(発明の詳細な説明)
(1.概要)
トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーは、共通の配列エレメントと構造モチーフを共有する、種々の増殖因子を含む。これらのタンパク質は、脊椎動物および無脊椎動物の両方における広範な種々の細胞型に対して生物学的作用を発揮することが公知である。このスーパーファミリーのメンバーは、胚発生の間に、パターン形成および組織の特異化において重要な機能を果たし、そして、脂質生成、筋発生、軟骨形成、心臓発生、造血、神経発生および上皮細胞分化を含む種々の分化プロセスに影響を及ぼし得る。TGF−βファミリーのメンバーの活性を操作することによって、しばしば、生物において顕著な生理学的変化を引き起こすことが可能である。例えば、ウシのPiedmonteseおよびBelgian Blue品種は、GDF8(ミオスタチンとも呼ばれる)遺伝子に機能喪失変異を有しており、筋肉量の顕著な増加を引き起こしている[例えば、Grobetら(1997年)、Nat Genet.、17巻(1号):71〜4頁を参照されたい]。さらに、ヒトでは、GDF8の不活性な対立遺伝子は、筋肉量の増加、および、報告によれば、例外的な強度と関連している[例えば、Schuelkeら(2004年)、N Engl J Med、350巻:2682〜8頁を参照されたい]。
TGF−βシグナルは、I型およびII型のセリン/スレオニンキナーゼ受容体の異種複合体(heteromeric complex)によって媒介され、これらは、リガンド刺激の際に、下流のSMADタンパク質(例えば、SMADタンパク質1、2、3、5、および8)をリン酸化および活性化する[例えば、Massague、2000年、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.1巻:169〜178頁を参照のこと]。これらのI型およびII型受容体は、システインリッチな領域を持つリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および、予測セリン/スレオニン特異性を持つ細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。I型受容体は、シグナル伝達に必須である。II型受容体は、リガンド結合およびI型受容体の活性化に必要とされる。I型およびII型のアクチビン受容体は、リガンド結合後に安定な複合体を形成し、II型受容体によるI型受容体のリン酸化をもたらす。
2つの関連するII型受容体(ActRII)である、ActRIIAおよびActRIIBがアクチビンについてのII型受容体として同定されている[例えば、MathewsおよびVale(1991年)、Cell、65巻:973〜982頁;ならびにAttisanoら(1992年)、Cell、68巻:97〜108頁を参照されたい]。ActRIIAおよびActRIIBは、アクチビンに加えて、例えば、BMP6、BMP7、Nodal、GDF8、およびGDF11を含む他のいくつかのTGF−βファミリータンパク質とも生化学的に相互作用し得る[例えば、Yamashitaら(1995年)、J. Cell Biol.、130巻:217〜226頁;LeeおよびMcPherron(2001年)、Proc. Natl. Acad. Sci.USA、98巻:9306〜9311頁;YeoおよびWhitman(2001年)、Mol. Cell、7巻:949〜957頁;ならびにOhら(2002年)、Genes Dev.、16巻:2749〜54頁を参照されたい]。ALK4は、アクチビン、特に、アクチビンAに対する主たるI型受容体であり、ALK7は、同様に他のアクチビン、特に、アクチビンBに対する受容体として機能し得る。
アクチビンとは、TGFベータスーパーファミリーに属する、二量体ポリペプチドの増殖因子である。2つの近縁のβサブユニットのホモ/ヘテロ二量体(それぞれ、βAβA、βBβB、およびβAβB)である、3つの主要なアクチビン形態(A、B、およびAB)が存在する。ヒトゲノムはまた、主に肝臓内で発現する、アクチビンCおよびアクチビンEもコードし、βCまたはβEを含有するヘテロ二量体形態もまた公知である。
TGF−βスーパーファミリーにおいて、アクチビンは、卵巣および胎盤の細胞におけるホルモン生成を刺激し得、神経細胞の生存を支援し得、細胞周期の進行に対して細胞型に依存して正もしくは負に影響を及ぼし得、そして、少なくとも両生類の胚において中胚葉分化を誘導し得る、独特かつ多機能の作用因子である[DePaoloら(1991年)、Proc Soc Ep Biol Med.198巻:500〜512頁;Dysonら(1997年)、Curr Biol.7巻:81〜84頁;およびWoodruff(1998年)、Biochem Pharmacol.55巻:953〜963頁]。さらに、刺激されたヒト単球性白血病細胞から単離された赤血球分化作用因子(EDF)は、アクチビンAと同一であることが分かった[Murataら(1988年)、PNAS、85巻:2434頁]。アクチビンAは、骨髄における赤血球生成を促進することが示唆されている。いくつかの組織では、アクチビンのシグナル伝達は、その関連するヘテロ二量体であるインヒビンによって拮抗される。例えば、下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出の間に、アクチビンは、FSHの分泌および合成を促進するが、インヒビンは、FSHの分泌および合成を抑制する。アクチビンの生活性を調節し得、そして/または、アクチビンに結合し得る他のタンパク質としては、フォリスタチン(FS)、フォリスタチン関連タンパク質(FSRP、FLRGまたはFSTL3としても公知)およびα2−マクログロブリンが挙げられる。
本明細書で記載される通り、「アクチビンA」に結合する作用因子は、単離βAサブユニットの文脈であれ、二量体の複合体(例えば、βAβAホモ二量体またはβAβBヘテロ二量体)としてであれ、βAサブユニットに特異的に結合する作用因子である。ヘテロ二量体の複合体(例えば、βAβBヘテロ二量体)の場合、「アクチビンA」に結合する作用因子は、βAサブユニット内に存在するエピトープには特異的であるが、複合体のβA以外のサブユニット(例えば、複合体のβBサブユニット)内に存在するエピトープには結合しない。同様に、「アクチビンA」に拮抗する(これを阻害する)本明細書で開示される作用因子は、単離βAサブユニットの文脈であれ、二量体の複合体(例えば、βAβAホモ二量体またはβAβBヘテロ二量体)としてあれ、βAサブユニットにより媒介される1つまたは複数の活性を阻害する作用因子である。βAβBヘテロ二量体の場合、「アクチビンA」を阻害する作用因子は、βAサブユニットの1つまたは複数の活性を特異的に阻害するが、複合体のβA以外のサブユニット(例えば、複合体のβBサブユニット)の活性は阻害しない作用因子である。この原則はまた、「アクチビンB」、「アクチビンC」、および「アクチビンE」に結合し、かつ/またはこれらを阻害する作用因子にも当てはまる。「アクチビンAB」に拮抗する本明細書で開示される作用因子は、βAサブユニットにより媒介される1つまたは複数の活性と、βBサブユニットにより媒介される1つまたは複数の活性とを阻害する作用因子である。
増殖および分化因子8(GDF8)は、ミオスタチンとしても公知である。GDF8は、骨格筋量の負の調節因子である。GDF8は、発生中および成体中の骨格筋において高度に発現する。遺伝子導入マウスにおけるGDF8欠失変異は、骨格筋の顕著な肥大および過形成を特徴とする[McPherronら、Nature(1997年)、387巻:83〜90頁]。骨格筋量の同様の増加は、ウシ[例えば、Ashmoreら(1974年)、Growth、38巻:501〜507頁;SwatlandおよびKieffer(1994年)、J. Anim. Sci.、38巻:752〜757頁;McPherronおよびLee(1997年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、94巻:12457〜12461頁;ならびにKambadurら(1997年)、Genome Res.、7巻:910〜915頁を参照されたい]および、驚くべきことに、ヒト[例えば、Schuelkeら(2004年)、N Engl J Med、350巻:2682〜8頁を参照されたい]におけるGDF8の天然に存在する変異において明らかである。研究は、ヒトにおけるHIV感染に関連する筋肉消耗には、GDF8タンパク質の発現の増加が随伴することも示している[例えば、Gonzalez−Cadavidら(1998年)、PNAS、95巻:14938〜43頁を参照されたい]。加えて、GDF8は、筋肉特異的酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の生成を調節することが可能であり、筋芽細胞の増殖を調節し得る[例えば、国際特許出願公開第WO00/43781号を参照されたい]。GDF8プロペプチドは、成熟GDF8ドメイン二量体に非共有結合的に結合し、その生物活性を不活性化することができる[例えば、Miyazonoら(1988年)、J. Biol. Chem.、263巻:6407〜6415頁;Wakefieldら(1988年)、J. Biol. Chem.、263巻:7646〜7654頁;およびBrownら(1990年)、Growth Factors、3巻:35〜43頁を参照されたい]。GDF8または構造的に関連するタンパク質に結合し、それらの生物活性を阻害する他のタンパク質として、フォリスタチン、および、潜在的に、フォリスタチン関連タンパク質が挙げられる[例えば、Gamerら(1999年)、Dev. Biol.、208巻:222〜232頁を参照されたい]。
BMP11としても公知の増殖および分化因子11(GDF11)は、分泌タンパク質である[McPherronら(1999年)、Nat. Genet.、22巻:260〜264頁]。GDF11は、マウス発生時に尾芽、肢芽、上顎弓および下顎弓、ならびに後根神経節において発現する[例えば、Nakashimaら(1999年)、Mech. Dev.、80巻:185〜189頁を参照されたい]。GDF11は、中胚葉組織および神経組織の両方のパターン形成において、固有の役割を果たす[例えば、Gamerら(1999年)、Dev Biol.、208巻:222〜32頁を参照されたい]。GDF11は、発生中のニワトリの肢における軟骨形成および筋発生の負の調節因子であることが示された[例えば、Gamerら(2001年)、Dev Biol.、229巻:407〜20頁を参照されたい]。筋内のGDF11の発現はまた、GDF8と同様の方式での筋肉の増殖の調節におけるその役割も示唆する。加えて、脳内のGDF11の発現は、GDF11はまた、神経系の機能に関連する活性を有し得ることを示唆する。興味深いことに、GDF11は、嗅上皮における神経発生を阻害することも見出された[例えば、Wuら(2003年)、Neuron、37巻:197〜207頁を参照されたい]。
部分的に、本開示は、骨髄線維症患者を処置するため、特に、例えば、脾腫、髄外造血、および線維症を含めた当該疾患の種々の合併症を改善するためにActRIIBアンタゴニスト(阻害剤)を使用することができるという発見に関する。具体的には、本明細書で提示されているデータは、GDFトラップポリペプチドが、骨髄線維症のJAK2V617Fモデルにおける脾腫、髄外造血、および線維症を低下させることを示す。したがって、ある特定の態様では、本開示は、それを必要とする患者に、有効量の1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストを、任意選択で、骨髄線維症を処置するための1つまたは複数の他の支持療法または活性作用因子と組み合わせて投与することによって骨髄線維症を処置するため、特に、骨髄線維症の1つまたは複数の合併症(脾腫、髄外造血、貧血、および線維症)を処置または予防するための、組成物および方法に関する。
本明細書で使用される用語は、概して、本発明の文脈の範囲内で、かつ各用語が使用される特定の文脈において当技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。実践者に本発明の組成物および方法ならびにそれらの作製および使用の仕方の記載に関して追加の指針を提供するためにある特定の用語は以下または本明細書の他の箇所で論じられる。用語の任意の使用の範囲または意味は、用語が使用される特定の文脈から明らかになるであろう。
「相同」は、そのあらゆる文法的な形態および語の綴りのバリエーションにおいて、同じ生物種のスーパーファミリーからのタンパク質、ならびに異なる生物種からの相同タンパク質を含めた、「共通の進化的起源」を有する2つのタンパク質間の関係を指す。このようなタンパク質(およびそれらをコードする核酸)は、パーセント同一性の観点であれ、特定の残基またはモチーフおよび保存された位置の存在によるものであれ、それらの配列類似性によって反映される通り、配列相同性を有する。しかし、一般的な用法において、および本出願において、用語「相同」は、「高度に」などの副詞によって修飾されている場合、配列類似性を指す場合があり、共通の進化的起源に関連していてもしていなくてもよい。
用語「配列類似性」は、その文法形式の全てが、共通の進化的起源を共有していてもよく、共有していなくてもよい核酸またはアミノ酸配列の間の同一性または一致の程度を指す。
参照ポリペプチド(またはヌクレオチド)配列に照らした「配列同一性パーセント(%)」とは、配列を決定し、必要な場合、最大の配列同一性パーセントを達成するようにギャップを導入した後における、保存的置換は配列同一性の一部と考えない場合の、候補配列内のアミノ酸残基(または核酸)の百分率であって、参照ポリペプチド(ヌクレオチド)配列内のアミノ酸残基(または核酸)と同一であるアミノ酸残基(または核酸)の百分率と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定することを目的とするアラインメントは、当該分野の技術の範囲内にある種々の方式で、例えば、BLASTソフトウェア、BLAST−2ソフトウェア、ALIGNソフトウェア、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど、一般に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、配列を決定するのに適切なパラメータであって、比較される配列の全長にわたり最大のアラインメントを達成するのに必要とされる、任意のアルゴリズムを含むパラメータを決定することができる。しかし、本明細書の目的では、アミノ酸(核酸)配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムである、ALIGN−2を使用して生成する。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.により作成され、ソースコードは、使用説明書と共に、米国著作権局、Washington D.C.、20559に提出され、ここで、米国著作権登録第TXU510087号として登録されている。ALIGN−2プログラムは、Genentech,Inc.、South San Francisco、Calif.から一般に利用可能であるが、ソースコードからコンパイルすることもできる。ALIGN−2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標) V4.0Dを含む、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム上の使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN−2プログラムにより設定され、変化しない。
「アゴナイズする」は、全てのその文法上の形態において、タンパク質および/または遺伝子を活性化するプロセス(例えば、そのタンパク質の遺伝子発現を活性化または増幅することによって、または不活性なタンパク質が活性状態になるように誘導することによって)、またはタンパク質および/または遺伝子の活性を増加させるプロセスを指す。
「拮抗する」は、全てのその文法上の形態において、タンパク質および/または遺伝子を阻害するプロセス(例えば、そのタンパク質の遺伝子発現を阻害するかまたは低下させることによって、または活性タンパク質が不活性状態になるように誘導することによって)、またはタンパク質および/または遺伝子の活性を低下させるプロセスを指す。
用語「約」および「およそ」は、本明細書および特許請求の範囲にわたり数値と関連して使用される場合、当業者にとって一般的な許容できる正確さの隔たりを意味する。一般に、このような正確さの隔たりは±10%である。代替的に、生物系において特に、用語「約」および「およそ」は、所与の値の1ケタ以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内の値を意味し得る。
本明細書で開示された数値範囲は、範囲を定義する数を含む。
用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、その用語が使用される文脈が明らかにそうではないことを指示しない限り、複数形の指示対象を含む。用語「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、加えて用語「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」は、本明細書において同義的に使用することができる。さらに、「および/または」は、本明細書において使用される場合、2つまたはそれより多くの特定された特徴または構成要素のそれぞれが他方を含むまたは含まないことの具体的な開示として解釈されるものとする。したがって、用語「および/または」は、本明細書において例えば「Aおよび/またはB」などの成句で使用される場合、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、用語「および/または」は、例えば「A、B、および/またはC」などの成句で使用される場合、以下の態様:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)のそれぞれを包含することが意図される。
本明細書にわたり、文言「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの派生語は、述べられている整数または整数の群を含むことを暗に意味するが、他のいずれの整数または整数の群も排除されないことが理解される。
2.ActRIIBアンタゴニスト
部分的に、本開示は、骨髄線維症患者を処置するため、特に、例えば、脾腫、髄外造血、および線維症を含めた当該疾患の種々の合併症を改善するためにActRIIBアンタゴニスト(阻害剤)を使用することができるという発見に関する。具体的には、本明細書で提示されているデータは、GDFトラップポリペプチドが骨髄線維症のJAK2V617Fモデルにおける脾腫、髄外造血、および線維症を低下させることを示す。可溶性GDFトラップポリペプチドは、ActRIIB拮抗作用以外の機構を通じて骨髄線維症に影響を及ぼす可能性があるが[例えば、GDF11、GDF8、アクチビンB、BMP6、GDF3、およびBMP10の1つまたは複数の阻害は、おそらくTGF−ベータスーパーファミリーの他のメンバーを含む広範な追加の作用因子の活性を阻害する作用因子の傾向の指標になり得、このような集合的な阻害により、例えば骨髄線維症に対する所望の効果がもたらされる可能性がある]、本開示は、それにもかかわらず、ActRIIB拮抗作用に基づいて望ましい治療剤を選択することができることを実証する。したがって、特定の作用機序に束縛されることは望まないが、他のActRIIBアンタゴニスト[例えば、ActRIIB受容体のアンタゴニスト、1つまたは複数のActRIIB結合リガンド(例えば、GDF11、GDF8、アクチビン、BMP6、GDF3、およびBMP10)のアンタゴニスト、1つまたは複数のI型受容体(例えば、ALK4、ALK5、および/またはALK7)のアンタゴニスト、1つまたは複数の補助受容体のアンタゴニスト、1つまたは複数のActRIIB下流シグナル伝達成分(例えば、Smad)のアンタゴニスト、またはこのようなアンタゴニストの組み合わせ]が、骨髄線維症の処置において、特に、種々の骨髄線維症に関連する合併症(例えば、脾腫、髄外造血、および線維症)の処置または予防において有用であることが予想される。このような作用因子は、本明細書では集合的に、「ActRIIBアンタゴニスト」または「ActRIIB阻害剤」と称される。
A.ActRIIBポリペプチドおよびそれらの改変体
ある特定の態様では、本開示は、ActRIIBポリペプチドおよびそれらの改変体(例えば、GDFトラップ)に関する。具体的には、本開示は、骨髄線維症を処置するため、特に、骨髄線維症の1つまたは複数の合併症(例えば、脾腫、髄外造血、貧血、および線維症)、ならびに/またはヤヌスキナーゼ阻害剤を用いて処置された患者を処置または予防するために、ActRIIBポリペプチドを、単独で、または1つもしくは複数の追加の支持療法と組み合わせて使用する方法を提供する。本明細書で使用される場合、用語「ActRIIB」は、任意の種に由来するアクチビン受容体IIB型(ActRIIB)タンパク質のファミリー、および変異誘発または他の改変によるこのようなActRIIBタンパク質に由来する改変体を指す。本明細書におけるActRIIBに対する言及は、現在同定されている形態のいずれか1つに対する言及であるものと理解される。ActRIIBファミリーのメンバーは、一般に、システインリッチ領域を含むリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予測されるセリン/スレオニンキナーゼ活性を有する細胞質ドメインで構成される膜貫通タンパク質である。
用語「ActRIIBポリペプチド」は、ActRIIBファミリーメンバーの任意の天然に存在するポリペプチド、ならびに、有用な活性を保持する任意のそれらの改変体(変異体、フラグメント、融合物、およびペプチド模倣物形態を含む)を含むポリペプチドを包含する。このような改変体ActRIIBポリペプチドの例は、本開示を通して、ならびに、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2006/012627号および同第WO2008/097541号において提示される。本明細書に記載される全てのActRIIB関連ポリペプチドのアミノ酸の番号付けは、他に特に指定がなければ、以下に提示するヒトActRIIB前駆体タンパク質配列(配列番号1)の番号付けに基づく。
ヒトActRIIB前駆体タンパク質配列は、以下の通りである。
シグナルペプチドは、一重下線で指し示し、細胞外ドメインは、太字フォントで指し示し、潜在的な、内因性N−連結グリコシル化部位は、二重下線で指し示す。
プロセシング後の(成熟)細胞外ActRIIBポリペプチド配列は、以下の通りである:
一部の実施形態では、タンパク質は、N末端における「SGR・・・」配列により生成することができる。細胞外ドメインのC末端「テール」は、一重下線で指し示す。「テール」を欠失させた配列(Δ15配列)は、以下の通りである。
配列番号1の64位においてアラニン(A64)を有するActRIIBの形態についてはまた、文献[Hildenら(1994年)、Blood、83巻(8号):2163〜2170頁]においても報告されている。本出願人らは、A64置換を有するActRIIBの細胞外ドメインを含むActRIIB−Fc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF11に対するアフィニティーが比較的低いことを確認した。これに対し、64位においてアルギニン(R64)を有する、同じActRIIB−Fc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF11に対するアフィニティーが、低nM〜高pMの範囲である。したがって、R64を有する配列を、本開示におけるヒトActRIIBのための「野生型」参照配列として使用する。
64位にアラニンを有するActRIIBの形態は、以下の通りである。
シグナルペプチドは、一重下線で指し示し、細胞外ドメインは、太字フォントで指し示す。
代替A64形態のプロセシング後の(成熟)細胞外ActRIIBポリペプチド配列は、以下の通りである:
一部の実施形態では、タンパク質は、N末端における「SGR・・・」配列により生成することができる。細胞外ドメインのC末端「テール」は、一重下線で指し示す。「テール」を欠失させた配列(Δ15配列)は、以下の通りである。
ヒトActRIIB前駆体タンパク質をコードする核酸配列であって、ActRIIB前駆体のアミノ酸1〜513をコードする、Genbank参照配列NM_001106.3のヌクレオチド25〜1560からなる核酸配列を、下記(配列番号7)に示す。示される配列は、64位においてアルギニンを提示するが、代わりに、アラニンを提示するように改変することができる。シグナル配列に下線を付す。
プロセシング後のヒト細胞外ActRIIBポリペプチドをコードする核酸配列は、以下(配列番号8)の通りである。
示される配列は、64位においてアルギニンを提示するが、代わりに、アラニンを提示するように改変することができる。
ヒトActRIIB細胞外ドメインおよびヒトActRIIA細胞外ドメインのアミノ酸配列のアラインメントを、図1に例示する。このアラインメントは、両方の受容体内のアミノ酸残基であって、ActRIIリガンドに直接接触すると考えられるアミノ酸残基を指し示す。例えば、複合的なActRII構造から、ActRIIB−リガンド結合ポケットは、残基Y31、N33、N35、L38〜T41、E47、E50、Q53〜K55、L57、H58、Y60、S62、K74、W78〜N83、Y85、R87、A92、およびE94〜F101によって部分的に定義されることが指し示された。これらの位置において、保存的変異が許容されることが予想される。
加えて、ActRIIBは、一般に、脊椎動物のなかでよく保存されており、完全に保存された細胞外ドメインの大きいストレッチを有する。例えば、図2は、種々のActRIIBオーソログと比較したヒトActRIIB細胞外ドメインの多重配列アラインメントを描示する。ActRIIBに結合するリガンドの多くも高度に保存されている。したがって、これらのアラインメントから、通常のActRIIB−リガンド結合活性に重要なリガンド結合ドメイン内の主要なアミノ酸位置を予想することが可能であるほか、通常のActRIIB−リガンド結合活性を顕著に変更させずに、置換に対して許容性を有する可能性が高いアミノ酸位置を予想することも可能である。したがって、ここで開示された方法に従って有用な活性ヒトActRIIB改変体ポリペプチドは、別の脊椎動物のActRIIBの配列からの対応する位置における1つまたは複数のアミノ酸を含み得、または、ヒトまたは他の脊椎動物の配列中の残基に類似している残基を含み得る。
限定することを意味しないが、以下の実施例は、活性なActRIIB改変体を定義するためのこのアプローチを例示する。ヒト細胞外ドメイン(配列番号2)におけるL46は、アフリカツメガエルActRIIB(配列番号42)におけるバリンであり、したがってこの位置は変更され得、任意選択で、V、IまたはFなどの別の疎水性残基、またはAなどの非極性残基に変更され得る。ヒト細胞外ドメインにおけるE52は、アフリカツメガエルではKであり、これは、この部位は、E、D、K、R、H、S、T、P、G、YおよびおそらくAなどの極性残基を含めた多種多様の変化が許容され得ることを示す。ヒト細胞外ドメインにおけるT93は、アフリカツメガエルではKであり、これは、この位置において幅広い構造的なバリエーションが許容されることを示しており、S、K、R、E、D、H、G、P、GおよびYなどの極性残基が好ましい。ヒト細胞外ドメインにおけるF108は、アフリカツメガエルではYであり、したがって、Yまたは他の疎水性基、例えばI、VまたはLが許容されるはずである。ヒト細胞外ドメインにおけるE111は、アフリカツメガエルではKであり、これは、この位置において、D、R、KおよびH、ならびにQおよびNを含めた荷電残基が許容されるはずであることを示す。ヒト細胞外ドメインにおけるR112は、アフリカツメガエルではKであり、これは、この位置において、RおよびHを含めた塩基性残基が許容されることを示す。ヒト細胞外ドメインにおける119位のAは比較的不完全に保存されており、げっ歯類ではP(配列番号37および39)およびアフリカツメガエルではVとして出現し、したがってこの位置では本質的にいかなるアミノ酸も許容されるはずである。
さらに当該分野では、ActRIIタンパク質は、構造的/機能的な特徴に関して、特にリガンド結合に関して特徴付けられている[Attisanoら(1992年)Cell 68巻(1号):97〜108頁;Greenwaldら(1999年)Nature Structural Biology 6巻(1号):18〜22頁;Allendorphら(2006年)PNAS 103巻(20号):7643〜7648頁;Thompsonら(2003年)The EMBO Journal 22巻(7号):1555〜1566頁;および米国特許第7,709,605号、同第7,612,041号、および同第7,842,663号]。本明細書に記載の教示に加えて、これらの参考文献は、1つまたは複数の所望の活性(例えば、リガンド結合活性)を保持するActRII改変体をどのように生成するかに関する詳細な指針を提供する。
例えば、スリーフィンガー毒素のフォールドとして公知の構造モチーフを定義することが、I型およびII型受容体によるリガンド結合に重要であり、各単量体受容体の細胞外ドメイン内の様々な位置に配置されている保存されたシステイン残基によって形成される[Greenwaldら(1999年)Nat Struct Biol、6巻:18〜22頁;およびHinck(2012年)FEBS Lett、586巻:1860〜1870頁]。したがって、ヒトActRIIBのコアリガンド結合ドメインは、これらの保存されたシステインの最も外側を境界と定めた場合、配列番号1(ActRIIB前駆体)の29〜109位に対応する。したがって、これらのシステインによって境界が定められたコア配列に隣接する構造的にあまり秩序立っていないアミノ酸は、N末端が約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、もしくは28残基短縮されていてもよく、かつ/または、C末端が約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25残基短縮されていてもよく、それにより必ずしもリガンド結合は変更されない。N末端および/またはC末端における短縮の例示的なActRIIB細胞外ドメインとしては、配列番号2、3、5、および6が挙げられる。
Attisanoらは、ActRIIBの細胞外ドメインのC末端におけるプロリンノットの欠失が、アクチビンに対する受容体のアフィニティーを低減したことを示した。本発明の配列番号1のアミノ酸20〜119を含有するActRIIB−Fc融合タンパク質「ActRIIB(20〜119)−Fc」は、プロリンノット領域および完全な膜近傍ドメインを含むActRIIB(20〜134)−Fcに比べて、GDF11およびアクチビンへの結合を低減した(例えば、米国特許第7,842,663号を参照されたい)。しかしながら、ActRIIB(20〜129)−Fcタンパク質は、プロリンノット領域が崩壊されていたとしても、野生型に類似した、ただし多少低減された活性を保持する。したがって、アミノ酸134、133、132、131、130および129(配列番号1に照らして)で終わるActRIIB細胞外ドメインは全て、活性であると予想されるが、134または133で終わる構築物が最も高い活性を有し得る。同様に、残基129〜134(配列番号1に照らして)のいずれかにおける変異は、リガンド結合アフィニティーが大幅に変更されるとは予想されない。この裏付けとして、P129およびP130の変異(配列番号1に照らして)によって、リガンド結合は実質的に低下しないことが当該分野において公知である。したがって、本発明の開示のActRIIBポリペプチドは、アミノ酸109(最後のシステイン)もの早期に終わる場合もあるが、109および119で終わるかまたはその間(例えば、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、または119)で終わる形態は、低減したリガンド結合を有すると予想される。アミノ酸119(本発明の配列番号1に照らして)は不完全に保存されているので、たやすく変更または短縮される。128またはそれ以降(配列番号1に照らして)で終わるActRIIBポリペプチドは、リガンド結合活性を保持すると予想される。配列番号1に照らして、119および127で終わるかまたはその間(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126、または127)で終わるActRIIBポリペプチドは、中間の結合能力を有すると予想される。これらの形態のいずれも、臨床上または実験の設定に応じて使用するのに望ましい可能性がある。
ActRIIBのN末端では、アミノ酸29またはその手前(配列番号1に照らして)で始まるタンパク質が、リガンド結合活性を保持することが予想される。アミノ酸29は、最初のシステインを表す。24位におけるアラニンからアスパラギンへの変異(配列番号1に照らして)は、リガンド結合に実質的に影響を及ぼさずに、N−連結グリコシル化配列を導入する[米国特許第7,842,663号]。これにより、シグナル切断ペプチドとシステイン架橋領域との間の領域であって、アミノ酸20〜29に対応する領域内の変異は、良好に許容されることが確認される。特に、20、21、22、23、および24位(配列番号1に照らして)から始まるActRIIBポリペプチドは、一般的なリガンド結合活性を保持し、25、26、27、28、および29位(配列番号1に照らして)から始まるActRIIBポリペプチドも、リガンド結合活性を保持すると予想される。例えば米国特許第7,842,663号において、驚くべきことに、22、23、24、または25位から始まるActRIIB構築物が最も高い活性を有すると予想されることが実証された。
総合すると、ActRIIBの活性部分(例えば、リガンド結合部分)の一般式は、配列番号1のアミノ酸29〜109を含む。したがって、ActRIIBポリペプチドは、例えば、ActRIIBの一部分であって、配列番号1のアミノ酸20〜29のいずれか1つに対応する残基で始まり(例えば、アミノ酸20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29のいずれか1つで始まり)、配列番号1のいずれか1つのアミノ酸109〜134に対応する位置で終わる(例えば、アミノ酸109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134のいずれか1つで終わる)一部分と、少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含んでいてもよいし、これらから本質的になっていてもよいし、またはこれらからなっていてもよい。他の例としては、配列番号1の、20〜29位(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29位のいずれか1つ)または21〜29位(例えば、21、22、23、24、25、26、27、28、または29位のいずれか1つ)で始まり、119〜134位(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134位のいずれか1つ)、119〜133位(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、または133位のいずれか1つ)、129〜134位(例えば、129、130、131、132、133、または134位のいずれか1つ)、または129〜133位(例えば、129、130、131、132、または133位のいずれか1つ)で終わるポリペプチドが挙げられる。他の例としては、配列番号1の、20〜24位(例えば、20、21、22、23、または24位のいずれか1つ)、21〜24位(例えば、21、22、23、または24位のいずれか1つ)、または22〜25位(例えば、22、22、23、または25位のいずれか1つ)で始まり、109〜134位(例えば、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134位のいずれか1つ)、119〜134位(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134位のいずれか1つ)または129〜134位(例えば、129、130、131、132、133、または134位のいずれか1つ)で終わる構築物が挙げられる。これらの範囲内の改変体も企図され、特に、配列番号1の対応する部分と、少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する改変体も企図される。
本明細書に記載されるバリエーションは、種々の方法で組み合わせられ得る。一部の実施形態では、ActRIIB改変体は、リガンド結合ポケット内に、1、2、5、6、7、8、9、10または15以下の保存的アミノ酸変化を含み、リガンド結合ポケット内の40、53、55、74、79および/または82位に、0、1つまたは複数の非保存的変更を含む。可変性が特に良好に許容され得る結合ポケットの外側の部位は、細胞外ドメインのアミノおよびカルボキシ末端(上述のように)、ならびに42〜46位および65〜73位(配列番号1に照らして)を包含する。65位におけるアスパラギンからアラニンへの変更(N65A)は、A64バックグラウンドにおけるリガンド結合を実際に改善し、したがってR64バックグラウンドにおいてリガンド結合に対する好ましくない影響を有さないと予想される[米国特許第7,842,663号]。この変化により、A64バックグラウンドにおけるN65のグリコシル化が排除される可能性があり、したがって、この領域における著しい変化が許容される可能性があることが実証されている。R64A変化は許容性が乏しいが、R64Kは良好に許容される、したがって、Hなどの別の塩基性残基は、64位において許容され得る[米国特許第7,842,663号]。さらに、本技術に記載される変異誘発プログラムの結果は、保存が多くの場合有益であるアミノ酸位がActRIIBにあることを示す。配列番号1に照らして、これらとしては、80位(酸性または疎水性アミノ酸)、78位(疎水性、そして特にトリプトファン)、37位(酸性、そして特にアスパラギン酸またはグルタミン酸)、56位(塩基性アミノ酸)、60位(疎水性アミノ酸、特にフェニルアラニンまたはチロシン)が挙げられる。したがって、本開示はActRIIBポリペプチドに保存され得るアミノ酸のフレームワークを提供する。保存が望ましいと考えられる他の位置は以下の通りである:52位(酸性アミノ酸)、55位(塩基性アミノ酸)、81位(酸性)、98位(極性または荷電、特にE、D、RまたはK)、全て配列番号1に照らして。
ActRIIB細胞外ドメインへのさらなるN−連結グリコシル化部位(N−X−S/T)の付加は、良好に許容されることがこれまでに実証された(例えば、米国特許第7,842,663号を参照されたい)。したがって、N−X−S/T配列は、一般に、本発明の開示のActRIIBポリペプチドにおいて図1において定義されるリガンド結合ポケットの外側の位置に導入され得る。非内因性N−X−S/T配列の導入に特に好適な部位としては、アミノ酸20〜29、20〜24、22〜25、109〜134、120〜134または129〜134(配列番号1に照らして)が挙げられる。またN−X−S/T配列は、ActRIIB配列とFcドメインまたは他の融合成分との間のリンカーにも導入され得る。このような部位は、以前から存在しているSまたはTに対して正しい位置にNを導入することによって、または以前から存在しているNに対応する位置にSまたはTを導入することによって、最小の労力で導入され得る。したがって、N−連結グリコシル化部位を生じる望ましい変更は、A24N、R64N、S67N(可能であればN65Aの変更と組み合わせる)、E105N、R112N、G120N、E123N、P129N、A132N、R112SおよびR112T(配列番号1に照らして)である。グリコシル化されることが予測されるSはどれも、グリコシル化によってもたらされる保護のために、免疫原性部位を生じることなくTに変更され得る。同様に、グリコシル化されることが予測されるTはどれも、Sに変更され得る。したがって、S67TおよびS44T(配列番号1に照らして)の変更が企図される。同様に、A24N改変体では、S26Tの変更が使用され得る。したがって、本発明の開示のActRIIBポリペプチドは、上記の、1つまたは複数の追加の非内因性N−連結グリコシル化コンセンサス配列を有する改変体であり得る。
