、S2に戻って第1温度センサ121aの検知温度を待機温度1と比較するフローが繰り返される。
ここで、本実施例において待機温度2は、低温環境において定着性が確保できる下限値190℃に設定し、その時の平衡状態での第1温度センサ121aでの検知温度が200℃から、待機温度1を200℃とした。
従って、通常環境においては、定着ローラ101端部温度低下が低温環境よりも小さいので、第1温度センサ121aの検知温度が200℃の時には、第2温度センサ121bの検知温度は190℃以上となる。そして、第1温度センサ121aの検知温度と待機温度1との比較によるヒータ111a及び111bのON及びOFF制御が主制御となって、第1温度センサ121aを用いて待機温度1に温度制御する動作と同様の挙動となる。
また、通常環境から低温環境に環境温度が低下すると、定着ローラ101の端部温度低下が大きくなり、第2温度センサ121bの検知温度と待機温度2との比較によるヒータ111a及び111bのON及びOFF制御が主制御となる。このとき、第1温度センサ121aの検知温度は200℃以上であり、第2温度センサ121bを用いて待機温度2の190℃に温度制御する動作と同様の挙動となる。
本実施例では、待機時において、常に定着ローラ101中央部の第1温度センサ121aを監視して、通紙域の第1温度センサが待機温度1(200℃)となるように温度制御する。更に、定着ローラ101端部の第2温度センサ121bが待機温度2(190℃)となるように温度制御する。このようにして、定着ローラ101は、最大幅通紙領域(D)内で、環境によらずに、常に所定温度(190℃)以上を維持することができる。従って、待機状態から定着状態へ移行した場合、低温環境においても用紙全域で定着性を確保することができる。
ところで、定着動作へ移行した時、定着ローラ101の温度は、用紙Pに奪われて低下する。特に定着ローラ101の芯金が厚く、更には定着ローラ101に弾性層が被覆してある場合、ヒータ111a及び111bをONしても定着ローラ101の表面に熱量が到達するのに時間を要するため、用紙Pの通紙による定着ローラ101の温度低下は大きい。
そのために、本実施例では、「待機温度1(200℃)は、定着温度(180℃)より高い」として、待機時に定着ローラ101の芯金温度を高温で維持する構成としてある。
これは、定着動作が開始されて定着ローラ101の表面温度が定着温度(180℃)に低下しても、第1温度センサ121aの検知結果に応じてヒータ111a及び111bがONすることで中央部を定着温度(180℃)に維持可能にするための構成である。
つまり、待機時に定着ローラ101の芯金が高温に保たれているので、定着ローラ101の表面温度が低下しても芯金の熱が直ぐに表面へ到達し、中央部の表面温度は定着温度(180℃)に維持される。
このようにして、待機時に第2温度センサ121bで定着ローラ101の端部を190℃以上に維持することによって、定着時においては、定着ローラ101の中央部は180℃の定着温度に維持される。そして、その時、定着ローラ101の端部は定着性が確保できる170℃以上に維持することができるようにしてある。
従って、待機時に定着ローラ101端部を190℃以上に維持することにより、定着時においては、定着ローラ101端部を定着性が確保できる170℃以上にすることができる。
本実施例の待機時における制御の比較例1として、待機時において、第1温度センサ121aで待機温度1(200℃)に定着ローラ101を温度制御するのみの構成の場合、定着性が低くなる問題が発生する。なぜなら、低温環境において、定着ローラ101端部の放熱量が大きくなり、定着ローラ101端部において定着性が確保できる190℃未満となってしまうからである。
又、立上時においても定着ローラ101端部からの放熱が発生するため、通常、定着ローラ101の中央部温度が高く、端部温度が低い。更に、立上時においては、定着装置全体の温度が低いために、端部からの放熱量が大きく、待機時と比較して端部の温度低下量が大きい。
特に、立上時に定着ローラ101の中央部温度が待機温度1を大きく超えるオーバーシュートが生じた場合には、立上後に待機制御に移行して、第1温度センサ121aの検知温度が待機温度1まで低下するまでヒータ111a及び111bをOFFすることになる。
その結果、定着ローラ101端部の第2温度センサ121b検知温度が定着性を確保できる190℃未満となってしまい、定着時の用紙P端部の定着性が低下するという問題が発生する。
本実施例の待機時における制御の比較例2として、待機時において、第2温度センサ121bで待機温度2(190℃)に定着ローラ101を温度制御するのみの構成を用いると、定着時の定着性が低くなってしまう。これは、小サイズ紙通紙後の待機時において、非通紙部昇温により定着ローラ101の端部温度が上昇するため、定着ローラ101中央部において定着性が確保できる190℃未満となってしまい、定着時の定着性が低くなってしまうからである。
