以下、本発明を実施するための形態例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素は、同一の符号を付し、構成要素の重複説明は省略する。まず、各種実施形態の構成例を説明する前に、本発明で解決する上記課題について、より具体的に説明する。
まず、その面内において厚みが部分的に異なる箇所が存在する用紙(記録材の一例)における、紙(シートの一例)の厚みが異なる箇所において、同じ色が再現しない理由について、用紙が封筒である場合を例に挙げて説明する。図2は、封筒の構成例を示す図であり、図3は、封筒に所定の画像が印字された状態を示す図である。
図2の左側には、センター(中央)貼りと称される貼り方で紙同士が貼り合わされてなる封筒Sh1を示し、図2の右側には、ダイヤモンド貼りと称される貼り方で用紙同士が貼り合わされてなる封筒Sh2を示す。封筒Sh1においては、封筒裏面の中心部分及び底部に貼り合わせ部が形成される。封筒Sh2においては、封筒裏面の中央近辺に2箇所の斜め方向の貼り合わせ部が形成される。そして、封筒Sh1及び封筒Sh2のいずれにおいても、貼り合わせ部における紙の重なり方によって、封筒を構成する各領域における紙の重なり枚数も異なる。
例えば、封筒Sh1及び封筒Sh2において、頭(ベロ)部に相当する領域Ar1は1枚の紙で形成される。上前及び下前に相当する領域Ar2においては、2枚の紙が重なっており、胴の貼り目に相当する領域Ar3においては、3枚の紙が重なっている。また、封筒Sh1においては、底部に相当する領域の中心部分にある領域Ar4において4枚の紙が重なっている。したがって、封筒Sh1において、封筒の厚さが一番薄い領域は領域Ar1であり、一番厚い領域は領域Ar4である。また、封筒Sh2においては、封筒の厚さが一番薄い領域は領域Ar1であり、一番厚い領域は領域Ar3である。
そして、図3に示されるように、封筒Sh1の領域Ar2及び領域Ar3にまたがって、画像Iが形成される場合を想定する。領域Ar2及び領域Ar3では、上述のように紙の厚み(重なり枚数)に差があり、このような用紙の厚みの差は、画像形成装置1による用紙へのトナーの転写率に影響を及ぼす。具体的には、領域Ar3のように、紙の重なり枚数が多く厚みのある箇所は、用紙の電気的抵抗が高いためトナーが転写しにくくなる。一方、領域Ar2のように、紙の重なり枚数が少なく薄い箇所は、用紙の電気的抵抗が低いためトナーが転写しやすい。つまり、紙の重なり枚数が多く厚みのある箇所と、紙の重なり枚数が少なく薄い箇所とでは適切な転写電圧が異なるため、領域Ar2と領域Ar3は転写率が異なる。
このようなトナーの転写率に差により、印刷ジョブに含まれる入力画像においては同一である色が、封筒上に印字される実画像(画像I)においては同一の色として再現されない。トナーの付着量が多くなる多次色のベタ部においては特に、その傾向が顕著に表われる。
また、入力画像と同じ色が出力画像において再現しない他の理由として、用紙の厚みによる色差がある。紙の重なり方によって、用紙が本来有する色の見え方が変化するため、特に、用紙上に印字される画像の色が薄く、下地である用紙の色が透けて見えるハイライト部においては、用紙の色の見え方に応じて、測色器で測定される色濃度も変化してしまう。
上述のような理由により、図3に示す画像Iの色の再現性は、領域Ar2に印字された画像I1と領域Ar3に印字された画像I2とにおいて異なってしまう。上述した各要因による影響分を排除して、経年変化による色濃度の変動分のみを検知するためには、厚みが同一である箇所で測定された色濃度同士を比較してその差分である濃度変化量を求める必要がある。そこで、本発明では、部分的に用紙の厚みが異なる記録材に形成される画像の色濃度の、経時変化による変動分の補正を、実画像の測色結果に基づいて、適切に行えるようにする技術を提案する。
<第1の実施形態>
[画像形成システムの構成]
次に、図4を参照して、本発明の第1の実施形態に係る画像形成システムの構成例について説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係る画像形成システム100の概要構成図である。なお、図4には、本発明の説明に必要と考える要素又はその関連要素を記載しており、本発明の画像形成システムは図4に示す例に限定されない。
図4に示す画像形成システム100は、画像形成装置1及び画像検査装置2を備える。画像形成装置1は、静電気を用いて画像の形成を行う電子写真方式によって用紙に画像を形成する画像形成装置である。画像形成装置1は、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー画像を重ね合わせるタンデム形式によって、用紙上にカラー画像を形成する。
画像検査装置2は、画像形成装置1から搬送された用紙Shに形成された実画像を構成する各色の濃度を測定する。そして、画像検査装置2は、該測定により得られた色濃度における経時変化に伴う変動分を補正するための補正量の算出を行う。画像検査装置2で算出された補正量は、画像形成装置1における画像形成条件にフィードバックされる。
画像形成装置1は、自動原稿給送装置(ADF:Auto Document Feeder)12を有する画像入力部11、操作表示部13、給紙トレイ20A及び20B、並びに、画像形成部30を備える。
画像入力部11は、ADF12の原稿台上の原稿から画像を光学的に読み取り、読み取った画像をA/D変換して画像データ(スキャンデータ)を生成する。
操作表示部13は、液晶パネル等からなる表示部、及び、タッチセンサ等からなる操作部で構成される。表示部及び操作部は、例えばタッチパネルとして一体に形成される。操作表示部13は、操作部に入力されたユーザーからの操作の内容を表す操作信号を生成し、該操作信号を後述の制御部50(図5参照)に供給する。また、操作表示部13は、制御部50から供給される表示信号に基づいて、表示部に、ユーザーによる操作内容や設定情報等を表示する。なお、操作部をマウスやタブレットなどで構成し、表示部とは別体で構成することも可能である。
給紙トレイ20A及び20Bは、画像形成部30で画像形成が行われる用紙Shを収容する容器である。給紙トレイ20A及び20Bには、それぞれ、紙種や坪量等が異なる用紙が収容される。なお、本実施形態では、給紙トレイ20A及び20Bの2つの給紙トレイを設けた例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。給紙トレイ20の個数は1つであってもよく、3個以上であってもよい。なお、以下の説明において、給紙トレイ20A及び20Bを個々に区別する必要がない場合には、これらを給紙トレイ20と総称する。
画像形成装置1には、給紙トレイ20A又は20Bから給紙された用紙Shを、画像検査装置2まで搬送する搬送路22が形成される。搬送路22には、用紙Shを搬送するための複数の搬送ローラが設けられる。
画像形成部30は、Y、M、C及びKの各色のトナー画像を形成するための、4つの画像形成ユニット31Y,31M,31C及び31Kを備える。画像形成ユニット31Y,31M,31C及び31Kはそれぞれ、帯電部、露光部(いずれも不図示)、像担持体としての感光体ドラム32Y,32M,32C,32K、及び、現像部33Y,33M,33C,33Kを備える。
現像部33Y,33M,33C,33Kは、感光体ドラム32Y,32M,32C,32Kの各表面(外周部)に、画像に応じた光を照射することにより、各感光ドラムの周上に静電潜像を形成させる。そして、現像部33Y,33M,33C,33Kは、該静電潜像に不図示の現像器から供給されたトナーを付着させることにより、感光体ドラム32Y,32M,32C,32K上にトナー画像を形成する。
また、画像形成部30は、中間転写ベルト34、2次転写部35及び定着部36を備える。中間転写ベルト34は、感光体ドラム32Y,32M,32C,32Kに形成された画像が1次転写されるベルトである。2次転写部35は、中間転写ベルト34上に1次転写された各色のトナー画像を、搬送路22を搬送された用紙Shに2次転写するローラである。
定着部36は、2次転写部35の用紙搬送方向の下流側に配置されて、画像形成部30から供給されるカラーのトナー画像が形成された用紙Shに対して、定着処理を施す。定着部36によって定着処理が施された用紙Shは、画像検査装置2に搬送される。