ある特定の実施形態では、本開示は、少なくとも1つのActRIIBポリペプチド、それらのフラグメント、機能的な改変体、および改変形態を含むActRIIBアンタゴニストに関する。本開示に従って使用するためのActRIIBポリペプチドは、可溶性(例えば、ActRIIBの細胞外ドメイン)であることが好ましい。一部の実施形態では、本開示に従って使用するためのActRIIBポリペプチドは、1つまたは複数のTGF−ベータスーパーファミリーリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビン(アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE)BMP6、GDF3、および/またはBMP10の活性(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害する(それに拮抗する)。一部の実施形態では、本開示に従って使用するためのActRIIBポリペプチドは、1つまたは複数のTGF−ベータスーパーファミリーリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビン(アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE)BMP6、GDF3、BMP10、および/またはBMP9]に結合する。一部の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、ActRIIBの一部分であって、配列番号1のアミノ酸20〜29に対応する残基で始まり(例えば、アミノ酸20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29のいずれか1つで始まり)、配列番号1のアミノ酸109〜134に対応する位置で終わる(例えば、アミノ酸109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134のいずれか1つで終わる)一部分と、少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる。一部の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸29〜109と、少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。一部の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸29〜109と、少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になり、配列番号1のL79に対応する位置は、酸性アミノ酸(天然に存在する酸性アミノ酸DおよびE、または人工酸性アミノ酸)である。ある特定の好ましい実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸25〜131と、少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。ある特定の好ましい実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸25〜131と、少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になり、配列番号1のL79に対応する位置は、酸性アミノ酸である。一部の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、24、25、28、29、30、31、33、34、35、45、50、53、54、および58のいずれか1つのアミノ酸配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になる。一部の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、24、25、28、29、30、31、33、34、35、45、50、53、54、および58のいずれか1つのアミノ酸配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、これらからなるか、またはこれらから本質的になり、配列番号1のL79に対応する位置は、酸性アミノ酸である。一部の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、少なくとも1つのActRIIBポリペプチドを含み、配列番号1のL79に対応する位置は、酸性アミノ酸ではない(すなわち、天然に存在する酸アミノ酸DもしくはE、または人工酸性アミノ酸残基ではない)。
ある特定の態様では、本開示は、GDFトラップポリペプチド(「GDFトラップ」とも称される)に関する。一部の実施形態では、本開示のGDFトラップは、改変体ActRIIBポリペプチドが対応する野生型ActRIIBポリペプチドと比べて1つまたは複数の変更されたリガンド結合活性を有するように、ActRIIBポリペプチド(例えば、「野生型」または非改変ActRIIポリペプチド)の細胞外ドメイン(リガンド結合ドメインとも称される)中に1つまたは複数の変異(例えば、アミノ酸付加、欠失、置換、およびこれらの組み合わせ)を含む改変体ActRIIBポリペプチドである。好ましい実施形態では、本開示のGDFトラップポリペプチドは、対応する野生型ActRIIBポリペプチドと類似した少なくとも1つの活性を保持する。例えば、好ましいGDFトラップは、GDF11および/またはGDF8に結合し、その機能を阻害する(例えば、それに拮抗する)。一部の実施形態では、本開示のGDFトラップは、TGF−ベータスーパーファミリーのリガンドの1つまたは複数にさらに結合し、それを阻害する。したがって、本開示は、1つまたは複数のActRIIBリガンドに対する変更された結合特異性を有するGDFトラップポリペプチドを提供する。
例示すれば、1つまたは複数のActRIIB結合リガンド、例えばアクチビン(アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、および/またはアクチビンE)、特にアクチビンAと比べて、GDF11および/またはGDF8への変更されたリガンド結合ドメインの選択性を増加させる1つまたは複数の変異を選択してもよい。任意選択で、変更されたリガンド結合ドメインは、アクチビン結合に関するKdとGDF11および/またはGDF8結合に関するKdとの比率が、野生型リガンド結合ドメインの比率に対して、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍であり、または1000倍もの大きさである。任意選択で、変更されたリガンド結合ドメインは、アクチビン阻害に関するIC50とGDF11および/またはGDF8阻害に関するIC50との比率が、野生型リガンド結合ドメインに対して、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍であり、または1000倍もの大きさである。任意選択で、変更されたリガンド結合ドメインは、アクチビン(例えばアクチビンA)阻害に関するIC50の、少なくとも2分の1、5分の1、10分の1、20分の1、50分の1、100分の1またはさらには1000分の1もの低さでGDF11および/またはGDF8を阻害する。
ある特定の好ましい実施形態では、本発明の開示のGDFトラップは、GDF11および/またはGDF8(ミオスタチンとしても公知である)に優先的に結合するように設計される。任意選択で、GDF11および/またはGDF8結合トラップは、アクチビンBにさらに結合することができる。任意選択で、GDF11および/またはGDF8結合トラップは、BMP6にさらに結合することができる。任意選択で、GDF11および/またはGDF8結合トラップは、BMP10にさらに結合することができる。任意選択で、GDF11および/またはGDF8結合トラップは、アクチビンBおよびBMP6にさらに結合することができる。ある特定の実施形態では、本発明の開示のGDFトラップは、例えば、野生型ActRIIBポリペプチドと比較して、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンA/B、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE)への結合アフィニティーが低減されている。ある特定の好ましい実施形態では、本発明の開示のGDFトラップポリペプチドは、アクチビンAへの結合アフィニティーが低減されている。
ActRIIBタンパク質のアミノ酸残基(例えば、E39、K55、Y60、K74、W78、L79、D80、およびF101)は、ActRIIBリガンド結合ポケット中であり、例えばアクチビンA、GDF11、およびGDF8を含めたそのリガンドへの結合の媒介を助ける。したがって本発明の開示は、それらのアミノ酸残基において1つまたは複数の変異を含むActRIIB受容体の変更されたリガンド結合ドメイン(例えばGDF8/GDF11結合ドメイン)を含むGDFトラップポリペプチドを提供する。
具体例として、ActRIIBのリガンド結合ドメインの正に荷電したアミノ酸残基であるAsp(D80)を、異なるアミノ酸残基に変異させて、アクチビンではなく、GDF8に優先的に結合するGDFトラップポリペプチドを生成することができる。好ましくは、D80残基を、配列番号1に照らして、非荷電アミノ酸残基、負荷電アミノ酸残基、および疎水性アミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基に変化させる。さらなる具体例として、配列番号1の疎水性残基であるL79を変更させて、アクチビン−GDF11/GDF8結合特性の変更を付与することができる。例えば、L79P置換は、GDF11への結合を、アクチビンへの結合より大幅に低減する。これに対し、L79の、酸性アミノ酸による置き換え[アスパラギン酸またはグルタミン酸;L79D置換またはL79E置換]は、GDF11への結合アフィニティーを保持しながら、アクチビンAへの結合アフィニティーを大幅に低減する。例示的な実施形態では、本明細書に記載される方法は、任意選択で、1つまたは複数の追加のアミノ酸の置換、付加、または欠失と組み合わせた、配列番号1の79位に対応する位置に酸性アミノ酸(例えば、DまたはE)を含む改変体ActRIIBポリペプチドである、GDFトラップポリペプチドを利用する。
一部の実施形態では、本開示は、治療有効性または安定性(例えば、貯蔵寿命およびインビボでのタンパク質分解に対する抵抗性)を増強することなどの目的のために、ActRIIBポリペプチドの構造を改変することにより機能的改変体を作製することを企図する。改変体は、アミノ酸の置換、欠失、付加またはそれらの組み合わせによっても生成することができる。例えば、ロイシンのイソロイシンもしくはバリンでの単発的な置換、アスパラギン酸のグルタミン酸での単発的な置換、スレオニンのセリンでの単発的な置換、または、あるアミノ酸の、構造的に関連したアミノ酸での同様の置換(例えば、保存的変異)は、結果として生じる分子の生物学的活性に対して大きな影響を及ぼさないと予想するのは理にかなっている。保存的置換は、その側鎖が関連しているアミノ酸のファミリー内で行われる置換である。本開示のポリペプチドのアミノ酸配列における変化が機能的な相同体をもたらすかどうかは、野生型ポリペプチドに類似した様式で細胞内の応答を生成するか、または例えば、BMP2、BMP2/7、BMP3、BMP4、BMP4/7、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP9、BMP10、GDF3、GDF5、GDF6/BMP13、GDF7、GDF8、GDF9b/BMP15、GDF11/BMP11、GDF15/MIC1、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、nodal、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アルテミン、パーセフィン、MIS、およびLeftyなど、1つまたは複数のTGF−ベータリガンドに結合する、改変体ポリペプチドの能力を評価することによってたやすく決定することができる。
ある特定の実施形態では、本開示は、ポリペプチドのグリコシル化を変更させるような、ActRIIBポリペプチドの特異的変異を企図する。このような変異は、1または複数のグリコシル化部位(例えば、O−連結もしくはN−連結のグリコシル化部位)を導入もしくは排除するように選択され得る。アスパラギン連結グリコシル化認識部位は、一般に、トリペプチド配列、アスパラギン−X−スレオニンまたはアスパラギン−X−セリン(ここで、「X」は任意のアミノ酸である)を含み、この配列は、適切な細胞のグリコシル化酵素によって特異的に認識される。変化はまた、(O−連結グリコシル化部位については)ポリペプチドの配列への、1または複数のセリンもしくはスレオニン残基の付加、または、1または複数のセリンもしくはスレオニン残基による置換によってなされ得る。グリコシル化認識部位の第1位もしくは第3位のアミノ酸の一方もしくは両方における種々のアミノ酸置換もしくは欠失(および/または、第2位におけるアミノ酸の欠失)は、改変されたトリペプチド配列において非グリコシル化をもたらす。ポリペプチドにおける糖質部分の数を増加させる別の手段は、ポリペプチドへのグリコシドの化学的もしくは酵素的なカップリングによるものである。使用されるカップリング様式に依存して、糖は、(a)アルギニンおよびヒスチジン;(b)遊離カルボキシル基;(c)遊離スルフヒドリル基(例えば、システインのもの);(d)遊離ヒドロキシル基(例えば、セリン、スレオニンまたはヒドロキシプロリンのもの);(e)芳香族残基(例えば、フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンのもの);または(f)グルタミンのアミド基に付加され得る。ポリペプチド上に存在する1または複数の糖質部分の除去は、化学的および/または酵素的に達成され得る。化学的な脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または等価な化合物へのポリペプチドの曝露を含み得る。この処理は、アミノ酸配列をインタクトなままにしつつ、連結糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)を除くほとんどもしくは全ての糖の切断を生じる。ポリペプチドにおける、炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraら[Meth. Enzymol.(1987年)、138巻:350頁]により記載されているように、様々なエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用により達成することができる。ポリペプチドの配列は、適切なように、使用される発現系のタイプに応じて調節され得る。というのも、哺乳動物、酵母、昆虫および植物の細胞は全て、ペプチドのアミノ酸配列によって影響され得る異なるグリコシル化パターンを導入し得る。一般に、ヒトにおいて使用するための本開示のポリペプチドは、適切なグリコシル化を提供する哺乳動物細胞株(例えば、HEK293細胞株またはCHO細胞株)において発現され得るが、他の哺乳動物発現細胞株も同様に有用であることと期待される。
本発明の開示はさらに、変異体、特にActRIIBポリペプチドのコンビナトリアル変異体のセットのほか、短縮型変異体を生成する方法も企図する。コンビナトリアル変異体のプールは、機能的に活性な(例えば、TGF−ベータスーパーファミリーのリガンドに結合する)ActRIIB配列を識別するために特に有用である。このようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、薬物動態の変更またはリガンドへの結合の変更など、特性を変更させたポリペプチド改変体を生成することであり得る。種々のスクリーニングアッセイが以下に提供され、そして、このようなアッセイは、改変体を評価するために使用され得る。例えば、ActRIIB改変体は、1つまたは複数のTGF−ベータスーパーファミリーのリガンド(例えば、BMP2、BMP2/7、BMP3、BMP4、BMP4/7、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP9、BMP10、GDF3、GDF5、GDF6/BMP13、GDF7、GDF8、GDF9b/BMP15、GDF11/BMP11、GDF15/MIC1、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンAC、nodal、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アルテミン、パーセフィン、MIS、およびLefty)に結合する能力、TGF−ベータスーパーファミリー受容体へのTGF−ベータスーパーファミリーのリガンドの結合を防止する能力、および/またはTGF−ベータスーパーファミリーのリガンドによって引き起こされるシグナル伝達に干渉する能力についてスクリーニングされ得る。
ActRIIBポリペプチドの活性はまた、細胞ベースのまたはインビボアッセイでも試験することができる。例えば、骨髄線維症の厳しさに関与する遺伝子の発現に対するActRIIBポリペプチドの作用を評価することができる。これは、必要に応じて、1つまたは複数の組換えActRIIリガンドタンパク質(例えば、BMP2、BMP2/7、BMP3、BMP4、BMP4/7、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP9、BMP10、GDF3、GDF5、GDF6/BMP13、GDF7、GDF8、GDF9b/BMP15、GDF11/BMP11、GDF15/MIC1、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、nodal、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アルテミン、パーセフィン、MIS、およびLefty)の存在下で実施することができ、ActRIIBポリペプチドおよび任意選択でActRIIBリガンドが生成するように細胞をトランスフェクトすることができる。同様に、ActRIIBポリペプチドをマウスまたは他の動物に投与し、骨髄線維症に対する効果を当技術分野で認められている方法を使用して評価することができる。同様に、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの改変体の活性を、血液細胞の前駆細胞中で、これらの細胞の成長に対する何らかの効果に関して、例えば、本明細書に記載されるアッセイおよび当技術分野において常識的なアッセイによって試験することができる。このような細胞株では、下流のシグナル伝達に対する作用をモニタリングするためにSMAD応答性レポーター遺伝子を使用することができる。
コンビナトリアル由来の改変体であって、参照ActRIIBポリペプチドと比べて選択的、または一般的に効力を増大させたリガンドトラップを生成することができる。このような改変体は、組換えDNA構築物から発現されたとき、遺伝子治療のプロトコルにおいて使用され得る。同様に、変異誘発は、対応する非改変ActRIIBポリペプチドとは劇的に異なる細胞内半減期を有する改変体を生じ得る。例えば、変更されたタンパク質は、タンパク質分解、または、非改変ポリペプチドの崩壊もしくは他の方法で不活性化をもたらす他の細胞プロセスに対してより安定性であるかもしくは安定性が低いかのいずれかにされ得る。このような改変体およびこれをコードする遺伝子は、そのポリペプチドの半減期を調節することによってポリペプチド複合体レベルを変更するのに利用され得る。例えば、短い半減期は、より一過性の生物学的作用を生じ得、そして、誘導性の発現系の一部である場合、細胞内での組換えポリペプチド複合体レベルのより厳しい制御を可能にし得る。Fc融合タンパク質では、変異は、ActRIIBポリペプチドの半減期を変更するために、リンカー(存在する場合)および/またはFc部分において作製され得る。
コンビナトリアルライブラリーは、各々が潜在的なActRIIB配列の少なくとも一部を含むポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーによって生成することができる。例えば、潜在的なActRIIBをコードするヌクレオチド配列の縮重セットが、個々のポリペプチドとして、または代替的に、大型の融合タンパク質のセット(例えば、ファージディスプレイのための)として発現可能であるように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を、遺伝子配列に酵素的にライゲーションすることができる。
潜在的な相同体のライブラリーを縮重オリゴヌクレオチド配列から生成し得る、多くの方式が存在する。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動式DNA合成器で実行することができ、次いで、合成遺伝子は、発現に適切なベクターにライゲーションすることができる。縮重オリゴヌクレオチドの合成は、当該分野で周知である。[Narang, SA(1983年)、Tetrahedron、39巻:3頁;Itakuraら(1981年)、Recombinant DNA、Proc. 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules、AG Walton編、Amsterdam、Elsevier、273〜289頁;Itakuraら(1984年)、Annu. Rev. Biochem.、53巻:323頁;Itakuraら(1984年)、Science、198巻:1056頁およびIkeら(1983年)、Nucleic Acid Res.、11巻:477頁]。このような技法は、他のタンパク質の指向進化で利用されている。[Scottら、(1990年)、Science、249巻:386〜390頁;Robertsら(1992年)、PNAS USA、89巻:2429〜2433頁;Devlinら(1990年)、Science、249巻:404〜406頁;Cwirlaら、(1990年)、PNAS USA、87巻:6378〜6382頁のほか、米国特許第5,223,409号、同第5,198,346号、および同第5,096,815号]。
代替的に、変異誘発の他の形態も、コンビナトリアルライブラリーを生成するのに活用することができる。例えば、本開示のActRIIBポリペプチドは、例えば、アラニン走査変異誘発[Rufら(1994年)、Biochemistry、33巻:1565〜1572頁;Wangら(1994年)、J. Biol. Chem.、269巻:3095〜3099頁;Balintら(1993年)、Gene、137巻:109〜118頁;Grodbergら(1993年)、Eur. J. Biochem.、218巻:597〜601頁;Nagashimaら(1993年)、J. Biol. Chem.、268巻:2888〜2892頁;Lowmanら(1991年)、Biochemistry、30巻:10832〜10838頁;およびCunninghamら(1989年)、Science、244巻:1081〜1085頁]を使用して、リンカー走査変異誘発[Gustinら(1993年)、Virology、193巻:653〜660頁;およびBrownら(1992年)、Mol. Cell Biol.、12巻:2644〜2652頁;McKnightら(1982年)、Science、232巻:316頁]によって、飽和変異誘発[Meyersら、(1986年)、Science、232巻:613頁]によって、PCR変異誘発[Leungら(1989年)、Method Cell Mol Biol、1巻:11〜19頁]によって、または化学的変異誘発[Millerら(1992年)、A Short Course in Bacterial Genetics、CSHL Press、Cold Spring Harbor、NY;およびGreenerら(1994年)、Strategies in Mol Biol、7巻:32〜34頁]を含むランダム変異誘発によって、スクリーニングすることにより、ライブラリーから生成および単離することができる。特に、コンビナトリアルの状況におけるリンカー走査変異誘発は、ActRIIBポリペプチドの短縮型(生体活性)形態を同定するための魅力的な方法である。
当該分野では、広範にわたる技法であって、点変異および短縮により作製されるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための技法、および、このために、ある特定の特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするための技法が公知である。このような技法は一般に、ActRIIBポリペプチドのコンビナトリアル変異誘発により生成される遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適合可能である。大規模な遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために最も広く使用される技法は典型的に、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングする工程と、適切な細胞を結果として得られるベクターのライブラリーで形質転換する工程と、所望の活性の検出により、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的容易な単離を促進する条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させる工程とを含む。好ましいアッセイは、TGF−ベータリガンド(例えば、BMP2、BMP2/7、BMP3、BMP4、BMP4/7、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP9、BMP10、GDF3、GDF5、GDF6/BMP13、GDF7、GDF8、GDF9b/BMP15、GDF11/BMP11、GDF15/MIC1、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、nodal、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アルテミン、パーセフィン、MIS、およびLefty)についての結合アッセイおよび/またはTGF−ベータリガンドに媒介される細胞シグナル伝達アッセイを含む。
当業者により認識される通り、本明細書で記載される変異、改変体または改変の大半は、核酸レベルで作製することもできる、または、場合によって、翻訳後修飾または化学合成により作製することもできる。このような技法は、当該分野で周知であり、それらの一部については、本明細書で記載される。本発明の開示は、部分的に、本明細書に記載される本発明の範囲内の他の改変体ActRIIBポリペプチドを生成したり使用したりするための指標として使用することができる、ActRIIBポリペプチドの機能的に活性な部分(フラグメント)および改変体を識別する。
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドの機能的に活性なフラグメントは、ActRIIBポリペプチドをコードする核酸(例えば、配列番号7、8、26、32、48、49、51、52、55、56、57、59、60、61、および62)の対応するフラグメントから組換えにより生成されたポリペプチドをスクリーニングすることにより得ることができる。加えて、フラグメントは、従来のメリフィールド固相f−Mocまたはt−Boc化学などの当技術分野で公知の技法を使用して化学合成することができる。フラグメントを生成し(組換えにより、または化学合成により)、試験して、ActRII受容体および/または1つもしくは複数のリガンド(例えば、BMP2、BMP2/7、BMP3、BMP4、BMP4/7、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP9、BMP10、GDF3、GDF5、GDF6/BMP13、GDF7、GDF8、GDF9b/BMP15、GDF11/BMP11、GDF15/MIC1、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、nodal、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アルテミン、パーセフィン、MIS、およびLefty)のアンタゴニスト(阻害剤)として機能することができるペプチジルフラグメントを同定することができる。
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、翻訳後修飾を、ActRIIBポリペプチドにおいて天然に存在するあらゆるものに加えてさらに含み得る。このような修飾としては、これらに限定されないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化が挙げられる。結果として、ActRIIBポリペプチドは、ポリエチレングリコール、脂質、多糖または単糖、およびリン酸などの非アミノ酸要素を含有し得る。リガンドトラップポリペプチドの機能性に対するこのような非アミノ酸要素の影響を、他のActRIIB改変体について、本明細書に記載される通り試験することができる。本開示のポリペプチドを、細胞においてポリペプチドの発生期の形態を切断することにより生成する場合、翻訳後プロセシングもタンパク質の正しいフォールディングおよび/または機能のために重要であり得る。異なる細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH−3T3またはHEK293)は、このような翻訳後の活性に関して特定の細胞機構および特徴的なメカニズムを有し、ActRIIポリペプチドの正しい修飾およびプロセシングが確実になるように選択することができる。
ある特定の態様では、本開示のActRIIBポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドの少なくとも一部分(ドメイン)と1つまたは複数の異種部分(ドメイン)とを有する融合タンパク質を含む。このような融合ドメインの周知の例としては、これらに限定されないが、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが挙げられる。融合ドメインは、所望の特性が付与されるように選択することができる。例えば、一部の融合ドメインは、融合タンパク質をアフィニティクロマトグラフィーによって単離するために特に有用である。アフィニティー精製のために、アフィニティクロマトグラフィーに関連するマトリックス、例えば、グルタチオンに結合体化させた樹脂、アミラーゼに結合体化させた樹脂、およびニッケルに結合体化させた樹脂またはコバルトに結合体化させた樹脂を使用する。このようなマトリックスの多くは、(HIS6)融合パートナーと共に有用である、Pharmacia GST精製システムおよびQIAexpress(商標)システム(Qiagen)などの「キット」形態で入手可能である。別の例として、ActRIIBポリペプチドの検出が容易になるように融合ドメインを選択することができる。このような検出ドメインの例としては、様々な蛍光タンパク質(例えば、GFP)、ならびに、通常は特異的な抗体が入手可能な短いペプチド配列である「エピトープタグ」が挙げられる。特異的なモノクローナル抗体が容易に入手可能である周知のエピトープタグとしては、FLAG、インフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)、およびc−mycタグが挙げられる。一部の場合では、融合ドメインは、関連するプロテアーゼにより融合タンパク質を部分的に消化し、それにより、そこから組換えタンパク質を遊離させることを可能にする、第Xa因子またはトロンビンなどに対するプロテアーゼ切断部位を有する。次いで、その後のクロマトグラフィーによる分離により、遊離したタンパク質を融合ドメインから単離することができる。選択することができる融合ドメインの他のタイプとしては、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメイン、および、例えば免疫グロブリン由来の定常ドメイン(例えば、Fcドメイン)を含めた、機能性ドメイン(追加の生物学的機能を付与するもの)が挙げられる。
ある特定の態様では、本発明の開示のActRIIBポリペプチドは、ポリペプチドを「安定化すること」が可能な1つまたは複数の改変を含有する。「安定化すること」とは、それが、破壊の低減によるものであるか、腎臓によるクリアランスの減少によるものであるか、または作用因子の他の薬物動態作用によるものであるかとは無関係に、インビトロ半減期、血清中半減期を増加させる任意のものを意味する。例えば、このような修飾は、ポリペプチドの貯蔵寿命を増強させるか、ポリペプチドの循環半減期を増強させる、かつ/または、ポリペプチドのタンパク質分解を減少させる。このような安定化修飾としては、融合タンパク質(例えば、ActRIIBポリペプチドドメインと安定化ドメインとを含む融合タンパク質が挙げられる)、グリコシル化部位の修飾(例えば、本開示のポリペプチドへのグリコシル化部位の付加が挙げられる)、および糖質部分の修飾(例えば、本開示のポリペプチドからの炭水化物部分の除去が挙げられる)が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書中で使用される場合、用語「安定化ドメイン」は、融合タンパク質の場合のように融合ドメイン(例えば、免疫グロブリンFcドメイン)を指すだけでなく、炭水化物部分のような非タンパク質性修飾、または、ポリエチレングリコールのような非タンパク質性部分も含む。ある特定の好ましい実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、ポリペプチドを安定化させる異種ドメイン(「安定剤」ドメイン)、好ましくはインビボにおけるポリペプチドの安定性を増加させる異種ドメインと融合されている。免疫グロブリンの定常ドメイン(例えば、Fcドメイン)との融合は、多様なタンパク質に所望の薬物動態特性を付与することが公知である。同様に、ヒト血清アルブミンへの融合は、所望の特性を付与することができる。
以下に、ヒトIgG1のFc部分(G1Fc)に使用できる天然アミノ酸配列の例を示す(配列番号9)。点線の下線は、ヒンジ領域を指し示し、実線の下線は、天然に存在する改変体を有する位置を指し示す。本開示は、部分的に、配列番号9と、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなるポリペプチドを提供する。G1Fc中の天然に存在する改変体は、配列番号9で使用される番号付けシステム(Uniprot P01857を参照)に従ってE134DおよびM136Lを含み得ると予想される。
任意選択で、IgG1Fcドメインは、Asp−265、リシン322、およびAsn−434のような残基における1つまたは複数の変異を有する。特定の場合には、これらの変異のうち1つまたは複数(例えば、Asp−265変異)を有する変異型IgG1Fcドメインは、野生型Fcドメインに対する、Fcγ受容体への結合能の低下を有する。他の場合には、これらの変異のうち1つまたは複数(例えば、Asn−434変異)を有する変異型Fcドメインは、野生型IgG1Fcドメインに対する、MHCクラスI関連のFc受容体(FcRN)への結合能の増加を有する。
以下に、ヒトIgG2(G2Fc)のFc部分に使用できる天然アミノ酸配列の例を示す(配列番号10)。点線の下線は、ヒンジ領域を指し示し、二重下線は、配列においてデータベースの矛盾がある位置(UniProt P01859に従う)を指し示す。本開示は、部分的に、配列番号10と、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなるポリペプチドを提供する。
以下に、ヒトIgG3(G3Fc)のFc部分に使用できるアミノ酸配列の2つの例を示す。G3Fc中のヒンジ領域は、他のFc鎖中のものの最大4倍であってもよく、類似の17残基のセグメントに続き、3つの同一である15残基のセグメントを含有する。以下に示す第1のG3Fc配列(配列番号11)は、単一の15残基のセグメントからなる短いヒンジ領域を含有し、それに対して第2のG3Fc配列(配列番号12)は、全長ヒンジ領域を含有する。それぞれの場合において、点線の下線は、ヒンジ領域を指し示し、実線の下線は、UniProt P01859に従って天然に存在する改変体を有する位置を指し示す。本開示は、部分的に、配列番号11および12と、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなるポリペプチドを提供する。
G3Fc中の天然に存在する改変体(例えば、Uniprot P01860を参照)は、配列番号11で使用される番号付けシステムに変換した場合、E68Q、P76L、E79Q、Y81F、D97N、N100D、T124A、S169N、S169del、F221Yを含み、本発明の開示は、これらのバリエーションのうち1つまたは複数を含有するG3Fcドメインを含む融合タンパク質を提供する。加えて、ヒト免疫グロブリンIgG3遺伝子(IGHG3)は、異なるヒンジ長さを特徴とする構造的多型を示す[Uniprot P01859を参照]。具体的には、改変体WISは、V領域のほとんどおよびCH1領域の全てが欠失している。これは、ヒンジ領域中に通常存在する11個に加えて、7位に余分な鎖間のジスルフィド結合を有する。改変体ZUCは、V領域のほとんど、CH1領域の全て、およびヒンジの一部を欠如している。改変体OMMは、対立遺伝子型または別のガンマ鎖サブクラスを表す場合がある。本発明の開示は、これらの改変体のうち1つまたは複数を含有するG3Fcドメインを含む追加の融合タンパク質を提供する。
以下に、ヒトIgG4(G4Fc)のFc部分に使用できる天然アミノ酸配列の例を示す(配列番号13)。点線の下線は、ヒンジ領域を指し示す。本開示は、一部、配列番号13と、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなるポリペプチドを提供する。
Fcドメインにおける種々の操作された変異が、本明細書ではG1Fc配列(配列番号9)に関して示されており、G2Fc、G3Fc、およびG4Fcにおける類似の変異は、図11におけるそれらのG1Fcとのアラインメントから誘導することができる。不均一なヒンジ長のために、アイソタイプアラインメント(図11)に基づく類似のFc位置は、配列番号9、10、11、12、および13において異なるアミノ酸の数を有する。また、ヒンジ、C
H2、およびC
H3領域からなる免疫グロブリン配列中の所与のアミノ酸位置(例えば、配列番号9、10、11、12、および13)は、Uniprotデータベースに記載の通り、番号付けがIgG1重鎖定常ドメイン(C
H1、ヒンジ、C
H2、およびC
H3領域からなる)全体を包含する場合の同位置とは異なる番号で識別されることも認められ得る。例えば、ヒトG1Fc配列(配列番号9)、ヒトIgG1重鎖定常ドメイン(Uniprot P01857)、およびヒトIgG1重鎖中の選択されたC
H3位の位置間の対応は、以下の通りである。
融合タンパク質(例えば、免疫グロブリンFc融合タンパク質)の異なるエレメントが、所望の機能性に符合する任意の形態で配列され得ることが理解される。例えば、ActRIIBポリペプチドドメインを、異種ドメインに対してC末端に設置することもでき、または代替的に、異種ドメインは、ActRIIBポリペプチドドメインに対してC末端に設置することもできる。ActRIIBポリペプチドドメインと異種ドメインとは、融合タンパク質内で隣接する必要はなく、追加のドメインまたはアミノ酸配列を、いずれかのドメインに対してC末端またはN末端に含めることもでき、またはドメイン間に含めることもできる。
例えば、ActRIIB受容体融合タンパク質は、式A−B−Cに示されるアミノ酸配列を含み得る。B部分は、ActRIIBポリペプチドドメインに対応する。AおよびC部分は、独立に、0、1または1を超えるアミノ酸であってもよく、A部分およびC部分はいずれも、存在する場合、Bに対して異種である。Aおよび/またはC部分は、リンカー配列を介してB部分に付加され得る。リンカーは、グリシンリッチであってもよく(例えば、2〜10、2〜5、2〜4、2〜3個のグリシン残基)、またはグリシンおよびプロリン残基がリッチであってもよく、例えば、スレオニン/セリンおよびグリシンの単一の配列、またはスレオニン/セリンおよび/もしくはグリシンの反復配列、例えば、GGG(配列番号14)、GGGG(配列番号15)、TGGGG(配列番号16)、SGGGG(配列番号17)、TGGG(配列番号18)、SGGG(配列番号19)、またはGGGGS(配列番号20)シングレット、またはリピートを含有し得る。ある特定の実施形態では、ActRIIB融合タンパク質は、式A−B−Cに示されるアミノ酸配列を含み、式中、Aは、リーダー(シグナル)配列であり、Bは、ActRIIBポリペプチドドメインからなり、Cは、インビボにおける安定性、インビボにおける半減期、取込み/投与、組織局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成、および/または精製の1つまたは複数を増強するポリペプチド部分である。ある特定の実施形態では、ActRIIB融合タンパク質は、式A−B−Cに示されるアミノ酸配列を含み、式中、Aは、TPAリーダー配列であり、Bは、ActRIIB受容体ポリペプチドドメインからなり、Cは、免疫グロブリンのFcドメインである。好ましい融合タンパク質は、配列番号24、25、28、29、31、33、34、45、50、53、および58のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含む。
好ましい実施形態では、本明細書で記載される方法に従い使用されるActRIIBポリペプチドは、単離ポリペプチドである。本明細書で使用する場合、単離タンパク質または単離ポリペプチドとは、その天然環境の成分から分離されたタンパク質またはポリペプチドである。一部の実施形態では、本開示のポリペプチドを、例えば、電気泳動(例えば、SDS−PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)、またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換HPLCまたは逆相HPLC)により決定した場合に、95%、96%、97%、98%、または99%より高い純度まで精製する。当該分野では、抗体純度を評価するための方法が周知である[例えば、Flatmanら、(2007年)、J. Chromatogr.、B848巻:79〜87頁を参照されたい]。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って使用されるActRIIBポリペプチドは、組換えポリペプチドである。
