詳細な説明
種々の好ましい特徴および実施形態を、非限定的例証により以下に説明する。
潤滑粘度の油
本開示の技術の1つの成分は、基油とも称される潤滑粘度の油である。基油は、アメリカ石油協会(American Petroleum Institute)(API)のBase Oil Interchangeability Guidelines(2011年)のグループI〜V、すなわち
基油カテゴリー 硫黄(%) 飽和度(%) 粘度指数
グループI >0.03および/または<90 80から120未満
グループII ≦0.03 および ≧90 80から120未満
グループIII ≦0.03 および ≧90 ≧120
グループIV すべてのポリアルファオレフィン(PAO)
グループV グループI、II、IIIまたはIVに含まれない他のすべて
における基油のいずれかから選択されてもよい。
グループI、IIおよびIIIは、鉱油ベースストックである。APIによって公式に特定されていなくても、他の一般的に認識されたカテゴリーの基油を使用してもよい:グループII+は、110〜119の粘度指数と他のグループIIの油より低い揮発性を有するグループIIの材料を指し;グループIII+は、130より高いかまたは130に等しい粘度指数を有するグループIIIの材料を指す。潤滑粘度の油は、天然油または合成油およびこれらの混合物を含むことができる。鉱油および合成油の混合物、例えば、ポリアルファオレフィン油および/またはポリエステル油を使用してもよい。
一実施形態では、潤滑粘度の油は、3から7.5、または3.6から6、または3.5から mm2/秒の、ASTM D445による100℃での動粘度を有する。一実施形態では、潤滑粘度の油は、3から7.5または上述の他の範囲のいずれかの、ASTM D445による100℃での動粘度を有するポリアルファオレフィンを含む。
ホスフェートアミン塩
本開示の技術の潤滑剤は、さらに記載したように、実質的に硫黄を含まないアルキルホスフェートアミン塩を含むことになる。塩は、少なくとも1種のヒドロカルビルアミンの(チオ)リン酸塩(「リン−アミン塩」)であってもよい。(チオ)リン酸は、モノ−またはジ−ヒドロカルビル(チオ)リン酸(典型的には、アルキル(チオ)リン酸、またはさらにはアルキルリン酸(alkyl phosphoric acid)(硫黄不含))、アルキルピロリン酸、ジヒドロカルビルピロリン酸、またはこれらの混合物を含んでもよい。
本明細書で使用する場合、表現「(チオ)リン酸」は、チオリン酸、リン酸(すなわち、酸中に硫黄が存在しない)、モノ−もしくはジ−ヒドロカルビルリン酸エステル−酸、またはこれらの混合物を含むことを意図する。典型的には、(チオ)リン酸は、リン酸、またはこれらの混合物であってもよい。
モノ−またはジ−ヒドロカルビル(チオ)リン酸のアルキルは、3から36個の炭素原子の直鎖状アルキル基を含んでもよい。モノ−またはジ−ヒドロカルビル(チオ)リン酸のアルキルは、3から36個の炭素原子の分枝状アルキル基を含んでもよい。
直鎖状または分枝状ヒドロカルビル(チオ)リン酸のヒドロカルビル基は、直鎖の形態で、4から30、または8から20、または4から12個の炭素原子を含有してもよい。ヒドロカルビル基は、アルキル、もしくはアルコキシ、またはこれらの混合物であってもよい。典型的には、アルコキシ基は、ヒドロカルビル(チオ)リン酸がアルキル基も含む場合に存在してもよい。アルコキシ基は、2から18または2から12、または2から4個の炭素原子、および1から3、または1から2、または1個の水酸基を含有してもよく、すなわち、1つの追加の水酸基が存在する場合、親化合物はジオールである。ヒドロキシル基は、典型的には、隣接する炭素原子上に存在し、すなわち、1,2ジオールである。アルコキシは、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはブチレングリコールなどの化合物から導出されてもよい。一実施形態では、(チオ)リン酸は、アルキルだけであってもよいヒドロカルビル基を含有する。一実施形態では、(チオ)リン酸は、アルキル基とアルコキシ基の混合物であってもよいヒドロカルビル基を含有する。混合型のアルキルアルコキシ(チオ)リン酸は、P2O5、P4O10、P2S5、P4S10などのリン酸処理剤もしくは材料、アルキルピロホスフェート、ジヒドロカルビルピロホスフェート、または当技術分野で公知の他の化合物を、モノ−アルコールまたはジオールと反応させることによって得てもよい/得ることが可能であり得る。モノ−アルコール対ジオールのモル比は、3:1から10:1、または3.5:1から10:1、または4:1から10:1、または5:1から7:1の範囲であってもよい。
本明細書で使用する場合、用語「ヒドロカルビル」、「ヒドロカルビル置換基」、または「ヒドロカルビル基」は、当業者に周知の通常の意味において使用される。具体的には、この用語は、分子の残りの部分に直接結合する炭素原子を有し、主に炭化水素の特徴を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例として、
炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、および芳香族−、脂肪族−、および脂環式−置換芳香族置換基、ならびに環が分子の別の部分によって完成している環式置換基(例えば、2つの置換基が一緒になって環を形成する);
置換炭化水素置換基、すなわち、この発明の文脈で、置換基(例えば、ハロ(特に、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)の主に炭化水素の性質を変更しない非炭化水素基を含有する置換基;
ヘテロ置換基、すなわち、この発明の文脈で、主に炭化水素の特徴を有しながら、そうでなければ炭素原子からなる環または鎖中に炭素以外を含有し、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルとしての置換基を包含する置換基が挙げられる。ヘテロ原子として、硫黄、酸素、および窒素が挙げられる。一般的に、2つ以下、または1つ以下の非炭化水素置換基が、ヒドロカルビル基の10個の炭素原子ごとに存在し、あるいは、ヒドロカルビル基に非炭化水素置換基は存在しなくてもよい。
動作効率の改善が求められる場合、ヒドロカルビル(チオ)リン酸は、3から36、4から30、または8から20個の炭素原子からなる主に直鎖状の炭化水素基を含有してもよい。
ヒドロカルビル(チオ)リン酸の適切なヒドロカルビル基の例として、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、アミル、4−メチル−2−ペンチル(すなわち、メチルアミル)、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、2−プロピルヘプチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、オレイル、またはこれらの組合せを挙げることができる。
一部の実施形態では、ヒドロカルビル(チオ)リン酸は、リン酸処理剤を一価アルコールと、およびアルキレンポリオールと反応させることによって調製されてもよく、ここで、一価アルコール:アルキレンポリオールのモル比は、約0.2:0.8から約0.8:0.2である。
適切な一価アルコールとして、オクチルアルコール、例えば、とりわけ、2−エチルヘキサノールの種々の異性体が挙げられる。適切なアルコールの他の例として、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、オクタデセノール(オレイルアルコール)、ノナデカノール、エイコシルアルコール、およびこれらの混合物が挙げられる。適切なアルコールの例として、例えば、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、イソオクタノール、およびこれらの混合物が挙げられる。
市販のアルコールとして、MonsantoのOxo Alcohol(登録商標)7911、Oxo Alcohol(登録商標)7900およびOxo Alcohol(登録商標)1100;ICIのAlphanol(登録商標)79;Condea(現在のSasol)のNafol(登録商標)1620、Alfol(登録商標)610およびAlfol(登録商標)810;Afton CorporationのEpal(登録商標)610およびEpal(登録商標)810;Shell AGのLinevol(登録商標)79、Linevol(登録商標)911およびDobanol(登録商標)25 L;Condea Augusta,MilanのLial(登録商標)125;Henkel KGaA(現在のCognis)のDehydad(登録商標)およびLorol(登録商標)ならびにUgine KuhlmannのLinopol(登録商標)7−11およびAcropol(登録商標)91が挙げられる。
リン酸処理剤は、アルキレンポリオールとも反応する。アルキレンポリオールは、例えば、1から16、または1から10、または2から6、または2から4個の炭素原子を含有してもよい。注目すべき一実施形態では、アルキレンポリオールは、1,2−プロピレングリコールを含む。ポリオールは、一般的に、2つまたはそれより多いアルコール性水酸基、例えば、ジオール、トリオール、およびテトラオール、特にジオールを含有するアルコールである。アルキレンジオールとして、2つのアルコール性OH基が隣接する炭素原子上に存在するもの、例えば、1,2−アルキレンジオールが挙げられる。例として、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール;また、1,3−プロピレンジオール、1,3−ブチレンジオール、1,4−ブチレンジオール、1,2−ヘキシレンジオール、1,2−ドデシレンジオール、および1,2−オクタデシレンジオールが挙げられる。所望の場合、ジオールと組み合わせて、容易に決定され得る量でかつ反応条件下で、トリオールおよびテトラオールが使用され、生じ得る架橋の量を制限してもよい。トリオールとして、グリセロールが挙げられる。テトラオールとして、ペンタエリスリトールが挙げられる。
一価アルコールとアルキレンポリオールの相対量は、一価アルコール:アルキレンポリオールのモル比が、0.2:0.8から0.8:0.2、または、他の実施形態では、0.4:0.6から0.7:0.3または0.45:0.55から0.67:0.33または0.4:0.6から0.6:0.4、または0.45:0.55から0.55:0.45、または0.48:0.55から0.52:0.48、または約0.5:0.5、すなわち、1:1となるように選択される。当量基準で表現される場合、モル比1:1のモノオール:ジオールは、比1:2のOH基に相当することになる。したがって、およそ等モル量の一価アルコールとアルキレンポリオールを使用する場合、一価アルコールよりもポリオールがもたらす水酸基の方がより多く存在することになる。
一価アルコールとアルキレンポリオールは、それによって形成される生成物混合物がリン含有酸(phosphorus acid)官能基を含有する全体量でリン酸処理剤(あるいは、リン酸化剤として公知である)と反応する。すなわち、リン酸処理剤は、そのエステル形態に完全に変換される訳ではなく、少なくとも一部のP−OH酸性官能基を保持し、このことは、所望の場合、等量のアルコールとポリオールと比較して十分量のリン酸処理剤を使用することによって達成されてもよい。特に、ある特定の実施形態では、リン酸処理剤(五酸化二リンを含んでもよい)は、リン酸処理剤由来のリン1モル当たり1から3または1から2.5(または1.25から2または1.5から2.5または2.5から3.5)モルのヒドロキシル基の比で一価アルコールおよびアルキレンポリオールと反応してもよい。他の実施形態では、リン酸処理剤は、リン酸処理剤のリン原子当たりの一価アルコールとアルキレンポリオールの合計が1から1.75モルの比で一価アルコールおよびアルキレンポリオールと反応してもよい。リン酸処理剤として、リン酸処理剤1モル当たり2個のP原子が存在するように五酸化二リン、P2O5が用いられる場合、この比は、P2O51モル当たり2から3.5モル(アルコール+ポリオール)として表現されてもよい。他の実施形態では、五酸化二リン1モル当たり合計2.5から3モルまたは3から3.5モルのアルコールとポリオールを使用してもよい。(これは、五酸化二リンが代替式P4O10ではなく、式P2O5を有することを仮定し;適当な比は、いずれかの式に対応して容易に計算することができる。)P原子当たりのアルコール性OH基の数は、用いられるモノオールおよびジオール(またはより高級なアルコール)の相対量に応じても変化し得る。1:1のモル比のモノオールとジオールが存在する場合、例えば、全アルコールの1モル当たり1.5のOH基が存在することになり、上述のP原子当たり1から1.75モルのアルコールの範囲は、P原子当たり1.5から2.625のOH基に相当することになる。
1つのいくぶん過度に単純化した概略図では、リン酸処理剤のアルコールとの反応は、以下のように表されてもよい:
3ROH + P2O5 → (RO)2P(=O)OH + RO−P(=O)(OH)2
(式中、ROHは、一価アルコールもしくはアルキレンポリオールの部分を表すか、または2つのR基が一緒になって、アルキレンポリオールのアルキレン部分を表してもよい)。以下に示すように、残留するリン酸性官能基は、少なくとも部分的に、アミンと反応してもよい。
リン酸処理剤は、任意の順序で、一価アルコールおよびアルキレンポリオールと混合し、反応させてもよい。ある特定の実施形態では、リン酸処理剤の全仕込量は、単一混合物中の一価アルコールとアルキレンポリオールの全仕込量と反応する。
リン酸処理剤自体は、一度に反応混合物中に投入されてもよく、または複数回で投入されてもよい。したがって、一実施形態では、反応生成物(または中間体)は、リン酸処理剤の一部が一価アルコールおよびアルキレンポリオールと反応し、その後、リン酸処理剤の第2の仕込量が添加されて、調製される。
リン酸処理剤と一価アルコールおよびアルキレンポリオールとに由来する反応生成物は、個々の種の混合物であり、特定の詳細な組成物は、ある程度まで、反応物の添加の順序に依存する可能性がある。しかし、反応混合物は、典型的には、式(II)または(III)
(式中、Rは、一価アルコールによってもたらされるアルキル基またはヒドロカルビル基であり、R’は、アルキレンジオールによってもたらされるアルキレン基であり、各Xは、独立して、R、もしくはH、または−R’OH基であり、但し、少なくとも1つのXは、Hであることを条件とする)によって表される少なくとも一部の分子を含有することになる。アルキレンジオールが1,2−プロピレングリコールである場合、対応する構造は、
(プロピレングリコール部分のいずれの配向も認められ;メチル基は、代わりに、他の炭素原子上に存在してもよい)によって表されてもよい。同様に、アルキレンジオールが1,2−ブチレングリコールである場合、対応する構造は
(式中、前述のように、エチル基は、代わりに、他の炭素原子上に存在してもよい)によって表されてもよい。5またはそれより多い炭素原子を含有するジオールが使用される場合、生成物は、もちろん、ジオールの構造を反映して、より長いペンダントヒドロカルビル基を対応して有することになる。これらは、(1,2ジオール構造を仮定して)一般的に、
(式中、各Qは、独立して、例えば、1から6または1から4または1から2個の炭素原子のヒドロカルビルまたはアルキル基、例えば、メチルまたはエチルであり、示された炭素原子のいずれかに結合していてもよい)と書くことができる。あるいは、Qは、水素であってもよい。したがって、少なくとも一部、またはほとんど、または実質的にすべて、またはすべての分子において、残留するP−OH基が存在し、一価アルコール由来のR基とアルキレングリコールから生じる別の基の両方が存在することになる。「実質的にすべて」は、少なくとも90重量パーセントまたは少なくとも95、もしくは98、もしくは99もしくは99.5重量パーセント、最大100もしくは99.9重量パーセントを意味する。
他の構造によって表される様々な量の生成物、例えば、部分的にエステル化した材料;または完全にエステル化した材料:
(
などの環状エステルおよびプロピレングリコールに由来する環における1つより多い単位を含有する環状エステルを含む)、およびP−O−P連結を有する材料(ピロホスフェート)が存在してもよい。
などのより高度の縮合を有するいくぶん長い鎖状材料もおそらく存在することになる。
しかし、本明細書に記載の反応生成物は、(エーテルタイプ)酸化アルキレン二量体もしくはオリゴマーまたはアルキレングリコール(またはジオール)二量体もしくはオリゴマー(リン含有酸によって開始される)を含有する材料をほとんど含有しないかまたは全く含有しない傾向にある。このような二量体またはオリゴマー材料は、酸化アルキレンが、本発明の技術のアルキレンジオールの代わりに用いられる場合に形成される傾向にある。本発明の技術は、より少ない量の「酸化アルキレン」(または「エーテルタイプ」)二量体またはオリゴマーによって特徴付けられ、したがって、以下に示すアミン塩に変換した場合に、抗摩耗性能を提供する点で特に有用である材料を提供する。ある特定の実施形態では、反応生成物は、酸化アルキレンの二量体化またはオリゴマー化に由来する二量体またはオリゴマー部分を含有する種を実質的に含まない。「実質的に含まない」によって、このような二量体またはオリゴマー部分を含有する種が、すべてのリン含有種の5重量パーセント未満、または1重量パーセント未満、または0.1重量パーセント未満、または0.01から0.05重量パーセントを占めてもよいことが意味される。
リン酸処理剤と一価アルコールおよびアルキレンポリオールとの反応は、反応物の混合物を40から110℃、または50から100℃、または60から90℃で、1から10、または2から8、または3から5時間反応させることによって実施されてもよい。このプロセスは、減圧して、大気圧でまたは大気圧を超える圧力で行われてもよい。任意の反応水を蒸留または不活性ガスによるパージによって除去してもよい。
リン酸処理剤と一価アルコールおよびアルキレンポリオールとの反応から調製した生成物または中間体をアミンとさらに反応させて、アミン塩(複数可)を含むことを特徴とし得る材料の混合物を形成し;これはまた、P−N結合の存在によって特徴付けられる材料も含有し得る。
アミン成分
リン酸エステルをアミンと反応させて、アミン塩を形成する。アミン部分は、ヒンダードヒドロカルビルアミン、芳香族ヒドロカルビルアミン、またはこれらの組合せであるヒドロカルビルアミンである。適切なヒドロカルビルアミンは、1から30個の炭素原子、1から20個の炭素原子、4から18個の炭素原子、または6から14個の炭素原子を有するモノアミン、ジアミン、およびポリアミンを含む。アミンは、第一級、第二級もしくは第三級アミン、またはさらにこれらの混合物であってもよい。さらに、ヒドロカルビル基はこれに対するヘテロ置換基を含む場合があるため、適切なアミンは、アミンエステルも含む。ヒドロカルビル基は、直鎖状、分枝状または環状(芳香族)であってもよい。一部の実施形態では、ヒドロカルビルアミンは、窒素上の少なくとも1つのヒドロカルビル置換基が芳香族炭化水素環を含む芳香族ヒドロカルビルアミンであってもよい。他の実施形態では、ヒドロカルビルアミンは、結合したヒドロカルビル基が立体的に阻害されているアミンを作り出すヒンダードヒドロカルビルアミンであってもよい。一部の実施形態では、ヒドロカルビルアミンは、芳香族ヒドロカルビルアミンとヒンダードヒドロカルビルアミンの混合物を含んでもよい。さらに他の実施形態では、ヒンダードヒドロカルビルアミンは、芳香族ヒドロカルビル基である少なくとも1つのヒドロカルビル基を有してもよい。
適切なヒンダードヒドロカルビルアミンは、それほど限定されない。これらは、直鎖状、分枝状、または環状のC1〜C30ヒドロカルビル基を有するモノアミン、ジアミン、およびポリアミンを含む。ヒドロカルビル基は、他の原子、典型的には、酸素で置換されていてもよい。一部の実施形態では、ヒンダードヒドロカルビルアミンは、式(I)
R1−NR3−R2 (I)
(式中、R1、R2、およびR3は、独立して、C1〜C30ヒドロカルビル基である)の構造によって表すことができる。他の実施形態では、R1、R2、およびR3は、独立して、C1〜C20、C4〜C18、またはC6〜C14ヒドロカルビル基であってもよい。
一部の実施形態では、ヒンダードヒドロカルビルアミンは、式(IV)
(式中、R
4およびR
5は、独立して、水素またはC
1〜C
30ヒドロカルビル基であり;R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10は、独立して、C
1〜C
30ヒドロカルビル基であり;R
11は、水素、C
1〜C
30ヒドロカルビル基、またはN−CHR
12−(CR
13R
14)であり、ここで、R
12、R
13、およびR
14は、独立して、水素またはC
1〜C
30ヒドロカルビル基であり;X
1は、C
1〜C
30ヒドロカルビル基、酸素、酸素含有C
1〜C
30ヒドロカルビル基、またはN−CHR
12−(CR
13R
14)であり、ここで、R
12、R
13、およびR
14は、独立して、水素またはC
1〜C
30ヒドロカルビル基であり;mは、1から20の整数であり;nは、1から10の整数である)の構造によって表すことができる。一部の実施形態では、ヒドロカルビル基は、C
1〜C
20、C
4〜C
18、またはC
6〜C
14ヒドロカルビル基であってもよい。一部の実施形態では、R
6、R
7、R
8、R
9、およびR
10は、独立して、水素またはC
1〜C
20アルキル基である。一部の実施形態では、R
4およびR
5は、独立して、水素、C
1〜C
12アルキル基、またはアリール基である。一部の実施形態では、X
1は、アルキルまたはアリール基であってもよい。式(II)で表すことができる例示的ヒンダードヒドロカルビルアミンとして、これらに限定されないが、2−エチル−N−(2−エチルヘキシル)−N−フェネチルヘキサン−1−アミン、N,N’−(((オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(2−エチル−N−(2−エチルヘキシル)ヘキサン−1−アミン)、N,N’−(((オキシビス(エタン−2,1−ジイル))ビス(オキシ))ビス(プロパン−3,1−ジイル))ビス(2−エチル−N−(2−エチルヘキシル)ヘキサン−1−アミン)、トリス(2−エチルヘキシル)アミン、2−エチル−N−(2−エチルヘキシル)−N−(2−メトキシエチル)ヘキサン−1−アミン、およびこれらの組合せが挙げられる。
一部の実施形態では、ヒンダードヒドロカルビルアミンは、式(V)
(式中、R
15およびR
16は、独立して、C
1〜C
30ヒドロカルビル基であり、X
2は、C
1〜C
30の基または酸素含有C
1〜C
30ヒドロカルビル基である)の構造で表すことができる。一部の実施形態では、ヒドロカルビル基は、C
1〜C
20、C
4〜C
18、またはC
6〜C
14ヒドロカルビル基であってもよい。一部の実施形態では、R
15およびR
16は、独立して、6から20個の炭素原子を有する分枝状アルキルおよび/または環含有アルキルであってもよい。一部の実施形態では、X
1は、アルキル、アシル、またはアリール基であってもよい。式(V)で表すことができる例示的ヒンダードヒドロカルビルアミンとして、これらに限定されないが、N
1,N
2−ビス(3−(ビス(16−メチルヘプタデシル)アミノ)プロピル)オキサルアミドが挙げられる。
追加の例示的ヒンダードヒドロカルビルアミンとして、これらに限定されないが、2−モルホリノエチル16−メチルヘプタデカノエート、2−エチル−N−(2−エチルヘキシル)−N−(2−メチルペンチル)ヘキサン−1−アミン、2−エチル−N−(2−エチルヘキシル)−N−(4−メチルペンタン−2−イル)ヘキサン−1−アミン、2−エチル−N,N−ビス(2−エチルブチル)ヘキサン−1−アミン、ビス(2−モルホリノエチル)9,10−ジノニルオクタデカンジオエート、2−エチル−N−イソブチル−N−(4−メチルペンタン−2−イル)ヘキサン−1−アミン、およびこれらの組合せが挙げられる。
一部の実施形態では、芳香族アミンは、式(VI)または(VII):
(式中、R
17、R
18、R
19、R
20、およびR
21は、独立して、水素または直鎖状もしくは分枝状のC
1〜C
30ヒドロカルビル基である)を有することができる。一部の実施形態では、ヒドロカルビル基は、C
1〜C
20、C
4〜C
18、またはC
6〜C
14ヒドロカルビル基であってもよい。一部の実施形態では、芳香族環の少なくとも1つの炭素原子は、ヘテロ原子で置換されていてもよい。ヘテロ原子は、硫黄、酸素、および窒素を含む。一実施形態では、ヘテロ原子は酸素であってもよい。したがって、一実施形態では、芳香族アミンは、以下の式(VIa)
(式中、R
24およびR
25は、独立して、水素または直鎖状もしくは分枝状のC
1〜C
30ヒドロカルビル基であり;X
3は、O、酸素含有C
1〜C
30ヒドロカルビル基、NH、またはN−アルキル基である)の構造を有し得る。一部の実施形態では、ヒドロカルビル基は、C
1〜C
20、C
4〜C
18、またはC
6〜C
14ヒドロカルビル基であってもよい。他の実施形態では、R
24およびR
25は、独立して、水素またはC
1〜C
20アルキル基であってもよい。
適切な芳香族アミンとして、これらに限定されないが、デシル2−アミノベンゾエート、2−エトキシ−N,N−ジエチルヘキシルアニリン、4−エトキシ−N,N−ジエチルヘキシルアニリン、2−エトキシ−N,N−ジヘキシルアニリン、4−エトキシ−N,N−ジヘキシルアニリン、4−エトキシ−N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、2−エトキシ−N,N−ジヘキシルアニリン、4−エトキシ−N,N−ジヘキシルアニリン、ビス(3−ノニルフェニル)アミン、ビス(4−ノニルフェニル)アミン、2−モルホリノエチル17−メチルヘプタデカノエート、およびこれらの組合せが挙げられる。
ジアミンは、2つの窒素原子の間に少なくとも1つの炭素原子を有する任意のジアミンであってもよい。一部の実施形態では、ジアミンは、式(VIII):
(式中、R
22およびR
