以下、本発明の実施の形態によるサスペンション装置を、緩衝器としての減衰力調整式油圧緩衝器とコントローラとから構成をした場合を例に挙げ、添付図面の図1ないし図5に基づいて詳細に説明する。
図1において、減衰力調整式油圧緩衝器1(以下、油圧緩衝器1という)は、後述の外筒2、内筒4、ピストン5、ピストンロッド6、ロッドガイド9、ボトムバルブ13、減衰力調整装置17、伸び側減衰力発生部31および縮み側減衰力発生部42等を含んで構成されている。油圧緩衝器1の発生減衰力は、コントローラ50からの制御指令に応じて減衰力調整機構(減衰力調整装置17)により可変に調整される。
油圧緩衝器1の外殻をなす有底筒状の外筒2は、一端(下端)側がボトムキャップ3により溶接手段等を用いて閉塞され、他端(上端)側は、径方向内側に屈曲されたかしめ部2Aとなっている。外筒2は、後述の内筒4と共にシリンダを構成している。一方、外筒2の下部側には、後述する中間筒12の接続口12Cと同心上に開口2Bが形成され、この開口2Bと対向する位置には後述の減衰力調整装置17が取付けられている。また、ボトムキャップ3には、例えば車両の車輪側に取付けられる取付アイ3Aが設けられている。
外筒2の径方向内側には、該外筒2と同軸上に位置して内筒4が設けられている。この内筒4は、外筒2と共にシリンダを構成している。内筒4は、下端側がボトムバルブ13に嵌合して取付けられ、上端側はロッドガイド9に嵌合して取付けられている。内筒4内には作動流体としての作動液が封入されている。作動液としては、油液、オイルに限らず、例えば添加剤を混在させた水等を用いることができる。
外筒2と内筒4との間には、環状のリザーバ室Aが形成され、このリザーバ室A内には、前記作動液と共にガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。また、内筒4の長さ方向(軸方向)の途中には、予め決められた位置に径方向の油穴4Aが穿設され、この油穴4Aにより後述のロッド側油室Cと環状油室Dとが常時連通している。
ピストン5は、内筒4内に摺動可能に挿嵌して設けられている。このピストン5は、内筒4内を一側室(即ち、ボトム側油室B)と他側室(即ち、ロッド側油室C)とに画成している。ピストン5には、ボトム側油室Bとロッド側油室Cとを連通可能とする油路5A,5Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成されている。これらの油路5A,5Bは、内筒4内のボトム側油室Bとロッド側油室Cとの間で圧油を流通させる第1通路を構成している。
図3に示すように、ピストン5の上側端面には、各油路5Aの上側開口を取囲むように形成された環状凹部5Cと、該環状凹部5Cの径方向外側に位置し後述の縮み側減衰力発生部42(即ち、ディスクバルブ)が離着座する環状弁座5Dとが設けられている。ピストン5の下側端面には、各油路5Bの下側開口を取囲むように形成された環状凹部5Eと、該環状凹部5Eの径方向外側に位置し後述の伸び側減衰力発生部31(即ち、メインディスク35A)が離着座する環状弁座5Fとが設けられている。
ここで、ピストン5の下面側に設けられた伸び側減衰力発生部31は、後述の如く、ピストンロッド6の伸長(伸び)行程でピストン5が上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室C内の圧力が開弁設定圧を越えると開弁し、このときの圧油を各油路5Bを介してボトム側油室B側に流通させる。また、ピストン5の上面側に設けられた縮み側減衰力発生部42は、後述の如く、ピストンロッド6の縮み行程でピストン5が下向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁状態に保持される。
内筒4内を軸方向に延びるピストンロッド6は、その一端側(下端側)に小径ロッド部6Aを有し、この小径ロッド部6Aには、ピストン5がスペーサ7等を介してナット8により締結状態で固定されている。小径ロッド部6Aの外周面には、ピストン5の環状凹部5E内と常時連通する複数の凹溝6Bが軸方向に延びて形成されている。ピストンロッド6の他端側(上端側)は、ロッドガイド9等を介して外筒2および内筒4の外部に延出(突出)されている。ナット8は、ピストン5をピストンロッド6の小径ロッド部6Aに螺着状態で取付けると共に、ピストン5の上,下両面側に後述の伸び側,縮み側減衰力発生部31,42を締結して固定するものである。
内筒4の上端側には、段付円筒状のロッドガイド9が設けられている。このロッドガイド9は、内筒4の上端部分を外筒2の中央に位置決めすると共に、その内周側でピストンロッド6を軸方向に摺動可能にガイドする機能を有している。外筒2のかしめ部2Aとロッドガイド9との間には、環状のシール部材10が設けられている。このシール部材10は、内周側がピストンロッド6の外周側に摺接することによりピストンロッド6との間をシールし、外筒2および内筒4内の圧油が外部に漏出するのを防止している。
また、シール部材10には、下面側にロッドガイド9と接触するように延びるチェック弁としてのリップシール10Aが形成されている。このリップシール10Aは、油溜め室11とリザーバ室Aとの間に配置され、油溜め室11内の作動液等がロッドガイド9の戻し通路9Aを介してリザーバ室A側に向け流通するのを許し、逆向きの流れを阻止するものである。
