JP2019536735A - Pet放射性トレーサとしての[18f]で標識された乳酸誘導体 - Google Patents

Pet放射性トレーサとしての[18f]で標識された乳酸誘導体 Download PDF

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Abstract

本発明は、乳酸の取り込みをイメージングするための、[18F]で標識された乳酸誘導体であるポジトロン断層法(PET)放射性トレーサに関する。本発明は、[18F]で標識された乳酸誘導体の放射性合成のためのプロセスも提供する。本発明はさらに、特にヒトの生細胞における乳酸の取り込みをイメージングするための[18F]で標識された乳酸誘導体の使用に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、乳酸の取り込みをイメージングするための、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩、好ましくは、[18F]−3−フルオロ乳酸または[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロパン酸とも称される[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸の塩であるポジトロン断層法(PET)放射性トレーサに関する。本発明は[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸の放射性合成のためのプロセスも提供する。本発明はさらに、特にヒトの生細胞における乳酸の取り込みをイメージングするための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸の使用に関する。
乳酸はいくつかの生化学プロセスにおいて役割を担っている。生理的pHでは、乳酸(pKa:3.86)は完全に解離して乳酸イオンと水素イオンになる。
インビボでは、L−(+)−乳酸は、代謝時の発酵のプロセスにおいて乳酸脱水素酵素(LDH)によってピルビン酸から生成される。乳酸は細胞の中で生成され、そのレベルは酸素利用率およびモノカルボン酸輸送体(MCT)などの各種因子によって制御される。MCTは受動的輸送体であり、そのうちMCT1〜MCT4は乳酸を輸送することができる。
乳酸は運動時にエネルギーを供給することに関与している。それは脳代謝においても重要な役割を担っている。各種疾患は乳酸の取り込みを暗示しており、かつ/または例えば、癌、疲労症候群、潜在性運動不耐性、運動誘発性高インスリン血症、深刻なX染色体連鎖性精神運動遅延、免疫疾患、加齢に伴う認知機能障害、健忘症、アルツハイマー病、てんかん、糖尿病、低血糖症および肥満症などの制御されない乳酸濃度を特徴とする(Halestrap,Mol Aspects Med,2013,34,337−349;Tsaiら,Front Aging Neurosci 2016,8,57;Perez−Escuredoら,BBA Mol Cell Res,2016,1863,2481−2497;Brinkmannら,J Diabetes Complications,2015,27,965−969;Carneiroら,Obes Rev 2015,16 Suppl 1,55−66)。
代謝可塑性は、エネルギー生成および生合成経路のための既存の資源を最適に使用することができる癌細胞の顕著な特徴である。可能な燃料の中から乳酸が選び出されるが、その理由は、乳酸を生成する解糖系(glycolytic)癌細胞と乳酸を使用する酸化系(oxidative)癌細胞との代謝共同の中心にあるからである(Sonveauxら,J Clin Invest,2008,118,3930−3942)。この共同は共生的性質であり、グルコースと比較して乳酸への代謝優先(metabolic preference)を有する酸化系癌細胞に乳酸を届けることにより、解糖系癌細胞は低酸素/解糖系癌の区画におけるグルコース拡散および使用を促進する(Feronら,Radiother Oncol,2009,92,329−333;Kennedyら,Future Oncol,2010,6,127−148;Perez−Escuredoら,BBA Mol Cell Res,2016,1863,2481−2497)。他のプロセスと共に代謝共同性(metabolic cooperativity)は、代謝的に変化した環境における癌細胞の生存および増殖のための進化的解決法を表す(Payenら,Cancer J,2015,21,75−87)。
代謝共同は、抗血管新生療法に対する耐性様式として動員することができる(Jimenez−Valerio Gら,Cell Rep,2016,15:1134−43;Pisarsky Lら,Cell Rep,2016,15:1161−74;Allen Eら,Cell Rep,2016,15:1144−60)。全体的に見て、それは細胞膜に位置するMCTファミリーのメンバーの発現および活性によって決まる(Halestrap,Mol Aspects Med,2013,34,337−349;Pisarskyら,Cell Reports,2016,15,1161−1174)。MCT4は解糖系癌細胞による乳酸のエクスポートの主要な促進体(facilitator)であり(Dimmerら,Biochem J,2000,350 Pt 1:219−27;Manning Foxら,J Physiol,2000,529 Pt 2:285−93;Chicheら,Int J Cancer,2012,130(7),1511−1520)、MCT1は主に酸化系癌細胞によって取り込まれた乳酸を運ぶ(Ullahら,J Biol Chem,2006,281,9030−9074;Halestrap,IUBMB Life,2012,64,1−9)。MCT1およびMCT4と比較して、MCT2およびMCT3は癌においてあまり頻繁には発現されない(Perez−Escuredoら,BBA Mol Cell Res,2016,1863,2481−2497)。
そのような代謝共同は、頭頸部癌、乳癌、肺癌、胃癌、結腸癌、膀胱癌、前立腺癌および頸癌ならびに神経膠腫などの異なる組織型の様々なヒトの癌において認められる(Baltazarら,Histol Histopathol,2014,29,1511−1524;Pinheiroら,J Bioenerg Biomembr,2012,44,127−139;Miranda−Goncalvesら,Neuro Oncol,2013,15,172−188;Afonsoら,Mol Carcinog,2015,54,1451−1466)。
これにより、いくつかのMCT阻害剤の開発および前臨床的評価が進められ(Draouiら,Bioorg Med Chem,2013,21,7107−7117;Draouiら,Mol Cancer Ther,2014,13,1410−1418;Buenoら,Transplantation,2007,84,1204−1207;Ovensら,Biochem J,2010,425,523−530;Critchlowら,Cancer Res,2012,72,3224)、そのうちAZD3965は、前立腺癌、胃癌またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有する患者のための第1相臨床試験において抗癌剤として現在評価されている(ClinicalTrials.gov NCT01791595)。関連化合物AR−C155858は選択的MCT1阻害剤であるにも関わらず、それが補助タンパク質ベイシジン(basigin)に結合する場合のみMCT2も阻害するが、その好ましいシャペロンタンパク質はエンビジン(embigin)である(Ovensら,Biochem J,2010,425,523−530)。
MCT1阻害剤は積極的に開発されており、AZD3965は最近になって癌の治療のための臨床試験の段階に入ったが、乳酸の取り込みの測定および臨床背景におけるその阻害は未だ満たされていない臨床的必要性である。
従って、インビボでの乳酸流束をイメージングして、腫瘍の応答だけでなく癌以外の病状もイメージングすることできるという点、ならびに乳酸の役割を理解し、かつ乳酸を取り込む組織を決定することができるという点が重要である。
その目的のために、13Cで標識された乳酸が開示された(Gallagherら,Brain,2009,132:2839−2849)。それを前臨床用途のために動的核偏極法(DNP)によってイメージングすることができる。しかし、13Cの半減期が非常に短いこと、および13Cイメージングのために精巧な機器が必要になることから、インビボでのイメージングのための用途が非常に限られたものとなる。
従って、乳酸の取り込みをイメージングすることができるトレーサおよび上記欠点を克服することが必要とされている。
ポジトロン断層法(PET)は各種トレーサを用いて診察室で使用されている。2−デオキシ−2−(18F)フルオロ−D−グルコースとしても知られている18F−フルオロデオキシグルコース(18F−FDG)は、例えばグルコースの取り込みを測定するために使用されており、患者における癌およびその転移を検出することを可能にする。18F−FDGは日常的に臨床で使用されている。
従って、18Fによる標識および検出は一般に診察室で行われており、病院において既に提供されている臨床背景を容易に適応させることができるため、18Fで標識されたPET乳酸トレーサを提供することは主要な関心事である。18Fの放射能半減期は110分である。
好適な18Fで標識された乳酸トレーサは、
18Fトレーサは投与前だけでなく投与後も化学的に安定なものでなければならない、
18Fによる乳酸の標識はその取り込みに影響をあたえるものであってはならない、
18Fによる乳酸の標識は、乳酸の機能、すなわち細胞内へのその蓄積を可能にするための乳酸輸送体による細胞内へのその輸送、ピルビン酸およびピルビン酸の下流代謝産物におけるその形質転換を維持するものでなければならない、
18Fトレーサは乳酸輸送体に対して選択的でなければならない、
18Fトレーサは乳酸輸送体を阻害するものであってはならない、
18Fトレーサは可能な限り少ない18Fを放出するものでなければならない、
という仕様を満たすものでなければならない。
