JP2020008716A - 液晶配向膜とその製造方法、並びに、その液晶配向膜を用いた液晶表示素子 - Google Patents

液晶配向膜とその製造方法、並びに、その液晶配向膜を用いた液晶表示素子 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な配向性を有する光配向方式の液晶配向膜を提供し、残像特性およびコントラスト特性に優れた液晶表示素子を実現すること。【解決手段】トランス-シス光異性化を起こす光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体を加熱しながら偏光紫外線を照射して得た液晶配向膜。【選択図】なし

Description

本発明は、液晶配向膜とその製造方法、並びに、その液晶配向膜を用いた液晶表示素子に関する。詳しくは、光配向方式の液晶配向膜(以降、光配向膜と略記することがある。)とその製造方法、並びに、その光配向方式の液晶配向膜を有する液晶表示素子に関する。
液晶表示素子として、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、IPS(In-Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、垂直配向型のVA(Multi-domain Vertical Alignment)モード等、様々な駆動方式のものが知られている。これらの液晶表示素子は、テレビ、携帯電話等、各種電子機器の画像表示装置に応用されており、さらなる表示品位の向上を目指して開発が進められている。具体的には、液晶表示素子の性能の向上は、駆動方式、素子構造の改良のみならず、素子に使用される構成部材によっても達成される。そして、液晶表示素子に使用される構成部材のなかでも、特に液晶配向膜は表示品位に係わる重要な部材の1つであり、液晶表示素子の高品位化の要求に応えるべく、この液晶配向膜についても盛んに研究が進められている。
ここで、液晶配向膜は、液晶表示素子の液晶層の両側に設けられた一対の基板上に、該液晶層に接して設けられ、液晶層を構成する液晶分子を、基板に対して一定の規則性を持って配向させる機能を有する。液晶配向性の高い液晶配向膜を用いることにより、コントラストが高く、残像特性が改善された液晶表示素子を実現することができる(例えば、特許文献1および2参照)。
こうした液晶配向膜の形成には、現在、ポリアミック酸、可溶性のポリイミドもしくはポリアミック酸エステルを有機溶剤に溶解させた溶液(ワニス)が主に用いられている。これらのワニスにより液晶配向膜を形成するには、ワニスを基板に塗布した後、加熱等により塗膜を固化してポリイミド系液晶配向膜を形成し、必要に応じて前述の表示モードに適する配向処理を施す。配向処理方法としては、布などで配向膜の表面を擦ってポリマー分子の方向を整えるラビング法と、配向膜に直線偏光の紫外線を照射することにより、ポリマー分子に光異性化や二量化等の光化学変化を起こさせて膜に異方性を付与する光配向法が知られており、このうち光配向法は、ラビング法に比べて配向の均一性が高く、また、非接触の配向処理法であるため膜に傷が付かないことや、発塵や静電気等の液晶表示素子の表示不良を発生させる原因を低減できる等の利点がある。
こうした光配向法を用いた液晶配向膜として、例えば、特許文献1〜5には、光異性化の技術を応用することで、アンカリングエネルギーが大きく、液晶配向性が良好な光配向膜を得たことが記載されている。
特開2010−197999 国際公開2013/157463 特開2005−275364 特開2007−248637 特開2009−069493 特開平11−249142 国際公開2013/161569 特開2015−135464 国際公開2017/119376
上記のように、光配向法による配向処理を施して異方性を付与したポリイミド系液晶配向膜が知られている。しかしながら、光配向法によるポリイミド系液晶配向膜は、ラビング処理によるポリイミド系液晶配向膜と比較して一般に電気特性が劣り、特に、バックライトからの光が長時間照射されるような使用状況において、液晶表示素子の表示品位を損ない易い傾向がある。これは、光化学反応を生じさせるために液晶配向膜に導入している特定部位(光反応性基)、中でも、アゾ基が光を吸収してラジカルを発生しやすいために、系内にイオン性の不純物を生じ、液晶表示素子の電圧保持率(以降、VHRと略記することもある。)が低下するためであると考えられる。
これに対しては、従来の光配向法によるポリイミド系液晶配向膜を使用しながら、層構成等を工夫することで、液晶表示素子の電圧保持率の低下を抑える検討が行われている(例えば、特許文献6〜9を参照。)。しかしながら、そのような構成を液晶配向膜に採用したとしても、液晶配向膜が光反応性基を有している以上、その光劣化による電圧保持率の低下は避けられず、近年の要求に十分に応える表示品位を実現するのは難しい。
そこで本発明者らは、液晶表示素子に適用したとき、光照射に伴う電圧保持率の低下を生じさせにくい新たな液晶配向膜の構成を見出すべく検討を進めた。その結果、液晶配向膜のポリマーにアゾ基と化学的に反応する置換基を導入し、加熱により、アゾ基を置換基と反応させて光安定性が高い構造へと変換させることにより、長時間のバックライト照射に伴う電気特性の劣化が顕著に抑制されることを見出した。
しかし、近年の要求に応える表示品位を実現するには、電圧保持率と液晶配向膜の配向性の両方を、どちらもより高い水準で実現することが求められる。このような点から見たときに、上記のような熱による化学構造の変換を行った液晶配向膜は、配向性の点で十分に満足のいくものとは言えないのが実情である。光配向処理における照射エネルギー量の引き上げにより配向性を担保したとしても、その時点では上記の化学構造の変換は行われていないため、アゾ基から発生するラジカル量の増加のために液晶表示素子の電圧保持率が低下してしまうというトレードオフの問題を抱えている。
そこで本発明者らは、良好な配向性を有する光配向方式の液晶配向膜を提供することを目的として鋭意検討を進めた。また、高い電圧保持率を示し、なおかつ残像特性およびコントラスト特性に優れた液晶表示素子を提供することを目的として鋭意検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、ポリイミド膜またはポリアミック酸の膜に光配向処理を行う際、膜を加熱しながら偏光紫外線の照射を行うと、膜を加熱しない場合よりも少ない照射量で、ポリマー鎖が高度に配向して良好な液晶配向性を示すようになり、その膜を用いて形成された液晶表示素子は残像特性およびコントラスト特性に優れるうえに、電圧保持率(VHR)が膜を加熱しない場合よりも優れるとの知見を得るに至った。本発明は、こうした知見に基づいて提案されたものであり、具体的に以下の構成を有する。
[1] トランス-シス光異性化を起こす光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体を加熱しながら偏光紫外線を照射して得た液晶配向膜。
[2] 前記光反応性基が、アゾベンゼン構造であることを特徴とする、[1]に記載の液晶配向膜。
[3] 前記ポリイミドまたは前記ポリイミド前駆体が、下記式(P1)で表される構成単位を有することを特徴とする、[1]または[2]に記載の液晶配向膜。
Figure 2020008716
[式(P1)において、R1は4価の有機基を表し、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基を表す。ベンゼン環の水素原子は置換基で置換されていてもよい。]
[4] 前記式(P1)で表される構成単位が、下記式(P2)で表される構成単位であることを特徴とする、[3]に記載の液晶配向膜。
Figure 2020008716
[式(P2)において、R1は4価の有機基を表し、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基を表す。R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、下記式(P1−1)または下記式(P1−2)で表される基を表し、R4およびR5の少なくとも1つは、下記式(P1−1)または下記式(P1−2)で表される基であり;
ベンゼン環の水素原子は置換基で置換されていてもよい。]
Figure 2020008716
[式(P1−1)および式(P1−2)において、R6〜R8は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルカノイル基、または置換もしくは無置換のアリールカルボニル基を表し;
*は、式(P2)におけるベンゼン環への結合位置を表す。]
[5] トランス-シス光異性化を起こす光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体を含む膜を基板上に形成した後、前記基板を加熱しながら、前記膜に偏光紫外線を照射する工程を含む液晶配向膜の製造方法。
[6] 前記基板の加熱温度が、40℃〜200℃であることを特徴とする、[5]に記載の液晶配向膜の製造方法。
[7] 前記基板の加熱温度が、60℃〜150℃であることを特徴とする、[5]に記載の液晶配向膜の製造方法。
[8] 前記偏光紫外線の照射量が、0.25J/cm2〜4.0J/cm2であることを特徴とする、[5]〜[7]のいずれか1項に記載の液晶配向膜の製造方法。
[9] [1]に記載の液晶配向膜を含むことを特徴とする液晶表示素子。
[10] 前記液晶表示素子が、横電界型液晶表示素子であることを特徴とする、[9]に記載の液晶表示素子。
本発明の液晶配向膜は、良好な液晶配向性を示す。本発明の液晶配向膜を用いることにより、良好な残像特性と高いコントラストを示す液晶表示素子を実現することができる。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
液晶配向膜
本発明の液晶配向膜は、トランス-シス光異性化を起こす光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体を加熱しながら偏光紫外線を照射して得た液晶配向膜である。
本発明における「トランスーシス光異性化を起こす光反応性基」とは、シス型とトランス型の両方の立体配置が存在する原子団であって、光の照射により、トランス型からシス型への異性化を起こすもののことを意味する。以下の説明では、「トランスーシス光異性化を起こす光反応性基」を単に「光反応性基」ということがある。トランスーシス光異性化を起こす原子団として、例えばアゾ基(−N=N−)、1,2−エテンジイル基(−HC=CH−)、イミノ基(−HC=N―)のような、2つの原子間の結合軸周りで、分子内回転が困難であるような構造を有する原子団が挙げられる。本発明における光反応性基は、そのような原子団の中でもアゾベンゼン構造、スチルベン構造、アシルヒドラゾン構造であることが好ましく、アゾベンゼン構造であることがより好ましい。
本発明の液晶配向膜は、上記のような光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体を加熱しながら偏光紫外線を照射して得たものである。光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体に偏光紫外線を照射すると、その偏光紫外線の偏光軸と概ね平行にあるポリマー主鎖において、その光反応性基でトランス型からシス型への異性化が起こり、この光異性化に起因してポリマー主鎖のうちで特定の方向を向いた成分が支配的になる。すなわち、膜を構成するポリマー主鎖が特定の方向に配向して異方性が付与された状態になる。この偏光紫外線の照射を、ポリイミドまたはポリイミド前駆体を加熱しながら行うと、上記のようなポリマー主鎖の配向が顕著に促進されると考えられ、得られた液晶配向膜は良好な液晶配向性を発現する。
以下において、本発明の液晶配向膜で用いる光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体について説明する。
[光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体]
本発明における「ポリイミド」とは、イミド結合を含む構成単位を有するポリマーのことをいう。本発明における「ポリイミド前駆体」とは、その化学反応によりポリイミドを生成することができるポリマーを意味し、具体的にはポリアミック酸またはその誘導体を挙げることができる。ここで、「ポリアミック酸誘導体」とは、ポリアミック酸の一部分を他の原子または原子団に置き換えたもののことを意味する。ポリアミック酸誘導体の具体例として、ポリアミック酸エステル、ポリアミック酸−ポリアミドコポリマーなどを挙げることができる。
ポリアミック酸は、下記式(DI)で表されるジアミンと下記式(AN)で表されるテトラカルボン酸二無水物との重合反応により合成される高分子であり、下記式(PAA)で表される構成単位を有する。ポリアミック酸を前駆体として、その式(PAA)で表される構成単位に脱水閉環反応を生じさせることにより、下記式(PI)で表される構成単位を有するポリイミドを生成することができる。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
式(AN)、式(PAA)および式(PI)において、X1は4価の有機基を表す。式(DI)、式(PAA)および式(PI)において、X2は2価の有機基を表す。X1における4価の有機基の好ましい範囲と具体例については、下記の式(I)〜(VII)や式(IV−2)、(VII−3)の対応する構造(−CO−O−CO−を除いた部分の構造)の好ましい範囲と具体例、および[テトラカルボン酸二無水物]の欄に記載したテトラカルボン酸二無水物の対応する構造を参照することができる。X2における2価の有機基の好ましい範囲と具体例については、下記の式(P1)および式(P2)におけるアゾベンゼン構造、式(2)、式(I)〜(VII)、式(I−1)、(II−1)、(III−1)、(IV−1)、(V−1)、(VI−1)、または(VII−1)〜(VII−2)の対応する構造(−HN2を除いた部分の構造)の好ましい範囲と具体例を参照することができる。
ポリアミック酸エステルは、下記式(PAE)で表される構成単位を有するポリマーである。ポリアミック酸エステルを前駆体として、その式(PAE)で表される構成単位に閉環反応を生じさせることにより、上記の式(PI)で表される構成単位を有するポリイミドを生成することができる。
Figure 2020008716
式(PAE)において、X1は4価の有機基を表し、X2は2価の有機基を表す。
Yは水素原子または1価の有機基を表し、2つのYの少なくとも一方は有機基である。2つのYの両方が有機基であるとき、それらの有機基同士は互いに同一であっても異なっていてもよい。Yにおける有機基の好ましい範囲と具体例については、式(P1)のR2およびR3における有機基の好ましい範囲と具体例を参照することができる。
ここで、ポリイミド前駆体は、その全ての繰り返し単位が式(PAA)で表される構造を有するポリアミック酸であってもよいし、一部の繰り返し単位が式(PAA)で表される構成単位であって、残りの繰り返し単位は、式(PAA)以外の構造である共重合体であってもよい。共重合体としては、式(PAA)で表される構成単位からなる構造と、ジアミンと有機ジカルボン酸との重合反応により得られるポリアミド構造を有するポリアミック酸−ポリアミドコポリマーを挙げることができる。
また、ポリイミド前駆体は、その全ての繰り返し単位が式(PAE)で表される構造を有するポリアミック酸エステルであってもよいし、ポリアミック酸の繰り返し単位の一部のみがエステル化した部分エステル化物、すなわち式(PAE)で表される構成単位と式(PAA)で表される構成単位を有するものであってもよい。
また、ポリイミドは、その全ての繰り返し単位が式(PI)で表される構造を有するものであってもよいし、一部の繰り返し単位が式(PI)で表される構成単位であって、残りの繰り返し単位は、式(PI)以外の構造を有するものであってもよい。例えば、本発明におけるポリイミドは、ポリアミック酸の繰り返し単位の一部のみが脱水閉環反応した部分ポリイミドや、ポリアミック酸エステルの構成単位の一部のみが閉環反応した部分ポリイミドであってもよい。すなわち、ポリイミドは、式(PI)で表される構成単位と式(PAA)で表される構成単位を有するものや、式(PI)で表される構成単位と式(PAE)で表される構成単位を有するものであってもよい。また、さらに、ポリイミドは、ジアミンと有機ジカルボン酸との重合反応により得られるポリアミド構造を有するポリイミド−ポリアミドコポリマーであってもよい。
