本発明の第一の目的は、CD160−TMアイソフォームと結合するが、CD160 GPIアンカー型アイソフォームとは結合しない抗体に関するものである。
一実施形態では、本発明の抗体は、CD160−TMアイソフォームの細胞外ドメインと結合する。
一実施形態では、本発明の抗体は、可溶型CD160アイソフォームとは結合しない。
したがって、一実施形態では、本発明は、CD160−TMアイソフォームの細胞外ドメインと結合するが、CD160 GPIアンカー型アイソフォームとも可溶型CD160アイソフォームとも結合しない抗体に言及する。
一実施形態では、前記抗体はモノクローナル抗体である。したがって、一実施形態では、本発明は、CD160−TMアイソフォームの細胞外ドメインと結合するが、CD160 GPIアンカー型アイソフォームとも可溶型CD160アイソフォームとも結合しないモノクローナル抗体に言及する。
別の実施形態では、前記抗体はポリクローナル抗体である。
本明細書で使用される「抗体」または「免疫グロブリン」という用語は同じ意味を有し、本発明では同じように使用される。本明細書で使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原と免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。したがって、抗体という用語は、抗体分子全体のみならず、抗体フラグメントならびに抗体および抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2またはscFvなど)の変異型(誘導体を含む)も包含する。天然の抗体では、2つの重鎖がジスルフィド結合によって互いに連結しており、各重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖と連結している。軽鎖にはラムダ(l)およびカッパ(k)の2種類がある。重鎖には、抗体分子の機能的活性を決定する5種類の主要なクラス(またはアイソタイプ)、すなわち、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEがある。各鎖には異なる配列ドメインが含まれている。軽鎖には、可変ドメイン(VL)および定常ドメイン(CL)の2つのドメインが含まれている。重鎖には、1つの可変ドメイン(VH)および3つの定常ドメイン(CHと総称されるCH1、CH2およびCH3)の4つのドメインが含まれている。軽鎖(VL)および重鎖(VH)の可変領域はともに、抗原に対する結合認識および特異性を決定する。軽鎖(CL)および重鎖(CH)の定常領域ドメインは、重要な生物学的特性、例えば抗体の鎖の会合、分泌、経胎盤性の移動、補体結合およびFc受容体(FcR)との結合などをもたらす。Fvフラグメントは、免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部分であり、1つの軽鎖および1つの重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は抗体結合部位と抗原決定基との間の構造的相補性にある。抗体結合部位は、主として超可変領域または相補性決定領域(CDR)の残基で構成されている。場合によっては、非超可変領域またはフレームワーク領域(FR)の残基が抗体結合部位に加わるか、またはドメイン構造全体、ひいては結合部位に影響を及ぼすこともある。相補性決定領域またはCDRは、一緒になって天然の免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性および特異性を決定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの各軽鎖および重鎖には、それぞれVL−CDR1、VL−CDR2、VL−CDR3およびVH−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3と呼ばれる3つのCDRがある。したがって、抗原結合部位には通常、重鎖および軽鎖それぞれのV領域のCDRのセットを含む6つのCDRが含まれる。フレームワーク領域(FR)はCDRの間に介在するアミノ酸配列を指す。抗体可変ドメイン内の残基は、Kabatらが考案したシステムに従い従来通りに番号付けされる。このシステムについては、Kabatら(1987)のSequences of Proteins of Immunological Interest、米国保健福祉省、NIH、米国(以下「Kabatら」)に記載されている。本明細書ではこの番号付けシステムを用いる。Kabat残基表記は、配列番号の配列中のアミノ酸残基の直線的番号付けに必ずしも直接対応するとは限らない。実際の直線的アミノ酸配列には、基本的な可変ドメイン構造のフレームワークであるか相補性決定領域(CDR)であるかを問わず、含まれるアミノ酸が厳格なKabat番号付けよりも少ない、または多い場合があり、それぞれ構造的構成要素の短縮または構造的構成要素への挿入に対応する。所与の抗体に関する残基の正確なKabat番号付けは、その抗体の配列内にある相同残基とKabat番号付けがされた「基準」となる配列とを比較することによって決定され得る。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムによる残基31〜35B(VH−CDR1)、残基50〜65(VH−CDR2)および残基95〜102(VH−CDR3)に位置する。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムによる残基24〜34(VL−CDR1)、残基50〜56(VL−CDR2)および残基89〜97(VL−CDR3)に位置する。
「インタクトな」抗体とは、抗原結合部位ならびにCLおよび少なくとも重鎖定常ドメインCH1、CH2およびCH3を含む抗体のことである。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異型であり得る。
「可変」という用語は、抗体間でVドメインの特定のセグメントの配列が広範囲にわたって異なっていることを指す。Vドメインは抗原結合を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を決定する。ただし、この可変性は可変ドメインの全長110〜130アミノ酸にわたって一様に分布しているわけではない。V領域は代わりに、15〜30アミノ酸からなるフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的可変性に乏しい区間からなり、これらの区間は、長さがそれぞれ9〜12アミノ酸であり極めて可変性に富む「超可変領域」と呼ばれるさらに短い領域によって隔てられている。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ4つのFRを含み、これらのFRは大部分が3つの超可変領域によってつながったβシート立体配置を取り、この3つの超可変領域はβシート構造をつなぎ、場合によってはその一部を形成するループを形成している。各鎖の超可変領域は、FRによって他方の鎖の超可変領域と極めて近接して結び付けられており、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい)。定常ドメインは抗体と抗原の結合に直接関与することはないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)への抗体の関与などの様々なエフェクター機能を示す。
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは「VH」と呼ばれることもある。軽鎖の可変ドメインは「VL」と呼ばれることもある。これらのドメインは一般に、抗体の最も可変性に富む部分であり、抗原結合部位を含む。
本明細書で使用される「超可変領域」という用語は、抗体のアミノ酸残基うち抗原結合を担うものを指す。超可変領域は一般に「相補性決定領域」または「CDR」のアミノ酸残基(例えば、Kabat番号付けシステム;Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)による番号付けでVLの残基24〜34(L1)前後、50〜56(L2)前後および89〜97(L3)前後ならびにVHの31〜35(H1)前後、50〜65(H2)前後および95〜102(H3)前後)を含む。
一実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、全抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、二量体一本鎖抗体、Fv、scFv、FabおよびF(ab)’2、脱フコシル化抗体、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディからなる群より選択される抗体分子である。
別の実施形態では、前記抗体は、ユニボディ、ドメイン抗体およびナノボディからなる群より選択される抗体フラグメントである。
別の実施形態では、前記抗体は、アフィボディ、アフィリン、アフィチン、アドネクチン、アトリマー、エバシン、DARPin、アンチカリン、アビマー、フィノマー、バーサボディおよびデュオカリンからなる群より選択される抗体模倣物である。
「バーサボディ」は当該技術分野で周知であり、抗体模倣技術の1つを指す。バーサボディは、システインを15%超含み、典型的なタンパク質が有する疎水性コアの代わりにジスルフィド密度の高い足場を形成する3〜5kDaの小さなタンパク質である。
「ナノボディ」は当該技術分野で周知であり、天然に存在する重鎖抗体に固有の構造的特性および機能的特性を有する抗体由来の治療用タンパク質を指す。これらの重鎖抗体には、単一の可変ドメイン(VHH)および2つの定常ドメイン(CH2およびCH3)が含まれている。本明細書で使用される「由来する」という用語は、第一の分子と第二の分子との関係を示す。この用語は一般に、第一の分子と第二の分子との間の構造的類似性を指すものであり、第二の分子に由来する第一の分子に対する工程および入手源に関する限定を含意するものでも包含するものでもない。
「ダイアボディ」という用語は、Vドメインの鎖内ではなく鎖間に対形成が生じることにより二価フラグメント、すなわち、抗原結合部位を2つ有するフラグメントが得られるようVHドメインとVLドメインの間に短いリンカー(約5〜10残基)を用いてsFvフラグメントを構築することによって調製される小さな抗体フラグメントを指す。二重特異性ダイアボディは、異なるポリペプチド鎖に2つの抗体のVHドメインおよびVLドメインが存在する2つの「交差」sFvフラグメントのヘテロ二量体である。ダイアボディについては、例えば、欧州特許第0404097号;国際公開第93/11161号;およびHolligerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)にさらに詳細に記載されている。
「アフィボディ」は当該技術分野で周知であり、ブドウ球菌プロテインAのIgG結合ドメインの1つに由来する58アミノ酸残基のタンパク質ドメインをベースとする親和性タンパク質を指す。
「アンチカリン」は当該技術分野で周知であり、結合特異性がリポカリンに由来するものである、抗体模倣技術を指す。アンチカリンは、デュオカリンと呼ばれる二重標的タンパク質としてもフォーマットされ得る。
「アビマー」は当該技術分野で周知であり、抗体模倣技術の1つを指す。
「ドメイン抗体」は当該技術分野で周知であり、抗体の重鎖または軽鎖の可変領域に相当する、抗体の最小機能的結合単位を指す。
「ユニボディ」は当該技術分野で周知であり、IgG4抗体のヒンジ領域を欠く抗体フラグメントを指す。ヒンジ領域の欠損によって、大きさが実質的に従来のIgG4抗体の半分であり、IgG4抗体の二価の結合領域ではなく一価の結合領域を有する分子が得られる。
DARPin(設計アンキリン反復タンパク質)は当該技術分野で周知であり、非抗体ポリペプチドの結合能を利用するために開発された抗体模倣DRP(設計反復タンパク質)技術を指す。
「抗体フラグメント」という用語は、(例えば、結合、立体障害、安定化/脱安定化、空間分布によって)抗原のエピトープと特異的に相互作用する能力を保持している、インタクト抗体の少なくとも1つの部分、好ましくはインタクト抗体の抗原結合領域または可変領域を指す。抗体フラグメントの例としては、特に限定されないが、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖抗体分子、特にscFv抗体フラグメント、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VHドメインとCHIドメインとからなるFdフラグメント、線状抗体、単一ドメイン抗体、例えばsdAb(VLまたはVH)など、ラクダVHHドメイン、抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体、例えばヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントなどおよび抗体の単離CDRまたはその他のエピトープ結合フラグメントが挙げられる。単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v−NARおよびビス−scFvに抗原結合フラグメントを組み込むこともできる(例えば、HollingerおよびHudson,Nature Biotechnology 23:1126−1136,2005を参照されたい)。フィブロネクチンIII型などのポリペプチドをベースとする足場に抗原結合フラグメントを移植することもできる(フィブロネクチンポリペプチドミニボディについて記載している米国特許第6,703,199号を参照されたい)。抗体をパパインで消化すると、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントと、残りの「Fc」フラグメント(容易に結晶化することができることを表す名称)が生じる。
本明細書で使用される「抗体の機能的フラグメントまたは類似体」とは、完全長抗体と共通する定性的生物活性を有する化合物のことである。例えば、抗IgE抗体の機能的フラグメントまたは類似体とは、IgE免疫グロブリンが高親和性受容体FcεRIとの結合能をもたないようにする、または高親和性受容体FcεRIとの結合能を有する能力を実質的に低下させるようこのような分子と結合することができる機能的フラグメントまたは類似体のことである。
抗体の「Fc」フラグメントは、ジスルフィドにより結合した両H鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能はFc領域の配列によって決まり、Fc領域は、特定のタイプの細胞にみられるFc受容体(FcR)によって認識される部分でもある。
「Fv」とは、完全な抗原認識および抗原結合部位を含む最小限の抗体フラグメントのことである。このフラグメントは、堅く非共有結合性に会合した1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。この2つのドメインのフォールディングにより、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を与える6つの超可変ループ(それぞれH鎖およびL鎖由来する3つのループ)が生じる。ただし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なCDRを3つしか含まない半分のFv)であっても、完全な部位全体より親和性が低いものの、抗原を認識して結合する能力を有する。
本発明の抗体のフラグメントおよび誘導体(別途明記されるか、文脈上明らかに矛盾しない限り、本願で使用される「抗体」という用語に包含されるもの)は、当該技術分野で公知の技術によって作製することができる。「フラグメント」は、インタクト抗体の一部分、一般には抗原結合部位または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2およびFvフラグメント;ダイアボディ;特に限定されないが(1)一本鎖Fv分子、(2)重鎖部分が付随せず、軽鎖可変ドメイン1つのみまたは軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含むそのフラグメントを含む、一本鎖ポリペプチドおよび(3)軽鎖部分が付随せず、重鎖可変領域1つのみまたは重鎖可変領域の3つのCDRを含むそのフラグメントを含む、一本鎖ポリペプチドを含めた、連続するアミノ酸残基の1つの中断されていない配列からなる一次構造を有するポリペプチドである任意の抗体フラグメント(本明細書では「一本鎖抗体フラグメント」または「一本鎖ポリペプチド」と呼ぶ);ならびに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。本発明の抗体のフラグメントは、標準的な方法を用いて得ることができる。
例えば、FabフラグメントまたはF(ab’)2フラグメントは、従来の技術による単離抗体のプロテアーゼ消化によって作製し得る。既知の方法を用いて免疫反応性フラグメントを修飾して、例えば、in vivoのクリアランス速度を低下させ、より望ましい薬物動態プロファイルを得ることができることが理解されよう。ポリエチレングリコール(PEG)でフラグメントを修飾し得る。Fab’フラグメントへのPEGのカップリングおよび部位特異的コンジュゲートの方法については、例えば、開示が参照により本明細書に組み込まれるLeongら,Cytokines 16(3):106−119(2001)およびDelgadoら,Br.J.Cancer 5 73(2):175−182(1996)に記載されている。
一実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は単離されている。本明細書で使用される「単離抗体」とは、その天然環境の構成要素から分離および/または回収した抗体のことである。天然環境の汚染構成要素とは、抗体の診断または治療への使用に干渉し得る物質のことであり、酵素、ホルモンおよびその他のタンパク質性または非タンパク質性の構成要素がこれに含まれ得る。好ましい実施形態では、(1)抗体がローリー法による測定で95重量%超、最も好ましくは99重量%超になるまで;(2)スピニングカップ配列決定装置の使用によりアミノ酸配列のN末端側もしくは内部の少なくとも15残基が得られる程度まで;または(3)還元条件下もしくは非還元条件下でのSDS−PAGEにより、クーマシーブルー染色もしくは好ましくは銀染色を用いて均一性が示されるまで、抗体を精製する。単離抗体には、抗体の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在しなくなることから、組換え細胞内にあるin situの抗体が含まれる。しかし、少なくとも1つの精製段階によって単離抗体を調製するのが通常である。
本明細書で使用される「CD160」という用語は、当該技術分野でのその一般的な意味を有し、CD160分子を指す。CD160遺伝子はヒト第1番染色体上に位置することが明らかにされており、それに対応するタンパク質は最初、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型細胞表面分子として特徴付けられた。CD160−TMアイソフォーム、CD160 GPIアンカー型アイソフォームおよび可溶型CD160アイソフォームの3種類のCD160アイソフォームが存在する。CD160−GPIは、腸上皮内Tリンパ球ならびにNK細胞、TCRγδおよび細胞傷害性エフェクターCD8brightCD28−Tリンパ球を含めた循環リンパ球のマイナーサブセットに発現する(ANUMANTHANら,1998,J Immunol;161:2780−2790;MAIZAら,J.Exp.Med.,vol.178,p:1121−1126,1993)。CD160膜貫通型アイソフォーム(「CD160−TM」)については、Giustiniani Jら(J Immunol.2009 Jan 1;182(1):63−71.)および国際公開第2008155363号に記載されており、配列番号1で記載されるアミノ酸配列を特徴とする。CD160−TMアイソフォームの細胞外ドメインは、配列番号1の26位のアミノ酸残基から189位のアミノ酸残基までの範囲のアミノ酸配列によって定義され得る。CD160 GPIアンカー型アイソフォーム(「CD160−GPI」)については、Nikolova M.ら(Int Immunol.2002 May;14(5):445−51.)および国際公開第2006015886号に記載されており、C末端でGPIアンカーと融合した配列番号2で記載されるアミノ酸配列を特徴とする。CD160可溶型アイソフォームについては、Giustiniani J.ら(J Immunol.2007 Feb 1;178(3):1293−300)に記載されており、配列番号3で記載されるアミノ酸配列を特徴とする。配列番号1〜3では、アミノ酸1〜25はシグナルペプチドに対応するものであり、したがって、発現したタンパク質に存在しなくてもよい。
配列番号1:CD160−TMアイソフォーム
MLLEPGRGCCALAILLAIVDIQSGGCINITSSASQEGTRLNLICTVWHKKEEAEGFVVFLCKDRSGDCSPETSLKQLRLKRDPGIDGVGEISSQLMFTISQVTPLHSGTYQCCARSQKSGIRLQGHFFSILFTETGNYTVTGLKQRQHLEFSHNEGTLSSGFLQEKVWVMLVTSLVALQGMSKRAVSTPSNEGAIIFLPPWLFSRRRRLERMSRGREKCYSSPGYPQESSNQFH
