本明細書に記載する薬物送達デバイスは、薬剤を患者に注射するように構成することができる。たとえば、送達は、皮下、筋肉内、または静脈内で行うことができる。そのようなデバイスは、患者または看護師もしくは医師などの医療従事者によって動作することができ、様々なタイプの安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器を含むことができる。デバイスは、封止されたアンプルを使用前に穿孔する必要があるカートリッジベースのシステムを含むことができる。これらの様々なデバイスによって送達される薬剤の体積は、約0.5ml〜約2mlの範囲に及ぶことができる。さらに別のデバイスは、一定期間(たとえば、約5、15、30、60、または120分)にわたって患者の皮膚に付着して「大」容量の薬剤(典型的には、約2ml〜約10ml)を送達するように構成された大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含むことができる。
特有の薬剤と組み合わせて、本明細書に記載するデバイスはまた、必要とされる仕様の範囲内で動作するようにカスタマイズすることができる。たとえば、デバイスは、特定の期間(たとえば、自動注射器の場合は約3〜約20秒、LVDの場合は約10分〜約60分)内に薬剤を注射するようにカスタマイズすることができる。他の仕様は、低いもしくは最小の不快レベル、または人的要因、保管寿命、有効期限、生体適合性、環境的考慮などに関係する特定の条件を含むことができる。そのような変動は、たとえば、薬物の粘性が約3cP〜約50cPの範囲に及ぶことなどの様々な要因に起因することができる。したがって、薬物送達デバイスは、サイズが約25〜約31ゲージの範囲に及ぶ中空の針を含むことが多い。一般的なサイズは、27および29ゲージである。
本明細書に記載する送達デバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を含むことができる。たとえば、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動化工程のためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって提供することができる。エネルギー源は、たとえば、機械、空気圧、化学、または電気のエネルギーを含むことができる。たとえば、機械エネルギー源は、エネルギーを貯蔵または解放するためのばね、てこ、エラストマー、または他の機械的機構を含むことができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源を組み合わせて単一のデバイスにすることができる。デバイスは、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換するための歯車、弁、または他の機構をさらに含むことができる。
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動機能はそれぞれ、起動機構を介して起動することができる。そのような起動機構は、ボタン、レバー、ニードルスリーブ、または他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。自動機能の起動は、1工程または複数工程のプロセスとすることができる。すなわち、使用者は、自動機能を引き起こすために、1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動する必要がある。たとえば、1工程のプロセスでは、使用者は、ニードルスリーブを身体に押し当てて薬剤の注射を行うことができる。他のデバイスは、自動機能の複数工程の起動を必要とすることがある。たとえば、使用者は、注射を行うために、ボタンを押し下げてニードルシールドを後退させる必要がある。
加えて、1つの自動機能の起動により、1つまたはそれ以上の次の自動機能を起動し、それによって起動シーケンスを形成することができる。たとえば、第1の自動機能の起動により、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの少なくとも2つを起動することができる。いくつかのデバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を行うために、特有の工程シーケンスを必要とすることがある。他のデバイスは、独立した工程シーケンスによって動作することができる。
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器のうちの1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。たとえば、送達デバイスは、薬剤を自動的に注射するように構成された機械エネルギー源(典型的には、自動注射器に見られる)と、用量設定機構(典型的には、ペン注射器に見られる)とを含むことができる。