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、当該分野で公知の様々な技法により生成することができる。例えば、本開示のポリペプチドは、Bodansky, M.、Principles of Peptide Synthesis、Springer Verlag、Berlin(1993年);およびGrant G. A.(編)、Synthetic Peptides: A User’s Guide、W. H. Freeman and Company、New York(1992年)において記載されているものなどの標準的なタンパク質化学技術を使用して合成することができる。加えて、自動式ペプチド合成器も、市販されている(例えば、Advanced ChemTech 396型;Milligen/Biosearch9600)。代替的に、それらのフラグメントまたは改変体を含む、本開示のポリペプチドは、当該分野で周知の、種々の発現系[例えば、E.coli、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、バキュロウイルス]を使用して、組換えにより生成することもできる。さらなる実施形態では、本開示の改変ポリペプチドまたは非改変ポリペプチドは、例えば、プロテアーゼ、例えば、トリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、ペプシン、またはPACE(paired basic amino acid converting enzyme)の使用を介する、組換えにより生成された全長ActRIIBポリペプチドの消化により生成することができる。(市販のソフトウェア、例えば、MacVector、Omega、PCGene、Molecular Simulation,Inc.を使用する)コンピュータ解析を使用して、タンパク質分解性切断部位を同定することができる。代替的に、このようなポリペプチドは、化学的切断(例えば、臭化シアン、ヒドロキシルアミンなど)を使用して、組換えにより生成された全長ActRIIBポリペプチドから生成することができる。
B.ActRIIBポリペプチドをコードする核酸
ある特定の実施形態では、本開示は、ActRIIBポリペプチド(それらのフラグメント、機能的な改変体(例えば、GDFトラップ)、および融合タンパク質を含めて)をコードする単離されたおよび/または組換え核酸を提供する。例えば、配列番号7は、天然に存在するヒトActRIIB前駆体ポリペプチド(上記のR64改変体)をコードし、配列番号8は、プロセシングされたActRIIBの細胞外ドメイン(上記のR64改変体)をコードする。主題の核酸は、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。このような核酸は、DNA分子であってもよく、RNA分子であってもよい。これらの核酸は、例えば、本明細書に記載されるActRIIに基づくリガンドトラップポリペプチドを作製するための方法において使用することができる。
本明細書で使用する場合、単離核酸とは、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離核酸は、その核酸分子を通常含有するが、その核酸分子が染色体外またはその天然の染色体位置と異なる染色体位置に存在する細胞内に含有される核酸分子を含む。
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドをコードする核酸は、配列番号7、8、26、32、48、49、51、52、55、57、59、60、61、および62のいずれか1つの改変体である核酸を含むことが理解される。改変体ヌクレオチド配列は、対立遺伝子改変体を含めた、1つまたは複数のヌクレオチドの置換、付加、または欠失により異なる配列を含み、したがって、配列番号7、8、26、32、48、49、51、52、55、56、57、59、60、61、および62のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列とは異なるコード配列を含むことになる。
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、配列番号7、8、26、32、48、49、51、52、55、56、57、59、60、61、および62のいずれか1つと、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94% 95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である単離されたおよび/または組換え核酸配列によってコードされる。当業者は、配列番号7、8、26、32、48、49、51、52、55、56、57、59、60、61、および62、ならびにそれらの改変体と相補的な配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94% 95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である核酸配列も本開示の範囲内にあることを察知するであろう。さらなる実施形態では、本開示の核酸配列は、単離され得る、組換えとなり得る、および/または異種ヌクレオチド配列と融合され得る、あるいはDNAライブラリー中に存在し得る。
他の実施形態では、本開示の核酸は、配列番号7、8、26、32、48、49、51、52、55、56、57、59、60、61、および62で示されるヌクレオチド配列、配列番号7、8、26、32、48、49、51、52、55、56、57、59、60、61、および62の相補配列、またはそのフラグメントと、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列も含む。上記で考察した通り、当業者は、DNAのハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件は変動し得ることを容易に理解する。当業者は、DNAのハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件は変動し得ることを容易に理解する。例えば、ハイブリダイゼーションを6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、約45℃で行い、その後、2.0×SSC、50℃で洗浄を行うことができる。例えば、洗浄工程における塩濃度は、低ストリンジェンシーである約2.0×SSC、50℃から高ストリンジェンシーである約0.2×SSC、50℃まで選択され得る。さらに、洗浄工程における温度は、室温、約22℃での低ストリンジェンシー条件から、約65℃の高ストリンジェンシー条件まで増加し得る。温度と塩の両方が変動し得る、または温度もしくは塩濃度は、他方の変数が変化する一方で一定に保たれてよい。一実施形態では、本開示は、6×SSC、室温の低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズし、その後、2×SSC、室温で洗浄される核酸を提供する。
配列番号7、8、26、32、48、49、51、52、55、56、57、59、60、61、および62に示されている核酸とは遺伝暗号における縮重で異なる単離された核酸も本開示の範囲内である。例えば、いくつかのアミノ酸が1つより多くのトリプレットによって示される。同じアミノ酸、またはシノニム(例えば、CAUおよびCACは、ヒスチジンのシノニムである)を特定するコドンにより、タンパク質のアミノ酸配列には影響を及ぼさない「サイレント」変異が生じる可能性がある。しかし、主題のタンパク質のアミノ酸配列の変化を導くDNA配列の多型が哺乳動物細胞の間で存在することが予想される。当業者は、天然の対立遺伝子のバリエーションに起因して、特定のタンパク質をコードする核酸の1つまたは複数のヌクレオチド(最大約3〜5%のヌクレオチド)におけるこれらのバリエーションが所与の種の個体間で存在する可能性があることを理解する。ありとあらゆるこのようなヌクレオチドのバリエーションおよび結果生じるアミノ酸の多型は本開示の範囲内である。
特定の実施形態では、本開示の組換え核酸は、発現構築物において1または複数の調節性ヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。調節性のヌクレオチド配列は、一般に、発現のために使用される宿主細胞に対して適切なものである。多数のタイプの適切な発現ベクターおよび適切な調節性配列が当該分野で公知であり、種々の宿主細胞において使用することができる。代表的には、上記1または複数の調節性ヌクレオチド配列としては、プロモーター配列、リーダー配列もしくはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および転写終結配列、翻訳開始配列および翻訳終結配列、ならびに、エンハンサー配列もしくはアクチベーター配列が挙げられ得るがこれらに限定されない。当該分野で公知の構成的もしくは誘導性のプロモーターが、本開示によって企図される。プロモーターは、天然に存在するプロモーター、または、1つより多くのプロモーターの要素を組み合わせたハイブリッドプロモーターのいずれかであり得る。発現構築物は、プラスミドのようにエピソーム上で細胞中に存在し得るか、または、発現構築物は、染色体中に挿入され得る。一部の実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするために、選択可能なマーカー遺伝子を含む。選択可能なマーカー遺伝子は、当該分野で周知であり、そして、使用される宿主細胞により変化し得る。
特定の態様では、本明細書に記載の本主題の核酸は、ActRIIBポリペプチドをコードし、そして、少なくとも1つの調節性配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターにおいて提供される。調節性配列は当該分野で認識され、そして、ActRIIBポリペプチドの発現を誘導するように選択される。したがって、用語、調節性配列は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメントを含む。例示的な調節性配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、CA(1990年)に記載される。例えば、作動可能に連結されたときにDNA配列の発現を制御する広範な種々の発現制御配列のいずれかが、ActRIIBポリペプチドをコードするDNA配列を発現させるためにこれらのベクターにおいて使用され得る。このような有用な発現制御配列としては、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスもしくはサイトメガロウイルスの前初期プロモーター、RSVプロモーター、lacシステム、trpシステム、TACもしくはTRCシステム、T7 RNAポリメラーゼによってその発現が誘導されるT7プロモーター、ファージλの主要なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼもしくは他の糖分解酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母α−接合因子(mating factor)のプロモーター、バキュロウイルス系の多角体プロモーター、ならびに、原核生物もしくは真核生物の細胞、または、そのウイルスの遺伝子の発現を制御することが公知である他の配列、ならびにこれらの種々の組み合わせが挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択および/または発現されることが所望されるタンパク質のタイプのような要因に依存し得ることが理解されるべきである。さらに、ベクターのコピー数、コピー数を制御する能力およびベクターによってコードされる任意の他のタンパク質(例えば、抗生物質マーカー)の発現もまた考慮されるべきである。
本開示の組換え核酸は、クローニングされた遺伝子またはその一部を、原核生物細胞、真核生物細胞(酵母、鳥類、昆虫または哺乳動物)のいずれか、または両方において発現させるために適切なベクター中に連結することによって生成され得る。組換えActRIIBポリペプチドの生成のための発現ビヒクルとしては、プラスミドおよび他のベクターが挙げられる。例えば、適切なベクターとしては、以下のタイプのプラスミドが挙げられる:原核生物細胞(例えば、E.coli)における発現のための、pBR322由来のプラスミド、pEMBL由来のプラスミド、pEX由来のプラスミド、pBTac由来のプラスミドおよびpUC由来のプラスミド。
いくつかの哺乳動物発現ベクターは、細菌中でのベクターの増殖を促進するための原核生物の配列と、真核生物細胞において発現される1または複数の真核生物の転写単位との両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neoおよびpHyg由来のベクターは、真核生物細胞のトランスフェクションに適切な哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのいくつかは、原核生物細胞および真核生物細胞の両方における複製および薬物耐性選択を容易にするために、細菌プラスミド(例えば、pBR322)からの配列を用いて改変される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−1)またはエプスタイン−バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)のようなウイルスの誘導体が、真核生物細胞におけるタンパク質の一過的な発現のために使用され得る。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現系の例は、遺伝子治療送達系の説明において以下に見出され得る。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換において用いられる種々の方法は、当該分野で周知である。原核生物細胞および真核生物細胞の両方についての他の適切な発現系、ならびに、一般的な組換え手順、例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual、3rd Ed.、Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年)。いくつかの場合において、バキュロウイルス発現系を用いて組換えポリペプチドを発現させることが望ましくあり得る。このようなバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来のベクター(例えば、pVL1392、pVL1393およびpVL941)、pAcUW由来のベクター(例えば、pAcUWl)およびpBlueBac由来のベクター(例えば、β−galを含むpBlueBac III)が挙げられる。
好ましい実施形態では、ベクターは、CHO細胞における本主題のActRIIBポリペプチドの生成のために設計される(例えば、Pcmv−Scriptベクター(Stratagene,La Jolla,Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)およびpCI−neoベクター(Promega,Madison,Wisc))。明らかであるように、本主題の遺伝子構築物は、例えば、タンパク質(融合タンパク質または改変体タンパク質を含む)を生成するため、精製のために、培養物において増殖させた細胞において本主題のActRIIポリペプチドの発現を引き起こすために使用され得る。
本開示はまた、1または複数の本主題のActRIIBポリペプチドのコード配列を含む組換え遺伝子をトランスフェクトされた宿主細胞に関する。宿主細胞は、任意の原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。例えば、本開示のActRIIBポリペプチドは、E.coliのような細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を用いる)、酵母細胞または哺乳動物細胞[例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株]において発現され得る。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
したがって、本開示はさらに、本主題のActRIIBポリペプチドを生成する方法に関する。例えば、ActRIIBポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞は、ActRIIBポリペプチドの発現を起こすことが可能な適切な条件下で培養され得る。ポリペプチドは、ポリペプチドを含む細胞および培地の混合物から分泌および単離され得る。あるいは、ActRIIBポリペプチドは、細胞質または膜画分に保持され得、そして、細胞が回収、溶解され、そして、タンパク質が単離される。細胞培養物は、宿主細胞、培地および他の副産物を含む。細胞培養に適切な培地は、当該分野で周知である。本主題のポリペプチドは、タンパク質を精製するための当該分野で公知の技法であって、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、ActRIIBポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体による免疫アフィニティー精製、およびActRIIBポリペプチドに融合させたドメインに結合する作用因子によるアフィニティー精製(例えば、プロテインAカラムを使用して、ActRIIB−Fc融合タンパク質を精製することができる)を含む技法を使用して、細胞培養培地、宿主細胞、またはこれらの両方から単離することができる。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、その精製を容易とするドメインを含有する融合タンパク質である。
一部の実施形態では、精製は、一連のカラムクロマトグラフィー工程であって、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ除外クロマトグラフィー、およびカチオン交換クロマトグラフィーのうちの3つまたはこれより多く、任意の順序で含む工程により達成する。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換により完了し得る。ActRIIBタンパク質は、サイズ除外クロマトグラフィーにより決定した場合に、>90%、>95%、>96%、>98%、または>99%の純度まで精製することができ、SDS PAGEにより決定した場合に、>90%、>95%、>96%、>98%、または>99%の純度まで精製することができる。純度の標的レベルは、哺乳動物系、特に、非ヒト霊長動物、齧歯動物(マウス)、およびヒトにおいて、望ましい結果を達成するのに十分なレベルであるべきである。
別の実施形態では、精製用リーダー配列(例えば、組換えActRIIBポリペプチドの所望の部分のN末端に位置するポリ−(His)/エンテロキナーゼ切断部位の配列)をコードする融合遺伝子は、Ni2+金属樹脂を用いる親和性クロマトグラフィーによる、発現された融合タンパク質の精製を可能にし得る。その後、精製用リーダー配列は、引き続いて、エンテロキナーゼでの処理によって除去され、精製ActRIIBポリペプチドを提供し得る。例えば、Hochuliら、(1987年)J.Chromatography 411巻:177頁;およびJanknechtら、(1991年)PNAS USA 88巻:8972頁を参照のこと)。
融合遺伝子を作製するための技術は周知である。本質的には、異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNAフラグメントの接合は、ライゲーションのための平滑末端もしくは突出(staggered)末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要に応じた粘着末端のフィルイン(filling−in)、所望されない接合を回避するためのアルカリ性ホスファターゼ処理、および酵素によるライゲーション、を用いる従来の技術に従って行われる。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来の技術によって合成され得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、2つの連続した遺伝子フラグメント間の相補的なオーバーハング(overhang)を生じるアンカープライマーを用いて行われ得、これらのフラグメントは、その後、キメラ遺伝子配列を生じるようにアニーリングされ得る。例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992年を参照のこと。
C.抗体アンタゴニスト
ある特定の態様では、本明細書で開示された方法および使用に従って使用されるActRIIBアンタゴニストは、抗体(ActRIIBアンタゴニスト抗体)または抗体の組み合わせである。ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、例えば、1つまたは複数のActRIIB結合リガンド(例えば、アクチビン、GDF11、GDF8、GDF3、BMP10、およびBMP6)、ActRIIB受容体、I型受容体(例えば、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、および/またはActRIIB補助受容体に結合することができる。本明細書に記載される通り、骨髄線維症を処置するため、特に、骨髄線維症の1つまたは複数の合併症(例えば、脾腫、髄外造血、貧血、および線維症)、ならびに/またはヤヌスキナーゼ阻害剤を用いて処置された患者を処置または予防するために、ActRIIBアンタゴニスト抗体を、単独で、または1つもしくは複数の支持療法もしくは活性作用因子と組み合わせて使用することができる。
ある特定の態様では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともアクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAE、および/またはアクチビンBE)を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともアクチビンに結合する。本明細書で使用される場合、アクチビン抗体(または抗アクチビン抗体)とは、一般に、抗体が、アクチビンを標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように十分なアフィニティーでアクチビンに結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、アクチビン以外の非関連タンパク質へのアクチビン抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質相互作用または結合アフィニティーアッセイにより測定される、抗体のアクチビンへの結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、アクチビン抗体は、異なる種に由来するアクチビンの間で保存的な、アクチビンのエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗アクチビン抗体は、ヒトアクチビンに結合する。一部の実施形態では、アクチビン抗体は、アクチビンが、I型および/またはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)に結合することを阻害することが可能であり、したがって、アクチビンに媒介されるシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害することが可能である。一部の実施形態では、アクチビン抗体は、アクチビンが、ActRIIB補助受容体に結合することを阻害することが可能であり、したがって、アクチビンに媒介されるシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害することが可能である。注目すべきことに、アクチビンAは、アクチビンBと類似した配列相同性を有し、したがって、アクチビンAに結合する抗体は、場合によって、アクチビンBに結合し、かつ/またはそれを阻害することも可能であり、これは、抗アクチビンB抗体にも当てはまる。一部の実施形態では、本開示は、アクチビンに結合し、例えば、1つもしくは複数の追加のActRIIBリガンド[例えば、GDF11、GDF8、GDF3、BMP10、およびBMP6]、1つもしくは複数のI型受容体および/もしくはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または1つもしくは複数の補助受容体にさらに結合する多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、およびその使用に関する。一部の実施形態では、アクチビンに結合する多特異性抗体は、BMP9に結合しない、または実質的に結合しない(例えば、BMP9に1×10−7Mより大きいKDで結合するか、または比較的中度の結合、例えば、約1×10−8Mまたは約1×10−9Mを示す)。一部の実施形態では、アクチビンに結合する多特異性抗体は、アクチビンAに結合しない、または実質的に結合しない(例えば、アクチビンAに1×10−7Mより大きいKDで結合する、または比較的中度の結合、例えば、約1×10−8Mまたは約1×10−9Mを示す)。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組み合わせ、およびその使用に関し、抗体の組み合わせは、アクチビン抗体と、例えば、1つもしくは複数の追加のActRIIBスーパーファミリーリガンド[例えば、GDF8、GDF11、GDF3、およびBMP6]、1つもしくは複数のI型受容体および/もしくはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または1つもしくは複数の補助受容体に結合する1つまたは複数の追加の抗体とを含む。一部の実施形態では、アクチビン抗体を含む抗体の組み合わせは、BMP9抗体を含まない。一部の実施形態では、アクチビン抗体を含む抗体の組み合わせは、アクチビンA抗体を含まない。
ある特定の態様では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともアクチビンBを阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともアクチビンBに結合する。本明細書で使用される場合、アクチビンB抗体(または抗アクチビンB抗体)とは、一般に、抗体が、アクチビンBを標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように十分なアフィニティーでアクチビンBに結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、アクチビンB以外の非関連タンパク質へのアクチビンB抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質相互作用または結合アフィニティーアッセイにより測定される、抗体のアクチビンへの結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、アクチビンB抗体は、異なる種に由来するアクチビンBの間で保存的な、アクチビンBのエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗アクチビンB抗体は、ヒトアクチビンBに結合する。一部の実施形態では、アクチビンB抗体は、アクチビンBが、I型および/またはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)に結合することを阻害することが可能であり、したがって、アクチビンBに媒介されるシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害することが可能である。一部の実施形態では、アクチビンB抗体は、アクチビンBが、補助受容体に結合することを阻害することが可能であり、したがって、アクチビンBに媒介されるシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害することが可能である。注目すべきことに、アクチビンBは、アクチビンAと類似した配列相同性を有し、したがって、アクチビンBに結合する抗体は、場合によって、アクチビンAに結合し、かつ/またはそれを阻害することも可能である。一部の実施形態では、本開示は、アクチビンBに結合し、例えば、1つもしくは複数の追加のActRIIBリガンド[例えば、GDF11、GDF8、GDF3、BMP10、およびBMP6]、1つもしくは複数のI型受容体および/もしくはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または1つもしくは複数の補助受容体にさらに結合する多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、およびその使用に関する。一部の実施形態では、アクチビンBに結合する多特異性抗体は、BMP9に結合しない、または実質的に結合しない(例えば、BMP9に1×10−7Mより大きいKDで結合するか、または比較的中度の結合、例えば、約1×10−8Mまたは約1×10−9Mを示す)。一部の実施形態では、アクチビンBに結合する多特異性抗体は、アクチビンAに結合しない、または実質的に結合しない(例えば、アクチビンAに1×10−7Mより大きいKDで結合するか、または比較的中度の結合、例えば、約1×10−8Mまたは約1×10−9Mを示す)。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組み合わせ、およびその使用に関し、抗体の組み合わせは、アクチビンB抗体と、例えば、1つもしくは複数の追加のActRIIBリガンド[例えば、GDF8、GDF11、GDF3、BMP6、およびBMP10]、1つもしくは複数のI型受容体および/もしくはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または1つもしくは複数の補助受容体に結合する1つまたは複数の追加の抗体とを含む。一部の実施形態では、アクチビンB抗体を含む抗体の組み合わせは、BMP9抗体を含まない。一部の実施形態では、アクチビンB抗体を含む抗体の組み合わせは、アクチビンA抗体を含まない。
ある特定の態様では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともGDF8を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともGDF8に結合する。本明細書で使用される場合、GDF8抗体(または抗GDF8抗体)とは、一般に、抗体が、GDF8を標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでGDF8に結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、GDF8以外の非関連タンパク質へのGDF8抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質相互作用または結合アフィニティーアッセイにより測定される、抗体のGDF8への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、GDF8抗体は、異なる種に由来するGDF8の間で保存的な、GDF8のエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗GDF8抗体は、ヒトGDF8に結合する。一部の実施形態では、GDF8抗体は、GDF8が、I型および/またはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)に結合することを阻害することが可能であり、したがって、GDF8に媒介されるシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害することが可能である。一部の実施形態では、GDF8抗体は、GDF8が、補助受容体に結合することを阻害することが可能であり、したがって、GDF8に媒介されるシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害することが可能である。注目すべきことに、GDF8は、GDF11との配列相同性が高く、したがって、GDF8に結合する抗体は、場合によって、GDF11に結合し、かつ/またはそれを阻害することも可能である。一部の実施形態では、本開示は、GDF8に結合し、例えば、1つもしくは複数の追加のActRIIBリガンド[例えば、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAE、アクチビンBE)、GDF11、GDF3、BMP10、およびBMP6]、1つもしくは複数のI型受容体および/もしくはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または1つもしくは複数の補助受容体にさらに結合する多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、およびその使用に関する。一部の実施形態では、GDF8に結合する多特異性抗体は、BMP9に結合しない、または実質的に結合しない(例えば、BMP9に1×10−7Mより大きいKDで結合するか、または比較的中度の結合、例えば、約1×10−8Mまたは約1×10−9Mを示す)。一部の実施形態では、GDF8に結合する多特異性抗体は、アクチビンAに結合しない、または実質的に結合しない(例えば、アクチビンAに1×10−7Mより大きいKDで結合する、または比較的中度の結合、例えば、約1×10−8Mまたは約1×10−9Mを示す)。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組み合わせ、およびその使用に関し、抗体の組み合わせは、GDF8抗体と、例えば、1つもしくは複数の追加のActRIIBリガンド[例えば、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAE、アクチビンBE)、GDF11、GDF3、BMP6、BMP10、およびBMP15]、1つもしくは複数のI型受容体および/もしくはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または1つもしくは複数の補助受容体に結合する1つまたは複数の追加の抗体とを含む。一部の実施形態では、GDF8抗体を含む抗体の組み合わせは、BMP9抗体を含まない。一部の実施形態では、GDF8抗体を含む抗体の組み合わせは、アクチビンA抗体を含まない。
ある特定の態様では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともGDF11を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともGDF11に結合する。本明細書で使用される場合、GDF11抗体(または抗GDF11抗体)とは、一般に、抗体が、GDF11を標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでGDF11に結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、GDF11以外の非関連タンパク質へのGDF11抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質相互作用または結合アフィニティーアッセイにより測定される、抗体のGDF11への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、GDF11抗体は、異なる種に由来するGDF11の間で保存的な、GDF11のエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗GDF11抗体は、ヒトGDF11に結合する。一部の実施形態では、GDF11抗体は、GDF11が、I型および/またはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)に結合することを阻害することが可能であり、したがって、GDF11に媒介されるシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害することが可能である。一部の実施形態では、GDF11抗体は、GDF11が、補助受容体に結合することを阻害することが可能であり、したがって、GDF11に媒介されるシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害することが可能である。注目すべきことに、GDF11は、GDF8との配列相同性が高く、したがって、GDF11に結合する抗体は、場合によって、GDF8に結合し、かつ/またはそれを阻害することも可能である。一部の実施形態では、本開示は、GDF11に結合し、例えば、1つもしくは複数の追加のActRIIBリガンド[例えば、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAE、アクチビンBE)、GDF8、GDF3、BMP10、およびBMP6]、1つもしくは複数のI型受容体および/もしくはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または1つもしくは複数の補助受容体にさらに結合する多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、およびその使用に関する。一部の実施形態では、GDF11に結合する多特異性抗体は、BMP9に結合しない、または実質的に結合しない(例えば、BMP9に1×10−7Mより大きいKDで結合するか、または比較的中度の結合、例えば、約1×10−8Mまたは約1×10−9Mを示す)。一部の実施形態では、GDF11に結合する多特異性抗体は、アクチビンAに結合しない、または実質的に結合しない(例えば、アクチビンAに1×10−7Mより大きいKDで結合するか、または比較的中度の結合、例えば、約1×10−8Mまたは約1×10−9Mを示す)。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組み合わせ、およびその使用に関し、抗体の組み合わせは、GDF11抗体と、例えば、1つもしくは複数の追加のActRIIBリガンド[例えば、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAE、アクチビンBE)、GDF8、GDF3、BMP6、およびBMP10]、1つもしくは複数のI型受容体および/もしくはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または1つもしくは複数の補助受容体に結合する1つまたは複数の追加の抗体とを含む。一部の実施形態では、GDF11抗体を含む抗体の組み合わせは、BMP9抗体を含まない。一部の実施形態では、GDF11抗体を含む抗体の組み合わせは、アクチビンA抗体を含まない。
ある特定の態様では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともBMP6を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともBMP6に結合する。本明細書で使用される場合、BMP6抗体(または抗BMP6抗体)とは、一般に、抗体が、BMP6を標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでBMP6に結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、BMP6以外の非関連タンパク質へのBMP6抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質相互作用または結合アフィニティーアッセイにより測定される、抗体のBMP6への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、BMP6抗体は、異なる種に由来するBMP6の間で保存的な、BMP6のエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗BMP6抗体は、ヒトBMP6に結合する。一部の実施形態では、BMP6抗体は、BMP6が、I型および/またはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)に結合することを阻害することが可能であり、したがって、BMP6に媒介されるシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害することが可能である。一部の実施形態では、BMP6抗体は、BMP6が、補助受容体に結合することを阻害することが可能であり、したがって、BMP6に媒介されるシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害することが可能である。一部の実施形態では、本開示は、BMP6に結合し、例えば、1つもしくは複数の追加のActRIIBリガンド[例えば、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAE、アクチビンBE)、GDF8、GDF3、BMP10、およびGDF11]、1つもしくは複数のI型受容体および/もしくはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または1つもしくは複数の補助受容体にさらに結合する多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、およびその使用に関する。一部の実施形態では、BMP6に結合する多特異性抗体は、BMP9に結合しない、または実質的に結合しない(例えば、BMP9に1×10−7Mより大きいKDで結合するか、または比較的中度の結合、例えば、約1×10−8Mまたは約1×10−9Mを示す)。一部の実施形態では、BMP6に結合する多特異性抗体は、アクチビンAに結合しない、または実質的に結合しない(例えば、アクチビンAに1×10−7Mより大きいKDで結合するか、または比較的中度の結合、例えば、約1×10−8Mまたは約1×10−9Mを示す)。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組み合わせ、およびその使用に関し、抗体の組み合わせは、BMP6抗体と、例えば、1つもしくは複数の追加のActRIIBリガンド[例えば、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAE、アクチビンBE)、GDF8、GDF11、GDF3、およびBMP10]、1つもしくは複数のI型受容体および/もしくはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または1つもしくは複数の補助受容体に結合する1つまたは複数の追加の抗体とを含む。一部の実施形態では、BMP6抗体を含む抗体の組み合わせは、BMP9抗体を含まない。一部の実施形態では、BMP6抗体を含む抗体の組み合わせは、アクチビンA抗体を含まない。
