JP2020019862A - ゴム組成物、加硫ゴム及び空気入りタイヤ - Google Patents

ゴム組成物、加硫ゴム及び空気入りタイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】氷上でのブレーキ性能に優れる空気入りタイヤが得られる加硫ゴム及びゴム組成物、並びに氷上でのブレーキ性能に優れる空気入りタイヤを提供する。【解決手段】天然ゴム、ポリブタジエンゴム、及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分と、変性ポリオキシアルキレングリコールと、発泡剤、熱膨張マイクロカプセル、硫酸金属塩、及び多孔性セルロース粒子からなる群より選択される少なくとも1つとを含有し、前記スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの結合スチレン量が20質量%未満であり、前記変性ポリオキシアルキレングリコールの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して8質量部以上であるゴム組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物、加硫ゴム及び空気入りタイヤに関する。
氷雪路面上でタイヤを走行させると、路面とタイヤとの間にできる水膜によりタイヤがスリップし、ブレーキ性能が低下することから、スタッドレスタイヤにおいては、氷雪路面上でもグリップが効き、車両を制動し易いといった氷上性能の向上が求められている。
例えば、特許文献1には、(A)(イ)乳化重合スチレンブタジエン共重合体ゴム20〜55重量%、(ロ)溶液重合スチレンブタジエン共重合体ゴム10〜40重量%及び(ハ)天然ゴム及び/又はイソプレン合成ゴム25〜55重量%からなるゴム成分と、その100重量部当たり、(B)シリカを含有する補強性充填材を少なくとも60重量部含むゴム組成物に、ポリエチレングリコール類を含めることが開示されている。
特開2002−97308号公報
しかしながら、ポリエチレングリコール(PEG)に代表されるポリオキシアルキレングリコールは極性が高いため、無変性のまま用いると、ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムから染み出し、ポリオキシアルキレングリコール配合の効果を持続しにくかった。
本発明は、氷上でのブレーキ性能に優れる空気入りタイヤが得られる加硫ゴム及びゴム組成物、並びに氷上でのブレーキ性能に優れる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
<1> 天然ゴム、ポリブタジエンゴム、及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分と、
変性ポリオキシアルキレングリコールと、
発泡剤、熱膨張マイクロカプセル、硫酸金属塩、及び多孔性セルロース粒子からなる群より選択される少なくとも1つと
を含有し、
前記スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの結合スチレン量が20質量%未満であり、
前記変性ポリオキシアルキレングリコールの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して8質量部以上であるゴム組成物。
<2> 前記ゴム成分中、前記スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの含有量が0質量%を超え30質量%未満である<1>に記載のゴム組成物。
<3> 前記変性ポリオキシアルキレングリコールの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して11質量部以上である<1>又は<2>に記載のゴム組成物。
<4> 前記変性ポリオキシアルキレングリコールが、カルボン酸によって変性されたポリオキシアルキレングリコールである<1>〜<3>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<5> 前記ポリブタジエンゴムおよび前記スチレン−ブタジエン共重合体ゴムが、それぞれ変性されている<1>〜<4>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<6> 更に加硫剤を含有する<1>〜<5>のいずれか1つに記載のゴム組成物。
<7> <6>に記載のゴム組成物を加硫した加硫ゴム。
<8> 空隙を有する<7>に記載の加硫ゴム。
<9> <7>又は<8>に記載の加硫ゴムを用いた空気入りタイヤ。
本発明によれば、氷上でのブレーキ性能に優れる空気入りタイヤが得られる加硫ゴム及びゴム組成物、並びに氷上でのブレーキ性能に優れる空気入りタイヤを提供することができる。
シリカの粒子における内心方向断面概略図(部分拡大図)である。 水銀圧入法に基づく水銀ポロシメータを用いた測定による、シリカの水銀の圧入排出曲線(概略図)であり、縦軸は、水銀の圧入曲線Cでは微分水銀圧入量(−dV/d(log d))を示し、水銀の排出曲線Dでは微分水銀排出量(−dV/d(log d))を示す。Vは、水銀の圧入曲線Cでは水銀圧入量(cc)、水銀の排出曲線Dでは水銀排出量(cc)を意味し、dはシリカの細孔における開口部の直径(nm)を意味し、横軸はこのd(nm)を示す。
以下に、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。
なお、以下の説明において、数値範囲を示す「A〜B」の記載は、端点であるA及びBを含む数値範囲を表し、「A以上B以下」(A<Bの場合)、又は「A以下B以上」(B<Aの場合)を表す。
また、質量部及び質量%は、それぞれ、重量部及び重量%と同義である。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分と、変性ポリオキシアルキレングリコールと、発泡剤、熱膨張マイクロカプセル、硫酸金属塩、及び多孔性セルロース粒子からなる群より選択される少なくとも1つとを含有し、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの結合スチレン量が20質量%未満であり、変性ポリオキシアルキレングリコールの含有量が、ゴム成分100質量部に対して8質量部以上である。
ゴム組成物が上記構成であることで、本発明のゴム組成物から得られる空気入りタイヤは、氷上でのブレーキ性能に優れる。
かかる理由は定かではないが、次の理由によるものと推察される。なお、以下、空気入りタイヤを、単に「タイヤ」と称することがある。
変性ポリオキシアルキレングリコールによりタイヤを親水性にして、氷雪路面上の水とタイヤとの相互作用を持たせ、グリップ力を向上することができると考えられる。特に本発明では、変性したポリオキシアルキレングリコールを用いることにより、タイヤ内にポリオキシアルキレングリコールを留め置くことができ、氷上性能を持続することができると考えられる。また、本発明のゴム組成物は、発泡剤、熱膨張マイクロカプセル、硫酸金属塩、及び多孔性セルロース粒子からなる群より選択される少なくとも1つの空隙導入剤を含むため、ゴム組成物から得られるタイヤは表面に空隙を有し、タイヤと氷雪路面との間に介在する過度の水分を除去することができることから、氷上性能をより向上することができる。また、ゴム成分は、天然ゴム及びポリブタジエンゴムと共に、結合スチレン量が20質量%未満であるスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを含むため、寒冷地、氷雪路面上等でも、加硫ゴム及びタイヤが硬くなりすぎず、優れた氷上性能を発現することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
〔ゴム成分〕
本発明のゴム組成物は、天然ゴム(NR)と、ポリブタジエンゴム(BR)、及び結合スチレン量が20質量%未満であるスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を含むゴム成分を含有する。
SBRの結合スチレン量が20質量%以上であると、ゴム成分が硬くなり、得られるタイヤの氷雪路面上でのグリップ力が低下する。SBRの結合スチレン量が20質量%以上であり、更に、NR及びBRを含むことで、得られるタイヤが低温において柔軟になり易く、タイヤが変形し易くなるため、氷上でのブレーキ性能を向上し易い。
SBRの結合スチレン量は18質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの結合スチレン量(質量%)は、赤外法(モレロ法)又はH-NMRスペクトルの積分比で求めることができる。
なお、SBRとBRはブタジエン由来の構造により相溶し易く、SBR及びBRと、NRとは分離し易いことから、ゴム成分は、NRを含む相(NR相)と、SBR及びBRを含む相(SB相と称することがある)とに相分離し易い。SBRは剛直なスチレン由来の構造を有し、SBRを含むSB相はNR相よりも硬いため、ゴム成分はNR相とSB相とで、柔−硬の相構造をなしていると考えられる。本発明のゴム組成物に含まれるゴム成分がかかる相構造を有することにより、本発明のゴム組成物から得られるタイヤは、低温時の弾性率が低く、ヒステリシスロスが高くなり易い。
ゴム成分は、未変性でもよいし、変性されていてもよい。
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック、シリカ等の充填材を含んでいることが好ましく、特に、SB相にシリカが多く分配されることが好ましい。かかる観点から、SB相を構成するゴム成分であるポリブタジエンゴム及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴムのいずれか一方又は両方が、シリカに親和性のある変性官能基によって変性されていることが好ましい。
[変性官能基]
変性官能基としては、シリカを含む充填材に対して親和性のある官能基であれば特に制限はないが、窒素原子、ケイ素原子、酸素原子、及びスズ原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
例えば、窒素原子を含む変性官能基、ケイ素原子を含む変性官能基、酸素原子を含む変性官能基、スズ原子を含む変性官能基等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、窒素原子を含む変性官能基、ケイ素原子を含む変性官能基および酸素原子を含む変性官能基が、シリカ、カーボンブラック等の充填材と強く相互作用する点で好ましい。
ゴム成分への変性官能基の導入方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、官能基含有重合開始剤を用いる方法、官能基含有モノマーをその他化合物と共重合させる方法、ゴム成分の重合末端に変性剤を反応させる方法等が挙げられる。これらは、1種単独の方法で行ってもよいし、2種以上を合わせて行ってもよい。
−窒素原子を含む変性官能基−
窒素原子を含む変性官能基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(I)で表される置換アミノ基、下記一般式(II)で表される環状アミノ基等が挙げられる。