配列番号2:CD160 GPIアンカー型アイソフォーム
MLLEPGRGCCALAILLAIVDIQSGGCINITSSASQEGTRLNLICTVWHKKEEAEGFVVFLCKDRSGDCSPETSLKQLRLKRDPGIDGVGEISSQLMFTISQVTPLHSGTYQCCARSQKSGIRLQGHFFSILFTETGNYTVTGLKQRQHLEFSHNEGTLSS
配列番号3:CD160可溶型アイソフォーム
MLLEPGRGCCALAILLAIVDIQSGGCINITSSASQEGTRLNLICTVWHKKEEAEGFVVFLCKDRSGDCSPETSLKQLRLKRDPGIDGVGEISSQLMFTISQVTPLHSGTYQCCARSQKSGIRLQGHFFSILFTETGNYTVTGLKQRQHLEFSHNEGTLSS
本明細書で使用される「結合」という用語は、例えば共有結合性相互作用、静電相互作用、疎水性相互作用およびイオン性相互作用ならびに/あるいは塩橋および水架橋などの相互作用を含めた水素結合性相互作用による、2分子間の直接会合を指す。特に、本明細書で抗体と所定の抗原またはエピトープとの結合に関連して使用される「結合」という用語は通常、約10−7M以下、例えば約10−8M以下など、例えば約10−9M以下、約10−10M以下または約10−11Mもしくはさらにそれ以下などのKDに相当する親和性での結合のことである。抗体のKDを測定する方法は当該技術分野で周知であり、特に限定されないが、BIAcore 3000機器にリガンドとして可溶型の抗原、分析物として抗体を用いる表面プラズモン共鳴(SPR)技術が挙げられる。BIACORE(登録商標)(GE Healthcare社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)は、モノクローナル抗体のエピトープビンパネルに日常的に用いられる様々な表面プラズモン共鳴アッセイフォーマットの1つである。これ以外の従来の技術、例えばScatchardら(Ann.N.Y.Acad.Sci.USA 51:660(1949))によって記載されている技術を用いても抗体の親和性を容易に求めることができる。抗体の抗原、細胞または組織に対する結合特性は一般に、例えば免疫組織化学(IHC)および/または蛍光標示式細胞分取(FACS)などの免疫蛍光ベースのアッセイを含めた免疫検出法を用いて求め評価し得る。抗体は通常、所定の抗原と同一でも近縁でもない非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)と結合する場合のKDより少なくとも10倍小さいKD、例えば少なくとも100倍小さいKDなど、例えば少なくとも1,000倍小さいKD、例えば少なくとも10,000倍小さいKDなど、例えば少なくとも100,000倍小さいKDに相当する親和性で所定の抗原と結合する。抗体のKDが極めて小さい(つまり、抗体の親和性が高い)場合、それが抗原と結合するときのKDは通常、その非特異的抗原に対するKDより少なくとも10,000倍小さいものとなる。ある抗体と抗原またはエピトープとの結合が(例えば、BIAcore 3000機器にリガンドとして可溶型の抗原、分析物として抗体を用いるプラズモン共鳴(SPR)技術を用いて)検出不可能なものであるか、その抗体および異なる化学構造またはアミノ酸配列を有する抗原またはエピトープよって検出される結合より100倍、500倍、1000倍または1000倍超少ない場合、その抗体は実質的にその抗原またはエピトープと結合しないと考えられる。
本明細書で使用される「特異性」という用語は、抗体がCD160−TMなどの抗原上に提示されるエピトープと結合することができるが、CD160 GPIアンカー型アイソフォームおよびCD160可溶型アイソフォームなどの非CD160−TMタンパク質との検出可能な反応性が相対的に小さいことを指す。特異性は、本明細書の他の箇所に記載されるように、例えばBiacore機器を用いて、結合アッセイまたは競合結合アッセイにより相対的に求めることができる。特異性は、他の無関係な分子との非特異的結合(この場合、特異的抗原はCD160−TMポリペプチドである)と比較した特異的抗原との結合の親和性/結合活性が、例えば約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、10.000:1またはそれ以上であることによって示され得る。本明細書で使用される「親和性」という用語は、抗体とエピトープとの結合の強さを意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab−Ag]として定義される解離定数Kdによって得られ、式中、[Ab−Ag]は抗体抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は未結合抗体のモル濃度であり、[Ag]は未結合抗原のモル濃度である。親和性定数Kaは1/Kdにより定義される。mAbの親和性を求める好ましい方法は、Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988)、Coliganら編,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)およびMuller,Meth.Enzymol.92:589−601(1983)にみることができ、上記の参考文献は全体が参照により本明細書に組み込まれる。mAbの親和性を求める方法として当該技術分野において周知で好ましい標準的なものとして、Biacore機器の使用がある。
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号1のアミノ酸残基175〜189または配列番号1のアミノ酸残基175〜189と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列の少なくとも1つのアミノ酸残基を含むエピトープと結合する。配列番号1のアミノ酸残基175〜189は配列番号5(LVALQGMSKRAVSTP)の配列に対応する。
本明細書で使用される「エピトープ」という用語は、抗体が結合する1種または複数種のタンパク質上に位置する特定のアミノ酸配置を指す。エピトープは多くの場合、アミノ酸または糖側鎖などの分子からなる化学的に活性な表面集団からなり、特有の三次元構造的特性および特有の電荷特性を有する。エピトープは直鎖状であることも、あるいは立体構造を有する、すなわち、必ずしも隣接しているわけではない抗原の様々な領域にアミノ酸の配列を2つ以上含むこともある。
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号1のアミノ酸残基175〜189または配列番号1のアミノ酸残基175〜189と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列のアミノ酸残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個または15個含むエピトープと結合する。
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号5(LVALQGMSKRAVSTP)で記載されるアミノ酸配列または配列番号5と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むエピトープと結合する。
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号1のアミノ酸残基62〜85または配列番号1のアミノ酸残基62〜85と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列の少なくとも1つのアミノ酸残基を含むエピトープと結合する。配列番号1のアミノ酸残基62〜85は配列番号4(KDRSGDCSPETSLKQLRLKRDPGI)の配列に対応する。
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号1のアミノ酸残基62〜85または配列番号1のアミノ酸残基62〜85と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列のアミノ酸残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個または24個含むエピトープと結合する。
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号4(KDRSGDCSPETSLKQLRLKRDPGI)で記載されるアミノ酸配列または配列番号4と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むエピトープと結合する。
一実施形態では、本発明の抗体は立体構造エピトープと結合する。
一実施形態では、本発明の抗体は、
配列番号1のアミノ酸残基175〜189または配列番号1のアミノ酸残基175〜189と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列の少なくとも1つのアミノ酸残基と、
配列番号1のアミノ酸残基62〜85または配列番号1のアミノ酸残基62〜85と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列の少なくとも1つのアミノ酸残基と
を含む、立体構造エピトープと結合する。
一実施形態では、本発明の抗体は、
配列番号1のアミノ酸残基175〜189または配列番号1のアミノ酸残基175〜189と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列のアミノ酸残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個または15個と、
配列番号1のアミノ酸残基62〜85または配列番号1のアミノ酸残基62〜85と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列のアミノ酸残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個または24個と
を含む、立体構造エピトープと結合する。
一実施形態では、本発明の抗体は、
配列番号5(LVALQGMSKRAVSTP)で記載されるアミノ酸配列または配列番号5と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有するアミノ酸配列と、
配列番号1のアミノ酸残基62〜85または配列番号1のアミノ酸残基62〜85と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列のアミノ酸残基を1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個または24個と
を含む、立体構造エピトープと結合する。
一実施形態では、本発明の抗体は、
配列番号5(LVALQGMSKRAVSTP)で記載されるアミノ酸配列または配列番号5と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有するアミノ酸配列と、
配列番号4(KDRSGDCSPETSLKQLRLKRDPGI)で記載されるアミノ酸配列または配列番号4と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有するアミノ酸配列と
を含むか、これよりなる立体構造エピトープと結合する。
いくつかの実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、配列番号4(KDRSGDCSPETSLKQLRLKRDPGI)で記載されるアミノ酸配列および配列番号5(LVALQGMSKRAVSTP)で記載されるアミノ酸配列内のCD160−TMアイソフォームの細胞外ドメインと結合する。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、「mAb」などの用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団、すなわち、含まれる個々の抗体が、小数存在する可能性のある天然の変異を除いて同一である集団から得られる。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。モノクローナル抗体はKohlerおよびMilstein(Nature,256:495,1975)の方法を用いて作製し得る。本発明に有用なモノクローナル抗体を作製するには、マウスまたはその他の適切な宿主動物を適切な間隔で(例えば、週2回、週1回、月2回または月1回)適切な形態の抗原(すなわち、CD160−TMポリペプチド)で免疫感作する。動物を屠殺する前1週間以内に抗原による最後の「追加免疫」を実施してもよい。多くの場合、免疫感作時に免疫アジュバントを使用するのが望ましい。適切な免疫アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ミョウバン、Ribiアジュバント、Hunter’s Titermax、QS21もしくはQuilAなどのサポニンアジュバントまたはCpG含有免疫刺激オリゴヌクレオチドが挙げられる。これ以外にも適切なアジュバントが当該分野で周知である。動物は皮下、腹腔内、筋肉内、静脈内、鼻腔内またはその他の経路により免疫感作し得る。所与の動物を複数の経路により複数の形態の抗原で免疫感作してもよい。ただし、「モノクローナル」という修飾語は、何らかの特定の方法による抗体の作製を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、最初にKohlerら,Nature,256:495(1975)が記載したハイブリドーマ法で調製してもよく、あるいは細菌、真核動物または植物の細胞に組換えDNA法を用いて作製してもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。また、例えばClacksonら,Nature,352:624−628(1991)およびMarksら,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)に記載されている技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから「モノクローナル抗体」を単離してもよい。
いくつかの実施形態では、本発明のモノクローナル抗体はキメラ抗体、特にキメラマウス/ヒト抗体である。本明細書で使用される「キメラ抗体」という用語は、非ヒト抗体のVHドメインおよびVLドメインと、ヒト抗体のCHドメインおよびCLドメインとを含む抗体を指す。一実施形態では、「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なる、または変化したクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域、あるいはキメラ抗体に新たな特性を与える全く異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬物などと連結するように定常領域(すなわち、重鎖および/または軽鎖)あるいはその一部分を変化させた、置換した、あるいは交換した抗体分子;あるいは(b)可変領域またはその一部分を抗原特異性が異なる、または変化した可変領域で変化させた、置換した、または交換した抗体分子である。キメラ抗体としては、霊長類化抗体、特にヒト化抗体も挙げられる。さらに、キメラ抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にもみられない残基を含むものであり得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに高めるために施すものである。さらなる詳細に関しては、Jonesら,Nature 321:522−525(1986);Riechmannら,Nature 332:323−329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984)を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、本発明のモノクローナル抗体はヒト化抗体である。特に、前記ヒト化抗体では、可変ドメインがヒトアクセプターフレームワーク領域と、存在する場合は任意選択でヒト定常ドメインと、マウスCDRなどの非ヒトドナーCDRとを含む。本発明では、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体の可変領域フレームワークおよび定常領域を有するが、それまでの非ヒト抗体のCDRを保持している抗体を指す。一実施形態では、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む。ほとんどの場合、ヒト化抗体およびその抗体フラグメントは、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が所望の特異性、親和性および性能を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基に置き換わっているヒト免疫グロブリン(レシピエントの抗体または抗体フラグメント)であり得る。いくつかの場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基がそれに対応する非ヒト残基に置き換わっている。さらに、ヒト化抗体/抗体フラグメントは、レシピエント抗体にも移入するCDRまたはフレームワーク配列にもみられない残基を含み得る。このような抗体は、結合領域を得た非ヒト抗体の結合特異性は維持されるが、非ヒト抗体に対する免疫反応は回避されるよう設計される。これらの修飾によってさらに、抗体または抗体フラグメントの性能を高め最適化することができる。ヒト化抗体またはその抗体フラグメントは一般に、CDR領域の全体またはほぼ全体が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域の全体または相当部分がヒト免疫グロブリン配列のFR領域である少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメインのほぼ全体を含むことになる。ヒト化抗体または抗体フラグメントは、免疫グロブリン定常領域(Fc)、通常はヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部分も含み得る。さらなる詳細については、Jonesら,Nature,321:522−525,1986;Reichmannら,Nature,332:323−329,1988;Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596,1992を参照されたい。
いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体はヒトモノクローナル抗体である。本明細書で使用される「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むものとする。本発明のヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列がコードしないアミノ酸残基を含み得る(例えば、in vitroでのランダム変異誘発または部位特異的変異誘発またはin vivoでの体細胞変異によって導入された変異)。ただし、一実施形態では、本明細書で使用される「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列に移植した抗体は含まないものとする。
一実施形態では、本発明の抗体は以下のCDR:
VL−CDR1:X11がYまたはSであり、X12がGまたはYである、AGTSSDVGGY−X11−X12−VS(配列番号6);
VL−CDR2:YDSYRPS(配列番号7);および
VL−CDR3:X3がSまたはYである、SS−X3−TYYSTRV(配列番号8)
のうち少なくとも1つまたは少なくとも2つのものを含む、軽鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下のCDR:
VL−CDR1:X11がYまたはSであり、X12がGまたはYである、AGTSSDVGGY−X11−X12−VS(配列番号6);
VL−CDR2:YDSYRPS(配列番号7);および
VL−CDR3:X3がSまたはYである、SS−X3−TYYSTRV(配列番号8)
を含む、軽鎖を含む。
一実施形態では、VL−CDR1は、AGTSSDVGGYYGVS(配列番号20)、AGTSSDVGGYYYVS(配列番号21)、AGTSSDVGGYSGVS(配列番号22)およびAGTSSDVGGYSYVS(配列番号23)から選択される配列を有する。
一実施形態では、VL−CDR3は、SSSTYYSTRV(配列番号24)およびSSYTYYSTRV(配列番号25)から選択される。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VL−CDR1:AGTSSDVGGYYGVS(配列番号20);
VL−CDR2:YDSYRPS(配列番号7);および
VL−CDR3:SSSTYYSTRV(配列番号24)
を含む、軽鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VL−CDR1:AGTSSDVGGYYGVS(配列番号20);