ここで、図6は、本発明の実施例1に係る定着ローラ101の長手方向の温度分布を示す模式図である。縦軸に定着ローラ101の温度、横軸に定着ローラ位置を示す。
G1の太線は待機時の平衡状態での温度分布を示し、G2の細線は最小幅(E)サイズ紙を通紙した直後の待機時の温度分布を示す。
図6のG2で示すように、小サイズ紙通紙後の定着ローラ101温度分布は、通紙域は定着温度の180℃、非通紙領域は非通紙部昇温によって上昇して第2温度センサ121b検知温度は220℃である。この状態で比較例2の第2温度センサ121bで定着ローラ101を待機温度2(190℃)で温度制御する場合、第2温度センサ121bの検知温度が190℃になるまで、ヒータ111a及び111bはOFFとなる。従って、通紙域中央部の定着ローラ101温度は190℃を下回ってしまうため、中央部において定着時の定着性が低下してしまうという問題が発生する。
上述待機制御を待機時に行うことで、定着ローラ101が立上後のオーバーシュートや定着後の非通紙部昇温等の履歴を持っていても、更には環境温度によらず、定着ローラ101長手方向全域で、所定温度以上を確保し、定着時に良好な定着性を得ることができる。
又、本実施例において、待機温度1≦待機温度とすると、通常、待機時の定着ローラ101端部温度が低いので、定着ローラ101端部の第2温度センサ121bで温度制御することになる。そのため、定着ローラ101の端部温度低下度合や前の履歴によっては、待機時の定着ローラ中央部温度が200℃未満となる場合が有り、例えば厚紙をプリントした場合には、中央部の温度低下が大きく、定着性が低下してしまうという問題が発生する。
待機温度1=待機温度2=200℃とした場合には、必要以上に定着ローラ101温度が高いので、待機時の消費電力が大きくなり、省エネルギー化できないという問題が発生する。
そこで、本実施例のように、「待機温度1(200℃)>待機温度2(190℃)」の場合とすると、定着ローラ101の中央部の温度を200℃以上に維持すると同時に、端部の温度を190℃以上に維持できる。このようにして、中央部及び端部ともに一定以上の定着性を確保でき、省エネルギーとなるので、より好適である。
本実施例では、待機温度1を200℃、待機温度2を190℃としたが、定着装置構成によって、任意に設定して良い。又、定着温度を180℃と待機温度1より低い設定としたが、定着装置構成によっては、定着温度を210℃と待機温度1より高い設定でも良い。更に、用紙が薄紙の場合には180℃、厚紙の場合には190℃のように、複数の定着温度としても良い。
ただし、「待機温度1≧定着温度」の場合には、プリントが開始されると直ぐに用紙が定着装置に到達するので、待機時の定着ローラ101の温度分布が定着性に影響し易いため、本発明の効果は大きい。
一方、「待機温度<定着温度」の場合は、プリント開始によって定着動作が行われるとヒータ111a及び111bがONして、定着ローラ101温度を上昇させ、定着ローラ101の端部温度を上昇させる。そのため、定着温度を高く設定する等により、端部の定着性を確保することも可能なので、「待機温度1≧定着温度」の場合と比較すると、効果は小さくなる。
又、本実施例においては、待機時の温度制御に関して述べたが、定着ローラ101の温度を室温から所定温度(待機温度又は定着温度)まで昇温させる立上時には、第1温度センサ121aで温度制御を行うのが良い。
これは、立上時にも定着ローラ101温度分布は中央部の温度が高く、端部の温度が低いためである。つまり、中央の高温部で温度制御する方が、端部の低温部で温度制御するのに比較して、立上時に発生する定着ローラ温度が所定温度以上に上昇してしまうオーバーシュート、を小さくすることができるためである。
さらに、定着時においても、通紙域である第1温度センサ121aを用いて定着ローラ101を定着温度に温度制御することにより、通紙域の温度を定着温度に維持できるので、用紙の定着性を確保することができる。
従って、立上時には第1温度センサ121a、待機時には第1温度センサ121aと第2温度センサ121b、定着時には第1温度センサ121aを用いて温度制御するのが好適である。
〔実施例2〕
図7及び8を参照し、本発明に係る実施例2について説明する。
実施例1と同じ構成及び機能の部材については、実施例1と同じ番号を付して説明を省略する。本実施例においても、待機時では、実施例1で説明をした待機制御によって定着ローラ101の温度制御を行う。
