以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、各図面において共通する構成要素に対しては同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
図1は、本発明に係る釣竿の一実施形態を示す図である。図示のように、本発明の一実施形態による釣竿1は、中心軸Aに沿って延伸する細長い竿体2と、竿体2にリールシート9を介して取り付けられたリールRと、竿体2に取り付けられた釣糸ガイド10と、を備える。図示の実施形態においては、リールシート9及び釣糸ガイド10の各々が、竿体の外周面に取り付けられる取付部品に該当する。
竿体2は、例えば、元竿3、中竿5、及び穂先竿7等を連結することによって構成されている。これらの各竿体は、例えば、並継ぎ式に継合される。元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、振出方式、逆並継方式、インロー方式、又はこれら以外の公知の任意の継合方式により継合され得る。竿体2は、単一の竿体から構成されていても良い。
元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、例えば、繊維強化樹脂製の管状体で構成されている。この繊維強化樹脂製の管状体は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂プリプレグ(プリプレグシート)を芯金に巻回し、このプリプレグシートを加熱して硬化させることにより作成される。このプリプレグシートに含まれる強化繊維として、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、及びこれら以外の任意の公知の強化繊維を用いることができる。当該プリプレグシートに含まれるマトリクス樹脂として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。プリプレグシートが硬化された後には、芯金が脱芯される。また、管状体の外表面は、適宜研磨される。各竿体は、中実状に構成されてもよい。
図示の実施形態において、元竿3、中竿5及び穂先竿7には、リールシート9に装着されるリールRから繰り出される釣糸を案内する複数の釣糸ガイド10(釣糸ガイド10A〜10D)が設けられている。より具体的には、元竿3には1つの釣糸ガイド10Aが設けられ、中竿5には3つの釣糸ガイド10Bが設けられ、穂先竿7には3つの釣糸ガイド10Cが設けられている。穂先竿7の先端には、トップガイド10Dが設けられている。竿体2には、任意の数の釣糸ガイド10が取り付けられる。図示の例では、トップガイド10Dも含めて8個の釣糸ガイドが竿体2に取り付けられているが、竿体2に取り付けられる釣糸ガイドの数は9個以上であってもよいし、7個以下であってもよい。
図示の実施形態において、リールシート9は、元竿3の外周面に取り付けられている。リールシート9は、リールRを取り付け可能な任意のリールシートである。
次に、図2及び図5をさらに参照して、中竿5への釣糸ガイド10Bの取付構造及びその取り付け方法について説明する。図2は、釣糸ガイド10Bの中竿5への取付方法を説明するための斜視図であり、図3は、図2の中心軸Aに沿った模式的な断面図であり、図4は、図3のI−I線に沿った模式的な断面図であり、図5は、図3のI−I線に沿った模式的な断面図である。竿体5及び釣糸ガイド10Bの上下方向及び左右方向に言及する際には、図4及び図5の上下方向及び左右方向を基準とする。
これらの図に示されているように、釣糸ガイド10Bは、中竿5の中心軸Aに沿う軸方向に延びる足10aを有しており、この足10aを介して中竿5の外周面に取り付けられている。釣糸ガイド10Bの足10aは、取付部品の取付部の例である。釣糸ガイド10Bの足10aは、断面視において、上面11aと、上面11aと対向する底面11bと、この上面11aと底面11bとを接続する側面11c,11dと、を有する。釣糸ガイド10Bは、足10aの底面11bが中竿5の外周面と接するように、中竿5に取り付けられる。足10aの底面11bは、その全部または一部が中竿5の外周面と接する。図示の実施形態においては、底面11bの曲率が中竿5の外周面の曲率とほぼ一致しているため、底面11bのほぼ全部が中竿5の外周面に接している。底面11bの曲率が中竿5の外周面の曲率と異なる場合には、底面11bの一部が中竿5の外周面に接する。足10aの底面11bが中竿5の外周面と接するため、足10aと中竿5との間には、例えば実開平2−026474号公報に記載されているような充填部材は設けられない。ただし、底面11bの曲率が中竿5の外周面の曲率と異なる場合には、後述するプリプレグシートからの樹脂フローにより、底面11bと中竿5の外周面との間に樹脂が介在することもある。
