関連出願の相互参照
本願は、出願日が2016年7月15日の米国仮特許出願第62/363,032号に対する優先権の利益を主張する。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、フローサイトメトリー機器に関し、より詳細には、流路内の異なる垂直位置からの蛍光を含む光を収集し、選択的検出のために、垂直位置によって、かつ波長範囲に応じて、収集された蛍光を複数の異なる検出チャネルに分離する光学検出システムに関する。
発明の背景
フローサイトメトリーは、細胞に結合した蛍光分子がフローセルを通過して複数のレーザーのセットによって励起される、レーザー系生物物理学的技術(laser−based, biophysical technology)である。蛍光は、収集され、特定の検出波長により異なるチャネルに分離され、電気信号に変換され、さらに、コンピューターを使用して分析される。細胞を異なるフルオロフォア(fluorophores)で標識することによって、様々な異なる細胞集団を分解することができる。例えば、三色フローサイトメトリー等の多色フローサイトメトリーは、異なる励起波長および/または発光波長を有するフルオロフォアを使用し、生物学的サンプル内の様々な細胞亜集団(cell subpopulations)を区別する。
操作上、励起光は、ビーム整形、ステアリングおよび導光光学部品(guiding optical components)によってフローセルに供給される。フローセルに蛍光標識細胞または粒子を通過させると、光を回折し標識を励起して、蛍光を発生させる。互いにかつフローセルに対して正確な位置に配置された複数の多重レンズの複雑な設計が採用され、粒子からの回折光および蛍光を収集する。収集された光は、特定の励起レーザーに応じて、かつ光の波長に応じて、異なるチャネルへ分割される。
一つのアプローチでは、異なる光ファイバケーブルを使用して、異なるレーザー源から励起される蛍光/散乱光を収集する。その後、各光ファイバケーブルからの光は、異なる蛍光チャネルへ分割される。あるいは、特別に設計された対物レンズ(objective)を使用して、粒子が異なるレーザー源を通過する時に粒子から光を収集し、さらに、その光は、どのレーザー源によって生成されたかに応じて異なるビームに分離され、異なるダイクロイックミラーに応じて異なるチャネルに分離される。
全てのそのような収集光学系(collection optics)は、製造するのに費用がかかり、位置合わせするのが難しく、かつ調整するのが難しい。また、多くの場合、集光効率は限定される。さらに、収集された分割光は、光電子増倍管(PMT)を用いて従来通りに検出および測定される。PMTはフローサイトメトリー用途および他の光学的測定状況のために広く使用されているが、それらは高価で、サイズが大きく、また使用するのに複雑である。したがって、設計が簡単で、光学部品が少なく、光収集効率が高く、光検出/測定感度/効率が高い、向上した収集光学系が必要とされている。
フローサイトメトリーの設計および技術的アプローチにおける上記欠点は、本発明によって対処される。本発明の一態様では、フローサイトメーターに使用するための光学エンジンが提供される。光学エンジンは、複数のレーザーのセットを備え、各レーザーは、蛍光分子の励起に適した波長に調整される。ここで、各レーザーからの光は、同一励起面に沿った、同一水平位置へx軸に沿って水平に集光され、かつ異なる垂直位置へy軸に沿って垂直に集光される。励起面に沿った同一水平位置は、フローサイトメーターのフローセルを介した流路と交差する。また、光学エンジンは、複数の光学系のセットを備える。複数の光学系のセットは、フローセルから放出された蛍光を収集するための収集光学系と、フローセルから収集された蛍光を濾過し、異なる波長範囲にするフィルター光学系とを備える。ここで、複数の光学系のセットは、蛍光が励起される異なるレーザーに応じて、収集光学系の焦点面の異なる位置に同一波長範囲の蛍光をさらに分離する。また、光学エンジンは、検出器を備える。検出器は、異なる位置からの光を選択的に検出することにより、複数のレーザーのセット内の異なるレーザーによって励起された同一波長範囲内で放出された蛍光同士を区別し、かつ光を電気信号に変換する。本願では、各レーザーの光伝搬方向は、水平方向のx軸および垂直方向のy軸に対して直角であるz軸として定義される。
光学エンジンは、任意の数のレーザーの使用を可能にするが、いくつかの実施形態では、少なくとも2つのレーザー、例えば2つ、3つ、4つまたは5つのレーザーを有し、それらの各々は異なる波長に調整される。好ましい実施形態では、全てのレーザーは、フローセルの異なる垂直位置へ垂直方向に沿って垂直に集光される。一実施形態では、光学エンジンは、各々が蛍光分子の励起に適した特定の波長で光を放出する多数のレーザーと、各レーザー用の複数のビーム整形光学系のセットとを含む。ここで、各セットは、2つのレンズを含み、同一励起面に沿った、同一水平位置へx軸に沿って水平に光を調整可能に集光し、かつ異なる垂直位置へy軸に沿って垂直に光を調整可能に集光する。また、励起面の水平位置は、フローサイトメーターのフローセルを介した流路と交差する。好ましい実施形態では、複数のビーム整形光学系のセットは、複数のシリンドリカルレンズのセット(例えば、x軸シリンドリカルレンズおよびy軸シリンドリカルレンズ)または複数のパウエルレンズのセット(例えば、x軸パウエルレンズおよびy軸パウエルレンズ)を含む。別の実施形態では、光学エンジンは多数のレーザーを含み、各レーザーは蛍光分子の励起に適した特定の波長で光を放出する。また、全てのレーザービームは、x軸に沿って水平方向に独立して調整され、かつy軸に沿って垂直方向に独立して調整され、適切に配置されたダイクロイックミラーを介して結合されて、単一のアクロマティックビーム整形光学系(achromatic beam shaping optic)を通過する。その結果、全てのレーザービームは、同一励起面に沿った同一水平位置および異なる垂直位置へ集光される。ここで、励起面の水平位置は、フローサイトメーターのフローセルを介した流路と交差する。この実施形態は、各レーザーがそれ自身のビーム整形光学系を有すると記載された例とは異なっている。
さらに他の実施形態では、光学エンジンは、それぞれが蛍光分子の励起に適した特定の波長で光を放出する多数のレーザーを含む。上述の2つの実施形態とは異なる光学設計アプローチが採用され、全てのレーザービームが同一励起面に沿った同一水平位置および異なる垂直位置へ集光される。ここで、励起面の水平位置は、フローサイトメーターのフローセルを介した流路と交差する。
励起面で集光されたレーザービームは、フローサイトメトリー用途に適したビームサイズを有するべきである。一般に、励起面での垂直ビーム幅は、約2ミクロンから約20ミクロンまで変化し得る。一実施形態では、垂直ビーム幅は2から5ミクロンの間である。他の実施形態では、垂直ビーム幅は、5から20ミクロンの間である。好ましくは、垂直ビーム幅は5から15ミクロンの間である。一般に、水平ビーム幅は、約20ミクロンから約200ミクロンまで変化し得る。一実施形態では、水平ビーム幅は20から50ミクロンの間である。他の実施形態では、水平ビーム幅は、50から200ミクロンの間である。好ましくは、水平ビーム幅は50から100ミクロンの間である。
サンプルの流動方向に沿った異なる垂直位置で個別的に複数のレーザー(例えば、2つのレーザー、3つのレーザー、4つのレーザー、5つ以上のレーザー)のそれぞれを垂直に集光することは、異なる光検出器によって、複数のレーザーのそれぞれによって励起される蛍光を区別することを可能とする。垂直軸に沿った3つの異なるレーザーの空間的離間(spatial separation)は、異なるレーザーのそれぞれを通過する時に、粒子によって放出される蛍光の時間的および位置的な差に変換されるからである。特別に設計された収集光学系は、フローセルの異なる垂直位置からの光を収集するだけでなく、光がフィルター光学系を介して伝播する際に、異なる垂直位置からの光のさらなる分離も可能にする。ダイクロイックミラー、バンドパスフィルターおよび/または他の種類のフィルターもしくはレンズ等の光学部品を有するフィルター光学系は、フローセルからの光および蛍光を濾過し、異なる波長範囲にすることができる。したがって、これらの波長範囲のそれぞれの光は、収集光学系の焦点面で垂直軸に沿って空間的に分離され、それによって、同一波長範囲内の蛍光成分が、その由来するレーザーに応じて、検出中に区別されることを可能とする。いくつかの実施形態では、フローセルの励起面に沿った集光ビームの隣接する垂直位置間の垂直方向の離間距離は、60から200μmの間である。他の実施形態では、フローセルにおける集光ビームの隣接する垂直位置間の垂直方向の離間距離は、60から100μmの間である。さらに別の実施形態では、フローセルにおける集光ビームの隣接する垂直位置間の垂直方向の離間距離は約80μmである。収集光学系は、そのような離間距離を増幅して、収集光学系の焦点面における隣接する垂直位置の間で、約2、3mm(例えば1.5から2.5mmの間の値)、または約数ミリメートル(例えば、約3mm、約3.5mm、約4mm、または約5mm)の空間的離間を達成することができる(ここでの各垂直位置は、1つの対応するレーザーによって励起された蛍光粒子の光線に対応する)。収集光学系の焦点面で隣接するビームを空間的に分離することは、光検出器を使用して、蛍光シグナルが、波長範囲および由来するレーザーにより区別されることを可能とする。
いくつかの実施形態では、光検出器は、収集光学系の焦点面に沿った対応する垂直位置に配置され、各検出器は、1つの対応するレーザーによって励起された蛍光粒子(particle fluoresce)の光線を検出する。そのような光検出器は、検出器アレイ(detector array)の形態で配置することができる。他の実施形態では、光検出器は、収集光学系の焦点面からある程度離れた位置に配置される。ここで、各検出器は、1つの対応するレーザーによって励起された蛍光粒子の光線を検出する。さらに他の実施形態では、光検出器は収集光学系の焦点面からある程度離れた位置に配置され、レンズは焦点面と光検出器との間の光路に沿って配置される。ここで、各検出器は、1つの対応するレーザーによって励起された蛍光粒子の光線を検出する。そのようなレンズは、焦点面からの光線を拡大し、比較的均一なビーム分布を提供するという目的にかなっている。
好ましい実施形態では、収集光学系は、ハーフボールレンズ(half ball lens)とそれに続く二組のダブレットレンズ(doublet lenses)とを備える。好ましくは、ハーフボールレンズは高屈折率を有する材料で構成される。好ましくは、二組のダブレットレンズの組合せは、フローセルの異なる垂直位置からの光を収集するだけでなく、そのような光を、光がフィルター光学系を通過した後に、mm範囲のより大きな離間距離を有するように焦点面にさらに集光させることを可能とする。フィルター光学系は、ロングパスおよび/またはショートパスのダイクロイックミラー、バンドパスフィルター、ならびに他のフィルターおよび/またはレンズを備えることができる。いくつかの実施形態において、フィルター光学系は、(例えば、ハーフボールレンズおよび二組のダブレットレンズを使用して)収集された蛍光を濾過し、以下の波長として特徴付けられる異なる波長範囲にする。その波長は、780/60nm、615/24nm、530/30nm(または530/43nm)、445/45nm、586/20nm(または572/28nm)、661/20、697/58nm(または695/40nm)、および725/40nmである。なお、すべての波長は、nmの単位を有する。ここに挙げられたチャネル波長は、例示目的のためだけであり、本発明を限定することを意図しない。
様々な方法を使用して、収集光学系の焦点面においてmm範囲の分離を伴う光スポットを区別することができる。一実施形態では、そのような光スポットは分離され、より小さなサイズに集光され、次いで光ファイバケーブルの束に結合される。光ファイバケーブルの端部における光は、光電子増倍管(PMT)、シリコン増倍管もしくはマルチピクセルフォトンカウンター(MPPC)、またはフォトダイオード等の光検出器によって検出することができる。別の実施形態では、収集光学系の焦点面におけるそのような光スポットは、複数のMPPCチップを含む線形MPPCアレイによって直接検出される。ここで、各チップが対応する光スポットを検出する。さらに別の実施形態では、そのような光スポットは、追加の光学部品でさらに分離され、隣接するスポット間がさらにより大きな空間的距離となり、多数のMPPC検出器、多数のフォトダイオード、多数のアバランシェフォトダイオード(avalanche photodiodes)、多数のPMT等の多数の光検出器によって、検出または測定されるようになる。例示的な実施形態では、4つのレーザーが励起源として採用され、フローセルにおいて隣接する垂直集光ビーム間の垂直方向の離間距離は、80ミクロンである。収集光学系の焦点面における隣接する光スポット間の垂直方向の離間距離は、約2、3mm(例えば1.5〜2.5mm)または数ミリメーター(例えば3〜5mm)である。次に、2つの中間光スポット(middle light spots)はプリズムミラーを介してさらに分離され、それぞれMPPC検出器によって検出される。特に、2つの側方光スポット(side light spots)は、対応する位置に取り付けられた2つのMPPC検出器によって直接検出される。