式中、Rは、1〜12個の炭素原子を有する、アルキル基、シクロアルキル基、又はアラルキル基である。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、又はイソブチル基が好ましく、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が好ましく、アラルキル基としては、3−フェニル−1−プロピル基が好ましい。各々のRは、同種のものであっても異種のものであってもよい。
式中、R基は、3〜16個のメチレン基を有する、アルキレン基、置換アルキレン基、オキシ−アルキレン基又はN−アルキルアミノ−アルキレン基である。ここで、置換アルキレン基は、一置換から八置換されたアルキレン基を含み、置換基の例としては、1〜12個の炭素原子を有する、直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基が挙げられる。ここで、アルキレン基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、及びドデカメチレン基が好ましく、置換アルキレン基としては、ヘキサデカメチレン基が好ましく、オキシアルキレン基としては、オキシジエチレン基が好ましく、N−アルキルアミノ−アルキレン基としては、N−アルキルアザジエチレン基が好ましい。
一般式(II)で表される環状アミノ基の例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−(2−エチルヘキシル)ピロリジン、3−(2−プロピル)ピロリジン、3,5−ビス(2−エチルヘキシル)ピペリジン、4−フェニルピペリジン、7−デシル−1−アザシクロトリデカン、3,3−ジメチル−1−アザシクロテトラデカン、4−ドデシル−1−アザシクロオクタン、4−(2−フェニルブチル)−1−アザシクロオクタン、3−エチル−5−シクロヘキシル−1−アザシクロヘプタン、4−ヘキシル−1−アザシクロヘプタン、9−イソアミル−1−アザシクロヘプタデカン、2−メチル−1−アザシクロヘプタデセ−9−エン、3−イソブチル−1−アザシクロドデカン、2−メチル−7−t−ブチル−1−アザシクロドデカン、5−ノニル−1−アザシクロドデカン、8−(4’−メチルフェニル)−5−ペンチル−3−アザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、1−ブチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン、8−エチル−3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン、1−プロピル−3−アザビシクロ[3.2.2]ノナン、3−(t−ブチル)−7−アザビシクロ[4.3.0]ノナン、1,5,5−トリメチル−3−アザビシクロ[4.4.0]デカン等から、窒素原子に結合した水素原子を1つ取り除いた基が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−ケイ素原子を含む変性官能基−
ケイ素原子を含む変性官能基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(III)で表されるカップリング剤を用いて形成される、ケイ素−炭素結合を有する変性官能基等が挙げられる。
SB相を構成するゴム成分と、ケイ素とを、ケイ素−炭素結合を介して化学的に結合させることにより、SB相と充填材との親和性を高め、SB相により多くの充填材を分配することができる点で好ましい。
一般的に、ケイ素は、単にゴム組成物中に混合された場合、ゴム成分との親和性の低さに起因して、ゴム組成物の補強性等は低いが、SB相を構成するゴム成分とケイ素とを、ケイ素−炭素結合を介して化学的に結合させることにより、SB相を構成するゴム成分と充填材との親和性を高め、タイヤのヒステリシスロスをより高めることができる。
式中、Zはケイ素であり、Rはそれぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、3〜20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜20個の炭素原子を有するアリール基、及び7〜20個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、Rはそれぞれ独立して塩素又は臭素であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、且つa+b=4である。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基、及び2−エチルヘキシルが好ましく、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が好ましく、アリール基としては、フェニル基が好ましく、アラルキル基としては、ネオフィル基が好ましい。各々のRは、同種ものであっても異種のものであってもよい。各々のRは、同種ものであっても異種のものであってもよい。
変性ゴムのシリカとの相互作用を高めることを目的とした場合には、以下の一般式(III-1)で示される化合物及び一般式(III-2)で示される化合物の少なくとも一種を有する変性剤が挙げられる。
一般(III-1)式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基を示し、aは0〜2の整数であり、ORが複数ある場合、複数のORは互いに同一でも異なっていても良く、また分子中には活性プロトンは含まれない。
ここで、一般式(III-1)で表される化合物(アルコキシシラン化合物)の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン等を挙げることができるが、これらの中で、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン及びジメチルジエトキシシランが好適である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせても用いてもよい。
一般式(III-2)中、Aはエポキシ、グリシジルオキシ、イソシアネート、イミン、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、環状三級アミン、非環状三級アミン、ピリジン、シラザン及ジスルフィドからなる群より選択される少なくとも一種の官能基を有する一価の基であり、Rは単結合又は二価の炭化水素基であり、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、bは0〜2の整数であり、ORが複数ある場合、複数のORは互いに同一であっても異なっていても良く、また分子中には活性プロトンは含まれない。
一般式(III-2)で表される化合物の具体例としては、エポキシ基含有アルコキシシラン化合物、例えば、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、(2−グリシジルオキシエチル)メチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン等を挙げることができる。これらの中で、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを好適に用いることができる。
ケイ素を用いたカップリング剤の例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロカルビルオキシシラン化合物、SiCl(四塩化ケイ素)、(R)SiCl、(RSiCl、(RSiCl等が挙げられる。なお、Rは、各々独立に1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、3〜20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜20個の炭素原子を有するアリール基、又は7〜20個の炭素原子を有するアラルキル基を表す。
これらの中でも、ヒドロカルビルオキシシラン化合物は、シリカに対して高い親和性を有する観点から好ましい。
(ヒドロカルビルオキシシラン化合物)
ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物を挙げることができる。
式中、n1+n2+n3+n4=4(但し、n2は1〜4の整数であり、n1、n3及びn4は0〜3の整数である)であり、Aは、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽
和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基(イソシアナート基又はチオイソシアナート基を示す。以下、同様)、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸エステルの金属塩、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化合物残基、並びに加水分解性基を有する第一もしくは第二アミノ基又はメルカプト基の中から選択される少なくとも1種の官能基であり、n4が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、Aは、Siと結合して環状構造を形成する二価の基であっても良く、R21は、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、n1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R23は、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基又はハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であり、n3が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R22は、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、いずれも窒素原子及び/又はケイ素原子を含有していてもよく、n2が2以上の場合には、互いに同一もしくは異なっていてもよく、或いは、一緒になって環を形成しており、R24は、炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、n4が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。加水分解性基を有する第一もしくは第二アミノ基又は加水分解性基を有するメルカプト基における加水分解性基として、トリメチルシリル基又はtert−ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。なお、本明細書において、「炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基」は、「炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基もしくは炭素数3〜20の一価の脂環式炭化水素基」を意味する。二価の炭化水素基の場合も同様である。