足10aは、その上面11aと側面11cとが接続される部位、及び、その上面11aと側面11cとが接続される部位においてそれぞれ切り欠かれている。図示の実施形態では、足10aの上面11aの左右端にはそれぞれ、切欠面11e及び切欠面11fが形成されている。切欠面11eは、上面11aと側面11cとを連結する面である。切欠面11fは、上面11aと側面11dとを連結する面である。上面11aは、その左端E1において切欠面11eと接続され、その右端E2において切欠面11fと接続される。図3に示されているように、上面11aの左端E1は、中心軸A周りの周方向における上面11aの一方の端に位置し、上面11aの右端E2は、当該周方向における上面11aの他方の端に位置する。上面11aの左端E1は、第1エッジの例であり、上面11aの右端E2は、第2エッジの例である。側面11cは、その上端E3において切欠面11eと接続され、側面11dは、その上端E4において切欠面11eと接続されている。
一態様において、切欠面11e及び切欠面11fの少なくとも一方は、上面11aの一部であってもよい。つまり、切欠面11e及び切欠面11fを含む領域を上面11aと呼んでもよい。この場合、側面11cの上端E3が上面11aの左端(第1エッジ)と一致し、側面11dの上端E4が上面11aの右端(第2エッジ)と一致する。
釣糸ガイド10Bの足10aの外側には、繊維強化樹脂層15と、コーティング層40と、が設けられている。本明細書における「外側」及び「内側」という用語は、文脈上別の意味に解されるべき場合を除き、中竿5の径方向における「外側」及び「内側」をそれぞれ意味する。コーティング層40は、繊維強化樹脂層を覆うように設けられる。繊維強化樹脂層15は、第1繊維強化樹脂層20と、第2繊維強化樹脂層30と、を有する。
第1繊維強化樹脂層20は、足10aを覆うように中竿5の周囲に設けられる。一実施形態において、第1繊維強化樹脂層20は、足10a及び中竿5の外表面に巻回されている。一実施形態において、第1繊維強化樹脂層20の巻回数は、釣糸ガイド10Bの確実な固定のために1プライ以上とされ、また、軽量化のために2プライ未満とされる。第2繊維強化樹脂層30は、第1繊維強化樹脂層20の外側に巻回される。一実施形態において、第2繊維強化樹脂層30の巻回数は、1プライ以上2プライ未満とされる。図示の実施形態においては、第1繊維強化樹脂層20及び第2繊維強化樹脂層30がいずれも約1.6プライ巻回されている。
一実施形態において、第1繊維強化樹脂層20の一端20aは、図3に示されているように、中心軸Aの周りの周方向において、釣糸ガイド10Bから反時計回りに90°以上180°未満の位置にあるように設けられる。図示の実施形態においては、第1繊維強化樹脂層20の一端20aは、センター部11gから周方向に反時計回りに90°+θ1a(0≦θ1a<90°)の位置にある。本明細書において、釣糸ガイド10B又はその足10aに対する角度や釣糸ガイド10Bに対する配置を説明する場合、当該角度や配置は、釣糸ガイド10Bの足10aの周方向における中央であるセンター部11gを基準として定めることができる。例えば、第1繊維強化樹脂層20の一端20aが中心軸Aの周りの周方向において釣糸ガイド10Bから反時計回りに90°以上180°未満の位置にあるという場合には、この角度は、一端20aとセンター部11gとが為す角度を意味する。
一実施形態において、第1繊維強化樹脂層20の他端20bは、中心軸Aの周りの周方向において、釣糸ガイド10Bのセンター部11gに対して、一端20aとは反対側にある。一実施形態において、第1繊維強化樹脂層20の他端20bは、釣糸ガイド10Bのセンター部11gから時計回りに90°以上180°未満の位置にある。図示の実施形態においては、第1繊維強化樹脂層20の他端20bは、センター部11gから周方向に時計回りに90°+θ1b(0≦θ1b<90°)の位置にある。
