(発明の詳細な説明)
(1.概要)
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーは、共通の配列エレメントと構造モチーフを共有する、種々の増殖因子を含む。これらのタンパク質は、脊椎動物および無脊椎動物の両方における広範な種々の細胞型に対して生物学的作用を発揮することが公知である。このスーパーファミリーのメンバーは、胚発生の間に、パターン形成および組織の特異化において重要な機能を果たし、そして、脂質生成、筋発生、軟骨形成、心臓発生、造血、神経発生および上皮細胞分化を含む種々の分化プロセスに影響を及ぼし得る。TGF-βファミリーのメンバーの活性を操作することによって、しばしば、生物において顕著な生理学的変化を引き起こすことが可能である。例えば、ウシのPiedmonteseおよびBelgian Blue品種は、GDF8(ミオスタチンとも呼ばれる)遺伝子に機能喪失変異を有しており、筋肉量の顕著な増加を引き起こしている[例えば、Grobetら(1997年)、Nat Genet.、17巻(1号):71~4頁を参照されたい]。さらに、ヒトでは、GDF8の不活性な対立遺伝子は、筋肉量の増加、および、報告によれば、例外的な強度と関連している[例えば、Schuelkeら(2004年)、N Engl J Med、350巻:2682~8頁を参照されたい]。
TGF-βシグナルは、I型およびII型のセリン/スレオニンキナーゼ受容体の異種複合体(heteromeric complex)によって媒介され、これらは、リガンド刺激の際に、下流のSmadタンパク質(例えば、Smadタンパク質1、2、3、5、および8)をリン酸化および活性化する[例えば、Massague、2000年、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.1巻:169~178頁を参照のこと]。これらのI型およびII型受容体は、システインリッチな領域を持つリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および、予測セリン/スレオニン特異性を持つ細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。I型受容体は、シグナル伝達に必須であり、そして、II型受容体は、リガンド結合およびI型受容体の発現に必要とされる。I型およびII型のアクチビン受容体は、リガンド結合後に安定な複合体を形成し、II型受容体によるI型受容体のリン酸化をもたらす。
アクチビンは、TGF-βスーパーファミリーに属する二量体ポリペプチド増殖因子である。3つの主なアクチビン形態(A、BおよびAB)が存在し、これらは、2つの密接に関連するβサブユニットのホモ二量体/ヘテロ二量体(それぞれ、βAβA、βBβBおよびβAβB)である。ヒトゲノムはまた、アクチビンCおよびアクチビンEもコードしているが、これらは、主として肝臓で発現されており、そして、βCもしくはβEを含むヘテロ二量体形態もまた公知である。
アクチビンについての2つの関連するII型受容体である、ActRIIA(ACVR2A遺伝子によりコードされる)およびActRIIB(ACVR2B遺伝子によりコードされる)が同定されている[例えば、MathewsおよびVale(1991年)、Cell、65巻:973~982頁;ならびにAttisanoら(1992年)、Cell、68巻:97~108頁を参照されたい]。ActRIIAおよびActRIIBは、アクチビンに加えて、例えば、BMP7、Nodal、GDF8、およびGDF11を含む他のいくつかのTGF-βファミリータンパク質とも生化学的に相互作用し得る[例えば、Yamashitaら(1995年)、J. Cell Biol.、130巻:217~226頁;LeeおよびMcPherron(2001年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、98巻:9306~9311頁;YeoおよびWhitman(2001年)、Mol. Cell、7巻:949~957頁;ならびにOhら(2002年)、Genes Dev.、16巻:2749~54頁を参照されたい]。アクチビン様キナーゼ4(ALK4)は、アクチビン、特に、アクチビンAに対する主たるI型受容体であり、ALK7は、同様に他のアクチビン、特に、アクチビンBに対する受容体として機能し得る。ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書で開示される1つまたは複数の作用因子、特に、GDF11および/またはアクチビンBに拮抗し得る作用因子で、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体のリガンド(ActRIIAリガンドまたはActRIIBリガンドとも呼ばれる)に拮抗することに関する。
本明細書で記載される場合、「アクチビンB」に結合する作用因子とは、単離βBサブユニットの文脈であれ、二量体複合体(例えば、βBβBホモ二量体またはβAβBヘテロ二量体)としてであれ、βBサブユニットに特異的に結合する作用因子である。ヘテロ二量体複合体(例えば、βAβBヘテロ二量体)の場合、「アクチビンB」に結合する作用因子は、βBサブユニット内に存在するエピトープには特異的であるが、複合体のβB以外のサブユニット(例えば、複合体のβAサブユニット)内に存在するエピトープには結合しない。同様に、本明細書で開示される作用因子であって、「アクチビンB」に拮抗(を阻害)する作用因子は、単離βBサブユニットの文脈であれ、二量体複合体(例えば、βBβBホモ二量体またはβAβBヘテロ二量体)としてであれ、βBサブユニットにより媒介される、1つまたは複数の活性を阻害する作用因子である。βAβBヘテロ二量体の場合、「アクチビンB」を阻害する作用因子は、βBサブユニットの1つまたは複数の活性は特異的に阻害するが、複合体のβB以外のサブユニット(例えば、複合体のβAサブユニット)の活性は阻害しない作用因子である。この原則はまた、「アクチビンA」、「アクチビンC」、および「アクチビンE」に結合し、かつ/またはこれらを阻害する作用因子にも当てはまる。
TGF-βスーパーファミリーにおいて、アクチビンは、卵巣および胎盤の細胞におけるホルモン生成を刺激し得、神経細胞の生存を支援し得、細胞周期の進行に対して細胞型に依存して正もしくは負に影響を及ぼし得、そして、少なくとも両生類の胚において中胚葉分化を誘導し得る、独特かつ多機能の作用因子である[DePaoloら(1991年)、Proc Soc Ep Biol Med.198巻:500~512頁;Dysonら(1997年)、Curr Biol.7巻:81~84頁;およびWoodruff(1998年)、Biochem Pharmacol.55巻:953~963頁]。さらに、刺激されたヒト単球性白血病細胞から単離された赤血球分化作用因子(EDF)は、アクチビンAと同一であることが分かった[Murataら(1988年)、PNAS、85巻:2434頁]。アクチビンAは、骨髄における赤血球生成を促進することが示唆されている。いくつかの組織では、アクチビンのシグナル伝達は、その関連するヘテロ二量体であるインヒビンによって拮抗される。例えば、下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出の間に、アクチビンは、FSHの分泌および合成を促進するが、インヒビンは、FSHの分泌および合成を抑制する。アクチビンの生活性を調節し得、そして/または、アクチビンに結合し得る他のタンパク質としては、フォリスタチン(FS)、フォリスタチン関連タンパク質(FSRP)およびα2-マクログロブリンが挙げられる。
増殖および分化因子8(GDF8)は、ミオスタチンとしても公知である。GDF8は、骨格筋量の負の調節因子である。GDF8は、発生中および成体中の骨格筋において高度に発現する。マウスにおけるGDF8遺伝子の欠失は、骨格筋の顕著な肥大および過形成を特徴とする[McPherronら、Nature(1997年)、387巻:83~90頁]。骨格筋量の同様の増加は、ウシ[例えば、Ashmoreら(1974年)、Growth、38巻:501~507頁;SwatlandおよびKieffer(1994年)、J. Anim. Sci.、38巻:752~757頁;McPherronおよびLee(1997年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、94巻:12457~12461頁;ならびにKambadurら(1997年)、Genome Res.、7巻:910~915頁を参照されたい]および、驚くべきことに、ヒト[例えば、Schuelkeら(2004年)、N Engl J Med、350巻:2682~8頁を参照されたい]におけるGDF8の自然発生変異において明らかである。研究は、ヒトにおけるHIV感染に関連する筋肉消耗には、GDF8タンパク質の発現の増加が随伴することも示している[例えば、Gonzalez-Cadavidら(1998年)、PNAS、95巻:14938~43頁を参照されたい]。加えて、GDF8は、筋肉特異的酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の生成を調節することが可能であり、筋芽細胞の増殖を調節し得る[例えば、国際特許出願公開第WO00/43781号を参照されたい]。GDF8プロペプチドは、成熟GDF8ドメイン二量体に非共有結合的に結合し、その生物活性を不活性化することができる[例えば、Miyazonoら(1988年)、J. Biol. Chem.、263巻:6407~6415頁;Wakefieldら(1988年)、J. Biol. Chem.、263巻:7646~7654頁;およびBrownら(1990年)、Growth Factors、3巻:35~43頁を参照されたい]。GDF8または構造的に関連するタンパク質に結合し、それらの生物活性を阻害する他のタンパク質として、フォリスタチン、および、潜在的に、フォリスタチン関連タンパク質が挙げられる[例えば、Gamerら(1999年)、Dev. Biol.、208巻:222~232頁を参照されたい]。
骨形態発生タンパク質11(BMP11)としても公知の増殖および分化因子11(GDF11)は、脊椎動物発生の調節因子として最初に同定された分泌タンパク質である[McPherronら(1999年)、Nat. Genet.、22巻:260~264頁]。GDF11は、マウス胚発生時に尾芽、肢芽、上顎弓および下顎弓、ならびに後根神経節において発現する[例えば、Nakashimaら(1999年)、Mech.
Dev.、80巻:185~189頁を参照されたい]。GDF11は、中胚葉組織および神経組織の両方のパターン形成において、固有の役割を果たし[例えば、Gamerら(1999年)、Dev Biol.、208巻:222~32頁を参照されたい]、発生中のニワトリの肢における軟骨形成および筋発生の負の調節因子であることが示された[例えば、Gamerら(2001年)、Dev Biol.、229巻:407~20頁を参照されたい]。GDF11はまた、生後の組織ホメオスタシスの調節因子としても関与している。例えば、筋内のGDF11の発現はまた、GDF8と同様の方式で筋肉の増殖の調節における、このリガンドの役割も示唆する。加えて、脳内のGDF11の発現は、GDF11はまた、神経系の機能も調節し得ることを示唆し、GDF11は、嗅上皮における神経発生を阻害することも見出されている[例えば、Wuら(2003年)、Neuron、37巻:197~207頁を参照されたい]。
骨形成性タンパク質1(OP-1)とも呼ばれる骨形態発生タンパク質(BMP7)は、軟骨および骨の形成を誘導することが周知である。加えて、BMP7は、広範にわたる生理プロセスも調節する。例えば、BMP7は、上皮骨形成現象の一因となる、骨誘導因子であり得る。BMP7はまた、カルシウムの調節および骨のホメオスタシスにおいても役割を果たす。アクチビンと同様に、BMP7も、ActRIIAおよびActRIIBに結合する。しかし、BMP7とアクチビンとは、異なるI型受容体を動員して、ヘテロマーの受容体複合体となる。BMP7が、優先的にALK2を介してシグナル伝達するのに対し、アクチビンは、ALK4を介してシグナル伝達する。この差違は、BMP7とアクチビンとが、異なるSmad経路を活性化させ、異なる生物反応を誘発することを可能とする[例えば、Macias-Silvaら(1998年)、J Biol Chem.、273巻:25628~36頁を参照されたい]。
改変体ActRIIB-Fc融合タンパク質であって、1つの改変体は、本明細書の配列番号1のアミノ酸20~134を含み、配列番号1に照らして、79位に酸性アミノ酸を有し[以下では、「ActRIIB(L79D 20~134)-Fc」融合タンパク質と呼ばれる]、第2の短縮型改変体は、本明細書の配列番号1のアミノ酸25~131を含み、これもまた、79位に酸性アミノ酸を組み込んでいる[以下では、「ActRIIB(L79D 25~131)-Fc」と呼ばれる]、改変体により、インビトロおよびインビボにおいて特殊な生体特性が呈示されることが既に報告されている。例えば、米国特許第8,058,229号を参照されたい。非改変融合タンパク質である、ActRIIB(20~134)-FcおよびActRIIB(25~131)-Fcと比較して、対応するL79D改変体[それぞれ、ActRIIB(L79D 20~134)-FcおよびActRIIB(L79D 25~131)-Fc]は部分的に、アクチビンAに対する結合アフィニティーの実質的な喪失を特徴とし、したがって、アクチビンA活性に拮抗する能力の著明な低減を特徴とするが、GDF11に対する結合および阻害の野生型に近いレベルを保持する。ActRIIB(L79D 20~134)-Fc改変体およびActRIIB(L79D 25~131)-Fc改変体は、それぞれ、非改変ActRIIB(20~134)-Fc融合タンパク質および非改変ActRIIB(25~131)-Fc融合タンパク質と比較して、インビボにおいて赤血球レベルを高める能力が著明により強力であることが見出された。したがって、これらのデータは、観察された生物活性が、アクチビンAの阻害に依存しないことを指し示す。
本出願は部分的に、米国特許第8,058,229号において開示されているActRIIB(L79D 20~134)-FcおよびActRIIB(L9D 25~131)-Fc改変体が、アクチビンAに対する結合アフィニティーは著明に低減されているが、アクチビンBおよびGDF11は阻害することが可能であるという洞察に方向付けられる。したがって、本出願者らは、本明細書において、GDF11およびアクチビンB両方の活性に拮抗する作用因子または作用因子群の組合せにより、赤血球生成を増大させ得ることを結論付ける。アクチビンAの阻害は、赤血球の形成を促進するのに必要ではないが、アクチビンAを阻害するActRII-Fc融合タンパク質はまた、赤血球の形成も促進することが公知である。したがって、アクチビンAを阻害する作用因子は、本開示の範囲内に含まれる。
本明細書で実証されるように、より多くのそれらのリガンドが阻害されると、種々の血液パラメータのレベル(例えば、ヘマトクリットレベル、ヘモグロビンレベル、および赤血球レベル)が高まる傾向が見られるため、複数のActRIIリガンド(例えば、アクチビンB、GDF11、およびGDF8)が、赤血球生成の調節因子であると考えられる。例えば、本明細書で提示されるデータは、GDF8およびGDF11の活性を阻害する作用因子の投与は、インビボにおける赤血球レベルの上昇に対して、GDF8だけに拮抗する作用因子と比較して、より実質的な効果を及ぼすことを実証する。加えて、アクチビンB、GDF8、およびGDF11を阻害する作用因子を使用する組合せ治療は、赤血球の増加に対して、GDF8/GDF11アンタゴニストによる処置と比較して、さらに大きな効果を及ぼすことも示される。したがって、本明細書で提示されるデータは、対象において赤血球生成を促進するための効果的な戦略は、複数の(すなわち、2つまたはそれより多くの)ActRIIリガンドを標的とすることであることを指し示す。
したがって、本開示は部分的に、赤血球レベルを高め、貧血を処置もしくは予防し、かつ/または無効赤血球生成を処置もしくは予防することを必要とする対象において、GDF11(例えば、GDF11に媒介される、ActRIIAおよび/またはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達の活性化)および/またはアクチビンB(例えば、アクチビンBに媒介される、ActRIIAおよび/またはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達の活性化)に拮抗(を阻害)する作用因子または作用因子群の組合せにより、赤血球レベルを高め、貧血を処置もしくは予防し、かつ/または無効赤血球生成を処置もしくは予防するための方法を提供する。任意選択で、GDF11および/またはアクチビンBに拮抗する、本開示の作用因子または作用因子群の組合せは、アクチビンA(例えば、アクチビンAに媒介される、ActRIIAおよび/またはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達の活性化)に実質的に拮抗しない。任意選択で、GDF11および/またはアクチビンBに拮抗する、本開示の作用因子または作用因子群の組合せは、GDF8の活性をさらに阻害し得る。ある特定の実施形態では、GDF11および/またはアクチビンBに拮抗する、本開示の作用因子または作用因子群の組合せは、GDF8、BMP6、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、およびBMP10のうちの1つまたは複数をさらに阻害し得る。
一部の実施形態では、GDF11および/またはアクチビンBの活性を阻害する作用因子または作用因子群の組合せは、GDF11および/またはアクチビンBに直接結合する作用因子であり、例えば、少なくともGDF11およびアクチビンBに結合する多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)(任意選択で、このような作用因子、または作用因子群の組合せは、アクチビンAに実質的に結合しない);抗GDF11抗体および抗アクチビンB抗体を含む、抗体の組合せ;GDF11およびアクチビンBに結合する(任意選択で、アクチビンAに結合しなくてもよい)、改変体ActRIIポリペプチド(例えば、改変体ActRIIAポリペプチドまたは改変体ActRIIBポリペプチド);改変体ActRIIポリペプチドの組合せ(例えば、改変体ActRIIAポリペプチドまたは改変体ActRIIBポリペプチド)であって、GDF11に結合する(が、アクチビンBには実質的に結合しない)少なくとも1つの改変体ActRIIポリペプチドと、アクチビンBに結合する(が、GDF11には実質的に結合しない)少なくとも1つの可溶性の改変体ActRIIポリペプチドとを含む組合せ(任意選択で、GDF結合ActRIIポリペプチドおよびアクチビンB結合ActRIIポリペプチドの一方または両方が、アクチビンAに実質的に結合しなくてもよい);GDF11および/またはアクチビンBに直接結合する(任意選択で、アクチビンAに実質的に結合しなくてもよい)低分子;ならびにGDF11に結合する(が、アクチビンBには実質的に結合しない)少なくとも1つの低分子と、アクチビンBに結合する(が、GDF11には実質的に結合しない)1つの低分子とを含む、低分子の組合せ(GDF結合低分子およびアクチビンB結合低分子の一方または両方が、アクチビンAに実質的に結合しなくてもよい)が挙げられる。
代替的な実施形態では、GDF11および/またはアクチビンBの活性を阻害する作用因子または作用因子群の組合せは、GDF11および/またはアクチビンBに直接結合しない、間接的アンタゴニスト作用因子である。例えば、間接的アンタゴニスト作用因子は、天然のActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合する抗体であることが可能であり、GDF11および/またはアクチビンBが、ActRII受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを防止する。任意選択で、このような作用因子、または作用因子群の組合せは、アクチビンAが、ActRII受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを実質的に阻害しない。本開示の、他の間接的アンタゴニスト作用因子として、GDF11および/またはアクチビンBの発現(例えば、転写、翻訳、および/または細胞分泌)を阻害する作用因子または作用因子群の組合せが挙げられる。任意選択で、このような作用因子または作用因子群の組合せは、アクチビンAの発現に実質的に影響を及ぼさない。このような間接的作用因子として、例えば、GDF11および/またはアクチビンBの発現の低分子阻害剤のほか、種々のポリヌクレオチドアンタゴニスト[例えば、GDF11 mRNAおよび/またはアクチビンB mRNAを標的とする、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、または化学的類似体、および低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、またはマイクロRNA(miRNA)分子を含む干渉RNA分子]の使用であって、GDF11および/またはアクチビンBの発現を阻害する使用が挙げられる。
一部の実施形態では、GDF11および/またはアクチビンBの活性を阻害する、本開示の作用因子または作用因子群の組合せは任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、およびBMP10の1つまたは複数に結合し、かつ/またはこれらの活性を阻害する。
加えて、本開示の方法は、EPO受容体活性化因子と組み合わせた、本明細書で記載される1つまたは複数のアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF11およびアクチビンBを阻害する作用因子または作用因子群の組合せ)の使用であって、赤血球の形成を増大させるほか、種々の貧血および無効赤血球生成障害ならびに関連する状態を処置または予防する使用を対象とする。赤血球生成は、エリスロポエチン、G-CSFおよび鉄のホメオスタシスを含む種々の因子によって調節される複雑なプロセスであることに注意すべきである。用語「赤血球レベルを増加させる」および「赤血球の形成を促進する」とは、ヘマトクリット、赤血球数およびヘモグロビン測定値のような臨床的に観察可能な測定基準(metrics)を指し、そのような変化が生じる機構に関しては中立であることが意図される。
EPOとは、赤芽球系前駆細胞のエリスロサイトへの増殖および成熟に関与する糖タンパク質ホルモンである。EPOは、胎児期には肝臓により生成され、成人期には腎臓により生成される。成人期において、腎不全の帰結として一般的に生じるEPOの生成の減少は、貧血をもたらす。EPOは、遺伝子操作法により、EPO遺伝子をトランスフェクトされた宿主細胞からの、タンパク質の発現および分泌に基づき生成されている。このような組換えEPOの投与は、貧血の処置において有効となっている。例えば、Eschbachら(1987年、N Engl J Med、316巻:73頁)は、慢性腎不全により引き起こされる貧血を是正するためのEPOの使用について記載している。
EPOの効果は、サイトカイン受容体のスーパーファミリーに属し、EPO受容体と呼ばれる細胞表面受容体へのその結合、およびこの受容体の活性化により媒介される。ヒトEPO受容体およびマウスEPO受容体は、クローニングされ、発現がなされている[例えば、D’Andreaら(1989年)、Cell、57巻:277頁;Jonesら(1990年)、Blood、76巻:31頁;Winkelmanら(1990年)、Blood、76巻:24頁;および米国特許第5,278,065号を参照されたい]。ヒトEPO受容体遺伝子は、およそ224アミノ酸の細胞外ドメインを含む、483アミノ酸の膜貫通タンパク質をコードし、マウスEPO受容体とおよそ82%のアミノ酸配列同一性を呈示する[例えば、米国特許第6,319,499号を参照されたい]。クローニングされて哺乳動物細胞内で発現がなされた全長EPO受容体(66~72kDa)は、赤芽球系前駆細胞上の天然の受容体のアフィニティーと同様のアフィニティー(KD=100~300nM)でEPOに結合する。したがって、この形態は、主要なEPO結合決定基を含有すると考えられ、EPO受容体と呼ばれる。他の近縁のサイトカイン受容体との類比によれば、EPO受容体は、アゴニストに結合すると二量体化すると考えられる。しかしながら、多量体の複合体であり得るEPO受容体の詳細な構造、およびその活性化の具体的機構は、完全には理解されていない[例えば、米国特許第6,319,499号を参照されたい]。
EPO受容体の活性化は、いくつかの生物学的効果を結果としてもたらす。これらの効果は、未成熟赤芽球の増殖の増大、未成熟赤芽球の分化の増大、および赤芽球系前駆細胞におけるアポトーシスの低減を含む[例えば、Liboiら(1993年)、Proc Natl Acad Sci USA、90巻:11351~11355頁;Kouryら(1990年)、Science、248巻:378~381頁を参照されたい]。増殖を媒介するEPO受容体のシグナル伝達経路と、分化を媒介するEPO受容体のシグナル伝達経路とは、異なると考えられる[例えば、Noguchiら(1988年)、Mol Cell Biol、8巻:2604頁;Patelら(1992年)、J Biol Chem、267巻:21300頁;およびLiboiら(1993年)、Proc
Natl Acad Sci USA、90巻:11351~11355頁を参照されたい]。一部の結果は、付属タンパク質が、分化シグナルの媒介に要請され得ることを示唆する[例えば、Chibaら(1993年)、Nature、362巻:646頁;およびChibaら(1993年)、Proc Natl Acad Sci USA、90巻:11593頁を参照されたい]。しかし、恒常的な活性化形態の受容体は、増殖および分化のいずれも刺激し得るので、分化における付属タンパク質の役割については、議論が一致していない[例えば、Pharrら(1993年)、Proc Natl Acad Sci USA、90巻:938頁を参照されたい]。
EPO受容体活性化因子として、低分子赤血球生成刺激作用因子(ESA)のほか、EPOベースの化合物が挙げられる。前者の例は、ポリエチレングリコールに共有結合的に連結された二量体のペプチドベースのアゴニスト(商標名:Hematide)であり、これは、健康なボランティアならびに慢性腎疾患および内因性の抗EPO抗体の両方を有する患者において赤血球生成刺激特性を示している[例えば、Steadら(2006年)、Blood、108巻:1830~1834頁;およびMacdougallら(2009年)、N Engl J Med、361巻:1848~1855頁を参照されたい]。他の例として、非ペプチドベースのESAが挙げられる[例えば、Qureshiら(1999年)、Proc Natl Acad Sci USA、96巻:12156~12161頁を参照されたい]。
EPO受容体活性化因子はまた、EPO受容体自体には接触せずに、内因性EPOの生成を増強することにより赤血球生成を間接的に刺激する化合物も含む。例えば、低酸素誘導転写因子(HIF)は、正常酸素状態下では、細胞内調節機構により抑制されている(不安定化させられている)、EPO遺伝子発現の内因性刺激因子である。したがって、HIFプロピルヒドロキシラーゼ酵素の阻害剤が、インビボにおけるEPO誘導活性について調査されている。EPO受容体の他の間接的な活性化因子として、EPO遺伝子の発現を局所的に阻害する、GATA-2転写因子の阻害剤[例えば、Nakanoら(2004年)、Blood、104巻:4300~4307頁を参照されたい]、およびEPO受容体シグナル伝達の負の調節因子として機能する、造血細胞ホスファターゼ(HCPまたはSHP-1)の阻害剤[例えば、Klingmullerら(1995年)、Cell、80巻:729~738頁を参照されたい]が挙げられる。
本明細書中で使用される用語は、一般に、本開示の文脈の範囲内で、かつ、各々の用語が使用される特定の文脈において、当該分野におけるその通常の意味を有する。本開示の組成物および方法、ならびに、これらの作製方法および使用方法の記載において、専門家にさらなる案内を提供するために、特定の用語が以下または本明細書中の他の場所で論じられている。用語の任意の使用の範囲および意味は、特定の文脈から明らかである。
「相同」は、そのあらゆる文法的な形態および語の綴りのバリエーションにおいて「共通する進化的起源」を有する2つのタンパク質間の関係を指し、同じ生物種のスーパーファミリーからのタンパク質ならびに異なる生物種からの相同タンパク質を含む。このようなタンパク質(およびこれをコードする核酸)は、%同一性の観点であれ、特定の残基もしくはモチーフおよび保存された位置の存在によるものであれ、その配列類似性によって反映されるように、配列の相同性を有する。
用語「配列類似性」は、そのあらゆる文法的な形態において、共通する進化の起源を共有している場合も共有していない場合もある、核酸もしくはアミノ酸配列間の同一性もしくは対応性の程度をいう。
しかし、一般的な用法およびこの出願において、用語「相同」は、「高度に」のような副詞で修飾されるとき、配列の類似性を指す場合があり、そして、共通する進化の起源に関連していてもしていなくてもよい。
参照ポリペプチド(またはヌクレオチド)配列に照らした「配列同一性パーセント(%)」とは、配列を決定し、必要な場合、最大の配列同一性パーセントを達成するようにギャップを導入した後における、保存的置換は配列同一性の一部と考えない場合の、候補配列内のアミノ酸残基(または核酸)の百分率であって、参照ポリペプチド(ヌクレオチド)配列内のアミノ酸残基(または核酸)と同一であるアミノ酸残基(または核酸)の百分率と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定することを目的とするアラインメントは、当該分野の技術の範囲内にある種々の方式で、例えば、BLASTソフトウェア、BLAST-2ソフトウェア、ALIGNソフトウェア、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど、一般に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、配列を決定するのに適切なパラメータであって、比較される配列の全長にわたり最大のアラインメントを達成するのに必要とされる、任意のアルゴリズムを含むパラメータを決定することができる。しかし、本明細書の目的では、アミノ酸(核酸)配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムである、ALIGN-2を使用して生成する。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.により作成され、ソースコードは、使用説明書と共に、米国著作権局、Washington D.C.、20559に提出され、ここで、米国著作権登録第TXU510087号として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.、South San Francisco、Calif.から一般に利用可能であるが、ソースコードからコンパイルすることもできる。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標) V4.0Dを含む、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム上の使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムにより設定され、変化しない。
本明細書で使用される場合、「Xに実質的に結合しない」とは、「X」に対する作用因子のKDが、約10-7より大きい、10-6より大きい、10-5より大きい、10-4より大きい、またはそれより大きい(例えば、KDを決定するのに使用されるアッセイにより検出可能でない結合)を意味することが意図される。
2.アンタゴニスト作用因子
A.抗体アンタゴニスト
ある特定の態様では、本開示のアンタゴニスト作用因子または作用因子群の組合せは、少なくともアクチビンBおよび/またはGDF11に結合し、かつ/またはこれらの活性(例えば、ActRIIAベースまたはActRIIBベースのSmad2/3のシグナル伝達の活性化)を阻害する抗体である。任意選択で、本開示の抗体または抗体の組合せは、アクチビンAに結合せず、かつ/またはその活性(例えば、アクチビンAに媒介される、ActRIIAベースまたはActRIIBベースのSmad2/3のシグナル伝達の活性化)を阻害しない。任意選択で、本開示の抗体または抗体の組合せは、GDF8にさらに結合し、かつ/またはその活性(例えば、GDF8に媒介される、ActRIIAまたはActRIIBによるSmad2/3のシグナル伝達の活性化)をさらに阻害する。一部の実施形態では、少なくともアクチビンBおよび/またはGDF11に結合し、かつ/またはこれらの活性を阻害する本開示の抗体または抗体の組合せは、GDF8、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、またはBMP10の1つまたは複数にさらに結合し、かつ/またはこれらの活性(例えば、ActRIIAベースまたはActRIIBベースのSmad2/3および/またはSmad1/5/8のシグナル伝達の活性化)をさらに阻害する。
別の態様では、本開示の抗体または抗体の組合せは、ActRII受容体に結合し、少なくともアクチビンBおよび/またはGDF11によるActRII受容体の結合および/または活性化を防止する抗ActRII受容体抗体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体の抗体)である。任意選択で、本開示の抗ActRII受容体抗体または抗体の組合せは、アクチビンAが、ActRII受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを実質的に阻害しない。任意選択で、本開示の抗ActRII受容体抗体または抗体の組合せは、GDF8によるActRII受容体の結合および/または活性化をさらに防止する。一部の実施形態では、ActRII受容体に結合し、アクチビンBおよび/またはGDF11によるActRII受容体の結合および/または活性化を防止する本開示の抗ActRII受容体抗体または抗体の組合せは、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、およびBMP10の1つまたは複数による、ActRII受容体の結合および/または活性化をさらに防止する。
抗体という用語は、本明細書では、最も広い意味で使用され、それらが、所望の抗原結合活性を呈示する限りにおいて、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、および抗体フラグメントを含むがこれらに限定されない、種々の抗体構造を包摂する。抗体フラグメントとは、完全抗体以外の分子であって、完全抗体が結合する抗原に結合する完全抗体の一部を含む分子を指す。抗体フラグメントの例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディー;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体フラグメントから形成される多特異性抗体を含むがこれらに限定されない[例えば、Hudsonら(2003年)、Nat. Med.、9巻:129~134頁;Plueckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編(Springer-Verlag、New York)、269~315頁(1994年);WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号;同第5,587,458号;および同第5,869,046号を参照されたい]。本明細書で開示される抗体は、ポリクローナル抗体でもよく、モノクローナル抗体でもよい。ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、それらに付加させた、検出可能な標識を含む(例えば、標識は、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子であり得る)。好ましい実施形態では、本開示の抗体は、単離された抗体である。
ダイアボディーは、二価または二特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントである[例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudsonら(2003年)、Nat. Med.、9巻:129~134頁;およびHollingerら(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:6444~6448頁を参照されたい]。トリアボディーおよびテトラボディーはまた、Hudsonら(2003年)、Nat. Med.、9巻:129~134頁において記載されている。
単一ドメイン抗体とは、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部または抗体の軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部を含む抗体フラグメントである。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である[例えば、米国特許第6,248,516号を参照されたい]。
抗体フラグメントは、本明細書で記載されるように、完全抗体のタンパク質分解性消化のほか、組換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)による生成を含むがこれらに限定されない種々の技法により作製することができる。
本明細書の抗体は、任意のクラスの抗体であり得る。抗体のクラスとは、その重鎖により保有される定常ドメインまたは定常領域の種類を指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。
一般に、本明細書で開示される方法における使用のための抗体は、その標的抗原に、好ましくは、大きな結合アフィニティーで特異的に結合する。アフィニティーは、KD値として表すことができ、内因性結合アフィニティー(例えば、アビディティー効果を最小化して)を反映する。典型的に、結合アフィニティーは、無細胞状況の場合であれ、細胞会合状況の場合であれ、インビトロにおいて測定する。本明細書で開示されるアッセイを含む、当該分野で公知の多数のアッセイであって、例えば、Biacore、放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)、およびELISAを含むアッセイのいずれかを使用して、結合アフィニティーの測定値を得ることができる。一部の実施形態では、本開示の抗体は、それらの標的抗原(例えば、GDF11、アクチビンB、GDF8、アクチビンE、アクチビンC、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、またはBMP10)に、少なくとも1×10-7もしくはより強い、1×10-8もしくはより強い、1×10-9もしくはより強い、1×10-10もしくはより強い、1×10-11もしくはより強い、1×10-12もしくはより強い、1×10-13もしくはより強い、または1×10-14もしくはより強いKDで結合する。
ある特定の実施形態では、KDは、以下のアッセイにより記載されるように、関心のある抗体のFabバージョンおよびその標的抗原で実施されるRIAにより測定される。Fabの抗原に対する溶液結合アフィニティーは、Fabを、滴定系列の非標識抗原の存在下において、最低濃度の放射性標識された抗原(例えば、125Iで標識された)と平衡化し、次いで、結合した抗原を、抗Fab抗体でコーティングしたプレートで捕捉することにより測定する[例えば、Chenら(1999年)、J. Mol. Biol.、293巻:865~881頁を参照されたい]。アッセイ条件を確立するために、マルチウェルプレート(例えば、Thermo Scientific製のMICROTITER(登録商標))を、捕捉用抗Fab抗体(例えば、Cappel Labs製)でコーティングし(例えば、一晩にわたり)、その後、好ましくは、室温(およそ23℃)において、ウシ血清アルブミンでブロッキングする。非吸着型プレートでは、放射性標識された抗原を、関心のあるFabの系列希釈液と混合する[例えば、Prestaら、(1997年)、Cancer Res.、57巻:4593~4599頁における抗VEGF抗体である、Fab-12の評価と符合する]。次いで、関心のあるFabを、好ましくは、一晩にわたりインキュベートするが、平衡に到達することを確保するように、インキュベーションは、長時間(例えば、約65時間)にわたり継続することもできる。その後、混合物を、好ましくは、室温で約1時間にわたるインキュベーションのために、捕捉プレートに移す。次いで、溶液を除去し、プレートを、好ましくは、ポリソルベート20とPBSとの混合物で、複数回洗浄する。プレートを乾燥させたら、シンチレーション剤(例えば、Packard製のMICROSCINT(登録商標))を添加し、ガンマカウンター(例えば、Packard製のTOPCOUNT(登録商標))上で、プレートをカウントする。
別の実施形態によれば、KDは、例えば、抗原CM5チップを約10応答単位(RU)で固定化した、BIACORE(登録商標)2000またはBIACORE(登録商標)3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、N.J.)を使用する、表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。簡単に述べると、供給元の指示書に従い、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化させる。例えば、抗原は、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.8で、5μg/ml(約0.2μM)まで希釈してから、5μl/分の流量で注入して、およそ10応答単位(RU)のタンパク質のカップリングを達成することができる。抗原を注入した後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基をブロッキングする。反応速度の測定のため、Fabの2倍系列希釈液(0.78nM~500nM)を、0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))界面活性剤を含むPBS(PBST)に、およそ25μl/分の流量で注入する。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、例えば、単純な一対一ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation
Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサーグラムおよび解離センサーグラムのフィッティングを同時に行うことにより計算する。平衡解離定数(KD)は、koff/kon比として計算する[例えば、Chenら、(1999年)、J. Mol. Biol.、293巻:865~881頁を参照されたい]。オン速度が、例えば、上記の表面プラズモン共鳴アッセイで106M-1s-1を超える場合、オン速度は、徐々に増大する濃度の抗原の存在下におけるPBS中、20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の蛍光発光強度(例えば、励起=295nm;発光=340nm、16nmのバンドパス)であって、攪拌型キュベットを有するストップフロー装備型分光光度計(Aviv Instruments)、または8000シリーズのSLM-AMINCO(登録商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計により測定した場合の、蛍光発光強度の増加または減少を測定する蛍光消光法を使用することにより決定することができる。
一般に、抗GDF11抗体とは、抗体がGDF11の標的化における診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでGDF11に結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗GDF11抗体の、GDF11以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のGDF11への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗GDF11抗体は、異なる種に由来するオーソログのGDF11タンパク質の間で保存された、GDF11のエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗GDF11抗体は、GDF11活性を実質的に阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗GDF11抗体は、GDF11がコグネイト受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを実質的に阻害することができ、かつ/またはActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体によるSmad2/3シグナル伝達など、GDF11に媒介される、コグネイト受容体のシグナル伝達(活性化)を実質的に阻害することができる。一部の実施形態では、本開示の抗GDF11抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。GDF11は、アミノ酸レベルでGDF8との配列同一性が高く、したがって、GDF11に結合し、かつ/またはこれを阻害する抗体はまた、多くの場合、GDF8にも結合し、かつ/またはこれも阻害し得ることに留意されたい。
一般に、抗アクチビンB抗体とは、抗体がアクチビンBの標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでアクチビンBに結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗アクチビンB抗体の、アクチビンB以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のアクチビンBへの結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗アクチビンB抗体は、異なる種に由来するオーソログのアクチビンBタンパク質の間で保存された、アクチビンBのエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗アクチビンB抗体は、アクチビンB活性を実質的に阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗アクチビンB抗体は、アクチビンBがコグネイト受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを実質的に阻害することができ、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSmad2/3シグナル伝達など、アクチビンBに媒介される、コグネイト受容体のシグナル伝達(活性化)を実質的に阻害することができる。一部の実施形態では、本開示の抗アクチビンB抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。
一般に、抗アクチビンC抗体とは、抗体がアクチビンCの標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでアクチビンCに結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗アクチビンC抗体の、アクチビンC以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定場合の抗体のアクチビンCへの結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗アクチビンC抗体は、異なる種に由来するオーソログのアクチビンCタンパク質の間で保存された、アクチビンCのエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗アクチビンC抗体は、アクチビンC活性を実質的に阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗アクチビンC抗体は、アクチビンCがコグネイト受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを実質的に阻害することができ、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSmad2/3シグナル伝達など、アクチビンCに媒介される、コグネイト受容体のシグナル伝達(活性化)を実質的に阻害することができる。一部の実施形態では、本開示の抗アクチビンC抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。
一般に、抗アクチビンA抗体とは、抗体がアクチビンAの標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでアクチビンAに結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗アクチビンA抗体の、アクチビンA以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のアクチビンAへの結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗アクチビンA抗体は、異なる種に由来するオーソログのアクチビンAタンパク質の間で保存された、アクチビンAのエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗アクチビンA抗体は、アクチビンA活性を実質的に阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗アクチビンA抗体は、アクチビンAが、コグネイト受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを実質的に阻害することができ、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSmad2/3シグナル伝達など、アクチビンAに媒介される、コグネイト受容体のシグナル伝達(活性化)を実質的に阻害することができる。
一般に、抗アクチビンE抗体とは、抗体がアクチビンEの標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでアクチビンEに結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗アクチビンE抗体の、アクチビンE以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のアクチビンEへの結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗アクチビンE抗体は、異なる種に由来するオーソログのアクチビンEタンパク質の間で保存された、アクチビンEのエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗アクチビンE抗体は、アクチビンE活性を実質的に阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗アクチビンE抗体は、アクチビンEが、コグネイト受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを実質的に阻害することができ、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSmad2/3シグナル伝達など、アクチビンEに媒介される、コグネイト受容体のシグナル伝達(活性化)を実質的に阻害することができる。一部の実施形態では、本開示の抗アクチビンE抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。
一般に、抗GDF8抗体とは、抗体がGDF8の標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでGDF8に結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗GDF8抗体の、GDF8以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のGDF8への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗GDF8抗体は、異なる種に由来するオーソログのGDF8タンパク質の間で保存された、GDF8のエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗GDF8抗体は、GDF8活性を実質的に阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗GDF8抗体は、GDF8が、コグネイト受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを実質的に阻害することができ、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSmad2/3シグナル伝達など、GDF8に媒介される、コグネイト受容体のシグナル伝達(活性化)を実質的に阻害することができる。一部の実施形態では、本開示の抗GDF8抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。GDF8は、GDF11との配列相同性が高く、したがって、GDF8に結合し、かつ/またはこれを阻害する抗体はまた、多くの場合、GDF11にも結合し、かつ/またはこれを阻害し得ることに留意されたい。
一般に、抗BMP6抗体とは、抗体がBMP6の標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでBMP6に結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗BMP6抗体の、BMP6以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のBMP6への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗BMP6抗体は、異なる種に由来するオーソログのBMP6タンパク質の間で保存された、BMP6のエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗BMP6抗体は、BMP6活性を実質的に阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗BMP6抗体は、BMP6が、コグネイト受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを実質的に阻害することができ、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSmad2/3シグナル伝達など、BMP6に媒介される、コグネイト受容体のシグナル伝達(活性化)を実質的に阻害することができる。一部の実施形態では、本開示の抗BMP6抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。
一般に、抗GDF15抗体とは、抗体がGDF15の標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでGDF15に結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗GDF15抗体の、GDF15以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のGDF15への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗GDF15抗体は、異なる種に由来するオーソログのGDF15タンパク質の間で保存された、GDF15のエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗GDF15抗体は、GDF15活性を実質的に阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗GDF15抗体は、GDF15がコグネイト受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを実質的に阻害することができ、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSmad2/3シグナル伝達など、GDF15に媒介される、コグネイト受容体のシグナル伝達(活性化)を実質的に阻害することができる。一部の実施形態では、本開示の抗GDF15抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。
一般に、抗Nodal抗体とは、抗体がNodalの標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでNodalに結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗Nodal抗体の、Nodal以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のNodalへの結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗Nodal抗体は、異なる種に由来するオーソログのNodalタンパク質の間で保存された、Nodalのエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗Nodal抗体は、Nodal活性を実質的に阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗Nodal抗体は、Nodalがコグネイト受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを実質的に阻害することができ、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSmad2/3シグナル伝達など、Nodalに媒介される、コグネイト受容体のシグナル伝達(活性化)を実質的に阻害することができる。一部の実施形態では、本開示の抗Nodal抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。
一般に、抗GDF3抗体とは、抗体がGDF3の標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでGDF3に結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗GDF3抗体の、GDF3以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のGDF3への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗GDF3抗体は、異なる種に由来するオーソログのGDF3タンパク質の間で保存された、GDF3のエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗GDF3抗体は、GDF3活性を実質的に阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗GDF3抗体は、GDF3がコグネイト受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを実質的に阻害することができ、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSmad2/3シグナル伝達など、GDF3に媒介される、コグネイト受容体のシグナル伝達(活性化)を実質的に阻害することができる。一部の実施形態では、本開示の抗GDF3抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。
一般に、抗BMP3抗体とは、抗体がBMP3の標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでBMP3に結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗BMP3抗体の、BMP3以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のBMP3への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗BMP3抗体は、異なる種に由来するオーソログのBMP3タンパク質の間で保存された、BMP3のエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗BMP3抗体は、BMP3活性を実質的に阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗BMP3抗体は、BMP3がコグネイト受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを実質的に阻害することができ、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSmad2/3シグナル伝達など、BMP3に媒介される、コグネイト受容体のシグナル伝達(活性化)を実質的に阻害することができる。一部の実施形態では、本開示の抗BMP3抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。
一般に、抗BMP3B抗体とは、抗体がBMP3Bの標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでBMP3Bに結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗BMP3B抗体の、BMP3B以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のBMP3Bへの結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗BMP3B抗体は、異なる種に由来するオーソログのBMP3Bタンパク質の間で保存された、BMP3Bのエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗BMP3B抗体は、BMP3B活性を実質的に阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗BMP3B抗体は、BMP3Bがコグネイト受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを実質的に阻害することができ、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSmad2/3シグナル伝達など、BMP3Bに媒介される、コグネイト受容体のシグナル伝達(活性化)を実質的に阻害することができる。一部の実施形態では、本開示の抗BMP3B抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。
一般に、抗BMP9抗体とは、抗体がBMP9の標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでBMP9に結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗BMP9抗体の、BMP9以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のBMP9への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗BMP9抗体は、異なる種に由来するオーソログのBMP9タンパク質の間で保存された、BMP9のエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗BMP9抗体は、BMP9活性を実質的に阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗BMP9抗体は、BMP9がコグネイト受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを実質的に阻害することができ、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSmad2/3シグナル伝達など、BMP9に媒介される、コグネイト受容体のシグナル伝達(活性化)を実質的に阻害することができる。一部の実施形態では、本開示の抗BMP9抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。ある特定の実施形態では、抗BMP9抗体は、BMP9とTGFβスーパーファミリーのII型受容体(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB)との相互作用を阻害する。好ましくは、抗BMP9抗体は、BMP9とALK1との相互作用を阻害しないか、またはこれを実質的に阻害しない。
一般に、抗BMP10抗体とは、抗体がBMP10の標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでBMP10に結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗BMP10抗体の、BMP10以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のBMP10への結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗BMP10抗体は、異なる種に由来するオーソログのBMP10タンパク質の間で保存された、BMP10のエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗BMP10抗体は、BMP10活性を実質的に阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗BMP10抗体は、BMP10がコグネイト受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)に結合することを実質的に阻害することができ、かつ/またはActRIIA受容体および/もしくはActRIIB受容体によるSmad2/3シグナル伝達など、BMP10に媒介される、コグネイト受容体のシグナル伝達(活性化)を実質的に阻害することができる。一部の実施形態では、本開示の抗BMP10抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しない。ある特定の実施形態では、抗BMP10抗体は、BMP10とTGFβスーパーファミリーのII型受容体(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB)との相互作用を阻害する。好ましくは、抗BMP10抗体は、BMP10とALK1との相互作用を阻害しないか、またはこれを実質的に阻害しない。
抗ActRIIA抗体とは、抗体がActRIIAの標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでActRIIAに結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗ActRIIA抗体の、ActRIIA以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のActRIIAへの結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗ActRIIA抗体は、異なる種に由来するオーソログのActRIIAタンパク質の間で保存された、ActRIIAのエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗ActRIIA抗体は、ActRIIA活性を阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗ActRIIA抗体は、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、アクチビンA、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、もしくはBMP10より選択される1つまたは複数のActRIIAリガンドが、ActRIIA受容体に結合することを阻害することができ、かつ/またはこれらのリガンドのうちの1つが、ActRIIAシグナル伝達(例えば、Smad2/3経路および/またはSmad1/5/8経路を介する)を活性化させることを阻害することができる。好ましい実施形態では、本開示の抗ActRIIA抗体は、GDF11および/もしくはアクチビンBがActRIIA受容体に結合することを阻害し、かつ/またはGDF11および/もしくはアクチビンBがActRIIAシグナル伝達を活性化させることを阻害する。任意選択で、本開示の抗ActRIIA抗体は、GDF8がActRIIA受容体に結合することをさらに阻害し、かつ/またはGDF8がActRIIAシグナル伝達を活性化させることをさらに阻害する。任意選択で、本開示の抗ActRIIA抗体は、アクチビンAがActRIIA受容体に結合することを実質的に阻害せず、かつ/または、アクチビンAに媒介される、ActRIIAシグナル伝達の活性化を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF11および/またはアクチビンBがActRIIA受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを阻害する本開示の抗ActRIIA抗体は、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、GDF8、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、およびBMP10のうちの1つまたは複数がActRIIA受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることをさらに阻害する。
抗ActRIIB抗体とは、抗体がActRIIBの標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分なアフィニティーでActRIIBに結合することが可能である抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗ActRIIB抗体の、ActRIIB以外の非関連タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した場合の抗体のActRIIBへの結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または1%未満である。ある特定の実施形態では、抗ActRIIB抗体は、異なる種に由来するオーソログのActRIIBタンパク質の間で保存された、ActRIIBのエピトープに結合する。好ましい実施形態では、本開示の抗ActRIIB抗体は、ActRIIB活性を阻害し得るアンタゴニスト抗体である。例えば、本開示の抗ActRIIB抗体は、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、アクチビンA、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、およびBMP10より選択される1つまたは複数のActRIIBリガンドがActRIIB受容体に結合することを阻害することができ、かつ/またはこれらのリガンドのうちの1つがActRIIBシグナル伝達(例えば、Smad2/3経路および/またはSmad1/5/8経路を介する)を活性化させることを阻害することができる。好ましい実施形態では、本開示の抗ActRIIB抗体は、GDF11および/もしくはアクチビンBがActRIIB受容体に結合することを阻害し、かつ/またはGDF11および/もしくはアクチビンBがActRIIBシグナル伝達を活性化させることを阻害する。任意選択で、本開示の抗ActRIIB抗体は、GDF8がActRIIB受容体に結合することをさらに阻害し、かつ/またはGDF8がActRIIBシグナル伝達を活性化させることをさらに阻害する。任意選択で、本開示の抗ActRIIB抗体は、アクチビンAがActRIIB受容体に結合することを実質的に阻害せず、かつ/または、アクチビンAに媒介される、ActRIIBシグナル伝達の活性化を実質的に阻害しない。一部の実施形態では、GDF11および/またはアクチビンBがActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを阻害する本開示の抗ActRIIB抗体は、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、GDF8、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、およびBMP10のうちの1つまたは複数がActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることをさらに阻害する。
ヒトGDF11、ヒトアクチビンA、ヒトアクチビンB、ヒトアクチビンC、ヒトアクチビンE、ヒトGDF8、ヒトBMP6、ヒトActRIIB、ヒトActRIIA、ヒトGDF15、ヒトNodal、ヒトGDF3、ヒトBMP3、ヒトBMP3B、ヒトBMP9、およびヒトBMP9の核酸配列およびアミノ酸配列が、当該分野では周知である。加えて、抗体を生成するための多数の方法も、当該分野で周知であり、これらの一部については、本明細書で記載される。したがって、本開示に従う使用のための抗体アンタゴニストは、当該分野における知見および本明細書で提供される教示に基づき、当業者が慣習的に作製することができる。
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体)は、キメラ抗体である。キメラ抗体とは、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来する一方、重鎖および/または軽鎖の残余は異なる供給源または種に由来する抗体を指す。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、(1984年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81巻:6851~6855頁に記載されている。一部の実施形態では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長動物に由来する可変領域)と、ヒト定常領域とを含む。一部の実施形態では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスを、親抗体のクラスまたはサブクラスから変化させた「クラススイッチ」抗体である。一般に、キメラ抗体は、その抗原結合フラグメントを含む。
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるキメラ抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIb抗体)は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体とは、非ヒト超可変領域(HVR)に由来するアミノ酸残基と、ヒトフレームワーク領域(FR)に由来するアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つの可変ドメインであり、典型的には2つの可変ドメインであって、HVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のHVR(例えば、CDR)に対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のFRに対応する、可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は任意選択で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」とは、ヒト化を経た抗体を指す。
ヒト化抗体およびそれらを作製する方法は、例えば、AlmagroおよびFransson(2008年)、Front. Biosci.、13巻:1619~1633頁において総説されており、例えば、Riechmannら、(1988年)、Nature、332巻:323~329頁;Queenら(1989年)、Proc. Nat’l Acad. Sci. USA、86巻:10029~10033頁;米国特許第5,821,337号;同第7,527,791号;同第6,982,321号;および同第7,087,409号;Kashmiriら、(2005年)、Methods、36巻:25~34頁[SDR(a-CDR)グラフティングについて記載];Padlan、Mol. Immunol.(1991年)、28巻:489~498頁(「リサーフェシング」について記載);Dall’Acquaら(2005年)、Methods、36巻:43~60頁(「FRシャフリング」について記載);Osbournら(2005年)、Methods、36巻:61~68頁;ならびにKlimkaら、Br. J. Cancer(2000年)、83巻:252~260頁(FRシャフリングへの「誘導選択」アプローチについて記載)においてさらに記載されている。
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域として、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域[例えば、Simsら(1993年)、J. Immunol.、151巻:2296頁を参照されたい];軽鎖可変領域または重鎖可変領域の特定の亜集団のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域[例えば、Carterら(1992年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:4285頁;およびPrestaら(1993年)、J. Immunol.、151巻:2623頁を参照されたい];ヒト成熟(体細胞変異させた)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系列フレームワーク領域[例えば、AlmagroおよびFransson(2008年)、Front. Biosci.、13巻:1619~1633頁を参照されたい];およびFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域[例えば、Bacaら、(1997年)、J. Biol. Chem.、272巻:10678~10684頁;およびRosokら、(1996年)、J.
Biol. Chem.、271巻:22611~22618頁を参照されたい]が挙げられるがこれらに限定されない。
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体)は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該分野で公知の種々の技法を使用して生成することができる。ヒト抗体は一般に、van Dijkおよびvan de Winkel(2008年)、Curr. Opin. Pharmacol.、5巻:368~74頁(2001年);ならびにLonberg、Curr. Opin. Immunol.、20巻:450~459頁において記載されている。
ヒト抗体は、免疫原(例えば、GDF11ポリペプチド、アクチビンBポリペプチド、ActRIIAポリペプチド、またはActRIIBポリペプチド)を、抗原負荷に応答して、ヒト可変領域を有する完全ヒト抗体または完全抗体を生成するように改変されたトランスジェニック動物に投与することにより調製することができる。このような動物は典型的に、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置きかえるか、または染色体外に存在するかもしくは動物の染色体にランダムに組み込まれた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有する。このようなトランスジェニック動物では、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の総説については、例えば、Lonberg(2005年)、Nat. Biotech.、23巻:1117~1125頁;米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号(XENOMOUSE(商標)技術について記載);米国特許第5,770,429号(HuMab(登録商標)技術について記載);米国特許第7,041,870号(K-M MOUSE(登録商標)技術について記載);ならびに米国特許出願公開第2007/0061900号(VelociMouse(登録商標)技術について記載)を参照されたい。このような動物により生成される完全抗体に由来するヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによりさらに改変飾することができる。
本明細書で提供されるヒト抗体はまた、ハイブリドーマベースの方法により作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は記載されている[例えば、Kozbor、J. Immunol.、(1984年)、133巻:3001頁;Brodeurら(1987年)、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51~63頁、Marcel Dekker, Inc.、New York;およびBoernerら(1991年)、J. Immunol.、147巻:86頁を参照されたい]。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体はまた、Liら、(2006年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、103巻:3557~3562頁において記載されている。追加の方法は、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのヒトモノクローナルIgM抗体の生成について記載)およびNi、Xiandai Mianyixue(2006年)、26巻(4号):265~268頁(2006年)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載)において記載されている方法を含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、VollmersおよびBrandlein(2005年)、Histol. Histopathol.、20巻(3号):927~937頁;ならびにVollmersおよびBrandlein(2005年)、Methods Find Exp. Clin. Pharmacol.、27巻(3号):185~91頁において記載されている。
本明細書で提供されるヒト抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体)はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーより選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成することができる。次いで、このような可変ドメイン配列を、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。ヒト抗体を抗体ライブラリーより選択するための技法については、本明細書で記載される。
例えば、本開示の抗体は、1つまたは複数の所望の活性を有する抗体のためのコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより単離することができる。当該分野では、ファージディスプレイライブラリーを生成し、このようなライブラリーを、所望の結合特徴を保有する抗体についてスクリーニングするための、様々な方法が公知である。このような方法は、例えば、Hoogenboomら(2001年)、Methods in Molecular Biology、178巻:1~37頁、O’Brienら編、Humana Press、Totowa、N.J.において総説されており、例えば、McCaffertyら(1991年)、Nature、348巻:552~554頁;Clacksonら、(1991年)、Nature、352巻:624~628頁;Marksら(1992年)、J. Mol. Biol.、222巻:581~597頁;MarksおよびBradbury(2003年)、Methods in Molecular Biology、248巻:161~175頁、Lo編、Humana
Press、Totowa、N.J.;Sidhuら(2004年)、J. Mol.