さらに、一般式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、下記一般式(V)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物であることがより好ましい。
式中、p1+p2+p3=2(但し、p2は1〜2の整数であり、p1及びp3は0〜1の整数である)であり、Aは、NRa(Raは、一価の炭化水素基、加水分解性基又は含窒素有機基である。加水分解性基として、トリメチルシリル基又はtert−ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。)、或いは、硫黄であり、R25は、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、R27は、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基又はハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であり、R26は、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基又は含窒素有機基であり、いずれも窒素原子及び/又はケイ素原子を含有していてもよく、p2が2の場合には、互いに同一もしくは異なり、或いは、一緒になって環を形成しており、R28は、炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基である。
さらに、一般式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、下記一般式(VI)又は(VII)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物であることがより好ましい。
式中、q1+q2=3(但し、q1は0〜2の整数であり、q2は1〜3の整数である)であり、R31は炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R32及びR33はそれぞれ独立して加水分解性基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、R34は炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、q1が2の場合には同一でも異なっていてもよく、R35は炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、q2が2以上の場合には同一でも異なってもよい。
式中、r1+r2=3(但し、r1は1〜3の整数であり、r2は0〜2の整数である)であり、R36は炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R37はジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルシリル(メチル)アミノメチル基、メチルシリル(メチル)アミノエチル基、メチルシリル(エチル)アミノメチル基、メチルシリル(エチル)アミノエチル基、ジメチルシリルアミノメチル基、ジメチルシリルアミノエチル基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、r1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R38は炭素数1〜20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、r2が2の場合には同一でも異なっていてもよい。
また、一般式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物が、下記一般式(VIII)又は(IX)で表される2つ以上の窒素原子を有することが好ましい。
式中、TMSはトリメチルシリル基であり、R40はトリメチルシリル基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、R41は炭素数1〜20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、R42は炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基である。
式中、TMSはトリメチルシリル基であり、R43及びR44はそれぞれ独立して炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R45は炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、複数のR45は、同一でも異なっていてもよい。
また、一般式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物が、下記一般式(X)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物であることも好ましい。
式中、r1+r2=3(但し、r1は0〜2の整数であり、r2は1〜3の整数である。)であり、TMSはトリメチルシリル基であり、R46は炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R47及びR48はそれぞれ独立して炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基である。複数のR47又はR48は、同一でも異なっていてもよい。
さらに、一般式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物が、下記一般式(XI)で表される化合物であることが好ましい。
式中、Yはハロゲン原子であり、R49は炭素数1〜20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R50及びR51はそれぞれ独立して加水分解性基又は炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であるか、或いは、R50及びR51は結合して二価の有機基を形成しており、R52及びR53はそれぞれ独立してハロゲン原子、ヒドロカルビルオキシ基、炭素数1〜20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基である。R50及びR51としては、加水分解性基であることが好ましく、加水分解性基として、トリメチルシリル基又はtert−ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。
以上の一般式(IV)〜(XI)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、変性ゴム成分がアニオン重合により製造される場合に用いられることが好ましい。
また、一般式(IV)〜(XI)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、アルコキシシラン化合物であることが好ましい。
アニオン重合によってジエン系重合体を変性する場合に好適な変性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3,4−ビス(トリメチルシリルオキシ)−1−ビニルベンゼン、3,4−ビス(トリメチルシリルオキシ)ベンズアルデヒド、3,4−ビス(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ベンズアルデヒド、2−シアノピリジン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1―メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ヒドロカルビルオキシシラン化合物は、アニオン重合における重合開始剤として用いられるリチウムアミド化合物のアミド部分であることが好ましい。
リチウムアミド化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピベラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。例えば、リチウムヘキサメチレンイミドのアミド部分となる変性剤はヘキサメチレンイミンであり、リチウムピロリジドのアミド部分となる変性剤はピロリジンであり、リチウムピぺリジドのアミド部分となる変性剤はピぺリジンである。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−酸素原子を含む変性官能基−
酸素原子を含む変性官能基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブドキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;エポキシ基、テトラヒドロフラニル基等のアルキレンオキシド基;トリメチルシリロキシ基、トリエチルシリロキシ基、t−ブチルジメチルシリロキシ基等のトリアルキルシリロキシ基等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
SB相により多くの充填材を含ませる観点から、ポリブタジエンゴム及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴムは、それぞれシラン変性されていることが好ましい。具体的には、ポリブタジエンゴム及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴムが、それぞれ、既述の一般式(IV)〜(XI)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物で変性されたゴム成分であることが好ましい。
ゴム成分は、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、及び結合スチレン量が20質量%未満であるスチレン−ブタジエン共重合体ゴム以外のゴム(他のゴムと称する)を含有していてもよい。
他の合成ゴムとしては、合成イソプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が例示される。これらの合成ジエン系ゴムは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム成分は、本発明の効果を損なわない限度において、結合スチレン量が20質量%以上であるスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを含んでもよいが、ゴム成分中の結合スチレン量が20質量%以上であるスチレン−ブタジエン共重合体ゴムの含有量は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが更に好ましい。
