JP2020010012A - 薄膜温度センサ、圧電振動デバイス、および薄膜温度センサの製造方法 - Google Patents

薄膜温度センサ、圧電振動デバイス、および薄膜温度センサの製造方法 Download PDF

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一生 福井
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和也 藤野
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Abstract

【課題】従来に比べてB定数の大きな薄膜温度センサを提供し、圧電振動デバイスにおいて薄膜温度センサを用いることで低背化を図る。【解決手段】薄膜温度センサ10は、絶縁性基板11と、絶縁性基板11上に形成される抵抗膜12と、抵抗膜12の上層もしくは下層に形成される一対の櫛形電極13,13とを有する。抵抗膜12は、酸素および窒素を含有成分として含むクロム膜にて構成される。薄膜温度センサ10は、25℃から50℃の温度域で、B定数が2000〜7000Kの範囲にあるものとされる。【選択図】図1

Description

本発明は、薄膜温度センサ、圧電振動デバイス、および薄膜温度センサの製造方法に関する。
従来、温度センサが一体的に設けられた温度センサ付きの圧電振動デバイス(水晶発振器等)が開発されている。このような温度センサとしては、例えば、焼結体から成るチップサーミスタ(NTCサーミスタ等)が用いられている。
一方、温度センサの種類としては、絶縁性基板上に抵抗膜を形成し、抵抗膜の上層もしくは下層に一対の櫛形電極からなる電極層を形成してなる薄膜温度センサもある。例えば、特許文献1および2には、抵抗膜の材料として複合酸化物(例えばMn−Co系複合酸化物)を用いた薄膜温度センサが開示されている。また、特許文献3には、抵抗膜の材料として金属窒化物(例えばTi−Al−N)を用いた薄膜温度センサが開示されている。
特開2000−348905号公報 特許第4811316号公報 特開2018−36245号公報
近年、圧電振動デバイスにおいてはさらなる小型化(特に低背化)が求められている。温度センサ付きの圧電振動デバイスにおいても、チップサーミスタに代えて薄膜温度センサを用いることができれば、デバイスの低背化に寄与すると考えられる。
しかしながら、従来の薄膜温度センサはチップサーミスタに比べるとB定数が小さく、圧電振動デバイスにおいて求められる特性を満たさないことも多い。このため、圧電振動デバイスにおいて薄膜温度センサを使用することができず、やむなくチップサーミスタを用いているのが現状である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、従来に比べてB定数の大きな薄膜温度センサを提供し、圧電振動デバイスにおいて薄膜温度センサを用いることで低背化を図ることを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の薄膜温度センサは、絶縁性基板と、前記絶縁性基板上に形成される感温膜と、前記感温膜の上層もしくは下層に形成される一対の電極からなる電極層とを有する薄膜温度センサであって、前記感温膜は、酸素および窒素を含有成分として含むクロム膜にて構成され、25℃から50℃の温度域で、B定数が2000〜7000Kの範囲にあることを特徴としている。
上記の構成によれば、薄膜温度センサにおける感温膜を酸素および窒素を含有成分として含むクロム膜とすることで、従来に比べてB定数の向上(2000〜7000K)を図ることが可能となる。これにより、従来では薄膜温度センサが使用できなかった圧電振動デバイスに対しても、薄膜温度センサの適用が可能となる。
また、本発明の圧電振動デバイスは、一対の励振電極が形成された振動部を有し、該振動部をパッケージ内に封止してなる圧電振動デバイスであって、前記パッケージを形成する絶縁性基板の内面もしくは外面に上記記載の薄膜温度センサが形成されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、圧電振動デバイスに高いB定数(2000〜7000K)を有する薄膜温度センサを搭載して使用することが可能となり、圧電振動デバイスの低背化に寄与する。