VL−CDR2:YDSYRPS(配列番号7);および
VL−CDR3:SSYTYYSTRV(配列番号25)
を含む、軽鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VL−CDR1:AGTSSDVGGYYYVS(配列番号21);
VL−CDR2:YDSYRPS(配列番号7);および
VL−CDR3:SSSTYYSTRV(配列番号24)
を含む、軽鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VL−CDR1:AGTSSDVGGYYYVS(配列番号21);
VL−CDR2:YDSYRPS(配列番号7);および
VL−CDR3:SSYTYYSTRV(配列番号25)
を含む、軽鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VL−CDR1:AGTSSDVGGYSGVS(配列番号22);
VL−CDR2:YDSYRPS(配列番号7);および
VL−CDR3:SSSTYYSTRV(配列番号24)
を含む、軽鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VL−CDR1:AGTSSDVGGYSGVS(配列番号22);
VL−CDR2:YDSYRPS(配列番号7);および
VL−CDR3:SSYTYYSTRV(配列番号25)
を含む、軽鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VL−CDR1:AGTSSDVGGYSYVS(配列番号23);
VL−CDR2:YDSYRPS(配列番号7);および
VL−CDR3:SSSTYYSTRV(配列番号24)
を含む、軽鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VL−CDR1:AGTSSDVGGYSYVS(配列番号23);
VL−CDR2:YDSYRPS(配列番号7);および
VL−CDR3:SSYTYYSTRV(配列番号25)
を含む、軽鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下のCDR:
VH−CDR1:X3がSまたはYである、NY−X3−MN(配列番号9)
VH−CDR2:X1がYまたはGであり、X10がNまたはSである、X1−IYGSSRYI−X10−YADFVKG(配列番号10);および
VH−CDR3:GMDV(配列番号11)
のうち少なくとも1つまたは少なくとも2つのものを含む、重鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下のCDR:
VH−CDR1:X3がSまたはYである、NY−X3−MN(配列番号9)
VH−CDR2:X1がYまたはGであり、X10がNまたはSである、X1−IYGSSRYI−X10−YADFVKG(配列番号10);および
VH−CDR3:GMDV(配列番号11)
を含む、重鎖を含む。
一実施形態では、VH−CDR1は、NYSMN(配列番号26)およびNYYMN(配列番号27)から選択される配列を有する。
一実施形態では、VH−CDR2は、YIYGSSRYINYADFVKG(配列番号28)、YIYGSSRYISYADFVKG(配列番号29)、GIYGSSRYINYADFVKG(配列番号30)およびGIYGSSRYISYADFVKG(配列番号31)から選択される配列を有する。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VH−CDR1:NYSMN(配列番号26);
VH−CDR2:YIYGSSRYINYADFVKG(配列番号28);および
VH−CDR3:GMDV(配列番号11)
を含む、重鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VH−CDR1:NYSMN(配列番号26);
VH−CDR2:YIYGSSRYISYADFVKG(配列番号29);および
VH−CDR3:GMDV(配列番号11)
を含む、重鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VH−CDR1:NYSMN(配列番号26);
VH−CDR2:GIYGSSRYINYADFVKG(配列番号30);および
VH−CDR3:GMDV(配列番号11)
を含む、重鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VH−CDR1:NYSMN(配列番号26);
VH−CDR2:GIYGSSRYISYADFVKG(配列番号31);および
VH−CDR3:GMDV(配列番号11)
を含む、重鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VH−CDR1:NYYMN(配列番号27);
VH−CDR2:YIYGSSRYINYADFVKG(配列番号28);および
VH−CDR3:GMDV(配列番号11)
を含む、重鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VH−CDR1:NYYMN(配列番号27);
VH−CDR2:YIYGSSRYISYADFVKG(配列番号29);および
VH−CDR3:GMDV(配列番号11)
を含む、重鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VH−CDR1:NYYMN(配列番号27);
VH−CDR2:GIYGSSRYINYADFVKG(配列番号30);および
VH−CDR3:GMDV(配列番号11)
を含む、重鎖を含む。
一実施形態では、本発明の抗体は以下の3つのCDR:
VH−CDR1:NYYMN(配列番号27);
VH−CDR2:GIYGSSRYISYADFVKG(配列番号31);および
VH−CDR3:GMDV(配列番号11)
を含む、重鎖を含む。
いくつかの実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、i)配列番号6で記載され、X11がYまたはSであり、X12がGまたはYであるVL−CDR1、ii)配列番号7で記載されるVL−CDR2およびiii)配列番号8で記載され、X3がSまたはYであるVL−CDR3を含む軽鎖と、i)配列番号9で記載され、X3がSまたはYであるVH−CDR1、ii)配列番号10で記載され、X1がYまたはGであり、X10がNまたはSであるVH−CDR2およびiii)配列番号11で記載されるVH−CDR3を含む重鎖とを含む。
本発明では、重鎖および軽鎖のCDR1、2および3のいずれかは、対応する配列番号で挙げられる特定のCDRまたはCDRのセットと少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有するアミノ酸配列を有することを特徴とするものであり得る。
いくつかの実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、i)A12のVL−CDR1、ii)A12のVL−CDR2およびiii)A12のVL−CDR3を含む軽鎖と、i)A12のVH−CDR1、ii)A12のVH−CDR2およびiii)A12のVH−CDR3を含む重鎖とを含む。
本発明では、A12抗体のVH領域は配列番号12の配列からなる。したがって、A12のVH−CDR1は、配列番号12の31位のアミノ酸残基から35位のアミノ酸残基までの範囲の配列によって定義される。したがって、A12のVH−CDR2は、配列番号12の50位のアミノ酸残基から66位のアミノ酸残基までの範囲の配列によって定義される。したがって、A12のVH−CDR3は、配列番号12の103位のアミノ酸残基から106位のアミノ酸残基までの範囲の配列によって定義される。
配列番号12:A12抗体のVH領域FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
EVQLVESGGSLVKPGGSLRLSCAASGFTFSNYSMNWVRQAPGKGLEWISYIYGSSRYISYADFVKGRFTISRDNATNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCVRSYYGGMDVWGRGTLVTVSS
本発明では、A12抗体のVL領域は配列番号13の配列からなる。したがって、A12のVL−CDR1は、配列番号13の23位のアミノ酸残基から36位のアミノ酸残基までの範囲の配列によって定義される。したがって、A12のVL−CDR2は、配列番号13の52位のアミノ酸残基から58位のアミノ酸残基の範囲の配列によって定義される。したがって、A12のVL−CDR3は、配列番号13の91位のアミノ酸残基から100位のアミノ酸残基までの範囲の配列によって定義される。
配列番号13:A12抗体のVL領域FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
QSVLTQPASVSGSPGQSITISCAGTSSDVGGYYGVSWYQQHPGKAPKLMIYYDSYRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSSTYYSTRVFGGGTKLEK
一実施形態では、A12抗体の軽鎖は以下のCDR:i)VL−CDR1:配列番号20、ii)VL−CDR2:配列番号7およびiii)VL−CDR3:配列番号24を含み、A12抗体の重鎖は以下のCDR:i)VH−CDR1:配列番号26、ii)VH−CDR2:配列番号29およびiii)VH−CDR3:配列番号11を含む。
いくつかの実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、i)B6のVL−CDR1、ii)B6のVL−CDR2およびiii)B6のVL−CDR3を含む軽鎖と、i)B6のVH−CDR1、ii)B6のVH−CDR2およびiii)B6のVH−CDR3を含む重鎖とを含む。
本発明では、B6抗体のVH領域は配列番号14の配列からなる。したがって、B6のVH−CDR1は、配列番号14の31位のアミノ酸残基から35位のアミノ酸残基までの範囲の配列によって定義される。したがって、B6のVH−CDR2は、配列番号14の50位のアミノ酸残基から66位のアミノ酸残基までの範囲の配列によって定義される。したがって、B6のVH−CDR3は、配列番号14の103位のアミノ酸残基から106位のアミノ酸残基までの範囲の配列によって定義される。
配列番号14:B6抗体のVH領域FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
EVQLVESGGSLVKPGGSLRLSCAASGFTFSNYYMNWVRQAPGKGLEWISGIYGSSRYINYADFVKGRFTISRDNATNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCVRSYYGGMDVWGRGTLVTVSS
本発明では、B6抗体のVL領域は配列番号15の配列からなる。したがって、B6のVL−CDR1は、配列番号15の23位のアミノ酸残基から36位のアミノ酸残基までの範囲の配列によって定義される。したがって、B6のVL−CDR2は、配列番号15の52位のアミノ酸残基から58位のアミノ酸残基までの範囲の配列によって定義される。したがって、B6のVL−CDR3は、配列番号15の91位のアミノ酸残基から100位のアミノ酸残基までの範囲の配列によって定義される。
配列番号15:B6抗体のVL領域FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
QSVLTQPASVSGSPGQSITISCAGTSSDVGGYSYVSWYQQHPGKAPKLMIYYDSYRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYTYYSTRVFGGGTKLEK
一実施形態では、B6抗体の軽鎖は以下のCDR:i)VL−CDR1:配列番号23、ii)VL−CDR2:配列番号7およびiii)VL−CDR3:配列番号25を含み、B6抗体の重鎖は以下のCDR:i)VH−CDR1:配列番号27、ii)VH−CDR2:配列番号30およびiii)VH−CDR3:配列番号11を含む。
いくつかの実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号12または配列番号14と少なくとも70%の同一性を有する重鎖を含む抗体である。
いくつかの実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号13または配列番号15と少なくとも70%の同一性を有する軽鎖を含む抗体である。
いくつかの実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号12または配列番号14と少なくとも70%の同一性を有する重鎖と、配列番号13または配列番号15と少なくとも70%の同一性を有する軽鎖とを含む、抗体である。
本発明では、第二のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有する第一のアミノ酸配列は、第一の配列が、第二のアミノ酸配列と70%;71%;72%;73%;74%;75%;76%;77%;78%;79%;80%;81%;82%;83%;84%;85%;86%;87%;88%;89%;90%;91%;92%;93%;94%;95%;96%;97%;98%;99%または100%の同一性を有することを意味する。配列同一性は多くの場合、同一性(または類似性もしくは相同性)の割合として測定され;その割合が高いほど2つの配列の類似性が高い。比較のための配列のアライメントの方法は当該技術分野で周知である。様々なプログラムおよびアライメントアルゴリズムがSmithおよびWaterman,Adv.Appl.Math.,2:482,1981;NeedlemanおよびWunsch,J.Mol.Biol.,48:443,1970;PearsonおよびLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85:2444,1988;HigginsおよびSharp,Gene,73:237−244,1988;HigginsおよびSharp,CABIOS,5:151−153,1989;Corpetら,Nuc.Acids Res.,16:10881−10890,1988;Huangら,Comp.Appls Biosci.,8:155−165,1992;ならびにPearsonら,Meth.Mol.Biol.,24:307−31,1994)に記載されている。Altschulら,Nat.Genet.,6:119−129,1994には、配列アライメント法および相同性の算出に関する詳細な考慮事項が記載されている。例として、アライメントツールであるALIGN(MyersおよびMiller,CABIOS 4:11−17,1989)またはLFASTA(PearsonおよびLipman,1988)を用いて配列比較を実施し得る(Internet Program(登録商標)1996,W.R.Pearsonおよびバージニア大学,fasta20u63 version 2.0u63,1996年12月に公開)。ALIGNでは配列全体を互いに比較し、LFASTAでは局所類似性の領域を比較する。これらのアライメントツールおよびそれぞれに指導書は、例えばインターネット上のNCSAウェブサイトで入手可能である。あるいは、約30アミノ酸を超えるアミノ酸配列の比較には、デフォルトのパラメータ(gap存在コスト11、1残基当たりのギャップコスト1)に設定したデフォルトのBLOSUM62マトリックスを用いて、Blast 2 sequences機能を用いることができる。短いペプチド(約30アミノ酸より少ないもの)のアライメントを実施する際には、デフォルトのパラメータ(オープンギャップペナルティ9、伸長ギャップペナルティ1)に設定したPAM30マトリックスを用い、Blast 2 sequences機能を用いてアライメントを実施するべきである。BLAST配列比較システムは、例えばNCBIのウェブサイトから入手可能であり;Altschulら,J.Mol.Biol.,215:403−410,1990;GishおよびStates,Nature Genet.,3:266−272,1993;Maddenら,Meth.Enzymol.,266:131−141,1996;Altschulら,Nucleic Acids Res.,25:3389−3402,1997;ならびにZhangおよびMadden,Genome Res.,7:649−656,1997も参照されたい。
いくつかの実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号12または配列番号14と同一である重鎖を含む、抗体である。
いくつかの実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号13または配列番号15と同一である軽鎖を含む、抗体である。
いくつかの実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号12または配列番号14と同一である重鎖と、配列番号13または配列番号15と同一である軽鎖とを含む、抗体である。
一実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号12と同一である重鎖と、配列番号13と同一である軽鎖とを含む、抗体である。一実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号12と同一である重鎖と、配列番号15と同一である軽鎖とを含む、抗体である。一実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号14と同一である重鎖と、配列番号13と同一である軽鎖とを含む、抗体である。一実施形態では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、配列番号14と同一である重鎖と、配列番号15と同一である軽鎖とを含む、抗体である。
一実施形態では、本発明の抗体の重鎖および/または軽鎖は、本明細書の上に明記した配列番号と比較して保存的配列改変、例えば、1〜10個の保存的配列改変を含む。「保存的配列改変」という用語は、そのアミノ酸配列を含むタンパク質の生物学的機能に有意な影響も変化も与えることのないアミノ酸改変を指す。このような保存的改変としては、アミノ酸の置換、付加および欠失が挙げられる。改変は、部位特異的変異誘発およびPCRを介する変異誘発などの当該技術分野で公知の標準的技術によってタンパク質に導入することができる。「保存的置換」とは、あるアミノ酸をこれと類似した特性を有する別のアミノ酸に置き換える置換のことであり、したがって、ペプチド化学の当業者には、ポリペプチドの二次構造および疎水性親水性が実質的に変化しないことが予想されよう。したがって、アミノ酸置換は一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えばその疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づくものとなる。上記の様々な特性を考慮に入れた例示的置換は当業者に周知であり、アルギニンとリジン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとトレオニン;グルタミンとアスパラギン;およびバリンとロイシンとイソロイシンがこれに含まれる。アミノ酸置換はさらに、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の類似性に基づいて施され得る。例えば、負荷電アミノ酸としては、アスパラギン酸とグルタミン酸が挙げられ;正荷電アミノ酸としては、リジンとアルギニンが挙げられ;親水性値の類似した非荷電極性頭部基を有するアミノ酸としては、ロイシンとイソロイシンとバリン;グリシンとアラニン;アスパラギンとグルタミン;およびセリンとトレオニンとフェニルアラニンとチロシンが挙げられる。保存的変化を示し得るその他のアミノ酸のグループとしては、(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、hisが挙げられる。類似した側鎖を有するその他のアミノ酸残基のファミリーが当該技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。したがって、本発明の抗体内の1つまたは複数のアミノ酸残基を同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基に置き換えてよく、その変化した抗体のCD160−TMとの結合を試験することができる。