具体的には、天然ゴムの質量nが40〜80質量%であり、ポリブタジエンゴムの質量bが5〜40質量%であり、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの質量sが3〜30質量%であることが好ましい。なお、天然ゴム、ポリブタジエンゴム及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴムの合計が100質量%を超えることはない。
ゴム成分中の天然ゴム(NR)の質量nは、30質量%以上であることが好ましい。ゴム成分中の天然ゴムの質量nが30質量%以上であることで、得られるタイヤが低温において硬くなりにくく、タイヤが変形し易くなるため、氷上でのブレーキ性能を向上し易い。また、低温における低弾性率と、低温における高ヒステリシスロスを両立し易い。
ゴム成分中の天然ゴム(NR)の質量nは、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。
ゴム成分中のスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)の含有量は、0質量%を超え30質量%未満であることが好ましい。
ゴム成分中のSBRの含有量を30質量%未満に抑えることで、ゴム成分が柔軟になり易く、氷上でのブレーキ性能を向上し易い。
ゴム成分中のSBRの含有量sは、5〜27質量%であることがより好ましく、10〜25質量%であることが更に好ましい。
タイヤの氷上でのブレーキ性能を向上する観点から、天然ゴム(NR)の質量n、ポリブタジエンゴム(BR)の質量b、及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)の質量sは、s≦b≦n(ただし、n=bのとき、s<b)の関係にあることが好ましい。
なお、質量n、質量b、質量sの単位は「質量%」である。
タイヤの氷上ブレーキ性能をより向上する観点から、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの質量sに対するポリブタジエンゴムの質量bの割合(b/s)は1.0〜2.0であることが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの量sがポリブタジエンゴムの量bと同等か、より少ないことで、SB相の弾性率が高くなりすぎることを抑制し、低温環境下におけるタイヤの弾性率を下げ易い。
〔変性ポリオキシアルキレングリコール〕
本発明のゴム組成物は、変性ポリオキシアルキレングリコールを、ゴム成分100質量部に対し8質量部以上含有する。
ゴム組成物が、変性ポリオキシアルキレングリコールをゴム成分100質量部に対し8質量部以上含有することで、ゴム組成物から得られる加硫ゴム及びタイヤの各表面が水と相互作用し易くなり、タイヤは氷雪路面上のブレーキ性能に優れる。ゴム組成物中の変性ポリオキシアルキレングリコールの含有量が、ゴム成分100質量部に対し8質量部未満であると、水との相互作用が弱く、氷上性能が得られない。
また、変性ポリオキシアルキレングリコールは、未変性のポリオキシアルキレングリコールに比べ、加硫ゴム及びタイヤから染み出しにくく、加硫ゴム内及びタイヤ内に存在し続け易いことから、水との相互作用が持続し易いと考えられる。
変性ポリオキシアルキレングリコールは、(a)未変性のポリオキシアルキレングリコールを(b)カルボン酸で変性させた変性ポリオキシアルキレングリコールであることが好ましい。
変性ポリオキシアルキレングリコールの重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、600〜6,000であることが好ましく、600〜2,500であることがより好ましい。
(a)未変性のポリオキシアルキレングリコールとしては、分子量200〜5,000で、アルキレン基の炭素数が2〜3のポリオキシアルキレングリコールが好ましい。
具体的には、ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール;エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダム又はブロック共重合体等が挙げられる。
これらポリオキシアルキレングリコールの分子量は、タイヤの氷上性能を向上する観点から、200〜5,000であることが好ましく、500〜2,000であることがより好ましい。
(b)カルボン酸としては、酢酸、脂肪酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。中でも、加硫ゴム及びタイヤ中に変性ポリオキシアルキレングリコールを永く留め置き、タイヤの氷上性能を持続する観点から、脂肪酸が好ましい。
脂肪酸としては、(b1)炭素数14〜22の不飽和脂肪酸、(b2)炭素数2〜24の飽和脂肪酸、(b3)炭素数2〜10のジカルボン酸、(b4)ポリマー酸等が挙げられる。
(b1)炭素数14〜22の不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
(b2)炭素数2〜24の飽和脂肪酸としては、例えば、酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸等が挙げられる。
(b3)炭素数2〜10のジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。
(b4)ポリマー酸としては、例えば、(b1)炭素数14〜22の不飽和脂肪酸を2量体以上に多量化したものが挙げられる。
以上の中でも、(b2)炭素数2〜24の飽和脂肪酸が好ましい。
変性ポリオキシアルキレングリコールは、一般公知のエステル化方法により、(a)未変性のポリオキシアルキレングリコールと(b)脂肪酸とをエステル化して得られる。変性ポリオキシアルキレングリコールは、モノエステルであってもよいし、両末端が変性されたジエステルであってもよいし、ポリオキシアルキレングリコールの側鎖もエステル化された
モノエステルとしては、ポリオキシアルキレングリコールの片末端のOH基のみ、又は側鎖の1つのOH基が変性された形態が挙げられる。
ジエステルとしては、ポリオキシアルキレングリコールの両末端のOH基のみ;末端OH基のいずれか一方と側鎖の1つのOH基;又は側鎖の2つのOH基が変性された形態が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリオキシアルキレングリコールの末端のOH基1つ若しくは2つと側鎖のOH基の合計3つ以上のOH基;又は側鎖の3つ以上のOH基が変性された形態が挙げられる。
中でも、ジエステル又はポリエステルが好ましく、より具体的には、例えば、次のような(1)ジエステル、(2)ポリエステル等が挙げられる。
(1)(a1)分子量200〜5,000で、アルキレン基の炭素数が2〜3のポリオキシアルキレングリコールと、(b1)炭素数14〜22の不飽和脂肪酸及び(b2)炭素数2〜24の飽和脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種の脂肪酸とを反応させて得られる重量平均分子量が600〜6,000のジエステル;
(2)(a1)分子量200〜5,000で、アルキレン基の炭素数が2〜3のポリオキシアルキレングリコールと、(b1)炭素数14〜22の不飽和脂肪酸、(b2)炭素数2〜24の飽和脂肪酸、(b3)炭素数2〜10のジカルボン酸、及び(b4)ポリマー酸からなる群より選択される少なくとも1種の脂肪酸とを反応させて得られる重量平均分子量が600〜6,000のポリエステル
本発明において、変性ポリオキシアルキレングリコールは、タイヤの氷上性能を向上する観点から、上記(1)ジエステルが好ましく、更に、(a1)分子量200〜5,000で、アルキレン基の炭素数が2〜3のポリオキシアルキレングリコールと、(b2)炭素数2〜24の飽和脂肪酸とを反応させて得られる両末端変性の重量平均分子量が600〜6,000のジエステルが好ましい。
(a1)分子量200〜5,000で、アルキレン基の炭素数が2〜3のポリオキシアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールが好ましい。(b2)炭素数2〜24の飽和脂肪酸は、炭素数が3〜17が好ましく、5〜10がより好ましく、カプリル酸が更に好ましい。
ゴム組成物中の変性ポリオキシアルキレングリコールの含有量は、ゴム成分100質量部に対し8質量部以上であれば、特に制限されないが、タイヤの氷上性能を向上する観点から、11質量部以上であることが好ましく、また、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
〔充填材〕
本発明のゴム組成物は、充填材を含有することが好ましい。
充填材としては、例えば、ゴム組成物を補強する補強性充填材が用いられる。具体的には、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の白色充填材;カーボンブラック等が挙げられる。充填材として、シリカ又はカーボンブラックのいずれか一方のみを単独で用いてもよいし、シリカ及びカーボンブラックの両方を用いてもよい。
また、ゴム成分は、ポリブタジエンゴム(BR)及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を含むSB相にシリカが多く分配されることが好ましい。具体的には、全シリカ含有量の50質量%以上が、SB相に含まれることが好ましい。
SB相に含まれるシリカの量が、全シリカの50質量%以上であることで、NR相に過半数以上のシリカが分配されにくく、NR相を柔軟にすることができるため、タイヤの低温時の弾性率を下げることができる。
SB相に含まれるシリカの量は、50質量%を超えることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。ゴム組成物中の充填材分配率は、加硫ゴム中の充填材分配率に近似し、ゴム組成物を加硫した加硫ゴムを測定試料として、充填材分配率を測定することができる。
SB相に含まれるシリカを含む充填材の量(充填材分配率)は、次の方法により測定することができる。
例えば、試料の上面に対し角度38°をなす方向に試料を切削した後、切削により形成された該試料の平滑面を、該平滑面に対し垂直な方向から、走査型電子顕微鏡(SEM)〔例えば、Carl Zeiss社製、商品名「Ultra55」〕により、集束イオンビームを用いて、加速電圧1.8〜2.2Vで撮影する。得られたSEM画像を画像処理し、解析することで、充填材分配率を測定することができる。解析手法はいくつかあるが、例えば本発明では下記のような解析法を適用することができる。
本発明のNR相とSB相のように、ゴム成分が2相に分かれた系を測定する場合には、得られたSEM画像をヒストグラムにより2種のゴム成分と充填材部分に3値化像に変換して得られた3値化像に基づき、画像解析することが手段の一つとして考えられる。その場合、2種の各ゴム成分の相に含まれる充填材周囲長を求め、測定面積内の充填材総量から一方のゴム成分の相に存在する充填材の割合を算出する。充填材が2種のゴム成分の境界面にある場合は、各ゴム成分と充填材の3つが接している2点を結び、充填材の周囲長を分割する。なお、20ピクセル以下の粒子は、ノイズと見做しカウントしない。また、充填材の存在率測定法や画像解析方法は上記内容に限定されない。