また、本発明の薄膜温度センサの製造方法は、絶縁性基板と、前記絶縁性基板上に形成される感温膜と、前記感温膜の上層もしくは下層に形成される一対の電極からなる電極層とを有する薄膜温度センサの製造方法であって、前記感温膜を、少なくともクロムを原料とし、酸素または/および窒素を含有もしくは補充する物理気相成長法にて成膜することを特徴としている。
また、上記薄膜温度センサの製造方法では、前記感温膜を、クロムをターゲットとし、少なくとも窒素および酸素をプロセスガスとして導入するスパッタリングにて成膜する構成とすることもできる。
上記の構成によれば、感温膜を酸素および窒素を含有成分として含むクロム膜として成膜することができ、B定数の向上(2000〜7000K)を図った薄膜温度センサを容易に製造することができる。また、スパッタリング時の製造条件(例えば、酸素分圧、スパッタ電力、予備加熱温度等)を調整することで、B定数の変調を行うことも可能となる。
本発明は、薄膜温度センサにおいて、従来よりも高いB定数(2000〜7000K)を得ることができるといった効果を奏する。また、従来では薄膜温度センサが使用できなかったデバイスに対しても、薄膜温度センサの適用が可能となるといった効果を奏する。
本発明の一実施形態を示すものであり、薄膜温度センサの基本構造を示す平面図である。 図1に示す薄膜温度センサのA−A断面図である。 図1の薄膜温度センサを適用した水晶振動子の一構造例を示す概略断面図である。 図1の薄膜温度センサを適用した水晶振動子の他の構造例を示す概略断面図である。 実施の形態に係る薄膜温度センサの寸法における好適例を示す平面図である。 図1の薄膜温度センサを適用した水晶振動子のさらに他の構造例を示す概略断面図である。
〔薄膜温度センサの構造〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まずは、図1および図2を参照して本実施の形態に係る薄膜温度センサ10の基本構造を説明する。図1は薄膜温度センサ10の平面図であり、図2は図1のA−A断面図である。
薄膜温度センサ10は、絶縁性基板11の上面に抵抗膜(感温膜)12を形成し、抵抗膜12の上面に一対の櫛形電極(電極層)13,13を形成した構造である。尚、櫛形電極13,13は、抵抗膜12の上層側ではなく、抵抗膜12の下層側(絶縁性基板11と抵抗膜12との間)に形成されていてもよい。
抵抗膜12は絶縁性基板11の上面にスパッタリング等の物理気相成長法(PVD)によって成膜される。より具体的には、抵抗膜12は、反応性DCマグネトロンスパッタリングや反応性RFマグネトロンスパッタリングによって成膜された反応性スパッタ膜として形成されることが好ましい。また、抵抗膜12は絶縁性基板11上のほぼ全面に成膜されてもよく、あるいは一部の領域に成膜されてもよい。図1では、抵抗膜12は絶縁性基板11上の全面に成膜した場合を例示している。
一対の櫛形電極13,13において、それぞれの電極は基部13aから多数の枝部13bが平行に延びた構成になっている。そして、一方の櫛形電極13の枝部13bと他方の櫛形電極13の枝部13bとが、互いに接触しないように所定の隙間で互い違いに並んでおり、この隙間から抵抗膜12が露出している。櫛形電極13,13は、例えば、抵抗膜12上に形成された下地膜(例えばTi)と、当該下地膜上に積層形成された電極膜(例えばAu)とから形成することができる。
抵抗膜12は、一対の櫛形電極13,13に挟まれた部分が蛇行した状態となる。また、蛇行した部分の抵抗膜12は、一定の幅Lを持ち(図2参照)、かつ経路長Wとなる一本道の状態となる。
このような薄膜温度センサ10では、一対の櫛形電極13,13に挟まれた抵抗膜12の経路長Wをより長く確保することができ、これにより、微小なサイズの温度センサであってもより大きなB定数を得ることができる。詳細には、薄膜温度センサ10の抵抗値は、抵抗膜12の幅Lに比例し、また、経路長Wに反比例する。このため、抵抗膜12の経路長Wをより長くし、また、抵抗膜12の幅Lをより狭くすることによって、より大きなB定数を有する薄膜温度センサ10の抵抗値を低下させることができる。
