JP2020012037A - 熱可塑性樹脂組成物およびそれを含む成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた溶融滞留安定性、成形加工性、および機械的特性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供すること。【解決手段】(A)ポリアリーレンスルフィド、および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物であって、(A)ポリアリーレンスルフィドが、(a)重量平均分子量が5000以下の環状ポリアリーレンスルフィドと(b)重量平均分子量が5000を超え15000未満の線状ポリアリーレンスルフィドを含み、前記(B)100質量部に対し、前記(A)が1質量部以上67質量部未満である、熱可塑性樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、溶融滞留安定性、成形加工性、および機械的特性に優れる、ポリアリーレンスルフィドを含む熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPS樹脂と略す。)に代表されるポリアリーレンスルフィドは優れた耐熱性、難燃性、耐薬品性、寸法安定性、剛性および電気絶縁性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、射出成形用を中心として各種電気・電子部品、機械部品、自動車部品、および航空機部品などの用途に使用されている。
しかしながら、ポリアリーレンスルフィドは、脆く、耐衝撃性、機械的特性に劣ることが知られており、ポリアリーレンスルフィド樹脂の衝撃特性および機械特性を改良するし手段として、ポリアリーレンスルフィド樹脂に他の熱可塑性樹脂を配合する方法が知られている。より具体的には、ポリフェニレンスルフィド樹脂に、ポリカーボネート、ポリスルホン及びポリエーテルケトンから成る群から選ばれる熱可塑性樹脂を配合する製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また相溶性向上による機械的特性の向上を目的に、アルカリ金属炭酸塩およびポリアリールエーテルケトン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリアリーレンスルフィドおよびポリエーテルイミドからなる群より選ばれる少なくとも異なる2種を含む組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、耐熱性向上のために、ガラス転移温度が100℃以上である熱可塑性樹脂および環状ポリアリーレンスルフィドを加熱することにより、前記環状ポリアリーレンスルフィド(B)をポリアリーレンスルフィドに転化して得られる樹脂組成物であって、特定の海島構造を形成している樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、溶融滞留時の環状ポリアリーレンスルフィドの分子量制御のために、重量平均分子量10000未満の環状ポリアリーレンスルフィドと、重量平均分子量5000以上20000以下の線状ポリアリーレンスルフィドを特定量含むポリアリーレンスルフィドポリマーが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
加えて近年、軽量化に対する需要の高まりにより、航空機、自動車用途を中心に、金属部品から樹脂部品への代替や、部品の小型化・モジュール化が進みつつあることから、成形加工性に優れ、かつ、機械特性に優れる材料開発が求められている。
しかしながら、特許文献1や2に記載された樹脂組成物は、ポリエーテルケトンなどの熱可塑性樹脂と、PPS樹脂との相溶性が依然として悪く、機械的特性の改良に十分な効果が得られていないのが現状であり、かつ溶融粘度も高いため成形加工性にも不十分であった。
特許文献3に記載された樹脂組成物は、低分子量の環状ポリアリーレンスルフィドを大環状化して高分子量化してなる組成物であり、溶融滞留時に環状ポリアリーレンスルフィドの大環状化が進行することで相溶性が低下するため、結果として機械的特性の改良に十分な効果が得られないことが明らかとなった。
特許文献4にはポリアリーレンスルフィドプレポリマーが記載されているが、熱可塑性樹脂との配合による、成形加工性、溶融滞留安定性、および機械的特性への効果は一切記載されていない。
そこで本発明は、優れた成形加工性、溶融滞留安定性、および機械的特性を活かして構造材料として有用に用いることができる、ポリアリーレンスルフィドを含む熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明は、前述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものである。本発明は以下の構成を有する。
[1](A)ポリアリーレンスルフィド、および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物であって、(A)ポリアリーレンスルフィドが、(a)重量平均分子量が5000以下の環状ポリアリーレンスルフィドと(b)重量平均分子量が5000を超え15000未満の線状ポリアリーレンスルフィドを含み、
前記(B)100質量部に対し、前記(A)が1質量部以上67質量部未満である、熱可塑性樹脂組成物。
[2]前記(B)100質部に対し、前記(b)が0.05質量部以上30質量部以下である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]前記(B)のガラス転移温度が110℃以上である、[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃における、1時間滞留後の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品の引張破断伸度が4%以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品。
[1](A)ポリアリーレンスルフィド、および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物であって、(A)ポリアリーレンスルフィドが、(a)重量平均分子量が5000以下の環状ポリアリーレンスルフィドと(b)重量平均分子量が5000を超え15000未満の線状ポリアリーレンスルフィドを含み、
前記(B)100質量部に対し、前記(A)が1質量部以上67質量部未満である、熱可塑性樹脂組成物。
[2]前記(B)100質部に対し、前記(b)が0.05質量部以上30質量部以下である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]前記(B)のガラス転移温度が110℃以上である、[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃における、1時間滞留後の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品の引張破断伸度が4%以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品。
本発明の熱可塑性樹脂組成物により、優れた溶融滞留安定性、成形加工性、および機械的特性を有する成形品を得ることができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、溶融紡糸、フィルム成形などの任意の成形方法により、所望の形状に成形することができる。熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形品は、例えば、電機・電子機器部品、自動車部品、航空機部品、機械部品などの樹脂成形品、衣料・産業資材などの繊維、包装・磁気記録などのフィルムとして使用することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリアリーレンスルフィド、および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「(B)熱可塑性樹脂」と記載する場合がある)を含み、(A)ポリアリーレンスルフィドは、(a)重量平均分子量が5000以下の環状ポリアリーレンスルフィドと(b)重量平均分子量が5000を超え15000未満の線状ポリアリーレンスルフィドを含む。
<(A)ポリアリーレンスルフィド>
本発明における(A)ポリアリーレンスルフィドは、(a)重量平均分子量が5000以下の環状ポリアリーレンスルフィドおよび(b)重量平均分子量が5000を超え15000未満の線状ポリアリーレンスルフィドを含む。
本発明における(A)ポリアリーレンスルフィドは、(a)重量平均分子量が5000以下の環状ポリアリーレンスルフィドおよび(b)重量平均分子量が5000を超え15000未満の線状ポリアリーレンスルフィドを含む。
<(a)環状ポリアリーレンスルフィド>
本発明の(a)環状ポリアリーレンスルフィドとは、アリーレン基(以下Arと略する場合がある)とスルフィドから成る、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環状化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(1)のごとき化合物である。Arとしては上記式(2)〜式(12)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(2)が特に好ましい。