ある特定の態様では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともGDF3を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともGDF3に結合する。本明細書で使用される場合、GDF3抗体(または抗GDF3抗体)とは、一般に、抗体が、GDF3を標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでGDF3に結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、GDF3以外の非関連タンパク質へのGDF3抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質相互作用または結合アフィニティーアッセイにより測定される、抗体のGDF3への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、GDF3抗体は、異なる種に由来するGDF3の間で保存的な、GDF3のエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗GDF3抗体は、ヒトGDF3に結合する。一部の実施形態では、GDF3抗体は、GDF3が、I型および/またはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)に結合することを阻害することが可能であり、したがって、GDF3に媒介されるシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害することが可能である。一部の実施形態では、GDF3抗体は、GDF3が、補助受容体に結合することを阻害することが可能であり、したがって、GDF3に媒介されるシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害することが可能である。一部の実施形態では、本開示は、GDF3に結合し、例えば、1つもしくは複数の追加のActRIIBリガンド[例えば、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAE、アクチビンBE)、GDF8、BMP6、BMP10、およびGDF11]、1つもしくは複数のI型受容体および/もしくはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または1つもしくは複数の補助受容体にさらに結合する多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、およびその使用に関する。一部の実施形態では、GDF3に結合する多特異性抗体は、BMP9に結合しない、または実質的に結合しない(例えば、BMP9に1×10−7Mより大きいKDで結合するか、または比較的中度の結合、例えば、約1×10−8Mまたは約1×10−9Mを示す)。一部の実施形態では、GDF3に結合する多特異性抗体は、アクチビンAに結合しない、または実質的に結合しない(例えば、アクチビンAに1×10−7Mより大きいKDで結合するか、または比較的中度の結合、例えば、約1×10−8Mまたは約1×10−9Mを示す)。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組み合わせ、およびその使用に関し、抗体の組み合わせは、GDF3抗体と、例えば、1つもしくは複数の追加のActRIIBリガンド[例えば、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAE、アクチビンBE)、GDF8、GDF11、BMP6、およびBMP10]、1つもしくは複数のI型受容体および/もしくはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または1つもしくは複数の補助受容体に結合する1つまたは複数の追加の抗体とを含む。一部の実施形態では、GDF3抗体を含む抗体の組み合わせは、BMP9抗体を含まない。一部の実施形態では、GDF3抗体を含む抗体の組み合わせは、アクチビンA抗体を含まない。
ある特定の態様では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともBMP10を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともBMP10に結合する。本明細書で使用される場合、BMP10抗体(または抗BMP10抗体)とは、一般に、抗体が、BMP10を標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでBMP10に結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、BMP10以外の非関連タンパク質へのBMP10抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質相互作用または結合アフィニティーアッセイにより測定される、抗体のBMP10への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、BMP10抗体は、異なる種に由来するBMP10の間で保存的な、BMP10のエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗BMP10抗体は、ヒトBMP10に結合する。一部の実施形態では、BMP10抗体は、BMP10が、I型および/またはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)に結合することを阻害することが可能であり、したがって、BMP10に媒介されるシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害することが可能である。一部の実施形態では、BMP10抗体は、BMP10が、補助受容体に結合することを阻害することが可能であり、したがって、BMP10に媒介されるシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害することが可能である。一部の実施形態では、本開示は、BMP10に結合し、例えば、1つもしくは複数の追加のActRIIBリガンド[例えば、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよびアクチビンBE)、GDF8、GDF11、GDF3、およびBMP6]、1つもしくは複数のI型受容体および/もしくはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または1つもしくは複数の補助受容体にさらに結合する多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、およびその使用に関する。一部の実施形態では、BMP10に結合する多特異性抗体は、BMP9に結合しない、または実質的に結合しない(例えば、BMP9に1×10−7Mより大きいKDで結合するか、または比較的中度の結合、例えば、約1×10−8Mまたは約1×10−9Mを示す)。一部の実施形態では、BMP10に結合する多特異性抗体は、アクチビンAに結合しない、または実質的に結合しない(例えば、アクチビンAに1×10−7Mより大きいKDで結合するか、または比較的中度の結合、例えば、約1×10−8Mまたは約1×10−9Mを示す)。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組み合わせ、およびその使用に関し、抗体の組み合わせは、BMP10抗体と、例えば、1つもしくは複数の追加のActRIIBリガンド[例えば、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよびアクチビンBE)、GDF8、GDF3、BMP6、BMP10、およびGDF11]、1つもしくは複数のI型受容体および/もしくはII型受容体(例えば、ActRIIB、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または1つもしくは複数の補助受容体に結合する1つまたは複数の追加の抗体とを含む。一部の実施形態では、BMP10抗体を含む抗体の組み合わせは、BMP9抗体を含まない。一部の実施形態では、BMP10抗体を含む抗体の組み合わせは、アクチビンA抗体を含まない。
ある特定の態様では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともActRIIBを阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともActRIIBに結合する。本明細書で使用される場合、ActRIIB抗体(抗ActRIIB抗体)とは、一般に、抗体が、ActRIIBを標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでActRIIBに結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、ActRIIB以外の非関連タンパク質への抗ActRIIB抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質−タンパク質相互作用または結合アフィニティーアッセイにより測定される抗体のActRIIBへの結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、抗ActRIIB抗体は、異なる種に由来するActRIIBの間で保存的なActRIIBのエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗ActRIIB抗体は、ヒトActRIIBに結合する。一部の実施形態では、抗ActRIIB抗体は、1つまたは複数のActRIIBリガンド[例えば、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよびアクチビンBE)、GDF11、BMP6、GDF3、およびBMP10]がActRIIBに結合することを阻害することが可能である。一部の実施形態では、抗ActRIIB抗体は、ActRIIBおよび1つまたは複数のActRIIBリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC)GDF3、BMP6、およびBMP10]、I型受容体(例えば、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、補助受容体、および/または追加のII型受容体(例えば、ActRIIA)に結合する多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)である。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組み合わせ、およびその使用に関し、抗体の組み合わせは、抗ActRIIB抗体と、例えば、1つまたは複数のActRIIBリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよびアクチビンBE)BMP6、GDF3、およびBMP10]、補助受容体、I型受容体(例えば、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、ならびに/または追加のII型受容体(例えば、ActRIIA)に結合する1つまたは複数の追加の抗体とを含む。注目すべきことに、ActRIIBは、ActRIIAとの配列類似性を有し、したがって、ActRIIBに結合する抗体は、場合によって、ActRIIAに結合し、かつ/またはそれを阻害することも可能である。
ある特定の態様では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともALK4を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともALK4に結合する。本明細書で使用される場合、ALK4抗体(抗ALK4抗体)とは、一般に、抗体が、ALK4を標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでALK4に結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、ALK4以外の非関連タンパク質への抗ALK4抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質−タンパク質相互作用または結合アフィニティーアッセイにより測定される抗体のALK4への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、抗ALK4抗体は、異なる種に由来するALK4の間で保存的なALK4のエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗ALK4抗体は、ヒトALK4に結合する。一部の実施形態では、抗ALK4抗体は、1つまたは複数のActRIIBリガンド[例えば、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよびアクチビンBE)、GDF11、BMP6、GDF3、およびBMP10]がALK4に結合することを阻害することが可能である。一部の実施形態では、抗ALK4抗体は、ALK4および1つまたは複数のGDF/BMPリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC)GDF3、BMP6、およびBMP10]、II型受容体(例えば、ActRIIB)、補助受容体、および/または追加のI型受容体(例えば、ALK5および/またはALK7)に結合する多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)である。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組み合わせ、およびその使用に関し、抗体の組み合わせは、抗ALK4抗体と、例えば、1つまたは複数のActRIIBリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよびアクチビンBE)BMP6、およびBMP10]、補助受容体、II型受容体(例えば、ActRIIB)、および/または追加のI型受容体(例えば、ALK5および/またはALK7)に結合する1つまたは複数の追加の抗体とを含む。
ある特定の態様では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともALK5を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともALK5に結合する。本明細書で使用される場合、ALK5抗体(抗ALK5抗体)とは、一般に、抗体が、ALK5を標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでALK5に結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、ALK5以外の非関連タンパク質への抗ALK5抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質−タンパク質相互作用または結合アフィニティーアッセイにより測定される抗体のALK5への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、抗ALK5抗体は、異なる種に由来するALK5の間で保存的なALK5のエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗ALK5抗体は、ヒトALK5に結合する。一部の実施形態では、抗ALK5抗体は、1つまたは複数のActRIIBリガンド[例えば、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよびアクチビンBE)、GDF11、BMP6、GDF3、およびBMP10]がALK5に結合することを阻害することが可能である。一部の実施形態では、抗ALK5抗体は、ALK5および1つまたは複数のActRIIBリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC)GDF3、BMP6、およびBMP10]、II型受容体(例えば、ActRIIB)、補助受容体、および/または追加のI型受容体(例えば、ALK4および/またはALK7)に結合する多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)である。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組み合わせ、およびその使用に関し、抗体の組み合わせは、抗ALK5抗体と、例えば、1つまたは複数のActRIIBリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよびアクチビンBE)BMP6、およびBMP10]、補助受容体、II型受容体(例えば、ActRIIB)、および/または追加のI型受容体(例えば、ALK4および/またはALK7)に結合する1つまたは複数の追加の抗体とを含む。
ある特定の態様では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともALK7を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト抗体または抗体の組み合わせは、少なくともALK7に結合する。本明細書で使用される場合、ALK7抗体(抗ALK7抗体)とは、一般に、抗体が、ALK7を標的化するときの診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでALK7に結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、ALK7以外の非関連タンパク質への抗ALK7抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質−タンパク質相互作用または結合アフィニティーアッセイにより測定される抗体のALK7への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、抗ALK7抗体は、異なる種に由来するALK7の間で保存的なALK7のエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗ALK7抗体は、ヒトALK7に結合する。一部の実施形態では、抗ALK7抗体は、1つまたは複数のActRIIBリガンド[例えば、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよびアクチビンBE)、GDF11、BMP6、GDF3、およびBMP10]がALK7に結合することを阻害することが可能である。一部の実施形態では、抗ALK7抗体は、ALK7および1つまたは複数のActRIIBリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC)GDF3、BMP6、およびBMP10]、II型受容体(例えば、ActRIIB)、補助受容体、および/または追加のI型受容体(例えば、ALK4および/またはALK5)に結合する多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)である。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組み合わせ、およびその使用に関し、抗体の組み合わせは、抗ALK7抗体と、例えば、1つまたは複数のActRIIBリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよびアクチビンBE)BMP6、およびBMP10]、補助受容体、II型受容体(例えば、ActRIIB)、および/または追加のI型受容体(例えば、ALK4および/またはALK5)に結合する1つまたは複数の追加の抗体とを含む。
抗体という用語は、本明細書では、最も広範な意味で使用され、これらに限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、および抗体断片を含めた種々の抗体構造を、それらが所望の抗原結合の活性を呈示する限りは、包含する。抗体断片とは、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部分を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、これらに限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられる[例えば、Hudsonら(2003年)Nat. Med.、9巻:129〜134頁;Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編、(Springer-Verlag、New York)、269〜315頁(1994年);WO93/16185;および米国特許第5,571,894号;同第5,587,458号;および同第5,869,046号を参照されたい]。ダイアボディは、二価または二特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である[例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudsonら(2003年)Nat. Med.、9巻:129〜134頁(2003年);およびHollingerら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:6444〜6448頁を参照されたい]。トリアボディ(triabody)およびテトラボディ(tetrabody)もHudsonら(2003年)Nat. Med.、9巻:129〜134頁に記載されている。単一ドメイン抗体は、重鎖可変ドメインの全部もしくは一部または抗体の軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部を含む抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である[例えば、米国特許第6,248,516号を参照されたい]。本明細書で開示された抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であってもよい。ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、それに付着され、検出することができる標識を含む(例えば、標識は、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、または酵素の補因子であり得る)。ある特定の好ましい実施形態では、本開示の抗体は、単離された抗体である。ある特定の好ましい実施形態では、本開示の抗体は、組換え抗体である。
本明細書の抗体は、任意のクラスの抗体であり得る。抗体のクラスとは、その重鎖により保有される定常ドメインまたは定常領域の種類を指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。
一般に、本明細書で開示された方法において使用するための抗体は、その標的抗原に、好ましくは高い結合アフィニティーで特異的に結合する。アフィニティーは、KD値として表すことができ、内因性結合アフィニティーを反映する(例えば、結合活性への影響が最小化された)。典型的には、結合アフィニティーは、無細胞の状況であるか細胞が関連する状況であるかにかかわらず、インビトロで測定される。例えば、Biacore、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)、およびELISAを含めた、本明細書で開示されたものを含めた当技術分野で公知のいくつかのアッセイのいずれかを使用して、結合アフィニティー測定値を得ることができる。一部の実施形態では、本開示の抗体は、それらの標的抗原(例えば、ALK4、ALK5、ALK7、ActRIIB、GDF3、アクチビン、GDF11、GDF8、BMP10、および/またはBMP6)に少なくとも1×10−7もしくはそれより強力な、1×10−8もしくはそれより強力な、1×10−9もしくはそれより強力な、1×10−10もしくはそれより強力な、1×10−11もしくはそれより強力な、1×10−12もしくはそれより強力な、1×10−13もしくはそれより強力な、または1×10−14もしくはそれより強力なKDで結合する。
ある特定の実施形態では、KDは、以下のアッセイにより記載されるように、関心のある抗体のFabバージョンおよびその標的抗原で実施されるRIAにより測定される。Fabの抗原に対する溶液結合アフィニティーは、Fabを、滴定系列の非標識抗原の存在下において、最低濃度の放射性標識された抗原(例えば、125Iで標識された)と平衡化し、次いで、結合した抗原を、抗Fab抗体でコーティングしたプレートで捕捉することにより測定する[例えば、Chenら(1999年)、J.Mol.Biol.、293巻:865〜881頁を参照されたい]。アッセイ条件を確立するために、マルチウェルプレート(例えば、Thermo Scientific製のMICROTITER(登録商標))を、捕捉用抗Fab抗体(例えば、Cappel Labs製)でコーティングし(例えば、一晩にわたり)、その後、好ましくは、室温(およそ23℃)において、ウシ血清アルブミンでブロッキングする。非吸着型プレートでは、放射性標識された抗原を、関心のあるFabの系列希釈液と混合する[例えば、Prestaら、(1997年)、Cancer Res.、57巻:4593〜4599頁における抗VEGF抗体である、Fab−12の評価と符合する]。次いで、関心のあるFabを、好ましくは、一晩にわたりインキュベートするが、平衡に到達することを確保するように、インキュベーションは、長時間(例えば、約65時間)にわたり継続することもできる。その後、混合物を、好ましくは、室温で約1時間にわたるインキュベーションのために、捕捉プレートに移す。次いで、溶液を除去し、プレートを、好ましくは、ポリソルベート20とPBSとの混合物で、複数回洗浄する。プレートを乾燥させたら、シンチレーション剤(例えば、Packard製のMICROSCINT(登録商標))を添加し、ガンマカウンター(例えば、Packard製のTOPCOUNT(登録商標))上で、プレートをカウントする。
別の実施形態によれば、KDは、例えば、抗原CM5チップを約10応答単位(RU)で固定化させた、BIACORE(登録商標)2000またはBIACORE(登録商標)3000(Biacore,Inc.、Piscataway、N.J.)を使用する、表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定する。略述すると、供給元の指示書に従い、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、Biacore,Inc.)を、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化させる。例えば、抗原は、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.8で、5μg/ml(約0.2μM)まで希釈してから、5μl/分の流量で注入して、およそ10応答単位(RU)のタンパク質のカップリングを達成することができる。抗原を注入した後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基をブロッキングする。反応速度の測定のため、Fabの2倍系列希釈液(0.78nM〜500nM)を、0.05%のポリソルベート20(TWEEN−20(登録商標))界面活性剤を含むPBS(PBST)に、およそ25μl/分の流量で注入する。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、例えば、単純な一対一ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサーグラムおよび解離センサーグラムのフィッティングを同時に行うことにより計算する。平衡解離定数(KD)は、koff/kon比として計算する[例えば、Chenら、(1999年)、J. Mol. Biol.、293巻:865〜881頁を参照されたい]。オン速度が、例えば、上記の表面プラズモン共鳴アッセイで106M−1s−1を超える場合、オン速度は、徐々に増大する濃度の抗原の存在下におけるPBS中、20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の蛍光発光強度(例えば、励起=295nm;発光=340nm、16nmのバンドパス)であって、攪拌型キュベットを有するストップフロー装備型分光光度計(Aviv Instruments)、または8000シリーズのSLM−AMINCO(登録商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計により測定した場合の、蛍光発光強度の増加または減少を測定する蛍光消光法を使用することにより決定することができる。
抗体断片は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるインタクトな抗体のタンパク質消化ならびに組換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)による産生を含めた種々の技法によって作製することができる。ヒトALK4、ALK5、ALK7、ActRIIB、アクチビン(アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、およびアクチビンE)、GDF11、GDF8、BMP10、GDF3、ならびにBMP6の核酸およびアミノ酸配列は、当技術分野で公知である。さらに、抗体を生成するための多数の方法が当技術分野で周知であり、その一部が本明細書に記載されている。したがって、本開示に従って使用するための抗体アンタゴニストは、当技術分野における知見および本明細書に提示される教示に基づいて当業者により常套的に作製され得る。
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。キメラ抗体とは、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来する一方、重鎖および/または軽鎖の残余は異なる供給源または種に由来する抗体を指す。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、(1984年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81巻:6851〜6855頁に記載されている。一部の実施形態では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長動物に由来する可変領域)と、ヒト定常領域とを含む。一部の実施形態では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスを、親抗体のクラスまたはサブクラスから変化させた「クラススイッチ」抗体である。一般に、キメラ抗体は、その抗原結合フラグメントを含む。
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるキメラ抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体とは、非ヒト超可変領域(HVR)に由来するアミノ酸残基と、ヒトフレームワーク領域(FR)に由来するアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つの可変ドメインであり、典型的には2つの可変ドメインであって、HVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のHVR(例えば、CDR)に対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のFRに対応する、可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は任意選択で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」とは、ヒト化を経た抗体を指す。ヒト化抗体およびそれらを作製する方法は、例えば、AlmagroおよびFransson(2008年)、Front. Biosci.、13巻:1619〜1633頁において総説されており、例えば、Riechmannら、(1988年)、Nature、332巻:323〜329頁;Queenら(1989年)、Proc. Nat’l Acad. Sci. USA、86巻:10029〜10033頁;米国特許第5,821,337号;同第7,527,791号;同第6,982,321号;および同第7,087,409号;Kashmiriら、(2005年)、Methods、36巻:25〜34頁[SDR(a−CDR)グラフティングについて記載する];Padlan、Mol. Immunol.、(1991年)、28巻:489〜498頁(「リサーフェシング」について記載する);Dall’Acquaら(2005年)、Methods、36巻:43〜60頁(「FRシャフリング」について記載する);Osbournら(2005年)、Methods、36巻:61〜68頁;ならびにKlimkaら、Br. J. Cancer(2000年)、83巻:252〜260頁(FRシャフリングへの「誘導選択」アプローチについて記載する)においてさらに記載されている。ヒト化のために使用することができるヒトフレームワーク領域としては、これらに限定されないが、「最良適合」法を使用して選択されるフレームワーク領域[例えば、Simsら(1993年)J. Immunol.、151巻:2296頁を参照されたい];特定のサブグループの軽鎖または重鎖可変領域のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域[例えば、Carterら(1992年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:4285頁;およびPrestaら(1993年)J. Immunol.、151巻:2623頁を参照されたい];ヒト成熟(体細胞変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系列フレームワーク領域[例えば、AlmagroおよびFransson(2008年)Front. Biosci.、13巻:1619〜1633頁を参照されたい];およびスクリーニングFRライブラリーに由来するフレームワーク領域[例えば、Bacaら(1997年)J. Biol. Chem.、272巻:10678〜10684頁;およびRosokら(1996年)J. Biol. Chem.、271巻:22611〜22618頁を参照されたい]が挙げられる。
ある特定の実施形態では、本明細書に提示される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で公知の種々の技法を使用して生成することができる。ヒト抗体は、一般に、van Dijkおよびvan de Winkel(2008年)Curr. Opin. Pharmacol.、5巻:368〜74頁(2001年)およびLonberg、Curr. Opin. Immunol.、20巻:450〜459頁に記載されている。例えば、ヒト抗体は、免疫原(例えば、GDF11ポリペプチド、アクチビンBポリペプチド、ActRIIAポリペプチド、またはActRIIBポリペプチド)を、抗原による攻撃に応答してインタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に投与することによって調製することができる。このような動物は、典型的には、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有し、これは、内因性免疫グロブリン遺伝子座に置き換わるか、または、染色体外に存在するかもしくは動物の染色体内にランダムに組み込まれる。このようなトランスジェニック動物では、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般に、不活化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、例えば、Lonberg(2005年)Nat. Biotech.、23巻:1117〜1125頁;米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号(XENOMOUSE(商標)技術が記載されている);米国特許第5,770,429号(HuMab(登録商標)技術が記載されている);米国特許第7,041,870号(K−M MOUSE(登録商標)技術が記載されている);および米国特許出願公開第2007/0061900号(VelociMouse(登録商標)技術が記載されている)を参照されたい。このような動物により生成されるインタクトな抗体に由来するヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによってさらに改変することができる。
本明細書で提供されるヒト抗体はまた、ハイブリドーマベースの方法により作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫細胞株およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は記載されている[例えば、Kozbor、J. Immunol.、(1984年)、133巻:3001頁;Brodeurら(1987年)、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51〜63頁、Marcel Dekker, Inc.、New York;およびBoernerら(1991年)、J. Immunol.、147巻:86頁を参照されたい]。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体はまた、Liら、(2006年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、103巻:3557〜3562頁において記載されている。追加の方法は、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのヒトモノクローナルIgM抗体の生成について記載)およびNi、Xiandai Mianyixue(2006年)、26巻(4号):265〜268頁(2006年)(ヒト−ヒトハイブリドーマについて記載)において記載されている方法を含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、VollmersおよびBrandlein(2005年)、Histol. Histopathol.、20巻(3号):927〜937頁;ならびにVollmersおよびBrandlein(2005年)、Methods Find Exp. Clin. Pharmacol.、27巻(3号):185〜91頁において記載されている。本明細書に提示されるヒト抗体はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。次いで、このような可変ドメイン配列を所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技法は、当技術分野で公知であり、本明細書に記載されている。
例えば、本開示の抗体は、1つまたは複数の所望の活性を有する抗体のためのコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより単離することができる。当該分野では、ファージディスプレイライブラリーを生成し、このようなライブラリーを、所望の結合特徴を保有する抗体についてスクリーニングするための、様々な方法が公知である。このような方法は、例えば、Hoogenboomら(2001年)、Methods in Molecular Biology、178巻:1〜37頁、O’Brienら編、Human Press、Totowa、N.J.において総説されており、例えば、McCaffertyら(1991年)、Nature、348巻:552〜554頁;Clacksonら、(1991年)、Nature、352巻:624〜628頁;Marksら(1992年)、J. Mol. Biol.、222巻:581〜597頁;MarksおよびBradbury(2003年)、Methods in Molecular Biology、248巻:161〜175頁、Lo編、Human Press、Totowa、N.J.;Sidhuら(2004年)、J. Mol. Biol.、338巻(2号):299〜310頁;Leeら(2004年)、J. Mol. Biol.、340巻(5号):1073〜1093頁;Fellouse(2004年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、101巻(34号):12467〜12472頁;ならびにLeeら(2004年)、J. Immunol. Methods、284巻(1〜2号):119〜132頁においてさらに記載されている。