図1,2に示す薄膜温度センサ10の構造(抵抗膜12と櫛形電極13,13との積層構造)自体は公知であり、本実施の形態に係る薄膜温度センサ10はその構造に特徴を有するものではない。薄膜温度センサ10は、抵抗膜12の材料を工夫することで、従来の薄膜温度センサよりもB定数を向上させた点に特徴を有している。
具体的には、本実施の形態に係る薄膜温度センサ10は、抵抗膜12の材料として、酸素および窒素を含有成分として含むクロム膜を用いている。従来の薄膜温度センサ(例えば、抵抗膜に窒化クロムを用いた薄膜温度センサ)におけるB定数は室温域(50℃/25℃)で500K程度と低いものであったが、本実施の形態に係る薄膜温度センサ10では室温域(50℃/25℃)で2000K以上の高いB定数を得ることができた。
〔薄膜温度センサの製造方法〕
続いて、薄膜温度センサ10の製造方法について説明する。但し、櫛形電極13,13の形成には公知の方法(フォトリソグラフィ)が使用されるため、ここでは抵抗膜12の成膜方法についてのみ説明する。
上述したように、抵抗膜12は、DCマグネトロンスパッタリングやRFマグネトロンスパッタリングによって成膜することができる。すなわち、抵抗膜12の成膜には、スパッタリング特有の非平衡プロセスを利用することができる。具体的には、クロムターゲットを用い、さらに、少なくとも窒素および酸素をプロセスガスとして導入するスパッタリングによって抵抗膜12が成膜される。これにより、抵抗膜12を、酸素および窒素を含有成分として含むクロム膜とすることができる。
但し、抵抗膜12の成膜方法は、本発明において特に限定されるものではなく、他の物理気相成長法(PVD)により抵抗膜12を成膜してもよい。例えば、酸窒化クロムや窒化クロムをターゲットとして利用すれば、反応性ではない通常のスパッタリング(場合によっては酸素および窒素を補充する)によっても、抵抗膜12を酸素および窒素を含有成分として含むクロム膜として成膜可能である。一方、抵抗膜12の成膜に反応性スパッタリングを用いた場合、スパッタリング時の各種製造条件を変更することで抵抗膜12の組成を制御でき、最終的に得られる薄膜温度センサ10の特性を調整することができる。また、スパッタリング以外の物理気相成長法、例えばイオンアシスト蒸着法や真空蒸着法などでも、蒸着源としてクロムを用い、これにイオン化した酸素および窒素を導入することで、酸素および窒素を含有成分として含むクロム膜を成膜することは可能と考えられる。
尚、反応性スパッタリングなどで成膜される抵抗膜12は、酸窒化クロム膜となることも想定されるが、実際には抵抗膜12の全体が酸窒化クロムにより構成されているか否かは現時点では確認できていない。したがって、抵抗膜12は、酸窒化クロムに酸化クロムや窒化クロムが混合された状態であったり、酸窒化クロムを含まずに酸化クロムおよび窒化クロムが混合された状態であったりする可能性もある。このため、本実施の形態では、正確を期すために、抵抗膜12の材料を“酸素および窒素を含有成分として含むクロム膜”として表現している。無論、“酸素および窒素を含有成分として含むクロム膜”は、酸窒化クロム膜をも含む概念である。
酸窒化物の合成には、通常、高温(900〜1500℃)のアンモニア気流中での焼成等といった過酷な還元条件が必要であるが、本実施の形態における抵抗膜12の成膜では、スパッタリングの非平衡プロセスを活用することでクロムの酸窒化合成を試みている。酸窒化物は、酸化物に比較して小さいバンドギャップを有するため、後述する(2)式のように温度感度指標であるB定数の根底となる物性(バンドギャップ)をコントロールできると考えられる。
すなわち、温度センサのB定数は、規定された周囲温度2点(例えば25℃と50℃)での抵抗値を用いて、以下の(1)式より算出される。
B[K]=ln(R50/R25)/(1/T50−1/T25) …(1)
50:50℃での抵抗値[Ω]
25:25℃での抵抗値[Ω]
50:50+273.15[K]