本発明の(a)環状ポリアリーレンスルフィドとは、アリーレン基(以下Arと略する場合がある)とスルフィドから成る、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環状化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(1)のごとき化合物である。Arとしては上記式(2)〜式(12)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(2)が特に好ましい。
これら繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(13)〜式(15)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
なお、(a)環状ポリアリーレンスルフィドにおいては上記式(2)〜式(12)などの繰り返し単位をランダムに含んでも良いし、ブロックで含んでも良く、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環状ポリフェニレンスルフィド、環状ポリフェニレンスルフィドスルホン、環状ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環状ランダム共重合体、環状ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい(a)環状ポリアリーレンスルフィドとしては、主要構成単位として下記式で表されるp−フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環状ポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
(a)環状ポリアリーレンスルフィドの上記(1)式中の繰り返し数mに特に制限は無いが、2〜50が好ましく、2〜25がより好ましく、3〜20が更に好ましい範囲として例示できる。mが大きくなると相対的に粘度が上昇するため、mが50を超えると、Arの種類によっては環状ポリアリーレンスルフィドの溶融解温度が高くなり、樹脂の取り扱い性に劣る場合がある。25以下が好ましく、20以下がさらに好ましい。一方、mは2以上が好ましく、3以上が更に好ましい。ここで、前記一般式(1)における繰り返し数mは、NMRおよび質量分析により構造解析を行うことで求めることができる。
また、環状ポリアリーレンスルフィドは、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環状ポリアリーレンスルフィドの混合物のいずれでも良いが、異なる繰り返し数を有する環状ポリアリーレンスルフィドの混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低い傾向があり、異なる繰り返し数を有する環状ポリアリーレンスルフィドの混合物の使用は高重合度体への転化を行う際の温度をより低くできるため好ましい。
(a)環状ポリアリーレンスルフィドの分子量の上限値は、(b)線状ポリアリーレンスルフィドおよび(B)熱可塑性樹脂との相溶性の観点から、重量平均分子量で5,000以下であり、3,000以下が好ましく、2,000以下が更に好ましい。一方、熱可塑性樹脂の機械的特性の観点から、下限値は重量平均分子量で300以上が好ましく、400以上が好ましく、500以上が更に好ましい。ここで、環状ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求めることができる。
重量平均分子量で5,000以下の(a)環状ポリアリーレンスルフィド樹脂は、下記する工程1〜3により得ることができる。
また、環状ポリアリーレンスルフィド(a)は、前記一般式(1)で表される化合物として、単一の繰り返し数mを有する単独化合物、異なる繰り返し数mを有する環状化合物の混合物のいずれであってもよいが、異なる繰り返し数を有する環状化合物の混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低い傾向にあり、ポリアリーレンスルフィドへの転化を行う際の温度をより低くできるため好ましい。
<(b)線状ポリアリーレンスルフィド>
本発明における(b)線状ポリアリーレンスルフィドとは、アリーレン基(以下Arと略する場合がある)とスルフィドから成る、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては上記の式(2)〜式(12)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(2)が特に好ましい。
本発明における(b)線状ポリアリーレンスルフィドとは、アリーレン基(以下Arと略する場合がある)とスルフィドから成る、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては上記の式(2)〜式(12)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(2)が特に好ましい。
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、上記の式(13)〜式(15)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
また、本発明における(b)線状ポリアリーレンスルフィドは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体、及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい(b)線状ポリアリーレンスルフィドとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−アリーレンスルフィド単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略することもある)の他、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンが挙げられる。
また、本発明の(b)線状ポリアリーレンスルフィドの分子量は、重量平均分子量で5,000を超え15,000未満であり、6000以上14000以下が好ましく、7000以上13000以下がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲の(b)線状ポリアリーレンスルフィドは、(a)環状ポリアリーレンスルフィド、(B)熱可塑性樹脂と配合した際の相溶性が高く、優れた機械的特性を発現する。ここで、線状ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求めることができる。重量平均分子量5,000を超え15,000未満の(b)線状ポリアリーレンスルフィドは、下記する工程1〜2により得ることができる。
<(A)ポリアリーレンスルフィドに含まれる(a)および(b)以外の成分>
本発明の(A)ポリアリーレンスルフィドに含まれる(a)および(b)以外の成分としては、線状のポリアリーレンスルフィドオリゴマーが挙げられる。後述する工程1〜3により(a)環状ポリアリーレンスルフィドを得る場合は、工程3により回収される環式ポリアリーレンスルフィドの中には、線状のポリアリーレンスルフィドオリゴマーが含まれる場合がある。ここで線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモオリゴマーまたはコオリゴマーである。Arとしては上記した式(2)〜式(12)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(2)が特に好ましい。線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーはこれら繰り返し単位を主要構成単位とする限り、上記した式(13)〜式(15)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。また、線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
本発明の(A)ポリアリーレンスルフィドに含まれる(a)および(b)以外の成分としては、線状のポリアリーレンスルフィドオリゴマーが挙げられる。後述する工程1〜3により(a)環状ポリアリーレンスルフィドを得る場合は、工程3により回収される環式ポリアリーレンスルフィドの中には、線状のポリアリーレンスルフィドオリゴマーが含まれる場合がある。ここで線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモオリゴマーまたはコオリゴマーである。Arとしては上記した式(2)〜式(12)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(2)が特に好ましい。線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーはこれら繰り返し単位を主要構成単位とする限り、上記した式(13)〜式(15)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。また、線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィドオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドスルホンオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドケトンオリゴマー、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有する線状のポリフェニレンスルフィドオリゴマーが挙げられる。