本実施例では、定着ローラ101のハロゲンヒータ111a(第1ハロゲンヒータ111aと称する)として、例えば600W、図7に示すような中央部の発熱量を100%とした時、端部で30%となる発熱分布を持つ中央高ヒータを用いる。一方、ハロゲンヒータ111b(第2ハロゲンヒータ111bと称する)として、例えば600W、図8に示すような端部の発熱量を100%とした時、中央部で30%となる発熱分布を持つ端部高ヒータを用いる。本実施例では、ハロゲンヒータ111aと111bは、それぞれ、トータルの発熱量は同一である。
そして、立上時には早く立上るため、即ちウォームアップタイムを短くするために、又は定着時には用紙に奪われる熱量を迅速に供給するために、第1ヒータ111aと第2ヒータ111bを両方とも温度制御に用いる。
一方、待機時、即ち、待機制御実行時には中央高ヒータである第1ハロゲンヒータ111aを常にOFFして温度制御に使用せず、端部高ヒータである第2ハロゲンヒータ111bのみをON及びOFFして温度制御に用いる。
よって、待機時には、端部の発熱量が多いヒータ111bを用いることによって、定着ローラ101端部の放熱による温度低下を低減できるので、定着時の用紙端部の定着性を向上させることができる。さらに、定着ローラ101端部の温度低下を低減することにより、例えば低温時に待機時の第2温度センサ121bで温度制御した際、中央部の温度上昇を低減できるので、定着ローラ101の長手温度分布を均一化でき、定着時の用紙内の定着性を均一化できる。
従って、待機時において、「第1ヒータ111a消費電力<第2ヒータ111b消費電力」とすることにより、定着ローラ101端部の温度低下を低減して、定着時の用紙端部の定着性向上及び定着性を均一化できる。
定着装置構成によっては、待機時おいて、第1ヒータ111aを常にOFFでは無く、第2ヒータ111b点灯中に、例えば第1ヒータ111aを2秒間ON、2秒間OFFを繰り返して、50%点灯する等としても良い。
〔実施例3〕
図1、本発明に係る実施例3について説明する。
実施例1と同じ構成及び機能の部材については、実施例1と同じ番号を付して説明を省略する。本実施例においても、待機時では、実施例1で説明をした待機制御によって定着ローラ101の温度制御を行う。
本実施例は、待機時において、図1の定着装置100の場合、定着ローラ101と加圧ローラ102とを離間させる構成とすることにより、加圧ローラ102からの熱的影響を受けること無く、より正確に定着ローラ101を温度制御するものである。
待機時において、定着ローラ101と加圧ローラ102とが圧接状態であると、温度センサ121a及び121bの位置がニップNに比較的近い構成の場合、定着ローラ101の温度を正確に制御できないという問題が発生した。これは、例えば定着ローラ101の待機温度が200℃、加圧ローラ102の待機温度が130℃から、ニップNにおいて、定着ローラ101の熱が加圧ローラに奪われてしまうためである。
これは、加圧ローラ102の長手方向温度分布も端部からの放熱により、端部での温度低下が発生する。この状態で、加圧ローラ102が定着ローラ101に圧接すると、ニップNにおいて、加圧ローラ102に定着ローラ101が奪われる熱量は、定着ローラ101の中央部で小さく、端部で大きくなる。よって、定着ローラ101の端部では、放熱に加えて加圧ローラ102に奪われる熱量によって、さらに端部温度が低下する。
従って、待機時の温度制御は、定着ローラ101端部の第2温度センサ121bで待機温度2(例えば190℃)に維持されるので、定着ローラ101中央部の温度が上昇してしまうことになる。その結果、定着ローラ101の長手方向温度分布が均一化できず、定着性を均一化できなくなってしまう。
これは、定着性は用紙P全域で確保できるが、中央部の定着性が高くなり過ぎて、中央部の光沢度が高く、端部での光沢度が低くなってしまう、即ち光沢ムラという問題が発生してしまう。
そこで、待機時において、定着ローラ101と加圧ローラ102とを離間させる。この結果、加圧ローラ102の定着ローラ101への熱的影響を除くことができるので、定着ローラ101を正確に温度制御して、中央部の温度が上昇することも無く、長手方向温度分布を均一化でき、定着性を均一化して、光沢ムラの発生を防止することができる。
又、待機時において、定着ローラ101と加圧ローラ102とを加圧状態で保持したままだと、ニップNにおいて、各ローラの弾性層が変形して、その跡が画像の光沢ムラとなってしまう問題が発生する。しかし、定着ローラ101と加圧ローラ102とを離間する構成により、この問題も防止できる。
〔実施例4〕
図9を参照し、本発明に係る実施例4について説明する。
図9は、本発明の実施例4に係る外部加熱定着装置の一例を示す正面視の模式図である。図9に沿って説明するが、実施例1と同じ構成及び機能の部材については、同じ番号を付して説明を省略する。本実施例においても、待機時では、実施例1で説明をした待機制御によって定着ローラ101の温度制御を行う。
