JP2020011194A - 製鋼スラグからの有価物の回収方法 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1は、C/Sが1.5〜2.5となるように脱りんされた際に排滓された脱りんスラグを粉砕し、粉砕後に乾式で磁選することにより、脱りんスラグから粒鉄又は酸化鉄を含む有価物を回収するに際して、乾式の磁選には、水平方向を向く軸回りに回転する円筒状のドラムに対して、ドラムの外周面に粉砕後の脱りんスラグを供給することで磁選を行う磁選機を用いており、脱りんスラグを、当該脱りんスラグの粒子の中位径D50が20μm〜250μmとなるように粉砕し、ドラムに供給される脱りんスラグの供給量p[kg/s/m]と、ドラムの外周面の周速度v[m/s]とが、所定の関係を満たすようにした上で磁選を行う脱りんスラグの有価物回収方法を開示するものとなっている。
このような製鋼スラグを微粉砕する方法としては、ボールミルを用いた方法が挙げられる。ただ、ボールミルは排石機構を持たないため、スラグ中に含まれる比較的大きな粒鉄までスラグと一緒に微粉砕することになる。微粉砕されたスラグから磁選などによって鉄分を回収することはできるが、微粉砕されたスラグは凝集しやすいため、特許文献1〜4で提案している方法を用いたとしても、製鋼工程でスクラップ代替として使用できるレベル(鉄分で80%以上のレベル)の高品位な鉄分を回収することは難しい。
この際、排石機構により排出される分は粉砕する石炭全体からすると通常は1%以下程度である。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、製鋼スラグ中に含まれる比較的大きな粒鉄を微粉砕することなく効率的に取り出し、純度の高い鉄分を含む有価物を効率よく回収できる製鋼スラグからの有価物の回収方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明の製鋼スラグからの有価物の回収方法は、ミル本体の内部で上下方向を向く軸回りに回転可能とされたテーブルと、前記テーブル上でテーブルの回転に合わせて転動することで製鋼スラグを粉砕するローラーと、前記ローラーで粉砕された製鋼スラグの中でも重量がある排石分を、粉砕後の製鋼スラグから分離すると共にミル本体から排出する排石機構と、を有するローラーミルを用いて、製鋼スラグから鉄分を含む有価物を回収するに際しては、下記の2つの条件を満足するように粉砕を行い、前記排石機構により分離排出された排石を単独で回収することを特徴とする。
(条件2)前記粉砕量合計から前記排石量合計を除いたものである「スラグ粉砕物」の平均粒径が20μm〜250μmとなるように粉砕を行う。
図1に示すように、本発明の有価物の回収方法は、製鋼スラグを、排石機構2を備えたローラーミル1(竪ミル)を用いて粉砕すると共に、排石分3とスラグ粉砕物4を分離するものである。そして、本発明の有価物の回収方法は、分離された排石分3を鉄分を含む有価物として単独で回収するものとなっている。
本技術は脱りん、脱硫、転炉、電炉、二次精錬等の製鋼プロセスにおいて発生する製鋼スラグ全般に適用可能であるが、酸化精錬のために必然的に鉄分が高くなる脱りん、転炉、電炉スラグ(鉄分10〜40%)からの鉄分回収に特に有効である。
具体的には、ローラーミル1は、軸心を上下方向に向けて起立する有底円筒状のミル本体6と、ミル本体6の内部の底部に上下方向を向く軸回りに回転自在に配備されると共に上面に粉砕物(製鋼スラグ)を載置可能とされた円板状のテーブル7と、テーブル7の回転に合わせてテーブル7上を転動することでテーブル7に載せられた製鋼スラグを粉砕可能とされたローラー5と、を備えている。
具体的には、このローラー5は、ローラー5の外周面が、テーブル7の上面との間に狭隘な間隙を形成可能なように配備されており、この間隙に移動中の製鋼スラグが導入されることで、製鋼スラグがすりつぶされて粉砕される。