外筒2と内筒4との間には中間筒12が配設されている。この中間筒12は、例えば、内筒4の外周側に上,下のシールリング12A,12Bを介して取付けられている。中間筒12は、内筒4の外周側を全周にわたって取囲むと共に軸方向に延びて配置され、内筒4との間に環状油室Dを形成している。この環状油室Dは、リザーバ室Aとは独立した油室であり、内筒4に形成した径方向の油穴4Aによりロッド側油室Cと常時連通している。また、中間筒12の下端側には、後述する減衰力調整バルブ18の筒形ホルダ20が取付けられる接続口12Cが設けられている。
ボトムバルブ13は、内筒4の下端側に位置してボトムキャップ3と内筒4との間に設けられている。図2に示すように、ボトムバルブ13は、ボトムキャップ3と内筒4との間でリザーバ室Aとボトム側油室Bとを画成するバルブボディ14と、バルブボディ14の下面側(軸方向一側)に設けられた縮小側のディスクバルブ15と、バルブボディ14の上面側(軸方向他側)に設けられた伸び側逆止弁16とにより構成されている。バルブボディ14には、それぞれ周方向に間隔をあけて油路14A,14Bが形成され、これらの油路14A,14Bは、リザーバ室Aとボトム側油室Bとの間を連通可能にしている。
ここで、縮小側のディスクバルブ15は、ピストンロッド6の縮み行程でピストン5が下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室B内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧油(圧力)を各油路14Aを介してリザーバ室A側にリリーフさせる。このリリーフ設定圧は、後述の減衰力調整装置17がハードに設定されたときの圧力より高い開弁圧に設定されている。
伸び側逆止弁16は、ピストンロッド6の伸び行程でピストン5が上向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する。この伸び側逆止弁16は、リザーバ室A内の圧油(作動液)がボトム側油室Bに向けて各油路14B内を流通するのを許し、これとは逆向きに作動液が流れるのを阻止する。伸び側逆止弁16の開弁圧は、後述の減衰力調整装置17がソフトに設定されたときの圧力より低い開弁圧に設定されており、実質的に減衰力を発生することはない。
次に、油圧緩衝器1の発生減衰力を可変に調整する減衰力調整機構としての減衰力調整装置17について、図1および図2を参照して説明する。
減衰力調整装置17は、その基端側(図1の左端側)がリザーバ室Aと環状油室Dとの間に介在して配置され、先端側(図1の右端側)が外筒2の下部側から径方向外向きに突出するように設けられている。減衰力調整装置17は、中間筒12内の環状油室Dからリザーバ室Aへと流れる圧油の流通を減衰力調整バルブ18により制御し、このときに発生する減衰力を可変に調整する。即ち、減衰力調整バルブ18は、後述する設定圧可変バルブ22の開弁圧が減衰力可変アクチュエータ(ソレノイド25)で調整されることにより、発生減衰力が可変に制御されるものである。
ここで、減衰力調整バルブ18は、その基端側が外筒2の開口2Bの周囲に固着され、先端側が外筒2の径方向外側へと筒状に突出したバルブケース19と、基端側が中間筒12の接続口12Cに接続(固定)され、先端のフランジ部20A(図2参照)側がバルブケース19の内側に隙間をもって配設された筒形ホルダ20と、バルブケース19内に配置され該筒形ホルダ20のフランジ部20Aに当接するバルブ部材21と、該バルブ部材21の弁座21Aに離着座するメインのディスクバルブからなる設定圧可変バルブ22と、該設定圧可変バルブ22に対して背圧を作用させる背圧室23と、該背圧室23内のパイロット圧(背圧)をソレノイド25への通電(電流値)に応じて可変に設定し、設定圧可変バルブ22の開弁圧を調節するパイロット弁部材24とを含んで構成されている。
設定圧可変バルブ22は、背圧室23からのパイロット圧(背圧)によりバルブ部材21の弁座21Aに着座する方向(即ち、閉弁方向)の圧力を受圧している。即ち、設定圧可変バルブ22は、筒形ホルダ20の入口(環状油室D)側の圧力を受圧し、この圧力が背圧室23側のパイロット圧(背圧)を超えると、バルブ部材21の弁座21Dから離座して開弁する。
この場合、設定圧可変バルブ22は、背圧室23内のパイロット圧(背圧)がパイロット弁部材24を介して調節されることにより、開弁圧が可変に設定される。設定圧可変バルブ22がバルブ部材21の弁座21Dから離座(開弁)したときには、環状油室D(中間筒12)側からの圧油がバルブ部材21内の油路を介して設定圧可変バルブ22の外側へと流出し、筒形ホルダ20のフランジ部20Aとバルブケース19との間から外筒2の開口2Bを介してリザーバ室A側へと流通する。