Biol.、338巻(2号):299~310頁;Leeら(2004年)、J. Mol. Biol.、340巻(5号):1073~1093頁;Fellouse(2004年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、101巻(34号):12467~12472頁;ならびにLeeら(2004年)、J. Immunol. Methods、284巻(1~2号):119~132頁においてさらに記載されている。
ある特定のファージディスプレイ法では、Winterら(1994年)、Ann. Rev. Immunol.、12巻:433~455頁において記載されているように、VH遺伝子およびVL遺伝子のレパートリーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により個別にクローニングし、ファージライブラリー内でランダムに組み換え、次いで、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは典型的に、抗体フラグメントを、単鎖Fv(scFv)フラグメントまたはFabフラグメントとして呈示する。免疫化された供給源に由来するライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原(例えば、GDF11、アクチビンB、ActRIIA、またはActRIIB)に対する高アフィニティー抗体をもたらす。代替的に、ナイーブレパートリーは、Griffithsら(1993年)、EMBO J、12巻:725~734頁により記載されているように、免疫化なしに、広範にわたる非自己抗原、また広範にわたる自己抗原、に対する抗体の単一の供給源をもたらすように、クローニングすることができる(例えば、ヒトから)。最後に、ナイーブライブラリーはまた、HoogenboomおよびWinter(1992年)、J. Mol. Biol.、227巻:381~388頁により記載されているように、再配列されていないV遺伝子セグメントを幹細胞からクローニングし、高度に可変的なCDR3領域をコードし、インビトロにおける再配列を達成するランダム配列含有PCRプライマーを使用することによって、合成により作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーについて記載する特許公開として、例えば、米国特許第5,750,373号;ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、および同第2009/0002360号が挙げられる。
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、多特異性抗体、例えば、二特異性抗体である。多特異性抗体(典型的に、モノクローナル抗体)は、1つまたは複数の(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれより多くの)抗原上の、少なくとも2つの異なるエピトープ(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つ、またはこれより多く)に対する結合特異性を有する。
ある特定の実施形態では、本開示の多特異性抗体は、2つまたはこれより多くの結合特異性を含み、結合特異性の少なくとも1つは、GDF11エピトープに対する結合特異性であり、任意選択で、1つまたは複数の追加の結合特異性は、異なるActRIIリガンド(例えば、GDF8、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、BMP9、BMP10、および/またはBMP6)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)上のエピトープに対する結合特異性である。ある特定の実施形態では、多特異性抗体は、GDF11の2つまたはこれより多くの異なるエピトープに結合し得る。好ましくは、部分的に、GDF11エピトープに対する結合アフィニティーを有する、本開示の多特異性抗体を使用して、GDF11活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができ、任意選択で、1つまたは複数の異なるActRIIリガンド(例えば、GDF8、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、BMP9、BMP10、および/またはBMP6)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)の活性を阻害することができる。好ましい実施形態では、GDF11に結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、少なくともアクチビンBにさらに結合し、かつ/またはこれをさらに阻害する。任意選択で、GDF11に結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、アクチビンAに結合せず、かつ/またはこれを阻害しない。一部の実施形態では、GDF11に結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、少なくともGDF8にさらに結合し、かつ/またはこれをさらに阻害する。
ある特定の実施形態では、本開示の多特異性抗体は、2つまたはこれより多くの結合特異性を含み、結合特異性の少なくとも1つは、アクチビンBエピトープに対する結合特異性であり、任意選択で、1つまたは複数の追加の結合特異性は、異なるActRIIリガンド(例えば、GDF8、GDF11、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、BMP9、BMP10、および/またはBMP6)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)上のエピトープに対する結合特異性である。ある特定の実施形態では、多特異性抗体は、アクチビンBの2つまたはこれより多くの異なるエピトープに結合し得る。好ましくは、部分的に、アクチビンBエピトープに対する結合アフィニティーを有する本開示の多特異性抗体を使用して、アクチビンB活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができ、任意選択で、1つまたは複数の異なるActRIIリガンド(例えば、GDF8、GDF11、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、BMP9、BMP10、および/またはBMP6)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)の活性を阻害することができる。好ましい実施形態では、アクチビンBに結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、少なくともGDF11にさらに結合し、かつ/またはこれをさらに阻害する。任意選択で、アクチビンBに結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、アクチビンAに結合せず、かつ/またはこれを阻害しない。一部の実施形態では、アクチビンBに結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、少なくともGDF8にさらに結合し、かつ/またはこれをさらに阻害する。
ある特定の実施形態では、本開示の多特異性抗体は、2つまたはこれより多くの結合特異性を含み、結合特異性の少なくとも1つは、GDF8エピトープに対する結合特異性であり、任意選択で、1つまたは複数の追加の結合特異性は、異なるActRIIリガンド(例えば、GDF11、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、BMP9、BMP10、および/またはBMP6)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)上のエピトープに対する結合特異性である。ある特定の実施形態では、多特異性抗体は、GDF8の2つまたはこれより多くの異なるエピトープに結合し得る。好ましくは、部分的に、GDF8エピトープに対する結合アフィニティーを有する本開示の多特異性抗体を使用して、GDF8活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができ、任意選択で、1つまたは複数の異なるActRIIリガンド(例えば、GDF11、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、BMP9、BMP10、および/またはBMP6)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)の活性を阻害することができる。好ましい実施形態では、GDF8に結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、少なくともGDF11および/またはアクチビンBにさらに結合し、かつ/またはこれらをさらに阻害する。任意選択で、GDF8に結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、アクチビンAに結合せず、かつ/またはこれを阻害しない。
ある特定の実施形態では、本開示の多特異性抗体は、2つまたはこれより多くの結合特異性を含み、結合特異性の少なくとも1つは、アクチビンCエピトープに対する結合特異性であり、任意選択で、1つまたは複数の追加の結合特異性は、異なるActRIIリガンド(例えば、GDF8、GDF11、アクチビンB、アクチビンE、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、BMP9、BMP10、および/またはBMP6)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)上のエピトープに対する結合特異性である。ある特定の実施形態では、多特異性抗体は、アクチビンCの2つまたはこれより多くの異なるエピトープに結合し得る。好ましくは、部分的に、アクチビンCエピトープに対する結合アフィニティーを有する本開示の多特異性抗体を使用して、アクチビンC活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができ、任意選択で、1つまたは複数の異なるActRIIリガンド(例えば、GDF8、GDF11、アクチビンB、アクチビンE、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、BMP9、BMP10、および/またはBMP6)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)の活性を阻害することができる。好ましい実施形態では、アクチビンCに結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、少なくともGDF11および/またはアクチビンBにさらに結合し、かつ/またはこれらをさらに阻害する。任意選択で、アクチビンCに結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、アクチビンAに結合せず、かつ/またはこれを阻害しない。任意選択で、アクチビンCに結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、GDF8にさらに結合し、かつ/またはこれをさらに阻害する。
ある特定の実施形態では、本開示の多特異性抗体は、2つまたはこれより多くの結合特異性を含み、結合特異性の少なくとも1つは、アクチビンEエピトープに対する結合特異性であり、任意選択で、1つまたは複数の追加の結合特異性は、異なるActRIIリガンド(例えば、GDF8、GDF11、アクチビンC、アクチビンB、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、BMP9、BMP10、および/またはBMP6)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)上のエピトープに対する結合特異性である。ある特定の実施形態では、多特異性抗体は、アクチビンEの2つまたはこれより多くの異なるエピトープに結合し得る。好ましくは、部分的に、アクチビンEエピトープに対する結合アフィニティーを有する本開示の多特異性抗体を使用して、アクチビンE活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができ、任意選択で、1つまたは複数の異なるActRIIリガンド(例えば、GDF8、GDF11、アクチビンC、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、BMP9、BMP10、および/またはBMP6)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)の活性を阻害することができる。好ましい実施形態では、アクチビンEに結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、少なくともGDF11および/またはアクチビンBにさらに結合し、かつ/またはこれらをさらに阻害する。任意選択で、アクチビンEに結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、アクチビンAに結合せず、かつ/またはこれを阻害しない。任意選択で、アクチビンEに結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、GDF8にさらに結合し、かつ/またはこれをさらに阻害する。
ある特定の実施形態では、本開示の多特異性抗体は、2つまたはこれより多くの結合特異性を含み、結合特異性の少なくとも1つは、BMP6エピトープに対する結合特異性であり、任意選択で、1つまたは複数の追加の結合特異性は、異なるActRIIリガンド(例えば、GDF11、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、BMP9、およびBMP10)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)上のエピトープに対する結合特異性である。ある特定の実施形態では、多特異性抗体は、BMP6の2つまたはこれより多くの異なるエピトープに結合し得る。好ましくは、部分的に、BMP6エピトープに対する結合アフィニティーを有する本開示の多特異性抗体を使用して、BMP6活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができ、任意選択で、1つまたは複数の異なるActRIIリガンド(例えば、GDF11、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、BMP9、およびBMP10)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)の活性を阻害することができる。好ましい実施形態では、BMP6に結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、少なくともGDF11および/またはアクチビンBにさらに結合し、かつ/またはこれらをさらに阻害する。任意選択で、BMP6に結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、アクチビンAに結合せず、かつ/またはこれを阻害しない。任意選択で、BMP6に結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、GDF8にさらに結合し、かつ/またはこれをさらに阻害する。
ある特定の実施形態では、本開示の多特異性抗体は、2つまたはこれより多くの結合特異性を含み、結合特異性の少なくとも1つは、BMP9エピトープに対する結合特異性であり、任意選択で、1つまたは複数の追加の結合特異性は、異なるActRIIリガンド(例えば、GDF11、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、およびBMP10)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)上のエピトープに対する結合特異性である。ある特定の実施形態では、多特異性抗体は、BMP9の2つまたはこれより多くの異なるエピトープに結合し得る。好ましくは、部分的に、BMP9エピトープに対する結合アフィニティーを有する本開示の多特異性抗体を使用して、BMP9活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができ、任意選択で、1つまたは複数の異なるActRIIリガンド(例えば、GDF11、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、およびBMP10)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)の活性を阻害することができる。好ましい実施形態では、BMP9に結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、少なくともGDF11および/またはアクチビンBにさらに結合し、かつ/またはこれらをさらに阻害する。任意選択で、BMP9に結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、アクチビンAに結合せず、かつ/またはこれを阻害しない。任意選択で、BMP9に結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、GDF8にさらに結合し、かつ/またはこれをさらに阻害する。ある特定の実施形態では、BMP9に結合する多特異性抗体は、BMP9とTGFβスーパーファミリーのII型受容体(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB)との相互作用を阻害する。好ましくは、BMP9に結合する多特異性抗体は、BMP9とALK1との相互作用を阻害しないか、またはこれを実質的に阻害しない。
ある特定の実施形態では、本開示の多特異性抗体は、2つまたはこれより多くの結合特異性を含み、結合特異性の少なくとも1つは、BMP10エピトープに対する結合特異性であり、任意選択で、1つまたは複数の追加の結合特異性は、異なるActRIIリガンド(例えば、GDF11、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、およびBMP9)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)上のエピトープに対する結合特異性である。ある特定の実施形態では、多特異性抗体は、BMP10の2つまたはこれより多くの異なるエピトープに結合し得る。好ましくは、部分的に、BMP10エピトープに対する結合アフィニティーを有する、本開示の多特異性抗体を使用して、BMP10活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができ、任意選択で、1つまたは複数の異なるActRIIリガンド(例えば、GDF11、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、およびBMP9)および/またはActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体またはActRIIB受容体)の活性を阻害することができる。好ましい実施形態では、BMP10に結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、少なくともGDF11および/またはアクチビンBにさらに結合し、かつ/またはこれらをさらに阻害する。任意選択で、BMP10に結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、アクチビンAに結合せず、かつ/またはこれを阻害しない。任意選択で、BMP10に結合し、かつ/またはこれを阻害する本開示の多特異性抗体は、GDF8にさらに結合し、かつ/またはこれをさらに阻害する。ある特定の実施形態では、BMP10に結合する多特異性抗体は、BMP10とTGFβスーパーファミリーのII型受容体(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB)との相互作用を阻害する。好ましくは、BMP10に結合する多特異性抗体は、BMP10とALK1との相互作用を阻害しないか、またはこれを実質的に阻害しない。
ある特定の実施形態では、本開示の多特異性抗体は、2つまたはこれより多くの結合特異性を含み、結合特異性の少なくとも1つは、GDF11エピトープに対する結合特異性であり、他の1つの結合特異性は、アクチビンBエピトープに対する結合特異性である。好ましくは、部分的に、GDF11エピトープおよびアクチビンBエピトープに対する結合アフィニティーを有する本開示の多特異性抗体を使用して、GDF11およびアクチビンB両方の活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができる。一部の実施形態では、GDF11およびアクチビンBに結合し、かつ/またはこれらの活性を阻害する多特異性抗体は、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、GDF15、Nodal、GDF3、GDF3B、BMP9、BMP10、および/またはBMP6のうちの1つまたは複数にさらに結合し、かつ/またはこれらをさらに阻害する。任意選択で、GDF11およびアクチビンBに結合し、かつ/またはこれらを阻害する多特異性抗体は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはこれを実質的に阻害しない。
多特異性抗体を作製するための技法は、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の組換え共発現を含むがこれに限定されない[例えば、MilsteinおよびCuello(1983年)、Nature、305巻:537頁;国際特許公開第WO93/08829号;ならびにTrauneckerら(1991年)、EMBO J.、10巻:3655頁、および米国特許第5,731,168号(「ノブインホール」操作)を参照されたい]。多特異性抗体はまた、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果を操作すること(例えば、WO2009/089004A1を参照されたい);2つまたはこれより多くの抗体またはフラグメントを架橋すること[例えば、米国特許第4,676,980号;およびBrennanら(1985年)、Science、229巻:81頁を参照されたい];ロイシンジッパーを使用して、二特異性抗体を生成すること[例えば、Kostelnyら(1992年)、J. Immunol.、148巻(5号):1547~1553頁を参照されたい];二特異性抗体フラグメントを作製するための「ダイアボディー」技術を使用すること[例えば、Hollingerら(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:6444~6448頁を参照されたい];単鎖Fv(sFv)二量体を使用すること[例えば、Gruberら(1994年)、J. Immunol.、152巻:5368頁を参照されたい];および三特異性抗体を調製すること[例えば、Tuttら(1991年)、J. Immunol.、147巻:60頁を参照されたい]によって作製することもできる。多特異性抗体は、全長抗体または抗体フラグメントとして調製することができる。
本明細書にはまた、3つまたはこれより多くの機能的な抗原結合部位を有する操作抗体であって、「オクトパス抗体」を含む操作抗体も含まれる[例えば、US2006/0025576A1を参照されたい]。
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体)は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体とは、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、可能な改変体抗体、例えば、自然発生の変異を含有する、またはモノクローナル抗体調製物の生成時に発生する改変体抗体(このような改変体は、一般に少量で存在する)を除き同一であり、かつ/または同じエピトープに結合する。典型的に、異なるエピトープを指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一のエピトープを指向する。したがって、修飾語「モノクローナル」とは、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の性質を指し示し、いずれかの特定の方法による抗体の生成を必要とすると解釈されない。例えば、本方法に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有するトランスジェニック動物を活用する方法、本明細書で記載されるモノクローナル抗体を作製するためのこのような方法および他の例示的な方法を含むがこれらに限定されない様々な技法により作製することができる。
例えば、標準的なプロトコルによって、GDF11またはアクチビンBに由来する免疫原を使用することにより、抗タンパク質/抗ペプチド抗血清または抗タンパク質/抗ペプチドモノクローナル抗体を作製することができる[例えば、Antibodies: A
Laboratory Manual、HarlowおよびLane編(1988年)、Cold Spring Harbor Press、1988年を参照されたい]。マウス、ハムスター、またはウサギなどの哺乳動物を、GDF11ポリペプチドまたはアクチビンBポリペプチドの免疫原性形態、抗体応答を誘発することが可能である抗原性フラグメント、または融合タンパク質で免疫化することができる。タンパク質またはペプチドに免疫原性を付与するための技法は、キャリアへのコンジュゲート化または当該分野で周知の他の技法を含む。GDF11ポリペプチドまたはアクチビンBポリペプチドの免疫原性部分は、アジュバントの存在下で投与することができる。免疫化の進行は、血漿中または血清中の抗体力価の検出によりモニタリングすることができる。免疫原を抗原とする標準的なELISAまたは他のイムノアッセイを使用して、抗体生成レベルおよび/または結合アフィニティーレベルを評価することができる。
GDF11またはアクチビンBの抗原性調製物で動物を免疫化した後、抗血清を得ることができ、所望の場合、ポリクローナル抗体を血清から単離することができる。モノクローナル抗体を生成するために、抗体生成細胞(リンパ球)を、免疫化動物から採取し、標準的な体細胞融合手順により、骨髄腫細胞など、不死化細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞をもたらすことができる。このような技法は、当該分野で周知であり、例えば、ハイブリドーマ技法[例えば、KohlerおよびMilstein(1975年)、Nature、256巻:495~497頁を参照されたい]、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法[例えば、Kozbarら(1983年)、Immunology Today、4巻:72頁を参照されたい]、およびヒトモノクローナル抗体を生成するEBVハイブリドーマ技法[Coleら(1985年)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc.、77~96頁]が挙げられる。ハイブリドーマ細胞は、GDF11ポリペプチドまたはアクチビンBポリペプチドと特異的に反応性である抗体、およびこのようなハイブリドーマ細胞を含む培養物から単離されたモノクローナル抗体の生成について、免疫化学的にスクリーニングすることができる。
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸改変を、本明細書で提供される抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体)のFc領域に導入し、これにより、Fc領域改変体を生成することができる。Fc領域改変体は、1つまたは複数のアミノ酸位置において、アミノ酸改変(例えば、置換、欠失、および/または付加)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、またはヒトIgG4のFc領域)を含み得る。
例えば、本開示は、一部のエフェクター機能を保有するが、全てのエフェクター機能は保有しない抗体の改変体を企図し、これは、インビボにおける抗体の半減期は重要であるが、ある特定のエフェクター機能[例えば、補体依存性細胞傷害作用(CDC)および抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)]は不要または有害である用途に望ましい候補となる。インビトロおよび/またはインビボにおける細胞傷害作用アッセイを実行して、CDC活性および/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体が、FcγR結合を欠く(よって、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRnへの結合能は保持することを確保することができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞がFcγRIIIだけを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現は、例えば、RavetchおよびKinet(1991年)、Annu. Rev. Immunol.、9巻:457~492頁にまとめられている。関心のある分子のADCC活性を評価するインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号;Hellstrom, I.ら(1986年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、83巻:7059~7063頁;Hellstrom, Iら(1985年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、82巻:1499~1502頁;米国特許第5,821,337号;Bruggemann, M.ら(1987年)、J. Exp. Med.、166巻:1351~1361頁において記載されている。代替的に、非放射性アッセイ法を利用することができる(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害作用アッセイ;CellTechnology,Inc.、Mountain View、Calif.;およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害作用アッセイ、Promega、Madison、Wis.)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞として、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的に、または加えて、関心のある分子のADCC活性は、インビボにおいて、例えば、Clynesら(1998年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、95巻:652~656頁において開示されている動物モデルなどの動物モデルにおいて評価することができる。また、C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合できず、よって、CDC活性を欠くことを確認することもできる[例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402における、C1q結合ELISAおよびC3c結合ELISAを参照されたい]。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを実施することができる[例えば、Gazzano-Santoroら(1996年)、J. Immunol. Methods、202巻:163頁;Cragg, M. S.ら(2003年)、Blood、101巻:1045~1052頁;ならびにCragg, M. S.およびM. J. Glennie(2004年)、Blood、103巻:2738~2743頁を参照されたい]。当該分野で公知の方法を使用して、FcRnへの結合およびインビボにおけるクリアランス/半減期の決定もまた、実施することができる[例えば、Petkova, S. B.ら(2006年)、Intl. Immunol.、18巻(12号):1759~1769頁を参照されたい]。
エフェクター機能を低減した本開示の抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗ActRIIA抗体、または抗ActRIIB抗体)は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、および329のうちの1つまたは複数を置換した抗体を含む(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体は、アミノ酸265位、269位、270位、297位、および327位のうちの2つまたはこれより多くにおいて置換を有するFc変異体であって、残基265および297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc変異体を含むFc変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
ある特定の実施形態では、システイン操作抗体、例えば、抗体の1つまたは複数の残基をシステイン残基で置換した「チオMAb」を創出することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、残基の置換を、抗体の接近可能な部位に施す。システインでこれらの残基を置換することにより、反応性のチオール基が抗体の接近可能な部位に配置され、抗体を、薬物部分またはリンカー-薬物部分など、他の部分にコンジュゲートさせて、本明細書でさらに記載されるような、免疫結合体を創出するのに使用することができる。ある特定の実施形態では、以下の残基:軽鎖のV205(Kabat番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);および重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)のうちの任意の1つまたは複数を、システインで置換することができる。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号において記載されているように生成することができる。
加えて、望ましい抗体を同定するための抗体をスクリーニングするのに使用される技法は、得られる抗体の特性に影響を及ぼし得る。例えば、抗体を、溶液中の抗原の結合に使用する場合、溶液中での結合について試験することが望ましいと考えられる。抗体と抗原との相互作用を試験して、特に望ましい抗体を同定するために、様々な異なる技法が利用可能である。このような技法として、ELISA、表面プラズモン共鳴結合アッセイ(例えば、Biacore結合アッセイ、Biacore AB、Uppsala、Sweden)、サンドイッチアッセイ(例えば、IGEN International,Inc.、Gaithersburg、Marylandの常磁性ビーズシステム)、ウェスタンブロット、免疫沈降アッセイ、および免疫組織化学が挙げられる。
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体および/または結合ポリペプチドのアミノ酸配列改変体が企図される。例えば、抗体および/または結合ポリペプチドの結合アフィニティーおよび/または他の生体特性を改善することが望ましい場合がある。抗体および/または結合ポリペプチドのアミノ酸配列改変体は、抗体および/または結合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することにより調製することもでき、ペプチド合成により調製することもできる。このような改変は、例えば、抗体および/または結合ポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/またはこれらへの挿入、および/またはこれらの置換を含む。欠失、挿入、および置換の任意の組合せを、最終的な構築物が、所望の特徴、例えば、標的への結合(GDF11および/またはアクチビンBへの結合)を保有するという条件で、最終的な構築物に到達するように施すことができる。