図9の定着装置200で示すように、定着ローラ101を外部加熱部材としての外部加熱ローラ103によって加熱する外部加熱定着装置が提案されている。
外部加熱ローラ103は、定着ローラ101に不図示の加圧手段により、所定の圧力で加圧されて、定着ローラ101とニップN1を形成しており、矢印C方向に所定の速度、例えば500mm/secの周速で、定着ローラ101と従動回転されるようになっている。
外部加熱ローラ103は、例えば外径30mm、厚み3mm、長さ350mmの金属製円筒状芯金上に、トナーとの離型性向上のため、耐熱性離型層としてのフッ素系樹脂が50μmの厚さで被覆されている。本実施例の外部加熱ローラ103は、芯金はアルミニウム製であり、耐熱性離型層はPFAチューブを使用した。
又、外部加熱ローラ103の内部には、加熱源としてのハロゲンヒータ113a及び113bが配置されている。
外部加熱ローラ103の表面温度は、外部加熱ローラ103に接触する温度センサ123a又は123bの検出値に基づいて、ヒータ制御手段130によって温度制御される。この温度制御では、ヒータ制御手段130は、温度センサ123a又は123bの検知温度に応じて、ハロゲンヒータ113aと113bに電力供給する電源131をON/OFFし、外部加熱ローラ103の表面温度を所定の温度(本実施例では220℃)にする。
このような定着装置200においても、待機時において、定着ローラ101と加圧ローラ102とを離間させ、かつ定着ローラ101と外部加熱ローラ103とを離間させる構成により、正確に定着ローラ101を温度制御することができる。これは、待機時に定着ローラ191が外部加熱ローラ103から受ける熱的影響を小さくすることができるからである。
待機時において、定着ローラ101と外部加熱ローラ103とが圧接状態のであると、温度センサ121a及び121bの位置がニップN1に比較的近い構成の場合、定着ローラ101の温度を正確に制御できないという問題が発生した。例えば、定着ローラ101の待機温度が200℃、外部加熱ローラ103の待機温度が220℃であると、ニップN1において、外部加熱ローラ103の熱が定着ローラ101に流入してしまうからである。
これは、例えば、外部加熱ローラ103の長手方向温度分布も端部からの放熱により、端部での温度低下が発生する。この状態で、外部加熱ローラ103が定着ローラ101に圧接すると、ニップN1において、外部加熱ローラ103が定着ローラ101に与える熱量は、定着ローラ101の中央部で大きく、端部で小さくなる。
よって、定着ローラ101温度は、中央部で高く、端部で低下する。
また、待機時の温度制御では、定着ローラ101端部の第2温度センサ121bで待機温度2(例えば190℃)に維持される。そして、定着ローラ101中央部の温度が上昇してしまうことになり、定着ローラ101の長手方向温度分布が均一化できず、定着性を均一化できなくなってしまう。
これは、前述したのと同様に、定着性は用紙P全域で確保できるが、中央部の定着性が高くなり過ぎて、中央部の光沢度が高く、端部での光沢度が低くなってしまう、即ち光沢ムラという問題が発生してしまう。
そこで、待機時において、定着ローラ101と加圧ローラ102とを離間させ、さらに定着ローラ101と外部加熱ローラ103とを離間させることにより、長手方向温度分布を均一化でき、定着性を均一化して、光沢ムラの発生を防止することができる。加圧ローラ102及び外部加熱ローラ103を離間させることで、加圧ローラ102及び外部加熱ローラ103の定着ローラ101への熱的影響が小さくなり、定着ローラ101を正確に温度制御して、中央部の温度が上昇することを防止できるからである。
又、待機時において、定着ローラ101と外部加熱ローラ103とを加圧状態で保持したままだと、ニップN1において、定着ローラ101の弾性層が変形して、その跡が画像の光沢ムラとなってしまう問題が発生する。しかし、定着ローラ101と外部加熱ローラ103とを離間する構成により、この問題も防止できる。
以上、本発明の実施例に関して説明したが、
本発明の実施例1〜実施例4における諸数値や模式図は、実施例の説明を簡略化するための一例であって、定着装置の構成及び設定等に応じて任意に定めることができる。
また、本発明は、実施例で説明した定着装置に限定されるものではなく、各実施例を任意に組み合わせる等、他の形態の定着装置にも適用できる。
本実施例では、温度センサとして、接触式の温度センサを用いて説明したが、非接触式の温度センサを用いても本発明の効果は同様である。
本実施例では、ローラ系で説明したが、ベルト系(定着ベルト、加圧ベルト、外部加熱ベルト)を用いても効果は同様である。
本実施例では、待機時の定着ローラの温度制御に関して説明したが、加圧ローラや外部加熱ローラの温度制御にも同様に適用でき、長手方向の温度を所定温度以上に維持する効果は同様である。