Winterら(1994年)Ann. Rev. Immunol.、12巻:433〜455頁に記載されている通り、ある特定のファージディスプレイ法では、VHおよびVL遺伝子のレパートリーをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングし、ファージライブラリー内でランダムに組み換え、次いでそれを抗原結合性ファージについてスクリーニングすることができる。ファージが、典型的には、抗体断片を、単鎖Fv(scFv)断片として、またはFab断片としてのいずれかでディスプレイする。免疫された供給源に由来するライブラリーからは、ハイブリドーマの構築を必要とせずに、免疫原(例えば、ALK4、ALK5、ALK7、ActRIIB、アクチビン、GDF11、GDF8、GDF3、BMP10、またはBMP6)に対するアフィニティーが高い抗体がもたらされる。あるいは、Griffithsら(1993年)EMBO J、12巻:725〜734頁により記載されている通り、ナイーブなレパートリーをクローニングして(例えば、ヒト由来)、いかなる免疫も伴わずに、広範囲の非自己抗原および加えて自己抗原に対する抗体の単一の供給源をもたらすことができる。最後に、ナイーブなライブラリーはまた、HoogenboomおよびWinter(1992年)J. Mol. Biol.、227巻:381〜388頁により記載されている通り、幹細胞由来の再編成されていないV−遺伝子セグメントをクローニングすること、ならびに高度に可変性のCDR3領域をコードするように、およびインビトロで再編成が達成されるようにランダムな配列を含有するPCRプライマーを使用することによって合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーが記載されている特許公報としては、例えば、米国特許第5,750,373号、および米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、および同第2009/0002360号が挙げられる。
ある特定の実施形態では、本明細書に提示される抗体は、多特異性抗体、例えば、二特異性抗体である。1つまたは複数の(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれより多くの)抗原上の少なくとも2つの異なるエピトープ(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つまたはそれより多く)に対して結合特異性を有する多特異性抗体(典型的には、モノクローナル抗体)。
多特異性抗体を作製するための技法としては、これに限定されないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の組換え同時発現が挙げられる[例えば、MilsteinおよびCuello(1983年)Nature、305巻:537頁;国際特許公開第WO93/08829号;ならびにTrauneckerら(1991年)EMBO J.、10巻:3655頁、ならびに米国特許第5,731,168号を参照されたい(「ノブ・イン・ホール」操作)]。多特異性抗体はまた、抗体Fc−ヘテロ二量体分子を作製するために静電気ステアリング効果を操作すること(例えば、WO2009/089004A1を参照されたい);2つまたはそれより多くの抗体またはフラグメントを架橋結合させること[例えば、米国特許第4,676,980号;およびBrennanら(1985年)Science、229巻:81頁を参照されたい];ロイシンジッパーを使用して二特異性抗体を生成すること[例えば、Kostelnyら(1992年)J. Immunol.、148巻(5号):1547〜1553頁を参照されたい];二特異性抗体断片を作製するために「ダイアボディ」技術を使用すること[例えば、Hollingerら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:6444〜6448頁を参照されたい];単鎖Fv(sFv)二量体を使用すること[例えば、Gruberら(1994年)J. Immunol.、152巻:5368頁を参照されたい];および三特異性抗体を調製すること(例えば、Tuttら(1991年)J. Immunol.、147巻:60頁を参照されたい)によって作製することもできる。多特異性抗体は、全長抗体として調製することもでき、抗体断片として調製することもできる。「オクトパス抗体(Octopus antibodies)」を含めた、3つまたはそれより多くの機能的抗原結合部位を有する操作された抗体も本明細書に含まれる[例えば、US2006/0025576A1を参照されたい]。
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体とは、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、可能な改変体抗体、例えば、天然に存在する変異を含有する、またはモノクローナル抗体調製物の生成時に発生する改変体抗体(このような改変体は、一般に少量で存在する)を除き同一であり、かつ/または同じエピトープに結合する。典型的に、異なるエピトープを指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一のエピトープを指向する。したがって、修飾語「モノクローナル」とは、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の性質を指し示し、任意の特定の方法により抗体の生成を必要とするとはみなさないものとする。例えば、本方法に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有するトランスジェニック動物を活用する方法、本明細書で記載されるモノクローナル抗体を作製するためのこのような方法および他の例示的な方法を含むがこれらに限定されない様々な技法により作製することができる。
例えば、アクチビンに由来する免疫原を使用することにより、抗タンパク質/抗ペプチドの抗血清またはモノクローナル抗体を標準のプロトコルによって作製することができる[例えば、Antibodies: A Laboratory Manual、HarlowおよびLane編、(1988年)Cold Spring Harbor Press:1988年を参照されたい]。マウス、ハムスター、またはウサギなどの哺乳動物を、免疫原性形態のアクチビンポリペプチド、抗体応答を引き出すことができる抗原フラグメント、または融合タンパク質を用いて免疫することができる。タンパク質またはペプチドに免疫原性を付与するための技法としては、キャリアへの結合体化または当技術分野で周知の他の技法が挙げられる。アクチビンポリペプチドの免疫原性部分は、アジュバントの存在下で投与することができる。免疫の進行を、血漿中または血清中の抗体価を検出することによってモニタリングすることができる。免疫原を抗原として用いた標準のELISAまたは他のイムノアッセイを使用して、抗体産生のレベルおよび/または結合アフィニティーのレベルを評価することができる。
アクチビンの抗原性調製物で動物を免疫化した後、抗血清を得ることができ、所望の場合、ポリクローナル抗体を血清から単離することができる。モノクローナル抗体を生成するために、抗体生成細胞(リンパ球)を、免疫化動物から採取し、標準的な体細胞融合手順により、骨髄腫細胞など、不死化細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞をもたらすことができる。このような技法は、当該分野で周知であり、例えば、ハイブリドーマ技法[例えば、KohlerおよびMilstein(1975年)、Nature、256巻:495〜497頁を参照されたい]、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法[例えば、Kozbarら(1983年)、Immunology Today、4巻:72頁を参照されたい]、およびヒトモノクローナル抗体を生成するEBVハイブリドーマ技法[Coleら(1985年)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc.、77〜96頁]が挙げられる。ハイブリドーマ細胞は、アクチビンポリペプチドと特異的に反応性である抗体、およびこのようなハイブリドーマ細胞を含む培養物から単離されたモノクローナル抗体の生成について、免疫化学的にスクリーニングすることができる。
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸改変を、本明細書で提供される抗体のFc領域に導入し、これにより、Fc領域改変体を生成することができる。Fc領域改変体は、1つまたは複数のアミノ酸位置において、アミノ酸改変(例えば、置換、欠失、および/または付加)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、またはヒトIgG4のFc領域)を含み得る。
例えば、本開示は、エフェクター機能を全てではないが一部有し、それにより、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、ある特定のエフェクター機能[例えば、補体依存性細胞傷害(CDC)および抗体依存性細胞傷害(ADCC)]は不必要であるかまたは有害である適用のための望ましい候補になる抗体改変体を企図する。インビトロおよび/またはインビボにおける細胞傷害性アッセイを行って、CDCおよび/またはADCC活性の低下/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能は保持することを確実にすることができる。ADCCを媒介するための一次細胞、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、例えば、RavetchおよびKinet(1991年)Annu. Rev. Immunol.、9巻:457〜492頁に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号;Hellstrom, I.ら(1986年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、83巻:7059〜7063頁];Hellstrom, Iら(1985年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、82巻:1499〜1502頁;米国特許第5,821,337号;Bruggemann, M.ら(1987年)J. Exp. Med.、166巻:1351〜1361頁に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を使用することができる(例えば、ACTI(商標)、フローサイトメトリー用非放射性細胞傷害性アッセイ;CellTechnology,Inc. Mountain View、Calif.;およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ、Promega、Madison、Wis.)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。その代わりにまたはそれに加えて、目的の分子のADCC活性をインビボにおいて、例えば、Clynesら(1998年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、95巻:652〜656頁に開示されているものなどの動物モデルにおいて評価することができる。C1q結合アッセイを行って、抗体がC1qに結合することができないこと、したがって、CDC活性を欠くことを確認することもできる[例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402におけるC1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい]。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施することができる[例えば、Gazzano-Santoroら(1996年)J. Immunol. Methods、202巻:163頁;Cragg, M. S.ら(2003年)Blood、101巻:1045〜1052頁;ならびにCragg, M. S、およびM. J. Glennie(2004年)Blood、103巻:2738〜2743頁を参照されたい]。FcRn結合およびインビボにおけるクリアランス/半減期の決定も、当技術分野で公知の方法を使用して実施することができる[例えば、Petkova, S. B.ら(2006年)Intl. Immunol. 18巻(12号):1759〜1769頁を参照されたい]。エフェクター機能を低減した本開示の抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、および329のうちの1つまたは複数を置換した抗体を含む(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体は、アミノ酸265位、269位、270位、297位、および327位のうちの2つまたはこれより多くにおいて置換を有するFc変異体であって、残基265および297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc変異体を含むFc変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
ある特定の実施形態では、システイン操作抗体、例えば、抗体の1つまたは複数の残基をシステイン残基で置換した「チオMAb」を創出することが望ましいと考えられる。特定の実施形態では、残基の置換を、抗体の接近可能な部位に施す。システインでこれらの残基を置換することにより、反応性のチオール基が抗体の接近可能な部位に配置され、抗体を、薬物部分またはリンカー−薬物部分など、他の部分に結合体化させて、本明細書でさらに記載されるような、免疫結合体を創出するのに使用することができる。ある特定の実施形態では、以下の残基:軽鎖のV205(Kabat番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);および重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)のうちの任意の1つまたは複数を、システインで置換することができる。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号において記載されているように生成することができる。
加えて、望ましい抗体を同定するための抗体をスクリーニングするのに使用される技法は、得られる抗体の特性に影響を及ぼし得る。例えば、抗体を、溶液中の抗原の結合に使用する場合、溶液中での結合について試験することが望ましいと考えられる。抗体と抗原との相互作用を試験して、特に望ましい抗体を同定するために、様々な異なる技法が利用可能である。このような技法として、ELISA、表面プラズモン共鳴結合アッセイ(例えば、Biacore結合アッセイ、Biacore AB、Uppsala、Sweden)、サンドイッチアッセイ(例えば、IGEN International,Inc.、Gaithersburg、Marylandの常磁性ビーズシステム)、ウェスタンブロット、免疫沈降アッセイ、および免疫組織化学が挙げられる。
ある特定の実施形態では、本明細書に提示される抗体および/または結合性ポリペプチドのアミノ酸配列改変体が企図される。例えば、抗体および/または結合性ポリペプチドの結合アフィニティーおよび/または他の生物学的性質を改善することが望ましい場合がある。抗体および/または結合性ポリペプチドのアミノ酸配列改変体は、抗体および/または結合性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。このような改変としては、例えば、抗体および/または結合性ポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/またはそれらへの挿入および/またはそれらの置換が挙げられる。最終的な構築物が所望の特徴、例えば、標的への結合(例えば、アクチビンEおよび/またはアクチビンCなどのアクチビンへの結合)を有するのであれば、最終的な構築物に達するまでに欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせを行うことができる。
変更(例えば、置換)をHVR内に施して、例えば、抗体のアフィニティーを改善することができる。このような変更は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスにおいて高頻度で変異を経るコドンによりコードされる残基[例えば、Chowdhury(2008年)、Methods Mol. Biol.、207巻:179〜196頁(2008年)を参照されたい]、および/またはSDR(a−CDR)に施すことができ、結果として得られる改変体VHまたは改変体VLを結合アフィニティーについて調べる。当該分野では、二次ライブラリーを構築し、ここから再選択することによるアフィニティー成熟が記載されている[例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology、178巻:1〜37頁、O’Brienら編、Human Press、Totowa、N.J.(2001年)を参照されたい)。アフィニティー成熟の一部の実施形態では、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向変異誘発)のいずれかにより、成熟のために選択された可変遺伝子に多様性を導入する。次いで、二次ライブラリーを創出する。次いで、ライブラリーをスクリーニングして、所望のアフィニティーを有する任意の抗体改変体を同定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4〜6残基)をランダム化する、HVR指向アプローチを伴う。抗原の結合に関与するHVR残基は、例えばアラニン走査変異誘発またはモデル化を使用して、特異的に同定することができる。特にCDR−H3およびCDR−L3は、しばしば標的化される。
ある特定の実施形態では、このような変更が、抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減しない限りにおいて、1つまたは複数のHVR内に置換、挿入、または欠失を施すことができる。例えば、結合アフィニティーを実質的に低減しない保存的変更(例えば、本明細書で提供される保存的置換)を、HVR内に施すことができる。このような変更は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外部であり得る。上記で提供した改変体VH配列およびVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、不変であるか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有する。
変異誘発の標的にすることができる抗体および/または結合性ポリペプチドの残基または領域を同定するための有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989年)Science、244巻:1081〜1085頁により記載されている通り「アラニンスキャニング変異誘発」と称される。この方法では、残基または標的残基の群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、およびGluなどの荷電残基)を同定し、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)により置き換えて、抗体−抗原の相互作用が影響を受けるかどうかを決定する。最初の置換に対して機能的感受性が示されるアミノ酸位置にさらなる置換を導入することができる。その代わりにまたはそれに加えて、抗原抗体複合体の結晶構造を決定して、抗体と抗原の接触点を同定する。このような接触残基および近隣残基を、置換の候補として標的化するまたは排除することができる。改変体をスクリーニングして、それらが所望の性質を含有するかどうかを決定することができる。
アミノ酸配列の挿入は、1残基〜100またはこれより多くの残基を含有するポリペプチドの範囲の長さのアミノ末端融合物および/またはカルボキシル末端融合物のほか、単一または複数のアミノ酸残基の内部配列挿入も含む。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入改変体として、抗体のN末端もしくはC末端の、酵素(例えば、ADEPTのための)、または抗体の血清中半減期を延長するポリペプチドへの融合物が挙げられる。
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体および/または結合性ポリペプチドを、当該分野で公知であり、たやすく利用可能である、追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾することができる。抗体および/または結合性ポリペプチドの誘導体化に適する部分は、水溶性ポリマーを含むがこれらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例として、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)、およびデキストラン、またはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、ポリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中のその安定性のために、製造において有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量であることが可能であり、分枝状でもよく、非分枝状でもよい。抗体および/または結合ポリペプチドに付加させるポリマーの数は、変化させることができ、1つより多くのポリマーを付加させる場合、それらは、同じ分子でもよく、異なる分子でもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/または種類は、抗体の誘導体および/または結合ポリペプチドの誘導体が規定の条件下での治療に使用されようと、改善する抗体および/または結合ポリペプチドの特定の特性または機能を含むがこれらに限定されない検討事項に基づき決定することができる。
D.小分子アンタゴニスト
他の態様では、本明細書に記載される方法および使用に従って使用されるActRIIBアンタゴニストは、小分子(ActRIIBアンタゴニスト小分子)または小分子アンタゴニストの組み合わせである。ActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、例えば、1つもしくは複数のActRIIBリガンド(例えば、アクチビン、GDF11、GDF8、GDF3、BMP6、および/またはBMP10)、I型受容体(例えば、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、II型受容体(例えば、ActRIIB)、および/または補助受容体を阻害し得る。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、例えば、本明細書に記載されるものなどの細胞ベースのアッセイにおいて決定して、1つまたは複数のActRIIBリガンドによって媒介されるシグナル伝達を阻害する。本明細書に記載される通り、ActRIIBアンタゴニスト小分子は、骨髄線維症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するため、特に、1つもしくは複数の骨髄線維症に関連する合併症(例えば、脾腫、髄外造血、貧血および線維症)の進行速度および/もしくは重症度を処置、予防、もしくは低減するため、および/またはヤヌスキナーゼ阻害剤を用いて処置された患者を処置するために、単独で、または1つもしくは複数の支持療法もしくは活性作用因子と組み合わせて使用することができる。
一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともGDF11を阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、GDF3、BMP6、BMP10、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともGDF8を阻害し、任意選択で、GDF11、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、GDF3、BMP6、BMP10、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびALK7うちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともアクチビン(アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)を阻害し、任意選択で、GDF8、GDF11、GDF3、BMP6、BMP10、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともアクチビンBを阻害し、任意選択で、GDF8、GDF11、GDF3、BMP6、BMP10、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともBMP6を阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、GDF3、GDF11、BMP10、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともGDF3を阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、BMP15、BMP6、GDF11、BMP10、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともBMP10を阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、BMP15、BMP6、GDF11、GDF3、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともActRIIBを阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、BMP15、BMP6、GDF11、GDF3、BMP10、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともALK4を阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、BMP15、BMP6、GDF11、GDF3、ActRIIB、BMP10、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともALK5を阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、BMP15、BMP6、GDF11、GDF3、ActRIIB、ALK4、BMP10、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくともALK7を阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、BMP15、BMP6、GDF11、GDF3、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびBMP10のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、本明細書で開示されたActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、BMP9を阻害しないまたは実質的に阻害しない。一部の実施形態では、本明細書で開示されたActRIIBアンタゴニスト小分子または小分子アンタゴニストの組み合わせは、アクチビンAを阻害しないまたは実質的に阻害しない。
ActRIIBアンタゴニスト小分子は、直接的または間接的な阻害剤であり得る。例えば、間接的な小分子アンタゴニスト、または小分子アンタゴニストの組み合わせは、少なくとも1つまたは複数のActRIIBリガンド[例えば、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンB、アクチビンBC、アクチビンAE、またはアクチビンBE)、GDF11、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、GDF3、および/またはGDF8]、I型受容体(例えば、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、II型受容体(例えば、ActRIIB)、補助受容体、および/または1つもしくは複数の下流のActRIIBシグナル伝達成分(例えば、Smad)の発現(例えば、転写、翻訳、細胞分泌、またはこれらの組み合わせ)を阻害し得る。あるいは、直接的な小分子アンタゴニスト、または小分子アンタゴニストの組み合わせは、例えば、1つまたは複数のActRIIBリガンド[例えば、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンB、アクチビンBC、アクチビンAE、またはアクチビンBE)、GDF11、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、GDF3、および/またはGDF8]、I型受容体(例えば、ALK4、ALK5および/またはALK7)、II型受容体(例えば、ActRIIB)、補助受容体、および/または1つもしくは複数の下流のActRIIBシグナル伝達成分(例えば、Smad)に直接的に結合し、それを阻害し得る。1つまたは複数の間接的なActRIIBアンタゴニスト小分子、および1つまたは複数の直接的なActRIIBアンタゴニスト小分子の組み合わせは、本明細書で開示された方法に従って使用することができる。
本開示の小分子アンタゴニストの結合は、公知の方法体系を使用して同定および化学合成することができる(例えば、PCT公開第WO00/00823号および同第WO00/39585号を参照されたい)。一般に、本開示の小分子アンタゴニストは、通常、約2000ダルトン未満のサイズである、あるいは、約1500、750、500、250または200ダルトン未満のサイズであり、このような有機小分子は本明細書に記載される通り、ポリペプチドに、好ましくは特異的に結合することが可能である。これらの小分子アンタゴニストは、過度な実験を伴わずに、周知の技法を使用して同定することができる。この点について、有機小分子ライブラリーをポリペプチド標的に結合することが可能である分子についてスクリーニングするための技法は当技術分野で周知であることに留意する(例えば、国際特許公開第WO00/00823号および同第WO00/39585号を参照されたい)。
本開示の結合有機低分子は、例えば、アルデヒド、ケトン、オキシム、ヒドラゾン、セミカルバゾン、カルバジド、一級アミン、二級アミン、三級アミン、N置換ヒドラジン、ヒドラジド、アルコール、エーテル、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、カルボン酸、エステル、アミド、尿素、カルバメート、カーボネート、ケタール、チオケタール、アセタール、チオアセタール、アリールハロゲン化物、アリールスルホネート、アルキルハロゲン化物、アルキルスルホネート、芳香族化合物、複素環化合物、アニリン、アルケン、アルキン、ジオール、アミノアルコール、オキサゾリジン、オキサゾリン、チアゾリジン、チアゾリン、エナミン、スルホンアミド、エポキシド、アジリジン、イソシアネート、スルホニル塩化物、ジアゾ化合物、および酸塩化物であり得る。
E.ポリヌクレオチドアンタゴニスト
他の態様では、本明細書で開示された方法および使用に従って使用されるActRIIBアンタゴニストは、ポリヌクレオチド(ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチド)またはポリヌクレオチドの組み合わせである。ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、例えば、1つまたは複数のActRIIBリガンド(例えば、アクチビン、GDF11、GDF8、GDF3、BMP6、および/またはBMP10)、I型受容体(例えば、ALK4、ALK5、および/またはALK7)、II型受容体(例えば、ActRIIB)、補助受容体、および/または下流のシグナル伝達成分(例えば、Smad)を阻害し得る。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、例えば、本明細書に記載されるものなどの細胞ベースのアッセイにおいて決定して1つまたは複数のActRIIBリガンドによって媒介されるシグナル伝達を阻害する。本明細書に記載される通り、ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドは、骨髄線維症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するため、特に、1つもしくは複数の骨髄線維症に関連する合併症(例えば、脾腫、髄外造血、貧血、および線維症)の進行速度および/もしくは重症度を処置、予防もしくは低減するため、ならびに/またはヤヌスキナーゼ阻害剤を用いて処置された患者を処置するために、単独で、または1つもしくは複数の支持療法もしくは活性作用因子と組み合わせて使用することができる。
一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともGDF11を阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、GDF3、BMP6、BMP10、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともGDF8を阻害し、任意選択で、GDF11、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、GDF3、BMP6、BMP10、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともアクチビン(アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)を阻害し、任意選択で、GDF8、GDF11、GDF3、BMP6、BMP10、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともアクチビンBを阻害し、任意選択で、GDF8、GDF11、GDF3、BMP6、BMP10、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともBMP6を阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、GDF3、GDF11、BMP10、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともGDF3を阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、BMP6、GDF11、BMP10、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともBMP10を阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、BMP6、GDF11、GDF3、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともActRIIBを阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、BMP6、GDF11、GDF3、BMP10、ALK4、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、GDF/BMPポリヌクレオチドアンタゴニスト、ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともALK4を阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、BMP6、GDF11、GDF3、ActRIIB、BMP10、ALK5、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともALK5を阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、BMP6、GDF11、GDF3、ActRIIB、ALK4、BMP10、およびALK7のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、少なくともALK7を阻害し、任意選択で、GDF8、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、アクチビンBC、アクチビンAEおよび/またはアクチビンBE)、BMP6、GDF11、GDF3、ActRIIB、ALK4、ALK5、およびBMP10のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。一部の実施形態では、本明細書で開示されたActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、BMP9を阻害しないまたは実質的に阻害しない。一部の実施形態では、本明細書で開示されたActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組み合わせは、アクチビンAを阻害しないまたは実質的に阻害しない。
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストは、アンチセンス核酸、RNAi分子[例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(small−hairpin RNA)(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)]、アプタマーおよび/またはリボザイムであり得る。ヒトGDF11、GDF8、アクチビン(アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、およびアクチビンE)、BMP6、GDF3、ActRIIB、ALK4、ALK5、ALK7、およびBMP10の核酸およびアミノ酸配列は、当技術分野で公知である。さらに、ポリヌクレオチドアンタゴニストを生成する多くの異なる方法が当技術分野で周知である。したがって、本開示に従って使用するためのポリヌクレオチドアンタゴニストは、当技術分野における知見および本明細書に提示される教示に基づいて当業者により常套的に作製され得る。
アンチセンス技術を使用して、遺伝子発現を、アンチセンスDNAもしくはRNAを通じて、または三重らせん形成を通じて制御することができる。アンチセンス技法は、例えば、Okano(1991年)J. Neurochem.、56巻:560頁;Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1988年)において論じられている。三重らせん形成は、例えば、Cooneyら(1988年)Science、241巻:456頁;およびDervanら(1991年)Science、251巻:1300頁において論じられている。方法は、ポリヌクレオチドの相補DNAまたはRNAへの結合に基づく。一部の実施形態では、アンチセンス核酸は、本明細書で開示された遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部分と相補的である一本鎖RNAまたはDNA配列を含む。しかし、絶対的な相補性は、好ましいが、必要ではない。
本明細書で言及される「RNAの少なくとも一部に相補的な」配列とは、RNAとハイブリダイズし、安定的な二重鎖を形成することが可能であるのに十分な相補性を有する配列を意味し、したがって、本明細書で開示される遺伝子の二本鎖アンチセンス核酸の場合、二重鎖DNAの一本鎖を試験してもよく、三重鎖形成をアッセイしてもよい。ハイブリダイズする能力は、アンチセンス核酸の相補性の程度および長さの両方に依存する。一般に、ハイブリダイズさせる核酸が大型であるほど、それが含有し得るRNAとの塩基のミスマッチも多くなるが、なおも安定的な二重鎖(または、場合に応じて、三重鎖)を形成する。当業者は、ハイブリダイズした複合体の融点を決定する標準的な手順の使用により、ミスマッチの許容可能な程度を確認することができる。
