図1には本発明の一実施形態に係るヒータ制御部170を備えた画像形成装置1の構成の概要が、図2にはヒータ制御部170の構成が、それぞれ示されている。
画像形成装置1は、電子写真方式のプリンタエンジン10を備えたカラープリンタである。ハウジングの上部にタッチパネルディスプレイを有する操作パネル20が配置されている。なお、画像形成装置1は、プリンタと他の機器(ファクシミリ、ファイルサーバなど)とを集約したMFP(Multi-functional Peripheral :多機能機または複合機)であってもよい。
プリンタエンジン10は、4個のイメージングユニット3y,3m,3c,3k、プリントヘッド6、および中間転写ベルト12などを有する。
イメージングユニット3y〜3kは、それぞれ筒状の感光体4、帯電器5、現像器7、およびクリーナ8などを有している。イメージングユニット3y〜3kの基本的な構成は同様である。
プリントヘッド6は、イメージングユニット3y〜3kのそれぞれに対してパターン露光を行うためのレーザビームLBを射出する。プリントヘッド6において、感光体4の回転軸方向にレーザビームLBを偏向する主走査が行われる。この主走査と並行して、感光体4を定速回転させる副走査が行われる。
中間転写ベルト12は、トナー像の一次転写における被転写部材であり、一対のローラ間に巻回されて回転する。中間転写ベルト12の内側には、イメージングユニット3y,3m,3c,3kごとに一次転写ローラ11が配置されている。
カラー印刷モードにおいて、イメージングユニット3y〜3kは、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、およびK(ブラック)の4色のトナー像を並行して形成する。4色のトナー像は、回転中の中間転写ベルト12に順次に一次転写される。最初にYのトナー像が転写され、それに重なるようMのトナー像、Cのトナー像、およびKのトナー像が順次に転写される。
一次転写されたトナー像は、二次転写ローラ16と対向する印刷位置において、給紙トレイ14から取り出されてタイミングローラ15を経て搬送されてきた用紙(シート)2に二次転写される。二次転写の後、定着器17の内部を通過し、排出ローラ18により上部の排紙トレイ19へ送り出される。定着器17を通過するとき、加熱および加圧によってトナー像が用紙2に定着する。
定着器17は、加熱ローラ17Aと加圧ローラ17Bとを有し、これらのローラで用紙2を搬送しながら熱と圧力とを用紙2に加える。加熱ローラ17Aは、その筒状の芯金内に定着のための熱源としてハロゲンランプ(すなわちハロゲンヒータ)70を内蔵している。ハロゲンランプ70は、ヒータ制御部170から供給される電力により発熱し、加熱ローラ17Aの周面を昇温させる。用紙2が定着器17を通過するときに、加熱ローラ17Aが定着に適した温度になるように、ヒータ制御部170によりハロゲンランプ70が制御される。
図2に示すように、ヒータ制御部170は、ハロゲンランプ70を点灯させるための基本的な構成要素として、ハロゲンランプ70に電力を供給する駆動部171とそれを制御するPWM制御部172とを有する。
駆動部171は、商用電源300から供給される交流電力を整流し、所定の電圧の電力に変換して出力するスイッチング電源回路である。
駆動部171は、整流用のダイオードブリッジ711、コンデンサ712,714とコイル713とからなるπ型ノイズフィルタ、スイッチング素子715とダイオード716とコイル717とからなる降圧チョッパ部、およびドライバ718を有する。スイッチング素子715は、例えばパワートランジスタである。IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )またはMOS−FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor )であってもよい。
コイル717とハロゲンランプ70とスイッチング素子715のコレクタ・エミッタ間とがこの順に直列に接続され、この直列回路がπ型ノイズフィルタの出力側のコンデンサ714に並列に接続される。コイル717とハロゲンランプ70との直列回路に対して並列になるようダイオード716のカソードがコイル717に接続されるとともにアノードがハロゲンランプ70に接続されている。ダイオード716は、スイッチング素子715が閉状態から開状態になったときに、コイル717に溜まっている磁気エネルギーを回生電流としてに流すための還流素子である。