MCTの公知の基質、すなわち乳酸およびブロモピルビン酸(スキーム1を参照)の化学構造に基づいて、(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸を18Fで標識された乳酸トレーサ候補として調べた。この手法では、乳酸の3位にあるH原子のフッ素による生物学的等価置換を行う。
Figure 2019536735
スキーム1:(+)−乳酸、3−ブロモピルビン酸および(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸の構造
水素原子のフッ素による置換は通常は生物学的等価性化合物を提供するということが報告されているが、乳酸の3位へのその導入は本事例では非常に困難であった。その理由は、
(1)本出願人の知識が及ぶ範囲では、たとえ3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)が既に開示されていたとしても(国際公開第2010/088564号、フランス特許第2290417号、Goncalvesら,Tetrahedron Assym,1996,7(5),1237−1240)、18Fで標識された化合物は以前に報告されておらず、非放射性3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)を開示する先行技術には化学合成は開示されておらず、かつ
(2)その高い電気陰性度により、フッ素原子はその分子を取り囲む電子に影響を与え、このようにしてMCT、特にMCT1によるその適切な認識および乳酸脱水素酵素(LDH)による代謝に影響を与える可能性があった
からである。
18Fの導入では、フッ素によるエポキシド開環が想定された。しかし、この経路により18Fで標識される化合物の調製は非常に困難であった。その理由は、エポキシドのα位における電子供与基の存在下で最も少なく置換された炭素において好ましいことが知られているフッ素によるエポキシド開環(Schirrmacherら,Tetrahedron Letters,52(16),1973−1976;Parkら,Bull Korean Chem Soc,2007,28(10),1834−1836)は、このα位における電子求引基の存在下で以前に調査されたことがなく、かつ本事例ではカルボン酸がその位置に存在しているからである。
注目すべきことに、良好な放射化学的収率および優れた位置選択性で、すなわち(±)−[18F]−2−フルオロ−3−ヒドロキシプロピオン酸(塩)の位置異性体に対して、標的化された(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)を支持する、(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)の合成が本明細書において初めて実証される。
乳酸脱水素酵素(LDH)によるトレーサの代謝および従って細胞におけるその蓄積に対するフッ素原子の生じ得る影響に関しては、LDHによる変換の予備アッセイを行うことが必要であった。但し、この研究の時点では、非放射性3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)は市販されておらず、本出願人によって上手く合成することができなかった。従って、本出願人は代わりに、利用可能な3−フルオロピルビン酸(塩)を双方向性酵素であるLDHによって3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)に変換することができることを検証した。得られたデータ(実験部分II.1を参照)により、(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)をLDHによって、すなわち酸化系癌細胞における乳酸の酸化経路に沿って代謝させて[18F]−3−フルオロピルビン酸(塩)に変換できるという可能性が支持された。
本出願人は、(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)のポジトロン断層法(PET)のための乳酸の取り込みのトレーサとしての前臨床的検証も本明細書において提供する。(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)を臨床背景で生成し、癌の代謝共生(metabolic symbiosis)の発見に役立つ同じ癌モデルにおいて評価した。それを癌の別の異なるモデルにおいて前臨床的にさらに検証した。
実験部分(パートII.2、II.3およびII.4)において証明されているように、(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)はPETトレーサの必要とされる仕様を満たす。特に、(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)は能動的に取り込まれ、インビトロで乳酸を消費する酸化系癌細胞によって保持され、かつインビボで乳酸を消費することが知られている腫瘍および組織に蓄積し、これは内向き乳酸輸送体MCT1の薬理学的阻害によって効率的に防止される。MCT1の使用される薬理学的阻害剤は既に上述されているAR−C155858およびAZD3965であった。
18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)は、乳酸の取り込みのPETトレーサとして使用することができる。腫瘍学では、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)は、腫瘍による乳酸の使用および消費を中断させることを目的とした薬剤および薬物治療に対する応答を予測して文書化するための手段として使用することができ、このようにして個別尺度で治療を変えることが可能になる。腫瘍による乳酸の使用および消費を中断させることを目的とした薬剤および薬物治療に対する応答を予測するために、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)を腫瘍患者に投与することができ、それが腫瘍内に蓄積し、このようにしてPETスキャンにおいて陽性シグナルを示した場合、本トレーサは、腫瘍が乳酸を取り込んだこと、およびその患者には腫瘍による乳酸の使用および消費を中断させることを目的とした薬剤および薬物治療を受けることが有効であることを示す。腫瘍による乳酸の使用および消費を中断させることを目的とした薬剤および薬物治療に対する生物学的応答を文書化するために、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)をそのような治療の前後に投与することができ、PETシグナルの減少によって認められるトレーサの取り込みの減少は、患者の腫瘍が腫瘍による乳酸の使用および消費を中断させることを目的とした薬剤および薬物治療に応答していることを示す。
他の病状では、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)を乳酸の代謝の変化を証明するための診断手段として使用することができた。これらの病状としては、例えば、疲労症候群、潜在性運動不耐性、運動誘発性高インスリン血症、深刻なX染色体連鎖性精神運動遅延、免疫疾患、加齢に伴う認知機能障害、健忘症、アルツハイマー病、てんかん、糖尿病、低血糖症および肥満症が挙げられる(Halestrap,Mol Aspects Med,2013,34,337−349;Tsaiら,Front Aging Neurosci 2016,8,57;Perez−Escuredoら,BBA Mol Cell Res,2016,1863,2481−2497;Brinkmannら,J Diabetes Complications,2015,27,965−969;Carneiroら,Obes Rev 2015,16 Suppl 1,55−66)。
従って本発明は、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸:
Figure 2019536735
またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である化合物に関する。
一実施形態によれば、その塩は[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ナトリウム塩である。
本発明は、本発明の化合物と少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物にも関する。本発明は本発明の化合物を含む薬にも関する。
本発明はさらに、ポジトロン断層法イメージングのための本発明の化合物の使用に関する。本発明は、細胞による乳酸の取り込みのポジトロン断層法イメージングのための本発明の化合物の使用にも関する。
本発明は、乳酸を取り込む個体の細胞または細胞集団、および/または乳酸の取り込みにおける変化を有する個体の細胞または細胞集団を決定する際に使用するための本発明の化合物にも関する。
本発明は、個体の腫瘍が乳酸の取り込みおよび/または乳酸の代謝を調節する治療に対して治療応答を示すか否かを予測および/または監視する際に使用するための本発明の化合物にも関する。一実施形態によれば、乳酸の取り込みを調節する治療は、MCTを阻害する薬物、好ましくはMCT1を阻害する薬物から選択される。一実施形態によれば、乳酸の代謝を調節する治療は、LDHを阻害する薬物、好ましくはLDHB、MPCまたはALTを阻害する薬物から選択される。
本発明は、組織における乳酸の取り込みのインビトロでの検出のための方法であって、
(1)前記組織をPETによって検出するのに十分な量の本発明の化合物と接触させる工程と、
(2)少なくとも1つのPET画像を形成する工程と、
(3)画像を観察することにより乳酸の取り込みを決定する工程と
を含む方法にも関する。
本発明は、疾患をイメージングする際に使用するための本発明の化合物であって、
(1)PETによって検出するのに十分な量の本発明の化合物を個体に投与する工程と、
(2)個体の体内における本発明の化合物の分布を示す少なくとも1つのPET画像を形成する工程と
を含む方法にも関する。
本発明は、個体における疾患の治療法を監視する際に使用するための本発明の化合物であって、
