JP2020007640A - スパッタリングターゲットおよび半導体素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】平均結晶粒径250μm以下の微細結晶構造を有し、均一なランダム配向を具備するスパッタリングターゲットを提供する。【解決手段】スパッタリングターゲットは、99.5質量%以上のニオブを含む組成と、250μm以下の平均結晶粒径を有する結晶を含む再結晶構造と、を具備する。表面および内部のX線回折パターンは、結晶の(110)面に帰属する第1のピークと、結晶の(211)面に帰属し、かつ第1のピークのピーク強度よりも低いピーク強度を有する第2のピークと、結晶の(200)面に帰属し、第2のピークのピーク強度よりも低いピーク強度を有する第3のピークとを含み、第1のピークは、100の第1の相対強度を有し、第2のピークは、17以上44以下の第2の相対強度を有し、第3のピークは、13以上35以下の第3の相対強度を有する。表面および内部は、ランダム配向である再結晶構造を有する。【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、スパッタリングターゲットおよび半導体素子の製造方法に関する。
近年、半導体素子の高集積化に伴い、Al、Cuなどの金属配線幅を徐々に狭くすることが求められている。これに伴い、金属配線のエレクトロンマイグレーションを抑制すること、すなわちエレクトロマイグレーション特性の向上が要求されている。エレクトロマイグレーション特性を向上させるためには、例えば成膜後の配線用金属膜を金属結晶の最稠密面が柱状に成長するように結晶成長させることが望ましい。上記結晶成長のためには、例えば配線用金属膜の下に形成されるTiN、TaN、NbNなどのバリア膜も同様に最稠密面が柱状になるようにスパッタリングされることが望ましい。
Cu配線やAl配線を使う場合、バリア膜としてTaN(窒化タンタル)膜、NbN(窒化ニオブ)膜、TiN(窒化チタン)膜を用いることが好適である。TaN膜、NbN膜、TiN膜は、例えば高純度Taスパッタリングターゲット、高純度Nbスパッタリングターゲット、または高純度Tiスパッタリングターゲット等を用いて窒素雰囲気中でスパッタリングによる成膜を行うことにより形成される。スパッタリングにより、最稠密面が柱状になるようにバリア膜を成膜するためには、ターゲット金属の結晶粒径の微細化および結晶配向性のランダム化(ランダム配向)が必要である。さらに、膜の均一性を向上させるためには、鋳造組織の残存(ゴーストグレイン)という問題を解消しなければならない。
従来、Nbスパッタリングターゲットの製造において、インゴットに対して冷間で絞め鍛造を行った後、冷間で据え込み鍛造を行う。さらに、熱処理を行って冷間圧延を行うことが知られている。絞め鍛造は、円柱状インゴットの直径方向に圧力を加える加工である。また、据え込み鍛造は、絞め鍛造により長軸方向に伸びたインゴットを長軸方向に薄板にするための加工である。絞め鍛造および据え込み鍛造は、どちらも一定方向から圧力を掛けて塑性変形させる加工である。一定方向からの圧力のみによる塑性変形では、平均結晶粒径が微細になると結晶方位が特定の方位に配向しやすい。
さらに、上記の従来の工程では、微細な結晶構造を有するNbスパッタリングターゲットを製造したとき、スパッタ面(表面)に均一なランダム配向を有する結晶構造が得られたとしても、厚さ方向については必ずしも均一なランダム配向を有する結晶構造を得られない。このため、長時間スパッタリングを行うとスパッタレートのズレなどの不具合が生じ均一な膜が得られないといった問題がある。
実施形態の一態様は、平均結晶粒径250μm以下の微細結晶構造を有し、かつ均一なランダム配向の結晶構造を有するスパッタリングターゲットを提供することを目的としている。実施形態の一態様は、平均結晶粒径250μm以下の微細結晶構造を有し、かつ均一なランダム配向の結晶構造を有するスパッタリングターゲットの製造方法を提供することを目的としている。実施形態の一態様は、平均結晶粒径250μm以下の微細結晶構造を有し、かつ均一なランダム配向の結晶構造を有するスパッタリングターゲットを用いた半導体素子の製造方法を提供することを目的としている。