変更(例えば、置換)をHVR内に施して、例えば、抗体のアフィニティーを改善することができる。このような変更は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスにおいて高頻度で変異を経るコドンによりコードされる残基[例えば、Chowdhury(2008年)、Methods Mol. Biol.、207巻:179~196頁を参照されたい]、および/またはSDR(a-CDR)に施すことができ、結果として得られる改変体VHまたは改変体VLを結合アフィニティーについて試験する。当該分野では、二次ライブラリーを構築し、ここから再選択することによるアフィニティー成熟が記載されている[例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology、178巻:1~37頁、O’Brienら編、Humana Press、Totowa、N.J.(2001年)を参照されたい]。アフィニティー成熟の一部の実施形態では、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向変異誘発)のいずれかにより、成熟のために選択された可変遺伝子に多様性を導入する。次いで、二次ライブラリーを創出する。次いで、ライブラリーをスクリーニングして、所望のアフィニティーを有する任意の抗体改変体を同定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)をランダム化する、HVR指向アプローチを伴う。抗原の結合に関与するHVR残基は、例えばアラニン走査変異誘発またはモデル化を使用して、特異的に同定することができる。特にCDR-H3およびCDR-L3は、しばしば標的とされる。
ある特定の実施形態では、このような変更が、抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減しない限りにおいて、1つまたは複数のHVR内に置換、挿入、または欠失を施すことができる。例えば、結合アフィニティーを実質的に低減しない保存的変更(例えば、本明細書で提供される保存的置換)を、HVR内に施すことができる。このような変更は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外部であり得る。上記で提供した改変体VH配列およびVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、不変であるか、または1つ以下、2つ以下、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有する。
変異誘発の標的とされ得る抗体および/または結合ポリペプチド残基または領域の同定に有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989年)、Science、244巻:1081~1085頁により記載されているように、「アラニン走査変異誘発」と呼ばれている。この方法では、残基または標的残基群(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluなどの帯電残基)を同定し、中性であるかまたは負に帯電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)に置きかえて、抗体-抗原間相互作用が影響を受けるかどうかを決定する。初期の置換に対して機能的な感受性を顕示するアミノ酸位置に、さらなる置換を導入することもできる。代替的に、または加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を決定して、抗体と抗原との間の接点を同定する。このような接触残基および近傍の残基は、置換の標的としてもよく、置換の候補として消失させてもよい。改変体をスクリーニングして、それらが所望の特性を含有するかどうかを決定することができる。
アミノ酸配列の挿入は、1残基~100またはこれより多くの残基を含有するポリペプチドの範囲の長さのアミノ末端融合物および/またはカルボキシル末端融合物のほか、単一または複数のアミノ酸残基の内部配列挿入も含む。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入改変体として、抗体のN末端もしくはC末端の、酵素(例えば、ADEPTのための)、または抗体の血清中半減期を延長するポリペプチドへの融合物が挙げられる。
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体および/または結合ポリペプチドを、当該分野で公知であり、たやすく利用可能である、追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾することができる。抗体および/または結合ポリペプチドの誘導体化に適する部分として、水溶性ポリマーが挙げられるがこれに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例として、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)、およびデキストラン、またはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、ポリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中のその安定性のために、製造において有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量であることが可能であり、分枝状でもよく、非分枝状でもよい。抗体および/または結合ポリペプチドに付加させるポリマーの数は、変化させることができ、1つより多くのポリマーを付加させる場合、それらは、同じ分子でもよく、異なる分子でもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/または種類は、抗体の誘導体および/または結合ポリペプチドの誘導体が規定の条件下での治療に使用されようと、改善する抗体および/または結合ポリペプチドの特定の特性または機能を含むがこれらに限定されない検討事項に基づき決定することができる。
本明細書で開示される抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンA抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗GDF8抗体、抗BMP6抗体、抗ActRIIA抗体、抗GDF15抗体、抗Nodal抗体、抗GDF3抗体、抗BMP3抗体、抗BMP3B抗体、抗BMP9抗体、抗BMP10抗体、または抗ActRIIB抗体)のいずれかを、本開示の1つまたは複数の追加のアンタゴニスト作用因子と組み合わせて、所望の効果を達成することができる。本明細書で開示される抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンA抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗GDF11抗体、抗GDF8抗体、抗BMP6抗体、抗ActRIIA抗体、抗GDF15抗体、抗Nodal抗体、抗GDF3抗体、抗BMP3抗体、抗BMP3B抗体、抗BMP9抗体、抗BMP10抗体、または抗ActRIIB抗体)を、本明細書で開示される別の抗体、または本明細書で開示されるリガンドトラップポリペプチド(例えば、GDF11トラップポリペプチド、アクチビンBトラップポリペプチド、またはGDF11/アクチビンBトラップポリペプチド)、または本開示の標的のいずれかを指向する低分子アンタゴニスト(例えば、アクチビンA低分子アンタゴニスト、アクチビンB低分子アンタゴニスト、GDF11低分子アンタゴニスト、アクチビンC低分子アンタゴニスト、アクチビンE低分子アンタゴニスト、GDF8低分子アンタゴニスト、BMP6低分子アンタゴニスト、GDF15低分子アンタゴニスト、Nodal低分子アンタゴニスト、GDF3低分子アンタゴニスト、BMP3B低分子アンタゴニスト、BMP3B低分子アンタゴニスト、BMP9低分子アンタゴニスト、またはBMP10低分子アンタゴニスト)、または本開示のポリヌクレオチドアンタゴニスト(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、またはBMP6のポリヌクレオチドアンタゴニスト)、または本明細書で開示される非抗体の結合ポリペプチド(例えば、GDF11結合ポリペプチド、アクチビンA結合ポリペプチド、アクチビンB結合ポリペプチド、アクチビンE結合ポリペプチド、アクチビンC結合ポリペプチド、GDF8結合ポリペプチド、GDF15結合ポリペプチド、Nodal結合ポリペプチド、GDF3結合ポリペプチド、BMP3結合ポリペプチド、BMP3Bポリペプチド、BMP9結合ポリペプチド、BMP10結合ポリペプチド、またはBMP6結合ポリペプチド)と組み合わせることができる。例えば、抗GDF11抗体を、本開示のアクチビンBアンタゴニスト(例えば、アクチビンBトラップポリペプチド、抗アクチビンB抗体、アクチビンBの低分子アンタゴニスト、アクチビンBのポリヌクレオチドアンタゴニスト、またはアクチビンBの非抗体ポリペプチドアンタゴニスト)と組み合わせて、GDF11およびアクチビンB両方の活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができる。代替的な実施形態では、抗アクチビンB抗体を、本開示のGDF11アンタゴニスト(例えば、GDFトラップポリペプチド、抗GDF11抗体、GDF11の低分子アンタゴニスト、GDF11のポリヌクレオチドアンタゴニスト、またはGDF11の非抗体ポリペプチドアンタゴニスト)と組み合わせて、GDF11およびアクチビンB両方の活性を阻害することができる。
B.GDF11トラップポリペプチド、アクチビンBトラップポリペプチド、およびGDF11/アクチビンBトラップポリペプチド
一態様では、本開示のアンタゴニスト(阻害性)作用因子は、ActRIIポリペプチドおよびその改変体である。本明細書で使用する場合、用語「ActRII」とは、II型アクチビン受容体のファミリーを指す。このファミリーは、アクチビン受容体IIA型(ActRIIA)およびアクチビン受容体IIB型(ActRIIB)の両方を含む。一部の実施形態では、本開示の方法は、GDF11、GDF8、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、およびBMP3Bのうちの1つまたは複数に結合し、かつ/またはこれらの活性(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIBによるSmad2/3および/またはSmad1/5/8のシグナル伝達の活性化)に拮抗(を阻害)する、1つまたは複数の改変体ActRIIポリペプチド(例えば、改変体ActRIIAおよびActRIIBポリペプチド)の使用に関する。一部の実施形態では、改変体ActRIIポリペプチドは、リガンド「トラップ」ポリペプチド(例えば、GDF11トラップポリペプチド、アクチビンBトラップポリペプチド、GDF11/アクチビンBトラップポリペプチド)である。一部の実施形態では、改変体ActRIIポリペプチド、およびその融合構築物は、BMP9および/またはBMP10に対する結合アフィニティーが低減されている。
本明細書で使用する場合、用語「ActRIIB」とは、任意の種に由来するアクチビン受容体IIB型(ActRIIB)タンパク質のファミリーと、変異誘発または他の改変によるこのようなActRIIBタンパク質に由来する改変体とを指す。本明細書におけるActRIIBに対する言及は、現在同定されている形態のうちの任意の1つに対する言及であるものと理解される。ActRIIBファミリーのメンバーは、一般に、システインリッチな領域を持つリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび予測セリン/スレオニンキナーゼ活性を持つ細胞質ドメインから構成される、膜貫通タンパク質である。ヒトActRIIB可溶性細胞外ドメインおよび関連のActRIIA可溶性細胞外ドメインのアミノ酸配列のアライメントを図1に示す。
用語「ActRIIBポリペプチド」は、ActRIIBファミリーメンバーの任意の天然に存在するポリペプチド、ならびに、有用な活性を保持するその任意の改変体(変異体、フラグメント、融合物およびペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドを包含する[例えば、国際特許出願公開第WO2006/012627号を参照されたい]。本明細書で記載される、全てのActRIIB関連ポリペプチドのアミノ酸の番号付けは、そうでないことが具体的に指示されない限りにおいて、配列番号1についての番号付けに基づく。
本出願者らは、Hildenら[Blood(1994年)、83巻(8号):2163~2170頁]により開示されている配列を有するFc融合タンパク質であって、配列番号1のアミノ酸64に対応する位置においてアラニン(A65)を有するFc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF11に対するアフィニティーが比較的に低いことを確認した。これに対し、位置においてアルギニン(R65)を有する同じFc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF11に対するアフィニティーが、低ナノモル~高ピコモルの範囲である。したがって、R64を有する配列を、本開示におけるヒトActRIIBについての「野生型」参照配列として使用する。
ヒトActRIIB前駆体タンパク質の配列は以下の通りである。
シグナルペプチドは、一重下線を付して指し示し、細胞外ドメインは、太字フォントで指し示し、潜在的な、天然N-連結グリコシル化部位は、二重下線で指し示す。
64位にアラニンを持つ形態も、以下の通り文献に報告されている。
ヒトActRIIBの可溶性(細胞外)の、プロセシング後のポリペプチド配列は以下の通りである。
A64を持つ代替の形態は以下の通りである。
一部の実施形態では、タンパク質はN末端に「SGR...」配列を伴って生成され得る。細胞外ドメインのC末端「テール」を一重下線によって示す。「テール」が欠失された配列(△15配列)は以下の通りである。
A64を持つ代替の形態は以下の通りである。
ヒトActRIIB前駆体タンパク質をコードする核酸配列は以下の通りである(GenbankエントリーNM_001106のヌクレオチド5~1543;示した配列は64位にアラニンを提供し、代わりにアルギニンを提供するように改変され得る)。
ヒトActRIIBの可溶性(細胞外)ポリペプチドをコードする核酸配列は以下の通りである(示した配列は64位にアラニンを提供し、代わりにアルギニンを提供するように改変され得る。
ある特定の実施形態では、本開示は、ActRIIAポリペプチドに関する。本明細書で使用する場合、用語「ActRIIA」とは、任意の種に由来するアクチビン受容体IIA型(ActRIIA)タンパク質のファミリーと、変異誘発または他の改変によるこのようなActRIIAタンパク質に由来する改変体とを指す。本明細書におけるActRIIAへの言及は、現在同定されている形態のいずれか1つに対する言及であると理解される。ActRIIAファミリーのメンバーは一般に、システインリッチな領域を有するリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予測されるセリン/スレオニンキナーゼ活性を有する細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。
用語「ActRIIAポリペプチド」は、ActRIIAファミリーメンバーの任意の自然発生のポリペプチドのほか、有用な活性を保持する任意のその改変体(変異体、フラグメント、融合物、およびペプチド模倣物形態を含む)(例えば、国際特許出願公開第WO2006/012627号を参照されたい)を含むポリペプチドを含む。本明細書で記載される、全てのActRIIA関連ポリペプチドのアミノ酸の番号付けは、そうでないことが具体的に指示されない限りにおいて、配列番号9についての番号付けに基づく。
ヒトActRIIA前駆体タンパク質配列は、以下の通りである。
シグナルペプチドは、一重下線を付して指し示し、細胞外ドメインは、太字フォントで指し示し、潜在的な、天然N-連結グリコシル化部位は、二重下線で指し示す。
ヒトActRIIA可溶性(細胞外)の、プロセシング後のポリペプチド配列は、以下の通りである。
細胞外ドメインのC末端「テール」は、一重下線で指し示す。「テール」を欠失させた配列(Δ15配列)は、以下の通りである。
ヒトActRIIA前駆体タンパク質をコードする核酸配列は、以下の通りである(GenbankエントリーNM_001616のヌクレオチド164~1705)。
ヒトActRIIA可溶性(細胞外)ポリペプチドをコードする核酸配列は、以下の通りである。
ある特定の実施形態では、本開示は、可溶性ActRIIポリペプチドであるActRIIポリペプチド(ActRIIAおよびActRIIBポリペプチド)に関する。本明細書で記載する場合、用語「可溶性ActRIIポリペプチド」とは一般に、ActRIIタンパク質の細胞外ドメインを含むポリペプチドを指す。本明細書で使用する場合、用語「可溶性ActRIIポリペプチド」は、ActRIIタンパク質の任意の自然発生の細胞外ドメインのほか、有用な活性を保持する任意のその改変体(変異体、フラグメント、およびペプチド模倣物形態を含む)(例えば、本明細書で記載される、GDF11トラップ、アクチビンBトラップ、およびGDF11/アクチビンBトラップ)を含む。可溶性ActRIIポリペプチドの他の例は、ActRIIタンパク質の細胞外ドメインに加えて、シグナル配列を含む。例えば、シグナル配列は、ActRIIAまたはActRIIBタンパク質の天然シグナル配列であってもよく、例えば、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)シグナル配列またはミツバチメリチン(HBM)シグナル配列を含む、別のタンパク質に由来するシグナル配列であってもよい。
HBMシグナル配列の例は、以下の通りである。
MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号14)
TPAシグナル配列の例は、以下の通りである。
MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号15)
ある特定の実施形態では、本開示は、ActRIIポリペプチドのリガンド結合活性(例えば、結合特異性)を変更させるように、ActRIIポリペプチドの細胞外ドメイン(リガンド結合ドメインとも呼ばれる)内に変異を施すことを企図する。ある特定の態様では、このような「リガンドトラップ」ポリペプチドは、1つまたは複数の特異的ActRIIリガンドに対する結合アフィニティーを変更させている(上昇または低減している)。他の態様では、リガンドトラップポリペプチドは、1つまたは複数のActRIIリガンドに対する結合特異性を変更させている。
例えば、本開示は、少なくともGDF11および/またはアクチビンBに優先的に結合するリガンドトラップポリペプチドを使用する方法、特に、赤血球レベルを高め、かつ/または貧血を処置することを必要とする対象において、赤血球レベルを高め、かつ/または貧血を処置するための方法を提供する。任意選択で、本開示のトラップポリペプチドは、アクチビンAに結合せず、かつ/またはこれを阻害しない。任意選択で、本開示のトラップポリペプチドは、GDF8にさらに結合する。一部の実施形態では、GDF11および/またはアクチビンBに結合し、かつ/またはこれらを阻害する本開示のトラップポリペプチドは、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、およびGDF8のうちの1つまたは複数にさらに結合し、かつ/またはこれらをさらに阻害する。任意選択で、本開示のトラップポリペプチドは、BMP9および/またはBMP10に対する結合アフィニティーが低減されている~これらに対する結合アフィニティーを有しない。
本明細書で開示されるように、GDF11/アクチビンBトラップは、GDF11およびアクチビンBの両方に結合し、かつ/またはこれらの活性(例えば、GDF11およびアクチビンBに媒介される、ActRIIAまたはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達経路の活性化)に拮抗(を阻害)する改変体ActRIIポリペプチド(例えば、改変体ActRIIAポリペプチドまたは改変体ActRIIBポリペプチド)である。したがって、本開示は、ActRII受容体のリガンド結合ドメインの変更[例えば、1つまたは複数のアミノ酸変異(例えば、アミノ酸置換、付加、または欠失)を含む]を含み、ActRII受容体の非改変(野生型)リガンド結合ドメインと比べて、GDF11およびアクチビンBに対する増大した選択性を部分的に特徴とする、GDF11/アクチビンBトラップを提供する。任意選択で、GDF11/アクチビンBトラップは、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性(例えば、アクチビンAに媒介される、ActRIIAまたはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達経路の活性化)を実質的に阻害しない。
一部の実施形態では、本開示のGDF11/アクチビンBトラップの、GDF11および/またはアクチビンBに対する結合アフィニティーは、ActRII受容体の非改変(野生型)リガンド結合ドメインと比べて、同等であるかまたは増大している(例えば、2倍、3倍、10倍、100倍、1000倍増大した結合アフィニティー)。任意選択で、GDF11/アクチビンBトラップは、変更させたActRIIリガンド結合ドメインであって、そのアクチビンAへの結合についてのKDの、GDF11への結合についてのKDに対する比が、非改変(野生型)ActRIIリガンド結合ドメインについての比と比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、またはさらに1000倍大きい、ActRIIリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、GDF11/アクチビンBトラップは、変更させたActRIIリガンド結合ドメインであって、そのアクチビンAへの結合についてのKDの、アクチビンBへの結合についてのKDに対する比が、非改変(野生型)ActRIIリガンド結合ドメインについての比と比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、またはさらに1000倍大きい、ActRIIリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、GDF11/アクチビンBトラップは、変更させたActRIIリガンド結合ドメインであって、そのアクチビンAの阻害についてのIC50の、GDF11の阻害についてのIC50に対する比が、非改変(野生型)ActRIIリガンド結合ドメインと比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、またはさらに1000倍大きい、ActRIIリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、GDF11/アクチビンBトラップは、変更させたActRIIリガンド結合ドメインであって、そのアクチビンAの阻害についてのIC50の、アクチビンBの阻害についてのIC50に対する比が、非改変(野生型)ActRIIリガンド結合ドメインと比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、またはさらに1000倍大きい、ActRIIリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、GDF11/アクチビンBトラップは、GDF11を、アクチビンAの阻害についてのIC50より、多くとも、2分の1、5分の1、10分の1、またはさらに100分の1小さいIC50で阻害する、変更させたリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、GDF11/アクチビンBトラップは、アクチビンBを、アクチビンAの阻害についてのIC50より、多くとも、2分の1、5分の1、10分の1、またはさらに100分の1小さいIC50で阻害する、変更させたリガンド結合ドメインを含む。
一部の実施形態では、本開示のGDF11/アクチビンBトラップは任意選択で、BMP6、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、およびBMP10、およびGDF8のうちの1つまたは複数にさらに結合し、かつ/またはこれらの活性をさらに阻害する。
一部の実施形態では、本開示のGDF11/アクチビンBトラップは、配列番号1または2のアミノ酸29~109に少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、本開示のGDF11/アクチビンBトラップは、配列番号1または2のアミノ酸29~109を含まないか、またはこれらからならない。他の好ましい実施形態では、本開示のGDF11/アクチビンBトラップは、配列番号1または2に照らした79位において、酸性アミノ酸[例えば、アスパラギン(D)酸またはグルタミン(E)酸]を含まない。
他の実施形態では、GDF11/アクチビンBトラップは、配列番号3、4、5、6、21、23、48、および49のいずれか1つに、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、本開示のGDF11/アクチビンBトラップは、配列番号3、4、5、6、21、23、48、および49のいずれか1つのアミノ酸配列を含まないか、またはこれらからならない。
一部の実施形態では、本開示のGDF11/アクチビンBトラップは、配列番号9のアミノ酸30~110に、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、本開示のGDF11/アクチビンBトラップは、配列番号9のアミノ酸30~110を含まないか、またはこれらからならない。他の実施形態では、GDF11/アクチビントラップは、配列番号10、11、18、および20のいずれか1つに、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、本開示のGDF11/アクチビンBトラップは、配列番号10、11、18、および20のいずれか1つのアミノ酸配列を含まないか、またはこれらからならない。
本明細書で開示されるように、GDF11トラップは、GDF11に結合し、かつ/またはその活性(例えば、GDF11に媒介される、ActRIIAまたはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達経路の活性化)に拮抗(を阻害)するが、アクチビンBには実質的に結合せず、かつ/またはその活性(例えば、アクチビンBに媒介される、ActRIIAまたはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達経路の活性化)を実質的に阻害しない改変体ActRIIポリペプチド(例えば、改変体ActRIIAポリペプチドまたは改変体ActRIIBポリペプチド)である。したがって、本開示は、ActRII受容体の変更させたリガンド結合ドメイン[例えば、1つまたは複数のアミノ酸変異(例えば、アミノ酸置換、付加、または欠失)を含む]を含み、ActRII受容体の非改変(野生型)リガンド結合ドメインと比べて、GDF11に対する増大した選択性を部分的に特徴とする、GDF11トラップを提供する。任意選択で、GDF11トラップは、アクチビンAに結合せず、かつ/またはその活性(例えば、アクチビンAに媒介される、ActRIIAまたはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達経路の活性化)を阻害しない。
一部の実施形態では、本開示のGDF11トラップの、GDF11に対する結合アフィニティーは、ActRII受容体の非改変(野生型)リガンド結合ドメインと比べて、同等であるかまたは増大している(例えば、2倍、3倍、10倍、100倍、1000倍増大した結合アフィニティー)。任意選択で、GDF11トラップは、変更させたActRIIリガンド結合ドメインであって、そのアクチビンAへの結合についてのKDの、GDF11への結合についてのKDに対する比が、非改変(野生型)ActRIIリガンド結合ドメインについての比と比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、またはさらに1000倍大きい、ActRIIリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、GDF11トラップは、変更させたActRIIリガンド結合ドメインであって、そのアクチビンBへの結合についてのKDの、GDF11への結合についてのKDに対する比が、非改変(野生型)ActRIIリガンド結合ドメインについての比と比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、またはさらに1000倍大きい、ActRIIリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、GDF11トラップは、変更させたActRIIリガンド結合ドメインであって、そのアクチビンAの阻害についてのIC50の、GDF11の阻害についてのIC50に対する比が、非改変(野生型)ActRIIリガンド結合ドメインと比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、またはさらに1000倍大きい、ActRIIリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、GDF11トラップは、変更させたActRIIリガンド結合ドメインであって、そのアクチビンBの阻害についてのIC50の、GDF11の阻害についてのIC50に対する比が、非改変(野生型)ActRIIリガンド結合ドメインと比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、またはさらに1000倍大きい、ActRIIリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、GDF11トラップは、GDF11を、アクチビンAの阻害についてのIC50より、多くとも、2分の1、5分の1、10分の1、またはさらに100分の1小さいIC50で阻害する、変更させたリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、GDF11トラップは、GDF11を、アクチビンBの阻害についてのIC50より、多くとも、2分の1、5分の1、10分の1、またはさらに100分の1小さいIC50で阻害する、変更させたリガンド結合ドメインを含む。
一部の実施形態では、本開示のGDF11トラップは任意選択で、BMP6、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、BMP10、およびGDF8のうちの1つまたは複数にさらに結合し、かつ/またはこれらの活性をさらに阻害する。
一部の実施形態では、本開示のGDF11トラップは、配列番号1または2のアミノ酸29~109に、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、本開示のGDF11トラップは、配列番号1または2のアミノ酸29~109を含まないか、またはこれらからならない。他の好ましい実施形態では、本開示のGDF11トラップは、配列番号1または2に照らした79位において、酸性アミノ酸[例えば、アスパラギン(D)酸またはグルタミン(E)酸]を含まない。
他の実施形態では、GDF11トラップは、配列番号3、4、5、6、21、23、48、および49のいずれか1つに、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、本開示のGDF11トラップは、配列番号3、4、5、6、21、23、48、および49のいずれか1つのアミノ酸配列を含まないか、またはこれらからならない。
一部の実施形態では、本開示のGDF11トラップは、配列番号9のアミノ酸30~110に、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、本開示のGDF11トラップは、配列番号9のアミノ酸30~110を含まないか、またはこれらからならない。他の実施形態では、GDF11トラップは、配列番号10、11、18、および20のいずれか1つに、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、本開示のGDF11トラップは、配列番号10、11、18、および20のいずれか1つのアミノ酸配列を含まないか、またはこれらからならない。
本明細書で開示されるように、アクチビンBトラップは、アクチビンBに結合し、かつ/またはその活性(例えば、アクチビンBに媒介される、ActRIIAまたはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達経路の活性化)に拮抗(を阻害)するが、GDF11には実質的に結合せず、かつ/またはその活性(例えば、GDF11に媒介される、ActRIIAまたはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達経路の活性化)を実質的に阻害しない、改変体ActRIIポリペプチド(例えば、改変体ActRIIAポリペプチドまたは改変体ActRIIBポリペプチド)である。したがって、本開示は、変更させたActRII受容体のリガンド結合ドメイン[例えば、1つまたは複数のアミノ酸変異(例えば、アミノ酸置換、付加、または欠失)を含む]を含み、ActRII受容体の非改変(野生型)リガンド結合ドメインと比べて、アクチビンBに対する増大した選択性を部分的に特徴とする、アクチビンBトラップを提供する。任意選択で、アクチビンBトラップは、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性(例えば、アクチビンAに媒介される、ActRIIAまたはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達経路の活性化)を実質的に阻害しない。
一部の実施形態では、本開示のアクチビンBトラップの、アクチビンBに対する結合アフィニティーは、ActRII受容体の非改変(野生型)リガンド結合ドメインと比べて、同等であるかまたは増大している(例えば、2倍、3倍、10倍、100倍、1000倍増大した結合アフィニティー)。任意選択で、アクチビンBトラップは、変更させたActRIIリガンド結合ドメインであって、そのアクチビンAへの結合についてのKDの、アクチビンBへの結合についてのKDに対する比が、非改変(野生型)ActRIIリガンド結合ドメインについての比と比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、またはさらに1000倍大きい、ActRIIリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、アクチビンBトラップは、変更させたActRIIリガンド結合ドメインであって、そのGDF11への結合についてのKDの、アクチビンBへの結合についてのKDに対する比が、非改変(野生型)ActRIIリガンド結合ドメインについての比と比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、またはさらに1000倍大きい、ActRIIリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、アクチビンBトラップは、変更させたActRIIリガンド結合ドメインであって、そのアクチビンAの阻害についてのIC50の、アクチビンBの阻害についてのIC50に対する比が、非改変(野生型)ActRIIリガンド結合ドメインと比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、またはさらに1000倍大きい、ActRIIリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、アクチビンBトラップは、変更させたActRIIリガンド結合ドメインであって、そのGDF11の阻害についてのIC50の、アクチビンBの阻害についてのIC50に対する比が、非改変(野生型)ActRIIリガンド結合ドメインと比べて、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、またはさらに1000倍大きい、ActRIIリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、アクチビンBトラップは、アクチビンBを、アクチビンAの阻害についてのIC50より、多くとも、2分の1、5分の1、10分の1、またはさらに100分の1小さいIC50で阻害する、変更させたリガンド結合ドメインを含む。任意選択で、アクチビンBトラップは、アクチビンBを、GDF11の阻害についてのIC50より、多くとも、2分の1、5分の1、10分の1、またはさらに100分の1小さいIC50で阻害する、変更させたリガンド結合ドメインを含む。