(1)イメージングを達成するのに十分な量の本発明の化合物を前記個体に投与する工程と、
(2)個体の体内において本発明の化合物からシグナルを検出することによってPETを用いるイメージングを行って治療法に対する個体の応答を追跡する工程と
を含む化合物にも関する。
本発明はさらに、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の製造プロセスであって、
a)オキシラン−2−カルボン酸ベンジル(II):
Figure 2019536735
に対するエポキシド開環反応を[18F]−フッ化物の存在下で行って[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III):
Figure 2019536735
を得る工程と、
b)[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III)を加水分解して[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物を得る工程と
を含む製造プロセスに関する。
従って一実施形態によれば、本プロセスは、アクリル酸ベンジル(I)のエポキシ化によるオキシラン−2−カルボン酸ベンジル(II)の合成の予備工程を含む。
定義
本発明では、以下の用語は以下の意味を有する。
数字の前の「約」は前記数字の値の±10%を意味する。
「個体」とは、本発明の化合物を摂取する動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトを指す。
「乳酸の取り込みのイメージング」とは、細胞による乳酸の取り込みの相対的もしくは絶対的定量化を指す。
「乳酸の取り込みにおける変化」とは、細胞による乳酸の取り込みにおけるあらゆる変化を指す。
「乳酸の取り込みを変化させる治療に対する治療応答」とは、治療によって誘導される細胞による乳酸の取り込みにおけるあらゆる変化を指す。
「乳酸の代謝を調節する治療に対する治療応答」とは、治療によって誘導される乳酸の代謝におけるあらゆる変化を指す。
「薬学的に許容される賦形剤」とは、動物、好ましくはヒトに投与された場合に副作用、アレルギー反応または他の有害反応を生じさせない賦形剤を指す。このような賦形剤しては、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤(absorption delaying agent)などが挙げられる。ヒトへの投与のために、製剤はFDAまたはEMAなどの規制当局によって要求される無菌性、発熱性、一般的な安全性および純度基準を満たすものでなければならない。
「溶媒和物」は、本発明の化合物と1種以上の薬学的に許容される溶媒分子、例えば、エタノールまたは水とを含む分子複合体を記述するために本明細書で使用される。溶媒が水である場合、溶媒和物は「水和物」とも称される。
18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)
本発明は、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸:
Figure 2019536735
またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である化合物に関する。
18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)は、[18F]−3−フルオロ乳酸(塩)または[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロパン酸(塩)とも称される。
18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)はキラルであり、2種類の光学異性体として存在する。一実施形態によれば、本発明は、(+)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)に関する。別の実施形態では、本発明は、(−)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)に関する。さらなる実施形態では、本発明はラセミ体、すなわち(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)に関する。本発明では、「[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)」という用語の使用は、鏡像異性体ならびに任意の比でのそれらの混合物のそれぞれに対する言及を包含する。
本発明の化合物は、塩、好ましくは薬学的に許容される塩の形態であってもよい。薬学的に許容される塩としては、その塩基性塩が挙げられる。好適な塩基性塩は非毒性塩を形成する塩基から形成される。例としては、アンモニウム、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、クロロプロカイン、コリン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、2−(ジエチルアミノ)エタノール、ジオラミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、グリシン、リチウム、リジン、マグネシウム、メグルミン、N−メチル−グルタミン、モルホリン、オラミン、オルニチン、ピペラジン、カリウム、プロカイン、ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トロメタミン、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、N−ベンジルフェネチル−アミンおよび亜鉛の塩が挙げられる。塩基のヘミ塩(hemisalt)、例えばヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩が形成されてもよい。
薬学的に許容される塩は、(i)本発明の化合物を所望の塩基と反応させることによって、および/または(ii)適当な塩基との反応または好適なイオン交換カラムにより本発明の化合物のある塩を別の塩に変換させることによって調製してもよい。これらの反応は典型的には溶液中で行う。その塩を溶液から沈殿させて濾過によって回収してもよく、あるいは溶媒の蒸発によって回収してもよい。その塩におけるイオン化の程度は、完全にイオン化された状態からほとんどイオン化されていない状態まで様々であってもよい。
本発明の化合物は、溶媒和物、好ましくは薬学的に許容される溶媒和物の形態であってもよい。薬学的に許容される溶媒和物とは、本発明の化合物と1種以上の薬学的に許容される溶媒分子、例えばエタノールまたは水とを含む分子複合体を指す。
製造プロセス
本発明は、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸およびその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物を製造するためのプロセスにも関する。本発明の合成経路は以下のスキーム:
Figure 2019536735
に要約されている。
一実施形態によれば、本発明のプロセスは、
a)オキシラン−2−カルボン酸ベンジル(II):
Figure 2019536735
に対するエポキシド開環反応を[18F]−フッ化物の存在下で行って[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III):
Figure 2019536735
を得る工程と、
b)[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III)の加水分解を行って[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物を得る工程と
を含む。
一実施形態では、本発明のプロセスは遠隔操作される合成装置で行う。
工程a)
一実施形態では、[18F]−フッ化物は、核反応18O(p,n)18Fによりサイクロトロン、好ましくは医療用アイソトープサイクロトロンで生成する。一実施形態によれば、[18F]−フッ化物は、例えばChromafix 30−PS−HCOカートリッジなどの陰イオンカートリッジにおいて照射された水から単離する。次いで、[18F]−フッ化物をイオン交換および塩基性溶液における溶出によってカートリッジから回収する。一実施形態では、塩基性溶液は、KCO、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAOH)、炭酸テトラブチルアンモニウム(TBAHCO)、メタンスルホン酸カリウム、K/2.2.2クリプタンド(2.2.2クリプタンドは好ましくは、4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ−(8.8.8)−ヘキサコサンに対応するクリプトフィックス2.2.2である)混合物またはそれらの混合物の溶液から選択する。カリウムに代わる他の対イオンも使用してもよい。一実施形態では、塩基性溶液の溶媒は、アセトニトリル、水、メタノールまたはそれらの混合物である。特定の実施形態では、[18F]−フッ化物は、メタノールで希釈したK/クリプトフィックス(kryptofix)2.2.2(1/2のモル比を有する)の水溶液を用いた溶出によりカートリッジから回収する。
一実施形態によれば、工程a)で使用される[18F]−フッ化物は、[18F]−KFおよび[18F]−TBAF(フッ化テトラブチルアンモニウム)から選択される。
一実施形態によれば、工程a)で使用される[18F]−フッ化物は無水である。無水[18F]−フッ化物は、カートリッジから溶出された溶液の共沸蒸留、好ましくは95℃のアセトニトリルとの共沸蒸留によって得てもよい。好ましくは、共沸蒸留は例えばヘリウム流下などの不活性雰囲気下で行う。