(A)ポリアリーレンスルフィドに含まれる(a)および(b)以外の成分の含有量は、(a)環状ポリアリーレンスルフィド100重量%に対して、50重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、更に好ましくは20重量%以下である。通常、(a)環状ポリアリーレンスルフィドの純度が高いほど、加熱後に得られる(A)ポリアリーレンスルフィドの重合度が高くなる傾向にあるため、機械特性向上の観点から好ましい。
(a)環状ポリアリーレンスルフィドに含まれる線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量平均分子量は300以上5000以下が好ましく、300以上3000以下がより好ましく、300以上2000以下が更に好ましい。本発明の(a)環状ポリアリーレンスルフィドに含まれる線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーは後述の工程2を経て得られるため、通常300以上5000以下の重量平均分子量を有する。
<(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂>
本発明に用いられる(B)熱可塑性樹脂は、(A)ポリアリーレンスルフィドとのアロイ化により(A)ポリアリーレンスルフィドの特性を大きく損なうものでなければ特に制限はないが、(A)ポリアリーレンスルフィドの耐熱性を向上させる観点から、(B)熱可塑性樹脂のガラス転移温度が(A)ポリアリーレンスルフィドのガラス転移温度よりも高いことが好ましい。(B)熱可塑性樹脂のガラス転移温度は110℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましい。なお、(B)熱可塑性樹脂からなる射出成形品を用いて動的粘弾性測定を行い、損失弾性率のピークの温度をガラス転移温度とした。
本発明に用いられる(B)熱可塑性樹脂は、(A)ポリアリーレンスルフィドとのアロイ化により(A)ポリアリーレンスルフィドの特性を大きく損なうものでなければ特に制限はないが、(A)ポリアリーレンスルフィドの耐熱性を向上させる観点から、(B)熱可塑性樹脂のガラス転移温度が(A)ポリアリーレンスルフィドのガラス転移温度よりも高いことが好ましい。(B)熱可塑性樹脂のガラス転移温度は110℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましい。なお、(B)熱可塑性樹脂からなる射出成形品を用いて動的粘弾性測定を行い、損失弾性率のピークの温度をガラス転移温度とした。
(A)ポリアリーレンスルフィドよりも高いガラス転移温度を有する(B)熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアリルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、液晶ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、成形品の耐熱性および機械特性をより向上させる観点から、ポリイミド、ポリアリルエーテルケトン、ポリスルホンが好ましく、これらを2種以上含有してもよい。
ポリイミドは、繰り返し単位にイミド結合を有する重合体である。本発明においては、繰り返し単位にイミド結合の他に、エーテル結合を有するポリエーテルイミドやアミド結合を有するポリアミドイミドもポリイミドに分類する。ポリイミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、SABICイノベーティブプラスチックス社製“Ultem”(登録商標)1000、“Ultem”1010、“Ultem”1040、“Ultem”5000、“Ultem”6000、“Ultem”XH6050、“Extem”XHおよび“Extem”UH、三井化学(株)製“オーラム”(登録商標)PD450M、ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン(株)製“トーロン”(登録商標)などとして上市されているものを入手して用いることもできる。
ポリアリルエーテルケトンは、ベンゼン環をエーテル結合とケトン結合を介して配した重合体である。具体的にはポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルケトンケトンやポリエーテルケトンやポリエーテルケトンエーテルケトンケトンなどが挙げられる。ポリアリルエーテルケトンとしては特に限定されるものではないが、例えば、ダイセル・エボニック(株)製“ベスタキープ”(登録商標)、ビクトレックス・ジャパン(株)製“VICTREX”(登録商標)、アルケマ(株)製“KEPSTAN”(登録商標)、ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン(株)製“アバスパイア”(登録商標)や“キータスパイア”(登録商標)や“NovaSpire”(登録商標)などとして上市されているものを入手して用いることもできる。
ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2、6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)などが挙げられる。また、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体などのポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。なかでも、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)および2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)がより好ましい。
ポリスルホンは、繰り返し単位にスルホニル基を有する重合体である。本発明においては、繰り返し単位にスルホニル基の他に、エーテル結合を有するポリエーテルスルホンやエーテル鎖で結合したフェニル基を有するポリフェニルスルホンもポリスルホンに分類する。ポリスルホンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン(株)製“ユーデル”(登録商標)、“ベラデル”(登録商標)、“レーデル”(登録商標)、BASFジャパン(株)製“ウルトラゾーン”(登録商標)S、“ウルトラゾーン”E、“ウルトラゾーン”P、住友化学(株)製“スミカエクセル”(登録商標)などとして上市されているものを入手して用いることもできる。
(A)ポリアリーレンスルフィドよりも低いガラス転移温度を有する(B)熱可塑性樹脂であっても、(A)ポリアリーレンスルフィドの耐熱性を大きく損なうことなく機械特性、賦形性を向上するものであればよく、とりわけ靭性を改良する観点から、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリクロロトリフルオロエチレンなどが挙げられ、これらを2種以上含有してもよい。ポリアミド、ポリエステル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂がより好ましい。
<(A)ポリアリーレンスルフィドの製造方法>
本発明の(A)ポリアリーレンスルフィドに含まれる(a)特定分子量を有する環状ポリアリーレンスルフィドは、後述の工程1、工程2および工程3を経て製造することができる。また、本発明の(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂に含まれる(b)特定分子量を有する線状ポリアリーレンスルフィドは、工程1および工程2を経て製造することができる。
本発明の(A)ポリアリーレンスルフィドに含まれる(a)特定分子量を有する環状ポリアリーレンスルフィドは、後述の工程1、工程2および工程3を経て製造することができる。また、本発明の(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂に含まれる(b)特定分子量を有する線状ポリアリーレンスルフィドは、工程1および工程2を経て製造することができる。
<工程1:(a)環状ポリアリーレンスルフィドと(b)線状ポリアリーレンスルフィドとを含む反応混合物の製造>
本発明では、少なくともスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させて、少なくとも(a)環状ポリアリーレンスルフィドと(b)線状ポリアリーレンスルフィドとを含む反応混合物を得る。工程1の方法としては上記必須成分を原料として用いれば良いが、好ましい方法として、特開2009−30012号公報や特開2009−227952号公報に開示された公知の方法が挙げられる。これら公知の方法では効率良く環状ポリアリーレンスルフィドを得るため、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させて反応混合物を製造する方法であって、スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対して有機極性溶媒を1.25リットル以上用いて、上記原料を常圧における還流温度を越えて加熱することが特徴である。
本発明では、少なくともスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させて、少なくとも(a)環状ポリアリーレンスルフィドと(b)線状ポリアリーレンスルフィドとを含む反応混合物を得る。工程1の方法としては上記必須成分を原料として用いれば良いが、好ましい方法として、特開2009−30012号公報や特開2009−227952号公報に開示された公知の方法が挙げられる。これら公知の方法では効率良く環状ポリアリーレンスルフィドを得るため、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させて反応混合物を製造する方法であって、スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対して有機極性溶媒を1.25リットル以上用いて、上記原料を常圧における還流温度を越えて加熱することが特徴である。
