JP2017057367A - 熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】靱性、耐熱性のバランスに優れた成形品を得ることのできる熱可塑性樹脂組成物の提供。【解決手段】(A)ポリアリーレンスルフィド及び(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物であって、(A)ポリアリーレンスルフィドを主成分とする(A)相及び(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を主成分とする(B)相を有する相分離構造を有し、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)の観察画像から求める(A)相および(B)相の合計100体積%に対する(B)相の体積分率(b2)(%)、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の配合量の合計100体積%に対する(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の配合量の体積分率(b1)(%)が、式[1]を満たす。{(b1)−(b2)}/(b1)≧0.5[1]【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィドおよびポリアリーレンスルフィドを除く熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物とその製造方法に関するものである。
近年、高分子材料は、日常用品はもとより、自動車、航空機、エレクトロニクスデバイス、メディカルデバイス等、あらゆる産業分野にわたる様々な用途において幅広く使用されている。この理由の一つとして、高分子材料が、その一次構造から高次構造の制御によって、各分野、用途のニーズに柔軟に対応し得たことが挙げられる。中でも、ポリフェニレンスルフィドに代表されるポリアリーレンスルフィドは、優れた耐熱性、難燃性、耐薬品性、寸法安定性、剛性および電気絶縁性など、エンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、射出成形用途を中心として、各種自動車部品、機械部品、電気・電子部品などの用途に使用されている。しかしながら、ナイロンやPBTなどの他のエンジニアリングプラスチックに比べて靭性が低く、ガラス転移温度が低いことから、靱性と耐熱性のさらなる向上が求められている。
高分子材料の高次構造制御技術の一つとして、ポリマーアロイ化技術が挙げられる。本技術は、異なる物性を有する樹脂を組合せ、各々の樹脂の長所を引き出し、短所を補い合うことにより、単一の樹脂に比べて優れた特性を発揮させる技術のことであり、その特性は、原料樹脂の物性、樹脂の分散相サイズと均一性により、大きく変化する。
ポリマーアロイ化技術として、これまでに、例えば、特定のポリフェニレンスルフィド樹脂と熱可塑性樹脂からなる、構造周期0.01〜1μmの両相連続構造または粒子間距離0.01〜1μmの分散構造を有するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、少なくとも2成分以上の熱可塑性樹脂からなり、構造周期が0.001〜1μmの両相連続構造または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造であるポリマーアロイにおいて、構造周期または粒子間距離が0.001μm以上0.1μm未満の場合は小角X線散乱測定において、構造周期または粒子間距離が0.1μm以上1μm以下の場合は光散乱測定において、散乱光の波数に対して散乱強度をプロットしたスペクトルにおけるピーク半値幅(a)、該ピークの極大波数(b)とするとき0<(a)/(b)≦1.2であることを特徴とするポリマーアロイが提案されている(例えば、特許文献2参照)。これらの技術により得られるポリマーアロイは、微細な相分離構造を形成している上、優れた規則性を有するため、衝撃強度や引張強度といった機械特性が良好であるといった特徴を有しているものの、靱性と耐熱性のさらなる向上が求められている。
特開2008−231249号公報 国際公開第2009/041335号
本発明は、上記背景技術の課題に鑑み、靱性、耐熱性のバランスに優れた成形品を得ることのできる熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
[1](A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の合計100体積%に対し、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体を70〜99.5体積%、(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を0.5〜30体積%含む混合物の(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体をポリアリーレンスルフィドに転化して得られる、(A)ポリアリーレンスルフィドおよび(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物であって、(A)ポリアリーレンスルフィドを主成分とする(A)相および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を主成分とする(B)相を有する相分離構造を有し、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)の観察画像から求める(A)相および(B)相の合計100体積%に対する(B)相の体積分率(b2)(%)、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の配合量の合計100体積%に対する(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の配合量の体積分率(b1)(%)が、下記式[1]を満たす熱可塑性樹脂組成物。
{(b1)−(b2)}/(b1)≧0.5 [1]
[2]前記(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体が(C)下記一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドを含む[1]記載の熱可塑性樹脂組成物。
Figure 2017057367
(上記一般式(2)中、Arはアリーレン基を表し、mは2〜50の範囲を表す。)
[3]前記(C)一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドを含む(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体の290℃における粘度が0.025Pa・s以下である[2]記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]前記(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を主成分とする(B)相の平均粒子径が0.001〜10μmである[1]〜[3]いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5]前記(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂のガラス転移温度が100℃以上である[1]〜[4]いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6]前記熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、さらに(D)充填材を10〜150重量部含有することを特徴とする[1]〜[5]いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7][1]〜[6]いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
[8](A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の合計100体積%に対し、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体70〜99.5体積%、(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂0.5〜30体積%を配合し、250〜350℃に加熱して相溶させた後、撹拌しながら250〜450℃に加熱することにより(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体をポリアリーレンスルフィドに転化する[1]〜[5]いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