一実施形態において、第1繊維強化樹脂層20の一端20aと他端20bとは、中心軸Aの周りの周方向において、釣糸ガイド10Bの足10aに対して、互いと対称な位置に配置される。つまり、第1繊維強化樹脂層20は、一端20aと他端20bとの配置がθ1a=θ1bとなるように設けられても良い。
上記のように、第1繊維強化樹脂層20の一端20aの位置を釣糸ガイド10Bのセンター部11gから反時計回りに90°+θ1aの位置とし、他端20bの位置を当該センター部11gから時計回りに90°+θ1bの位置とすることにより、第1繊維強化樹脂層20の巻回数を、1.5プライ以上で2.0プライ未満とすることができる。
釣竿1の使用時には、釣糸から釣糸ガイド10Bに対して、当該釣糸ガイド10Bを竿体の中心軸A周りに揺動させる方向の力が作用する。この力により、足10aの底面11bの左端及び右端が中竿5の外周面から浮き上がろうとする。第1繊維強化樹脂層20の一端20aの位置を釣糸ガイド10Bのセンター部11gから反時計回りに90°+θ1aの位置とし、他端20bの位置を当該センター部11gから時計回りに90°+θ1bの位置とすることにより、釣糸からの力により足10aが浮き上がろうとするときに、第1繊維強化樹脂層20の一端20a付近の部位及び他端20b付近の部位がフックとなって、足10aの左端及び右端の浮き上がりを抑制することができる。
一実施形態において、第2繊維強化樹脂層30は、その一端30aがセンター部11gから周方向に反時計回りに90°+θ1a(0≦θ1a<90°)の位置にあり、その他端30bがセンター部11gから時計回りに90°+θ1bの位置にあるように、第1繊維強化樹脂層20の外側に設けられる。このように、図示の実施形態においては、中心軸Aの周りの周方向において、第1繊維強化樹脂層20の一端20aが第2繊維強化樹脂層30の一端30aと周方向において同じ位置にあるが、第1繊維強化樹脂層20の一端20aの周方向位置と第2繊維強化樹脂層30の一端30aの周方向位置とは互いに異なっていてもよい。同様に、図示の実施形態においては、第1繊維強化樹脂層20の他端20bが第2繊維強化樹脂層30の他端30bと同じ位置にあるが、第1繊維強化樹脂層20の他端20bの周方向位置と第2繊維強化樹脂層30の他端30bの周方向位置とは互いに異なっていてもよい。
一実施形態において、第2繊維強化樹脂層30の一端30aと他端30bとは、中心軸Aの周りの周方向において、釣糸ガイド10Bの足10aに対して、互いと対称な位置に配置される。つまり、第2繊維強化樹脂層30は、一端30aと他端30bとの配置がθ1a=θ1bとなるように設けられても良い。
一実施形態において、繊維強化樹脂層15は、中心軸Aに沿う軸方向における釣糸ガイド10Bの足10aと重複する第1位置においてN1プライだけ巻回され、中心軸Aに沿う軸方向における釣糸ガイド10Bの足10aと重複しない第2位置において前記N1プライより少なくN2プライだけ巻回されている。ここで、N1は任意の自然数であり、N2はN1より小さい任意の自然数である。例えば、図3において、I−I線は軸方向の第1位置を通過しており、II−II線は軸方向の第1位置を通過している。したがって、図4は、第1位置における釣竿1の断面を示しており、図5は第2位置における釣竿1の断面を示している。本明細書において繊維強化樹脂層15のプライ数について言及される場合には、当該プライ数は、繊維強化樹脂層15を構成する第1繊維強化樹脂層20のプライ数と第2繊維強化樹脂層30のプライ数との合計を意味することができる。図4及び図5に示されている実施形態においては、第1位置において繊維強化樹脂層15は3.2プライ(第1繊維強化樹脂層20の1.6プライ+第2繊維強化樹脂層30の1.6プライ)だけ巻回されている。他方、第2位置には、繊維強化樹脂層に関する限り第1繊維強化樹脂層20が存在せず第2繊維強化樹脂層30のみが存在しているため、繊維強化樹脂層15は、第2繊維強化樹脂層30のプライ数である1.6プライだけ巻回されている。本段落の説明から明らかなように、第1位置は、軸方向において第1繊維強化樹脂層20及び第2繊維強化樹脂層30がいずれも巻回されている位置を示し、第2位置は、軸方向において繊維強化樹脂層に関する限り第2繊維強化樹脂層30のみが巻回されている位置を示す。