一部の実施形態では、本開示のアクチビンBトラップは任意選択で、BMP6、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、GDF15、Nodal、BMP3、GDF3、BMP3B、BMP9、BMP10、およびGDF8のうちの1つまたは複数にさらに結合し、かつ/またはこれらの活性をさらに阻害する。
一部の実施形態では、本開示のアクチビンBトラップは、配列番号1または2のアミノ酸29~109に、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、本開示のアクチビンBトラップは、配列番号1または2のアミノ酸29~109を含まないか、またはこれらからならない。他の好ましい実施形態では、本開示のGDF11トラップは、配列番号1または2に照らした79位において、酸性アミノ酸[例えば、アスパラギン(D)酸またはグルタミン(E)酸]を含まない。
他の実施形態では、アクチビンBトラップは、配列番号3、4、5、6、21、23、48、および49のいずれか1つに、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、本開示のアクチビンBトラップは、配列番号3、4、5、6、21、23、48、および49のいずれか1つのアミノ酸配列を含まないか、またはこれらからならない。
一部の実施形態では、本開示のアクチビンBトラップは、配列番号9のアミノ酸30~110に、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、本開示のアクチビンBトラップは、配列番号9のアミノ酸30~110を含まないか、またはこれらからならない。他の実施形態では、アクチビンBトラップは、配列番号10、11、18、および20のいずれか1つに、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、本開示のアクチビンBトラップは、配列番号10、11、18、および20のいずれか1つのアミノ酸配列を含まないか、またはこれらからならない。
当業者により認識されるように、記載される変異、改変体、または修飾の大半は、核酸レベルで施すこともでき、場合によって、翻訳後修飾により施すこともでき、化学合成により施すこともできる。このような技法は、当該分野で周知であり、本明細書で記載される。
当該分野では、ActRIIタンパク質が、構造的特徴および機能的特徴に関して、特に、リガンド結合に関して、十分に特徴付けられている[例えば、Attisanoら(1992年)、Cell、68巻(1号):97~108頁;Greenwaldら(1999年)、Nature Structural Biology、6巻(1号):18~22頁;Allendorphら(2006年)、PNAS、103巻(20号):7643~7648頁;Thompsonら(2003年)、The EMBO Journal、22巻(7号):1555~1566頁;ならびに米国特許第7,709,605号;同第7,612,041号;および同第7,842,663号を参照されたい]。例えば、Attisanoらは、ActRIIBの細胞外ドメインのC末端におけるプロリンノットの欠失により、受容体のアクチビンに対するアフィニティーが低減されることを示した。配列番号1のアミノ酸20~119を含有するActRIIB-Fc融合タンパク質、「ActRIIB(20~119)-Fc」は、プロリンノット領域および完全な膜近傍ドメインを含むActRIIB(20~134)-Fcと比較してGDF-11およびアクチビンへの結合が減少している(例えば、米国特許第7,842,663号を参照のこと)。しかし、ActRIIB(20~129)-Fcタンパク質は、プロリンノット領域が破壊されているにもかかわらず、野生型と比較して同様だがいくらか減少した活性を保持する。したがって、アミノ酸134、133、132、131、130および129(配列番号1または2に照らして)で終止するActRIIB細胞外ドメインは全て活性であると予想されるが、134または133で終止する構築物が最も活性であり得る。同様に、残基129~134(配列番号1または2に照らして)のいずれかにおける変異によってリガンドの結合親和性が大幅に変更されるとは予想されない。この裏付けとして、P129およびP130(配列番号1または2に照らして)の変異によってリガンドの結合は実質的に低下しない。したがって、本開示のActRIIBトラップポリペプチドは、早ければアミノ酸109(最後のシステイン)で終了し得るが、109~119で終わる形態は、リガンドの結合が減少していると予想される。アミノ酸119(配列番号1または2に照らして)は、不完全に保存されているので、容易に変更または切断される。128以後(配列番号1または2に照らして)で終わるActRIIBに基づくリガンドトラップはリガンドの結合活性を保持している。119~127(配列番号1または2に照らして)で終わるActRIIBに基づくリガンドトラップは、中間の結合能を有する。これらの形態はいずれも、臨床的または実験的な設定に応じて使用することが望ましい場合がある。
ActRIIBのN末端では、アミノ酸29またはその手前(配列番号1または2に照らして)で始まるタンパク質が、リガンド結合活性を保持することが予想される。アミノ酸29は、開始システインを表す。24位(配列番号1または2に照らして)における、アラニンからアスパラギンへの変異は、リガンド結合に実質的に影響を及ぼさずに、N-連結グリコシル化配列を導入する(例えば、米国特許第7,842,663号を参照されたい)。これにより、シグナル切断ペプチドとシステイン架橋領域との間の領域であって、アミノ酸20~29に対応する領域内の変異は、十分に許容されることが確認される。特に、20、21、22、23、および24位(配列番号1または2に照らして)で始まるActRIIBベースのリガンドトラップ構築物は、一般的なリガンド結合活性を保持し、25、26、27、28、および29位(配列番号1または2に照らして)で始まるActRIIBベースのリガンドトラップ構築物もまた、リガンド結合活性を保持することが予想される。例えば、米国特許第7,842,663号において示されているデータは、驚くべきことに、22、23、24、または25で始まるActRIIB構築物は、最大の活性を有することを実証する。
まとめると、ActRIIBの活性部分(例えば、リガンド結合活性)は、配列番号1または2のアミノ酸29~109を含む。したがって、本開示のActRIIBベースのリガンドトラップ構築物は、例えば、ActRIIBの一部であって、配列番号1または2のアミノ酸20~29に対応する残基で始まり(例えば、アミノ酸20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29で始まり)、配列番号1または2のアミノ酸109~134に対応する位置で終わる(例えば、アミノ酸109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134で終わる)一部に少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。好ましい実施形態では、本開示の、ActRIIBベースのリガンドトラップポリペプチドは、配列番号1または2の79位に対応する位置に酸性アミノ酸[例えば、アスパラギン(D)酸またはグルタミン(E)酸]を含まない。他の好ましい実施形態では、本開示のActRIIBベースのリガンドトラップポリペプチドは、配列番号1または2のアミノ酸29~109を含まないか、またはこれらからならない。他の例は、配列番号1または2の20~29位(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29位)、または21~29位(例えば、21、22、23、24、25、26、27、28、または29位)で始まり、119~134位(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134位)、119~133位(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、または133位)、129~134位(例えば、129、130、131、132、133、または134位)、または129~133位(例えば、129、130、131、132、または133位)で終わる、ActRIIBベースのリガンドトラップ構築物を含む。他の例は、配列番号1または2の20~24位(例えば、20、21、22、23、または24位)、21~24位(例えば、21、22、23、または24位)、または22~25位(例えば、22、22、23、または25位)で始まり、109~134位(例えば、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134位)、119~134位(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、または134位)、または129~134位(例えば、129、130、131、132、133、または134位)で終わる構築物を含む。これらの範囲内の改変体、特に、配列番号1または2の対応する部分に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する改変体もまた、企図され、任意選択で、このようなActRIIBベースのリガンドトラップポリペプチドは、i)配列番号1または2の79位に対応する位置に酸性アミノ酸[例えば、アスパラギン(D)酸またはグルタミン(E)酸]を含まず、ii)配列番号1または2のアミノ酸29~109を含まないか、またはこれらからならない。ある特定の実施形態では、ActRIIBベースのリガンドトラップポリペプチドは、配列番号1または2のアミノ酸残基25~131に、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。好ましい実施形態では、ActRIIBベースのリガンドトラップポリペプチドは、配列番号1または2のアミノ酸25~131を含まないか、またはこれらからならない。ある特定の実施形態では、ActRIIBベースのトラップポリペプチドは、i)ActRIIBベースのトラップポリペプチドが、配列番号1または2の79位に対応する位置に酸性アミノ酸[例えば、アスパラギン(D)酸またはグルタミン(E)酸]を含まず、ii)ActRIIBベースのトラップポリペプチドが、配列番号1または2のアミノ酸29~109を含まないか、またはこれらからならないという条件で、配列番号3、4、5、6、21、および23に、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
本開示は、図1に示されるように、合成ActRIIB構造の分析結果を含み、これは、一部において、リガンド結合ポケットが残基Y31、N33、N35、L38~T41、E47、E50、Q53~K55、L57、H58、Y60、S62、K74、W78~N83、Y85、R87、A92、およびE94~F101によって規定されることを実証している。これらの位置において、保存的変異は許容されると予想されるが、K74A変異は、R40A、K55A、F82A、およびL79位における変異と同様に良好に許容される。R40はツメガエルにおいてKであり、この位置の塩基性アミノ酸が許容されることを示している。Q53は、ウシのActRIIBではRであり、ツメガエルのActRIIBではKであり、したがって、R、K、Q、NおよびHを含めたアミノ酸がこの位置で許容される。したがって、ActRIIBベースのリガンドトラップタンパク質についての一般式は、配列番号1または2のアミノ酸29~109に、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むアミノ酸配列であって、任意選択で、20~24位(例えば、20、21、22、23、または24位)または22~25位(例えば、22、23、24、または25位)の範囲の位置で始まり、129~134位(例えば、129、130、131、132、133、または134位)の範囲の位置で終わり、リガンド結合ポケット内に、1つ、2つ、5つ、10、または15以下の保存的アミノ酸変化を含み、リガンド結合ポケット内の40、53、55、74、79、および/または82位に、0、1つ、または複数の非保存的変更を含むアミノ酸配列である。好ましい実施形態では、本開示のActRIIBベースのトラップポリペプチドは、配列番号1または2の79位に対応する位置に酸性アミノ酸[例えば、アスパラギン(D)酸またはグルタミン(E)酸]を含まない。他の好ましい実施形態では、本開示のActRIIBベースのリガンドトラップポリペプチドは、配列番号1または2のアミノ酸29~109を含まないか、またはこれらからならない。可変性が特に良好に許容され得る結合ポケットの外側の部位は、細胞外ドメインのアミノ末端およびカルボキシ末端(上述のように)、および42~46位および65~73位(配列番号1に照らして)を含む。65位におけるアスパラギンからアラニンへの変更(N65A)は、A64バックグラウンドにおけるリガンドの結合を実際に改善し、したがって、R64バックグラウンドにおいてリガンドの結合に対する好ましくない影響を有さないと予想される(例えば、米国特許第7,842,663号を参照のこと)。この変化により、A64バックグラウンドにおけるN65のグリコシル化が排除される可能性があり、したがって、この領域における著しい変化が許容される可能性があることが実証されている。R64A変化は許容性が乏しいが、R64Kは良好に許容され、したがって、Hなどの別の塩基性残基が64位において許容され得る(例えば、米国特許第7,842,663号を参照のこと)。
ActRIIBは、完全に保存された細胞外ドメインの大きなストレッチ(stretch)を持ち、ほぼ全ての脊椎動物にわたって良好に保存されている。ActRIIBに結合するリガンドの多くも高度に保存されている。したがって、種々の脊椎動物の生物体からのActRIIB配列を比較することにより、変更され得る残基への洞察がもたらされる。したがって、活性な、本開示の方法に従う有用なヒトActRIIB改変体ポリペプチドは、別の脊椎動物のActRIIBの配列からの対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸を含み得、または、ヒトまたは他の脊椎動物の配列中の残基と同様の残基を含み得る。以下の例は、活性なActRIIB改変体を定義するためのこのアプローチを例示している。L46は、ツメガエルのActRIIBではバリンであるので、この位置は変更され得、任意選択で、V、IまたはFなどの別の疎水性残基、またはAなどの非極性残基に変更され得る。E52は、ツメガエルではKであり、これは、この部位で、E、D、K、R、H、S、T、P、G、YおよびおそらくAなどの極性残基を含めた多種多様の変化が許容され得ることを示している。T93は、ツメガエルではKであり、これは、この位置において幅広い構造的差異が許容されることを示しており、S、K、R、E、D、H、G、P、GおよびYなどの極性残基が好ましい。F108は、ツメガエルではYであり、したがって、Yまたは他の疎水性群、例えばI、VまたはLが許容されるはずである。E111は、ツメガエルではKであり、これは、この位置において、D、R、KおよびH、ならびにQおよびNを含めた、荷電残基が許容されることを示している。R112は、ツメガエルではKであり、これは、この位置において、RおよびHを含めた塩基性残基が許容されることを示している。119位のAは比較的不完全に保存されており、げっ歯類ではPとして、ツメガエルではVとして現れ、したがって、この位置では本質的にいかなるアミノ酸も許容されるはずである。
ActRIIB(R64)-Fc形態と比べて、さらなるN-連結グリコシル化部位(N-X-S/T)の付加は、十分に許容されることが既に実証されている(例えば、米国特許第7,842,663号を参照されたい)。24位にアスパラギンを導入することにより(A24N構築物;配列番号1に照らして))、より長い半減期を与え得るNXT配列が作製される。他のNX(T/S)配列は、42~44(NQS)および65~67(NSS)において見出されるが、後者は64位のRで効率的にグリコシル化されないことがあり得る。N-X-S/T配列は、一般に、図1において定義されるリガンド結合ポケットの外側の位置に導入され得る。非内因性N-X-S/T配列の導入に特に適した部位としては、アミノ酸20~29、20~24、22~25、109~134、120~134または129~134(配列番号1に照らして)が挙げられる。N-X-S/T配列は、ActRIIB配列とFcドメインまたは他の融合成分との間のリンカーにも導入され得る。このような部位は、以前から存在しているSまたはTに対して正しい位置にNを導入することによって、または、以前から存在しているNに対応する位置にSまたはTを導入することによって、最小の労力で導入され得る。したがって、N-連結グリコシル化部位を生じる望ましい変更は、A24N、R64N、S67N(できるかぎりN65Aの変更と組み合わせる)、E105N、R112N、G120N、E123N、P129N、A132N、R112SおよびR112T(配列番号1に照らして)である。グリコシル化されることが予測されるSはどれも、グリコシル化によってもたらされる保護のために、免疫原性部位を生じることなくTに変更され得る。同様に、グリコシル化されることが予測されるTはどれも、Sに変更され得る。したがって、S67TおよびS44T(配列番号1に照らして)の変更が企図される。同様に、A24N改変体では、S26Tの変更が使用され得る。したがって、本開示のActRIIBベースのリガンドトラップポリペプチドは、上記の、1つまたは複数の追加の非内因性N-連結グリコシル化コンセンサス配列を有するActRIIB改変体であり得る。
記載されるバリエーションは、種々の方法で組み合わせられ得る。さらに、本明細書中に記載される変異誘発プログラムの結果は、保存が多くの場合有益であるアミノ酸位がActRIIBにあることを示す。配列番号1に照らして、これらとしては、64位(塩基性アミノ酸)、80位(酸性または疎水性アミノ酸)、78位(疎水性、そして特にトリプトファン)、37位(酸性、そして特にアスパラギン酸またはグルタミン酸)、56位(塩基性アミノ酸)、60位(疎水性アミノ酸、特にフェニルアラニンまたはチロシン)が挙げられる。したがって、本明細書中に開示されるトラップそれぞれにおいて、本開示は保存され得るアミノ酸のフレームワークを提供する。保存が望ましいと考えられる他の位置は以下の通りである:52位(酸性アミノ酸)、55位(塩基性アミノ酸)、81位(酸性)、98位(極性または荷電、特にE、D、RまたはK)、全て配列番号1に照らして。
活性なActRIIAポリペプチドについての一般式は、配列番号9のアミノ酸30~110に、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリペプチドを含むポリペプチドである。したがって、本開示のActRIIAベースのリガンドトラップは、配列番号9のアミノ酸30~110に、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリペプチドを含み得る。好ましい実施形態では、本開示のActRIIAベースのリガンドトラップは、配列番号9のアミノ酸30~110を含まないか、またはこれらからならない。任意選択で、本開示のActRIIAベースのリガンドトラップポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸12~82に、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるポリペプチドであって、任意選択で、1~5位(例えば、1、2、3、4、または5位)または3~5位(例えば、3、4、または5位)の範囲の位置で始まり、それぞれ、110~116位(例えば、110、111、112、113、114、115、または116位)または110~115位(例えば、110、111、112、113、114、または115位)の範囲の位置で終わり、リガンド結合ポケット内に、1つ、2つ、5つ、10、または15以下の保存的アミノ酸変化を含み、リガンド結合ポケット内の40、53、55、74、79、および/または82位に、0、1つ、または複数の非保存的変更(配列番号9に照らして)を含むポリペプチドを含む。
本開示のリガンドトラップ(例えば、GDF11トラップ、アクチビンBトラップ、またはGDF11/アクチビンBトラップ)の機能的に活性なフラグメントは、リガンドトラップポリペプチドをコードする核酸の対応するフラグメントから組換えにより生成されたポリペプチドをスクリーニングすることにより得ることができる。加えて、フラグメントは、従来のメリフィールド固相f-Moc化学反応またはメリフィールド固相t-Boc化学反応など、当該分野で公知の技法を使用して、化学合成することができる。フラグメントを、生成することができ(組換えにより、または化学合成により)、GDF11および/またはアクチビンBのアンタゴニスト(阻害剤)として機能し得るが、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはその活性を実質的に阻害しないペプチジルフラグメントを同定するように試験することができる。
機能的改変体は、治療有効性または安定性(例えば、貯蔵寿命およびインビボでのタンパク質分解に対する抵抗性)を増強することなどの目的のために、本開示のリガンドトラップ(例えば、GDF11トラップ、アクチビンBトラップ、またはGDF11/アクチビンBトラップ)の構造を改変することにより生成することができる。このような改変リガンドトラップポリペプチドは、GDF11および/またはアクチビンBへの結合を保持するように選択される場合、自然発生のActRIIポリペプチドの機能的同等物であると考えられる。改変リガンドトラップポリペプチドはまた、例えば、アミノ酸の置換、欠失、または付加によっても生成することができる。例えば、ロイシンのイソロイシンもしくはバリンでの単発的な置換、アスパラギン酸のグルタミン酸での単発的な置換、スレオニンのセリンでの単発的な置換、または、あるアミノ酸の、構造的に関連したアミノ酸での同様の置換(例えば、保存的変異)は、結果として生じる分子の生物学的活性に対して大きな影響を及ぼさないと予想するのは理にかなっている。保存的置換は、その側鎖が関連しているアミノ酸のファミリー内で行われる置換である。リガンドトラップポリペプチドのアミノ酸配列の変化の結果として、機能的相同体がもたらされるのかどうかは、非改変ActRIIポリペプチドもしくは野生型ActRIIポリペプチドと比較した場合に、野生型ActRIIポリペプチドと同様の様式で細胞内の応答を生成するか、または、GDF11、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、BMP6、BMP9、BMP10、GDF3、BMP3、BMP3B、Nodal、およびGDF15など、1つまたは複数のリガンドに結合する、改変体リガンドトラップポリペプチドの能力を評価することにより、たやすく決定することができる。
ある特定の実施形態では、本開示は、ポリペプチドのグリコシル化を変更させるような、本開示のリガンドトラップポリペプチド(例えば、GDF11トラップ、アクチビンBトラップ、またはGDF11/アクチビンBトラップ)の特異的変異を企図する。このような変異は、1または複数のグリコシル化部位(例えば、O-連結もしくはN-連結のグリコシル化部位)を導入もしくは排除するように選択され得る。アスパラギン連結グリコシル化認識部位は、一般に、トリペプチド配列、アスパラギン-X-スレオニンまたはアスパラギン-X-セリン(ここで、「X」は任意のアミノ酸である)を含み、この配列は、適切な細胞のグリコシル化酵素によって特異的に認識される。変化はまた、(O-連結グリコシル化部位については)リガンドトラップポリペプチドの配列への、1または複数のセリンもしくはスレオニン残基の付加、または、1または複数のセリンもしくはスレオニン残基による置換によってなされ得る。グリコシル化認識部位の第1位もしくは第3位のアミノ酸の一方もしくは両方における種々のアミノ酸置換もしくは欠失(および/または、第2位におけるアミノ酸の欠失)は、改変されたトリペプチド配列において非グリコシル化をもたらす。リガンドトラップポリペプチドにおける糖質部分の数を増加させる別の手段は、ポリペプチドへのグリコシドの化学的もしくは酵素的なカップリングによるものである。使用されるカップリング様式に依存して、糖は、(a)アルギニンおよびヒスチジン;(b)遊離カルボキシル基;(c)遊離スルフヒドリル基(例えば、システインのもの);(d)遊離ヒドロキシル基(例えば、セリン、スレオニンまたはヒドロキシプロリンのもの);(e)芳香族残基(例えば、フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンのもの);または(f)グルタミンのアミド基に付加され得る。ActRIIポリペプチド上に存在する1または複数の糖質部分の除去は、化学的および/または酵素的に達成され得る。化学的な脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または等価な化合物へのリガンドトラップポリペプチドの曝露を含み得る。この処理は、アミノ酸配列をインタクトなままにしつつ、連結糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)を除くほとんどもしくは全ての糖の切断を生じる。リガンドトラップポリペプチドにおける、炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraら[Meth. Enzymol.(1987年)、138巻:350頁]により記載されているように、様々なエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用により達成することができる。リガンドトラップポリペプチドの配列は、適切なように、使用される発現系のタイプに応じて調節され得る。というのも、哺乳動物、酵母、昆虫および植物の細胞は全て、ペプチドのアミノ酸配列によって影響され得る異なるグリコシル化パターンを導入し得る。一般に、ヒトにおいて使用するためのリガンドトラップタンパク質は、適切なグリコシル化を提供する哺乳動物細胞株(例えば、HEK293細胞株またはCHO細胞株)において発現され得るが、他の哺乳動物発現細胞株も同様に有用であることと期待される。
本開示はさらに、変異体、特に、リガンドトラップポリペプチド(例えば、GDF11トラップ、アクチビンBトラップ、またはGDF11/アクチビンBトラップ)のコンビナトリアル変異体のセットを生成する方法のほか、短縮型変異体も生成する方法も企図するが、コンビナトリアル変異体のプールは、リガンドトラップ配列を同定するためにとりわけ有用である。このようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、アクチビンB、GDF11に結合し、任意選択で、他のリガンドにも結合するが、アクチビンAには実質的に結合しないリガンドトラップポリペプチドを生成することであり得る。種々のスクリーニングアッセイが以下に提供され、そして、このようなアッセイは、改変体を評価するために使用され得る。例えば、リガンドトラップは、ActRIIリガンド(例えば、GDF11および/またはアクチビンB)に結合する能力、ActRIIリガンドのActRIIポリペプチドへの結合を妨害する能力、または、ActRIIリガンドにより引き起こされるシグナル伝達に干渉する能力についてスクリーニングされ得る。
リガンドトラップ(例えば、GDF11トラップ、アクチビンBトラップ、またはGDF11/アクチビンBトラップ)またはその改変体の活性はまた、細胞ベースのアッセイまたはインビボアッセイでも試験することができる。例えば、赤血球生成に関与する遺伝子の発現に対するリガンドトラップの作用が評価され得る。これは、必要な場合、1または複数の組換えActRIIリガンドタンパク質(例えば、GDF11および/またはアクチビンB)の存在下で行われ得、そして、リガンドトラップポリペプチドおよび/またはその改変体、そして任意選択でActRIIリガンドを生成するように細胞がトランスフェクトされ得る。同様に、リガンドトラップは、マウスもしくは他の動物に投与され得、そして、1または複数の血液測定値(例えば、RBC数、ヘモグロビン、または網状赤血球数)が、当該分野で認識された方法を用いて評価され得る。
コンビナトリアル由来のリガンドトラップ(例えば、GDF11トラップ、アクチビンBトラップ、またはGDF11/アクチビンBトラップ)であって、参照リガンドトラップと比べて選択的な効力を有するか、または一般に効力を増大させたリガンドトラップを生成することができる。このような改変体は、組換えDNA構築物から発現されたとき、遺伝子治療のプロトコルにおいて使用され得る。同様に、変異誘発は、対応する非改変リガンドトラップとは劇的に異なる細胞内半減期を有する改変体を生じ得る。例えば、変更されたタンパク質は、タンパク質分解、または、非改変リガンドトラップの崩壊もしくは他の方法で不活性化をもたらす他の細胞プロセスに対してより安定性であるかもしくは安定性が低いかのいずれかにされ得る。このような改変体およびこれをコードする遺伝子は、リガンドトラップの半減期を調節することによってリガンドトラップポリペプチドレベルに利用され得る。例えば、短い半減期は、より一過性の生物学的作用を生じ得、そして、誘導性の発現系の一部である場合、細胞内での組換えリガンドトラップポリペプチドレベルのより厳しい制御を可能にし得る。Fc融合タンパク質では、変異は、タンパク質の半減期を変更するために、リンカー(存在する場合)および/またはFc部分において作製され得る。
コンビナトリアルライブラリーは、各々が潜在的なActRIIポリペプチド配列の少なくとも一部を含むポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーによって生成することができる。例えば、潜在的なActRIIポリペプチドのヌクレオチド配列の縮重セットが、個々のポリペプチドとして、または代替的に、大型の融合タンパク質のセット(例えば、ファージディスプレイのための)として発現可能であるように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を、遺伝子配列に酵素的にライゲーションすることができる。
潜在的な相同体のライブラリーを縮重オリゴヌクレオチド配列から生成し得る、多くの方式が存在する。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動式DNA合成器で実行することができ、次いで、合成遺伝子は、発現に適切なベクターにライゲーションすることができる。縮重オリゴヌクレオチドの合成は、当該分野で周知である[例えば、Narang, SA(1983年)、Tetrahedron、39巻:3頁;Itakuraら(1981年)、Recombinant DNA、Proc. 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules、AG Walton編、Amsterdam、Elsevier、273~289頁;Itakuraら(1984年)、Annu. Rev. Biochem.、53巻:323頁;Itakuraら(1984年)、Science、198巻:1056頁;Ikeら(1983年)、Nucleic Acid Res.、11巻:477頁を参照されたい]。このような技法は、他のタンパク質の指向進化で利用されている[例えば、Scottら、(1990年)、Science、249巻:386~390頁;Robertsら(1992年)、PNAS
USA、89巻:2429~2433頁;Devlinら(1990年)、Science、249巻:404~406頁;Cwirlaら、(1990年)、PNAS USA、87巻:6378~6382頁のほか、米国特許第5,223,409号;同第5,198,346号;および同第5,096,815号を参照されたい]。
代替的に、変異誘発の他の形態も、コンビナトリアルライブラリーを生成するのに活用することができる。例えば、本開示のリガンドトラップは、例えば、アラニン走査変異誘発[例えば、Rufら(1994年)、Biochemistry、33巻:1565~1572頁;Wangら(1994年)、J. Biol. Chem.、269巻:3095~3099頁;Balintら(1993年)、Gene、137巻:109~118頁;Grodbergら(1993年)、Eur. J. Biochem.、218巻:597~601頁;Nagashimaら(1993年)、J. Biol. Chem.、268巻:2888~2892頁;Lowmanら(1991年)、Biochemistry、30巻:10832~10838頁;およびCunninghamら(1989年)、Science、244巻:1081~1085頁を参照されたい]を使用して、リンカー走査変異誘発[例えば、Gustinら(1993年)、Virology、193巻:653~660頁;およびBrownら(1992年)、Mol. Cell Biol.、12巻:2644~2652頁;McKnightら(1982年)、Science、232巻:316頁を参照されたい]によって、飽和変異誘発[例えば、Meyersら、(1986年)、Science、232巻:613頁を参照されたい]によって、PCR変異誘発[例えば、Leungら(1989年)、Method Cell Mol Biol、1巻:11~19頁を参照されたい]によって、または化学的変異誘発[例えば、Millerら(1992年)、A Short Course in Bacterial Genetics、CSHL Press、Cold Spring Harbor、NY;およびGreenerら(1994年)、Strategies in Mol Biol、7巻:32~34頁を参照されたい]を含むランダム変異誘発によって、スクリーニングすることにより、ライブラリーから生成および単離することができる。特に、コンビナトリアルの状況におけるリンカー走査変異誘発は、ActRIIポリペプチドの短縮型(生体活性)形態を同定するための魅力的な方法である。
当該分野では、広範にわたる技法であって、点変異および短縮により作製されるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための技法、および、このために、ある特定の特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするための技法が公知である。このような技法は一般に、本開示のリガンドトラップのコンビナトリアル変異誘発により生成される遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適合可能である。大規模な遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために最も広く使用される技法は典型的に、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングする工程と、適切な細胞を結果として得られるベクターのライブラリーで形質転換する工程と、所望の活性の検出により、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的容易な単離を促進する条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させる工程とを含む。好ましいアッセイは、GDF11、アクチビンB、および/またはアクチビンについての結合アッセイならびにGDF11、アクチビンB、および/またはアクチビンに媒介される細胞シグナル伝達についてのアッセイを含む。
ある特定の実施形態では、本開示のリガンドトラップ(例えば、GDF11トラップ、アクチビンBトラップ、またはGDF11/アクチビンBトラップ)はさらに、ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAまたはActRIIBポリペプチド)内に天然に存在する任意の翻訳後修飾に加えて翻訳後修飾を含み得る。このような修飾としては、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が挙げられるがこれらに限定されない。結果として、修飾されたリガンドトラップポリペプチドは、ポリエチレングリコール、脂質、多糖類もしくは単糖類およびホスフェイトのような非アミノ酸成分を含み得る。このような非アミノ酸成分の、リガンドトラップポリペプチドの機能に対する影響は、他のリガンドトラップポリペプチド改変体について本明細書中に記載されるようにして試験され得る。リガンドトラップポリペプチドの新生形態を切断することによってリガンドトラップポリペプチドが細胞内で生成される場合、翻訳後プロセシングもまた、このタンパク質の正確な折り畳みおよび/または機能にとって重要となり得る。様々な細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH-3T3またはHEK293)が、このような翻訳後の活性のための特定の細胞機構および特徴的なメカニズムを有し、そして、リガンドトラップポリペプチドの正確な修飾およびプロセシングを保証するように選択され得る。