25:25+273.15[K]
上記(1)式のB定数は、以下の(2)式に示すように、活性化エネルギをボルツマン定数で割った値でも表現できる。
/k=B …(2)
:活性化エネルギ[J]
k:ボルツマン定数[J/K]
上記(2)式は、抵抗膜12の材料のバンドギャップエネルギを操作できれば、薄膜温度センサ10のB定数変調を可能にすることを示唆している。すなわち、合成方法による材料組成の制御から、B定数にバリエーションを持たせることができる。
尚、本実施の形態に係る薄膜温度センサ10を、絶縁性基板11上に所定サイズのセンサとして形成する場合、絶縁性基板11上にスパッタリングなどで抵抗膜12を成膜し、さらに抵抗膜12をウェットエッチングによって所望の寸法にパターニングすることが考えられる。そして、パターニングされた後の抵抗膜12の上に、フォトリソグラフィなどを用いて櫛形電極13,13を形成する。もしくは、絶縁性基板11上に櫛形電極13,13を形成した後、その上に抵抗膜12をパターニング形成してもよい。
この時、図5に示すように、櫛形電極13の枝部13bの配列方向(図中X方向)において、抵抗膜12の幅Wcと櫛形電極13の幅Wdとの関係がWc≧Wdを満たすことが望ましい。ここで、Wc≧Wdの関係は、エッチングの際のマスクサイズではなく、エッチング後の抵抗膜12および櫛形電極13の実寸法において満たされるものである(実寸法においてWc≧Wdとなるようにマスクサイズが設計される)。すなわち、抵抗膜12および櫛形電極13のエッチングの際にサイドエッチングが発生したとしても、実寸法においてWc≧Wdの関係が満たされることにより、薄膜温度センサ10において設計通りの抵抗値を得ることができる。
また、一対の櫛形電極13,13の対向方向(図中Y方向)においては、抵抗膜12の幅Waと一対の櫛形電極13,13の幅Wbとの関係がWa<Wbを満たすことが望ましい。一対の櫛形電極13,13では、対向方向における端部側にそれぞれ配線引出部分が形成される。そして、配線引出部分への抵抗膜12の干渉を防止するために、対向方向についてはWa<Wbとなるように設計されることが望ましい。特に、圧電振動デバイスなどのパッケージ内に薄膜温度センサ10を収容する場合は、配線引出部分にスルーホールが形成されるため、このスルーホース形成箇所において抵抗膜12の干渉が生じないように、Wa<Wbの関係を満たす必要がある。但し、櫛形電極13の枝部13bの形成領域に関しては、確実に抵抗膜12が及ぶように形成される。
〔検証実験〕
本実施の形態では、スパッタリングにおける抵抗膜12の各種製造条件が、製造される薄膜温度センサ10のB定数に与える影響を実験により検証した。その検証結果を以下に説明する。
まずは、検証実験の手順およびサンプルの製造条件について説明する。今回の実験で作製したサンプルNo.1〜20は、絶縁性基板11上にマグネトロンスパッタリングにより抵抗膜12を成膜し、さらにその上に櫛形電極13,13を形成したものである。
各サンプルによって変化させたパラメータを以下の表1に示す。
Figure 2020010012
サンプルNo.1〜6では、プロセスガスの流量設定値を変更した。すなわち、今回のスパッタリングは、窒素(N)および酸素(O)の混合ガス比率O/(O+N)を、50、45、40、33、25、14(%)に変化させた。尚、サンプルNo.7〜20では、混合ガス比率O/(O+N)を25(%)に固定している。
サンプルNo.7〜11では、スパッタ電力(設定電力をターゲット面積で割った値)を0.9, 1.9,2.8,3.8,4.7(W/cm)に変化させた。尚、サンプルNo.1〜6ではスパッタ電力を2.5(W/cm)に、サンプルNo.12〜14では0.9(W/cm)に、サンプルNo.15〜17では2.8(W/cm)に、サンプルNo.18〜20では、4.7(W/cm)に固定した。
サンプルNo.12〜14、15〜17、18〜20各々の電力設定においては、予備加熱温度を25℃、150℃、250℃に変化させた。尚、サンプルNo.1〜11では、予備加熱温度を150℃に固定した。