なお、画像形成部30は、後述のROM(Read Only Memory)502又は記憶部52(図5参照)等に格納された画像形成条件に基づいて、用紙Shに画像を形成する。画像形成条件は、後述の画像検査装置2で算出された補正量が画像検査装置2から送信される都度、変更される。
補正量の画像形成条件へのフィードバックは、例えば、現像バイアスのDC(Direct Current)電圧を増減させることによって、用紙Shに形成する画像の最高濃度部の濃度を変更すること等により行うことができる。なお、画像形成条件への補正量のフィードバックは、この方法以外の方法により行ってもよい。例えば、帯電部(不図示)の帯電電位や、露光部(不図示)の露光エネルギー又は露光時間などを変更することによりおこなってもよい。または、現像部内の現像スリーブ(不図示)の回転数を変更したり、現像ローラに印加する現像AC(Alternating Current)バイアス電圧の電圧又は波形を変更したりすることにより行ってもよい。なお、中間調の部分の色濃度の補正量の、画像形成条件へのフィードバックは、例えば、γカーブを再補正して色濃度を一定に保つこと等により行うことができる。
画像検査装置2は、画像形成装置1から搬送されてきた用紙Shを搬送する搬送路37と、搬送路37上を搬送された用紙Shが排出される排紙トレイ14と、インライン測色器38(色濃度検出部の一例)とを有する。
インライン測色器38は、搬送路37の上方に設置されて、搬送路37上を搬送された用紙Shの上面に形成された画像を読み取り、読み取って得た画像情報に基づいて、該画像の色濃度(反射濃度)を測定する。インライン測色器38で測定された色濃度の情報は、画像検査装置2内の制御部60(図6参照)に供給される。
なお、本実施形態では、画像形成装置1が反転パス等の両面印字機構を有さず、画像検査装置2が用紙Shの片面のみを検査する例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。本発明に係る画像形成装置を、両面印字機構を有する画像形成装置に適用してもよい。この場合、用紙Shの表面及び裏面の両面に印字された各画像を検査できるように、画像検査装置2内のインライン測色器38は、表面用と裏面用との2つが必要となる。
また、本実施形態では、インライン測色器38を画像検査装置2の内部に配置した例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。インライン測色器38を、画像形成装置1の内部に設けてもよい。
さらに、本実施形態では、画像形成装置1と画像検査装置2とがそれぞれ別の装置として構成される例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、画像形成装置1の内部に画像検査装置2が設けられる等によって、画像形成装置1及び画像検査装置2が一体に形成されてもよい。
[画像形成装置の制御系の構成]
次に、図5を参照して、画像形成装置1の制御系の構成例について説明する。図5は、画像形成装置1の制御系の構成例を示すブロック図である。なお、図5において、図4と重複する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
画像形成装置1は、通信I/F部51、用紙搬送部23、画像入力部11、画像形成部30、制御部50、記憶部52、定着部36及び操作表示部13を備える。
通信I/F部51は、ネットワーク又は専用線を介して、ユーザーが操作する端末であるパーソナルコンピュータ(PC)200との間でデータを送受信するインターフェースである。通信I/F51として、例えばNIC(Network Interface Card)を用いることができる。
用紙搬送部23は、制御部50による制御に基づいて、搬送路22(図4参照)上に設けられた搬送ローラ(図示略)を駆動する。
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502及びRAM(Random Access Memory)503を備える。ROM502には、制御部50のCPU501が実行するプログラム又はプログラムの実行時に使用するデータ等が記憶される。CPU501は、ROM502に記憶されたプログラムを読み出すことにより、画像形成装置1を構成する各部の制御を行う。RAM503には、CPU501の演算処理の途中に発生した変数やパラメータなどが一時的に書き込まれる。
制御部50は、用紙搬送部23を制御して搬送ローラを駆動させ、用紙Shを搬送路22上で搬送させる。また、制御部50は、画像入力部11がADF12で読み取った原稿から取得した画像データ、あるいは、外部から取得した画像データを、画像形成部30に出力する。また、制御部50は、画像形成部30を制御して、用紙Shに画像を形成させる。また、制御部50は、定着部36を制御して画像を用紙Shに定着させる。
また、制御部50は、操作表示部13から操作信号を受信し、該操作信号に応じた制御を行う。さらに、制御部50は、操作表示部13に表示信号を出力し、操作表示部13が、各種操作指示や設定情報を入力するための各種設定画面や各種処理結果等を表示する操作画面を表示パネルに表示する。
記憶部52には、制御部50のCPU501がプログラムを実行する際に使用するパラメータや、プログラムを実行して得られたデータなどが記憶される。例えば、記憶装置101には、各濃度レベルの画像形成条件等の情報が記憶される。なお、記憶部52に、CPU501が実行するプログラムを記憶させてもよい。
[画像検査装置の制御系の構成]
次に、図6を参照して、画像検査装置2の制御系の構成例について説明する。図6は、画像検査装置2の制御系の構成例を示すブロック図である。なお、図6において、図4と重複する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
画像検査装置2は、通信I/F部61、用紙搬送部62、インライン測色器38、制御部60、記憶部63及び操作表示部64を備える。
通信I/F部61は、ネットワークを介して、画像形成装置1との間でデータを送受信するインターフェースである。通信I/F61として、例えばNICを用いることができる。用紙搬送部62は、制御部60による制御に基づいて、搬送路37(図4参照)上に設けられた搬送ローラ(不図示)を駆動する。
インライン測色器38は、例えば、光の波長ごとの反射光の強度(スペクトル)を計測可能な測色器であり、測定した色の濃度(反射濃度)や、L*a*b*値などを出力する。インライン測色器38には、例えば、不図示の複数のセンサ(光電変換素子)を用紙幅方向(用紙搬送方向と直交する方向)の全域にわたる1次元上に配列したスキャナ(ラインセンサ)を使用することができる。
インライン測色器38をスキャナで構成した場合、画像の読み取りは、スキャナをその配置方向と直交する方向(用紙搬送方向)に移動させながら行われる。本実施形態では、画像形成を行う対象の用紙Shが、部分的に紙の厚み異なる封筒等の用紙である場合には、インライン測色器38は、後述の画像読み取り領域設定部604で設定された画像読み取り領域のみを対象として画像の読み取りを行う。
そして、インライン測色器38は、画像の読み取りが行われる領域をメッシュ状に分割して得られる各領域を対象として色濃度の測定を行う。以下、色濃度の測定が行われる各領域を「測定スポット」と称する。
なお、本実施形態では、インライン測色器38を、複数のセンサが用紙幅方向の1次元上に配置されてなるラインセンサで構成した例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。インライン測色器38を単一のセンサで構成し、該センサを2次元的に移動させることにより画像の色の濃度を測定してもよい。または、インライン測色器38を2次元上(マトリクス状)に配置した複数のセンサで構成し、該複数のセンサで一回の測定により用紙上の全画素の色の濃度を読み取ってもよい。
制御部60は、CPU601、ROM602、RAM603、画像読み取り領域設定部604、複数画素反射濃度算出部605及び補正量算出部606を備える。
ROM602には、制御部60のCPU601が実行するプログラム又はプログラムの実行時に使用するデータ等が記憶される。CPU601は、ROM602に記憶されたプログラムを読み出すことにより、画像検査装置2を構成する各部の制御を行う。RAM603には、CPU601の演算処理の途中に発生した変数やパラメータなどが一時的に書き込まれる。