本発明の光学エンジンの他の実施形態では、上記の収集光学系およびフィルター光学系とは異なる他のアプローチを採用して、フローセルを介して流れる粒子からの散乱光および蛍光を収集、分離および分割することもできる。一実施形態では、異なる波長の励起レーザービームが、ビーム整形、ステアリングおよび導光光学部品によってフローセルに供給および集光される。すべての集光レーザービームは、共通水平位置を共有し、流路が垂直方向に沿って配置されるフローセルにおいて異なる垂直位置を有するであろう。フローセルを介した蛍光標識細胞または粒子の通過は、光を回折し標識を励起して、蛍光を発生させる。互いにかつフローセルに対して正確な位置に配置された複数の多重レンズの複雑な設計が採用され、粒子からの回折光および蛍光を収集する。収集された光は、その後、特定の励起レーザーに応じて、かつ光の波長に応じて、異なるチャネルへ分割される。
光の収集および分離の一つのアプローチでは、異なる光ファイバケーブルを使用して、異なるレーザー源から励起される蛍光/散乱光を収集する。次に、各光ファイバケーブルからの光は、異なるダイクロイックミラーおよびバンドパスフィルターの使用により、異なる蛍光チャネルへ分割される。別のアプローチでは、特別に設計された対物レンズを使用して、異なるレーザー源を粒子が通過する時に粒子から光を収集し、その光は、どのレーザー源によって生成されたかに応じて異なるビームに分離される。1つのレーザー源に由来する分離された光線のそれぞれは、その後、異なるダイクロイックミラーおよびバンドパスフィルターの使用によって、異なるチャネルへ分離される。
本発明における光検出(散乱光または蛍光)のための検出器は、各蛍光チャネルに対して提供され、好ましくはMPPC検出器の形態である。好ましくは、蛍光シグナルは、MPPCによってアナログ電流信号に変換され、次に、抵抗器の使用によってアナログ電圧信号に変換される。さらに好ましくは、アナログ電圧信号は、アナログデジタル変換器(ADC)を使用してデジタル信号に変換され、精度および速度を高めるためにデジタル形式で処理される。好ましい実施形態では、ADCからの各デジタル出力データは、以下の明細書中に記載されている技術を使用して決定された対応する較正係数でデータを除算することによって、補正または較正される。好ましくは、較正係数は、線形ダイナミックレンジを、少なくとも約半(0.5)ディケード向上させることを可能にする。より好ましくは、較正係数は、線形ダイナミックレンジを、少なくとも約1ディケード向上させることを可能にする。さらに好ましくは、較正係数は、線形ダイナミックレンジを、少なくとも約1.5ディケード向上させることを可能にする。特に好ましくは、較正係数は、線形ダイナミックレンジを、少なくとも約2ディケード向上させることを可能にする。
本発明の別の実施形態では、ベンチトップ型フローサイトメーターに使用するための光学エンジンが提供される。光学エンジンは、蛍光分子の励起に適した波長に調整されたレーザーを含む。ここで、レーザーからの光は、励起面に沿った、水平位置へx軸に沿って水平に集光され、かつ垂直位置へy軸に沿って垂直に集光される。励起面に沿った水平位置は、フローサイトメーターのフローセルを介した流路と交差する。また、光学エンジンは、複数の光学系のセットを含む。複数の光学系のセットは、フローセルから放出された蛍光を収集するための収集光学系と、フローセルから収集された蛍光を濾過し、異なる波長範囲にすることによって、異なる蛍光チャネルを提供するフィルター光学系とを含む。また、光学エンジンは、各蛍光チャネルでMPPC検出器を含む。MPPC検出器は、蛍光を検出して光を電気信号に変換する。好ましい実施形態では、光学エンジンはさらに複数のレーザーのセットを含む。ここで、各レーザーは、同一励起面に沿った異なる垂直位置へy軸に沿って垂直に集光される。さらに、複数の光学系のセットは、フローセルから放出された蛍光を異なる蛍光チャネルに分離する。各チャネルは、異なる波長範囲、および蛍光が励起される異なるレーザーによって特徴付けられる。
上記の光学エンジンの好ましい実施形態では、MPPCは、3ディケードを超える線形ダイナミックレンジで動作する。より好ましくは、MPPCは、4ディケードを超える線形ダイナミックレンジで動作する。
上記の光学エンジンのいくつかの実施形態では、MPPCのデジタル出力値は、較正係数に応じて補正される。好ましくは、較正係数は、MPPCの線形ダイナミックレンジを半ディケードより多く向上させる。より好ましくは、較正係数は、MPPCの線形ダイナミックレンジを1ディケードより多く向上させる。さらに好ましくは、較正係数は、MPPCの線形ダイナミックレンジを1.5ディケード(one and one−half decade)より多く向上させる。特に好ましくは、較正係数は、MPPCの線形ダイナミックレンジを2ディケードより多く向上させる。
好ましい実施形態では、細胞の前方散乱(FSC)の特徴付け(characterization)は、FSC検出器、FSC光を収集するためのFSC集光レンズ、ならびに入射レーザービームがFSC集光レンズおよびFSC検出器に入るのを遮断するオブスキュレーションバー(obscuration bar)を備える。蛍光検出器での蛍光シグナルのタイミングとFSC検出器での前方散乱シグナルのタイミングとの間の関係は、どのレーザーが検出チャネルで検出された蛍光シグナルの励起を誘導するかを決定するためのアプローチを提供する。
向上したオブスキュレーションバーの使用によって、前方散乱(FSC)検出のさらなる向上が達成された。好ましい実施形態では、菱形のオブスキュレーションバーが提供される。別の実施形態では、オブスキュレーションバーは、長方形状であり、その水平方向の寸法がその垂直方向の寸法と同一またはより長く、入射レーザービームを遮断するために設けられている。さらに別の実施形態では、オブスキュレーションバーの周囲は、入射レーザービームを遮断するために、光強度分布図の輪郭(コンター)をたどる。さらなる実施形態では、オブスキュレーションバーは、0.1%の輪郭線(コンターライン)内で、光強度分布図の輪郭をたどる。0.1%の輪郭線または境界は、輪郭上の各点での光強度が入射光の最大光強度の0.1%である線に対応する。0.1%の輪郭線内で光強度分布図の輪郭をたどるオブスキュレーションバーは、散乱していないビームの99%をFSC検出器から遮断するように決定された。したがって、本発明はまた、0.1%、0.2%、0.5%、1.0%または2.0%の輪郭線内で光強度分布図の輪郭をたどる、ほぼ菱形のオブスキュレーションバーおよびその成形方法を提供する。
光学エンジンコンポーネントは、単一ユニットとして収容されることが好ましく、これらの光学コンポーネントのいくつかは、他のコンポーネントでの修正のために、取り外して交換することができる。本目的のために、光学エンジンコンポーネントを収容するように構成されたハウジングも提供される。ハウジングは、複数のレーザーのセット、レーザービームを励起面に集光させるための光学系、収集光学系、フィルター光学系、光検出器(photo−detectors or light−detectors)、さらなるフィルター(および/またはレンズ)、また、外部マイクロプロセッサーまたは遠隔コンピューターに接続されるであろう、光検出器から電気回路への電気的接続のための電気的インタフェース等の光学エンジンコンポーネントを備える。いくつかの実施形態では、各レーザーは、対応する複数のビーム整形光学系のセットを有する。ここで、各レーザーからの光は、同一励起面に沿った、同一水平位置へx軸に沿って水平に集光され、かつ異なる垂直位置へy軸に沿って垂直に集光される。また、励起面に沿った同一水平位置は、フローサイトメーターのフローセルを介した流路と交差する。他の実施形態では、全てのレーザービームは、x軸に沿って水平方向に独立して調整され、かつy軸に沿って垂直方向に独立して調整され、適切に配置されたダイクロイックミラーを介して結合されて、共通のアクロマティックビーム整形光学系を通過する。その結果、全てのレーザービームは、同一励起面に沿った同一水平位置および異なる垂直位置へ集光される。ここで、励起面の水平位置は、フローサイトメーターのフローセルを介した流路と交差する。好ましくは、同一ハウジング内のコンポーネントは、異なるレーザー、集光レンズ、ロングパスおよびショートパスのダイクロイックミラー、フィルター、ピンホール通路(pinhole passages)および検出器の互換性のために構成される。これは、互換性のために異なるコンポーネントにわたる位置合わせ穴(alignment holes)、留め金(snaps)、ねじ(screws)または他の留め具(fasteners)の位置決め等の係合機能(engagement features)を標準化することによって、かつ、各レーザーに対して個別に複数のビーム整形光学系のセットを設けることによって達成される。好ましくは、光検出器はMPPC検出器である。いくつかの実施形態では、流路は、ハウジングに取り付けられ、チューブコネクタによって、粒子(例えばビーズまたは細胞)を含むサンプルの流体力学的集束(hydrodynamic focusing)のためのフローサイトメーター装置に結合するように構成される。
関連する実施形態において、本発明はまた、本明細書に開示される光学エンジンのうちのいずれかと、流路と、流路を介して細胞の懸濁液を吸引および供給するための吸引針に流体連通するポンプとを備えるフローサイトメーターを含む。好ましい実施形態では、フローサイトメーターは、2つ、3つ、4つ、または5つのレーザーがあり、それぞれが、異なる波長に調整され、かつフローセルの異なる垂直位置へ集光され、また、フローセルからの光を収集して濾過するための収集光学系およびフィルター光学系を備える複数の光学系のセットがあることによって、さらに特徴付けられる。ここで、複数の光学系のセットは、2つ、3つ、4つ、または5つの異なるレーザーのそれぞれによって励起され、同一波長範囲の濾過された蛍光を、収集光学系の焦点面に沿った異なる垂直位置へ空間的に区別して分離する。
好ましい実施形態では、フローサイトメーターは、4つのレーザーがあり、それぞれが異なる波長に調整され、かつフローセルの異なる垂直位置(すなわち、フローセルの合計4つの垂直位置)に集光され、また、フローセルからの光を収集するための収集光学系および光を濾過するためのフィルター光学系があることによって、さらに特徴付けられる。ここで、収集光学系およびフィルター光学系は、集光された励起ビームの垂直位置に基づく濾過された蛍光を、収集光学系の焦点面の異なる垂直位置(すなわち、焦点面の4つの異なる垂直位置)へ、空間的に区別および/または分離する。そのような平面における光スポットは、任意選択的にさらに分離され、多数のMPPC検出器またはMPPCアレイによって検出される。本目的のために、側方散乱および前方散乱測定(side scatter and forward scatter measurement)に加えて、フローセルを通過する粒子または細胞のための最大25個の蛍光カラーチャネル(fluorescent color channels)を備えるフローサイトメトリー装置が提供される。
関連する実施形態では、本明細書で提供されるフローサイトメーターと、フローサイトメトリーデータを取得および分析するように、コンピューターにロードおよび実行するためのソフトウェアと、を備えるフローサイトメトリーシステムが開発された。そのため、コンピューターにロードするためのフローサイトメトリーソフトウェアも開発された。いくつかの実施形態では、ソフトウェアは、以下の機能、すなわち、各検出器について蛍光チャネルからデータを収集する機能と、ここで、異なる検出器によって収集された蛍光シグナルは、異なる垂直位置でレーザーによって励起された蛍光に対応する異なるデータ系列に変換され、取得したデータに関するさまざまなプロットを表示するグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を生成する機能と、ここで、GUIは、比較プロットに隣接する補整スクロールバー(compensation scroll bars)をさらに含み、1つまたは複数のチャネル間のスペクトル重複の補整(compensation)を調整し、サイトメーターからデータを取得し、そのデータをデータファイルとしてコンピューターのハードドライブに保存する機能と、を実行するためのプログラミングを提供する。ソフトウェアはまた、ユーザーが、データプロットから亜集団を選択し、選択された亜集団について追加のプロットを生成することを可能にするゲート機能(gating function)を含む。このプロセスは、側方散乱データおよび前方散乱データのみならず、すべての蛍光チャネルデータについて繰り返し実行することができる。
さらに別の関連する実施形態では、フローサイトメトリーの方法が提供される。当該方法は、本明細書で提供されるフローサイトメトリーシステムを提供するステップと、細胞の懸濁液を複数の蛍光標識で標識するステップと、フローセルを介して細胞のサンプルをポンピングするステップと、フローサイトメトリーデータを収集するステップと、フローサイトメトリーデータを分析して、サンプルの細胞上または細胞内の1つ以上の複数の蛍光標識の存在、非存在または存在量を決定するステップとを含む。
図1は、光学エンジン100を介した細胞懸濁液の移送の概要を提供する概略図である。
図2は、光学エンジン100の一例を示す上面図である。
図3は、z軸に沿った3つの光路P1〜P3に沿ったレーザー光伝搬を概略的に示す上面図である。ここで、水平なx軸は、3つのレーザー励起源を備える光学照明システムのレーザー光伝搬方向(すなわちz軸)に対して直角である。また、オブスキュレーションバー180による光路P2からの非散乱光の遮断も示されている。
図4は、フローセル130を概略的に示す拡大図であり、3つの光路P1〜P3についての共通水平焦点位置H、および各光路P1、P2、P3の異なる垂直焦点位置Vv、Vb、Vrを示している。