また、より好ましくは、国際公開2013/061561号に開示されている方法により、反応混合物を得ることもできる。該方法では、イオウ成分1モルあたりのアリーレン単位が0.80モル以上1.04モルである原料を加熱して、上記原料中の上記スルフィド化剤の50%以上を反応消費させる前段工程と、その前段工程に次いで、上記原料中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モル以上1.50モル以下となるように上記ジハロゲン化芳香族化合物を追加した後にさらに加熱して反応させる後段工程を行い、反応混合物を得る。該方法では、後述する工程3の回収操作を付加的に行うことでより純度の高い(a)環状ポリアリーレンスルフィドを得ることがきるため好ましい。
また、上記の国際公開2013/061561号に開示されている方法で反応混合物を得るに際しては、上述の前段工程後にジハロゲン化芳香族化合物を追加して行う後段工程において、反応を完結に近づけることがさらに好ましい。ここで、反応の完結とは、後段工程において仕込んだスルフィド化剤の大部分、すなわち、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上が消費された後、さらに反応を行って99%以上の原料のスルフィド化剤およびジハロゲン化芳香族加工物を消費することをいう。反応の完結に要する時間は、原料の種類あるいは反応温度に依存するので一概に規定できないが、好ましい反応時間の下限としては0.1時間以上が例示でき、0.25時間以上がより好ましい。一方、好ましい反応時間の上限としては、20時間以下が例示でき、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下も採用できる。反応を完結に近づけることによって、環状ポリアリーレンスルフィドが収率よく得られ、後述する工程3の回収操作を付加的に行うことで純度の高い(a)環状ポリアリーレンスルフィドを得ることができる。
<工程2:線状ポリアリーレンスルフィド(b)の製造>
本発明の実施形態では、上記工程1に次いで工程3として、工程1で得られた反応生成物を固液分離することで、主として線状PASを含む固形分の(b)線状ポリアリーレンスルフィドと、主として環状ポリアリーレンスルフィドと有機極性溶媒を含む濾液を得る工程を実施する。
本発明の実施形態では、上記工程1に次いで工程3として、工程1で得られた反応生成物を固液分離することで、主として線状PASを含む固形分の(b)線状ポリアリーレンスルフィドと、主として環状ポリアリーレンスルフィドと有機極性溶媒を含む濾液を得る工程を実施する。
工程2の方法としては工程1で得られた反応生成物を固液分離することができれば良いが、好ましい方法として、特開2009−149863号公報に開示された公知の方法が挙げられる。これら公知の方法では、環状ポリアリーレンスルフィドを得るため、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させた反応混合物を固液分離する方法であって、有機極性溶媒の沸点以下の温度で固液分離することが特徴である。該方法では、分離操作を行う条件下において、(b)線状ポリアリーレンスルフィドが有機極性溶媒中で固形分として存在し易くなるため、(a)環状ポリアリーレンスルフィドとの分離性が著しく向上する傾向にあり、好ましい。
また、反応生成物を固液分離操作に処するに先立って、反応混合物に含まれる有機極性溶媒の一部を留去して反応混合物中の有機極性溶媒の量を減じる操作を付加的に行うことも可能である。これにより固液分離操作に供する反応混合物が減少するため固液分離操作に要する時間が短縮できる傾向にある。
有機極性溶媒を留去する方法としては、反応混合物から有機極性溶媒を分離し反応混合物に含有される有機極性溶媒の量を低減できれば、いずれの方法でも特に問題はなく、好ましい方法としては、減圧下あるいは加圧下に有機極性溶媒を蒸留する方法、フラッシュ移送により溶媒を除去する方法などが例示でき、なかでも減圧下あるいは加圧下に有機極性溶媒を蒸留する方法が好ましい。また減圧下あるいは加圧下に有機極性溶媒を蒸留する際、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスをキャリアーガスとして用いても良い。
有機極性溶媒の留去を行う温度については、有機極性溶媒の種類や、反応生成物の組成によって多様化するため、一意的には決めることはできないが、180〜300℃が好ましく、200〜280℃がより好ましく、200〜250℃の範囲がさらに好ましい範囲として例示できる。
ここでの固液分離によれば、反応混合物に含まれる環状ポリアリーレンスルフィドの大部分を濾液成分として分離可能であり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上を濾液成分として回収しうる。また、固液分離によって固形分として分離される(b)線状ポリアリーレンスルフィドに環状ポリアリーレンスルフィドの一部が残留する場合には、固形分に対してフレッシュな有機極性溶媒を用いて洗浄することで、環状ポリアリーレンスルフィドの固形分への残留量を低減することも可能である。ここで用いる溶剤は環状ポリアリーレンスルフィドが溶解しうるものであれば良く、前述した工程1で用いた有機極性溶媒と同じ溶媒を用いることが好ましい。
また、(b)線状ポリアリーレンスルフィドを後述の混合操作に処するに先立って、(b)線状ポリアリーレンスルフィドに含まれる液成分(母液)を含む場合には、固形状の(b)線状ポリアリーレンスルフィドを各種溶剤により洗浄することで、母液を低減することも可能である。ここで洗浄に用いる各種溶剤としては線状PASの溶解性が低いものが望ましく、たとえば水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノールに代表されるアルコール類、アセトンに代表されるケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどに代表される酢酸エステル類、およびこれらの溶剤と工程1で用いた有機極性溶媒の混合液が例示でき、液入手性、経済性の観点から水、メタノールおよびアセトン、またこれらの溶剤と工程1で用いた有機極性溶媒の混合液が好ましく、特に水および水と工程1で用いた有機極性溶媒の混合液が好ましい。
<工程3:環状ポリアリーレンスルフィド(a)の製造>
本回収法においては次に、工程2で得られる反応生成物を固液分離して得られる、少なくとも環状ポリアリーレンスルフィドを含む有機極性溶媒から固形分として(a)環状ポリアリーレンスルフィドを回収する。
本回収法においては次に、工程2で得られる反応生成物を固液分離して得られる、少なくとも環状ポリアリーレンスルフィドを含む有機極性溶媒から固形分として(a)環状ポリアリーレンスルフィドを回収する。
(a)環状ポリアリーレンスルフィドを回収する方法としては、工程2の固液分離で得られた少なくとも環状ポリアリーレンスルフィドを含む有機極性溶媒から固形分として(a)環状ポリアリーレンスルフィドを回収することができれば良いが、好ましい方法として、特開2012−229320号公報に開示された公知の方法が挙げられる。これら公知の方法では、反応混合物を固液分離して得られる、少なくとも環状ポリアリーレンスルフィドを含む有機極性溶媒に、その有機極性溶媒とは異なる溶液を加え固形分として環状ポリアリーレンスルフィドを回収する。該方法では、純度の高い(a)環状ポリアリーレンスルフィドを簡便な方法で、かつ短時間で回収することができ好ましい。
回収した(a)環状ポリアリーレンスルフィドが液成分(母液)を含む場合には、固形状の(a)環状ポリアリーレンスルフィドを各種溶剤により洗浄することで、母液を低減することも可能である。ここで環状PASの洗浄に用いる各種溶剤としては(a)環状ポリアリーレンスルフィドの溶解性が低い溶剤が望ましく、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノールに代表されるアルコール類、アセトンに代表されるケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどに代表される酢酸エステル類、およびこれらの溶剤と工程1で用いた有機極性溶媒の混合液が例示でき、液入手性、経済性の観点から水、メタノールおよびアセトン、またこれらの溶剤と工程1で用いた有機極性溶媒の混合液が好ましく、特に水および水と工程1で用いた有機極性溶媒の混合液が好ましい。このような溶剤を用いた洗浄を付加的に行うことで、固形状の(a)環状ポリアリーレンスルフィドが含有する母液量を低減できるのみならず、(a)環状ポリアリーレンスルフィドが含む溶剤に可溶な不純物を低減できるという効果もある。この洗浄方法としては固形分ケークが積層した分離フィルター上に溶剤を加えて固液分離する方法や固形分ケークに溶剤を加えて撹拌することでスラリー化した後に再度固液分離する方法などが例示できる。また、前述の母液を含有、もしくは洗浄操作による溶剤成分を含有する等、液成分を含む湿潤状態の(a)環状ポリアリーレンスルフィドをたとえば一般的な乾燥処理を施すことにより液成分を除去して乾燥状態の(a)環状ポリアリーレンスルフィドを得ることも可能である。