23は、独立して、水素または直鎖状もしくは分枝状のC
1〜C
30ヒドロカルビル基である)におけるように、2つの窒素原子の間に芳香族環を有してもよい。一部の実施形態では、ヒドロカルビル基は、C
1〜C
20、C
4〜C
18、またはC
6〜C
14ヒドロカルビル基であってもよい。このタイプの適切なジアミンとして、これらに限定されないが、N
1,N
1,N
4,N
4−テトラヘプチルベンゼン−1,4−ジアミン、N
1,N
1,N
4,N
4−テトラペンチルベンゼン−1,4−ジアミン、N
1,N
4−ジ−sec−ブチル−N
1,N
4−ビス(2−エチルヘキシル)ベンゼン−1,4−ジアミン、N
1,N
4−ビス(2−エチルヘキシル)−N
1,N
4−ビス(4−メチルペンタン−2−イル)ベンゼン−1,4−ジアミン、N
1,N
4−ジ−sec−ブチル−N
1,N
4−ジペンチルベンゼン−1,4−ジアミン、およびこれらの組合せが挙げられる。
どんなタイプのアミンも、反応して、上記のリン酸エステルを含む含リンエステル成分上の酸性基を中和するであろう。
アミン塩の量
潤滑剤組成物中の実質的に硫黄を含まないアルキルホスフェートアミン塩の量は、0.1から5重量パーセントであってもよい。この量は、あらゆる構造の、それらから容易に計算できる、ホスフェートアミン塩(複数可)の総量を指す。アルキルホスフェートアミン塩の代替量は、0.2から3重量パーセント、または0.2から1.2重量パーセント、または0.5から2重量パーセント、または0.6から1.7重量パーセント、または0.6から1.5重量パーセント、または0.7から1.2重量パーセントであってもよい。この量は、潤滑剤調合物に、200から3000ppm(重量百万分率)、または400から2000ppm、または600から1500ppm、または700から1100ppm、または1100から1800ppmの量でリンを提供するのに適し得る。
他の成分
清浄剤
本明細書に記載の潤滑剤調合物は、任意選択で過塩基化されていてもよい、アルカリ土類金属清浄剤を任意選択で含有してもよい。過塩基化されている場合、清浄剤は、過塩基性または超塩基性塩と称される場合もある。これらは、一般的に、金属と清浄剤アニオンの化学量論に従って、中和のために存在するであろう金属含量が過剰である均一ニュートン系である。過剰な金属量は、通常、金属比、すなわち、金属の総当量対酸性有機化合物の当量の比について表現される。過塩基性材料は、酸性材料(例えば、二酸化炭素)を酸性有機化合物、不活性反応媒体(例えば、鉱油)、化学量論的に過剰な金属塩基、およびフェノールまたはアルコールなどのプロモーターと反応させることによって調製することができる。酸性有機材料は、普通は、油溶性をもたらすのに十分な数の炭素原子を有するであろう。
過塩基性清浄剤は、試料1グラム当たりのKOHのmgとして表現される、材料の塩基度をすべて中和するのに必要な強酸の量である、全塩基価(TBN、ASTM D2896)によって特徴付けることができる。過塩基性清浄剤は、通常、希釈油を含有する形態で提供されるため、この文書の目的として、TBNは、油ではない清浄剤(供給された状態の)の分数で割ることによって、油不含基準に再計算されるべきである。一部の有用な清浄剤は、100から800、または150から750、または、400から700のTBNを有してもよい。
塩基性金属塩を作製するのに有用な金属化合物は、一般的に、任意の1族または2族の金属化合物であるが(CASバージョンの元素周期表)、本開示の技術は、典型的には、Mg、Ca、またはBaなどのアルカリ土類、典型的には、MgまたはCaを使用し、カルシウムを使用することが多い。塩のアニオン部分は、ヒドロキシド、オキシド、カーボネート、ボレート、またはニトレートであり得る。
一実施形態では、潤滑剤は、過塩基性スルホネート清浄剤を含有することができる。適切なスルホン酸として、単核または多核芳香族または脂環式化合物を含むスルホン酸およびチオスルホン酸が挙げられる。ある特定の油溶性スルホネートは、R13−T−(SO3 −)aまたはR14−(SO3 −)b(式中、aおよびbは、それぞれ、少なくとも1つであり;Tは、ベンゼンまたはトルエンなどの環式核であり;R13は、アルキル、アルケニル、アルコキシ、またはアルコキシアルキルなどの脂肪族基であり;(R13)−Tは、典型的には、合計して少なくとも15個の炭素原子を含有し;R14は、典型的には、少なくとも15個の炭素原子を含有する脂肪族ヒドロカルビル基である)で表すことができる。T、R13、およびR14基は、他の無機または有機置換基を含有することもできる。一実施形態では、スルホネート清浄剤は、米国特許出願第2005065045号の[0026]から[0037]段落に記載の少なくとも8の金属比を有する、主に直鎖状のアルキルベンゼンスルホネート清浄剤であってもよい。一部の実施形態では、直鎖状アルキル基は、アルキル基の直鎖に沿ったいずれかであるが、しばしば直鎖の2、3または4位、一部の場合には主に2位のベンゼン環に結合していてもよい。
別の過塩基性材料は、過塩基性フェネート清浄剤である。フェネート清浄剤を作製するのに有用なフェノールは、(R15)a−Ar−(OH)b(式中、R15は、4から400または6から80または6から30または8から25または8から15個の炭素原子の脂肪族ヒドロカルビル基であり;Arは、ベンゼン、トルエンまたはナフタレンなどの芳香族基であり;aおよびbは、それぞれ少なくとも1つであり、aおよびbの合計は、最大、Arの芳香族核上の置き換え可能な水素数、例えば、1から4または1から2である)によって表すことができる。典型的には、各フェノール化合物のR15基によって提供される、平均して少なくとも8個の脂肪族炭素原子が存在する。フェネート清浄剤は、硫黄架橋種として提供されることも多い。
一実施形態では、過塩基性材料は、過塩基性サリゲニン清浄剤であってもよい。このようなサリゲニン誘導体の一般例は、式
(式中、Xは、−CHOまたは−CH
2OHであり、Yは、−CH
2−または−CH
2OCH
2−であり、−CHO基は、典型的には、少なくとも10モルパーセントのXおよびY基を含み;Mは、水素、アンモニウム、または金属イオンの原子価(すなわち、Mが多価である場合、原子価のうちの1つは例示した構造によって満たされ、他の原子価はアニオンなどの他の種によってまたは同じ構造の別の例によって満たされる)であり、R
1は、1から60個の炭素原子のヒドロカルビル基であり、mは、0から、典型的には、10までであり、各pは、独立して、0、1、2、または3であり、但し、少なくとも1つの芳香族環は、R
1置換基を含有し、すべてのR
1基における炭素原子の総数が少なくとも7であることを条件とする)で表すことができる。mが1またはそれより大きい場合、X基のうちの1つは水素であり得る。サリゲニン清浄剤については、米国特許第6,310,009号により詳細に開示されており、その合成方法(8欄および実施例1)とXおよびYの種々の種についての好ましい量(6欄)に対する特別な言及を有する。
サリキサレート(salixarate)清浄剤は、式(IX)または式(X)の少なくとも1つの単位を含む化合物(この化合物の各終端は、式(XI)または(XII)の末端基を有する)によって表すことができる過塩基性材料であり:
このような基は、同一であっても異なっていてもよい二価の架橋基Aによって連結している。式(IX)〜(XII)において、R
3は水素、ヒドロカルビル基、または金属イオンの原子価であり;R
2は、水酸基またはヒドロカルビル基であり、jは、0、1、または2であり;R
6は、水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基であり;いずれかのR
4は、ヒドロキシルであり、R
5およびR
7は、独立して、水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基のいずれかであるか、または、他には、R
5およびR
7は、両方ヒドロキシルであり、R
4は、水素、ヒドロカルビル基、またはヘテロ置換ヒドロカルビル基であり;但し、R
4、R
5、R
6およびR
7のうちの少なくとも1つは、少なくとも8個の炭素原子を含有するヒドロカルビルであることを条件とし;ここで、分子は、平均して、単位(IX)または(XI)の少なくとも1つおよび単位(X)または(XII)の少なくとも1つを含有し、単位(IX)および(XI)の総数対単位(X)および(XII)の総数の比が0.1:1から2:1である。出現するごとに同一であっても異なっていてもよい二価の架橋基「A」は、−CH
2−および−CH
2OCH
2−を含み、そのいずれかは、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドの同等物(例えば、パラホルム、ホルマリン)に由来してもよい。サリキサレート誘導体およびそれらの調製方法は、米国特許第6,200,936号およびPCT公報WO01/56968号により詳細に記載されている。サリキサレート誘導体は、大環状ではなく、主に直鎖状である構造を有すると考えられているが、いずれの構造も、用語「サリキサレート」に包含されるものとする。
同様に、グリオキシレート清浄剤は、一実施形態では、構造
(式中、各Rは、独立して、少なくとも4または8個の炭素原子を含有するアルキル基であり、但し、このようなR基のすべてにおける炭素原子の総数は、少なくとも12または16または24個であることを条件とする)を有してもよいアニオン基をベースとする過塩基性材料である。あるいは、各Rは、オレフィンポリマー置換基であり得る。過塩基性グリオキシル酸清浄剤およびその調製方法は、米国特許第6,310,011号およびその中で引用される参照文献により詳細に開示される。
過塩基性清浄剤は、過塩基性サリチレート、例えば、置換サリチル酸のカルシウム塩でもあり得る。サリチル酸は、ヒドロカルビル置換されていてもよく、ここで、各置換基は、置換基当たり平均して少なくとも8個の炭素原子および分子当たり1から3個の置換基を含有する。置換基は、ポリアルケン置換基であり得る。一実施形態では、ヒドロカルビル置換基は、7から300個の炭素原子を含有し、150から2000の分子量を有するアルキル基であり得る。過塩基性サリチレート清浄剤およびその調製方法は、米国特許第4,719,023号および同第3,372,116号に開示される。
他の過塩基性清浄剤は、米国特許第6,569,818号に開示されるマンニッヒ塩基構造を有する過塩基性清浄剤を含むことができる。
ある特定の実施形態では、上記清浄剤(例えば、フェネート、サリゲニン、サリキサレート、グリオキシレート、またはサリチレート)のヒドロキシ置換芳香族環上のヒドロカルビル置換基は、C12脂肪族ヒドロカルビル基を含まないかまたは実質的に含まない(例えば、置換基の重量の1%、0.1%、または0.01%未満がC12脂肪族ヒドロカルビル基である)。一部の実施形態では、このようなヒドロカルビル置換基は、少なくとも14または少なくとも18個の炭素原子を含有する。
本発明の技術の調合物中に存在する場合、過塩基性清浄剤の量は、典型的には、油不含基準で少なくとも0.1重量パーセント、例えば、0.2から3または0.25から2、または0.3から1.5重量パーセント、あるいは、少なくとも0.6重量パーセント、例えば、0.7から5重量パーセントまたは1から3重量パーセントである。代わりに表現すると、清浄剤は、0から500、または0から100、または1から50ppm(重量百万分率)のアルカリ土類金属を提供するのに十分な量で存在してもよい。単一の清浄剤または複数の清浄剤のいずれかが存在し得る。
粘度調整剤
任意選択で存在してもよい別の材料は、粘度調整剤である。粘度調整剤(VM)および分散粘度調整剤(dispersant viscosity modifiers)(DVM)は周知である。VMおよびDVMの例として、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリオレフィン、水素化ビニル芳香族ジエンコポリマー(例えば、スチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン)、スチレン−マレイン酸エステルコポリマー、およびホモポリマー、コポリマー、およびグラフトコポリマーを含む同様のポリマー物質(直鎖状、分枝状、または星状構造を有するポリマーを含む)を挙げることができる。DVMは、窒素含有メタクリレートポリマーまたは窒素含有オレフィンポリマー、例えば、メチルメタクリレートおよびジメチルアミノプロピルアミンに由来する窒素含有メタクリレートポリマーを含んでもよい。DVMは、あるいは、分枝状第一級アルコールで部分的にエステル化され、アミン含有化合物と部分的に反応した、αオレフィンに由来する単位とカルボン酸または無水物、例えば、マレイン酸無水物に由来する単位とを有するコポリマーを含む。
市販のVM、DVMおよびそれらの化学的タイプは、以下のものを含んでもよい:ポリイソブチレン(例えば、BP AmocoからのIndopol(商標)またはExxonMobilからのParapol(商標));オレフィンコポリマー(例えば、LubrizolからのLubrizol(登録商標)7060、7065、および7067、ならびにLucant(登録商標)HC−2000L、HC−1100、およびHC−600);水素化スチレン−ジエンコポリマー(例えば、ShellからのShellvis(商標)40および50、ならびにLubrizolからのLZ(登録商標)7308、および7318);分散剤コポリマーであるスチレン/マレエートコポリマー(例えば、LubrizolからのLZ(登録商標)3702および3715);その一部が分散性を有するポリメタクリレート(例えば、RohMaxからのViscoplex(商標)シリーズ、AftonからのHitec(商標)シリーズの粘度指数改良剤、ならびにLubrizolからのLZ(登録商標)7702、LZ(登録商標)7727、LZ(登録商標)7725およびLZ(登録商標)7720C);オレフィン−グラフト−ポリメタクリレートポリマー(例えば、RohMaxからのViscoplex(商標)2−500および2−600);ならびに水素化ポリイソプレン星状ポリマー(例えば、ShellからのShellvis(商標)200および260)。使用してもよい粘度調整剤は、米国特許第5,157,088号、同第5,256,752号および同第5,395,539号に記載されている。VMおよび/またはDVMは、適用に応じて、50重量%までまたは20重量%までの濃度で、機能液中で使用されてもよい。1から20重量%、または1から12重量%、または3から10重量%、あるいは20から40重量%、または20から30重量%の濃度が使用されてもよい。
分散剤
任意選択で存在してもよい別の材料は、分散剤である。分散剤は、潤滑剤の分野で周知であり、主に、無灰分散剤およびポリマー分散剤として公知のものを含む。無灰分散剤は、供給された際に、それらが金属を含有せず、したがって、通常、潤滑剤に添加された場合に硫酸塩灰分に寄与しないことを理由とする通称である。しかし、それらは、もちろん、金属含有種を含む潤滑剤に添加されると、周囲の金属と相互作用してもよい。無灰分散剤は、相対的に高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基によって特徴付けられる。典型的な無灰分散剤として、典型的に
(式中、各R
1は、独立して、アルキル基であり、ポリイソブチレン前駆体に基づく分子量(M
n)500〜5000のポリイソブチレン基であることが多く、R
2は、アルキレン基であり、通常、エチレン(C
2H
4)基である)を含む様々な化学構造を有するN−置換長鎖アルケニルスクシンイミドが挙げられる。このような分子は、通常、アルケニルアシル化剤のポリアミンとの反応に由来し、上記に示した単純なイミド構造と比べて、様々なアミドと第四級アンモニウム塩とを含む、2つの部分間の幅広い種類の連結が可能である。上記構造では、アミン部分はアルキレンポリアミンとして示されるが、他の脂肪族および芳香族モノおよびポリアミンが使用されてもよい。また、種々の環状連結を含む、イミド構造上の様々な形式のR
1基の連結が可能である。アシル化剤のカルボニル基対アミンの窒素原子の比は、1:0.5から1:3、他の場合には、1:1から1:2.75または1:1.5から1:2.5であってもよい。スクシンイミド分散剤は、米国特許第4,234,435号および同第3,172,892号ならびにEP0355895により十分に記載されている。
無灰分散剤の別の分類は、高分子量エステルである。これらの材料は、これらが、ヒドロカルビルアシル化剤とグリセロール、ペンタエリスリトール、またはソルビトールなどの多価脂肪族アルコールの反応によって調製されたと考えられ得ることを除いて、上述のスクシンイミドと類似する。このような材料は、米国特許第3,381,022号により詳細に記載されている。
無灰分散剤の別の分類は、マンニッヒ塩基である。これらは、高分子量アルキル置換フェノール、アルキレンポリアミン、およびホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合によって形成される材料である。これらは、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
本明細書で使用する場合、用語「縮合生成物」は、縮合反応が実際に行われて生成物が直接もたらされたかどうかにかかわらず、酸または酸の反応性同等物(例えば、酸ハロゲン化物、無水物、またはエステル)とアルコールまたはアミンの縮合反応によって調製された可能性のあるエステル、アミド、イミドおよび他のこのような材料を包含することを意図する。したがって、例えば、特定のエステルは、縮合反応によって直接というよりは、エステル交換反応によって調製されていてもよい。得られた生成物は、依然として、縮合生成物とみなされる。
他の分散剤として、極性官能基を含有してポリマーに分散特性を付与する炭化水素ベースのポリマーである、ポリマー性分散剤添加剤が挙げられる。
分散剤は、任意の様々な作用物質による反応によって後処理することもできる。中でも、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物、およびリン化合物が挙げられる。このような処理を詳述する参照文献は、米国特許第4,654,403号に列挙されている。
本技術の完全に調合した潤滑剤中の分散剤の量は、潤滑剤組成物の少なくとも0.1重量%、または少なくとも0.3重量%または0.5重量%または1重量%、ある特定の実施形態では、最大9重量%または8重量%または6重量%または4重量%または重量3%または2重量%であってもよい。
極圧剤
任意選択で存在してもよい別の材料は、極圧剤である。一実施形態では、極圧剤は、硫黄含有化合物である。一実施形態では、硫黄含有化合物は、硫化オレフィン、ポリスルフィド、またはこれらの混合物である。
硫化オレフィンの例として、プロピレン、イソブチレン、ペンテン、ベンジルジスルフィド;ビス−(シクロベンジル)ジスルフィド;ジブチルテトラスルフィド;ジ−第三級ブチルポリスルフィド;およびオレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、硫化ディールスアルダー付加物、アルキルスルフェニルN’N−ジアルキルジチオカルバメート;またはこれらの混合物を含む有機スルフィドおよび/またはポリスルフィドに由来するオレフィンが挙げられる。一実施形態では、硫化オレフィンとして、プロピレン、イソブチレン、ペンテンまたはこれらの混合物に由来するオレフィンが挙げられる。
一実施形態では、極圧剤は、ジメルカプトチアジアゾール、またはこれらの混合物を含む硫黄含有化合物である。ジメルカプトチアジアゾールの例として、2,5ジメルカプト1,3 4チアジアゾールまたはヒドロカルビル−置換2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾール、またはこれらのオリゴマーが挙げられる。ヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾールのオリゴマーは、典型的には、2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾール単位の間の硫黄−硫黄結合を形成して、前記チアジアゾール単位の2つまたはそれより多くのオリゴマーを形成することによって形成される。適切な2,5ジメルカプト1,3 4チアジアゾール化合物として、2,5−ビス(tert−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールまたは2−tert−ノニルジチオ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールが挙げられる。
ヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾールのヒドロカルビル置換基の炭素原子数として、典型的には、約1から約30、または約2から約20、または約3から約16個が挙げられる。
異なる実施形態では、極圧剤は、潤滑組成物の総重量を基準として、0.01から8wt%、または0.1から6wt%、または0.01から0.5wt%、または0.2から0.8wt%、または0.9、または1から2、または3.5または5wt%を含む範囲内で、潤滑組成物中に存在してもよい。
他の従来の成分が含まれてもよい。例として、当業者に周知である摩擦調整剤が挙げられる。使用されてもよい摩擦調整剤のリストは、米国特許第4,792,410号、同第5,395,539号、同第5,484,543号および同第6,660,695号に含まれる。米国特許第5,110,488号は、摩擦調整剤として有用な脂肪酸の金属塩、特に亜鉛塩を開示する。使用されてもよい補足の摩擦調整剤のリストは以下を含む。
存在する場合、摩擦調整剤の量は、0.05から5重量パーセント、または0.1から2重量パーセント、または0.1から1.5重量パーセント、または0.15から1重量パーセント、または0.15から0.6重量パーセントであってもよい。
別の任意選択の成分は、抗酸化剤であってもよい。抗酸化剤は、フェノール環の1つまたは両方のオルト位がt−ブチルなどの大きな基に占められている、ヒンダードフェノール系抗酸化剤であってもよいフェノール系抗酸化剤を包含する。パラ位は、ヒドロカルビル基または2つの芳香族環を架橋する基に占められていてもよい。ある特定の実施形態では、パラ位は、例えば、式
(式中、R
3は、例えば、1から18または2から12または2から8または2から6個の炭素原子を含有するアルキル基などのヒドロカルビル基であり;t−アルキルは、t−ブチルであり得る)の抗酸化剤などのエステル含有基によって占められている。このような抗酸化剤は、米国特許第6,559,105号により詳細に記載されている。
抗酸化剤は、芳香族アミンも含む。一実施形態では、芳香族アミン抗酸化剤は、ノニル化ジフェニルアミンなどのアルキル化ジフェニルアミンまたはジノニル化ジフェニルアミンとモノノニル化ジフェニルアミンの混合物を含むことができる。芳香族アミンが上述のリン化合物の成分として使用される場合、それ自体がいくらかの抗酸化活性を付与するため、任意のさらなる抗酸化剤の量は、適宜、低減されるかまたはさらには除去されてもよい。
抗酸化剤として、モノもしくはジスルフィドまたはこれらの混合物などの硫化オレフィンも挙げられる。これらの材料は、一般的に、硫黄原子1から10個、例えば、1から4個、または1もしくは2個のスルフィド結合を有する。硫化されて本発明の硫化有機組成物を形成することができる材料として、油、脂肪酸およびエステル、オレフィンおよびそれから作製されるポリオレフィン、テルペン、またはディールスアルダー付加物が挙げられる。いくつかのこのような硫化材料の調製方法の詳細は、米国特許第3,471,404号および同第4,191,659号に見出すことができる。
モリブデン化合物は、抗酸化剤としての機能を果たすこともでき、これらの材料は、種々の他の機能、例えば、抗摩耗剤または摩擦調整剤においても機能を果たすことができる。米国特許第4,285,822号は、極性溶剤、酸性モリブデン化合物および油溶性塩基性窒素化合物を組み合わせてモリブデン含有錯体を形成し、この錯体を二硫化炭素と接触させてモリブデンおよび硫黄含有組成物を形成することによって調製したモリブデンおよび硫黄含有組成物を含有する潤滑油組成物を開示する。
抗酸化剤の典型的な量は、当然、特定の抗酸化剤とその個々の有効性によって変わるが、例示的総量は、0から5重量パーセント、または0.01から5重量パーセント、または0.15から4.5パーセント、または0.2から4パーセント、または0.2から1パーセントまたは0,2から0.7パーセントであり得る。
別の任意選択の添加剤は抗摩耗剤である。抗摩耗剤の例として、上述のものに加えて、リン含有抗摩耗/極圧剤;例えば、金属含有または非金属チオリン酸、リン酸エステルおよびその塩、例えば、アミン塩、リン含有カルボン酸、エステル、エーテル、ならびにアミド;ホスホネート;およびホスファイトが挙げられる。ある特定の実施形態では、このようなリン抗摩耗剤は、0.001から2パーセントのリン、または0.015から1.5、または0.02から1、または0.1から0.7、または0.01から0.2、または0.015から0.15、または0.02から0.1、または0.025から0.08パーセントのリンを送達する量で存在してもよい。一部の適用で使用される材料は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDP)であってもよい。非リン含有抗摩耗剤として、ホウ酸エステル(ホウ素化(borated)エポキシドを含む)、ジチオカルバメート化合物、モリブデン含有化合物、および硫化オレフィンが挙げられる。