以上のとおり、釣糸ガイド10Bは、第1繊維強化樹脂層20及び第2繊維強化樹脂層30により、足10aを介して中竿5の外周面に取り付けられている。図4及び図5においては、各部材の見やすさのために、第1繊維強化樹脂層20と中竿5の外表面との間、及び、第1繊維強化樹脂層20と第2繊維強化樹脂層30との間に隙間があるように各部材が描かれているが、実際には、第1繊維強化樹脂層20は中竿5の外表面に密着しており、また、第1繊維強化樹脂層20と第2繊維強化樹脂層30とも互いに密着している。
コーティング層40は、第2の固定層30の外側に、当該第2の固定層30を覆うように設けられた樹脂製のコーティング膜である。コーティング層40は、図示のように、第2の固定層30の全体を覆うように設けられてもよい。図4及び図5においては、便宜上、コーティング層40の図示を省略している。
コーティング層40は、例えば、エポキシ、ウレタン、アクリル、又はUV硬化性樹脂(例えば、ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、エポキシアクリレート)等の様々な樹脂材料から形成される。コーティング層40の材料は、本明細書で例示したものに限られず、様々な樹脂をその材料として用いることができる。コーティング層40は、透明であってもよく着色されていてもよい。
図4及び図5に示されているように、足10aの側面11cと、中竿5の外周面と、第1繊維強化樹脂層20の内周面と、により、ギャップG1が画定される。また、足10aの側面11dと、中竿5の外周面と、第1繊維強化樹脂層20の内周面と、により、ギャップG2が画定される。後述する第1シート20sが加熱される際に、当該第1シート20sに含まれるマトリクス樹脂が流動してギャップG1及びギャップG2に流れ込む。よって、ギャップG1及びギャップG2の少なくとも一部は、第1シート20sに含まれるマトリクス樹脂に由来する樹脂21により充填されている。
続いて、釣糸ガイドB10を中竿5へ取り付ける方法の一例を説明する。釣糸ガイドB10を中竿5へ取り付ける際には、まず、竿体5、釣糸ガイド10B、第1シート20s、及び第2シート30sを準備する。
竿体5は、上述したように、芯金に巻回されたプリプレグシートを加熱して硬化させることにより作成される。
釣糸ガイド10Bとしては、任意の固定ガイドを用いることができる。釣糸ガイド10Bは、図示されているシングルフットタイプのものでもよいし、ダブルフットタイプのものでもよい。
第1シート20sは、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させたプリプレグシートである。第1シート20sは、第1プリプレグシートの例であり、第1シート20sに含まれる強化繊維は第1強化繊維の例であり、第1シート20sに含まれるマトリクス樹脂は、第1マトリクス樹脂の例である。
第1シート20sに含まれる強化繊維は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、又は有機繊維である。この有機繊維は、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、及び、ポリエステルからなる群より選択される一または複数の繊維である。実施形態において、第1シート20sは、第1シート20sが中竿5に巻回されたときに、その強化繊維が中心軸Aの軸方向に対して、0°より大きく90°より小さな配向角度を為して延伸するように構成される。配向角度は、例えば、20°〜70°の間の角度となるように決定される。一実施形態における配向角度は、45°である。第1シート20sに含まれる強化繊維は、当該配向角度で一方向に配向された一軸シートであってもよい。第1シート20sは、経糸と緯糸とを平織した平織状のシートであってもよい。第1シート20sが平織状のシートである場合には、経糸及び緯糸がそれぞれ軸方向に対して上記の所定の配向角度を為すように中竿5に巻回される。