光反応性基は、式(PAA)、式(PAE)または式(PI)で表される構成単位のうち、X1が表す4価の有機基およびX2が表す2価の有機基の少なくとも一方として導入することができる。光反応性基は、X1が表す4価の有機基として導入してもよく、X2が表す2価の有機基として導入してもよく、X1が表す4価の有機基とX2が表す2価の有機基の両方として導入してもよいが、X2が表す2価の有機基として導入することが好ましい。X2が光反応性基であるポリアミック酸は、原料である式(DI)で表されるジアミンとして、X2が光反応性基であるものを用いることにより得ることができる。
ここで、本発明で用いるポリイミドまたはポリイミド前駆体の繰り返し単位は、光反応性基を有する構成単位のみからなるものであってもよいし、光反応性基を有する構成単位とそれ以外の構成単位からなるものであってもよい。光反応性基を有する構成単位の数は、全ての繰り返し単位の合計に対して15%以上であることが好ましい。各構成単位に含まれる光反応性基は、1つであっても2つ以上であってもよい。
ポリイミド前駆体および部分ポリイミドが有する式(PAA)で表される構成単位、および、式(PAE)で表される構成単位は、下記式(P1)で表される構成単位を含有することが好ましい。
Figure 2020008716
式(P1)において、R1は4価の有機基を表す。R1の説明と好ましい範囲、具体例については、式(PAA)等のX1についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。
式(P1)において、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基を表す。R2とR3は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。式(P1)で表される構成単位のうち、R2およびR3の両方が水素原子であるものは、式(PAA)で表される構成単位の好ましい例に相当し、R2およびR3の少なくとも一方が有機基であるものは、式(PAE)で表される構成単位の好ましい例に相当する。
2およびR3における有機基の例として、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基等を挙げることができる。
アルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の好ましい炭素数は1〜10であり、よりこのましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜4であり、さらにより好ましくは1〜3である。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基等を例示することができる。アルキル基は、置換基で置換されていてもよい。置換基として、水酸基、アミノ基、ハロゲノ基等を挙げることができる。
式(P1)で表される構成単位では、アゾ基と該アゾ基の両側に結合した2つのベンゼン環からなるアゾベンゼン構造が光反応性基を構成する。
式(P1)における2つのベンゼン環の水素原子は、それぞれ置換基で置換されていてもよい。置換基の好ましい例として、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲノ基、カルボキシアルキル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の好ましい炭素数は1〜4であり、より好ましくは1〜2である。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等を例示することができる。アルコキシ基の好ましい炭素数は1〜4であり、より好ましくは1〜2である。アルコキシ基の具体例として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を例示することができる。ハロゲン化アルキル基の具体例として、トリフルオロメチル基等を例示することができる。ハロゲノ基の具体例として、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等を例示することができる。カルボキシアルキル基の具体例として、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基等を例示することができる。また、これらの置換基のうち、置換基で置換可能な水素原子があるものは、さらにその水素原子が置換基で置換されていてもよい。このため、式(P1)における2つのベンゼン環の水素原子は、例えば後述の式(P1−1)や式(P1−2)で表される置換基で置換されていてもよい。ベンゼン環における置換基の位置や種類は、2つのベンゼン環同士で、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、ポリイミド前駆体および部分ポリイミドが有する式(PAA)で表される構成単位、および、式(PAE)で表される構成単位は、下記式(P2)で表される構成単位であることがより好ましい。式(P2)は、上記の式(P1)に包含される一般式である。
Figure 2020008716
式(P2)において、R1は4価の有機基を表し、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基を表す。R1の説明と好ましい範囲、具体例については、式(PAA)等のX1についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができ、R2、R3の説明と好ましい範囲、具体例については、式(P1)におけるR2、R3の説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。式(P1)で表される構成単位のうち、R2およびR3の両方が水素原子であるものは、式(PAA)で表される構成単位のより好ましい例に相当し、R2およびR3の少なくとも一方が有機基であるものは、式(PAE)で表される構成単位のより好ましい例に相当する。
4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、下記式(P1−1)または下記式(P1−2)で表される基を表し、R4およびR5の少なくとも1つは、下記式(P1−1)または下記式(P1−2)で表される基である。R4およびR5のうちで式(P1−1)または式(P1−2)で表される基であるものは、R4およびR5のうちの一方であっても両方であってもよい。R4およびR5の両方が式(P1−1)または式(P1−2)で表される基であるとき、それらの基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(P2)で表される構成単位では、アゾ基と、R4を有するベンゼン環と、R5を有するベンゼン環からなるアゾベンゼン構造が光反応性基を構成する。R4を有するベンゼン環とR5を有するベンゼン環の水素原子は置換基で置換されていてもよい。置換基の好ましい範囲と具体例については、式(P1)のベンゼン環に置換してもよい置換基の好ましい範囲と具体例を参照することができる。
Figure 2020008716
式(P1−1)および式(P1−2)において、R6〜R8は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルカノイル基、または置換もしくは無置換のアリールカルボニル基を表す。R6〜R8は互いに同一であっても異なっていてもよい。*は、式(P2)におけるベンゼン環への結合位置を表す。
式(P1−1)において、R6におけるアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の好ましい炭素数は1〜10であり、よりこのましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜4であり、さらにより好ましくは1〜3である。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基等を例示することができる。
6におけるアルカノイル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アルカノイル基の好ましい炭素数は1〜10であり、より好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜2であり、さらにより好ましくは1である。アルカノイル基の具体例として、メタノイル基、エタノイル基、プロパノイル基、イソプロパノイル基、ブタノイル基、イソブタノイル基、sec−ブタノイル基、tert−ブタノイル基、ペンタノイル基、イソペンタノイル基、ネオペンタノイル基、tert−ペンタノイル基、1−メチルブタノイル基、1−エチルプロパノイル基、ヘキサノイル基、イソヘキサノイル基、1−メチルペンタノイル基、1−エチルブタノイル基等を例示することができる。
6におけるアリールカルボニル基のアリール基は、単環であっても縮合環であってもよい。アリール基の好ましい炭素数は6〜22であり、より好ましくは6〜14であり、さらに好ましくは6〜10である。アリール基の具体例として、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等を例示することができる。アリールカルボニル基の具体例として、フェニルカルボニル基、1−ナフチルカルボニル基等を例示することができる。
6におけるアルキル基、アルカノイル基およびアリールカルボニル基は、それぞれ置換基で置換されていてもよい。置換基として、水酸基、アミノ基、ハロゲノ基等を挙げることができる。
これらのうちで、最終的に製造される液晶配向膜の性能を良好にできる点から、R6はメチル基、エチル基、プロピル基、水素原子、メタノイル基、フェニル基であることが好ましい。
式(P1−2)において、R7およびR8におけるアルキル基、アルカノイル基、アリールカルボニル基およびこれらの基に置換しうる置換基の説明と好ましい範囲、具体例については、上記の式(P1−1)のR6におけるアルキル基、アルカノイル基、アリールカルボニル基およびこれらの基に置換しうる置換基についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。
ここで、式(P2)で表される構成単位は、ベンゼン環のアゾ基に対するオルト位が特定の置換基で置換された構造を有することにより、その構成単位を有するポリマーに偏光紫外線を照射した後、加熱焼成すると、その構成単位におけるアゾ基と置換基が反応し、アゾ基が消失すると同時に、光に対して安定なインダゾール環が形成される。そのため、式(P2)で表される構成単位を有する部分ポリイミドおよびポリイミド前駆体を加熱しながら偏光紫外線を照射し、さらに加熱焼成を行って得た液晶配向膜は、良好な液晶配向性を示すことに加えて、光に対して安定性が高い。そのため、この液晶配向膜を適用した液晶表示素子は、良好な残像特性と高いコントラストを示すとともに、バックライトからの光に長時間晒されても高い電圧保持率が維持され、高い表示品位が得られる。
[液晶配向膜の異方性]
本発明の液晶配向膜は特に大きな配向の異方性を持つことを特徴とする。このような異方性の大きさは特開2005−275364等に記載の偏光赤外線を用いた方法で評価することができる。またエリプソメトリーを用いた方法によっても評価することができる。詳しくは、分光エリプソメータによって液晶配向膜のリタデーション値を測定することができる。膜のリタデーション値はポリマー主鎖の配向度に比例して大きくなる。すなわち、大きなリタデーション値を持つポリマーの膜は、大きな配向度を持ち、液晶配向膜として使用した場合、より大きな異方性を持つ液晶配向膜が液晶組成物に対し大きな配向規制力を持つと考えられる。
また、本発明の液晶配向膜は横電界方式の液晶表示素子に好適に用いることができる。横電界方式の液晶表示素子に用いる場合、プレチルトPt角が小さいほど、また液晶配向能が高いほど暗状態での黒表示レベルは高くなり、コントラストが向上する。プレチルトPt角は0.1°以下が好ましい。
プレチルトPt角は、一般的な液晶評価装置を用いて、クリスタルローテーション法により測定することができる。
[液晶配向膜の膜厚]
本発明の液晶配向膜の膜厚は、特に限定されないが、10〜300nmであることが好ましく、30〜150nmであることがより好ましい。液晶配向膜の膜厚は、段差計やエリプソメータ等の公知の膜厚測定装置によって測定することができる。
液晶配向膜の製造方法
次に、本発明の液晶配向膜の製造方法について説明する。
本発明の液晶配向膜の製造方法は、トランス-シス光異性化を起こす光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体を含む膜を基板上に形成した後、基板を加熱しながら、膜に偏光紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする。
本発明の液晶配向膜の製造方法は、本発明の液晶配向膜を製造する方法として好適に用いることができる。本発明で用いる「トランス-シス光異性化を起こす光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体」の説明と好ましい範囲、具体例については、本発明の液晶配向膜における[光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体]の欄の記載を参照することができる。
本発明の液晶配向膜の製造方法は、基板上に、トランス-シス光異性化を起こす光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体を含む膜を形成する膜形成工程と、基板上に形成した膜に、基板を加熱しながら偏光紫外線を照射する光配向処理工程により行うことができる。以下、各工程について説明する。
[1]膜形成工程
膜形成工程では、基板上に、トランス-シス光異性化を起こす光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体を含む膜を形成する。
本工程で形成する膜は、ポリイミドおよびポリイミド前駆体のうち、ポリイミドのみを含むものであっても、ポリイミド前駆体のみを含むものであってもよく、ポリイミドとポリイミド前駆体の両方を含むものであってもよい。膜が含むポリイミドおよびポリイミド前駆体は、それぞれ、1種類であっても2種類以上であってもよい。ポリイミドまたはポリイミド前駆体の種類や組み合わせ、配合比は、目的の液晶配向膜の組成に対応するように適宜調整する。
光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体を含む膜を形成するには、例えば、まず、形成する膜の組成に対応する配合比でポリイミドまたはポリイミド前駆体を溶剤に溶解し、液晶配向剤としてのポリマー溶液を調製する。液晶配向剤の組成については、後述の「膜を形成するための液晶配向剤の好ましい態様」の欄の記載も参照することができる。この液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成した後、塗膜から溶剤を揮発除去して固体の膜を形成する。
溶剤としては、用いるポリイミドまたはポリイミド前駆体を溶解することができ、且つ、これらのものに悪影響を与えない溶剤から適宜選択することができ、例えば、非プロトン性極性有機溶剤を用いることができる。非プロトン性極性有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、γ−ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトンが挙げられる。
また、塗布性を改善できる溶剤として、ジイソブチルケトン、乳酸アルキル、ジアセトンアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ジイソブチルカルビノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルまたはフェニルアセテート、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1−ブトキシ−2−プロパノール等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、マロン酸ジエチル等のマロン酸ジアルキル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、これらアセテート類等のエステル化合物が挙げられる。
これらの中で、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ジイソブチルケトン、4−メチル−2−ペンタノール、ジイソブチルカルビノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、1−ブトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルセロソルブアセテートを用いることが好ましい。
