「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態の緩衝器を図1〜図8を参照して以下に説明する。
図1に示す第1実施形態の緩衝器1は、ユニフロー型の減衰力調整式緩衝器であり、シリンダ2の外周側に外筒3を設けた複筒構造で、シリンダ2と外筒3との間にリザーバ4が形成されている。作動流体として、シリンダ2内には、油液が封入され、リザーバ4内には油液およびガスが封入されている。
シリンダ2内には、ピストン5が摺動可能に嵌装されており、このピストン5によってシリンダ2内が第1室2Aと第2室2Bとの2室に画成されている。ピストン5には、ピストンロッド6の一端がナット7によって連結されており、ピストンロッド6の他端側は、第1室2Aを通り、シリンダ2および外筒3の一端部に装着されたロッドガイド8およびオイルシール9に挿通されて、シリンダ2および外筒3の外部へ延出されている。シリンダ2の他端部には、第2室2Bとリザーバ4とを画成するベースバルブ10が設けられている。
ピストン5には、第1室2Aおよび第2室2B間を連通させる流路11および流路12が設けられている。そして、ピストン5には、第1室2A側に、第2室2B側から第1室2A側への油液の流通のみを流路12を介して許容する第1逆止弁13が設けられ、また、第2室2B側に、第1室2A側の流体の圧力が所定圧力に達したとき開弁して、これを第2室2B側へ流路11を介してリリーフするディスクバルブ14が設けられている。
ベースバルブ10には、第2室2Bとリザーバ4とを連通させる流路15および流路16が設けられている。そして、ベースバルブ10には、第2室2B側に、リザーバ4側から第2室2B側への油液の流通のみを流路15を介して許容する第2逆止弁17が設けられ、また、リザーバ4側に、第2室2B側の流体の圧力が所定圧力に達したとき開弁して、これをリザーバ4側へ流路16を介してリリーフするディスクバルブ18が設けられている。
シリンダ2には、セパレータチューブ20が軸方向の両端部のシール部材19を介して外嵌されており、シリンダ2とセパレータチューブ20との間に環状流路21が形成されている。環状流路21は、シリンダ2に設けられた流路22によって第1室2Aに連通している。セパレータチューブ20の軸方向のロッドガイド8とは反対側には、側方に突出して開口する筒状の接続部材23が取り付けられている。また、外筒3の側壁には、接続部材23と略同心に大径の開口24が形成され、この開口24の位置に減衰力可変機構25が取り付けられている。
次に、減衰力可変機構25について、主に図2を参照して説明する。
減衰力可変機構25は、外筒3の開口24の位置に取り付けられた筒状のケース26内に、パイロット型(背圧型)のメインバルブ27およびメインバルブ27の開弁圧力を制御するソレノイド駆動の圧力制御弁であるパイロットバルブ28が設けられている。
ケース26内には、開口24側から順に、環状の流路プレート30、凸形状の流路部材31、環状のメインバルブ部材32、凸形状のオリフィス流路部材33、中間部に底部34Aを有する有底円筒状のパイロットバルブ部材34、環状の保持部材35、環状のスペーサ35Aおよびソレノイドアクチュエータ36が挿入されている。これらは、ソレノイドアクチュエータ36をナット37によってケース26に結合することによって固定されている。
流路プレート30は、ケース26の端部に形成された内側フランジ26Aに当接して固定されている。流路プレート30には、リザーバ4とケース26内の室26Bとを連通する複数の流路38が径方向に沿って形成されている。流路部材31は、小径の先端部が開口24および流路プレート30との間に流路31aを形成するようにしてこれらを貫通し、大径部の肩部が流路プレート30に当接して固定されている。流路部材31の先端部は、セパレータチューブ20に固定された接続部材23内に嵌合し、これらの嵌合部がシール部材39によってシールされている。流路部材31内には軸方向に貫通する流路40が形成されており、この流路40が環状流路21に連通している。