なお(a)環状ポリアリーレンスルフィドの回収操作を行う際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。これにより(a)環状ポリアリーレンスルフィドを回収する際の(a)環状ポリアリーレンスルフィドの架橋反応や分解反応、酸化反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できるのみならず、回収操作に用いる有機極性溶媒の酸化劣化等、好ましくない副反応を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは回収操作に処する各種成分が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形加工性、溶融滞留安定性、および機械的特性の観点から熱可塑性樹脂組成物中の(B)熱可塑性樹脂100質量部に対し、(A)ポリアリーレンスルフィドが1質量部以上67質量部以下である。1質量部以上67質量部未満の場合、得られる樹脂組成物の耐熱性、機械特性および賦形性のバランスに優れる。より好ましくは、10質量部以上50質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以上45質量部以下である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形加工性、溶融滞留安定性、および機械的特性の観点から熱可塑性樹脂組成物中の(B)熱可塑性樹脂100質量部に対し、(A)ポリアリーレンスルフィドが1質量部以上67質量部以下である。1質量部以上67質量部未満の場合、得られる樹脂組成物の耐熱性、機械特性および賦形性のバランスに優れる。より好ましくは、10質量部以上50質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以上45質量部以下である。
なお、前記した工程1〜3により(a)環状ポリアリーレンスルフィドを得る場合は、線状のポリアリーレンスルフィドオリゴマーも一緒に回収される場合があるため、上記(A)ポリアリーレンスルフィドの含有量は、環状ポリアリーレンスルフィド、線状ポリアリーレンスルフィドおよび線状のポリアリーレンスルフィドオリゴマーの合計量を意味する。また、(B)熱可塑性樹脂として、複数の樹脂を用いる場合は、その合計量を(B)熱可塑性樹脂の量とする。
溶融滞留安定性および機械的特性両立の観点から、(B)熱可塑性樹脂100質量部に対して、(b)線状ポリアリーレンスルフィドは0.05質量部以上30質量部以下であることが好ましい。より好ましくは、(b)線状ポリアリーレンスルフィドが1質量部以上20質量部以下であり、更に好ましくは5質量部以上15質量部以下である。
機械的特性の観点から、(B)熱可塑性樹脂は、(B)熱可塑性樹脂と(A)ポリアリーレンスルフィドの合計100質量%中、60質量%以上90質量%以下が好ましく、成形加工性の観点から70質量%以上85質量%以下であることがより好ましい。
また流動性の観点から、(B)熱可塑性樹脂100質量部に対し、(a)環状ポリアリーレンスルフィドは5質量部以上35質量部以下が好ましく、溶融滞留安定性および機械的特性両立の観点から10質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、(B)熱可塑性樹脂と、(a)環状ポリアリーレンスルフィドおよび(b)線状ポリアリーレンスルフィドをそれぞれ粉末化し、粉末状態で混合し、(B)熱可塑性樹脂と(A)ポリアリーレンスルフィドの融点またはガラス転移温度の中で高いほうの温度以上に加熱し、原料組成比に変化が生じない条件にて、押出機などの溶融混練機を用いて加熱混練する方法などが挙げられる。バッチ方式、連続方式など任意の方法が採用できる。加熱装置としては、加熱機構を具備した装置であれば特に制限なく用いることができる。なお、融点は、例えば、示差走査熱量計を用いて測定することができる。ガラス転移温度は、例えば、動的粘弾性測定により測定することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品は機械的特性に優れ、引張破断伸度が4%以上であることが好ましい。引張破断伸度を4%以上有することで、成形品として必要な靭性を付与することができる。より優れた靭性付与の観点から、引張破断伸度は5%以上がより好ましく、6%以上がさらに好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、溶融滞留安定性に優れる。溶融滞留安定性とは、熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃における、1時間滞留後の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品の引張破断伸度を示す。滞留前と同じく、引張破断伸度を4%以上有することで、成形品として必要な靭性を付与することができる。より優れた靭性付与の観点から、引張破断伸度は5%以上がより好ましく、6%以上がさらに好ましい。
ここで、引張破断伸度とは、熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃として、熱可塑性樹脂組成物を3分間加熱処理した後、240℃の温度で10分間結晶化処理することにより、厚み100μmフィルムを得る。得られたフィルムを、幅1cmで長さ5cmの短冊状に裁断し、試験片を得る。得られた試験片を、23℃の温度で、湿度50%の雰囲気下で、歪み速度1mm/分で引張試験を行い、引張破断伸度を測定する。
また、溶融滞留安定性とは、熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃で60分間溶融滞留させた熱可塑性樹脂組成物からなる成形品の引張破断伸度を示す。熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃におけるで、熱可塑性樹脂組成物を60分間加熱処理した後、240℃の温度で10分間結晶化処理することにより、厚み100μmフィルムを得る。得られたフィルムを、幅1cmで長さ5cmの短冊状に裁断し、試験片を得る。得られた試験片を、23℃の温度で、湿度50%の雰囲気下で、歪み速度1mm/分で引張試験を行い、引張破断伸度を測定する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、所望に応じて、ガラス繊維、炭素繊維、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、着色剤などを添加することもできる。
本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、コネクター、コイル、センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電子部品用途、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネットなどの電気機器部品用途、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク、DVD等の音声・映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭、事務電気製品部品用途、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品用途、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品用途、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース等の自動車・車両関連部品用途、各種航空・宇宙用途等々に適用できる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。各実施例において用いた(B)熱可塑性樹脂を以下に示す。
<B−1>ポリエーテルエーテルケトン(Victrex社製“Victrex”(登録商標)90G、ガラス転移温度:151℃、融点:346℃)
<B−2>ポリエーテルイミド(SABICイノベーティブプラスチックス社製“Ultem”(登録商標)1010、ガラス転移温度:215℃)
<B−3>ポリエーテルスルホン(住友化学社製“スミカエクセル”(登録商標)3600G、ガラス転移温度:225℃。
<B−1>ポリエーテルエーテルケトン(Victrex社製“Victrex”(登録商標)90G、ガラス転移温度:151℃、融点:346℃)
<B−2>ポリエーテルイミド(SABICイノベーティブプラスチックス社製“Ultem”(登録商標)1010、ガラス転移温度:215℃)
<B−3>ポリエーテルスルホン(住友化学社製“スミカエクセル”(登録商標)3600G、ガラス転移温度:225℃。
<ガラス転移温度>
射出成形機(住友重機社製SE75DUZ−C250)を用い、シリンダー温度380℃、金型150℃とする条件にて、射出速度:40mm/秒、冷却時間:20秒の成形条件で厚さ1mm、幅8mm×長さ40mmの成形品を射出成形し、測定用サンプルとして用いた。得られたサンプルを以下に示す条件にて動的粘弾性測定を行い、損失弾性率のピークの温度をガラス転移温度とした。
装置:セイコーインスツルメンツ製DMS6100
測定温度域:30℃〜250℃
昇温速度:2℃/分
周波数:1Hz(正弦波モード)
歪振幅:10μm
最小張力/圧縮力:200mN
張力/圧縮力ゲイン:1.5
力振幅初期値:2000mN。
射出成形機(住友重機社製SE75DUZ−C250)を用い、シリンダー温度380℃、金型150℃とする条件にて、射出速度:40mm/秒、冷却時間:20秒の成形条件で厚さ1mm、幅8mm×長さ40mmの成形品を射出成形し、測定用サンプルとして用いた。得られたサンプルを以下に示す条件にて動的粘弾性測定を行い、損失弾性率のピークの温度をガラス転移温度とした。
装置:セイコーインスツルメンツ製DMS6100
測定温度域:30℃〜250℃
昇温速度:2℃/分
周波数:1Hz(正弦波モード)
歪振幅:10μm
最小張力/圧縮力:200mN
張力/圧縮力ゲイン:1.5
力振幅初期値:2000mN。
<融点>