[9](A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の合計100体積%に対し、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体70〜99.5体積%、(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂0.5〜30体積%を配合し、250〜350℃に加熱して相溶させた後、撹拌しながら250〜450℃に加熱することにより(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体を(A)ポリアリーレンスルフィドに転化してなる熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、さらに(D)充填材を10〜150重量部を配合し溶融混練することを特徴とする[6]に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
本発明の熱可塑性樹脂組成物により、靱性、耐熱性のバランスに優れた成形品を得ることができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」と記載する場合がある)は、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂(以下、「(B)熱可塑性樹脂」と記載する場合がある)を含む混合物(以下、「混合物」と記載する場合がある)の(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体をポリアリーレンスルフィドに転化して得られ、(A)ポリアリーレンスルフィドおよび(B)熱可塑性樹脂を含む。ポリアリーレンスルフィドを含むことにより、成形品の剛性を向上させることができる。なお、(A)ポリアリーレンスルフィドは、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体を、加熱その他の処理によって(A)ポリアリーレンスルフィドに転化させることにより得ることができる。また、(B)熱可塑性樹脂を含むことにより、成形品の靱性および耐熱性を向上させることができる。ここで、本発明は、混合物に含まれる(B)熱可塑性樹脂が、樹脂組成物における(A)相に特定量相溶した状態の樹脂組成物であることを特徴とし、当該樹脂組成物の状態を構造で特定することは実際的ではない。したがって、本発明は、(A’)成分と(B)成分を含む混合物における(B)成分の配合比率と、当該混合物を転化し得られた(A)成分と(B)成分を含む樹脂組成物における(B)相の比率とにより発明を特定するものである。
本発明に用いられる(A)ポリアリーレンスルフィドの代表的なものとして、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンスルフィドケトンや、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、p−フェニレンスルフィド由来の繰り返し単位を全繰り返し単位中80モル%以上含有するポリフェニレンスルフィドがより好ましく、90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィドがさらに好ましい。
ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は10,000以上が好ましく、15,000以上がより好ましい。ここで、ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求めることができる。
また、後述する(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体のポリアリーレンスルフィドへの転化率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
本発明に用いられる混合物は、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)熱可塑性樹脂を含む。(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)熱可塑性樹脂が均一に混合されていることが好ましい。
本発明において、(A)ポリアリーレンスルフィドを形成するために用いられる(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体としては、例えば、環状ポリアリーレンスルフィドが挙げられる。環状ポリアリーレンスルフィドは、加熱によりポリアリーレンスルフィドに転化し、成形品の剛性を向上させることができる。
本発明で用いられる環状ポリアリーレンスルフィドは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環状物である。ここで、Arはアリーレン基、Sはスルフィドを表す。なお、「主要構成単位」とは、全繰り返し単位中50モル%以上を占める繰り返し単位を指し、当該繰り返し単位を80モル%以上含有することが好ましい。環状ポリアリーレンスルフィドは、(C)下記一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドを含むことが好ましく、環状ポリアリーレンスルフィド中、(C)を80体積%以上含むことが好ましい。
Figure 2017057367
一般式(2)において、Arはアリーレン基を表す。アリーレン基としては、例えば、下記一般式(3)〜(11)などで表される基などが挙げられる。中でも下記一般式(3)で表される基が好ましい。
Figure 2017057367
上記一般式(3)〜(11)中、R1およびR2は、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基またはハロゲン基を表し、R1およびR2は同一でも異なっていてもよい。複数のR1およびR2はそれぞれ同一でも異なってもよい。R3およびR4は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基またはハロゲン基を表し、同一でも異なっていてもよい。R5は、炭素原子数1〜12の飽和炭化水素基を表す。また、aおよびbは0〜2の範囲を表し、同一でも異なっていてもよい。Aは、カルボニル基、スルホニル基またはエーテル結合を表す。
なお、前記一般式(2)においては、異なる−(Ar−S)−の繰り返し単位をランダムに含んでもよいし、ブロックで含んでもよく、それらを両方含んでもよい。また、Arとして、前記一般式(3)〜(11)で表される基を2種以上含んでもよい。
前記一般式(2)における繰り返し数mは、2〜50である。mが大きくなると相対的に粘度が上昇するため、Arの種類によっては環式ポリアリーレンスルフィドの溶融解温度が高くなり、取り扱い性に劣る傾向にあるが、50以下であれば、取り扱い性に優れる。25以下が好ましく、20以下がさらに好ましい。一方、mは3以上が好ましい。ここで、前記一般式(2)における繰り返し数mは、NMRおよび質量分析により構造解析を行うことで求めることができる。
また、前記一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドは、単一の繰り返し数mを有する化合物のみを含んでもよいし、異なる繰り返し数mを有する化合物を含んでもよいか、異なる繰り返し数を有する化合物を含むもののほうが、単一の繰り返し数を有する化合物のみを含むものよりも溶融解温度が低い傾向にあり、(A)ポリアリーレンスルフィドへの転化を行う際の温度をより低くできるため好ましい。
前記一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドの代表的なものとして、環状ポリアリーレンスルフィド、環状ポリアリーレンスルフィドスルホン、環状ポリアリーレンスルフィドケトンや、これらの繰り返し単位を含む環状ランダム共重合体、環状ブロック共重合体などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、p−フェニレンスルフィド由来の単位を全繰り返し単位中80モル%以上含有する環状ポリフェニレンスルフィドがより好ましく、90モル%以上含有する環状ポリフェニレンスルフィドがさらに好ましい。
本発明における(C)一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は、5,000未満が好ましく、4,000以下がより好ましく、3,000以下がさらに好ましい。重量平均分子量が5,000未満であれば、粘度が適度に抑えられ、取り扱い性に優れる。一方、重量平均分子量の下限値には特に制限はないが、300以上が好ましく、500以上がより好ましい。ここで、環状ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求めることができる。
本発明における(C)一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドを含む(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体の290℃における粘度は、0.025Pa・s以下が好ましく、0.020Pa・s以下がさらに好ましい。粘度が0.025Pa・s以下であると、混合物中における(B)熱可塑性樹脂との相溶性が向上するため、靱性および耐熱性がより向上する。
ここで、(C)一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドを含む(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体の290℃における粘度は、溶融時の粘度(η)を指し、回転式レオメーターを用いた回転粘度測定により、剪断速度100(1/s)の条件で測定することができる。