メインバルブ部材32は、一端部が流路部材31の大径部に当接して固定されている。メインバルブ部材32と流路部材31との当接部はシール部材43によってシールされている。メインバルブ部材32には、軸方向に貫通する流路44が円周方向に間隔をあけて複数設けられている。流路44は、メインバルブ部材32の一端部に形成された環状凹部41を介して流路部材31の内側の流路40に連通している。メインバルブ部材32の他端部には、複数の流路44の開口部の外周側に環状のシート部45が突出し、内周側に環状のクランプ部46が突出している。
メインバルブ部材32のシート部45には、メインバルブ27を構成するディスクバルブ47の外周部が着座している。ディスクバルブ47の内周部は、クランプ部46とオリフィス流路部材33の大径部の肩部とによってクランプされている。ディスクバルブ47の背面側外周部には、環状の摺動シール部材48が固着されている。凸形状のオリフィス流路部材33は、小径部がメインバルブ部材32の中央の開口部に挿入され、大径部の肩部がディスクバルブ47に当接して固定されている。オリフィス流路部材33には、軸方向に沿って流路49が貫通し、流路49は、小径部の先端部に形成された固定オリフィス50を介して流路部材31の内側の流路40に連通している。
パイロットバルブ部材34は、中間部に底部34Aを有する略有底円筒状で、底部34Aの一端側がオリフィス流路部材33に固定されている。パイロットバルブ部材34の一端側の円筒部の内周面にディスクバルブ47の摺動シール部材48が摺動可能かつ液密的に嵌合して、ディスクバルブ47の背部にパイロット室51を形成している。ディスクバルブ47は、流路44側の圧力を受けて開弁し、流路44を下流側のケース26内の室26Bに連通させる。パイロット室51の内圧は、ディスクバルブ47に対して閉弁方向に作用する。パイロットバルブ部材34の底部34Aの中央部にポート52が貫通しており、ポート52は、オリフィス流路部材33の流路49に連通している。
オリフィス流路部材33とパイロットバルブ部材34の底部34Aとの間には、ディスク部材53がクランプされている。パイロット室51は、ディスク部材53に形成された切欠部53aによってオリフィス流路部材33の流路49に連通しており、この切欠部53aがパイロット室51に油液を導入する導入流路を構成している。
保持部材35は、その一端部がパイロットバルブ部材34の他端側の円筒部の端部に固定され、パイロットバルブ部材34の円筒部の内部に弁室54を形成している。パイロットバルブ部材34および保持部材35は、ケース26内に嵌合されたソレノイドアクチュエータ36の円筒部が外周部に嵌合して径方向に位置決めされている。弁室54は、保持部材35を軸方向に貫通する流路55およびスペーサ35Aに形成された切欠部35aおよび保持部材35の外周部に形成された切欠部56およびパイロットバルブ部材34の外周部に形成された切欠部57を介してケース26内の室26Bに連通している。弁室54内には、パイロット室51をメインバルブ27の下流側に連通するパイロット流路を構成するポート52を開閉する圧力制御弁であるパイロットバルブ28の弁体58が設けられている。
ソレノイドアクチュエータ36は、その作動ロッド63の先端部が弁室54内の弁体58に連結されている。ソレノイドアクチュエータ36は、通電されることにより、通電電流に応じて作動ロッド63つまり弁体58に軸方向の推力を発生させるようになっている。
弁体58は、パイロットバルブ部材34のポート52に対向するテーパ状の先端部に環状のシート部65が形成され、シート部65がポート52の周囲のシート面66に離着座することにより、ポート52を開閉するようになっている。そして、弁体58は、弁体58とパイロットバルブ部材34の底部34Aとの間に介装されたバルブスプリング67のバネ力によって付勢されて、通常は、保持部材35側の後退位置にあって開弁状態となっており、ソレノイドアクチュエータ36への通電による作動ロッド63の推力によってバルブスプリング67のバネ力に抗して前進し、シート部65がシート面66に着座してポート52を閉じ、作動ロッド63の推力、すなわち、ソレノイドアクチュエータ36への通電電流によって開弁圧力を調整することにより、ポート52すなわちパイロット室51の内圧を制御する。