ドライバ718は、PWM制御部172から入力されるPWM信号S1をスイッチング素子715の制御に適した電圧レベルの信号に変換してスイッチング素子715のベースに入力する。
駆動部171は、PWM信号S1のデューティ比に応じた電圧の電力をハロゲンランプ70に供給する。パルス幅変調により、正弦波に近い波形の電流がハロゲンランプ70に供給される。
PWM制御部172は、上位制御部である制御回路100から開始指令が入力されると、駆動部171の制御を開始する。その後、停止指令が入力されるまで駆動部171を制御する。制御回路100は、画像形成装置1の全体の制御を受け持つコントローラである。
PWM制御部172には、加熱ローラ17Aの周面の温度を検出するセンサ75から温度検出信号S75が入力される。PWM制御部172は、ウォームアップモード、待機モード、および印刷モードにおいて、温度検出信号S75に基づいて加熱ローラ17Aの温度を検知し、加熱ローラ17Aの温度が予め設定された温度になるようにPWM信号S1を生成する。PWM信号S1の周波数は、例えば20kHzである。すなわち、この場合のデューティーサイクルは、50μsである。
さて、画像形成装置1は、ハロゲンランプ70の経時変化の進行を遅らせる機能を有している。以下、この機能を中心に画像形成装置1の構成および動作を説明する。
ヒータ制御部170による制御には、「ヒータ寿命延長モード」と「温度リップル抑制モード」とがある。ヒータ制御部170は、これらのモードを選択的に切り替え可能となっている。
ヒータ寿命延長モードは、用紙2に画像を印刷することなく待機する待機モード時(待機期間)において、PWM制御におけるデューティー比を100%未満としかつ所定の期間ごとにデューティーサイクルよりも長いオフ期間を設けるよう制御するモードである。オフ期間では、PWM信号S1のディティー比を0%とすることにより、ハロゲンランプ70に対する電力の供給を停止する。
ヒータ寿命延長モードによると、ハロゲンランプ70のフィラメントが局部的に細くなる経時変化の進行を遅らせてハロゲンランプ70の寿命を延ばすことができる。ただし、PWM制御を行ったり行わなかったりしてハロゲンランプ70の点灯を断続させるので、点灯を断続させない場合と比べて、加熱ローラ71Aの温度の変動が顕著になる。
温度リップル抑制モードは、待機モード時においてオフ期間を設けないモード、すなわち待機モードである期間にわたってPWM制御を継続するモードである。加熱ローラ71Aの温度の変動は小さいが、フィラメントが局部的に細くなる経時変化の進行を遅らせることはできない。
再び図2を参照して、ヒータ制御部170は、ヒータ寿命延長モードに関わる構成要素として、不揮発性のメモリ173と寿命延長制御ブロック174とを有する。
メモリ174は、ハロゲンランプ70の総点灯時間Tonおよび設定テーブルD70などを記憶する。
総点灯時間Tonは、PWM制御部172によりPWM制御が行われた時間の積算値であり、ハロゲンランプ70の余命(残寿命)の判定の目安としてPWM制御部172により積算されて適時にメモリ173に書き込まれる。
設定テーブルD70は、待機期間のうちのオフ期間以外であるオン期間におけるデューティー比の選択肢ごとに、待機期間においてPWM制御部172が行うべき制御を定めた指令情報Cpwmを対応づけた制御情報である。後に詳細を述べる。
寿命延長制御ブロック174は、判断部741、受付部742、表示部743、および指令部744などを有する。寿命延長制御ブロック174の機能は、プロセッサを含むヒータ制御部170のハードウェア構成により、および制御プログラムがプロセッサによって実行されることにより実現される。
判断部741は、ヒータ寿命延長モードと温度リップル抑制モードとの切り替えの選択を、ハロゲンランプ70の余命(残寿命)Lrに基づいて判断する。
すなわち、予め定められたハロゲンランプ70の耐久点灯時間(寿命)とメモリ173から読み出した総点灯時間Tonとの差を余命Lrとして算出する。または、制御回路100から印刷に使用された用紙2の枚数の積算値である総通紙枚数Dpnを取得して総点灯時間Tonに換算し、同様に余命Lrを算出する。そして、算出した余命Lrがしきい値未満である場合に、ヒータ寿命延長モードを選択すると判断する。