一実施形態によれば、本発明のプロセスは6〜7.4の範囲のpH、より好ましくは6.9〜7.1のpHで行う。これらの範囲のpHは、[18F]−フッ化物をカートリッジから反応器の中に回収するために使用される塩基の量に対応し、これは[18F]−フッ化物の回収のために通常用いられるpHと比較して低く、すなわち約10倍低い塩基が本発明のプロセスで使用される。有利にはそのような条件で反応を行うことにより、特にエポキシド環の開環を支持すること、および中間体(III)および最終生成物[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)の安定性を向上させることによって本プロセスの収率を向上させることができることが観察された。
一実施形態によれば、工程a)は、ジメチルスルホキシド(DMSO)および2−メチル−2−ブタノールから選択される溶媒中で行う。好ましくは溶媒は無水である。特に好ましい実施形態によれば、工程a)は溶媒としての無水2−メチル−2−ブタノール中で行う。プロトン性溶媒である2−メチル−2−ブタノールの使用は、[18F]−2−フルオロ−3−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(IV)よりも[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III)を形成する位置選択性を向上させる効果を有する。
一実施形態によれば、工程a)は90℃〜150℃の範囲、好ましくは100℃〜125℃の範囲、より好ましくは100℃〜110℃の範囲の温度で行う。
一実施形態によれば、工程a)は5分〜30分の範囲、好ましくは5分〜15分の範囲、より好ましくは約10分の期間で行う。
特定の実施形態によれば、工程a)は溶媒としての無水2−メチル−2−ブタノール中で、105℃の温度で10分間行う。
一実施形態によれば、反応混合物をアルミナカートリッジに通して未反応の[18F]−フッ化物を除去する。
一実施形態では、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III)は高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって単離する。
工程b)
一実施形態によれば、工程b)の加水分解は塩基性条件で行う。一実施形態では、固相抽出法を用いて、好ましくはC18 Sep−PakカートリッジおよびNaOH溶液を用いて加水分解を行う。
一実施形態によれば、工程b)は1分〜20分の範囲、好ましくは2分〜10分の範囲、より好ましくは約5分の期間で行う。
他の実施形態によれば、工程b)の加水分解は酵素加水分解によって行う。
予備工程
一実施形態によれば、オキシラン−2−カルボン酸ベンジル(II)はアクリル酸ベンジル(I)のエポキシ化によって得る。一実施形態によれば、エポキシ化は例えば3−クロロペルオキシ安息香酸(m−CPBA)などのペルオキシ酸の存在下で行う。
医薬組成物およびイメージング組成物
本発明はさらに、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物と少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
本発明は、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物と少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含むイメージング組成物にも関する。
本発明の組成物は、製剤を等張性にする抗酸化剤、緩衝液、静菌剤および溶質を含んでいてもよい。
本発明の化合物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹膜内、静脈内、ICV、槽内注射もしくは注入、皮下注射または埋め込み)、吸入スプレー、経鼻、膣内、直腸内、舌下または局所投与経路によって投与してもよく、各投与経路に適した従来の薬学的に許容される非毒性賦形剤、アジュバントおよび媒体を含む好適な用量単位製剤において単独または一緒に製剤化してもよい。好ましくは、本発明の化合物を経口もしくは非経口投与経路によって投与する。
本発明の化合物の投与のための組成物は、好都合には用量単位剤形で提供してもよく、かつ110分である18Fの短い放射能半減期を考慮して薬学の技術分野でよく知られている方法のいずれかによって調製してもよい。全ての方法は、有効成分を1種以上の副成分を構成する賦形剤と会合させる工程を含む。一般に、本医薬組成物およびイメージング組成物は、有効成分を液体の賦形剤または微粉固体の賦形剤または両方と均一かつ密接に会合させ、次いで必要であれば生成物を成形して所望の製剤にすることによって調製する。医薬組成物およびイメージング組成物中の活性化合物は所望の効果を生じさせるのに十分な量で含める。
有効成分を含む組成物は、経口使用、例えば水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末または乳濁液に適した形態であってもよい。経口使用を目的とした組成物は医薬もしくはイメージング組成物の製造のための技術分野に公知の任意の方法に従って調製してもよく、そのような組成物は、薬学的に上品かつ美味な製剤を提供するために、甘味料、着香料、着色料および保存料からなる群から選択される1種以上の物質を含有していてもよい。水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物中に活性物質を含有する。そのような賦形剤は懸濁化剤であり、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムであり、分散剤または湿潤剤は天然に生じるホスファチド、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレアートであってもよい。水性懸濁液は、1種以上の防腐剤、例えばエチルまたはn−プロピル、パラオキシ安息香酸エステル、1種以上の着色料、1種以上の着香料およびスクロースまたはサッカリンなどの1種以上の甘味料も含有していてもよい。油性懸濁液は、有効成分を植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、胡麻油またはヤシ油あるいは液体パラフィンなどの鉱油に懸濁させることによって製剤化してもよい。油性懸濁液は、増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコールを含有していてもよい。上に記載されているような甘味料および着香料を添加して美味な経口製剤を提供してもよい。アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加して、これらの組成物を保存してもよい。
本医薬組成物およびイメージング組成物は無菌の注射可能な水性もしくは油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、上述したそれらの好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いる公知の技術に従って製剤化してもよい。また無菌注射用製剤は、非経口的に許容される非毒性希釈液または溶媒を含む無菌注射溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール溶液であってもよい。用いることができる許容される媒体および溶媒は、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液である。
本組成物は安定化剤をさらに含んでいてもよい。化学的安定化剤は、高い放射活性濃度の18Fで標識された化合物の放射線分解により誘導される分解の可能性を低下させるのに有用である。好適な安定化剤としては、糖アルコールまたは糖ラクトンなどの抗酸化剤が挙げられ、糖アルコールは例えばエリスリトール、キシリトール、ソルビトールまたはマンニトールであり、糖ラクトンは例えばアスコルビン酸またはグルコノ−δ−ラクトンである。
乳酸の取り込みのイメージングは一般に1MBq〜530MBq/kg体重の範囲の線量の本発明の組成物を必要とする。但し、あらゆる特定の患者のための特定の線量レベルは様々であってもよく、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与様式および時間、排泄率、薬物の組み合わせ、特定の病気の重症度および治療を受けている宿主などの様々な因子によって決まることが分かるであろう。
本発明は、所定の量の[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物を含む密閉されたバイアルを含むキットにも関する。
医薬用途
本発明は、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物を含む薬にも関する。一実施形態では、本発明は、薬として使用するための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物に関する。一実施形態では、本発明は、薬の製造のための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用に関する。
本発明は、造影剤として使用するための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物にも関する。一実施形態では、本発明は、造影剤の製造のための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用に関する。
一実施形態では、造影剤はポジトロン断層法(PET)のための造影剤である。
本発明は、PETイメージングのための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用にも関する。
本発明は、細胞による乳酸の取り込みのPETイメージングのための、好ましくは生細胞または組織、より好ましくは哺乳類の生細胞または組織における乳酸の取り込みのPETイメージングのための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用にも関する。
本発明は、個体のどの組織または細胞が乳酸を取り込むかを決定するための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用にも関する。
本発明は、乳酸の取り込みおよび/または代謝の病態生理学的作用を決定するための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用にも関する。