存在してもよい他の材料として、酒石酸エステル、酒石酸アミド(tartramide)、および酒石酸イミド(tartrimide)が挙げられる。例として、オレイル酒石酸イミド(オレイルアミンと酒石酸から形成されたイミド)およびオレイルジエステル(例えば、混合C12〜16アルコール由来)が挙げられる。有用であり得る他の関連する材料として、ヒドロキシ−ポリカルボン酸、例えば、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシグルタル酸、およびこれらの混合物などの酸を含む他のヒドロキシ−カルボン酸のエルテル、アミド、およびイミドが一般的に挙げられる。これらの材料は、抗摩耗性能の他に潤滑剤にさらなる機能性も付与することができる。これらの材料は、米国特許出願公開第2006−0079413号およびPCT公報WO2010/077630にさらに詳細に記載されている。存在する場合、ヒドロキシ−カルボン酸のこのような誘導体(またはヒドロキシ−カルボン酸に由来する化合物)は、典型的には、0.01から5重量%、または0.05から5もしくは0.1重量%から5重量%、または0.1から1.0重量パーセント、または0.1から0.5重量パーセント、または0.2から3重量%、または0.2重量%超から3重量%の量で、潤滑組成物中に存在してもよい。
従来の量で、潤滑油中で任意選択で使用されてもよい他の添加剤として、流動点降下剤、極圧剤、色安定剤および消泡剤が挙げられる。
方法および適用
本開示の技術は、機械部品を潤滑する方法であって、機械部品に本明細書に記載の潤滑剤調合物を供給することを含む方法を提供する。
一実施形態では、部品は、少なくとも1つのトランスミッション、マニュアルトランスミッション、ギア、ギアボックス、アクセルギア、オートマチックトランスミッション、デュアルクラッチトランスミッション、またはこれらの組合せを含む駆動系部品である。別の実施形態では、トランスミッションは、オートマチックトランスミッションまたはデュアルクラッチトランスミッション(DCT)であってもよい。追加の例示的オートマチックトランスミッションとして、これらに限定されないが、連続可変トランスミッション(CVT)、無限可変トランスミッション(IVT)、トロイダルトランスミッション、連続スリップトルク変換クラッチ(CSTCC)、およびステップオートマチックトランスミッションが挙げられる。
あるいは、トランスミッションは、マニュアルトランスミッション(MT)またはギアであってもよい。さらなる別の実施形態では、部品は、湿式ブレーキ、トランスミッション、油圧、ファイナルドライブ、パワーテイクオフシステム、またはこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む農用トラクターまたはオフハイウェイ自動車の部品であってもよい。
異なる実施形態では、潤滑組成物は、表1に記載の組成物を有してもよい。以下の表1に示す重量パーセント(wt%)は、活性物質ベースである(on an actives basis)。
記載された各化学成分量は、他に指定されていなければ、市販材料中、すなわち、活性化学物質基準で慣習的に存在する可能性のある任意の溶剤または希釈油を除いて表される。しかし、他に指定されていなければ、本明細書で言及される各化学物質または組成物は、異性体、副産物、誘導体、および市販のグレード中に通常存在することが理解される他のこのような材料を含有してもよい市販グレードの材料であると解釈されるべきである。
リン−アミン塩は、工業的潤滑剤組成物、例えば、グリース、金属加工流体、工業的ギア潤滑剤、油圧油、タービン油、循環油、または冷却材中で使用されてもよい。このような潤滑剤組成物は、当技術分野で周知である。
金属加工流体
一実施形態では、潤滑剤組成物は、金属加工流体である。典型的な金属加工流体の適用として、金属除去、金属成形、金属処理および金属保護を挙げることができる。一部の実施形態では、金属加工油剤は、米国石油協会(American Petroleum Institute)によって定義されたグループI、グループIIまたはグループIIIベースストックであってもよい。一部の実施形態では、金属加工油剤は、グループIVまたはグループVベースストックと混合されてもよい。一実施形態では、潤滑剤組成物は、本明細書に記載のリン−アミン塩の0.01wt%から15wt%、または0.5wt%から10wt%または1から8wt%を含有する。
一部の実施形態では、機能的流体組成物は、油を含む。油は、ほとんどの液体炭化水素、例えば、パラフィン系、オレフィン系、ナフテン系、芳香族の、飽和または不飽和炭化水素を含んでもよい。一般的に、油は、水非混和性、乳化性炭化水素であり、一部の実施形態では、油は、室温で液体である。天然および合成油ならびにそれらの混合物を含む様々な供給源由来の油を使用してもよい。
天然油として、動物油および植物油(例えば、ダイズ油、ラード油)ならびにパラフィン系、ナフテン系、またはパラフィン−ナフテン混合系の溶剤精製または酸精製鉱油が挙げられる。石炭または泥板岩由来の油も有用である。合成油として、ポリマー化およびインターポリマー化オレフィン、例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン;アルキルベンゼン、例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、またはジ(2−エチルヘキシル)ベンゼンなどの炭化水素油およびハロ置換炭化水素油が挙げられる。
使用してもよい合成油の別の適切な分類は、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノレイン酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸など)の様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール、ペンタエリスリトールなど)とのエステルを含む。これらのエステルの具体例として、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、または1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸と反応させることによって形成した複雑なエステルが挙げられる。
合成油として有用なエステルとして、C5からC12モノカルボン酸およびポリオール、ならびにポリオールエーテル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどから作製されたものも挙げられる。
本明細書の上記に開示したタイプの未精製油、精製油および再精製油(およびそれぞれ互いとの混合物)を使用してもよい。未精製油は、さらに精製処理することなく、天然または合成源から直接得られたものである。例えば、レトルト操作から直接得た泥板岩油、蒸留から直接得た石油またはエステル化プロセスから直接得て、さらに処理せずに使用したエステル油が、未精製油となる。精製油は、それらが1つまたはそれより多い特性を改良するために1つまたはそれより多い精製ステップでさらに処理された以外は未精製油と同様である。多くのこのような精製技術、例えば、溶剤抽出、蒸留、酸または塩基抽出、濾過およびパーコレーションなどが当業者に公知である。再精製油は、既に商用されている精製油に適用される精製油を得るのに使用されるプロセスと同様のプロセスにより得られる。このような再精製油は、再生油または再加工油としても公知であり、使用済み添加剤および油分解生成物の除去を対象とする技術によりさらに加工されることが多い。
一部の実施形態では、油は、米国石油協会によって定義されたグループIIまたはグループIIIのベースストックである。任意選択の追加の材料は、本発明の組成物に組み込まれてもよい。典型的な最終組成物は、脂肪酸およびワックスなどの潤滑化剤、抗摩耗剤、分散剤、腐食阻害剤、通常および過塩基性清浄剤、抗乳化剤、殺生物剤、金属不活性化剤、またはこれらの混合物を含んでもよい。
本発明は、1つまたは複数の追加の添加剤と組み合わせて使用してもよく、任意選択で、溶剤または希釈液、例えば、上述のオイルのうちの1種または複数種を含んでもよい添加剤として、上述の化合物を含む潤滑剤組成物を提供することができる。この組成物は、添加剤パッケージまたは界面活性剤パッケージと称される場合もある。
例のワックスとして、石油、合成ワックス、および天然ワックス、酸化ワックス、微結晶ワックス、羊毛グリース(ラノリン)および他のワックス状エステル、ならびにこれらの混合物が挙げられる。石油ワックスは、いくつかの精製プロセスを介して原油から単離されたパラフィン系化合物、例えば、スラックワックスまたはパラフィンワックスである。合成ワックスは、石油化学、例えば、エチレンおよびプロピレンに由来するワックスである。合成ワックスとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン−プロピレンコポリマーが挙げられる。天然ワックスは、植物および/または動物または昆虫によって生成されるワックスである。これらのワックスとして、蜜ロウ、ソイワックスおよびカルナウバワックスが挙げられる。昆虫および動物性ワックスとして、蜜ロウ、または鯨ロウが挙げられる。ワセリンおよび酸化ワセリンをこれらの組成物中で使用してもよい。ワセリンおよび酸化ワセリンは、それぞれ、石油およびそれらの酸化生成物に由来する半固体炭化水素の精製混合物として定義され得る。微結晶ワックスは、ワセリンから精製したより高い融点のワックスとして定義され得る。ワックス(複数可)は、0.1wt%から75wt%、例えば、0.1wt%から50wt%で、金属加工組成物中に存在してもよい。
本発明において有用な脂肪酸として、8から35個の炭素原子、一実施形態では、16から24個の炭素原子のモノカルボン酸が挙げられる。このようなモノカルボン酸の例として、不飽和脂肪酸、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸;α−リノール酸;アラキドン酸;エイコサペンタエノン酸;エルカ酸、ドコサヘキサエン酸;および飽和脂肪酸、例えば、カプリル酸;カプリン酸;ラウリン酸、ミリスチン酸;パルミチン酸;ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸;リグノセリン酸、セロチン酸、イソステアリン酸、ガドレイン酸、トール油脂肪酸、またはこれらの組合せが挙げられる。これらの酸は、飽和、不飽和であってもよく、または、他の官能基、例えば、ヒドロカルビル主鎖由来の12−ヒドロキシステアリン酸におけるように、水酸基を有してもよい。他の例のカルボン酸は、米国特許第7,435,707号に記載されている。脂肪酸(複数可)は、0.1wt%から50wt%、または0.1wt%から25wt%、または0.1wt%から10wt%で、金属加工組成物中に存在してもよい。
例示的過塩基性清浄剤として、過塩基性金属スルホネート、過塩基性金属フェネート、過塩基性金属サリチレート、過塩基性金属サリジネート、過塩基性金属カルボキシレート、または過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤が挙げられる。過塩基性清浄剤は、Mg、Ba、Sr、Zn、Na、Ca、K、およびこれらの混合物などの金属を含有する。過塩基性清浄剤は、金属および金属と反応する特定の酸性有機化合物、例えば、スルホン酸の化学量論に従って存在するであろう金属含量が過剰であることによって特徴付けられる金属塩または錯体である。
用語「金属比」は、2つの反応物の化学反応性および化学量論によって、過塩基化される有機材料(例えば、スルホン酸またはカルボン酸)と清浄剤を形成するために使用される金属含有反応物(例えば、水酸化カルシウム、酸化バリウムなど)の間の反応で得られることが期待される生成物中の化学当量の金属に対する過塩基性材料(例えば、金属スルホネートまたはカルボキシレート)中の金属の化学当量の合計の比を示すために、本明細書において使用される。したがって、通常のカルシウムスルホネートでは金属比が1である一方、過塩基性スルホネートでは金属比は4.5である。このような清浄剤の例は、例えば、米国特許第2,616,904号;同第2,695,910号;同第2,767,164号;同第2,767,209号;同第2,798,852号;同第2,959,551号;同第3,147,232号;同第3,274,135号;同第4,729,791号;同第5,484,542号および同第8,022,021号に記載されている。過塩基性清浄剤は、単独または組み合わせて使用してもよい。過塩基性清浄剤は、組成物の0.1wt%から20%;例えば、少なくとも1wt%または最大10wt%の範囲で存在してもよい。
例示的界面活性剤として、非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、例えば、エトキシル化アルキルフェノールおよびエトキシル化脂肪族アルコール、脂肪酸、樹脂酸およびトール油酸のポリエチレングリコールエステル、ならびに脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、または陰イオン性界面活性剤、例えば、直鎖状アルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルホネート、アルキルエーテルホスホネート、エーテルスルフェート、スルホサクシネート、およびエーテルカルボキシレートが挙げられる。界面活性剤(複数可)は、0.0001wt%から10wt%、または0.0001wt%から2.5wt%で、金属加工組成物中に存在してもよい。
本発明において有用な抗乳化剤として、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンアルコールオキシド(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマー、ポリオキシアルキレンアルコール、エチレンオキシドまたは置換エチレンオキシド混合物と順次反応するアルキルアミン、アミノアルコール、ジアミンまたはポリアミン、トリアルキルホスフェート、およびこれらの組合せが挙げられる。抗乳化剤(複数可)は、0.0001wt%から10wt%、例えば、0.0001wt%から2.5wt%で、腐食阻害組成物中に存在してもよい。
潤滑剤組成物は、腐食阻害剤を含んでもよく、腐食阻害剤として、チアゾール、トリアゾールおよびチアジアゾールが挙げられる。例として、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−ヒドロカルビルチオ−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−ヒドロカルビルジチオ−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ヒドロカルビルチオ)−1,3,4−チアジアゾール、および2,5−ビス−(ヒドロカルビルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールが挙げられる。他の適切な腐食阻害剤として、エーテルアミン;エトキシル化アミン、エトキシル化フェノール、およびエトキシル化アルコールなどのポリエトキシル化化合物;イミダゾリンが挙げられる。他の適切な腐食阻害剤として、アルケニル基が10個またはそれより多い炭素原子を含有するアルケニルコハク酸、例えば、テトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸;分子量の範囲が600から3000の長鎖アルファ、オメガ−ジカルボン酸;および他の類似する材料が挙げられる。このような阻害剤の他の非限定的な例は、米国特許第3,873,465号、同第3,932,303号、同第4,066,398号、同第4,402,907号、同第4,971,724号、同第5,055,230号、同第5,275,744号、同第5,531,934号、同第5,611,991号、同第5,616,544号、同第5,744,069号、同第5,750,070号、同第5,779,938号、および同第5,785,896号;Corrosion Inhibitors、C. C. Nathan編、NACE、1973年;I. L. Rozenfeld、Corrosion Inhibitors、McGraw-Hill、1981年;Metals Handbook、第9版、第13巻−Corrosion、478497頁;Corrosion Inhibitors for Corrosion Control、B. G. Clubley編、The Royal Society of Chemistry、1990年;Corrosion Inhibitors、European Federation of Corrosion Publications第11巻、The Institute of Materials、1994年;Corrosion、第2巻−Corrosion Control、L. L. Sheir、R. A. Jarman、およびG. T. Burstein編、Butterworth-Heinemann、1994年、17:10〜17:39頁;Y. I. Kuznetsov、Organic Inhibitors of Corrosion of Metals、Plenum、1996年;およびV. S. Sastri、Corrosion Inhibitors: Principles and Applications、Wiley、1998年に見出すことができる。腐食阻害剤(複数可)は、0.0001wt%から5wt%、例えば、0.0001wt%から3wt%で、金属加工組成物中に存在してもよい。
組成物中に含まれてもよい分散剤として、油溶性ポリマー炭化水素骨格を有し、分散される粒子と会合することができる官能基を有するものが挙げられる。ポリマー炭化水素骨格は、750から1500ダルトンの範囲の重量平均分子量を有してもよい。例示的官能基として、しばしば架橋基を介して、ポリマー骨格に結合するアミン、アルコール、アミド、およびエステル極性部分が挙げられる。例の分散剤として、米国特許第3,697,574号および同第3,736,357号に記載されているマンニッヒ分散剤;米国特許第4,234,435号および同第4,636,322号に記載されている無灰スクシンイミド分散剤;米国特許第3,219,666号、同第3,565,804号、および同第5,633,326号に記載されているアミン分散剤;米国特許第5,936,041号、同第5,643,859号、および同第5,627,259号に記載されているコッホ(Koch)分散剤、ならびに米国特許第5,851,965号、同第5,853,434号、および同第5,792,729号に記載されているポリアルキレンスクシンイミド分散剤が挙げられる。分散剤(複数可)は、0.0001wt%から10wt%、例えば、0.0005wt%から2.5wt%で、金属加工組成物中に存在してもよい。
一実施形態では、本明細書に開示される金属加工組成物は、本発明の化合物の他に少なくとも1種の追加の摩擦調整剤を含有してもよい。追加の摩擦調整剤は、金属加工組成物の0wt%から6wt%、または0.01wt%から4wt%、または0.05wt%から2wt%、または0.1wt%から2wt%で存在してもよい。
本明細書で使用される場合、摩擦調整剤に関する用語「脂肪アルキル」または「脂肪」は、10から22個の炭素原子を有する炭素鎖、典型的には、直鎖状炭素鎖を意味する。あるいは、脂肪アルキルは、典型的には、β位で分枝している、モノ分枝状アルキル基であってもよい。モノ分枝状アルキル基の例として、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチルまたは2−オクチルドデシルが挙げられる。
適切な摩擦調整剤の例として、アミン、脂肪エステル、または脂肪エポキシドの長鎖脂肪酸誘導体;カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物などの脂肪イミダゾリン;アルキルリン酸のアミン塩;脂肪ホスホネート;脂肪ホスファイト;ホウ素化リン脂質、ホウ素化脂肪エポキシド;グリセロールエステル;ホウ素化グリセロールエステル;脂肪アミン;アルコキシル化脂肪アミン;ホウ素化アルコキシル化脂肪アミン;第三級ヒドロキシ脂肪アミンを含むヒドロキシルおよびポリヒドロキシ脂肪アミン;ヒドロキシアルキルアミド;脂肪酸の金属塩;アルキルサリチレートの金属塩;脂肪オキサゾリン;脂肪エトキシル化アルコール;カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物;または、脂肪カルボン酸に由来する、グアニジン、アミノグアニジン、尿素、もしくはチオ尿素との反応生成物およびその塩が挙げられる。
摩擦調整剤は、硫化脂肪化合物およびオレフィンなどの材料、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジチオカルバメート、またはMolyvan(登録商標)855(R.T.Vanderbilt,Incから市販されている)またはSakuralube(登録商標)S−700もしくはSakuralube(登録商標)S−710(Adeka,Incから市販されている)などの他の油溶性モリブデン錯体を包含してもよい。油溶性モリブデン錯体は、摩擦の低下を助けるが、シール適合性を損なう場合がある。
一実施形態では、摩擦調整剤は、油溶性モリブデン錯体であってもよい。油溶性モリブデン錯体として、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンブルー酸化物錯体または他の油溶性モリブデン錯体またはそれらの混合物を挙げることができる。油溶性モリブデン錯体は、モリブデン酸化物および水酸化物の混合物、いわゆる「ブルー」酸化物であってもよい。モリブデンブルー酸化物は、5から6の間の平均酸化状態のモリブデンを有し、MoO2(OH)からMoO2.5(OH)0.5の混合物である。油溶性の例は、Luvodor(登録商標)MBまたはLuvador(登録商標)MBO(LehmannおよびVoss GmbHから市販されている)の商標名で公知のモリブデンブルー酸化物錯体であり、油溶性モリブデン錯体は、金属加工組成物の0wt%から5wt%、または0.1wt%から5wt%または1から3wt%で存在してもよい。
一実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであってもよい。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノエステルであってもよく、別の実施形態では長鎖脂肪酸エステルは、ヒマワリ油もしくはダイズ油などのトリグリセリドまたはポリオールと脂肪族カルボン酸のモノエステルであってもよい。
極圧剤は、硫黄および/またはリンおよび/または塩素を含有する化合物であってもよい。極圧剤の例として、ポリスルフィド、硫化オレフィン、チアジアゾール、塩素化パラフィン、過塩基性スルホネートまたはこれらの混合物が挙げられる。
チアジアゾールの例として、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、またはそのオリゴマー、ヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、ヒドロカルビルチオ置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、またはこれらのオリゴマーが挙げられる。ヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのオリゴマーは、典型的には、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール単位の間に硫黄−硫黄結合を形成して、前記チアジアゾール単位の2つまたはそれより多くのオリゴマーを形成することによって形成される。適切なチアジアゾール化合物の例として、ジメルカプトチアジアゾール、2,5−ジメルカプト−[1,3,4]−チアジアゾール、3,5−ジメルカプト−[1,2,4]−チアジアゾール、3,4−ジメルカプト−[1,2,5]−チアジアゾール、または4−5−ジメルカプト−[1,2,3]−チアジアゾールのうちの少なくとも1つが挙げられる。典型的には、容易に利用可能な材料、例えば、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールまたはヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールまたはヒドロカルビルチオ置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールが通常利用される。異なる実施形態では、ヒドロカルビル置換基上の炭素原子数として、1から30、2から25、4から20、6から16、または8から10が挙げられる。2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールは、2,5−ジオクチルジチオ−1,3,4−チアジアゾール、または2,5−ジノニルジチオ−1,3,4−チアジアゾールであってもよい。
一実施形態では、ポリスルフィド分子の少なくとも50wt%は、トリまたはテトラスルフィドの混合物である。他の実施形態では、ポリスルフィド分子の少なくとも55wt%、または少なくとも60wt%は、トリまたはテトラスルフィドの混合物である。ポリスルフィドとして、油、脂肪酸またはエステル、オレフィンまたはポリオレフィン由来の硫化有機ポリスルフィドが挙げられる。
硫化されてもよい油として、天然または合成油、例えば、鉱油、ラード油、脂肪族アルコールと脂肪酸または脂肪族カルボン酸とに由来するカルボキシレートエステル(例えば、オレイン酸ミリスチルおよびオレイン酸オレイル)、および合成不飽和エステルまたはグリセリドが挙げられる。
脂肪酸として、8から30、または12から24個の炭素原子を含有するものが挙げられる。脂肪酸の例として、オレイン油、リノレイン油、およびトール油が挙げられる。混合不飽和脂肪酸エステルから調製された硫化脂肪酸エステルは、トール油、アマニ油、ダイズ油、ナタネ油、および魚油を含む動物脂肪および植物油から得られる。
ポリスルフィドとして、広い範囲のアルケンに由来するオレフィンが挙げられる。アルケンは、典型的には、1つまたは複数の二重結合を有する。オレフィンは、一実施形態では、3から30個の炭素原子を含有する。他の実施形態では、オレフィンは、3から16、または3から9個の炭素原子を含有する。一実施形態では、硫化オレフィンとして、プロピレン、イソブチレン、ペンテンまたはこれらの混合物に由来するオレフィンが挙げられる。一実施形態では、ポリスルフィドは、公知の技術によって、上記のオレフィンを重合させることに由来するポリオレフィンを含む。