実施形態のスパッタリングターゲットの製造方法は、円柱形状を有するニオブ素材の加工を行うことによりスパッタリングターゲットを製造するスパッタリングターゲットの製造方法である。上記加工は、第1の鍛造工程、第1の熱処理工程、第2の鍛造工程、第2の熱処理工程、冷間圧延工程、および第3の熱処理工程を具備する。
第1の鍛造工程では、ニオブ素材の厚さ方向に平行な方向からニオブ素材に圧力を加えて行う冷間鍛造加工と、厚さ方向に垂直な方向からニオブ素材に圧力を加えて行う冷間鍛造加工とを有する加工を1セットの第1のこねくり鍛造としたとき、2セット以上の第1のこねくり鍛造を行う。第1の熱処理工程では、第1の鍛造工程後に、第1の熱処理を行うことによりニオブ素材を再結晶化させる。
第2の鍛造工程では、ニオブ素材の厚さ方向に平行な方向からニオブ素材に圧力を加えて行う冷間鍛造加工と、厚さ方向に垂直な方向からニオブ素材に圧力を加えて行う冷間鍛造加工とを有する加工を1セットの第2のこねくり鍛造としたとき、第1の熱処理工程後に、1セット以上の第2のこねくり鍛造を行う。第2の熱処理工程では、第2の鍛造工程後に、第2の熱処理を行うことによりニオブ素材を再結晶化させる。
冷間圧延工程では、第2の熱処理工程後に、ニオブ素材に対し冷間圧延を1回以上行う。第3の熱処理工程では、第3の熱処理を行うことによりニオブ素材を再結晶化させる。
実施形態のスパッタリングターゲットは、99.5質量%以上のニオブを含む組成と、250μm以下の平均結晶粒径を有する結晶を含む再結晶構造と、を具備する。99.5質量%以上のニオブを含む組成を有するスパッタリングターゲットをニオブスパッタリングターゲットともいう。スパッタリングターゲットの表面のX線回折測定により得られるX線回折パターンは、結晶の(110)面に帰属する第1のピークと、結晶の(211)面に帰属し、かつ第1のピークのピーク強度よりも低いピーク強度を有する第2のピークと、結晶の(200)面に帰属し、かつ第2のピークのピーク強度よりも低いピーク強度を有する第3のピークとを含む。第1のピークは、100の第1の相対強度を有し、第2のピークは、17以上44以下の第2の相対強度を有し、第3のピークは、13以上35以下の第3の相対強度を有する。スパッタリングターゲットの表面および内部は、ランダム配向である再結晶構造を有する。
実施形態の半導体素子の製造方法は、上記スパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行うことによりニオブを含む膜を成膜する工程を具備する。
以下、実施形態について説明する。
実施形態のスパッタリングターゲットの製造方法では、円柱形状のニオブインゴットまたは円柱形状のニオブビレットからなるニオブ素材の加工を行うことによりスパッタリングターゲットを製造する。
図1ないし図3は、ニオブ素材の一例を示す図である。図1は外観図であり、図2は側面図であり、図3は上面図である。図1に示すニオブ素材1は、円柱形状を具備する。ニオブ素材1の厚さH、直径Wを図2に示す。ニオブ素材1のサイズは、特に限定されないが、例えば20〜200mmの厚さH、100〜300mmの直径Wを有することにより、取扱いが容易になるため好ましい。
ニオブ素材1は、例えば電子ビーム(Electron Beam:EB)による溶解法(EB溶解法ともいう)などの鋳造により高純度化され、ニオブ純度99.5%以上、すなわち99.5質量%以上のニオブを含む組成を有することが好ましい。スパッタリングターゲットのニオブ純度がニオブ素材のニオブ純度に準ずるためである。例えば、ニオブ純度99.5%以上、すなわち99.5質量%以上のニオブを含む組成を有するスパッタリングターゲットが必要であるとき、ニオブ素材1として例えばニオブ純度99.5%以上、すなわち99.5質量%以上のニオブを含む組成を具備するニオブ素材が用いられる。
上記実施形態のスパッタリングターゲットの製造方法において、上記加工は、第1の鍛造工程、第1の熱処理工程、第2の鍛造工程、第2の熱処理工程、冷間圧延工程、および第3の熱処理工程と、を具備する。
第1の鍛造工程では、2セット以上の第1のこねくり鍛造を行う。このとき、ニオブ素材1の厚さ方向に平行な方向からニオブ素材1に圧力を加えて行う冷間鍛造加工(第1の冷間鍛造加工ともいう)と、厚さ方向に垂直な方向からニオブ素材1に圧力を加えて行う冷間鍛造加工(第2の冷間鍛造加工ともいう)とを有する加工を1セットの第1のこねくり鍛造とする。厚さ方向に平行な方向とは図2における厚さH方向のことであり、厚さ方向に垂直な方向とは図2における直径W方向のことである。