本発明は、乳酸の取り込みおよび/または代謝における変化を有する個体の臓器または組織を決定するための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用にも関する。そのような決定は臨床研究または診断のために使用してもよい。
本発明は、所与の個体のどの腫瘍が乳酸を取り込むかを決定するための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用にも関する。
本発明は、所与の個体の腫瘍が乳酸の取り込みおよび/または代謝を調節する治療に対する治療応答を示すことができるか否かを予測するための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用にも関する。この使用により治療応答の予測を可能にする。腫瘍による乳酸の使用および消費を中断させることを目的とした薬剤および薬物治療に対する応答を予測するために、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)を腫瘍患者に投与することができ、それが腫瘍内に蓄積し、このようにしてPETスキャンにおいて陽性シグナルを示した場合、本トレーサは、腫瘍が乳酸を取り込んだこと、およびその患者には腫瘍による乳酸の使用および消費を中断させることを目的とした薬剤および薬物治療を受けることが有効であることを示す。
本発明は、所与の個体の腫瘍が乳酸の取り込みおよび/または代謝を調節する治療に対する治療応答を示すか否かを決定するための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用にも関する。この使用により治療応答のイメージングおよび定量化が可能になる。腫瘍による乳酸の使用および消費を中断させることを目的とした薬剤および薬物治療に対する生物学的応答を文書化するために、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)をそのような治療の前後に投与することができ、かつ治療後のトレーサの取り込みの減少はPETシグナルの減少によって認められ、この減少は、患者の腫瘍が腫瘍による乳酸の使用および消費を中断させることを目的とした薬剤および薬物治療に応答していることを示す。
本発明は、例えば疲労症候群、潜在性運動不耐性、運動誘発性高インスリン血症、深刻なX染色体連鎖性精神運動遅延、免疫疾患、加齢に伴う認知機能障害、健忘症、アルツハイマー病、てんかん、糖尿病、低血糖症または肥満症などの乳酸の代謝の変化を暗示する病状の診断手段としての[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用にも関する。
本発明は、細胞および組織による乳酸の取り込みおよび/または代謝を調節することを目的とした治療のインビトロおよび/またはインビボでの有効性を決定するための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用にも関する。一実施形態では、本発明は、癌細胞による乳酸の取り込みおよび/または代謝を調節することを目的とした治療のインビトロでの有効性を決定するための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用に関する。一実施形態では、本発明は、腫瘍による乳酸の取り込みおよび/または代謝を調節することを目的とした治療のインビボでの有効性を決定するための[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の使用に関する。
一実施形態では、乳酸の取り込みを調節する治療は、乳酸の取り込みを阻害する治療である。一実施形態では、乳酸の取り込みを阻害する治療は、MCTを阻害する薬物、好ましくはMCT1を阻害する薬物である。一実施形態では、乳酸の取り込みを阻害する治療は、SMCTなどの他の乳酸輸送体を阻害する薬物である。一実施形態では、乳酸の取り込みを阻害する治療は、乳酸の酸化経路を阻害する薬物である。別の実施形態では、乳酸の酸化経路を阻害する治療はLDH阻害剤である。さらに別の実施形態では、乳酸の酸化経路を阻害する治療はミトコンドリアピルビン酸輸送体(MPC)阻害剤である。さらに別の実施形態では、乳酸の酸化経路を阻害する治療はアラニントランスアミナーゼ(ALT)阻害剤である。
本発明は、細胞または細胞集団における乳酸の取り込みを検出するための方法であって、
(1)PETによって検出するのに十分な量の[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物を投与する工程と、
(2)細胞または細胞集団内での[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の分布を示す少なくとも1つのPET画像を形成する工程と、
(3)画像を観察することにより乳酸の取り込みを決定する工程と
を含む方法にも関する。
一実施形態では、細胞集団は、組織または器官、好ましくは哺乳類からの組織または器官のものである。
一実施形態では、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物を使用して、前立腺、血液、リンパ、卵巣、頸部、膀胱、乳房、肝臓、腎臓、心臓および脳などの幅広い臓器および/または組織をイメージングする。
一実施形態では、乳酸の取り込みを検出するための方法では、細胞または細胞集団は生きている哺乳類の体内にあり、本方法をインビボで行う。別の実施形態では、乳酸の取り込みを検出するための方法をインビトロで行う。
一実施形態では、乳酸の取り込みを検出するための方法をインビボで行う場合、投与は上記医薬組成物を哺乳類の血管の中に注射することにより行う。別の実施形態では、投与は上記医薬組成物を用いて経口で行う。
一実施形態では、本方法は癌細胞における乳酸の取り込みを検出することができる。一実施形態では、本方法は腫瘍を検出することができる。一実施形態では、本方法は腫瘍が乳酸の取り込みを調節する治療、特にMCT阻害剤、好ましくはMCT1阻害剤に対して治療応答を示すことができるか否かを予測することができる。一実施形態では、本方法は腫瘍が乳酸の取り込みを調節する治療に対して治療応答を示すか否かを決定することができる。
一実施形態では、乳酸の取り込みを検出するための方法では、有効量の[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物は1MBq〜530MBq/kg体重の範囲である。
一実施形態では、本発明は、組織における乳酸の取り込みのインビトロでの検出のための方法であって、
(1)前記組織をPETによって検出するのに十分な量の[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物と接触させる工程と、
(2)少なくとも1つのPET画像を形成する工程と、
(3)画像を観察することにより乳酸の取り込みを決定する工程と
を含む方法に関する。
一実施形態では、本発明は、疾患をイメージングするための方法であって、
(1)PETによって検出するのに十分な量の[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物を個体に投与する工程と、
(2)個体の体内における[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の分布を示す少なくとも1つのPET画像を形成する工程と
を含む方法に関する。
一実施形態では、本発明は、個体を診断イメージングまたは監視する方法であって、
(1)診断イメージングを達成するのに十分な量の[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物を前記個体に投与する工程と、
(2)個体の体内における[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物からのシグナルを検出することによってPETを用いて診断イメージングを行う工程と
を含む方法に関する。
一実施形態では、本発明は、個体における疾患の治療法を監視する方法であって、
(1)イメージングを達成するのに十分な量の[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物を前記個体に投与する工程と、
(2)個体の体内における[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物からのシグナルを検出することによってPETを用いるイメージングを行って治療法に対する個体の応答を追跡する工程と
を含む方法に関する。
一実施形態では、疾患の治療法は、癌療法、好ましくはMCT阻害剤、より好ましくはMCT1阻害剤を用いる治療法である。