(カーボンブラック)
カーボンブラックは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。カーボンブラックは、例えば、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFグレードのものが好ましく、HAF、ISAF、SAFグレードのものがより好ましい。
(シリカ)
シリカの種類は特に限定されず、一般グレードのシリカ、シランカップリング剤などで表面処理を施した特殊シリカなど、用途に応じて使用することができる。
シリカは、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)比表面積、好ましくは150m/g以上、より好ましくは180m/g以上、更に好ましくは190mg以上、より一層好ましくは195m/g以上、特に好ましくは197m/g以上である。また、シリカのCTAB比表面積は、好ましくは600m/g以下、より好ましくは300m/g以下、特に好ましくは250m/g以下である。シリカのCTAB比表面積が180m/g以上の場合、耐摩耗性が更に向上し、また、シリカのCTAB比表面積が600m/g以下の場合、転がり抵抗が小さくなる。
シリカとしては、特に制限はなく、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、湿式シリカが好ましい。これらシリカは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明のゴム組成物は、シリカとして、CTAB比表面積(m/g)〔式(Y)中では、単に「CTAB」と表示〕とインクボトル状細孔指数(IB)とが、下記式(Y):
IB≦−0.36×CTAB+86.8 (Y)
の関係を満たすシリカを使用してもよい。
ここで、CTAB比表面積(m/g)とは、ASTM D3765−92に準拠して測定された値を意味する。ただし、ASTM D3765−92はカーボンブラックのCTABを測定する方法であるため、本発明では、標準品であるIRB#3(83.0m/g)の代わりに、別途セチルトリメチルアンモニウムブロミド(以下、CE−TRABと略記する)標準液を調製し、これによってシリカOT(ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)溶液の標定を行い、上記シリカ表面に対するCE−TRAB1分子当たりの吸着断面積を0.35nmとして、CE−TRABの吸着量から算出される比表面積(m/g)をCTABの値とする。これは、カーボンブラックとシリカとでは表面が異なるので、同一表面積でもCE−TRABの吸着量に違いがあると考えられるためである。
また、インクボトル状細孔指数(IB)とは、直径1.2×10nm〜6nmの範囲にある開口部を外表面に具えた細孔を有するシリカに対し、水銀圧入法に基づく水銀ポロシメータを用いた測定において、圧力を1PSIから32000PSIまで上昇させた際における水銀圧入量の最大値を示す開口部の直径(M1)(nm)、及び圧力を32000PSIから1PSIまで下降させた際における水銀排出量の最大値を示す開口部の直径(M2)(nm)により、下記式(Z):
IB=M2−M1 ・・・(Z)
で求められる値を意味する。水銀圧入法に基づく水銀ポロシメータを用いた測定は、従来より細孔の形態を評価するのに多く採用される電子顕微鏡を用いた測定よりも簡便であり、かつ定量性に優れるので、有用な方法である。
一般に、シリカの粒子は、その外表面に開口部を具えた凹状を呈した細孔を多数有している。図1に、シリカの粒子における内心方向断面でのこれら細孔の形状を模した概略図を示す。粒子における内心方向断面でかかる凹状を呈した細孔は、様々な形状を呈しており、粒子の外表面における開口部の直径Maと粒子内部における細孔径(内径)Raとが略同一の形状、すなわち粒子の内心方向断面において略円筒状を呈する細孔Aもあれば、粒子内部における細孔径(内径)Rbよりも粒子の外表面における開口部の直径Mbの方が狭小である形状、すなわち粒子の内心方向断面においてインクボトル状を呈する細孔Bもある。しかしながら、粒子の内心方向断面においてインクボトル状を呈する細孔Bであると、粒子の外表面から内部へとゴム分子鎖が侵入しにくいため、シリカをゴム成分に配合した際にゴム分子鎖がシリカを充分に吸着することができない。したがって、かかるインクボトル状を呈する細孔B数を低減し、粒子の内心方向断面において略円筒状を呈する細孔A数を増大させれば、ゴム分子鎖の侵入を効率的に促進することができ、tanδを増大させることなく、充分な補強性を発揮して、タイヤの操縦安定性の向上に寄与することが可能となる。
上記観点から、本発明では、ゴム成分に配合するシリカに関し、粒子の内心方向断面においてインクボトル状を呈する細孔B数を低減すべく、上記インクボトル状細孔指数(IB)を規定する。上述のように、水銀圧入法に基づく水銀ポロシメータを用いた測定において圧力を上昇させた際、略円筒状を呈する細孔Aは外表面の開口部が開放的であるために細孔内部に水銀が圧入されやすいが、インクボトル状を呈する細孔Bは外表面の開口部が閉鎖的であるために細孔内部に水銀が圧入されにくい。一方、圧力を下降させた際には、同様の理由により、略円筒状を呈する細孔Aは細孔内部から細孔外部へ水銀が排出されやすいが、インクボトル状を呈する細孔Bは細孔内部から細孔外部へ水銀がほとんど排出されない。
したがって、図2に示すように、水銀圧入法に基づく水銀ポロシメータを用いた測定では、水銀の圧入排出曲線C−Dにヒステリシスが生じる。すなわち、比較的低圧力下では略円筒状を呈する細孔A内に徐々に水銀が圧入されるが、ある圧力に達した時点で、それまで水銀が侵入しにくかったインクボトル状を呈する細孔Bを含む、略円筒状を呈する細孔以外の細孔内にも一気に水銀が圧入され、急激に圧入量が増大して、縦軸を微分水銀圧入量(−dV/d(log d))、横軸をシリカの細孔における開口部の直径d(nm)とした場合に水銀の圧入曲線Cを描くこととなる。一方、圧力を充分に上昇させた後に圧力を下降させていくと、比較的高圧力下では水銀が排出されにくい状態が継続するものの、ある圧力に達した時点で、細孔内に圧入されていた水銀が細孔外に一気に排出され、急激に排出量が増大して、縦軸を微分水銀排出量(−dV/d(log d))、横軸をシリカの細孔における開口部の直径M(nm)とした場合に水銀の排出曲線Dを描くこととなる。一旦細孔内に圧入された水銀は、圧力の下降時には細孔外に排出されにくい傾向にあるため、圧力の下降時では上昇時における圧入量の増大を示す直径(M1)の位置よりも大きい値を示す直径(M2)の位置で排出量の増大が見られ、これらの直径の差(M2−M1)が図2のIBに相当する。特にインクボトル状を呈する細孔Bにおいては、圧入された水銀が排出されにくい傾向が顕著であり、圧力上昇時には細孔B内に水銀が圧入されるものの、圧力下降時には細孔B外に水銀がほとんど排出されない。
こうした測定方法を採用し、細孔の性質に起因して描かれる水銀圧入排出曲線C−Dを活用して、上記式(Z)に従い、水銀圧入法に基づく水銀ポロシメータを用いた測定において圧力を1PSIから32000PSIまで上昇させた際に水銀圧入量の最大値を示す開口部の直径(M1)(nm)と、圧力を32000PSIから1PSIまで下降させた際における水銀排出量の最大値を示す開口部の直径(M2)(nm)との差IBを求めれば、かかる値が見かけ上はこれらの直径の差(長さ:nm)を示すものの、実質的にはシリカに存在するインクボトル状を呈する細孔Bの存在割合を示す細孔指数を意味することとなる。すなわち、充分に狭小な開口部を有するインクボトル状を呈する細孔Bの占める存在割合が小さいほど、水銀圧入量と水銀排出量とがほぼ同量に近づき、水銀圧入量の最大値を示す開口部の直径(M1)と水銀排出量の最大値を示す開口部の直径(M2)との差が短縮してIB値が小さくなる。一方、インクボトル状を呈する細孔Bの占める存在割合が大きいほど、水銀圧入量よりも水銀排出量が減少し、水銀圧入量の最大値を示す開口部の直径(M1)と水銀排出量の最大値を示す開口部の直径(M2)との差が拡大してIB値が大きくなる。
こうしたIBは、上記CTABの値によっても変動し得る性質を有しており、CTABが増大するにつれ、IB値が低下する傾向にある。したがって、本発明で用いるシリカは、上記式(Y)〔IB≦−0.36×CTAB+86.8〕を満たすのが好ましい。IB及びCTABが式(Y)を満たすシリカであると、狭小な開口部を有するインクボトル状を呈する細孔B数が有効に低減され、略円筒状を呈する細孔Aが占める存在割合が増大するため、ゴム分子鎖を充分に侵入させて吸着させることができ、充分な補強性を発揮して、タイヤの転がり抵抗を増大させることなく、操縦安定性の向上を図ることが可能となる。
式(Y)を満たすシリカは、CTAB比表面積が、好ましくは150m/g以上であり、より好ましくは150〜300m/g、より一層好ましくは150〜250m/g、特に好ましくは150〜220m/gである。CTAB比表面積が150m/g以上であれば、ゴム組成物の貯蔵弾性率が更に向上し、該ゴム組成物を適用したタイヤの操縦安定性を更に向上させることができる。また、CTAB比表面積が300m/g以下であれば、シリカをゴム成分中で良好に分散させることができ、ゴム組成物の加工性が向上する。
本発明のゴム組成物は、更に、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、ゴム工業で通常使用されているシランカップリング剤を用いることができる。
〔発泡剤、熱膨張マイクロカプセル、硫酸金属塩、多孔性セルロース粒子〕
本発明のゴム組成物は、発泡剤、熱膨張マイクロカプセル、硫酸金属塩、及び多孔性セルロース粒子からなる群より選択される少なくとも1つの空隙導入剤を含有する。
ゴム組成物が発泡剤を含有することにより、ゴム組成物の加硫中に、発泡剤によって加硫ゴムに気泡が生じ、加硫ゴムを発泡ゴムとすることができる。ゴム組成物が熱膨張マイクロカプセルを含有する場合も、ゴム組成物の加硫中に、熱膨張マイクロカプセルによって加硫ゴムに気泡が生じ、加硫ゴムを発泡ゴムとすることができる。
発泡ゴムは柔軟性を有するため、加硫ゴムを用いたタイヤ表面は、氷路面に密着し易くなる。また、気泡により加硫ゴム表面及びタイヤ表面に気泡由来の穴(発泡孔)が生じ、水を排水する水路として機能する。
硫酸金属塩は水と接触することで、加硫ゴムを溶かす性質を有する。従って、ゴム組成物が硫酸金属塩を含有すると、ゴム組成物を加硫して得られるタイヤ表面に硫酸金属塩が露出している場合、氷雪路面上の水によりタイヤに空隙が生じ、タイヤと路面との間の水を除去することができる。
ゴム組成物が多孔性セルロース粒子を含有すると、ゴム組成物を加硫して得られるタイヤ表面に多孔性セルロース粒子が露出している場合、氷雪路面上の水が多孔性セルロース粒子に吸収され、タイヤと路面との間の水を除去することができる。また、多糖類であるセルロースの存在により、タイヤと氷雪路面上の水との相互作用が生じるため、変性ポリオキシアルキレングリコールによるタイヤと水との相互作用をより高めることもできる。