メッセージの5’末端、例えば、AUG開始コドンを含めてAUG開始コドンまでの5’−非翻訳配列と相補的なポリヌクレオチドが翻訳の阻害において最も効率的に機能するはずである。しかし、mRNAの3’−非翻訳配列と相補的な配列も同様にmRNAの翻訳の阻害において有効であることが示されている[例えば、Wagner, R.(1994年)Nature、372巻:333〜335頁を参照されたい]。したがって、本開示の遺伝子の5’−または3’−非翻訳、非コード領域のいずれかと相補的なオリゴヌクレオチドをアンチセンスアプローチにおいて使用して、内因性mRNAの翻訳を阻害することができる。mRNAの5’−非翻訳領域と相補的なポリヌクレオチドは、AUG開始コドンの相補物を含むべきである。mRNAコード領域と相補的なアンチセンスポリヌクレオチドは、翻訳のより効率の低い阻害剤であるが、本開示の方法に従って使用することができる。本開示のmRNAの5’−領域、3’−領域またはコード領域のいずれにハイブリダイズするように設計されるかにかかわらず、アンチセンス核酸は、少なくとも6ヌクレオチドの長さであるべきであり、6から約50ヌクレオチドにわたる長さのオリゴヌクレオチドであることが好ましい。特定の態様では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチドまたは少なくとも50ヌクレオチドである。
一実施形態では、本開示のアンチセンス核酸は、外因性配列からの転写により、細胞内で生成される。例えば、ベクターまたはその一部は、転写され、本開示の遺伝子のアンチセンス核酸(RNA)を生成する。このようなベクターは、所望のアンチセンス核酸をコードする配列を含有する。このようなベクターは、所望のアンチセンスRNAを生成するように転写され得る限りにおいて、エピソームにとどまってもよく、染色体に組み込まれてもよい。このようなベクターは、当該分野で標準的な組換えDNA法により構築することができる。ベクターは、プラスミドベクターでもよく、ウイルスベクターでもよく、または当該分野で公知の他のベクターであって、脊椎動物細胞内の複製および発現のために使用されるベクターでもよい。本開示の所望の遺伝子またはこれらのフラグメントをコードする配列の発現は、脊椎動物細胞内、好ましくは、ヒト細胞内で作用することが当該分野で公知の任意のプロモーターによるものであり得る。このようなプロモーターは、誘導性であっても、恒常的であってもよい。このようなプロモーターとして、SV40初期プロモーター領域[例えば、BenoistおよびChambon(1981年)、Nature、290巻:304〜310頁を参照されたい]、ラウス肉腫ウイルスの3’側長末端リピート内に含有されるプロモーター[例えば、Yamamotoら(1980年)、Cell、22巻:787〜797頁を参照されたい]、ヘルペスチミジンプロモーター[例えば、Wagnerら(1981年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、78巻:1441〜1445頁を参照されたい]、およびメタロチオネイン遺伝子の調節配列[例えば、Brinsterら(1982年)、Nature、296巻:39〜42頁を参照されたい]が挙げられるがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドアンタゴニストは、GDF11、GDF8、アクチビン(アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、およびアクチビンE)、BMP6、ActRIIB、GDF3、ALK4、ALK5、ALK7、およびBMP10のうちの1つまたは複数の発現を標的化する干渉RNA(RNAi)分子である。RNAiは、標的化されたmRNAの発現に干渉するRNAの発現を指す。具体的には、RNAiは、標的化された遺伝子を、特定のmRNAとsiRNA(低分子干渉RNA)を通じて相互作用することによってサイレンシングする。次いで、dsRNA複合体を、細胞による分解について標的化する。siRNA分子は、10〜50ヌクレオチドの長さの二本鎖RNA二重鎖であり、十分に相補的である標的遺伝子(例えば、遺伝子に対して少なくとも80%同一性)の発現に干渉する。一部の実施形態では、siRNA分子は、標的遺伝子のヌクレオチド配列と少なくとも85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
追加のRNAi分子は、短鎖ヘアピン型RNA(short−hairpin RNA)(shRNA)を含み、短鎖干渉ヘアピンおよびマイクロRNA(miRNA)も含む。shRNA分子は、ループによって接続された標的遺伝子由来のセンスおよびアンチセンス配列を含有する。shRNAは、核から細胞質中に輸送され、mRNAと一緒に分解される。RNAiのためのRNAを発現させるために、Pol IIIまたはU6プロモーターを使用することができる。Paddisonら[Genes & Dev.(2002年)16巻:948〜958頁、2002年]は、RNAiに影響を及ぼすための手段として、ヘアピンにフォールディングした低分子RNA分子を使用した。したがって、このような短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)分子は、本明細書に記載される方法においても有利に使用される。機能性shRNAのステムおよびループの長さは変動する;サイレンシング活性に影響を及ぼすことなく、ステムの長さは、概ね約25から約30ntまでの範囲にわたり得、ループのサイズは、4から約25ntの間にわたり得る。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、これらのshRNAは、DICER RNaseの二本鎖RNA(dsRNA)産物と似ていると考えられ、いずれにしても、特定の遺伝子の発現を阻害するための同じ能力を有する。shRNAは、レンチウイルスベクターから発現させることができる。miRNAは、「ステムループ」構造を特徴とするpre−miRNAとして最初に転写され、その後、RISCによるさらなるプロセシング後にプロセシングされて成熟miRNAになる、約10〜70ヌクレオチドの長さの一本鎖RNAである。
siRNAを含むがこれに限定せず、RNAiを媒介する分子は、インビトロで、化学合成(Hohjoh、FEBS Lett、521巻:195〜199頁、2002年)、dsRNAの加水分解(Yangら、Proc Natl Acad Sci USA、99巻:9942〜9947頁、2002年)、T7 RNAポリメラーゼによるインビトロ転写(Donzeetら、Nucleic Acids Res、30巻:e46頁、2002年;Yuら、Proc Natl Acad Sci USA、99巻:6047〜6052頁、2002年)、およびE.coli RNアーゼIIIなどのヌクレアーゼを使用する二本鎖RNAの加水分解(Yangら、Proc Natl Acad Sci USA、99巻:9942〜9947頁、2002年)によって生成することができる。
別の態様に従うと、本開示は、デコイDNA、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合体化DNA、封入型DNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、ネイキッドRNA、封入型RNA、ウイルスRNA、二本鎖RNA、RNA干渉をもたらすことが可能な分子、またはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されないポリヌクレオチドアンタゴニストを提供する。
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストは、アプタマーである。アプタマーは、二本鎖DNAおよび一本鎖RNA分子を含めた核酸分子であり、結合し、標的分子に特異的に結合する三次構造を形成する。アプタマーの生成および治療への使用が当技術分野において十分に確立されている(例えば、米国特許第5,475,096号を参照されたい)。アプタマーに関する追加の情報は、米国特許出願公開第20060148748号に見出すことができる。核酸アプタマーは、当技術分野で公知の方法を使用して、例えば、試験管内進化法(SELEX)プロセスによって選択される。SELEXは、例えば、米国特許第5,475,096号;同第5,580,737号;同第5,567,588号;同第5,707,796号;同第5,763,177号;同第6,011,577号;および同第6,699,843号に記載されている通り、標的分子に対して高度に特異的な結合を有する核酸分子のインビトロにおける進化のための方法である。アプタマーを同定するための別のスクリーニング方法は、米国特許第5,270,163号に記載されている。SELEXプロセスは、種々の二次元構造および三次元構造を形成する核酸の能力、ならびに、他の核酸分子およびポリペプチドを含め、単量体であるかポリマーであるかにかかわらず、事実上あらゆる化学化合物とのリガンドとしての機能を果たす(特異的な結合対を形成する)ヌクレオチド単量体内で利用可能な化学的多用途性に基づく。任意のサイズまたは組成の分子が標的としての機能を果たし得る。SELEX法は、所望の結合アフィニティーおよび選択性を達成するために、同じ一般的な選択スキームを使用した、候補オリゴヌクレオチドの混合物からの選択、ならびに結合、分割および増幅の段階的反復を伴う。ランダム化された配列のセグメントを含み得る核酸の混合物から出発して、SELEX法は、混合物を標的と結合に好都合な条件下で接触させる工程;結合していない核酸を標的分子に特異的に結合した核酸から分割する工程;核酸−標的複合体を解離させる工程;核酸−標的複合体から解離した核酸を増幅して、リガンドが濃縮された核酸の混合物を得る工程を含む。結合、分割、解離および増幅の工程を所望の通り多くのサイクルを通じて繰り返して、標的分子に高いアフィニティーおよび特異性で結合する核酸リガンドを得る。
典型的に、このような結合分子は、動物に別個に投与される[例えば、O’Connor(1991年)、J. Neurochem.、56巻:560頁を参照されたい]が、このような結合分子はまた、宿主細胞により取り込まれたポリヌクレオチドからインビボで発現させることもでき、インビボで発現させることができる[例えば、Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1988年)を参照されたい]。
F.フォリスタチンおよびFLRGアンタゴニスト
他の態様では、ActRIIBアンタゴニストは、フォリスタチンまたはFLRGポリペプチドである。本明細書に記載される通り、フォリスタチンおよび/またはFLRGポリペプチドは、骨髄線維症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するため、特に、1つもしくは複数の骨髄線維症に関連する合併症(例えば、脾腫、髄外造血、貧血、および線維症)の進行速度および/もしくは重症度を処置、予防もしくは低減するため、ならびに/またはヤヌスキナーゼ阻害剤を用いて処置された患者を処置するために、単独で、または1つもしくは複数の支持療法もしくは活性作用因子と組み合わせて使用することができる。
用語「フォリスタチンポリペプチド」は、フォリスタチンの任意の天然に存在するポリペプチドのほか、有用な活性を保持するその任意の改変体(変異体、フラグメント、融合物、およびペプチド模倣物形態を含む)も含むポリペプチドを含み、フォリスタチンの任意の機能的な単量体または多量体もさらに含む。ある特定の好ましい実施形態では、本開示のフォリスタチンポリペプチドは、アクチビン、特に、アクチビンAに結合し、かつ/またはこれらの活性を阻害する。アクチビンへの結合特性を保持する、フォリスタチンポリペプチドの改変体は、フォリスタチンとアクチビンとの相互作用に関するかつての研究に基づき同定することができる。例えば、WO2008/030367は、アクチビンへの結合に重要であることが示されている、特異的なフォリスタチンドメイン(「FSD」)について開示している。下記の配列番号65〜67に示される通り、フォリスタチンのN末端ドメイン(「FSND」;配列番号65)、FSD2(配列番号67)は、フォリスタチン内の例示的なドメインであって、アクチビンへの結合に重要なドメインを表し、程度は劣るが、FSD1(配列番号66)も、フォリスタチン内の例示的なドメインであって、アクチビンへの結合に重要なドメインを表す。加えて、上記では、ActRIIポリペプチドの文脈において、ポリペプチドのライブラリーを作製し、これについて調べるための方法についても記載したが、このような方法はまた、フォリスタチンの改変体を作製し、これらについて調べることにも関する。フォリスタチンポリペプチドは、任意の公知のフォリスタチン配列に由来するポリペプチドであって、フォリスタチンポリペプチドの配列に少なくとも約80%同一である配列を有し、任意選択で、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはこれを超える同一性を有するポリペプチドを含む。フォリスタチンポリペプチドの例は、成熟フォリスタチンポリペプチド、または、例えば、WO2005/025601において記載されている、ヒトフォリスタチン前駆体ポリペプチド(配列番号63)の短いアイソフォームもしくは他の改変体を含む。
ヒトフォリスタチン前駆体ポリペプチドのアイソフォームであるFST344は、以下の通りである。
シグナルペプチドに下線を付す;上記ではまた、このフォリスタチンアイソフォームを、下記に示される短いフォリスタチンアイソフォームであるFST317から弁別する、C末端伸長部分を表す最後の27残基にも下線を付している。
ヒトフォリスタチン前駆体ポリペプチドのアイソフォームであるFST317は、以下の通りである。
シグナルペプチドに下線を付す。
フォリスタチンN末端ドメイン(FSND)配列は、以下の通りである。
FSD1およびFSD2配列は、以下の通りである。
他の態様では、本明細書で開示される方法に従う使用のための作用因子は、フォリスタチン関連タンパク質3(FSTL3)としてもまた公知の、フォリスタチン様関連遺伝子(FLRG)である。用語「FLRGポリペプチド」は、FLRGの任意の天然に存在するポリペプチドのほか、有用な活性を保持するその任意の改変体(変異体、フラグメント、融合物、およびペプチド模倣物形態を含む)も含むポリペプチドを含む。ある特定の好ましい実施形態では、本開示のFLRGポリペプチドは、アクチビン、特に、アクチビンAに結合し、かつ/またはこれらの活性を阻害する。アクチビンへの結合特性を保持するFLRGポリペプチドの改変体は、FLRGとアクチビンとの相互作用についてアッセイする日常的方法を使用して同定することができる(例えば、US6,537,966を参照されたい)。加えて、上記では、ActRIIポリペプチドの文脈において、ポリペプチドのライブラリーを作製し、これについて調べるための方法についても記載したが、このような方法はまた、FLRGの改変体を作製し、これらについて調べることにも関する。FLRGポリペプチドは、任意の公知のFLRG配列に由来するポリペプチドであって、FLRGポリペプチドの配列に少なくとも約80%同一である配列を有し、任意選択で、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、またはこれを超える同一性を有するポリペプチドを含む。
ヒトFLRG前駆体(フォリスタチン関連タンパク質3前駆体)ポリペプチドは、以下の通りである。
シグナルペプチドに下線を付す。
ある特定の実施形態では、フォリスタチンポリペプチドおよびFLRGポリペプチドの機能的な改変体または改変形態は、フォリスタチンポリペプチドまたはFLRGポリペプチドの少なくとも一部を有する融合タンパク質と、例えば、ポリペプチドの単離、検出、安定化、または多量体化を容易とするドメインなど、1つまたは複数の融合ドメインとを含む。適切な融合ドメインについては、ActRIIBポリペプチドに関して、上記で詳細に論じられている。一部の実施形態では、本開示のアンタゴニスト作用因子は、Fcドメインに融合させたフォリスタチンポリペプチドのアクチビン結合性部分を含む融合タンパク質である。別の実施形態では、本開示のアンタゴニスト作用因子は、Fcドメインに融合させたFLRGポリペプチドのアクチビン結合性部分を含む融合タンパク質である。
3.スクリーニングアッセイ
ある特定の態様では、本開示は、ActRIIBポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストである化合物(作用因子)を同定するための対象ActRIIBポリペプチドおよびそれらの改変体(例えば、GDF8トラップ)の使用に関する。このスクリーニングによって同定された化合物を、例えば、動物モデルにおいて、骨髄線維症を処置するそれらの能力を評価するために試験することができる。
ActRIIBシグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を標的化することによって骨髄線維症を処置するための治療剤についてスクリーニングする多数のアプローチがある。ある特定の実施形態では、化合物のハイスループットなスクリーニングを行って、選択された細胞株に対するActRIIBに媒介される効果を乱す作用因子を同定することができる。ある特定の実施形態では、アッセイを行って、ActRIIBポリペプチドのその結合パートナー、例えば、ActRIIBリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、GDF8、GDF3、GDF11またはBMP10)などへの結合を特異的に阻害するまたは低減する化合物をスクリーニングし、同定する。あるいは、アッセイを使用して、ActRIIポリペプチドのその結合パートナー、例えば、ActRIIBリガンドなどへの結合を増強する化合物を同定することができる。さらなる実施形態では、化合物は、ActRIIBポリペプチドと相互作用するそれらの能力によって同定することができる。
種々のアッセイ形式が十分であり、そして、本開示を考慮すれば、本明細書中に明示的に記載されない形式は、本明細書中に記載されていないにもかかわらず、当業者によって理解される。本明細書中に記載されるように、本発明の試験化合物(作用因子)は、任意の組み合わせ化学の方法によって作製され得る。あるいは、本主題の化合物は、インビボまたはインビトロで合成された天然に存在する生体分子であり得る。組織増殖の調節因子として作用するその能力について試験される化合物(作用因子)は、例えば、細菌、酵母、植物または他の生物によって生成されても(例えば、天然の生成物)、化学的に生成されても(例えば、ペプチド模倣物を含む低分子)、組換えにより生成されてもよい。本発明によって企図される試験化合物としては、非ペプチジル有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣物、糖、ホルモンおよび核酸分子が挙げられる。ある特定の実施形態では、試験作用因子は、約2000ダルトン未満の分子量を持つ小さな有機分子である。
本開示の試験化合物は、単一の別個の実体として提供され得るか、または、組み合わせ化学によって作製されたような、より複雑度の高いライブラリーにおいて提供され得る。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、ハロゲン化アルキル、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテルおよび有機化合物の他の分類を含み得る。試験システムに対する試験化合物の提示は、特に、最初のスクリーニング段階において、単離された形態または化合物の混合物としてのいずれかであり得る。任意選択で、化合物は、任意選択で他の化合物で誘導体化され得、そして、化合物の単離を容易にする誘導体化基を有し得る。誘導体化基の非限定的な例としては、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位体、ポリヒスチジン、磁気ビーズ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、光活性化クロスリンカー、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、所与の期間に調査される化合物の数を最大にするためには、ハイスループットアッセイが望ましい。精製もしくは半精製(semi−purified)されたタンパク質で誘導され得るような、無細胞のシステムにおいて行われるアッセイは、試験化合物によって媒介される分子標的における変更の迅速な発生と比較的容易な検出とを可能にするように作られ得るという点で、しばしば、「一次」スクリーニングとして好ましい。さらに、試験化合物の細胞毒性またはバイオアベイラビリティの作用は、一般に、インビトロのシステムでは無視され得るが、その代わりに、このアッセイは主として、ActRIIBポリペプチドとその結合パートナー(例えば、ActRIIBリガンド)との間の結合親和性の変更において明らかになり得るような、分子標的に対する薬物の作用に焦点を当てている。
単なる例示として、本開示の例示的なスクリーニングアッセイでは、関心のある化合物は、アッセイの意図に応じて適宜、通常ActRIIBリガンドに結合し得る単離および精製されたActRIIBポリペプチドと接触させられる。その後、化合物とActRIIBポリペプチドとの混合物は、ActRIIBリガンド(例えば、GDF11)を含む組成物に加えられる。ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体の検出および定量は、ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質との間の複合体の形成の阻害(または助長)における化合物の効力を決定するための手段を提供する。化合物の効力は、種々の濃度の試験化合物を用いて得られたデータから用量応答曲線を生成することによって評価され得る。さらに、比較のためのベースラインを提供するためのコントロールアッセイもまた行われ得る。例えば、コントロールアッセイでは、単離および精製されたActRIIBリガンドは、ActRIIBポリペプチドを含む組成物に加えられ、そして、ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体の形成は、試験化合物の非存在下で定量される。一般に、反応物が混合され得る順序は変化し得、そして、同時に混合され得ることが理解される。さらに、適切な無細胞アッセイ系を与えるように、精製したタンパク質の代わりに、細胞の抽出物および溶解物が使用され得る。
ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質との間の複合体の形成は、種々の技術によって検出され得る。例えば、複合体の形成の調節は、例えば、検出可能に標識されたタンパク質、例えば、放射標識(例えば、32P、35S、14Cまたは3H)、蛍光標識(例えば、FITC)、または、酵素標識されたActRIIBポリペプチドおよび/またはその結合タンパク質を用いて、イムノアッセイによって、あるいは、クロマトグラフィーによる検出によって定量され得る。
特定の実施形態では、本開示は、直接的または間接的のいずれかで、ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用の程度を測定する、蛍光偏光アッセイおよび蛍光共鳴エネルギー遷移(FRET)アッセイの使用を企図する。さらに、光導波管(waveguide)(例えば、PCT公開WO96/26432および米国特許第5,677,196号を参照のこと)、表面プラズモン共鳴(SPR)、表面電荷センサ、および表面力センサに基づくもののような、他の検出様式が、本開示の多くの実施形態と適合性がある。
さらに、本開示は、ActRIIBポリペプチドとその結合パートナーとの間の相互作用を妨害または助長する作用因子を同定するための、「ツーハイブリッドアッセイ」としても公知である相互作用トラップアッセイの使用を企図する。例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosら(1993年)Cell 72巻:223〜232頁;Maduraら(1993年)J Biol Chem 268巻:12046〜12054頁;Bartelら(1993年)Biotechniques 14巻:920〜924頁;およびIwabuchiら(1993年)Oncogene 8巻:1693〜1696頁を参照のこと。特定の実施形態では、本開示は、ActRIIポリペプチドまたはGDFトラップとその結合タンパク質との間の相互作用を解離させる化合物(例えば、低分子またはペプチド)を同定するための、逆ツーハイブリッドシステムの使用を企図する[例えば、VidalおよびLegrain(1999年)Nucleic Acids Res 27巻:919〜29頁;VidalおよびLegrain(1999年)Trends Biotechnol 17巻:374〜81頁;ならびに米国特許第5,525,490号;同第5,955,280号;および同第5,965,368号を参照のこと]。
特定の実施形態では、本主題の化合物は、ActRIIBポリペプチドと相互作用するその能力によって同定される。化合物と、ActRIIBポリペプチドとの間の相互作用は、共有結合性であっても非共有結合性であってもよい。例えば、このような相互作用は、光架橋、放射性標識リガンド結合、およびアフィニティクロマトグラフィーを含むインビトロの生化学的な方法を用いて、タンパク質レベルで同定され得る[例えば、Jakoby
WBら(1974年)、Methods in Enzymology 46巻:1頁を参照のこと]。特定の場合には、化合物は、ActRIIBポリペプチドに結合する化合物を検出するためのアッセイのような、機構ベースのアッセイにおいてスクリーニングされ得る。これは、固相もしくは流体相の結合事象を含み得る。あるいは、ActRIIBポリペプチドをコードする遺伝子は、レポーターシステム(例えば、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質)と共に細胞中にトランスフェクトされ、そして、好ましくは、ハイスループットスクリーニングによって、ライブラリーに対して、または、ライブラリーの個々のメンバーを用いてスクリーニングされ得る。他の機構ベースの結合アッセイ(例えば、自由エネルギーの変化を検出する結合アッセイ)が使用され得る。結合アッセイは、ウェル、ビーズもしくはチップに固定されているか、または、固定された抗体によって捕捉されている標的を用いて行われ得るか、あるいは、キャピラリー電気泳動によって分離され得る。結合した化合物は通常、比色エンドポイントあるいは蛍光または表面プラズモン共鳴を用いて検出され得る。
4.例示的な治療的使用
本開示の実施例に記載の通り、骨髄線維症患者を処置するため、特に、例えば、脾腫、髄外造血、および線維症を含めた当該疾患の種々の合併症を改善するために、ActRIIBアンタゴニスト(阻害剤)を使用することができることが発見されている。具体的には、本明細書で提示されているデータは、GDFトラップポリペプチドが、骨髄線維症のJAK2V617Fモデルにおける脾腫、髄外造血、および線維症を低下させることを示す。したがって、ある特定の態様では、本開示は、それを必要とする患者に、有効量の1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストを、任意選択で骨髄線維症を処置するための1つまたは複数の他の支持療法または活性作用因子と組み合わせて投与することにより、骨髄線維症を処置するため、特に、骨髄線維症の1つまたは複数の合併症(脾腫、髄外造血、貧血、および線維症)を処置または予防するための組成物および方法に関する。
本明細書中で使用される場合、障害または状態を「予防する」治療薬は、統計的試料において、無処置の対照試料に対して、処置試料における障害もしくは状態の出現を低下させるか、あるいは、無処置の対照試料に対して、障害もしくは状態の1または複数の症状の発症を遅延させるか、または、重篤度を低下させるような化合物を指す。用語「処置する」は、本明細書中で使用される場合、一度確立された状態の改善もしくは除去を含む。いずれの場合にも、予防または処置は、医師または他の医療提供者によって提供される診断、および、治療剤の投与の意図される結果において認識され得る。
一般に、本開示に記載されている疾患または状態の処置または予防は、ActRIIBアンタゴニストを有効量で投与することによって達成される。作用因子の有効量とは、所望の治療上または予防上の結果を達成するために必要な投与量および期間での有効な量を指す。本開示の作用因子の治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、および体重、ならびに個体における所望の応答を引き出す作用因子の能力などの因子に応じて変動し得る。予防有効量とは、所望の予防上の結果を達成するために必要な投与量および期間での有効な量を指す。
用語「対象」、「個体」または「患者」は、本明細書全体を通して互換的であり、一般に、哺乳動物を指す。哺乳動物としては、これらに限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびにげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられる。
骨髄線維症は、造血のクローン性新生物障害であり、一般に、進行する無効造血、髄外造血、種々の炎症性合併症、および生存の短縮をもたらす進行性骨髄線維症(bone marrow fibrosis)を特徴とする[Mascarenhasら(2012年)Curr Med Chem、19巻:4399〜4413頁;およびVannucchiら(2011年)Hematol Am Soc Hematol Educ Prog、2011年:222〜230頁]。これは、過剰な細胞が産生される、骨髄の骨髄増殖性障害の1つである。異常な造血細胞クローンによる線維芽細胞増殖因子などのサイトカインの産生は、コラーゲン線維化を介した骨髄の造血組織の結合組織による置き換えにつながる。造血組織の減少により、患者の新しい血液細胞を生成する能力が損なわれ、その結果、進行性の汎血球減少、全ての血液型の不足が生じる。しかし、増殖および線維芽細胞およびコラーゲンの沈着は二次的な現象であり、線維芽細胞自体は異常な細胞クローンの一部ではない。骨髄の進行性の瘢痕化または線維症の結果として、患者は、造血細胞の他の領域、特に肝臓および脾臓への強制的移動に伴って髄外造血を発症する。これにより、これらの臓器の腫大が引き起こされる。肝臓では、この状態は肝腫大と称される。脾臓の腫大は脾腫と称され、これは、汎血球減少、特に、血小板減少症および貧血にも寄与する。肺およびリンパ節において生じる髄外造血の報告もある。髄外造血の別の合併症は、異常な形状の赤血球が存在する、変形赤血球症である。骨髄線維症の一般的な臨床徴候としては、進行性肝脾腫、血球数異常、ならびに、疲労、体重減少、寝汗、発熱、そう痒、骨痛、早期満腹、腹痛または不快感、関節痛、筋痛、異常知覚、悪液質、脾梗塞および出血などの消耗性症状が挙げられる。最近まで、疾患の進行に対する影響が明白に実証された処置は、同種造血幹細胞移植alloHSCTだけであるが、処置に関連する死亡率が高く、この集中的な治療に適するのは少数の患者だけである[Guptaら(2012年)Blood、120巻:1367〜1379頁]。
ある特定の態様では、骨髄線維症(例えば、原発性骨髄線維症、真性赤血球増加症後骨髄線維症、および本態性血小板血症後骨髄線維症)の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するために、ActRIIBアンタゴニストを、単独で、または1つもしくは複数の支持療法もしくは活性作用因子と組み合わせて使用することができる。具体的には、例えば、無効造血、貧血、炎症、線維症(例えば、骨髄線維症(bone marrow fibrosis)、脾線維症、および肝線維症)、汎血球減少、血小板減少症、髄外造血(例えば、脾髄外造血、肝髄外造血、肺髄外造血、およびリンパ性髄外造血)、肝腫大、脾腫、骨硬化症、骨骨髄線維症、変形赤血球症、疲労、体重減少、寝汗、発熱、そう痒、骨痛、早期満腹、腹痛または不快感、関節痛、筋痛、異常知覚、悪液質、脾梗塞、および出血を含めた骨髄線維症の1つまたは複数の合併症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するために、ActRIIBアンタゴニストを、単独で、または1つもしくは複数の支持療法もしくは活性作用因子と組み合わせて使用することができる。
原発性骨髄線維症(PMF)の現行の診断は、World Health Organization(WHO)−基準に基づき、臨床的特徴および検査による特徴の複合評価を伴う[Tefferi Aら(2007年)Blood.、110巻:1092〜1097頁]。3つのWHO診断主要基準がある:1)レチクリンおよび/もしくはコラーゲン線維化のいずれかを伴った巨核球の増殖および異型(異常な核/細胞質比を有する小さな〜大きな巨核球および過色素性であり不規則に折り重なった核および高密度の密集)、または、レチクリン線維化がない場合は、巨核球の変化に、骨髄細胞充実性の増大、顆粒球増殖、および、しばしば赤血球生成の低下(すなわち、前線維化期原発性骨髄線維症)が伴わなければならない、2)慢性骨髄性白血病、真性赤血球増加症、骨髄異形成症候群、または他の骨髄性新生物のWHO基準を満たさないこと、ならびに3)JAK2V617Fもしくは他のクローンマーカーが実証されていること、または、反応性の骨髄線維症(bone marrow fibrosis)の証拠がないこと。さらに、4つのWHO診断副次的基準がある:1)白赤芽球症、2)血清LDHレベルの増加、3)貧血、および4)触知可能な脾腫。末梢血白赤芽球症(すなわち、有核赤血球、未成熟顆粒球、および涙滴赤血球の存在)が典型的であるが、PMFの不変の特徴ではない;前線維化期PMFは顕性の白赤芽球症を示さない可能性がある[Kvasnickaら(2010年)Am J Hematol.、85巻:62〜69頁]。PMFとしての骨髄線維症は、通常、JAK2V617Fまたは変異体CALR、またはMPL、トリソミー9、またはdel(13q)に関連する[Husseinら(2009年)Eur J Haematol.、82巻:329〜338頁]。したがって、これらの遺伝子マーカーの存在により、骨髄線維症(bone marrow fibrosis)に関連する骨髄性新生物が存在する場合のPMFの診断が強力に支持される。ある特定の態様では、本開示は、原発性骨髄線維症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するため、特に、原発性骨髄線維症の1つまたは複数の合併症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。
真性赤血球増加症後骨髄線維症(PV後MF)および本態性血小板血症後骨髄線維症(ET後MF)の現行の診断は、International Working Group for MPN Research and Treatment(IWG−MRT)により公開された基準に基づく[Barosi Gら(2008年)Leukemia.、22巻:437〜438頁]。PV後MFの2つのIWG−MRT主要基準がある:1)WHO基準によって定義される真性赤血球増加症の以前の診断の証拠書類、および2)骨髄線維症(bone marrow fibrosis)グレード2〜3(0〜3尺度で)またはグレード3〜4(0〜4尺度で)。ヨーロッパ分類によるグレード2〜3:広汎性、しばしば膠原化の証拠を伴わない(陰性トリクローム染色)粗い線維ネットワーク、または、広汎性、膠原化の領域を伴う(陽性トリクローム染色)粗い線維ネットワーク[Thieleら(2005年)Haematologica.、90巻:1128〜1132頁]。標準の分類によるグレード3〜4:広範囲にわたる交差を伴い、時々限局性のコラーゲンの束および/もしくは限局性の骨硬化症のみを伴う、広汎性かつ高密度のレチクリンの増加、または、広範囲にわたる交差を伴い、コラーゲンの粗い束を伴い、しばしば有意な骨硬化症が付随する、広汎性かつ高密度のレチクリンの増加[Manoharanら(1979年)Br J Haematol、43巻:185〜190頁]。さらに、4つのIWG−MRT診断副次的基準があり、PV後MF診断のためには、そのうち2つがIWG−MRT主要基準と一緒に患者において検出されなければならない:1)貧血、または細胞減少療法の不在下で静脈切開の必要性の持続的消失、2)白赤芽球性の末梢血像、3)5cm以上の触知可能な脾腫の増加または新しく触知可能になった脾腫の出現として定義される脾腫の増大、4)3つの全身症状:6カ月で10%超の体重減少、寝汗、原因不明の発熱のうち1つ以上の発生。ET後MFの2つのIWG−MRT主要基準がある:1)WHO基準によって定義される真性赤血球増加症の以前の診断の証拠書類、2)骨髄線維症(bone marrow fibrosis)グレード2〜3(0〜3尺度で)またはグレード3〜4(0〜4尺度で)。さらに、5つのIWG−MRT診断副次的基準があり、ET後MF診断のためにはそのうち2つがIWG−MRT主要基準と一緒に患者において検出されなければならない:1)貧血およびベースラインヘモグロビンレベルから2g/dL以上の低下、2)白赤芽球性の末梢血像、3)5cm以上の触知可能な脾腫の増加または新しく触知可能になった脾腫の出現として定義される脾腫の増大、4)乳酸デヒドロゲナーゼの増加、および5)3つの全身症状:6カ月で10%超の体重減少、寝汗、原因不明の発熱のうち1つ以上の発生。ある特定の態様では、本開示は、真性赤血球増加症後骨髄線維症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するため、特に、真性赤血球増加症後骨髄線維症の1つまたは複数の合併症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。ある特定の態様では、本開示は、本態性血小板血症後骨髄線維症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するため、特に、本態性血小板血症後骨髄線維症の1つまたは複数の合併症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。
骨髄線維症におけるロバストな予後モデル化が、2009年に国際予後スコア化システム(IPSS)の開発と共に開始された[Cervantes Fら(2009年)Blood、113巻:2895〜2901頁]。骨髄線維症に対するIPSSは、最初の診断時に評価された患者に適用可能であり、生存不良の5つの独立した予測因子を使用する:年齢>65歳、ヘモグロビン<10g/dL、白血球数>25×109/L、循環芽細胞≧1%、および全身症状の存在。有害な因子が0、1、2、および3つ以上存在することを、それぞれ低、中間1、中間2、および高リスクの疾患と定義する。対応する生存期間中央値は、それぞれ11.3、7.9、4、および2.3年であった。ある特定の態様では、本開示は、IPSSによる低、中間1、中間2、または高リスクの骨髄線維症を有する患者において骨髄線維症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。一部の実施形態では、本開示は、IPSSによる骨髄線維症リスクの進行を予防または遅延する(例えば、IPSSによる、低リスクから中間1リスク、中間1リスクから中間2リスク、および中間2リスクから高リスクへのリスクの進行を予防または遅延する)ための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。一部の実施形態では、本開示は、IPSSによる骨髄線維症リスクの後退を促進または増大する(例えば、IPSSによる、高リスクから中間2リスク、中間2リスクから中間1リスク、および中間1リスクから低リスクへの後退を促進または増大する)ための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。
その後、IWG−MRTにより、IPSSで使用されるものと同じ予後変数を使用するが、疾患経過中のあらゆる時点で適用することができる動的な予後モデル(動的国際予後スコア化システム[DIPSS])が開発された[Passamonti Fら(2010年)Blood.、115巻:1703〜1708頁]。DIPSSでは、ヘモグロビン<10g/dLについて逆得点1ではなく2を割り当て、したがって、リスクカテゴリー化が改変される:低(0逆得点)、中間1(1または2点)、中間2(3または4点)、および高(5または6点)。対応する生存期間中央値は、到達せず、14.2、4、および1.5年であった。ある特定の態様では、本開示は、DIPSSによる低、中間1、中間2、または高リスクの骨髄線維症を有する患者において骨髄線維症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。一部の実施形態では、本開示は、DIPSSによる骨髄線維症リスクの進行を予防または遅延する(例えば、DIPSSによる低リスクから中間1リスク、中間1リスクから中間2リスク、および中間2リスクから高リスクへのリスクの進行を予防または遅延する)ための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。一部の実施形態では、本開示は、DIPSSによる骨髄線維症リスクの後退を促進または増大する(例えば、DIPSSによる高リスクから中間2リスク、中間2リスクから中間1リスク、および中間1リスクから低リスクへの後退を促進または増大する)ための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。