図1A:UV(A1)およびNaIガンマ線(A2)検出器を備えたSupelco Discovery C18 HPLCカラムにおける(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III)および非放射性3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III)および(±)−[18F]−2−フルオロ−3−ヒドロキシベンジルアクリル酸(塩)(IV)および非放射性2−フルオロ−3−ヒドロキシベンジルアクリル酸(塩)(IV)の共溶出スペクトル。図1B:NaIガンマ線検出器を備えたNucleosil C18 Pyramid HPLCカラムにおける(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)(V)の溶出スペクトル。 tert−アミルアルコールをフッ素化溶媒として使用した場合の位置異性体比を示す、NaIガンマ線検出器を備えたSupelco Discovery C18 HPLCカラムにおける(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III)および(±)−[18F]−2−フルオロ−3−ヒドロキシベンジルアクリル酸(塩)(IV)の溶出スペクトル(方法II)。 乳酸脱水素酵素(LDH)によって3−フルオロピルビン酸を還元して3−フルオロ乳酸に変換することができる。図3A:3−フルオロピルビン酸の還元のために使用される反応スキーム。図3B:図3Aに図式化されている反応後の質量分析を用いた3−フルオロピルビン酸および3−フルオロ乳酸の検出(n=3、N=1)。 酸化系ヒト癌細胞は(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)(V)を捕捉する。図4A:SiHa、HeLaおよびSQD9ヒト癌細胞においてMCT1発現を示す代表的なウェスタンブロット。図4B:SeahorseバイオアナライザにおけるSiHa、HeLaおよびSQD9細胞の酸素消費率(OCR)。細胞に10%の透析されたFBSを含有するDMEMにおける酸化燃料としてグルコース(25mM)+L−乳酸(10mM)またはL−乳酸(10mM)のみを与えた(n=8、P<0.05、***P<0.005)。図4C:癌細胞(または空のウェル(ブランク))を(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)(V)(45μCi/ml)の存在下で6分間インキュベートし、洗浄し、かつ細胞内18F活性をWiper Goldガンマカウンタを用いて測定した(n=12〜14、N=2、***P<0.001)。 MCT1阻害剤AR−C155858は、マウスにおけるSiHa腫瘍による(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)(V)のインビボ取り込みを遮断する。マウスは、対照shRNA(shCTR)またはMCT1に対するshRNA(shMCT1)を発現する2種類のSiHa腫瘍を有していた。図5A:尾静脈注射(100μL中に215μCi)から10分、30分および60分後の(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)(V)の生理学的分布を示す、媒体で予め処置したマウスの代表的な画像。カラースケールは注射された線量および動物の体重に対して正規化されている。図5B:shCTRまたはshMCT1に感染したSiHa細胞におけるMCT1、MCT4、β−アクチンおよびHsp90発現を示すウェスタンブロット(n=3のうちの代表)。図5C:マウスをAR−C155858で予め処置した(トレーサの注射の10分前に5mg/KgのIV)こと以外は図5Aと同じ。代表的な画像はその翌日に評価した図5Aの場合と全く同じマウスを示す(30分間のトレーサ画像)。膀胱が示されている。図5D:図5Aおよび図5Cの定量化(n=6〜7、N=2、***P<0.001)。 (±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)はMCT1阻害剤AR−C155858およびAZD3965に対するSQD9頭頚部癌の初期応答を文書化することができる。MCT1阻害剤AR−C155858またはAZD3965を5mg/kgの用量で静脈内に注射した。その注射から10分後に(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)(250μCi)を静脈内に注射した。トレーサの注射から30分後に画像を取得した。矢印はSQD9腫瘍の局在化を示す(n=6)(媒体と比較して***P<0.005、スチューデントのt検定を用いる)。
以下の実施例により本発明をさらに例示する。
I.化学的実施例
I.1.材料および方法
化学物質。[18O]−HOはRotem社製であった。アクリル酸ベンジルはAlpha Aesar社製であり、DMSOおよび重炭酸テトラブチルアンモニウム(TBAHCO)はABX社製であり、HPOはRiedel−de Haen社製であり、クリプトフィックス2.2.2はMerck社製であり、NaHPOおよびHPLCアセトニトリルはVWR社製であり、CDClおよびTMSはEuristop社製であった。全ての他の試薬はSigma−Aldrich社製であった。
高速液体クロマトグラフィ(HPLC)。直列に接続され、かつGABI Starインタフェースモジュール(Raytest社)によって監視されるUV/VIS−151およびガンマ線NaI検出器を備えたGilson機器(305および302ポンプ)でHPLCを行った。カラムは、半分取HPLC(Dionex Supelco Discovery C18、5μm、250×10mm)、分析用HPLC(MN、150/4.6 Nucleosil 100−5 C18、150mm、ID:4.6mmおよびIonPac AS15、Dionex社)のためのものであった。
18F]−フッ化物の生成。[18O]−HO液体標的を用いる医療用同位体サイクロトロン(IBA Cyclone 18/9)で[18F]−フッ化物を生成した。照射後に、標的の水をChromafix 30−PS−HCO(Macherey−Nagel社)またはAccel Plus QMA Sep Pak Lightカートリッジ(Waters社)に通して[18F]−フッ化物を捕捉した。
一般的な合成スキーム:
Figure 2019536735
I.2.オキシラン−2−カルボン酸ベンジル(II)の合成
3−クロロペルオキシ安息香酸(14.04g)をアクリル酸ベンジル(I)の溶液(90mLの乾燥ジクロロメタン(DCM)中に23.04mmol)に添加した。反応混合物を還流下で撹拌しながら7日間加熱した。次いで、DCM(100mL)をその溶液に添加し、飽和炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄した。残りのDCM画分を30mLまで濃縮し(真空ロータリーエバポレータ)、酢酸エチル(150mL)を添加した。この溶液を飽和炭酸ナトリウム水溶液で再度2回洗浄し、再び1つにまとめた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固した。最後に粗製生成物をシクロヘキサン/酢酸エチル(95/5(100mL)および10/90(800mL))を用いるシリカゲルクロマトグラフィで精製し、残りの揮発性物質を真空下で除去して所望の化合物(II)を得た。収率:53%、H NMR(0.03%v/vのTMSを含むCDCl、400MHz):δ7.38(5.29H,m,H,HおよびH),5.18−5.27(2.7H,q,H),3.47−3.49(1H,dd,H),2.94−3.01(2.18H,qd,H)。
I.3.(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)(V)の合成
方法I.[18F]−フッ化物を充填したChromafix 30−PS−HCOカートリッジを0.075Mの重炭酸テトラブチルアンモニウム(TBAHCO、80μL、6μmol)のアセトニトリル(0.9mL)溶液を用いて逆の順序で反応器に溶出させた。ヘリウム流下で95℃のアセトニトリルと共沸蒸留させて無水[18F]−フッ化物を得た。[18F]−フッ化物の回収は80%超であった。無水DMSO(1mL)に溶解したオキシラン−2−カルボン酸ベンジル(II)(10μL)を[18F]−フッ化物に添加し、120℃で10分間反応させた。冷却後、反応混合物を3.5mLの水で希釈し、中性のアルミナカートリッジ(Waters社)に通して未反応の[18F]−フッ化物を捨てた。これにより2種類の位置異性体:(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III)および(±)−[18F]−2−フルオロ−3−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(IV)を得た。有機分子に組み込まれた約90%の[18F]放射活性は、約1/1の比を有する両方の位置異性体(III)および(IV)に結び付けられていた(図1A2)。
化合物(III)および(IV)(NaI検出器)をそれぞれ、非放射性3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III)および2−フルオロ−3−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(IV)(UV検出器)と共溶出した(図1A2および図1A1)。
(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III)を半分取HPLC(20mMのNaHPO/CHCN(70/30)、3mL/分、保持時間=21分)によって単離し、水(1.5×体積)で希釈し、調整済みのC18 Sep−Pakカートリッジ(Waters社)に充填した。このカートリッジを10mLの水で洗い流し、次いで0.5NのNaOHを充填した。5分後、(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)(III)を1mLの水で溶出させ、HPOを添加してpHを7.0に設定した。(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)(V)を5.25分間の保持時間により分析用HPLC(IonPac AS15、Dionex社、溶出液として14mMのNaOH)によって構造解析した(図1B)。
方法II.[18F]−フッ化物を充填したChromafix 30−PS−HCOカートリッジを1mLの「トレースセレクト(Trace Select)」メタノールで希釈した0.55mgのK(3.0μmol)/2.25mgのクリプトフィックス2.2.2(6.0μmol)の30μLの水溶液を用いて反応器に逆の順序で溶出させた。ヘリウム流下で95℃のアセトニトリルと共沸蒸留させて無水[18F]−フッ化物を得た。無水2−メチル−2−ブタノール(1mL)に溶解したオキシラン−2−カルボン酸ベンジル(II)(10μL)を[18F]−フッ化物に添加した。バイアルを密閉し、105℃で10分間加熱した。次いで、溶媒を100℃のヘリウム流下で蒸発乾固させた。冷却後、反応混合物を4.5mLのアセトニトリル/水(1/2)溶液で希釈し、中性のアルミナカートリッジに通して未反応の[18F]−フッ化物を捨てた。次いで、方法Iと同様の方法で(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)(V)を調製した。