本開示のいくつかの実施形態によれば、例示的な薬物送達デバイス10が、図1Aおよび1Bに示されている。デバイス10は、上述したように、薬剤を患者の体内へ注射するように構成される。デバイス10は、典型的には注射予定の薬剤を含むリザーバ(たとえば、シリンジ)を含むハウジング11と、送達プロセスの1つまたはそれ以上の工程を容易にするために必要とされる構成要素とを含む。デバイス10はまた、ハウジング11に取外し可能に取り付けることができるキャップアセンブリ12を含むことができる。典型的には、使用者は、デバイス10を動作させる前に、キャップ12をハウジング11から取り外さなければならない。
図示のように、ハウジング11は、実質上円筒形であり、長手方向軸Xに沿って実質上一定の直径を有する。ハウジング11は、遠位領域20および近位領域21を有する。「遠位」という用語は、注射部位に比較的近い位置を指し、「近位」という用語は、注射部位から比較的遠い位置を指す。
デバイス10はまた、ハウジング11に連結されたニードルスリーブ13を含むことができ、ニードルスリーブ13は、ハウジング11に対するスリーブ13の動きを可能にする。たとえば、スリーブ13は、長手方向軸Xに平行して長手方向に動くことができる。具体的には、スリーブ13が近位方向に動くことで、針17がハウジング11の遠位領域20から延びることが可能になる。
針17の挿入は、いくつかの機構を介して行うことができる。たとえば、針17は、ハウジング11に対して固定することができ、最初は延ばされたニードルスリーブ13内に位置することができる。スリーブ13の遠位端を患者の身体に押し付け、ハウジング11を遠位方向に動かすことによって、スリーブ13を近位に動かすことで、針17の遠位端が露出される。そのような相対的な動きにより、針17の遠位端が患者の体内へ延びることが可能になる。そのような挿入は、患者がハウジング11をスリーブ13に対して手動で動かすことを介して針17が手動で挿入されるため、「手動」挿入と呼ばれる。
別の形態の挿入は、「自動」であり、針17がハウジング11に対して動く。そのような挿入は、スリーブ13の動きによって、またはたとえばボタン22などの別の形態の起動によってトリガすることができる。図1Aおよび1Bに示すように、ボタン22は、ハウジング11の近位端に位置する。しかし、他の実施形態では、ボタン22は、ハウジング11の側に位置することもできる。
他の手動または自動の機能は、薬物の注射もしくは針の後退、または両方を含むことができる。注射とは、栓またはピストン23をシリンジ(図1Aおよび1Bには示さず)内の近位位置からシリンジ内のより遠位の位置へ動かし、針17を通ってシリンジから薬剤を押し出すプロセスである。いくつかの実施形態では、デバイス10が起動される前、駆動ばね(図1Aおよび1Bには示さず)が圧縮されている。駆動ばねの近位端は、ハウジング11の近位領域21内に固定することができ、駆動ばねの遠位端は、ピストン23の近位面に圧縮力を印加するように構成することができる。起動後、駆動ばね内に貯蔵されているエネルギーの少なくとも一部をピストン23の近位面に印加することができる。この圧縮力は、ピストン23に作用してピストン23を遠位方向に動かすことができる。そのような遠位への動きは、シリンジ内の液体薬剤を圧縮して針17から押し出すように作用する。
注射後、スリーブ13またはハウジング11内で針17を後退させることができる。使用者が患者の身体からデバイス10を取り出すときにスリーブ13が遠位に動くため、後退を行うことができる。これは、針17がハウジング11に対して固定されたまま行うことができる。スリーブ13の遠位端が針17の遠位端を越え、針17が覆われた後、スリーブ13をロックすることができる。そのようなロックは、ハウジング11に対するスリーブ13の近位への動きをロックすることを含むことができる。
針17がハウジング11に対して動かされる場合、別の形態の針の後退を行うことができる。そのような動きは、ハウジング11内のシリンジがハウジング11に対して近位方向に動かされる場合に生じることがある。この近位への動きは、遠位領域20内に位置する後退ばね(図示せず)を使用することによって実現することができる。圧縮された後退ばねは、起動されると、シリンジを近位方向に動かすのに十分な力をシリンジに供給することができる。十分な後退後は、ロッキング機構によって、針17とハウジング11との間の相対的な動きをロックすることができる。加えて、必要とされる場合、ボタン22またはデバイス10の他の構成要素もロックすることができる。
図2〜6を次に参照すると、本発明の一実施形態による注射デバイス110が概略的に示されており、注射デバイス110は、遠位領域20および近位領域21を有する注射器ハウジング本体(injector housing body)111(以下、「本体」)を含む。本体111は、本体111から延びるニードルスリーブ113を含むことができ、ニードルスリーブ113は、本体111内へ引き込み可能であり、本体111から延びる方向に付勢することができる。