次に、ソレノイド25は、減衰力調整バルブ18と共に減衰力調整装置17を構成し、減衰力可変アクチュエータとして用いられている。図2に示すように、ソレノイド25は、外部からの通電により磁力を発生する筒状のコイル26と、該コイル26の内周側に配置されたステータコア27と、該ステータコア27の内周側で軸方向へ移動可能に設けられた可動鉄心としてのプランジャ28と、該プランジャ28の中心側に一体に設けられた作動ピン29と、コイル26の外周を覆うカバー部材30等とを含んで構成されている。
カバー部材30は、磁性材料からなるヨークを構成し、コイル26の外周側で磁気回路を形成するものである。作動ピン29は、プランジャ28内を軸方向(図2中の左,右方向)に貫通して延び、左側の突出端には、減衰力調整バルブ18のパイロット弁部材24が固定されている。即ち、パイロット弁部材24の内側には、ソレノイド25の作動ピン29が嵌合固定され、パイロット弁部材24は、プランジャ28および作動ピン29と一体的に水平方向(左,右方向)に変位する。
ここで、ソレノイド25のプランジャ28には、コイル26への通電(電流値)に比例した軸方向の推力が発生し、背圧室23内のパイロット圧(背圧)は、パイロット弁部材24の変位によりプランジャ28の推力に対応して可変に設定される。即ち、背圧室23内の圧力に抗して開弁する設定圧可変バルブ22の開弁圧は、ソレノイド25への通電に応じてパイロット弁部材24を軸方向に変位させることにより調節される。換言すると、設定圧可変バルブ22の開弁圧は、後述のコントローラ50でソレノイド25のコイル26に通電する電流値を制御して、パイロット弁部材24を軸方向に変位させることにより増,減される。このため、油圧緩衝器1の発生減衰力は、ソレノイド25への通電(電流値)に比例した設定圧可変バルブ22の開弁圧に応じて可変に調整することができる。
次に、ピストン5の上,下両面側に位置してピストンロッド6の小径ロッド部6Aに設けられた伸び側減衰力発生部31と縮み側減衰力発生部42の具体的構成について、図3を参照して説明する。
伸び側減衰力発生部31は、ピストン5の移動によって生じる上流側の室(ロッド側油室C)から下流側の室(ボトム側油室B)への作動液の流れを抑制して減衰力を発生させるメインバルブ(即ち、減衰力制御弁35)と、該メインバルブの閉弁方向に背圧を作用させる背圧室36と、前記上流側の室からの作動液を背圧室36に導入するための背圧室導入オリフィス41と、背圧室36の背圧により前記メインバルブの開弁を調整する圧力調整機構(例えば、後述の弾性シール部材35B)と、高周波の振動に対して減衰力を低減し、背圧室導入オリフィス41を介して作動液が供給される周波数感応部(後述のフリーバルブ37)と、を備えている。
ここで、ピストンロッド6の小径ロッド部6Aの外周面には、ピストン5の環状凹部5E内と常時連通する複数の凹溝6Bが軸方向に延びて形成されている。この凹溝6Bは、後述の背圧室36に背圧室導入オリフィス41を介して連通している。ピストン5の環状凹部5E内と背圧室36との間には、例えば背圧室導入オリフィス41の絞り作用により圧力差が生じる。
伸び側減衰力発生部31は、図3に示すように、内筒4のボトム側油室B内に位置してピストン5の下側に固定状態で取付けられている。伸び側減衰力発生部31は、ピストンロッド6の伸長(伸び)行程でピストン5が内筒4内を上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室Cからピストン5の各油路5B、環状凹部5E等を介してボトム側油室Bに向け流通する圧油に抵抗力を与え、予め決められた特性で伸び側の減衰力を発生するものである。
伸び側減衰力発生部31は、ピストン5とスペーサ7との間に位置してピストンロッド6(小径ロッド部6A)の外周側に固定された上,下の第1,第2弁座部材32,33と、該第1,第2弁座部材32,33間に配置されたリリーフ弁34と、メインバルブとしての減衰力制御弁35と、後述のフリーバルブ37(即ち、周波数感応バルブとして働く第2バルブ)等とを含んで構成されている。減衰力制御弁35は、第1弁座部材32の内周側(後述する短尺筒部32Bの内周面)に締代をもって嵌合する後述の弾性シール部材35Bを有し、第1弁座部材32との間に環状の背圧室36を形成する第1バルブである。
2つの弁座部材32,33のうち、上側の第1弁座部材32は、小径ロッド部6Aの外周側に嵌合して設けられた環状板部32Aと、該環状板部32Aの外周側から軸方向上側(他側)へとピストン5の下側端面に近い位置まで延設された短尺筒部32Bと、環状板部32Aの下側面に形成されリリーフ弁34により開,閉される環状凹部32Cと、短尺筒部32B内を環状凹部32C内と連通させるように環状板部32Aの径方向中間部に穿設され上,下方向に開口した複数の貫通孔32Dとを含んで構成されている。
2つの弁座部材32,33のうち、下側の第2弁座部材33は、リリーフ弁34を第1弁座部材32との間で上,下方向から挟むように、小径ロッド部6Aの外周側に嵌合して設けられた環状板部33Aと、該環状板部33Aの外周側から軸方向一側へと下向きに延設された短尺な一側筒部33Bとを含んで構成されている。下側の第2弁座部材33は、一側筒部33Bの内側に後述のフリーバルブ37を収納する構成となっている。