いくつかの実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、Fab、F(ab’)2、Fab’およびscFvからなる群より選択される。本明細書で使用される「Fab」という用語は、分子量が約50,000であり、抗原結合活性を有し、IgGをプロテアーゼのパパインで処理することによって得られるフラグメントのうちH鎖のN末端側の約半分とL鎖全体がジスルフィド結合を介して互いに結合している、抗体フラグメントを表す。「F(ab’)2」という用語は、IgGをプロテアーゼのペプシンで処理することによって得られるフラグメントのうち、分子量が約100,000であり、抗原結合活性を有し、ヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合したFabよりわずかに大きい抗体フラグメントを指す。「Fab’」という用語は、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られ、分子量が約50,000であり、抗原結合活性を有する抗体フラグメントを指す。Fab’−SHとは、本明細書では、定常ドメインのシステイン残基(1つまたは複数)が遊離チオール基を有するFab’の名称である。一本鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドとは、ペプチドをコードするリンカーによって連結したVHをコードする遺伝子とVLをコードする遺伝子とを含む遺伝子融合体から通常発現する共有結合したVH::VLヘテロ二量体のことである。本発明のscFvフラグメントは、好ましくは遺伝子組換え技術を用いることにより、適切な立体構造で保持されたCDRを含む。
いくつかの実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、CD160−TMアイソフォームとの結合に関して、i)配列番号6で記載され、X11がYまたはSであり、X12がGまたはYであるVL−CDR1、ii)配列番号7で記載されるVL−CDR2およびiii)配列番号8で記載され、X3がSまたはYであるVL−CDR3を含む軽鎖と、i)配列番号9で記載され、X3がSまたはYであるVH−CDR1、ii)配列番号10で記載され、X1がYまたはGであり、X10がNまたはSであるVH−CDR2(配列番号10)およびiii)配列番号11で記載されるVH−CDR3を含む重鎖とを含むモノクローナル抗体と交差競合する。
いくつかの実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、CD160−TMアイソフォームとの結合に関して、上で定義したA12のCDRを含むモノクローナル抗体と交差競合する。
いくつかの実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、CD160−TMアイソフォームとの結合に関して、上で定義したB6のCDRを含むモノクローナル抗体と交差競合する。
「交差競合する」という用語は、抗原の特定の領域との結合能を共有するモノクローナル抗体を指す。本開示では、「交差競合する」モノクローナル抗体は、標準的な競合結合アッセイで別のモノクローナル抗体が抗原と結合するのを干渉する能力を有する。このようなモノクローナル抗体は、非限定的な理論によれば、それが競合する抗体と同じエピトープまたは近縁であるか近接する(例えば、構造的に類似している、または空間的に近接している)エピトープと結合し得る。抗体Aが抗体Bの結合を前記抗体のいずれか一方を欠く陽性対照と比較して少なくとも60%、具体的には少なくとも70%、より具体的には少なくとも80%減少させ、その逆も同様であれば、交差競合が存在する。当業者に理解されるように、競合は様々なアッセイの設定で評価し得る。適切なアッセイの1つでは、表面プラズモン共鳴技術を用いて相互作用の程度を測定することができる(例えば、BIAcore 3000機器(Biacore社、ウプサラ、スウェーデン)の使用による)Biacore技術を用いる。交差競合を測定するまた別のアッセイでは、ELISAベースの方法を用いる。さらに、国際公開第2003/48731号には、「ビニング」抗体の交差競合に基づくハイスループット処理が記載されている。
本発明では、上記の交差競合する抗体は、i)配列番号6で記載され、X11がYまたはSであり、X12がGまたはYであるVL−CDR1、ii)配列番号7で記載されるVL−CDR2およびiii)配列番号8で記載され、X3がSまたはYであるVL−CDR3を含む軽鎖と、i)配列番号9で記載され、X3がSまたはYであるVH−CDR1、ii)配列番号10で記載され、X1がYまたはGであり、X10がNまたはSであるVH−CDR2およびiii)配列番号11で記載されるVH−CDR3を含む重鎖とを含むモノクローナル抗体の活性を保持している。具体的には、交差競合する抗体はA12抗体またはB6抗体の活性を保持している。交差競合する抗体が所望の活性を保持しているかどうかを確認するには、当該技術分野で周知のアッセイのいずれも適しているものと思われる。例えば、抗体の脱顆粒活性を増大させる能力を判定する実施例4に記載のアッセイは、抗体がNK細胞の活性、特にNK細胞の殺作用活性を増大させる能力を保持しているかどうかを判定するのに適しているものと思われる。
実施例1で示されるように、本発明のモノクローナル抗体は、CD160 GPIアンカー型アイソフォームとの結合に関してCL1−R2抗体と交差競合することはない。逆に、CL1−R2抗体がCD160−TMアイソフォームとの結合に関して本発明のモノクローナル抗体と交差競合することはない。CL1−R2抗体は、2004年4月28日にブダペスト条約の条項に従ってCollection Nationale de Cultures de Microorganismes C.N.C.M.Institut Pasteur(C.N.C.M.Institut Pasteur 25、rue du Docteur Roux F−75724 Paris Cedex 15、France)に寄託されたハイブリドーマにより得ることができる。寄託されているハイブリドーマはCNCM寄託番号がI−3204である。
さらに、実施例1で示されるように、本発明のモノクローナル抗体は、CD160 GPIアンカー型アイソフォームとの結合に関してBY55抗体と交差競合することはない。逆に、BY55抗体がCD160−TMアイソフォームとの結合に関して本発明のモノクローナル抗体と交差競合することはない。BY55は、例えばAbcam社(参照番号ab81388)およびThermoFisher Scientific社(参照番号12−1609−42)から入手し得る。
一実施形態では、本発明は、上記のA12抗体またはB6抗体と実質的に同じエピトープと結合する抗体も提供する。本発明では、A12抗体またはB6抗体と実質的に同じエピトープと結合する抗体をそれぞれA12様抗体またはB6様抗体と呼ぶ。
本発明の抗体は、当該技術分野で公知の任意の技術、例えば、特に限定されないが、単独の、または組み合わせた任意の化学的、生物学的、遺伝学的または酵素的技術などによって作製される。通常、当業者には、所望の配列のアミノ酸配列がわかっていれば標準的なポリペプチド作製技術により前記抗体を容易に作製することができる。例えば、好ましくは市販のペプチド合成装置(カリフォルニア州フォスターシティのApplied Biosystems社が製造する装置など)を製造業者の指示通りに使用し、周知の固相法を用いて抗体を合成することができる。あるいは、当該技術分野で周知の組換えDNA技術により本発明の抗体を合成することができる。例えば、抗体をコードするDNA配列を発現ベクター内に組込み、所望の抗体を発現し、のちに周知の技術を用いてそれを単離することができる適切な真核宿主または原核宿主にそのようなベクターを導入して、抗体をDNA発現産物として得ることができる。
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明による抗体をコードする核酸分子に関する。より具体的には、核酸分子は本発明の抗体の重鎖または軽鎖をコードする。より具体的には、核酸分子は、配列番号16、配列番号17、配列番号18または配列番号19と70%の同一性を有する核酸配列を含む。
配列番号16重鎖:A12のDNA配列
AGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAAGCCTGGTCAAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCTCTGGATTCACCTTCAGTAACTATAGTATGAACTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGCTGGAGTGGATCTCATATATTTATGGTAGTAGTAGATATATAAGTTACGCAGACTTCGTGAAGGGCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCACGAACTCACTGTACCTGCAAATGAACAGCCTAGAGCCGAGGACACGGCTGTTTATTACTGTGTGAGATCCTATTATGGCGGTATGGACGTCTGGGGCAGGGCACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
配列番号17軽鎖:A12のDNA配列
CAGTCTGTGCTGACTCAGCCTGCCTCCGTGTCTGGGTCTCCTGGACAGTCGATCACCATCTCCTGCGCTGAACCAGCAGTGACGTTGGTGGTTATTATGGCGTCTCCTGGTACCAACAACACCCAGGAAAGCCCCCAAACTCATGATTTATTATGACAGTTATCGGCCCTCAGGGGTTTCTAATCGCTTCTCTGGCCCAAGTCTGGCAACACGGCCTCCCTGACAATCTCTGGGCTCCAGGCTGAGGACGAGGCGATTATTACTGCAGCTCAAGTACATATTATAGCACTCGAGTTTTCGGCGGAGGGACCAAGCTGGAGATAAA
配列番号18重鎖:B6のDNA配列
GAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAAGCCTGGTCAAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAGTAACTATTATATGAACTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATCTCAGGCATTTATGGTAGTAGTAGATATATAAACTACGCAGACTTCGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCACGAACTCACTGTACCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCTGTTTATTACTGTGTGAGATCCAGTGGCTATGGCGGTATGGACGTCTGGGGCAGAGGCACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
配列番号19軽鎖:B6のDNA配列
CAGTCTGTGCTGACTCAGCCTGCCTCCGTGTCTGGGTCTCCTGGACAGTCGATCACCATCTCCTGCGCTGGAACCAGCAGTGACGTTGGTGGTTATAGTTATGTCTCCTGGTACCAACAACACCCAGGCAAAGCCCCCAAACTCATGATTTATTATGACAGTTATCGGCCCTCAGGGGTTTCTAATCGCTTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCAACACGGCCTCCCTGACAATCTCTGGGCTCCAGGCTGAGGACGAGGCTGATTATTACTGCAGCTCATATACATATTATAGCACTCGAGTTTTCGGCGGAGGGACCAAGCTGGAGATCAAA
「コードする」という用語は、ポリヌクレオチドの特定のヌクレオチド配列、例えば遺伝子、cDNAまたはmRNAなどが、ヌクレオチド(例えば、rRNA、tRNAおよびmRNA)の定められた配列またはアミノ酸の定められた配列を有する生物学的過程およびそれによって生じる生物学的特性において他のポリマーおよび高分子を合成するための鋳型としての役割を果たすという固有の特性を指す。したがって、ある遺伝子、cDNAまたはRNAについて、細胞またはその他の生体系でその遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によりタンパク質が産生される場合、それはタンパク質をコードすることになる。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり通常配列表に記載されるコード鎖および遺伝子またはcDNAの転写の鋳型として用いられる非コード鎖はともに、その遺伝子またはcDNAのタンパク質またはその他の産物をコードすると言える。特に明記されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮重型であり、同じアミノ酸配列をコードするあらゆるヌクレオチド配列が含まれる。「タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列」という語句には、そのタンパク質をコードする何らかの型のヌクレオチド配列がイントロン(1つまたは複数)を含む限り、イントロンも含まれ得る。
前記核酸は通常、DNAまたはRNA分子であり、それは適切なベクター、例えばプラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージまたはウイルスベクターなどに含まれ得る。本明細書で使用される「ベクター」、「クローニングベクター」および「発現ベクター」という用語は、宿主細胞にDNAまたはRNA配列(例えば、外来遺伝子)を導入し、それにより宿主を形質転換し、導入した配列の発現(例えば、転写および翻訳)を促進することができる運搬体を意味する。したがって、本発明のさらなる目的は、本発明の核酸を含むベクターに関する。このようなベクターは、対象に投与したときに前記抗体の発現を引き起こす、または指令するプロモーター、エンハンサー、ターミネータなどの調節エレメントを含み得る。動物細胞の発現ベクターに使用されるプロモーターおよびエンハンサーの例としては、SV40の初期プロモーターおよびエンハンサー、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターおよびエンハンサー、免疫グロブリンH鎖のプロモーターおよびエンハンサーなどが挙げられる。ヒト抗体C領域をコードする遺伝子を挿入し発現させることができる限り、任意の動物細胞用発現ベクターを使用することができる。適切なベクターの例としては、pAGE107、pAGE103、pHSG274、pKCR、pSG1ベータd2−4などが挙げられる。プラスミドのその他の例としては、複製起点を含む複製プラスミドまたは組込みプラスミド、例えばpUC、pcDNA、pBRなどが挙げられる。ウイルスベクターのその他の例としては、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターおよびAAVベクターが挙げられる。このような組換えウイルスは、当該技術分野で公知の技術により、例えば、パッケージング細胞のトランスフェクションまたはヘルパープラスミドもしくはヘルパーウイルスによる一過性トランスフェクションなどにより作製し得る。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例としては、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などが挙げられる。このような複製欠損組換えウイルスを作製するための詳細なプロトコルについては、例えば国際公開第95/14785号、同第96/22378号、米国特許第5,882,877号、同第6,013,516号、同第4,861,719号、同第5,278,056号および国際公開第94/19478号にみることができる。
「プロモーター/制御配列」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始するのに必要な細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識され、それによりプロモーター/制御配列と作動可能に連結された遺伝子産物の発現を可能にする核酸配列(例えばDNA配列など)を指す。いくつかの場合には、この配列はコアプロモーター配列であり、また別の場合には、この配列は、遺伝子産物の発現に必要なエンハンサー配列およびその他の調節エレメントも含み得る。プロモーター/制御配列は、例えば、組織特異的に遺伝子産物を発現させるものであり得る。
「作動可能に連結された」または「転写制御」という用語は、異種核酸配列の発現をもたらす制御配列と異種核酸配列との間の機能的連結を指す。例えば、第一の核酸配列が第二の核酸配列と機能的関係にある場合、その第一の核酸配列と第二の核酸配列は作動可能に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、そのプロモーターとコード配列は作動可能に連結されている。作動可能に連結されたDNA配列は、互いに隣接していてよく、例えば、必要に応じて2つのタンパク質コード領域を連結するため、同じリーディングフレーム内にある。
本発明のさらなる目的は、本発明による核酸および/またはベクターによってトランスフェクト、感染または形質転換した宿主細胞に関する。本明細書で使用される「形質転換」という用語は、宿主細胞が導入された遺伝子または配列を発現して所望の物質、通常、導入された遺伝子または配列がコードするタンパク質または酵素を産生するようその宿主細胞に「外来」(すなわち、外因性または細胞外)の遺伝子、DNA配列またはRNA配列を導入することを意味する。導入されるDNAまたはRNAを受け取り発現する宿主細胞は「形質転換」したものである。
本発明の核酸を用いて、適切な発現系で本発明の抗体を作製することができる。「発現系」という用語は、例えば、ベクターに運搬され宿主細胞に導入される外来DNAがコードするタンパク質を発現させるのに適した条件下にある宿主細胞および適合性のあるベクターを意味する。一般的な発現系は、大腸菌(E.coli)宿主細胞とプラスミドベクター、昆虫宿主細胞とバキュロウイルスベクターおよび哺乳動物宿主細胞とベクターを含む。宿主細胞のその他の例としては、特に限定されないが、原核細胞(細菌など)および真核細胞(例えば酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)が挙げられる。具体例としては、大腸菌(E.coli)、クリベロミセス(Kluyveromyces)またはサッカロミセス(Saccharomyces)酵母、哺乳動物細胞系(例えば、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞など)および初代哺乳動物細胞または樹立哺乳動物細胞培養物(例えば、リンパ芽球、線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞などから作製したもの)が挙げられる。例としてほかにも、マウスSP2/0−Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63−Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以降、「DHFR遺伝子」と呼ぶ)が欠損したCHO細胞(Urlaub Gら;1980)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、以降、「YB2/0細胞」と呼ぶ)などが挙げられる。本発明は、本発明による抗体を発現する組換え宿主細を作製する方法であって、(i)上記の組換え核酸またはベクターをコンピテント宿主細胞にin vitroまたはex vivoで導入する段階と、(ii)得られた組換え宿主細胞をin vitroまたはex vivoで培養する段階と、(iii)任意選択で、前記抗体を発現および/または分泌する細胞を選択する段階とを含む、方法にも関する。このような組換え宿主細胞を本発明の抗体の作製に使用することができる。
ベクターの例としては、特に限定されないが、組換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えば、裸のプラスミドまたはリポソームに含まれたプラスミド)およびウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を含めた当該技術分野で公知のあらゆるベクターが挙げられる。
本発明の抗体は、従来の免疫グロブリン精製法、例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーなどにより培地から適切に分離される。
本発明はさらに、本発明の抗体、好ましくはB6様抗体またはA12様抗体を含むか、これよりなるか、または実質的にこれよりなる組成物に関する。
本明細書で組成物に関して使用される「実質的にこれよりなる」は、組成物に関して、上記の少なくとも1つの本発明の抗体が前記組成物内の唯一の治療剤または生物学的活性を有する薬剤であることを意味する。
一実施形態では、本発明の組成物は、医薬組成物であり、薬学的に許容される担体をさらに含む。
本発明はさらに、本発明の抗体、好ましくB6様抗体またはA12様抗体を含むか、これよりなるか、または実質的にこれよりなる薬剤に関する。