画像読み取り領域設定部604は、操作表示部64を介してユーザーから入力された、用紙Shの一例としての封筒の識別情報に基づいて、インライン測色器38が色濃度の測定を行う対象の領域である、画像読み取り領域を設定する。そして、画像読み取り領域設定部604は、設定した画像読み取り領域の情報をインライン測色器38に供給する。画像読み取り領域設定部604による画像読み取り領域の設定処理については、後述の図8を参照して詳述する。
複数画素反射濃度算出部605は、インライン測色器38で測定された多次色よりなる画像の色の実測値に基づいて、単色の色濃度を推定する。ここで、図7を参照して、複数画素反射濃度算出部605による単色の色濃度の推定方法について説明する。図7は、色座標上に表示された多色画像の階調および単色画像の階調を示す図である。複数画素反射濃度算出部605は、まず色座標を求め、該色座標におけるベクトルの長さから、単色の濃度を推定する。
図7には、1次色であるY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、及び、2次色であるR(赤)、G(緑)、B(青)を示す。また、最大階調を階調100%として示し、最小階調を階調0%として示す。
図7には、多色画像の階調R1(Y100%、M100%の合成色)、単色画像(イエロー)及び単色画像(マゼンタ)の色座標上の相関が示される。階調R1はY100%とM100%との合成色であるため、下記の式(1)に示すベクトル計算より、階調R1の色は2つの色座標の合成で求められる。
なお、上記式(1)を変形させた下記式(2)を用いても、同様に階調R1の色濃度を求めることが出来る。
つまり、複数画素反射濃度算出部605は、インライン測色器38で測定された色Y100%及びR(Y100%、R100%の合成色)の色座標から、実測値の得られていない単色のM100%を印字したときの色座標を推定可能である。
図6に戻って説明を続ける。補正量算出部606は、インライン測色器38が測定した単色の色濃度及び/又は複数画素反射濃度算出部605が推定した色濃度と、後述の信頼度テーブルTbに記載の信頼度の情報とに基づいて、色濃度の補正量を算出する。補正量算出部606による補正量算出処理については、後述の図10を参照して行う信頼度テーブルTbの説明時に併せて説明する。
記憶部63には、制御部60のCPU601がプログラムを実行する際に使用するパラメータや、プログラムを実行して得られたデータなどが記憶される。なお、記憶部63に、CPU601が実行するプログラムを記憶してもよい。また、記憶部63には、ペーパープロファイルP及び信頼度テーブルTbが記憶される。
ペーパープロファイルPは、用紙Shとしての封筒の識別情報と、該封筒の情報とが対応付けて管理されるテーブルである。封筒の識別情報には、例えば、封筒の品名、JANコード又はEANコード等の商品コードを用いることができる。封筒の情報としては、例えば、紙種、厚さ(紙厚)、貼り合わせ(重ね合わせ)部の形成位置及び紙の重なり枚数等の情報が記憶される。貼り合わせ部の形成位置や紙の重なり枚数などの情報は、メーカー等によって公開されていない情報であるため、ユーザー等が予めこれらの情報をペーパープロファイルPに登録しておく必要がある。
操作表示部64は、液晶パネル等からなる表示部、及び、タッチセンサ等からなる操作部で構成される。表示部及び操作部は、例えばタッチパネルとして一体に形成される。操作表示部64は、操作部に入力されたユーザーからの操作の内容を表す操作信号を生成し、該操作信号を制御部60に供給する。また、操作表示部64は、制御部60から供給される表示信号に基づいて、表示部に、ユーザーによる操作内容や設定情報等を表示する。なお、操作部をマウスやタブレットなどで構成し、表示部とは別体で構成することも可能である。
[画像読み取り領域設定部による画像読み取り領域の設定処理]
次に、図8を参照して、画像検査装置2の画像読み取り領域設定部604(図6参照)による画像読み取り領域の設定処理の概要について説明する。図8は、画像読み取り領域設定部604が画像読み取り領域の設定時に用いる各種情報を説明する図である。図8Aは、封筒における貼り合わせ部の形成位置の例を示す図であり、図8Bは、画像読み取り領域の設定例を示す図である。
図8A及び図8Bに示す封筒Sh1は、図2に示した封筒Sh1と同一の形状の封筒である。つまり、頭(ベロ)部に相当する領域Ar1は1枚の用紙で形成され、上前及び下前に相当する領域Ar2においては、2枚の用紙が重なっている。胴の貼り目に相当する領域Ar3においては、3枚の用紙が重なっており、底部に相当する領域の中心部分にある領域Ar4においては、4枚の用紙が重なっている。
このような、封筒の各領域における紙同士の重なり枚数の情報や、貼り合わせ部の形成位置の情報などは、画像検査装置2の記憶部63内に記憶されるペーパープロファイルPに格納される。画像検査装置2の操作表示部64等を介して、ユーザーより印字対象の封筒の識別情報が入力された場合、画像読み取り領域設定部604は、入力された識別情報と対応する、貼り合わせ部の形成位置及び紙の重なり枚数の情報を、ペーパープロファイルPから読み出す。
次いで、画像読み取り領域設定部604は、ペーパープロファイルPから読み出した貼り合わせ部の形成位置及び紙の重なり枚数の情報に基づいて、インライン測色器38が測色を行う領域である、画像読み取り領域を設定する。封筒のような、面内における色再現性が一様とならない用紙Shに形成される画像(以下、封筒画像と称する)においては、もっとも印字量が多いと想定される領域に印字される色の再現性が高いことが重要視される。したがって、印字の対象が封筒などである場合には、もっとも印字量が多いと想定される領域に印字される色の再現性がよくなるように、転写条件や定着条件などが設定される。
封筒においては、紙の重なり枚数が2枚である領域、及び、貼り合わせ部を除く紙の重なり枚数が3枚である領域が、封筒画像の印字量がもっとも多いと想定される領域である。つまり、これらの領域に印字される画像の色は、より正確に再現されることが求められる。したがって、画像読み取り領域設定部604は、図8Bに示すように、紙の重なり枚数が2枚である、上前及び下前に相当する領域Ar2と、紙の重なり枚数が3枚である、底部に相当する領域Ar4とを、それぞれ、第1の画像読み取り領域As1及び第2の画像読み取り領域As2に設定する。
なお、本実施形態では、紙の重なり枚数が2枚である領域及び3枚である領域のみを画像読み取り領域に設定した例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。紙の重なり枚数が4枚以上の領域を画像読み取り領域に設定してもよい。
[インライン測色器による画像読み取り領域を対象とした色濃度測定処理]
次に、インライン測色器38による画像読み取り領域を対象とした色濃度測定処理の概要について説明する。インライン測色器38は、画像読み取り領域設定部604によって設定された画像読み取り領域に形成された実画像の色濃度を測定する。画像読み取り領域として、図8Bに示した第1の画像読み取り領域As1及び第2の画像読み取り領域As2が設定された場合、インライン測色器38は、第1の画像読み取り領域As1に形成された実画像の色濃度と、第2の画像読み取り領域As2に形成された実画像の色濃度とを、それぞれ個別に測定する。
ここで、図9を参照して、第1の画像読み取り領域As1に形成された実画像の色濃度と第2の画像読み取り領域As2に形成された実画像の色濃度とを、インライン測色器38が個別に測定すべき理由について説明する。図9は、第1の画像読み取り領域As1に印字された画像の色濃度、及び、第2の画像読み取り領域As2に印字された画像の色濃度の、経時変化に伴う変動の例を示すグラフである。
図9の縦軸はインライン測色器38で測定された画像の反射濃度を示し、横軸は印刷枚数を示す。図9において、第1の画像読み取り領域As1で測定された反射濃度の変化は実線で示し、第2の画像読み取り領域As2で測定された反射濃度の変化は破線で示す。
図9に示す例では、第1の画像読み取り領域As1においては、印刷開始時に反射濃度D11が検出され、その濃度は印刷枚数が増えるごとに増加している。印刷枚数が所定数に達した時点T1では、反射濃度D11よりも高い反射濃度D12が検出されおり、この時点で、反射濃度D12と反射濃度D11との差分(濃度変化量)C11に基づく色濃度の補正が行われている。この補正により、第1の画像読み取り領域As1に印字される画像の色の反射濃度は、反射濃度D11となる。