また、液晶配向剤は、添加剤をさらに含有してもよい。例えば、特開2007−286597号公報、特開2008−096979号公報、特開2009−109987号公報、特開2009-175715号公報、特開2010−054872号公報、特開2015−212807号公報、特開2016−170409号公報に記載の、アルケニル置換ナジイミド化合物、オキサジン化合物、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物、エポキシ化合物、オキサゾール化合物、シラン化合物などが挙げられる。
液晶配向剤におけるポリイミドまたはポリイミド前駆体の濃度は、液晶配向剤全量の0.1〜40重量%であることが好ましい。また、液晶配向剤における固形分濃度は、塗布時のムラやピンホール等を抑える点から、液晶配向剤全量の0.1〜30重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましい。
液晶配向剤の粘度は、液晶配向剤の塗布に用いる方法、ポリイミドまたはポリイミド前駆体の濃度、溶剤の種類等によっても異なるが、例えば、液晶配向剤を印刷機により塗布する場合には、5〜100mPa・sであることが好ましく、10〜80mPa・sであることがより好ましい。これにより、印刷ムラを抑えて十分な膜厚で液晶配向膜を形成することができる。また、液晶配向剤をスピンコートにより塗布する場合には、液晶配向剤の粘度は、5〜200mPa・sであることが好ましく、10〜100mPa・sであることがより好ましい。液晶配向剤をインクジェット塗布装置により塗布する場合には、液晶配向剤の粘度は、5〜50mPa・sであることが好ましく、5〜20mPa・sであることがより好ましい。
液晶配向剤の粘度は、回転粘度測定法により測定され、例えば回転粘度計(東機産業製TVE−20L型)を用いて測定(測定温度:25℃)される。
液晶配向剤を塗布する基板は、特に限定されないが、製造した液晶配向膜を素子に適用する場合には、当該素子において液晶配向膜を配置するために用いる基板を採用することが好ましい。例えば、液晶表示素子に適用する液晶配向膜を製造する場合には、ガラス製、窒化ケイ素製、アクリル製、ポリカーボネイト製、ポリイミド製等の基板を用いることができる。これらの基板には、ITO(IndiumTinOxide)、IZO(In23−ZnO)、IGZO(In−Ga−ZnO4)等からなる電極やカラーフィルタ等が設けられていてもよい。
液晶配向剤を基板に塗布する方法としては、スピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法、インクジェット法等の液晶配向剤の塗布法として一般的な方法を用いることができる。
塗膜からの溶剤の揮発除去は、オーブンまたは赤外炉の中で塗膜を加熱処理する方法、ホットプレート上で塗膜を加熱処理する方法等を用いて行うことができる。溶剤を揮発除去させるための加熱温度は、後工程で必要に応じて行う加熱焼成工程での加熱温度よりも低いことが好ましく、30℃〜150℃の範囲であることが好ましく、50℃〜120℃の範囲であることがより好ましい。
[2]光配向処理工程
光配向処理工程では、基板上に形成した膜に、基板を加熱しながら偏光紫外線を照射して異方性を付与する。
光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体を含む膜に偏光紫外線を照射すると、その偏光紫外線の偏光軸と概ね平行にあるポリマー主鎖において、その光反応性基でトランス型からシス型への異性化が起こり、膜を構成するポリマー主鎖が特定の方向に配向して異方性が付与された状態になる。この偏光紫外線の照射を、基板を加熱しながら行うと、基板の熱によって膜を構成するポリマー主鎖が加熱され、その配向が効果的に促進されると考えられ、膜に高度な異方性が付与されることになる。
光配向処理に用いる偏光紫外線は直線偏光であることが好ましい。また、偏光紫外線の波長は、200〜400nmであることが好ましく、300〜400nmであることがより好ましい。偏光紫外線の照射量は、0.05〜20J/cm2であることが好ましく、0.25〜10J/cm2であることがより好ましく、0.25〜4.0J/cm2が最も好ましい。
偏光紫外線の膜表面に対する照射角度は特に限定されないが、液晶に対する強い配向規制力を発現させたい場合、膜表面に対して略垂直であることが好ましい。具体的には、膜表面の法線方向に対して±15°以内の角度で偏光紫外線を照射することが好ましい。また、液晶にプレチルト角を発現させたい場合、膜に照射する偏光紫外線を膜表面の法線方向に対して一定の角度で偏光紫外線を照射することができ、その角度は所望のプレチルト角に応じて選択することができる。
偏光紫外線の照射に使用する光源には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、Deep UVランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ、エキシマランプ、KrFエキシマレーザー、蛍光ランプ、LEDランプ、マイクロウェーブ励起無電極ランプ等、偏光紫外線の照射に通常使用される光源を制限なく用いることができる。
本発明の液晶配向膜の製造方法では、ポリイミドまたはポリイミド前駆体を含む膜に偏光紫外線を照射している間、基板を加熱する点に特徴がある。ここで、基板の加熱温度は、40〜200℃であることが好ましく、50〜150℃であることがより好ましく、60〜150℃であることがさらに好ましく、60〜100℃が特に好ましい。基板を上記の温度範囲で加熱しながら、膜に偏光紫外線を照射すると、特に優れた液晶配向性を付与することができる。ここで、基板の加熱温度は、偏光紫外線を照射している間、一定であってもよいし、経時的に変化させてもよい。
<その他の工程>
上記の光配向処理工程で得た膜のうち、ポリイミド前駆体や部分ポリイミドを含む膜は、加熱焼成を行って、式(PAA)または式(PAE)で表される構成単位を式(PI)で表される構成単位に変換することが好ましい。繰り返し単位の全てが式(PI)で表されるポリイミドの膜は、加熱焼成を行ってもよいが、そのまま液晶配向膜として用いることもできる。以下において、加熱焼成工程、および、必要に応じて行うその他の工程について説明する。
[3]加熱焼成工程
加熱焼成工程では、光配向処理を行った膜を加熱して焼成させる。
これにより、ポリイミド前駆体や部分ポリイミドの式(PAA)、式(PAE)、式(P1)、または式(P2)で表される構成単位が、閉環反応により式(PI)等で表される構成単位に変換され、ポリイミドの液晶配向膜が形成される。特に、式(P2)で表される構成単位を有するものでは、この加熱焼成工程で、アゾベンゼン構造のアゾ基と、式(P1−1)または式(P1−2)で表される基が環化反応を起こして、アゾ基が消失すると同時に光に対して安定なインダゾール環が形成される。その結果、光安定性が高い液晶配向膜を得ることができる。
加熱焼成温度は、40〜300℃であることが好ましく、100〜300℃であることがより好ましく、120〜280℃であることがさらに好ましく、150〜250℃であることがさらにより好ましい。加熱時間は1分間〜3時間であることが好ましく、5分間〜1時間であることがより好ましく、15分間〜45分間であることがさらに好ましい。加熱時間は加熱温度によって調整することが望ましく、例えば加熱温度が40〜180℃の時は加熱時間が10分間〜3時間であることが好ましく、加熱温度が180〜300℃の時は加熱時間が1分間〜1時間であることが好ましい。なかでも反応効率を高めることができる点から、加熱温度が150〜280℃で加熱時間が10分間〜1時間であることがより好ましく、加熱温度が180〜250℃で加熱時間が15分間〜45分間であることがさらに好ましい。
加熱焼成は、一定の温度で行ってもよいし、異なる温度で段階的に行ってもよいし、温度を連続的に変化させながら行ってもよい。加熱焼成で温度を変化させる場合、低温から高温へ変化させることが好ましい。また、例えば異なる温度で2段階の加熱焼成を行う場合には、1回目は90〜180℃、2回目は185℃以上の温度で行うことが好ましい。また、温度を連続的に変化させながら焼成を行う場合、初期温度は90〜180℃であることが好ましく、最終温度は185〜300℃であることが好ましく、190〜230℃であることがより好ましい。
加熱焼成は、オーブンまたは赤外炉の中で膜を加熱処理する方法、ホットプレート上で膜を加熱処理する方法等の加熱焼成に通常用いられている方法で行うことができる。
[4]洗浄工程
洗浄工程は、光配向処理を行った膜や加熱焼成によって得た液晶配向膜を洗浄する工程であり、必要に応じて行うことが好ましい。
洗浄液による洗浄方法としては、ブラッシング、ジェットスプレー、蒸気洗浄または超音波洗浄等が挙げられる。これらの方法は単独で行ってもよいし、併用してもよい。洗浄液としては純水または、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を用いることができるが、これらに限定されるものではない。もちろん、これらの洗浄液は十分に精製された不純物の少ないものが用いられる。
ポリイミドまたはポリイミド前駆体の合成
本発明で用いるポリイミド前駆体は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との重合反応により合成することができ、ポリイミドはポリイミド前駆体の閉環反応により生成することができる。ポリイミドおよびポリイミド前駆体に光反応性基を導入するため、合成原料の少なくとも1種には光反応性基を有するモノマーを使用する。合成原料のうち、光反応性基を有するモノマーであるものは、ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1種であることが好ましく、ジアミンであることがより好ましい。
以下において、ポリイミドまたはポリイミド前駆体の生成に用いられるジアミン、テトラカルボン酸二無水物およびその他のモノマーについて説明する。なお、以下の説明では、モノマーが光反応性基を有することを「光反応性」と表現することがあり、例えば「光反応性基を有するモノマー」を「光反応性モノマー」ということがある。
<光反応性モノマー>
光反応性モノマーには、加熱焼成工程で用いるのと同程度の加熱温度で光反応性基に化学反応が起こり、光反応性基が光に対してより安定な構造に変換する光反応性モノマーを用いることが好ましい。以下の説明では、加熱焼成工程で用いるのと同程度の加熱温度で光反応性基に化学反応が起こり、光反応性基が光に対してより安定な構造に変換する性質を「熱反応性」といい、そのような性質を有する光反応性モノマーを「熱反応性を有する光反応性モノマー」といい、そのような性質を有する光反応性ジアミンを「熱反応性を有する光反応性ジアミン」という。
[熱反応性を有する光反応性ジアミン(式(2)で表されるジアミン)]
熱反応性を有する光反応性モノマーとして、式(2)で表されるジアミンを挙げることができる。式(2)で表されるジアミンは、式(P2)で表される構成単位と共通のアゾベンゼン構造、すなわちベンゼン環のアゾ基に対するオルト位が特定の置換基で置換されたアゾベンゼン構造を有しており、そのアゾベンゼン構造が熱反応性を有する光反応性基として機能する。式(2)で表されるジアミンを合成原料に用いることにより、ポリイミドまたはポリイミド前駆体に、この熱反応性を有する光反応性基を導入することができる。
Figure 2020008716
式(2)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、式(1−1)または式(1−2)で表される基を表し、R1およびR2の少なくとも一方は、式(1−1)または式(1−2)で表される基である。式(2)におけるR1、R2の説明と好ましい範囲、具体例については、式(P2)におけるR4、R5についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。
6およびR8は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の直鎖アルキレン基、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−N(CH3)CO−、−CON(CH3)−、または単結合を表す。R6およびR8において、直鎖アルキレン基の−CH2−の1つまたは隣接しない2つは−O−で置き換えられていてもよい。R6とR8は互いに同一であっても異なっていてもよい。
7およびR9は、それぞれ独立して、単環式炭化水素、縮合多環式炭化水素、複素環、または単結合を表す。R7とR9は互いに同一であっても異なっていてもよい。
7およびR9における単環式炭化水素は脂環であっても芳香環であってもよい。単環式炭化水素の炭素数は6〜12であることが好ましく、6〜10であることがより好ましく、6〜8であることがさらに好ましい。単環式炭化水素の具体例として、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環を挙げることができる。
7およびR9における縮合多環式炭化水素の炭素数は10〜26であることが好ましく、10〜18であることがより好ましく、10〜14であることがさらに好ましい。縮合多環式炭化水素の具体例として、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環を挙げることができる。
7およびR9における複素環は脂環であっても芳香環であってもよい。複素環の炭素数は1〜26であることが好ましく、3〜14であることがより好ましく、3〜8であることがさらに好ましい。複素環が環員として含む複素原子として、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を挙げることができる。複素環の具体例として、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドール環、オキサゾール環を挙げることができる。
式(2)において、−R6−R7−NH2は、式(2)における一方のベンゼン環に結合しており、その結合位置は、ベンゼン環における水素原子と置換可能な位置のいずれかである。−R8−R9−NH2は、式(2)における他方のベンゼン環に結合しており、その結合位置は、ベンゼン環における水素原子と置換可能な位置のいずれかである。ベンゼン環の残りの置換可能な位置は、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。置換基の好ましい範囲と具体例については、上記の式(P1)のベンゼン環に置換してもよい置換基の好ましい範囲と具体例を参照することができる。
Figure 2020008716
式(1−1)において、R4は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルカノイル基、または置換もしくは無置換のアリールカルボニル基を表す。式(1−2)において、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルカノイル基、または置換もしくは無置換のアリールカルボニル基を表す。式(1−1)および(1−2)において、*は式(2)におけるベンゼン環への結合位置を表す。式(1−1)、(1−2)におけるR4、R5についての説明と好ましい範囲、具体例については、式(P2)における式(P1−1)、(P1−2)のR6〜R8についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。
式(2)で表されるジアミンは、合成のしやすさや原料入手の容易さ、さらに液晶配向性の高さから、下記式(3)〜(6)のいずれかで表されるジアミンであることが好ましい。
Figure 2020008716
式(3)〜(6)において、R4およびR5は、式(2)の式(1−1)および式(1−2)におけるR4およびR5と同義である。R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数1〜10のアルカノイル基であることが好ましい。式(3)のR4同士、式(5)のR4同士、R5同士およびR4とR5、式(6)のR4とR5は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
式(3)〜(6)のいずれかで表されるジアミンの好ましい具体例として、式(3−1)〜(3−8)、式(4−1)〜(4−8)、式(5−1)、式(5−2)、式(6−1)、および式(6−2)のいずれかで表されるジアミンを挙げることができる。これらのジアミンを原料に用いて合成したポリマー成分は、高い液晶配向性を示す傾向がある。各式において、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基、iPrはイソプロピル基、Buはブチル基、tBuはt−ブチル基をそれぞれ表す。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