サンプル約5mg採取し、窒素雰囲気下、セイコーインスツルメンツ製ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用い、次の条件で融点を測定した。380℃まで昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、30℃で3分保持した後、20℃/分の昇温速度で380℃まで昇温した際に観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。なお、最も高温側に出てくるピークの温度をTmaxとした。
サンプル約5mg採取し、窒素雰囲気下、セイコーインスツルメンツ製ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用い、次の条件で融点を測定した。380℃まで昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、30℃で3分保持した後、20℃/分の昇温速度で380℃まで昇温した際に観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。なお、最も高温側に出てくるピークの温度をTmaxとした。
<重量平均分子量>
(a)環状ポリアリーレンスルフィドおよび(b)線状ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7110
カラム名:センシュー科学 Shodex UT 806M×2
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
(a)環状ポリアリーレンスルフィドおよび(b)線状ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7110
カラム名:センシュー科学 Shodex UT 806M×2
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
<熱可塑性樹脂組成物の評価方法>
(1)溶融粘度
各実施例および比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物を、160℃真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。溶融粘度の測定装置として、キャピラリーフローメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1C型)を用いて、径0.5mm、長さ5mmのオリフィスにて、Tmax+40℃、せん断速度9728sec−1の条件で溶融粘度を測定した。ただし、熱可塑性樹脂組成物を完全に溶融させるため、5分間滞留させた後に測定を行った。この溶融粘度の値が小さいほど、高い流動性を有することを示す。
(1)溶融粘度
各実施例および比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物を、160℃真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。溶融粘度の測定装置として、キャピラリーフローメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1C型)を用いて、径0.5mm、長さ5mmのオリフィスにて、Tmax+40℃、せん断速度9728sec−1の条件で溶融粘度を測定した。ただし、熱可塑性樹脂組成物を完全に溶融させるため、5分間滞留させた後に測定を行った。この溶融粘度の値が小さいほど、高い流動性を有することを示す。
(2)成形加工性
各実施例および比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物を、160℃真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。東芝機械(株)製IS55EPN射出成形機を用いて、シリンダー温度は、Tmax+0℃、+10℃、+20℃の3種類とし、金型温度は150℃とし、射出時間と保圧時間は合わせて10秒、冷却時間は10秒の成形サイクル条件で、試験片厚み1/25インチ(約1.0mm)のASTM4号ダンベルを射出成形した。射出成形を5回実施し、成形片を5回全て採取できた場合は○、5回中1回でも金型への充填不十分または成形品を採取できなかった場合を×とした。
各実施例および比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物を、160℃真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。東芝機械(株)製IS55EPN射出成形機を用いて、シリンダー温度は、Tmax+0℃、+10℃、+20℃の3種類とし、金型温度は150℃とし、射出時間と保圧時間は合わせて10秒、冷却時間は10秒の成形サイクル条件で、試験片厚み1/25インチ(約1.0mm)のASTM4号ダンベルを射出成形した。射出成形を5回実施し、成形片を5回全て採取できた場合は○、5回中1回でも金型への充填不十分または成形品を採取できなかった場合を×とした。
(3)機械的特性
各実施例および比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物を、160℃真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。Tmax+40℃として、熱可塑性樹脂組成物を3分間加熱処理した後、240℃の温度で10分間結晶化処理することにより、厚み100μmフィルムを得た。得られたフィルムを、幅1cmで長さ5cmの短冊状に裁断し、試験片を得た。得られた試験片を、“テンシロン”(登録商標)UTA−2.5T(オリエンテック社製)に供し、ASTM−D638に準じて、23℃の温度で、湿度50%の雰囲気下で、歪み速度1mm/分で引張試験を行い、引張破断伸度を測定した。
各実施例および比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物を、160℃真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。Tmax+40℃として、熱可塑性樹脂組成物を3分間加熱処理した後、240℃の温度で10分間結晶化処理することにより、厚み100μmフィルムを得た。得られたフィルムを、幅1cmで長さ5cmの短冊状に裁断し、試験片を得た。得られた試験片を、“テンシロン”(登録商標)UTA−2.5T(オリエンテック社製)に供し、ASTM−D638に準じて、23℃の温度で、湿度50%の雰囲気下で、歪み速度1mm/分で引張試験を行い、引張破断伸度を測定した。
(4)溶融滞留安定性
各実施例および比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物を、160℃真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。Tmax+40℃として、乾燥させた熱可塑性樹脂組成物を60分間溶融滞留処理した後、240℃の温度で10分間結晶化処理することにより、厚み100μmフィルムを得た。得られた溶融滞留処理した熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムを、幅1cmで長さ5cmの短冊状に裁断し、試験片を得た。得られた試験片を、“テンシロン”(登録商標)UTA−2.5T(オリエンテック社製)に供し、ASTM−D638に準じて、23℃の温度で、湿度50%の雰囲気下で、歪み速度1mm/分で引張試験を行い、溶融滞留後の熱可塑性樹脂組成物からなる引張破断伸度を測定した。
各実施例および比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物を、160℃真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。Tmax+40℃として、乾燥させた熱可塑性樹脂組成物を60分間溶融滞留処理した後、240℃の温度で10分間結晶化処理することにより、厚み100μmフィルムを得た。得られた溶融滞留処理した熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムを、幅1cmで長さ5cmの短冊状に裁断し、試験片を得た。得られた試験片を、“テンシロン”(登録商標)UTA−2.5T(オリエンテック社製)に供し、ASTM−D638に準じて、23℃の温度で、湿度50%の雰囲気下で、歪み速度1mm/分で引張試験を行い、溶融滞留後の熱可塑性樹脂組成物からなる引張破断伸度を測定した。
(実施例1)
<工程1:反応混合物の合成>
攪拌機を具備したステンレス製オートクレーブにスルフィド化剤として48重量%の水硫化ナトリウム水溶液28.1g(水硫化ナトリウムとして0.241モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液21.1g(水酸化ナトリウムとして0.253モル)、ジハロゲン化芳香族化合物としてp−ジクロロベンゼン(p−DCB)35.4g(0.241モル)、及び有機極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)600g(6.05モル)を仕込むことで反応原料を調製した。原料に含まれる水分量は25.6g(1.42モル)であり、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり(スルフィド化剤として仕込んだ水硫化ナトリウムに含まれるイオウ原子1モル当たり)の溶媒量は約2.43Lであった。また、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり(仕込んだ水硫化ナトリウムに含まれるイオウ原子1モル当たり)の、アリーレン単位(仕込んだp−DCBに相当)の量は1.00モルであった。
<工程1:反応混合物の合成>