また、反射濃度D12が検出された時点T1からさらに時間が経過して、印刷枚数が所定数に達した時点T2においては、反射濃度D11よりも高い反射濃度D13が検出されおり、この時点で、反射濃度D11と反射濃度D13との差分(濃度変化量)C12に基づく色濃度の補正が行われている。この補正により、第1の画像読み取り領域As1に印字される画像の色の反射濃度は、反射濃度D11となる。
一方、第2の画像読み取り領域As2においては、印刷開始時に反射濃度D21が検出され、その濃度は印刷枚数が増えるごとに増加している。印刷枚数が所定数に達した時点T3では、反射濃度D21よりも高い反射濃度D22が検出されおり、この時点で、反射濃度D22と反射濃度D21との差分(濃度変化量)C21に基づく色濃度の補正が行われている。この補正により、第2の画像読み取り領域As2に印字される画像の色の反射濃度は、反射濃度D21となる。
また、反射濃度D22が検出された時点T3からさらに時間が経過して、印刷枚数が所定数に達した時点T4においては、反射濃度D21よりも高い反射濃度D23が検出されおり、この時点で、反射濃度D23と反射濃度D21との差分(濃度変化量)C22に基づく色濃度の補正が行われている。この補正により、第2の画像読み取り領域As2に印字される画像の色の反射濃度は、反射濃度D21となる。
このように、第1の画像読み取り領域As1と第2の画像読み取り領域As2とでは、印刷開始時に検出される色の濃度が異なる可能性がある。第1の画像読み取り領域As1に形成される画像と、第2の画像読み取り領域As2に形成される画像とでは、領域における紙の重なり枚数(紙の厚さ)が異なるため、同一の画像形成条件に基づいて画像形成が行われた場合であっても、その色の再現性が互いに異なるためである。
したがって、本実施形態では、インライン測色器38は、紙の重なり枚数が異なる領域(第1の画像読み取り領域As1、第2の画像読み取り領域As2)ごとに、個別に色濃度の測定を行う。そして、補正量算出部606は、紙の重なり枚数に対応して設けられた各画像読み取り領域を対象として、色濃度の変動(濃度変化量)の算出を行う。つまり、補正量算出部606は、紙の重なり枚数が同じである画像読み取り領域で測定された色濃度同士を比較することにより、該色濃度の変動の有無を判定する。これにより、例えば、貼り合わせ部で測定された色濃度と、貼り合わせ部以外の領域で測定された色濃度とが比較されてしまい、比較の結果得られた差分値が、貼り合わせ部における濃度変化量として誤って検知されてしまう事態等の発生を防ぐことができる。
なお、ここでは、補正量算出部606が、紙の重なり枚数が同じである画像読み取り領域で測定された色濃度同士を比較する例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。補正量算出部606が、色濃度の変動を検知するためにその色濃度を比較する領域は、紙の重なり枚数が同じである領域に限定されず、同一の厚みを有する領域であればよい。
ここでいう「厚み」は、紙同士が重なること等により変化する、本来の紙の厚さの2倍や3倍等の単位で変化する厚みを指す。紙の厚みが、本来紙が有する厚みの10%以下の範囲内に収まっている箇所(領域)、例えば、紙の品質差等によって厚みが微細に変化している箇所は、異なる厚みとはみなさず、同一の厚みであるとみなす。
例えば、以下に挙げるような箇所は、厚みが異なる箇所として、色濃度の変動の検出はそれぞれ個別に行われる必要がある。
・重なっている紙の枚数が異なっている箇所
・貼り合わせ等により、部分的に用紙の種類又は素材が異なっている箇所と、それ以外の箇所
・その製造工程において作為的に紙の厚みが変更された箇所と、それ以外の箇所
・切断や加圧等による後加工が行われたことにより紙の厚みが部分的に異なる箇所と、それ以外の箇所
上記のような厚みが異なる箇所は、すなわち、一つの色が同一の色として再現しない箇所であると言える。
一方、以下に挙げるような箇所は、同一の厚みを有する箇所であるとみなす。
・同一種類の紙が同じ枚数貼り合わせられたり、折り重ねたられたりしている箇所(同一種類の紙が同じ枚数重ね合わさっている重ね合わせ部)
・複数種類の紙が、それぞれ同じ枚数貼り合わせられたり、折り重ねられたりしている箇所(複数種類の紙がそれぞれ同じ枚数重ね合わさっている重ね合わせ部)
また、本実施形態では、インライン測色器38による色濃度の測定は、例えば、印刷物1枚ごとに行い、測定結果に基づき補正量算出部606で算出された補正量の、画像形成条件へのフィードバックも、その都度行う。ただし、インライン測色器38による色濃度の測定を行うタイミングは、印刷物1枚ごとに限定されず、所定枚数ごとに行うようにしてもよい。
また、本実施形態では、補正量算出部606は、画像読み取り領域で読み取った色濃度に基づく補正量のフィードバックを行う対象を、画像読み取り領域に対応する画像形成条件に限定しない。つまり、補正量算出部606は、画像読み取り領域であるか否かによらず、用紙Shの画像形成面内のすべての領域に印字される画像に対して一律に影響を及ぼす単一の画像形成条件に対して、補正量をフィードバックする。
画像形成条件は、用紙Shにトナー画像の転写が行われる前の段階において、画像の色の濃度に影響を及ぼすパラメータであるため、紙厚の影響を受けて変化することはない。したがって、インライン測色器38による測色結果に基づき検知された色変動は、画像読み取り領域であるか否かによらず、すべての領域において、同様に発生しているものと考えられるためである。
このように、補正量算出部606が、領域によらず一律に設定された画像形成条件に対してフィードバックを行うことにより、画像読み取り領域以外の領域に印字される画像を形成する画像形成条件に対して、補正量がフィードバックされない状況の発生を防ぐことができる。画像読み取り領域以外の領域は、画像読み取り領域として設定されていない領域であり、色濃度の測定のタイミングで印字されるデータが存在しない領域も含まれる。
[信頼度テーブルの構成例]
次に、図10を参照して、補正量算出部606による補正量の算出時に参照される信頼度テーブルTbの構成例について説明する。図10は、信頼度テーブルTbの構成例を示す図である。
本実施形態では、測色用の枠外パッチ画像ではなく、用紙Shに形成された実画像を対象としてインライン測色器38が測色を行うため、測色によっては、補正に必要なすべての色の情報を得られない状況も起こりうる。したがって、上述のように、複数画素反射濃度算出部605は、多次色の各色濃度の実測値から単色の色濃度を推定することを行う。しかしながら、このように推定により得た色濃度の信頼度は、単色を測色した場合における実測値の信頼度と比べて低くなる。
また、紙の重なり枚数が多い領域などの、局所的に紙の厚みが厚くなっている領域においては、転写率が不安定になるため、画像形成条件の変動に基づく色濃度の変動を、補正量算出部606が正しく検知できていない可能性がある。
したがって、本実施形態では、補正量算出部606は、画像読み取り領域における紙の重なり枚数の情報、色濃度の測定を行った画像に含まれる色が単色であるか否かの情報が格納された信頼度テーブルTbを参照して、色濃度の補正量の算出を行う。
図10に示すように、信頼度テーブルTbは、名称フィールドF1、紙枚数フィールドF2、元画像フィールドF3及び信頼度フィールドF4を有する。
名称フィールドF1には、画像読み取り領域の領域名が格納される。紙枚数フィールドF2には、画像読み取り領域における紙の重なり枚数の情報が格納される。元画像フィールドF3には、インライン測色器38が測色を行った測定スポットにおける実画像に含まれる色が、単色であるか、又は、2次以上の色(多次色)であるかの情報が格納される。信頼度フィールドF4には、信頼度を表す値(%)が格納される。
図10に示す信頼度テーブルTbにおいて、画像読み取り領域が、紙の重なり枚数が2枚である第1の画像読み取り領域As1であり、測定を行った実画像の色が単色である場合、その信頼度には100%が設定される。また、画像読み取り領域が、紙の重なり枚数が2枚である第1の画像読み取り領域As1である場合であっても、測定を行った実画像の色が2次以上の色である場合、その信頼度には、80%が設定される。