具体的には、本実施形態のローラーミル1には、テーブル7の外側に落下した製鋼スラグを上昇気流の作用で排石分3とスラグ粉砕物4とに分離する上昇気流発生手段と、上昇気流に乗って上昇するスラグ粉砕物4をテーブル7の上に叩き落とすセパレータ9と、が設けられている。そして、上述した排石機構2は、図2に示すようにテーブル7の外縁に設けられるダム10と、上昇気流発生手段で発生する上昇気流に逆らってミル本体6の底部に落下した排石分3を、ミル本体6の外部に取り出す排石取出部11と、を備えたものとなっている。
ダム10は、上述したテーブル7の外縁に沿って上方に向かって突出する堤状に形成された部分であり、テーブル7の中央側から外周側に移動した製鋼スラグをそのままテーブル7の外側に落下させないようになっている。つまり、このダム10は、遠心力によりテーブル7の中央から外周側に移動してきた製鋼スラグを、テーブル7の外縁に滞留させる(堰き止める)ものである。
本実施形態の上昇気流発生手段は、上述したミル本体6の底部に設けられてミル本体6の内部にガス(微粉の凝集を防ぐため、微粉を乾燥可能なやや高温の燃焼ガス)を供給するガス供給口12と、ミル本体6の上部に設けられてミル本体6の内部のガスを排気するガス排気口13と、を有している。
上述した上昇気流に抗してミル本体6の底部に落下した排石分3は、ミル本体6の底部に設けられた排石取出部11でミル本体6の外部に取り出される。本実施形態の場合、排石取出部11は、排石分3自らの重量を用いて、排石分3をミル本体6より下方に運び出すものとなっている。
「排石機構2からの排石分3の総量である排石量合計を、ローラーミル1に供給される製鋼スラグの総量である粉砕量合計で除した「排石比率」が、10%〜35%となる」というものである。
また、2つ目の条件は、「粉砕量合計から排石量合計を除いたものである「スラグ粉砕物4」の平均粒径が20μm〜250μmとなるように粉砕を行う。」というものである。
「条件1」
上述した1つ目の条件(条件1)は、ローラーミル1に供給した製鋼スラグのうち、排石分3として回収されるものの割合を示したものである。つまり、本発明の有価物の回収方法では、排石分3が10%〜35%、粉砕量合計が65%〜90%となるように粉砕を行うものとなっている。
たとえば、ダム10の高さはローラーミル1の大きさによっても異なるが、原料サイズの1倍から10倍、好ましくは2倍から7倍に調整することで排石比率を上記適切な範囲に制御可能となる。
また、ダム10高さが高すぎると、ローラー5による粉砕が過度に行われるようになり、本来排石分3として回収されるべき部分までもが微粉砕されるようになり、鉄などの有価金属が他の微粉砕されたスラグとともにスラグ粉砕物4として回収されることになる。よって、スラグ粉砕物4をさらに鉄分とスラグ分とに分離する工程が追加で必要となるが、このような工程を設けても完全に分離は出来ず、結果として回収物の鉄品位が低くなる。また、粉砕し難い地金を微粉砕することになり、動力をさらに消費するし、機械の摩耗が進む、振動が増えるなどの弊害も大きくなる。
「条件2」
一方、2つ目の条件(条件2)は、ローラーミル1で排石分3が分離された後の製鋼スラグの平均粒径、言い換えれば、「粉砕量合計から排石量合計を除いたもの」であるスラグ粉砕物4の平均粒径を20μm〜250μmにするものである。
具体的には、ローラーミル1を用いて、スラグ粉砕物4の平均粒径を20μm未満にしようとした場合、上述したセパレータ9を用いた機構によりテーブル7上の滞留時間を長くすることになる。そうすると、過度の粉砕で細かくなったスラグ分が多く排石分3に含まれることとなって、排石分3における鉄品位が下がってしまうものと考えられる。
前記した排石比率およびスラグ粉砕物4の平均粒径の2つの条件を満足することにより、純度の高い鉄分を含む有価物を効率よく回収できる。このような結果が得られる理由は、2つの条件を満足することで、「製鋼スラグの中でも鉄分の純度の高い部分を排石機構2によりミル系外へ排出する」と、「鉄分の低いスラグが後の工程で容易に分離回収できるようなサイズ(鉄分とスラグとに分離回収しやすいサイズ)にまで粉砕を行う」とが、最適なバランスで達成されている為であると発明者らは考えている。