以上のように、発泡剤、熱膨張マイクロカプセル、硫酸金属塩、及び多孔性セルロース粒子は、ゴム組成物に含有されることで、得られる加硫ゴム及びタイヤは、表面に空隙を有する。かかる空隙の存在により、タイヤと氷雪路面上の間に発生する水を除去して、タイヤのグリップ力を高めることができる。また、発泡剤又は熱膨張マイクロカプセルにより気泡が生じたタイヤは、氷雪路面に密着し易く、グリップ力を高めることができる。
ここで、空隙は、加硫ゴム中に生じた閉じた系としての空間である気泡と、開いた系としての空間である空孔とを含み、空孔は貫通していてもよいし、一部が閉じていてもよい。
発泡剤としては、具体的には、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。なかでも、製造加工性の観点から、アゾジカルボンアミド(ADCA)、及びジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)が好ましい。これら発泡剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、発泡剤のゴム組成物中の含有量は、特に限定されるものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。
ゴム組成物は、更に、発泡助剤として尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛、亜鉛華等を用いてもよい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。発泡助剤を併用することにより、発泡反応を促進して反応の完結度を高め、経時的に不要な劣化を抑制することができる。
熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂で形成された殻材中に、熱膨張性物質を内包した構成からなる。熱膨張性マイクロカプセルの殻材はニトリル系重合体により形成することができる。
またマイクロカプセルの殻材中に内包する熱膨張性物質は、熱によって気化または膨張する特性をもち、例えば、イソアルカン、ノルマルアルカン等の炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種類が例示される。イソアルカンとしては、イソブタン、イソペンタン、2−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン等を挙げることができ、ノルマルアルカンとしては、n−ブタン、n−プロパン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等を挙げることができる。これらの炭化水素は、それぞれ単独で使用しても複数を組み合わせて使用してもよい。熱膨張性物質の好ましい形態としては、常温で液体の炭化水素に、常温で気体の炭化水素を溶解させたものがよい。このような炭化水素の混合物を使用することにより、未加硫タイヤの加硫成形温度域(150℃〜190℃)において、低温領域から高温領域にかけて十分な膨張力を得ることができる。
このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えばスウェーデン国エクスパンセル社製の商品名「EXPANCEL 091DU−80」または「EXPANCEL 092DU−120」等、或いは松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアー F−85D」または「マツモトマイクロスフェアー F−100D」等を使用することができる。
また、熱膨張マイクロカプセルのゴム組成物中の含有量は、特に限定されるものではないが、ゴム成分100質量部に対して1〜30質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。
硫酸金属塩としては、具体的には、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。これら硫酸金属塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、硫酸金属塩のゴム組成物中の含有量は、特に限定されるものではないが、ゴム成分100質量部に対して1〜40質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましい。
多孔性セルロース粒子は多孔質構造により空隙を有するセルロース粒子である。多孔性セルロース粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、耐摩耗性の観点から、平均粒径が1000μm以下のものが好ましい。これら多孔性セルロース粒子は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
このような多孔性セルロース粒子としては、レンゴー株式会社製の商品名「ビスコパール」等を使用することができる。
また、多孔性セルロース粒子のゴム組成物中の含有量は、特に限定されるものではないが、ゴム成分100質量部に対して1〜40質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましい。
発泡剤を含有するゴム組成物、及び熱膨張マイクロカプセルを含有するゴム組成物を加硫した後に得られる加硫ゴムにおいて、その発泡率は、通常1〜50%、好ましくは5〜40%である。発泡剤を配合した場合、発泡率が50%以下であることで、ゴム表面の空隙も大きくなり過ぎず、充分な接地面積を確保でき、排水溝として有効に機能する気泡の形成を確保しつつ、気泡の量を適度に保持できるので、耐久性を損なうおそれもない。
ここで、加硫ゴムの発泡率とは、平均発泡率Vsを意味し、具体的には次式(1)により算出される値を意味する。
Vs=(ρ/ρ−1)×100(%) (1)
式(1)中、ρは加硫ゴム(発泡ゴム)の密度(g/cm)を示し、ρは加硫ゴム(発泡ゴム)における固相部の密度(g/cm)を示す。なお、加硫ゴムの密度及び加硫ゴムの固相部の密度は、エタノール中の質量と空気中の質量を測定し、これから算出される。また、発泡率は、発泡剤や発泡助剤の種類、量等により適宜変化させることができる。
〔親水性短繊維〕
本発明のゴム組成物は、親水性短繊維を含有していてもよい。
ゴム組成物が親水性短繊維を含有すると、ゴム組成物の加硫後、タイヤ(特にトレッド)中に長尺状の気泡が存在し、タイヤの摩耗によって長尺状の気泡がタイヤ表面に露出して空洞が形成され、効率的な排水を行う排水路として機能し易い。ここで、空洞は、穴状、窪み状及び溝状のいずれの形状であってもよい。
更に、短繊維が親水性であることで、タイヤ表面にできる短繊維由来の空洞が吸水し易くなる。
ここで、親水性短繊維とは、水に対する接触角が5〜80度である短繊維をいう。
親水性短繊維の水に対する接触角は、親水性短繊維を平滑な板状に成形した試験片を用意し、協和界面化学(株)製の自動接触角計DM−301を用い、25℃、相対湿度55%条件下で、試験片の表面に水を滴下して、その直後に真横から観察したときに、試験片表面が成す直線と水滴表面の接線とが成す角度を測定することにより求めることができる。
親水性短繊維としては、分子内に親水性基を有する樹脂(親水性樹脂と称することがある)を用いることができ、具体的には、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選択される少なくとも1つを含む樹脂であることが好ましい。例えば、−OH、−COOH、−OCOR(Rはアルキル基)、−NH、−NCO、及び−SHからなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を含む樹脂が挙げられる。これらの置換基のなかでも、−OH、−COOH、−OCOR、−NH、及び−NCOが好ましい。
親水性樹脂は水に対する接触角が小さく、水に対して親和性があることが好ましいが、親水性樹脂は水に不溶であることが好ましい。
親水性樹脂が水に不溶であることで、加硫ゴム表面及びタイヤ表面に水が付着したときに、水に親水性樹脂が溶け込んでしまうことを防ぐことができ、短繊維由来の空洞の吸水力を保持することができる。
以上のような、水に対する接触角が大きく、一方で、水に不溶である親水性樹脂としては、より具体的には、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール単独重合体、ポリ(メタ)アクリル酸樹脂或いはそのエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレングリコール樹脂、カルボキシビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン樹脂、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、メルカプトエタノール等が挙げられる。
なかでも、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール単独重合体、ポリ(メタ)アクリル酸樹脂、ポリアミド樹脂、脂肪族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、及びアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレン−ビニルアルコール共重合体がより好ましい。
短繊維の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、短繊維を含むゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴム中に、ミクロな排水溝として機能し得る長尺状気泡を効率良く形成する観点から、短繊維100個の平均値として、長軸方向の長さが0.1〜10mmであることが好ましく、0.5〜5mmであることがより好ましい。また、同様の観点から短繊維の平均径(D)としては、短繊維100個の平均値として、10〜200μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい
短繊維のゴム組成物中の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、0.2〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。
〔加硫剤〕
本発明のゴム組成物は、加硫剤を含有することが好ましい。
加硫剤は、特に制限はなく、通常、硫黄を用い、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等を挙げることができる。
本発明のゴム組成物においては、当該加硫剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。この含有量が0.1質量部以上であることで加硫を充分に進行させることができ、10質量部以下をとすることで、加硫ゴムの耐老化性を抑制することができる。
ゴム組成物中の加硫剤の含有量はゴム成分100質量部に対して、0.5〜8質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることが更に好ましい。
〔樹脂〕