また、画像読み取り領域が、紙の重なり枚数が3枚である第2の画像読み取り領域As2であり、測定を行った実画像の色が単色である場合、その信頼度には60%が設定される。また、画像読み取り領域が、紙の重なり枚数が3枚である第2の画像読み取り領域As2である場合であっても、測定を行った実画像の色が2次以上の色である場合、その信頼度には30%が設定される。
つまり、測定結果に誤差が含まれている可能性が高い、紙の重なり枚数が多い領域や多次色が印字された領域において測定又は推定された色濃度の信頼度は、それ以外の条件において測定された色濃度の信頼度と比較して、低く設定される。一方で、誤差が含まれる可能性の低い、紙の重なり枚数が少ない領域や単色が印字された領域において測定又は推定された色濃度の信頼度は、高く設定される。
例えば、インライン測色器38が検出した色の濃度が、元の(本来の)色の濃度から0.1増加していることを補正量算出部606が検知した場合を想定する。このとき、信頼度テーブルTbで信頼度が100%に設定された条件で測定された色においては、その濃度の補正量は、0.1×1.0=0.1となる。この場合、補正量算出部606は、画像形成装置1の画像形成条件に対して、色の濃度を0.1減少させる補正量をフィードバックする。
また、例えば、信頼度テーブルTbで信頼度が80%に設定された条件で測定された色においては、その濃度の補正量は、0.1×0.8=0.08となる。この場合、補正量算出部606は、色の濃度を0.08減少させる補正量を画像形成装置1の画像形成条件にフィードバックする。
また、例えば、信頼度テーブルTbで信頼度が60%に設定された条件で測定された色においては、その濃度の補正量は、0.1×0.6=0.06となる。この場合、補正量算出部606は、色の濃度を0.06減少させる補正量を画像形成装置1の画像形成条件にフィードバックする。
つまり、本実施形態によれば、測定値に誤差が含まれている可能性が高い条件で測定された色の濃度に対する補正量は、そのような条件以外の(誤差を生む可能性が低い)条件により測定された色の濃度に対する補正量よりも小さくなる。
なお、インライン測色器38による色濃度の測定のばらつき等が原因となり、複数の画像読み取り領域の複数の測定スポットにおいて、同一色の色変動として異なる濃度変化量が算出されることも起こり得る。この場合、画像形成条件にフィードバックすべき補正量が、複数存在するという問題が発生する。この問題を解決するため、本実施形態では、補正量算出部606は、より高い信頼度を有する濃度変化量を、画像形成条件にフィードバックする補正量に設定することを行う。
ここで、同一色の変動分として異なる濃度変化量が検知された場合における補正量の算出例について、具体例を挙げて説明する。例えば、用紙Sh(封筒)の第1の画像読み取り領域As1及び第2の画像読み取り領域As2(図8B参照)内の各測定スポットを対象として、インライン測色器38が色濃度の測定を行ったものとする。
補正量算出部606は、測定スポットにおいて読み取られた画像の色が1次色である場合、読み取った1次色における濃度の変動分を、濃度変化量として検知する。測定スポットにおいて読み取られた画像の色が2次色である場合には、補正量算出部606は、該測定スポットが含まれる画像読み取り領域における他の測定スポットにおける1次色の変動から、Y,M,C,Kの各色における濃度変化量を推定する。そして、補正量算出部606は、信頼度テーブルTbに基づいて、濃度の実測値又は推定値に信頼度を設定する。
上記処理が行われた結果、下記(1)及び(2)の濃度変化量が検知されたものとする。
(1)紙の重なり枚数が2枚である第1の画像読み取り領域As1における濃度変化量
Y…信頼度:100%、濃度変化量:0.05
M…信頼度:100%、濃度変化量:0.05
C…信頼度:80%、濃度変化量:−0.03
(2)紙の重なり枚数が3枚である第2の画像読み取り領域As2における濃度変化量
C…信頼度:60%、濃度変化量:0.04
K…信頼度:30%、濃度変化量:0.06
ここで、“C”は、第1の画像読み取り領域As1及び第2の画像読み取り領域As2の2つの領域において、色変動が検知されている。この場合、補正量算出部606は、より信頼度の高い、第1の画像読み取り領域As1において検出された濃度変化量である−0.03を、Cの補正量として画像形成条件にフィードバックする。
なお、上述した例では、複数検出された濃度変化量のうち、より高い信頼度と対応付けられた濃度変化量のみを、画像形成条件にフィードバックする補正量に設定する例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。
補正量算出部606は、各濃度変化量に付与された信頼度に応じて濃度変化量に重み付けを行い、重み付けされた濃度変化量の平均値を算出し、該平均値を画像形成条件に補正量としてフィードバックしてもよい。
例えば、ある特定の色の濃度変化量として、以下の3つの濃度変化量が算出された場合を想定する。
測定スポットA…信頼度:80%、濃度変化量:0.1
測定スポットB…信頼度:80%、濃度変化量:0.12
測定スポットC…信頼度:60%、濃度変化量:0.04
この場合、補正量算出部606は、画像形成条件にフィードバックする補正量として、下記の式(3)を用いて、信頼度の情報を含めた濃度変化量平均値を算出する。
濃度変化量平均値=(濃度変化量×信頼度の総和)/信頼度の総和…式(3)
測定スポットA〜Cで測定された各濃度変化量及び該濃度変化量に対応付けられた各信頼度を、上記式(3)に代入すると、濃度変化量平均値は、(0.1×0.8)+(0.12×0.8)+(0.04×0.6)/(0.8+0.8+0.6)=0.09となる。
さらに、補正量算出部606は、算出した濃度変化量平均値の信頼度として、合計信頼度も算出する。合計信頼度は、複数の測定スポットで測定された各濃度変化量に対応付けられた各信頼度の、二乗和の平方根を求めることにより算出する。測定スポットA〜Cで測定された各濃度変化量及び該濃度変化量に対応付けられた各信頼度は、それぞれ、80%、80%、60%である。したがって、合計信頼度は、(0.8^2+0.8^2+0.6^2)^0.5=1.28、すなわち、128%となる。合計信頼度が1.0を超える場合、補正量算出部606は、信頼度は100%であるとみなす。
そして、補正量算出部606は、濃度変化量平均値(0.09)を、信頼度が100%の補正量として画像形成条件にフィードバックする。
[画像読み取り領域設定部による画像読み取り領域の設定処理方法]
次に、図11を参照して、画像検査装置2の画像読み取り領域設定部604による画像読み取り領域の設定処理手法について説明する。図11は、画像読み取り領域設定部604による画像読み取り領域の設定処理手法の手順を示すフローチャートである。
まず、操作表示部64は、ユーザーによる用紙Sh(封筒)の識別情報の入力を検知する(ステップS1)。用紙Shの識別情報には、上述したように、商品コード等がある。次いで、画像読み取り領域設定部604は、ユーザーにより入力された識別情報に対応するペーパープロファイルPが記憶部63に記憶されているか否かを判定する(ステップS2)。
ステップS2で、ペーパープロファイルPが記憶されていると判定された場合(ステップS2がYES判定の場合)、画像読み取り領域設定部604は、ペーパープロファイルPより、識別情報に対応付けられた画像読み取り領域の情報を読み出す(ステップS3)。一方、ペーパープロファイルPは記憶されていないと判定された場合(ステップS2がNO判定の場合)、画像読み取り領域設定部604は、操作表示部64を介して、ユーザーから画像読み取り領域の設定を受け付ける(ステップS4)。ステップS4の処理後、画像読み取り領域設定部604による画像読み取り領域の設定処理は終了となる。
[画像形成システムによる色濃度の補正方法]
次に、図12を参照して、画像検査装置2による色濃度の補正量算出方法、及び、画像形成装置1による色濃度の補正方法について説明する。図12は、画像検査装置2による色濃度の補正量算出方法、及び、画像形成装置1による色濃度の補正方法の手順を示すフローチャートである。
まず、画像検査装置2のインライン測色器38は、画像読み取り領域の画像を読み取る(ステップSI1)。次いで、インライン測色器38は、読み取った画像に含まれる色の濃度を測定する(ステップSI2)。次いで、補正量算出部606は、各画像読み取り領域で測定した各色の濃度変化量を算出する(ステップSI3)。