図5は、フローセルにおける流路から収集された光を、6つの異なる蛍光波長範囲と1つの側方散乱チャネル(SSC)へ分割することを示す概略図である。本発明の装置および方法を使用すると、6つの蛍光波長範囲は13の蛍光カラーチャネルに対応し得る。
図6Aは、収集光学系152、154によって収集された同一フローセル130からの4つの異なる垂直位置(Vv、Vr、Vg、Vb)から、光分割モジュール142を介して進み、バンドパスフィルター144によって濾過され、収集光学系152、154の焦点面200に集光され、検出器162〜165を有する検出モジュール161内で検出される蛍光を示す概略図である。
図6Bは、検出器162(163、164または165)で検出するためにレンズ192(193、194または195)によって広げられた4つの蛍光ビームを検出するための構成を示す概略図である。
図7Aは、入射光のパワーレベルに対する、1.5mm×1.5mmのサイズのMPPC検出器からのデジタル出力の依存性を示す図である。
図7Bは、図7Aで使用されたものとは異なる抵抗器を有する別のMPPC検出器からのデジタル出力の依存性を示す図である(抵抗器はMPPC出力電流を電圧に変換するために使用される)。
図7Cは、図7Bにおける1.1mmのビームサイズについて、MPPCデジタル出力対入射光強度の線形回帰フィット(linear regression fit)を示す図である。
図8は、入射光のパワーレベルに対する、MPPCからの電気的アナログ電圧信号(electronic analog voltage signals)を変換した後のデジタル出力の依存性を示す図である。MPPCのサイズは3mm×3mmである。
図9は、515〜545nmの波長範囲の入射光線に関し、特定の動作バイアス電圧および室温で、3mm×3mmのサイズを有するMPPCについて決定された、較正係数対MPPCデジタル出力のプロットを示す図である。
図10は、室温の左パネルおよび低温の右パネルにて、MPPCでのダークカウントノイズのヒストグラムが任意の外部光から遮断されることを示す図である。
図11は、室温の左パネルおよび低温の右パネルにて、青色レーザーによって励起された530/43nmの蛍光チャネルで、MPPC検出器により検出された6‐pkビーズの予備データを示す図である。
好適な実施形態の詳細な説明
本発明は、交換可能なレーザー、光学系構造および検出器によって個別に構成および拡張可能なフローサイトメーターおよびその光学エンジンを提供する。これらは、単一サンプル中の多くの個別粒子に関し、数多くのカラー蛍光チャネル(color fluorescence channels)を含む多数に及ぶパラメーターの測定を提供する。光学エンジン内のコンポーネントの互換性により、ユーザーは、独自の実験条件に応じてかつ個々の必要性に応じて、励起チャネルおよび検出チャネルを調整することが可能になる。これにより、ユーザーは、高い検出感度および分解能を維持しつつ、同一フローサイトメーター内のコンポーネントを追加または置換することが可能になる。向上した検出感度および分解能は、マルチピクセルフォトンカウンター(MPPC)を組み込むことによってさらに可能になる。MPPCは、高い光子−電子変換効率を有し、それでもなお、MPPC装置の欠点、すなわちより大きなダークカウントおよびより大きなバックグラウンドノイズならびに狭いダイナミックレンジを克服する。
フローサイトメーターは、本明細書の様々な非限定的な実施形態に記載されている光学エンジンと、流路と、流路を介して細胞の懸濁液を吸引および供給するための吸引針に流体連通するポンプとを備える。ポンプ流体工学(pump fluidics)の示すところでは、高速で、流路を介して細胞を再現可能に供給し、毎秒数千イベントを超えるサンプル取得速度(sample acquisition rates)を再現可能に実施する。さらに、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,575,063号および米国特許第2016/0097707号に提供される付加的なオートサンプラー、任意のシェーカーおよびサンプル収集方法を用いて、そのような速度は、吸引針への自動サンプル供給とともに達成され得る。加えて、フローサイトメーターは、吸引針の自動洗浄等の機能をプログラムされ、サンプルキャリーオーバーやクロスコンタミネーションの可能性を低減する。
好ましい実施形態では、フローサイトメーター内の光学エンジンは、単一から複数(例えば、2つ、3つ、4つまたは5つ、あるいは、さらにそれ以上)のレーザー等の複数のレーザーのセットを有し、各レーザーが、蛍光分子の励起に適した異なる波長に調整されることをさらに特徴とする。いくつかの実施形態では、フローセルに沿った別々の位置への複数のレーザービームのそれぞれの向上した集光は、各レーザーに対して複数のビーム整形光学系のセットを設けることによって達成される。ここで、各セットは、好ましくは2つのレンズを備え、同一励起面に沿った、同一水平位置へx軸に沿って水平に光を調整可能に集光し、かつ異なる垂直位置へy軸に沿って垂直に光を調整可能に集光する。その同一励起面は、フローサイトメーターのフローセルを介した流路内にあるものとして特徴付けられる。本明細書に記載のビーム整形光学系では、レーザー光の伝播方向は、水平方向のx軸および垂直方向のy軸に直角であるz軸として定義される。ビーム整形光学系は、好ましくは、集光ビームがフローセル内の中心線にあり、かつ楕円形であるようにシリンドリカルレンズを備える。ビーム整形光学系を各レーザーに割り当てることによって、各レーザーをフローセルの異なる垂直位置へ正確に集光させることができる。それによって、市販のシステムで一般的に提供されているような、レーザー間でビーム整形、ステアリングおよび導光光学系を共有することを必要とする構成に関連するトレードオフを排除する。
関連する実施形態では、複数のレーザーが、所定のビーム整形光学コンポーネントを共有し、同時に、各個々のレーザーを、集光させ、同一平面に沿った異なる垂直位置へ進めるまたは導くことができる。光学設計の当業者は、本明細書の指針を用いてそのような光学照明システムを開発することができる。
好ましい実施形態では、フローセルからの蛍光および粒子散乱光を収集する収集光学系と、フローセルから放出され、収集された(収集光学系によって収集された)蛍光を濾過し、異なる波長範囲にするフィルター光学系とを備える複数の光学系のセットが提供される。ここで、複数の光学系のセットは、蛍光が励起されるレーザーに応じて、同一波長範囲の蛍光を異なる位置へさらに分離する。また、検出器は、それぞれが1つの個別のレーザーで励起された、異なる位置のそれぞれからの光を検出する。それにより、複数のレーザーのセット内の異なるレーザーからの同一波長範囲内で放出された蛍光同士を区別し、光を電気信号に変換する。
収集光学系およびフィルター光学系は、フローセルからの蛍光および粒子散乱光を収集するだけでなく、フローセルから収集された蛍光を濾過し、異なる波長範囲へすることに留意することが重要である。さらに、収集光学系およびフィルター光学系は、異なるレーザーについて、フローセルに沿った(励起面内の)分離されたレーザー焦点を利用する。これにより、異なるレーザーによって励起された同一波長範囲の蛍光シグナルを異なる位置へ分離することを可能にし、この位置で検出器が採用され、それぞれ異なるレーザーによって励起された蛍光を検出し測定する。
蛍光シグナルおよび散乱シグナルは種々の光検出器を用いて検出することができる。励起のためにフローセルに沿った別々の位置でレーザーを集光させることは、前方散乱シグナルと、異なる波長での各検出器における蛍光シグナルのタイミングの間の比較を可能にする。これは、フローセルの励起面を通過する個々の細胞または粒子に対応するデータセットの中に、光信号(異なる波長でかつ異なるレーザーによって励起される蛍光シグナル、ならびに散乱光、前方散乱および側方散乱)を構築するのを助ける。データセットは、光を電気信号に変換する光検出器を介して得られるアナログ電気信号から変換されるデジタル信号であることに留意されたい。
例えば、赤色、青色および紫色のレーザーを有する3つのレーザーのシステムでは、レーザービームは、フローセルに沿った3つの異なる垂直位置へ集光され、赤色、次に青色、次に紫色の順で、低い位置から高い位置へカウントされる。粒子が、多数の異なる蛍光色素(fluorescent dyes)で粒子を標識した場合について、2つの蛍光色素が、紫色レーザーで励起され、約450nmと約780nmで発光し、2つの蛍光色素が、青色レーザーで励起され、約530nmと約780nmで発光し、また、1つの蛍光色素が赤色レーザーで励起され、約780nmの範囲で発光する。粒子がこれらの3つのレーザービームを介して移動する時、赤色レーザーの励起によって誘導された約780nmの蛍光が、青色レーザーによって誘導された約530nmの蛍光および約780nmの蛍光より先になり、それらの後に、紫色レーザーによって誘導された約450nmおよび約780nmの蛍光が続く。青色レーザービームを通過する粒子について前方散乱が検出されると仮定すると、粒子についての前方散乱のタイミングは、青色レーザーによって誘導される約530nmおよび約780nmの蛍光と一致するであろう。同様に、青色レーザービームを通過する粒子について側方散乱が検出されると仮定すると、粒子についての側方散乱のタイミングは、青色レーザーによって誘導される約530nmおよび約780nmの蛍光と一致するであろう。収集光学系は、3つのレーザーによって励起された異なる波長範囲(すなわち、約450nm、約530nm、および約780nmの範囲)でのすべての蛍光および側方散乱を収集することに留意されたい。フィルター光学系は、収集された蛍光を、波長約450nmの光、波長約530nmの光、および波長約780nmの光に分割する。次に光検出器を配置して、それぞれ450nmおよび530nmの蛍光を検出する。加えて、収集光学系およびフィルター光学系を用いると、約780nmの波長を有する濾過された光は、その蛍光が励起されるレーザーに応じて、3つの異なる位置へ分離されるであろう。次に、3つの異なる検出器を採用して、各検出器が、1つのレーザーでそれぞれ励起された蛍光(約780nmの範囲)を検出するようにできる。例示的な一実施形態では、これらの異なる位置は、収集光学系の焦点面内で2、3mmから数mm離間している(この際、蛍光は、フローセルから収集され、濾過され、収集光学系の焦点面に照射されている)。別の実施形態では、数mm離間した蛍光をさらに大きな距離、例えば5〜10mm、または10〜20mmの離間距離で、さらに分離することができる。
上記の例では、光検出器は、前方散乱、側方散乱、ならびに、(紫色レーザーによって励起された)450nm範囲の蛍光、(青色レーザーによって励起された)530nm範囲の蛍光、および赤色レーザー、青色レーザーおよび紫色レーザーでそれぞれ励起された780nm範囲の3つの異なる蛍光を検出することができる。信号処理アプローチおよびアルゴリズムは、各検出器から得られた信号を、単一の細胞または粒子に属するデータセットの中に、割り当て、組み合わせる。
フローサイトメーターは、好ましくは、フローサイトメトリーデータを取得し分析するためのコンピューターソフトウェアを備えるフローサイトメトリーシステムの一部として提供される。フローサイトメトリーソフトウェアは、フローサイトメーターをコンピューターへ操作可能に接続し、様々な使いやすい機能を提供する。これらの中には、表示されたデータプロット上の対応する蛍光チャネルに隣接して配置されたスライド可能な補整スクロールバー、使いやすいエクスペリメントマネージャー(experiment manager)、およびゲート集団(gated populations)および対応する計数を示す向上した実験レポート(laboratory reports)が含まれる。
好ましいフローサイトメトリーシステムは、構成可能な検出蛍光チャネルと、1〜5または6個のレーザーと、最適な検出器条件で自動化された液体メンテナンス機能(fluid−maintenance functions)と、シリンジポンプサンプリング流体システム(syringe pump sampling fluidic system)と、細胞ごとの識別のための強力な分析ツールとして強化された信号検出部を有する新しい光学設計とを備える。このシステムは、高密度な多重化アッセイ(high density, multiplexed assays)のための統計的に有意なデータの迅速な取得、および信頼性のある定量的測定を可能にする。
本明細書に記載されている多数の向上は、部分的には、蛍光を検出するためのマルチピクセルフォトンカウンター(MPPC)チップの適合により、達成された。フローサイトメトリーで広く使用されている光電子増倍管(PMT)と比較して、MPPC技術は、設置面積のサイズがより小さい、量子効率がより大きい等のいくつかの顕著な特徴を提供し、低い光シグナルの測定を可能とする。MPPCは、シリコン光電子増倍管(SiPM)としても知られているように、ガイガーモード(Geiger mode)で動作するアバランシェフォトダイオード(APD)のアレイを有する固体デバイス(solid state device)である。ガイガーモードで動作している時、たとえ単一光子が励起したとしても、十分に大きな電荷出力が各個々のAPDにおいて生成される。各ピクセルは、ガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオード(APD)と抵抗器(「クエンチング抵抗器」と言う)との組合せである。ここで、APDは抵抗器と直列に配置される。光検出にMPPCを使用する操作において、光線(蛍光または散乱光)はMPPC表面に向けられる。入射光線を受け取った結果としてのMPPC出力は、電流の形態であり、その後、アナログ電圧信号に変換される。アナログ電圧信号は、好ましくは、アナログデジタル変換器(ADC)を使用してデジタル信号に変換され、精度および速度を高めるためにデジタル形式で処理される。デジタル出力データは、MPPC検出器/装置からの直接的なものではないが、本明細書および本発明における簡潔さの観点から、ADCの後のデジタル回路からのデジタルデータまたはADCからのデジタルデータを、MPPC出力データとして説明することもある。MPPC表面への入射光線が一定の光線であり得ること、またはフローサイトメトリー用途を含む多くの用途において、入射光線がパルス形式であり得ることの指摘には価値がある。これを踏まえると、MPPC出力もパルス形式である、すなわち、MPPC出力は時間に依存する。ここで、MPPC出力には、MPPCからの時間依存電流、または電流電圧変換後の時間依存アナログ電圧、またはADC後の時間依存デジタルデータが含まれる。