本体111は、シリンジ114または液体薬剤115のカートリッジを受け入れるように構成されたシリンジホルダ部分を含む。別法として、シリンジ114が、液体薬剤115のカートリッジを受け入れるように構成することもできる。シリンジ114は、本体111内に摺動可能に取り付けられ、使用前の位置(図2に示す)から使用位置(図4〜6に示す)へ可動である。図3は、使用前の位置と使用位置との間の中間位置にあるシリンジ114を示す。
シリンジ114から本体111の遠位端の方に位置するニードルホルダ116内に、針117が保持される。針117は、本体111の遠位端20により近い遠位端117aと、本体111の近位端21により近い近位端117bとを含む。ニードルホルダ116は、本体111内に摺動可能に取り付けられ、後退位置(図2に示す)と伸長位置(図3〜6に示す)との間で可動である。ニードルホルダ116の伸長位置で、針117は、本体111の遠位端20を越えて延びる。
シリンジ114は、針117とは反対側の端部にストッパ118を含み、ストッパ118は、シリンジ114内で液体薬剤115を保持するためにシリンジ114の内壁を封止する。ニードルホルダ116近傍に位置するシリンジ114の反対側の端部は開口部を含み、開口部内のセプタム119が開口部を封止する。
シリンジ114の近位端、すなわち本体111の近位端21に最も近いシリンジ114の端部に、円筒形のシリンジラム120が設けられる。シリンジラム120は、シリンジ114の近位端に当接する周辺フランジ121を含む。
本体内でその近位端21に、作動機構123(概略的にのみ示す)が設けられる。本体111の近位端21にボタン122が位置し、作動機構123を起動するように動作可能である。作動機構は、本発明の範囲内で、動力供給式の自動デバイスを含む様々な機構を含むことができ、注射デバイス110の動作を制御/監視するための制御または監視電子機器を含むことができる。作動機構は、シリンジラム120を駆動するためのパワーパック11を含むことができる。シリンジラム120を駆動するために、プランジャ(図示せず)を設けることができる。別法として、作動機構は、動力供給されず、純粋に機械式とすることができる。作動機構は、シリンジラム120に係合するように構成された解放可能なロッキング機構を含むことができる。ロッキング機構は、ボタン122が押し下げられるとシリンジラム120から係合解除するように構成することができる。
作動機構123とシリンジラム120との間に、シリンジばね124が配置される。シリンジばね124は圧縮ばねであり、シリンジが図2に示す使用前の位置にあるときは圧縮状態にある。シリンジばね124は、シリンジラム120を覆って配置され、周辺フランジ121に着座する。それによってシリンジばね124およびシリンジラム120は、シリンジ114を使用位置の方へ付勢するように作用する。
シリンジラム120の円筒形部分内に、ストッパばね125が設けられる。ストッパばね125の一方の端部は、シリンジラム120の端壁の内側に当接する。ストッパばね125の他方の端部は、ストッパ118に当接する。ストッパばね125は圧縮ばねであり、シリンジ114が使用前の位置にあり、液体薬剤115がシリンジ114内にあるときは圧縮状態にある。ストッパばね125は、シリンジ114の遠位端20に向かう方向へストッパ118を付勢して、シリンジ114から薬剤を排出するように作用する。ストッパ118は、セプタムがシリンジ114の遠位端で開口部を封止している間はストッパばね125の力を受けて動くことが防止される。
ニードルホルダ116とシリンジ114の遠位端との間に、ニードルホルダばね126が設けられる。ニードルホルダばね126は圧縮ばねである。ニードルホルダばね126は、シリンジ114およびニードルホルダ116が隔置されているときは拡張状態にある(図2および図3に示す)。ニードルホルダばね126は、シリンジ114およびニードルホルダ116が当接しているときは圧縮状態にある(図4〜6に示す)。それによってニードルホルダばね126は、ニードルホルダ116をシリンジ114から離れる方へ付勢する働きをする。
本体111は、シリンジ114が使用位置に到達するとシリンジ114の突出部分128に当接するシリンジ止め具127を含む。シリンジ止め具127は、シリンジ114が本体111の遠位端20の方へさらに動くのを防止する。シリンジ止め具127は、シリンジばね124の力に逆らってシリンジ114を使用位置で保持する。
本体111は、ニードルホルダ116が伸長位置に到達するとニードルホルダ116の突出部分130に当接するニードルホルダ止め具129を含む。ニードルホルダ止め具129は、ニードルホルダ116が本体111の遠位端20の方へさらに動くのを防止する。ニードルホルダ止め具129は、ニードルホルダばね126の力に逆らってニードルホルダ116を伸長位置で保持する。
本発明の例示的な実施形態の注射デバイス110の動作について、次に説明する。最初に、注射デバイス110は図2に示す開始構成にある。開始構成で、ニードルスリーブ113は伸長位置にあり、シリンジ114は使用前の位置にあり、ニードルホルダ116は後退位置にある。