(ジアミンの合成)
上記の式(3)〜(6)のいずれかで表されるジアミンは、下記のようにして合成することができる。
式(3)で表されるジアミンを合成するには、市販の5−ニトロアントラニル酸を還元して2−アミノ−5−ニトロフェニルメタノールを得た後、芳香族アミンの酸化反応によってベンゼン環におけるアゾ基のオルト位にヒドロキシメチル基、およびパラ位にニトロ基を有するアゾベンゼンを得る。続いて、水酸基をトリフルオロメタンスルホン酸エステルとし、求核置換反応でアルコキシ基とする。最後にニトロ基を還元することで目的のジアミンが得られる。
式(4)で表されるジアミンを合成するには、市販の1−ブロモメチルー3−ニトロベンゼンから求核置換反応で1−アルコキシメチルー3−ニトロベンゼンを得た後、ニトロ基を還元して3−アルコキシメチルアニリンを得る。続いて、4−ニトロアニリンとのジアゾカップリングでアゾベンゼンを合成し、ニトロ基を還元することで目的のジアミンが得られる。ジアミンの前駆体であるアゾベンゼンの好ましい例として、下記式(4P)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
式(4P)において、R4は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルカノイル基、または置換もしくは無置換のアリールカルボニル基を表す。
式(5)で表されるジアミンを合成するには、市販の5−ニトロアントラニル酸を還元して2−アミノ−5−ニトロフェニルメタノールを得た後、芳香族アミンの酸化反応によってベンゼン環におけるアゾ基のオルト位にヒドロキシメチル基、およびパラ位にニトロ基を有するアゾベンゼンを得る。続いて、水酸基をトリフルオロメタンスルホン酸エステルとし、求核置換反応でN,N’−ジアルキルアミノ基とする。最後にニトロ基を還元することで目的のジアミンが得られる。
式(6)で表されるジアミンを合成するには、市販の1−ブロモメチルー3−ニトロベンゼンから求核置換反応でN,N’−ジアルキル−1−(3−ニトロフェニル)メタンアミンを得た後、ニトロ基を還元してジアルキルアミノメチルー3−ニトロベンゼンを得る。続いて、4−ニトロアニリンとのジアゾカップリングでアゾベンゼンを合成し、ニトロ基を還元することで目的のジアミンが得られる。
これらのジアミンは再結晶やカラムクロマトグラフィー法によって精製して使用することもできる。
より液晶配向性の高い液晶配向膜となり得る液晶配向剤を提供するためには、これらの化合物のうち、式(4−1)、式(4−2)、式(4−3)、式(4−4)、式(4−5)および式(6−1)のいずれかで表されるジアミンの少なくとも1つを、合成原料に用いることが好ましい。
[その他の光反応性ジアミン、光反応性テトラカルボン酸二無水物]
式(2)で表されるジアミン以外の光反応性モノマーとして、下記式(I)〜(VII)のいずれかで表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
式(I)〜(VII)において、R2およびR3は、それぞれ独立して、−NH2を有する1価の有機基または−CO−O−CO−を有する1価の有機基を表し、R4は芳香環を有する2価の有機基を表す。
ここで、R2およびR3が−NH2を有する1価の有機基であるとき、式(I)〜(VII)のいずれかで表される化合物は光反応性ジアミンであり、R2およびR3が−CO−O−CO−を有する1価の有機基であるとき、式(I)〜(VII)のいずれかで表される化合物は光反応性テトラカルボン酸二無水物である。
式(I)〜(VII)のいずれかで表される化合物の好ましい例として、下記式(I−1)、(II−1)、(III−1)、(IV−1)〜(IV−2)、(V−1)、(VI−1)、または(VII−1)〜(VII−3)のいずれかで表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
式(VII−1)において、R5は、それぞれ独立して、−CH3、−OCH3、−CF3、または−COOCH3を表し、bは0〜2の整数である。式(I−1)、(II−1)、(III−1)、(IV−1)、(V−1)、(VI−1)、(VII−1)および(VII−2)において、−NH2および−(R5bは、ベンゼン環における水素原子と置換可能な位置のいずれかに結合する。
式(VI−1)、(VII−1)および(VII−3)で表される化合物はその感光性の点から特に好適に用いることができる。式(VI−1)および(VII−1)においては、アミノ基の結合位置がパラ位の化合物を、さらに式(VII−1)においては、b=0の化合物を、その配向性の点からより好適に用いることができる。
式(VI−1)または(VII−1)で表される化合物の好ましい具体例として、下記式(V−2−1)または(VI−2−1)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
また、下記式(V−3−2)または(DIA−1−1)で表される化合物も光反応モノマーとして用いることができる。
Figure 2020008716
<非光反応性モノマー>
以下に、非光反応性モノマーであるテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの例を挙げる。また、ポリイミドおよびポリイミド前駆体の合成には、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン以外の、他のモノマーも併用することができる。以下では、他のモノマーとして、ジヒドラジドおよびモノイソシアネートの例も挙げる。
[テトラカルボン酸二無水物]
ポリイミドおよびポリイミド前駆体の合成原料には、公知の非光反応性のテトラカルボン酸二無水物も用いることができる。このようなテトラカルボン酸二無水物は、芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合した芳香族系(複素芳香環系を含む)、および芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合していない脂肪族系(複素環系を含む)の何れの群に属するものであってもよい。
このようなテトラカルボン酸二無水物の好適な例としては、原料入手の容易さや、ポリマー製造の容易さ、膜の電気特性の点から、下記式(AN−I)〜(AN−V)のいずれかで表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
Figure 2020008716
式(AN−I)、式(AN−IV)および式(AN−V)において、Xは、それぞれ独立して、単結合または−CH2−を表す。式(AN−II)において、Gは単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、−CO−、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、−C(CF32−、または下記式(G13−1)で表される2価の基を表し、−CH2−は、−O−、−CO−、−NH−で置き換えられてもよい。
Figure 2020008716
式(G13−1)において、G13aおよびG13bは、それぞれ独立して、単結合、または、−O−、−CONH−もしくは−NHCO−から選択される2価の基を表す。フェニレン基は、1,4−フェニレン基または1,3−フェニレン基であることが好ましい。
式(AN−II)〜(AN−IV)において、Yは独立して下記の3価の基の群から選ばれる1つを表す。3価の基の各結合手は、各式におけるカルボニル基を構成している炭素原子または環A10の水素原子と置換可能な位置のいずれかに連結している。この3価の基の少なくとも1つの水素原子は、メチル基、エチル基またはフェニル基で置換されてもよい。
Figure 2020008716
式(AN−III)〜(AN−V)において、環A10は独立して炭素数3〜10の単環式炭化水素から結合手の数だけ水素原子を除いた環状基、または炭素数6〜30の縮合多環式炭化水素から結合手の数だけ水素原子を除いた環状基を表す。各環状基における少なくとも1つの水素原子は、メチル基、エチル基またはフェニル基で置換されていてもよい。また、各環に掛かっている結合手は、環を構成する任意の炭素に連結しており、2本の結合手が同一の炭素原子に結合してもよい。
さらに、テトラカルボン酸二無水物として、以下の式(AN−1)〜式(AN−16−15)のいずれかで表されるものが挙げられる。
式(AN−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
Figure 2020008716
式(AN−1)において、G11は単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、1,4−フェニレン基、または1,4−シクロヘキシレン基を表す。X11は独立して単結合または−CH2−を表す。G12は独立して下記の3価の基のいずれかを表す。
Figure 2020008716
12が>CH−であるとき、>CH−の水素原子はメチル基で置換されていてもよい。G12が>N−であるとき、G11は単結合および−CH2−であることはなく、X11は単結合であることはない。R11は水素原子またはメチル基を表す。
式(AN−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
式(AN−1−2)および(AN−1−14)において、mはそれぞれ独立して1〜12の整数である。
式(AN−2)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
Figure 2020008716
式(AN−2)において、R61は独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、またはフェニル基を表す。
式(AN−2)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
式(AN−3)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
Figure 2020008716
式(AN−3)において、環A11はシクロヘキサン環またはベンゼン環を表す。
式(AN−3)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
式(AN−4)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
Figure 2020008716
式(AN−4)において、G13は単結合、−(CH2m−、−O−、−S−、−C(CH32−、−SO2−、−CO−、−C(CF32−、または下記式(G13−1)で表される2価の基を表し、mは1〜12の整数である。環A11は、それぞれ独立して、シクロヘキサン環またはベンゼン環を表す。G13は環A11の水素原子と置換可能な位置のいずれかに結合してよい。
Figure 2020008716
式(G13−1)において、G13aおよびG13bは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−CONH−、または−NHCO−で表される2価の基を表す。フェニレン基は、1,4−フェニレン基または1,3−フェニレン基であることが好ましい。
式(AN−4)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
式(AN−4−17)において、mは1〜12の整数である。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
式(AN−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
Figure 2020008716
式(AN−5)において、R11は独立して水素原子またはメチル基を表す。2つのR11のうちベンゼン環におけるR11は、ベンゼン環の置換可能な位置のいずれかに結合する。
式(AN−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
式(AN−6)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
Figure 2020008716
式(AN−6)において、X11は独立して単結合または−CH2−を表す。X12は−CH2−、−CH2CH2−または−CH=CH−を表す。nは1または2である。nが2であるとき、2つのX12は互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(AN−6)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
式(AN−7)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
Figure 2020008716
式(AN−7)において、X11は単結合または−CH2−を表す。
式(AN−7)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
式(AN−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
Figure 2020008716
式(AN−8)において、X11は単結合または−CH2−を表す。R12は水素原子、メチル基、エチル基、またはフェニル基を表す。環A12はシクロヘキサン環またはシクロヘキセン環を表す。
式(AN−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
式(AN−9)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
Figure 2020008716
式(AN−9)において、rはそれぞれ独立して0または1である。
式(AN−9)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
式(AN−10−1)および式(AN−10−2)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
Figure 2020008716
式(AN−11)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
Figure 2020008716
式(AN−11)において、環A11は独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環を表す。
式(AN−11)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
式(AN−12)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
Figure 2020008716
式(AN−12)において、環A11はそれぞれ独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環を表す。
式(AN−12)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
式(AN−15)で表されるテトラカルボン酸二無水物:
Figure 2020008716
式(AN−15)において、wは1〜10の整数である。
式(AN−15)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
上記以外のテトラカルボン酸二無水物として、下記の化合物が挙げられる。
Figure 2020008716
上記テトラカルボン酸二無水物において、後述する液晶配向膜の各特性を向上させる好適な材料について述べる。液晶の配向性を向上させることを重視する場合には、式(AN−1)、式(AN−3)、および式(AN−4)で表される化合物が好ましく、式(AN−1−2)、式(AN−1−13)、式(AN−3−2)、式(AN−4−17)、および式(AN−4−29)で表される化合物がより好ましく、式(AN−1−2)においては、m=4または8が好ましく、式(AN−4−17)においては、m=4、または8が好ましく、m=8がより好ましい。
液晶表示素子の透過率を向上させることを重視する場合には、式(AN−1−1)、式(AN−1−2)、式(AN−3−1)、式(AN−4−17)、式(AN−4−30)、式(AN−5−1)、式(AN−7−2)、式(AN−10−1)、式(AN−16−3)、式(AN−16−4)、および式(AN−2−1)で表される化合物が好ましく、中でも式(AN−1−2)においては、m=4または8が好ましく、式(AN−4−17)においては、m=4、または8が好ましく、m=8がより好ましい。