本発明のゴム組成物は、樹脂を含有することが好ましい。
本発明のゴム組成物が樹脂を含有することで、得られる加硫ゴム及びタイヤの低温での弾性率をより低下することができ、氷上で硬くなりがちなタイヤを路面の凹凸に適応させ易くなるため、氷上でのブレーキ性能をより高めることができる。
樹脂としては、C5系樹脂、C5/C9系樹脂、C9系樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、テルペン−芳香族化合物系樹脂、液状ポリイソプレン等が挙げられる。これら樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
C5系樹脂としては、脂肪族炭化水素樹脂及び脂環式炭化水素樹脂が挙げられる。
脂肪族炭化水素樹脂としては、C5系の石油留分を重合して製造された石油樹脂が挙げられる。高純度の1,3−ペンタジエンを主原料に製造された石油樹脂としては、日本ゼオン(株)製の商品名「クイントン100」シリーズ(A100、B170、K100、M100、R100、N295、U190、S100、D100、U185、P195N等)が挙げられる。また、他のC5系の石油留分を重合して製造された石油樹脂としてはエクソンモビール社製の商品名「エスコレッツ」シリーズ(1102、1202(U)、1304、1310、1315、1395等)、三井化学(株)製の商品名「ハイレッツ」シリーズ(G−100X、−T−100X、−C−110X、−R−100X等)が挙げられる。
脂環式炭化水素樹脂としては、C5留分から抽出されたシクロペンタジエンを主原料に製造されたシクロペンタジエン系石油樹脂やC5留分中のジシクロペンタジエンを主原料として製造されたジシクロペンタジエン系石油樹脂が挙げられる。例えば、高純度のシクロペンタジエンを主原料に製造されたシクロペンタジエン系石油樹脂としては、日本ゼオン(株)製の商品名「クイントン1000」シリーズ(1325、1345等)が挙げられる。また、ジシクロペンタジエン系石油樹脂としては、丸善石油化学(株)の商品名「マルカレッツM」シリーズ(M−890A、M−845A、M−990A等)が挙げられる。
C5/C9系樹脂としては、C5/C9系合成石油樹脂が挙げられ、具体的には、例えば、石油由来のC5〜C11留分を、AlCl、BFなどのフリーデルクラフツ触媒を用いて重合して得られる固体重合体が挙げられ、より具体的には、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデンなどを主成分とする共重合体等が挙げられる。C5/C9系樹脂は、C9以上の成分の少ない樹脂が、ジエン系重合体との相溶性の観点から好ましい。ここで、「C9以上の成分が少ない」とは、樹脂全量中のC9以上の成分が50質量%未満、好ましくは40質量%以下であることを言うものとする。C5/C9系樹脂は、市販品を利用することができ、例えば、商品名「クイントン(登録商標)G100B」(日本ゼオン株式会社製)、商品名「ECR213」(エクソンモービルケミカル社製)等が挙げられる。
C9系樹脂としては、C9系合成石油樹脂が挙げられ、C9留分をAlCl、BFなどのフリーデルクラフツ型触媒を用い、重合して得られた固体重合体であり、インデン、メチルインデン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどを主成分とする共重合体等が挙げられる。
フェノール樹脂としては、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂などが好ましく、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂が特に好ましい。
テルペン系樹脂は、天然由来のテレピン油又はオレンジ油を主原料に製造された樹脂をいい、ヤスハラケミカル(株)製の商品名「YSレジン」シリーズ(PX−1250、TR−105等)、ハーキュリーズ社製の商品名「ピコライト」シリーズ(A115、S115等)が挙げられる。
テルペン−芳香族化合物系樹脂としては、例えば、テルペンフェノール樹脂が挙げられ、具体的には、ヤスハラケミカル(株)製の商品名「YSポリスター」シリーズ(U−130、U−115等のUシリーズ、T−115、T−130、T−145等のT−シリーズ、)、荒川化学工業(株)製の商品名「タマノル901」等が挙げられる。
液状ポリイソプレンとしては、重量平均分子量50,000以下のものであれば特に制限されいないが、天然ゴムに対する親和性の観点から、イソプレン骨格を主骨格とするイソプレンの単独重合体であることが好ましい。液状ポリイソプレンの重量平均分子量は8,000〜40,000であることが好ましい。
NR相をより柔軟化し、低温でのタイヤの弾性率をより下げる観点から、樹脂はNR相に含まれることが好ましい。また、NR相に樹脂を分配易くする観点から、樹脂は、イソプレン骨格を主骨格として有する樹脂を用いることが好ましい。具体的には、C5系樹脂、テルペン系樹脂、及び、重量平均分子量50,000以下の液状ポリイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。以上の中でも、C5系樹脂が好ましい。
樹脂のゴム組成物中の含有量は、特に限定されるものではないが、ゴム成分100質量部に対して1〜30質量部が好ましく、5〜25質量部がより好ましい。
〔他の成分〕
本発明のゴム組成物は、既述のゴム成分、変性ポリオキシアルキレングリコール、発泡剤等、充填材、シランカップリング剤、樹脂、親水性短繊維、及び加硫剤に加え、他の成分を含有していてもよい。
他の成分としては、特に限定されず、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、ステアリン酸、老化防止剤、酸化亜鉛、加硫促進剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含有していてもよい。
<ゴム組成物の調製>
本発明のゴム組成物は、上述した各成分を配合して、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を使用して混練りすることによって製造することができる。
ここで、ゴム成分、充填材等の配合量は、ゴム成分中の含有量として既述した量と同じである。
各成分の混練は、全一段階で行ってもよく、二段階以上に分けて行ってもよい。二段階で成分を混練する方法としては、例えば、第一段階において、ゴム成分、変性ポリオキシアルキレングリコール、充填材、樹脂、シランカップリング剤、並びに、加硫剤及び発泡剤以外の他の配合成分を混練し、第二段階において、加硫剤、発泡剤、親水性短繊維、及び熱膨張マイクロカプセルを混練する方法が挙げられる。
硫酸金属塩及び多孔性セルロース粒子は、第一段階で配合してもよいし、第二段階において配合してもよい。
混練の第一段階の最高温度は、130〜170℃とすることが好ましく、第二段階の最高温度は、90〜120℃とすることが好ましい。
<加硫ゴム、空気入りタイヤ>
本発明の加硫ゴム及び空気入りタイヤは、本発明のゴム組成物を用いてなる。
タイヤは、適用するタイヤの種類や部材に応じ、本発明のゴム組成物を用いて成形後に加硫して得てもよいし、予備加硫工程等を経て、一旦、ゴム組成物から半加硫ゴムを得た後、これを用いて成形後、さらに本加硫して得てもよい。
タイヤの各種部材の中でも、低温における低弾性率と、低温における高ヒステリシスロスを両立し、氷上でのブレーキ性能に優れる観点から、トレッド部材、特に、スタッドレスタイヤ用のトレッド部材に適用するのが好ましい。なお、タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
本発明の加硫ゴム及びタイヤは、空隙を有することが好ましい。
既述のように、ゴム組成物が発泡剤又は熱膨張マイクロカプセルを含有すると、ゴム組成物の加硫により気泡が生じ、加硫ゴム及びタイヤの内部及び/又は表面に空隙が生じる。ゴム組成物が硫酸金属塩を含有すると、加硫ゴム又はタイヤが水と接することにより、加硫ゴム又はタイヤの表面に空隙が生じ、ゴム組成物が多孔性セルロース粒子を含有すると、加硫ゴム又はタイヤの表面に多孔性セルロース粒子由来の空隙が生じる。
ゴム組成物が発泡剤及び熱膨張マイクロカプセルのいずれか一方又は両方を含有することにより加硫ゴム及びタイヤの発泡率は、通常1〜50%であり、好ましくは5〜40%である。発泡率が当該範囲であることで、タイヤ表面の発泡孔が大きくなり過ぎず、充分な接地面積を確保でき、排水溝として有効に機能する発泡孔の形成を確保しつつ、気泡の量を適度に保持できるので、耐久性を損なう恐れもない。ここで、タイヤの発泡率は、既述の式(1)により算出される。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
<ゴム組成物の調製>
表1及び2に示す配合処方にて、混練の第一段階及び最終段階に分けて、ゴム組成物の配合成分をバンバリーミキサーを用いて混練し、サンプルとなるゴム組成物を調製した。
表1〜2に示す成分の詳細は次のとおりである。
(1)NR:天然ゴム、TSR20
(2)変性BR:下記方法により製造した変性ポリブタジエンゴム
(3)変性低St SBR:下記方法により製造した変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、結合スチレン量:10質量%
(4)変性高St SBR:下記方法により製造した変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、結合スチレン量:35質量%
(5)未変性高St SBR:JSR株式会社製、商品名「SBR #1500」、結合スチレン量:24質量%
(6)CB:カーボンブラック、旭カーボン株式会社製、商品名「カーボンN220」
(7)Si:シリカ、東ソーシリカ株式会社製、商品名「NIPSIL AQ」
(8)シランカップリング剤:Evonic社製、商品名「Si69」
(9)オイル:出光興産株式会社製、石油系炭化水素プロセスオイル、商品名「DAIHANA PROCESS OIL NS−28」
(10)樹脂:C5系樹脂、三井石油化学工業株式会社製、商品名「HI−REZ G−100X」
(11)酸化亜鉛:ハクスイテック株式会社製、商品名「3号亜鉛華」
(12)ステアリン酸:新日本理化株式会社製、商品名「ステアリン酸50S」
(13)老化防止剤:N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
(14)ワックス:マイクロクリスタリンワックス、精工化学株式会社製「サンタイト」
(15)末端変性PEG:下記方法により製造した両末端が変性されたポリエチレングリコール
(16)未変性PEG:ポリエチレングリコール(富士フィルム和光純薬株式会社製、商品名「ポリエチレングリコール400」、平均分子量360〜440)
(17)発泡剤:永和化成工業株式会社製、商品名「セルラーZ−K」、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)
(18)硫黄:鶴見化学工業株式会社製、商品名「粉末硫黄」
(19)加硫促進剤:大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーDM」、ジ−2−ベンゾチアジルジスルフィド