方法IIでは、2−メチル−2−ブタノール(プロトン性溶媒)において放射性フッ素化(radiofluorination)反応を行うことによって、エポキシド開環の位置選択性を(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III)のために80%超まで高め(図2)、全体的なフッ素化収率は僅かに上昇した(15〜20%)。
I.4.参照化合物3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III)の合成
0℃まで冷却したオキシラン−2−カルボン酸ベンジル(II)(1.12g)の乾燥DCM(7.5mL)溶液に、オラー試薬(水素フッ化物ピリジン:ピリジンが約30%、水素フッ化物が約70%、3.4mL)を滴下した。室温に達した後、混合物を35時間撹拌した。二相性溶液をシリカのDCM懸濁液(100ml)に添加し、次いで濾過し、50mLのDCMで洗浄した。所望の3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III)をシリカゲルクロマトグラフィでさらに精製した。H NMR(0.03%v/vのTMSを含むCDCl、400MHz):δ7.35−7.39(5.29H,m,H,HおよびH),5.28(1.85H,s,H),4.59−4.76(1.94H,dqd,H),4.35−4.44(0.92H,dquint,H)。望ましくない位置異性体2−フルオロ−3−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(IV)を微量で得た(図1A1)。
II.生物学的実施例
統計学。Windows用のGraphPad Prismバージョン6.04を用いてデータを分析した。全ての結果を平均±SEMで表した。Nは独立した実験の数を指し、nは治療条件ごとの反復数を指す。エラーバーはシンボルよりも小さい場合がある。スチューデントのt検定および一元配置分散分析(ANOVA)を必要に応じて使用した。P<0.05を統計的に有意であるとみなした。
II.1.乳酸脱水素酵素アッセイ
乳酸脱水素酵素(LDH)による3−フルオロピルビン酸(塩)の3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)への生じ得る還元を、以前に報告されたプロトコルを用いてインビトロで測定した(Goncalvesら,Tetrahedron:Asymmetry,1996,7,1237−1240)。
簡単に言うと、14.6mgの非放射性3−フルオロピルビン酸(塩)を、10IUのウサギの筋肉のLDH(Sigma社)および5.3IUのギ酸脱水素酵素(Sigma社)を含む4mLの再蒸留水に溶解した。NADHを0.2mMの最終濃度になるまで添加し、かつギ酸ナトリウムを40mMの最終濃度になるまで添加することにより、反応を開始させた。最終体積は再蒸留水で5mLになるように調整した。この反応を120rpmで一定かつ穏やかに撹拌しながら37℃で24時間行った。次いで、溶液を10kDaのフィルタを通して回転させて酵素を除去し、負イオンモードで動作するエレクトロスプレーイオン化源が装着されたLuna Phenomenex 250×4.60 HPLCカラムおよびThermo Scientific社製LTQ−ORBITRAP−XLを備えたAccela U(HPLC)を用いるHPLC−MSによって3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)を検出した。
図3のデータは、(±)−[18F]−3−フルオロ乳酸(塩)をLDHによって、すなわち酸化系癌細胞における乳酸の酸化経路に沿って代謝させて[18F]−3−フルオロピルビン酸(塩)に変換できるという可能性を支持するものである。
II.2.酸化系癌細胞はインビトロで(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)を取り込んで捕捉する。
細胞および遺伝子サイレンシング。HeLaおよびSiHaヒト頸部扁平上皮癌ならびにSDQ9ヒト喉頭扁平上皮癌はATCCから入手したものであった。グルコース(4.5g/L)、Glutamaxおよび10%FBSを含むDMEM(Thermo Fisher社)において細胞を日常的に培養した。MCT1欠失および対照SiHa細胞をOpen Biosystems社製のベクター:TRCN0000038340(shMCT1−1)およびTRCN0000038339(shMCT1−2)を用いて先に記載したように生成した(De Saedeleerら,Oncogene,2014,33,4060−4068)。対照shRNA(shCTR)はAddgeneプラスミド1864であった。
ウェスタンブロット法。先に記載したようにウェスタンブロット法を行った(Van Heeら,Front Pharmacol,2015,6,228)。一次抗体は、MCT1(Merck Millipore #AB3538P)およびMCT4(Corbet Cら,Cancer Res,2014,74,5507−5519)に対するウサギポリクローナルならびにHsp90(BD Bioscience社#610419)、CD147(BD Bioscience社#555961)およびβ−アクチン(Sigma社#A5441)に対するマウスのモノクローナルであった。
酸素測定法。基礎酸素消費率を製造業者の推奨に従ってSeahorse XF96生体エネルギー分析計で決定した。グルコースおよびグルタミンを含まず10%の透析されたFBSおよびL−乳酸(10mM)、±D−グルコース(25mM)を含むDMEMにおいて実験前に1ウェル当たり20,000個の細胞を18時間平板培養した。実験の終了時にデータを細胞数に対して正規化した。
インビトロトレーサ取り込みアッセイ。Draouiら(Draouiら,Bioorg Med Chem,2013,21,7107−7117)によって記載されている修正版の14C−乳酸取り込みアッセイを使用した。簡単に言うと、250,000個の細胞を平底の24ウェルプレートにおいて平板培養した(t=0)。細胞が付着したとき(t=6h)に、培地をグルコースおよびグルタミンを含まず10%の透析されたFBSおよび10mMのL−乳酸を含むDMEM(pH7.0)と交換した。次いで、細胞を5%のCO中37℃で一晩インキュベートした。実験当日(t=24h)に、細胞培地を除去し、グルコースを含まない修正されたKREBS溶液(HEPESが25mM、NaClが120mM、KClが4.8mM、KHPOが1.2mM、MgSOが1.2mM、CaClが2mM)で細胞を簡単に2回洗浄した。指示されている場合には、10mMのL−乳酸を含むKREBSにおいてこれらの細胞をα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHC、30μM)、AR−C155858(10μM)または媒体で12分間処理した。インキュベーション後、この溶液を10mMのL−乳酸、薬剤または媒体および[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)(45μCi/ml)を含むKREBS溶液で交換した。細胞を(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)のために10分間インキュベートし、その後、この溶液を除去し、細胞をL−乳酸を含む氷冷KREBS溶液(10mM)で3回洗浄した。細胞を0.1NのNaOHで溶解し、Wiper Goldガンマカウンタ(Laboratory Technologies社)を用いて細胞溶解物中で18F活性を測定した。活性は最初の線量の割合(%)として表した。バックグラウンドの決定のために、細胞を含まないウェルを全く同じ方法で処理した。
結果。(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)を酸化系癌細胞による乳酸の取り込みのトレーサ候補として評価するために、SiHa、HeLaおよびSQD9細胞をインビトロアッセイのために選択した。実際には、全ての3種類の細胞株はMCT1を発現し(図4A)、Seahorseバイオアナライザでの酸素測定法により、HeLaおよびSQD9がインビトロではSiHa細胞と少なくとも同じくらい酸化的であることを確認した(図4B)。SiHaについて以前に報告されたように(Sonveauxら,J Clin Invest,2008,118,3930−3942)、細胞はグルコースの非存在下で乳酸を酸化燃料として使用することができた(図4B)。45μCi/mLの本トレーサの送達から6分後に、インビトロでそれらは(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)を取り込んで捕捉した(図4C)。この時点では細胞内線量は、最初の線量の約0.1%(SiHaおよびHeLa)〜約0.3%(SQD9)の範囲であった。従って、(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)は酸化系癌細胞による乳酸の取り込みのトレーサとして定量化することができるとみなした。
II.3.インビボでの(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)の腫瘍による乳酸の取り込みのトレーサとしての検証