本発明の設計抗体には、例えば抗体の特性を改善するため、VHおよび/またはVL内のフレームワーク残基に改変を施した抗体が含まれる。このようなフレームワーク改変は通常、抗体の免疫原性を低下させるために施される。例えば、1つの方法として、1つまたは複数のフレームワーク残基を対応する生殖系列配列に「復帰変異させる」というものがある。より具体的には、体細胞変異を経た抗体には、その抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基が含まれることがある。このような残基は、抗体フレームワーク配列と、その抗体が由来する生殖系列配列とを比較することによって特定することができる。フレームワーク領域配列をその生殖系列配置に戻すため、例えば部位特異的変異誘発またはPCRを介する変異誘発によって体細胞変異を生殖系列配列に「復帰変異させる」ことができる。このような「復帰変異させた」抗体も本発明に包含されるものとする。また別のタイプのフレームワーク改変では、フレームワーク領域内、または場合によっては1つもしくは複数のCDR領域内の1つまたは複数の残基を変異させてT細胞エピトープを除去し、それにより抗体の潜在的な免疫原性を低下させる。この方法は「脱免疫原性化」とも呼ばれ、Carrらによる米国特許公開第20030153043号にさらに詳細に記載されている。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を媒介するFc領域を含む。本明細書で使用される「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」は、非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識し、次いでその標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性反応を指す。いかなる特定の作用機序に限定されるのを望むわけではないが、ADCCを媒介するこれらの細胞傷害性細胞は一般に、Fc受容体(FcR)を発現する。
本明細書で使用される「Fc領域」は、抗体の1番目の定常領域免疫グロブリンドメインを除いた定常領域を含む、ポリペプチドを含む。したがって、Fcは、IgA、IgDおよびIgGの残りの2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、IgEおよびIgMの残りの3つの定常領域免疫グロブリンドメインならびに上記ドメインのN末端側の柔軟なヒンジを指す。IgAおよびIgMに関しては、FcはJ鎖を含み得る。IgGに関しては、Fcは免疫グロブリンドメインCガンマ2およびCガンマ3(Cγ2およびCγ3)ならびにCガンマ1(Cγ1)とCガンマ2(Cγ2)の間のヒンジを含む。Fc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、そのカルボキシル末端に残基C226またはP230を含むものと定義され、ここでは、番号付けはKabatら(1991,NIH Publication 91−3242,National Technical Information Service,Springfield,Va.)に記載されているEUインデックスに従ったものである。「Kabatに記載されているEUインデックス」は、上記のKabatらに記載されているヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。Fcは、分離したこの領域、または抗体、抗体フラグメントもしくはFc融合タンパク質におけるこの領域を指し得る。Fc変異型タンパク質は、抗体、Fc融合体、またはFc領域を含む任意のタンパク質もしくはタンパク質ドメインであり得る。特に好ましいのは、Fc領域の非天然の変異型である変異型Fc領域を含むタンパク質である。非天然のFc領域(本明細書では「変異型Fc領域」とも呼ぶ)のアミノ酸配列は、野生型のアミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入および/または欠失を含む。挿入または置換の結果、変異型Fc領域の配列内に新たに出現した任意のアミノ酸残基を非天然アミノ酸残基と呼ぶこともある。注:特に限定されないが、Kabat270、272、312、315、356および358を含めたFcのいくつかの位置に多型が観察されており、このため、提供される配列と先行技術の配列との間にわずかな差が存在し得る。
「Fc受容体」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域と結合する受容体を表すのに使用される。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞がFcγRIIIを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII、FcγRIIIおよび/またはFcγRIVを発現する。造血細胞でのFcR発現については、RavetchおよびKinet,Annu.Rev.Immunol.,9:457−92(1991)にまとめられている。ある分子のADCC活性を評価するには、in vitroのADCCアッセイ、例えば米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されているアッセイなどを実施し得る。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。上記にものに代えて、またはこれに加えて、例えば、Clynesら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),95:652−656(1998)に開示されているものなどの動物モデルを用いて、目的とする分子のADCC活性をin vivoで評価してもよい。本明細書で使用される「エフェクター細胞」という用語は、1つまたは複数のFcRを発現しエフェクター機能を発揮する白血球のことである。この細胞は、少なくともFcγRI、FCγRII、FcγRIIIおよび/またはFcγRIVを発現し、ADCCエフェクター機能を遂行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞および好中球が挙げられる。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は完全長抗体である。いくつかの実施形態では、完全長抗体はIgG1抗体である。いくつかの実施形態では、完全長抗体はIgG3抗体である。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、FcγRIA、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIA、FcγRIIIBおよびFcγRIVに対する親和性が増大した変異型Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、少なくとも1つのアミノ酸の置換、挿入または欠失を含み、前記少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入または欠失によりFcγRIA、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIA、FcγRIIIBおよびFcγRIVに対する親和性が増大する、変異型Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、少なくとも1つのアミノ酸の置換、挿入または欠失を含み、前記少なくとも1つのアミノ酸残基が、残基239、330および332からなる群より選択され、アミノ酸残基がEUインデックスに従って番号付けされたものである、変異型Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、少なくとも1つのアミノ酸の置換を含み、前記少なくとも1つのアミノ酸の置換が、S239D、A330L、A330Yおよび1332Eからなる群より選択され、アミノ酸残基がEUインデックスに従って番号付けされたものである、変異型Fc領域を含む。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体のグリコシル化を改変する。例えば、非グリコシル化抗体(すなわち、グリコシル化のない抗体)を作製することができる。グリコシル化を変化させて、例えば、抗体の抗原に対する親和性を増大させる、または抗体のADCC活性を変化させることができる。このような炭水化物改変は、例えば、抗体配列内の1つまたは複数のグリコシル化部位を変化させることにより実施することができる。例えば、1つまたは複数の可変領域フレームワークグリコシル化部位が除去される1つまたは複数のアミノ酸置換を施し、それによりその部位のグリコシル化を除去することができる。このような非グリコシル化によって抗体の抗原に対する親和性が増大し得る。このような方法については、Coらによる米国特許第5,714,350号および同第6,350,861号(参照により本明細書に組み込まれる)にさらに詳細に記載されている。上記のものに加えて、またはこれに代えて、グリコシル化のタイプが変化した抗体、例えばフコシル残基の量が少ない、もしくはフコシル残基のない低フコシル化もしくは非フコシル化抗体、またはバイセクティングGlcNac構造が増加した抗体などを作製してもよい。このようなフコシル化パターンの変化によって抗体のADCC能が増大することが明らかにされている。このような炭水化物改変は、例えば、グリコシル化機序の変化した宿主細胞に抗体を発現させるにより実施することができる。グリコシル化機序の変化した細胞は当該技術分野で既に記載されており、本発明の組換え抗体を発現させ、それによりグリコシル化の変化した抗体を作製する宿主細胞として使用することができる。例えば、Hangらによる欧州特許第1176195号(参照により本明細書に組み込まれる)には、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊されており、そのため発現する抗体が低フコシル化を示すかフコシル残基を欠く細胞系が記載されている。したがって、いくつかの実施形態では、低フコシル化または非フコシル化パターンを示す細胞系、例えば、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子の発現が欠損した哺乳動物細胞系を用いる組換え発現により本発明のヒト抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を作製し得る。Prestaによる国際公開第03/035835号(参照により本明細書に組み込まれる)には、Asn(297)結合炭水化物にフコースを付加する能力が低下していると同時に、それにより宿主細胞に発現する抗体が低フコシル化される変異型CHO細胞系のLecl3細胞が記載されている(Shields,R.L.ら,2002 J.Biol.Chem.277:26733−26740も参照されたい)。Umanaらよる国際公開第99/54342号(参照により本明細書に組み込まれる)には、糖タンパク質を改変するグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)−NアセチルグルコサミントランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現し、それにより発現する抗体がバイセクティングGlcNac構造の増大を示し、その結果、抗体のADCC活性が増大するよう操作した細胞系が記載されている(Umanaら,1999 Nat.Biotech.17:176−180も参照されたい)。さらに、Eureka Therapeutics社は、哺乳動物のグリコシル化パターンが変化してフコシル残基を欠く抗体を産生することが可能な遺伝子操作CHO哺乳動物細胞を記載されている(http://www.eurekainc.com/a&boutus/companyoverview.html)。あるいは、哺乳動物様のグリコシル化パターンを示すよう操作され、フコースを欠くグリコシル化パターンの抗体を産生することが可能な酵母または糸状菌(例えば、欧州特許第1297172(B1)号を参照されたい)に本発明のヒト抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を産生させてもよい。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、補体依存性細胞傷害を媒介するFc領域を含む。「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、ある分子が補体の存在下で補体活性化を惹起し標的を溶解させる能力を指す。補体活性化経路は、コグネイト抗原と複合体を形成した分子(例えば、抗体)に補体系の第一成分(C1q)が結合することによって開始される。補体活性化を評価するには、CDCアッセイ、例えばGazzano−Santaroら,J.Immunol.Methods,202:163(1996)に記載されているアッセイなどを実施し得る。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、抗体依存性食作用を媒介するFc領域を含む。本明細書で使用される「抗体依存性食作用」または「オプソニン作用」という用語は、FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識し、次いでその標的細胞の食作用を引き起こす細胞媒介性反応を指す。
一実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、ADCC、CDCまたは抗体依存性食作用を誘導するFc領域を含む。その結果、このような抗体を対象に投与すると、CD160−TMを発現する細胞、例えばCD160−TMを発現する腫瘍細胞などの枯渇を引き起こし得る(例えば、CD160−TM+NK細胞の数が10%、20%、50%、60%またはそれ以上除去される、または減少する)。
したがって、本発明のさらなる目的は、必要とする対象のCD160−TMアイソフォームを発現する細胞の集団を枯渇させる方法であって、対象に治療有効量の本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を送達することを含む、方法に関する。一実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、ADCC、CDCまたは抗体依存性食作用を誘導するFc領域を含む。
本発明のさらなる目的は、必要とする対象のCD160−TMアイソフォームを発現する悪性NK細胞の集団を枯渇させる方法であって、対象に治療有効量の本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を送達することを含む、方法に関する。一実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、ADCC、CDCまたは抗体依存性食作用を誘導するFc領域を含む。
本発明のさらなる目的は、必要とする対象のA12抗体またはB6抗体によって認識されるエピトープを発現する細胞の集団を枯渇させる方法であって、対象に治療有効量の本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を送達することを含む、方法に関する。一実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、ADCC、CDCまたは抗体依存性食作用を誘導するFc領域を含む。
本明細書で細胞の集団に関して使用される「枯渇させる」という用語は、対象中の前記細胞の数の測定可能な減少を指す。減少は、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上であり得る。いくつかの実施形態では、この用語は、対象または試料中の細胞の数を検出可能限界未満の量まで減少させることを指す。
一実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、抗体依存性細胞傷害、補体依存性細胞傷害および抗体依存性食作用を媒介する。
本発明のさらなる目的は、癌細胞がCD160−TMを発現する癌を治療する方法に関する。具体的には、癌細胞がCD160−TMを発現する癌の例として、特に限定されないが、NK白血病またはNKリンパ腫、例えば節外性および非節外性NK/Tリンパ腫;NK細胞由来の悪性腫瘍;ならびに急性NK白血病などが挙げられる。
したがって、本発明はさらに、癌細胞がCD160−TMを発現する癌の治療に使用する本発明の抗体、組成物、医薬組成物または薬剤に関する。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を媒介するFc領域を含まず、したがって、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導するFc部分を含まない。一実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、CDCまたは抗体依存性食作用を誘導するFc領域を含まない。いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、CD160−TMポリペプチドを発現するNK細胞の枯渇を直接的にも間接的にも引き起こすことはない(例えば、CD160−TM+NK細胞の数の10%、20%、50%、60%またはそれ以上の除去も減少も引き起こすことはない)。いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、FcγRIIIA(CD16)ポリペプチドと実質的に結合することができるFcドメインを含まない。いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、Fcドメインがない(例えば、CH2ドメインおよび/またはCH3ドメインがない)か、IgG2アイソタイプまたはIgG4アイソタイプのFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、グリコシル化プロファイルが変化したFcドメイン(例えば、IgG1のFcドメイン)を含み、そのため抗体のADCC活性がみられない。いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、一本鎖抗体フラグメントまたは複数の異なる抗体フラグメントを含む多重特異性抗体を含むか、これよりなるものである。いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は毒性部分と結合していない。いくつかの実施形態では、抗体のC2q結合が変化し、かつ/または補体依存性細胞傷害(CDC)が低下または消失するように、アミノ酸残基から選択される1つまたは複数のアミノ酸を異なるアミノ酸残基に置き換えることができる。この方法については、ldusogieらによる米国特許第6,194,551号にさらに詳細に記載されている。
本発明のさらなる目的は、必要とする対象のNK細胞の活性またはNK細胞のエフェクター機能、特にNK細胞の殺作用活性を増強する方法であって、対象に治療有効量の本発明の抗体を投与することを含み、ただし、抗体が抗体依存性細胞傷害も補体依存性細胞傷害も抗体依存性食作用も媒介しない、方法に関する。
本明細書で使用される「NK細胞」は、自然免疫または非通常型免疫に関与するリンパ球の亜集団を指す。NK細胞は、特定の特徴ならびに生物学的特性、例えばCD56および/またはCD16を含めたヒトNK細胞に特異的な表面抗原の発現、細胞表面のアルファ/ベータTCR複合体またはガンマ/デルタTCR複合体の不在、「自己」MHC/HLA抗原を発現することができない細胞と結合し、固有の細胞溶解機序の活性化によりこれを死滅させる能力、NK活性化受容体のリガンドを発現する腫瘍細胞またはその他の疾患細胞を死滅させる能力ならびに免疫応答を刺激または阻害しサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力(「NK細胞活性」)などにより同定することができる。NK細胞という用語にはNK細胞の任意の亜集団も包含される。本発明においては、「活性な」NK細胞は、標的細胞を溶解する能力または他の細胞の免疫機能を増強する能力を有するNK細胞を含めた生物学的に活性なNK細胞を指す。例えば、「活性な」NK細胞は、活性化NK受容体のリガンドを発現し、かつ/またはNK細胞上のKIRによって認識されるMHC/HLA抗原を発現することができない細胞を死滅させることができる。
本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)がNK細胞の活性、特にNK細胞の殺作用活性を増強することができるかどうかは、当該技術分野で周知の任意のアッセイにより判定し得る。前記アッセイは通常、NK細胞と標的細胞(例えば、NK細胞によって認識され、かつ/または溶解される標的細胞)とを接触させるin vitroアッセイである。例えば、NK細胞による特異的溶解を本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)と接触させたNK細胞またはNK細胞系により同じエフェクター:標的細胞比で得られる特異的溶解の約20%超、好ましくは少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%またはそれ以上増大させることができる抗体を選択することができる。古典的細胞傷害性アッセイのプロトコルの例が、例えば、Pessinoら,J.Exp.Med,1998,188(5):953−960;Sivoriら,Eur J Immunol,1999.29:1656−1666;Brandoら,(2005)J.Leukoc.Biol.78:359−371;El−Sherbinyら,(2007)Cancer Research 67(18):8444−9;およびNolte−’t Hoenら,(2007)Blood 109:670−673に記載されている。NK細胞の細胞傷害性は通常、実施例に記載される任意のアッセイにより判定する。NK細胞の細胞傷害性は、古典的な細胞傷害性に関するin vitroクロム放出試験により測定し得る。エフェクター細胞は通常、健常ドナー由来の新鮮なPB−NKとする。標的細胞は通常、マウス肥満細胞腫P815細胞またはEBV感染B細胞系とする。したがって、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)が標的細胞(感染細胞、腫瘍細胞、炎症誘発性細胞など)に対するNK細胞の反応性または細胞傷害性の増大、NK細胞の活性化、活性化マーカー(例えば、CD107発現)および/またはIFNガンマ産生の増大ならびに/あるいはそのような活性化し、反応性であり、細胞傷害性であり、かつ/または活性化したNK細胞のin vivoでの頻度の増大を引き起こす場合、それを選択する。