注射デバイス110の遠位端20が、患者の身体の注射部位に押し付けられる。ニードルスリーブ113は、本体111内で伸長位置から後退位置へ摺動する。これらの図に示す実施形態では、ニードルホルダ116が後退位置にあるとき、針117の遠位端117aは本体111の遠位端20を越えて延びない。したがって、針117の遠位端117aは、この動作段階で患者の皮膚を穿孔しないはずである。しかし、本発明の代替実施形態では、針117の遠位端117aは、ニードルホルダ116の伸長位置と後退位置の両方で、本体111の遠位端20を越えて延びることができる。そのような代替実施形態では、ニードルスリーブ113が伸長位置にあるときのみ、ニードルスリーブ113が針117の遠位端117aを隠すことができる。そのような代替実施形態では、注射デバイス110を注射部位に押し付け、ニードルスリーブ113を本体111内へ後退させることで、ニードルホルダ116が依然として後退位置にあるまま、針117の遠位端117aを露出させることができ、その結果、針117が患者の皮膚を穿孔する。
次いでボタン122を押して、作動機構123を起動する。これにより、シリンジラム120が解放される。シリンジラム120は、シリンジばね124の力を受けて、シリンジ114を本体111の遠位端20の方へ押す。シリンジ114が本体111の遠位端20の方へ摺動するにつれて、ニードルホルダばね126は、本体111の遠位端20に向かう方向へニードルホルダ116を押す。それによってシリンジ114およびニードルホルダ116は、本体111の遠位端20に向かう方向へともに摺動する。
シリンジ114およびニードルホルダ116が本体111の遠位端20に向かう方向へともに摺動した後、ニードルホルダ116がニードルホルダ止め具129に当接する。それによってニードルホルダ116は、伸長位置につく。これを、図3の第1の中間構成として示す(しかし、ニードルスリーブ113は図3において伸長状態で示されていることに留意されたい。注射部位に押し付けられたとき、ニードルスリーブ113はその後退位置につき、針117の遠位端117aが露出されるはずであることが理解されよう)。ニードルホルダ116が伸長位置へ動くことで、針117は注射部位で患者の皮膚を穿孔する。しかし、ニードルホルダ116が後退位置にあるときでも針117の遠位端117aが本体111の遠位端20を越えて延びる上述した代替実施形態では、注射デバイス110が注射部位に押し付けられたとき、針117は患者の皮膚をすでに穿孔しているはずである。したがって、ニードルホルダ116が伸長位置へ動くことで、針117が患者の皮膚の中へさらに延びるはずである。
シリンジ114は、第1の中間位置から、シリンジばね124の力を受けて本体111の遠位端20の方へ引き続き摺動する。しかし、ニードルホルダ116がニードルホルダ止め具129に当接するため、シリンジ114はニードルホルダ116の方へ動き、ニードルホルダばね126を圧縮する。したがって、シリンジばね124はニードルホルダばね126より強い力をかけるように構成されることが理解されよう。シリンジ114は、ニードルホルダ116の方へ引き続き摺動した後、使用位置でシリンジ止め具127に当接する。この位置で、シリンジ114の遠位端はまた、ニードルホルダ116に当接する。これにより、針117の近位端117bがセプタム119を穿孔し、針117がシリンジ114内で液体薬剤115のリザーバに流体連通する。次いで注射デバイス110は、図4に示す第2の中間構成になる。図4で、ニードルスリーブ113は後退位置で示されており、針117の遠位端117aは露出されていることに留意されたい。
セプタムが針117によって穿孔され、針117が患者の皮膚を穿孔している状態で、薬剤115を注射部位へ送達することが可能である。ストッパばね125は、ストッパ118を本体111の遠位端20に向かう方向へ押し、それにより薬剤115をシリンジ114から患者の体内へ排出する。薬剤送達プロセスの途中で、ストッパ118は、図5の第3の中間構成に示すように、シリンジ114の長さに沿って中途に位置する。
ストッパ118がストッパばね125の力を受けて本体111の遠位端20の方へ引き続き動いた後、ストッパ118はシリンジ114の遠位端に到達する。この時点で、液体薬剤115はシリンジ114から完全に排出されている。このとき注射デバイス110は、図6に示す最終構成にある。注射デバイス110が最終構成に到達した後、注射デバイス110を患者の身体から取り外すことができる。次いで、ニードルスリーブ113は、適した付勢手段(図示せず)によって伸長位置へ動き、針117の遠位端117aを隠して、偶発的な負傷を回避することができる。ニードルスリーブ113が伸長位置にあるこの構成は、図6に示されている。注射デバイス110は、注射デバイスが使用された後はニードルスリーブ113を伸長位置でロックする自動ロッキング機構を含むことができる。そのようなロッキング機構は、使用位置に配置されているシリンジおよび/または伸長位置に配置されているニードルホルダ116に機械的または電子的に連結することができる。