攪拌機を具備したステンレス製オートクレーブにスルフィド化剤として48重量%の水硫化ナトリウム水溶液28.1g(水硫化ナトリウムとして0.241モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液21.1g(水酸化ナトリウムとして0.253モル)、ジハロゲン化芳香族化合物としてp−ジクロロベンゼン(p−DCB)35.4g(0.241モル)、及び有機極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)600g(6.05モル)を仕込むことで反応原料を調製した。原料に含まれる水分量は25.6g(1.42モル)であり、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり(スルフィド化剤として仕込んだ水硫化ナトリウムに含まれるイオウ原子1モル当たり)の溶媒量は約2.43Lであった。また、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり(仕込んだ水硫化ナトリウムに含まれるイオウ原子1モル当たり)の、アリーレン単位(仕込んだp−DCBに相当)の量は1.00モルであった。
オートクレーブ内を窒素ガスで置換後に密封し、400rpmで撹拌しながら約1時間かけて室温から200℃まで昇温した。次いで200℃から250℃まで約0.5時間かけて昇温した。この段階の反応器内の圧力はゲージ圧で1.05MPaであった。その後250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱し反応させた。
高圧バルブを介してオートクレーブ上部に設置した100mL容の小型タンクにp−DCBのNMP溶液(p−DCB3.54gをNMP10gに溶解)を仕込んだ。小型タンク内を約1.5MPaに加圧後タンク下部のバルブを開き、p−DCBのNMP溶液をオートクレーブ内に仕込んだ。小型タンクの壁面をNMP5gで洗浄後、このNMPもオートクレーブ内に仕込んだ。本操作により、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位(仕込んだp−DCBの合計量に相当)は1.10モルとなった。この追加の仕込み終了後、250℃にてさらに1時間加熱を継続して反応を進行させた。その後約15分かけて230℃まで冷却した後、オートクレーブ上部に設置した高圧バルブを徐々に開放することで主としてNMPからなる蒸気を排出し、この蒸気成分を水冷冷却管にて凝集させることで、約391gの液成分を回収した後に高圧バルブを閉じて密閉した。次いで室温近傍まで急冷して、反応混合物を回収した。
得られた反応混合物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はアリーレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
得られた反応混合物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの反応消費率は97%であった。
<工程2:(b−1)線状ポリアリーレンスルフィドの回収>
上記固体分離操作により反応混合物を固液分離して固形分の線状ポリアリーレンスルフィドを得た。得られた湿潤状態の固形分に対して、約10倍量のイオン交換水を加えて分散させスラリー状とした後、80℃で15分攪拌して得られたスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過する操作を計4回繰り返した。得られた固形分を真空乾燥機70℃で3時間処理して、(b−1)線状ポリアリーレンスルフィドとしての乾燥固体を得た。
上記固体分離操作により反応混合物を固液分離して固形分の線状ポリアリーレンスルフィドを得た。得られた湿潤状態の固形分に対して、約10倍量のイオン交換水を加えて分散させスラリー状とした後、80℃で15分攪拌して得られたスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過する操作を計4回繰り返した。得られた固形分を真空乾燥機70℃で3時間処理して、(b−1)線状ポリアリーレンスルフィドとしての乾燥固体を得た。
分析の結果、得られた(b−1)線状ポリアリーレンスルフィドは、重量平均分子量は9000であった。
<工程3:(a−1)環状ポリアリーレンスルフィドの回収>
上記工程2の固液分離操作で得られた濾液100g(環状ポリアリーレンスルフィドの濃度で2wt%)を300mL容フラスコに仕込み、フラスコ内を窒素で置換した。ついで撹拌しながら100℃に加温した後80℃に冷却した。ついで系内温度80℃にて撹拌したまま、ポンプを用いて水33gを約15分かけてゆっくりと滴下した。ここで、水の滴下終了後の濾液混合物におけるNMPと水の重量比率は75:25であった。この濾液への水の添加において、水の滴下に伴い混合物の温度は約75℃まで低下し、また、混合物中に徐々に固形分が生成し、水の滴下が終了した段階では固形分が分散したスラリー状となった。このスラリーを撹拌したまま約1時間かけて約30℃まで冷却し、次いで室温近傍で約30分間撹拌を継続した後、得られたスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた固形分(母液を含む)を約100gの水に分散させ80℃で15分撹拌した後、前述同様にガラスフィルターで吸引濾過する操作を計4回繰り返した。得られた固形分を真空乾燥機70℃で3時間処理して、(a−1)環状ポリアリーレンスルフィドとしての乾燥固体を得た。
上記工程2の固液分離操作で得られた濾液100g(環状ポリアリーレンスルフィドの濃度で2wt%)を300mL容フラスコに仕込み、フラスコ内を窒素で置換した。ついで撹拌しながら100℃に加温した後80℃に冷却した。ついで系内温度80℃にて撹拌したまま、ポンプを用いて水33gを約15分かけてゆっくりと滴下した。ここで、水の滴下終了後の濾液混合物におけるNMPと水の重量比率は75:25であった。この濾液への水の添加において、水の滴下に伴い混合物の温度は約75℃まで低下し、また、混合物中に徐々に固形分が生成し、水の滴下が終了した段階では固形分が分散したスラリー状となった。このスラリーを撹拌したまま約1時間かけて約30℃まで冷却し、次いで室温近傍で約30分間撹拌を継続した後、得られたスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた固形分(母液を含む)を約100gの水に分散させ80℃で15分撹拌した後、前述同様にガラスフィルターで吸引濾過する操作を計4回繰り返した。得られた固形分を真空乾燥機70℃で3時間処理して、(a−1)環状ポリアリーレンスルフィドとしての乾燥固体を得た。
(a−1)環状ポリアリーレンスルフィドをHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環状ポリアリーレンスルフィドであることがわかった。また、乾燥固体中の(a−1)環状ポリアリーレンスルフィドの含有率は、89重量%であった。HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)。
<熱可塑性樹脂組成物>
上記で得られた(a−1)環状ポリアリーレンスルフィド、(b−1)線状ポリアリーレンスルフィド、および(B−1)をそれぞれ10:10:80で示す質量比で粉末混合し、東洋精機製バッチ式二軸混練機(ラボプラストミル)を用いて、設定温度380℃、スクリュー回転数50rpmにて2分間、組成比に変化が生じない条件にて溶融混練を行い、熱可塑性樹脂組成物を得た。
上記で得られた(a−1)環状ポリアリーレンスルフィド、(b−1)線状ポリアリーレンスルフィド、および(B−1)をそれぞれ10:10:80で示す質量比で粉末混合し、東洋精機製バッチ式二軸混練機(ラボプラストミル)を用いて、設定温度380℃、スクリュー回転数50rpmにて2分間、組成比に変化が生じない条件にて溶融混練を行い、熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は32Pa・sであった。その他の物性を表1に示す。実施例1の熱可塑性樹脂組成物のTmaxは、346℃であった。
(実施例2〜7、比較例1〜4および9)
原料を表1、2に示す組成に変更する以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。結果を表1、2に示す。いずれも、熱可塑性樹脂組成物のTmaxは、346℃であった。
原料を表1、2に示す組成に変更する以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。結果を表1、2に示す。いずれも、熱可塑性樹脂組成物のTmaxは、346℃であった。
(比較例5)
<(b−2)線状ポリアリーレンスルフィドの調整>
撹拌機を具備した1リットルオートクレーブに水硫化ナトリウム(NaSH)の48重量%水溶液を49.01g(NaSH23.92g(0.43モル))、水酸化ナトリウム(NaOH)の48重量%水溶液を37.33g(NaOH17.92g(0.45モル))、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)533mL、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)188.16g(1.28モル)を仕込んだ。ここでの原料混合物中のスルフィド化剤のイオウ原子1モルに対する有機極性溶媒は1.25リットルであった。原料混合物(f)中のスルフィド化剤のイオウ原子1モルに対するp−DCBは2.98であった。反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密封した後、400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで1時間かけて昇温した。次いで、230℃まで30分かけて昇温した。230℃で3時間保持した後、室温近傍まで急冷しオリゴマー組成物を調製した。