リリーフ弁34は、小径ロッド部6Aの外周側で弁座部材32,33間に挟持して設けられたディスクバルブにより構成されている。リリーフ弁34は、第1弁座部材32の環状凹部32Cを常時は閉塞している。しかし、環状凹部32C内に貫通孔32Dを介して連通する背圧室36内の圧力が、リリーフ弁34の開弁設定圧(減衰力制御弁35の開弁設定圧よりも高い圧力)まで上昇すると、リリーフ弁34は第1弁座部材32の端面から離座(開弁)され、このときの過剰圧をボトム側油室B側にリリーフさせる安全弁として機能する。
減衰力制御弁35は、ピストン5の環状弁座5Fに離着座するメインディスク35Aと、該メインディスク35Aの下面外周側に加硫、焼付け等の手段で固着して設けられた環状の弾性シール部材35Bとにより構成されている。この弾性シール部材35Bは、ゴム等の弾性材料を用いて厚肉なリング状に形成され、外側のボトム側油室Bに対して内側の背圧室36(即ち、短尺筒部32Bとの間)を液密にシールしている。
減衰力制御弁35の弾性シール部材35Bは、第1弁座部材32の短尺筒部32Bの内周面に弾性変形状態で接触することにより、背圧室36の背圧によってメインディスク35A(メインバルブ)の開弁を調整する圧力調整機構を構成している。減衰力制御弁35の開弁設定圧は、弾性シール部材35Bの弾性的な撓み変形により可変幅をもって調整される。
減衰力制御弁35は、ピストンロッド6の伸び行程でロッド側油室Cからの圧油がピストン5の各油路5B、環状凹部5E、背圧室導入オリフィス41等を介して背圧室36内に導入されるときに、ロッド側油室C(環状凹部5E)と背圧室36(即ち、短尺筒部32Bの内側)との間に圧力差が発生する。そして、この圧力差が予め決められた開弁設定圧以上に大きくなったときに、減衰力制御弁35のメインディスク35Aは、環状弁座5Fから離座し、所定の伸び側減衰力を発生する。このときの伸び側減衰力は、前記減衰力調整装置17(図2参照)により可変に調整される減衰力との関連で予め決められた減衰力に設定されるものである。
減衰力制御弁35(メインディスク35A)の開弁時には、ボトム側油室Bとロッド側油室Cとの間がピストン5の油路5B、環状凹部5Eおよび環状弁座5Fを介して連通する。一方、減衰力制御弁35(メインディスク35A)の閉弁時には、例えばロッド側油室C内の圧油がピストン5の油路5B、環状凹部5Eからピストンロッド6(小径ロッド部6A)の凹溝6B、背圧室導入オリフィス41等を介して背圧室36内に導入される。
伸び側減衰力発生部31は、第2弁座部材33の一側筒部33B内に設けられたフリーバルブ37を有している。このフリーバルブ37は、ディスク弁37Aと環状の弾性シール部材37Bとにより構成されている。フリーバルブ37のディスク弁37Aは、第2弁座部材33の一側筒部33B内に複数枚の弁座ディスク38および蓋板39を介して取付けられ、弁座ディスク38の外周側に離着座する逆止弁体として構成されている。
フリーバルブ37の弾性シール部材37Bは、ディスク弁37Aの外周側に加硫、焼付け等の手段で固着して設けられている。この弾性シール部材37Bは、ゴム等の弾性材料を用いてリング状に形成され、一側筒部33Bの内周面に液密に締代をもって接触している。これにより、第2弁座部材33の一側筒部33Bは、内部がフリーバルブ37により周波数感応のダンパ上室B1とダンパ下室B2とに画成されている。
また、第2弁座部材33の環状板部33Aとフリーバルブ37のディスク弁37Aとの間には、ピストンロッド6(小径ロッド部6A)の凹溝6Bをダンパ上室B1に連通させる導油路40が設けられている。このため、ダンパ上室B1は、導油路40、凹溝6Bおよび背圧室導入オリフィス41を介して背圧室36と連通している。
ここで、ダンパ上室B1内の容積は、ディスク弁37Aと弾性シール部材37Bの変位(弾性変形を含む)により拡,縮される。この場合、フリーバルブ37は、背圧室36内の圧力(内圧)を調整する第2バルブとして構成されている。蓋板39は、小径ロッド部6Aの外周側と一側筒部33Bの内周側との間に嵌合して設けられ、弁座ディスク38とスペーサ7との間でナット8からの締結力により挟持されている。蓋板39の径方向中間部位には、複数の貫通孔39Aが上,下方向に穿設されている。これらの貫通孔39Aは、第2弁座部材33の一側筒部33B(ダンパ下室B2)内を外側のボトム側油室Bに常時連通させる連通孔である。
フリーバルブ37は、ピストンロッド6の伸び行程で逆止弁体としてのディスク弁37Aが弁座ディスク38の外周側に着座し続け、この状態でピストンロッド6および/または内筒4の振動周波数に応じて一側筒部33B内を上,下に移動または停止するように相対変位する。これにより、フリーバルブ37は、ダンパ上室B1(即ち、背圧室36)の内圧を前記周波数に応じて調整する周波数感応バルブとして作動する。
一方、ピストンロッド6の縮み行程では、ダンパ下室B2がダンパ上室B1よりも相対的に高圧となるので、フリーバルブ37は、逆止弁体としてのディスク弁37Aが弁座ディスク38の外周側から離座するように開弁する。これによって、ボトム側油室B内の圧油(作動液)は、ダンパ下室B2からダンパ上室B1、導油路40、ピストンロッド6(小径ロッド部6A)の凹溝6B等を介して背圧室36へと流通し、その一部は背圧室導入オリフィス41等を介してピストン5の環状凹部5E、油路5Bからロッド側油室Cに向けて流通する。