第1シート20sに含まれるマトリクス樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、加熱すると化学反応により不可逆的に硬化する樹脂をいう。第1シート20s用のマトリクス樹脂として用いることが可能な熱硬化性樹脂としては、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂及びウレタン樹脂がある。
第1シート20sの厚さは、例えば、20μm〜300μmである。第1シート20sとして、適切な市販品を用いることができる。
第1シート20sに含まれるマトリクス樹脂の樹脂含有率は、第1シート20s中の強化繊維の質量とマトリクス樹脂の質量の合計を100wt%としたときに、例えば、20wt%以上40wt%以下とされる。
第2シート30sは、例えば、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させたプリプレグシートである。第2シート30sは、第2プリプレグシートの例であり、第2シート30sに含まれる強化繊維は第2強化繊維の例であり、第2シート30sに含まれるマトリクス樹脂は、第2マトリクス樹脂の例である。
第2シート30sに含まれる強化繊維には、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、又は有機繊維が含まれる。第2シート30sは、第2シート30sが中竿5に巻回されたときに、その強化繊維が中心軸Aの軸方向に対して、0°より大きく90°より小さな配向角度を為して延伸するように構成される。配向角度は、例えば、20°〜70°の間の角度となるように決定される。一実施形態における配向角度は、45°である。第2シート30sに含まれる強化繊維は、当該配向角度で一方向に配向された一軸シートであってもよい。第2シート30sは、経糸と緯糸とを平織した平織状のシートであってもよい。第2シート30sが平織状のシートである場合には、経糸及び緯糸がそれぞれ軸方向に対して上記の所定の配向角度を為すように中竿5に巻回される。第2シート30sに含まれるマトリクス樹脂には、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂及びウレタン樹脂が含まれる。
本発明の一実施形態において、第1シート20sのマトリクス樹脂は、第2シート30sのマトリクス樹脂よりも硬化温度が高くてもよい。例えば、第2シート30sのマトリクス樹脂として80℃硬化タイプのエポキシ樹脂が用いられる場合には、第1シート20sのマトリクス樹脂として、120℃硬化タイプのエポキシ樹脂を用いることができる。
第2シート30sの厚さは、例えば、20μm〜300μmであってもよい。第2シート30sとして、適切な市販品を用いることができる。
第2シート30sに含まれるマトリクス樹脂の樹脂含有率は、第2シート30s中の強化繊維の質量とマトリクス樹脂の質量の合計を100wt%としたとき、例えば、20wt%〜40wt%とされる。
第1シート20s又は第2シート30sに含まれるマトリクス樹脂は、熱硬化性樹脂を主成分として含む組成物である。この樹脂組成物には、公知の添加剤を含んでよい。当該樹脂組成物が熱硬化性樹脂と添加剤とを含む場合、当該樹脂組成物の全質量を100%としたときに、この全質量に占める熱硬化性樹脂の質量の割合は、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上とされる。
竿体5へ釣糸ガイド10Bへ取り付けるためには、図2に示されているように、中竿5の外周面に釣糸ガイド10Bの足10aを載置する。次いで、当該中竿5の外周面に第1シート20sの一端を載置し、中竿5の外周面を囲むように第1シート20sを所定プライ数分巻回する。第1シート20sは、中心軸Aに沿う軸方向における長さがL1となるように裁断されている。一実施形態においては、第1シート20sは、図4に示されているように、センター部11gから反時計回りに90°+θ1aの位置から巻き始められ、センター部11gから時計回りに90°+θ1bの位置で巻き終えられる。この巻き始め及び巻き終わりの位置は適宜調整される。これにより、足10aは、竿体5とともに、第1シート20sによって覆われる。中竿5に第1シート20sが巻回されると、足10aの左側にギャップG1に対応する空隙が生じ、足10aの右側にギャップG2に対応する空隙が生じる。