液晶表示素子のVHRを向上させることを重視する場合には、式(AN−1−1)、式(AN−1−2)、式(AN−3−1)、式(AN−4−17)、式(AN−4−30)、式(AN−7−2)、式(AN−10−1)、式(AN−16−3)、式(AN−16−4)、および式(AN−2−1)で表される化合物が好ましく、式(AN−1−2)においては、m=4または8が好ましく、式(AN−4−17)においては、m=4、または8が好ましく、m=8がより好ましい。
液晶配向膜の体積抵抗値を低下させることにより、液晶配向膜中の残留電荷(残留DC)の緩和速度を向上させることが、焼き付きを防ぐ方法の1つとして有効である。この目的を重視する場合には、式(AN−1−13)、式(AN−3−2)、式(AN−4−21)、式(AN−4−29)、および式(AN−11−3)で表される化合物が好ましい。
[ジアミンおよびジヒドラジド]
ポリイミドおよびポリイミド前駆体の合成原料には、公知の非光反応性ジアミンも用いることができ、さらに、その他のモノマーとしてジヒドラジドを併用してもよい。
ジアミンはその構造によって2種類に分けることができる。即ち、2つのアミノ基を結ぶ骨格を主鎖として見たときに、主鎖から分岐する基、即ち側鎖基を有するジアミンと側鎖基を持たないジアミンである。以下の説明では、このような側鎖基を有するジアミンを側鎖型ジアミンと称することがある。そして、このような側鎖基を持たないジアミンを非側鎖型ジアミンと称することがある。この側鎖基はプレチルト角を大きくする効果を有する基である。
非側鎖型ジアミンと側鎖型ジアミンを適切に使い分けることにより、それぞれに必要なプレチルト角に対応することができる。
側鎖型ジアミンは、本発明の特性を損なわない程度に併用するのが好ましい。また側鎖型ジアミンおよび非側鎖型ジアミンについて、液晶に対する垂直配向性、VHR、焼き付き特性および配向性を向上させる目的で取捨選択して使用することが好ましい。
既知のジアミン、ジヒドラジドを以下に示す。
Figure 2020008716
上記の式(DI−1)において、G20は、−CH2−または式(DI−1−a)で表される基を表す。G20が−CH2−であるとき、m個の−CH2−の少なくとも1つは−NH−、−O−に置き換えられてもよく、m個の−CH2−の少なくとも1つの水素原子は水酸基またはメチル基で置換されてもよい。mは1〜12の整数である。DI−1におけるmが2以上であるとき、複数のG20は互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、G20が式(DI−1−a)で表される基であるとき、mは1である。
Figure 2020008716
式(DI−1−a)において、vはそれぞれ独立して1〜6の整数である。
式(DI−3)、式(DI−6)および式(DI−7)において、G21は独立して単結合、−NH−、−NCH3−、−O−、−S−、−S−S−、−SO2−、−CO−、−COO−、−CONCH3−、−CONH−、−C(CH32−、−C(CF32−、−(CH2m−、−O−(CH2m−O−、−N(CH3)−(CH2k−N(CH3)−、−(O−C24m−O−、−O−CH2−C(CF32−CH2−O−、−O−CO−(CH2m−CO−O−、−CO−O−(CH2m−O−CO−、−(CH2m−NH−(CH2m−、−CO−(CH2k−NH−(CH2k−、−(NH−(CH2mk−NH−、−CO−C36−(NH−C36n−CO−、または−S−(CH2m−S−を表し、mは独立して1〜12の整数であり、kは1〜5の整数であり、nは1または2である。式(DI−4)において、sは独立して0〜2の整数である。
式(DI−5)において、G33は単結合、−NH−、−NCH3−、−O−、−S−、−S−S−、−SO2−、−CO−、−COO−、−CONCH3−、−CONH−、−C(CH32−、−C(CF32−、−(CH2m−、−O−(CH2m−O−、−N(CH3)−(CH2k−N(CH3)−、−(O−C24m−O−、−O−CH2−C(CF32−CH2−O−、−O−CO−(CH2m−CO−O−、−CO−O−(CH2m−O−CO−、−(CH2m−NH−(CH2m−、−CO−(CH2k−NH−(CH2k−、−(NH−(CH2mk−NH−、−CO−C36−(NH−C36n−CO−、または−S−(CH2m−S−、−N(Boc)−(CH2e−N(Boc)−、−NH−(CH2e−N(Boc)−、−N(Boc)−(CH2e−、−(CH2m−N(Boc)−CONH−(CH2m−、−(CH2m−N(Boc)−(CH2m−、下記式(DI−5−a)または下記式(DI−5−b)で表される基であり、mは独立して1〜12の整数であり、kは1〜5の整数であり、eは2〜10の整数であり、nは1または2である。Bocはt−ブトキシカルボニル基である。
式(DI−6)および式(DI−7)において、G22は独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH32−、−C(CF32−、または炭素数1〜10のアルキレン基を表す。
式(DI−2)〜(DI−7)中のシクロヘキサン環およびベンゼン環の少なくとも1つの水素原子は、−F、−Cl、炭素数1〜3のアルキレン基、−OCH3、−OH、−CF3、−CO2H、−CONH2、−NHC65、フェニル基、またはベンジル基で置換されてもよく、加えて式(DI−4)においては、シクロヘキサン環およびベンゼン環の少なくとも1つの水素原子は、下記式(DI−4−a)〜(DI−4−i)のいずれかで表される基の群から選ばれる1つで置換されていてもよく、式(DI−5)においては、G33が単結合の時にはシクロヘキサン環およびベンゼン環の少なくとも1つの水素原子はNHBocまたはN(Boc)2で置換されてもよい。
環を構成する炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。そして、シクロヘキサン環またはベンゼン環への−NH2の結合位置は、G21、G22またはG33の結合位置を除く任意の位置である。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
式(DI−4−a)および式(DI−4−b)において、R20は独立して水素原子または−CH3を表す。式(DI−4−f)および式(DI−4−g)において、mはそれぞれ独立して0〜12の整数であり、Bocはt−ブトキシカルボニル基である。
Figure 2020008716
式(DI−5−a)において、qはそれぞれ独立して0〜6の整数である。R44は水素原子、−OH、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。
Figure 2020008716
式(DI−11)において、rは0または1である。式(DI−8)〜(DI−11)において、環に結合する−NH2の結合位置は、任意の位置である。
Figure 2020008716
式(DI−12)において、R21およびR22は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基またはフェニル基を表し、G23は独立して炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基またはアルキル基で置換されたフェニレン基を表し、wは1〜10の整数である。
式(DI−13)において、R23は独立して炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基または−Clを表し、pは独立して0〜3の整数であり、qは0〜4の整数である。
式(DI−14)において、環Bは単環の複素環式芳香族基を表し、R24は水素原子、−F、−Cl、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基を表し、qは独立して0〜4の整数である。qが2以上であるとき、複数のR24は互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(DI−15)において、環Cは複素環式芳香族基または複素環式脂肪族基を表す。
式(DI−16)において、G24は単結合、炭素数2〜6のアルキレン基または1,4−フェニレン基を表し、rは0または1である。そして、環を構成する炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。
式(DI−13)〜式(DI−16)において、環に結合する−NH2の結合位置は、任意の位置である。
上記式(DI−1)〜(DI−16)の側鎖を有さないジアミンとして、以下の式(DI−1−1)〜式(DI−16−1)の具体例を挙げることができる。
式(DI−1)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−1−7)および式(DI−1−8)において、kはそれぞれ独立して、1〜3の整数である。式(DI−1−9)において、vはそれぞれ独立して1〜6の整数である。
式(DI−2)〜(DI−3)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−4)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
Figure 2020008716
Figure 2020008716
Figure 2020008716
Figure 2020008716
式(DI−4−20)および(DI−4−21)において、mはそれぞれ独立して1〜12の整数である。
Figure 2020008716
式(DI−5)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−5−1)において、mは1〜12の整数である。
Figure 2020008716
式(DI−5−12)および式(DI−5−13)において、mはそれぞれ独立して1〜12の整数である。
Figure 2020008716
式(DI−5−16)において、vは1〜6の整数である。
Figure 2020008716
式(DI−5−30)において、kは1〜5の整数である。
Figure 2020008716
式(DI−5−35)〜式(DI−5−37)、および式(DI−5−39)において、mはそれぞれ独立して1〜12の整数であり、式(DI−5−38)および式(DI−5−39)において、kはそれぞれ独立して1〜5の整数であり、式(DI−5−40)において、nは1または2の整数である。
Figure 2020008716
式(DI−5−42)〜式(DI−5−44)において、eはそれぞれ独立して2〜10の整数であり、式(DI−5−45)においてR43は水素原子、−NHBoc、または−N(Boc)2である。式(DI−5−42)〜式(DI−5−44)において、Bocはt−ブトキシカルボニル基である。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
式(DI−6)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−7)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−7−3)および式(DI−7−4)において、mはそれぞれ独立して1〜12の整数であり、nは独立して1または2である。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
式(DI−8)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−9)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−10)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−11)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−12)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−13)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
Figure 2020008716
式(DI−14)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−15)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
式(DI−16)で表されるジアミンの例を以下に示す。
Figure 2020008716
既知の側鎖を有さないジヒドラジドとしては、以下の式(DIH−1)〜(DIH−3)のいずれかで表される化合物を挙げることができる。
Figure 2020008716
式(DIH−1)において、G25は単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、−CO−、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、または−C(CF32−を表す。
式(DIH−2)において、環Dはシクロヘキサン環、ベンゼン環またはナフタレン環を表し、この基の少なくとも1つの水素原子はメチル基、エチル基、またはフェニル基で置換されてもよい。式(DIH−3)において、環Eはそれぞれ独立してシクロヘキサン環、またはベンゼン環を表し、この基の少なくとも1つの水素原子はメチル基、エチル基、またはフェニル基で置換されてもよい。複数のEは互いに同一であっても異なっていてもよい。Yは単結合、炭素数1〜20のアルキレン、−CO−、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、または−C(CF32−を表す。式(DIH−2)および式(DIH−3)において、環に結合する−CONHNH2の結合位置は、任意の位置である。
式(DIH−1)〜(DIH−3)のいずれかで表される化合物の例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DIH−1−2)において、mは1〜12の整数である。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
上記のようなジアミンおよびジヒドラジドは液晶表示素子のイオン密度を低下させる等、電気特性を改善する効果がある。
プレチルト角を大きくする目的に適したジアミンについて説明する。プレチルト角を大きくする目的に適した側鎖基をもったジアミンとしては、式(DI−31)〜(DI−35)、式(DI−36−1)〜(DI−36−8)のいずれかで表されるジアミンが挙げられる。
Figure 2020008716
式(DI−31)において、G26は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、または−(CH2ma−を表し、maは1〜12の整数である。G26の好ましい例は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CH2O−、および炭素数1〜3のアルキレン基であり、特に好ましい例は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CH2O−、−CH2−および−CH2CH2−である。R25は炭素数3〜30のアルキル基、フェニル基、ステロイド骨格を有する基、または下記の式(DI−31−a)で表される基を表す。このアルキル基において、少なくとも1つの水素原子は−Fで置換されてもよく、そして少なくとも1つの−CH2−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置換さていてもよい。このフェニル基の水素原子は、−F、−CH3、−OCH3、−OCH2F、−OCHF2、−OCF3、炭素数3〜30のアルキル基または炭素数3〜30のアルコキシ基で置換されていてもよい。ベンゼン環に結合する−NH2の結合位置はその環において任意の位置であることを示すが、その結合位置はメタ位またはパラ位であることが好ましい。即ち、基「R25−G26−」の結合位置を1位としたとき、2つの結合位置は3位と5位、または2位と5位であることが好ましい。
Figure 2020008716