ピストン5の環状凹部5Eと減衰力制御弁35のメインディスク35Aとの間には、ピストンロッド6(小径ロッド部6A)の凹溝6Bに連通し、背圧室導入オリフィス41を構成する通路41Aが設けられている。また、減衰力制御弁35のメインディスク35Aと第1弁座部材32との間には、前記凹溝6Bを背圧室36に連通させ前記通路41Aと共に背圧室導入オリフィス41を構成する他の通路41Bが設けられている。背圧室導入オリフィス41は、ロッド側油室Cからの圧油をピストン5の油路5B、環状凹部5E、通路41A、凹溝6Bおよび他の通路41Bを介して背圧室36へと導入する。
ピストンロッド6(小径ロッド部6A)の凹溝6Bは、背圧室導入オリフィス41を第2弁座部材33側の導油路40を介してダンパ上室B1に連通させる。これにより、第2弁座部材33とフリーバルブ37との間のダンパ上室B1には、ロッド側油室Cからの圧油がピストン5の油路5B、環状凹部5E、通路41A、凹溝6Bおよび導油路40を介して供給される。ここで、背圧室導入オリフィス41の通路41Aは、フリーバルブ37のカットオフ周波数fc(図5参照)決めるため、予め定められたオリフィス面積に形成される。
即ち、ピストンロッド6の伸び行程では、フリーバルブ37のディスク弁25Aと弾性シール部材25Bの変位(弾性変形を含む)によりダンパ上室B1内の容積が拡大される。この拡大範囲において、背圧室36内の圧油はダンパ上室B1内に向けて流通する。このため、背圧室36内の圧力はフリーバルブ37の変位によって低下し、これに伴って減衰力制御弁35の開弁設定圧が下げられる。これにより、伸び側減衰力発生部31の減衰力制御弁35は、図5に示す特性線58のように、カットオフ周波数fcの前,後で発生減衰力の特性がハードな状態からソフトな状態へと切換えられる。
このように、フリーバルブ37は、ピストンロッド6および/または内筒4の振動周波数に応じてダンパ上室B1(即ち、背圧室36)の内圧を調整する周波数感応バルブとして作動する。この場合、前記カットオフ周波数fcは、背圧室導入オリフィス41(通路41A)のオリフィス面積により決められる周波数であり、例えば1Hz前,後の周波数に設定するのが好ましい。
これにより、伸び側減衰力発生部31の減衰力制御弁35は、図5に示す特性線58のように、ピストンロッド6および/または内筒4の振動周波数がカットオフ周波数fcよりも低い低周波のときには、フリーバルブ37により背圧室36内の圧力が下げられることはなく、減衰力制御弁35の開弁設定圧は相対的に高い圧力に保たれる。しかし、前記振動周波数がカットオフ周波数fc以上となる高周波時(例えば、悪路走行時)には、フリーバルブ37により背圧室36内の圧力が下げられ、減衰力制御弁35の開弁設定圧が下げられるので、発生減衰力の特性はソフトな状態に切換わる。
縮み側減衰力発生部42は、ピストン5の油路5Aをロッド側油室Cに対して遮断するように、ピストン5の上側端面(環状凹部5C)とスペーサ43との間に設けられたディスクバルブにより構成されている。この縮み側減衰力発生部42は、ピストンロッド6の縮み行程でピストン5が内筒4内を下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室Bからピストン5の各油路5A、環状凹部5Cを介してロッド側油室Cに向け流通する圧油に抵抗力を与え、予め決められた特性で縮み側の減衰力を発生するものである。
次に、図4を参照してソレノイド25(図2に示す減衰力調整装置17のアクチュエータ)の駆動制御を行う制御装置としてのコントローラ50の構成について説明する。
コントローラ50は、その入力側に上下加速度センサ(以下、Gセンサ51という)とCAN52とが接続され、出力側にはソレノイド25等が接続されている。Gセンサ51は、車両のばね下(車輪)側および/または、ばね上(車体)側で上,下方向の振動加速度を検出する。CAN52は、車両の車体側に搭載されたシリアル通信部で、車両に搭載された多数の電子機器(図示せず)とコントローラ50との間で車載向けの多重通信を行うものである。この場合、CAN52に送られる車両運転情報としては、例えば操舵角センサ、ブレーキ操作検出器、アクセルセンサおよび車輪速センサ(いずれも図示せず)等からの検出信号(情報)が挙げられる。
なお、本実施の形態にあっては、CAN52からの車両運転情報がコントローラ50に入力されるため、1台の車体に対して1個のGセンサ51を設けるだけでよい。しかし、例えば合計3個のGセンサ51を前記車体に設ける構成としてもよい。この場合、Gセンサ51は、各前輪側の油圧緩衝器1の上端側(ロッド突出端側)近傍となる位置で車体に取付けられると共に、左,右の後輪間の中間位置でも前記車体に取付けられる。
コントローラ50は、マイクロコンピュータ等によって構成された制御装置である。コントローラ50は、例えばROM、RAM、不揮発性メモリ等からなる記憶部(図示せず)、車体振動推定部53、ばね上制振制御部54、操縦安定制御部55、車速感応制御部56および制御指令演算部57を含んで構成されている。コントローラ50は、Gセンサ51から車体側の上,下振動を読込み、CAN52からは、前記操舵角センサ、ブレーキ操作検出器、アクセルセンサおよび車輪速センサ等からの各検出信号をシリアル通信により読込む。