ある特定の態様では、本開示のリガンドトラップ(例えば、GDF11トラップ、アクチビンBトラップ、またはGDF11/アクチビンBトラップ)は、少なくともActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAまたはActRIIBポリペプチド)の部分(ドメイン)と、1つまたは複数の異種部分(ドメイン)とを有する融合タンパク質を含む。このような融合ドメインの周知の例としては、ポリヒスチジン、Glu-Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが挙げられるがこれらに限定されない。融合ドメインは、所望される特性を与えるように選択され得る。例えば、いくつかの融合ドメインが、アフィニティクロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティ精製の目的では、グルタチオン-、アミラーゼ-、およびニッケル-もしくはコバルト-結合化樹脂のような、アフィニティクロマトグラフィーのための適切なマトリクスが使用される。このようなマトリクスの多くは、Pharmacia GST精製システムおよび(HIS6)融合パートナーと共に有用なQIAexpressTMシステム(Qiagen)のような「キット」の形態で利用可能である。別の例としては、融合ドメインは、リガンドトラップポリペプチドの検出を容易にするように選択され得る。このような検出ドメインの例としては、種々の蛍光タンパク質(例えば、GFP)、ならびに、「エピトープタグ」(これは、特定の抗体に利用可能な、通常は短いペプチド配列である)が挙げられる。特定のモノクローナル抗体に容易に利用可能な周知のエピトープタグとしては、FLAG、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)およびc-mycタグが挙げられる。いくつかの場合、融合ドメインは、関連のプロテアーゼが融合タンパク質を部分的に消化し、それによって、そこから組換えタンパク質を解放することを可能にする、第Xa因子またはトロンビンのようなプロテアーゼ切断部位を有する。解放されたタンパク質は、次いで、その後のクロマトグラフィーによる分離によって、融合ドメインから単離され得る。特定の好ましい実施形態では、リガンドトラップは、インビボでリガンドトラップポリペプチドを安定化させるドメイン(「安定化」ドメイン)と融合される。「安定化」とは、それが、崩壊の減少によるものであるか、腎臓によるクリアランスの減少によるものであるか、他の薬物動態作用によるものであるかとは無関係に、血清半減期を増加させる任意のものを意味する。免疫グロブリンのFc部分との融合は、広範囲のタンパク質に対して所望の薬物動態特性を与えることが公知である。同様に、ヒト血清アルブミンへの融合は、所望の特性を与え得る。選択され得る融合ドメインの他のタイプとしては、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメインおよび機能的ドメイン(例えば、筋肉成長のさらなる刺激のような付加的な生物学的機能を与えるもの)が挙げられる。
ある特定の実施形態では、本開示は、以下のFcドメインに融合させたActRIIタンパク質の改変体細胞外ドメイン(例えば、リガンド結合ドメイン)を含むリガンドトラップ融合タンパク質を提供する。
他の実施形態では、本開示は、Fcドメインに融合させたActRIIBの改変体細胞外ドメイン(例えば、リガンド結合ドメイン)を含むリガンドトラップ融合タンパク質を提供する。
A64置換を有する代替的な形態は、以下の通りである。
任意選択で、Fcドメインは、Asp-265、リジン322およびAsn-434のような残基における1または複数の変異を有する。特定の場合、これらの変異のうち1または複数(例えば、Asp-265変異)を持つ変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインに対する、Fcγ受容体への結合能の低下を有する。他の場合では、これらの変異のうち1または複数(例えば、Asn-434変異)を持つ変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインに対する、MHCクラスI関連のFc受容体(FcRN)への結合能の増加を有する。
融合タンパク質の様々な成分は、所望の機能と両立するあらゆる様式で配列され得ることが理解される。例えば、リガンドトラップ(例えば、GDF11トラップ、アクチビンBトラップ、またはGDF11/アクチビンBトラップ)を、異種ドメインに対してC末端に配置することもでき、代替的に、異種ドメインを、リガンドトラップドメインに対してC末端に配置することもできる。リガンドトラップドメインと異種ドメインとは、融合タンパク質において隣接している必要はなく、そして、さらなるドメインもしくはアミノ酸配列が、いずれかのドメインに対してC末端もしくはN末端側に、または、これらのドメイン間に含められてもよい。
特定の実施形態では、本開示のリガンドトラップ(例えば、GDF11トラップ、アクチビンBトラップ、またはGDF11/アクチビンBトラップ)は、リガンドトラップポリペプチドを安定化させ得る1または複数の修飾を含む。例えば、このような修飾は、リガンドトラップポリペプチドのインビトロ半減期を増強させるか、リガンドトラップポリペプチドの循環半減期を増強させる、かつ/または、リガンドトラップポリペプチドのタンパク質分解を減少させる。このような安定化修飾としては、融合タンパク質(例えば、リガンドトラップと安定化ドメインとを含む融合タンパク質が挙げられる)、グリコシル化部位の修飾(例えば、リガンドトラップポリペプチドへのグリコシル化部位の付加が挙げられる)、および糖質部分の修飾(例えば、リガンドトラップポリペプチドからの炭水化物部分の除去が挙げられる)が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書中で使用される場合、用語「安定化ドメイン」は、融合タンパク質の場合のように融合ドメイン(例えば、免疫グロブリンFcドメイン)を指すだけでなく、炭水化物部分のような非タンパク質性修飾、または、ポリエチレングリコールのような非タンパク質性部分も含む。
TPAリンカーを含むActRIIA-Fc融合タンパク質の例を、下記に提供する。
TPAリーダー配列は、一重下線で指し示し、TGGGリンカードメインは、二重下線で指し示し、免疫グロブリンFcドメインは、太字フォントで指し示す。
このポリペプチドは、以下の核酸配列によりコードされる。
CHO細胞株から精製される、成熟ActRIIA-Fc融合タンパク質の例を、下記に提供する。
TGGGリンカードメインは、二重下線で指し示し、免疫グロブリンFcドメインは、太字フォントで指し示す。
TPAリンカーを含むActRIIB-Fc融合タンパク質の例を、下記に提供する。
TPAリーダー配列は、一重下線で指し示し、TGGGリンカードメインは、二重下線で指し示し、免疫グロブリンFcドメインは、太字フォントで指し示す。
このポリペプチドは、以下の核酸配列によりコードされる。
CHO細胞株から精製される、成熟ActRIIB-Fc融合タンパク質[本明細書では、ActRIIB(20~134)-Fcと呼ばれる]の例を、下記に提供する。
免疫グロブリンFcドメインは、一重下線で指し示す。
L79D置換[本明細書では、ActRIIB(L79D 20~134)-Fcと呼ばれる]を有する代替的な形態は、以下の通りである。
免疫グロブリンFcドメインは、一重下線で指し示す。
二重短縮型ActRIIBドメインおよびL79D置換を含む代替的な形態[本明細書では、ActRIIB(L79D 25~131)-Fcと呼ばれる]は、以下の通りである。
免疫グロブリンFcドメインは、一重下線で指し示す。
ある特定の実施形態では、本開示のリガンドトラップ融合タンパク質(例えば、GDF11トラップ、アクチビンBトラップ、またはGDF11/アクチビンBトラップ)は、配列番号18、20、21、23、48、および49のいずれか1つのアミノ酸配列に、少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、本開示のリガンドトラップ融合タンパク質は、配列番号18、20、21、23、48および49のいずれか1つのアミノ酸配列を含まないか、またはこれらからならない。他の好ましい実施形態では、配列番号21または23のアミノ酸配列に、少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むActRIIBベースのリガンドトラップ融合タンパク質は、配列番号1または2の79位に対応する位置に酸性アミノ酸を含まない。
特定の実施形態では、本開示は、ActRIIポリペプチドの単離および/または精製された形態(他のタンパク質から単離されたか、そうでなければ、他のタンパク質を実質的に含まないもの)を利用可能にする。
特定の実施形態では、本開示のリガンドトラップポリペプチドは、種々の当該分野で公知の技法によって生成され得る。例えば、リガンドトラップポリペプチドは、Bodansky、M. Principles of Peptide Synthesis、Springer Verlag、Berlin(1993年)およびGrant G. A.(編)、Synthetic Peptides: A User’s Guide、W. H. Freeman and Company、New York(1992年)に記載されているものなどの、標準のタンパク質化学の技法を使用して合成され得る。さらに、自動ペプチド合成装置が市販されている(例えば、Advanced ChemTech Model 396;Milligen/Biosearch 9600を参照のこと)。あるいは、リガンドトラップポリペプチド、そのフラグメントまたは改変体は、当該分野で周知のように、種々の発現系(例えば、E.coli、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、バキュロウイルス)を使用して組換えにより生成され得る。さらなる実施形態では、改変、または非改変リガンドトラップポリペプチドは、例えば、プロテアーゼ、例えばトリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、ペプシン、または対の塩基性アミノ酸変換酵素(PACE)を使用して、組換えにより生成された完全長リガンドトラップポリペプチドを消化することによって生成され得る。コンピュータ解析(市販のソフトウェア、例えば、MacVector、Omega、PCGene、Molecular Simulation,Inc.を使用する)は、タンパク質分解の切断部位を同定するために使用され得る。あるいは、このようなリガンドトラップポリペプチドは、化学的切断によって(例えば、臭化シアン、ヒドロキシアミン)などの当該分野で公知の標準技法などで組換えにより生成された完全長リガンドトラップポリペプチドから生成され得る。
好ましい実施形態では、本開示の全てのタンパク質およびポリペプチド(例えば、GDF11/アクチビンBトラップ、GDF11トラップ、およびアクチビンBトラップ)であって、本明細書で記載される方法に従い使用されるタンパク質およびポリペプチドは、単離タンパク質および単離ポリペプチドである。本明細書で使用する場合、単離タンパク質または単離ポリペプチドとは、その天然環境の成分から分離されたタンパク質またはポリペプチドである。一部の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドを、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)、またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換HPLCまたは逆相HPLC)により決定した場合に、95%、96%、97%、98%、または99%より高い純度まで精製する。当該分野では、抗体純度を評価するための方法が周知である[例えば、Flatmanら、(2007年)、J. Chromatogr.、B848巻:79~87頁を参照されたい]。
本明細書で開示されるリガンドトラップポリペプチド(例えば、GDF11トラップ、アクチビンBトラップ、またはGDF11/アクチビンBトラップ)のいずれかを、本開示の1つまたは複数の追加のアンタゴニスト作用因子と組み合わせて、所望の効果を達成することができる。本明細書で開示されるリガンドトラップポリペプチド(例えば、GDF11トラップポリペプチド、アクチビンBトラップポリペプチド、またはGDF11/アクチビンBトラップポリペプチド)を、本明細書で開示される別のリガンドトラップポリペプチド、または本開示の標的のいずれかを指向する抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンA抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗GDF8抗体、抗BMP6抗体、抗ActRIIA抗体、抗ActRIIB抗体、抗GDF15抗体、抗Nodal抗体、抗GDF3抗体、抗BMP3抗体、抗BMP3B抗体、抗BMP9抗体、または抗BMP10抗体)、または本開示の標的のいずれかを指向する低分子アンタゴニスト(例えば、アクチビンB低分子アンタゴニスト、アクチビンB低分子アンタゴニスト、GDF11低分子アンタゴニスト、アクチビンC低分子アンタゴニスト、アクチビンE低分子アンタゴニスト、GDF8低分子アンタゴニスト、BMP6低分子アンタゴニスト、GDF15低分子アンタゴニスト、Nodal低分子アンタゴニスト、GDF3低分子アンタゴニスト、BMP3低分子アンタゴニスト、BMP3B低分子アンタゴニスト、BMP9低分子アンタゴニスト、またはBMP10低分子アンタゴニスト)、または本開示のポリヌクレオチドアンタゴニスト(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、またはBMP6のポリヌクレオチドアンタゴニスト)、または本明細書で開示される非抗体の結合ポリペプチド(例えば、GDF11結合ポリペプチド、アクチビンB結合ポリペプチド、アクチビンB結合ポリペプチド、アクチビンE結合ポリペプチド、アクチビンC結合ポリペプチド、GDF8結合ポリペプチド、BMP6結合ポリペプチド、GDF15結合ポリペプチド、Nodal結合ポリペプチド、BMP3結合ポリペプチド、GDF3結合ポリペプチド、BMP3B結合ポリペプチド、BMP9結合ポリペプチド、またはBMP10結合ポリペプチド)と組み合わせることができる。例えば、GDF11トラップポリペプチドを、本開示のアクチビンBアンタゴニスト(例えば、アクチビンBトラップポリペプチド、抗アクチビンB抗体、アクチビンBの低分子アンタゴニスト、アクチビンBのポリヌクレオチドアンタゴニスト、またはアクチビンBの非抗体ポリペプチドアンタゴニスト)と組み合わせて、GDF11およびアクチビンB両方の活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができる。代替的な実施形態では、アクチビンBトラップポリペプチドを、本開示のGDF11アンタゴニスト(例えば、GDFトラップポリペプチド、抗GDF11抗体、GDF11の低分子アンタゴニスト、GDF11のポリヌクレオチドアンタゴニスト、またはGDF11の非抗体ポリペプチドアンタゴニスト)と組み合わせて、GDF11およびアクチビンB両方の活性を阻害することができる。
C.トラップポリペプチドをコードする核酸および組換え法
ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書で開示されるフラグメント、機能的改変体、および融合タンパク質を含む、ActRIIポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIAポリペプチドおよび可溶性ActRIIBポリペプチド)をコードする、単離核酸および/または組換え核酸を提供する。例えば、配列番号12は、自然発生のヒトActRIIA前駆体のポリペプチドをコードするが、配列番号13は、ActRIIAのプロセシング後の細胞外ドメインをコードする。例えば、配列番号7は、自然発生のヒトActRIIB前駆体ポリペプチド(上記のA64改変体)をコードするが、配列番号8は、ActRIIBのプロセシング後の細胞外ドメイン(上記のA64改変体)をコードする。対象核酸は、一本鎖でもよく、二本鎖でもよい。このような核酸は、DNA分子でもよく、RNA分子でもよい。これらの核酸は、例えば、本開示のActRIIベースのリガンドトラップポリペプチドを作製するための方法において使用することができる。
本明細書で使用する場合、単離核酸とは、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離核酸は、その核酸分子を通常含有するが、その核酸分子が染色体外またはその天然の染色体位置と異なる染色体位置に存在する細胞内に含有される核酸分子を含む。
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIAベースのリガンドトラップポリペプチドをコードする核酸は、配列番号12または13の改変体である核酸を含むと理解される。ある特定の態様では、本開示のActRIIBベースのリガンドトラップポリペプチドをコードする核酸は、配列番号7または8の改変体である核酸を含むと理解される。改変体ヌクレオチド配列は、対立遺伝子改変体など、1つまたは複数のヌクレオチドの置換、付加、または欠失により異なる配列を含む。本開示の核酸は、少なくともGDF11および/またはアクチビンAに結合し、かつ/またはこれらの活性に拮抗するActRIIAベースのリガンドトラップポリペプチドおよびActRIIBベースのリガンドトラップポリペプチドをコードする。任意選択で、本開示の核酸は、アクチビンAに実質的に結合せず、かつ/またはこれを実質的に阻害しないActRIIAベースのリガンドトラップポリペプチドおよびActRIIBベースのリガンドトラップポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、GDF11および/またはアクチビンBに結合し、かつ/またはこれらを阻害するActRIIAベースのリガンドトラップポリペプチドおよびActRIIBベースのリガンドトラップポリペプチドをコードする本開示の核酸は、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、およびBMP6のうちの1つまたは複数にさらに結合し、かつ/またはこれらをさらに阻害する。
ある特定の実施形態では、本開示のActRIIAベースのリガンドトラップおよびActRIIBベースのリガンドトラップは、配列番号8、13、19、および22に、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一である単離核酸配列または組換え核酸配列によりコードされる。好ましい実施形態では、本開示のActRIIAベースのリガンドトラップおよびActRIIBベースのリガンドトラップは、配列番号8、13、19、および22のいずれか1つを含むかまたはこれらからなる核酸配列によりコードされない。当業者は、配列番号8、13、19、および22、ならびにこれらの改変体に相補的な配列に、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一である核酸配列もまた、配列番号8、13、19、および22に相補的な配列を含まないか、またはこれらからならないという条件で、本開示の範囲内にあることを理解する。さらなる実施形態では、本開示の核酸配列は、単離核酸配列であっても、組換え核酸配列であっても、かつ/または異種ヌクレオチド配列と融合させてもよく、DNAライブラリー内の核酸配列であってもよい。
他の実施形態では、本開示の核酸はまた、配列番号8、13、19、および22に指定されるヌクレオチド配列、配列番号8、13、19、および22の相補配列、またはこれらのフラグメントに対して高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列も、それらが、配列番号8、13、19、および22のヌクレオチドを含まないか、またはこれらからならないという条件で含む。上述のように、当業者は、DNAのハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件が変更され得ることを容易に理解する。例えば、約45℃における6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でのハイブリダイゼーションの後に、50℃における2.0×SSCの洗浄を行い得る。例えば、洗浄工程における塩濃度は、50℃における約2.0×SSCの低ストリンジェンシーから、50℃における約0.2×SSCの高ストリンジェンシーまで選択され得る。さらに、洗浄工程における温度は、室温(約22℃)の低ストリンジェンシー条件から、約65℃の高ストリンジェンシー条件まで上昇され得る。温度と塩の両方が変更されても、温度または塩濃度が一定に保たれ、他の変数が変更されてもよい。一実施形態では、本開示は、室温における6×SSCとその後の室温で2×SSCでの洗浄の低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸を提供する。
遺伝子コードにおける縮重に起因して配列番号8、13、19および22に示される核酸と異なる単離された核酸もまた、本開示の範囲内である。例えば、多数のアミノ酸が1より多いトリプレットによって示される。同じアミノ酸を特定するコドンまたは同義語(例えば、CAUおよびCACはヒスチジンに対する同義語である)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント」変異を生じ得る。しかしながら、哺乳動物細胞の中には、本主題のタンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらすDNA配列の多型が存在することが予想される。当業者は、天然の対立遺伝子改変に起因して、所与の種の個体間に、特定のタンパク質をコードする核酸の1または複数のヌクレオチド(約3~5%までのヌクレオチド)におけるこれらの改変が存在し得ることを理解する。任意およびあらゆるこのようなヌクレオチドの改変と、結果として生じるアミノ酸の多型とは、本開示の範囲内である。
特定の実施形態では、本開示の組換え核酸は、発現構築物において1または複数の調節性ヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。調節性のヌクレオチド配列は、一般に、発現のために使用される宿主細胞に対して適切なものである。種々の宿主細胞について、多数のタイプの適切な発現ベクターおよび適切な調節性配列が当該分野で公知である。代表的には、上記1または複数の調節性ヌクレオチド配列としては、プロモーター配列、リーダー配列もしくはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および転写終結配列、翻訳開始配列および翻訳終結配列、ならびに、エンハンサー配列もしくはアクチベーター配列が挙げられ得るがこれらに限定されない。当該分野で公知の構成的もしくは誘導性のプロモーターが、本開示によって企図される。プロモーターは、天然に存在するプロモーター、または、1つより多くのプロモーターの要素を組み合わせたハイブリッドプロモーターのいずれかであり得る。発現構築物は、プラスミドのようにエピソーム上で細胞中に存在し得るか、または、発現構築物は、染色体中に挿入され得る。一部の実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするために、選択可能なマーカー遺伝子を含む。選択可能なマーカー遺伝子は、当該分野で周知であり、そして、使用される宿主細胞により変化する。
本開示の特定の態様では、本主題の核酸は、ActRIIポリペプチドをコードし、そして、少なくとも1つの調節性配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターにおいて提供される。調節性配列は当該分野で認識され、そして、ActRIIポリペプチドの発現を誘導するように選択される。したがって、用語、調節性配列は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメントを含む。例示的な調節性配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、CA(1990年)に記載される。例えば、作動可能に連結されたときにDNA配列の発現を制御する広範な種々の発現制御配列のいずれかが、ActRIIポリペプチドをコードするDNA配列を発現させるためにこれらのベクターにおいて使用され得る。このような有用な発現制御配列としては、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスもしくはサイトメガロウイルスの前初期プロモーター、RSVプロモーター、lacシステム、trpシステム、TACもしくはTRCシステム、T7 RNAポリメラーゼによってその発現が誘導されるT7プロモーター、ファージλの主要なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼもしくは他の糖分解酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母α-接合因子(mating factor)のプロモーター、バキュロウイルス系の多角体プロモーター、ならびに、原核生物もしくは真核生物の細胞、または、そのウイルスの遺伝子の発現を制御することが公知である他の配列、ならびにこれらの種々の組合せが挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択および/または発現されることが所望されるタンパク質のタイプのような要因に依存し得ることが理解されるべきである。さらに、ベクターのコピー数、コピー数を制御する能力およびベクターによってコードされる任意の他のタンパク質(例えば、抗生物質マーカー)の発現もまた考慮されるべきである。
本開示の組換え核酸は、クローニングされた遺伝子またはその一部を、原核生物細胞、真核生物細胞(酵母、鳥類、昆虫または哺乳動物)のいずれか、または両方において発現させるために適切なベクター中に連結することによって生成され得る。組換えActRIIポリペプチドの生成のための発現ビヒクルとしては、プラスミドおよび他のベクターが挙げられる。例えば、適切なベクターとしては、以下のタイプのプラスミドが挙げられる:原核生物細胞(例えば、E.coli)における発現のための、pBR322由来のプラスミド、pEMBL由来のプラスミド、pEX由来のプラスミド、pBTac由来のプラスミドおよびpUC由来のプラスミド。
いくつかの哺乳動物発現ベクターは、細菌中でのベクターの増殖を促進するための原核生物の配列と、真核生物細胞において発現される1または複数の真核生物の転写単位との両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2-dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko-neoおよびpHyg由来のベクターは、真核生物細胞のトランスフェクションに適切な哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのいくつかは、原核生物細胞および真核生物細胞の両方における複製および薬物耐性選択を容易にするために、細菌プラスミド(例えば、pBR322)からの配列を用いて修飾される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV-1)またはエプスタイン-バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)のようなウイルスの誘導体が、真核生物細胞におけるタンパク質の一過的な発現のために使用され得る。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現系の例は、遺伝子治療送達系の説明において以下に見出され得る。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換において用いられる種々の方法は、当該分野で周知である。原核生物細胞および真核生物細胞の両方についての他の適切な発現系、ならびに、一般的な組換え手順[例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual、3rd Ed.、Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年)を参照のこと]。いくつかの場合において、バキュロウイルス発現系を用いて組換えポリペプチドを発現させることが望ましくあり得る。このようなバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来のベクター(例えば、pVL1392、pVL1393およびpVL941)、pAcUW由来のベクター(例えば、pAcUWl)およびpBlueBac由来のベクター(例えば、β-galを含むpBlueBac III)が挙げられる。
一部の実施形態では、ベクターは、CHO細胞における本主題のActRIIポリペプチドの生成のために設計される(例えば、Pcmv-Scriptベクター(Stratagene,La Jolla,Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)およびpCI-neoベクター(Promega,Madison,Wisc))。明らかであるように、本主題の遺伝子構築物は、例えば、タンパク質(融合タンパク質または改変体タンパク質を含む)を生成するため、精製のために、培養物において増殖させた細胞において本主題のActRIIポリペプチドの発現を引き起こすために使用され得る。
本開示はまた、1または複数の本主題のActRIIポリペプチドのコード配列を含む組換え遺伝子をトランスフェクトされた宿主細胞に関する。宿主細胞は、任意の原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。例えば、本ActRIIポリペプチドは、E.coliのような細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を用いる)、酵母細胞または哺乳動物細胞において発現され得る。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
したがって、本開示はさらに、本主題のActRIIポリペプチドを生成する方法に関する。例えば、ActRIIAまたはActRIIBポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞は、ActRIIポリペプチドの発現を起こすことが可能な適切な条件下で培養され得る。ActRIIポリペプチドは、ActRIIポリペプチドを含む細胞および培地の混合物から分泌および単離され得る。あるいは、ActRIIポリペプチドは、細胞質または膜画分に保持され得、そして、細胞が回収、溶解され、そして、タンパク質が単離される。細胞培養物は、宿主細胞、培地および他の副産物を含む。細胞培養に適切な培地は、当該分野で周知である。本主題のActRIIポリペプチドは、タンパク質を精製するための当該分野で公知の技法であって、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、ActRIIポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体による免疫アフィニティー精製、およびActRIIポリペプチドに融合させたドメインに結合する作用因子によるアフィニティー精製(例えば、プロテインAカラムを使用して、ActRIIA-Fc融合物またはActRIIB-Fc融合物を精製することができる)を含む技法を使用して、細胞培養培地、宿主細胞、またはこれらの両方から単離することができる。一部の実施形態では、ActRIIポリペプチドは、その精製を容易とするドメインを含有する融合タンパク質である。一部の実施形態では、精製は、一連のカラムクロマトグラフィー工程であって、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ除外クロマトグラフィー、およびカチオン交換クロマトグラフィーのうちの3つまたはこれより多く、任意の順序で含む工程により達成する。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換により完了し得る。ActRIIB-hFcタンパク質またはActRIIA-hFcタンパク質は、サイズ除外クロマトグラフィーにより決定した場合に、>90%、>95%、>96%、>98%、または>99%の純度まで精製することができ、SDS PAGEにより決定した場合に、>90%、>95%、>96%、>98%、または>99%の純度まで精製することができる。純度の標的レベルは、哺乳動物系、特に、非ヒト霊長動物、齧歯動物(マウス)、およびヒトにおいて、望ましい結果を達成するのに十分なレベルであるべきである。
別の実施形態では、精製用リーダー配列(例えば、組換えActRIIポリペプチドの所望の部分のN末端に位置するポリ-(His)/エンテロキナーゼ切断部位の配列)をコードする融合遺伝子は、Ni2+金属樹脂を用いる親和性クロマトグラフィーによる、発現された融合タンパク質の精製を可能にし得る。その後、精製用リーダー配列は、引き続いて、エンテロキナーゼでの処理によって除去され、精製ActRIIポリペプチドを提供し得る。例えば、Hochuliら、(1987年)J.Chromatography 411巻:177頁;およびJanknechtら、PNAS USA 88巻:8972頁を参照のこと)。
融合遺伝子を作製するための技術は周知である。本質的には、異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNAフラグメントの接合は、ライゲーションのための平滑末端もしくはスタガード(staggered)末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要に応じた粘着末端のフィルイン(filling-in)、所望されない接合を回避するためのアルカリ性ホスファターゼ処理、および酵素によるライゲーション、を用いる従来の技術に従って行われる。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来の技術によって合成され得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、2つの連続した遺伝子フラグメント間の相補的なオーバーハング(overhang)を生じるアンカープライマーを用いて行われ得、これらのフラグメントは、その後、キメラ遺伝子配列を生じるようにアニーリングされ得る[例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992年を参照のこと]。
D.他の結合ポリペプチド
別の態様では、本開示のアンタゴニスト作用因子または作用因子群の組合せは、少なくともGDF11および/またはアクチビンBに結合し、かつ/またはこれらの活性(例えば、ActRIIAまたはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達の活性化)を阻害する、非抗体結合ポリペプチドである。任意選択で、本開示の非抗体結合ポリペプチドまたは非抗体結合ポリペプチドの組合せは、アクチビンAに結合せず、かつ/またはその活性(例えば、アクチビンAに媒介される、ActRIIAまたはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達の活性化)を阻害しない。任意選択で、本開示の非抗体結合ポリペプチドまたは非抗体結合ポリペプチドの組合せは、GDF8にさらに結合し、かつ/またはその活性(例えば、GDF8に媒介される、ActRIIAまたはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達の活性化)をさらに阻害する。一部の実施形態では、本開示の非抗体結合ポリペプチドまたは非抗体結合ポリペプチドの組合せであって、GDF11および/またはアクチビンBに結合し、かつ/またはこれらの活性を阻害するポリペプチドまたは組合せは、アクチビンE、アクチビンC、アクチビンA、GDF8、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、およびBMP10のうちの1つまたは複数にさらに結合し、かつ/またはこれらの活性(例えば、ActRIIAまたはActRIIBによるSmad2/3および/またはSmad1/5/8のシグナル伝達の活性化)をさらに阻害する。ある特定の実施形態では、BMP9および/またはBMP10に結合する非抗体結合ポリペプチドは、BMP9とTGFβスーパーファミリーのII型受容体(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB)との相互作用、および/またはBMP10とTGFβスーパーファミリーのII型受容体(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB)との相互作用を阻害する。好ましくは、BMP9および/またはBMP10に結合する非抗体結合ポリペプチドは、BMP9とALK1との相互作用、および/またはBMP10とALK1との相互作用を阻害しないか、またはこれらを実質的に阻害しない。