次に、竿体5に巻回された第1シート20sの外側に、第2シート30sを巻回して巻回体を得る。第2シート30sは、中心軸Aに沿う軸方向における長さがL2となるように裁断されている。L2はL1よりも長いため、第2シート30sは、第1シート20sの後端よりも中心軸に沿った後ろ側まで延伸するように配置される。第2シート30sは、第1シート20sを覆うように、竿体5の周囲に所定プライ数分巻回される。第2シート30sは、図3に示されているように、センター部11gから反時計回りに90°+θ1aの位置から巻き始められ、センター部11gから時計回りに90°+θ1bの位置で巻き終えられる。
第1シート20s及び第2シート30sの巻回数は、本明細書で明記されたものに限られない。第1シート20s及び第2シート30sは、任意のプライ数だけ巻回される。例えば、第1シート20s及び第2シート30sは、2プライ以上巻回されてもよい。
次に、竿体5の周囲に第1シート20s及び第2シート30sが巻回されている巻回体を加熱することで、第1シート20sに含まれるマトリクス樹脂が流動し、その後硬化することで第1繊維強化樹脂層20が形成され、第2シート30sに含まれるマトリクス樹脂が流動し、その後硬化することで第2繊維強化樹脂層30が形成される。この第1繊維強化樹脂層20及び第2繊維強化樹脂層30によって釣糸ガイド10Bが竿体5に固定される。
巻回体は、所定時間の加熱後に加熱炉から取り出され、室温で所定時間冷却される。当該巻回体が十分に冷却された後、当該巻回体に形成された第2繊維強化樹脂層30を覆うように、耐候性を向上させるための又は装飾性を高めるためのコーティング層が形成されてもよい。
上記巻回体の加熱は、公知の加熱炉を用いて行うことができる。例えば、所定の温度に保たれた加熱炉に所定時間当該巻回体を入れることにより、第1シート20s及び第2シート30sに含まれるマトリクス樹脂の硬化に必要な加熱が行われる。加熱炉の温度は、例えば、70〜170℃、80〜160℃、85〜150℃、又は90〜120℃とされるが、マトリクス樹脂の硬化温度に応じてこれら以外の温度で加熱を行ってもよい。巻回体の加熱炉における加熱時間は、例えば、5分〜3時間、15分〜2.5時間、又は30分〜2時間とされるが、これら以外の加熱時間だけ巻回体を加熱してもよい。巻回体の加熱時には、中竿5に巻回されている第1シート20s及び第2シート30sが加熱時に移動しないように、当該巻回体の周囲に緊締テープが巻回されてもよい。
第1シート30sに含まれるマトリクス樹脂の硬化温度が第2シート30sに含まれるマトリクス樹脂の硬化温度より低い場合には、内側の第1シート20sのマトリクス樹脂が先に硬化し、その後、硬化温度がより高い外側の第2シート30sのマトリクス樹脂が硬化する。次に、第1シート20s及び第2シート30sが硬化して得られた繊維強化樹脂層を覆うように、エポキシ樹脂が塗布され、この塗布したエポキシ樹脂を乾燥させることによりコーティング層40が形成される。以上のようにして、中竿5に釣糸ガイド10Bが取り付けられる。
次に、図6を参照して、本発明の別の実施形態による釣竿について説明する。図6の実施形態においては、繊維強化樹脂層15に代えて繊維強化樹脂層50が設けられている。繊維強化樹脂層50は、プリプレグシートである第3シート50sを釣糸ガイド10Bの足10a及び中竿5に巻回し、この巻回された第3シート50sを硬化させることにより形成される。
第3シート51sは、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させたプリプレグシートである。第3シート51sに含まれる強化繊維は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、又は有機繊維である。第3シート51sは、第3シート51sが中竿5に巻回されたときに、その強化繊維が中心軸Aの軸方向に対して、0°より大きく90°より小さな配向角度を為して延伸するように構成される。配向角度は、例えば、20°〜70°の間の角度となるように決定される。一実施形態における配向角度は、45°である。第3シート51sに含まれる強化繊維は、当該配向角度で一方向に配向された一軸シートであってもよい。第3シート51sは、経糸と緯糸とを平織した平織状のシートであってもよい。第3シート51sが平織状のシートである場合には、経糸及び緯糸がそれぞれ軸方向に対して上記の所定の配向角度を為すように中竿5に巻回される。