第1のこねくり鍛造では、異なる方向から圧力を加えることから、結晶粒径の微細化を達成し、特定の方向に結晶配向が偏ることを防ぐことができる。また、鋳造により製造されたニオブ素材1における鋳造組織の残存(ゴーストグレイン)を減少させることができる。第1のこねくり鍛造の回数(セット数)は多いほど良いが、回数が多すぎると製造コストが高くなり、また素材の割れ、シワなどが発生しやすくなる。よって、第1のこねくり鍛造の回数は2回〜4回(2セット〜4セット)であることが好ましい。
第1のこねくり鍛造は上記のとおり冷間鍛造であることが好ましい。熱間で鍛造を行うと酸化により表面割れが発生してしまうおそれがある。また、結晶の粒成長が起きるので、平均結晶粒径250μm以下の微細な結晶組織が得られないおそれがある。
第1の鍛造工程後のニオブ素材1のビッカース硬さHvの平均値は100以上であることが好ましい。第1のこねくり鍛造を2セット以上行うことにより組織の均質化が図られ、ニオブ素材1の硬度が高くなる。しかしながら、後述の製造工程を考慮したとき、ビッカース硬さHvの平均値を100未満にしたとしても、これ以上の効果は得られず、第1のこねくり鍛造工程を無駄に行うことになる。従って、第1のこねくり鍛造のセット数を制御する上でもビッカース硬さHvの平均値が100以上になるように第1のこねくり鍛造を行うことが好ましい。ビッカース硬さHvの測定は、例えばJIS Z2244:2009「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準じて行われる。
直径W方向に加える圧力は、常に一定方向である必要はなく、途中で方向を変えることが好ましい。例えば、図3に示すように、1セット目の第1のこねくり鍛造では直径W方向の一つである圧力付加方向2に圧力を付加し、2セット目の第1のこねくり鍛造ではニオブ素材1の上面に沿って圧力付加方向2に垂直な方向である圧力付加方向3に圧力を付加することで、圧力を付加する方向を変えることが好ましい。なお、1セットの第1のこねくり鍛造中で圧力を付加する方向を変えることも有効である。また、直径W方向においても圧力を付加する方向を変えることにより、結晶粒径の微細化を達成し、特定の方向に結晶配向が偏ることを防ぐ効果をより得ることができる。
第1の熱処理工程では、第1の鍛造工程後に、第1の熱処理を行うことによりニオブ素材1を再結晶化させる。第1の熱処理工程では、例えば1300℃以上の温度で第1の熱処理を行う。
第1の熱処理工程により第1の鍛造工程でニオブ素材1に生じた内部歪を除去し、さらにニオブ素材1を再結晶化させて均一な微細結晶構造を得ることができる。熱処理温度は例えば1350〜1500℃であることが好ましく、熱処理時間は例えば5〜15時間であることが好ましい。熱処理温度が1500℃を超えるまたは熱処理時間が15時間を超えると粒成長を伴うおそれがある。熱処理条件は、例えば1350〜1400℃×5〜10時間であることが好ましい。熱処理雰囲気は0.133Pa以下の真空雰囲気であることが好ましい。酸素含有雰囲気では熱処理中に表面が酸化されるおそれがある。
第2の鍛造工程では、第1の熱処理工程後に、1セット以上の第2のこねくり鍛造を行う。このとき、ニオブ素材1の厚さ方向に平行な方向からニオブ素材1に圧力を加えて行う冷間鍛造加工(第3の冷間鍛造加工ともいう)と、厚さ方向に垂直な方向からニオブ素材1に圧力を加えて行う冷間鍛造加工(第4の冷間鍛造加工ともいう)とを有する加工を1セットの第2のこねくり鍛造とする。
第2の鍛造工程において、第2のこねくり鍛造の詳細は第1のこねくり鍛造と同様であるが、第2のこねくり鍛造の回数は1セット以上であればよく、例えば1〜4セットであることが好ましい。2セット以上とする場合、セット毎に直径W方向に付加する圧力方向を変えることが好ましく、例えば図3に示したように、1セット目の第2のこねくり鍛造では圧力付加方向2に圧力を付加し、2セット目の第2のこねくり鍛造ではニオブ素材1の上面に沿って圧力付加方向2に垂直な方向である圧力付加方向3に圧力を付加することで、圧力を付加する方向を変えることが好ましい。第2の鍛造工程は、上記のとおり冷間鍛造であることが好ましい。第2のこねくり鍛造により、結晶粒径の微細化をより推進することができる。