ただし、サービスパーソンまたはユーザ(管理者を含む)が行う動作設定操作によりヒータ寿命延長モードが指定されている場合には、余命Lrの長さにかかわらず、ヒータ寿命延長モードを選択すると判断する。
受付部742は、ヒータ寿命延長モードと温度リップル抑制モードとの切り替えの選択を、サービスパーソンまたはユーザの操作に基づいて行うための入力処理を行う。操作パネル20を用いてヒータ寿命延長モードまたは温度リップル抑制モードが指定されると、受付部742は、指定されたモードを判断部741に通知する。このとき、判断部741は、通知されたモードを例えばメモリ173に記憶させておく。
表示部743は、判断部741がヒータ寿命延長モードまたは温度リップル抑制モードの選択を判断する際に算出した余命Lrを操作パネル20のタッチパネルディスプレイにより表示する処理を行う。この表示は、余命Lrがしきい値未満である場合にのみ行ってもよいし、余命Lrの長さにかかわらず、印刷ジョブを実行するときまたはユーザが状態確認操作を行ったときに行ってもよい。
ユーザは、表示された余命Lrに基づいて、ヒータ寿命延長モードの制御の要否を判断することができる。
そして、例えば余命Lrが予想外に短いと感じてハロゲンランプ70の寿命が尽きる時期を遅らせたいと思ったときなどに、温度リップル抑制モードからヒータ寿命延長モードに指定を変更することができる。
また、既にヒータ寿命延長モードを指定している場合であっても、設定テーブルD70における選択肢のうち、延命に有利なものを選択するよう、サービスパーソンに設定変更を依頼することができる。
指令部744は、PWM制御部172に対して待機期間におけるPWM信号S1の生成のオンオフを指令する。すなわち、PWM制御部172から待機期間への移行が通知されると、指令部744は、設定テーブルD70から指令情報Cpwmを抽出してPWM制御部172に与える。
指令情報Cpwmは、待機期間におけるオン期間とオフ期間との配置パターン、オン期間およびオフ期間のそれぞれの長さ、およびオン期間のデューティー比Xを指定する情報である。なお、温度リップル抑制モードでは待機期間の全体がオン期間であるので、温度リップル抑制モードが選択されている場合に与えられる指令情報Cpwmは、デューティー比Xのみを指定するものでよい。
PWM制御部172は、画像形成装置1に印刷ジョブが入力されて制御回路100から印刷モードへの移行が指令されるまで、与えられた指令情報Cpwmに従ってオン期間においてPWM制御を行い、オフ期間においてPWM制御を停止する。
図3には加熱ローラ17Aの温度制御の概要が示されている。図3では、待機期間Pwaのモードが温度リップル抑制モードとされている。
画像形成装置1は、電源スイッチがオンとされたとき、または節電モード(スリープモード)から通常モードに復帰するときに、加熱ローラ17Aを定着に適した温度に昇温させるウォームアップを行う。
ウォームアップ期間Pwuにおいては、例えば常温から恒温制御の目標温度Tsまで最短時間で昇温させるために、デューティー比Xを最大値の100%とする。そして、目標温度Tsを超える頃にデューティー比Xを0%に切り替え、すなわちハロゲンランプ70への電力の供給を停止し、加熱ローラ17Aの温度を目標温度Tsに落ち着かせる。
加熱ローラ17Aの温度が目標温度Tsに落ち着くと、ウォームアップ期間Pwuが終わって待機期間Pwaが始まる。ただし、印刷ジョブが実行待ちである場合には、ウォームアップが終わると、待機期間Pwaを経ることなく印刷期間Pprになる。
待機期間Pwaにおいては、温度リップル抑制モードが選択された場合には、デューティー比Xを、一定の値(例えば20%)とする。この値は、ハロゲンランプ70による加熱量と加熱ローラ17Aから周囲への放熱量とが均衡して加熱ローラ17Aが目標温度Tsに保たれるよう設定されたものである。
印刷ジョブの入力を契機として、画像形成装置1は、待機モードから印刷モードに移行する。
印刷モードへの移行により始まる印刷期間Pprにおいては、用紙2が定着器17を通過することによる放熱量を補って加熱ローラ17Aを目標温度Tsに保つようデューティー比Xを適時に切り替える。図3では、100%と70%との二者択一の切替えを周期的に行う例が示されている。ただし、多段階の切替えを行うことも可能である。