繊維強化樹脂層50は、釣糸ガイド10Bの足10aを覆うように中竿5の周囲に巻回される第1の部分51と、第1の部分51から軸方向の後方に延伸する第2の部分と、を有する。繊維強化樹脂層50は、第1の部分51が中竿5の周囲にN1プライだけ巻回され、第2の部分52が中竿5の周囲にN2プライだけ巻回されるように構成される。
続いて、第3シート50sを使用して、中竿5へ釣糸ガイド10Bを取り付ける方法について説明する。まず、図6に示されているように、中竿5の外周面に釣糸ガイド10Bの足10aを載置する。次いで、当該中竿5の外周面に第3シート50sの一端を載置し、中竿5の外周面を囲むように第3シート50sを所定プライ数分巻回する。第3シート50sは、長方形形状に形成され、中心軸Aに沿う軸方向における長さがL1である第1シート部51sと、長方形形状に形成され、当該第1シート部51sと軸方向において連続する第2シート部52sと、を有する。図6において、第1シート部51sと第2シート部52sとの境界は一点鎖線の仮想線で示されている。第3シート50sは、第1シート部51sが中竿5の周囲にN1プライだけ巻回される幅を有し、第2シート部52sが中竿5の周囲にN2プライだけ巻回される幅を有するように裁断されている。
次に、竿体5の周囲に第3シート50sが巻回されている巻回体を加熱することで、第3シート50sに含まれるマトリクス樹脂が硬化することで繊維強化樹脂層50が形成される。第3シート50sのうち第1シート部51sが第1の部分51となり、第2シート部52sが第2の部分52となる。この繊維強化樹脂層50によって釣糸ガイド10Bが竿体5に固定される。
上記の実施形態が奏する効果について説明する。繊維強化樹脂層15の一端と他端とが、中心軸A周りの周方向において、釣糸ガイド10Bの足10aに対して対称に設けられている。具体的には、繊維強化樹脂層15を構成する第1繊維強化樹脂層20の一端20aと他端20bとが、中心軸A周りの周方向において、釣糸ガイド10Bの足10aに対して対称に設けられている。これに加えて、または、これに代えて、繊維強化樹脂層15を構成する第2繊維強化樹脂層30の一端30aと他端30bとが、中心軸A周りの周方向において、釣糸ガイド10Bの足10aに対して対称に設けられている。これにより、釣糸ガイド10Bを竿体5に安定的に支持することができる。例えば、釣竿1の使用時には、釣糸から釣糸ガイド10Bに対して当該釣糸ガイド10Bを竿体の中心軸A周りに揺動させる方向の力が作用する。上記のように、繊維強化樹脂層15の一端と他端とが釣糸ガイド10Bの足10aに対して対称に設けられているため、釣糸ガイド10Bを中心軸周りに揺動させる力が作用しても、繊維強化樹脂層15により釣糸ガイド10Bの足10aを中竿5の表面に押しつけておくことができる。繊維強化樹脂層の周方向における配置が釣糸ガイド10Bの足10aに対して非対称になっていると、巻回数が少ない側において足10aを押さえつける力が不十分となることおそれがある。上記実施形態によれば、繊維強化樹脂層15の一端と他端とが釣糸ガイド10Bの足10aに対して対称に設けられているため、周方向のいずれから作用する力に対しても、安定的に釣糸ガイド10Bを支持することができる。これにより、釣糸ガイド10Bの足10aが中竿5の外表面から浮き上がってコーティング層40を破壊することを防止できる。