第2の熱処理工程では、第2の鍛造工程後に第2の熱処理を行うことによりニオブ素材1を再結晶化させる。第2の熱処理工程では、例えば1300℃以上の温度で第2の熱処理を行う。
第2の熱処理工程により、第2の鍛造工程でニオブ素材1に生じた内部歪を除去し、さらにニオブ素材1を再結晶化させて均一な微細結晶構造を得ることができる。熱処理温度は1350〜1500℃、熱処理時間は5〜15時間であることが好ましい。熱処理温度が1500℃を超えるまたは熱処理時間が15時間を超えると粒成長を伴うおそれがある。熱処理条件は、例えば1350〜1400℃×5〜10時間であることが好ましい。熱処理雰囲気は0.133Pa以下の真空雰囲気であることが好ましい。酸素含有雰囲気では熱処理中に表面が酸化されるおそれがある。
冷間圧延工程では、ニオブ素材1に対し冷間圧延を1回以上行う。冷間圧延工程は、ニオブ素材1を板状に塑性加工する工程である。冷間圧延工程では、必要に応じ、冷間圧延を2回以上行ってもよい。冷間圧延工程により、20mm以下の厚さ、好ましくは10〜15mmの厚さを有するようにニオブ素材1を加工することが望ましい。さらに、冷間圧延工程後に切削加工を施してスパッタリングターゲットの板厚を調整する。
第1の鍛造工程、第2の鍛造工程、および冷間圧延工程の加工率は任意である。第1の鍛造工程、第2の鍛造工程、および冷間圧延工程の少なくとも1つの工程におけるこねくり鍛造(1セットあたり)または冷間圧延において、ニオブ素材1の加工率、すなわち断面減少率および厚さ減少率の少なくとも一方は30%以上であることが好ましい。断面減少率は、ニオブ素材1の直径W方向の断面積の減少率である。厚さ減少率はニオブ素材1の厚さH方向の減少率である。なお、第1の鍛造工程では、第1のこねくり鍛造を2セット以上行っている。このときの30%以上の加工率とは、1セットあたりの加工率である。
30%以上の加工率を有する工程は、冷間工程であることが好ましい。例えば、第1の鍛造工程→第1の熱処理工程→第2の鍛造工程→第2の熱処理工程を行った後であると、加工率30%以上の冷間圧延を行ったとしても内部歪の発生を抑制しやすい。加工率が低いと内部歪の発生を抑制することができる。しかしながら、各工程を何度も繰り返すことになるため、製造に時間が掛り過ぎてしまう。よって、加工率30%以上の工程を行うことが好ましい。
なお、1つの工程の加工率の上限は80%以下であることが好ましい。一つの工程で80%を超える加工率でニオブ素材1を加工すると内部歪、割れ、シワなどが発生し易く、さらには熱処理後にスパッタ面の結晶が(200)面に配向し易くなり、ランダム配向の結晶構造ではなくなる。さらに、冷間圧延において70%を超える加工率でニオブ素材1を加工すると、熱処理後にスパッタ面の結晶が(200)面に配向し易くなり、ランダム配向の結晶構造ではなくなる。そのため、圧延工程の加工率の上限は70%以下であることが好ましい。
第1、第2の鍛造工程、および冷間圧延工程の全ての工程において、加工率は30%以上であることがより好ましい。なお、上記したようにこねくり鍛造を2セット以上行う場合の加工率とは、1セットあたりのこねくり鍛造の加工率を示す。加工率30%以上にするためには、例えば断面減少率または厚さ減少率の少なくとも一方を30%以上にすればよい。さらに、第1、第2の鍛造工程の加工率のそれぞれは40〜80%であることがより好ましく、冷間圧延工程の加工率は、40〜70%であることがより好ましい。
第3の熱処理工程では、冷間圧延工程後に、第3の熱処理を行うことによりニオブ素材1を再結晶化させる。第3の熱処理工程では、例えば1100℃以上の温度で第3の熱処理を行う。熱処理条件は、例えば1150〜1250℃×3〜6時間であることが好ましい。熱処理雰囲気は、0.133Pa以下の真空雰囲気であることが好ましい。酸素含有雰囲気では熱処理中に表面が酸化されるおそれがある。
第3の熱処理工程により、冷間圧延工程によりニオブ素材1に生じた内部歪を除去すると共に、ニオブ素材1を再結晶化させることができる。第3の熱処理工程後は、必要に応じ、旋盤加工などの切削加工によりニオブ素材1の形状を整える。また、拡散接合によりバッキングプレートをニオブ素材1に接合する。以上により、スパッタリングターゲットを製造することができる。