図1に示す流路22および環状流路21と、図3に示す減衰力可変機構25内に設けられた流路40、流路44、室26B、流路38および流路31aとが、図1に示す第1室2Aとリザーバ4とを接続する流路(第1流路)68を構成しており、減衰力可変機構25はこの流路68に設けられている。
以上の基本構成の緩衝器1は、車両のサスペンション装置のバネ上バネ下間に装着され、ソレノイドアクチュエータ36が車載コントローラ等に接続され、通常の作動状態では、ソレノイドアクチュエータ36が通電されて、作動ロッド63が弁体58のシート部65をシート面66に着座させて、パイロットバルブ28による圧力制御を実行する。
ピストンロッド6の伸び行程時には、シリンダ2内のピストン5の移動によって、ピストン5の第1逆止弁13が閉じ、ディスクバルブ14の開弁前には、第1室2A側の油液が加圧されて、流路22および環状流路21を通り、セパレータチューブ20の接続部材23から減衰力可変機構25の流路部材31の流路40へ流入する。
このとき、ピストン5が移動した分の油液がリザーバ4からベースバルブ10の第2逆止弁17を開いて第2室2Bへ流入する。なお、第1室2Aの圧力がピストン5のディスクバルブ14の開弁圧力に達すると、ディスクバルブ14が開いて、第1室2Aの圧力を第2室2Bへリリーフすることにより、第1室2Aの過度の圧力の上昇を防止する。
図2に示す減衰力可変機構25では、流路部材31の流路40から流入した油液は、メインバルブ27のディスクバルブ47の開弁前(ピストン速度低速域)においては、オリフィス流路部材33の固定オリフィス50、流路49およびパイロットバルブ部材34のポート52を通り、パイロットバルブ28の弁体58を押し開いて弁室54内へ流入する。さらに、保持部材35の流路55、スペーサ35Aの切欠部35a、保持部材35の切欠部56、パイロットバルブ部材34の切欠部57、ケース26内の室26Bおよび流路プレート30の流路38を通ってリザーバ4へ流れる。そして、ピストン速度が上昇して第1室2A側の圧力がディスクバルブ47の開弁圧力に達すると、流路40に流入した油液は、環状凹部41および流路44を通り、ディスクバルブ47を押し開いてケース26内の室26Bへ直接流れる。
ピストンロッド6の縮み行程時には、シリンダ2内のピストン5の移動によって、ピストン5の第1逆止弁13が開き、ベースバルブ10の流路15の第2逆止弁17が閉じて、ディスクバルブ18の開弁前には、第2室2Bの油液が第1室2Aへ流入し、ピストンロッド6がシリンダ2内に侵入した分の流体が第1室2Aから、上記伸び行程時と同様の経路を通ってリザーバ4へ流れる。なお、第2室2B内の圧力がベースバルブ10のディスクバルブ18の開弁圧力に達すると、ディスクバルブ18が開いて、第2室2Bの圧力をリザーバ4へリリーフすることにより、第2室2Bの過度の圧力の上昇を防止する。
これにより、ピストンロッド6の伸縮行程時共に、減衰力可変機構25において、メインバルブ27のディスクバルブ47の開弁前(ピストン速度低速域)においては、固定オリフィス50およびパイロットバルブ28の弁体58の開弁圧力によって減衰力が発生し、ディスクバルブ47の開弁後(ピストン速度高速域)においては、その開度に応じて減衰力が発生する。そして、ソレノイドアクチュエータ36のコイルへの通電電流によってパイロットバルブ28の開弁圧力を調整することにより、ピストン速度にかかわらず、減衰力を直接制御することができる。このとき、パイロットバルブ28の開弁圧力によって、その上流側の流路49に連通するパイロット室51の内圧が変化し、パイロット室51の内圧は、ディスクバルブ47の閉弁方向に作用するので、パイロットバルブ28の開弁圧力を制御することにより、ディスクバルブ47の開弁圧力を同時に調整することができ、これにより、減衰力特性の調整範囲を広くすることができる。