続いて、上記の条件で製造した各サンプルに対する実測結果を説明する。結果を以下の表2に示す。尚、サンプルNo.1〜20のそれぞれに対しては、複数のサンプルを同時に作製し、そのうちの4つのサンプルに対してB定数評価を行った。すなわち、表2におけるサンプルNo.1〜20のそれぞれのB定数は、4つのサンプルの平均値として求められている。尚、各サンプルのB定数は、25℃および50℃での電極間の抵抗を実測し、その抵抗値を上述した(1)式に導入して算出した。
また、本検証実験では、4つのサンプルにおけるB定数のバラつきも評価の対象とした。表2におけるR値は、B定数のバラつきを示す指標であり、4つのサンプルにおけるB定数の範囲(B定数の最大値と最小値との差)を表している。
Figure 2020010012
表2に示されるように、本実施の形態に係る薄膜温度センサ10では、最小で2550K、最大で6057KのB定数が得られている。従来の薄膜温度センサではB定数が500K程度であったため、薄膜温度センサ10はB定数の大幅な向上を実現していることが分かる。すなわち、本実施の形態に係る薄膜温度センサ10では、25℃から50℃の温度域で、B定数が2000〜7000K(もしくは2500〜6500K)の範囲にある薄膜温度センサを得ることができると考えられる。
また、表2の結果から読み取れる傾向として、薄膜温度センサ10のB定数が高くなるほど、B定数のバラつきが大きくなっていることが分かる。すなわち、薄膜温度センサ10の特性バラつきを低減するには、B定数の値もある程度制限される。例えば、表2の結果では、B定数の範囲が2500〜4000KであればB定数のバラつき(R値)を1000K以下に抑えられ、B定数の範囲が2500〜3500KであればB定数のバラつき(R値)を500K以下に抑えられる。
また、表2の結果からは、抵抗膜12の成膜時のスパッタリングの条件を変更することでB定数の調整が可能であることも示唆される。この点について、以下に説明する。
まず、サンプルNo.1〜6の比較により、プロセスガスの流量、特に窒素ガスに対する酸素ガスの分圧比(O/N+O;以下、酸素分圧と称する)がB定数に与える影響を検討する。表1および表2より、酸素分圧が大きくなるほどB定数が大きくなる傾向が読みとれ、酸素分圧の調整からB定数を変調できることが示されている。
B定数は、抵抗膜12におけるバンドギャップ構造(活性化エネルギ)に依存し、つまりは組成に依存すると考えられる。酸素分圧が大きくなるほどB定数が大きくなる傾向は、抵抗膜12中に過剰のOが置換されることで、構造不安定を引き起こして組成バラつきが生じている可能性を示唆している。
次に、サンプルNo.7〜11の比較により、スパッタ電力がB定数に与える影響を検討する。表1および表2より、スパッタ電力が大きくなるほどB定数が小さくなり、かつバラつきも小さくなる傾向が読みとれ、スパッタ電力の調整からB定数を変調できることが示されている。
次に、サンプルNo.12〜20の比較により、予備加熱温度がB定数に与える影響を検討する。表1および表2より、予備加熱温度が高くなるほどB定数が小さくなり、かつ予備加熱温度が150℃以上であればバラつきが小さくなる傾向が読み取れる。特に、スパッタ電力が4.7(W/cm)のときはB定数のバラつきが著しく小さくなり、予備加熱温度が高くなるほど、そのバラつきも小さくなっている。
〔薄膜温度センサを用いた圧電振動デバイス〕
以上に説明したように、本実施の形態に係る薄膜温度センサ10は、抵抗膜12を酸素および窒素を含有成分として含むクロム膜としたことで、従来の薄膜温度センサに比べてB定数を大幅に向上させることに成功した。これにより、本実施の形態に係る薄膜温度センサ10は、従来の薄膜温度センサではB定数が小さくて使用できなかったデバイスへの適用も可能となる。例えば、薄膜温度センサ10は、圧電振動デバイス(水晶振動子や水晶発振器等)への適用が可能となる。以下に、薄膜温度センサ10を適用する圧電振動デバイスの構造例を説明する。
図3は、薄膜温度センサ10を適用した水晶振動子100の一構造例を示す概略断面図である。水晶振動子100は、いわゆるサンドイッチ構造の水晶振動子に薄膜温度センサ10を適用した場合を例示している。