次いで、補正量算出部606は、信頼度テーブルTbに基づいて、ステップSI3で算出された各濃度変化量に信頼度を設定する(ステップSI4)。具体的には、補正量算出部606は、インライン測色器38で測色された色が1次色であるか多次色であるかの情報と、画像読み取り領域における紙の重なり枚数の情報とに基づいて、信頼度テーブルTbを参照して、濃度変化量に信頼度を設定する。
次いで、補正量算出部606は、ステップSI4で設定された信頼度の情報を用いて、画像形成条件にフィードバックする色濃度の補正量を算出する(ステップSI5)。次いで、補正量算出部606は、通信I/F部61を介して、補正量を画像形成装置1に送信する(ステップSI6)。
画像形成装置1の通信I/F部51は、画像検査装置2から送信された補正量を受信する(ステップSF1)。次いで、画像形成部30は、補正量を画像形成条件に反映させる(ステップSF2)。このとき、画像形成部30は、補正量を、画像読み取り領域に対応する画像形成条件のみに反映させるのではなく、用紙Shの全領域に対応する画像形成条件に反映させる。
次いで、画像形成部30は、補正量が反映された画像形成条件に基づいて、用紙Shに画像を形成する(ステップSF3)。ステップSF3の処理後、色濃度の補正処理は終了する。
<第1の実施形態による効果>
上述の実施形態では、インライン測色器38が、部分的に厚みが異なる用紙Sh(記録材)に形成された画像の色濃度を検出する。そして、補正量算出部606が、厚みが同一である領域(画像読み取り領域)で測定される色における濃度変化量を算出し、該濃度変化量に基づいて、色濃度の変動分を補正するための補正量を算出する。それゆえ、本実施形態によれば、部分的に紙の厚みが異なる記録材に形成される画像の色濃度の、経時変化による変動分の補正量が、適切に算出される。
また、上述の実施形態では、インライン測色器38が用紙Shに形成された実画像を測色し、該測色結果に基づいて、補正量算出部606が色変動を検知する。それゆえ、本実施形態によれば、測色用に枠外パッチを形成する必要がなくなるため、トナーの消費を抑えることができる。また、本実施形態によれば、枠外パッチを形成する必要がなくなるため、測色後にユーザーが枠外パッチの形成部分を断裁する処理を行わずに済む。それゆえ、本実施形態によれば、画像形成の生産性を落とすことなく、画像の色を精度よく安定させることができる。
また、上述の実施形態では、補正量算出部606が算出した補正量は、色濃度の変動を検知していない領域(画像読み取り領域以外の領域)を含む、記録材の画像形成面のすべての領域に形成する画像の画像形成条件に反映される。それゆえ、本実施形態によれば、画像読み取り領域以外の領域に印字される画像を形成する画像形成条件に対して、補正量がフィードバックされない状況の発生を防ぐことができる。
また、上述の実施形態では、補正量算出部606が、画像読み取り領域のそれぞれに対して設定される、少なくとも厚みをパラメータとして有する信頼度の情報に基づいて、補正量を算出する。そして、信頼度は、より少ない厚みに対してより高く設定される。それゆえ、本実施形態によれば、転写率がより安定する、紙の厚みの薄い領域で測定された色濃度に基づいて、色濃度変動に対する補正値が算出されるため、色濃度の変動をより確実に補正することが可能となる。
また、上述の実施形態では、画像読み取り領域設定部604が、用紙(封筒)Shの形状のデータベースに格納された、紙の重なり枚数が異なる各領域の情報と、ユーザーによって指定された用紙の識別情報とに基づいて、画像読み取り領域を設定する。それゆえ、本実施形態によれば、インライン測色器38が読み取って得た画像情報から、容易にかつ適切に画像読み取り領域が設定される。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る画像形成システム100の構成は、図4に示した構成と同一である。また、第2の実施形態に係る画像形成装置1の制御系の構成は、図5に示した構成と同一であり、画像検査装置2の制御系の構成は、図6に示した構成と同一である。
本発明の第2の実施形態では、画像検査装置2の画像読み取り領域設定部604(図6参照)が、用紙Shにおける貼り合わせ部の形成位置及び大きさや、紙の重なり枚数などの情報を、インライン測色器38が取得した封筒の読み取り画像の情報から自動的に生成する。以下では、インライン測色器38による、画像が形成されていない未印字の用紙(封筒)Shの読み取り結果から、画像読み取り領域設定部604が、封筒の形状に関する情報を取得する例を挙げる。
まず、画像読み取り領域設定部604は、インライン測色器38が読み取った画像情報をその反射濃度ごとに区分し、各濃度の用紙Shにおける面積をヒストグラム化する。ここで、図13を参照して、インライン測色器38が得た読み取り画像に基づき生成されたヒストグラムの例について説明する。図13は、ヒストグラムの例を示す図である。図13に示すヒストグラムは、図2の左側に示したセンター貼りの封筒をインライン測色器38が読み取って得た読み取り画像に基づいて生成されたものである。
図13に示すヒストグラムの縦軸は頻度を示し、横軸は反射濃度を示す。図13に示す例では、反射濃度のピークが4つ発生している。これらの各ピークは、ピーク値の大きさの情報と、反射濃度の大きさの情報とに基づいて、紙の重なり枚数が異なる各領域に印字された画像の反射濃度のピークと対応付けることができる。
ここで、図14を参照して、反射濃度と紙の重なり枚数との相関の例について説明する。図14は、反射濃度と紙の重なり枚数との相関の例を示すグラフである。図14の縦軸は反射濃度を示し、横軸は紙の重なり枚数を示す。図14には、紙の重なり枚数が1枚の領域で検出された反射濃度が最も低く、紙の重なり枚数が多くなるほどに、検出される反射濃度も大きくなる様子が示されている。そして、紙の重なり枚数が4枚の領域で検出された反射濃度が、最も大きな値を示している。
このような反射濃度と紙の重なり枚数との相関に基づき、図13に示す反射濃度の4つのピークを、紙の重なり枚数が異なる各領域で検出された反射濃度のピークに対応付ける。具体的には、一番低い反射濃度におけるピークは、紙の重なり枚数が1枚の領域に印字された画像の反射濃度のピークと対応する。二番目に低い反射濃度におけるピークは、紙の重なり枚数が2枚の領域に印字された画像の反射濃度のピークと対応する。そして、三番目に低い反射濃度におけるピークは、紙の重なり枚数が3枚の領域に印字された画像の反射濃度のピークと対応し、一番高い反射濃度におけるピークは、紙の重なり枚数が4枚の領域に印字された画像の反射濃度のピークと対応する。
そして、画像読み取り領域設定部604は、隣接するピーク間の谷間に相当する位置における反射濃度を閾値として、反射濃度の情報を分類することにより、反射濃度の情報を用紙Sh内における紙の重なり枚数の分布情報に変換することができる。
具体的には、一番低い反射濃度におけるピークと二番低い反射濃度におけるピークとの谷間に相当する位置における反射濃度D31を第1の閾値Th1に設定し、二番低い反射濃度におけるピークと三番低い反射濃度におけるピークとの谷間に相当する位置における反射濃度D32を第2の閾値Th2に設定する。さらに、三番低い反射濃度におけるピークと一番高い反射濃度におけるピークとの谷間に相当する位置における反射濃度D33を第3の閾値Th3に設定する。
次に、画像読み取り領域設定部604は、第1の閾値Th1未満の反射濃度を検出した領域を、紙の重なり枚数が1枚の領域と対応付け、第1の閾値Th1以上、第2の閾値Th2未満の反射濃度を検出した領域を、紙の重なり枚数が2枚の領域と対応付ける。また、第2の閾値Th2以上、第3の閾値Th3未満の反射濃度を検出した領域を、紙の重なり枚数が3枚の領域と対応付け、第3の閾値Th3以上、第4の閾値Th4未満の反射濃度を検出した領域を、紙の重なり枚数が4枚の領域と対応付ける。画像読み取り領域設定部604がこのような処理を行うことにより、反射濃度の分布の情報が、用紙Sh内における紙の重なり枚数の分布情報に変換される。
次に、図15を参照して、インライン測色器38が取得した濃度情報に基づいて得られる、用紙Sh内における紙の重なり枚数の分布情報の例について説明する。図15は、用紙Sh内における紙の重なり枚数の分布情報の例を示す説明図である。
図15に示す例では、実際の用紙Sh(封筒)と同様に、頭(ベロ)部に相当する領域は紙の重なり枚数が1枚の領域であると認識され、上前及び下前に相当する領域は、紙の重なり枚数が2枚の領域であると認識されている。胴の貼り目に相当する領域及び底部に相当する領域の中心部分にある領域は、紙の重なり枚数が3枚以上の領域であると認識されている。