また、ソレノイドアクチュエータ36のコイルへの通電電流を小さくして、作動ロッド63の推力を小さくすると、パイロットバルブ28の開弁圧力が低下して、ソフト側の減衰力が発生し、通電電流を大きくして、作動ロッド63の推力を大きくすると、パイロットバルブ28の開弁圧力が上昇して、ハード側の減衰力が発生するので、一般的に使用頻度の高いソフト側の減衰力を低電流で発生させることができ、消費電力を低減することができる。
第1実施形態においては、図3に示すように、ロッドガイド8に周波数感応機構81が設けられている。以下、この周波数感応機構81について説明する。
ロッドガイド8は、ケース部材82と、ケース部材82の軸方向の第1室2A側に嵌合する蓋部材83とからなっている。ケース部材82は、軸方向の第1室2A側に形成された小径筒状部85と、この小径筒状部85の第1室2Aとは反対側にあって小径筒状部85よりも大径の大径筒状部86とを有しており、大径筒状部86の小径筒状部85とは反対側で最も大径となる最大外径部87において外筒3内に嵌合する。
大径筒状部86には、軸方向の小径筒状部85側に円環状の環状溝90が形成されており、軸方向の小径筒状部85とは反対側に小径の外壁面および大径の内壁面が環状溝90とそれぞれ同径をなす円環状の収容室91が形成されている。これら環状溝90と収容室91との間には、小径の外壁面がこれらの外壁面よりも大径で、大径の内壁面がこれらの内壁面よりも小径の中間溝92が形成されている。大径筒状部86には、収容室91をリザーバ4に常時連通させる連通路93が形成されている。小径筒状部85の外周側には、軸方向に延びる軸方向溝99が形成されている。
蓋部材83は、筒状部97と、筒状部97の軸方向の一端側から径方向に広がるフランジ部98とを有している。フランジ部98には、筒状部97とは反対側に、軸方向に凹む円環状の環状溝101が形成されており、環状溝101の内周側にオリフィス102が形成されている。蓋部材83は、フランジ部98を大径筒状部86に当接させるようにケース部材82の小径筒状部85に嵌合させられることになり、この状態で、軸方向溝99と環状溝101とがオリフィス102を介して連通する。ロッドガイド8は、蓋部材83の筒状部97においてシリンダ2に嵌合する。
ケース部材82の環状溝90および中間溝92には、フリーピストン105が軸方向移動可能に嵌合されている。フリーピストン105は、図4に示すように、円環状の頭部106と、この頭部106よりも小径の外径と大径の内径とを有して軸方向に突出する円環状の突出部107とを有している。頭部106には、軸方向における突出部107とは反対側に円環状の環状溝108が形成されており、この環状溝108の底面と頭部106の突出部107側の内外端面とを連通させる複数の連通穴109が形成されている。
図3に示すように、フリーピストン105は、突出部107において中間溝92に、頭部106において環状溝90に嵌合される。ケース部材82の環状溝90の底面とフリーピストン105の頭部106との間には、突出部107よりも径方向外側に大径のOリング111が、突出部107よりも径方向内側に小径のOリング112が介装されている。これらOリング111,112は、環状溝90とフリーピストン105の突出部107との隙間を密閉する。
ケース部材82の軸方向溝99と蓋部材83との間は、第1室2Aに常時連通する流路114となり、ケース部材82の環状溝90と蓋部材83の環状溝101とフリーピストン105とOリング111,112とで、流路114およびオリフィス102を介して第1室2Aに連通する圧力室115が形成されている。よって、Oリング111,112は、この圧力室115と収容室91とを密に区画している。