上記の一実施形態において、繊維強化樹脂層15は、中心軸Aに沿う軸方向における釣糸ガイド10Bの足10aと重複する第1位置においてN1プライだけ巻回され、中心軸Aに沿う軸方向における釣糸ガイド10Bの足10aと重複しない第2位置において前記N1プライより少なくN2プライだけ巻回されている。このため、繊維強化樹脂層15は、繊維強化樹脂層15は、足10aと重複しない第2位置(例えば、足10aの後端よりも軸方向の後ろ側にある位置)において巻回数が少なくなっており、その分だけ厚さ寸法も小さくなっている。図3に示されている実施形態では、繊維強化樹脂層15は、その後端(第2位置)の上側において第2シート30sの2層分の厚さを有し、その後端の下側において第2シート30sの1層分の厚さを有するように構成及び配置されている。一実施形態において、繊維強化樹脂層15は、その後端における厚さHが0.75mm以下となるように構成される。これに対して、繊維強化樹脂層15は、足10aと重複する位置(第1位置)においては、上側において第1シート20sの2層分の厚さと第2シート30sの2層分の厚さとの合計の厚さとなっており、下側において第1シート20sの1層分の厚さと第2シート30sの1層分の厚さとの合計の厚さとなるように構成されている。釣竿1の使用時に中竿5が曲がると、中竿5の軸方向において繊維強化樹脂層15が設けられている位置と設けられていない位置との境界(すなわち、繊維強化樹脂層15の後端)に曲げによる応力が集中する。上記の一実施形態によれば、繊維強化樹脂層15の後端には、第2繊維強化樹脂層30のみが設けられており、第1繊維強化樹脂層20が設けられていないため、繊維強化樹脂層15のうち軸方向において足10aと重複する位置に比べて厚みが小さくなっている。よって、上記の一実施形態によれば、繊維強化樹脂層15の後端への応力集中を抑制することができ、その結果、繊維強化樹脂層15の後端の位置におけるコーティング層40の破壊を抑制することができる。
上記の一実施形態によれば、第1シート20sに含まれているマトリクス樹脂が流動し、ギャップG1及びギャップG2に流れ込む。これにより、ギャップG1及びギャップG2の少なくとも一部は、第1シート20sから流れ込んだ樹脂21により充填される。このギャップG1及びギャップG2を充填する樹脂21により、釣糸ガイド10Bをより強固に中竿5に取り付けることができる。
上記の一実施形態によれば、第1シート20sのマトリクス樹脂の硬化温度が第2シート30sの硬化温度よりも高い場合、第2シート30sのマトリクス樹脂が溶融して流動する際に、第1シート20sのマトリクス樹脂は流動状態にならない。このため、第2シート30sのマトリクス樹脂は、ギャップG1及びギャップG2へ流れ込まずに硬化反応が進行する。続いて、硬化温度が高い第1シート20sのマトリクス樹脂が溶融して、溶融した樹脂がギャップG1及びギャップG2へ流れ込む。このように、第1シート20sのマトリクス樹脂の硬化温度が第2シート30sの硬化温度よりも高い場合には、第2シート30sのマトリクス樹脂が流動するときに、硬化温度がより高い第1シート20Sのマトリクス樹脂は流動しない。これにより、第2シート30sのマトリクス樹脂が第1シート20sの空隙に流れ込み難いので、外観品質の劣化を抑制することができる。
一実施形態においては、図4に示されているように、第1繊維強化樹脂層20は、周方向においてギャップG1及びギャップG2と対向する領域において、第1シート20sの2層分の厚さを有している。同様に、第2繊維強化樹脂層30は、周方向においてギャップG1及びギャップG2と対向する領域において、第2シート30sの2層分の厚さを有している。これにより、ギャップG1及びギャップG2に第1シート20sからマトリクス樹脂が流れ込むことによるピンホールやボイドの発生を抑制することができる。
上記の実施形態によれば、第1繊維強化樹脂層20の一端20aと他端20bとを、中心軸Aの周りの周方向において、釣糸ガイド10Bのセンター部11gに対して対称な位置に配置することにより、中竿5の重心が中心軸Aに対して左右いずれかに偏ることを防止できる。
上記の実施形態によれば、第1繊維強化樹脂層20の一端20a付近の部位(周方向において接点P1よりも反時計回りに回転した領域にある部位)及び他端20b付近の部位(周方向において接点P2よりも時計回りに回転した領域にある部位)の中竿5の外表面との密着力により、足10aの底面11bの左端及び右端の浮き上がりを抑制することができる。
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
釣糸ガイド10以外にリールシート9も、釣糸ガイド10Bについて説明したのと同様の手法で対応する竿体へ取り付けることができる。例えば、リールシート9は、第1繊維強化樹脂層20及び第2繊維強化樹脂層30により、又は、繊維強化樹脂層50により、元竿3に取り付けられる。