いくつかの実施形態では、対象は癌または感染症に罹患している。したがって、本発明のさらなる目的は、必要とする対象の癌または感染症を治療する方法であって、対象に治療有効量の本発明の抗体を投与することを含む、方法に関する。好ましくは、この実施形態では、本発明の抗体はADCC、CDCまたは抗体誘導性食作用を媒介するFc領域を含まない。
したがって、本発明はさらに、癌、感染症、炎症性疾患および/または自己免疫疾患の治療に使用する本発明の抗体、組成物、医薬組成物または薬剤に関する。
本明細書で使用される「治療」または「治療すること」とは、臨床結果を含めた有益な結果または所望の結果を得る方法のことである。本発明の目的に関して、有益な臨床結果または所望の臨床結果としては、特に限定されないが、以下のうち1つまたは複数のものが挙げられる:疾患に起因する1つもしくは複数の症状の軽減、疾患の程度の軽減、疾患の安定(例えば、疾患の悪化の予防もしくは遅延)、疾患拡散(例えば、転移)の予防もしくは遅延、疾患再発の予防もしくは遅延、疾患進行の遅延もしくは緩徐化、疾患状態の改善、疾患の寛解(部分寛解または完全寛解)をもたらすこと、疾患の治療に必要な1つもしくは複数の他の薬剤の減量、疾患進行の遅延、生活の質の向上および/または生存期間の延長。「治療」には癌の病理学的帰結の軽減も包含される。本発明の方法は、上記の治療の態様のうち任意の1つまたは複数のものを企図する。一実施形態では、「治療すること」または「治療」という用語は治療処置および予防手段の両方を指し、その目的は標的とする疾患を予防または抑制(軽減)することである。したがって、一実施形態では、治療を必要とする者には、既に障害を有する者および障害を有する傾向がある者または障害を予防するべき者が含まれ得る。
本明細書で使用される「癌」という用語は、その当該技術分野での一般的な意味を有し、特に限定されないが、固形腫瘍および血液腫瘍がこれに含まれる。癌という用語には、皮膚、組織、器官、骨、軟骨、血液および血管の疾患が含まれる。「癌」という用語はさらに、原発性癌および転移性癌をともに包含する。本発明の方法および組成物によって治療し得る癌の例としては、特に限定されないが、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、胸、結腸、食道、胃腸管、歯茎、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌または子宮に由来する癌細胞が挙げられる。さらに、癌は、具体的には、特に限定されないが以下の組織学的タイプのものであり得る:悪性新生物;癌腫;未分化癌腫;巨細胞癌および紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;石灰化上皮癌;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;悪性ガストリノーマ;胆管細胞癌;肝細胞癌;肝細胞癌と胆管細胞癌の混合型;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫様ポリープの腺癌;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌;悪性カルチノイド腫瘍;細気管支肺胞腺癌;乳頭状腺癌;色素嫌性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;塩基好性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞状腺癌;乳頭状濾胞状腺癌;非被嚢性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘液性類表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性導管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;乳房パジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生随伴腺癌;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質腫瘍;悪性莢膜細胞腫;悪性顆粒膜細胞腫;悪性アンドロブラストーマ;セルトリ細胞腫;悪性ライディッヒ細胞腫;悪性脂質細胞腫;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性メラノーマ;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑の悪性メラノーマ;類上皮細胞メラノーマ;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質性肉腫;悪性混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;悪性間葉腫;悪性ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胎児性癌;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管周皮腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮歯牙肉腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル上皮線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;原線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠芽腫;原始神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽腫;網膜芽細胞腫;嗅神経腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫;悪性リンパ腫;NK白血病またはNKリンパ腫、例えば節外性および非節外性NK/Tリンパ腫;NK細胞由来の悪性腫瘍;ならびに急性NK白血病など;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;側肉芽腫;小リンパ球性悪性リンパ腫;びまん性大細胞型悪性リンパ腫;悪性濾胞性リンパ腫;菌状息肉症;その他の特定されている非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;ならびに有毛細胞白血病。
本明細書で使用される「感染症」という用語は、ウイルス、細菌、原生動物、カビまたは真菌を原因とする任意の感染症を含む。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、アレナウイルス科、アストロウイルス科、ビルナウイルス科、ブロモウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、クロステロウイルス科、コモウイルス科、シストウイルス科、フラビウイルス科、フレキシウイルス科、ヘペウイルス、レビウイルス科、ルテオウイルス科、モノネガウイルス目、モザイクウイルス類、ニドウイルス目、ノダウイルス科、オルトミクソウイルス科、ピコビルナウイルス、ピコルナウイルス科、ポティウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、セキウイルス科、テヌイウイルス、トガウイルス科、トンブスウイルス科、トティウイルス科、ティモウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘルペスウイルス科、パラミクソウイルス科またはパピローマウイルス科のウイルスからなる群より選択される1つまたは複数のウイルスによる感染症を含む。重要なRNAウイルスの分類学的ファミリーとしては、特に限定されないが、アストロウイルス科、ビルナウイルス科、ブロモウイルス科、カリシウイルス科、クロステロウイルス科、コモウイルス科、シストウイルス科、フラビウイルス科、フレキシウイルス科、ヘペウイルス、レビウイルス科、ルテオウイルス科、モノネガウイルス目、モザイクウイルス類、ニドウイルス目、ノダウイルス科、オルトミクソウイルス科、ピコビルナウイルス、ピコルナウイルス科、ポティウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、セキウイルス科、テヌイウイルス、トガウイルス科、トンブスウイルス科、トティウイルス科およびティモウイルス科のウイルスが挙げられる。いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、アデノウイルス、ライノウイルス、肝炎、免疫不全ウイルス、ポリオ、麻疹、エボラ、コクサッキー、ライノ、西ナイル、痘瘡、脳炎、黄熱、デング熱、インフルエンザ(ヒト、トリおよびブタを含む)、ラッサ、リンパ球性脈絡髄膜炎、フニン、マチュポ、グアナリト、ハンタウイルス、リフトバレー熱、ラクロス、カリフォルニア脳炎、クリミア・コンゴ、マーブルク、日本脳炎、キャサヌール森林病、ベネズエラウマ脳炎、東部ウマ脳炎、西部ウマ脳炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)、パラインフルエンザ、呼吸器多核体、プンタトロ、タカリベ、ピチンデウイルス、アデノウイルス、デング熱、インフルエンザAおよびインフルエンザB(ヒト、トリおよびブタを含む)、フニン、麻疹、パラインフルエンザ、ピチンデ、プンタトロ、呼吸器多核体、ライノウイルス、リフトバレー熱、重症急性呼吸器症候群(SARS)、タカリベ、ベネズエラウマ脳炎、西ナイルおよび黄熱病ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷ウイルス、ポワッサンウイルス、ロシオウイルス、跳躍病ウイルス、バンジウイルス、イルヘウスウイルス、ココベラウイルス、クンジンウイルス、アルファイウイルス、ウシ下痢症ウイルスならびにキャサヌール森林病からなる群より選択される1つまたは複数のウイルスによる感染症を含む。本発明に従って治療することができる細菌感染としては、特に限定されないが、ブドウ球菌(Staphylococcus);化膿性連鎖球菌(S.pyogenes)を含めた連鎖球菌(Streptococcus);エンテロコックル(Enterococcl);炭疽菌(Bacillus anthracis)および乳酸桿菌(Lactobacillus)を含めた桿菌(Bacillus);リステリア(Listeria);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae);G.バギナリス(G.vaginalis)を含めたガードネレラ菌(Gardnerella);ノカルジア(Nocardia);ストレプトミセス(Streptomyces);サーモアクチノミセス−・ブルガリス(Thermoactinomyces vulgaris);トレポネルナ(Treponerna);カンプリオバクター(Camplyobacter)、緑膿菌を含めたシュードモナス(Pseudomonas);レジオネラ(Legionella);淋菌(N.gonorrhoeae)およびN.メニンギティデス(N.meningitides)を含めたナイセリア(Neisseria);F.メニンゴセプティカム(F.meningosepticum)およびF.オドラツルン(F.odoraturn)を含めたフラボバクテリウム(Flavobacterium);ブルセラ(Brucella);百日咳菌(B.pertussis)およびB.ブロンキセプチカ(B.bronchiseptica)を含めたボルデテラ(Bordetella);大腸菌(E.coli)を含めたエシェリキア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella);エンテロバクター(Enterobacter)、セラチアマルセッセンス(S.marcescens)およびセラチア・リクファシエンス(S.liquefaciens)を含めたセラチア(Serratia);エドワードジエラ(Edwardsiella);プロテウス・ミラビリス(P.mirabilis)およびP.ブルガリス(P.vulgaris)を含めたプロテウス(Proteus);ストレプトバチルス(Streptobacillus);R.フィケッツフィ(R.fickettsfi)を含めたリケッチア科(Rickettsiaceae)、オウム病クラミジア(C.psittaci)およびC.トラコルナティス(C.trachornatis)を含めたクラミジア(Chlamydia);結核菌(M.tuberculosis)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M.intracellulare)、M.フォルイツルン(M.folluiturn)、M.ラプラエ(M.laprae)、マイコバクテリウム・アビウム(M.avium)、マイコバクテリウム・ボビス(M.bovis)、マイコバクテリウム・アフリカヌム(M.africanum)、カンサシ菌(M.kansasii)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレおよびM.レプラエルヌリウム(M.lepraernurium)を含めたマイコバクテリウム(Mycobacterium);ならびにノカルジア(Nocardia)を原因とする感染症が挙げられる。本発明に従って治療し得る原生動物感染症としては、特に限定されないが、リーシュマニア、コクジディオア(kokzidioa)およびトリパノソーマを原因とする感染症が挙げられる。疾病管理センター(CDC)の国立感染症センター(NCID)のウェブサイト(ワールドワイドウェブ(www)のcdc.gov/ncidod/diseases/)に感染症の完全なリストをみることができ、このリストは参照により本明細書に組み込まれる。前記疾患はいずれも、本発明による組成物を用いる治療の候補である。
炎症性疾患の例としては、特に限定されないが、関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎、変形性関節症、乾癬性関節炎、若年性特発性関節炎、若年性関節リウマチ、尿酸性関節炎、痛風、慢性多発性関節炎、肩関節周囲炎、頸部関節炎、腰仙部関節炎、腸炎性関節炎および強直性脊椎炎、喘息、皮膚炎、乾癬、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、原発性胆汁性肝硬変、線維症、嚢胞性線維症、肺線維症、肝硬変、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、腎性線維症、ケロイド、強皮症、関節線維症、移植後の遅発性および慢性固形臓器拒絶反応、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、天疱瘡、尋常性天疱瘡、疱疹状天疱瘡、増殖性天疱瘡、IgA天疱瘡、紅斑性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、妊娠性類天疱瘡、粘膜皮膚症、結節性類天疱瘡、線状IgA水疱性皮膚症、水疱性扁平苔癬、後天性表皮水疱症、自己免疫性糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性血管症、眼炎症、ブドウ膜炎、鼻炎、虚血再灌流傷害、血管形成術後再狭窄、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糸球体腎炎、グレーブス病、消化管アレルギー、結膜炎、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、狭心症、小動脈疾患、急性播種性脳脊髄炎、特発性血小板減少性紫斑病、多発性硬化症、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、シェーグレン症候群、自己免疫性溶血性貧血、大腸炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患(IBD)、塞栓症、肺塞栓症、動脈塞栓症、静脈塞栓症、アレルギー性炎症、心血管疾患、移植関連疾患、移植片対宿主病(GVHD)、移植片移植拒絶、慢性拒絶および組織または細胞の同種移植または異種移植による障害、自己免疫疾患、外傷後変性症、脳卒中、移植拒絶反応、アレルギー病態および過敏症、例えばアレルギー性鼻炎、アレルギー性湿疹など、皮膚疾患、皮膚炎症性障害あるいはその任意の組合せが挙げられる。
自己免疫疾患の例としては、特に限定されないが、狼瘡(例えば、エリテマトーデス、ループス腎炎)、橋本甲状腺炎、ウェゲナー病;原発性粘液水腫、グレーブス病、悪性貧血、自己免疫性萎縮性胃炎、アジソン病、糖尿病(例えば、インスリン依存性糖尿病、I型糖尿病、II型糖尿病)、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、天疱瘡、腸炎症病態、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎など;交感性眼炎、自己免疫性ブドウ膜炎、多発性硬化症、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少症、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、潰瘍性大腸炎、シェーグレン症候群、関節炎病態、例えば関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎および若年性特発性関節炎など;多発性筋炎、強皮症、乾癬、原発性硬化性胆管炎;喘息、移植拒絶反応(宿主対移植片病);移植片対宿主病ならびに混合性結合組織病が挙げられる。
本発明は、本発明の抗体を例えば癌治療のための少なくとも1つのさらなる治療剤と併用する治療応用も提供する。このような投与は、同時投与、個別投与または連続投与であり得る。同時投与では、薬剤を必要に応じて1つの組成物として、または別個の組成物として投与し得る。さらなる治療剤は通常、治療する障害に適したものである。例示的治療剤としては、他の抗癌抗体、細胞毒性薬、化学療法剤、抗血管新生剤、抗癌免疫原、細胞周期制御/アポトーシス調節剤、ホルモン調節剤および下に記載するその他の薬剤が挙げられる。
いくつかの実施形態では、第二の薬剤は、NK細胞活性化の天然のリガンドまたはCD160−TM以外のNK細胞活性化受容体と結合して活性化させる抗体である。いくつかの実施形態では、薬剤は、標的細胞(例えば、感染細胞または腫瘍細胞)表面のNK細胞活性化受容体の天然のリガンドの存在量を増大させる薬剤である。一実施形態では、本発明の抗体は、ADCC、CDCまたは抗体誘導性食作用を媒介するFc領域を含まず、(i)NK細胞活性化の天然のリガンドもしくはCD160−TM以外のNK細胞活性化受容体と結合して活性化させる抗体であり、かつ/または(ii)標的細胞表面のNK細胞活性化受容体の天然のリガンドの存在量を増大させる、第二の薬剤と併用する。NK細胞活性化受容体としては、例えば、NKG2Dまたは活性化KIR受容体(KIR2DS受容体、KIR2DS2、KIR2DS4)が挙げられる。本明細書で使用される「活性化NK受容体」という用語は、NK細胞の表面にあり、刺激を受けると、NK活性と関連があることが当該技術分野で知られている任意の特性または活性、例えばサイトカイン(例えば、IFN−γおよびTNF−α)産生、細胞内遊離カルシウムレベルの増大、例えば本明細書の他の箇所に記載されるリダイレクト殺作用アッセイで細胞を標的とする能力またはNK細胞増殖を刺激する能力などの測定可能な増大を引き起こす任意の分子を指す。「活性化NK受容体」という用語は、活性化型またはKIRタンパク質(例えば、KIR2DSタンパク質)、NKG2D、IL−2R、IL−12R、IL−15R、IL−18RおよびIL−21Rを含む。活性化受容体に対してアゴニストとして作用するリガンドの例としては、例えば、IL−2、IL−15、IL−21ポリペプチドが挙げられる。いくつかの実施形態では、第二の抗体はCD137に特異的なものである。本明細書で使用される「CD137」という用語は、その当該技術分野での一般的な意味を有し、Ly63、ILAまたは4−1BBと呼ばれることもある。CD137は腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーのメンバーである。この受容体ファミリーのメンバーおよびその構造的に関連のあるリガンドは、多種多様な生理学的過程の重要な調節因子であり、免疫応答の調節に重要な役割を果たす。CD137は、活性化されたNK細胞、Tリンパ球、Bリンパ球および単球/マクロファージに発現する。その遺伝子は、細胞外ドメイン内にある3つのシステインリッチモチーフ(この受容体ファミリーの特徴)、膜貫通領域および潜在的なリン酸化部位を含む短いN末端側細胞質内部分を有する、255アミノ酸のタンパク質をコードする。初代細胞での発現は完全に活性化依存性である。この受容体のリガンドはTNFSF9である。ヒトCD137はそのリガンドとのみ結合することが報告されている。アゴニストとしては、天然のリガンド(TNFSF9)、アプタマー(McNamaraら(2008)J.Clin.Invest.1 18:376−386を参照されたい)および抗体が挙げられる。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体を第二の抗体と併用し、この抗体は、それが結合する抗原を発現する細胞の細胞死をADCCを介して誘導するものである。一実施形態では、本発明の抗体は、ADCC、CDCまたは抗体誘導性食作用を媒介するFc領域を含まず、第二の抗体が結合する抗原を発現する細胞の細胞死をADCCを介して誘導する第二の薬剤と併用する。一実施形態では、本発明の抗体を第二の抗体とコンジュゲートし、この抗体は、それが結合する抗原を発現する細胞の細胞死をADCCを介して誘導するものである。NK細胞はADCCの誘導に重要な役割を果たし、上記の第二の薬剤の使用によりNK細胞の反応性の増大を標的細胞に向けることができる。いくつかの実施形態では、第二の薬剤は、細胞表面抗原、例えば膜抗原に特異的な抗体である。いくつかの実施形態では、第二の抗体は、本明細書に記載される腫瘍抗原(例えば、腫瘍細胞に特異的に発現する分子)、例えばCD20、CD52、ErbB2(またはHER2/Neu)、CD33、CD22、CD25、MUC−1、CEA、KDR、αVβ3など、特にリンパ腫抗原(例えば、CD20)に特異的なものである。したがって、本発明は、腫瘍抗原(1つまたは複数)に対するモノクローナル抗体の抗腫瘍効果を増強する方法も提供する。本発明の方法では、1つまたは複数の腫瘍抗原に対する抗体および本発明の抗体の連続投与によってADCC機能を特異的に増強し、それにより標的細胞殺作用を増強する。