一実施形態では、ポリスルフィドとして、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化ジシクロペンタジエン、硫化テルペン、および硫化ディールスアルダー付加物が挙げられる。
塩素化パラフィンは、長鎖塩素化パラフィン(C20+および中鎖塩素化パラフィン(C14〜C17)の両方を含んでもよい。例として、Dover ChemicalからのChoroflo、ParoilおよびChlorowax製品が挙げられる。
過塩基性スルホネートについて上記で議論された。過塩基性スルホネートの例として、Lubrizol(登録商標)5283C、Lubrizol(登録商標)5318A、Lubrizol(登録商標)5347LCおよびLubrizol(登録商標)5358が挙げられる。極圧剤は、金属加工組成物の0wt%から25wt%、1.0wt%から15.0wt%、2.0wt%から10.0wt%で、存在してもよい。
金属加工流体は、以下の表に定義される組成物を有してもよい:
金属加工組成物の具体例として、以下の表にまとめたものが挙げられる:
金属加工流体の抗摩耗性能を実証するために、流体を、4つのボールによる摩耗(ASTM 4172)およびMicrotapによる摩擦について、対照の標準物質に対して評価することができる。ASTM D665は、腐食保護を保証するために実行することができる。ATSM 2272を使用して、酸化安定性を保証するよう決定することができる。
ローリング油は、4つのボールによる摩耗(ASTM 4172)およびMini−Traction Machineによる摩擦について、対照の標準物質に対して評価することができる。ASTM D665を使用して、腐食保護を測定することができる。ASTM D943は、酸化安定性を測定するために、適切な対照に対して実行することができる。
グリース
一実施形態では、潤滑剤は、グリース中に使用してもよい。グリースは、潤滑粘度の油、グリース増ちょう剤、および本明細書で上記した0.001wt%から15wt%のリン−アミン塩を含む組成物を有してもよい。他の実施形態では、リン−アミン塩は、潤滑剤組成物の総重量を基準として、0.01wt%から5wt%または0.002から2wt%で、潤滑剤中に存在してもよい。
一実施形態では、グリースは、スルホネートグリースであってもよい。このようなグリースは、当技術分野で公知である。別の実施形態では、スルホネートグリースは、中性のカルシウムスルホネートを過塩基化して、非晶質炭酸カルシウムを形成し、次に、それを方解石、またはバテライトのいずれか、またはこれらの混合物に変換することから調製されたカルシウムスルホネートグリースであってもよい。
グリース増ちょう剤は、当技術分野で公知の任意のグリース増ちょう剤であってもよい。適切なグリース増ちょう剤として、これらに限定されないが、カルボン酸の金属塩、金属石鹸グリース増ちょう剤、混合アルカリ石鹸、コンプレックス石鹸、非石鹸グリース増ちょう剤、このような酸官能化油の金属塩、ポリ尿素およびジ尿素グリース増ちょう剤、またはカルシウムスルホネートグリース増ちょう剤が挙げられる。他の適切なグリース増ちょう剤として、ポリマー増粘剤、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、およびオレフィンポリマーが挙げられる。無機グリース増ちょう剤を使用してもよい。例示的無機増ちょう剤として、クレイ、有機クレイ、シリカ、炭酸カルシウム、カーボンブラック、色素または銅フタロシアニンが挙げられる。さらなる増ちょう剤として、尿素誘導体、例えば、ポリ尿素またはジ尿素が挙げられる。グリースの具体例として、以下の表にまとめたものが挙げられる:
グリース増ちょう剤は、グリース調合物の当技術分野で公知の1つまたは複数のカルボン酸の金属塩を含んでもよい。金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムまたはこれらの混合物である場合が多い。適切な金属の例として、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、チタン、アルミニウムおよびこれらの混合物が挙げられる。金属として、リチウム、カルシウム、アルミニウムまたはこれらの混合物(典型的には、リチウム)を挙げることができる。
増ちょう剤で使用されるカルボン酸は、脂肪酸であることが多く、モノヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシカルボン酸、ポリヒドロキシカルボン酸またはこれらの混合物が挙げられる。カルボン酸は、4から30、8から27、19から24または10から20個の炭素原子を有してもよく、その誘導体、例えば、エステル、半エステル、塩、無水物またはこれらの混合物を含む。特に有用なヒドロキシ置換脂肪酸は、ヒドロキシステアリン酸であり、ここで、1つまたは複数の水酸基は、アルキル基の10、11、12、13または14位に位置することが多い。適切な例として、10−ヒドロキシステアリン酸、11−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、13−ヒドロキシステアリン酸、14−ヒドロキシステアリン酸およびこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、ヒドロキシ置換脂肪酸は、12−ヒドロキシステアリン酸である。他の適切な脂肪酸の例として、カプリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸およびこれらの混合物が挙げられる。
一実施形態では、カルボン酸増ちょう剤が、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、またはこれらの混合物と共に補充される。適切な例として、ヘキサン二酸(アジピン酸)、イソーオクタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸およびこれらの混合物が挙げられる。ジカルボン酸およびポリカルボン酸は、モノカルボン酸よりも高価である傾向があり、結果として、混合物を使用するほとんどの工業的プロセスは、典型的には、ジカルボン酸および/またはポリカルボン酸対モノカルボン酸のモル比を1:10、1:5、1:4、1:3、1:2の範囲で使用する。使用される酸の実際の比は、実際の適用に対するグリースの所望の特性に応じて変わる。一実施形態では、ジカルボン酸増ちょう剤は、ノナン二酸(アゼライン酸)および別のデカン二酸(セバシン酸)、またはこれらの混合物である。
グリース増ちょう剤として、単一の金属石鹸グリース増ちょう剤、混合アルカリ石鹸、コンプレックス石鹸、非石鹸グリース増ちょう剤、このような酸官能化油の金属塩、ポリ尿素およびジ尿素グリース増ちょう剤、カルシウムスルホネートグリース増ちょう剤またはこれらの混合物を挙げることができる。
グリース増ちょう剤は、他の公知のポリマー増粘剤、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(通常、PTFEとして公知)、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン、ポリエチレンもしくはポリプロピレンなどのオレフィンポリマーもしくはエチレン−プロピレンなどのオレフィンコポリマーまたはこれらの混合物を含むことができるか、または共に使用することができる。
一実施形態では、増ちょう剤は、他の公知の増粘剤、例えば、クレイ、有機クレイ、ベントナイト、モンモリロナイト、フュームドシリカおよび酸修飾シリカ、方解石などの炭酸カルシウム、カーボンブラック、色素、銅フタロシアニンまたはこれらの混合物を含むことができるか、または共に使用することができる。
グリースは、スルホネートグリースであってもよい。スルホネートグリースは、米国特許第5,308,514号により詳細に開示されている。カルシウムスルホネートグリースは、中性のカルシウムスルホネートを過塩基化させ、その結果、水酸化カルシウムが炭化されて非晶質炭酸カルシウムを形成し、次に、方解石、もしくはバテライトのいずれかまたはこれらの混合物(しかし、典型的には、方解石)に変換されることから調製されてもよい。
グリース増ちょう剤は、ポリ尿素またはジ尿素などの尿素誘導体であってもよい。ポリ尿素グリースとして、トリ尿素、テトラ尿素またはより高級なホモログ、またはこれらの混合物を挙げることができる。尿素誘導体として、尿素−ウレタン化合物およびウレタン化合物、ジ尿素化合物、トリ尿素化合物、テトラ尿素化合物、ポリ尿素化合物、尿素−ウレタン化合物、ジウレタン化合物およびこれらの混合物を挙げることができる。尿素誘導体は、例えば、尿素−ウレタン化合物、ジウレタン化合物またはこれらの混合物などのジ尿素化合物であってもよい。このタイプの尿素化合物についてのより詳細な記載は、米国特許第5,512,188号の2欄、24行から23欄、36行に開示されている。
一実施形態では、グリース増ちょう剤は、ポリ尿素またはジ尿素であってもよい。グリース増ちょう剤は、リチウム石鹸またはリチウムコンプレックス増ちょう剤である。
グリース組成物中に存在するグリース増ちょう剤の量は、グリース組成物の1wt%から50wt%、または1wt%から30wt%の範囲の量を含む。
グリース組成物は、潤滑粘度の油を含み、上述されている。
グリース組成物は、上述のリン−アミン塩を潤滑粘度の油、グリース増ちょう剤に、および任意選択で、他の性能添加剤の存在下で(本明細書の以下に記載されている)添加することによって調製されてもよい。他の性能添加剤は、グリース組成物の0wt%から10wt%、または0.01wt%から5wt%、または0.1から3wt%で、存在してもよい。
グリース組成物は、任意選択で、他の性能添加剤を含む。他の性能添加剤として、金属不活性化剤、粘度調整剤、清浄剤、摩擦調整剤、抗摩耗剤、腐食阻害剤、分散剤、分散粘度調整剤、極圧剤、抗酸化剤、およびこれらの混合物のうちの少なくとも1つが挙げられる。これらの他の性能添加剤はそれぞれ、上述されている。
一実施形態では、グリース組成物は、任意選択で、少なくとも1つの他の性能添加剤をさらに含む。他の性能添加剤化合物として、金属不活性化剤、清浄剤、分散剤、抗摩耗剤、抗酸化剤、腐食阻害剤(典型的には、防錆剤)、またはこれらの混合物が挙げられる。典型的には、十分に調合したグリース組成物は、1つまたは複数のこれらの性能添加剤を含有することとなる。グリース組成物は、腐食阻害剤または抗酸化剤を含有してもよい。
抗酸化剤として、ジアリールアミンアルキル化ジアリールアミン、ヒンダードフェノール、ジチオカルバメート、1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、ヒドロキシチオエーテル、またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、グリース組成物は、抗酸化剤、またはこれらの混合物を含む。抗酸化剤は、グリース組成物の0wt%から15wt%、または0.1wt%から10wt%、または0.5wt%から5wt%、または0.5wt%から3wt%、または0.3wt%から1.5wt%で、存在してもよい。
ジアリールアミンアルキル化ジアリールアミンは、フェニル−α−ナフチルアミン(PANA)、アルキル化ジフェニルアミン、またはアルキル化フェニルナフチルアミン、またはこれらの混合物であってもよい。アルキル化ジフェニルアミンとして、ジノニル化ジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチル化ジフェニルアミン、またはジデシル化ジフェニルアミンを挙げることができる。アルキル化ジアリールアミンとして、オクチル、ジオクチル、ノニル、ジノニル、デシルまたはジデシルフェニルナフチルアミンを挙げることができる。
ヒンダードフェノール抗酸化剤は、第二級ブチルおよび/または第三級ブチル基を立体障害基として含有する場合が多い。フェノール基は、ヒドロカルビル基(典型的には、直鎖状または分枝状アルキル)および/または第2の芳香族基に連結する架橋基でさらに置換されていてもよい。架橋原子は、炭素または硫黄であってもよい。適切なヒンダードフェノール抗酸化剤の例として、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールまたは4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、または4−ドデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール抗酸化剤は、エステルであってもよく、例えば、CibaからのIrganox(商標)L−135を挙げることができる。適切なエステル含有ヒンダードフェノール抗酸化剤の化学についてのより詳細な記載は、米国特許第6,559,105号において見出される。
ジチオカルバメート抗酸化剤は、ジチオカルバミン酸モリブデンまたは亜鉛などの金属含有ジチオカルバメートであってもよく、または「無灰」であってもよい。無灰とは、金属を含有しないジチオカルバメートを指し、連結基は、典型的には、メチレン基である。
1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリンは、特有の分子として存在するか、または最大5回の繰り返し単位でオリゴマー化されていてもよく、いくつかの供給業者から入手できる「Resin D」として商業的に公知であり得る。
一実施形態ではグリース組成物は、粘度調整剤をさらに含む。粘度調整剤は、当技術分野で公知であり、水素化スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、水素化スチレン−イソプレンポリマー、水素化ジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、ポリオレフィン、無水マレイン酸エステル−オレフィンコポリマー(例えば、国際出願WO2010/014655に記載のもの)、無水マレイン酸エステル−スチレンコポリマー、またはこれらの混合物を挙げることができる。
一部のポリマーは、それらが分散特性を呈するため、分散粘度調整剤(DVMと称されることが多い)として記載されてもよい。このタイプのポリマーとして、オレフィン、例えば、無水マレイン酸およびアミンとの反応により官能化されたエチレンプロピレンコポリマーが挙げられる。使用されてもよい別のタイプのポリマーは、アミンで官能化したポリメタクリレートである(このタイプは、メタクリレート重合において窒素含有コモノマーを組み込むことによって作製されてもよい)。分散粘度調整剤についてのより詳細な記載は、国際公開WO2006/015130または米国特許第4,863,623号;同第6,107,257号;同第6,107,258号;および同第6,117,825号に開示されている。
粘度調整剤は、グリース組成物の0wt%から15wt%、または0wt%から10wt%、または0.05wt%から5wt%、または0.2wt%から2wt%で存在することができる。
グリース組成物は、分散剤、またはこれらの混合物をさらに含んでもよい。分散剤は、スクシンイミド分散剤、マンニッヒ分散剤、スクシンアミド分散剤、ポリオレフィンコハク酸エステル、アミド、もしくはエステル−アミド、またはこれらの混合物であってもよい。一実施形態では、分散剤は、単一の分散剤として存在してもよい。一実施形態では、分散剤は、少なくとも1つがスクシンイミド分散剤であってよい、2つまたは3つの異なる分散剤の混合物として存在してもよい。
分散剤は、N−置換長鎖アルケニルスクシンイミドであってもよい。N−置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例は、ポリイソブチレンスクシンイミドである。典型的には、ポリイソブチレン無水コハク酸から導出されるポリイソブチレンは、350から5000、または550から3000、または750から2500の数平均分子量を有する。スクシンイミド分散剤およびそれらの調製は、例えば、米国特許第3,172,892号、同第3,219,666号、同第3,316,177号、同第3,340,281号、同第3,351,552号、同第3,381,022号、同第3,433,744号、同第3,444,170号、同第3,467,668号、同第3,501,405号、同第3,542,680号、同第3,576,743号、同第3,632,511号、同第4,234,435号、米国再発行特許第26,433号および米国特許第6,165,235号、同第7,238,650号ならびに欧州特許出願第0355895A号に開示されている。
分散剤は、任意の様々な作用物質による反応によって、従来の方法で後処理することもできる。これらの中には、ホウ素化合物(例えば、ホウ酸)、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、例えば、テレフタル酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシドおよびリン化合物が含まれる。一実施形態では、後処理分散剤はホウ素化されている。一実施形態では、後処理分散剤は、ジメルカプトチアジアゾールと反応する。一実施形態では、後処理分散剤は、リン酸または亜リン酸と反応する。
一実施形態では、本発明は、過塩基性金属含有清浄剤をさらに含むグリース組成物を提供する。過塩基性金属含有清浄剤は、カルシウムまたはマグネシウム過塩基性清浄剤であってもよい。
過塩基性金属含有清浄剤は、非硫黄含有フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレート、およびこれらの混合物、またはこれらのホウ素化同等物から選択してもよい。過塩基性金属含有清浄剤は、非硫黄含有フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、およびこれらの混合物から選択してもよい。過塩基性清浄剤は、ホウ酸などのホウ素化剤、例えば、ホウ素化過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤もしくはホウ素化過塩基性マグネシウムスルホネート清浄剤、またはこれらの混合物でホウ素化されていてもよい。
過塩基性金属含有清浄剤は、グリース組成物の0wt%から2wt%、または0.05wt%から1.5wt%、または0.1wt%から1wt%で存在することができる。
グリース組成物は、上述されている分散剤、またはこれらの混合物をさらに含んでもよい。分散剤は、スクシンイミド分散剤、マンニッヒ分散剤、スクシンアミド分散剤、ポリオレフィンコハク酸エステル、アミド、もしくはエステル−アミド、またはこれらの混合物であってもよい。
一実施形態では、本発明は、金属含有清浄剤をさらに含むグリース組成物を提供する。金属含有清浄剤は、カルシウムまたはマグネシウム清浄剤であってもよい。金属含有清浄剤は、30から500mg KOH/g当量の範囲の全塩基価を有する過塩基性清浄剤であってもよい。
金属含有清浄剤は、非硫黄含有フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレートおよびこれらの混合物、またはこれらのホウ素化同等物から選択してもよい。金属含有清浄剤は、非硫黄含有フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、およびこれらの混合物から選択してもよい。清浄剤は、ホウ酸などのホウ素化剤、例えば、ホウ素化過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤もしくはホウ素化過塩基性マグネシウムスルホネート清浄剤、またはこれらの混合物でホウ素化されていてもよい。清浄剤は、グリース組成物の0wt%から6wt%、または0.01wt%から4wt%、または0.05wt%から2wt%、または0.1wt%から2wt%で存在することができる。
一実施形態では、本明細書で開示されるグリースは、本発明の塩以外の少なくとも1つの追加の摩擦調整剤を含有してもよい。追加の摩擦調整剤は、グリース組成物の0wt%から6wt%、または0.01wt%から4wt%、または0.05wt%から2wt%、または0.1wt%から2wt%で存在することができる。
本明細書で使用される場合、摩擦調整剤に関する用語「脂肪アルキル」または「脂肪」は、10から22個の炭素原子を有する炭素鎖、典型的には、直鎖状炭素鎖を意味する。あるいは、脂肪アルキルは、典型的には、β位で分枝している、モノ分枝状アルキル基であってもよい。モノ分枝状アルキル基の例として、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチルまたは2−オクチルドデシルが挙げられる。
適切な摩擦調整剤の例として、アミン、脂肪エステル、または脂肪エポキシドの長鎖脂肪酸誘導体;カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物などの脂肪イミダゾリン;アルキルリン酸のアミン塩;脂肪ホスホネート;脂肪ホスファイト;ホウ素化リン脂質、ホウ素化脂肪エポキシド;グリセロールエステル;ホウ素化グリセロールエステル;脂肪アミン;アルコキシル化脂肪アミン;ホウ素化アルコキシル化脂肪アミン;第三級ヒドロキシ脂肪アミンを含むヒドロキシルおよびポリヒドロキシ脂肪アミン;ヒドロキシアルキルアミド;脂肪酸の金属塩;アルキルサリチレートの金属塩;脂肪オキサゾリン;脂肪エトキシル化アルコール;カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物;または、脂肪カルボン酸に由来する、グアニジン、アミノグアニジン、尿素、もしくはチオ尿素との反応生成物およびその塩が挙げられる。
摩擦調整剤は、硫化脂肪化合物およびオレフィン、硫化モリブデンジアルキルジチオホスフェート、硫化モリブデンジチオカルバメート、または他の油溶性モリブデン錯体、例えば、Molyvan(登録商標)855(R.T.Vanderbilt,Incから市販されている)またはSakuralube(登録商標)S−700もしくはSakuralube(登録商標)S−710(Adeka,Incから市販されている)などの材料を包含してもよい。油溶性モリブデン錯体は、摩擦を低下させるのを支援するが、シール適合性を損なう可能性がある。
一実施形態では、摩擦調整剤は、油溶性モリブデン錯体であってもよい。油溶性モリブデン錯体として、硫化モリブデンジチオカルバメート、硫化モリブデンジチオホスフェート、モリブデンブルー酸化物錯体または他の油溶性モリブデン錯体またはそれらの混合物を挙げることができる。油溶性モリブデン錯体は、モリブデン酸化物および水酸化物の混合物、いわゆる「ブルー」酸化物であってもよい。モリブデンブルー酸化物は、5から6の間の平均酸化状態のモリブデンを有し、MoO2(OH)からMoO2.5(OH)0.5の混合物である。油溶性の例は、Luvodor(登録商標)MBまたはLuvador(登録商標)MBO(LehmannおよびVoss GmbHから市販されている)の商標名で公知のモリブデンブルー酸化物錯体であり、油溶性モリブデン錯体は、グリース組成物の0wt%から5wt%、または0.1wt%から5wt%または1から3wt%で存在してもよい。
一実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであってもよい。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノエステルであってもよく、別の実施形態では長鎖脂肪酸エステルは、ヒマワリ油もしくはダイズ油などのトリグリセリドまたはポリオールと脂肪族カルボン酸のモノエステルであってもよい。
グリース組成物は、任意選択で、上述される少なくとも1つの抗摩耗剤(本発明の塩以外)をさらに含む。適切な抗摩耗剤の例として、チタン化合物、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート(例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛)、ホスファイト(例えば、ジブチルまたはジオレイルホスファイト)、ホスホネート、チオカルバメート含有化合物、例えばチオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、ビス(S−アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド、および油溶性リンアミン塩(phosphorus amine salt)が挙げられる。一実施形態では、グリース組成物は、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート(ジアルキルジチオリン酸亜鉛など)をさらに含んでもよい。抗摩耗剤は、グリース組成物の0wt%から5wt%、または0.1wt%から5wt%または1から3wt%で存在してもよい。
極圧剤は、硫黄および/またはリンを含有する化合物であってもよい。極圧剤の例として、ポリスルフィド、硫化オレフィン、チアジアゾール、またはこれらの混合物が挙げられる。
チアジアゾールの例として、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、またはそのオリゴマー、ヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、ヒドロカルビルチオ置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、またはこれらのオリゴマーが挙げられる。ヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのオリゴマーは、典型的には、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール単位の間に硫黄−硫黄結合を形成して、前記チアジアゾール単位の2つまたはそれより多くのオリゴマーを形成することによって形成される。適切なチアジアゾール化合物の例として、ジメルカプトチアジアゾール、2,5−ジメルカプト−[1,3,4]−チアジアゾール、3,5−ジメルカプト−[1,2,4]−チアジアゾール、3,4−ジメルカプト−[1,2,5]−チアジアゾール、または4−5−ジメルカプト−[1,2,3]−チアジアゾールのうちの少なくとも1つが挙げられる。典型的には、容易に利用可能な材料、例えば、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールまたはヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールまたはヒドロカルビルチオ置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールが通常利用される。異なる実施形態では、ヒドロカルビル置換基上の炭素原子数として、1から30、2から25、4から20、6から16、または8から10が挙げられる。2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールは、2,5−ジオクチルジチオ−1,3,4−チアジアゾール、または2,5−ジノニルジチオ−1,3,4−チアジアゾールであってもよい。