そして、流路114、オリフィス102、圧力室115、収容室91および連通路93は、第1室2Aとリザーバ4との間に設けられて、図1に示す流路68と並列に第1室2Aに連通される流路(第2流路)116を構成している。そして、図3に示すように、この流路116に、第1室2Aに連通する圧力室115と、軸方向に移動することで圧力室115の容積を可変にするフリーピストン105とが設けられている。フリーピストン105は、蓋部材83に当接する位置では圧力室115を最も狭くしており、蓋部材83から軸方向に離れるほど圧力室115を広くする。
フリーピストン105は、中間溝92に嵌合する突出部107が収容室91内に突出しており、この収容室91内には、突出部107つまりフリーピストン105を蓋部材83に当接するように押圧するウェーブワッシャ(抑制手段)120が、隣り合うもの同士の間に平坦なワッシャ121を配置するようにして複数枚(具体的には三枚)収容されている。よって、ウェーブワッシャ120は、流路116の収容室91に設けられて、圧力室115の容積を拡大する方向への移動を抑制する方向にフリーピストン105を押圧する。
このような構成の周波数感応機構81は、伸び行程および縮み行程の両工程において、ピストン5の移動により第1室2Aの圧力が高くなると、フリーピストン105がウェーブワッシャ120の付勢力に抗して移動して圧力室115の容積を大きくすることになり、これにより、第1室2Aの容積を拡大して減衰力可変機構25に流れる油液の流量を減らして減衰力を弱める。フリーピストン105は、最終的に弾性材料からなるOリング111,112に当接し、その付勢力に抗して可能な範囲で移動した後、停止する。Oリング111,112は、フリーピストン105の環状溝90の底面への当接を防止する。
次に、上記周波数感応機構81の動作原理について説明する。
図5は緩衝器1への入力が低周波数の場合(ピストン速度0.05m/s、周波数1Hz)の解析結果を示すものである。
縮み行程s1〜s4において、まず、減衰力がピストン変位に応じて変化し始める。区間s1では、減衰力が所定値Ffより低く、フリーピストン105は移動しない。減衰力が所定値Ffを超える区間s2では、フリーピストン105がウェーブワッシャ120の付勢力に抗して移動して圧力室115の容積を最大にするように拡大する。その結果、第1室2Aの容積が増加して減衰力の増加がなくなる。区間s3では、フリーピストン105が圧力室115の容積を最大としたままであり、減衰力は増加する。区間s4では、減衰力が弱まることに伴い、フリーピストン105がウェーブワッシャ120の付勢力で戻され圧力室115の容積を最小とする。なお、伸び行程も同様の動作を行う。なお、区間s3の結果から、低周波域の減衰力ピーク値は、周波数感応機構81がない場合と変わらないことがわかる。
図6は緩衝器1への入力が高周波数の場合(ピストン速度0.05m/s、周波数20Hz)の解析結果を示すものである。
縮み行程s11〜において、まず、減衰力がピストン変位に応じて変化し始める。区間s11は、減衰力が所定値Ffより低く、フリーピストン105は移動しない。減衰力が所定値Ffを超える区間s12では、フリーピストン105がウェーブワッシャ120の付勢力に抗して移動して圧力室115の容積を拡大する。その結果、第1室2Aの容積が増加するため、減衰力の増加がなくなる。区間s13では、減衰力が弱まることに伴い、フリーピストン105がウェーブワッシャ120の付勢力でわずかに戻される。区間s14では、縮み行程から伸び行程に切り替わり、フリーピストン105が再び圧力室115の容積を拡大する。その結果、減衰力の増加がなくなる。区間s15では、減衰力が弱まることに伴い、フリーピストン105がウェーブワッシャ120の付勢力で戻され圧力室115の容積を最小とする。なお、区間s12および区間s14の結果から、高周波域の減衰力ピーク値は、周波数感応機構81がない場合に対して低下することがわかる。つまり、図5に示す低周波域での減衰力のピーク値に対して、図6に示す高周波域での減衰力のピーク値が低減される特性となる。