水晶振動子100は、図3に示すように、水晶振動板2、第1封止部材3、および第2封止部材4を備えて構成されている。この水晶振動子100では、水晶振動板2と第1封止部材3とが接合され、水晶振動板2と第2封止部材4とが接合されることによって、略直方体のサンドイッチ構造のパッケージが構成される。このようなサンドイッチ構造のパッケージに関しては公知であるが、以下に簡単に構造を説明する。
公知の構成であるため詳細な図示は省略するが、水晶振動板2は、略矩形に形成された振動部と、この振動部の外周を取り囲む外枠部と、振動部と外枠部とを連結することで振動部を保持する保持部とを有している。振動部および保持部は、基本的には外枠部よりも薄く形成されている。水晶振動板2の両主面(第1主面21、第2主面22)には、一対の励振電極が形成されている。水晶振動板2の両主面(第1主面21、第2主面22)のそれぞれに第1封止部材3および第2封止部材4が接合されることで、パッケージの内部空間が形成され、この内部空間に励振電極を含む振動部が気密封止される。尚、水晶振動子100では、第1封止部材3の両主面(第1主面31、第2主面32)の内の第2主面32が水晶振動板2の第1主面21と接合され、第2封止部材4の両主面(第1主面41、第2主面42)の内の第1主面41が水晶振動板2の第2主面22と接合されるものとする。
水晶振動子100は、温度センサ付きの水晶振動子として構成されており、水晶振動子100のパッケージに、振動部の温度(パッケージの内部空間の温度)を検知するための温度センサ部として上述した薄膜温度センサ10が備えられている。図3に示す水晶振動子100では、薄膜温度センサ10は、第1封止部材3の第1主面31に設けられている。尚、この構成では、第1封止部材3を薄膜温度センサ10における絶縁性基板11(図2参照)として使用することができる。
また、水晶振動板2に形成された励振電極や、薄膜温度センサ10は、適宜形成された貫通電極や配線パターンにより、第2封止部材4の第2主面42に形成された外部電極端子43と電気的に接続される。
尚、図3に示す水晶振動子100では、薄膜温度センサ10を第1封止部材3の第1主面31に設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これ以外の箇所に薄膜温度センサ10を設ける構成としてもよい。つまり、第1封止部材3の両主面31,32および第2封止部材4の両主面41,42のうち、少なくとも1つの主面に、薄膜温度センサ10が設けられていればよい。
そして、第1封止部材3の第2主面32または第2封止部材4の第1主面41に薄膜温度センサ10が設けられた構成では、水晶振動板2の振動部を気密封止する内部空間に薄膜温度センサ10が配置されるので、水晶振動子100のパッケージのさらなる低背化を図ることができる。また、薄膜温度センサ10が振動部と同じ内部空間内に設けられるため、より振動部の温度に近い温度を検出でき、薄膜温度センサ10による温度検出の精度向上を図ることができる。
さらに、図示は省略するが、薄膜温度センサ10を振動部と同じ内部空間内に設け、第1封止部材3の第1主面31には発振回路となるICチップ等を搭載することで、薄膜温度センサ10を用いた圧電振動デバイスを水晶発振器として提供することも可能である。
また、薄膜温度センサ10が適用される圧電振動デバイスの基本構造は特に限定されるものではなく、図3に示したサンドイッチ構造の圧電振動デバイス以外に、例えば図4に示すような断面視がH型パッケージ構造を有する水晶振動子200に適用することも可能である。このようなH型パッケージ構造に関しても公知である。
図4に示す水晶振動子200では、ベース210、水晶振動素子220、蓋230、および薄膜温度センサ10が主な構成部材となっている。ベース210は絶縁性材料(セラミック等)からなる平面視略矩形の容器である。ベース210は、平板状(平面視略矩形)の基板部211と、基板部211の一主面(図4では上面)に配置される第1枠部212と、基板部211の他主面(図4では下面)に配置される第2枠部213とによって構成されている。ベース210において、基板部211、第1枠部212および第2枠部213の各々はセラミックグリーンシート(アルミナ)となっており、これら3つのシートが積層された状態で焼成によって一体成形されている。尚、これらのシートの積層間には所定形状の内部配線が形成されている。