骨髄線維症における生存についてのIPSSおよびDIPSSとは独立した危険因子がその後同定され、好ましくない核型(すなわち、+8、−7/7q−、i(17q)、inv(3)、−5/5q−、12p−、または11q23再編成を含む複雑核型または単一もしくは2つの異常)[Husseinら(2010年)Blood.、115巻:496〜499頁]、赤血球輸血の必要[Tefferiら(2009年)Am J Hematol.、85巻:14〜17頁]、および血小板数<100×109/L[Patnaikら(2010年)Eur J Haematol.、84巻:105〜108頁]が含まれた。したがって、これら3つの追加のDIPSSとは独立した危険因子:血小板数<100×109/L、赤血球輸血の必要、および好ましくない核型を組み入れることによってDIPSSをDIPSS−plusに改変した。上述の8つの危険因子に基づく4つのDIPSS−plusリスクカテゴリーは、低(危険因子なし)、中間1(危険因子が1つ)、中間2(危険因子が2つまたは3つ)、および高(危険因子が4つまたはそれより多い)であり、それぞれの生存期間中央値は、15.4、6.5、2.9、および1.3年である。ある特定の態様では、本開示は、DIPSS−plusによる低、中間1、中間2、または高リスクの骨髄線維症を有する患者において骨髄線維症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。一部の実施形態では、本開示は、DIPSS−plusによる骨髄線維症リスクの進行を予防または遅延する(例えば、DIPSS−plusによる低リスクから中間1リスク、中間1リスクから中間2リスク、および中間2リスクから高リスクへのリスクの進行を予防または遅延する)ための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。一部の実施形態では、本開示は、DIPSS−plusによる骨髄線維症リスクの後退を促進または増大する(例えば、DIPSS−plusによる高リスクから中間2リスク、中間2リスクから中間1リスク、および中間1リスクから低リスクへの後退を促進または増大する)ための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。
DIPSS−plusの公開以来、追加の予後情報を示唆するいくつかの研究が公開されている。例えば、モノソーム核型、inv(3)/i(17q)異常、または、循環芽細胞>9%、白血球≧40×109/Lまたは他の好ましくない核型のうちのいずれか2つによって骨髄線維症における>80%の2年死亡率が予測された[Tefferiら(2011年)Blood.、118巻:4595〜4598頁]。同様に、骨髄線維症における生存不良が、JAK2 46/1ハプロタイプのヌル欠損、低JAK2V617F対立遺伝子負荷、またはIDH、EZH2、SRSF2、もしくはASXL1変異の存在に関連付けられた[Tefferi, Ayalew(2014年)Am. J. Hematol.、89巻:916〜925頁]。対照的に、JAK2V617F、MPL、またはTET2変異の有無は生存に影響しないと思われた。骨髄線維症における生存はまた、血清IL−8およびIL−2Rレベルの増加ならびに血清遊離軽鎖レベルの増加による影響も受け、これらはどちらもDIPSS−plusとは独立したものである。ごく最近、Tefferiらは、254名の骨髄線維症の患者を試験し、変異の頻度について、JAK2が58%、CALRが25%、MPLが8%、および3つ全ての変異について野生型(すなわち、トリプルネガティブ)が9%であることを報告した[Tefferiら(2014年)Leukemia、DOI 10.1038/leu.2014.3として事前出版]。JAK2/MPL無変異の場合のCALR変異の頻度は74%であった。CALR変異は、より若い年齢、より高い血小板数、およびより低いDIPSS−plusスコアに関連付けられた。CALRが変異した患者はまた、貧血である、輸血を必要とする、または白血球増加症を示す可能性が低かった。CALRが変異した患者ではスプライソソーム変異が低頻度であった。その後の570名の患者に関する国際的な研究において、著者らは、生存がCALR+ASXL1−患者で最も長く(中央値10.4年)、CALR−ASXL1+患者で最も短い(中央値2.3年)ことを報告した[Tefferiら(2014年)Leukemia、DOI 10.1038/leu.2014.57として事前出版]。CALR+ASXL1+およびCALR−ASXL1−患者は同様の生存を有し、中間リスクカテゴリーに一緒に群分けされた(生存期間中央値5.8年)。全生存に関して明らかになりつつあるように、IDHおよびSRSF2を含めたある特定の変異を有する患者では無白血病生存も有意に損なわれる[Tefferiら(2012年)Leukemia.、26巻:475〜480頁;Lashoら(2012年)Blood.、120巻:4168〜4171頁]。さらに、LNKおよびTHPOの変異が骨髄線維症に関連付けられた。
ヤヌスキナーゼ2(JAK2)機能獲得型変異であるJAK2V617Fの発見により、骨髄線維症の基礎をなす生物学の理解の有意な改善、ならびに、骨髄線維症の処置に関してFDAにより承認された最初の薬物であるJAK2阻害剤ルクソリチニブの開発がもたらされた[Baxterら(2005年)Lancet、365巻:1054〜1061頁;James C.ら(2005年)Nature、434巻:1144〜1148頁;Kralovicsら(2005年)N Engl J Med.、352巻:1779〜1790頁;およびLevineら(2005年)Cancer Cell、7巻:387〜397頁]。受容体チロシンキナーゼのヤヌスキナーゼファミリーは、4つの異なるタンパク質(JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2)を含み、このファミリーのタンパク質は、骨髄系およびリンパ系細胞の成長および発達において極めて重要な役割を果たすことが分かっている。具体的には、このファミリーのタンパク質は、サイトカイン受容体からの細胞内相互作用を媒介し、その結果、転写のシグナル伝達因子活性化因子(STAT)因子の活性化ならびに細胞増殖および分化を調節する遺伝子の下流促進をもたらす[Quintas-Cardamaら(2011年)Nat Rev Drug Discov、10巻:127〜140頁]。JAK2V617F変異により、JAK2の構成的な活性化がもたらされ、したがって、骨髄系細胞の増殖および分化が促進される。臨床試験中の他のヤヌスキナーゼ阻害剤として、例えば、フェドラチニブ(SAR302503)、モメロチニブ(CYT387)、パクリチニブ、レスタウルチニブ、AZD−1480、BMS−911543、NS−018、LY2784544、SEP−701、XL019、およびAT−9283が挙げられる。
ある特定の態様では、本開示は、モノソーム核型、inv(3)/i(17q)異常、循環芽細胞>9%および/または白血球≧40×109/L、JAK2 46/1ハプロタイプのヌル欠損、JAK2V617F変異、IDH1変異、IDH2変異、EZH2変異、SRSF2変異、ASXL1変異、血清IL−8レベルの増加、血清IL−2Rレベルの増加、遊離軽鎖レベルの増加、JAK1変異、JAK2変異、JAK3変異、TYK2変異、MPL変異、CALR変異、CALR+ASXL1−、CALR−ASKL1+、CALR+ASKL1+、CALR−ASKL1−、TET2変異、THPO変異、およびLNK変異のうちの1つまたは複数を有する患者において骨髄線維症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。
貧血の管理は、骨髄線維症の患者の処置の最も困難な側面の1つであり得る[Tefferi A.(2011年)Blood 117巻(13号):3949〜3504頁;Barosiら(2011年)Expert Opin Pharmacother 12巻(10号):1597〜1611頁]。輸血(全血または赤血球輸血)は、貧血の症状がある骨髄線維症患者に対する標準治療である。輸血に加えて、種々の従来の作用因子がこれらの患者における貧血を処置するために使用される。例えば、赤血球生成刺激剤[例えば、エリスロポエチン(EPO)およびその誘導体などのESA]、アンドロゲン(例えば、エナント酸テストステロンおよびフルオキシメステロン)、プレドニゾン、ダナゾール、サリドマイド、プレドニゾン、およびレナリドミドが骨髄線維症患者における貧血を処置するために一般に使用される。一般に、ESAは、中等度の非輸血依存性貧血および低血清エリスロポエチンレベルを有する患者において使用される。奏効率は20〜60%で変動し、従来の組換えエリスロポエチンと比較してダルベポエチン−アルファは明白に支持されない。ESA応答は、通常、一時的なものである(約1年)。ESAが機能しないまたは効力が不十分である場合、典型的には、ダナゾールまたはアンドロゲン調製物が貧血患者を処置するために使用され、奏効率は約20%である。漸減的なプレドニゾンを伴う低用量サリドマイドにより、患者のおよそ20〜40%で貧血における応答が生じている[Thapaliyaら(2011年)Am J Hematol 86巻(1号):86〜98頁]。しかし、サリドマイドによる処置は、多くの場合、耐容性が乏しく、末梢神経障害、便秘、および傾眠が伴い、大多数の患者で当該薬物の中止に至る。del(5q31)に関連する貧血を有する骨髄線維症患者では、レナリドミドが推奨される第一選択治療であり、これは、貧血の消散および時々証明される分子寛解を伴う有意な改善が報告されているからである[Tefferiら(2007年)Leukemia 21巻(8号):1827〜1828頁]。ある特定の態様では、本開示は、貧血を有する患者において骨髄線維症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。一部の実施形態では、本開示は、骨髄線維症患者における貧血の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減するための方法およびActRIIBアンタゴニストの使用に関する。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする患者において骨髄線維症の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減する方法であって、1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストを、赤血球生成刺激剤[例えば、エリスロポエチン(EPO)およびその誘導体などのESA]、アンドロゲン(例えば、エナント酸テストステロンおよびフルオキシメステロン)、プレドニゾン、ダナゾール、サリドマイド、プレドニゾン、およびレナリドミドからなる群から選択される1つまたは複数の追加の活性作用因子と併せて投与することを含む方法に関する。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする骨髄線維症患者における貧血の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減する方法であって、1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストを、赤血球生成刺激剤[例えば、エリスロポエチン(EPO)およびその誘導体などのESA]、アンドロゲン(例えば、エナント酸テストステロンおよびフルオキシメステロン)、プレドニゾン、ダナゾール、サリドマイド、プレドニゾン、およびレナリドミドからなる群から選択される1つまたは複数の追加の活性作用因子と併せて投与することを含む方法に関する。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする骨髄線維症患者における貧血の進行速度および/または重症度を処置、予防、または低減する方法であって、1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストを輸血(全血または赤血球輸血)と併せて投与することを含む方法に関する。
ヒトにおけるヘモグロビンおよび/またはヘマトクリットレベルをモニタリングする場合、レベルが適切な年齢および性別カテゴリーについての正常よりも低いことにより貧血が示され得るが、個々の変動を考慮に入れる。例えば、ヘモグロビンレベルは、10〜12.5g/dl、および典型的には約11.0g/dlが健康な成人の正常範囲内であると考えられるが、治療の観点から、標的レベルをより低くすることにより、より少ない心血管副作用が引き起こされ得る。例えば、Jacobsら(2000年)Nephrol Dial Transplant、15巻、15〜19頁を参照されたい。あるいは、ヘマトクリットレベル(細胞が占める血液試料の体積の百分率)を貧血の測定基準として使用することができる。健康な個体のヘマトクリットレベルは、成人男性では約41〜51%にわたり、成人女性では35〜45%にわたる。ある特定の実施形態では、患者を赤血球、ヘモグロビン、および/もしくはヘマトクリットの標的レベルまで回復させること、または、赤血球、ヘモグロビンおよび/もしくはヘマトクリットの許容されるレベルを維持しながら赤血球輸血を低減もしくは排除する(輸血負荷を低減する)ことを意図した投薬レジメンを用いて患者を処置することができる。ヘモグロビンおよびヘマトクリットレベルは人によって変動するので、最適には、標的ヘモグロビンおよび/またはヘマトクリットレベルを各患者に対して個別化することができる。
全血または赤血球の頻繁な輸血を受けている患者では、鉄恒常性の正常な機構が圧倒され、最終的に、心臓、肝臓、および内分泌腺などの生命維持に必要な組織における毒性かつ潜在的に致死的な鉄の蓄積に至ることがある。定期的な赤血球輸血には種々のドナー単位の血液への曝露が必要であり、したがって、同種免疫のリスクが高い。血管アクセスの難しさ、鉄キレート化の利用可能性およびコンプライアンス、ならびに費用が高いことが、赤血球輸血の数を制限することが有益であり得ることの理由の一部である。
ある特定の態様では、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせた1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストを、尿および/または便中への鉄排出を促進し、それにより、骨髄線維症患者における組織鉄過剰負荷を予防するまたは反転させるための1つまたは複数の鉄キレート化分子と組み合わせて使用することができる。有効な鉄キレート化剤は、ヒドロキシルラジカルおよび酸化生成物の触媒による生成を通じて鉄毒性の大部分の原因となっている可能性が高い非トランスフェリン結合鉄の酸化形態である三価鉄に選択的に結合し、それを中和することができるはずである[例えば、Espositoら(2003年)Blood、102巻:2670〜2677頁を参照されたい]。これらの作用因子は、構造的に多様であるが、全てが、個々の鉄原子の化学量論が1:1(六座作用因子)、2:1(三座)、または3:1(二座)である中和性八面体配位錯体を形成することができる酸素または窒素ドナー原子を有する[Kalinowskiら(2005年)Pharmacol Rev、57巻:547〜583頁]。一般に、有効な鉄キレート化剤はまた、比較的低分子量(例えば、700ダルトン未満)であり、患部組織に接近できるように水および脂質の両方に対して溶解性である。鉄キレート化分子の具体例としては、デフェロキサミン、毎日の非経口投与が必要な細菌起源の六座作用因子、ならびに経口的に活性な合成作用因子デフェリプロン(二座)およびデフェラシロクス(三座)が挙げられる。2つの鉄キレート化剤の同日投与からなる併用療法は、キレート化単独療法に対して不応答性の患者において有望であり、デフェロキサミン(dereroxamine)単独で用いる場合の患者のコンプライアンスが不十分であるという問題を克服することにおいても有望であることを示している[Caoら(2011年)Pediatr Rep、3巻(2号):e17頁;およびGalanelloら(2010年)Ann NY Acad Sci、1202巻:79〜86頁]。
本開示の1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストを、特に低用量範囲のEPO受容体活性化因子と組み合わせて使用して、赤血球の増加を達成することができる。このことは、高用量のEPO受容体活性化因子に伴う既知のオフターゲットの効果およびリスクを低減することにおいて有益であり得る。ESAの主要な有害作用としては、例えば、ヘマトクリットまたはヘモグロビンレベルの過剰な増加および赤血球増加症が挙げられる。ヘマトクリットレベルの上昇により、高血圧(より詳細には高血圧の増悪)が生じる可能性がある。そのうちの一部が高血圧に関する、報告されているESAの他の有害作用は、血栓症、高血圧性脳障害、および赤血球形成不全に起因する頭痛、インフルエンザ様症候群、シャントの閉塞、心筋梗塞および脳痙攣である。例えば、Singibarti(1994年)J. Clin Investig、72巻(補遺6)、S36〜S43頁;Horlら(2000年)Nephrol Dial Transplant、15巻(補遺4)、51〜56頁;Delantyら(1997年)Neurology、49巻、686〜689頁;およびBunn(2002年)N Engl J Med、346巻(7号)、522〜523頁)を参照されたい。ある特定の実施形態では、本開示は、患者に治療有効量の1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストおよびEPO受容体活性化因子を投与することによって、骨髄線維症患者における貧血を処置または予防する方法を提供する。ある特定の実施形態では、本開示のActRIIBアンタゴニストをEPO受容体活性化因子と組み合わせて使用して、ESAの有害作用を受けやすい患者におけるこれらの活性化因子の必要な用量を低減することができる。これらの方法は、患者の治療的および予防的処置のために使用することができる。
本開示のActRIIBアンタゴニストはESAとは異なる機構によって作用するとすれば、これらのアンタゴニストは、ESAまたは他のEPO受容体活性化因子に十分に応答しない患者における赤血球およびヘモグロビンレベルを増加させるために有用であり得る。例えば、本開示のActRIIBアンタゴニストは、通常〜増加させた(>300IU/kg/週)用量のESAを投与することではヘモグロビンレベルが標的レベルまで増加しない患者に有益であり得る。ESAに対する不十分な応答は、構成的なもの(ESAを用いた最初の処置時に観察される)または獲得されたもの(ESAを用いて繰り返し処置すると観察される)のいずれかであり得る。
細胞減少剤は、症候性の脾腫を有する大多数の患者に選択される処置であった。ヒドロキシカルバミド(ヒドロキシウレア、HC)が最も一般的に使用される細胞減少剤であり、通常、高用量で中程度の応答が生じる。しかし、HCは、多くの場合、血球減少症を増悪させる可能性があり、したがって、多くの場合、耐容性が良好でない。HCで処置された患者の35%までで脾臓サイズの25%〜50%の縮小が報告されている[Martinez-Trillosら(2010年)Ann Hematol. 89巻(12号):1233〜1237頁]。HCに応答しない患者では、ブスルファンまたはメルファランを、これらの作用因子により白血病転換の頻度が増大し得る証拠があるので、特に高齢の患者において使用することができる。低用量サリドマイドを用いた脾臓応答は低い(<20%)。しかし、レナリドミドでは、以前のサリドマイド療法が失敗した何名かの患者が含まれた試験において、33%奏効率がもたらされることが示されている。広範囲の不応性脾腫の場合には、毎月の静脈内クラドリビン過程により、50%までの応答がもたらされ、主要な毒性として重症であるが可逆的な血球減少症が伴った[Faoroら(2005年)Eur J Haematol、74巻(2号):117〜120頁]。ルクソリチニブは、最近の研究においてHCよりも優れていることが証明され、したがって、症候性または進行性脾腫を制御するための第一選択の作用因子になりつつある。残念ながら、ルクソリチニブの一般的な副作用は、骨髄線維症患者における貧血の発生または悪化である。したがって、JAK阻害剤は脾腫を処置するために有用であり得るが、JAK阻害剤により、骨髄線維症の他の合併症、特に、貧血および貧血に関連する障害が実際に悪化する可能性がある。
JAK2阻害に加えて、免疫調節薬(例えば、ポマリドミド)、mTOR経路の哺乳動物標的の阻害剤(例えば、ラパマイシン、シロリムス、デフォロリムス、エベロリムス、テムシロリムス、NVP−BEZ235、BGT226、SF1126、PK1−587、INK128、AZD8055、およびAZD2014)、ならびにエピジェネティック因子モジュレーター(例えば、ギビノスタット(ITF2357)、パノビノスタット(LBH589)およびプラシノスタットなどのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤)を含めたいくつかの他の処置戦略が、骨髄増殖性障害の処置に関して調査中である[Mascarenhasら(2013年)Haematologica 98巻(10号):1499〜1509頁]。
本開示は、本明細書に記載される患者の処置における、ActRIIBアンタゴニストの、1つまたは複数の他の治療モダリティと組み合わせた使用をさらに企図する。例えば、ActRIIBアンタゴニストを、細胞毒、免疫抑制剤、放射性毒性薬剤、および/または治療用抗体と組み合わせて投与することができる。本発明により企図される特定の共治療薬としては、これらに限定されないが、ステロイド(例えば、プレドニゾンなどのコルチコステロイド)、免疫抑制剤および/または抗炎症剤(例えば、ガンマ−インターフェロン、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ペニシラミン、シクロスポリン、コルヒチン、抗胸腺細胞グロブリン、ミコフェノール酸モフェチル、およびヒドロキシクロロキン)、細胞傷害性薬物、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン)、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE)阻害剤、パラアミノ安息香酸(PABA)、ジメチルスルホキシド、形質転換増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、インターロイキン−5(IL−5)阻害剤、および汎カスパーゼ阻害剤が挙げられる。ActRIIBアンタゴニストと組み合わせて使用することができる追加の作用因子としては、これらに限定されないが、レクチン(例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,026,283号に記載されている)、ならびにWynnら(2007年、J Clin Invest、117巻:524〜529頁)に記載されている抗線維化剤が挙げられる。例えば、追加の抗線維化剤および療法としては、これらに限定されないが、種々の抗炎症/免疫抑制/細胞傷害性薬(コルヒチン、アザチオプリン、シクロホスファミド、プレドニゾン、サリドマイド、ペントキシフィリンおよびテオフィリンを含む)、TGFβシグナル伝達修飾因子(レラキシン、SMAD7、HGF、およびBMP7、ならびにTGFβ1、TβRI、TβRII、EGR−I、およびCTGF阻害剤を含む)、サイトカインおよびサイトカイン受容体アンタゴニスト(IL−1β、IL−5、IL−6、IL−13、IL−21、IL−4R、IL−13Rα1、GM−CSF、TNF−α、オンコスタチンM、WISP−I、およびPDGFの阻害剤)、サイトカインおよびケモカイン(IFN−γ、IFN−α/β、IL−12、IL−10、HGF、CXCL10、およびCXCL11)、ケモカインアンタゴニスト(CXCL1、CXCL2、CXCL12、CCL2、CCL3、CCL6、CCL17、およびCCL18の阻害剤)、ケモカイン受容体アンタゴニスト(CCR2、CCR3、CCR5、CCR7、CXCR2、およびCXCR4の阻害剤)、TLRアンタゴニスト(TLR3、TLR4、およびTLR9の阻害剤)、血管新生アンタゴニスト(VEGF特異的抗体およびアデノシンデアミナーゼ補充療法)、降圧薬(ベータ遮断薬ならびにANG11、ACE、およびアルドステロンの阻害剤)、血管作動性物質(ET−1受容体アンタゴニストおよびボセンタン(bosetan))、コラーゲンを合成および加工する酵素の阻害剤(プロリルヒドロキシラーゼの阻害剤)、B細胞アンタゴニスト(リツキシマブ)、インテグリン/接着分子アンタゴニスト(α1β1およびαvβ6インテグリンを遮断する分子、ならびにインテグリン連結キナーゼの阻害剤、ならびにICAM−IおよびVCAM−Iに特異的な抗体)、筋線維芽細胞を標的とするアポトーシス促進薬、MMP阻害剤(MMP2、MMP9、およびMMP12の阻害剤)、ならびにTIMP阻害剤(TIMP−1に特異的な抗体)が挙げられる。
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIBアンタゴニストを、それを必要とする患者を処置するために単独で使用することができる。あるいは、ActRIIBアンタゴニストを、例えば、外科手術(例えば、脾摘出術)、細胞傷害性薬剤、放射性物質の照射または投与を伴う放射線学的処置、化学療法剤、抗ホルモン剤、成長阻害剤、抗新生物組成物、および本明細書において列挙されており、当技術分野で公知の抗がん剤を用いた処置、またはこれらの組み合わせを含めた、本明細書に記載される増殖性障害の処置または予防を対象とする従来の治療的アプローチと組み合わせて使用することができる。
一般に、細胞傷害性薬剤とは、細胞の機能を阻害するもしくは妨げるおよび/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32およびLuの放射性同位元素)、化学療法剤、例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン(adriamicin)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他の挿入剤、酵素およびそのフラグメント、例えば、核酸分解酵素など、抗生物質、ならびに毒素、例えば、それらのフラグメントおよび/または改変体を含めた、細菌、真菌、植物または動物起源の小分子毒素または酵素的に活性な毒素など、ならびに、以下に開示される種々の抗腫瘍剤または抗がん剤を含むことが意図される。他の細胞傷害性薬剤を下に記載する。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
一般に、化学療法剤は、がんの処置において有用な化学化合物である。化学療法剤の例としては、チオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドなどのアルキル化剤; ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、およびウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチルオロメラミンを含めたエチレンイミンおよびメチルアメラミン;アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ−ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体であるトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標)を含む)、アセチルカンプトテシン、スコポレチン(scopolectin)、および9−アミノカンプトテシン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体であるKW−2189およびCBI−TMIを含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン(ranimnustine)などのニトロソ尿素;エンジイン抗生物質(例えば、カリチアマイシン、特に、カリチアマイシンガンマ1lおよびカリチアマイシンオメガ1l(例えば、Agnew、Chem Intl. Ed. Engl.、33巻:183〜186頁、(1994年)を参照されたい)などの抗生物質;ジネミシンAを含めたジネミシン;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)などの代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤(anti−adrenal);フォリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デメコルチン;ジアジクオン;エフロルニチン(elfornithine);エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;マイタンシンおよびアンサマイトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラクリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T−2毒素、ベラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、ABRAXANE(商標)クレモホールを含まない、アルブミン操作されたパクリタキセルのナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Illinois)、およびTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(doxetaxel)(Rhone−Poulenc Rorer、Antony、France);クロラムブシル;ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボリン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMYELOFIBROSIS O);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン(XELODA(登録商標));上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体;ならびに上記のうちの2つまたはそれより多くの組み合わせ、例えば、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの併用療法の略語)、ならびにFOLFOX(オキサリプラチン(ELOXATIN(商標))と5−FUおよびロイコボリンを組み合わせた処置レジメンの略語)などが挙げられる。
がんの成長を促進し得るホルモンの影響が調節、低減、遮断、または阻害されるように作用し、多くの場合、全身的、または全身の処置の形態である抗ホルモン剤もまた、がんの処置において有用な化学化合物である。抗ホルモン剤は、ホルモン自体であり得る。例としては、例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY1 17018、オナプリストン、およびFARESTON(登録商標)トレミフェンを含めた抗エストロゲン剤および選択的なエストロゲン受容体モジュレーター(SERM);抗プロゲステロン剤;エストロゲン受容体下方調節因子(ERD);卵巣が抑制されるまたは機能停止するように機能する作用因子、例えば、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えば、LUPRON(登録商標)およびELIGARD(登録商標)酢酸リュープロリド、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリンおよびトリプトレリン(tripterelin);他の抗アンドロゲン薬、例えば、フルタミド、ニルタミドおよびビカルタミドなど;ならびに、副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、RIVIS OR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、およびARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールが挙げられる。さらに、化学療法剤のこのような定義は、ビスホスホネート、例えば、クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、DIDROC AL(登録商標)エチドロネート、NE−58095、ZOMET A(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロネート、SKELID(登録商標)チルドロネート、またはACTONEL(登録商標)リセドロネートなど;ならびにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、迷走性細胞増殖に関係付けられるシグナル伝達経路内の遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC−アルファ、Raf、H−Ras、および上皮増殖因子受容体(EGF−R)など;ワクチン、例えば、THERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチンなど;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;トシル酸ラパチニブ(ErbB−2およびGW572016としても公知のEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体を含む。
成長阻害剤とは、一般に、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞の成長を阻害する化合物または組成物を指す。したがって、成長阻害剤は、S期の細胞の百分率を有意に低下させるものであり得る。成長阻害剤の例としては、細胞周期の進行を(S期以外の場所で)遮断する作用因子、例えば、G1での静止およびM期での静止を誘導する作用因子などが挙げられる。古典的なM期遮断薬として、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、ならびに、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤が挙げられる。G1を静止する作用因子はS期静止にも広がり、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、およびara−CなどのDNAアルキル化剤である。さらなる情報は、The Molecular Basis of Cancer、MendelsohnおよびIsrael編、第1章、表題「Cell cycle regulation, oncogenes,and antineoplastic drugs」、Murakamiら(WB Saunders:Philadelphia、1995年)、特に、13頁に見出すことができる。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、どちらもイチイに由来する抗がん薬である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone−Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセルおよびドセタキセルは、チューブリン二量体からの微小管の集合を促進し、また、解重合を防止することによって微小管を安定化し、その結果、細胞における有糸分裂が阻害される。
ActRIIBアンタゴニストおよび追加の活性作用因子(例えば、共治療剤)は、同じ製剤として投与することもでき、別々に投与することもできる。別々の投与の場合では、ActRIIBアンタゴニストを追加の活性作用因子の前に、これらの後に、またはこれらと共時的に投与することができる。1つの作用因子が他の作用因子の投与に数分から数週間までにわたる間隔で先行するまたはその後に続くことができる。2つまたはそれより多くの異なる種類の治療剤を別々に対象に適用する実施形態では、一般に、これらの異なる種類の作用因子がなお標的組織または細胞に対する組み合わせ効果を有利に発揮することができるように、各送達時間の間に著しい期間が過ぎないことを確実にする。
ある特定の実施形態では、本開示は、本開示の1つまたは複数のActRIIBアンタゴニスト作用因子を用いて処置されているか、または処置される候補の患者を、その患者における1つまたは複数の血液学的パラメータを測定することによって管理するための方法を提供する。血液学的パラメータは、本開示のアンタゴニストを用いて処置される候補である患者への適切な投薬を評価するため、処置中の血液学的パラメータをモニタリングするため、本開示の1つもしくは複数のアンタゴニストを用いた処置中に投与量を調整するかどうかを評価するため、および/または、本開示の1つもしくは複数のアンタゴニストの適切な維持用量を評価するために使用することができる。血液学的パラメータのうちの1つまたは複数が正常なレベルから外れた場合、1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストの投薬を低減する、遅らせる、または終結させることができる。
本明細書に提示される方法に従って測定することができる血液学的パラメータとしては、例えば、赤血球レベル、血圧、鉄貯蔵、および、当技術分野において認められている方法を使用して赤血球レベルの増加と相関する体液中に見出される他の作用因子が挙げられる。このようなパラメータは、患者由来の血液試料を使用して決定することができる。赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、および/またはヘマトクリットレベルの増加により、血圧の増加が引き起こされる可能性がある。
一実施形態では、1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストを用いて処置される候補である患者において1つまたは複数の血液学的パラメータが正常範囲を外れているかまたは正常の高値側である場合には、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投与の開始を、血液学的パラメータが自然にまたは治療介入によって正常または許容されるレベルに戻るまで遅らせることができる。例えば、候補患者が高血圧または前高血圧である場合には、患者の血圧を低下させるために、患者を、血圧降下剤を用いて処置することができる。例えば、利尿薬、アドレナリン作用阻害剤(アルファ遮断薬およびベータ遮断薬を含む)、血管拡張薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、またはアンジオテンシンII受容体遮断薬を含め、個々の患者の状態に適した任意の血圧降下剤を使用することができる。あるいは、食事および運動レジメンを使用して血圧を処置することができる。同様に、候補患者の鉄貯蔵が正常よりも低いか、または正常の低値側にある場合には、患者の鉄貯蔵が正常または許容されるレベルに戻るまで、患者を、食事および/または鉄補給剤の適切なレジメンを用いて処置することができる。赤血球レベルおよび/またはヘモグロビンレベルが正常よりも高い患者に関しては、レベルが正常または許容されるレベルに戻るまで、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投与を遅らせることができる。
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストを用いて処置される候補である患者において1つまたは複数の血液学的パラメータが正常範囲を外れているかまたは正常の高値側にある場合、投与の開始を遅らせなくてもよい。しかし、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投与量または投薬の頻度を、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを投与すると生じる血液学的パラメータの許容されない増加のリスクが低減される量に設定することができる。あるいは、患者に対して、1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストと望ましくないレベルの血液学的パラメータに対処する治療剤とを組み合わせた治療レジメンを開発することができる。例えば、患者の血圧が上昇している場合には、1つまたは複数のActRIIBアンタゴニスト作用因子および血圧降下剤の投与を伴う治療レジメンを設計することができる。鉄貯蔵が望ましいものよりも低い患者に関しては、本開示の1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストおよび鉄補給を伴う治療レジメンを開発することができる。
一実施形態では、1つまたは複数の血液学的パラメータのベースラインパラメータ(複数可)を、本開示の1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストを用いて処置される候補である患者に対して確立することができ、ベースライン値(複数可)に基づいて、その患者に対する適切な投薬レジメンを確立することができる。あるいは、患者の病歴に基づいて確立されたベースラインパラメータを使用して、患者に対する適切なアンタゴニスト投薬レジメンを通知することができる。例えば、健康な患者が、定義された正常範囲を超えている確立されたベースライン血圧読み取りを有する場合、患者の血圧を、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた処置前に、一般集団に関して正常であると考えられる範囲内にする必要がない場合がある。本開示の1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストを用いた処置前の患者の1つまたは複数の血液学的パラメータのベースライン値も、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた処置中の血液学的パラメータのあらゆる変化をモニタリングするための関連する比較値として使用することができる。