式(DI−31−a)において、G27、G28およびG29は結合基であり、これらは、それぞれ独立して単結合、または炭素数1〜12のアルキレン基であり、このアルキレン基の1以上の−CH2−は、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−で置換されていてもよい。環B21、環B22、環B23および環B24は、それぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−2,7−ジイル基またはアントラセン−9,10−ジイル基を表し、環B21、環B22、環B23および環B24において、少なくとも1つの水素原子は−Fまたは−CH3で置換されてもよく、s、tおよびuは、それぞれ独立して0〜2の整数であって、これらの合計は1〜5であり、s、tまたはuが2であるとき、各々の括弧内の2つの結合基は同じであっても異なってもよく、そして、2つの環は同じであっても異なっていてもよい。R26は水素原子、−F、−OH、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、−CN、−OCH2F、−OCHF2、または−OCF3を表し、この炭素数1〜30のアルキル基の少なくとも1つの−CH2−は下記式(DI−31−b)で表される2価の基で置換されていてもよい。
Figure 2020008716
式(DI−31−b)において、R27およびR28は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基であり、vは1〜6の整数である。R26の好ましい例は炭素数1〜30のアルキル基および炭素数1〜30のアルコキシ基である。
Figure 2020008716
式(DI−32)および式(DI−33)において、G30は独立して単結合、−CO−または−CH2−を表し、R29は独立して水素原子または−CH3を表し、R30は独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数2〜20のアルケニル基を表す。式(DI−33)におけるベンゼン環の少なくとも1つの水素原子は、炭素数1〜20のアルキル基またはフェニル基で置換されてもよい。そして、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。式(DI−32)における2つの基「−フェニレン−G30−O−」の一方はステロイド核の3位に結合し、もう一方はステロイド核の6位に結合していることが好ましい。式(DI−33)における2つの基「−フェニレン−G30−O−」のベンゼン環への結合位置は、ステロイド核の結合位置に対して、それぞれメタ位またはパラ位であることが好ましい。式(DI−32)および式(DI−33)において、ベンゼン環に結合する−NH2はその環における結合位置が任意であることを示す。
Figure 2020008716
式(DI−34)および式(DI−35)において、G31は独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレン基を表し、G32は単結合または炭素数1〜3のアルキレン基を表す。R31は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、このアルキル基の少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。R32は炭素数6〜22のアルキル基を表し、R33は水素原子または炭素数1〜22のアルキル基を表す。環B25は1,4−フェニレン基または1,4−シクロヘキシレン気であり、rは0または1である。そしてベンゼン環に結合する−NH2はその環における結合位置が任意であることを示すが、独立してG31の結合位置に対してメタ位またはパラ位であることが好ましい。
式(DI−31)で表される化合物の例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−31−1)〜(DI−31−11)において、R34はそれぞれ独立して炭素数1〜30のアルキル基または炭素数1〜30のアルコキシ基を表し、好ましくは炭素数5〜25のアルキル基または炭素数5〜25のアルコキシ基である。R35はそれぞれ独立して炭素数1〜30のアルキル基または炭素数1〜30のアルコキシ基を表し、好ましくは炭素数3〜25のアルキル基または炭素数3〜25のアルコキシ基である。
Figure 2020008716
式(DI−31−12)〜(DI−31−17)において、R36はそれぞれ独立して炭素数4〜30のアルキル基を表し、好ましくは炭素数6〜25のアルキル基である。R37はそれぞれ独立して炭素数6〜30のアルキル基を表し、好ましくは炭素数8〜25のアルキル基である。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
Figure 2020008716
Figure 2020008716
Figure 2020008716
式(DI−31−18)〜(DI−31−43)において、R38はそれぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のアルコキシ基を表し、好ましくは炭素数3〜20のアルキル基または炭素数3〜20のアルコキシ基である。R39はそれぞれ独立して水素原子、−F、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、−CN、−OCH2F、−OCHF2または−OCF3を表し、好ましくは炭素数3〜25のアルキル基、または炭素数3〜25のアルコキシ基である。そしてG33は炭素数1〜20のアルキレン基を表す。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
Figure 2020008716
Figure 2020008716
式(DI−32)で表される化合物の例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−33)で表される化合物の例を以下に示す。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
式(DI−34)で表される化合物の例を以下に示す。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
Figure 2020008716
Figure 2020008716
式(DI−34−1)〜式(DI−34−12)において、R40はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、好ましくは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表し、そしてR41はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す。
式(DI−35)で表される化合物の例を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−35−1)〜(DI−35−3)において、R37はそれぞれ独立して炭素数6〜30のアルキル基を表し、R41はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す。
式(DI−36−1)〜(DI−36−8)で表される化合物を以下に示す。
Figure 2020008716
式(DI−36−1)〜(DI−36−8)において、R42はそれぞれ独立して炭素数3〜30のアルキル基を表す。
上記ジアミンおよびジヒドラジドにおいて、後述する液晶配向膜の各特性を向上させる好適な材料について述べる。液晶の配向性をさらに向上させることを重視する場合には、式(DI−1−3)、式(DI−5−1)、式(DI−5−5)、式(DI−5−9)、式(DI−5−12)、式(DI−5−13)、式(DI−5−29)、式(DI−6−7)、式(DI−7−3)、および式(DI−11−2)で表される化合物を用いるのが好ましい。式(DI−5−1)においては、m=2、4または6が好ましく、m=4がより好ましい。式(DI−5−12)においては、m=2〜6が好ましく、m=5がより好ましい。式(DI−5−13)においては、m=1または2が好ましく、m=1がより好ましい。
透過率を向上させることを重視する場合には、式(DI−1−3)、式(DI−2−1)、式(DI−5−1)、式(DI−5−5)、式(DI−5−24)、および式(DI−7−3)で表されるジアミンを用いるのが好ましく、式(DI−2−1)で表される化合物がより好ましい。式(DI−5−1)においては、m=2、4または6のが好ましく、m=4がより好ましい。式(DI−7−3)においては、m=2または3、n=1または2が好ましく、m=3、n=1がより好ましい。
液晶表示素子のVHRを向上させることを重視する場合には、式(DI−2−1)、式(DI−4−1)、式(DI−4−2)、式(DI−4−10)、式(DI−4−15)、式(DI−4−22)、式(DI−5−28)、式(DI−5−30)、および式(DI−13−1)で表される化合物を用いるのが好ましく、式(DI−2−1)、式(DI−5−1)、および式(DI−13−1)で表されるジアミンがより好ましい。式(DI−5−1)においては、m=1が好ましい。式(DI−5−30)においては、k=2が好ましい。
液晶配向膜の体積抵抗値を低下させることにより、液晶配向膜中の残留電荷(残留DC)の緩和速度を向上させることが、焼き付きを防ぐ方法の1つとして有効である。この目的を重視する場合には、式(DI−4−1)、式(DI−4−2)、式(DI−4−10)、式(DI−4−15)、式(DI−5−1)、式(DI−5−12)、式(DI−5−13)、式(DI−5−28)、式(DI−4−20)、式(DI−4−21)、式(DI−7−12)、および式(DI−16−1)で表される化合物を用いるのが好ましく、式(DI−4−1)、式(DI−5−1)、および式(DI−5−13)で表される化合物がより好ましい。式(DI−5−1)において、m=2、4または6が好ましく、m=4がより好ましい。式(DI−5−12)においては、m=2〜6が好ましく、m=5がより好ましい。式(DI−5−13)においては、m=1または2が好ましく、m=1がより好ましい。式(DI−7−12)においては、m=3または4が好ましく、m=4がより好ましい。
各ジアミンにおいて、ジアミンに対するモノアミンの比率が40モル%以下の範囲で、ジアミンの一部がモノアミンに置き換えられていてもよい。このような置き換えは、ポリアミック酸を生成する際の重合反応のターミネーションを起こすことができ、それ以上の重合反応の進行を抑えることができる。このため、このような置き換えによって、得られるポリマー(ポリアミック酸またはその誘導体)の分子量を容易に制御することができ、例えば本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。モノアミンに置き換えられるジアミンは、本発明の効果が損なわれなければ、1種でも2種以上でもよい。前記モノアミンとしては、例えばアニリン、4−ヒドロキシアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、およびn−エイコシルアミンが挙げられる。
[モノイソシアネート]
ポリイミドおよびポリイミド前駆体の合成原料には、その他のモノマーとして、モノイソシアネート化合物を併用することができる。モノイソシアネート化合物を用いることにより、得られるポリイミドおよびポリイミド前駆体の末端が修飾され、分子量が調節される。この末端修飾型のポリイミドおよびポリイミド前駆体を用いることにより、例えば本発明の効果が損なわれることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。モノマー中のモノイソシアネート化合物の含有量は、モノマー中のジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の総量に対して1〜10モル%であることが、前記の観点から好ましい。モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、およびナフチルイソシアネートが挙げられる。
<ポリイミドまたはポリイミド前駆体の合成方法>
上記のモノマーからのポリイミド前駆体およびポリイミドの合成は、公知の合成条件を用いて行うことができる。例えばテトラカルボン酸二無水物の総仕込み量は、ジアミンの合計1モルに対して、0.9〜1.1モルの比率であることが好ましい。
また、ポリアミック酸をポリイミドとする場合には、得られたポリアミック酸溶液を、脱水剤である無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物、および脱水閉環触媒であるトリエチルアミン、ピリジン、コリジンなどの三級アミンとともに、温度20〜150℃でイミド化反応させることにより、ポリイミドを得ることができる。あるいは、得られたポリアミック酸溶液から多量の貧溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒やグリコール系溶媒)を用いてポリアミック酸を析出させ、析出させたポリアミック酸を、トルエン、キシレン等の溶媒中で、上記の脱水剤および脱水閉環触媒とともに、温度20〜150℃でイミド化反応させることにより、ポリイミドを得ることもできる。
このイミド化反応において、脱水剤と脱水閉環触媒の割合は、0.1〜10(モル比)であることが好ましい。脱水剤と脱水閉環触媒の合計使用量は、当該ポリアミック酸の合成に使用したテトラカルボン酸二無水物のモル量の合計に対して1.5〜10倍モルであることが好ましい。このイミド化反応に用いる脱水剤、触媒量、反応温度および反応時間を調整することによって、イミド化の程度を制御することができ、これによりポリアミック酸の一部のみがイミド化した部分ポリイミドを得ることができる。得られたポリイミドは、反応に用いた溶剤と分離し、他の溶剤に再溶解させて液晶配向剤として使用することもできるし、あるいは溶剤と分離することなく液晶配向剤として使用することもできる。
ポリアミック酸エステルは、モノマー組成物を重合させて得たポリアミック酸と水酸基含有化合物、ハロゲン化物、エポキシ基含有化合物等とを反応させることにより合成する方法や、テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸ジエステルもしくはテトラカルボン酸ジエステルジクロライドと、ジアミンとを反応させることにより合成する方法により得ることができる。テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸ジエステルは、例えばテトラカルボン酸二無水物を2当量のアルコールと反応させ開環させて得ることができ、テトラカルボン酸ジエステルジクロライドは、テトラカルボン酸ジエステルを2当量の塩素化剤(例えば塩化チオニルなど)と反応させることで得ることができる。なお、ポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。
本発明で用いるポリイミド、および、ポリアミック酸やポリアミック酸エステルなどのポリイミド前駆体の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、7,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜200,000であることがより好ましい。ポリイミドまたはポリイミド前駆体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による測定から求めることができる。
ポリイミドまたはポリイミド前駆体は、多量の貧溶剤で沈殿させて得られる固形分をIR(赤外分光法)、NMR(核磁気共鳴分析)で分析することによりその存在を確認することができる。またKOHやNaOH等の強アルカリの水溶液によるポリアミック酸またはその誘導体の分解物の有機溶剤による抽出物をGC(ガスクロマトグラフィ)、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)またはGC−MS(ガスクロマトグラフィ質量分析法)で分析することにより、使用されているモノマーを確認することができる。
膜を形成するための液晶配向剤の好ましい態様
本発明で用いるポリイミドまたはポリイミド前駆体を含む膜は、例えばポリイミドまたはポリイミド前駆体を含む液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成し、その塗膜から溶剤を揮発除去することにより形成することができる。
液晶配向剤が含むポリイミドまたはポリイミド前駆体は、それぞれ1種類であっても2種類以上であってもよい。なお、本明細書中では、ポリイミドまたはポリイミド前駆体のうちの1種類のみを含む液晶配向剤を単層型液晶配向剤といい、ポリイミドおよびポリイミド前駆体のうちの2種類以上を含む液晶配向剤をブレンド型液晶配向剤ということがある。2種類以上は、ポリイミドのうちの2種類以上であっても、ポリイミド前駆体のうちの2種類以上であってもよく、1種類以上のポリイミドと1種類以上のポリイミド前駆体を組み合わせたものであってもよい。ここで、単層型液晶配向剤に用いるポリイミドまたはポリイミド前駆体は光反応性基を有するものである。ブレンド型液晶配向剤に用いるポリイミドまたはポリイミド前駆体は、少なくとも1種が光反応性基を有していればよく、光反応性基を有していないポリイミドまたはポリイミド前駆体を含んでいてもよい。液晶配向剤の保存安定性、液晶配向剤の表示素子基板への印刷性、および形成される液晶配向膜の特性のバランスを重視する場合は、ブレンド型液晶配向剤であることが好ましい。