印刷期間Pprでは、用紙2の通過による放熱条件の変化に伴って、加熱ローラ17Aの温度が変動する。すなわち、待機期間Pwaと比べて顕著なリップルが生じる。
印刷が終わると、待機モードに移行する。印刷期間Pprに続く待機期間Pwaにおいても、ウォームアップ期間Pwaに続く待機期間Pwaと同様の温度制御を行う。
次に、ヒータ寿命延長モードが選択された場合における待機期間Pwaの温度制御を説明する。説明において、待機期間Pwaは印刷期間Pprに続く期間であるものとする。
図4にはヒータ寿命延長モードにおける加熱ローラ17Aの温度制御の第1例が、図5にはオフ期間Poffにおけるフィラメント702の温度変化の例が、それぞれ示されている。また、図6には待機期間Pwaにおけるハロゲンランプ70の内部の状態が模式的に示されている。
図4において、待機期間Pwaは、単位時間UTごとに設けられるオフ期間Poffとオフ期間Poff以外であるオン期間Ponとから構成される。単位時間UTは、1秒〜数秒程度の時間とされる。
待機期間Pwaの全体の長さは、次の印刷ジョブの入力がいつであるかに依存し、数秒以内の場合もあるし、数分以上の場合もある。一定時間(例えば3〜5分)にわたって印刷ジョブの入力が無いときに節電モードに移行する機能が画像形成装置1に設けられている場合は、その一定時間の値が待機期間Pwaの最大長さとなる。
つまり、待機期間Pwaが単位時間UTよりも長い場合に1個以上のオフ期間Poffが設けられる。
図4の第1例では、待機期間Pwaの開始直後はオン期間Ponとし、単位時間UTよりも短い設定時間が経過したときにオフ期間Poffに切り替え、単位時間UTが経過したときにオン期間Ponに戻す。以降は、同様の要領でオン期間Ponへの切替えとオン期間Ponの切替えとを繰り返す。
オン期間Ponのデューティー比Xは、例えば50%とされる。直前の印刷期間Pprでは上に述べた通り100%と70%との切替えを行うので、この50%というデューティー比Xは、直前の印刷期間Pprでのデューティー比Xよりも低い。
単位時間UTに対するオン期間Ponの割合であるヒータ点灯率Rは、例えば50%とされる。すなわち、単位時間UTを例えば1000msとする場合に、オン期間Ponの長さは、500msとされる。必然的にオフ期間Poffの長さも500msとされる。
オフ期間Poffは、上にに述べた通りPWM制御のデューティーサイクルよりも長い所定の時間にわたってハロゲンランプ70に対する電力の供給を停止する期間である。このようなオフ期間Poffを設けることにより、次の通りハロゲンランプ70の寿命を延ばすことができる。
図5に示すように、電力の供給を停止するヒータオフの以前において、点灯中のハロゲンランプ70のフィラメントは、その材料であるタングステンの蒸発が活発な高温状態である。図示の例では、ヒータオフの直前におけるフィラメントの温度(初期温度)は、2500K(2226.85℃)である。
ヒータオフにより、フィラメントの温度は降下する。はじめは急激に降下し、次第に降下は緩やかなる。初期温度からタングステンの蒸発が実質的に止まるとされる2100K程度まで降下する時間tdは、5〜20ms程度である。
この時間tdは、PWM制御のデューティーサイクル(50μs)と比べると桁違いに長いが、単位時間UT(1〜数秒)と比べると、桁違いに短い。
図6(A)に示すように、オン期間Ponにおいては、電力の供給が停止することはなく、仮にあったとしてもその時間はデューティーサイクル未満と短いので、フィラメント702は高温に保たれ、ハロゲンランプ70の内部でハロゲンサイクルが進行する。
すなわち、フィラメント702から蒸発したタングステンがハロゲン(例えば臭素)と反応し、タングステン−ハロゲン化合物が生成される。この化合物は、管壁701が250℃以上であれば、管壁701に付着することなく浮遊する。化合物は、熱対流によってフィラメント702に近いゾーン705に運ばれて1400℃以上に昇温すると、タングステンとハロゲンとに分解される。自由になったハロゲンは浮遊する。他方、タングステンはフィラメント702に戻って沈澱する。
しかし、フィラメント702に均等に戻るのではなく、蒸発の激しい高温部分には戻りにくく、比較的に温度の低い部分に戻りやすい。このため、ハロゲンサイクルが繰り返されるにつれてフィラメント702の高温部分がやせ細り、ついには断線してハロゲンランプ70の寿命が尽きる。