インビボトレーサ取り込みアッセイ。全てのインビボ実験は、国家および欧州動物実験規制(national and European animal care regulations)に従い、動物実験のためのUCL倫理委員会(UCL Comite d’Ethique pour l’Experimentation Animale)の認可(認可ID2014/UCL/MD/014)により行った。対象間のばらつきを回避するために、HBSS:マトリゲル(1:1)溶液中の500,000個のSiHa−shCTRおよびSiHa−shMCT1細胞をそれぞれ同じ6.5週齢の雄のNMRIヌードマウスの左および右脇腹に注射した。別のモデルでは、HBSS:マトリゲル(1:1)溶液中の1,000,000個のSQD9細胞を同じ6.5週齢の雄のNMRIヌードマウスの背中に注射した。約10mmの直径の腫瘍に対して実験を行った。すなわち、約3週間の腫瘍細胞を接種した。静脈内注射のために、MCT1阻害剤AR−C155858(Tocris社)を2.5mg/mlの濃度で10%の(2−ヒドロキシプロピル)−β−シクロデキストリンを含む0.9%NaClに溶解した(Vijayら,Pharm Res,2015,32,1894−1906)。静脈内注射のために、MCT1阻害剤AZD3965(Selleckchem社)を最初に100mg/mlの濃度で純粋なエタノールに溶解し、次いで2.5mg/mlの最終濃度で10%(2−ヒドロキシプロピル)−β−シクロデキストリンを含む0.9%NaClで希釈した。AR−C155858(5mg/Kg)、AZD3965(5mg/Kg)または媒体(70μL)の送達から10分後に、(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)(150〜250μCi)を動物の尾静脈に注射した。指示されている時間に、全身の10分間の静的PETイメージング(小動物用Mosaic PET Scanシステム、Philips Medical Systems社)、直後に10分間の透過型CTスキャン(NanoSPECT/CT小動物画像装置、Bioscan社;線源:370MBqの137Cs;X線管電圧:55kVp;投影数:180;曝露時間:1000ms)を35℃に維持されたイソフルランで麻酔したマウスに対して行った。PET画像を減衰のために補正し、1mmのボクセルサイズを有する128×128×120の行列において完全3D反復アルゴリズム3D−RAMLAを用いて再構成した。CT画像を0.221×0.221×0.221mmのボクセルサイズで再構成した。PMODソフトウェアバージョン3.5(PMOD technologies社)を用いてPET画像上に2D関心領域(ROI)を手で描いた。腫瘍の局在化をPET/CT融合された画像上で決定した。胸郭および皮膚をそれぞれ内部および外部限界として使用した。トレーサの取り込みは、手で定められた3D関心体積(VOI)内のボクセル平均値で計算した標準取り込み値(SUV:standard uptake value)として表した。
結果。(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)を腫瘍による乳酸の取り込みのトレーサとして検証するために、shCTRまたはshMCT1のいずれかを発現する2種類のSiHa腫瘍を有するマウスを使用した。このモデルは乳酸の交換に基づく代謝共生が実証さたた元のモデルである(Sonveauxら,J Clin Invest,2008,118,3930−3942)。(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)を150〜250μCiの線量でIV投与した。PET/CT画像から、トレーサ分布がトレーサの注射から30分後の最良の腫瘍コントラストにより時間依存的であることが明らかになった(図5A)。腸および肝臓などのMCTを発現し、かつ乳酸を取り込むことが知られている他の臓器も標識された。この時点で、脱フッ素を示すことができた検出可能な骨の標識は存在しなかった。なお、トレーサの注射から60分後に、若干の脱フッ素が生じたことを示す脊髄および関節の標識を検出した(図5A)。30分で、本トレーサによるSiHa−shCTRとSiHa−shMCT1との見かけ上の区別は存在しなかった。この差異の欠如は、ウェスタンブロット法によって検出されたMCT1サイレンシング時のMCT4の代償性過剰発現によって説明された(図5B)。
従って、(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)のMCT1の薬理学的阻害を検出する能力を評価し、このようにしてできる限り臨床治療を要約することを決定した。トレーサの生体内分布の最初の決定から1日後に、同じグループのマウスを2回目のPET/CTスキャンの10分前にIV投与されるMCT1阻害剤AR−C155858(5mg/Kg)で処置した。(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)の送達から30分後に取得された画像により、AR−C155858によるMCT1阻害が腫瘍、肝臓および腸におけるトレーサの取り込みにおける非常に有意な減少を誘導することが明らかになった(図5Cおよび図5D)。治療前の画像上で既に明らかであった膀胱(図5A、30分)は、全身のMCT1阻害後により肯定的に顕著であり(図5C)、これは尿が(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)のクリアランスの好ましい経路であることを示している。従って、治療後に乳酸のクリアランスのために優先的にMCT2を発現する腎臓が標識された。比較のために同じマウスのPET/CTスキャンが注射された線量のために正規化されたカラースケールにより30分の取得時間で図5Aおよび図5Cに示されていることに留意されたい。
(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)のMCT1の薬理学的阻害を検出する能力を確認するために、この実験をマウスにおいてSQD9ヒト喉頭扁平上皮癌細胞を用いて繰り返した。(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)を250μCiの線量で腫瘍を有するマウスにIV投与し、腫瘍が本トレーサを捕捉して蓄積したことを示すPET−CT画像を取得した。翌日に同じマウスを用いて、2回目のPET/CTスキャンの10分前にMCT1阻害剤AR−C155858(5mg/Kg)またはAZD3965(5mg/Kg)をIV投与した。(±)−[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸(塩)の送達から30分に取得された画像からAR−C155858によるMCT1の阻害、あるいはAZD3965が腫瘍および肝臓におけるトレーサ取り込みの非常に有意な減少を誘導したことが明らかになった(図6)。

Claims (15)

  1. 18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸:
    Figure 2019536735
    またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である化合物。
  2. 前記塩は、[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ナトリウム塩である、請求項1に記載の化合物。
  3. 請求項1または請求項2に記載の化合物と少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
  4. 請求項1または請求項2に記載の化合物を含む薬。
  5. ポジトロン断層法イメージングのための請求項1または請求項2に記載の化合物の使用。
  6. 細胞による乳酸の取り込みのポジトロン断層法イメージングのための請求項1または請求項2に記載の化合物の使用。
  7. 乳酸を取り込む個体の細胞または細胞集団、および/または乳酸の取り込みにおける変化を有する個体の細胞または細胞集団を決定する際に使用するための請求項1または請求項2に記載の化合物。
  8. 個体の腫瘍が乳酸の取り込みおよび/または乳酸の代謝を調節する治療に対して治療応答を示すか否かを予測および/または監視する際に使用するための請求項1または請求項2に記載の化合物。
  9. 前記乳酸の取り込みを調節する治療は、MCTを阻害する薬物、好ましくはMCT1を阻害する薬物から選択される、請求項8に記載の使用のための化合物。
  10. 前記乳酸の代謝を調節する治療は、LDHを阻害する薬物、好ましくはLDHB、MPCまたはALTを阻害する薬物から選択される、請求項8に記載の使用のための化合物。
  11. 組織における乳酸の取り込みのインビトロでの検出のための方法であって、
    (1)前記組織をPETによって検出するのに十分な量の請求項1または請求項2に記載の化合物と接触させる工程と、
    (2)少なくとも1つのPET画像を形成する工程と、
    (3)前記画像を観察することにより乳酸の取り込みを決定する工程と
    を含む方法。
  12. 疾患をイメージングする際に使用するための請求項1または請求項2に記載の化合物であって、
    (1)PETによって検出するのに十分な量の請求項1または請求項2に記載の化合物を個体に投与する工程と、
    (2)前記個体の体内における請求項1または請求項2に記載の化合物の分布を示す少なくとも1つのPET画像を形成する工程と
    を含む化合物。
  13. 個体における疾患の治療法を監視する際に使用するための請求項1または請求項2に記載の化合物であって、
    (1)イメージングを達成するのに十分な量の請求項1または請求項2に記載の化合物を前記個体に投与する工程と、
    (2)前記個体の体内における請求項1または請求項2に記載の化合物からのシグナルを検出することによってPETを用いるイメージングを行って前記治療法に対する前記個体の応答を追跡する工程と
    を含む化合物。
  14. 18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物の製造プロセスであって、
    a)オキシラン−2−カルボン酸ベンジル(II):
    Figure 2019536735
    に対するエポキシド開環反応を[18F]−フッ化物の存在下で行って[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III):
    Figure 2019536735
    を得る工程と、
    b)[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸ベンジル(III)の加水分解を行って[18F]−3−フルオロ−2−ヒドロキシプロピオン酸またはその薬学的に許容される塩および/または溶媒和物を得る工程と
    を含む製造プロセス。
  15. アクリル酸ベンジル(I)のエポキシ化によるオキシラン−2−カルボン酸ベンジル(II)の合成の予備工程を含む、請求項14に記載のプロセス。
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