図7は、第1実施形態の緩衝器1におけるピストン5およびピストンロッド6の変位に対する減衰力の関係を示すリサージュ波形である。第1実施形態の緩衝器1の波形は実線であり、比較のため、従来の周波数感応機構を設けた緩衝器の波形を破線で、周波数感応機構のない緩衝器の波形を二点鎖線で示す。従来の周波数感応機構を設けた緩衝器の場合、行程反転直後に減衰力が抜けるため、搭載車両の操縦安定性が悪化する。これに対して、第1実施形態の緩衝器では、ウェーブワッシャ120によりセット荷重がかけられているため、フリーピストン105を動かすためには、所定の減衰力Ffを超える必要がある。その結果、行程反転直後に減衰力が抜けない。よって、搭載車両の操縦安定性を向上できる。
なお、オリフィス102の面積を大きくすると、減衰力の低減効果が増大する。また、フリーピストン105のストロークを拡大するとカットオフ周波数が低くなる。
以上に述べた第1実施形態の緩衝器1は、第1室2Aとリザーバ4との間に、減衰力可変機構25が設けられた流路68と並列に第1室2Aに連通される流路116を設け、流路116には、第1室2Aに連通する圧力室115と、ピストン5の移動により圧力室115の容積を可変にするよう移動するフリーピストン105と、フリーピストン105の移動を抑制するウェーブワッシャ120とを備える構成とした。このため、伸び行程および縮み行程のいずれにおいても第1室2Aの圧力が上昇するユニフロー式の緩衝器において、伸び行程および縮み行程の両方で一つの周波数感応機構81が、フリーピストン105を移動させて圧力室115の容積を拡大させることできる。したがって、一つの周波数感応機構81で伸び行程および縮み行程の両方の減衰力を周波数に感応させることができるため、低コスト化を図ることができ、また、シリンダ長の長大化を抑制することができる。
具体的に、ユニフロー式の緩衝器においては、縮み行程から伸び行程への行程反転時において第1室2Aに残留圧力が残り、よって、ウェーブワッシャ120がなければフリーピストン105を圧力室115を狭くする方向に戻すことができない。このため、縮み行程から伸び行程への行程反転時に圧力室115を拡大する動作ができず、周波数感応効果が得られない。これに対し、ウェーブワッシャ120があることから、縮み行程から伸び行程への行程反転時において第1室2Aに残留圧力があってもフリーピストン105を圧力室115を狭くする方向に戻すことができるため、縮み行程から伸び行程への行程反転時に圧力室115を拡大する動作ができ、周波数感応効果が得られる。さらに、第1室2Aに残留圧力がある場合の対策として、ウェーブワッシャ120のばね定数を高くし、フリーピストン105にセット荷重を与えるようにすることで、フリーピストン105のストローク量を仮想的に拡大することができる。
なお、第1実施形態において、フリーピストン105を付勢する部材として、上記したウェーブワッシャ120にかえて、図8に示すように複数枚のテーパ状の皿バネ(抑制手段)123を隣り合うもの同士を反対向きにして設けても良い。この場合、フリーピストン105に平坦なワッシャ121を当接させて、このワッシャ121に皿バネ123を当接させるのが良い。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図9に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第2実施形態においては、図示は略すがロッドガイド8に周波数感応機構81は設けられておらず、減衰力可変機構25内に周波数感応機構81Aが設けられている。周波数感応機構81Aは、流路部材31とメインバルブ部材32との間に設けられるケース125Aを有しており、このケース125Aは、流路部材31側に配置されるケース部材82Aと、メインバルブ部材32側に配置される蓋部材83Aとからなっている。