ベース210の第1枠部212で囲まれた空間は第1凹部E1となっている。第1凹部E1内には水晶振動素子220が配置され、所定の配線と接合されている。第1凹部E1の上には蓋230が接合され、水晶振動素子220の配置空間が気密封止されるようになっている。ベース210の第2枠部213で囲まれた空間は第2凹部E2となっている。第2凹部E2内には薄膜温度センサ10が配置される。尚、この構成では、ベース210の基板部211を薄膜温度センサ10における絶縁性基板11(図2参照)として使用することができる。
尚、図4に示す水晶振動子200では、薄膜温度センサ10を第2凹部E2に設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これ以外の箇所に薄膜温度センサ10を設ける構成としてもよい。例えば、第1凹部E1内(基板部211の上面)に薄膜温度センサ10を設けてもよい。さらに、図示は省略するが、薄膜温度センサ10を第1凹部E1内に設け、第2凹部E2には発振回路となるICチップ等を搭載することで、薄膜温度センサ10を用いた圧電振動デバイスを水晶発振器として提供することも可能である。
また、H型パッケージ構造に限らず、上方のみが開口した略直方体のベースの開口部に蓋が接合されたシングルパッケージ構造の水晶振動子に、薄膜温度センサを適用することも可能である。この場合は、図6に示すように、薄膜温度センサ10が水晶振動素子220と共にベース210の第1凹部E1(基板部211の上面)内に設ければよい。このようなシングルパッケージ構造の場合、水晶振動子のさらなる低背化を図ることができる。また、水晶振動素子220と薄膜温度センサ10とが同じ空間内に存在し、かつ、水晶振動素子220と薄膜温度センサ10とが近接しているため、水晶振動素子220の温度により近い温度情報を得ることができる。
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
10 薄膜温度センサ
11 絶縁性基板
12 抵抗膜(感温膜)
13 櫛形電極(電極層)
13a 基部
13b 枝部
100 水晶振動子
2 水晶振動板
3 第1封止部材
4 第2封止部材
200 水晶振動子
210 ベース
211 基板部
212 第1枠部
213 第2枠部
220 水晶振動素子
230 蓋

Claims (4)

  1. 絶縁性基板と、
    前記絶縁性基板上に形成される感温膜と、
    前記感温膜の上層もしくは下層に形成される一対の電極からなる電極層とを有する薄膜温度センサであって、
    前記感温膜は、酸素および窒素を含有成分として含むクロム膜にて構成され、
    25℃から50℃の温度域で、B定数が2000〜7000Kの範囲にあることを特徴とする薄膜温度センサ。
  2. 一対の励振電極が形成された振動部を有し、該振動部をパッケージ内に封止してなる圧電振動デバイスであって、
    前記パッケージを形成する絶縁性基板の内面もしくは外面に前記請求項1に記載の薄膜温度センサが形成されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
  3. 絶縁性基板と、
    前記絶縁性基板上に形成される感温膜と、
    前記感温膜の上層もしくは下層に形成される一対の電極からなる電極層とを有する薄膜温度センサの製造方法であって、
    前記感温膜を、少なくともクロムを原料とし、酸素または/および窒素を含有もしくは補充する物理気相成長法にて成膜することを特徴とする薄膜温度センサの製造方法。
  4. 請求項3に記載の薄膜温度センサの製造方法であって、
    前記感温膜を、クロムをターゲットとし、少なくとも窒素および酸素をプロセスガスとして導入するスパッタリングにて成膜することを特徴とする薄膜温度センサの製造方法。
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