この上で、コントローラ50は、Gセンサ51およびCAN52からのセンサ情報より車体振動推定部53で前記車体の振動を推定し、操縦安定制御部55では車両の操舵状態を推定する。車速感応制御部56では車両の走行状態を推定する。制御指令演算部57は、互いに並列に接続されたばね上制振制御部54、操縦安定制御部55および車速感応制御部56からの制御信号に従って、各車輪側の油圧緩衝器1の減衰力調整装置17(ソレノイド25)に出力すべき減衰力指令信号を制御指令値(電流値)として演算処理する。
各油圧緩衝器1の減衰力調整装置17は、制御指令演算部57からソレノイド25に出力された電流値(減衰力指令信号)に従って減衰力調整バルブ18のパイロット弁部材24を軸方向に変位させる。これにより、減衰力調整バルブ18は、設定圧可変バルブ22の開弁圧が減衰力可変アクチュエータ(ソレノイド25)で調整され、発生減衰力の特性がハードとソフトの間で連続的に、または複数段で可変に制御される。
コントローラ50の操縦安定制御部55は、前記操舵角センサからの操舵角信号と前記車輪速センサからの車速信号とより制御量(例えば、横加速度を推定して行う演算式、制御則等に従って制御量)を算出し、算出した制御量を制御指令値として制御指令演算部57に出力する。また、車速感応制御部56は、前記車速信号等より制御量を算出し、算出した制御量を制御指令値として制御指令演算部57に出力する。
さらに、コントローラ50は、車両の運動のうちカットオフ周波数fcよりも低周波の運動について、運動状態に応じてソフトな特性からハードな特性の減衰力を発生するように、減衰力調整装置17のソレノイド25に通電して油圧緩衝器1の減衰力特性を後述の可変幅60(図5参照)の範囲で可変に調整する。そして、カットオフ周波数fc以上の高周波域の運動については、ソフトな特性(図5中の値59参照)よりも高い減衰力(図5中の値61参照)を下限とし、運動状態に応じてハードな特性までの間で油圧緩衝器1の減衰力特性を、後述の可変幅62の範囲で可変に調整する構成としている。
本実施の形態によるサスペンション装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
油圧緩衝器1を車両に実装するときには、ピストンロッド6の上端側が車両の車体側に取付けられ、外筒2のボトムキャップ3側は取付アイ3Aが車輪側に取付けられる。車両の走行時には、路面の凹凸等により上,下方向の振動が発生すると、ピストンロッド6が内筒4から伸長、縮小するように変位し、伸び側減衰力発生部31と縮み側減衰力発生部42等により減衰力を発生することができ、車両の振動を緩衝することができる。
即ち、ピストンロッド6の縮み行程では、ピストンロッド6が内筒4内へと進入し、ボトム側油室B内がロッド側油室Cよりも高圧になる。このため、ボトム側油室B内の圧油は、ピストン5の油路5Bから環状凹部5C内に流入し、この流入油は、縮み側減衰力発生部42により所定の減衰力を発生させつつ、ロッド側油室Cへと流れる。このとき、ロッド側油室C内の圧油は、ピストンロッド6の縮み行程で内筒4内への進入体積分だけ油穴4Aから環状油室Dを介して減衰力調整装置17側に流通する。
一方、ピストンロッド6の伸び行程では、ロッド側油室C内がボトム側油室Bよりも高圧となるので、ロッド側油室C内の圧油がピストン5の油路5Bから環状凹部5E内に流入する。この流入油は、ピストン5の環状凹部5Eから背圧室導入オリフィス41、ピストンロッド6の凹溝6B等を介して背圧室36へと導入され、さらに、ピストンロッド6の凹溝6B、第2弁座部材33側の導油路40を介してダンパ上室B1にも導かれる。
伸び側減衰力発生部31の減衰力制御弁35は、ピストンロッド6の伸び行程でロッド側油室Cからの圧油がピストン5の各油路5B、環状凹部5E、背圧室導入オリフィス41等を介して背圧室36内に導入されるときに、ロッド側油室C(環状凹部5E)と背圧室36との間に圧力差が発生する。そして、この圧力差が予め決められた開弁設定圧以上に大きくなったときに、減衰力制御弁35のメインディスク35Aは、環状弁座5Fから離座し、所定の伸び側減衰力を発生する。
ここで、伸び側減衰力発生部31の第2弁座部材33には、ピストンロッド6および/または内筒4の振動周波数に応じてダンパ上室B1(即ち、背圧室36)の内圧を調整する周波数感応バルブとしてのフリーバルブ37が設けられている。即ち、ピストンロッド6の伸び行程では、車両の振動に応じてフリーバルブ37が変位すると、背圧室36内の圧油がダンパ上室B1内に向けて流通する。このため、背圧室36内の圧力はフリーバルブ37の変位によって低下し、これに伴って減衰力制御弁35の開弁設定圧が下げられる。
この場合、伸び側減衰力発生部31の減衰力制御弁35は、図5に示す特性線58のように、ピストンロッド6および/または内筒4の振動周波数がカットオフ周波数fcよりも低い低周波のときには、フリーバルブ37により背圧室36内の圧力が下げられることはなく、減衰力制御弁35の開弁設定圧は相対的に高い圧力に保たれる。しかし、前記振動周波数がカットオフ周波数fcよりも大きくなる高周波時(例えば、悪路走行時)には、フリーバルブ37により背圧室36内の圧力が下げられ、減衰力制御弁35の開弁設定圧が下げられるので、発生減衰力の特性はソフトな状態に切換わる。