ケース部材82Aには、径方向の中央に、流路部材31の流路40と、メインバルブ部材32の流路44およびオリフィス流路部材33の固定オリフィス50とを連通させる流路128Aが形成されている。この流路128Aは、流路68の一部を構成する。ケース部材82Aには、軸方向の蓋部材83A側に円環状の環状溝90Aが形成されており、軸方向の蓋部材83Aとは反対側には、小径の外壁面および大径の内壁面が環状溝90Aとそれぞれ同径をなす円環状の収容室91Aが形成されている。これら環状溝90Aと収容室91Aとの間には、小径の外壁面がこれらの外壁面よりも大径で、大径の内壁面がこれらの内壁面よりも小径の中間溝92Aが形成されている。収容室91Aは、連通路93Aにより室26Bつまりリザーバ4に常時連通している。
蓋部材83Aには、ケース26内に嵌合するとともにケース部材82Aを内側に嵌合させる嵌合突起129Aが周方向に間隔をあけて複数形成されており、隣り合う嵌合突起129Aおよび嵌合突起129Aの間は、室26Bを構成している。蓋部材83Aには、軸方向のケース部材82A側に円環状の環状溝101Aが形成されており、環状溝101Aの底面の位置に、メインバルブ部材32の環状凹部41内に開口するようにオリフィス102Aが形成されている。
ケース部材82Aの環状溝90Aおよび中間溝92Aに、第1実施形態と同様のフリーピストン105が頭部106および突出部107において軸方向移動可能に嵌合されている。また、ケース部材82Aの環状溝90Aの底面とフリーピストン105の頭部106との間には、第1実施形態と同様のOリング111,112が、環状溝90Aとフリーピストン105の突出部107との隙間を密閉するように設けられている。
ケース部材82Aの環状溝90Aと蓋部材83Aの環状溝101Aとフリーピストン105とOリング111,112とで、オリフィス102A、流路128A、流路40および環状流路21を介して第1室2A(図9では図示略)に連通する圧力室115Aが形成されている。
そして、オリフィス102A、圧力室115A、収容室91Aおよび連通路93Aは、第1室2Aとリザーバ4との間に設けられて、流路68と並列に第1室2Aに連通される流路(第2流路)116Aを構成している。そして、この流路116Aに、第1室2Aに連通する圧力室115Aと、軸方向に移動することで圧力室115Aの容積を可変にするフリーピストン105とが設けられている。フリーピストン105は、蓋部材83Aに当接する位置では圧力室115Aを最も狭くしており、蓋部材83Aから軸方向に離れるほど圧力室115Aを広くする。
フリーピストン105は、中間溝92Aに嵌合する突出部107が収容室91A内に突出しており、流路116Aのこの収容室91A内には、突出部107つまりフリーピストン105を蓋部材83Aに当接するように押圧して、その圧力室115Aを拡大する方向の移動を抑制するコイルバネ(抑制手段)120Aが収容されている。コイルバネ120Aは、縦断面が矩形状をなす角バネである。
このような構成の周波数感応機構81Aは、ピストン5の移動により第1室2Aの圧力が高くなると、フリーピストン105がコイルバネ120Aの付勢力に抗して移動して圧力室115Aの容積を大きくすることになり、これにより、第1実施形態と同様に、第1室2Aの容積を拡大する。
以上の第2実施形態によれば、周波数感応機構81Aを減衰力可変機構25内に設けるため、シリンダ長が長大化することがなく、また、周波数感応機構81Aが比較的容易に設置できる。また、コイルバネ120Aを用いるため、低コスト化が図れる。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図10に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第3実施形態においては、図示は略すがロッドガイド8に周波数感応機構81は設けられておらず、減衰力可変機構25内に周波数感応機構81Bが設けられている。周波数感応機構81Bは、流路部材31とメインバルブ部材32との間に設けられるケース125Bを有しており、このケース125Bは、流路部材31側に配置される流路部材142Bと、メインバルブ部材32側に配置されるケース部材82Bと、ケース部材82Bに固定される蓋部材83Bとからなっている。