MPPCは、理論的には、フローサイトメトリーで使用して、蛍光を検出し測定することができるが、それは、以下に示すような多くの技術的課題に起因して、実用的なサイトメーターでは使用されていない。
1) MPPCは、大きなダークカウントバックグラウンド(dark−count background)を有する。そのような大きなダークカウントバックグラウンドは、微弱な蛍光シグナルの検出を制限する要因になる。さらに、そのようなダークカウントは温度依存性である。
2) MPPCゲインは、MPPCに印加される動作電圧によるが、温度依存性が非常に高い。温度の変動は、光信号の増幅ゲインの変化をもたらす。これは、PMTとは異なり、PMTでは、温度はPMTゲインに大きな影響を与えない。
3) MPPCのピクセル数に主に依存して、異なる強度の光の検出および測定に関するMPPCの線形ダイナミックレンジは制限される。フローサイトメトリー用途に使用可能な検出器には、何ディケードもの光強度をカバーする広いダイナミックレンジが必要である。
MPPCの動作温度を下げるおよび/または安定させるための装置を設計および開発して、ダークカウントノイズを効果的に低減および制御することによって、MPPCの温度依存性、大きなダークカウントに関する課題が克服された。MPPCの動作温度の制御を確実にすることによって、動作中のMPPCのゲインは安定するようになった。さらに、MPPCの動作温度を下げることの予期せぬ「副次的」効果がある。すなわち、ローエンドの光検出がダークカウントによって主に決定されるので、広いダイナミックレンジが達成された。
MPPCの線形ダイナミックレンジは、従来の光検出器(例えばPMT)を備える従来のフローサイトメトリー光学系構成を用いると制限される。しかし、我々は、MPPCセンサー表面でのビームサイズを操作して、すべてのフィルターチャネルでMPPC光検出領域を最大限に利用し、光検出の十分なダイナミックレンジを提供するアプローチを開発した。
上述のように、光を分離および分割するために一般的に使用される種々のアプローチを採用して、フローセルを介して流れる粒子からの散乱光および蛍光を分離、分割および収集することもできる。これらには、ビーム整形、ステアリングおよび導光光学部品が含まれる。
多重レンズを有する複数の光学系のセットを、互いにかつフローセルに対して正確な位置に構成して、粒子からの回折光および蛍光を収集することができる。収集された光は、その後、特定の励起レーザーに応じて、かつ光の波長に応じて、異なるチャネルへ分割される。1つの励起レーザーに起因し、特定の波長範囲を有する各蛍光チャネルでの光線は、MPPCで検出することができ、光線を集光または拡大するための異なる光学レンズの使用によって適切なビームサイズを有する。
光の収集および分離の一つのアプローチでは、異なる光ファイバケーブルを使用して、異なるレーザー源から励起される蛍光/散乱光を収集する。次に、各光ファイバケーブルからの光は、異なるダイクロイックミラーおよびバンドパスフィルターの使用により、異なる蛍光チャネルへ分割される。特定の波長範囲を有する各蛍光チャネルでの光線は、MPPCで検出することができ、光線を集光または拡大するための異なる光学レンズの使用によって、適切なビームサイズを有する。
別のアプローチでは、特別に設計された対物レンズを使用して、粒子が異なるレーザー源を通過する時に粒子から光を収集し、その光は、どのレーザー源によって生成されたかに応じて異なるビームに分離される。1つのレーザー源に由来する分離された光線のそれぞれは、その後、異なるダイクロイックミラーおよびバンドパスフィルターの使用によって、異なるチャネルへ分離される。上記と同様に、特定の波長範囲を有する各蛍光チャネルでの光は、MPPCで検出することができ、そのようなチャネルで光を集光または拡大するための異なる光学レンズの使用によって、適切なビームサイズを有する。
本発明の一実施形態では、光学エンジンは複数の光学系のセットを含む。複数の光学系のセットは、収集光学系およびフィルター光学系を備え、蛍光が励起されるレーザーに応じて、収集光学系の焦点面の異なる位置へ同一波長範囲の蛍光を分離する。好ましくは、光学エンジンは、収集光学系の焦点面の異なる位置のそれぞれからの同一波長範囲の蛍光のビームサイズを拡大するためのレンズをさらに備える。それぞれのビームサイズは、個々のレーザーによって励起された蛍光に由来し、MPPC表面でのおよそのサイズは、1mmから3mmの間である。任意選択で、MPPC表面でのビームサイズは1.5から2mmの間である。MPPC表面で可能な最大のビームサイズを利用することが望ましいが、位置決めの許容範囲/精度について譲歩しなければならないかもしれない。加えて、MPPC表面の線形ダイナミックレンジを増大させるために、適切に開発/設計されたレンズは、比較的均一なビームがMPPC表面で達成されることを可能にするだろう。
収集光学系の焦点面の異なる位置で予め分離された蛍光に整合する光学レンズを開発することによって、適切なサイズを有する比較的均一なビームが、選択されたMPPC表面で達成され得る。予期せぬ効果として、そのようなビーム均一性(ビームサイズにわたる光強度の変動が10%未満)およびそのようなビームサイズ(MPPC幅/長さに対して、一次元で約70%、例えば3mmまたは6mm)が、全ての波長範囲の蛍光について、得られた。すなわち、そのような効果が、光学収集システムおよびここで適切に設計された光学レンズ用のすべての蛍光チャネルについて得られた。MPPC表面でのこのようなビーム特性、MPPCに適切に印加された動作電圧(MPPCのゲインおよびダークカウントに影響を与える)、および適切に制御された温度範囲(ダークカウントに影響を与える)と共に、合理的な線形ダイナミックレンジが観察され得る。市販されている多数のMPPCにおいて、異なるMPPCについて、単一の動作電圧の下で、約3ディケードから約4ディケード、約5ディケードまでの線形レンジを得ることができるようになった。本明細書に記載されるような、約3ディケード、約4ディケード、またはそれ以上の線形ダイナミックレンジを提供するMPPCのこのような予期せぬ効果は、適切なビームサイズ、均一なビーム分布、制御されたダークカウント等を可能にする関連光学系の開発によってのみ達成することができる。明確にするために、本発明では、各ディケード(decade)は、10の指数(factor)に対応する。したがって、3ディケード、4ディケードおよび5ディケードは、それぞれ、1,000、10,000および100,000の指数に対応する。換言すると、3ディケード、4ディケードおよび5ディケードの線形レンジは、MPPC出力が、線形ダイナミック応答レンジについての入射光の強度に比例することを意味する。ここで、その最大光強度値と最小光強度値との比率は、それぞれ、1,000、10,000および100,000である。
MPPCの線形ダイナミックレンジをさらに向上するためには、追加の技術的アプローチが必要とされる。上述したように、異なる強度の光(すなわち、入射光の結果としての出力電流)の検出および測定に関するMPPCの線形ダイナミックレンジは、MPPCのピクセル数に主に依存する。具体的には、MPPC内の既定のピクセルは、入射光子によって活性化することができる(そのような活性化について1未満の確率であり、この確率はMPPC検出器の量子効率である)。その結果、出力電流にナノ秒範囲の応答パルスが生じる。基本的な物理学レベルでは、MPPCピクセルでのそのような活性化は、アバランシェフォトダイオード(このピクセルのAPD)が、クエンチング抵抗器と直列に、動作バイアス電圧の下で、ガイガーモードで動作するという状態である。そのようなナノ秒範囲の応答時間(ピクセル容量およびクエンチ抵抗に依存する)の間、同一ピクセルに到達する追加の光子は、そのピクセルを活性化することができないであろう。したがって、理論的にも実際的にも、任意の所与の瞬間に、すなわちナノ秒範囲の短時間内に、電流出力のために入射光子によって活性化され得る(活性化されている)MPPCの最大ピクセル数は、MPPC内のピクセル数である。また、MPPC表面に到達する(MPPCのピクセル数を超える)光子は、それ以上、より多くのピクセルを活性化することができず、追加の電流出力には寄与しない。これが、(MPPC表面での)入力光に関連する電流出力について、MPPCの線形ダイナミックレンジが制限される主な原因である。MPPC検出器のピクセル数や光子検出のためのMPPCの量子効率以外に、ダイナミックレンジに影響を与える可能性があるその他の要因としては、ダークカウント(またはダークカレント)と、MPPCゲイン(1つの入射光子に起因して1つの活性化されたピクセルから発生した応答パルスの電荷を1電子あたりの電荷量(charger)で割った比率)と、クロストーク要因(クロストークとは、出力電荷パルスのために光子を検出する活性化されたピクセルが、他のピクセルに影響を与え、その結果、それらに出力電荷パルスを発生させ得る効果を指す)と、が挙げられる。実験レベルでは、MPPCの動作バイアス電圧は、量子効率(quantum efficiency)、ダークカレント(dark current)、ゲイン(gain)およびクロストーク要因(crosstalk factor)を含む上記すべての要素に影響を与える。
出力電流が広い強度範囲にわたって光強度に線形的に比例するように、MPPCのダイナミックレンジをさらに向上させるため、本発明では数値較正技術(numerical calibration technique)が開発された。この技術は、MPPC表面への入射光強度が比較的高いレベルでは、MPPCからの出力電流が、飽和し、理想的な状況よりも低くなるという事実に基づいている。理想的な状況では、全ての入射光子は出力電荷パルスを生成することができる。理論的な理想出力電流に対するMPPCからの実際の出力電流の比率が、これらの高い光レベルの状況について、すべての各光強度で決定できる場合、これらの比率は、測定されたMPPC出力データをそのような比率で除算することによって、MPPC検出器の出力を較正するために使用することができる。これらの比率を「較正係数」と言う。
以下のように、較正係数を導出するためのアプローチが開発された。所与のMPPCタイプについて、光源(例えば、レーザー、レーザーダイオード、発光ダイオード)、ビーム整形光学系(例えば、球面レンズ、非球面レンズ、シリンドリカルレンズ)、光強度減衰機構(light intensity attenuation mechanism;例えば、可視波長の範囲にわたって一定の減衰を有するNDフィルター(neutral density filters)、ビーム切断ピンホール(beam cutting pinholes)、および光源の出力強度レベルを変調し得る光源上の制御電圧)、光の波長範囲(例えば、バンドパスフィルター、既定の波長範囲の光源)、光パルスの形状または波形の選択および設計を通じて、多数の標準光線(standard light beams)が設計および生成される。これらの標準光線は、適切に設計されたビーム整形光学系を用いることにより、確実かつ一貫して生成され、所望のビームサイズおよびビーム均一性を有することができる。ビームサイズおよびビーム分布均一性を含むビーム品質パラメーターは、本発明の光学エンジンまたはフローサイトメーターにおいて検出されるべき蛍光または散乱光のものと整合するか、または同一であるべきである。標準光線は、例えば、515〜545nm、650〜670nm等の異なる波長範囲を有することができ、これは、光学エンジンおよびフローサイトメーターにおける光学検出(散乱または蛍光)に使用される波長範囲と整合するはずである。標準ビームは、光強度を調整されて、サブミリワットからマイクロワット、ナノワットまたはピコワット、さらにはフェムトワットの範囲の強度範囲を有することができる。これは、本発明の光学エンジンまたはフローサイトメーターにおいてMPPCによって検出されるであろう光強度範囲と整合するはずである。光パルスの形状または波形は、それらが本発明の光学エンジンまたはフローサイトメーターのMPPCで検出される光パルスの波形と整合するように、設計および制御される。