ピストンロッド6の伸び行程においても、ロッド側油室C内の圧油は、ピストン5の変位に伴って内筒4内から油穴4Aを介して環状油室D内へと流出し、環状油室D内の圧油は中間筒12の接続口12Cを介して減衰力調整装置17側に流通する。ここで、油圧緩衝器1の外筒2には、ロッド側油室Cに常時連通する環状油室Dとリザーバ室Aとの間に介在するように減衰力調整装置17が設けられている。コントローラ50は、Gセンサ51およびCAN52からのセンサ情報に基づいて油圧緩衝器1の減衰力調整装置17(ソレノイド25)に出力すべき減衰力指令信号を演算している。
このように、コントローラ50は、中間筒12内の環状油室Dからリザーバ室Aへと流れる圧油の流通を減衰力調整装置17の減衰力調整バルブ18により制御し、このときに発生する減衰力は、コントローラ50からの制御指令に従って可変に調整される。即ち、減衰力調整バルブ18は、設定圧可変バルブ22の開弁圧がソレノイド25で調整されることにより、発生減衰力が可変に制御され、油圧緩衝器1の発生減衰力を、ソレノイド25への通電(電流値)に比例した設定圧可変バルブ22の開弁圧に応じて可変に調整することができる。
そこで、コントローラ50による油圧緩衝器1の減衰力特性を可変に制御する処理について、図5を参照して説明する。
図5中に示す特性線58の特性線部58Aは、車両の振動周波数がカットオフ周波数fcよりも低い低周波の場合である。コントローラ50は、図4に示すGセンサ51およびCAN52からのセンサ情報に基づいて油圧緩衝器1の減衰力調整装置17(ソレノイド25)に出力すべき減衰力指令信号を演算し、減衰力をハードな特性に設定する場合は、ハード設定の制御電流Ih1(例えば、1.6A)をソレノイド25に出力する。特性線部58Aは、ハード設定の制御電流Ih1がソレノイド25に出力された状態に対応している。
一方、減衰力をソフトな特性に設定する場合は、コントローラ50からソレノイド25にソフト設定の制御電流Is1(例えば、0.3A)が出力される。図5中に点線で示すソフトな減衰力の値59は、ソフト設定の制御電流Is1に対応している。車両の振動周波数がカットオフ周波数fcよりも低い低周波の場合、コントローラ50からソレノイド25に出力される減衰力指令信号は、ハード設定の制御電流Ih1からソフト設定の制御電流Is1の間で、前記センサ情報に基づいて可変に演算される。このため、油圧緩衝器1の減衰力特性は、カットオフ周波数fcより低い低周波域において、図5中の可変幅60の範囲で可変に調整される。
次に、車両の振動周波数がカットオフ周波数fc以上の高周波の場合、乗り心地が不快に感じる高周波の振動成分を抑えることに加え、ばね下振動(バタツキなど)を抑制するために、コントローラ50はソフト減衰をある程度上げる制御を行う。例えば、Gセンサ51およびCAN52からのセンサ情報によりばね下振動が大きいと判断した場合、コントローラ50は、ソフト設定の制御電流Is1をソフト設定の制御電流値Isx(例えば、0.5A程度)まで上げる。図5中に点線で示すソフトな減衰力の値61は、ソフト設定の制御電流値Isxに対応している。
車両の振動周波数がカットオフ周波数fc以上の高周波の場合、図5中に示す特性線58の特性線部58Bのように、コントローラ50からソレノイド25に出力される減衰力指令信号は、ハード設定の制御電流Ih1からソフト設定の制御電流値Isxの間で可変に前記センサ情報に基づいて演算される。しかし、カットオフ周波数fc以上の高周波では、伸び側減衰力発生部31のフリーバルブ37により減衰力制御弁35の開弁設定圧が下げられるので、発生減衰力の特性はソフトな状態に切換わる。このため、カットオフ周波数fc以上の高周波域においては、油圧緩衝器1の減衰力特性は、図5中に示す可変幅62の範囲で可変に調整される。
また、振動周波数がカットオフ周波数fc以下の低周波域になると、コントローラ50は、ソレノイド25に出力する減衰力指令信号を元のソフト設定の制御電流Is1(例えば、0.3A)にシフトするような制御を行う。このため、高周波に対応させた高価なECUを必要とせず、簡易的な制御で減衰力の調整を行うことができる。
かくして、本実施の形態によれば、車両の運動のうちカットオフ周波数fcよりも低周波の運動については、運動状態に応じてソフト特性からハード特性の減衰力を発生するように、コントローラ50により油圧緩衝器1の減衰力特性を図5中の可変幅60の範囲で可変に調整する。そして、カットオフ周波数fc以上の高周波域の運動については、ソフト特性(図5中の値59)よりも高い減衰力(図5中の値61)を下限とし、運動状態に応じてハード特性までの間で油圧緩衝器1の減衰力特性を、図5中の可変幅62の範囲で可変に調整する構成としている。
これにより、高周波入力に対する不快な振動を周波数感応部(フリーバルブ37)により機械的に調整し、ソフトな特性となるように減衰力を適度に下げると共に、コントローラ50は、高周波もその制限した可変幅62の中で.ばね下振動に応じて適度なソフト減衰力になるよう減衰力調整装置17を制御でき、各種走行シーンでの乗り心地を改善することができる。