290℃における粘度が0.025Pa・s以下である(C)一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドを得る方法としては、例えば、後述する製造方法が挙げられる。
前記環状ポリアリーレンスルフィドは、例えば、スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒を含む反応混合物を加熱して反応させる方法により得ることができる。スルフィド化剤としては、例えば、硫化ナトリウムなどのアルカリ金属の硫化物が挙げられる。ジハロゲン化芳香族化合物としては、例えば、ジクロロベンゼンなどが挙げられる。有機極性溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
環状ポリアリーレンスルフィドを効率よく製造する観点から、反応混合物の常圧下における還流温度を超えて加熱することが望ましい。反応温度は180〜320℃が好ましく、225〜300℃がより好ましい。また、一定温度で反応させる1段階反応、段階的に温度を上げて反応させる多段反応、連続的に温度を変化させて反応させる形式のいずれでもかまわない。
反応時間は0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。一方、反応時間に特に上限はなく、40時間以内でも十分に反応が進行し、6時間以内が好ましい。
また、反応時の圧力に特に制限はなく、ゲージ圧で0.05MPa以上が好ましく、0.3MPa以上がより好ましい。前記好ましい反応温度においては反応混合物の自圧による圧力上昇が発生するため、この様な反応温度における圧力は、ゲージ圧で0.25MPa以上が好ましく、0.3MPa以上がより好ましい。一方、反応時の圧力は10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましい。反応時の圧力を前記好ましい範囲とするために、反応を開始する前や反応中など任意の段階で、好ましくは反応を開始する前に、不活性ガスにより反応系内を加圧することも好ましい方法である。なお、ここでゲージ圧とは大気圧を基準とした相対圧力のことであり、絶対圧から大気圧を差し引いた圧力差と同意である。
本発明においては、反応混合物を反応させる過程の全過程に渡って有機カルボン酸金属塩を存在させてもよいし、一部の過程においてのみ有機カルボン酸金属塩を存在させてもよい。
上記反応により、少なくとも環状ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含む反応生成物が得られる。この反応生成物を固液分離することにより、環状ポリアリーレンスルフィドを得ることができる。
反応生成物の固液分離を行う温度は、前記有機極性溶媒の常圧における沸点以下が好ましい。具体的な温度としては、有機極性溶媒の種類にもよるが、10℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。一方、110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。上記温度範囲とすることにより、290℃における粘度が0.025Pa・s以下である環状ポリアリーレンスルフィドを容易に得ることができる。
本発明に用いられる(B)熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が100℃以上であることが好ましい。(B)熱可塑性樹脂のガラス転移温度が100℃以上であると、成形品の耐熱性をより向上させることができる。150℃以上がより好ましい。(B)熱可塑性樹脂のガラス転移温度は高いほど耐熱性の向上効果が高いが、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体との相溶性および加工性の観点から、350℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。
ここで、(B)熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121−1987に記載される方法に従い、20℃/分の昇温条件における示差走査熱量測定(DSC測定)により求められる中間点ガラス転移温度を指す。
本発明に用いられる(B)熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリイミド(ガラス転移温度:200℃〜320℃)、ポリエーテルエーテルケトン(ガラス転移温度:150〜170℃)、ポリエーテルケトンケトン(ガラス転移温度:150〜170℃)、ポリスルホン(ガラス転移温度:190℃)、ポリアリレート(ガラス転移温度:195℃)、ポリフェニレンエーテル(ガラス転移温度:210℃)、ポリカーボネート(ガラス転移温度:150℃)などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、成形品の耐熱性および耐久性をより向上させる観点から、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテルが好ましく、ポリイミド、ポリフェニレンエーテルがより好ましい。
ポリイミドは、繰り返し単位にイミド結合を有する重合体である。本発明においては、繰り返し単位にイミド結合およびエーテル結合を有するポリエーテルイミドもポリイミドに分類する。ポリイミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、SABICイノベーティブプラスチックス社製“Ultem”(登録商標)1000、“Ultem”1010、“Ultem”1040、“Ultem”5000、“Ultem”6000、“Ultem”XH6050、“Extem”(登録商標)XHおよび“Extem”UH、三井化学(株)製“オーラム”(登録商標)PD450Mなどとして上市されているものを入手して用いることもできる。
ポリエーテルエーテルケトンは、ベンゼン環をエーテル結合、エーテル結合、ケトン結合を介して配した重合体である。特に限定されるものではないが、例えば、ダイセル・エボニック(株)製“ベスタキープ”(登録商標)、ビクトレックス・ジャパン(株)製“VICTREX”(登録商標)などとして上市されているものを入手して用いることもできる。
ポリエーテルケトンケトンは、ベンゼン環をエーテル結合、ケトン結合、ケトン結合を介して配した重合体である。特に限定されるものではないが、例えば、Cytec Fiberite社製“Cypek”(登録商標)、アルケマ(株)製“KEPSTAN”(登録商標)などとして上市されているものを入手して用いることもできる。
また、ポリエーテルケトンケトンのガラス転移温度は150〜170℃であることが好ましい。ガラス転移温度が150℃以上であれば、得られる成形品の耐熱性をより向上させることができる。一方、ガラス転移温度が170℃以下であれば、(C)環状ポリフェニレンスルフィドとの相溶性および加工性をより向上させることができる。
ポリフェニレンエーテルは、下記一般式(12)で表される繰り返し単位を主要構成単位とする重合体であり、下記一般式(12)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位中80モル%以上含有することが好ましい。
Figure 2017057367
上記一般式(12)中、R6〜R9は、水素、ハロゲン、置換されていてもよい炭化水素基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。炭化水素基の炭素数は1〜3が好ましい。nは2〜50の範囲を表し、10〜30が好ましい。
ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)などが挙げられる。また、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば2,3,6,−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体などのポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。なかでも、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)および2,6−ジメチルフェノールと2,3,6,−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)がより好ましい。
本発明に用いられる混合物は、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)熱可塑性樹脂の合計100体積%に対し、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体を70〜99.5体積%、(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を0.5〜30体積%含む。(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体配合量が70体積%未満で(B)熱可塑性樹脂配合量が30体積%を超える場合、成形品の剛性が低下する。(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体配合量が75体積%以上、(B)熱可塑性樹脂配合量が25体積%以下であることが好ましい。一方、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体配合量が99.5体積%を超え、(B)熱可塑性樹脂配合量が0.5体積%未満の場合、成形品の靱性および耐熱性が低下する。(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体配合量が99体積%以下、(B)熱可塑性樹脂配合量が1体積%以上であることが好ましい。