<(b−2)線状ポリアリーレンスルフィドの調整>
撹拌機を具備した1リットルオートクレーブに水硫化ナトリウム(NaSH)の48重量%水溶液を49.01g(NaSH23.92g(0.43モル))、水酸化ナトリウム(NaOH)の48重量%水溶液を37.33g(NaOH17.92g(0.45モル))、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)533mL、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)188.16g(1.28モル)を仕込んだ。ここでの原料混合物中のスルフィド化剤のイオウ原子1モルに対する有機極性溶媒は1.25リットルであった。原料混合物(f)中のスルフィド化剤のイオウ原子1モルに対するp−DCBは2.98であった。反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密封した後、400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで1時間かけて昇温した。次いで、230℃まで30分かけて昇温した。230℃で3時間保持した後、室温近傍まで急冷しオリゴマー組成物を調製した。
得られたオリゴマー組成物を130℃で減圧濃縮して得られた固体に、約2000gのイオン交換水に分散させ、80℃で15分攪拌したのちに、平均目開き10〜16マイクロメートルのガラスフィルターで濾過した。得られたフィルターオン成分を、再度同様にイオン交換水に分散させ、80℃で15分攪拌したのちに、ろ過を行う操作を計3回行い、白色固体を得た。これを100℃で一晩真空乾燥し、赤外分光分析において吸収スペクトルより、白色個体は(b−2)線状ポリアリーレンスルフィドであることを確認した。また、GPC測定の結果、重量平均分子量は1800であった。
得られた(b−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。結果を表2に示す。比較例5の熱可塑性樹脂組成物のTmaxは、346℃であった。
(比較例6)
<(b−3)線状ポリアリーレンスルフィドの調整>
撹拌機付きのステンレス製反応器1に48%水硫化ナトリウム水溶液1169kg(10kmol)、48%水酸化ナトリウム水溶液841kg(10.1kmol)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を1983kg(20kmol)、50%酢酸ナトリウム水溶液322kg(1.96kmol)を仕込み、常圧で窒素を通じながら約240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水1280kgおよびNMP26kgを留出した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
<(b−3)線状ポリアリーレンスルフィドの調整>
撹拌機付きのステンレス製反応器1に48%水硫化ナトリウム水溶液1169kg(10kmol)、48%水酸化ナトリウム水溶液841kg(10.1kmol)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を1983kg(20kmol)、50%酢酸ナトリウム水溶液322kg(1.96kmol)を仕込み、常圧で窒素を通じながら約240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水1280kgおよびNMP26kgを留出した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
次いで、約200℃まで冷却した後、内容物を別の攪拌機付きのステンレス製反応器2に移送した。反応器1にNMP932kgを仕込み内部を洗浄し、洗浄液を反応器2に移した。次に、p−ジクロロベンゼン1477kg(10.0kmol)を反応器2に加え、窒素ガス下に密封し、撹拌しながら200℃まで昇温した。次いで200℃から270℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、この温度で140分保持した。水353kg(19.6kmol)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、約80℃まで急冷し、スラリー1を得た。
このスラリー1を2623kgのNMPで希釈しスラリー2を得た。80℃に加熱したスラリー2をふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、メッシュオン成分としてスラリーを含んだ顆粒状PPS樹脂を、濾液成分としてスラリー3を得た。
得られたスラリーを含んだ顆粒状PPS樹脂100kgにNMP約250kgを加えて85℃で30分間洗浄し、ふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別した。得られた固形物を500kgのイオン交換水で希釈して、70℃で30分撹拌後、80メッシュふるいで濾過して固形物を回収する操作を合計5回繰り返した。このようにして得られた固形物を、窒素雰囲気下130℃で乾燥し、顆粒状の(b−3)線状ポリアリーレンスルフィドを得た。
得られたスラリーを含んだ顆粒状PPS樹脂100kgにNMP約250kgを加えて85℃で30分間洗浄し、ふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別した。得られた固形物を500kgのイオン交換水で希釈して、70℃で30分撹拌後、80メッシュふるいで濾過して固形物を回収する操作を合計5回繰り返した。このようにして得られた固形物を、窒素雰囲気下130℃で乾燥し、顆粒状の(b−3)線状ポリアリーレンスルフィドを得た。
得られた(b−3)線状ポリアリーレンスルフィドは、GPC測定を行った結果、重量平均分子量は48600であった。得られた(b−3)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。結果を表2に示す。比較例6に記載の熱可塑性樹脂組成物のTmaxは、346℃であった。
(比較例7、8)
原料を表2に示す組成に変更する以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。結果を表2に示す。いずれも、熱可塑性樹脂組成物のTmaxは、346℃であった。
原料を表2に示す組成に変更する以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。結果を表2に示す。いずれも、熱可塑性樹脂組成物のTmaxは、346℃であった。
実施例1〜7と比較例1〜9の比較により、特定分子量の(a)環状ポリアリーレンスルフィドと特定分子量の(b)線状ポリアリーレンスルフィドからなる(A)ポリアリーレンスルフィドと(B)熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物は、成形加工性、機械的特性、および溶融滞留安定性を両立できることがわかる。
実施例1と比較例1の比較により、特定分子量の(a)環状ポリアリーレンスルフィドと特定分子量の(b)線状ポリアリーレンスルフィドからなる(A)ポリアリーレンスルフィドを含むことで、成形加工性に優れることがわかる。
実施例1と比較例2、実施例7、8と比較例3、4の比較により、(A)ポリアリーレンスルフィドが特定分子量の(a)環状ポリアリーレンスルフィドと特定分子量の(b)線状ポリアリーレンスルフィドの両方を含むことで、成形加工性と溶融滞留安定性を両立できることがわかる。
実施例1と比較例5、6の比較により、(b)線状ポリアリーレンスルフィドを特定の分子量とすることで、成形加工性、機械的特性、および溶融滞留安定性を両立することができる。
実施例1と比較例7、8の比較により、(a)環状ポリアリーレンスルフィドと特定分子量の(b)線状ポリアリーレンスルフィドの両方を含むことで、成形加工性、機械的特性、および溶融滞留安定性を両立することができる。
実施例1〜4と比較例9の比較により、特定量の(A)ポリアリーレンスルフィドを含むことで、機械的特性および溶融滞留安定性を向上させることができる。
実施例4と実施例5の比較により、特定量の(b)線状ポリアリーレンスルフィドを含むことで、機械的特性および溶融滞留安定性をより向上させることができる。
Claims (5)
- (A)ポリアリーレンスルフィド、および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物であって、(A)ポリアリーレンスルフィドが、(a)重量平均分子量が5000以下の環状ポリアリーレンスルフィドと(b)重量平均分子量が5000を超え15000未満の線状ポリアリーレンスルフィドを含み、
前記(B)100質量部に対し、前記(A)が1質量部以上67質量部未満である、熱可塑性樹脂組成物。 - 前記(B)100質部に対し、前記(b)が0.05質量部以上30質量部以下である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記(B)のガラス転移温度が110℃以上である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃における、1時間滞留後の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品の引張破断伸度が4%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品。
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