これに対して、図6(B)に示すように、オフ期間Poffにおいては、フィラメント702の温度が降下してタングステンの蒸発が止まり、化合物の生成は不活発となる。既に存在する化合物は、管壁701が250℃以上である間は管壁701に付着することなく浮遊する。
また、1400℃以上のゾーン705が存在する間は化合物の分解は起こり、ハロゲンから分離したタングステンは、フィラメント702に戻る。このとき、フィラメント702からのタングステンの蒸発が止まっているので、タングステンの沈殿はオン期間Ponと比べて均等になる。
つまり、オフ期間Poffを設けることにより、タングステンの蒸発によるフィラメント702の細りが止まるとともに、オン期間Ponにおけるフィラメント702の局部的なやせ細りを多少なりとも回復させる効果が得られる。
タングステンの蒸発が止まることでタングステンの粉が管壁701に付着する黒化が起こりにくいので、オフ期間Poffの長さを管壁701の温度が250℃以下に降下する時間以上としても、ハロゲンランプ70の寿命が黒化により短くなることはない。
ただし、オフ期間Poffを長くし過ぎると、すなわちヒータ点灯率Rを小さくし過ぎると、加熱ローラ17Aの温度Tが大きく降下して目標温度Tsとの乖離が許容範囲を超えてしまう。
したがって、ハロゲンランプ70の寿命を延ばすには、加熱ローラ17Aの温度Tの変動が許容される範囲内でオフ期間Poffをできるだけ長くするのが好ましい。
図7には設定テーブルD70の例が、図8にはヒータ寿命延長モードにおけるリップル中心温度Tcの設定の例が、図9には設定テーブルD70におけるデューティー比Xとヒータ点灯率Yとの関係が、それぞれ示されている。
図7に示す設定テーブルD70においては、20%から99.9%までのデューティー比Xの範囲が0からNまでの(N+1)段階に区分され、段階ごとにヒータ点灯率Yが定められ、同じく段階ごとに待機期間PwaにおけるリップルdTが想定されている。
段階0は、温度リップル抑制モードに対応する。温度リップル抑制モードでは、オフ期間Poffを設けないので、段階0のヒータ点灯率Yは100%であり、リップルdTは±0%(中心温度に対する上昇分および降下分が共に0%)とされている。
段階1〜段階Nは、ヒータ寿命延長モードに対応する。ただし、段階1〜段階Nのうちの一部である段階A1〜段階Bnが、実際の制御に適用する選択肢とされている。段階1〜段階nは、オフ期間Poffが短すぎてフィラメント702が十分に冷えないか、十分に冷えて寿命延長の効果が得られたとしてもほんの僅かであることから、選択肢から除外されている。また、段階C1〜段階Nは、リップルdTが大きくなり過ぎて加熱ローラ17Aが過剰に昇温するおそれがあることから、選択肢から除外されている。
ところで、本実施形態においては、ヒータ寿命延長モードに2つのサブモードが設けられている。その1つは、温度リップル抑制モードと比べてリップルdTが大きくなることによる消費電力の増加を抑える「省エネルギー優先モード」である。
他の1つは、印刷モードに移行した後に定着を良好とするために加熱ローラ17Aが目標温度Ts以上になるのを待たなければならない状況の発生を抑える「待ち時間優先モード」である。
図8(A)に示すように、省エネルギー優先モードにおいては、リップル中心温度Tcを目標温度Tsに設定する(Tc=Ts)。この場合は、加熱ローラ17Aの温度Tが目標温度Tsよりも低いときに印刷モードに切り替わると、待ち時間が生じて印刷の開始が遅れる。
しかし、加熱ローラ17Aの温度Tが目標温度Tsよりも高いときには消費電力が増えるが、目標温度Tsよりも低いときには消費電力が減るので、待機期間Pwaの全体の消費電力は、温度Tが目標温度Tsで一定である恒温状態とほぼ等しい。
これに対して、図8(B)に示すように、待ち時間優先モードにおいては、リップル中心温度Tcを目標温度Tsよりもリップルdtの半分だけ高い温度に設定する(Tc=Ts+dt/2)。この場合は、加熱ローラ17Aの温度Tが常に目標温度Tsよりも高いので、温度Tが目標温度Tsで一定である場合と比べて消費電力が大きくなる。しかし、待ち時間は生じないので、印刷の遅れはない。ジョブの入力から1枚目の印刷物の出力までの時間であるFPOT(First Print Output Time) を短縮する上で、待ち時間優先モードは、省エネルギー優先モードと比べて有利である。