〔上記(2)変性BRの製造方法〕
1.触媒の調製
乾燥し、窒素置換された、ゴム詮付容積100ミリリットルのガラスびんに、以下の順番に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(15.2質量%)7.11g、ネオジムネオデカノエートのシクロヘキサン溶液(0.56モル/リットル)0.59ミリリットル、メチルアルミノキサンMAO(東ソーアクゾ株式会社製、商品名「PMAO」)のトルエン溶液(アルミニウム濃度として3.23モル/リットル)10.32ミリリットル、水素化ジイソブチルアルミニウム(関東化学株式会社製)のヘキサン溶液(0.90モル/リットル)7.77ミリリットルを投入し、室温で2分間熟成した後、塩素化ジエチルアルミニウム(関東化学株式会社製)のヘキサン溶液(0.95モル/リットル)1.45ミリリットルを加え室温で、時折攪拌しながら15分間熟成した。こうして得られた触媒溶液中のネオジムの濃度は、0.011モル/リットルであった。
2.中間重合体の製造
約900ミリリットル容積のゴム栓付きガラスびんを乾燥し、窒素置換し、乾燥精製されたブタジエンのシクロヘキサン溶液および乾燥シクロヘキサンを各々投入し、ブタジエン12.5質量%のシクロヘキサン溶液が400g投入された状態とした。次に、前記(1)で調製した触媒溶液2.28ミリリットル(ネオジム換算0.025mmol)を投入し、50℃温水浴中で1.0時間重合を行い、中間重合体を製造した。得られた重合体のミクロ構造は、シス−1,4−結合量95.5%、トランス−1,4−結合含有量3.9%、ビニル結合含有量0.6%であった。
3.変性処理
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラ濃度が1.0モル/リットルのヘキサン溶液を、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランがネオジムに対して23.5モル当量になるように、前記(2)で得た重合液に投入し、50℃にて60分間処理した。
次いで、ソルビタントリオレイン酸エステル(関東化学株式会社製)を1.2ミリリットル加えて、さらに60℃で1時間変性反応を行った後、重合系に老化防止剤2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)のイソプロパノール5質量%溶液2ミリリットルを加えて反応の停止を行い、さらに微量のNS−5を含むイソプロパノール中で再沈殿を行ない、ドラム乾燥することにより、変性ポリブタジエン(変性BR)を得た。変性BR1には、マクロゲルは認められず、100℃ムーニー粘度(ML1+4:100℃)は59であった。変性処理後のミクロ構造も上記中間重合体のミクロ構造と同様であった。
〔上記(3)変性低St SBRの製造方法〕
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液およびスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエン67.5gおよびスチレン7.5gになるように加え、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolを加え、0.8mmolのn−ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、変性剤としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを0.72mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行った。その後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して変性SBRを得た。得られた変性SBRのミクロ構造(ビニル結合量)をモレロ法で測定した結果、ブタジエン部分のビニル結合量は40%であった。
重合体の結合スチレン量をH-NMRスペクトルの積分比より求めた結果、10質量%であった。
〔上記(4)変性高St SBRの製造方法〕
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液およびスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエン67.5gおよびスチレン7.5gになるように加え、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolを加え、0.8mmolのn−ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、変性剤としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを0.72mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行った。その後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して変性SBRを得た。得られた変性SBRのミクロ構造(ビニル結合量)をモレロ法で測定した結果、ブタジエン部分のビニル結合量は40%であった。
重合体の結合スチレン量をH-NMRスペクトルの積分比より求めた結果、35質量%であった。
〔上記(15)末端変性PEGの製造方法〕
500ミリリットルの4ツ口フラスコに、ポリエチレングリコール(富士フィルム和光純薬株式会社製、商品名「ポリエチレングリコール400」、平均分子量360〜440)を200g(0.5モル)と、カプリル酸173g(1.2モル)及び触媒としてジブチルチンオキサイド0.19gを計量し、窒素吹き込み下で攪拌しなが゛ら225℃で5時間、エステル化反応を行なった。水酸基価が1.0以下になったことを確認後、過剰なカプリル酸留去のため、200℃、0.27kPaの条件下で脱酸を行い試料を得た。この試料を分析の結果、CH(CHCOO(CHCHO)CO(CHCHのものであることを確認した。
<タイヤの評価>
1.氷上性能評価
上記のようにして得られたゴム組成物をトレッドに用いて、常法によって試験用のタイヤ(タイヤサイズ195/65R15)を作製した。
各実施例及び各比較例の試験用タイヤを排気量1600ccクラスの国産乗用車に4本を装着し、氷温−1℃の氷上制動性能を確認した。比較例6の試験用タイヤをコントロールとし、氷上性能指数=(比較例6以外の試験用タイヤの制動距離/比較例6の試験用タイヤの制動距離)×100として、指数表示した。
指数値が大きい程、氷上性能が優れていることを示す。
2.使用後の氷上性能の変化(硬度変化指数)
実施例及び比較例のゴム組成物を、145℃で33分間加硫し、加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムについて、JIS K 6253−3(2012年)に準拠して、加硫ゴムのデュロメータ硬さを測定した。その後、30mm×100mm×2mmの加硫ゴムを、23℃で5日間、水中に完全に水没させて保存することで劣化させた後、再度、デュロメータ硬さを測定し、以下の式に基づいて硬度変化指数を算出した。
硬度変化指数=(劣化後の硬さ/劣化前の硬さ)×100
それぞれの硬度変化指数については、100に近い程、硬度の変化が小さいことを表し、氷上性能の変化が小さいことを意味する。なお、硬度変化指数が103以下であれば、有効成分の溶け出しが小さく、タイヤとして使用した際、使用後期の氷上性能についても変化が小さいと考えられる。評価結果を表1及び2に示す。
表1〜2からわかるように、実施例1〜3のゴム組成物を用いて得られたタイヤの氷上性能指数は、比較例1〜9のゴム組成物を用いて得られたタイヤの氷上性能指数よりも格段に大きく、実施例1〜3のタイヤは比較例1〜9のタイヤよりも、氷上でのブレーキ性能に優れる。
また、実施例のタイヤはいずれも硬度変化指数が102であり、経時変化後もタイヤが柔軟でグリップ力が保たれ、氷上性能に優れることがわかった。比較例9のタイヤは、氷上性能指数が比較例の中では最も大きいが、硬度変化指数は103を超え、経時でタイヤが硬くなり、氷上性能が低下することがわかった。
本発明によれば、氷上でのブレーキ性能に優れるタイヤを提供するとができる。該タイヤは、氷雪路面での走行でもグリップ力が効きくため、スタッドレスタイヤに好適である。タイヤの使用開始後も氷上でのブレーキ性能に優れることから、タイヤを長期間使用することができる。

Claims (9)

  1. 天然ゴム、ポリブタジエンゴム、及びスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分と、
    変性ポリオキシアルキレングリコールと、
    発泡剤、熱膨張マイクロカプセル、硫酸金属塩、及び多孔性セルロース粒子からなる群より選択される少なくとも1つと
    を含有し、
    前記スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの結合スチレン量が20質量%未満であり、
    前記変性ポリオキシアルキレングリコールの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して8質量部以上であるゴム組成物。
  2. 前記ゴム成分中、前記スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの含有量が0質量%を超え30質量%未満である請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記変性ポリオキシアルキレングリコールの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して11質量部以上である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
  4. 前記変性ポリオキシアルキレングリコールが、カルボン酸によって変性されたポリオキシアルキレングリコールである請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  5. 前記ポリブタジエンゴムおよび前記スチレン−ブタジエン共重合体ゴムが、それぞれ変性されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  6. 更に加硫剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  7. 請求項6に記載のゴム組成物を加硫した加硫ゴム。
  8. 空隙を有する請求項7に記載の加硫ゴム。
  9. 請求項7又は8に記載の加硫ゴムを用いた空気入りタイヤ。
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WO2022254751A1 (ja) * 2021-05-31 2022-12-08 株式会社ブリヂストン ゴム組成物及びタイヤ
WO2022254750A1 (ja) * 2021-05-31 2022-12-08 株式会社ブリヂストン ゴム組成物及びタイヤ
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