本発明に用いられる混合物は、320℃において(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体と(B)熱可塑性樹脂が相溶していることが好ましい。ここで言う、相溶している状態とは、320℃の混合物を、光学顕微鏡を用いて100倍に拡大して観察した際に、未溶解の塊状物や凝集物が確認できない状態のことを指す。320℃においてこれらが相溶している場合、後述する樹脂組成物において、ポリアリーレンスルフィドを含む(A)相に、(B)熱可塑性樹脂の一部をより相溶させやすいため好ましい。なお、320℃より高い温度では、短時間で(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体がポリアリーレンスルフィドに転化し始めてしまう傾向があり、320℃より低い温度では(B)熱可塑性樹脂と(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体との相溶性が低下する傾向にあるため、320℃における相溶性を確認することが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリアリーレンスルフィドを主成分として含む(A)相および(B)熱可塑性樹脂を主成分として含む(B)相を有する相分離構造を有し、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)の観察画像より求める(A)相および(B)相の合計100体積%に対する(B)相の体積分率(b2)(%)、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の配合量の合計100体積%に対する(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の配合量の体積分率(b1)(%)が、下記式[1]を満たす熱可塑性樹脂組成物である。{(b1)−(b2)}/(b1)の値は、相分離構造において(B)熱可塑性樹脂が占める割合の、(B)熱可塑性樹脂の配合割合に対する変化を表し、この値が大きいほど、ポリアリーレンスルフィドを主成分として含む(A)相に、(B)熱可塑性樹脂が一部相溶していることを意味する。ここで、本発明における(A)相および(B)相は、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)により得られた電子顕微鏡写真を、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて二値化し、その二値画像より連続相と同一の色の領域を(A)相、もう一方の色の領域を(B)相とすることで判別できる。二値化における閾値は、画像解析ソフト(ImageJ)にて得られる双峰性濃度ヒストグラムの谷の極小値となる階調に設定する。
{(b1)−(b2)}/(b1)≧0.5 [1]
{(b1)−(b2)}/(b1)が0.5未満であると、(A)相への(B)熱可塑性樹脂の相溶が不十分であり、靱性、耐熱性が低下する。{(b1)−(b2)}/(b1)は0.6以上がより好ましい。一方、0.99以下が好ましく、(B)熱可塑性樹脂の特性を保ち、靱性、耐熱性をより向上させることができる。
{(b1)−(b2)}/(b1)を0.5以上とする手段としては、本発明に用いられる混合物中の(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体と(B)熱可塑性樹脂との相溶性を向上することが好ましく、例えば、前述の290℃における粘度が0.025Pa・s以下である(C)一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドを用いる方法などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)の観察画像において、(B)熱可塑性樹脂を主成分として含む(B)相の平均粒子径は、0.001〜10μmが好ましい。(B)相の平均粒子径が0.001μm以上であると、(B)熱可塑性樹脂の特性が効果的に発現され、靭性および耐熱性をより向上させることができる。一方、(B)相の平均粒子径が10μm以下であると、靭性をより向上させることができる。1μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましい。
(B)相の平均粒子径を0.001〜10μmとする手段としては、本発明に用いられる混合物中の(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体と(B)熱可塑性樹脂との相溶性を向上させることが好ましく、例えば、前述の290℃における粘度が0.025Pa・s以下である(C)一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドを用いる方法などが挙げられる。
ここで、本発明における(B)相の平均粒子径は、次の方法により測定することができる。一般的な成形条件であれば、成形前後で(B)相の平均粒子径は変化しないことから、本発明においては、樹脂組成物から得られるフィルムを用いて測定する。まず、樹脂組成物を加熱プレスして厚さ100μmのフィルムを作製し、ダイヤモンドナイフにより約2mm×約1mmの断面観察用サンプルを作製する。電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)FE−8220((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧5kV、エミッション電流12μAの条件で、1000〜2万倍に拡大してサンプル表面を観察する。この電子顕微鏡写真から(B)熱可塑性樹脂を含む島相である(B)相を無作為に100個選び、各々の長径を測定し、その数平均値を平均粒子径とする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば、前記一般式(2)で表される(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)熱可塑性樹脂を含む混合物を加熱することにより、前記(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体をポリアリーレンスルフィドに転化することで得られる。(C)一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドおよび(B)熱可塑性樹脂の合計100体積%に対し、(C)一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィド10〜99体積%、(B)熱可塑性樹脂1〜90体積%を配合し、250〜350℃に加熱して相溶させた後、撹拌しながら250〜450℃に加熱することにより(C)一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドをポリアリーレンスルフィドに転化することがより好ましい。
本発明に用いられる混合物は、例えば、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)熱可塑性樹脂をそれぞれ粉末化し、粉末状態で混合する方法や、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)熱可塑性樹脂を両成分の良溶媒に溶解し、減圧や加熱により溶媒を除去する方法などにより得ることができる。得られた混合物を加熱することにより、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)熱可塑性樹脂を相溶させることができる。
本発明に用いられる混合物における(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)熱可塑性樹脂を相溶させるときの加熱温度は、250℃〜350℃が好ましく、混合物の組成や分子量、加熱時の環境に応じて適宜選択することができる。加熱温度を250℃以上とすることにより、より短時間で(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)熱可塑性樹脂を相溶させることができる。加熱温度は260℃以上が好ましく、270℃以上がより好ましい。一方、加熱温度を350℃以下とすることにより、短時間で(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体がポリアリーレンスルフィドに転化することを抑制することができ、(B)熱可塑性樹脂と(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体との相溶性が向上する。加熱温度は340℃以下が好ましく、330℃以下がより好ましい。