ケース部材82Bには、径方向の中央に、流路部材142B側に開口する収容室91Bが形成されており、その径方向外側には、円環状の流路部材142Bの内側の流路142aを介して、流路部材31の流路40と、メインバルブ部材32の流路44およびオリフィス流路部材33の固定オリフィス50とを連通させる流路128Bが形成されている。この流路128Bは、流路68を構成する。
蓋部材83Bは、ケース部材82Bの収容室91Bの流路部材142B側の端部に固定されており、径方向の中央に軸方向に貫通するオリフィス102Bが形成されている。
流路部材142Bには、ケース26内に嵌合するとともにケース部材82Bを内側に嵌合させる嵌合突起146Bが周方向に間隔をあけて複数形成されている。隣り合う嵌合突起146Bおよび嵌合突起146Bの間は、室26Bを構成している。
ケース部材82Bの収容室91Bは、流路部材142Bとは反対側が小径穴部91aとなっており、流路部材142Bがこれより大径の大径穴部91bとなっている。このケース部材82Bの収容室91Bに、フリーピストン105Bが軸方向移動可能に嵌合されている。フリーピストン105Bは、段差円環状の頭部106Bと、この頭部106Bの内周側から軸方向外方に突出する有底円筒状の突出部107Bとを有している。頭部106Bには、軸方向における突出部107Bとは反対側に円環状の環状溝108Bが形成されており、この環状溝108Bの底面と頭部106Bの突出部107B側の端面とを連通させる複数の連通穴109Bが形成されている。フリーピストン105は頭部106Bにおいて大径穴部91bに、突出部107Bにおいて小径穴部91aに嵌合される。大径穴部91bとフリーピストン105Bとの間には、Oリング111Bが介装されている。このOリング111Bは、収容室91Bの大径穴部91bとフリーピストン105Bとの隙間を密閉する。収容室91Bは、連通路93Bにより室26Bつまりリザーバ4に常時連通している。
蓋部材83Bはフリーピストン105Bの収容室91Bからの抜けを規制するものであり、この蓋部材83Bとフリーピストン105Bとケース部材82Bの大径穴部91bとOリング111Bとで、オリフィス102B、流路40および環状流路21を介して第1室2A(図10では図示略)に連通する圧力室115Bが形成されている。
そして、オリフィス102B、圧力室115Bを含む収容室91Bおよび連通路93Bは、第1室2Aとリザーバ4との間に設けられて、流路68と並列に第1室2Aに連通される流路(第2流路)116Bを構成している。そして、この流路116Bに、第1室2Aに連通する圧力室115Bと、軸方向に移動することで圧力室115Bの容積を可変にするフリーピストン105Bとが設けられている。フリーピストン105Bは、蓋部材83Bに当接する位置では圧力室115Bを最も狭くしており、蓋部材83Bから軸方向に離れるほど圧力室115Bを広くする。
流路116Bを構成する収容室91Bの底部とフリーピストン105Bとの間には、フリーピストン105Bを蓋部材83Bに当接するように押圧して、その圧力室115Bを拡大する方向の移動を抑制するコイルバネ(抑制手段)120Bが収容されている。コイルバネ120Bは、縦断面が矩形状をなす角バネである。
このような構成の周波数感応機構81Bは、ピストン5の移動により第1室2Aの圧力が高くなると、フリーピストン105Bがコイルバネ120Bの付勢力に抗して移動して圧力室115Bの容積を大きくすることになり、これにより、第1実施形態と同様、第1室2Aの容積を拡大する。
以上の第3実施形態によれば、周波数感応機構81Bを構成するケース部材82Bおよびフリーピストン105Bの形状が簡素化でき、また、部品点数を低減できる。