上記製造方法であれば、例えば平均結晶粒径250μm以下の微細な結晶構造とランダム配向の結晶構造とを両立させたスパッタリングターゲットを製造することができる。また、純度の高いニオブ素材を使うことにより、例えば、99.5質量%以上のニオブを含む組成と、純度99.5%以上で微細結晶構造とランダムな結晶配向の結晶構造を有するスパッタリングターゲットを得ることができる。また、鋳造組織の残存であるゴーストグレインが無い微細結晶構造を形成することができる。鋳造組織の残存であるゴーストグレインが存在すると、部分的にランダム配向ではない部分ができてしまう。スパッタリングターゲットの厚さは、たとえば6mm以上であることが好ましい。
平均結晶粒径の測定は、例えば光学顕微鏡写真により単位面積500μm×500μmの拡大写真を撮り、線インターセプト法を用いて行われる。線インターセプト法では、任意の直線(長さ500μm分)を引き、その線上にあるNb結晶粒径の数を数え、(500μm/直線500μm上の結晶の数)により平均の結晶粒径を求める。この作業を3回行った平均値を平均結晶粒径とする。
実施形態のスパッタリングターゲットの表面および内部は、ランダム配向の結晶構造を有することが好ましい。例えば、ランダム配向の結晶構造は、厚さ方向の全てに渡って維持されて設けられていることが好ましい。これにより、スパッタレートが変化することなくスパッタリングによる成膜を行うことができるため、成膜された膜の均一性を高めることができる。
上記ランダム配向の結晶構造は、例えばX線回折(X‐Ray Diffraction:XRD)法を用いて同定される。例えば、Cuターゲット、管電圧40kV、管電流40mA、散乱スリット0.63mm、受光スリット0.15mmの条件でX線回折法による測定(X線回折測定)を行う。
スパッタリングターゲットのスパッタ面(表面)のX線回折測定(2θ)により得られるX線回折パターンは、結晶の(110)面に帰属する第1のピークと、結晶の(211)面に帰属する第2のピーク、結晶の(200)面に帰属する第3のピークとを含む。
このとき、第2のピークのピーク強度は、第1のピークのピーク強度よりも低く、第3のピークのピーク強度は、第2のピークのピーク強度よりも低い。すなわち、(110)面、(211)面、(200)面の各面のピークの相対強度が(110)面>(211)面>(200)面の順で小さくなる。ランダム配向ではなく特定の結晶配向で配向された結晶構造を有しているとき、各面の相対強度比がずれる。
X線回折測定では、(220)面、(310)面、(222)面に帰属するピークも検出されるが、ランダム配向か否かを判断するには(110)面、(211)面、(200)面に帰属するピークの強度を比較することが重要である。その理由は、これらの面に帰属するピークがPDF(Powder Diffraction File)データにおいて、高い強度を有する主要なピークであるためである。
第1のピークは100の相対強度を有し、第2のピークは17以上44以下の相対強度を有し、第3のピークは13以上35以下の相対強度を有する。すなわち、(110)面のピーク強度を100としたときに、(211)面のピーク強度は17ないし44の範囲であり、(200)面のピーク強度は13ないし35の範囲である。ランダム配向ではなく特定の結晶配向で配向された結晶構造を有しているとき、各面の相対強度比がずれる。
ランダム配向がスパッタリングターゲットの厚さ方向における内部に渡って維持されているため、ターゲットの深さ方向、すなわちスパッタリングターゲットの厚さ方向における内部のX線回折測定(2θ)により得られるX線回折パターンは、上記表面と同様に第1のピークと、第2のピークと、第3のピークとを含む。すなわち、スパッタ面と同様に(110)面、(211)面、(200)面のピークの相対強度が(110)面>(211)面>(200)面の順に小さくなる。
さらに、上記X線回折測定によりゴーストグレインの有無も判定することができる。ゴーストグレインが存在するとピーク強度の大小関係が「(110)面>(211)面>(200)面」でない部分が形成される。また、光学顕微鏡(拡大写真)で組織写真を撮る場合、ゴーストグレインが存在すると、Nb結晶の粒界が不鮮明な組織がみられる。