したがって、さらなる目的は、必要とする対象において抗体のNK細胞抗体依存性細胞傷害(ADCC)を増強する方法であって、対象に抗体を投与することと、対象に本発明の抗体を投与することとを含み、好ましくは、本発明の抗体が、ADCC、CDCまたは抗体誘導性食作用を媒介するFc領域を含まない、方法に関する。
本発明のさらなる目的は、必要とする対象の癌を治療する方法であって、対象に癌細胞抗原に対して選択的な第一の抗体を投与することと、対象に本発明の抗体を投与することとを含み、好ましくは、本発明の抗体が、ADCC、CDCまたは抗体誘導性食作用を媒介するFc領域を含まない、方法に関する。
現在癌治療に臨床使用されている抗体は多数あり、それ以外にも臨床開発の様々な段階にある抗体がある。本発明の方法で目的とする抗体は、ADCCを介して作用し、通常腫瘍細胞に対して選択的なものであるが、当業者には、一部の臨床的に有用な抗体が実際に非腫瘍細胞、例えばCD20に作用することが認識されよう。B細胞悪性腫瘍の治療には抗原およびそれに対応するモノクローナル抗体が多数存在する。よく知られた標的抗原の1つに、B細胞悪性腫瘍にみられるCD20がある。リツキシマブはCD20抗原に対するキメラ非コンジュゲートモノクローナル抗体である。CD20はB細胞の活性化、増殖および分化に重要な機能的役割を果たす。CD52抗原は、慢性リンパ球性白血病の治療に適応されるモノクローナル抗体、アレムツズマブが標的とするものである。CD22は多数の抗体が標的とするものであり、最近、毒素と組み合わせると化学療法抵抗性の有毛細胞白血病に有効であることが示されている。CD20を標的とするモノクローナル抗体としては、トシツモマブおよびイブリツモマブも挙げられる。固形腫瘍に使用されており、本発明の方法に有用なモノクローナル抗体としては、特に限定されないが、エドレコロマブおよびトラスツズマブ(ハーセプチン)が挙げられる。エドレコロマブは、結腸直腸癌にみられる17−1A抗原を標的とするものであり、ヨーロッパではそれらを適応症に承認されている。その抗腫瘍効果は、ADCC、CDCおよび抗イディオタイプネットワークの誘導を介するものである。トラスツズマブはHER−2/neu抗原を標的とするものである。この抗原は乳癌の25%〜35%にみられる。トラスツズマブは様々な方法、すなわち、HER−2受容体発現の下方制御、HER−2タンパク質を過剰発現するヒト腫瘍細胞の増殖阻害、HER−2タンパク質を過剰発現する腫瘍細胞に対する免疫動員およびADCCの増強ならびに血管新生因子の下方制御に作用すると考えられている。アレムツズマブ(キャンパス)は慢性リンパ球性白血病;結腸癌および肺癌の治療に用いられ;ゲムツズマブ(マイロターグ)は急性骨髄性白血病の治療に用いられ;イブリツモマブ(ゼバリン)は非ホジキンリンパ腫の治療に用いられ;パニツムマブ(ベクティビックス)は結腸癌の治療に用いられている。セツキシマブ(アービタックス)も本発明の方法での使用が目的とされる。この抗体は、EGF受容体(EGFR)と結合し、結腸癌および頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)を含めた固形腫瘍の治療に使用されている。
一実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)と併用する。様々な腫瘍が免疫系による攻撃から自身を保護する分子因子を発現することができ、このため、免疫系の監視制御を逃れることに成功する。この「腫瘍免疫逃避」は主として、免疫細胞リガンドが標的とする受容体および結合部位の拮抗的遮断によるものである。免疫チェックポイント阻害剤とは、腫瘍細胞が発達させたこの種の阻害機序を特に標的とする分子のことである。ICIの例としては、特に限定されないが、CTLA−4の阻害剤(例えば、イピルマブ(ipilumab)およびトレメリムマブなど)、PD−1の阻害剤(例えば、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、ニボルマブおよびAMP−224など)、PD−L1の阻害剤(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブおよびBMS−936559など)、LAG3の阻害剤(例えば、IMP321など)およびB7−H3の阻害剤(例えば、MGA271など)が挙げられる。一実施形態では、本発明の抗体は、ADCC、CDCまたは抗体誘導性食作用を媒介するFc領域を含まず、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)と併用する。
一実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、CD160−TMがそのリガンドの1つ、例えばMHCクラスI分子と結合するのを阻害する。本明細書で使用される「リガンド」という用語は、リガンド/受容体の対のうちの一方のメンバーを指し、その対の他方のメンバーと結合する。このため、CD160−TMがそのリガンドの1つと結合するのを阻害すると、CD160−TMを発現するNK細胞の機能性が阻害され得る。
このような阻害は、発作性夜間ヘモグロビン尿症あるいは炎症性疾患および/または自己免疫疾患の治療に有用であり得る。炎症性疾患および/または自己免疫疾患の例については上に列挙した。
したがって、本発明のさらなる目的は、必要とする対象の発作性夜間ヘモグロビン尿症を治療する方法であって、対象に治療有効量の本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を投与することを含む、方法に関する。本明細書で使用される「発作性夜間ヘモグロビン尿症」または「PNH」という用語は、その当該技術分野での一般的な意味を有し、血球溶血性貧血、骨髄不全および高頻度の血栓事象を特徴とする後天性クローン性造血幹細胞障害を指す。いくつかの実施形態では、対象はPIGA遺伝子(ホスファチジルイノシトールグリカンアンカー生合成クラスA、遺伝子ID:5277)に変異がみられない。
したがって、本発明はさらに、PNHの治療に使用する抗体、組成物、医薬組成物または薬剤に関する。
一実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、PNHの治療に使用する場合、ADCC、CDCまたは抗体誘導性食作用を媒介するFc領域を含まない。一実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、PNHの治療に使用する場合、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、一本鎖抗体フラグメントまたは複数の異なる抗体フラグメントを含む多重特異性抗体からなるか、これを含むものである。好ましくは、この実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)はFabである。
本発明はさらに、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を含む融合タンパク質に関する。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を治療部分、すなわち薬物とコンジュゲートする。治療部分は、例えば、細胞毒素、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤、免疫賦活剤、溶解ペプチドまたは放射性同位元素であり得る。このようなコンジュゲートを本明細書では、「抗体・薬物コンジュゲート」または「ADC」と呼ぶ。一実施形態では、本発明の抗体は、ADCC、CDCまたは抗体誘導性食作用を媒介するFc領域を含まず、治療部分とコンジュゲートする。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を細胞毒性部分とコンジュゲートする。一実施形態では、本発明の抗体は、ADCC、CDCまたは抗体誘導性食作用を媒介するFc領域を含まず、細胞毒性部分とコンジュゲートする。細胞毒性部分は、例えば、タキソール;サイトカラシンB;グラミシジンD;臭化エチジウム;エメチン;マイトマイシン;エトポシド;テノポシド;ビンクリスチン;ビンブラスチン;コルヒチン;ドキソルビシン;ダウノルビシン;ジヒドロキシアントラシンジオン;マイタンシンまたはその類似体もしくは誘導体などのチューブリン阻害剤;モノメチルアウリスタチンEもしくはFまたはその類似体もしくは誘導体などの抗有糸分裂剤;ドラスタチン10もしくは15またはその類似体;イリノテカンまたはその類似体;ミトキサントロン;ミトラマイシン;アクチノマイシンD;1−デヒドロテストステロン;グルココルチコイド;プロカイン;テトラカイン;リドカイン;プロプラノロール;ピューロマイシン;カリケアマイシンまたはその類似体もしくは誘導体;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート、6メルカプトプリン、6チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビンまたはクラドリビンなど;アルキル化剤、例えばメクロレタミン、チオエパ(thioepa)、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンCなど;シスプラチンまたはカルボプラチンなどの白金誘導体;デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、ラケルマイシン(CC−1065)またはその類似体もしくは誘導体;抗生物質、例えばダクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC)など;ピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン(PDB);ジフテリア毒素ならびにジフテリアA鎖およびその活性フラグメントなどの関連分子ならびにハイブリッド分子、リシンAまたは脱グリコシル化リシンA鎖毒素などのリシン毒素、コレラ毒素、志賀様毒素、例えばSLT I、SLT II、SLT IIVなど、LT毒素、C3毒素、志賀毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、大豆バウマン・バークプロテアーゼ阻害剤、シュードモナスエキソトキシン、アロリン、サポリン、モデッシン、ゲラニン、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質、例えばPAPI、PAPIIおよびPAP−Sなど、ツルレイシ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(Sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシンおよびエノマイシン毒素;リボヌクレアーゼ(RNアーゼ);DNアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシンA;アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質;ジフテリン毒素;ならびにシュードモナスエンドトキシンからなる群より選択され得る。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)をアウリスタチンまたはそのペプチド類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。一実施形態では、本発明の抗体は、ADCC、CDCまたは抗体誘導性食作用を媒介するFc領域を含まず、アウリスタチンまたはそのペプチド類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。アウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解ならびに核および細胞の分裂に干渉し(Woykeら(2001)Antimicrob.Agents and Chemother.45(12):3580−3584)、抗癌活性(米国特許第5663149号)および抗真菌活性がある(Pettitら(1998)Antimicrob.Agents and Chemother.42:2961−2965)ことが明らかにされている。例えば、アウリスタチンEをパラ−アセチル安息香酸またはベンゾイル吉草酸と反応させて、それぞれAEBおよびAEVBを作製することができる。その他の典型的なアウリスタチン誘導体としては、AFP、MMAF(モノメチルアウリスタチンF)およびMMAE(モノメチルアウリスタチンE)が挙げられる。適切なアウリスタチンならびにアウリスタチンの類似体、誘導体およびプロドラッグならびにアウリスタチンとAbとのコンジュゲーションに適したリンカーについては、例えば、米国特許第5,635,483号、同第5,780,588号および同第6,214,345号ならびに国際公開第02088172号、同第2004010957号号、同第2005081711号、同第2005084390号、同第2006132670号、同第03026577号、同第200700860号、同第207011968号および同第205082023号に記載されている。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)をピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピン(PDB)またはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。一実施形態では、本発明の抗体は、ADCC、CDCまたは抗体誘導性食作用を媒介するFc領域を含まず、PDBまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。適切なPDBおよびPDB誘導体ならびにその関連技術については、例えば、Hartley J.A.ら,Cancer Res 2010;70(17):6849−6858;Antonow D.ら,Cancer J 2008;14(3):154−169;Howard P.W.ら,Bioorg Med Chem Lett 2009;19:6463−6466およびSagnouら,Bioorg Med Chem Lett 2000;10(18):2083−2086に記載されている。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)をアントラサイクリン、マイタンシン、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、ラケルマイシン(CC−1065)、ドラスタチン10、ドラスタチン15、イリノテカン、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、PDBまたはそのいずれかの類似体、誘導体もしくはプロドラッグからなる群より選択される細胞毒性部分とコンジュゲートする。一実施形態では、本発明の抗体は、ADCC、CDCまたは抗体誘導性食作用を媒介するFc領域を含まず、アントラサイクリン、マイタンシン、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、ラケルマイシン(CC−1065)、ドラスタチン10、ドラスタチン15、イリノテカン、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、PDBまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグからなる群より選択される細胞毒性部分とコンジュゲートする。
いくつかの実施形態では、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)をアントラサイクリンまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、抗体をマイタンシンまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、抗体をカリケアマイシンまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、抗体をデュオカルマイシンまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、抗体をラケルマイシン(CC−1065)またはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、抗体をドラスタチン10またはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、抗体をドラスタチン15またはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、抗体をモノメチルアウリスタチンEまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、抗体をモノメチルアウリスタチンFまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、抗体をピロロ[2,1−c][1,4]−ベンゾジアゼピンまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。いくつかの実施形態では、抗体をイリノテカンまたはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグとコンジュゲートする。