一方、実際には紙の重なり枚数は1枚である頭部に相当する領域において、紙の重なり枚数が2枚であると誤認識された領域A1が存在している。また、実際には紙の重なり枚数は2枚である上前及び下前に相当する領域において、紙の重なり枚数は1枚であると誤認識された領域A2や、紙の重なり枚数は3枚以上であると誤認識された領域A3等が存在している。そして、これらの各領域A1〜A3において誤認識されている紙の重なり枚数は、実際におけるそれらとは異なっている。
本変実施形態では、予め生成しておいた封筒の形状のデータベース(図示略)を参照することにより、画像読み取り領域設定部604が、インライン測色器38による読み取り情報から推定した紙の重なり枚数の情報(図15に例示した情報)を、想定される封筒の形状に当てはめることを行う。これにより、誤認識された領域の情報を含む封筒の形状が、誤認識された領域の情報を含まない封筒の形状に整形される。
ここで、図16を参照して、用紙Sh内における紙の重なり枚数の分布情報の、想定される封筒の形状への当てはめ(適用)例について説明する。図16は、封筒の形状のデータベースに登録された各封筒の形状の例を示す説明図である。図16Aはセンター貼りの封筒を示し、図16Bは右サイド貼りの封筒を示し、図16Cはダイヤモンド貼りの封筒を示す。
図15に示した用紙Sh内における紙の重なり枚数の分布情報は、図16Aに示すセンター貼りの封筒の形状におけるそれと適合するため、画像読み取り領域設定部604は、インライン測色器38が読み取った用紙Shを、センター貼りの封筒であると判定する。
次に、画像読み取り領域設定部604は、封筒の形状のデータベースに登録されている封筒のサイズ情報に基づいて、用紙Shにおける貼り合わせ部の形成位置及び大きさを設定する。図17に、封筒の形状のデータベースに登録されている封筒のサイズ情報の例を示す。なお、封筒の形状のデータベースには、例えば、用紙(封筒)Shのサイズや、頭部の高さ方向の長さ、貼り合わせ部の形成位置及び長さなどの情報が格納されているものとする。
画像読み取り領域設定部604は、用紙Sh内における紙の重なり枚数の分布情報に基づいて適合すると判定された封筒における、上述のサイズ情報に基づいて、用紙Shにおける貼り合わせ部の形成位置及び大きさを設定する。
ここで、図18を参照して、貼り合わせ部の形成位置及び大きさが設定された用紙Shの例について説明する。図18は、貼り合わせ部の形成位置及び大きさが設定された用紙Shの例を示す説明図である。図18の左側には、推定の紙の重なり情報により推定される封筒の形状の例を示し、図18の右側には、貼り合わせ部の形成位置及び大きさが設定された封筒の例を示す。
用紙Sh内における紙の重なり枚数の分布情報によって示される封筒の形状(図18左側参照)は、貼り合わせ部の形成位置及び大きさが設定されることにより、図18の右側に示されるような、誤認識された領域の情報を持たない形状に整形される。
なお、本実施形態では、インライン測色器38が取得した濃度情報に基づいて推定される紙の重なり情報と、封筒の形状のデータベースに格納された情報とを照合することにより、貼り合わせ部の形成位置及び大きさの情報を用紙Shに設定する例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。
例えば、貼り合わせ部の形状及び大きさに関する情報を予め記憶部63(図6参照)等に記憶させておき、該情報に基づいて、貼り合わせ部の形成位置及び大きさの情報を用紙Shに設定してもよい。貼り合わせ部の形状及び大きさに関する情報には、例えば、「直線、及び、一部が円弧で構成された面積をもつ領域を有する領域である」や、「紙の重なり枚数が切り替わる切り替え部分の領域の幅は狭い」などの情報を登録することができる。
貼り合わせ部の形成位置及び大きさの情報を用紙Shに設定後、画像読み取り領域設定部604は、用紙Shに画像読み取り領域を設定する。画像読み取り領域は、インライン測色器38が測色を行う領域であり、画像読み取り領域には、図8を参照して説明した例と同様に、もっとも印字量が多いと想定される領域が設定される。
なお、図8には、紙の重なり枚数が2枚である領域、及び、紙の重なり枚数が3枚である領域が、それぞれ第1の画像読み取り領域As1及び第2の画像読み取り領域As2に設定された例を示したが、本発明はこれに限定されない。本実施形態では、画像読み取り領域設定部604は、紙の重なり枚数が2枚である領域のみを、第1の画像読み取り領域As1に設定する。
上述のように、紙の重なり枚数が2枚である領域等の、もっとも印字量が多いと想定される領域は、色の再現性が高くなるように調整された領域である。したがって、この領域を画像読み取り領域に設定することにより、補正量算出部606は、色の再現性の高い画像の読み取り画像を用いて、色濃度の調整を行うことができるようになる。
ただし、紙の重なり枚数が2枚である領域であっても、貼り合わせ部の近傍の領域や用紙Shの端部等においては、紙の厚さの差に基づく段差が存在する。そして、このような段差の部分に形成(印字)される画像は、同一の画像形成条件に基づいて作像された画像であっても、他の領域に印字される画像と比較して、用紙Shへの転写率は低下してしまう。つまり、段差の部分に印字される画像においては、色再現性も低くなる。
したがって、本実施形態では、画像読み取り領域設定部604は、紙の重なり枚数が2枚である領域における、貼り合わせ部の近傍の領域や用紙Shの端部等を含まない領域(これらの箇所より少し内側の領域)を、第1の画像読み取り領域As1に設定する。図19に、画像読み取り領域の設定例を示す。図19Aは、画像読み取り領域の設定例を示す説明図であり、図19Bは、段差のある領域の形成位置の例を示す説明図である。
図19Aに示す第1の画像読み取り領域As1は、図19Bに示す段差Ab1及び段差Ab2の形成位置を含まない領域である。図19Bに示す段差Ab1及び段差Ab2は、紙の重なり枚数が2枚である領域と3枚の領域との境目に形成されている。
このように、段差(段差Ab1及び段差Ab2)のある部分を含まない領域を第1の画像読み取り領域As1に設定することにより、段差等の転写率が不安定となる箇所に印字された画像の読み取り情報を用いて、色濃度の補正が行われてしまうことを防ぐことができる。
次に、図20〜図23を参照して、上述した画像読み取り領域設定部604による用紙Shに対する貼り合わせ部の情報の登録処理の例について説明する。まず、図20を参照して、用紙Shに対する貼り合わせ部情報の登録処理におけるメインルーチンについて説明する。図20は、用紙Shに対する貼り合わせ部情報の登録処理におけるメインルーチンの手順を示すフローチャートである。
まず、インライン測色器38は、画像が印字されていない無印字の用紙Shの色濃度を読み取る(ステップS11)。次いで、画像検査装置2の画像読み取り領域設定部604は、ステップS11で読み取って得た色濃度の濃度分布の情報を、用紙Sh内における紙の重なり枚数の分布情報に変換する(ステップS12)。次いで、画像読み取り領域設定部604は、用紙Sh内における紙の重なり枚数の分布情報から、不要な情報を削除する(ステップS13)。
次に、図21を参照して、ステップS12に示した処理のサブルーチンについて説明する。図21は、図20のステップS12の処理のサブルーチンの手順を示すフローチャートである。
まず、画像読み取り領域設定部604は、インライン測色器38が得た濃度情報をヒストグラム化する(ステップS121)。次いで、画像読み取り領域設定部604は、ヒストグラムにおけるピーク値の情報に基づいて、紙の重なり枚数と色濃度との相関関係を確定する(ステップS122)。具体的には、図13を参照して説明したように、画像読み取り領域設定部604は、反射濃度において表われるいくつかのピークを、紙の重なり枚数が異なる各領域で検出された反射濃度のピークに対応付けることを行う。
次いで、画像読み取り領域設定部604は、ステップS122で確定された紙の重なり枚数と色濃度との相関に基づいて、紙の重なり枚数の判断に用いる閾値を決定する(ステップS123)。次いで、画像読み取り領域設定部604は、ステップS123で決定された閾値に基づいて、濃度分布情報を、紙の重なり枚数の分布情報に変換する(ステップS124)。ステップS124の処理後、図20のステップS12の処理のサブルーチンの処理は終了する。