実施形態のスパッタリングターゲットでは、厚さ方向に沿ってスパッタ面のランダム配向の結晶構造が維持されている。このため、10mm以上の厚さを有するスパッタリングターゲットを用いて長時間スパッタリングを行ったとしても、スパッタレートの変化が生じ難く、信頼性が高いスパッタリング特性を示す。また、スパッタ面の直径が300mm以上と大型のスパッタリングターゲットであっても、平均結晶粒径250μm以下かつ均質なランダム配向の結晶構造を維持できる。このため、スパッタリングターゲットの表面のビッカース硬さHvが60〜120の範囲内であり、ビッカース硬さHvのばらつきが30%以下である均一な状態を得ることができる。
すなわち、直径300mm以上かつ厚さ10mm以上の大型スパッタリングターゲットにおいて、平均結晶粒径250μm以下かつスパッタ面の均質なランダム配向の結晶構造を厚さ方向に沿って維持することができる。その上でゴーストグレインの残存をなくすことができる。このため、成膜工程において長期間使用したとしてもスパッタレートの変化が生じにくくなり、スパッタリングターゲットの厚さが2mm程度になるまで安定したスパッタリングを提供することができる。使用後のスパッタリングターゲットは再利用されることが多い。通常、余ったターゲットを溶解して再度インゴットにして使う。ニオブは高融点金属であるため溶解するには高温炉が必要であり、コスト負荷の要因となる。このため、残余となるターゲット部分が少ない方が好ましい。
実施形態の半導体素子の製造方法は、スパッタリングターゲットを用いてスパッタリングする工程を有する。実施形態の半導体素子の製造方法では、スパッタリングターゲットとして上記実施形態のスパッタリングターゲットを用いる。
例えば、実施形態の半導体素子の製造方法は、上記スパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行うことによりニオブを含む膜を成膜する工程を具備する。
ニオブは、窒化ニオブ(NbN)として半導体素子のバリア膜に用いられる。このため、窒素含有雰囲気下でスパッタリング工程を行うことが好ましい。実施形態のスパッタリングターゲットであれば、長期間のスパッタリングにおける信頼性が高いことから、半導体素子の信頼性を向上させることができる。
(実施例1〜5、比較例1〜2)
直径W100〜300mm×厚さH100〜200mmの円柱状のニオブ素材(99.95質量%以上のニオブを含む高純度ニオブビレット)を用意し、表1に示す製造工程を施した。なお、表1の加工率(%)として、直径W方向の断面減少率(%)および厚さH方向の厚さ減少率(%)のうち、大きい方の値を記載した。上記加工率は、各工程の1回(1セット)あたりの加工率であり、回数(セット数)が2以上の実施例、比較例については1セット目の加工率と同様の加工率とした。また、回数(セット数)が2以上の実施例、比較例では、図3に示すように回毎(セット毎)に直径W方向における圧力付加方向を、第1の圧力付加方向とニオブ素材の上面に沿って第1の圧力付加方向に垂直な第2の圧力付加方向とに交互に変更して各工程を行った。また、表1には、第1の鍛造工程後のニオブ素材のビッカース硬さHvの平均値を示す。
直径W100〜300mm×厚さH100〜200mmの円柱状のニオブ素材(99.95質量%以上のニオブを含む高純度ニオブビレット)を用意し、表1に示す製造工程を施した。なお、表1の加工率(%)として、直径W方向の断面減少率(%)および厚さH方向の厚さ減少率(%)のうち、大きい方の値を記載した。上記加工率は、各工程の1回(1セット)あたりの加工率であり、回数(セット数)が2以上の実施例、比較例については1セット目の加工率と同様の加工率とした。また、回数(セット数)が2以上の実施例、比較例では、図3に示すように回毎(セット毎)に直径W方向における圧力付加方向を、第1の圧力付加方向とニオブ素材の上面に沿って第1の圧力付加方向に垂直な第2の圧力付加方向とに交互に変更して各工程を行った。また、表1には、第1の鍛造工程後のニオブ素材のビッカース硬さHvの平均値を示す。