分子と抗体とをコンジュゲートする技術は当該技術分野で周知である(例えば、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy(Reisfeldら編,Alan R.Liss社,1985)のArnonら,「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」;Controlled Drug Delivery(Robinsonら編,Marcel Deiker社,第2版,1987)のHellstromら,「Antibodies For Drug Delivery」;Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications(Pincheraら編,1985)のThorpe,「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」;Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy(Baldwinら編,Academic Press社,1985)の「Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」;およびThorpeら,1982,Immunol.Rev.62:119−58を参照されたい。また、例えば国際公開第89/12624号も参照されたい。)。通常、核酸分子と抗体上のリジンまたはシステインとをそれぞれN−ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはマレイミド官能基を介して共有結合させる。操作したシステインまたは非天然アミノ酸の組込みを用いるコンジュゲーション法によりコンジュゲートの均一性が改善されることが報告されている(Axup,J.Y.,Bajjuri,K.M.,Ritland,M.,Hutchins,B.M.,Kim,C.H.,Kazane,S.A.,Halder,R.,Forsyth,J.S.,Santidrian,A.F.,Stafin,K.ら(2012).Synthesis of site−specific antibody−drug conjugates using unnatural amino acids.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 109,16101−16106.;Junutula,J.R.,Flagella,K.M.,Graham,R.A.,Parsons,K.L.,Ha,E.,Raab,H.,Bhakta,S.,Nguyen,T.,Dugger,D.L.,Li,G.ら(2010).Engineered thio−trastuzumab−DM1 conjugate with an improved therapeutic index to target humanepidermal growth factor receptor 2−positive breast cancer.Clin.Cancer Res.16,4769−4778.)。Junutulaら(2008)は「THIOMAB」(TDC)と呼ばれるシステインベースの部位特異的コンジュゲーションを開発しており、従来のコンジュゲーション法と比較して治療指数の改善がみられると主張している。ADCについて、抗体に組み込まれた非天然アミノ酸とのコンジュゲーションも検討されているが、この方法の普遍性は未だ確立されていない(Axupら,2012)。当業者には特に、アシル供与体グルタミン含有タグ(例えば、Gin含有ペプチドタグまたはQタグ)またはポリペプチド操作(例えば、アミノ酸の欠失、挿入、置換またはポリペプチドの変異によるもの)によって反応性にした内在性グルタミンで操作したFc含有ポリペプチドが考えられよう。次いで、トランスグルタミナーゼがアミン供与剤(例えば、反応性アミンを含むか、これと結合した小分子)と共有結合により架橋して、アミン供与剤がアシル供与体グルタミン含有タグまたは接触可能な/露出した/反応性の内在性グルタミンを介してFc含有ポリペプチドと部位特異的にコンジュゲートした操作Fc含有ポリペプチドコンジュゲートの安定で均一な集団を形成し得る(国際公開第2012059882号)。
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、所望の治療結果を得るのに有効な量を必要な用量および期間で表したものを指す。したがって、「治療有効量」という用語は、標的に大きな負の副作用も有害な副作用も引き起こさずに、(1)標的疾患の発症の遅延もしくは予防;(2)標的疾患の1つもしくは複数の症状の進行、増悪もしくは悪化の抑制もしくは停止;(3)標的疾患の症状の改善をもたらすこと;(4)標的疾患の重症度もしくは発症頻度の減少;または(5)標的疾患の治癒を目的とする抗体のレベルまたは量を意味し得る。予防処置として治療有効量を標的疾患の発症前に投与し得る。これに代えて、または加えて、治療処置として治療有効量を標的疾患の発症前に投与してもよい。
本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別および体重ならびに本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)が個体に所望の応答を誘発する能力などの因子によって異なり得る。治療有効量は、治療上有益な効果が抗体または抗体部分のあらゆる毒性作用または有害作用を上回る量でもある。本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)に効率的な用量および投与レジメンは、治療する疾患または病態に左右され、当業者によって決定され得る。当該分野における通常の技術を有する医師であれば、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し処方し得る。例えば、医師は、医薬組成物に用いる本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)の用量を所望の治療効果を得るのに必要なレベルより低いレベルで開始し、所望の効果が得られるまで徐々に用量を増大させることができる。本発明の組成物の適切な用量は一般に、特定の投与レジメンに従って治療効果を得るのに有効な最低用量である化合物の量となる。このような有効量は一般に、上記の諸因子に左右される。例えば、治療に使用する際の治療有効量は、それが疾患の進行を安定化させる能力によって測定し得る。通常、ある化合物が癌を抑制する能力は、例えば、ヒト腫瘍での効果を予測できる動物モデル系で評価し得る。あるいは、化合物が細胞傷害を誘導する能力を当業者に公知のin vitroアッセイで検討することにより、ある組成物のこの特性を評価し得る。治療有効量の治療用化合物により、腫瘍の大きさが減少する、または別の方法で対象の症状が改善し得る。当業者であれば、対象の大きさ、対象の症状の重症度および選択する具体的な組成物または投与経路などの因子に基づいてそのような量を決定することが可能であろう。本発明の抗体の治療有効量の例示的で非限定的な範囲として、約0.1〜100mg/kg、例えば約0.1〜50mg/kgなど、例えば約0.1〜20mg/kg、例えば約0.1〜10mg/kgなど、例えば約0.5mg/kg、例えば約0.3mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kgまたは約8mg/kgなどがある。本発明の抗体の治療有効量の例示的で非限定的な範囲として、0.02〜100mg/kg、例えば約0.02〜30mg/kgなど、例えば約0.05〜10mg/kgまたは0.1〜3mg/kgなど、例えば約0.5〜2mg/kgがある。投与は、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下であり得、例えば、標的部位に近接して投与し得る。最適な所望の応答(例えば、治療応答)が得られるよう上記の治療方法および使用方法での投与レジメンを調整する。例えば、単回ボーラス投与を実施しても、複数の分割用量を経時的に投与しても、あるいは用量を治療状況の要求に応じて比例的に減少または増加させてもよい。いくつかの実施形態では、治療中、例えば所定の時点で治療の効果をモニターする。いくつかの実施形態では、疾患領域の可視化により、あるいは本明細書でさらに記載するその他の診断方法により、例えば、1回または複数回のPET−CTスキャンを例えば本発明の標識抗体、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)に由来するフラグメントまたはミニ抗体を用いて実施することにより効果をモニターし得る。必要に応じて、有効1日量の医薬組成物を、任意選択で単位投与剤形の形で、1日を通して適切な間隔で別個に投与する2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上の下位用量として投与し得る。いくつかの実施形態では、任意の望ましくない副作用を最小限に抑えるため、本発明のヒト抗体(好ましくはモノクローナル抗体)を緩徐持続注入により長時間かけて、例えば24時間より長い時間をかけて投与する。週1回、2週間に1回または3週間に1回の投与期間を用いて有効量の本発明の抗体を投与してもよい。投与期間は、例えば、8週間、12週間または臨床的進行が確認されるまでに限定し得る。非限定的な例として、治療開始後第1日、第2日、第3日、第4日、第5日、第6日、第7日、第8日、第9日、第10日、第11日、第12日、第13日、第14日、第15日、第16日、第17日、第18日、第19日、第20日、第21日、第22日、第23日、第24日、第25日、第26日、第27日、第28日、第29日、第30日、第31日、第32日、第33日、第34日、第35日、第36日、第37日、第38日、第39日または第40日のうち少なくとも1つの日に、あるいは第1週、第2週、第3週、第4週、第5週、第6週、第7週、第8週、第9週、第10週、第11週、第12週、第13週、第14週、第15週、第16週、第17週、第18週、第19週もしく第20週のうち少なくとも1つの週に、あるいはそれらを任意に組み合わせて、本発明による治療を1日当たり約0.1〜100mg/kg、例えば0.2mg/kg、0.5mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、22mg/kg、23mg/kg、24mg/kg、25mg/kg、26mg/kg、27mg/kg、28mg/kg、29mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kgまたは100mg/kgなどの量の本発明の抗体の1日量として、24時間毎、12時間毎、8時間毎、6時間毎、4時間毎または2時間毎に、あるいはそれらを任意に組み合わせ、単回用量あるいは分割用量を用いて提供し得る。
本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は通常、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態で対象に投与する。
「薬学的に許容される担体」という用語は、動物、好ましくはヒトに投与したとき、有害反応もアレルギー反応もその他の望ましくない反応も引き起こさない補形剤を指す。これにはあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などが含まれる。ヒト投与には、製剤は、規制当局、例えばFDA当局またはEMAなどが要求する無菌性、発熱原性、一般的安全性および純度の基準を満たすものであるべきである。
これらの組成物に使用し得る薬学的に許容される担体としては、特に限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩など、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリラート、ロウ、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。患者への投与に使用するには、患者への投与用に組成物を製剤化する。本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーにより、局所的に、直腸内に、経鼻的に、頬側的に、経膣的に、または埋込みリザーバーから投与し得る。本明細書で用いられるものとしては、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内への注射または注入技術が挙げられる。無菌注射用形態の本発明の組成物は、水性または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、当該技術分野で公知の技術により製剤化し得る。無菌注射用製剤は、無毒性で非経口的に許容される希釈剤または溶媒を用いた無菌注射溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール溶液であってもよい。使用し得る許容される賦形剤および溶媒には、水、リンガー溶液および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、従来の方法では無菌不揮発性油を溶媒または懸濁媒として用いる。この目的には、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含めた任意の無菌不揮発性油を用い得る。注射剤の調製にはオレイン酸などの脂肪酸およびそのグリセリド誘導体が有用であり、オリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油、特にポリオキシエチル化型のものも同じく有用である。これらの油性の液剤または懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースなどの長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤、または乳剤および懸濁剤を含めた薬学的に許容される剤形の製剤化によく用いられるこれと同様の分散剤も含有し得る。製剤化という目的にはこれ以外に、よく用いられる界面活性剤、例えばTweens、Spansおよびその他の乳化剤など、または薬学的に許容される固体剤形、液体剤形もしくはその他の剤形の製造によく用いられるバイオアベイラビリティエンハンサーも使用し得る。本発明の組成物は、特に限定されないが、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤または液剤を含めた任意の経口的に許容される剤形で経口的に投与し得る。経口使用する錠剤の場合、よく用いられる担体としては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。通常、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も添加する。カプセル形態での経口投与には、有用な希釈剤として、例えばラクトースが挙げられる。経口使用に水性懸濁剤が必要とされる場合、有効成分を乳化剤および懸濁化剤と組み合わせる。必要に応じて、特定の甘味剤、香味剤または着色剤も添加し得る。あるいは、本発明の組成物を直腸投与用の坐剤の形態で投与してもよい。これらは、薬剤と、室温では固体であるが直腸内温度では液体であるため、直腸内で融解して薬物を放出する適切な非刺激性補形剤とを混合することにより調製することができる。このような材料としては、カカオ脂、ミツロウおよびポリエチレングリコールが挙げられる。特に、眼球、皮膚または下部腸管の疾患を含め治療の標的に局所適用によるアクセスが容易な領域または器官が含まれる場合、本発明の組成物を局所的に投与してもよい。これらの領域または器官それぞれに適した局所製剤は容易に調製される。局所適用には、組成物を、1つまたは複数の担体に懸濁または溶解させた活性成分を含有する適切な軟膏に製剤化し得る。本発明の化合物を局所投与するための担体としては、特に限定されないが、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ロウおよび水が挙げられる。あるいは、組成物を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体に懸濁または溶解させた活性成分を含有する適切なローションまたはクリームに製剤化することができる。適切な担体としては、特に限定されないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられる。下部腸管への局所適用は、直腸内坐剤製剤(上を参照されたい)または適切な浣腸製剤の形で実施することができる。貼付剤を使用することもできる。本発明の組成物を経鼻エアロゾルまたは吸入により投与してもよい。このような組成物は、医薬製剤の分野で周知の技術により調製され、ベンジルアルコールもしくはその他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを増強する吸収促進剤、フッ化炭素および/またはその他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を用いて生理食塩水溶液として製剤化され得る。例えば、本発明の医薬組成物中に存在する抗体を100mg(10mL)または500mg(50mL)の使い捨てバイアルに入れ10mg/mLの濃度で提供することができる。製品は、9.0mg/mL塩化ナトリウム、7.35mg/mLクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLポリソルベート80および無菌注射用水を用いてIV投与用に製剤化する。pHは6.5に調整する。本発明の医薬組成物中の抗体の適切な例示的用量範囲は、約1mg/m2〜500mg/m2であり得る。ただし、これらのスケジュールは例示的なものであって、最適なスケジュールおよびレジメンは、医薬組成物中の特定の抗体について臨床試験で決定しなければならない親和性および耐容性を考慮に入れて調整し得ることが理解されよう。注射(例えば、筋肉内注射、i.v.注射)用の本発明の医薬組成物は、無菌緩衝水(例えば、筋肉内注射には1ml)および約1ng〜約100mg、例えば、約50ng〜約30mgまたはより好ましくは約5mg〜約25mgの本発明の抗CD160−TM抗体を含有するよう調製することが可能である。
本発明のまた別の目的は、in vitroまたはin vivoで試料中、好ましくは生体試料中のCD160−TMを検出するのに少なくとも1つの本発明の抗体を使用することである。本発明のまた別の目的は、in vitroまたはin vivoで試料中、好ましくは生体試料中の活性化NK細胞を検出するのに少なくとも1つの本発明の抗体を使用することである。
本発明の抗体を使用し得るアッセイの例としては、特に限定されないが、ELISA、サンドイッチELISA、RIA、FACS、組織免疫組織化学、ウエスタンブロットおよび免疫沈降が挙げられる。
本発明のまた別の目的は、試料中のCD160−TMを検出する方法であって、試料と本発明の抗体とを接触させ、CD160−TMと結合した抗体を検出し、それにより試料中のCD160−TMの存在を示すことを含む、方法である。本発明のまた別の目的は、試料中の活性化NK細胞を検出する方法であって、試料と本発明の抗体とを接触させ、CD160−TMと結合した抗体を検出し、それにより試料中の活性化NK細胞の存在を示すことを含む、方法である。
本発明の一実施形態では、試料は生体試料である。生体試料の例としては、特に限定されないが、患部組織から調製した組織溶解物および抽出物、体液、好ましくは血液、より好ましくは血清、血漿、滑液、気管支肺胞洗浄液、痰、リンパ液、腹水、尿、羊水、腹腔水、脳脊髄液、胸水、心膜液および肺胞マクロファージが挙げられる。
本発明の一実施形態では、「試料」という用語は、任意の解析の前に個体から採取した試料を意味するものとする。
本発明の一実施形態では、本発明の抗体を検出可能な標識で直接標識し、直接検出され得る。別の実施形態では、本発明の抗体は標識されておらず(かつ第一/一次抗体と呼ばれる)、抗CD160−TM抗体と結合することができる二次抗体またはその他の分子を標識する。当該技術分野で周知のように、二次抗体は、特定の種およびクラスの一次抗体と特異的に結合することができるよう選択する。
試料中の抗CD160−TM抗体/CD160複合体の存在は、標識した二次抗体の存在を検出することによって検出および測定することができる。例えば、一次抗体/抗原複合体を含むウェルまたは同複合体を含む膜(ニトロセルロース膜またはナイロン膜など)から未結合の二次抗体を洗い流した後、例えば標識の化学発光に基づき、結合した二次抗体を発色させ検出することができる。
抗CD160−TM抗体または二次抗体の標識としては、特に限定されないが、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、磁性剤および放射性物質が挙げられる。上記の酵素の例としては、特に限定されないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β‐ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;補欠分子族の例としては、特に限定されないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;蛍光物質の例としては、特に限定されないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシン(dansyne chloride)またはフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例としては、特に限定されないがルミナールが挙げられ;磁性剤の例としては、ガドリニウムが挙げられ;適切な放射性物質の例としては、125I、131I、35Sまたは3Hが挙げられる。
本発明のまた別の目的は、(例えば、活性化NK細胞由来の)CD160−TM発現細胞から細胞試料または細胞集団を枯渇させるin vitroの方法であって、細胞試料と本発明の抗体とを接触させることを含む、方法である。
本発明のまた別の目的は、細胞試料または細胞集団から(例えば、活性化NK細胞由来の)CD160−TM発現細胞を単離するin vitroの方法であって、細胞試料と本発明の抗体とを接触させることを含む、方法である。
本発明のまた別の目的は、NK細胞を活性化させるin vitroの方法であって、NK細胞と本発明の抗体とを接触させることを含む、方法である。
本発明のまた別の目的は、少なくとも1つの本発明の抗CD160−TM抗体、好ましくはモノクローナル抗CD160−TM抗体を含む、キットである。
「キット」は、CD160−TMの発現を特異的に検出する試薬、好ましくは抗体を少なくとも1つ含む、任意の製品(例えば、包装または容器)を意図するものである。
キットは、本発明の方法を実施する1つの単位として宣伝、配布または販売され得る。さらに、キットのいずれかまたはすべての試薬を、外部環境からそれを保護する容器、例えば密閉容器などに入れて提供し得る。
キットは、キットおよびその使用方法について記載した添付文書も含み得る。
以下の図面および実施例により本発明をさらに説明する。ただし、これらの実施例および図面は、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。