前記混合物を加熱して(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体を(A)ポリアリーレンスルフィドに転化する方法としては、例えば、通常の重合反応装置を用いて加熱する方法、プレス成形装置や成形品を製造する型内で加熱する方法、押出機などの溶融混練機を用いて加熱する方法などが挙げられる。バッチ方式、連続方式などが挙げられる。加熱装置としては、加熱機構を具備した装置であれば特に制限なく用いることができる。
本発明に用いられる混合物における(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体を(A)ポリアリーレンスルフィドに転化させるときの加熱温度は、250℃〜450℃が好ましく、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体の組成や分子量、加熱時の環境に応じて適宜選択することができる。加熱温度を250℃以上とすることにより、より短時間で(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体を(A)ポリアリーレンスルフィドに転化することができる。加熱温度は280℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましく、320℃以上がさらに好ましい。一方、加熱時間を450℃以下とすることにより、分解反応等の副反応を抑制することができる。加熱温度は420℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、380℃以下がさらに好ましい。
加熱時間は、混合物の特性、加熱温度などの条件に応じて適宜選択することができる。(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体を(A)ポリアリーレンスルフィドに十分転化する観点から、0.01時間以上が好ましく、0.05時間以上がより好ましい。一方、分解反応等の副反応を抑制する観点から、10時間以下が好ましく、3時間以下がさらに好ましい。
(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体の(A)ポリアリーレンスルフィドへの転化は、非酸化性雰囲気および/または減圧条件下で行うことが好ましい。反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることがより好ましい。これにより、架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(A)ポリアリーレンスルフィドが接する気相における酸素濃度が5体積%以下である雰囲気を指す。酸素濃度は2体積%以下がより好ましく、酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることがより好ましい。特に、経済性および取扱いの容易さの観点から、窒素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは、反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下がさらに好ましい。50kPa以下の減圧条件とすることにより、架橋反応など好ましくない副反応をより抑制することができる。一方、下限としては、0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上がより好ましい。0.1kPa以下の減圧条件とすることにより、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体に含まれる低分子量成分の揮散をより抑制することができる。
本発明に用いられる混合物および本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物などの離型剤、防食剤、着色防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などの任意の添加剤を含有することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を奏しない範囲において、必要に応じて(D)充填材を含有してもよい。(D)充填材を含有することにより、成形品の強度および寸法安定性等を向上させることができる。充填材の形状としては、繊維状、非繊維状などが挙げられ、繊維状充填材と非繊維状充填材を組み合わせてもよい。
繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などが挙げられる。非繊維状充填材としては、例えば、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素および炭化珪素などが挙げられる。これらは中空であってもよく、これら充填材を2種以上併用することも可能である。また、これら充填材は、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理されていてもよく、成形品の強度をより向上させることができる。中でも樹脂組成物の強度向上効果を得る上で、繊維状充填材が好ましく、ガラス繊維、炭素繊維であることがより好ましく、さらに材料コストの観点からガラス繊維であることが特に好ましい。
(D)充填材を含有する場合、その含有量は特に制限はないが、(A)ポリアリーレンスルフィドと(B)熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、10〜150重量部が好ましく、20〜100重量部の範囲がより好ましく、30〜80重量部の範囲がさらに好ましい。なお、(D)充填材の含有量を10重量部以上とすることで剛性を向上させることができる。一方、(D)充填材の含有量が150重量部以下とすることで靭性の大きな低下を抑制することができる。これらの充填材は、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の合計100体積%に対し、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体70〜99.5体積%、(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂0.5〜30体積%を配合し、250〜350℃に加熱して相溶させた後、撹拌しながら250〜450℃に加熱することにより(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体を(A)ポリアリーレンスルフィドに転化した後であれば任意の方法で配合することが可能であり、例えば、添加後の樹脂組成物をペレタイズし、(D)充填材を配合した後溶融混練する方法や、ペレタイズしたペレットを溶融混練する際にサイドフィードする方法等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、成形品の耐熱性を向上させることができるため、例えば、耐熱性が要求される自動車部品や電機部品などの用途に好適に使用することができる。
本発明の樹脂組成物は、任意の方法により成形することができる。成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などを挙げることができる。これらを2種以上組み合わせてもよい。中でも射出成形は、射出後、金型内で熱処理と構造固定化が同時にできることから好ましい。また、フィルムおよび/またはシートの押出成形は、延伸時に熱処理し、その後の巻き取り前に自然冷却することにより構造固定化が可能であるため好ましい。成形品の形状は特に限定されず、例えば、フィルムやシート、チューブ、繊維、任意形状の射出成形体などが挙げられる。例えば、フィルムおよび/またはシートに成形する方法としては、単軸押出機や2軸押出機などの押出機を用いて樹脂組成物をTダイから溶融押出し、キャストドラムで冷却固化してシート化する方法、溶融押出シートを2つのロール間で成形するポリッシング方法やカレンダーリング方法などが挙げられる。また、溶融押出した溶融樹脂をキャストドラムにキャストする際、溶融樹脂をキャストドラムに密着させる方法としては、例えば、静電印加を与える方法、エアーナイフを用いる方法、キャストドラムに対向する押さえのドラムを用いる方法等を挙げることができる。
本発明の成形品は、コネクター、コイル、センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電子部品用途、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネットなどの電気機器部品用途、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク、DVD等の音声・映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭、事務電気製品部品用途、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品用途、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品用途、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース等の自動車・車両関連部品用途等々、各種用途に適用できる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。各実施例において用いた(B)熱可塑性樹脂および(D)充填材を以下に示す。