図9に示すように、省エネルギー優先モードおよび待ち時間優先モードのいずれであっても、デューティー比Xを大きくするほど、ヒータ点灯率Yを小さくする必要がある。そして、図示は省略したが、ヒータ点灯率Yを小さくするほど、すなわちオフ期間Poffを長くするほど、リップルdtは大きくなる。
省エネルギー優先モードでは、リップルdtの大きさが待ち時間の最大値(最大待ち時間)に対応する。つまり、オフ期間Poffを長くするほど、最大待ち時間が長くなるおそれがある。ハロゲンランプ70の寿命を延ばす上ではオフ期間Poffを長くするのが好ましいが、そうした場合には待ち時間が長くなるかもしれない。このトレードオフを踏まえてオフ期間Poffの長さを変更できるよう、設定テーブルD70において段階A1〜Bnの選択肢が定められ、これらの選択肢のそれぞれに当該モードに適用する指令情報Cpwmが対応づけられている。
また、待ち時間優先モードでは、リップルdtの大きさが消費電力増加量に対応する。つまり、オフ期間Poffを長くするほど、消費電力が増加する。ハロゲンランプ70の寿命を延ばす上ではオフ期間Poffを長くするのが好ましいが、そうすることにより消費電力が増えてしまう。このトレードオフを踏まえてオフ期間Poffの長さを変更できるよう、設定テーブルD70において段階A1〜Bjの選択肢が定められ、これらの選択肢のそれぞれに当該モードに適用する指令情報Cpwmが対応づけられている。
なお、待ち時間優先モードでは、図8に示す通り、リップル中心温度Tcが省エネルギー優先モードの場合と比べて高いことから、加熱ローラ17Aの温度Tが許容範囲の上限温度Tmaxを超えやすい。したがって、待ち時間優先モードの選択可能範囲(A1〜Bj)は、省エネルギー優先モードの選択可能範囲(A1〜Bn)よりも狭い。
図10にはヒータ寿命延長モードにおける加熱ローラ17Aの温度制御の第2例が、図11には同じく第3例がそれぞれ示されている。
図10の第2例は、待機期間Pwaにおけるオン期間Ponとして、低デューティー比期間Plowと高デューティー比期間Phighとを設けるものである。
低デューティー比期間Plowは、そのデューティー比Xとして、温度リップル抑制モードにおけるデューティー比X(恒温制御での目標温度Tsに対応するデューティー比X)が設定された期間である。低デューティー比期間Plowのデューティー比Xは、例えば20%である。
高デューティー比期間Phighは、そのデューティー比Xとして、低デューティー比期間Plowのデューティー比Xよりも高いデューティー比Xが設定された期間である。高デューティー比期間Phighのデューティー比Xは、例えば70%である。
この第2例では、待機期間Pwaの開始直後は低デューティー比期間Plowとし、単位時間UTよりも短い第1の設定時間が経過したときに高デューティー比期間Phighに切り替える。さらに、単位時間UTよりも短くかつ第1の設定時間よりも長い第2の設定時間が経過したときに、オフ期間Poffに切り替え、単位時間UTが経過したときに低デューティー比期間Plowに戻す。以降は、同様の要領で高デューティー比期間Phighへの切替え、オフ期間Poffへの切替え、および低デューティー比期間Plowに戻す切替えを繰り返す。
第1の設定時間、すなわち低デューティー比期間Plowの長さは、単位時間UTを例えば2秒とした場合に、例えば1秒とされる。第2の設定時間と第1の設定時間との差、すなわち高デューティー比期間Phighの長さは、例えば、0.5秒とされる。この場合のオフ期間Poffの長さは、0.5秒であり、ヒータ点灯率Yは、75%である。
図11の第3例も、待機期間Pwaにおけるオン期間Ponとして、低デューティー比期間Plowと高デューティー比期間Phighとを設けるものである。
この第3例では、待機期間Pwaの開始直後は低デューティー比期間Plowとし、第1の設定時間が経過したときにオフ期間Poffに切り替え、第2の設定時間が経過したときに、高デューティー比期間Phighに切り替える。つまり、高デューティー比期間Phighをオフ期間Poffの直後に設ける。そして、単位時間UTが経過したときに低デューティー比期間Plowに戻す。以降は、同様の要領でオフ期間Poffへの切替え、高デューティー比期間Phighへの切替え、および低デューティー比期間Plowに戻す切替えを繰り返す。