なお、ローラーミル1で排石分3が分離された後のスラグ粉砕物4(20μm〜250μmに粉砕されたスラグ粉砕物4側)についても、数10〜100μmレベルの微細な粒鉄あるいは酸化鉄の状態で鉄分は残っている。この鉄分については、従来の手法、すなわち、磁選や風力分級などの方法によって、さらに鉄を含有する部分とスラグ分とに分離することができ、分離された鉄を含有する部分の回収を図ることもできる。このスラグ粉砕物4から回収される鉄分の品位は、上述した排石機構2から回収された排石分3(地金)ほど品位が高くはないが、そのままでも鉱石代替として、つまり高炉向けの焼結やペレット原料としてなら十分使えるものである。
なお、上述した作用効果を明らかにするために、以降では2つの実験を行っている。
第1の実験は、磁選を行わずにローラーミル1のみを用いて粉砕を行うものであり、スラグ粉砕物4の粒径を変えて粉砕を行った場合に、排石比率やミル消費動力比がどのように変化するかを調査したものである。
さらに、「ミル消費動力比」は、ローラーミル1で消費される動力が一番大きくなるスラグ粉砕物4の目標平均粒径が10μmの場合を100%として、目標平均粒径が10μm以外の場合にローラーミル1で消費される動力を、百分率で示したものである。
また、製鋼スラグの粉砕に必要な粉砕動力は、ミル消費動力比として示した場合、目標平均粒径10μmの実験例が他の実験例(目標平均粒径30μmや100μmのミル消費動力比)よりも一番高くなっている。このことから、製鋼スラグの粉砕に必要な粉砕動力は、目標平均粒径10μmが最も大きく、効率が良くないことがわかった。
なお、排石回収率(排石比率)は、目標平均粒径30μmの実験例が「15.2%」となり、目標平均粒径100μmの実験例の「12.3%」より大きく、排石分3として回収される量は目標平均粒径30μmの方が高く優位である。
このことから、目標平均粒径30μmとするか目標平均粒径100μmとするかは、排石分3として回収される量(排石回収率)を優先するか、粉砕消費動力を優先するかによって、目標平均粒径(目標粉砕サイズ)を適宜設定すればよいと考えられる。
第2の実験の結果を、表2と図1に示す。なお、表2中の「周速」は磁選ドラムの周速である。
上述した条件で磁選したものについて、「磁選歩留」、「排石比率」、「原料からの磁着率」、「排石+磁着比率」、及び「排石+磁着物T.Fe」などの評価指標で評価した。
これらの評価指標は、以下のようにして求めることができる。
「磁選歩留」
磁選歩留[%]は、磁選で回収した磁着物の重量割合を示すものである。
=100×磁着物重量[kg]/(磁着物重量[kg]+非磁着物重量[kg])
・・・(1)
「排石比率」
排石比率[%]は、ローラーミル1の粉砕で発生した排石の重量割合、言い換えればローラーミル1に供給された製鋼スラグのうち、どの程度の重量割合が排石分3として回収されるかを、百分率で示した値(上述した排石回収率と同じ)である。
排石比率[%]
=100×排石重量[kg]/原料投入量[kg] ・・・(2)
「原料からの磁着率」
原料からの磁着率[%]は、ローラーミル1に供給された原料投入量[kg]に対する磁着物の重量割合、言い換えれば原料投入量のうちどの程度の重量割合が磁着物として回収されるかを、百分率で示した値である。
なお、排石重量[kg]と粉砕物重量[kg]との和は、原料投入量[kg]であり、100%となる。また、排石重量[kg]と磁着物重量[kg]と非磁着物重量[kg]との和も、原料投入量[kg]であり、100%となる。
=100×磁着歩留[%]×(100−排石比率[%])/100
・・・(3)
「排石+磁着比率」
(排石+磁着)比率[%]は、排石重量と磁着物重量との和が原料投入量に対して示す割合、言い換えればローラーミル1に供給された製鋼スラグのうち、どの程度の重量割合が磁着物や排石分3として回収されるかを、百分率で示した値である。