例えば2種類のポリイミドもしくは2種類のポリイミド前駆体を含む2成分系、または、1種類のポリイミドと1種類のポリイミド前駆体を含む2成分系のブレンド型液晶配向剤では、例えば、一方には液晶配向能に優れた性能を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体を選択し、他方には液晶表示素子の電気的特性を改善するのに優れた性能を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体を選択する態様がある。この場合、それぞれのポリマーの構造や分子量を制御することにより、これらのポリマーを溶剤に溶解した液晶配向剤を、基板に塗布し、乾燥を行って薄膜を形成する過程で、液晶配向能に優れた性能を有するポリマーを薄膜の上層に、液晶表示素子の電気的特性を改善するのに優れた性能を有するポリマーを薄膜の下層に偏析させることができる。これには、混在するポリマーにおいて、表面エネルギーの小さなポリマーが上層に、表面エネルギーの大きなポリマーが下層に分離する現象を応用することができる。このような層分離の確認は、形成された液晶配向膜の表面エネルギーが、上層に偏析させることを意図したポリマーのみを含有する液晶配向剤によって形成された膜の表面エネルギーと同じか、または近い値であることで確認することができる。
層分離を発現させる方法として、上層に偏析させたいポリマーの分子量を小さくすることも挙げられる。
ポリアミック酸同士の混合からなる液晶配向剤では、上層に偏析させたいポリマーをポリイミドとすることで層分離を発現させることもできる。
例えば式(2)で表されるジアミンは薄膜の上層に偏析するポリマーの原料モノマーとして用いられてもよく、薄膜の下層に偏析するポリマーの原料モノマーとして用いられてもよい。また、両方のポリマーの原料モノマーとして用いられてもよい。
薄膜の上層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、上記に例示した公知のテトラカルボン酸二無水物から制限されることなく選択することができる。
薄膜の上層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物は、式(AN−1−1)、式(AN−2−1)、式(AN−3−1)、式(AN−4−5)、および式(AN−4−17)で表される化合物が好ましく、式(AN−4−17)がより好ましい。式(AN−4−17)においては、m=4または8が好ましく、m=8がより好ましい。
薄膜の上層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体を合成するために用いられるジアミンおよびジヒドラジドとしては、上記に例示した公知のジアミンから制限されることなく選択することができる。
薄膜の上層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体を合成するために用いられる式(2)で表されるジアミン以外のジアミンおよびジヒドラジドとしては、式(DI−4−1)、式(DI−4−13)、式(DI−4−15)、式(DI−5−1)、式(DI−7−3)、および式(DI−13−1)で表される化合物を用いるのが好ましい。中でも、式(DI−4−13)、式(DI−4−15)、式(DI−5−1)、および式(DI−13−1)で表される化合物を用いるのがより好ましい。式(DI−5−1)において、m=1、2または4が好ましく、m=4がより好ましい。式(DI−7−3)においてはm=3、n=1が好ましい。
薄膜の上層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体を合成するために用いられる非感光性ジアミンは、前記非感光性ジアミンの全量中、芳香族ジアミンを30モル%以上含むことが好ましく、50モル%以上含むことがより好ましい。
前述の光異性化構造を有する酸二無水物およびジアミンは薄膜の上層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体を合成するために好適に用いられる
薄膜の下層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、上記に例示した公知のテトラカルボン酸二無水物から制限されることなく選択することができる。
薄膜の下層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、式(AN−1−1)、式(AN−1−13)、式(AN−2−1)、式(AN−3−2)、および式(AN−4−21)で表される化合物が好ましく、式(AN−1−1)、式(AN−2−1)、および式(AN−3−2)がより好ましい。
薄膜の下層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物は、テトラカルボン酸二無水物の全量中芳香族テトラカルボン酸二無水物を10モル%以上含むことが好ましく、30モル%以上含むことがより好ましい。
薄膜の下層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体を合成するために用いられるジアミンおよびジヒドラジドとしては、上記に例示した公知のジアミンから制限されることなく選択することができる。
薄膜の下層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体を合成するために用いられるジアミンおよびジヒドラジドとしては、式(DI−4−1)、式(DI−4−2)、式(DI−4−10)、式(DI−4−18)、式(DI−4−19)、式(DI−5−9)、式(DI−5−28)、式(DI−5−30)、式(DI−13−1)、および式(DIH−2−1)で表される化合物が好ましい。中でも、式(DI−4−1)、式(DI−4−18)、式(DI−4−19)、式(DI−5−9)、および式(DI−13−1)で表される化合物がより好ましい。式(DI−5−30)において、k=2であるジアミンが好ましい。
薄膜の下層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体を合成するために用いられるジアミンは、芳香族ジアミンを、全ジアミンに対して、30モル%以上含むものである事が好ましく、50モル%以上含むものであることがより好ましい。
薄膜の上層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体、および薄膜の下層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体は共に、それぞれ、本発明の液晶配向剤の必須成分であるポリアミック酸またはその誘導体の合成方法として下記に記載したところに準じて合成することができる。
薄膜の上層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体、および薄膜の下層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体の合計量に対する薄膜の上層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体の割合としては、5重量%〜50重量%が好ましく、10重量%〜40重量%がさらに好ましい。
液晶配向膜の用途
本発明の液晶配向膜は、スマートフォン、タブレット、車載モニター、テレビ等、液晶ディスプレイ用の液晶組成物の配向制御に用いることができる。液晶ディスプレイ用の液晶組成物の配向用途以外に、光学補償材やその他すべての液晶材料の配向制御に用いることができる。また本発明の液晶配向膜は大きな異方性を有するので、単独で光学補償材用途に使用することができる。
液晶表示素子
次に、本発明の液晶表示素子について説明する。
本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶配向膜を有する点に特徴がある。本発明の液晶配向膜およびその形成方法の説明と好ましい範囲、具体例については、液晶配向膜の欄の記載を参照することができる。
本発明の液晶表示素子は、液晶配向膜が本発明の液晶配向膜であることにより、液晶配向膜が優れた液晶配向性を発揮して、良好な残像特性と高いコントラストが得られる。
本発明の液晶表示素子について詳細に説明する。本発明は、対向配置されている一対の基板と、前記一対の基板それぞれの対向している面の一方または両方に形成されている電極と、前記一対の基板それぞれの対向している面に形成された液晶配向膜と、前記一対の基板間に形成された液晶層と、前記対向基板を挟むように設置されている一対の偏光フィルムとバックライトと駆動装置とを有する液晶表示素子において、前記液晶配向膜が本発明の液晶配向膜により構成されている。
電極は、基板の一面に形成される電極であれば特に限定されない。このような電極には、例えばITOや金属の蒸着膜等が挙げられる。また電極は、基板の一方の面の全面に形成されていてもよいし、例えばパターン化されている所望の形状に形成されていてもよい。電極の前記所望の形状には、例えば櫛型またはジグザグ構造等が挙げられる。電極は、一対の基板のうちの一方の基板に形成されていてもよいし、両方の基板に形成されていてもよい。電極の形成の形態は液晶表示素子の種類に応じて異なり、例えばIPS型液晶表示素子(横電界型液晶表示素子)の場合は前記一対の基板の一方に電極が配置され、その他の液晶表示素子の場合は前記一対の基板の双方に電極が配置される。前記基板または電極の上に前記液晶配向膜が形成される。
ホモジニアス配向の液晶表示素子(例えばIPS、FFSなど)の場合は、構成として、少なくとも、バックライト側からバックライト、第一の偏光フィルム、第一の基板、第一の液晶配向膜、液晶層、第二の基板、第二の偏光フィルムを有し、前記偏光フィルムの偏向軸は、第一の偏光フィルムの偏向軸(偏光吸収の方向)と第二の偏光フィルムの偏向軸は交差(好ましくは直交)するように設置される。この時、第一の偏光フィルムの偏向軸と液晶配向方向が平行になるように、または直交するように設置することができる。第一の偏光フィルムの偏向軸と液晶配向方向が平行になるように設置した液晶表示素子をO−モード、直交するように設置した液晶表示素子をE−モードと言う。本発明の液晶配向膜は、O-モード、E−モードどちらにも適用でき、目的によって選択することができる。
多くの光異性化型材料には2色性を有する化合物が用いられている。そのため、液晶配向剤に対して異方性を付加させるために照射する偏光の偏光軸を、バックライト側に配置した偏光フィルムからの偏光の偏光軸と平行に揃える(本発明の液晶配向剤を使用した場合には、O−モードの配置とする)と、液晶配向膜の光吸収波長域の透過率が上昇する。その為、液晶表示素子の透過率を更に改善することができる。
前記液晶層は、液晶配向膜が形成された面が対向している前記一対の基板によって液晶組成物が挟持される形で形成される。液晶層の形成では、微粒子や樹脂シート等の、前記一対の基板の間に介在して適当な間隔を形成するスペーサを必要に応じて用いることができる。
液晶層の形成方法としては、真空注入法とODF(One Drop Fill)法が知られている。
真空注入法では、液晶配向膜面が対向するように、空隙(セルギャップ)を設けて、かつ液晶の注入口を残して、シールを印刷し、基板を張り合わせる。基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に、真空差圧を利用して液晶を注入充填した後、注入口を封止し、液晶表示素子を製造する。
ODF法では、一対の基板のうちの一方の液晶配向膜面の外周にシール剤を印刷し、シール剤の内側の領域に液晶を滴下した後、液晶配向膜面が対向するように他方の基板を張り合わせる。そして、液晶を基板の前面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化し、液晶表示素子を製造する。
基板の張り合わせに用いられるシール剤には、UV硬化型以外に熱硬化型も知られている。シール剤の印刷は、例えばスクリーン印刷法により行なうことができる。
液晶組成物には、特に制限はなく、誘電率異方性が正または負の各種の液晶組成物を用いることができる。誘電率異方性が正の好ましい液晶組成物には、特許3086228、特許2635435、特表平5−501735、特開平8−157826、特開平8−231960、特開平9−241644(EP885272A1)、特開平9−302346(EP806466A1)、特開平8−199168(EP722998A1)、特開平9−235552、特開平9−255956、特開平9−241643(EP885271A1)、特開平10−204016(EP844229A1)、特開平10−204436、特開平10−231482、特開2000−087040、特開2001−48822等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
前記負の誘電率異方性を有する液晶組成物の好ましい例として、特開昭57−114532、特開平2−4725、特開平4−224885、特開平8−40953、特開平8−104869、特開平10−168076、特開平10−168453、特開平10−236989、特開平10−236990、特開平10−236992、特開平10−236993、特開平10−236994、特開平10−237000、特開平10−237004、特開平10−237024、特開平10−237035、特開平10−237075、特開平10−237076、特開平10−237448(EP967261A1)、特開平10−287874、特開平10−287875、特開平10−291945、特開平11−029581、特開平11−080049、特開2000−256307、特開2001−019965、特開2001−072626、特開2001−192657、特開2010−037428、国際公開2011/024666、国際公開2010/072370、特表2010−537010、特開2012−077201、特開2009−084362等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
誘電率異方性が正または負の液晶組成物に1種以上の光学活性化合物を添加して使用することも何ら差し支えない。
また例えば、本発明の液晶表示素子に用いる液晶組成物は、例えば配向性を向上させる観点から、添加物をさらに添加してもよい。このような添加物は、光重合性モノマー、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤などである。好ましい光重合性モノマー、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤には、国際公開2015/146330等に開示されている化合物が挙げられる。
PSA(polymer sustained alignment)モードの液晶表示素子に適合させるために重合可能な化合物を液晶組成物に混合することができる。重合可能な化合物の好ましい例はアクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの重合可能な基を有する化合物である。好ましい化合物には、国際公開2015/146330等に開示されている化合物が挙げられる。
以下、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
測定法と評価法
[重量平均分子量(Mw)の測定]
ポリアミック酸の重量平均分子量は、2695セパレーションモジュール・2414示差屈折計(Waters社製)を用いてGPC法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。測定に使用したサンプルは、得られたポリアミック酸をリン酸−DMF混合溶液(リン酸/N,N−ジメチルホルムアミド=0.6/100:重量比の混合溶液)で、ポリアミック酸濃度が約2重量%になるように希釈したものである。カラムにはHSPgel RT MB−M(Waters社製)を使用し、リン酸−DMF混合溶液を展開溶媒として、カラム温度50℃、流速0.40mL/minの条件で測定を行った。標準ポリスチレンには東ソー(株)社製のTSK標準ポリスチレンを用いた。
[AC残像特性およびコントラストの測定(液晶配向性の評価)]
AC残像は国際公開2000/43833号パンフレットに記載の方法に従って測定した。