一実施形態では、ポリスルフィド分子の少なくとも50wt%は、トリまたはテトラスルフィドの混合物である。他の実施形態では、ポリスルフィド分子の少なくとも55wt%、または60wt%は、トリまたはテトラスルフィドの混合物である。
ポリスルフィドとして、油、脂肪酸またはエステル、オレフィンまたはポリオレフィン由来の硫化有機ポリスルフィドが挙げられる。
硫化されてもよい油として、天然または合成油、例えば、鉱油、ラード油、脂肪族アルコールと脂肪酸または脂肪族カルボン酸とに由来するカルボキシレートエステル(例えば、オレイン酸ミリスチルおよびオレイン酸オレイル)、および合成不飽和エステルまたはグリセリドならびに合成マッコウクジラ油が挙げられる。
脂肪酸として、8から30、または12から24個の炭素原子を含有するものが挙げられる。脂肪酸の例として、オレイン油、リノレイン油、およびトール油が挙げられる。混合不飽和脂肪酸エステルから調製された硫化脂肪酸エステルは、トール油、アマニ油、ダイズ油、ナタネ油、および魚油を含む動物脂肪および植物油から得られる。
ポリスルフィドとして、広い範囲のアルケンに由来するオレフィンが挙げられる。アルケンは、典型的には、1つまたは複数の二重結合を有する。オレフィンは、一実施形態では、3から30個の炭素原子を含有する。他の実施形態では、オレフィンは、3から16、または3から9個の炭素原子を含有する。一実施形態では、硫化オレフィンとして、プロピレン、イソブチレン、ペンテンまたはこれらの混合物に由来するオレフィンが挙げられる。
一実施形態では、ポリスルフィドは、公知の技術によって、上記のオレフィンを重合させることに由来するポリオレフィンを含む。
一実施形態では、ポリスルフィドとして、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化ジシクロペンタジエン、硫化テルペン、および硫化ディールスアルダー付加物が挙げられる。
極圧剤は、グリース組成物の0wt%から5wt%、0.01wt%から4wt%、0.01wt%から3.5wt%、0.05wt%から3wt%、および0.1wt%から1.5wt%、または0.2wt%から1wt%で存在することができる。
粒子または微粉砕された形態の固体添加剤も、0%から20重量%のレベルで使用してもよい。これらには、グラファイト、モリブデンジスルフィド、酸化亜鉛、窒化ホウ素、またはポリテトラフルオロエチレンが含まれる。固体添加剤の混合物を使用してもよい。
金属不活性化剤は、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾチアゾール、2−(N,N−ジアルキルジチオカルバモイル)ベンゾチアゾール、2,5−ビス(アルキルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジアルキルジチオカルバモイル)−1,3,4−チアジアゾール、2−アルキルジチオ−5−メルカプトチアジアゾールの1つもしくは複数の誘導体またはこれらの混合物を含んでもよい。金属不活性化剤は、腐食阻害剤と記載してもよい。
ベンゾトリアゾール化合物は、以下の環位置1−または2−または4−または5−または6−または7−ベンゾトリアゾールの1つまたは複数でヒドロカルビル置換を含んでもよい。ヒドロカルビル基は、1から30個の炭素、一実施形態では、1から15個の炭素、一実施形態では、1から7個の炭素を含んでもよい。金属不活性化剤は、5−メチルベンゾトリアゾールを含んでもよい。
金属不活性化剤は、グリース組成物中に、最大で5wt%、または0.0002から2wt%、または0.001から1wt%の範囲の濃度で存在することができる。
防錆剤は、1つまたは複数の金属スルホネート、例えば、カルシウムスルホネートまたはマグネシウムスルホネート、カルボン酸のアミン塩、例えば、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸もしくはその無水物および脂肪酸、例えば、オレイン酸とポリアミン、例えば、ポリアルキレンポリアミン、例えば、トリエチレンテトラミンとの縮合生成物、またはアルケニル基が8から24個の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸とポリグリコールなどのアルコールとの半エステルを含むことができる。
防錆剤は、グリース組成物中に、最大で4wt%の範囲、一実施形態では、0.02wt%から2wt%の範囲、一実施形態では、0.05wt%から1wt%の範囲の濃度で存在することができる。
グリース組成物は:
(a)0.001wt%から10wt%のリン−アミン塩;
(b)1wt%から20wt%のグリース増粘剤;
(c)0wt%から5wt%の極圧剤;
(d)0wt%から10wt%の他の性能添加剤;および
(e)残部の潤滑粘度の油
を含むことができる。
グリース組成物は、
(a)0.002wt%から5.0wt%のリン−アミン塩;
(b)1wt%から20wt%のグリース増粘剤;
(c)0.2wt%から1wt%の極圧剤;
(d)0.1wt%から10wt%の他の性能添加剤;および
(e)残部の潤滑粘度の油
を含むことができる。
グリース組成物の改善された性能を実証するために、組成物を、ASTM D4172−94(2010):潤滑流体の摩耗防止の特徴についての標準試験法(四球法)(Standard Test Method for Wear Preventive Characteristics of Lubricating Fluid(Four−Ball Method))、ASTM D4170−10:潤滑グリースによるフレッチング摩耗保護についての標準試験法(Standard Test Method for Fretting Wear Protection by Lubricating Greases)、ASTM D5969−11e:希薄合成海水環境の存在下での潤滑グリースの腐食防止特性についての標準試験法(Standard Test Method for Corrosion−Preventive Properties of Lubricating Greases in Presence of Dilute Synthetic Sea Water Environments)
およびASTM D6138−13:動的湿潤条件下での潤滑グリースの腐食防止特性の決定についての標準試験法(Emcor試験)(Standard Test Method for Determination of Corrosion−Preventive Properties of Lubricating Greases Under Dynamic Wet Conditions(Emcor Test))について、対照の標準物質に対して評価することができる。
油圧油、タービン油または循環油
一実施形態では、潤滑剤組成物は、0.001wt%から5wt%または0.002wt%から3wt%または0.005から1wt%の上述のリン−アミン塩を含有する。
潤滑剤組成物は、1つまたは複数の追加の添加剤を含有してもよい。一部の実施形態では、追加の添加剤として、成分b)以外の酸化防止剤;成分c)以外の抗摩耗剤;腐食阻害剤、防錆剤、抑泡剤、分散剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、清浄剤、乳化剤、極圧剤、流動点降下剤、粘度調整剤、またはこれらの任意の組合せを挙げることができる。
潤滑剤は、酸化防止剤、またはこれらの混合物をさらに含んでもよい。酸化防止剤は、潤滑剤の0wt%から4.0wt%、または0.02wt%から3.0wt%、または0.03wt%から1.5wt%で、存在することができる。
ジアリールアミンまたはアルキル化ジアリールアミンは、フェニル−α−ナフチルアミン(PANA)、アルキル化ジフェニルアミン、もしくはアルキル化フェニルナフチルアミン、またはこれらの混合物であってもよい。アルキル化ジフェニルアミンとして、ジノニル化ジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチル化ジフェニルアミン、ジデシル化ジフェニルアミン、デシルジフェニルアミン、ベンジルジフェニルアミンおよびこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、ジフェニルアミンとして、ノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、またはこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、アルキル化ジフェニルアミンは、ノニルジフェニルアミン、またはジノニルジフェニルアミンを挙げることができる。アルキル化ジアリールアミンとして、オクチルフェニルナフチルアミン、ジオクチルフェニルナフチルアミン、ノニルフェニルナフチルアミン、ジノニルフェニルナフチルアミン、デシルフェニルナフチルアミンまたはジデシルフェニルナフチルアミンを挙げることができる。一実施形態では、ジフェニルアミンは、スチレンおよび2−メチル−2−プロパンでアルキル化されている。
ヒンダードフェノール抗酸化剤は、第二級ブチルおよび/または第三級ブチル基を立体障害基として含有する場合が多い。フェノール基は、ヒドロカルビル基(典型的には、直鎖状または分枝状アルキル)および/または第2の芳香族基に連結する架橋基でさらに置換されていてもよい。適切なヒンダードフェノール抗酸化剤の例として、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールまたは4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、または4−ドデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール抗酸化剤は、エステルであってもよく、例えば、CibaからのIrganox(商標)L−135を挙げることができる。適切なエステル含有ヒンダードフェノール抗酸化剤の化学についてのより詳細な記載は、米国特許第6,559,105号において見出される。
酸化防止剤として使用してもよいモリブデンジチオカルバメートの例として、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.からのMolyvan 822(登録商標)、Molyvan(登録商標)A、Molyvan(登録商標)855、およびAdeka Sakura−Lube(商標)S−100、S−165、S−600および525などの商品名のもとで販売されている市販の材料、またはこれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤または抗摩耗剤として使用してもよいジチオカルバメートの例は、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.からのVanlube(登録商標)7723である。
酸化防止剤として、式:
(式中、R
6は、8から20個の炭素原子を有する飽和または不飽和の分枝状または直鎖状アルキル基であってもよく;R
7、R
8、R
9およびR
10は、独立して、水素または1から3個の炭素原子を含有するアルキルである)で表される置換ヒドロカルビルモノスルフィドを挙げることができる。一部の実施形態では、置換ヒドロカルビルモノスルフィドとして、n−ドデシル−2−ヒドロキシエチルスルフィド、1−(tert−ドデシルチオ)−2−プロパノール、またはこれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、置換ヒドロカルビルモノスルフィドは、1−(tert−ドデシルチオ)−2−プロパノールである。
潤滑剤組成物は、分散剤またはこれらの混合物を含んでもよい。適切な分散剤として、(i)ポリエーテルアミン;(ii)ホウ素化スクシンイミド分散剤;(iii)非ホウ素化スクシンイミド分散剤;(iv)ジアルキルアミン、アルデヒドおよびヒドロカルビル置換フェノールのマンニッヒ反応生成物;またはこれらの任意の組合せが挙げられる。一部の実施形態では、分散剤は、全組成物の0wt%から1.5wt 5、または0.01wt%から1wt%、または0.05から0.5wt%で、存在してもよい。
組成物中に含まれてもよい分散剤として、油溶性ポリマー炭化水素骨格を有し、分散される粒子と会合することができる官能基を有するものが挙げられる。ポリマー炭化水素骨格は、750から1500ダルトンの範囲の重量平均分子量を有してもよい。例示的官能基として、しばしば架橋基を介して、ポリマー骨格に結合するアミン、アルコール、アミド、およびエステル極性部分が挙げられる。例の分散剤として、米国特許第3,697,574号および同第3,736,357号に記載されているマンニッヒ分散剤;米国特許第4,234,435号および同第4,636,322号に記載されている無灰スクシンイミド分散剤;米国特許第3,219,666号、同第3,565,804号、および同第5,633,326号に記載されているアミン分散剤;米国特許第5,936,041号、同第5,643,859号、および同第5,627,259号に記載されているコッホ分散剤、ならびに米国特許第5,851,965号、同第5,853,434号、および同第5,792,729号に記載されているポリアルキレンスクシンイミド分散剤が挙げられる。
抑泡剤としても公知の消泡剤は当技術分野で公知であり、有機シリコーンおよび非ケイ素型抑泡剤が挙げられる。有機シリコーンの例として、ジメチルシリコーンおよびポリシロキサンが挙げられる。非ケイ素型抑泡剤の例として、エチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとのコポリマー、エチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートと酢酸ビニルとのコポリマー、ポリエーテル、ポリアクリレートおよびこれらの混合物が挙げられる。一部の実施形態では、消泡剤は、ポリアクリレートである。消泡剤は、組成物中に、0.001wt%から0.012wt%もしくは0.004wt%またはさらには0.001wt%から0.003wt%存在することができる。
抗乳化剤は当技術分野で公知であり、エチレンオキシドもしくは置換エチレンオキシドと順次反応した、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ポリオキシアルキレンアルコール、アルキルアミン、アミノアルコール、ジアミンもしくはポリアミンの誘導体、またはこれらの混合物が挙げられる。抗乳化剤の例として、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーおよびこれらの混合物が挙げられる。一部の実施形態では、抗乳化剤は、ポリエーテルである。抗乳化剤は、組成物中に、0.002wt%から0.012wt%存在してもよい。
流動点降下剤は当技術分野で公知であり、無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステル、ポリメタクリレート;ポリアクリレート;ポリアクリルアミド;ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物;ビニルカルボキシレートポリマー;およびジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合樹脂、アルキルビニルエーテルおよびこれらの混合物が挙げられる。
潤滑剤組成物は、防錆剤を含んでもよい。適切な防錆剤として、アルキルリン酸のヒドロカルビルアミン塩、ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩、ヒドロカルビルアリールスルホン酸のヒドロカルビルアミン塩、脂肪カルボン酸またはそのエステル、窒素含有カルボン酸のエステル、スルホン酸アンモニウム、イミダゾリン、アルコールもしくはエーテルと反応したアルキル化コハク酸誘導体、またはこれらの任意の組合せ;またはこれらの混合物が挙げられる。
アルキルリン酸の適切なヒドロカルビルアミン塩は、以下の式:
(式中、R
26およびR
27は、独立して、水素、アルキル鎖またはヒドロカルビルであり、典型的には、R
26およびR
27の少なくとも1つはヒドロカルビルである。R
26およびR
27は、4から30、または8から25、または10から20、または13から19個の炭素原子を含有する。R
28、R
29およびR
30は、独立して、水素、1から30、または4から24、または6から20、または10から16個の炭素原子を有するアルキル分枝状または直鎖状アルキル鎖である。R
28、R
29およびR
30は、独立して、水素、アルキル分枝状または直鎖状アルキル鎖であるか、または、R
28、R
29およびR
30の少なくとも1つもしくは2つは水素である)
で表すことができる。
R28、R29およびR30に適したアルキル基の例として、ブチル、secブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、secヘキシル、n−オクチル、2−エチル、ヘキシル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オクタデセニル、ノナデシル、エイコシルまたはこれらの混合物が挙げられる。
一実施形態では、アルキルリン酸のヒドロカルビルアミン塩は、C14からC18アルキル化リン酸とC11からC14第三級アルキル第一級アミンの混合物であるPrimene 81R(Rohm&Haasにより生産および販売されている)との反応生成物である。
ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩は、防錆剤、例えば、ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩を含んでもよい。これらは、ヘプチルジチオリン酸またはオクチルジチオリン酸またはノニルジチオリン酸と、エチレンジアミン、モルホリンもしくはPrimene 81Rまたはこれらの混合物との反応生成物であってもよい。
ヒドロカルビルアリールスルホン酸のヒドロカルビルアミン塩は、ジノニルナフタレンスルホン酸のエチレンジアミン塩を含んでもよい。
適切な脂肪カルボン酸またはそのエステルの例として、グリセロールモノオレエートおよびオレイン酸が挙げられる。窒素含有カルボン酸の適切なエステルの例として、オレイルサルコシンが挙げられる。
防錆剤は、潤滑油組成物の0.02wt%から0.2wt%、0.03wt%から0.15wt%、0.04wt%から0.12wt%、または0.05wt%から0.1wt%の範囲で、存在してもよい。防錆剤は、単独でまたはこれらの混合物で使用してもよい。
潤滑剤は、金属不活性化剤、またはこれらの混合物を含有してもよい。金属不活性化剤は、ベンゾトリアゾール(典型的には、トリルトリアゾール)の誘導体、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾールまたは2−アルキルジチオベンゾチアゾール、1−アミノ−2−プロパノール、ジメルカプトチアジアゾールの誘導体、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸もしくはその無水物および/またはオレイン酸などの脂肪酸とポリアミンとの縮合生成物から選択してもよい。金属不活性化剤は、腐食阻害剤と記載してもよい。
金属不活性化剤は、潤滑油組成物の0.001wt%から0.1wt%、0.01wt%から0.04wt%または0.015wt%から0.03wt%の範囲で、存在することができる。金属不活性化剤は、組成物中に、0.002wt%または0.004wt%から0.02wt%存在してもよい。金属不活性化剤は、単独でまたはこれらの混合物で使用することができる。
一実施形態では、本発明は、金属含有清浄剤をさらに含む潤滑剤組成物を提供する。金属含有清浄剤は、カルシウム清浄剤またはマグネシウム清浄剤であってもよい。金属含有清浄剤は、30から500mg KOH/g当量の範囲の全塩基価を有する過塩基性清浄剤であってもよい。
金属含有清浄剤は、非硫黄含有フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレートおよびこれらの混合物、またはこれらのホウ素化同等物から選択してもよい。金属含有清浄剤は、非硫黄含有フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、およびこれらの混合物から選択してもよい。清浄剤は、ホウ酸などのホウ素化剤、例えば、ホウ素化過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤もしくはホウ素化過塩基性マグネシウムスルホネート清浄剤、またはこれらの混合物でホウ素化されていてもよい。清浄剤は、油圧用組成物の0wt%から5wt%、または0.001wt%から1.5wt%、または0.005wt%から1wt%、または0.01wt%から0.5wt%で存在することができる。
極圧剤は、硫黄および/またはリンを含有する化合物であってもよい。極圧剤の例として、ポリスルフィド、硫化オレフィン、チアジアゾール、またはこれらの混合物が挙げられる。
チアジアゾールの例として、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、またはそのオリゴマー、ヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、ヒドロカルビルチオ置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、またはこれらのオリゴマーが挙げられる。ヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのオリゴマーは、典型的には、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール単位の間に硫黄−硫黄結合を形成して、前記チアジアゾール単位の2つまたはそれより多くのオリゴマーを形成することによって形成される。適切なチアジアゾール化合物の例として、ジメルカプトチアジアゾール、2,5−ジメルカプト−[1,3,4]−チアジアゾール、3,5−ジメルカプト−[1,2,4]−チアジアゾール、3,4−ジメルカプト−[1,2,5]−チアジアゾール、または4−5−ジメルカプト−[1,2,3]−チアジアゾールのうちの少なくとも1つが挙げられる。典型的には、容易に利用可能な材料、例えば、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールまたはヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールまたはヒドロカルビルチオ置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールが通常利用される。異なる実施形態では、ヒドロカルビル置換基上の炭素原子数として、1から30、2から25、4から20、6から16、または8から10が挙げられる。2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールは、2,5−ジオクチルジチオ−1,3,4−チアジアゾール、または2,5−ジノニルジチオ−1,3,4−チアジアゾールであってもよい。
ポリスルフィドとして、油、脂肪酸またはエステル、オレフィンまたはポリオレフィン由来の硫化有機ポリスルフィドが挙げられる。
硫化されてもよい油として、天然または合成油、例えば、鉱油、ラード油、脂肪族アルコールと脂肪酸または脂肪族カルボン酸とに由来するカルボキシレートエステル(例えば、オレイン酸ミリスチルおよびオレイン酸オレイル)、および合成不飽和エステルまたはグリセリドが挙げられる。
脂肪酸として、8から30、または12から24個の炭素原子を含有するものが挙げられる。脂肪酸の例として、オレイン油、リノレイン油、およびトール油が挙げられる。混合不飽和脂肪酸エステルから調製された硫化脂肪酸エステルは、トール油、アマニ油、ダイズ油、ナタネ油、および魚油を含む動物脂肪および植物油から得られる。
ポリスルフィドとして、広い範囲のアルケンに由来するオレフィンが挙げられる。アルケンは、典型的には、1つまたは複数の二重結合を有する。オレフィンは、一実施形態では、3から30個の炭素原子を含有する。他の実施形態では、オレフィンは、3から16、または3から9個の炭素原子を含有する。一実施形態では、硫化オレフィンとして、プロピレン、イソブチレン、ペンテンまたはこれらの混合物に由来するオレフィンが挙げられる。
一実施形態では、ポリスルフィドは、公知の技術によって、上記のオレフィンを重合させることに由来するポリオレフィンを含む。
一実施形態では、ポリスルフィドとして、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化ジシクロペンタジエン、硫化テルペン、および硫化ディールスアルダー付加物が挙げられる。
極圧剤は、油圧用組成物の0wt%から3wt%、0.005wt%から2wt%、0.01wt%から1.0wt%で、存在してもよい。
潤滑剤は、粘度調整剤、またはこれらの混合物をさらに含んでもよい。