このような多数の標準光線の光強度は、良好な広いダイナミックレンジと優れた線形応答性を有する特定の光検出器を使用して測定および決定される。そのような光検出器は、PMT(光電子増倍管)およびAPD(アバランシェフォトダイオード)から選択してもよい。これらの光検出器は、低光強度のビームを正確に測定するのに十分な検出感度または線形性を有していない可能性がある。広い強度範囲をカバーするすべての標準光線の光強度の正確な決定を確実にするために、低強度レベルのビームは、1つまたは複数の光減衰フィルター(light attenuation filters)によって生成され得る(例えば、光学濃度Optical Density(OD)が0.5または1であるNDフィルター、光学濃度は透過係数の常用対数の負数である)。また、そのようなビーム強度は、フィルターのOD値(OD numbers)と、ODフィルターを通過する前に測定された光線強度とに基づいて計算することができる。したがって、我々は、定量化された光強度レベルを有する標準ビームの範囲を生成することができた。換言すると、ターゲットとする光強度レベルの範囲のために、光源を操作し、光路を変更し、また、様々な予定される条件(例えば、光源に印加する電圧、または特定の光減衰フィルターの追加または除去)を調整し、これらのターゲット強度を満たすように(所望のサイズ、均一性、波長の)光線を生成することができる。
そのような多数の標準光線を確実に生成する能力により、関心のあるMPPCを使用して、MPPCに対する所与の動作バイアス電圧で、これらの標準ビームを測定する。MPPCは、電流‐電圧変換、アナログ‐デジタル変換器(ADC)および可能なアナログまたはデジタルフィルターを含む関連回路とともに、出力デジタルデータの系列を提供する。出力デジタルデータのそれぞれは、標準光線の光強度レベルに対応する。したがって、そのような多数の標準光線について、MPPCデジタル出力対光強度レベルのプロットを得ることができる。低光レベルだが、依然としてMPPC検出器のダークカウントが数回を超える強度範囲において、MPPC出力データと光強度レベルとの間に優れた線形性が得られる(予想通りに観察される)。この良好な線形範囲内の傾き(測定されたMPPCデータをy軸に、光強度をx軸にして、多数のデータ点に対する線形回帰に基づいて導出される傾き)に基づいて、全ての光強度ビームについて理論上のMPPC出力データを、各標準ビームについての光強度値と、(上記の線形範囲の)傾きとの積として得ることが可能である。
したがって、各測定されたMPPC値に対する較正係数は、測定されたMPPCデータを、各標準光線に対する理論的なMPPCデータで除算することによって得ることができる。次いで、数学的モデリングまたはシミュレーションを行って較正係数方程式を導き出すことができる。その結果、測定されたMPPCデータについて、較正係数が、決定され、使用されて、「理論上、較正された」MPPC出力データが計算される。このように、MPPC出力対入力光強度の非線形性は、拡大されたワイドダイナミックレンジが可能となるように補正または較正することができる。
上記の段落では、ある範囲の強度を有する多数の標準光線の使用に基づいて、MPPC出力データを較正するための較正係数を導出するプロセスを説明した。上記のアプローチは、MPPC検出器のダイナミックレンジを拡大するために、そのような較正係数を導出または利用するための技術または方法を限定することを意図していない。事実、較正係数を導き出すための他の可能な方法またはアプローチがある。アプローチに関係なく、較正係数は、測定された線形性を制限するMPPC値と、理想的な線形性で応答するMPPCから予想される理想的な理論上のMPPC値との比率である。
較正係数または較正係数曲線はMPPCタイプに依存すること、すなわち、MPPCタイプが異なれば較正係数曲線も異なることの指摘には価値がある。較正係数曲線は、MPPCに印加される動作バイアス電圧と動作温度にも依存する。さらに、較正曲線は、MPPC表面上の光線のサイズおよび均一性分布、ならびに光線の波長範囲にも依存する。
MPPC検出器を採用する光学エンジンの好ましい実施形態では、各MPPC出力データは、MPPC検出器の線形ダイナミックレンジを向上させる目的で、そのデータを対応する較正係数で除算することによって、スケールアップされる。較正係数は上述した技術を用いて決定される。好ましくは、較正係数は、少なくとも約半(0.5)ディケードの線形ダイナミックレンジの向上を可能にする。より好ましくは、較正係数は、少なくとも約1ディケードの線形ダイナミックレンジの向上を可能にする。さらに好ましくは、較正係数は、少なくとも約1.5ディケードの線形ダイナミックレンジの向上を可能にする。特に好ましくは、較正係数は、少なくとも約2ディケードの線形ダイナミックレンジの向上を可能にする。
上記を考慮して、本発明は、以下の非限定的な実施形態を参照してさらに詳細に説明される。まず図1について、ポンプ16がシース液(sheath fluid)をフローセル130へ押し流し、その中にサンプルも、ポンプ(例えば、シリンジポンプ)のような他の既知の機構によって供給される。サンプルは、従来、粒子(例えば、細胞)の懸濁液として統合されており、シース流体によってフローセルの中心へ流体力学的に集束される。異なる励起レーザーを介した細胞の規則的な通過は、蛍光を発生させ、それは、光収集光学系および光分割光学系(まとめて複数の光学系のセットと言う)に続く検出器により検出される。サンプル流体の流体力学的集束(hydrodynamic focusing)のために、シース流体および細胞の懸濁液を含有するサンプル流体をフローセルへ押し流し、供給するための様々な方法およびアプローチがある。これらは、フローサイトメトリー技術分野において周知であり、典型的には、ポンプ16、バルブ18および流路19の組合せを用いて達成される。
フローサイトメトリー技術分野で知られているように、サンプル吸引針14を介して吸引して(図1)、フローサイトメーター10にチューブごとに細胞の懸濁液を個別に提供することによって、フローサイトメーター10を手動で操作することができる。あるいは、フローサイトメーター10は、任意のモジュールオートサンプラー(modular autosampler)を組み込むことにより、ハイスループットに適合させることもできる。そのようなモジュールオートサンプラーは、好ましくは、異なるローディングチューブ(loading tubes)と互換性がある。これらの中には、Eppendorf Internationalによって一般に製造されているもののような、1.5/2.0mLチューブ、従来の12×75mmフローチューブのラックや、24ウェル、96ウェル(さらには348ウェル)等であり、平底、V底、丸底等のマルチウェルプレート、または細胞の懸濁液を維持するための任意の他の適切なチューブまたはディッシュが含まれる。好ましい実施形態では、オートサンプラーは、サンプルを攪拌するための攪拌器またはサンプルを混合するための他の機構を備えている。好ましい実施形態では、オートサンプラーは、セットアップおよびメンテナンスを容易にするためのセルフアライメントプロトコルを備え、ユーザーによるインストールを便利なものにする。
好ましい実施形態では、フローサイトメーター10は、マイクロプロセッサー(すなわち1つまたは複数のマイクロプロセッサー)を備え、流体またはサンプルの供給、細胞の懸濁または攪拌、およびサンプル容器(sample vessels)のセルフアライメント等の様々な機能を制御する。マイクロプロセッサーは、通常、回路基板上に設けられ、メモリに結合され、また、電動ポンプおよびアクチュエーターのような電気機構と電気的に接続されて、意図された機能を達成する。さらに、マイクロプロセッサーは、検出器、レーザー、吸引ポンプまたは他の電気部品への電圧を変調してもよい。マイクロプロセッサーは、光検出器からのアナログ信号をデジタル信号に変換するためのアナログ‐デジタル変換器を備えていてもよい。マイクロプロセッサーは、異なる散乱チャネルおよび異なる蛍光チャネルについてのデジタル信号を処理および分析して、個々の細胞または粒子についてのデータセットを生成することができる。マイクロプロセッサーは、コンピューターと通信可能に接続され、コンピューターは、開発されたソフトウェアによって制御され、様々な制御コマンドをマイクロプロセッサーに提供し、データをマイクロプロセッサーから受信する。
好ましい実施形態は、サンプル吸引毎後、(洗浄コマンドが、サイトメーターに接続されたコンピューターから受信された時に)サンプル吸引針14を自動的に洗浄するために、マイクロプロセッサーに記憶される実行可能な制御プログラムを含み、細胞懸濁液のクロスコンタミネーションの危険性を低減する。これは、オートサンプラーを使用する場合、より好ましい。これは、シース液またはリンス液を用いて、吸引針14の外面および内面を洗浄するための様々なポンプおよびバルブを制御することによって達成される。そのようなオートサンプラーを使用する実施形態において、好ましくは、そのような機能は、1%未満、または0.5%未満、さらにより好ましくは0.1%未満または0.05%未満のキャリーオーバーで終わるべきである。
また、好ましい実施形態は、自動化された気泡除去および目詰まり除去機能を備える。これにより、細胞懸濁液の流体フローにおける気泡または目詰まりに起因する誤った結果を防止し、さらに、高価な参照計数ビーズ(reference counting beads)を必要とすることなく、正確な直接絶対計数(direct absolute counts)を確実にする。好ましい実施形態では、フローサイトメーター10は、フローサイトメーター10の起動時および停止時の自動洗浄機能も備える。このプログラミングにより、使いやすさが向上し、退屈で時間がかかるこれらの工程をユーザーが実行する必要がなくなる。なお、さらなる実施形態では、適切な流体レベルセンサーの形態のような自動流体レベル検出アラームが、組み込まれ、システム流体レベルが低い時をユーザーに通知する。
図2を参照すると、例示的な光学エンジン100の概観を提供する概略図が示されている。光学エンジン100は、1つから3つのレーザー110と、フローセル130へ各励起光源を独立して整形、誘導するための各レーザー110用の複数のビーム整形光学系120のセットとを備える。蛍光は、収集光学系150によって収集され、フィルター光学系140によって異なる波長範囲に分離される。蛍光の検出は、各チャネルについてMPPC検出器160を使用して達成される。開発された制御ソフトウェアからのコマンドに応答する自動システム機能を有するフローサイトメーター100の操作のための1つ以上のマイクロプロセッサーや、光検出器を操作するため、およびアナログ信号をデジタル信号に変換して、デジタル信号を処理するための電子回路等を含む多くの電子部品は、簡略化のために図2には示されていない。またここには、動作中にフローセル130と流体接続しているシリンジポンプ流体工学(syringe pump fluidics)も示されていない。
光学エンジン100は、単一のレーザー110を使用してもよいが、光学エンジン100は、例えば、各蛍光標識細胞からの多数のパラメーターおよび多数の蛍光シグナルを測定することによって、多色フローサイトメトリー分析(multicolor flow cytometry analysis)をフローサイトメーター10に実行させることができる。これは、例えば、図2の3つのレーザー110v、110b、110rを用いて達成することができる。好適には、個々に割り当てられた収集光学系150に起因して、レーザー110を少なくとも部分的に追加、除去、または交換することができる。多色フローサイトメトリーのための例示的な構成が図2に示され、波長405nmを放射する第1のレーザー110v(紫色レーザーと言うこともある)、波長488nmを放射する第2のレーザー110b(青色レーザーと言うこともある)、および波長640nmを放射する第3のレーザー110r(赤色レーザーと言うこともある)を備える。当業者は、1つ以上のレーザー110の互換性により、ユーザーが、ベースフローサイトメーターシステムを用いて開始し、付加的なまたは異なるレーザー110の追加を、そのような必要性が実験により決定付けられる時に可能とすることを理解するであろう。1つまたは複数のレーザー100のそのような交換時において、対応するビーム整形光学系120を変更または調整して、フローセル130の中心でレーザービームの最適な供給を達成することができる。
図3は、3つのレーザー(例えば110v、110b、110r)からの3つのレーザービームの3つの例示的な光路(P1、P2、P3)に関するビーム整形光学系120を簡略的に示す上面図を提供する。ここで、第1のレーザー110v(例えば405nm)用の第1のシリンドリカルレンズ112vは、x軸に沿って励起光を集光し、第2のシリンドリカルレンズ114vは、y軸に沿って第1のレーザー110vからの励起光を集光する。同様に、第2のレーザー114b(例えば488nm)用の第1のシリンドリカルレンズ112bは、x軸に沿って励起光を集光し、第2のシリンドリカルレンズ114bは、y軸に沿って励起光を集光する。2つのビーム拡大レンズ111rのセットは、第3のレーザー110r(例えば640nm)からの励起光を拡大し、続いて、第1のシリンドリカルレンズ112rは、x軸に沿って励起光を集光し、さらに、第2のシリンドリカルレンズ114rは、y軸に沿って励起光を集光する。各レーザー110からの光路P1、P2、P3は、単一のフローセル130に集束され、細胞は、フローセル130を介して、流れているシース流体の中央領域の狭い流れの中へ流体力学的に集束される。
フローセル130を通過する間に蛍光標識細胞から放出される蛍光および側方散乱光を収集するためのハーフボールレンズ152も示されている。また、オブスキュレーションバー180も示されている。オブスキュレーションバー180は、P2からフローセル130を介して前方散乱(FSC)集光レンズ182へ向かうRAWレーザービームを遮断する。前方散乱(FSC)集光レンズ182は、それ自体が、フォトダイオード186による検出のために、バンドパスフィルター184(488/10nm)を介して、第2のレーザー110b(例えば488nm)からのFSC光を集光する。これにより、フォトダイオード186は、FSC光を受け取り、それをデータ取得のために電気信号に変換する。