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストを用いて処置されている患者において1つまたは複数の血液学的パラメータを測定する。血液学的パラメータを使用して、患者を処置中モニタリングし、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬または別の治療剤を用いた追加の投薬の調整または終結を可能にすることができる。例えば、1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストの投与により、血圧、赤血球レベル、もしくはヘモグロビンレベルの増加、または鉄貯蔵の低減が生じる場合には、1つまたは複数の血液学的パラメータに対する本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの影響を低下させるために、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの用量は、その量または頻度を減少させることができる。1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストの投与により、患者に対して有害な1つまたは複数の血液学的パラメータの変化が生じる場合には、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投薬を、血液学的パラメータ(複数可)が許容されるレベルに戻るまで一時的に終結させるか、または恒久的に終結させることができる。同様に、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投与の用量または頻度を減少させた後に1つまたは複数の血液学的パラメータが許容される範囲内に入らない場合には、投薬を終結させることができる。本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬を減少または終結させる代わりに、またはそれに加えて、患者に、例えば血圧降下剤または鉄補給剤などの、望ましくないレベルの血液学的パラメータ(複数可)に対処する追加の治療剤を投薬することができる。例えば、1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストを用いて処置されている患者の血圧が上昇した場合には、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬を同じレベルで継続することができ、かつ処置レジメンに血圧降下剤を追加するか、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬(例えば、量および/または頻度)を減少させることができ、かつ処置レジメンに血圧降下剤を添加するか、または本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬を終結させ、患者を、血圧降下剤を用いて処置することができる。
本明細書で使用される場合、「〜と組み合わせて」、「〜の組み合わせ」、または「併用」投与とは、追加的治療(例えば、第2、第3、第4など)が、体内でなおも効果的である(例えば、複数の化合物は、患者において同時に効果的であり、これは、これらの化合物の相乗効果を含み得る)ような、任意の投与形態を指す。有効性は、血中、血清中、または血漿中の作用因子の測定可能な濃度と相関しない場合がある。例えば、異なる治療用化合物を、同じ製剤として投与することもでき、別々の製剤として、共時的または逐次的に投与することもでき、異なるスケジュールで投与することもできる。したがって、このような処置を施される個体は、異なる治療の組み合わせ効果による利益を得ることができる。本開示の1つまたは複数のActRIIBアンタゴニスト、またはこのようなポリペプチドの組み合わせは、1つまたは複数の他の追加の作用因子または支持療法と共時的に、これらの前に、またはこれらの後に投与され得る。一般に、各治療剤は、その特定の作用因子について決定された用量および/または時間スケジュールで投与される。レジメンにおいて使用する特定の組み合わせは、本開示のアンタゴニストの、治療および/または所望のその適合性を考慮に入れる。
5.医薬組成物
本明細書に記載される治療剤(例えば、ActRIIBアンタゴニスト)は、医薬組成物に製剤化することができる。本開示に従って使用するための医薬組成物は、1つまたは複数の生理的に許容されるキャリアまたは賦形剤を使用し、従来の様式で製剤化することができる。このような製剤は、一般に、大多数の規制要件に従って、実質的に発熱物質非含有である。
ある特定の実施形態では、本開示の治療方法は、組成物を全身的にまたは局所的に移植片またはデバイスとして投与することを含む。投与される際、本開示において使用するための治療用組成物は、発熱物質非含有、生理的に許容される形態である。任意選択で上記の組成物に同様に含めることができるActRIIBシグナル伝達アンタゴニスト以外の治療的に有用な作用因子は、本明細書で開示された方法において、対象の化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)と同時にまたは逐次的に投与することができる。
典型的には、本明細書で開示されたタンパク質治療剤は、非経口的に、具体的には、静脈内にまたは皮下に投与される。非経口投与に適した医薬組成物は、1つまたは複数のActRIIBアンタゴニストを、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、製剤に意図されたレシピエントの血液との等張性を与える溶質または懸濁化もしくは増粘剤を含有し得る1つまたは複数の薬学的に許容される滅菌の等張性の水溶液または非水性溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルション、または使用する直前に滅菌の注射可能な溶液もしくは分散に再構成することができる滅菌粉末と組み合わせて含み得る。本開示の医薬組成物に使用することができる適切な水性および非水性キャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。妥当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料を使用することによって、分散の場合では必要な粒子サイズを維持することによって、および界面活性物質を使用することによって維持することができる。
組成物および製剤は、所望であれば、活性成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有し得る包装またはディスペンサーデバイスとして提示することができる。包装は、例えば、金属またはブリスター包装などのプラスチック箔を含み得る。包装またはディスペンサーデバイスに投与の指示を付随させることができる。
さらに、組成物は、標的組織部位に送達するための形態で封入または注射することができる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、1つまたは複数の治療用化合物(例えば、ActRIIBポリペプチド)を標的組織部位に送達し得、成長中の組織のための構造を提供し得、最適には体内に再吸収され得るマトリックスを含み得る。例えば、マトリックスは、ActRIIBアンタゴニストのゆっくりとした放出をもたらすことができる。このようなマトリックスは、他の埋め込み型医学的適用に現在使用されている材料で形成することができる。
マトリックス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、美容的外観および界面特性に基づく。対象の組成物の特定の適用により、適切な製剤が規定される。組成物のための潜在的なマトリックスは、生分解性であり、かつ既知組成の硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ酸無水物であり得る。他の潜在的な材料は、例えば、骨または皮膚のコラーゲンなどの、生分解性であり、かつ生物学的に明確に定義されているものである。別のマトリックスは、純粋なタンパク質または細胞外マトリックス構成成分で構成される。他の潜在的なマトリックスは、例えば、焼結したヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸塩、または他のセラミックスなどの、非生分解性であり、化学的に定義されるものである。マトリックスは、例えば、ポリ乳酸およびヒドロキシアパタイトまたはコラーゲンおよびリン酸三カルシウムなど、上記のタイプの材料のいずれかの組み合わせで構成され得る。バイオセラミックスの組成を、例えば、カルシウム−アルミン酸塩−リン酸塩などに変更し、孔径、粒子サイズ、粒子の形状、および生分解性が変更されるように加工することができる。
ある特定の実施形態では、本発明の方法を、経口的に、例えば、それぞれが所定量の作用因子を活性成分として含有する、カプセル剤、カシェ剤、ピル、錠剤、ロゼンジ(風味を付けた基剤、通常はショ糖およびアラビアゴムまたはトラガントを使用する)、粉末、顆粒剤の形態で、または水性もしくは非水性液中溶液もしくは懸濁液として、または水中油もしくは油中水エマルション液として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、またはパステル剤(不活性な基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアラビアゴムなどを使用する)ならびに/または口内洗浄剤などとして投与することができる。作用因子は、ボーラス、舐剤またはペースト剤として投与することもできる。
経口投与用の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖剤、粉末、顆粒剤など)では、本発明の1つまたは複数の治療用化合物を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1つもしくは複数の薬学的に許容されるキャリア、および/または以下のいずれかと混合することができる:(1)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸など;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアラビアゴムなど;(3)湿潤剤、例えば、グリセロールなど;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなど;(5)溶解遅延剤、例えば、パラフィンなど;(6)吸収促進剤、例えば、四級アンモニウム化合物など;(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど;(8)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土など;(9)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物など;ならびに(10)着色料。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合では、医薬組成物は、緩衝剤も含み得る。同種の固体組成物を、例えばラクトースまたは乳糖などの賦形剤、ならびに高分子量のポリエチレングリコールなどを使用する軟充填ゼラチンカプセルおよび硬充填ゼラチンカプセル中の増量剤として使用することもできる。
経口投与用の液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。液体剤形は、活性成分に加えて、当技術分野で一般に使用される不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒など、可溶化剤および乳化剤(emulsifier)、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(具体的には、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などを含有し得る。経口用組成物は、不活性な希釈剤に加えて、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色料、香料、ならびに防腐剤などのアジュバントも含み得る。
懸濁液は、活性化合物に加えて、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガント、ならびにそれらの混合物などの懸濁化剤も含有し得る。
本発明の組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤(emulsifying agent)および分散剤などのアジュバントも含有し得る。微生物による作用の防止は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって確実にすることができる。例えば、糖、塩化ナトリウムなどの等張化剤も組成物に含めることが望ましい場合がある。さらに、吸収を遅延させる作用因子、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどを含めることにより、注射可能な医薬形態の持続的な吸収をもたらすことができる。
投与量レジメンは、主治医により、本発明の対象の化合物(例えば、TβRIIポリペプチド)の作用を改変する様々な因子を考慮して決定されることが理解される。様々な因子としては、これらに限定されないが、患者の年齢、性別、および食事、疾患の重症度、投与時間、および他の臨床的因子が挙げられる。任意選択で、再構成に使用するマトリックスのタイプおよび組成物中の化合物のタイプに応じて投与量を変動させることができる。他の公知の増殖因子を最終的な組成物に添加することも、投与量に影響を及ぼし得る。進行は、骨の成長および/または修復の周期的な評価、例えば、X線(DEXAを含む)、組織形態計測的決定、およびテトラサイクリン標識によってモニタリングすることができる。
ある特定の実施形態では、本発明は、ActRIIBアンタゴニストをインビボで産生させるための遺伝子療法も提供する。このような療法は、ActRIIBポリヌクレオチド配列を上で列挙した障害を有する細胞または組織内に導入することによってその治療効果を達成する。ActRIIBポリヌクレオチド配列の送達は、キメラウイルスまたはコロイド分散系などの組換え発現ベクターを使用して達成することができる。ActRIIBポリヌクレオチド配列の治療的送達には、標的化リポソームの使用が好ましい。
本明細書で教示した遺伝子療法に利用することができる様々なウイルスベクターとしては、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、または、好ましくはレトロウイルスなどのRNAウイルスが挙げられる。レトロウイルスベクターはマウスまたはトリレトロウイルスの誘導体であることが好ましい。単一の外来遺伝子を挿入することができるレトロウイルスベクターの例としては、これらに限定されないが、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられる。いくつかの追加のレトロウイルスベクターに多数の遺伝子を組み入れることができる。これらのベクターは全て、遺伝子を選択マーカーとして移行するまたは組み入れることができ、したがって、形質導入された細胞を同定し、生成することができる。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質、またはタンパク質を付着させることによって標的特異的にすることができる。好ましい標的化は、抗体を使用することによって達成される。ActRIIBポリヌクレオチドを含有するレトロウイルスベクターの標的特異的な送達を可能にするために、特異的なポリヌクレオチド配列をレトロウイルスゲノムに挿入することまたはウイルス外被に付着させることができることを当業者は認識する。好ましい実施形態では、ベクターは、骨または軟骨を標的化する。
あるいは、組織培養細胞にレトロウイルスの構造遺伝子であるgag、polおよびenvをコードするプラスミドを従来のリン酸カルシウムトランスフェクションによって直接トランスフェクトすることができる。次いで、これらの細胞に目的の遺伝子を含有するベクタープラスミドをトランスフェクトする。得られる細胞は、レトロウイルスベクターを培養培地中に放出する。
ActRIIBアンタゴニストポリヌクレオチドの別の標的化送達系は、コロイド分散系である。コロイド分散系としては、巨大分子の複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油エマルション、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含めた脂質に基づく系が挙げられる。本発明の好ましいコロイド系は、リポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボにおいて送達ビヒクルとして有用な人工的な膜小胞である。RNA、DNAおよびインタクトなビリオンを水性の内部に被包することができ、生物学的に活性な形態で細胞に送達することができる(例えば、Fraleyら、Trends Biochem. Sci.、6巻:77頁、1981年を参照されたい)。リポソームビヒクルを使用して効率的に遺伝子移入するための方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Manninoら、Biotechniques、6巻:682頁、1988年を参照されたい。リポソームの組成物は、通常、リン脂質の組み合わせ、通常、ステロイド、特にコレステロールとの組み合わせである。他のリン脂質または他の脂質も使用することができる。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。
リポソームの作製において有用な脂質の例としては、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシドなどのホスファチジル化合物が挙げられる。例示的なリン脂質としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。リポソームの標的化は、例えば、臓器特異性、細胞特異性、および細胞小器官特異性に基づくことも可能であり、当技術分野で公知である。
本開示は、pH調整するために酸および塩基;ならびにpHを狭い範囲内に維持するために緩衝剤を含むように変動させることができる製剤を提供する。
本発明は、ここに概して記載されているが、ただ単に本発明のある特定の実施形態を例示するため含まれ、本発明を限定するものではない以下の実施例を参照することによってより容易に理解されよう。
(実施例1)
ActRIIB−Fc融合タンパク質の生成
出願人らは、最小限のリンカー(3つのグリシンアミノ酸)を間に有する、ヒトまたはマウスのFcドメインに融合されたヒトActRIIBの細胞外ドメインを有する可溶性ActRIIB融合タンパク質を構築した。構築物は、それぞれActRIIB−hFcおよびActRIIB−Fcと称される。
ActRIIB−hFcをCHO細胞株からの精製物として下記に示す(配列番号24):
ActRIIB−hFcおよびActRIIB−Fcタンパク質をCHO細胞株で発現させた。3つの異なるリーダー配列:(i)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号21)、ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号22)、および(iii)天然:MGAAAKLAFAVFLISCSSGA(配列番号23)について検討した。
選択された形態は、TPAリーダーを使用し、以下のプロセシングされていないアミノ酸配列(配列番号25)を有する。
このポリペプチドは、以下の核酸配列(配列番号26)によってコードされる。
CHO細胞により生成された材料の、N末端のシーケンシングにより、−GRGEAE(配列番号27)の主要な配列を明らかにした。とりわけ、文献において報告されている他の構築物は、−SGR・・・配列で始まる。
精製は、一連のカラムクロマトグラフィー工程であって、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ除外クロマトグラフィー、およびカチオン交換クロマトグラフィーの3つまたはこれ超を、任意の順序で含む工程により達成することができた。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換により完了させることができた。
ActRIIB−Fc融合タンパク質はまた、HEK293細胞内およびCOS細胞内でも発現された。全ての細胞株および妥当な培養条件に由来する材料は、インビボにおいて筋構築活性を有するタンパク質をもたらしたが、おそらく細胞株の選択および/または培養条件に関連する、効力の変動性も観察された。
本出願人らは、ActRIIBの細胞外ドメイン内に一連の変異を生成し、これらの変異体タンパク質を、細胞外ActRIIBとFcドメインとの間の可溶性融合タンパク質として生成した。バックグラウンドのActRIIB−Fc融合物は、配列番号24の配列を有する。
N末端およびC末端の切断を含む種々の変異を、バックグラウンドのActRIIB−Fcタンパク質に導入した。本明細書に提示したデータに基づくと、これらの構築物は、TPAリーダーとともに発現させる場合、N末端のセリンを欠くことが予想される。変異は、PCR変異誘発により、ActRIIB細胞外ドメイン内に生成した。PCRの後、フラグメントを、Qiagenカラムを介して精製し、SfoIおよびAgeIで消化し、ゲル精製した。ライゲーションすると、ヒトIgG1との融合物キメラを創出するように、これらのフラグメントを、発現ベクターであるpAID4(WO2006/012627を参照されたい)にライゲーションした。E.coli DH5アルファへと形質転換させたら、コロニーを採取し、DNAを単離した。マウス構築物(mFc)のために、マウスIgG2aで、ヒトIgG1を置換した。全ての変異体の配列を検証した。
変異体の全ては、HEK293T細胞内で、一過性のトランスフェクションにより生成した。まとめると、500mlのスピナー内で、HEK293T細胞を、容量250mlのFreestyle(Invitrogen)培地中に1ml当たりの細胞6×105個で設定し、一晩にわたり増殖させた。翌日、これらの細胞を、最終DNA濃度を0.5ug/mlとするDNA:PEI(1:1)複合体で処理した。4時間後、250mlの培地を添加し、細胞を、7日間にわたり増殖させた。細胞をスピンダウンすることにより馴化培地を採取し、濃縮した。
変異体を、例えば、プロテインAカラムを含む、様々な技法を使用して精製し、低pH(3.0)のグリシン緩衝液で溶出させた。中和の後、これらを、PBSに対して透析した。
変異体はまた、同様な方法により、CHO細胞内でも生成した。変異体を、参照により本明細書に組み込まれる、WO2008/097541およびWO2006/012627において記載されている、結合アッセイおよび/またはバイオアッセイにおいて調べた。一部の場合には、アッセイを、精製タンパク質ではなく、馴化培地について実施した。ActRIIBの追加のバリエーションについては、米国特許第7,842,663号において記載されている。
本出願人らは、N末端およびC末端短縮(天然タンパク質配列番号1の残基25〜131)を有し、N末端で天然ActRIIBリーダーを置換するTPAリーダー配列に、およびC末端で最小限のリンカー(3つのグリシン残基)を介してヒトFcドメインに融合された、ヒトActRIIB細胞外ドメインを含むActRIIB(25−131)−hFc融合タンパク質を生成した(図12)。この融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を図13に示す。本出願人らは、コドンを改変し、最初の形質転換体の発現レベルに実質的な改善を提供したActRIIB(25−131)−hFcタンパク質をコードする改変体核酸を見出した(図14)。
成熟タンパク質は、以下のアミノ酸配列を有する(N末端はN末端シーケンシングによって確認した)(配列番号28)。
アミノ酸1〜107はActRIIBに由来する。
発現分子は、一連のカラムクロマトグラフィー工程であって、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ除外クロマトグラフィー、およびカチオン交換クロマトグラフィーのうちの3つまたはこれより多くを、任意の順序で含む工程を使用して精製された。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換により完了し得る。
ActRIIB(25−131)−hFcおよびその全長対応物ActRIIB(20−134)−hFcに対するいくつかのリガンドに対するアフィニティーを、インビトロにおいて、Biacore(商標)装置により評価し、結果を、下記の表にまとめる。Kd値は、複合体の会合および解離が極めて急速であり、k
onおよびk
offの正確な決定が妨げられるために、定常状態アフィニティーの当てはめにより得た。ActRIIB(25−131)−hFcは、アクチビンA、アクチビンBおよびGDF11に高アフィニティーで結合した。
(実施例2)
GDFトラップの生成
本出願人らは、以下のようにGDFトラップを構築した。アクチビンAへの結合を、GDF11および/またはミオスタチンと比べて大幅に低減した(配列番号1内の79位における、ロイシンからアスパラギン酸への置換の帰結として)、改変ActRIIBの細胞外ドメイン(L79D置換を有する配列番号1のアミノ酸20〜134)を有するポリペプチドを、間に最小限のリンカー(3つのグリシンアミノ酸)を有する、ヒトFcドメインまたはマウスFcドメインに融合させた。構築物を、それぞれ、ActRIIB(L79D 20〜134)−hFcおよびActRIIB(L79D 20〜134)−Fcと呼ぶ。79位にアスパラギン酸ではなく、グルタミン酸を有する代替的形態についても、同様に実施した(L79E)。下記の配列番号44に照らした226位において、バリンではなく、アラニンを有する代替的形態もまた、生成し、調べる全ての点において、同等に実施した。79位におけるアスパラギン酸(配列番号1に照らした;または配列番号29に照らした60位)は、下記で二重下線により指し示す。配列番号29に照らした226位におけるバリンもまた、下記で二重下線により指し示す。
GDFトラップActRIIB(L79D 20−134)−hFcをCHO細胞株からの精製物として下記に示す(配列番号29)。
GDFトラップのActRIIBに由来する部分は、下記(配列番号30)に示されるアミノ酸配列を有し、この部分は、単量体として使用することもでき、単量体、二量体またはより高次の複合体としての非Fc融合タンパク質として使用することもできるであろう。
GDFトラップタンパク質をCHO細胞株で発現させた。3つの異なるリーダー配列:
(i)ミツバチメリチン(HBML)、(ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)、および(iii)天然について検討した。
選択された形態は、TPAリーダーを使用し、以下のプロセシングされていないアミノ酸配列を有する。
このポリペプチドは、以下の核酸配列(配列番号32)によってコードされる。
精製は、一連のカラムクロマトグラフィー工程であって、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ除外クロマトグラフィー、およびカチオン交換クロマトグラフィーの3つまたはこれ超を、任意の順序で含む工程により達成することができた。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換により完了させることができた。精製スキームの例では、細胞培養培地を、プロテインAカラムに通し、150mMのトリス/NaCl(pH8.0)中で洗浄し、次いで、50mMのトリス/NaCl(pH8.0)中で洗浄し、0.1Mのグリシン、pH3.0で溶出させる。低pHの溶出物は、ウイルス除去工程として、室温で30分間にわたり保持する。次いで、溶出物を中和させ、Qセファロースイオン交換カラムに通し、50mMのトリス、pH8.0、50mMのNaCl中で洗浄し、150mM〜300mMの間の濃度のNaClを伴う、50mMのトリス、pH8.0中で溶出させる。次いで、溶出物を、50mMのトリス、pH8.0、1.1Mの硫酸アンモニウムへと交換し、フェニルセファロースカラムに通し、洗浄し、150〜300mMの間で硫酸アンモニウムを伴う、50mMのトリス、pH8.0で溶出させる。使用のために、溶出物を透析し、濾過する。
追加のGDFトラップ(アクチビンAへの結合の、ミオスタチンまたはGDF11への結合と比べた比を低減するように改変されたActRIIB−Fc融合タンパク質)は、参照により本明細書に組み込まれる、WO2008/097541およびWO2006/012627において記載されている。
(実施例3)
GDF−11およびアクチビンに媒介されるシグナル伝達についてのバイオアッセイ
A−204レポーター遺伝子アッセイを使用して、ActRIIB−Fcタンパク質およびGDFトラップの、GDF−11およびアクチビンAによるシグナル伝達に対する効果を評価した。細胞株:ヒト横紋筋肉腫(筋肉に由来する)。レポーターベクター:pGL3(CAGA)12(Dennlerら、1998年、EMBO、17巻:3091〜3100頁において記載されている)。CAGA12モチーフは、TGFベータ応答性遺伝子(例えば、PAI−1遺伝子)内に存在するので、このベクターは、SMAD2およびSMAD3を介してシグナル伝達する因子のために一般的に使用される。
1日目:A−204細胞を、48ウェルプレートに分ける。
2日目:A−204細胞に、10ugのpGL3(CAGA)12またはpGL3(CAGA)12(10ug)+pRLCMV(1μg)およびFugeneをトランスフェクトする。
3日目:因子(培地+0.1%のBSA中に希釈された)を添加する。細胞に添加する前に、1時間にわたり、阻害剤を、因子と共に、あらかじめインキュベートする必要がある。6時間後、細胞を、PBSですすぎ、溶解させた。
これに続いて、ルシフェラーゼアッセイを行う。いかなる阻害剤も存在しない下で、アクチビンAは、レポーター遺伝子発現に対する10倍の刺激およびED50約2ng/mlを示した。GDF−11:16倍の刺激、ED50:約1.5ng/mlを示した。
このアッセイでは、ActRIIB(20〜134)は、アクチビンA、GDF−8、およびGDF−11の活性の強力な阻害剤である。下記で記載される、ActRIIB改変体もまた、このアッセイで調べた。
(実施例4)
ActRIIB−Fc改変体の細胞ベースの活性
ActRIIB−Fcタンパク質およびGDFトラップの活性を、上記で記載した細胞ベースのアッセイで調べた。結果を、下記の表にまとめる。一部の改変体を、異なるC末端切断構築物で調べた。上記で論じた通り、5または15アミノ酸の切断は、活性の低減を引き起こした。GDFトラップ(L79D改変体およびL79E改変体)は、GDF−11の野生型阻害をほとんど保持しながら、アクチビンA阻害の実質的な喪失を示した。
いくつかの改変体を、ラットにおける血清中半減期について評価した。ActRIIB(20−134)−Fcは、およそ70時間の血清中半減期を有する。ActRIIB(A24N 20−134)−Fcは、およそ100〜150時間の血清中半減期を有する。上記で試験した改変体はいずれもGDFトラップ分子と組み合わせることができる。
(実施例5)
GDF−11およびアクチビンAへの結合
ある特定のActRIIB−Fcタンパク質およびGDFトラップの、リガンドへの結合について、Biacore(商標)アッセイで調べた。
ActRIIB−Fc改変体または野生型タンパク質を、抗hFc抗体を使用するシステム上に捕捉した。リガンドを注入し、捕捉された受容体タンパク質上に流した。結果を、下記の表にまとめる。
無細胞アッセイにおいて得られたこれらのデータにより、細胞ベースのアッセイによるデータが確認され、A24N改変体は、ActRIIB(20〜134)−hFc分子のリガンド結合活性と同様なリガンド結合活性を保持し、L79D分子またはL79E分子は、ミオスタチンおよびGDF11への結合を保持するが、アクチビンAへの結合の顕著な減殺(定量化不可能な結合)を示すことが実証される。
他の改変体も、WO2006/012627(参照によりその全体において本明細書に組み込まれる)で報告される通りに生成され、調べられている。例えば、デバイスにカップリングさせたリガンドを使用し、カップリングさせたリガンド上に受容体を流す、59〜60頁を参照されたい。とりわけ、K74Y、K74F、K74I(および、おそらく、K74Lなど、K74における他の疎水性置換)およびD80Iは、アクチビンA(ActA)への結合の、GDF11への結合に対する比の、野生型K74分子と比べた減少を引き起こす。これらの改変体に関するデータの表を、下記に再掲載する。
(実施例6)
短縮型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDFトラップの生成
ActRIIB(L79D 20−134)−hFcと称されるGDFトラップを、N末端における、TPAリーダーの、ロイシンからアスパラギン酸への置換(配列番号1の残基79における)を含有するActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1の残基20〜134)への融合と、C末端における、ヒトFcドメインの、最小限のリンカー(3つのグリシン残基)による融合とにより生成した(図3)。この融合タンパク質に対応するヌクレオチド配列を図4に示す。
ActRIIB(L79D 25〜131)−hFcと称される短縮型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDFトラップを、N末端における、TPAリーダーの、ロイシンからアスパラギン酸への置換(配列番号1の残基79における)を含有する短縮型細胞外ドメイン(配列番号1の残基25〜131)への融合と、C末端における、ヒトFcドメインの、最小限のリンカー(3つのグリシン残基)による融合とにより生成した(図5、配列番号50)。この融合タンパク質をコードする1つのヌクレオチド配列を図6(配列番号51)に示し、正確に同じ融合タンパク質をコードする代替ヌクレオチド配列を図9(配列番号55)に示す。
(実施例7)
二重短縮型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDFトラップによる選択的なリガンド結合
GDFトラップおよび他のActRIIB−hFcタンパク質のいくつかのリガンドに対するアフィニティーを、Biacore(商標)装置を用いてインビトロで評価した。結果を下記の表に要約する。Kd値は、複合体の会合および解離が極めて急速であり、それにより、k
onおよびk
offの正確な決定が妨げられたので、定常状態アフィニティーの当てはめにより得た。
短縮型細胞外ドメインを有するGDFトラップである、ActRIIB(L79D 25〜131)−hFcは、より長い改変体である、ActRIIB(L79D 20〜134)−hFcにより示されるリガンドへの選択性に匹敵するかまたはこれを凌駕し、アクチビンAへの結合の顕著な喪失、アクチビンBへの結合の部分的喪失、およびL79D置換を欠くActRIIB−hFc対応物と比較してほぼ完全なGDF11への結合の保持を伴った。短縮単独(L79D置換を有さない)では、本実施例で示されるリガンド間の選択性を変更しなかった[ActRIIB(L79 25〜131)−hFcを、ActRIIB(L79 20〜134)−hFcと比較する]ことに注目されたい。ActRIIB(L79D 25−131)−hFcもSmad2/3シグナル伝達リガンドGDF8ならびにSmad1/5/8リガンドBMP6およびBMP10への強いから中程度の結合を保持している。
(実施例8)
ActRIIB5由来GDFトラップ
他の研究者らも、ActRIIBの膜貫通ドメインを含むエクソン4が、異なるC末端配列により置きかえられた、ActRIIBの代替的な可溶性形態(ActRIIB5と表記される)について報告している(例えば、WO2007/053775を参照されたい)。
リーダーを含まない天然ヒトActRIIB5の配列は以下の通りである。
記載される通りに、ロイシンからアスパラギン酸への置換、または他の酸性置換を、天然の79位(下線を付す)に施して、以下の配列を有する、改変体ActRIIB5(L79D)を構築することができる。
この改変体を、TGGGリンカー(一重下線)により、ヒトFc(二重下線)に接続して、以下の配列を有するヒトActRIIB5(L79D)−hFc融合タンパク質を生成することができる。
この構築物はCHO細胞において発現され得る。
(実施例9)
JAK2V617F動物モデルにおけるGDFトラップの効果
ActRIIB(L79D 25−131)−Fcの骨髄線維症に対する効果を理解するために、トランスジェニックJAK2V617F変異体マウス[Xingら(2008年)Blood、111巻:5109〜5117頁に記載されているA株]を使用した。
骨髄線維症疾患の発症および進行を理解するために、種々の年齢のJAK2V617Fマウスにおける全血球計算値および線維症の程度を、対照動物(年齢適合野生型マウス)から得られたデータと比較した。全ての年齢のJAK2V617Fマウスにおいて野生型と比較して赤血球(RBC)および血小板レベルが上昇し、2〜5カ月齢の変異動物においてレベルが増加し、その後、8〜12カ月齢で進行性に低下する傾向があった。約5カ月齢からJAK2V617Fマウスの骨髄において線維症が検出可能であり、これは、年齢と共に悪化した。JAK2V617Fマウスはまた、約3〜4カ月齢で脾腫も示し、これも年齢と共に悪化した。
GDFトラップ試験のために、後期骨髄線維症に対応する12カ月齢時に処置を開始した。マウスを2つの群:i)JAK2V617Fマウスを、ActRIIB(L79D 25−131)−Fcを用い、10mg/kg、週2回の投薬スケジュールで処置する;およびii)JAK2V617Fマウスをビヒクル(TBS)で週2回処置する(すなわち、対照動物)のうちの1つに入れた。10週間後、ActRIIB(L79D 25−131)−Fcで処置した動物は、対照動物と比較して脾臓サイズの縮小(−12.5%)を示した。この知見と一致して、病理組織検査により、ActRIIB(L79D 25−131)−Fcで処置したマウスの脾臓での髄外造血が対照動物と比較して低下したことが明らかになった。病理組織検査により、ActRIIB(L79D 25−131)−Fcで処置したマウスにおける骨髄線維症(bone marrow fibrosis)が対照動物と比較して低下したことも示された。
したがって、GDFトラップを用いた処置は、このJAK2V617Fモデルにおける骨髄線維症の種々の合併症を改善することに関して、特に、脾腫、髄外造血、および線維症を低下することに関して、有効である。したがって、これらのデータは、骨髄線維症を処置するためにActRIIBアンタゴニストを使用することができることを示す。例えば、ActRIIBアンタゴニストは、例えば、脾腫の低下、髄外造血の低下、赤血球レベルの増加、および/または線維症(例えば、骨髄線維症(bone marrow fibrosis))の低下を含め、骨髄線維症の種々の合併症の処置において特に有用であり得る。
(実施例10)
ルクソリチニブで処置した動物におけるGDFトラップの効果
ルクソリチニブは、中間または高リスクの骨髄線維症の処置に関して承認されたヤヌスキナーゼ阻害剤である。具体的には、ルクソリチニブは、骨髄線維症患者における脾臓サイズの縮小および脾腫に伴う症状の改善において有意な効果を示す。しかし、ルクソリチニブを用いて処置された患者において、例えば、貧血を含めた種々の血液学的副作用が観察されている。ActRIIB(L79D 25−131)−Fcによる処置の、ルクソリチニブで処置したマウスにおける種々の血液学的パラメータに対する効果を理解するために、9カ月齢のC57BL/6マウスを使用した。
この試験のために、6〜7カ月齢で処置を開始した。マウスを4つの群:i)ActRIIB(L79D 25−131)−Fcを10mg/kg、週2回の投薬スケジュールで用いた処置;ii)ルクソリチニブを60mg/kg、1日2回の投薬スケジュールで用いた処置;iii)ActRIIB(L79D 25−131)−Fcを10mg/kg、週2回の投薬スケジュールで用い、ルクソリチニブを60mg/kg、1日2回の投薬スケジュールで用いた処置;およびiv)ビヒクル(TBS)を週2回用いた処置(すなわち、対照動物)のうちの1つに入れた。4週間の処置後、ActRIIB(L79D 25−131)−Fcマウスでは、対照(TBSで処置した)マウスと比較して、赤血球レベルの増加(約15%)およびヘモグロビンレベルの増加(約13%)が観察され、これにより、ActRIIB(L79D 25−131)−FcによりC57BL/6マウスにおける赤血球生成の活性が増大することが実証される。対照的に、ルクソリチニブによる処置により、対照動物と比較して、赤血球レベルの低下(約4%)およびヘモグロビンレベルの低下(約4%)がもたらされた。ActRIIB(L79D 25−131)−Fcとルクソリチニブの共同で処置したマウスは、対照動物と比較して、赤血球レベルの増加(約8%)およびヘモグロビンレベルの増加(約5%)を示した。
これらのデータは、ActRIIB(L79D 25−131)−Fcが、正常な健康なマウスにおいて、ルクソリチニブにより誘導される貧血を反転できることを実証する。したがって、データは、ActRIIBアンタゴニストが、例えば、1つまたは複数のヤヌスキナーゼ阻害剤を用いて処置されていたまたは処置を受けている骨髄線維症患者を含めた種々の患者集団において、ヤヌスキナーゼ阻害剤により誘導される貧血の緩和において有用であり得ることを示唆する。したがって、ActRIIBアンタゴニストは、例えば、1つまたは複数のヤヌスキナーゼ阻害剤を用いて処置されていたまたは処置を受けている骨髄線維症患者、特に、貧血を示す患者を含めた種々の患者集団を処置するために、ヤヌスキナーゼ阻害剤との併用療法の一部分として有用であり得る。
(参考としての援用)
本明細書中で言及される全ての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が、具体的かつ個別に参考として援用されると示されるかのように、その全体が本明細書に参考として援用される。
本主題の特定の実施形態が考察されてきたが、上記明細書は、例示的であり、限定的なものではない。本明細書および以下の特許請求の範囲を精査すれば、多くの変更が当業者に明らかとなる。本発明の完全な範囲は、その等価物の完全な範囲と共に特許請求の範囲を、そして、このような変更と共に明細書を参照することによって決定されるべきである。