(B)熱可塑性樹脂
・ポリエーテルイミド(SABICイノベーティブプラスチックス社製“Ultem”(登録商標)1000、JIS K7121−1987に従って測定したガラス転移温度:210℃)
・ポリスルホン(ソルベイ社製“ユーデル”(登録商標)P−3500、JIS K7121−1987に従って測定したガラス転移温度:190℃)。
・ポリイミド(三井化学製“AURUM” (登録商標)PD450、JIS K7121−1987に従って測定したガラス転移温度:250℃)
(D)充填材
・ガラス繊維(旭ファイバーグラス社製T747)
次に、実施例に用いた環状ポリフェニレンスルフィドの分析方法を説明する。
参考例1〜2により得られた環式ポリフェニレンスルフィドについて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定性定量分析を行った。HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:(株)島津製作所製 LC−10Avpシリーズ
カラム:関東化学(株)製 Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(波長270nm)
なお、HPLCで成分分割した各成分の構造は、液体クロマトグラフ質量分析(LC―MS)による分析、分取液体クロマトグラフ(分取LC)における分取物のマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)、核磁気共鳴分光法(NMR)による分析、および赤外分光測定(IR測定)により決定した。これにより、繰り返し単位数4〜15の環式ポリフェニレンスルフィドが、本条件のHPLC測定により定性定量できることを確認した。
次に、各実施例および比較例における評価方法を説明する。評価n数は、特に断らない限り、n=5とし平均値を求めた。
(1)粘度測定
アントンパール社製レオメーターPhysicaMCR501を用いて、半径25mmの平行円板間に参考例1,2により得られた樹脂組成物を挟み、290℃で剪断速度100(1/s)における粘度を測定した。
(2)320℃における相溶状態観察
各実施例および比較例により得られた混合物の一部をカバーグラス上に採取し、上から別のカバーグラスを被せ、プレパラートを作製した。プレパラートを、ホットステージ(リンカム製、形式10002)上で320℃に加熱しながら、光学顕微鏡を用いて観察倍率100倍で観察した。未溶解の塊状物や凝集物が観察されない場合を「相溶」、観察された場合を「非相溶」とした。
(3)(B)相の平均粒子径測定
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物を、アルミシートスペーサーを用いて100μmの厚みになるよう設定した金型を用いて、加熱プレスすることにより、100μm厚の樹脂組成物のフィルムを作製した。得られたフィルムから、ライカ製ウルトラミクロトーム(EM UC7)を用い、ダイヤモンドナイフにより約2mm×約1mmの断面観察用サンプルを作製した。電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)FE−8220((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、加速電圧5kV、エミッション電流12μAの条件で、1000〜2万倍に拡大してサンプル表面を観察した。この電子顕微鏡写真から(B)熱可塑性樹脂を含む島相である(B)相を無作為に100個選び、各々の長径を測定し、その数平均値を平均粒子径とした。
(4)相溶性評価
前記(3)により得られた電子顕微鏡写真を画像解析ソフト(ImageJ)により二値化し、その二値画像の面積を計算することにより、(A)相と(B)相の面積比を算出した。ここで、(A)相と(B)相の面積比をそれぞれSa、Sbとし、下記式から体積分率(b2)(%)を算出した。
b2={Sb(3/2)/(Sa(3/2)+Sb(3/2))}×100
また、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)熱可塑性樹脂の配合量の合計100体積%に対する(B)熱可塑性樹脂の配合量の体積分率(b1)(%)とし、{(b1)−(b2)}/(b1)の値により相溶性を評価した。
(5)耐熱性評価
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物を、アルミシートスペーサーを用いて100μmの厚みになるよう設定した金型を用いて、加熱プレスすることにより、100μm厚の樹脂組成物のフィルムを作製した。得られたフィルムから短冊型試験片(長さ35mm×幅5mm×厚さ100μm)を作製し、耐熱性評価サンプルとした。得られたサンプルについて、Anton Paar製レオメーター「MCR501」を用いて、チャック間距離18mm、測定温度100℃、荷重7MPaの条件で30分間の歪み量(%)を測定し、耐熱性の指標とした。
(6)靭性評価
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物を、アルミシートスペーサーを用いて200μmの厚みになるよう設定した金型を用いて、加熱プレスすることにより、200μm厚の樹脂組成物のフィルムを作製した。得られたフィルムからダンベル型試験片(長さ50mm(有効測定長さ20mm)×端部幅12mm(有効測定幅5mm)×厚さ200μm)を作製し、引張特性評価サンプルとした。得られたサンプルについて、引張試験機(オリエンテック製テンシロンUTA−2.5T)を用いて、初期引張チャック間距離を25mmとし、引張速度を1mm/分として引張試験を行い、破断点伸度を測定した。なお、破断点伸度は、有効測定長さ20mmを基準とした伸度(%)とした。
(7)耐衝撃性評価
実施例5および6、比較例5にて得られた樹脂組成物を、住友重機械製射出成形機SE75DUZ−C250を用い、樹脂温度310℃、金型温度150℃とする条件にて、長さ60mm、幅12.5mm、厚さ3.2mmのアイゾット衝撃試験片を成形した。この試験片にノッチカッターでノッチを付け、温度23℃×相対湿度50%下でASTM D256に従ってカットノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
(8)荷重たわみ温度
実施例5および6、比較例5にて得られた樹脂組成物を住友重機械社製射出成形機SE75DUZ−C250を用い、樹脂温度310℃、金型温度150℃とする条件にて、長さ130mm、幅12.5mm、厚さ3.2mmの曲げ試験片を成形した。前記射出成形した曲げ試験片を用いて、ASTMD648に準じて、1.82MPa荷重下での荷重たわみ温度を測定した。
(参考例1:環状ポリフェニレンスルフィド(PPS−1)の準備)
<反応混合物の調製>
撹拌機を具備したステンレス製オートクレーブに、スルフィド化剤として48重量%の水硫化ナトリウム水溶液1.97kg(水硫化ナトリウムとして16.87モル)および48重量%の水酸化ナトリウム水溶液1.48kg(水酸化ナトリウムとして17.71モル)、ジハロゲン化芳香族化合物としてp−ジクロロベンゼン(p−DCB)2.48kg(16.87モル)、有機極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)42kg(423.5モル)を仕込むことにより反応混合物を調製した。原料に含まれる水分量は1.79kg(99.4モル)であり、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり(スルフィド化剤として仕込んだ水硫化ナトリウムに含まれるイオウ原子1モル当たり)の溶媒量は約2.43Lであった。また、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり(スルフィド化剤として仕込んだ水硫化ナトリウムに含まれるイオウ原子1モル当たり)のアリーレン単位(ジハロゲン化芳香族化合物として仕込んだp−DCBに相当)の量は1.00モルであった。
オートクレーブ内を窒素ガスで置換後に密封し、400rpmで撹拌しながら約1時間かけて室温から200℃まで昇温した。次いで200℃から250℃まで約0.5時間かけて昇温した。この段階の反応器内の圧力はゲージ圧で1.0MPaであった。その後250℃で2時間保持することにより反応混合物を加熱し反応させた。
高圧バルブを介してオートクレーブ上部に設置した小型タンクにp−DCBのNMP溶液(p−DCB247.8gをNMP700gに溶解)を仕込んだ。小型タンク内を約1.5MPaに加圧後、タンク下部のバルブを開き、p−DCBのNMP溶液をオートクレーブ内に仕込んだ。小型タンクの壁面をNMP350gで洗浄後、このNMPもオートクレーブ内に仕込んだ。本操作により、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位は1.10モルとなった。この追加の仕込み終了後、250℃にてさらに1時間加熱して反応を進行させた。その後、約15分間かけて230℃まで冷却した後、オートクレーブ上部に設置した高圧バルブを徐々に開放することにより、主としてNMPからなる蒸気を排出し、この蒸気成分を水冷冷却管にて凝集させることにより、約27.58kgの液成分を回収した後に高圧バルブを閉じて密閉した。次いで室温近傍まで急冷して、反応生成物を回収した。