低デューティー比期間Plow、オフ期間Poff、および高デューティー比期間Phighのそれぞれの長さは、第2例と同じでもよいし、異なってもよい。
図12にはヒータ制御部170における処理の流れが示されている。
ハロゲンランプ70の制御の開始に際して、設定されているモードを確認する(#501)。
温度リップル抑制モードが設定されている場合は、直ちにステップ#504へ進み、ステップ#504において印刷期間への移行を指令する印刷コマンドの有無を確認する。
ヒータ寿命延長モードのうちの省エネルギー優先モードが設定されている場合は、Tc=Tsとして作成された制御条件を示す指令情報Cpwmを制御に適用するべき情報として選択し、設定テーブルD70から取得する。その後にステップ#504へ進む。
ヒータ寿命延長モードのうちの待ち時間優先が設定されている場合は、Tc=Ts+dT/2として作成された制御条件を示す指令情報Cpwmを制御に適用するべき情報として選択し、設定テーブルD70から取得する。リップル中心温度Tcを目標温度Tsとして作成された制御条件を示す指令情報Cpwmを制御に適用するべき情報として選択し、設定テーブルD70から取得する。その後にステップ#504へ進む。
印刷コマンドがない場合は(#504でNO) 、ステップ#509へ進む。印刷コマンドがある場合は、加熱ローラ17Aを目標温度Tsに昇温させ(#505)、印刷期間Pprのための制御(PWM制御)を開始する(#506)。
印刷中に、総点灯時間Tonに基づいて、または総点灯時間Tonと総通紙枚数Dpnとに基づいて、ハロゲンランプ70が予め定められた寿命に達したか否かを判断する(#507)。
寿命に達したと判断した場合は(#507でYES) 、ハロゲンランプ70の交換を要求するメーッセージおよびサービスコードを操作パネル20に表示させる(#514)。
寿命に達していないと判断した場合は(#507でNO) 、印刷の完了を確認した後に(#508でYES) 、待機期間Pwaのための制御を開始する(#509)。
なお、ウォームアップが完了する以前の段階でステップ#504からステップ#509へ進んだ場合は、ステップ#504においてウォームアップを終えてから待機期間Pwaのための制御を開始する。
待機中においても、ハロゲンランプ70が寿命に達したか否かを判断する(#510)。
寿命に達したと判断した場合は(#510でYES) 、ステップ#514へ進んで上述の処理を行う。
寿命に達していないと判断した場合は(#510でNO) 、ハロゲンランプ70の余命Lrを算出する(#511)。算出した余命Lrを操作パネル20に表示させてもよい。
続いて、算出した余命Lrに基づいて、ハロゲンランプ70が寿命に達する時期を遅らせる必要があるか否かを判断する(#512)。例えば余命Lrがしきい値未満である場合に遅らせる必要があると判断し、しきい値以上である場合に必要はないと判断する。
遅らせる必要があると判断した場合は(#512でYES) 、温度リップル抑制モードをヒータ寿命延長モードに変更して(#513)、ステップ#501へ戻る。既にヒータ寿命延長モードが設定されている場合は、設定テーブルD70における指令情報Cpwmの選択について、ヒータ点灯率Yが現在よりも大きい段階のものを選択するように指定しておく。
寿命に達する時期を遅らせる必要がないと判断した場合は(#512でNO) 、ステップ#504へ戻る。
以上の実施形態によると、待機期間Pwaにオフ期間Poffを設けてフィラメント702の細りを低減するので、画像を定着させるためのヒータとして用いるハロゲンランプ70の寿命を延ばすことができる。
上に述べた実施形態において、定着器17に設けるセンサ75は、ハロゲンランプ70の管壁701の温度を検出するものでもよい。その場合は、管壁701の温度と加熱ローラ17Aの周面の温度との対応関係を示す情報を記憶しておき、この情報に基づいて加熱ローラ17Aの温度を目標温度Tsに保つ制御を行えばよい。
その他、画像形成装置1およびモータ制御部170それぞれの全体または各部の構成、動作および処理の内容、順序、またはタイミング、単位時間UTの長さ、ヒータ点灯率Y、オン期間Ponのデューティー比Xなどは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。