図4は、フローセル130に沿って共通/同一集光位置H(中心線)に集めるが、フローセル130に沿って異なる垂直位置Vv、Vb、Vrにレーザービームを集光させる対応する第2のレンズ114v、114b、114rを通る3つの光路(P1、P2、P3)を示す拡大概略図である。非限定的な例として、異なる垂直集光(differential vertical focusing)は、第2のシリンドリカルレンズ114v、114b、114rを調整し、中心ビームに対して1本のビームを上方にかつ1本のビームを下方に向けることによって、達成することができる。例えば、図3に示す構成は、第2のレーザー110bから第2のシリンドリカルレンズ114bを介した光路P2の垂直集光位置Vbに対して、所定の距離(例えば80μm)だけ上方に、第1のレーザー110vからの第1の光路P1を垂直集光させる。これにより、フローセル130内の第1のレーザービーム/光路P1の垂直集光Vvが、第2の光路P2の垂直集光Vbよりも同じ距離(例えば80μm)だけ垂直に上がる。同様に、第2のレーザー110bについての第2のシリンドリカルレンズ114bの垂直位置Vbに対して、所定の距離(例えば80μm)だけ下方に、第3のレーザー110rについての第2のシリンドリカルレンズ114rを調整すると、フローセル130内の第3のレーザービームP3の垂直集光Vrが、第2のレーザービームP2に対して同じ距離(例えば80μm)だけ垂直に下がる。当業者は、この離間距離が80μmと書かれているが、これよりも多いまたは少ない離間距離でもよいことを理解するであろう。いくつかの実施形態では、ビームP1〜P3は、隣接するビームP1〜P3から70μm離間している。他の実施形態では、離間距離は、50μm、55μm、60μm、65μm、75μm、85μm、90μm、100μm、125μm、150μm、175μm、または200μmである。さらに、上述の3つの第2のシリンドリカルレンズ114v、114b、114rのz軸位置を調整することにより、3つのレーザービームのz軸焦点を、フローセル130内の中心線と一致させることができる。これにより、集束したサンプルの狭い流れの中に、レーザービームのz軸の焦点が一致するようになる。フローセル130に沿った異なる垂直位置Vv、Vb、Vrに集光することによって、異なる垂直位置で3つの集光したレーザービームを通過する粒子から蛍光シグナルが放出される。その後、各蛍光シグナルは、収集光学系によって収集され、フィルター光学系に応じた異なる波長範囲に濾過される。また、蛍光シグナルは、蛍光が励起されるレーザー源に応じて、隣接するビーム間において2、3mmから数mmの距離内で、同一平面の異なる位置にさらに分離される。
図1〜図4を総合して参照すると、3つのレーザー110v、110b、110rからの3つの別々の光路P1、P2、P3を独立して制御することには特有の利点がある。第1に、第1のシリンドリカルレンズ112のx軸位置を調整することによって、流体力学的集束サンプルストリーム(hydrodynamically−focused sample stream)へのx軸に沿った各集光ビームのアライメントを別々に調整することが容易となる。これにより、異なるレーザービーム間および異なる光路P1、P2、P3間の干渉を排除することができる。したがって、各レーザービームを最適なアライメントに調整することができる。
第2に、各レーザービームについての第2のシリンドリカルレンズ114のz軸位置を独立して調整することができ、y軸ビームについての焦点面と、フローセル130内の流体力学的集束流体ストリームとの一致またはアライメントを確実にする。やはり、異なるレーザービーム間および異なる光路P1、P2、P3間には干渉がないので、流体工学により、各レーザービームを最適なアライメントに調整することができる。
第3に、各レーザービームについてy軸に沿った第2のシリンドリカルレンズ114の高さを単純に調整および移動することによって、フローセル130内の3つの異なるビーム間のy軸に沿った離間距離を容易に調整および制御することができる。そのようなアプローチでは、比較的大きな範囲にわたって、ビーム離間距離を連続的に調整することができる。
第4に、各レーザーについて他とは独立して、別々のビーム整形およびビーム誘導光学系を設けることによって、各チャネルに対して異なるシリンドリカルレンズ112、114を異なる焦点距離で使用して、RAWビーム直径の差に適応させることができるので、同一または異なるRAWビーム直径を有するレーザー110を選択または使用することができる。
第5に、そのような光学照明設計は、レーザー照明源の容易な構成および予定のアップグレードを可能にする。例えば、励起源として単一のレーザー110を有するシステムから始めることができる。異なる波長の追加のレーザー110光源を提供する必要がある時、新しいレーザー110は、その(それらの)対応するビーム整形および誘導光学部品120と共に、既存のレーザー110およびそのビーム整形光学系120に影響を与えることなく、容易にシステムに追加され得る。これらの特有の利点は、フローセル130において各レーザービームの最適なアライメントおよびフォーカスを可能にし、他の光照明設計(異なるレーザーが、ビーム整形およびビーム分離のために同一光路を共有し、異なるレーザーについてのフォーカスおよびアライメントが妥協される必要があるもの)と比較して制限が少ないだろう。
前方光散乱(前方散乱または低角度散乱と言うこともある)は、レーザービームを介した細胞の通過に起因した前方に屈折する光に関し、その細胞の直径におおよそ比例するフローサイトメトリーにおける測定に注意を向ける。レーザービームの光路を通過している細胞がない時、ビームは、フローセル130を介して遮断されることなく通過し、レーザービーム自体からの光が検出器に到達しないように、オブスキュレーションバー180によって遮断される。しかしながら、細胞がフローセル130を通過する時、光はあらゆる方向に屈折する。前方方向に屈折した光は、オブスキュレーションバー180に当たらず、前方散乱検出器186に到達する。
その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,575,063号では、新規な光オブスキュレーションバーの開発について説明された。本目的のために、本明細書の方法、装置およびシステムは、好ましくは、米国特許第9,575,063号に記載されているもの等の光オブスキュレーションバー180を備える。好ましい実施形態では、菱形のオブスキュレーションバー180が設けられる。別の実施形態では、長方形状であり、その垂直方向の寸法と同一またはそれより長い水平方向の寸法を有するオブスキュレーションバー180が、入射レーザービームを遮断するために設けられている。さらに別の実施形態では、オブスキュレーションバー180の周囲は、入射レーザービームを遮断するために、光強度分布図の輪郭をたどる。さらなる実施形態では、オブスキュレーションバー180は、光強度分布図の輪郭を、0.1%の輪郭線内でたどる。0.1%の輪郭線または境界は、輪郭線上の各点での光強度が、入射光の最大光強度の0.1%である線に対応する。光強度分布図の輪郭を0.1%の輪郭内でたどるオブスキュレーションバー180は、散乱していないビームの99%をFSC検出器から遮断するように決定された。したがって、本発明はまた、0.1%、0.2%、0.5%、1.0%または2.0%の輪郭線内で、光強度分布図の輪郭をたどる、ほぼ菱形のオブスキュレーションバー180およびその成形方法を提供する。
フローサイトメトリーは、従来、1つ以上のフルオロフォアを用いて、細胞を標識するステップを含む。これは、典型的には、表面マーカーに対する蛍光標識抗体等の蛍光標識試薬を細胞の懸濁液に添加し、次いで未結合の試薬を洗い流すことによって行われる。フルオロフォアは、細胞上または細胞内に存在し、レーザービームを通過する際に、細胞からの累積信号を増加させる。そのような試薬は当該技術分野において周知であり、また、多くの供給業者から入手可能である。側方散乱および蛍光の両方は、レーザービームの光路に対してほぼ直交するように配置された収集光学系150を介して収集され、次いで、ダイクロイックミラー等のフィルター光学系140を使用して、濾過され、異なるチャネルへ反射される。ダイクロイックミラーは、特定の波長範囲を通過させ、残りの波長を反射する。
本発明の文脈において、フローサイトメーター10は、以下のものを備える光学エンジン100を組み込んでいる。光学エンジン100は、複数のレーザーのセット110を備え、各レーザー110は、蛍光分子の励起に適した特定の波長で光を放射する。ここで、レーザーからの光は、同一励起面に沿った、同一水平位置Hへx軸に沿って水平に集光され、かつ、異なる垂直位置Vv、Vb、Vrへy軸に沿って垂直に集光される。同一励起面は、フローサイトメーター10のフローセル130を介した流路として特徴付けられる。また、光学エンジン100は、フローセルから粒子散乱光および蛍光を収集するための収集光学系150と、フローセル130から収集された蛍光を異なる波長範囲へ濾過するためのフィルター光学系140と、を有する複数の光学系のセットを備える。ここで、複数の光学系のセットは、同一波長範囲の蛍光を、蛍光が励起される異なるレーザー110に応じて、収集光学系の焦点面の異なる位置へさらに分離する。また、光学エンジン100は、検出器160を備える。検出器160は、異なる位置で光を選択的に検出し、それによって、複数のレーザーのセット110内の異なるレーザー110v、110bおよび110rから同一波長範囲内で放射される蛍光同士を区別し、光を電気信号に変換する。本発明における光検出器160の好ましい実施形態は、MPPC検出器160として具体化されている。したがって、複数のチャネルのうちの各蛍光または測定チャネルは、複数のレーザーのセット110からの単一のレーザー110v、110b、110rを使用して放射された波長範囲に属するものとして特徴付けられる。本目的のために、複数のチャネルがサンプル分析のための複数のデータセットを提供する。
より詳細な概観図が、図5に示される。フローセル130からの蛍光およびSSCシグナルは、収集光学系150を用いて収集され、次に、フィルター光学系140を用いて異なる検出チャネルに分割される。フィルター光学系140は、ロングパスおよび/またはショートパスのダイクロイックミラー142およびバンドパスフィルター144から主に構成される。以下の蛍光波長範囲:725/40nm(161a)、697/58nm(161b)、661/20nm(161c)、780/60nm(161d)、615/20nm(161e)、586/20nm(161f)、445/45nm(161g)、530/43nm(161h)を検出するための多数のMPPCモジュール(161a〜161h)が示されている。各MPPCモジュール161a〜161hは、光信号を電気信号に変換するために、少なくとも1つのMPPC検出器160を含む。MPPC検出器160は、アナログ‐デジタル変換のための回路(簡略化のために図示せず)にさらに電気的に接続され、次に、変換されたデジタル信号は、コンピューター(図示せず)に接続されたマイクロプロセッサーによって処理される。さらに、表1は、各MPPC検出器を使用して異なるレーザーから蛍光シグナルを導出することができる場合に、21色(または21チャネル)フローサイトメトリー分析を実施するための適合フルオロフォアの非限定的なリストを提供する。本目的のために、21チャネルフローサイトメトリーシステム内の各チャネルは、特定の由来するレーザーおよび波長範囲によって特徴付けられる。
フローセル130に沿って異なる垂直位置に励起レーザービームを集光させ、フローセル130から光を収集することによって、図5に示されるように、垂直位置のそれぞれからの光は、収集され、異なる波長範囲に分割される。さらに、垂直位置のそれぞれからの光は、収集され、かつフィルター光学系を介して濾過される際、蛍光が励起されるレーザー源に応じて、隣接するビーム間で約2、3ミリメートルから数ミリメートルまで分離された。
フローセル内の空間的に異なる位置の収集および測定のより詳細な概略図が、図6Aに示される。この例示的実施形態では、フローセル130に沿った4つの異なる垂直位置(Vv、Vr、Vg、Vb)からの蛍光は、高屈折率(例えば、nは約1.5以上)のハーフボールレンズ152を使用して収集される。それぞれの光路は、蛍光をコリメートするための二組のダブレットレンズ154(0.8を超える大きなNAを有する)を介して進み、1つまたは複数のダイクロイックミラー142を介して濾過される。すでに説明したように、ハーフボールレンズ152は、好ましくは、高屈折率材料で構成される。そのような選択は、開口数(N.A.)を最大にし、ハーフボールレンズ152に続く蛍光ビームの全体の直径/サイズを低減するためのものである。この低減されたビーム直径は、ダブレットレンズ154についてのより小さい直径を可能にし、そのようなダブレットレンズ154の設計および製造をいくらか容易にする。高屈折率のハーフボールレンズ152およびダブレットレンズ154の組合せは、蛍光を効率的に収集するための高い開口数の対物レンズをもたらすことが分かった。そのような設計は、高い収集効率をもたらすだけでなく、そのような目的の設計および製造のためのコストの削減にもつながる。その後、光路はバンドパスフィルター144を通過してMPPCモジュール161に進む。