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることにより水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることにより固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。
<環式ポリアリーレンスルフィドの回収>
ADVANTEC社製の万能型タンク付フィルターホルダーKST−142−UH(有効濾過面積約113cm)に、直径142mm、平均細孔直径10μmのPTFE製メンブレンフィルターをセットし、上記方法により得られた固形分をタンクに仕込んだ。タンクを密閉後、窒素にて0.4MPaに加圧し50℃にて固液分離を行った。
濾液成分1000gを3Lフラスコに仕込み、フラスコ内を窒素で置換した。ついで撹拌しながら100℃に加温した後、80℃に冷却した。この際、常温では一部不溶成分が存在したが、100℃に到達した段階、さらに80℃に冷却した段階で不溶部は認められなかった。ついで系内温度80℃にて撹拌したまま、チューブポンプを用いて水330gを約15分間かけてゆっくりと滴下した。ここで、水の滴下終了後の濾液混合物におけるNMPと水の重量比率は75:25であった。この濾液への水の添加において、水の滴下に伴い混合物の温度は約75℃まで低下し、また、混合物中に徐々に固形分が生成し、水の滴下が終了した段階では、固形分が分散したスラリー状となった。このスラリーを撹拌したまま約1時間かけて約30℃まで冷却し、次いで30℃以下で約30分間撹拌した後、得られたスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。得られた固形分(母液を含む)を約300gの水に分散させ70℃で15分間撹拌した後、前述同様にガラスフィルターで吸引濾過する操作を計4回繰り返した。得られた固形分を真空乾燥機70℃で3時間処理して、環式ポリアリーレンスルフィドとしての乾燥固体を得た。
乾燥固体をHPLCで分析した結果、一般式(2)で表される環式ポリフェニレンスルフィド(m:4〜15)が検出された。また、乾燥固体の290℃における粘度を測定したところ、0.013Pa・sであった。
(参考例2:環状ポリフェニレンスルフィド(PPS−2)の準備)
<反応混合物の調製>
参考例1と同様の方法で反応混合物の調製を行った。
<環式ポリアリーレンスルフィドの回収>
前記方法により得られた固形分を用い、固液分離の温度を140℃としたこと以外は参考例1と同様の方法で環式ポリアリーレンスルフィドの乾燥固体を得た。
乾燥固体をHPLCで分析した結果、一般式(2)で表される環式ポリフェニレンスルフィド(m:4〜15)が検出された。また、乾燥固体の290℃における粘度を測定したところ、0.032Pa・sであった。
(参考例3:ポリフェニレンスルフィド(PPS−3)の準備)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.96kg(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.43kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム2.58kg(31.50モル)およびイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.8kgおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10.24kg(69.63モル)、NMP9.01kg(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分間反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分間反応を行った後、1.26kg(70モル)の水を15分間かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26.30kgのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31.90kgのNMPで洗浄、濾別した。これを、56kgのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70kgで洗浄、濾別した。70kgのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPSは、溶融粘度が200Pa・s(310℃、剪断速度1000/s)であった。
(参考例4:(ペレット1)の準備)
参考例1により得られた環状ポリフェニレンスルフィド(PPS−1)、前記ポリエーテルイミドをPPS−1:ポリエーテルイミド=95:5の体積比でドライブレンドし撹拌機付5リットルオートクレーブに仕込み、窒素置換した後、真空ポンプにて約2kPaの減圧条件下で加熱撹拌を開始した。加熱開始から12分で290℃に到達し、その後290℃を維持した状態で60分間加熱撹拌し、混合物を作製した。前記混合物の相溶性を確認したところ、相溶していることがわかった。その後5分間かけ340℃まで加熱し、340℃を維持した状態で3.5時間加熱撹拌した。その後、オートクレーブ上部から窒素を導入することで反応器内部を加圧し、内容物を吐出口よりガット状に取り出し、ストランドカッターによりペレット化して褐色のペレット状の樹脂組成物(ペレット1)を得た。
(実施例1)
参考例1により得られた環状ポリフェニレンスルフィド(PPS−1)19.6g、前記ポリエーテルイミドの粉末2.178gを乳鉢にて混ぜ合わせ、φ30mmガラス試験管に投入した。反応容器を窒素置換した後、0.5kPaの減圧条件下で加熱撹拌を開始した。加熱開始から12分で290℃に到達し、その後290℃を維持した状態で60分間加熱撹拌し、混合物を作製した。前記混合物の相溶性を確認したところ、相溶していることがわかった。その後5分間かけ340℃まで加熱し、340℃を維持した状態で3.5時間加熱撹拌し、室温まで冷却することにより、褐色の固体状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について前記方法により(B)相の平均粒子径を測定した結果、(B)相の粒子径は0.30μm、{(b1)−(b2)}/(b1)は0.71であることがわかった。前記方法により各種評価を行ったところ、耐熱性、靱性に優れることがわかった。
(実施例2)
ポリエーテルイミドの代わりに前記ポリスルホンを用いた以外は実施例1と同様に行い、褐色の固体状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、前記方法により(B)相の平均粒子径を測定した結果、(B)相の粒子径は0.34μm、{(b1)−(b2)}/(b1)は0.67であることがわかった。前記方法により各種評価を行ったところ、耐熱性、靱性に優れることがわかった。
(実施例3)
参考例1により得られた環状ポリフェニレンスルフィド(PPS−1)20.7g、前記ポリエーテルイミドの粉末1.09gを乳鉢にて混ぜ合わせた以外は実施例1と同様に行い、褐色の固体状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について前記方法により(B)相の平均粒子径を測定した結果、(B)相の粒子径は0.28μm、{(b1)−(b2)}/(b1)は0.78であることがわかった。前記方法により各種評価を行ったところ、耐熱性、靱性に優れることがわかった。
(実施例4)
参考例1により得られた環状ポリフェニレンスルフィド(PPS−1)16.3g、前記ポリエーテルイミドの粉末5.45gを乳鉢にて混ぜ合わせた以外は実施例1と同様に行い、褐色の固体状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について前記方法により(B)相の平均粒子径を測定した結果、(B)相の粒子径は0.45μm、{(b1)−(b2)}/(b1)は0.60であることがわかった。前記方法により各種評価を行ったところ、耐熱性、靱性に優れることがわかった。
(実施例5)
参考例4により得られたペレット状の樹脂組成物(ペレット1)を、真空ベントを具備した(株)日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45.5、ニーディング部5箇所)に供給し、さらにガラス繊維をサイドフィードにてペレット状の樹脂組成物(ペレット1)100重量部に対して66.7重量部供給し、スクリュー回転数を300rpm、ダイス出樹脂温度が330℃となるようにシリンダー温度を設定し、溶融混練した後ストランドカッターによりペレット化してペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について前記方法により(B)相の平均粒子径を測定した結果、(B)相の粒子径は0.32μm、{(b1)−(b2)}/(b1)は0.69であることがわかった。得られた樹脂組成物について、耐衝撃性、荷重たわみ温度を測定したところ、耐衝撃性、耐熱性に優れることがわかった。
(実施例6)
樹脂組成物(ペレット1)100重量部に対してガラス繊維を20重量部供給した以外は実施例5と同様に行い、ペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について前記方法により(B)相の平均粒子径を測定した結果、(B)相の粒子径は0.31μm、{(b1)−(b2)}/(b1)は0.70であることがわかった。得られた樹脂組成物について、耐衝撃性、荷重たわみ温度を測定したところ、耐衝撃性、耐熱性に優れることがわかった。