次に、図22を参照して、図20のステップS13の処理のサブルーチンについて説明する。図22は、図20のステップS13の処理のサブルーチンの手順を示すフローチャートである。
まず、画像読み取り領域設定部604は、封筒の形状のデータベースより、紙の重なり枚数の分布情報から推定される封筒の形状と類似する形状を抽出する(ステップS131)。次いで、画像読み取り領域設定部604は、封筒の形状ごとに設定されているサイズ情報を呼び出す(ステップS132)。ステップS132で画像読み取り領域設定部604が呼び出すサイズ情報は、例えば、用紙(封筒)Shのサイズや、封筒の頭部の高さ方向の長さ、貼り合わせ部の形成位置及び長さなどの情報である。
次いで、画像読み取り領域設定部604は、ステップS132で取得したサイズ情報より得られる、貼り合わせ部の形成位置及び大きさの情報を、用紙(封筒)Shに設定する(ステップS134)。次いで、画像読み取り領域設定部604は、封筒の形状を操作表示部64(図6参照)に表示する(ステップS135)。
次いで、画像読み取り領域設定部604は、操作表示部64に表示された形状が、正しい形状であるとユーザーによって判断されたか否かを判定する(ステップS136)。ステップS136で、正しい形状であると判断されたと判定された場合(ステップS136がYES判定の場合)、画像読み取り領域設定部604は、図20のステップS12の処理のサブルーチンの処理を終了する。
一方、ステップS136で、正しい形状でないと判断されたと判定された場合(ステップS136がNO判定の場合)、画像読み取り領域設定部604は、ステップS131に処理を戻す。
上述した実施形態によれば、用紙(封筒)Shの貼り合わせ部の形成位置や紙の重なり枚数などの情報が、インライン測色器38による封筒の読み取り画像から自動的に生成される。それゆえ、本実施形態によれば、事前にデータベース等を構築することなく、画像読み取り領域を設定することが可能となる。
また、上述の実施形態では、画像読み取り領域設定部604は、インライン測色器38により測定された色濃度の情報を、用紙Shの厚みの情報に変換する。それゆえ、本実施形態によれば、用紙Shの厚みの情報を予めデータベース等に登録する手間が不要となる。
なお、封筒の貼り合わせ部の形成位置及び大きさは、商品として規定されていないため、これらのサイズは、封筒のロットごとにバラつく可能性がある。このため、印刷時に印字領域以外の領域の濃度情報を取得し、該濃度情報に基づいて貼り合わせ部の大きさを確認してもよい。このような処理を行うことにより、より安定した印字性能を得ることができる。
印字領域以外の領域の濃度情報から取得する貼り合わせ部の大きさの例を、図23に示す。図23は、印字領域以外の領域の濃度情報から取得する貼り合わせ部の大きさの例を示す説明図である。
図23は、インライン測色器38がセンター貼りの封筒を読み取って得られる画像情報を示す。図23において、実線の両矢印で示される範囲は、紙の重なり枚数が2枚の領域(上前及び下前に相当する領域)の横方向における長さに対応する。
次に、図24を参照して、濃度情報の測定対象となる印字領域以外の領域の例について説明する。図24は、濃度情報の取得対象となる印字領域以外の領域の例を示す説明図である。図24には、インライン測色器38がセンター貼りの封筒を読み取って得られる画像情報を示しており、封筒の中央部に印字領域APが形成されている様子が示される。本実施形態では、インライン測色器38が、複数枚の用紙(封筒)を対象として印字領域APの上部における一点鎖線の枠で示す直線状の読み取りエリアLnの画像を読み取り、該画像の反射濃度を測定する。そして、画像読み取り領域設定部604が、取得した反射濃度を読み取り位置ごとに累積する。
図25に、反射濃度の読み取り位置ごとの累積の例を示す。図25の縦軸は反射濃度を示し、横軸は読み取り位置を示す。図25に示すように、インライン測色器38が測定した反射濃度は、封筒の読み取り位置の中央付近で上昇している。この上昇している部分は貼り合わせ部の形成位置に対応し、上昇していない部分が、図23に示した紙の重なり枚数が2枚の領域と対応する。
このように複数枚の用紙(封筒)を対象として測定した、直線状の読み取りエリアLnにおける反射濃度の情報をグラフ上で重ね合わせることにより、グラフ上で、紙の重なり枚数が異なるエリア同士の濃度差が顕著に表れる。そして、画像読み取り領域設定部604は、累計した反射濃度の中央値を、紙の重なり枚数の切り替わり点に設定することにより、封筒における貼り合わせ部の形成位置及び大きさを特定することができる。
次に、上述した、印字領域外に設定される直線状の読み取りエリアLnの濃度情報に基づく貼り合わせ部の特定方法について、図26を参照して説明する。図26は、印字領域外に設定される直線状の読み取りエリアLnの濃度情報に基づく貼り合わせ部の特定手法の手順を示すフローチャートである。
図26には、画像読み取り領域設定部604が、20枚の用紙Shを対象として読み取りエリアLnの濃度情報を累積した場合における処理手順を示す。なお、画像の読み取りを行う用紙Shの枚数である20枚は一例であり、他の枚数であってもよい。
まず、画像読み取り領域設定部604は、印字領域外に設定した直線状の読み取りエリアで測定された濃度プロファイル(反射濃度及び読み取り位置の対応情報)を記録する(ステップS21)。
次いで、画像読み取り領域設定部604は、記録枚数(インライン測色器38が測色した枚数)は20枚以上であるか否かを判定する(ステップS22)。ステップS22で、記録枚数は20枚未満であると判定された場合(ステップS22がNO判定の場合)、画像読み取り領域設定部604は、ステップS21の処理を行う。
一方、ステップS22で、記録枚数は20枚以上であると判定された場合(ステップS22がYES判定の場合)、画像読み取り領域設定部604は、過去20枚において記録された各反射濃度を積算(累積)する(ステップS23)。次いで、画像読み取り領域設定部604は、累積した反射濃度の中央値を、紙の重なり枚数の切り替わり点に設定することにより、用紙Shにおける貼り合わせ部の形成位置及び大きさを特定する(ステップS24)。
次いで、画像読み取り領域設定部604は、ステップS24で特定した貼り合わせ部の形成位置及び大きさの情報に基づいて、画像読み取り領域の位置及び/又は大きさを調整する(ステップS25)。ステップS25の処理後、印字領域外に設定される直線状の読み取りエリアLnの濃度情報に基づく貼り合わせ部の特定処理の手順は終了する。
このように、印字領域外に設定される直線状の読み取りエリアLnの濃度情報に基づいて貼り合わせ部を特定することにより、封筒にバラつきがある場合にも、貼り合わせ部の形成位置及び大きさを精度よく検知することが可能となる。
<各種変形例>
なお、本発明は上述した各種実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得る。
上述した各実施形態では、反射濃度というスカラー量を用いて、色濃度の補正量を算出する例を挙げたが、本発明はこれらに限定されない。L*a*b*値等により示される色座標の変化の情報を用いてもよい。
また、上述した各実施形態では、用紙Shにおける紙の重なり枚数の情報(厚み情報)を得る方法として、封筒の形状のデータベースを用いる方法と、インライン測色器38が取得した濃度情報を用いる方法とを例示したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、超音波センサや、透過光を用いたセンサ等を用いて検知した紙の厚みの情報に基づいて、紙の重なり枚数の情報や、貼り合わせ部の形成位置及び大きさの情報などを取得してもよい。
また、上述の各実施形態では、用紙Shが封筒である例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。本発明に係る用紙は、部分的に紙の厚みが異なる用紙であれば、どのような用紙であってもよい。例えば、貼り合わせ等により部分的に紙の種類や素材等が異なる用紙や、その製造工程において作為的に紙の厚みが変更された用紙、切断や加圧等による後加工が行われたことにより紙の厚みが部分的に異なる用紙などでもよい。
さらに、上述の各実施形態では、用紙Shが紙である例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、プラスチック等の、紙以外の材質よりなる用紙であってもよい。