本発明で使用するのに適切な粘度調整剤(粘度指数改良剤と称されることが多い)として、スチレン−ブタジエンゴム、オレフィンコポリマー、水素化スチレン−イソプレンポリマー、水素化ラジカルイソプレンポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリールコンジュゲートジエンコポリマー、無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステルまたはこれらの混合物を含むポリマー材料が挙げられる。一部の実施形態では、粘度調整剤は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、オレフィンコポリマーまたはこれらの混合物である。粘度調整剤は、潤滑剤の0wt%から10wt%、0.5wt%から8wt%、1wt%から6wt%で、存在してもよい。
一実施形態では、本明細書で開示される潤滑剤は、本発明の塩以外の少なくとも1つの追加の摩擦調整剤を含有してもよい。追加の摩擦調整剤は、油圧用組成物の0wt%から3wt%、または0.02wt%から2wt%、または0.05wt%から1wt%で、存在してもよい。
本明細書で使用される場合、摩擦調整剤に関する用語「脂肪アルキル」または「脂肪」は、10から22個の炭素原子を有する炭素鎖、典型的には、直鎖状炭素鎖を意味する。あるいは、脂肪アルキルは、典型的には、β位で分枝している、モノ分枝状アルキル基であってもよい。モノ分枝状アルキル基の例として、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチルまたは2−オクチルドデシルが挙げられる。
適切な摩擦調整剤の例として、アミン、脂肪エステル、または脂肪エポキシドの長鎖脂肪酸誘導体;カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物などの脂肪イミダゾリン;アルキルリン酸のアミン塩;脂肪ホスホネート;脂肪ホスファイト;ホウ素化リン脂質、ホウ素化脂肪エポキシド;グリセロールエステル;ホウ素化グリセロールエステル;脂肪アミン;アルコキシル化脂肪アミン;ホウ素化アルコキシル化脂肪アミン;第三級ヒドロキシ脂肪アミンを含むヒドロキシルおよびポリヒドロキシ脂肪アミン;ヒドロキシアルキルアミド;脂肪酸の金属塩;アルキルサリチレートの金属塩;脂肪オキサゾリン;脂肪エトキシル化アルコール;カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物;または、脂肪カルボン酸に由来する、グアニジン、アミノグアニジン、尿素、もしくはチオ尿素との反応生成物およびその塩が挙げられる。
一実施形態では、潤滑剤組成物は、追加の抗摩耗剤をさらに含む。典型的には、追加の抗摩耗剤は、リン抗摩耗剤(本発明の塩以外)、またはこれらの混合物であってもよい。追加の抗摩耗剤は、潤滑剤の0wt%から5wt%、0.001wt%から2wt%、0.1wt%から1.0wt%で、存在してもよい。
リン抗摩耗剤は、リンアミン塩、またはこれらの混合物を含んでもよい。リンアミン塩として、リン含有酸エステルのアミン塩またはこれらの混合物が挙げられる。リン含有酸エステルのアミン塩として、リン酸エステルおよびそのアミン塩;ジアルキルジチオリン酸エステルおよびそのアミン塩;ホスファイト;およびリン含有カルボン酸エステル、エーテル、およびアミドのアミン塩;リン酸またはチオリン酸のヒドロキシ置換ジエステルまたはヒドロキシ置換トリエステルおよびそのアミン塩;リン酸またはチオリン酸のリン酸化ヒドロキシ置換ジエステルまたはリン酸化ヒドロキシ置換トリエステルおよびそのアミン塩;ならびにこれらの混合物が挙げられる。リン含有酸エステルのアミン塩は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
一実施形態では、油溶性リンアミン塩として、部分アミン塩−部分金属塩化合物またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、リン化合物は、分子中に硫黄原子をさらに含む。
抗摩耗剤の例として、非イオン性リン化合物(典型的には、+3または+5の酸化状態でリン原子を有する化合物)を挙げることができる。一実施形態では、リン化合物のアミン塩は、無灰分、すなわち、金属フリーであってもよい(他の成分と混合される前に)。
アミン塩として使用するのに適切であり得るアミンとして、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、およびこれらの混合物が挙げられる。アミンとして、少なくとも1つのヒドロカルビル基を有するもの、または、ある特定の実施形態では、2つもしくは3つのヒドロカルビル基を有するものが挙げられる。ヒドロカルビル基は、2から30個の炭素原子、または他の実施形態では、8から26、または10から20、または13から19個の炭素原子を含有してもよい。
第一級アミンとして、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、およびドデシルアミン、ならびにn−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミンおよびオレイルアミン(oleyamine)などの脂肪アミンが挙げられる。他の有用な脂肪アミンとして、市販の脂肪アミン、例えば「Armeen(登録商標)」アミン(Akzo Chemicals、Chicago、Illinoisから入手可能な製品)、例えば、Armeen C、Armeen O、Armeen OL、Armeen T、Armeen HT、Armeen SおよびArmeen SD(ここで、文字表示は、脂肪基、例えばココ、オレイル、タロー、またはステアリル基に関する)が挙げられる。
適切な第二級アミンの例として、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミンおよびエチルアミルアミンが挙げられる。第二級アミンは、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンなどの環状アミンであってもよい。
アミンは、第三級脂肪族第一級アミンであってもよい。この場合には、脂肪族基は、2から30、または6から26、または8から24個の炭素原子を含有するアルキル基であってもよい。第三級アルキルアミンとして、モノアミン、例えばtert−ブチルアミン、tert−ヘキシルアミン、1−メチル−1−アミノ−シクロヘキサン、tert−オクチルアミン、tert−デシルアミン、tertドデシルアミン、tert−テトラデシルアミン、tert−ヘキサデシルアミン、tert−オクタデシルアミン、tert−テトラコサニルアミン、およびtert−オクタコサニルアミンが挙げられる。
一実施形態では、リン含有酸アミン塩として、C11からC14第三級アルキル第一級基を有するアミンまたはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、リン含有酸アミン塩として、C14からC18第三級アルキル第一級アミンを有するアミンまたはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、リン含有酸アミン塩として、C18からC22第三級アルキル第一級アミンを有するアミンまたはこれらの混合物が挙げられる。アミンの混合物を使用してもよい。一実施形態では、アミンの有用な混合物は、「Primene(登録商標)81R」および「Primene(登録商標)JMT」である。Primene(登録商標)81RおよびPrimene(登録商標)JMT(どちらもRohm&Haasにより生産および販売されている)は、それぞれC11からC14第三級アルキル第一級アミンの混合物およびC18からC22第三級アルキル第一級アミンの混合物である。
一実施形態では、リン化合物の油溶性アミン塩として、アミンと、(i)リン酸のヒドロキシ置換ジエステル、または(ii)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換ジエステルもしくはリン酸化ヒドロキシ置換トリエステルとの反応を含むプロセスによって得られ得る/得ることができ得るリン含有化合物の硫黄を含まないアミン塩が挙げられる。このタイプの化合物についてのより詳細な説明は、米国特許第8,361,941号に開示されている。
一実施形態では、アルキルリン酸エステルのヒドロカルビルアミン塩は、C14からC18アルキル化リン酸とC11からC14第三級アルキル第一級アミンの混合物であるPrimene 81R(商標)(Rohm&Haasにより生産および販売されている)との反応生成物である。
ジアルキルジチオリン酸エステルのヒドロカルビルアミン塩の例として、イソプロピルジチオリン酸、メチル−アミルジチオリン酸(4−メチル−2−ペンチルジチオリン酸またはこれらの混合物)、2−エチルヘキシルジチオリン酸、ヘプチルジチオリン酸、オクチルジチオリン酸またはノニルジチオリン酸とエチレンジアミン、モルホリン、またはPrimene 81R(商標)との反応生成物(複数可)、およびこれらの混合物が挙げられる。
一実施形態では、ジチオリン酸を、エポキシドまたはグリコールと反応させてもよい。この反応生成物を、リン含有酸、無水物、または低級エステルとさらに反応させる。エポキシドとして、脂肪族エポキシドまたはスチレンオキシドが挙げられる。有用なエポキシドの例として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、オクテンオキシド、ドデセンオキシド、およびスチレンオキシドが挙げられる。一実施形態では、エポキシドは、プロピレンオキシドであってもよい。グリコールは、1から12、または2から6、または2から3個の炭素原子を有する脂肪族グリコールであってもよい。ジチオリン酸、グリコール、エポキシド、無機リン試薬およびそれらを反応させる方法は、米国特許第3,197,405号および同第3,544,465号に記載されている。次いで、得られた酸を、アミンで塩にしてもよい。適切なジチオリン酸の一例は、五酸化リン(約64グラム)を、58℃で514グラムのヒドロキシプロピルO,O−ジ(4−メチル−2−ペンチル)ホスホロジチオエート(25℃でジ(4−メチル−2−ペンチル)−ホスホロジチオ酸を1.3モルのプロピレンオキシドと反応させて調製される)に、45分間にわたって添加することによって調製される。この混合物を75℃で2.5時間加熱し、珪藻土と混合し、70℃で濾過してもよい。濾液は、11.8重量%リン、15.2重量%硫黄、および87の酸価(ブロモフェノールブルー)を含有する。
一実施形態では、抗摩耗添加剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含んでもよく、他の実施形態では、本発明の組成物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を実質的に含まないか、またはさらには完全に含まない。
一実施形態では、本発明は、米国特許第4,758,362号の2欄、35行から6欄、11行に規定されているジチオカルバメート抗摩耗剤を含む組成物を提供する。存在する場合、ジチオカルバメート抗摩耗剤は、全組成物中に、0.25wt%、0.3wt%、0.4wt%またはさらには0.5wt%から最大で0.75wt%、0.7wt%、0.6wt%またはさらには0.55wt%存在することができる。
油圧用潤滑剤は:
0.01wt%から3wt%のリン−アミン塩、
0.0001wt%から0.15wt%の、2,5−ビス(tert−ドデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、トリルトリアゾール、またはこれらの混合物から選択される腐食阻害剤、
潤滑粘度の油、
0.02wt%から3wt%の、アミン性もしくはフェノール性酸化防止剤またはこれらの混合物から選択される酸化防止剤、
0.005wt%から1.5wt%のホウ素化スクシンイミドまたは非ホウ素化スクシンイミド、
0.001wt%から1.5wt%の中性またはやや過塩基性のカルシウムナフタレンスルホネート(典型的には、中性またはやや過塩基性のカルシウムジノニルナフタレンスルホネート)、および
0.001wt%から2wt%、または0.01wt%から1wt%の、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアルキルリン酸亜鉛、リン含有酸もしくはエステルのアミン塩、またはこれらの混合物から選択される抗摩耗剤(本発明のプロトン性の塩以外)
を含むことができる。
油圧用潤滑剤は、以下の表で定義した調合物を含んでもよい:
油圧用潤滑剤の具体例として、以下の表にまとめたものが挙げられる:
各潤滑剤の抗摩耗性能を、ASTM D6973−08e1高圧定容量ベーンポンプにおける石油油圧用流体の摩耗特性を示すための標準試験法(ASTM D6973−08e1 Standard Test Method for Indicating Wear Characteristics of Petroleum Hydraulic Fluids in a High Pressure Constant Volume Vane Pump)にしたがって評価することができる。抗摩耗性能は、標準ファレックスブロックオンリング摩耗および摩擦試験装置を利用して評価することもできる。この試験では、標準的な試験ブロックを、一片の実際の35VQポンプベーンを受け入れるように改変する。ベーンは、その中で固定ベーンに負荷が印加される標準ファレックスリングと接触しており、リングが回転する。スクリーン試験を、標準35VQポンプ試験におけるのと同様の負荷、スライド速度および油温度条件で実行する。試験ベーンおよびリングの質量を、試験の前後に測定する。性能を、測定された全質量損失量で判定する。
冷却材潤滑剤
一実施形態では、本明細書で開示される潤滑剤は、冷却潤滑剤またはガスコンプレッサー潤滑剤であってもよい。加工流体は、潤滑粘度の油と、0.001wt%から15wt%の上記のリン−アミン塩とを形成するために、(i)1つもしくは複数のエステル基油、(ii)1つもしくは複数の鉱油基油、(iii)1つもしくは複数のポリアルファオレフィン(PAO)基油、(iii)1つもしくは複数のアルキルベンゼン基油、(iv)1つもしくは複数のポリアルキレングリコール(PAG)基油、(iv)1つもしくは複数のアルキル化ナフタレン基油、(v)1つもしくは複数のポリビニルエーテル基油またはこれらの任意の組合せから構成される潤滑剤を含むことができる。潤滑剤は、冷却またはガス圧縮のために使用されるコンプレッサー中の加工流体であってもよい。一実施形態では、加工流体は、低地球温暖化係数(低GWP)冷却システムに対するものであってもよい。加工流体は、単独でまたは組み合わせて潤滑粘度の油および0.001wt%から15wt%のリン−アミン塩ならびに冷却材または圧縮されるガスを形成するための、エステル基油、鉱油基油、ポリアルファオレフィン基油、ポリアルキレングリコール基油またはポリビニルエーテル基油から構成される潤滑剤を含むことができる。
エステルベースの油として、C4からC13の1つまたは複数の分枝状または直鎖状カルボン酸のエステルが挙げられる。このエステルは、一般的に、記載された分枝状カルボン酸と1つまたは複数のポリオールとの反応によって形成される。
一部の実施形態では、分枝状カルボン酸は、少なくとも5個の炭素原子を含有する。一部の実施形態では、分枝状カルボン酸は、4から9個の炭素原子を含有する。一部の実施形態では、エステルの調製において使用されるポリオールとして、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。一部の実施形態では、エステルの調製において使用されるポリオールとして、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。一部の実施形態では、エステルの調製において使用されるポリオールとして、ネオペンチルグリコールが挙げられる。一部の実施形態では、エステルの調製において使用されるポリオールとして、ペンタエリスリトールが挙げられる。一部の実施形態では、エステルの調製において使用されるポリオールとして、ジペンタエリスリトールが挙げられる。
一部の実施形態では、エステルは、(i)2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、またはこれらの組合せを含む酸;および(ii)ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、またはこれらの任意の組合せを含むポリオールから導出される。
潤滑剤は、良好な混和性を有する許容される粘度の加工流体を提供する能力を有し得る。
「許容される粘度」とは、エステルベースの潤滑剤および/または加工流体が、4cSt超の粘度(ASTM D445により40℃で測定して)を有することを意味する。一部の実施形態では、エステルベースの潤滑剤および/または加工流体は、40℃で、5または32から最大で320、220、120、またはさらには68cStまでの粘度を有する。
上記で留意したように、「低GWP」は、加工流体が、1000以下のGWP値(気候変動の2001年第三次アセスメント報告書に関する政府間パネルによって計算して)、または1000未満、500未満、150未満、100未満、またはさらには75未満の値を有することを意味する。一部の実施形態では、このGWP値は、加工流体全体に関する。他の実施形態では、このGWP値は加工流体中に存在する冷却材に関するものであり、ここで、得られる加工流体は、低GWP加工流体と称してもよい。
「良好な混和性」とは、少なくとも、冷却システムまたはガス圧縮システムの作動の間に記載された加工流体が遭遇する作動条件で、冷却材または圧縮ガスと潤滑剤とが混和性であることを意味する。一部の実施形態では、良好な混和性は、加工流体(および/または冷却材と潤滑剤の組合せ)が、0℃、もしくはさらには−25℃という低い温度、またはさらには、一部の実施形態では、−50℃、もしくはさらには−60℃という低い温度で目に見えるかすみ以外に、混和性不足の兆候を全く見せないことを意味し得る。
一部の実施形態では、記載された加工流体は、1つまたは複数の追加の潤滑剤成分をさらに含んでもよい。これらの追加の潤滑剤成分として、(i)1つもしくは複数の直鎖状カルボン酸の1つもしくは複数のエステル、(ii)1つもしくは複数のポリアルファオレフィン(PAO)基油、(iii)1つもしくは複数のアルキルベンゼン基油、(iv)1つもしくは複数のポリアルキレングリコール(PAG)基油、(iv)1つもしくは複数のアルキル化ナフタレン基油、または(v)これらの任意の組合せを挙げることができる。
記載された加工流体で使用してもよい追加の潤滑剤には、ある特定のシリコーン油および鉱油が含まれる。
市販されている鉱油として、Sonnebornから市販されているSonneborn(登録商標)LP250、Sonnebornからそれぞれ市販されているSuniso(登録商標)3GS、1GS、4GS、および5GS、ならびに、Calumetから市販されているCalumet R015およびRO30が挙げられる。市販されているアルキルベンゼン潤滑剤として、Shrieve Chemicalから市販されているZerol(登録商標)150およびZerol(登録商標)300が挙げられる。市販されているエステルとして、Emery(登録商標)2917およびHatcol(登録商標)2370として入手できるネオペンチルグリコールジペラルゴネートが挙げられる。他の有用なエステルとして、リン酸エステル、二塩基酸エステル、およびフルオロエステルが挙げられる。もちろん、様々なタイプの潤滑剤の様々な混合物を使用してもよい。
一部の実施形態では、記載された加工流体は、1つまたは複数の直鎖状カルボン酸の1つまたは複数のエステルをさらに含む。
加工流体は、1つまたは複数の冷却材も含んでよい。このような実施形態において有用な、適切な非低GWP冷却材は、過度に限定されない。例として、R−22、R−134a、R−125、R−143a、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。一部の実施形態では、冷却材の少なくとも1つは、低GWP冷却材である。一部の実施形態では、加工流体中に存在する冷却材のすべてが低GWP冷却材である。一部の実施形態では、冷却材として、R−32、R−290、R−1234yf、R−1234ze(E)、R−744、R−152a、R−600、R−600aまたはこれらの任意の組合せが挙げられる。一部の実施形態では、冷却材として、R−32、R−290、R−1234yf、R−1234ze(E)またはこれらの任意の組合せが挙げられる。一部の実施形態では、冷却材として、R−32が挙げられる。一部の実施形態では、冷却材として、R−290が挙げられる。一部の実施形態では、冷却材として、R−1234yfが挙げられる。一部の実施形態では、冷却材として、R−1234ze(E)が挙げられる。一部の実施形態では、冷却材として、R−744が挙げられる。一部の実施形態では、冷却材として、R−152aが挙げられる。一部の実施形態では、冷却材として、R−600が挙げられる。一部の実施形態では、冷却材として、R−600aが挙げられる。
一部の実施形態では、冷却材として、R−32、R−600a、R−290、DR−5、DR−7、DR−3、DR−2、R−1234yf、R−1234ze(E)、XP−10、HCFC−123、L−41A、L−41B、N−12A、N−12B、L−40、L−20、N−20、N−40A、N−40B、ARM−30A、ARM−21A、ARM−32A、ARM−41A、ARM−42A、ARM−70A、AC−5、AC−5X、HPR1D、LTR4X、LTR6A、D2Y−60、D4Y、D2Y−65、R−744、R−1270、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。一部の実施形態では、冷却材として、R−32、R−600a、R−290、DR−5、DR−7、DR−3、DR−2、R−1234yf、R−1234ze(E)、XP−10、HCFC−123、L−41A、L−41B、N−12A、N−12B、L−40、L−20、N−20、N−40A、N−40B、ARM−30A、ARM−21A、ARM−32A、ARM−41A、ARM−42A、ARM−70A、AC−5、AC−5X、HPR1D、LTR4X、LTR6A、D2Y−60、D4Y、D2Y−65、R−1270、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
一部の実施形態では、記載された加工流体は、低GWP加工流体を生じる、低GWP冷却材とブレンドされた1つまたは複数の非低GWP冷却材も含んでよいことに留意されたい。このような実施形態において有用な、適切な非低GWP冷却材は、過度に限定されない。例として、R−22、R−134a、R−125、R−143a、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
少なくとも、それらが使用されている冷却システムのエバポレーターにおいて、それらがどのように見出されるかということに関連して、記載された加工流体は、5から50wt%の潤滑剤、および95から50wt%の冷却材であってもよい。一部の実施形態では、加工流体は、10から40wt%の潤滑剤、またはさらには10から30もしくは10から20wt%の潤滑剤である。
少なくとも、それらが使用されている冷却システムの排液だめにおいて、それらがどのように見出されるかということに関連して、記載された加工流体は、約1から50、またはさらには5から50wt%の冷却材、および99から50またはさらには95から50wt%の潤滑剤であってよい。一部の実施形態では、加工流体は、90から60もしくはさらには95から60wt%の潤滑剤、またはさらには90から70もしくはさらには95から70、または90から80またはさらには95から80wt%の潤滑剤である。
組成物に対してある特定の機能性を増進させるかもしくは提供するために、または一部の場合、組成物のコストを低減するために、記載された加工流体は、他の成分を含んでもよい。
記載された加工流体は、1つまたは複数の性能添加剤をさらに含んでもよい。性能添加剤の適切な例として、酸化防止剤、金属不動態化剤(metal passivator)および/または不活性化剤、腐食阻害剤、消泡剤、抗摩耗用阻害剤(antiwear inhibitor)、腐食阻害剤、流動点降下剤、粘度改良剤、粘着付与剤、金属不活性化剤、極圧添加剤、摩擦調整剤、潤滑用添加剤、抑泡剤、乳化剤、抗乳化剤、酸捕捉剤、またはこれらの混合物が挙げられる。
一部の実施形態では、潤滑剤組成物は、酸化防止剤を含む。一部の実施形態では、潤滑剤組成物は、金属不動態化剤を含み、ここで、金属不動態化剤は、腐食阻害剤および/または金属不活性化剤を含んでもよい。一部の実施形態では潤滑剤組成物は腐食阻害剤を含む。さらに他の実施形態では、潤滑剤組成物は、金属不活性化剤と腐食阻害剤の組合せを含む。またさらなる実施形態では、潤滑剤組成物は、酸化防止剤、金属不活性化剤および腐食阻害剤の組合せを含む。これらの実施形態のいずれかでは、潤滑剤組成物は、1つまたは複数の追加の性能添加剤を含む。
酸化防止剤として、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、フェニル−a−ナフチルアミン(PANA)、オクチル化/ブチル化ジフェニルアミン、高分子量フェノール系酸化防止剤、ヒンダードビスフェノール系酸化防止剤、ジ−アルファ−トコフェロール、ジ−第三級ブチルフェノールが挙げられる。他の有用な酸化防止剤は、米国特許第6,534,454号に記載されている。
一部の実施形態では、酸化防止剤として、
(i)BASFから市販されている、ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、CAS登録番号35074−77−2;
(ii)BASFから市販されている、N−フェニルベンゼンアミン、2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物、CAS登録番号68411−46−1;
(iii)フェニル−a−および/またはフェニル−b−ナフチルアミン、例えばBASFから市販されている、N−フェニル−ar−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−1−ナフタレンアミン;
(iv)テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、CAS登録番号6683−19−8;