図6Aに示されるように、異なる垂直位置Vv、Vr、Vg、Vbのそれぞれからの光は、収集光学系(ハーフボールレンズ152、二組のダブレットレンズ154)を介して収集される際に、隣接するビームの間で2、3ミリメートルから数ミリメートルの離間距離を伴って、小さなビームサイズ(例えば、約2、3ミリメートル以下)に集光され、また、フィルター光学系(ダイクロイックミラー142、バンドパスフィルター144)を介して進み、MPPC検出モジュール161に到達する。収集光学系(ハーフボールレンズ152、二組のダブレットレンズ154)の焦点面200において、同一波長範囲の隣接するビームは、2、3ミリメートルから数ミリメートル離間している。明確にするために、この場合、ハーフボールレンズ152および二組のダブレットレンズ154を含む収集光学系は、フローセルの異なる位置(Vv、Vr、Vg、Vb)からの散乱光および蛍光を収集し、その光を焦点面200に集光する。焦点面200において、各集光ビームサイズは、一般に、500ミクロン未満の直径である。図6Aに示される例では、MMPCモジュール161は、各光線がMPPC検出器162、163、164、165を介して独立して検出されるように、フローセル130内の2つの中間垂直位置から光をさらに分離、離間するプリズムミラー168を備える。特定の一実施形態では、焦点面200が、プリズムミラー168のミラー反射点と一致することに留意されたい。図6Aにおいて、合計4つの検出器162、163、164および165を使用して、それぞれ個別のレーザーにより励起された、フローセル130内の4つの異なる垂直位置Vv、Vr、Vg、Vbからの蛍光を検出する。
好ましい実施形態では、各光線は、MPPC検出器に到達する前に、光線を拡大するためのレンズを通過する。これは図6Bに示されている。フローセル130内の4つの異なる垂直位置Vv、Vr、Vg、Vbからの光線は、以下の方法で、MPPC検出器表面に到達する前に、複数の光学系のセット内の異なる光学部品を通過する。図6Aと同様に、フローセル130内の2つの中間垂直位置Vr、Vgからの光は、プリズムミラー168によってさらに分離、離間される。プリズム168の上面で反射された光は、反射ミラー172に到達し、次に、MPPC検出器163の表面に到達して検出される前に、レンズ193を通過する。同様に、プリズム168の下面で反射された光は反射ミラー174に到達し、次に、MPPC検出器165の表面に到達する前に、レンズ195を通過する。フローセル130内の上側垂直位置Vvからの光は、レンズ192を通過して、MPPC検出器162の表面に到達して検出される。フローセル130内の最も下側の垂直位置Vbからの光は、レンズ194を通過して、MPPC検出器164の表面に到達して検出される。レンズ192、193、194および195の使用は、MPPC表面での検出のために、ビームを向上したサイズへ拡大する(レンズ192、193、194および195の設計および使用によって、一貫した、かつ最適化されたビームサイズが可能である)。加えて、レンズ192、193、194および195は、MPPC表面での均一なビーム分布をもたらすという追加の設計機能を果たす。(レンズ192、193、194および194の設計による)このように最適化されたビームサイズおよびビーム均一性は、本明細書で光検出のために使用されているMPPC装置の線形ダイナミック検出レンジ(linear−dynamic detection range)の向上に資する。
本発明のさらなる重要な特徴は、蛍光を検出するマルチピクセルフォトンカウンター(MPPC)チップである。フローサイトメトリーで広く使用されるPMTに比較して、MPPCは、設置面積のサイズがより小さい、量子効率がより大きい等のいくつかの顕著な特徴を提供し、低い光シグナルの測定を可能とする。MPPCは、理論的には、フローサイトメトリーで使用して、蛍光を検出し測定することができるが、大きなダークカウントバックグラウンド、温度に依存するゲイン、および場合により制限されるダイナミックレンジ等の多くの理由から、実用的なサイトメーターでは使用されていない。
本目的のために、本発明の別の実施形態では、ベンチトップ型フローサイトメーターに使用するための光学エンジンが提供される。光学エンジンは、蛍光分子の励起に適した波長に調整されたレーザーを備える。ここで、レーザーからの光は、励起面に沿った、水平位置へx軸に沿って水平に集光され、かつ垂直位置へy軸に沿って垂直に集光される。励起面に沿った水平位置は、フローサイトメーターのフローセルを介した流路と交差する。また、光学エンジンは、複数の光学系のセットを備える。複数の光学系のセットは、フローセルから放出された蛍光を収集するための収集光学系と、フローセルから収集された蛍光を濾過し、異なる波長範囲にすることによって、異なる蛍光チャネルを提供するフィルター光学系とを含む。また、光学エンジンは、各蛍光チャネルでMPPC検出器を備える。MPPC検出器は、蛍光を検出して光を電気信号に変換する。好ましい実施形態では、光学エンジンはさらに複数のレーザーのセットを含む。ここで、各レーザーは、同一励起面に沿った異なる垂直位置へy軸に沿って垂直に集光される。さらに、複数の光学系のセットは、フローセルから放出された蛍光を異なる蛍光チャネルに分離する。各チャネルは、異なる波長範囲、および蛍光が励起される異なるレーザーによって特徴付けられる。
上記の光学エンジンの好ましい実施形態では、MPPCは、3ディケードを超える線形ダイナミックレンジで動作する。より好ましくは、MPPCは、4ディケードを超える線形ダイナミックレンジで動作する。
上記の光学エンジンのいくつかの実施形態では、MPPCのデジタル出力値は、較正係数に応じて補正される。好ましくは、較正係数は、MPPCの線形ダイナミックレンジを半ディケードより多く向上させる。より好ましくは、較正係数は、MPPCの線形ダイナミックレンジを1ディケードより多く向上させる。さらに好ましくは、較正係数は、MPPCの線形ダイナミックレンジを1.5ディケードより多く向上させる。特に好ましくは、較正係数は、MPPCの線形ダイナミックレンジを2ディケードより多く向上させる。
好ましい実施形態では、細胞の前方散乱(FSC)の特徴付け(characterization)は、FSC検出器、FSC光を収集するためのFSC集光レンズ、ならびに入射レーザービームがFSC集光レンズおよびFSC検出器に入るのを遮断するオブスキュレーションバーを備える。蛍光検出器での蛍光シグナルのタイミングとFSC検出器での前方散乱シグナルのタイミングとの間の関係は、どのレーザーが検出チャネルで検出された蛍光シグナルの励起を誘導するかを決定するためのアプローチを提供する。
向上したオブスキュレーションバーの使用によって、前方散乱(FSC)検出のさらなる向上が達成された。好ましい実施形態では、菱形のオブスキュレーションバーが提供される。別の実施形態では、オブスキュレーションバーは、長方形状であり、その水平方向の寸法がその垂直方向の寸法と同一またはより長く、入射レーザービームを遮断するために設けられている。さらに別の実施形態では、オブスキュレーションバーの周囲は、入射レーザービームを遮断するために、光強度分布図の輪郭をたどる。さらなる実施形態では、オブスキュレーションバーは、0.1%の輪郭線内で、光強度分布図の輪郭をたどる。0.1%の輪郭線または境界は、輪郭上の各点での光強度が入射光の最大光強度の0.1%である線に対応する。0.1%の輪郭線内で光強度分布図の輪郭をたどるオブスキュレーションバーは、散乱していないビームの99%をFSC検出器から遮断するように決定された。したがって、本発明はまた、0.1%、0.2%、0.5%、1.0%または2.0%の輪郭線内で光強度分布図の輪郭をたどる、ほぼ菱形のオブスキュレーションバーおよびその成形方法を提供する。
光学エンジンコンポーネントは、単一ユニットとして収容されることが好ましく、これらの光学コンポーネントのいくつかは、他のコンポーネントでの修正のために、取り外して交換することができる。本目的のために、光学エンジンコンポーネントを収容するように構成されたハウジングも提供される。ハウジングは、複数のレーザーのセット、レーザービームを励起面に集光させるための光学系、収集光学系、フィルター光学系、光検出器、さらなるフィルター(および/またはレンズ)、また、外部マイクロプロセッサーまたは遠隔コンピューターに接続されるであろう、光検出器から電気回路への電気的接続のための電気的インタフェース等の光学エンジンコンポーネントを備える。いくつかの実施形態では、各レーザーは、対応する複数のビーム整形光学系のセットを有する。ここで、各レーザーからの光は、同一励起面に沿った、同一水平位置へx軸に沿って水平に集光され、かつ異なる垂直位置へy軸に沿って垂直に集光される。また、励起面に沿った同一水平位置は、フローサイトメーターのフローセルを介した流路と交差する。他の実施形態では、全てのレーザービームは、x軸に沿って水平方向に独立して調整され、かつy軸に沿って垂直方向に独立して調整され、適切に配置されたダイクロイックミラーを介して結合されて、共通のアクロマティックビーム整形光学系を通過する。その結果、全てのレーザービームは、同一励起面に沿った同一水平位置および異なる垂直位置へ集光される。ここで、励起面の水平位置は、フローサイトメーターのフローセルを介した流路と交差する。好ましくは、同一ハウジング内のコンポーネントは、異なるレーザー、集光レンズ、ロングパスおよびショートパスのダイクロイックミラー、フィルター、ピンホール通路および検出器の互換性のために構成される。これは、互換性のために異なるコンポーネントにわたる位置合わせ穴、留め金、ねじまたは他の留め具の位置決め等の係合機能を標準化することによって、かつ、各レーザーに対して個別に複数のビーム整形光学系のセットを設けることによって達成される。好ましくは、光検出器はMPPC検出器である。いくつかの実施形態では、流路は、ハウジングに取り付けられ、チューブコネクタによって、粒子(例えばビーズまたは細胞)を含むサンプルの流体力学的集束のためのフローサイトメーター装置に結合するように構成される。
上記実施形態を増進するために、図7Aは、入射光のパワーレベルに対する、MPPCからの電気的アナログ信号を変換した後のデジタル出力の依存性を示す。このテストでは、パルス幅4μsを伴う10kHzで入射光を振動させた。MMPCチップから出力されたアナログ電流は、抵抗器で電圧に変換される。次に電圧がデジタル化され、デジタル出力が得られる。入射光線は、約115μmから1.1mmまで変化した。明らかに、ビームサイズが大きいほど、線形ダイナミックレンジは広くなる。サイズが約1.5mm×1.5mmであるこのMPPCチップでは、図7Aに示され、評価されているビームサイズのうち、1.1mmのビームサイズは、760μm、550μmおよび115μmのビームサイズに対するものよりも良好なダイナミックレンジを与えた。ビームサイズは、MPPC表面上の入射ビームについての光スポットの直径を指す。
図7Bは、図7Aで使用されたものとは異なる抵抗器を備える別のMPPC検出器からのデジタル出力の依存性を示す。ここで、抵抗器はMPPC出力電流をアナログ電圧に変換するために使用され、それはさらにADCによりデジタルMPPC出力に変換される。図7Bで使用される抵抗器は、図7Aで使用されるものよりも大きく、よって、図7Bからのデジタル出力は、図7Aからのものよりも大きい。図7Aのデータと同様に、1.1mmのビームサイズは、760μm、550μmおよび115μmのビームサイズの場合よりも良好なダイナミックレンジを与えた。図7Cは、1.1mmのビームサイズについてのMPPCデジタル出力対入射光強度の線形回帰フィット(linear regression fit)を示す。図7Cにおいて明らかなように、当該入射ビームサイズについてのMPPC出力は、約3.5ディケードの線形ダイナミックレンジを示す。つまり、約10−11Wから約3×10−8Wの間の光強度では、MPPCは、デジタル出力が光強度に比例するという点で線形応答を示す。
図8は、入射光のパワーレベルに対する、MPPCからの電気的アナログ電圧信号を変換した後のデジタル出力の依存性(破線の菱形記号)を示す。このテストでは、パルス幅4μsを伴う10kHzで入射光を振動させた。MMPCチップから出力されたアナログ電流は、抵抗器で電圧に変換される。次に電圧がデジタル化され、デジタル出力が得られる。サイズが約3mm×3mmであるこのMPPCチップでは、入射光線は1.9mmであった。ビームサイズは、MPPC表面上の入射ビームについての光スポットの直径を指す。図8の実線は、測定されたMPPCデータ対光強度について、MPPCデジタル出力対入射光強度の線形回帰フィットを示す。図8において明らかなように、当該入射ビームサイズについてのMPPC出力は、4ディケードを超える線形ダイナミックレンジを示す。つまり、約2×10−11Wから約3.5×10−7Wの間の光強度では、MPPCは、デジタル出力が光強度に比例する点で線形応答を示す。
図9は、515〜545nmの波長範囲の入射光線に関し、特定の動作バイアス電圧および室温で、3mm×3mmのサイズを有するMPPCについて決定された、較正係数対MPPCデジタル出力のプロットを示す。各較正係数は、本発明の上記セクションに記載された技術を使用して決定された。実線は、多項式を用いて、MPPCデジタル出力に対する較正係数の依存性の理論的モデリングを示す。この得られた方程式により、任意のMPPCデジタル出力値について、較正係数を計算できる。MPPCデジタル出力値を対応する較正係数で除算することによって、MPPC出力値は補正され、その結果、得られた出力データは、著しく向上した線形性を示すであろう。図9で示すMPPCデータの線形ダイナミックレンジは、較正係数を使用してMPPCデジタル出力値を較正または補正すると、1.5ディケードより多く向上するだろう。