本発明の代替実施形態では、ストッパばね125および/またはストッパ118は、解放アクチュエータを有する解放機構を含むことができる。これにより、使用者は、使用位置へのシリンジ114の動きおよび伸長位置へのニードルホルダ116の動きとは独立して、薬剤115の送達プロセスがいつ開始するかを別個に制御することが有効になる。
本発明の範囲内で、ニードルホルダ116は別法として、本体111に対して固定することができることが意図される。そのような実施形態では、シリンジ114は、本体111内で可動であり、使用前の位置から使用位置へ摺動するはずであり、使用位置で、針117の近位端117bはセプタム119を穿孔する。そのような実施形態では、ニードルスリーブ113は、好ましくは、ニードルスリーブ113が伸長位置にあるとき、針117の遠位端117aを隠すことができる。
本体111は、本体111内でのシリンジ114の摺動運動を案内するための1つまたはそれ以上の案内要素を含むことができる。そのような案内要素は、1つまたはそれ以上の協働する突出部と、突出部を受けるための凹部とを含むことができ、これらの突出部および凹部は、それぞれシリンジ114および/または本体111の1つの中に形成される。
同様に、本体111は、本体111内でのニードルホルダ116の摺動運動を案内するための1つまたはそれ以上の案内要素を含むことができる。そのような案内要素は、1つまたはそれ以上の協働する突出部と、突出部を受けるための凹部とを含むことができ、これらの突出部および凹部は、それぞれニードルホルダ116および/または本体111の1つの中に形成される。
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1カ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約−4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、GLP−1類似体もしくはGLP−1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP−1、GLP−1類似体およびGLP−1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン−4(Exendin−4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC−2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン−4、CJC−1134−PC、PB−1023、TTP−054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM−11260C、CM−3、GLP−1エリゲン、ORMD−0901、NN−9924、NN−9926、NN−9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)−GLP−1、CVX−096、ZYOG−1、ZYD−1、GSK−2374697、DA−3091、MAR−701、MAR709、ZP−2929、ZP−3022、TT−401、BHM−034、MOD−6030、CAM−2036、DA−15864、ARI−2651、ARI−2255、エキセナチド(Exenatide)−XTENおよびグルカゴン−Xtenである。
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG−F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
例示的な抗体は、アンチPCSK−9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL−6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL−4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1〜C6−アルキル基、場合により置換されたC2〜C6−アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10−アリル基、または場合により置換されたC6〜C10−ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
本発明の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく、本明細書に記載するAPI、物質、製剤、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または除去)を加えることができ、本発明は、そのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。