具体的には、作製した液晶セルの輝度−電圧特性(B−V特性)を測定し、これをストレス印加前の輝度−電圧特性:B(before)とした。次に、液晶セルに4.5V、60Hzの交流を20分間印加した後、1秒間ショートし、再び輝度−電圧特性(B−V特性)を測定した。これをストレス印加後の輝度−電圧特性:B(after)とした。そして、測定した各B−V特性の電圧1.3Vにおける輝度を用い、下記式にて輝度変化率ΔB(%)を求めた。ΔB(%)の値が小さいほど、AC残像の発生を抑制できること、すなわち液晶配向性が良好であることを意味する。
ΔB(%)=[B(after)1.3−B(before)1.3]/B(before)1.3
式において、B(before)1.3はストレス印加前のB−V特性における1.3Vでの輝度を示し、B(after)1.3はストレス印加後のB−V特性における1.3Vでの輝度を示す。
輝度変化率ΔBは以下の基準で評価した。
ΔB(%)が1.5%未満:◎(最良)
ΔB(%)が1.5%以上2.0%未満:〇(良)
ΔB(%)が2.0%以上3.0%未満:△(可)
ΔB(%)が3.0%以上:×(不可)
また、ストレス印加前のB−V特性における最小輝度と最大輝度の比を用いてコントラスト(CR)を求めた。CRの値が大きいほど、明暗表示が鮮明であることを意味する。
CR=B(before)max/B(before)min
式において、B(before)maxはストレス印加前のB−V特性における最大輝度を示し、B(before)minはストレス印加前のB−V特性における最小輝度を示す。
コントラストCRは下の基準で評価した。
CRが3500以上:◎(最良)
CRが3250以上3500未満:〇(良)
CRが3000以上3250未満:△(可)
CRが3000未満:×(不可)
[電圧保持率(VHR)の評価]
液晶表示素子の電圧保持率(VHR)は、「水嶋他、第14回液晶討論会予稿集p78(1988)」に記載の方法に従い、60℃で、波高±5Vの矩形波をセルに印加して測定した。電圧保持率は、印加した電圧がフレーム周期後どの程度保持されているかを示す指標であり、この値が100%であれば、全ての電荷が保持されていることを意味する。
電圧保持率(VHR)の測定は、ΔBとCRがいずれも可レベル以上である液晶配向膜に対して行った。すなわち、下記の実施例1〜18と比較例1b〜18bの各液晶配向膜について電圧保持率(VHR)を5V、30Hzの条件で測定し、実施例nに対する比較例nbの電圧保持率低下幅(%)の大きさを計算して、以下の基準で評価した(nは1、2、3・・・18である)。
VHR低下幅が0.2%未満:◎(最良)
VHR低下幅が0.2%以上0.3%未満:○(良)
VHR低下幅が0.3%以上:×(不可)
使用した化合物および溶剤
本実施例でワニスの調製に使用したジアミンを、熱反応性を有する光反応性ジアミン、反応性を有しない光反応性ジアミンおよび非光反応性ジアミンに分けて下記に示す。なお、熱反応性を有する光反応性ジアミンには、式(2)で表されるジアミンを使用した。
[熱反応性を有する光反応性ジアミン]
Figure 2020008716
[反応性を有しない光反応性ジアミン]
Figure 2020008716
[非光反応性ジアミン]
Figure 2020008716
[テトラカルボン酸二無水物]
本実施例でワニスの調製に使用したテトラカルボン酸二無水物を下記に示す。
Figure 2020008716
[溶剤]
本実施例で液晶配向剤の調製に使用した溶剤を下記に示す。
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BC:ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)
[液晶組成物]
本実施例で液晶セルの液晶層に使用したネガ型液晶組成物Aの組成を下記に示す。
Figure 2020008716
ワニスの調製
本実施例で使用したワニスは、下記の手順で調製した。ここで、ワニスの調製例1〜7で調製したワニスは、熱反応性を有する光反応性基であるアゾベンゼン構造を含むポリアミック酸の溶液(液晶配向剤)である。ブレンド用ワニスの調製例1〜3で調製したブレンド用ワニスは、アゾベンゼン構造を含まないポリアミック酸の溶液(液晶配向剤)であり、ワニス1〜7にブレンドして使用するものである。
[ワニスの調製例1] ワニス1の調製
攪拌翼、窒素導入管を装着した100mLの3つ口フラスコに、ジアミン(4−1)を2.2409g、N−メチル−2−ピロリドンを64.0g加えた。この溶液に、テトラカルボン酸二無水物として、(AN−4−17、m=8)を3.7591g加え、室温で24時間攪拌した。この反応液に、ブチルセロソルブを30.0g加え、生成したポリマーが目的の重量平均分子量になるまで、70℃で加熱攪拌した。その結果、ポリマーの重量平均分子量が9,000であり、樹脂分濃度(固形分であるポリマー濃度)が6重量%であるワニス1を得た。
[ワニスの調製例2〜7] ワニス2〜7の調製
ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物として用いる化合物を、表1に示すように変更したこと以外は、調製例1と同様にして樹脂分濃度が6重量%のワニス2〜7を調製した。このとき、ポリマーの合成条件は、重量平均分子量が5,000から20,000の範囲になるように調整した。生成したポリマーの重量平均分子量を表1に示す。なお、表1において、ジアミンとして2以上の化合物が掲載されている調製例では、その全ての化合物を合わせてジアミンとして使用したことを意味し、テトラカルボン酸二無水物として2以上の化合物が掲載されている調製例では、その全ての化合物を合わせてテトラカルボン酸二無水物として使用したことを意味する。角括弧内の数値は、配合比(モル%)を表し、「−」はその欄に対応する化合物を使用していないことを意味する。表2においても、同様である。
[ブレンド用ワニスの調製例1〜3] ブレンド用ワニス1〜3の調製
ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物として用いる化合物と配合比を、表2に示すように変更したこと以外は、調製例1と同様にして樹脂分濃度が6重量%であるブレンド用ワニス1〜8を調製した。生成したポリマー成分の重量平均分子量を表2に示す。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
液晶配向膜の製造
各調製例で調製したワニス1〜7、ブレンド用ワニス1〜3を使用して、下記の手順で液晶配向剤(配向剤1〜18)を調製し、その液晶配向剤を用いて液晶配向膜を製造した。
[実施例1] 配向剤1の調製と液晶配向膜の製造
攪拌翼、窒素導入管を装着した50mLのナスフラスコに、ワニス1(10.0g)を秤取って投入し、そこにN−メチル−2−ピロリドン(1.4g)、ブチルセロソルブ(0.6g)を加え、室温で1時間攪拌して樹脂分濃度5重量%の配向剤1を得た。
この配向剤1を、FFS電極付きガラス基板およびカラムスペーサー付きガラス基板に、スピンナー法により、2,000rpmで15秒間基板を回転させることで塗布した。塗布後、基板を60℃で1分間加熱し、溶剤を蒸発させることで液晶配向剤の膜を形成した。この液晶配向剤の膜に、ウシオ電機(株)製マルチライトML−501C/Bを用い、基板を50℃に加熱しながら、基板の鉛直方向から、偏光板を介して波長365nmの紫外線直線偏光を2.0J/cm2の照射量で照射し、光配向処理を行った。この光配向処理を行った配向剤の膜に、220℃にて30分間加熱焼成処理を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
[実施例2〜7] 配向剤2〜7の調製と液晶配向膜の製造
ワニス1の代わりに、表3に示すワニスを用いて配向剤2〜7を調製し、膜に照射する紫外線直線偏光のエネルギー量と、照射の際の基板の加熱温度を、表3に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして液晶配向膜を形成した。
[実施例8] 配向剤8の調製と液晶配向膜の製造
攪拌翼、窒素導入管を装着した50mLのナスフラスコに、ワニス1(3.0g)と、ブレンド用ワニス1(7.0g)をそれぞれ秤取って投入し、そこにN−メチル−2−ピロリドン(3.5g)およびブチルセロソルブ(1.5g)を加え、室温で1時間攪拌して樹脂分濃度4重量%の配向剤8を得た。
この配向剤8を配向剤1の代わりに用い、膜に照射する紫外線直線偏光のエネルギー量と、照射の際の基板の加熱温度を、表4に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして液晶配向膜を形成した。
[実施例9〜18] 配向剤9〜18の調製と液晶配向膜の製造
ワニス1およびブレンド用ワニス1の代わりに、表4に示すワニスおよびブレンド用ワニスをそれぞれ用いて配向剤8〜18を調製し、膜に照射する紫外線直線偏光のエネルギー量と、照射の際の基板の加熱温度を、表4に示す値に変更したこと以外は、実施例8と同様にして液晶配向膜を形成した。
[比較例1a〜18a] 配向剤1〜18を用いた比較製造例
紫外線直線偏光の照射の際に基板を加熱せずに室温としたこと以外は、実施例1〜18と同様にして液晶配向膜を形成した。ここで、液晶配向剤には実施例1〜18で調製した配向剤1〜18と同じものを各比較例で使用した。
[比較例1b〜18b] 配向剤1〜18を用いた別の比較製造例
液晶配向剤として表3、4に示すものを用い、液晶配向剤の膜に照射する紫外線直線偏光のエネルギー量を表3、表4に示す値に変更したこと以外は、比較例1a〜18aと同様にして液晶配向膜を形成した。ここで、各比較例で使用した配向剤1〜18は、実施例1〜18で調製した配向剤1〜18と同じものである。
AC残像特性およびコントラストの評価(液晶配向性の評価)
各実施例および各比較例で液晶配向膜を形成した基板2枚を、液晶配向膜が形成されている面を対向させ、かつ、対向する液晶配向膜の間に液晶組成物を注入するための空隙が形成されるように貼り合わせた。このとき、基板の向きは、光配向処理の際に各液晶配向膜に照射した直線偏光の偏光方向が互いに平行になるような向きにした。この貼り合わせた基板間の空隙に、ネガ型液晶組成物Aを注入し、注入口を光硬化剤で封止して、セル厚4μmの液晶セル(液晶表示素子)を作製した。得られた液晶セルについて、ストレス印加前とストレス印加後の1.3Vにおける輝度変化率ΔB、および、ストレス印加前のB−V特性における最大輝度と最小輝度の比CRを測定し、AC残像特性とコントラスト特性を評価した。その結果を表3、4に示す。
電圧保持率(VHR)の評価
実施例1〜18、比較例1a〜18aのうちΔBとCRが共に可レベル以上であったもの、比較例1b〜18bのうちΔBとCRが共に可レベル以上であったものについては、液晶セルを作製し、VHRを測定した。液晶配向膜が形成された基板2枚を、液晶配向膜が形成されている面を対向させ、かつ、対向する液晶配向膜の間に液晶組成物を注入するための空隙が形成されるように貼り合わせた。このとき、基板の向きは、光配向処理の際に各液晶配向膜に照射した直線偏光の偏光方向が互いに平行になるような向きにした。この貼り合わせた基板間の空隙に、上記のネガ型液晶組成物Aを注入し、セル厚7μmの液晶セル(液晶表示素子)を作製した。作製した各液晶セルについて、5V、30Hzで電圧保持率(VHR)を測定した。その結果を表3、4に示す。表3、4中で「VHR(%) 5V,30Hz」のマスに斜線が引かれているものは、ΔBとCRの少なくとも一方が不可レベルであったため、VHRの評価を行わなかったこと、またはマスが実施例nのそれであり、比較例na、比較例nbのVHRを評価するための基準であることを意味している(nは1、2、3・・・18である)。
Figure 2020008716
Figure 2020008716
表3、4に示すように、光配向処理の際、基板を加熱しながら紫外線直線偏光を照射した実施例1〜18の液晶配向膜を用いて作製された液晶セルは、ΔBとCRが良好であった。一方、同じエネルギー量の紫外線直線偏光を室温で照射した比較例1a〜18aの液晶配向膜を用いて作製された液晶セルは、ΔBかCRの少なくとも一方が不可レベル(×)であった。また、ΔBやCRを良好にすることを目的として、室温で照射する紫外線直線偏光のエネルギー量を大きくした比較例1b〜18bの液晶配向膜を用いて作製された液晶セルは、CRが依然として不可レベル(×)であるか、CRが可レベル(△)以上であってもVHRが不可レベル(×)であった。このことから、室温で光配向処理を行う液晶配向膜の製造方法では、露光量を増やすことで液晶セルのΔBとCRを良好なレベルにすることができたとしても、露光量の増加に伴うVHRの低下を避けられないが、本発明にしたがって基板を加熱しながら紫外線直線偏光を照射する製造方法により提供された液晶配向膜を用いれば、液晶セルのVHRの低下が抑制され、なおかつΔBとCRを良好なレベルとすることができることが明らかになった。特に、実施例1〜18の液晶配向膜は、比較例1b〜18bの液晶配向膜に比べて照射エネルギー量が低い値であったのにも関わらず、ΔBとCRは比較例1b〜18bと同等もしくはより良好な評価結果となり、予想外に優れた効果があることが裏付けられた。
このことから、液晶配向剤の膜を加熱しながら偏光紫外線を照射する本発明によると、室温で照射を行う場合に比べて少ないエネルギー量で配向を促進でき、そうして製造された液晶配向膜を用いることにより、VHRが高く表示品位の高い液晶表示素子が実現することがわかった。
本発明の液晶配向膜は良好な配向性を有する。本発明の液晶配向膜を用いることにより、良好な残像特性および高いコントラストを有し、電圧保持率の高い液晶表示素子を実現することができる。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高い。


Claims (10)

  1. トランス-シス光異性化を起こす光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体を加熱しながら偏光紫外線を照射して得た液晶配向膜。
  2. 前記光反応性基が、アゾベンゼン構造であることを特徴とする、請求項1に記載の液晶配向膜。
  3. 前記ポリイミドまたは前記ポリイミド前駆体が、下記式(P1)で表される構成単位を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の液晶配向膜。
    Figure 2020008716
    [式(P1)において、R1は4価の有機基を表し、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基を表す。ベンゼン環の水素原子は置換基で置換されていてもよい。]
  4. 前記式(P1)で表される構成単位が、下記式(P2)で表される構成単位であることを特徴とする、請求項3に記載の液晶配向膜。
    Figure 2020008716
    [式(P2)において、R1は4価の有機基を表し、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子または1価の有機基を表す。R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、下記式(P1−1)または下記式(P1−2)で表される基を表し、R4およびR5の少なくとも1つは、下記式(P1−1)または下記式(P1−2)で表される基であり;
    ベンゼン環の水素原子は置換基で置換されていてもよい。]
    Figure 2020008716
    [式(P1−1)および式(P1−2)において、R6〜R8は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルカノイル基、または置換もしくは無置換のアリールカルボニル基を表し;
    *は、式(P2)におけるベンゼン環への結合位置を表す。]
  5. トランス-シス光異性化を起こす光反応性基を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体を含む膜を基板上に形成した後、前記基板を加熱しながら、前記膜に偏光紫外線を照射する工程を含む液晶配向膜の製造方法。
  6. 前記基板の加熱温度が、40℃〜200℃であることを特徴とする、請求項5に記載の液晶配向膜の製造方法。
  7. 前記基板の加熱温度が、60℃〜150℃であることを特徴とする、請求項5に記載の液晶配向膜の製造方法。
  8. 前記偏光紫外線の照射量が、0.25J/cm2〜4.0J/cm2であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の液晶配向膜の製造方法。
  9. 請求項1に記載の液晶配向膜を含むことを特徴とする液晶表示素子。
  10. 前記液晶表示素子が、横電界型液晶表示素子であることを特徴とする、請求項9に記載の液晶表示素子。
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