(v)チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、CAS登録番号41484−35−9(これは、21C.F.R.§178.3570に、チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロ−シンナメート)としても列挙されている);
(vi)ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);
(vii)ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA);
(viii)BASFから市販されている、ビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)アミン;および
(ix)BASFから市販されている、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−,チオジ−2,1−エタンジイルエステル
のうちの1つまたは複数が挙げられる。
酸化防止剤は、組成物中に、0.01%から6.0%または0.02%から1%存在することができる。添加剤は、組成物中に、1%、0.5%またはそれ未満存在することができる。これらの種々の範囲は、典型的には、全組成物中に存在する酸化防止剤のすべてに適用される。しかし、一部の実施形態では、これらの範囲を、個々の酸化防止剤に適用してもよい。
金属不動態化剤は、金属不活性化剤と腐食阻害剤の両方を含む。
適切な金属不活性化剤として、トリアゾールまたは置換トリアゾールが挙げられる。例えば、トリルトリアゾールまたはトルトリアゾールを利用してもよい。金属不活性化剤の適切な例として、
(i)1つまたは複数のトル−トリアゾール、例えば、Irgamet 39の商品名のもとでBASFによって市販されているN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミン、CAS登録番号94270−86−70;
(ii)動物および/もしくは植物源に由来する1つもしくは複数の脂肪酸、ならびに/または、このような脂肪酸の水素化形態、例えば、Akzo Novel Chemicals,Ltd.から市販されているNeo−Fat(商標)
のうちの1つまたは複数が挙げられる。
適切な腐食阻害剤として、
(i)N−メチル−N−(1−オキソ−9−オクタデセニル)グリシン、CAS登録番号110−25−8;
(ii)tert−アルキルおよび(C12〜C14)第一級アミンと反応したリン酸モノおよびジイソオクチルエステル、CAS登録番号68187−67−7;
(iii)ドデカン酸;
(iv)トリフェニルホスホロチオネート、CAS登録番号597−82−0;ならびに
(v)リン酸モノおよびジヘキシルエステル、テトラメチルノニルアミンおよびC11〜14アルキルアミンを有する化合物
のうちの1つまたは複数が挙げられる。
一実施形態では、金属不動態化剤は、腐食用添加剤および金属不活性化剤から構成される。1つの有用な添加剤は、サルコシンのN−アシル誘導体などのサルコシンのN−アシル誘導体である。一例は、N−メチル−N−(1−オキソ−9−オクタデセニル)グリシンである。この誘導体は、SARKOSYL(商標)Oの商品名のもとでBASFから入手可能である。別の添加剤は、BASFから市販されているAmine O(商標)などのイミダゾリンである。
金属不動態化剤は、組成物中に、0.01%から6.0%または0.02%から0.1%存在することができる。添加剤は、組成物中に、0.05%またはそれ未満存在することができる。これらの種々の範囲は、典型的には、全組成物中に存在する金属不動態化添加剤のすべてに適用される。しかし、一部の実施形態では、これらの範囲を、個々の腐食阻害剤および/または金属不活性化剤に適用してもよい。この範囲は、全組成物中に存在するすべての腐食阻害剤、金属不活性化剤および酸化防止剤を全部組み合わせたものに適用してもよい。
本明細書に記載の組成物は、1つまたは複数の追加の性能添加剤を含んでもよい。適切な添加剤として、抗摩耗用阻害剤、防錆剤/腐食阻害剤および/または金属不活性化剤(上述のもの以外)、流動点降下剤、粘度改良剤、粘着付与剤、極圧(EP)添加剤、摩擦調整剤、抑泡剤、乳化剤、および抗乳化剤が挙げられる。
金属表面における摩耗を防止するのを補助するために、本発明は、追加の抗摩耗用阻害剤/EP添加剤および摩擦調整剤を利用することができる。抗摩耗用阻害剤、EP添加剤、および摩擦調整剤は、様々な販売会社および製造業者から即納で入手可能である。これらの添加剤のいくつかは、1つより多くの役割を果たすことができる。抗摩耗、EP、摩擦低減および腐食阻害を提供できる1つの製品は、BASFから市販されているIrgalube 349などのリンアミン塩である。別の抗摩耗/EP阻害剤/摩擦調整剤は、Irgalube TPPTの商品名のもとでBASFから市販されている、トリフェニルホスホチオネート(TPPT)などのリン化合物である。別の抗摩耗/EP阻害剤/摩擦調整剤は、Kronitex TCPの商品名のもとでChemturaから市販されている、リン酸トリクレジル(TCP)などのリン化合物である。別の抗摩耗/EP阻害剤/摩擦調整剤は、Syn−O−Ad 8478の商品名のもとでICL Industrial Productsから市販されている、リン酸t−ブチルフェニルなどのリン化合物である。抗摩耗用阻害剤、EP、および摩擦調整剤は、典型的には、組成物の0.1%から4%であり、別々に使用してもまたは組み合わせて使用してもよい。
一部の実施形態では、組成物は、エチレン酢酸ビニル、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメタクリレート、オレフィンコポリマー、スチレン無水マレイン酸コポリマーのエステル、水素化スチレン−ジエンコポリマー、水素化ラジアルポリイソプレン、アルキル化ポリスチレン、ヒュームドシリカ、および複合エステル;ならびに油中に可溶化された天然ゴムのような粘着付与剤を含む、粘度調整剤を含む群からの添加剤をさらに含む。
粘度調整剤、増粘剤、および/または粘着付与剤の添加は、接着性をもたらし、潤滑剤の粘度および粘度指数を改善する。いくつかの用途および環境条件は、腐食および摩耗から機器を保護する追加的な粘着性表面フィルムを必要とする場合がある。この実施形態では、粘度調整剤、増粘剤/粘着付与剤は、潤滑剤の1から20wt%である。しかし、粘度調整剤、増粘剤/粘着付与剤は、0.5から30wt%であってもよい。材料の例は、Functional Products,Inc.、Macedonia、Ohioから入手可能である、Functional V−584天然ゴム粘度調整剤/粘着付与剤である。別の例は、Inolex Chemical Co.Philadelphia、Paからの、複数機能製品でもある、粘度調整剤、流動点降下剤、および摩擦調整剤である複合エステルCG5000である。
他の油および/または成分は、0.1から75%またはさらには0.1から50%またはさらには0.1から30%の範囲で、組成物に添加されてもよい。これらの油は、白色石油(white petroleum oil)、合成エステル(米国特許第6,534,454号に記載される)、高度に水素化処理された石油(「グループIIまたはグループIIIの石油」として工業界で公知)、1つまたは複数の直鎖状カルボン酸のエステル、ポリアルファオレフィン(PAO)基油、アルキルベンゼン基油、ポリアルキレングリコール(PAG)基油、アルキル化ナフタレン基油、またはこれらの任意の組合せを含むことができる。
潤滑剤は、冷却システムで使用することができ、ここで、冷却システムは、コンプレッサーと加工流体を含み、加工流体は、潤滑剤および冷却材を含む。上述の任意の加工流体を記載された冷却システムで使用してもよい。
潤滑剤は、冷却システムを作動させる方法を提供することを可能とすることもできる。記載された方法は、(I)冷却システムに潤滑剤と冷却材を含む加工流体を供給するステップを含む。上述の任意の加工流体を記載された冷却システムのいずれかを作動させる方法で使用してもよい。
したがって、本発明の方法、システムおよび組成物は、多種多様な一般的な熱伝達システムおよび特定の冷却システム、例えば、空調システム(固定空調システムとモバイル空調システムの両方を含む)、冷却システム、ヒートポンプ、または工業などのガス圧縮システムもしくは炭化水素ガス処理システムと接続して使用するように適合可能である。このような圧縮システムは、炭化水素ガス処理または工業用ガス処理システムにおいて使用される。本明細書で使用する場合、用語「冷却システム」は、一般的に、冷却および/または加熱を提供する冷却材を用いる任意のシステムもしくは装置、またはこのようなシステムもしくは装置の任意の部品もしくは部分を指す。このような冷却システムとして、例えば、空調システム、電気冷蔵庫、冷却装置、またはヒートポンプが挙げられる。
冷却材潤滑剤の摩耗性能を、流体潤滑剤の極圧特性の測定のためのASTM D3233−93(2009)e1標準試験法およびVee Block方法の方法論を用いることによって決定することができる。
工業的ギア
本発明の潤滑剤は、工業的潤滑剤添加剤パッケージとも称され得る工業的添加剤パッケージを含んでもよい。言い換えれば、潤滑剤は、工業的潤滑剤、またはそれを作製するための添加剤パッケージとなるように設計される。潤滑剤は、自動車用ギア潤滑剤または他の潤滑剤組成物に関連しない。
一部の実施形態では、工業的潤滑剤添加剤パッケージは、抗乳化剤、分散剤、および金属不活性化剤を含む。工業的用途のために設計された従来の添加剤パッケージの任意の組合せを使用してもよい。本発明は、一部の実施形態では、添加剤パッケージが、本明細書に記載の相溶化剤を完全に含まない訳でないにしても、本質的に含まないか、または本発明によって特定されたタイプの相溶化剤を特定された量で少なくとも含有しないことを特定する。
工業的添加剤パッケージ中に存在していてよい添加剤として、抑泡剤、抗乳化剤、流動点降下剤、酸化防止剤、分散剤、金属不活性化剤(例えば、銅不活性化剤)、抗摩耗剤、極圧剤、粘度調整剤、またはこれらの一部の混合物が挙げられる。添加剤は、それぞれ、50ppm、75ppm、100ppmもしくはさらには150ppmから、最大で5wt%、4wt%、3wt%、2wt%もしくはさらには1.5wt%、または75ppmから0.5wt%、100ppmから0.4wt%、または150ppmから0.3wt%の範囲で、存在することができ、ここで、wt%値は、全潤滑剤組成物に対してである。他の実施形態では、全工業的添加剤パッケージは、全潤滑剤組成物の1から20または1から10wt%存在することができる。しかし、ベース流体の一部として代替的に考えられ得る粘度調整ポリマーを含む一部の添加剤は、ベース流体とは別個に考慮した場合、最大で30wt%、40wt%、またはさらには50wt%を含むより高い量で存在することができることに留意すべきである。添加剤は、単独でまたはこれらの混合物として使用してもよい。
潤滑剤は、消泡剤を含んでもよい。消泡剤として、有機シリコーンおよび非ケイ素型抑泡剤を挙げることができる。有機シリコーンの例として、ジメチルシリコーンおよびポリシロキサンが挙げられる。非ケイ素型抑泡剤の例として、ポリエーテル、ポリアクリレートおよびこれらの混合物ならびにエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、および任意選択の酢酸ビニルのコポリマーが挙げられる。一部の実施形態では、消泡剤は、ポリアクリレートであってもよい。消泡剤は、組成物中に、0.001wt%から0.012wt%または0.004wt%またはさらには0.001wt%から0.003wt%存在することができる。
潤滑剤は、抗乳化剤を含んでもよい。抗乳化剤として、エチレンオキシドもしくは置換エチレンオキシドまたはこれらの混合物と順次反応する、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ポリオキシアルキレンアルコール、アルキルアミン、アミノアルコール、ジアミンまたはポリアミンの誘導体を挙げることができる。抗乳化剤の例として、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーおよびこれらの混合物が挙げられる。抗乳化剤は、ポリエーテルであってもよい。抗乳化剤は、組成物中に、0.002wt%から0.2wt%存在することができる。
潤滑剤は、流動点降下剤を含んでもよい。流動点降下剤として、無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステル、ポリメタクリレート;ポリアクリレート;ポリアクリルアミド;ハロパラフィンワックスと芳香族化合物の縮合生成物;ビニルカルボキシレートポリマー;およびジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合樹脂、アルキルビニルエーテルおよびこれらの混合物を挙げることができる。
潤滑剤は、上述の添加剤のうちのいくつかの他に、防錆剤を含んでもよい。
潤滑剤は、防錆剤を含んでもよい。適切な防錆剤として、アルキルリン酸のヒドロカルビルアミン塩、ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩、ヒドロカルビルアリールスルホン酸のヒドロカルビルアミン塩、脂肪カルボン酸またはそのエステル、窒素含有カルボン酸のエステル、スルホン酸アンモニウム、イミダゾリン、またはこれらの任意の組合せ;またはこれらの混合物が挙げられる。
アルキルリン酸の適切なヒドロカルビルアミン塩は、以下の式:
(式中、R
26およびR
27は、独立して、水素、アルキル鎖またはヒドロカルビルであり、典型的には、R
26およびR
27の少なくとも1つはヒドロカルビルである。R
26およびR
27は、4から30、または8から25、または10から20、または13から19個の炭素原子を含有する。R
28、R
29およびR
30は、独立して、水素、1から30、または4から24、または6から20、または10から16個の炭素原子を有するアルキル分枝状または直鎖状アルキル鎖である。R
28、R
29およびR
30は、独立して、水素、アルキル分枝状または直鎖状アルキル鎖であるか、または、R
28、R
29およびR
30の少なくとも1つもしくは2つは水素である)
で表すことができる。
R28、R29およびR30に適したアルキル基の例として、ブチル、secブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、secヘキシル、n−オクチル、2−エチル、ヘキシル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オクタデセニル、ノナデシル、エイコシルまたはこれらの混合物が挙げられる。
一実施形態では、アルキルリン酸のヒドロカルビルアミン塩は、C14からC18アルキル化リン酸とC11からC14第三級アルキル第一級アミンの混合物であり得るPrimene 81R(Rohm&Haasにより生産および販売されている)との反応生成物であり得る。
ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩は、防錆剤、例えば、ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩を含んでもよい。これらは、ヘプチルジチオリン酸またはオクチルジチオリン酸またはノニルジチオリン酸と、エチレンジアミン、モルホリンもしくはPrimene 81Rまたはこれらの混合物との反応生成物であってもよい。
ヒドロカルビルアリールスルホン酸のヒドロカルビルアミン塩は、ジノニルナフタレンスルホン酸のエチレンジアミン塩を含んでもよい。
適切な脂肪カルボン酸またはそのエステルの例として、グリセロールモノオレエートおよびオレイン酸が挙げられる。窒素含有カルボン酸の適切なエステルの例として、オレイルサルコシンが挙げられる。
潤滑剤は、金属不活性化剤、またはこれらの混合物を含有してもよい。金属不活性化剤は、ベンゾトリアゾール(典型的には、トリルトリアゾール)の誘導体、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾールまたは2−アルキルジチオベンゾチアゾール、1−アミノ−2−プロパノール、ジメルカプトチアジアゾールの誘導体、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸もしくはその無水物および/またはオレイン酸などの脂肪酸とポリアミンとの縮合生成物から選択してもよい。金属不活性化剤は、腐食阻害剤と記載してもよい。金属不活性化剤は、潤滑油組成物の0.001wt%から0.5wt%、0.01wt%から0.04wt%または0.015wt%から0.03wt%の範囲で、存在することができる。金属不活性化剤は、組成物中に、0.002wt%または0.004wt%から0.02wt%存在してもよい。金属不活性化剤は、単独でまたはこれらの混合物で使用することができる。
潤滑剤は、酸化防止剤、またはこれらの混合物を含んでもよい。(i)アルキル化ジフェニルアミン、および(ii)置換ヒドロカルビルモノスルフィドを含む酸化防止剤。一部の実施形態では、アルキル化ジフェニルアミンとして、ビス−ノニル化ジフェニルアミンおよびビス−オクチル化ジフェニルアミンが挙げられる。一部の実施形態では、置換ヒドロカルビルモノスルフィドとして、n−ドデシル−2−ヒドロキシエチルスルフィド、1−(tert−ドデシルチオ)−2−プロパノール、またはこれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、置換ヒドロカルビルモノスルフィドは、1−(tert−ドデシルチオ)−2−プロパノールであってもよい。酸化防止剤パッケージとして、立体ヒンダードフェノールを挙げることもできる。立体ヒンダードフェノールに対して適切なヒドロカルビル基の例として、2−エチルヘキシルまたはn−ブチルエステル、ドデシルまたはこれらの混合物が挙げられる。メチレン−架橋立体ヒンダードフェノールの例として、4,4’−メチレン−ビス(6−tert−ブチルo−クレゾール)、4,4’−メチレン−ビス(2−tert−アミル−o−クレゾール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tertブチルフェノール)またはこれらの混合物が挙げられる。
酸化防止剤は、組成物中に、0.01wt%から6.0wt%または0.02wt%から1wt%存在することができる。添加剤は、組成物中に、1wt%、0.5wt%、またはそれ未満存在することができる。
潤滑剤は、窒素含有分散剤、例えば、ヒドロカルビル置換窒素含有添加剤を含んでもよい。適切なヒドロカルビル置換窒素含有添加剤として、無灰分散剤およびポリマー性分散剤が挙げられる。無灰分散剤は、供給された場合、それらが金属を含有せず、したがって、通常潤滑剤に添加された場合に硫酸灰分に寄与しないので、そのように称される。しかし、それらは、もちろん、金属含有種を含む潤滑剤に一旦添加されると、周囲の金属と相互作用する可能性がある。無灰分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖と結合した極性基によって特徴付けられる。このような材料の例として、スクシンイミド分散剤、マンニッヒ分散剤、およびそのホウ素化誘導体が挙げられる。
潤滑剤として、硫黄含有化合物を挙げることもできる。適切な硫黄含有化合物として、硫化オレフィンおよびポリスルフィドが挙げられる。硫化オレフィンまたはポリスルフィドは、イソブチレン、ブチレン、プロピレン、エチレン、またはこれらのいくつかの組合せから導出してもよい。一部の例では、硫黄含有化合物は、上述の天然油または合成油のいずれか、またはさらにはこれらのいくつかの組合せから導出される硫化オレフィンである。例えば、硫化オレフィンは、植物油から導出されてもよい。硫化オレフィンは、潤滑剤組成物中に、0wt%から5.0wt%または0.01wt%から4.0wt%または0.1wt%から3.0wt%存在することができる。
潤滑剤は、脂肪ホスファイトなどのリン含有化合物を含んでもよい。リン含有化合物として、ヒドロカルビルホスファイト、リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩、またはこれらの任意の組合せを挙げることができる。一部の実施形態では、リン含有化合物として、ヒドロカルビルホスファイト、そのエステル、またはこれらの組合せを挙げることができる。一部の実施形態では、リン含有化合物として、ヒドロカルビルホスファイトが挙げられる。一部の実施形態では、ヒドロカルビルホスファイトは、アルキルホスファイトであってもよい。アルキルとは、炭素原子および水素原子だけを含有するアルキル基を意味するが、飽和アルキル基または不飽和アルキル基またはこれらの組合せが企図される。一部の実施形態では、リン含有化合物として、完全飽和アルキル基を有するアルキルホスファイトが挙げられる。一部の実施形態では、リン含有化合物として、いくらかの不飽和、例えば、炭素原子間に1つの二重結合を有するアルキル基を有するアルキルホスファイトが挙げられる。このような不飽和アルキル基は、アルケニル基と称される場合もあるが、他に記述がなければ、本明細書で使用する場合、「アルキル基」という用語に含まれる。一部の実施形態では、リン含有化合物として、アルキルホスファイト、リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。一部の実施形態では、リン含有化合物として、アルキルホスファイト、そのエステル、またはこれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、リン含有化合物として、アルキルホスファイトが挙げられる。一部の実施形態では、リン含有化合物として、アルケニルホスファイト、リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。一部の実施形態では、リン含有化合物として、アルケニルホスファイト、そのエステル、またはこれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、リン含有化合物として、アルケニルホスファイトが挙げられる。一部の実施形態では、リン含有化合物として、ジアルキル水素ホスファイトが挙げられる。一部の実施形態では、リン含有化合物は、リン酸エステルおよび/またはそのアミン塩を本質的に含まないか、またはさらには完全に含まない。一部の実施形態では、リン含有化合物は、脂肪ホスファイトと記載することができる。適切なホスファイトとして、4個もしくはそれより多い、または8個もしくはそれより多い、または12個もしくはそれより多い炭素原子を有する少なくとも1つのヒドロカルビル基を有するものが挙げられる。ヒドロカルビル基上の炭素原子数についての典型的範囲は、8から30、または10から24、または12から22、または14から20、または16から18を含む。ホスファイトは、モノヒドロカルビル置換ホスファイト、ジヒドロカルビル置換ホスファイト、またはトリヒドロカルビル置換ホスファイトであってもよい。一実施形態では、ホスファイトは、硫黄を含まなくてもよく、すなわち、ホスファイトは、チオホスファイトではない。4個またはそれより多い炭素原子を有する少なくとも1つのヒドロカルビル基を有するホスファイトは、式:
(式中、R
6、R
7およびR
8の少なくとも1つは、少なくとも4個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であってもよく、他のものは、水素またはヒドロカルビル基であってもよい。)で表すことができる。一実施形態では、R
6、R
7およびR
8は、すべてヒドロカルビル基である。ヒドロカルビル基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、非環式またはこれらの混合物であってもよい。3つの基R
6、R
7およびR
8のすべてを有する式において、化合物は、トリヒドロカルビル置換ホスファイトであってもよく、すなわち、R
6、R
7およびR
8はすべてヒドロカルビル基であり、一部の実施形態では、アルキル基であってもよい。
アルキル基は、直鎖状または分枝状、典型的には、直鎖状であり、飽和または不飽和、典型的には、飽和であってもよい。R6、R7およびR8に対するアルキル基の例として、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オクタデセニル、ノナデシル、エイコシルまたはこれらの混合物が挙げられる。一部の実施形態では、脂肪ホスファイト成分、潤滑剤組成物は全体として、リン酸エステルおよび/またはそのアミン塩を本質的に含まないか、またはさらには完全に含まない。一部の実施形態では、脂肪ホスファイトは、アルケニルホスファイトまたはそのエステル、例えば、ジメチル水素ホスファイトのエステルを含む。ジメチル水素ホスファイトは、エステル化されていてもよく、一部の実施形態では、アルコール、例えば、オレイルアルコールとの反応によってエステル交換されていてもよい。
潤滑剤は、添加剤パッケージ、または、他の実施形態では、得られる工業的潤滑剤組成物が、1.0wt%以下のこのような材料、またはさらには0.75wt%以下または0.6wt%以下のこのような材料を含有するような量で、1つまたは複数の亜リン酸アミン塩(phosphorous amine salt)を含んでもよい。他の実施形態では、工業的潤滑剤添加剤パッケージ、または得られる工業的潤滑剤組成物は、亜リン酸アミン塩を本質的に含まないか、またはさらには完全に含まない。
潤滑剤は、1つもしくは複数の抗摩耗添加剤および/もしくは極圧剤、1つもしくは複数の防錆剤および/もしくは腐食阻害剤、1つもしくは複数の抑泡剤、1つもしくは複数の抗乳化剤、またはそれらの任意の組合せを含んでもよい。
一部の実施形態では、工業的潤滑剤添加剤パッケージ、または得られる工業的潤滑剤組成物は、亜リン酸アミン塩、分散剤、またはその両方を本質的に含まないかまたはさらには完全に含まない。