即ち、車両の振動周波数がカットオフ周波数fc以上の高周波の場合、コントローラ50は、図5に示すように、ソフト設定の制御電流Is1を制御電流値Isxまで上げ、ソフト減衰をある程度上げる制御を行う。これにより、乗り心地が不快に感じる高周波の振動成分のみを抑えることに加え、ばね下振動(バタツキ等)を抑制する制御を行うことができる。
そして、コントローラ50は、図5に示すソフト設定の制御電流Is1を制御電流値Isxまで上げるソフト減衰の上げ幅を、ばね下振動の大きさや連続振動の時間等により変えることにより、各種走行シーンに合わせて、最適なばね下振動となるように減衰力を調整することが可能となる。
従って、本実施の形態では、車両の振動周波数がカットオフ周波数fc以上の高周波域においても、コントローラ50により減衰力調整装置17のソレノイド25に通電して所謂セミアク制御を行うので、周波数感応部(フリーバルブ37)を備えた油圧緩衝器1であっても路面変化に対する応答性を向上できる。これにより、例えば複合入力路面(低周波と高周波が混ざった重畳路)での乗り心地を改善することができる。
しかも、操縦安定性とうねり路のような低周波の乗り心地を確保しながら、高周波入力に対する制御も走行シーンに応じて制御可能であり、調整自由度を大きくすることができる。また、車両走行時のレーンチェンジ等のように、セミアクティブサスペンション(即ち、セミアク)による操縦安定性制御が作動していても、油圧緩衝器1の減衰力アップによる不快な振動を低減することができる。さらに、高周波域での乗り心地の改善と、ステア/フロア振動の低減化を図ることができる。
また、本実施の形態では、コントローラ50によりばね下制振を行うが、ばね下振動の周波数で指令電流を変動させてリアルタイムに制御するのではなく、ばね下振動の大きさがある閾値を超えて連続で続くと、ソフト設定の制御電流Isxをある程度にシフトさせ、振動が閾値以下になると、もとのソフト設定の制御電流Is1にシフトするような制御を行う構成としている。このため、コントローラ50は、高周波に対応させた高価なECUを必要とせずに、簡易的な制御によって、乗り心地の改善を実現することができる。
なお、前記実施の形態では、Gセンサ51およびCAN52からの信号で車体側の振動を演算により求める場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばデジタルカメラ、レーザセンサ等の撮像素子を用いた前方路面のプレビュー情報または車高センサからの検出信号等により車体の振動状態を求める構成としてもよい。
また、前記実施の形態では、減衰力調整機構(減衰力調整装置17)のアクチュエータをソレノイド25で構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば電動モータ等のアクチュエータにより緩衝器の減衰力調整を行う構成としてもよい。
次に、上記実施の形態に含まれるサスペンション装置として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
サスペンション装置の第1の態様としては、車両の車体側と車輪側との間に設けられ、アクチュエータにより減衰力を調整可能な緩衝器と、前記アクチュエータを制御するコントローラと、からなるサスペンション装置において、前記緩衝器には、予め決められた振動周波数以上の高周波の振動に対して前記減衰力を低減させる周波数感応部を設け、前記コントローラは、前記車両の運動状態に応じて前記アクチュエータにより減衰力を調整し、前記高周波のときは、前記周波数感応部により減衰力を低下させることを特徴としている。
サスペンション装置の第2の態様としては、作動流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に設けられ、一側室と他側室に分けるピストンと、一端が前記ピストンに連結され他端が前記シリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、前記ピストンの移動によって生じる上流側の室から下流側の室への作動流体の流れを抑制して減衰力を発生させるメインバルブと、該メインバルブの閉弁方向に背圧を作用させる背圧室と、前記上流側の室からの作動流体を前記背圧室に導入するための背圧室導入オリフィスと、を備え、前記背圧室の背圧により前記メインバルブの開弁を調整する圧力調整機構と、高周波の振動に対して減衰力を低減し、前記背圧室導入オリフィスを介して作動流体が供給される周波数感応部と、アクチュエータにより減衰力を調整可能な減衰力調整機構と、前記アクチュエータを制御するコントローラと、からなるサスペンション装置において、前記コントローラは、前記車両の運動のうち低周波の運動については、運動状態に応じてソフト特性からハード特性の減衰力を発生するように調整し、前記低周波よりも高周波の運動については、前記ソフト特性よりも高い減衰力を下限とし、運動状態に応じてハード特性までの間で減衰力を発生するように調整することを特徴としている。