本開示の結合ポリペプチドは、公知のポリペプチド合成法を使用して化学合成することもでき、組換え技術を使用して調製および精製することもできる。結合ポリペプチドは、通常少なくとも約5アミノ酸の長さであり、代替的に、少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100アミノ酸の長さまたはこれより長く、ここで、このような結合ポリペプチドは、好ましくは、本明細書で記載される標的(例えば、GDF11、アクチビンB、アクチビンE、アクチビンC、GDF8、アクチビンA、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、およびBMP10)に特異的に結合することが可能である。結合ポリペプチドは、不要な実験を行わず、周知の技法を使用して同定することができる。これに関して、例えば、米国特許第5,556,762号;同第5,750,373号;同第4,708,871号;同第4,833,092号;同第5,223,409号;同第5,403,484号;同第5,571,689号;および同第5,663,143号;PCT公開第WO84/03506号;および同第WO84/03564号;Geysenら(1984年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、81巻:3998~4002頁;Geysenら(1985年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、82巻:178~182頁;Geysenら(1986年)、Synthetic Peptides as Antigens、130~149頁;Geysenら(1987年)、J. Immunol. Meth、102巻:259~274頁;Schoofsら(1988年)、J. Immunol.、140巻:611~616頁、Cwirla, S. E.ら(1990年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、87巻:6378頁;Lowman, H. B.ら(1991年)、Biochemistry、30巻:10832頁;Clackson, T.ら(1991年)、Nature、352巻:624頁;Marks, J. D.ら(1991年)、J. Mol. Biol.、222巻:581頁;Kang, A. S.ら(1991年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻:8363頁、ならびにSmith, G. P.(1991年)、Current Opin. Biotechnol.、2巻:668頁を含め、当該分野では、ポリペプチド標的に特異的に結合することが可能な結合ポリペプチドについて、ポリペプチドライブラリーをスクリーニングするための技法が周知であることに留意されたい。
これに関して、バクテリオファージ(ファージ)ディスプレイは、大規模なポリペプチドライブラリーをスクリーニングして、標的ポリペプチド(例えば、GDF11、アクチビンB、アクチビンE、アクチビンC、GDF8、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、およびBMP10)に特異的に結合することが可能なライブラリーのメンバーを同定することを可能とする、1つの周知の技法である。ファージディスプレイとは、改変体ポリペプチドを、バクテリオファージ粒子の表面上のコートタンパク質への融合タンパク質として提示する技法である[例えば、Scott, J. K.およびSmith, G. P.(1990年)、Science、249巻:386頁を参照されたい]。ファージディスプレイの有用性は、選択的にランダム化されたタンパク質改変体(またはランダムにクローニングされたcDNA)の大規模なライブラリーは、標的分子に高アフィニティーで結合する配列について、迅速かつ効率的にソートし得るという事実にある。ファージ上のペプチドライブラリー[例えば、Cwirla, S. E.ら(1990年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、87巻:6378頁を参照されたい]またはタンパク質ライブラリー[Lowman, H. B.ら(1991年)、Biochemistry、30巻:10832頁;Clackson, T.ら(1991年)、Nature、352巻:624頁;Marks, J. D.ら(1991年)、J. Mol. Biol.、222巻:581頁;Kang, A. S.ら(1991年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻:8363頁]の提示が、特異的結合特性を有するポリペプチドまたはオリゴペプチドについて、数百万に及ぶポリペプチドまたはオリゴペプチドをスクリーニングするために使用されている[例えば、Smith, G. P.(1991年)、Current Opin. Biotechnol.、2巻:668頁を参照されたい]。ランダム変異体のファージライブラリーのソートは、多数の改変体を構築し、拡大させるための戦略、標的受容体を使用したアフィニティー精製のための手順、および結合濃縮結果を評価する手段を必要とする(例えば、米国特許第5,223,409号;同第5,403,484号;同第5,571,689号;および同第5,663,143号を参照されたい)。
大半のファージディスプレイ法では、フィラメント型ファージを使用しているが、ラムダ字形ファージディスプレイシステム(例えば、WO95/34683;および米国特許第5,627,024号を参照されたい)、T4ファージディスプレイシステム[例えば、Renら(1998年)、Gene、215巻:439頁;Zhuら(1998年)、Cancer Research、58巻(15号):3209~3214頁;Jiangら(1997年)、Infection & Immunity、65巻(11号):4770~4777頁;Renら(1997年)、Gene、195巻(2号):303~311頁;Ren(1996年)、Protein Sci.、5巻:1833頁;Efimovら(1995年)、Virus Genes、10巻:173頁を参照されたい]、およびT7ファージディスプレイシステム[例えば、SmithおよびScott(1993年)、Methods in Enzymology、217巻:228~257頁;および米国特許第5,766,905号を参照されたい]もまた公知である。
当該分野では、選択された標的分子への結合についてペプチドライブラリーをスクリーニングし、機能的タンパク質を提示し、これらのタンパク質を所望の特性についてスクリーニングする潜在的可能性を有するディスプレイシステムの能力を増強する追加の改善が公知である。ファージディスプレイ反応のためのコンビナトリアル反応デバイスが開発されており(例えば、WO98/14277を参照されたい)、ファージディスプレイライブラリーを使用して、二分子間相互作用(例えば、WO98/20169;およびWO98/20159を参照されたい)および拘束螺旋状ペプチドの特性(例えば、WO98/20036を参照されたい)が解析および制御されている。国際特許公開第WO97/35196号は、アフィニティーリガンドを単離する方法であって、ファージディスプレイライブラリーを、1つの溶液であって、その中でリガンドが標的分子に結合する溶液、および第2の溶液であって、その中でアフィニティーリガンドが標的分子に結合しない溶液と接触させて、結合リガンドを選択的に単離する方法について記載している。国際特許公開第WO97/46251号は、ランダムファージディスプレイライブラリーを、アフィニティー精製された抗体でバイオパニングし、次いで、結合ファージを単離した後で、マイクロプレートウェルを使用して、高アフィニティーの結合ファージを単離する、マイクロパニングプロセスを施す方法について記載している。Staphlylococcus
aureusのプロテインAの、アフィニティータグとしての使用についてもまた、報告されている[例えば、Liら(1998年)、Mol. Biotech.、9巻:187頁を参照されたい]。
WO97/47314は、ファージディスプレイライブラリーであり得るコンビナトリアルライブラリーを使用して、酵素特異性を識別する、基質サブトラクションライブラリーの使用について記載している。ファージディスプレイを使用する洗浄剤中の使用に適する酵素を選択するための方法については、国際特許公開第WO97/09446号において記載されている。特異的結合タンパク質を選択する追加の方法については、例えば、米国特許第5,498,538号;同第5,432,018号;および国際特許公開第WO98/15833号において記載されている。
ペプチドライブラリーを生成し、これらのライブラリーをスクリーニングする方法はまた、例えば、米国特許第5,723,286号;同第5,432,018号;同第5,580,717号;同第5,427,908号;同第5,498,530号;同第5,770,434号;同第5,734,018号;同第5,698,426号;同第5,763,192号;および同第5,723,323号においても開示されている。
本明細書で開示される非抗体結合ポリペプチド(例えば、GDF11結合ポリペプチド、アクチビンB結合ポリペプチド、アクチビンB結合ポリペプチド、アクチビンE結合ポリペプチド、アクチビンC結合ポリペプチド、GDF8結合ポリペプチド、BMP6結合ポリペプチド、GDF15結合ポリペプチド、Nodal結合ポリペプチド、GDF3結合ポリペプチド、BMP3結合ポリペプチド、BMP3B結合ポリペプチド、BMP9結合ポリペプチド、またはBMP6結合ポリペプチド)のいずれかを、本開示の1つまたは複数の追加のアンタゴニスト作用因子と組み合わせて、所望の効果を達成することができる。本明細書で開示される非抗体結合ポリペプチド(例えば、GDF11結合ポリペプチド、アクチビンA結合ポリペプチド、アクチビンB結合ポリペプチド、アクチビンE結合ポリペプチド、アクチビンC結合ポリペプチド、GDF8結合ポリペプチド、BMP6結合ポリペプチド、GDF15結合ポリペプチド、Nodal結合ポリペプチド、GDF3結合ポリペプチド、BMP3結合ポリペプチド、BMP3B結合ポリペプチド、BMP9結合ポリペプチド、またはBMP6結合ポリペプチド)を、本開示の、別の非抗体結合ポリペプチド、または本開示の標的のいずれかを指向する抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗GDF11抗体、抗GDF8抗体、抗BMP6抗体、抗ActRIIA抗体、抗ActRIIB抗体、抗GDF15抗体、抗Nodal抗体、抗GDF3抗体、抗BMP3抗体、抗BMP3B抗体、抗BMP9抗体、または抗BMP10抗体)、または本明細書で開示されるリガンドトラップポリペプチド(例えば、GDF11トラップポリペプチド、アクチビンBトラップポリペプチド、またはGDF11/アクチビンBトラップポリペプチド)、または本開示の標的のいずれかを指向する低分子もしくは本開示の標的のいずれかを指向する低分子アンタゴニスト(例えば、アクチビンB低分子アンタゴニスト、アクチビンB低分子アンタゴニスト、GDF11低分子アンタゴニスト、アクチビンC低分子アンタゴニスト、アクチビンE低分子アンタゴニスト、GDF8低分子アンタゴニスト、BMP6低分子アンタゴニスト、GDF15低分子アンタゴニスト、Nodal低分子アンタゴニスト、GDF3低分子アンタゴニスト、BMP3低分子アンタゴニスト、BMP3B低分子アンタゴニスト、BMP9低分子アンタゴニスト、またはBMP10低分子アンタゴニスト)、または本開示のポリヌクレオチドアンタゴニスト(例えば、アクチビンBのポリヌクレオチドアンタゴニスト、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、またはBMP6のポリヌクレオチドアンタゴニスト)と組み合わせることができる。例えば、GDF11結合ポリペプチドを、本開示のアクチビンBアンタゴニスト(例えば、アクチビンBトラップポリペプチド、抗アクチビンB抗体、アクチビンBの低分子アンタゴニスト、アクチビンBのポリヌクレオチドアンタゴニスト、またはアクチビンBの非抗体ポリペプチドアンタゴニスト)と組み合わせて、GDF11およびアクチビンB両方の活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができる。代替的な実施形態では、アクチビンB結合ポリペプチドを、本開示のGDF11アンタゴニスト(例えば、GDFトラップポリペプチド、抗GDF11抗体、GDF11の低分子アンタゴニスト、GDF11のポリヌクレオチドアンタゴニスト、またはGDF11の非抗体ポリペプチドアンタゴニスト)と組み合わせて、GDF11およびアクチビンB両方の活性を阻害することができる。
E.低分子アンタゴニスト
別の態様では、本開示のアンタゴニスト作用因子または作用因子群の組合せは、少なくともGDF11および/またはアクチビンBの発現(例えば、転写、翻訳、および/または細胞内分泌)を阻害する低分子アンタゴニストである。任意選択で、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組合せは、アクチビンAの発現を阻害しない。任意選択で、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組合せは、GDF8の発現をさらに阻害する。一部の実施形態では、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組合せであって、GDF11および/またはアクチビンBの発現を阻害する低分子アンタゴニストまたは組合せは、アクチビンE、アクチビンC、アクチビンA、GDF8、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、およびBMP3Bの1つまたは複数の発現をさらに阻害する。
別の態様では、本開示のアンタゴニスト作用因子または作用因子群の組合せは、少なくともGDF11および/またはアクチビンBに結合し、かつ、これらの活性(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達の活性化)を阻害する低分子作用因子である。任意選択で、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組合せは、アクチビンAに結合せず、かつ/またはその活性(例えば、アクチビンAに媒介される、ActRIIAおよび/またはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達の活性化)を阻害しない。任意選択で、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組合せは、GDF8にさらに結合し、かつ、その活性(例えば、GDF8に媒介される、ActRIIAおよび/またはActRIIBによるSmad2/3のシグナル伝達の活性化)をさらに阻害する。一部の実施形態では、本開示の低分子アンタゴニストまたは低分子アンタゴニストの組合せであって、GDF11および/またはアクチビンBに結合し、かつこれらの活性を阻害する低分子アンタゴニストまたは組合せは、GDF8、アクチビンE、アクチビンC、アクチビンA、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、およびBMP10のうちの1つまたは複数にさらに結合し、かつ、これらの活性(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIBによるSmad2/3および/またはSmad1/5/8のシグナル伝達の活性化)をさらに阻害する。ある特定の実施形態では、BMP9および/またはBMP10に結合する低分子は、BMP9とTGFβスーパーファミリーのII型受容体(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB)との相互作用、および/またはBMP10とTGFβスーパーファミリーのII型受容体(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB)との相互作用を阻害する。好ましくは、BMP9および/またはBMP10に結合する低分子は、BMP9とALK1との相互作用、および/またはBMP10とALK1との相互作用 を阻害しないか、またはこれらを実質的に阻害しない。
さらなる態様では、本開示のアンタゴニスト作用因子または作用因子群の組合せは、少なくともGDF11および/またはアクチビンBの活性に間接的に拮抗する低分子作用因子である。一部の実施形態では、本開示の間接的な低分子アンタゴニストまたは間接的な低分子アンタゴニストの組合せは、ActRII受容体(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)に結合する低分子であり、少なくともGDF11および/またはアクチビンBが、ActRII受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させること(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIBによるSmad2/3シグナル伝達の活性化)を阻害する。任意選択で、本開示の間接的な低分子アンタゴニストまたは間接的な低分子アンタゴニストの組合せは、アクチビンAが、ActRII受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させること(例えば、アクチビンAに媒介される、ActRIIAおよび/またはActRIIBによるSmad2/3のシグナル伝達)を実質的に阻害しない。任意選択で、本開示の間接的な低分子アンタゴニストまたは間接的な低分子アンタゴニストの組合せは、ActRII受容体に結合し、GDF8によるActRII受容体への結合および/またはこの活性化をさらに阻害する。一部の実施形態では、本開示の間接的な低分子アンタゴニストまたは間接的な低分子アンタゴニストの組合せであって、ActRII受容体に結合し、少なくともGDF11および/またはアクチビンBが、ActRII受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることを阻害する低分子アンタゴニストまたは組合せは、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、BMP6、アクチビンA、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、およびBMP10のうちの1つまたは複数が、ActRII受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させること(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIBによるSmad2/3および/またはSmad1/5/8のシグナル伝達の活性化)をさらに阻害する。
本開示の結合有機低分子アンタゴニストは、公知の方法を使用して、同定し、化学合成することができる(例えば、PCT公開第WO00/00823号および同第WO00/39585号を参照されたい)。一般に、本開示の低分子アンタゴニストは、通常約2000ダルトン未満のサイズであり、代替的に、約1500、750、500、250、または200ダルトン未満のサイズであり、ここで、このような有機低分子は、本明細書で記載されるポリペプチド(アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、およびBMP6)に、好ましくは、特異的に結合することが可能である。このような低分子アンタゴニストは、不要な実験を行わず、周知の技法を使用して同定することができる。これに関して、当該分野では、ポリペプチド標的に特異的に結合することが可能な分子について、有機低分子ライブラリーをスクリーニングするための技法が周知であることに留意されたい(例えば、国際特許公開第WO00/00823号および同第WO00/39585号を参照されたい)。
本開示の結合有機低分子は、例えば、アルデヒド、ケトン、オキシム、ヒドラゾン、セミカルバゾン、カルバジド、一級アミン、二級アミン、三級アミン、N置換ヒドラジン、ヒドラジド、アルコール、エーテル、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、カルボン酸、エステル、アミド、尿素、カルバメート、カーボネート、ケタール、チオケタール、アセタール、チオアセタール、アリールハロゲン化物、アリールスルホネート、アルキルハロゲン化物、アルキルスルホネート、芳香族化合物、複素環化合物、アニリン、アルケン、アルキン、ジオール、アミノアルコール、オキサゾリジン、オキサゾリン、チアゾリジン、チアゾリン、エナミン、スルホンアミド、エポキシド、アジリジン、イソシアネート、スルホニル塩化物、ジアゾ化合物、および酸塩化物であり得る。
本明細書で開示される低分子アンタゴニスト(例えば、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、またはBMP10の低分子アンタゴニスト)のいずれかを、本開示の1つまたは複数の追加のアンタゴニスト作用因子と組み合わせて、所望の効果を達成することができる。本明細書で開示される低分子アンタゴニスト(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、またはBMP10の低分子アンタゴニスト)を、本開示の別の低分子アンタゴニスト、または本開示の標的のいずれかを指向する抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗GDF8抗体、抗BMP6抗体、抗ActRIIA抗体、抗ActRIIB抗体、抗ActRIIB抗体、抗GDF15抗体、抗Nodal抗体、抗GDF3抗体、抗BMP3抗体、抗BMP3B抗体、抗BMP9抗体、または抗BMP10抗体)、または本明細書で開示される非抗体結合ポリペプチド(例えば、GDF11結合ポリペプチド、アクチビンB結合ポリペプチド、アクチビンB結合ポリペプチド、アクチビンE結合ポリペプチド、アクチビンC結合ポリペプチド、GDF8結合ポリペプチド、BMP6結合ポリペプチド、GDF15結合ポリペプチド、Nodal結合ポリペプチド、GDF3結合ポリペプチド、BMP3結合ポリペプチド、BMP3B結合ポリペプチド、BMP9結合ポリペプチド、またはBMP10結合ポリペプチド)、または本明細書で開示されるリガンドトラップポリペプチド(例えば、GDF11トラップポリペプチド、アクチビンBトラップポリペプチド、またはGDF/アクチビンBトラップポリペプチド)、または本開示のポリヌクレオチドアンタゴニスト(例えば、アクチビンAのポリヌクレオチドアンタゴニスト、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、またはBMP3Bのポリヌクレオチドアンタゴニスト)と組み合わせることができる。例えば、GDF11の低分子アンタゴニストを、本開示のアクチビンBアンタゴニスト(例えば、アクチビンBトラップポリペプチド、抗アクチビンB抗体、アクチビンBの低分子アンタゴニスト、アクチビンBのポリヌクレオチドアンタゴニスト、またはアクチビンBの非抗体ポリペプチドアンタゴニスト)と組み合わせて、GDF11およびアクチビンB両方の活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができる。代替的な実施形態では、アクチビンB抗体の低分子アンタゴニストを、本開示のGDF11アンタゴニスト(例えば、GDFトラップポリペプチド、抗GDF11抗体、GDF11の低分子アンタゴニスト、GDF11のポリヌクレオチドアンタゴニスト、またはGDF11の非抗体ポリペプチドアンタゴニスト)と組み合わせて、GDF11およびアクチビンB両方の活性を阻害することができる。
F.アンタゴニストポリヌクレオチド
別の態様では、本開示のアンタゴニスト作用因子または作用因子群の組合せは、少なくともGDF11および/またはアクチビンBを阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストである。一部の実施形態では、本開示のアンタゴニストポリヌクレオチドは、少なくともGDF11および/またはアクチビンBの発現(例えば、転写、翻訳、および/または細胞内分泌)を阻害する。任意選択で、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せは、アクチビンAを阻害しない(例えば、アクチビンAの発現および/または活性を阻害しない)。任意選択で、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せは、GDF8をさらに阻害する(例えば、GDF8の発現および/または活性を阻害する)。一部の実施形態では、GDF11および/またはアクチビンB(例えば、GDF11および/またはアクチビンBの発現および/または活性)を阻害する、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せは、アクチビンE、アクチビンC、アクチビンA、GDF8、BMP6、Nodal、GDF3、BMP3、およびGDF3Bのうちの1つまたは複数をさらに阻害する(例えば、発現および/または活性を阻害する)。
本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストは、アンチセンス核酸、RNAi分子[例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)]、アプタマーおよび/またはリボザイムであり得る。当該分野では、ヒトGDF11、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、BMP6、Nodal、GDF3、BMP3、およびGDF3Bの核酸配列およびアミノ酸配列が公知である。当該分野では加えて、ポリヌクレオチドアンタゴニストを生成する多くの異なる方法も周知である。したがって、本開示に従う使用のためのポリヌクレオチドアンタゴニストは、当該分野における知見および本明細書で提供される教示に基づき、当業者が慣習的に作製することができる。
アンチセンス技術は、アンチセンスDNAもしくはアンチセンスRNA、または三重螺旋形成を介して、遺伝子発現を制御するのに使用することができる。アンチセンス法は、例えば、Okano(1991年)、J. Neurochem.、56巻:560頁;Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1988年)において論じられている。三重螺旋形成は、例えば、Cooneyら(1988年)、Science、241巻:456頁;およびDervanら、(1991年)、Science、251巻:1300頁において論じられている。方法は、ポリヌクレオチドの、相補性DNAまたはRNAへの結合に基づく。一部の実施形態では、アンチセンス核酸は、本明細書で開示される遺伝子のRNA転写物(例えば、GDF11、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、BMP6、Nodal、GDF3、BMP3、およびGDF3B)の少なくとも一部に相補的な一本鎖RNA配列または一本鎖DNA配列を含む。しかし、絶対的な相補性は、好ましいが、必要ではない。
本明細書で言及される「RNAの少なくとも一部に相補的な」配列とは、RNAとハイブリダイズし、安定的な二重鎖を形成することが可能であるのに十分な相補性を有する配列を意味し、したがって、本明細書で開示される遺伝子(例えば、GDF11、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、BMP6、Nodal、GDF3、BMP3、およびGDF3B)の二本鎖アンチセンス核酸の場合、二重鎖DNAの一本鎖を試験してもよく、三重鎖形成をアッセイしてもよい。ハイブリダイズする能力は、アンチセンス核酸の相補性の程度および長さの両方に依存する。一般に、ハイブリダイズさせる核酸が大型であるほど、それが含有し得るRNAとの塩基のミスマッチも多くなるが、なおも安定的な二重鎖(または、場合に応じて、三重鎖)を形成する。当業者は、ハイブリダイズした複合体の融点を決定する標準的な手順の使用により、ミスマッチの許容可能な程度を確認することができる。
メッセージの5’末端、例えば、AUG開始コドンまでの5’側非翻訳配列であって、AUG開始コドンを含む5’側非翻訳配列に相補的なポリヌクレオチドは、翻訳を阻害するのに最も効率的に働くはずである。しかし、mRNAの3’側非翻訳配列に対する配列相補性もまた、mRNAの翻訳を阻害するのに効果的であることが示されている[例えば、Wagner, R.、(1994年)、Nature、372巻:333~335頁を参照されたい]。したがって、本開示の遺伝子(例えば、GDF11、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、BMP6、Nodal、GDF3、BMP3、およびGDF3B)の非コード領域である、5’側または3’側の非翻訳領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、内因性mRNA(例えば、GDF11、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、BMP6、Nodal、GDF3、BMP3、およびGDF3B)の翻訳を阻害するアンチセンスアプローチにおいて使用し得る。mRNAの5’側非翻訳領域に相補的なポリヌクレオチドは、AUG開始コドンの相補体を含むべきである。mRNAコード領域に相補的なアンチセンスポリヌクレオチドは、翻訳のそれほど効率的な阻害剤ではないが、本開示の方法に従い使用し得る。本開示のmRNA(例えば、GDF11、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、BMP6、Nodal、GDF3、BMP3、およびGDF3B)の5’側領域、3’側領域、またはコード領域のいずれにハイブリダイズするようにデザインされている場合でも、アンチセンス核酸は、少なくとも6ヌクレオチドの長さであるべきであり、好ましくは、6~約50ヌクレオチドの範囲の長さのオリゴヌクレオチドである。具体的な態様では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、または少なくとも50ヌクレオチドである。
一実施形態では、本開示のアンチセンス核酸(例えば、GDF11、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、BMP6、Nodal、GDF3、BMP3、およびGDF3B、ならびに/またはアンチセンス核酸)は、外因性配列からの転写により、細胞内で生成される。例えば、ベクターまたはその一部は、転写され、本開示の遺伝子のアンチセンス核酸(RNA)を生成する。このようなベクターは、所望のアンチセンス核酸をコードする配列を含有する。このようなベクターは、所望のアンチセンスRNAを生成するように転写され得る限りにおいて、エピソームにとどまってもよく、染色体に組み込まれてもよい。このようなベクターは、当該分野で標準的な組換えDNA法により構築することができる。ベクターは、プラスミドベクターでもよく、ウイルスベクターでもよく、または当該分野で公知の他のベクターであって、脊椎動物細胞内の複製および発現のために使用されるベクターでもよい。本開示の所望の遺伝子またはこれらのフラグメントをコードする配列の発現は、脊椎動物細胞内、好ましくは、ヒト細胞内で作用することが当該分野で公知の任意のプロモーターによるものであり得る。このようなプロモーターは、誘導性であっても、恒常的であってもよい。このようなプロモーターとして、SV40初期プロモーター領域[例えば、BenoistおよびChambon(1981年)、Nature、290巻:304~310頁を参照されたい]、ラウス肉腫ウイルスの3’側長末端リピート内に含有されるプロモーター[例えば、Yamamotoら(1980年)、Cell、22巻:787~797頁を参照されたい]、ヘルペスチミジンプロモーター[例えば、Wagnerら(1981年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、78巻:1441~1445頁を参照されたい]、およびメタロチオネイン遺伝子の調節配列[例えば、Brinsterら(1982年)、Nature、296巻:39~42頁を参照されたい]が挙げられるがこれらに限定されない。
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドアンタゴニストは、GDF11、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、BMP6、Nodal、GDF3、BMP3、およびGDF3Bのうちの1つまたは複数の発現を標的とする干渉RNA(RNAi)分子である。RNAiとは、標的とされるmRNAの発現に干渉するRNAの発現を指す。具体的には、RNAiは、siRNA(低分子干渉RNA)を介する特異的mRNAとの相互作用により、標的とされる遺伝子をサイレンシングする。次いで、dsRNA複合体が、細胞による分解の標的とされる。siRNA分子は、10~50ヌクレオチドの長さの二本鎖RNA二重鎖であり、十分に相補的な標的遺伝子(例えば、遺伝子に少なくとも80%の同一性)の発現に干渉する。一部の実施形態では、siRNA分子は、標的遺伝子のヌクレオチド配列に少なくとも85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
追加のRNAi分子として、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)が挙げられ、また、短鎖干渉ヘアピンおよびマイクロRNA(miRNA)が挙げられる。shRNA分子は、ループにより接続された、標的遺伝子に由来するセンス配列とアンチセンス配列とを含有する。shRNAは、核から細胞質に輸送され、mRNAと共に分解される。Pol IIIプロモーターまたはU6プロモーターを使用して、RNAiのためのRNAを発現させることができる。Paddisonら[Genes & Dev.(2002年)、16巻:948~958頁、2002年]は、RNAiを実行する手段としてヘアピンに折り畳まれた低分子RNA分子を使用している。したがって、このような短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子はまた、本明細書で記載される方法においても有利に使用される。機能的なshRNAのステムおよびループの長さは、サイレンシング活性に影響を及ぼさずに変化し、ステム長は、約25~約30ntのいずれかの範囲であることが可能であり、ループサイズは、4~約25ntの間の範囲であり得る。いかなる特定の理論に束縛されることも望まないが、これらのshRNAは、DICER RNaseの二本鎖RNA(dsRNA)産物に相似し、いずれにせよ、特異的遺伝子の発現を阻害するための同じ能力を有すると考えられる。shRNAは、レンチウイルスベクターから発現させることができる。miRNAは、約10~70ヌクレオチドの長さの一本鎖RNAであり、「ステムループ」構造を特徴とするpre-miRNAとして最初に転写され、その後、RISCを介するさらなるプロセシングの後で、成熟miRNAにプロセシングされる。
siRNAを含むがこれに限定せず、RNAiを媒介する分子は、インビトロで、化学合成(Hohjoh、FEBS Lett、521巻:195~199頁、2002年)、dsRNAの加水分解(Yangら、Proc Natl Acad Sci USA、99巻:9942~9947頁、2002年)、T7 RNAポリメラーゼによるインビトロ転写(Donzeetら、Nucleic Acids Res、30巻:e46頁、2002年;Yuら、Proc Natl Acad Sci USA、99巻:6047~6052頁、2002年)、およびE.coli RNアーゼIIIなどのヌクレアーゼを使用する二本鎖RNAの加水分解(Yangら、Proc Natl Acad Sci USA、99巻:9942~9947頁、2002年)によって生成することができる。
別の態様に従うと、本開示は、デコイDNA、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合体化DNA、封入型DNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、ネイキッドRNA、封入型RNA、ウイルスRNA、二本鎖RNA、RNA干渉をもたらすことが可能な分子、またはこれらの組合せを含むがこれらに限定されないポリヌクレオチドアンタゴニストを提供する。