一部の実施形態では、工業的潤滑剤添加剤パッケージ、または得られる工業的潤滑剤組成物として、抗乳化剤、腐食阻害剤、摩擦調整剤または、これらの2つもしくはそれより多くの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、腐食阻害剤として、トリルトリアゾールが挙げられる。さらに他の実施形態では、工業的添加剤パッケージ、または得られる工業的潤滑剤組成物として、1つもしくは複数の硫化オレフィンまたはポリスルフィド;1つもしくは複数のリンアミン塩(phosphorus amine salt);1つもしくは複数のチオリン酸エステル、1つもしくは複数のチアジアゾール、トリルトリアゾール、ポリエーテル、および/またはアルケニルアミン;1つもしくは複数のエステルコポリマー;1つもしくは複数のカルボン酸エステル;1つもしくは複数のスクシンイミド分散剤、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
工業的潤滑剤添加剤パッケージは、全工業的潤滑剤中に、1wt%から5wt%、または他の実施形態では、1wt%、1.5wt%、またはさらには2wt%から、最大で2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、7wt%、またはさらには10wt%存在してもよい。工業的ギア濃縮物潤滑剤中に存在してもよい工業的ギア添加剤パッケージの量は、上記wt%に相当する量であり、この値は、存在する油なしで考慮される(すなわち、それらは、存在する実際の油量と一緒にしてwt%値として扱うことができる)。
潤滑剤は、ヒドロキシ−カルボン酸の誘導体を含んでもよい。適切な酸は、1から5もしくは2個のカルボキシ基または1から5もしくは2個の水酸基を含んでもよい。一部の実施形態では、摩擦調整剤は、式:
(式中、aおよびbは、独立して、1から5、または1から2の整数であってもよく;Xは、脂肪族もしくは脂環式基、またはその炭素鎖中に酸素原子を含む脂肪族もしくは脂環式基、または前述のタイプの置換基であって、最大で6個の炭素原子を含有し、a+b個の利用可能な結合点を有する基であってもよく;各Yは、独立して、−O−、>NH、もしくは>NR
3であるか、または2つのYが一緒になって、2つのカルボニル基間で形成されたイミド構造R
4−N<の窒素を表してもよく;各R
3およびR
4は、独立して、水素またはヒドロカルビル基であってもよく、但し、少なくとも1つのR
1およびR
3基は、ヒドロカルビル基であってもよいことを条件とし;各R
2は、独立して、水素、ヒドロカルビル基またはアシル基であってもよく、但し、さらに、少なくとも1つの−OR
2基は、−C(O)−Y−R
1基の少なくとも1つに対してαまたはβであるX内の炭素原子上に位置し、さらに、R
2の少なくとも1つは水素であることを条件とする)で表されるヒドロキシ−カルボン酸から誘導することができる。ヒドロキシ−カルボン酸を、縮合反応によってアルコールおよび/またはアミンと反応させ、ヒドロキシ−カルボン酸の誘導体を形成させる、これを、本明細書では摩擦調整用添加剤と称する場合もある。一実施形態では、ヒドロキシ−カルボン酸の誘導体の調製において使用されるヒドロキシ−カルボン酸は式:
(式中、各R
5は、独立して、Hまたはヒドロカルビル基であってもよく、またはR
5基は一緒になって環を形成する)で表される。一実施形態では、R
5がHである場合、縮合生成物は、任意選択で、アシル化、またはホウ素化合物との反応によってさらに官能化されている。別の実施形態では、摩擦調整剤は、ホウ素化されていない。上記実施形態のいずれかでは、ヒドロキシ−カルボン酸は、酒石酸、クエン酸、またはこれらの組合せであってもよく、このような酸の反応同等物(エステル、酸ハロゲン化物、または無水物を含む)であってもよい。
得られる摩擦調整剤は、酒石酸、クエン酸のイミド、ジエステル、ジアミド、もしくはエステル−アミド誘導体、またはこれらの混合物を含んでもよい。一実施形態では、ヒドロキシカルボン酸の誘導体として、酒石酸またはクエン酸のイミド、ジエステル、ジアミド、イミドアミド、イミドエステルまたはエステル−アミド誘導体が挙げられる。一実施形態では、ヒドロキシカルボン酸の誘導体として、酒石酸のイミド、ジエステル、ジアミド、イミドアミド、イミドエステルまたはエステル−アミド誘導体が挙げられる。一実施形態では、ヒドロキシカルボン酸の誘導体として、酒石酸のエステル誘導体が挙げられる。一実施形態では、ヒドロキシカルボン酸の誘導体として、酒石酸のイミドおよび/またはアミド誘導体が挙げられる。摩擦調整剤の調製に使用されるアミンは、式RR’NH(式中、RおよびR’は、それぞれ独立して、H、1もしくは8から30もしくは150個の炭素原子、すなわち1から150もしくは8から30または1から30もしくは8から150個の原子の炭化水素ベースの基を表す)を有してもよい。2、3、4、6、10、または12個の炭素原子の下限および120、80、48、24、20、18、または16個の炭素原子の上限を有する炭素原子の範囲を有するアミンを使用してもよい。一実施形態では、基RおよびR’のそれぞれは、8または6から30または12個の炭素原子を有する。一実施形態では、RおよびR’における炭素原子の合計は少なくとも8である。RおよびR’は直鎖状であっても分枝状であってもよい。摩擦調整剤を調製するのに有用なアルコールは、同様に、1または8から30または150個の炭素原子を含有する。2、3、4、6、10、または12個の炭素原子の下限および120、80、48、24、20、18、または16個の炭素原子の上限の炭素原子の範囲を有するアルコールを使用してもよい。ある特定の実施形態では、アルコールから導出される基における炭素原子数は、8から24、10から18、12から16、または13個の炭素原子であってもよい。アルコールおよびアミンは、直鎖状であっても分枝状であってもよく、分枝状である場合、分枝は鎖中の任意の点で生じる可能性があり、分枝は任意の長さのものであってもよい。一部の実施形態では、使用されるアルコールおよび/またはアミンには、分枝状化合物が含まれ、さらに他の実施形態では、使用されるアルコールおよびアミンは、少なくとも50%、75%またはさらには80%分枝状である。他の実施形態では、アルコールは直鎖状である。一部の実施形態では、アルコールおよび/またはアミンは、少なくとも6個の炭素原子を有する。したがって、ある特定の実施形態では、生成物は、単一の材料としてまたは混合物としてのいずれかの、少なくとも6個の炭素原子の分枝状アルコールおよび/またはアミン、例えば、分枝状C6〜18もしくはC8〜18アルコールまたは分枝状C12〜16アルコールから調製される。具体例として、2−エチルヘキサノールおよびイソトリデシルアルコールが挙げられ、後者は、市販グレードの種々の異性体の混合物を代表することができる。また、ある特定の実施形態では、生成物は、単一の材料としてまたは混合物としてのいずれかの、少なくとも6個の炭素原子の直鎖状アルコール、例えば、直鎖状C6〜18もしくはC8〜18アルコールまたは直鎖状C12〜16アルコールから調製される。タルトレート、酒石酸イミド、または酒石酸アミドを調製するために使用される酒石酸は、市販されているタイプのものであってもよく(Sargent Welchから得られる)、これは、しばしば供給源(天然)かまたは合成方法(例えば、マレイン酸から)に応じて、d−酒石酸、l−酒石酸、d,l−酒石酸またはメソ−酒石酸などの1つもしくは複数の異性体の形態で存在する。これらの誘導体は、エステル、酸塩化物、または無水物などの当業者に容易に明らかな二酸に対する官能性同等物から調製することもできる。
一部の実施形態では、添加剤パッケージは、1つまたは複数の腐食阻害剤、1つまたは複数の分散剤、1つまたは複数の抗摩耗および/または極圧添加剤、1つまたは複数の極圧剤、1つまたは複数の消泡剤、1つまたは複数の清浄剤、および、希釈剤としての任意選択のいくらかの量の基油または同様の溶剤を含む。
追加の添加剤は、全工業的ギア潤滑剤組成物中に、0.1wt%から30wt%、または0.1wt%、1wt%、もしくはさらには2wt%の最小レベルから、30wt%、20wt%、10wt%、5wt%、もしくはさらには2wt%の最大レベルまで、または0.1wt%から30wt%、0.1wt%から20wt%、1wt%から20wt%、1wt%から10wt%、1wt%から5wt%、またはさらには約2wt%で存在することができる。これらの範囲および限界は、組成物中に存在するそれぞれ個々の追加の添加剤、または存在する追加の添加剤のすべてに適用することができる。
工業的ギア潤滑剤は:
0.01wt%から5wt%のリン−アミン塩、
2,5−ビス(tert−ドデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、トリルトリアゾールまたはこれらの混合物から選択される、0.0001wt%から0.15wt%の腐食阻害剤、
潤滑粘度の油、
アミン性もしくはフェノール性抗酸化剤、またはこれらの混合物から選択される、0.02wt%から3wt%の抗酸化剤、
0.005wt%から1.5wt%のホウ素化スクシンイミドまたは非ホウ素化スクシンイミド、
0.001wt%から1.5wt%の中性またはやや過塩基性のカルシウムナフタレンスルホネート(典型的には、中性またはやや過塩基性のカルシウムジノニルナフタレンスルホネート)、ならびに
0.001wt%から2wt%、または0.01wt%から1wt%の、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアルキルリン酸亜鉛、リン含有酸もしくはエステルのアミン塩、またはこれらの混合物から選択される抗摩耗剤(本発明のプロトン性の塩以外)
を含むことができる。
工業的ギア潤滑剤は、以下の表で定義した調合物も含むことができる:
工業的ギア潤滑剤の具体例として、以下の表にまとめたものが挙げられる:
各潤滑剤の抗摩耗性能は、潤滑流体の極圧特性の測定のための標準試験法ASTM D2782−02(2008年)(Timkenの方法)、潤滑流体の極圧特性の測定のための標準試験法ASTM D2783−03(2009年)(四球法)、潤滑流体の摩耗防止の特徴についての標準試験法ASTM D4172−94(2010年)(四球法)および油のスカッフィング負荷容量を評価するための標準試験法ASTM D5182−97(2014年)(FZG視覚法)に従って評価されてもよい。
本明細書に記載の材料のうちのいくつかが最終調合物中で相互作用し、その結果、最終調合物の成分は、最初に添加したものと異なる場合があることは公知である。例えば、金属イオン(例えば、清浄剤の)は、他の分子の他の酸性または陰イオン部位に移行することができる。その意図した用途において、本発明の組成物を用いて形成した生成物を含む、それによって形成した生成物は、容易に記載することができないかもしれない。それにもかかわらず、すべてのこのような改変および反応生成物は、本発明の範囲内に含まれ;本発明は、上記成分を混合することによって調製した組成物を包含する。
本発明は、本明細書において、以下の実施例を参照して、より良く理解することができる。
リン酸エステルの形成に対する一般的手順
アルコールを、凝縮器、オーバーヘッド機械スターラー、窒素入口、および熱電対を装備した乾燥多頚フランジフラスコに投入する。フラスコを40から70℃の間まで加熱し、次いで、40から80℃の間の温度を維持しながら、五酸化二リンをゆっくりと添加する。次いで、混合物を60から90℃まで加熱し、追加の3から20時間撹拌する。任意の過剰アルコールを真空蒸留によって除去してもよい。アルコール対五酸化二リン(P2O5)のモル比は、4:1から2.5:1、すなわち、リンごとに、典型的には、2から1.25当量のアルコールが存在する。
塩の形成に対する一般的手順
リン酸エステル混合物(上述のように生成した)を、凝縮器、マグネチックスターラー、窒素入口、および熱電対を装備した三つ首丸底フラスコに投入する。およそ1時間かけて、アミンを0.95当量基準でフラスコに添加する。この時間中、発熱が観察される。次いで、混合物を少なくとも100℃まで加熱し、3から5時間保持する。
上記実施例は、本明細書に記載の硫黄を含まないアルキルホスフェートアミン塩のすべてに対して共通である。当業者は、出発材料を変化させて所望の生成物(複数可)に達するために、化学量論、反応時間、反応温度の調整が必要とされる可能性を認識するであろう。
式IVのリン−アミン塩の形成
ビス−2−エチルヘキシルアミン(463.6g)を、窒素入口、熱電対、凝縮器、オーバーヘッドスターラーおよび冷却バスを備えた2Lの多頚フラスコに投入する。ジクロロメタン(2.5L)をフラスコに添加した後、フェニルアセトアルデヒド(300g)を添加して、発熱を観察する。発熱が低下した後、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(STAB)(415.18g)を2回に分けて添加し、次いで、反応混合物を窒素ブランケット下で終夜撹拌する。この点で、25wt%の、水酸化ナトリウム水溶液を添加し(750ml)、沈殿を形成させる。次いで、混合物を焼成した珪藻土を通して濾過し、有機濾液を、中性pHが検出されるまで水で洗浄する。次いで、有機濾液を硫酸ナトリウムに対して乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、立体障害アミン誘導体を含む薄いオレンジの油を取り出す。
式Vのリン−アミン塩の形成
別の例では、AkzoNobelから入手可能なDuomeen 218iなどのn−n−ジアルキル1,3−ジアミノプロパン(diminopropane)(207.8g)を、窒素入口、熱電対、凝縮器(ディーンスタークトラップを有する)およびオーバーヘッドスターラーを備えた1Lの多頚フラスコに投入する。ジメチルオキサレート(19.7g)を添加し、混合物を90℃まで加熱し、2時間撹拌する。次いで、混合物を155℃までさらに加熱し、さらに4時間保持する(メタノールを採取する)。ロータリーエバポレーションを使用して、減圧下で、任意の残存するメタノールを除去し、オキサルアミド誘導体を含む生成物を取り出す。
式VIのリン−アミン塩の形成
4−エトキシアニリン(175g)を、窒素入口、熱電対、凝縮器およびオーバーヘッドスターラーを備えた2Lの多頚フラスコに投入する。次いで、ジメチルホルムアミド(318ml)を添加した後、2−エチルヘキシルブロミド(740g)を添加し、最後に、炭酸カリウム(705g)を添加する。反応物を145℃まで加熱し、窒素ブランケット下で12時間撹拌し、次いで冷却する。反応混合物を濾過し、水を添加する(1.5L)。次いで、混合物を酢酸エチルで抽出する(4×700ml)。次いで、硫酸マグネシウムを用いて有機物を乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮する。貯蔵して、生成物を残りの1回濾過する。得られた生成物は、アルコキシアニリン誘導体を含む。
別の例では、イソステアリン酸(300g)を、窒素入口、熱電対、凝縮器(ディーンスタークトラップを有する)およびオーバーヘッドスターラーを備えた1Lの多頚フラスコに投入する。2−モルホリノエタノール(171.9g)をフラスコに添加し、反応混合物を撹拌しながら190℃まで加熱し、8時間保持して、17.9gの水を採取する。反応物を160℃まで冷却し、真空下で30分間濃縮する。得られた生成物は、モルホリンエステル誘導体を含む。
式VIの構造を有する別の実施例のリン−アミン塩は、Alfa Chemistry of Holtsville、New York、U.S.A.から購入することができるデシル2−アミノベンゾエートである。
式VIIのリン−アミン塩の形成
これらの材料の形成は、当業者に周知である。式Vの構造を有する実施例の材料は、Alfa Chemistry of Holtsville、New York、U.S.A.から購入することができる4,4’−ジノニルジフェニルアミンを含む。
式VIIIのリン−アミン塩の形成
パラフェニレンジアミン(143g)を、窒素入口、熱電対、凝縮器およびオーバーヘッドスターラーを備えた5Lの多頚フラスコに投入する。次いで、ジメチルホルムアミド(694.9g)をフラスコに添加した後、1−ブロモペンタン(1198.4g)および炭酸カリウム(1461.7g)を添加する。次いで、反応物を140℃まで加熱し、窒素パージ下で撹拌しながら24時間保持する。冷却したら、水をフラスコ(2L)に添加し、固体を溶解させる。次いで、水性層を排出させ、有機層を酢酸エチル(1L)で取り出す。次いで、有機相を、毎回1Lの酢酸エチルを使用して、4回洗浄する。次いで、洗浄した有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過する。次いで、溶剤を減圧下で除去する。次いで、粗製材料を、溶離液としてヘプタンを用いて開始し、次いで、酢酸エチル:ヘプタン(1:5)の混合物で生成物を溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製し、フェニルジアミン誘導体を得る。
別の例では、ジ−sec−ブチル−p−フェネレンジアミン(50g)を、窒素入口、熱電対、凝縮器、オーバーヘッドスターラーおよび冷却バスを備えた2Lの多頚フラスコに投入する。ジクロロメタン(1.2L)をフラスコに添加した後、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(STAB)を添加する。次いで、2−エチルヘキシルアルデヒドを100mlのジクロロメタンと混合し、30分かけて反応フラスコに添加すると、発熱を生じる。発熱が低下したら、反応物を3日間撹拌させる。次いで、反応混合物をより大きなフラスコに移し、次いで、飽和重炭酸ナトリウムを激しく撹拌しながら添加する(750ml)。有機層を水性層から分離し、ブライン(1L)で洗浄し、次いで、硫酸ナトリウムを添加して乾燥させる。濾過して、次いで、濾液を減圧下で濃縮し、フェニルジアミン誘導体を含む粗生成物を取り出す。
当業者は、出発材料を変化させて所望の生成物に達するために、化学量論、反応時間、反応温度および精製方法の調整が必要とされる可能性を認識するであろう。当業者は、出発材料を変化させて所望の生成物に達するために、化学量論、反応時間、反応温度、および精製方法の調整を含む、上記実施例の調整が必要とされる可能性を認識するであろう。
上述し、以下の表2、表3、および表4にまとめたものと同一または類似する手順を使用して、種々の材料を合成した。
次いで、得られたリン−アミン塩を、以下の表5にまとめた潤滑組成物に添加した。
調製した潤滑剤組成物を抗摩耗性およびシール適合性について試験した。潤滑剤組成物のシール適合性は、ASTM D 5662に従って試験する。適合性試験では、3つのパラメータ、体積、硬度、および引張強度の差を試験する。理想的には、潤滑剤組成物の影響は、これらの特性に最小限の影響しか与えない。
フルオロエラストマーシール材料の亜鈴型断片を、150℃で240時間、潤滑剤組成物中に浸漬する。試験開始(SOT)と試験終了(EOT)の体積の差を体積変化(%)として記録する(ASTM D471)。
次いで、断片のショア硬度の変化をSOTとEOTの間で測定する(ASTM D2240)。硬度の陰性変化は、試験片が軟化したことを示し、陽性変化は、硬化を示す。
最終的に、亜鈴型断片を引張強度測定機に入れる。各断片の終端を、断片が破断するまで引き離し、引張強度を測定する(ASTM D412)。潤滑剤組成物に曝露していない「新しい」断片を対照として使用する。潤滑剤組成物に曝露した断片の破断長と対照の間の差(%)が、破断伸度の測定値である。
適合性試験の結果を以下の表6に示す。表に示すように、比較例の調合物(COMP1)は実施例の調合物(EX2、EX5、EX8、EX10、およびEX14)よりも高いショア硬度変化と負荷下でのより早いエラストマーの破断を有する。
潤滑剤組成物のシール適合性を高周波往復動リグ試験(HFRR)を使用して試験した。プロトコールは以下の通りである:
負荷 100gおよび300g
持続期間 60分
周波数 20Hz
温度 100℃で等温
冶金 スチール上に標準スチール球
したがって、一実施形態では、潤滑粘度の油と、約0.01から約5重量パーセントの少なくとも1種のヒドロカルビルアミンの(チオ)リン酸塩(「リン−アミン塩」)とを含む潤滑剤組成物が開示される。ヒドロカルビルアミンは、ヒンダードヒドロカルビルアミン、芳香族ヒドロカルビルアミン、またはこれらの組合せであってもよい。
一実施形態では、ヒドロカルビルアミンは、芳香族ヒドロカルビルアミンであり得る。別の実施形態では、ヒドロカルビルアミンは、ヒンダードヒドロカルビルアミンであり得る。ヒンダードヒドロカルビルアミンは、少なくとも1つの芳香族基を有してもよい。さらに他の実施形態では、ヒドロカルビルアミンは、少なくとも1つのC1〜C30ヒドロカルビル基を含んでもよい。
ヒンダードアミンは、式(I)
R1−NR3−R2 (I)
(式中、R1、R2、およびR3は、独立して、C1〜C30ヒドロカルビル基である)の構造によって表されてもよい。
一部の実施形態では、ヒドロカルビルアミンは、少なくとも2つの分枝状アルキル基を有する第三級アルキルアミンであってもよい。他の実施形態では、少なくとも2つの分枝状アルキル基は、独立して、α位またはβ位で分枝していてもよい。さらに他の実施形態では、少なくとも2つの分枝状アルキル基は、両方β位で分枝している。
リン−アミン塩の(チオ)リン酸部分は、モノ−またはジ−ヒドロカルビル(チオ)リン酸(典型的には、アルキル(チオ)リン酸)またはこれらの混合物を含んでもよい。一部の実施形態では、(チオ)リン酸は、リン酸処理剤を一価アルコールおよびアルキレンポリオールと反応させることによって調製されてもよい。一価アルコール対アルキレンポリオールのモル比は、約0.2:0.8から約0.8:0.2であってもよい。
一部の実施形態では、潤滑粘度の油は、APIグループI、II、III、IV、もしくはV油、またはこれらの混合物を含んでもよい。追加の実施形態では、潤滑粘度の油は、約3から約7.5、または約3.6から約6、または約3.5から約5mm2/秒の、ASTM D445による100℃での動粘度を有してもよい。
一部の実施形態では、潤滑剤組成物は、任意選択で、過塩基性アルカリ土類金属清浄剤をアルカリ土類金属の重量で1から約500、または1から約100、または1から約50ppmとなる量で含んでもよい。さらに他の実施形態では、潤滑剤組成物は、任意選択で、1から約30、または約5から約15重量パーセントのポリマー性粘度指数調整剤を含んでもよい。追加の実施形態では、組成物は、上記成分のうちのいずれかの組成物を混合することによって調製されてもよい。
機械的デバイスを潤滑する方法も開示される。この方法は、機械的デバイスに上記潤滑剤組成物のいずれかを供給することを含んでもよい。例示的な機械的デバイスとして、これらに限定されないが、ギア、アクセル、マニュアルトランスミッション、オートマチックトランスミッション(またはデュアルクラッチトランスミッション「DCT」)が挙げられる。一実施形態では、機械的デバイスは、ギアを含んでもよい。別の実施形態では、機械的デバイスは、アクセルまたはマニュアルトランスミッションを含んでもよい。
機械的デバイスにおけるシール劣化を低減する方法も開示される。この方法は、機械的デバイスに上記潤滑剤組成物のいずれかを供給することを含んでもよい。一実施形態では、破断時のフルオロエラストマーシールのシール伸度は、ASTM D 5662を使用して40%未満である。
上記で具体的に列挙されているか否かにかかわらず、優先権が主張される任意の先行する出願を含む、上記で言及した文書はそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。任意の文書についての言及は、このような文書を先行技術とみなすか、またはいずれの権限においても当業者の一般的知識を構成するものと自認するものではない。実施例、またはその他で明確に指定されている場合を除き、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを特定する、この記載中のすべての数量は、単語「約(about)」によって任意選択で修飾されるものと理解されるべきである。本明細書で示される量、範囲、および比の上限と下限は、独立して組み合わせることができることを理解すべきである。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、任意の他の要素に対する範囲または量と一緒に使用することができる。
本明細書で使用する場合、移行句「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」、または「特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、記載されていない追加の要素または方法のステップを除外しない。しかし、本明細書における「含む(comprising)」の各記載において、この用語は、代替の実施形態として、フレーズ「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」を包含し、ここで、「からなる(consisting of)」は、特定されていない任意の要素またはステップを除外し、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、検討中の組成物または方法の本質的または基礎的な新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない、記載されていない追加の要素またはステップの包含を許容するものとする。表現「からなる(consisting of)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の要素に適用される場合、請求項における他の箇所での「含む(comprising)」の存在にかかわらず、その要素によって表されるタイプのすべての種を制限することを意図するものではない。
ある特定の代表的実施形態および詳細が本発明を例証する目的で示されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更および改変をその中でなすことができることは、当業者にとって明らかであろう。この点で、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。