(排石+磁着)比率[%]
=排石比率[%]+原料からの磁着率[%]・・・(4)
「排石+磁着物T.Fe」
(排石+磁着物)T.Fe[%]は、排石分3と磁着物とを合わせたものの平均Fe濃度、言い換えれば上述した排石分3及び磁着物にどの程度の鉄が含まれているかを示した値である。
(排石+磁着物)T.Fe[%]
=(排石比率[%]×排石T.Fe濃度[%]
+原料からの磁着率[%]×磁着物T.Fe濃度[%])
/(排石比率[%]+原料からの磁着率[%])・・・(5)
まず、実験No.の欄が「排石」とされた実験例、すなわち粉砕のみで磁選をまだ行っていない実験例について着目する。
まず、回収物の鉄品位を評価する「(排石+磁着物)T.Fe」の評価結果を見ると、「(排石+磁着物)T.Fe」の濃度は43.9%〜80.1%と磁選なしの例より低い値を示している。つまり、粉砕に加えて磁選を行った実験例では、鉄品位が低い回収物が回収されることがわかる。
上述した結果をまとめると、以下のようなことが判断される。
これに対して、粉砕に加えて磁選を行って有価物を回収する場合には、回収量自体を多くすることができるが、不純物を多く含む磁着物が混じるため、鉄品位は低下してしまう。つまり、「回収量は多いが、鉄品位は劣る」
加えて、上述した結果から、磁選を行うか否かは、回収物の品位を優先するか、回収物の量を優先するかで、決定するのが良いと判断される。
これに対して、粉砕に加えて磁選を行って有価物を回収する場合には、回収量自体を多くすることができるが、不純物を多く含む磁着物が混じるため、鉄品位は低下してしまう。つまり、「回収量は多いが、鉄品位は劣る」
加えて、上述した結果から、磁選を行うか否かは、回収物の品位を優先するか、回収物の量を優先するかで、決定するのが良いと判断される。
例えば、ペレット原料など、鉄鉱石の代替として利用可能な鉄品位の目安はT.Fe>50%である。粉砕のみであれば、T.Fe>50%を満足する回収物を得ることができ、ガイドラインを満たすことができる。しかし、粉砕のみであれば、回収量は少なくなってしまう(回収物の重量比率が約15%と低い)。一方、ローラーミル1による粉砕に加えて、磁選条件を最適化した磁選を行った場合には、T.Fe>50%という鉄品位を維持したまま、回収量を増やすことができる(回収物の重量比率が約45%と高い)。
2 排石機構
3 排石分
4 スラグ粉砕物
5 ローラー
6 ミル本体
7 テーブル
8 スラグ供給管
9 セパレータ
10 ダム
11 排石取出部
12 ガス供給口
13 ガス排気口
14 磁選機
Claims (2)
- ミル本体の内部で上下方向を向く軸回りに回転可能とされたテーブルと、前記テーブル上でテーブルの回転に合わせて転動することで製鋼スラグを粉砕するローラーと、前記ローラーで粉砕された製鋼スラグの中でも重量がある排石分を、粉砕後の製鋼スラグから分離すると共にミル本体から排出する排石機構と、を有するローラーミルを用いて、製鋼スラグから鉄分を含む有価物を回収するに際しては、
下記の2つの条件を満足するように粉砕を行い、前記排石機構により分離排出された排石を単独で回収する
ことを特徴とする製鋼スラグからの有価物の回収方法。
(条件1)前記排石機構からの排石分の総量である排石量合計を、ローラーミルに供給される製鋼スラグの総量である粉砕量合計で除した「排石比率」が、10%〜35%となるように粉砕を行う。
(条件2)前記粉砕量合計から前記排石量合計を除いたものである「スラグ粉砕物」の平均粒径が20μm〜250μmとなるように粉砕を行う。 - 前記スラグ粉砕物を、さらに鉄分とスラグ分とに分離し、分離された鉄分を回収する
ことを特徴とする請求項1に記載の製鋼スラグからの有価物の回収方法。
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2018
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