(実施例7)
ポリエーテルイミドの代わりに前記ポリイミドを用いた以外は実施例1と同様に行い、褐色の固体状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、前記方法により(B)相の平均粒子径を測定した結果、(B)相の粒子径は0.35μm、{(b1)−(b2)}/(b1)は0.65であることがわかった。前記方法により各種評価を行ったところ、耐熱性、靱性に優れることがわかった。
(比較例1)
参考例1により得られた環状ポリフェニレンスルフィド(PPS−1)20gをφ30mmガラス試験管に投入した。反応容器を窒素置換した後、0.5kPaの減圧条件下で加熱撹拌を開始した。加熱開始から12分で290℃に到達し、その後290℃を維持した状態で60分間加熱撹拌した。その後5分間かけ340℃まで加熱し、340℃を維持した状態で3.5時間加熱撹拌し、室温まで冷却することにより、褐色の固体状の樹脂を得た。得られた樹脂について、前記方法により各種評価を行ったところ、耐熱性、靱性は大きく劣る結果となった。
(比較例2)
参考例2により得られた環状ポリフェニレンスルフィド(PPS−2)を用いた事以外は実施例1と同様の操作を行い、褐色の固体状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、前記方法により(B)相の平均粒子径を測定した結果、(B)相の粒子径は0.92μm、{(b1)−(b2)}/(b1)は0.32であることがわかった。各種物性試験を行ったところ、耐熱性、靱性は大きく劣る結果となった。
(比較例3)
表1に示す各成分をそれぞれ表1に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した(株)日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45.5、ニーディング部5箇所)を用いて、スクリュー回転数を300rpmに設定し、ダイス出樹脂温度が330℃となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化してペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について前記方法により(B)相の平均粒子径を測定した結果、(B)相の粒子径は1.05μm、{(b1)−(b2)}/(b1)は0.21であることがわかった。各種物性試験を行ったところ、靱性は大きく劣る結果となった。
(比較例4)
表1に示す各成分をそれぞれ表1に示す割合でドライブレンドした以外は、比較例3と同様に行い、ペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について前記方法により(B)相の平均粒子径を測定した結果、(B)相の粒子径は1.01μm、{(b1)−(b2)}/(b1)は0.25であることがわかった。各種物性試験を行ったところ、靱性は大きく劣る結果となった。
(比較例5)
表2に示すPPS−3、ポリエーテルイミドをそれぞれ表2に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した(株)日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45.5、ニーディング部5箇所)に供給し、さらにガラス繊維をサイドフィードにてPPS−3、ポリエーテルイミドの合計100重量部に対して66.7重量部供給した以外は比較例3と同様に行い、ペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について前記方法により(B)相の平均粒子径を測定した結果、(B)相の粒子径は1.08μm、{(b1)−(b2)}/(b1)は0.19であることがわかった。得られた樹脂組成物について、耐衝撃性、荷重たわみ温度を測定したところ、実施例5、6と比較し、劣る結果となった。
各実施例および比較例の評価結果をまとめて表1、2に示す。
Figure 2017057367
Figure 2017057367

Claims (9)

  1. (A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の合計100体積%に対し、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体を70〜99.5体積%、(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を0.5〜30体積%含む混合物の(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体を(A)ポリアリーレンスルフィドに転化して得られる、(A)ポリアリーレンスルフィドおよび(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物であって、(A)ポリアリーレンスルフィドを主成分とする(A)相および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を主成分とする(B)相を有する相分離構造を有し、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)の観察画像から求める(A)相および(B)相の合計100体積%に対する(B)相の体積分率b2(%)、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の配合量の合計100体積%に対する(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の配合量の体積分率b1(%)が、下記式[1]を満たす熱可塑性樹脂組成物。
    {(b1)−(b2)}/(b1)≧0.5 [1]
  2. 前記(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体が(C)下記一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドを含む請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2017057367
    (上記一般式(2)中、Arはアリーレン基を表し、mは2〜50の範囲を表す。)
  3. 前記(C)一般式(2)で表される環状ポリアリーレンスルフィドを含む(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体の290℃における粘度が0.025Pa・s以下である請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を主成分とする(B)相の平均粒子径が0.001〜10μmである請求項1〜3いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂のガラス転移温度が100℃以上である請求項1〜4いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 前記熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、さらに(D)充填材を10〜150重量部含有することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
  8. (A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の合計100体積%に対し、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体70〜99.5体積%、(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂0.5〜30体積%を配合し、250〜350℃に加熱して相溶させた後、撹拌しながら250〜450℃に加熱することにより(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体を(A)ポリアリーレンスルフィドに転化する請求項1〜5いずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  9. (A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂の合計100体積%に対し、(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体70〜99.5体積%、(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂0.5〜30体積%を配合し、250〜350℃に加熱して相溶させた後、撹拌しながら250〜450℃に加熱することにより(A’)ポリアリーレンスルフィド前駆体を(A)ポリアリーレンスルフィドに転化してなる熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、さらに(D)充填材を10〜150重量部を配合し溶融混練することを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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