表1の製造工程を経たニオブ素材を旋盤加工して、表2に示すターゲットサイズのスパッタリングターゲットを得た。各ターゲットにおける平均結晶粒径(μm)、ランダム配向の有無を確認した。
スパッタ面および断面から単位面積500μm×500μmの拡大写真(光学顕微鏡写真)を撮り、線インターセプト法(3本の直線の平均値)により平均結晶粒径を求めた。スパッタ面およびスパッタ面から厚さ方向に深さ5mmまで掘ったところから任意の測定箇所を選択し、X線回折測定(2θ)によりランダム配向の結晶構造の有無を判定した。X線Cu−Kα(ターゲットCu)、管電圧40kV、電流40mA、散乱スリット0.63mm、受光スリット0.15mmで上記X線回折測定を行った。結晶組織はいずれも再結晶化されていた。結果を表2に示す。
次に、各実施例または比較例に係るスパッタリングターゲットに拡散接合によりバッキングプレートを接合した後、窒素雰囲気中でスパッタリングによる成膜を行った。そのとき、スパッタリング後のエロージョン面のゴーストグレインの有無を確認した。結果を表3に示す。
表2および表3から、本実施例に係るスパッタリングターゲットでは、スパッタリング後のエロージョン面に鋳造組織の残留物であるゴーストグレインが発見されず、安定したスパッタリング特性を示すことがわかる。これに対し、比較例に係るスパッタリングターゲットでは、ゴーストグレインが発見された。これは鋳造組織が残存し、スパッタ面のランダム配向がスパッタリングターゲットの厚さ方向に渡って維持されていないためである。
この結果、本実施例に係るスパッタリングターゲットは、信頼性が高いスパッタリング特性を示すことがわかる。このため、半導体素子の信頼性を向上させることが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
実施形態のスパッタリングターゲットの製造方法によれば、安定したスパッタリング特性を有するスパッタリングターゲットを製造することができる。上記スパッタリングターゲットを用いて半導体素子を製造することにより、半導体素子の信頼性を向上させることができる。また、スパッタリング後の残余を少なくすることができ、再利用のためのコストも低減することができる。
Claims (8)
- 99.5質量%以上のニオブを含む組成と、
250μm以下の平均結晶粒径を有する結晶を含む再結晶構造と、を具備するスパッタリングターゲットであって、
前記スパッタリングターゲットの表面および厚さ方向における内部のX線回折測定により得られるX線回折パターンは、前記結晶の(110)面に帰属する第1のピークと、前記結晶の(211)面に帰属し、かつ前記第1のピークのピーク強度よりも低いピーク強度を有する第2のピークと、前記結晶の(200)面に帰属し、前記第2のピークのピーク強度よりも低いピーク強度を有する第3のピークとを含み、
前記第1のピークは、100の第1の相対強度を有し、
前記第2のピークは、17以上44以下の第2の相対強度を有し、
前記第3のピークは、13以上35以下の第3の相対強度を有し、
前記スパッタリングターゲットの前記表面および前記内部は、ランダム配向である前記再結晶構造を有する、スパッタリングターゲット。 - ゴーストグレインを有しない、請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
- 前記スパッタリングターゲットのビッカース硬さは、60以上120以下である、請求項1または請求項2に記載のスパッタリングターゲット。
- 前記スパッタリングターゲットのビッカース硬さのばらつきは、30%以下である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
- 6mm以上の厚さを有する、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
- 99.95質量%以上のニオブを含む組成を具備する、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行うことによりニオブを含む膜を成膜する工程を具備する、半導体素子の製造方法。
- 窒素含有雰囲気下で前記スパッタリングを行う、請求項7に記載の半導体素子の製造方法。
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