MPPCダイナミックレンジの下限は、入射光が約数pW以下である時、システムの光学ノイズおよび電子ノイズ、ならびに非常に重要なことには、MPPCのダークカウントによって制限される。これに関して、我々は、MPPCの動作温度を下げることによって、ダークカウントノイズを低減し制御している。図10は、室温の左パネルおよび低温の右パネルにて、MPPCでのダークカウントノイズのヒストグラムが、あらゆる外部光から遮断されることを示す。このテストでは、MPPCは、特定の動作電圧で給電されている。電流における出力「ダークカウント」ノイズは、抵抗器を介して電圧に変換された。次に、出力電圧は、アナログ‐デジタル変換器を介してデジタル化される。その後、デジタル出力は、実験プロセス全体を通じて、各小時間間隔内で最大値を特定するアルゴリズムを介して処理される。このように、各時間間隔は、MPPC回路から1つの出力値を導く。そして、出力値はヒストグラム形式でプロットされる。明らかに、ヒストグラムの平均値が大きいほど、ダークカウントノイズが大きくなる。MPPCチップの温度が低下すると、MPPCダークカウント出力の分布の平均値が、247から70のデジタル値に大幅に減少、すなわち約70%減少した。
したがって、MPPC温度を下げるとダークカウントノイズを低減できることが示された。現在、MPPCの動作温度を下げるための特別な技術とアプローチが、開発されているところである。
図11は、室温の左パネルおよび低温の右パネルにて、青色レーザーによって励起された530/43nmの蛍光チャネルで、MPPC検出器により検出された6‐pkビーズの予備データを示す。このテストでは、MPPCは特定の動作電圧で給電されている。6‐pkビーズは、フローセルの流路を通過していた。このフローセルでは、488nm、640nmおよび405nmのレーザービームが、同一水平位置へ集光され、かつ、それぞれが、フローセルの中心において、80μm離間して、異なる垂直位置へ集光された。ビーズがレーザービームによって励起された時にビーズによって生成された蛍光は、収集光学系を介して収集され、約530nm/43nmの波長範囲に濾過された。次いで、青色レーザーに起因する蛍光は、MPPCチップにて検出された。左パネルに示されている室温では、検出器は、2つの最も薄暗いビーズをかろうじて区別することができることが明らかである。一方、右パネルの温度を下げた場合には、MPPC検出器は、2つの最も薄暗い集団を容易に決定することができる。これは、動作温度を下げることにより、システム分解能と、蛍光検出のダイナミックレンジが向上することを明確に示している。
設定およびデータ取得のためのフローサイトメーターへの制御および通信は、フローサイトメーターと通信可能に接続されたコンピューターを用いて行われる。したがって、コンピューターにロードするためのフローサイトメトリーソフトウェアも開発された。フローサイトメトリーソフトウェアは、好ましくは、データ取得機能およびデータ分析機能を備える。フローサイトメトリーの技術分野で周知の通り、データ取得は、実験からのデータの収集および保存を含む。また、これは、補整調整(compensation adjustment)等のデータを取得するための設定機能、特定のゲート集団(gated population)内でカウントされる細胞数を決定するための設定機能、サンプル流速(sample flow rate)を設定するための設定機能、およびフローサイトメトリー技術分野において直面する他の実験制御のための設定機能を備えていてもよい。データ分析機能は、1つ以上の蛍光色にわたって細胞亜集団をプロットする機能や、特定の細胞亜集団の絶対計数(absolute counts)を決定する機能、特定の亜集団の相対割合を決定する機能、細胞サイクル分析(cell cycle analysis)、ならびに、フローサイトメトリープログラムに見られる他のデータ分析機能を備えていてもよい。本目的のために、ソフトウェアは、多用途、ユーザーフレンドリーで直感的なプロットおよびゲートツールを提供し、その統計ツールは、非常に優れた統計データ分析性能を提供する。好ましい実施形態では、すべての取得パラメーター、実験およびサンプルファイルは、プロットと共に、1つのウィンドウ領域において、可視およびアクセス可能である。
いくつかの実施形態では、データ収集プロセスは、(励起面の異なる垂直位置で、異なるレーザーによって励起された)異なる検出器についての同一波長の蛍光シグナルを計算し処理して、異なる蛍光チャネルにするステップと、1つのパラメーター対別のパラメーター(例えば、FSC対SSC、FSC対蛍光シグナル、または1つの蛍光シグナル対別の蛍光チャネル)を用いて二次元プロットを表示するグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を生成するステップと、ここで、GUIはさらに、比較プロットに隣接し、1つまたは複数のチャネル間のスペクトル重複の補整(compensation)を調整する補整スクロールバー(compensation scroll bars)を有し、各光散乱チャネルおよび各蛍光チャネルからデータを収集するステップと、データをデータファイルに保存するステップと、を含むことができる。また、ソフトウェアは、好ましくは、ユーザーが、ヒストグラムプロットのうちの1つまたは2‐Dプロットのうちの1つから亜集団を選択し、別のプロット(選択された亜集団についての1パラメーターのヒストグラムプロットまたは2パラメーターの2‐Dプロットのいずれか)を生成することを可能にするゲート機能を備える。この「ゲート(gating)」および「ゲート集団」のさらなる分析は、繰り返すことができる。
さらに別の関連実施形態では、フローサイトメトリー方法が提供される。当該方法は、本明細書に記載されたフローサイトメーターまたはフローサイトメーターシステムを提供するステップと、複数の蛍光標識を用いて細胞のサンプルを標識するステップと、流路を介して細胞のサンプルをポンピングするステップと、フローサイトメトリーデータを収集するステップと、フローサイトメトリーデータを分析して、サンプルの細胞上または細胞内の1つ以上の複数の蛍光標識の存在、非存在または存在量を決定するステップと、を含む。
光学エンジン100は、単一のレーザー110を使用してもよいが、光学エンジン100は、例えば、各蛍光標識細胞からの多数のパラメーターおよび多数の蛍光シグナルを測定することによって、多色フローサイトメトリー分析(multicolor flow cytometry analysis)をフローサイトメーター10に実行させることができる。これは、例えば、図2の3つのレーザー110v、110b、110rを用いて達成することができる。好適には、個々に割り当てられた収集光学系150に起因して、レーザー110を少なくとも部分的に追加、除去、または交換することができる。多色フローサイトメトリーのための例示的な構成が図2に示され、波長405nmを放射する第1のレーザー110v(紫色レーザーと言うこともある)、波長488nmを放射する第2のレーザー110b(青色レーザーと言うこともある)、および波長640nmを放射する第3のレーザー110r(赤色レーザーと言うこともある)を備える。当業者は、1つ以上のレーザー110の互換性により、ユーザーが、ベースフローサイトメーターシステムを用いて開始し、付加的なまたは異なるレーザー110の追加を、そのような必要性が実験により決定付けられる時に可能とすることを理解するであろう。1つまたは複数のレーザー110のそのような交換時において、対応するビーム整形光学系120を変更または調整して、フローセル130の中心でレーザービームの最適な供給を達成することができる。
図3は、3つのレーザー(例えば110v、110b、110r)からの3つのレーザービームの3つの例示的な光路(P1、P2、P3)に関するビーム整形光学系120を簡略的に示す上面図を提供する。ここで、第1のレーザー110v(例えば405nm)用の第1のシリンドリカルレンズ112vは、x軸に沿って励起光を集光し、第2のシリンドリカルレンズ114vは、y軸に沿って第1のレーザー110vからの励起光を集光する。同様に、第2のレーザー110b(例えば488nm)用の第1のシリンドリカルレンズ112bは、x軸に沿って励起光を集光し、第2のシリンドリカルレンズ114bは、y軸に沿って励起光を集光する。2つのビーム拡大レンズ111rのセットは、第3のレーザー110r(例えば640nm)からの励起光を拡大し、続いて、第1のシリンドリカルレンズ112rは、x軸に沿って励起光を集光し、さらに、第2のシリンドリカルレンズ114rは、y軸に沿って励起光を集光する。各レーザー110からの光路P1、P2、P3は、単一のフローセル130に集束され、細胞は、フローセル130を介して、流れているシース流体の中央領域の狭い流れの中へ流体力学的に集束される。
図6Aに示されるように、異なる垂直位置Vv、Vr、Vg、Vbのそれぞれからの光は、収集光学系(ハーフボールレンズ152、二組のダブレットレンズ154)を介して収集される際に、隣接するビームの間で2、3ミリメートルから数ミリメートルの離間距離を伴って、小さなビームサイズ(例えば、約2、3ミリメートル以下)に集光され、また、フィルター光学系(ダイクロイックミラー142、バンドパスフィルター144)を介して進み、MPPC検出モジュール161に到達する。収集光学系(ハーフボールレンズ152、二組のダブレットレンズ154)の焦点面200において、同一波長範囲の隣接するビームは、2、3ミリメートルから数ミリメートル離間している。明確にするために、この場合、ハーフボールレンズ152および二組のダブレットレンズ154を含む収集光学系は、フローセルの異なる位置(Vv、Vr、Vg、Vb)からの散乱光および蛍光を収集し、その光を焦点面200に集光する。焦点面200において、各集光ビームサイズは、一般に、500ミクロン未満の直径である。図6Aに示される例では、MPPCモジュール161は、各光線がMPPC検出器162、163、164、165を介して独立して検出されるように、フローセル130内の2つの中間垂直位置から光をさらに分離、離間するプリズムミラー168を備える。特定の一実施形態では、焦点面200が、プリズムミラー168のミラー反射点と一致することに留意されたい。図6Aにおいて、合計4つの検出器162、163、164および165を使用して、それぞれ個別のレーザーにより励起された、フローセル130内の4つの異なる垂直位置Vv、Vr、Vg、Vbからの蛍光を検出する。
好ましい実施形態では、各光線は、MPPC検出器に到達する前に、光線を拡大するためのレンズを通過する。これは図6Bに示されている。フローセル130内の4つの異なる垂直位置Vv、Vr、Vg、Vbからの光線は、以下の方法で、MPPC検出器表面に到達する前に、複数の光学系のセット内の異なる光学部品を通過する。図6Aと同様に、フローセル130内の2つの中間垂直位置Vr、Vgからの光は、プリズムミラー168によってさらに分離、離間される。プリズム168の上面で反射された光は、反射ミラー172に到達し、次に、MPPC検出器163の表面に到達して検出される前に、レンズ193を通過する。同様に、プリズム168の下面で反射された光は反射ミラー174に到達し、次に、MPPC検出器165の表面に到達する前に、レンズ195を通過する。フローセル130内の上側垂直位置Vvからの光は、レンズ192を通過して、MPPC検出器162の表面に到達して検出される。フローセル130内の最も下側の垂直位置Vbからの光は、レンズ194を通過して、MPPC検出器164の表面に到達して検出される。レンズ192、193、194および195の使用は、MPPC表面での検出のために、ビームを向上したサイズへ拡大する(レンズ192、193、194および195の設計および使用によって、一貫した、かつ最適化されたビームサイズが可能である)。加えて、レンズ192、193、194および195は、MPPC表面での均一なビーム分布をもたらすという追加の設計機能を果たす。(レンズ192、193、194および195の設計による)このように最適化されたビームサイズおよびビーム均一性は、本明細書で光検出のために使用されているMPPC装置の線形ダイナミック検出レンジ(linear−dynamic detection range)の向上に資する。
上記実施形態を増進するために、図7Aは、入射光のパワーレベルに対する、MPPCからの電気的アナログ信号を変換した後のデジタル出力の依存性を示す。このテストでは、パルス幅4μsを伴う10kHzで入射光を振動させた。MPPCチップから出力されたアナログ電流は、抵抗器で電圧に変換される。次に電圧がデジタル化され、デジタル出力が得られる。入射光線は、約115μmから1.1mmまで変化した。明らかに、ビームサイズが大きいほど、線形ダイナミックレンジは広くなる。サイズが約1.5mm×1.5mmであるこのMPPCチップでは、図7Aに示され、評価されているビームサイズのうち、1.1mmのビームサイズは、760μm、550μmおよび115μmのビームサイズに対するものよりも良好なダイナミックレンジを与えた。ビームサイズは、MPPC表面上の入射ビームについての光スポットの直径を指す。
図8は、入射光のパワーレベルに対する、MPPCからの電気的アナログ電圧信号を変換した後のデジタル出力の依存性(破線の菱形記号)を示す。このテストでは、パルス幅4μsを伴う10kHzで入射光を振動させた。MPPCチップから出力されたアナログ電流は、抵抗器で電圧に変換される。次に電圧がデジタル化され、デジタル出力が得られる。サイズが約3mm×3mmであるこのMPPCチップでは、入射光線は1.9mmであった。ビームサイズは、MPPC表面上の入射ビームについての光スポットの直径を指す。図8の実線は、測定されたMPPCデータ対光強度について、MPPCデジタル出力対入射光強度の線形回帰フィットを示す。図8において明らかなように、当該入射ビームサイズについてのMPPC出力は、4ディケードを超える線形ダイナミックレンジを示す。つまり、約2×10−11Wから約3.5×10−7Wの間の光強度では、MPPCは、デジタル出力が光強度に比例する点で線形応答を示す。