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストは、アプタマーである。アプタマーは、二本鎖DNA分子および一本鎖RNA分子を含む核酸分子であって、GDF11、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、BMP6、Nodal、GDF3、BMP3、またはGDF3Bのポリペプチドなど、標的分子に特異的に結合する三次構造に結合し、これを形成する核酸分子である。当該分野では、アプタマーの生成および治療的使用が、十分に確立されている(例えば、米国特許第5,475,096号を参照されたい)。アプタマーについての追加の情報は、米国特許出願公開第20060148748号において見出すことができる。核酸アプタマーは、当該分野で公知の方法を使用して、例えば、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)プロセスを介して選択される。SELEXは、例えば、米国特許第5,475,096号;同第5,580,737号;同第5,567,588号;同第5,707,796号;同第5,763,177号;同第6,011,577号;および同第6,699,843号において記載されているように、標的分子に高度に特異的に結合する核酸分子のインビトロ進化法である。アプタマーを同定する別のスクリーニング法は、米国特許第5,270,163号において記載されている。SELEXプロセスは、単量体であれ、多量体であれ、他の核酸分子およびポリペプチドを含め、事実上任意の化合物に対してリガンドとして作用する(特異的結合対を形成する)ヌクレオチド単量体内で利用可能な二次元構造および三次元構造ならびに化学的多様性を形成する核酸の能力に基づく。任意のサイズまたは組成の分子が、標的として機能し得る。SELEX法は、候補オリゴヌクレオチドの混合物からの選択、ならびに結合、区分、および増幅の段階的反復を伴い、同じ一般的な選択スキームを使用して、所望の結合アフィニティーおよび選択性を達成する。ランダム化された配列のセグメントを含み得る核酸の混合物から始めて、SELEX法は、混合物を結合に好適な条件下で標的と接触させる工程と;非結合核酸を標的分子に特異的に結合した核酸から区分する工程と;核酸-標的複合体を解離させる工程と;核酸-標的複合体から解離させた核酸を増幅して、リガンド濃縮された核酸混合物をもたらす工程とを含む。結合させる工程と、区分する工程と、解離させる工程と、増幅する工程を、所望の回数のサイクルにわたり繰り返して、高アフィニティーおよび大きな特異性で標的分子に結合する核酸リガンドをもたらす。
典型的に、このような結合分子は、動物に別個に投与される[例えば、O’Connor(1991年)、J. Neurochem.、56巻:560頁を参照されたい]が、このような結合分子はまた、宿主細胞により取り込まれたポリヌクレオチドからインビボで発現させることもでき、インビボで発現させることができる[例えば、Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1988年)を参照されたい]。
本明細書で開示されるポリヌクレオチドアンタゴニスト(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、BMP6、Nodal、GDF3、BMP3、またはGDF3Bのポリヌクレオチドアンタゴニスト)のいずれかを、本開示の1つまたは複数の追加のアンタゴニスト作用因子と組み合わせて、所望の効果を達成することができる。本明細書で開示されるポリヌクレオチドアンタゴニスト(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF11、GDF8、BMP6、Nodal、GDF3、BMP3、またはGDF3Bのポリヌクレオチドアンタゴニスト)を、本開示の別のポリヌクレオチドアンタゴニスト、または本開示の標的のいずれかを指向する抗体(例えば、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、抗アクチビンB抗体、抗GDF8抗体、抗アクチビンC抗体、抗アクチビンE抗体、抗BMP6抗体、抗BMP6抗体、抗GDF15抗体、抗Nodal抗体、抗GDF3抗体、抗BMP3抗体、抗BMP3B抗体、抗BMP9抗体、または抗BMP10抗体)、または本明細書で開示される非抗体結合ポリペプチド(例えば、GDF11結合ポリペプチド、アクチビンB結合ポリペプチド、アクチビンB結合ポリペプチド、アクチビンE結合ポリペプチド、アクチビンC結合ポリペプチド、GDF8結合ポリペプチド、BMP6結合ポリペプチド、GDF15結合ポリペプチド、Nodal結合ポリペプチド、GDF3結合ポリペプチド、BMP3結合ポリペプチド、BMP3B結合ポリペプチド、BMP9結合ポリペプチド、またはBMP10結合ポリペプチド)、または本明細書で開示されるリガンドトラップポリペプチド(例えば、GDF11トラップポリペプチド、アクチビンBトラップポリペプチド、またはGDF11/アクチビンBトラップポリペプチド)、または本開示の標的のいずれかを指向する低分子アンタゴニスト(例えば、アクチビンA低分子アンタゴニスト、アクチビンB低分子アンタゴニスト、GDF11低分子アンタゴニスト、アクチビンC低分子アンタゴニスト、アクチビンE低分子アンタゴニスト、GDF8低分子アンタゴニスト、BMP6低分子アンタゴニスト、BMP6低分子アンタゴニスト、GDF15低分子アンタゴニスト、Nodal低分子アンタゴニスト、GDF3低分子アンタゴニスト、BMP3低分子アンタゴニスト、BMP3B低分子アンタゴニスト、BMP9低分子アンタゴニスト、またはBMP10低分子アンタゴニスト)と組み合わせることができる。例えば、GDF11のアンチセンスアンタゴニストを、本開示のアクチビンBアンタゴニスト(例えば、アクチビンBトラップポリペプチド、抗アクチビンB抗体、アクチビンBの低分子アンタゴニスト、アクチビンBのポリヌクレオチドアンタゴニスト、またはアクチビンBの非抗体ポリペプチドアンタゴニスト)と組み合わせて、GDF11およびアクチビンB両方の活性(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体に結合し、かつ/またはこれらを活性化させる能力)を阻害することができる。代替的な実施形態では、アクチビンBのアンチセンスアンタゴニストを、本開示のGDF11アンタゴニスト(例えば、GDFトラップポリペプチド、抗GDF11抗体、GDF11の低分子アンタゴニスト、GDF11のポリヌクレオチドアンタゴニスト、またはGDF11の非抗体ポリペプチドアンタゴニスト)と組み合わせて、GDF11およびアクチビンB両方の活性を阻害することができる。
3.スクリーニングアッセイ
ある特定の態様では、本開示は、開示されるActRIIポリペプチド(例えば、可溶性ActRIIAおよびActRIIBポリペプチドおよびその改変体)の使用であって、GDF11、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、およびBMP10のうちの1つまたは複数のアンタゴニスト、特に、これらのリガンドの1つまたは複数が、ActRII受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させること(例えば、ActRIIA受容体および/またはActRIIB受容体)を阻害するが、アクチビンAが、ActRII受容体に結合し、かつ/またはこれを活性化させることは阻害しないアンタゴニストを同定するための使用に関する。本明細書で開示されるスクリーニングアッセイを介して同定される化合物を試験して、インビボまたはインビトロにおける赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、および/または網状赤血球レベルを調節するそれらの能力を評価することができる。これらの化合物は、例えば、動物モデルにおいて試験することができる。
ActRIIのシグナル伝達を標的化することによって、赤血球またはヘモグロビンのレベルを増加させるための治療剤についてスクリーニングするための多数のアプローチが存在する。特定の実施形態では、選択された細胞株においてActRII媒介性の作用を混乱させる因子を同定するために、化合物のハイスループットスクリーニングが行われ得る。特定の実施形態では、アッセイは、ActRIIポリペプチドの、その結合パートナー、例えばActRIIリガンドなど(例えば、GDF11、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、アクチビンA、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10)への結合を特異的に阻害または減少させる化合物をスクリーニングおよび同定するために行われ得る。あるいは、アッセイは、ActRIIポリペプチドの、その結合パートナー、例えばActRIIリガンド(例えば、アクチビンA)などへの結合に実質的に影響を及ぼさない化合物を同定するために使用され得る。さらなる実施形態では、化合物は、ActRIIポリペプチドと相互作用するその能力によって同定され得る。
種々のアッセイ形式が十分であり、そして、本開示を考慮すれば、本明細書中に明示的に記載されない形式は、本明細書中に記載されていないにもかかわらず、当業者によって理解される。本明細書中に記載されるように、本開示の試験化合物(作用因子)は、任意の組み合わせ化学の方法によって作製され得る。あるいは、本主題の化合物は、インビボまたはインビトロで合成された天然に存在する生体分子であり得る。組織増殖の調節因子として作用するその能力について試験される化合物(作用因子)は、例えば、細菌、酵母、植物または他の生物によって生成されても(例えば、天然の生成物)、化学的に生成されても(例えば、ペプチド模倣物を含む低分子)、組換えにより生成されてもよい。本開示によって企図される試験化合物としては、非ペプチジル有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣物、糖、ホルモンおよび核酸分子が挙げられる。特定の実施形態では、試験因子は、約2000ダルトン未満の分子量を持つ小さな有機分子である。
本開示の試験化合物は、単一の別個の実体として提供され得るか、または、組み合わせ化学によって作製されたような、より複雑度の高いライブラリーにおいて提供され得る。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、ハロゲン化アルキル、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテルおよび有機化合物の他の分類を含み得る。試験システムに対する試験化合物の提示は、特に、最初のスクリーニング段階において、単離された形態または化合物の混合物としてのいずれかであり得る。任意選択で、化合物は、他の化合物で誘導体化され得、そして、化合物の単離を容易にする誘導体化基を有し得る。誘導体化基の非限定的な例としては、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位体、ポリヒスチジン、磁気ビーズ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、光活性化クロスリンカー、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、所与の期間に調査される化合物の数を最大にするためには、ハイスループットアッセイが望ましい。精製もしくは半精製(semi-purified)されたタンパク質で誘導され得るような、無細胞のシステムにおいて行われるアッセイは、試験化合物によって媒介される分子標的における変更の迅速な発生と比較的容易な検出とを可能にするように作られ得るという点で、しばしば、「一次」スクリーニングとして好ましい。さらに、試験化合物の細胞毒性またはバイオアベイラビリティの作用は、一般に、インビトロのシステムでは無視され得るが、その代わりに、このアッセイは主として、ActRIIポリペプチドとその結合パートナー(例えば、GDF11、アクチビンA、アクチビンBなど)との間の結合親和性の変更において明らかになり得るような、分子標的に対する薬物の作用に焦点を当てている。
単なる例示として、本開示の例示的なスクリーニングアッセイでは、関心のある化合物は、アッセイの意図に応じて適宜、通常ActRIIBリガンド(例えば、GDF11、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、BMP6、アクチビンA、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10)に結合し得る単離および精製されたActRIIBポリペプチドと接触させられる。その後、化合物とActRIIBポリペプチドとの混合物は、ActRIIBリガンドを含む組成物に加えられる。ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体の検出および定量は、ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質との間の複合体の形成の阻害(または助長)における化合物の効力を決定するための手段を提供する。化合物の効力は、種々の濃度の試験化合物を用いて得られたデータから用量応答曲線を生成することによって評価され得る。さらに、比較のためのベースラインを提供するためのコントロールアッセイもまた行われ得る。例えば、コントロールアッセイでは、単離および精製されたActRIIBリガンドは、ActRIIBポリペプチドを含む組成物に加えられ、そして、ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体の形成は、試験化合物の非存在下で定量される。一般に、反応物が混合され得る順序は変化し得、そして、同時に混合され得ることが理解される。さらに、適切な無細胞アッセイ系を与えるように、精製したタンパク質の代わりに、細胞の抽出物および溶解物が使用され得る。
ActRIIポリペプチドとその結合タンパク質との間の複合体の形成は、種々の技術によって検出され得る。例えば、複合体の形成の調節は、例えば、検出可能に標識されたタンパク質、例えば、放射標識(例えば、32P、35S、14Cまたは3H)、蛍光標識(例えば、FITC)、または、酵素標識されたActRIIポリペプチドまたはその結合タンパク質を用いて、イムノアッセイによって、あるいは、クロマトグラフィーによる検出によって定量され得る。
特定の実施形態では、本開示は、直接的または間接的のいずれかで、ActRIIポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用の程度を測定する、蛍光偏光アッセイおよび蛍光共鳴エネルギー遷移(FRET)アッセイの使用を企図する。さらに、光導波管(waveguide)(例えば、PCT公開WO96/26432および米国特許第5,677,196号を参照のこと)、表面プラズモン共鳴(SPR)、表面電荷センサ、および表面力センサに基づくもののような、他の検出様式が、本開示の多くの実施形態と適合性がある。
さらに、本開示は、ActRIIBポリペプチドとその結合パートナーとの間の相互作用を妨害または助長する因子を同定するための、「ツーハイブリッドアッセイ」としても公知である相互作用トラップアッセイの使用を企図する[例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosら(1993年)Cell 72巻:223~232頁;Maduraら(1993年)J Biol Chem 268巻:12046~12054頁;Bartelら(1993年)Biotechniques 14巻:920~924頁;およびIwabuchiら(1993年)Oncogene 8巻:1693~1696頁を参照のこと]。特定の実施形態では、本開示は、ActRIIポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用を解離させる化合物(例えば、低分子またはペプチド)を同定するための、逆ツーハイブリッドシステムの使用を企図する[例えば、VidalおよびLegrain(1999年)Nucleic Acids Res 27巻:919~29頁;VidalおよびLegrain(1999年)Trends Biotechnol 17巻:374~81頁;ならびに米国特許第5,525,490号;同第5,955,280号;および同第5,965,368号を参照のこと]。
特定の実施形態では、本主題の化合物は、ActRIIポリペプチドと相互作用するその能力によって同定される。化合物と、ActRIIポリペプチドとの間の相互作用は、共有結合性であっても非共有結合性であってもよい。例えば、このような相互作用は、光架橋、放射性標識リガンド結合、およびアフィニティクロマトグラフィーを含むインビトロの生化学的な方法を用いて、タンパク質レベルで同定され得る[例えば、Jakoby WBら(1974年)、Methods in Enzymology 46巻:1頁を参照のこと]。特定の場合には、化合物は、ActRIIポリペプチドに結合する化合物を検出するためのアッセイのような、機構ベースのアッセイにおいてスクリーニングされ得る。これは、固相もしくは流体相の結合事象を含み得る。あるいは、ActRIIポリペプチドをコードする遺伝子は、レポーターシステム(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質)と共に細胞中にトランスフェクトされ、そして、好ましくは、ハイスループットスクリーニングによって、ライブラリーに対して、または、ライブラリーの個々のメンバーを用いてスクリーニングされ得る。他の機構ベースの結合アッセイ(例えば、自由エネルギーの変化を検出する結合アッセイ)が使用され得る。結合アッセイは、ウェル、ビーズもしくはチップに固定されているか、または、固定された抗体によって捕捉されている標的を用いて行われ得るか、あるいは、キャピラリー電気泳動によって分離され得る。結合した化合物は通常、比色または蛍光または表面プラズモン共鳴を用いて検出され得る。
4.例示的な治療的使用
ある特定の態様では、少なくともGDF11および/またはアクチビンBを阻害する本開示のアンタゴニスト作用因子または作用因子群の組合せを使用して、赤血球レベルを高め、貧血を処置もしくは予防し、かつ/または無効赤血球生成を処置もしくは予防することを必要とする対象において、赤血球レベルを高め、貧血を処置もしくは予防し、かつ/または無効赤血球生成を処置もしくは予防することができる。任意選択で、本明細書の方法に従い使用されるアンタゴニスト作用因子または作用因子群の組合せは、アクチビンAを阻害しない。任意選択で、本明細書の方法に従い使用されるアンタゴニスト作用因子または作用因子群の組合せは、GDF8をさらに阻害する。ある特定の態様では、本明細書の方法に従い使用されるアンタゴニスト作用因子または作用因子群の組合せは、GDF11および/またはアクチビンBを阻害することに加えて、GDF8、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンA、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、およびBMP10のうちの1つまたは複数をさらに阻害する。
用語「対象」、「個体」、または「患者」は、本明細書を通して互換的であり、一般に、哺乳動物を指す。哺乳動物は、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長動物(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長動物)、ウサギ、および齧歯動物(例えば、マウスおよびラット)を含むがこれらに限定されない。ある特定の態様では、本開示のアンタゴニスト作用因子を、赤血球レベルを高めるための従来の治療アプローチ、特に、多因子起源の貧血を処置するのに使用される治療アプローチと組み合わせて使用することができる。赤血球レベルを高めるための従来の治療アプローチは、例えば、赤血球輸血、1つまたは複数のEPO受容体活性化因子の投与、造血幹細胞移植、免疫抑制性生物学的製剤および免疫抑制性薬物(例えば、コルチコステロイド)を含む。ある特定の実施形態では、本開示のアンタゴニスト作用因子を使用して、貧血を処置もしくは予防することを必要とする対象において、貧血を処置もしくは予防することができる。ある特定の実施形態では、本開示のアンタゴニスト作用因子を使用して、無効赤血球生成および/または無効赤血球生成に関連する障害を処置または予防することを必要とする対象において、無効赤血球生成および/または無効赤血球生成に関連する障害を処置または予防することができる。ある特定の態様では、本開示のアンタゴニスト作用因子を、貧血または無効赤血球生成障害を処置または予防するための従来の治療アプローチ、特に、多因子起源の貧血を処置するのに使用される治療アプローチと組み合わせて使用することができる。
本明細書中で使用される場合、障害または状態を「予防する」治療薬は、統計的試料において、無処置の対照試料に対して、処置試料における障害もしくは状態の出現を低下させるか、あるいは、無処置の対照試料に対して、障害もしくは状態の1または複数の症状の発症を遅延させるか、または、重篤度を低下させるような化合物を指す。
用語「処置する」は、本明細書中で使用される場合、一度確立された状態の改善もしくは除去を含む。
いずれの場合にも、予防または処置は、医師または他の医療提供者によって提供される診断、および、治療剤の投与の意図される結果において認識され得る。
一般に、本開示で記載されている疾患または状態の処置または予防は、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を、「有効量」で投与することにより達成する。作用因子の有効量とは、必要な投与量で、かつ、必要な期間にわたり、所望の治療結果または予防結果を達成するのに効果的な量を指す。本開示の作用因子の「治療有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する作用因子の能力などの要因に従い変化し得る。「予防有効量」とは、必要な投与量で、かつ、必要な期間にわたり、所望の予防結果を達成するのに効果的な量を指す。
特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト) を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、健康な個体において、そして、選択された患者集団において赤血球、ヘモグロビンまたは網状赤血球のレベルを増加させるために使用することができる。適切な患者集団の例としては、貧血を有する患者のような望ましくない低い赤血球またはヘモグロビンレベルを有する患者、および、大きな外科手術またはかなりの血液喪失を生じ得る他の処置を受ける予定の患者のような、望ましくない低い赤血球またはヘモグロビンレベルを生じる危険性のある患者、が挙げられる。一実施形態では、適切な赤血球レベルを有する患者は、赤血球レベルを増加させるために1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)で処置され、その後、血液が採血され、そして、後に輸血に使用するために保存される。
本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を、任意選択で、EPO受容体活性化因子と組み合わせて使用して、貧血を有する患者における、赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、および/またはヘマトクリットレベルを高めることができる。ヒトにおけるヘモグロビンレベルおよび/またはヘマトクリットレベルを観察する場合、個体間のばらつきを考慮に入れるが、適切な年齢および性別のカテゴリーについての正常なレベル未満のレベルは、貧血を示し得る。例えば、10~12.5g/dl、典型的に、約11.0g/dlのヘモグロビンレベルは、健常成人では、正常な範囲内にあると考えられるが、治療に関して、標的レベルをより低くすることにより、心血管副作用の発生をより少なくすることができる[例えば、Jacobsら(2000年)、Nephrol Dial Transplant、15巻、15~19頁を参照されたい]。代替的に、ヘマトクリットレベル(細胞により占有される血液試料の容量百分率)を、貧血の尺度として使用することができる。健常個体のヘマトクリットレベルは、成人男性では、約41~51%の範囲にあり、成人女性では、35~45%の範囲にある。ある特定の実施形態では、患者は、患者を、赤血球、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットの標的レベルに戻すことが意図される投与レジメンで処置することができる。ヘモグロビンレベルおよびヘマトクリットレベルは、個々人で変化するので、最適には、標的ヘモグロビンレベルおよび/または標的ヘマトクリットレベルは、各患者のために個別化することができる。
貧血は、組織傷害、感染、および/または慢性疾患、特に、がんを有する患者において高頻度で観察される。対象によっては、貧血は、低エリスロポエチンレベルおよび/または骨髄中のエリスロポエチンに対する不適切な応答により識別される[例えば、Adamson(2008年)、Harrison’s Principles of Internal Medicine、17版、McGraw Hill、New York、628~634頁を参照されたい]。貧血の潜在的な原因としては、例えば、血液喪失、栄養不良(例えば、たんぱく質の食餌性摂取の低減)、薬物療法反応、骨髄に関連する種々の問題および多くの疾患が挙げられる。より具体的には、貧血は、例えば、骨髄移植、固形腫瘍(例えば、乳がん、肺がんおよび結腸がん);リンパ系の腫瘍(例えば、慢性リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫);造血系の腫瘍(例えば、白血病、骨髄異形成症候群および多発性骨髄腫);放射線治療;化学療法(例えば、白金を含むレジメン);炎症および自己免疫疾患(慢性関節リウマチ、他の炎症性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、急性もしくは慢性の皮膚疾患(例えば、乾癬)、炎症性腸疾患(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)が挙げられるがこれらに限定されない);急性もしくは慢性の腎疾患もしくは腎不全(特発性もしくは先天性の状態を含む);急性もしくは慢性の肝臓病;急性もしくは慢性の出血;患者の同種もしくは自己抗体および/または宗教上の理由(例えば、いくつかのエホバの証人(Jehovah’s Witness))に起因する赤血球の輸血が可能ではない状況;感染(例えば、マラリアおよび骨髄炎);異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球病(貧血)、サラセミアを含む);薬物の使用または乱用(例えば、アルコールの誤用);輸血を回避するためのあらゆる要因から貧血を有する小児患者;ならびに、循環過負荷に関する問題に起因して輸血を受けることができない、老齢の患者または貧血と共に基礎心肺疾患を有する患者を含む種々の障害および状態に関連している[例えば、Adamson(2008年)、Harrison’s Principles of Internal Medicine、17版、McGraw Hill、New York、628~634頁を参照されたい]。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、およびBMP6のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を使用して、本明細書で開示される障害または状態のうちの1つまたは複数に関連する貧血を処置もしくは予防することができる。
多くの因子が、がん関連の貧血に寄与し得る。いくつかは、疾患過程自体、および炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1、インターフェロンγおよび腫瘍壊死因子の生成に関連する[Bronら(2001年)、Semin Oncol 28巻(補遺8号):1~6頁]。その影響の中で、炎症は重要な鉄調節ペプチドヘプシジンを誘導し、それによってマクロファージからの鉄のエクスポートを阻害し、一般に赤血球生成のための鉄の利用可能性を制限する[例えば、Ganz(2007年)、J Am Soc Nephrol 18巻:394~400頁を参照のこと]。様々な経路を通しての血液喪失も、がん関連の貧血に寄与することができる。がん進行による貧血の有病率は、前立腺がんでの5%から多発性骨髄腫での90%まで、がん型によって変動する。がん関連の貧血は、倦怠および生活の質の低下、処置効力の低下および死亡率の増加を含む、重大な結果を患者にもたらす。一部の実施形態において、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用してがん関連の貧血を処置することができる。
低増殖性貧血は、原発性骨髄機能障害または原発性骨髄不全から生じ得る。低増殖性貧血として、慢性疾患による貧血、腎疾患による貧血、低代謝状態に関連する貧血、およびがんに関連する貧血が挙げられる。これらの種類の各々では、内因性エリスロポエチンレベルは、観察される貧血の程度に対して不適切に低い。他の低増殖性貧血として、初期鉄欠損性貧血、および骨髄への損傷により引き起こされる貧血が挙げられる。これらの種類では、内因性エリスロポエチンレベルは、観察される貧血の程度に対して適切に増加している。顕著な例は、がんおよび/もしくは化学療法薬またはがんの放射線療法により引き起こされる骨髄抑制である。広範にわたる臨床試験の再検討により、軽度の貧血が、化学療法後の患者の100%で生じ得るのに対し、より重度の貧血は、このような患者の最大80%で生じ得ることが見出された[例えば、Groopmanら(1999年)、J Natl Cancer Inst、91巻:1616~1634頁を参照されたい]。骨髄抑制薬には、例えば以下のものが含まれる:1)ナイトロジェンマスタード(例えば、メルファラン)およびニトロソウレア(例えば、ストレプトゾシン)などのアルキル化剤;2)葉酸アンタゴニスト(例えば、メトトレキセート)、プリン類似体(例えば、チオグアニン)およびピリミジン類似体(例えば、ゲムシタビン)などの代謝拮抗物質;3)アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)などの細胞傷害抗生物質;4)キナーゼインヒビター(例えば、ゲフィチニブ);5)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびビンカアルカロイド(例えば、ビノレルビン)などの分裂抑制剤;6)モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ);ならびに7)トポイソメラーゼインヒビター(例えば、トポテカンおよびエトポシド)。さらに、低代謝速度をもたらす多くの状態は、軽度から中等度の低増殖性貧血をもたらし得る。内分泌欠乏状態は、そのような状態の1つである。例えば、貧血は、アジソン病、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、または去勢されたかもしくはエストロゲンで処置された男性で起こることがある。一部の実施形態において、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して高増殖性貧血を処置することができる。
慢性腎疾患は、場合によって、低増殖性貧血と関連し、貧血の重症度は、腎機能障害のレベルに応じて変化する。そのような貧血は、主に、エリスロポイエチンの不十分な生成および赤血球の生存の低下による。慢性腎臓疾患は、透析または腎移植が患者生存のために必要とされる末期(5期)疾患まで、数年または数十年にわたって徐々に通常進行する。貧血はしばしばこの過程の初期に発生し、疾患の進行に伴い悪化する。腎臓疾患の貧血の臨床上の結果は十分に記載されており、その例には、左心室肥大の発達、認知機能障害、生活の質の低下、および免疫機能の変化が含まれる[例えば、Levinら(1999年)、Am J Kidney Dis 27巻:347~354頁;Nissenson(1992年)、Am J Kidney Dis 20巻(補遺1号):21~24頁;Revickiら(1995年)、Am J Kidney Dis 25巻:548~554頁;Gafterら(1994年)、Kidney Int 45巻:224~231頁を参照のこと]。一部の実施形態において、1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して急性腎臓疾患もしくは慢性腎臓疾患または急性腎不全もしくは慢性腎不全に関連する貧血を処置することができる。
外傷または分娩後出血からなど、十分な量の急性失血によって生じる貧血は、急性出血後貧血として公知である。急性失血は、他の血液成分と共に比例的なRBC枯渇があるので、貧血を伴わない血液量減少を最初に引き起こす。しかし、血液量減少は、血管外から血管区画へ流体を移動させる生理学的機構を急速に引き起こし、血液希釈および貧血をもたらす。慢性であれば、失血により体内に貯蔵されている鉄が徐々に枯渇し、最終的に鉄欠乏症につながる。一部の実施形態において、1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して急性失血によって生じる貧血を処置することができる。
鉄欠乏性貧血は、中間段階として負の鉄均衡および鉄欠乏赤血球生成を含む、鉄欠乏増加の段階的進行の最終段階である。妊娠、不十分な食事、腸の吸収不良、急性または慢性の炎症および急性または慢性の血液喪失などの状態で例示されるように、鉄欠乏は、鉄要求の増加、鉄摂取の減少または鉄損失の増加から起こることがある。この型の軽度から中等度の貧血では、骨髄は低増殖性のままであり、RBC形態はほとんど正常である。しかし、軽度の貧血でさえ、多少の小球性淡色性RBCを生じることがあり、重度の鉄欠乏貧血への移行には、骨髄の過剰増殖およびますます増加する小球性および淡色性のRBCが付随する[例えば、Adamson(2008年)、Harrison’s Principles of Internal Medicine、第17版;McGraw Hill、New York、628~634頁を参照のこと]。鉄欠乏性貧血のための適当な療法は、その原因および重症度によって決まり、経口用鉄製剤、非経口鉄製剤およびRBC輸血が主要な従来の選択肢である。一部の実施形態において、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト),を、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、使用して慢性鉄欠乏を処置することができる。
骨髄異形成症候群(MDS)とは、骨髄性血球生成の無効および急性骨髄性白血病への転換の危険性を特徴とする血液学的状態の多様な集合である。MDS患者では、血液幹細胞が、健常な赤血球、白血球、または血小板に成熟しない。MDS障害として、例えば、不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、過剰な芽球を有する不応性貧血、変形した過剰な芽球を有する不応性貧血、多系列異形成を有する不応性血球減少症、および孤発性5q染色体異常と関連する骨髄異形成症候群を含む。これらの障害は、造血細胞の量および質の両方における不可逆性の欠失として顕在化するので、MDS患者の大半は慢性貧血に罹患している。したがって、MDS患者は、赤血球レベルを高めるための、輸血および/または増殖因子(例えば、エリスロポエチンまたはG-CSF)による処置を最終的に必要とする。しかし、多くのMDS患者は、このような治療の頻度に起因する副作用を発症する。例えば、高頻度の赤血球輸血を施される患者は、余剰鉄の蓄積に由来する組織損傷および臓器損傷を呈示し得る。したがって、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、およびBMP6の1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を使用して、MDSを有する患者を処置することができる。ある特定の実施形態では、MDSを患う患者は、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を、任意選択で、EPO受容体活性化因子と組み合わせて使用して処置することができる。他の実施形態では、MDSを患う患者は、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)と、MDSを処置するための1つまたは複数の追加の治療剤であって、例えば、サリドマイド、レナリドミド、アザシチジン(azacitadine)、デシタビン、エリスロポエチン、デフェロキサミン、抗胸腺細胞グロブリン、およびフィルグラスチム(filgrastrim)(G-CSF)を含む治療剤との組合せを使用して処置することができる。
鉄動態研究に基づき、再生不良性貧血、出血、または末梢溶血とは元来識別される[例えば、Rickettsら(1978年)、Clin Nucl Med、3巻:159~164頁を参照されたい]無効赤血球生成は、成熟RBCの生成が、骨髄中に存在する赤芽球系前駆体(赤芽球)の数が与えられたときに予測されるより少ない、多様な貧血群を説明している[Tannoら(2010年)、Adv Hematol、2010巻:358283頁]。このような貧血では、エリスロポエチンレベルの上昇にもかかわらず、成熟RBC生成の無効に起因して、組織低酸素症が遷延する。最終的には、エリスロポエチンレベルの上昇が赤芽球の大規模な増殖を駆動する悪循環が発生し、これは、髄外赤血球生成に起因する脾腫(脾臓の腫大)[例えば、Aizawaら(2003年)、Am
J Hematol、74巻:68~72頁を参照されたい]、赤芽球誘導性骨病態[例えば、Di Matteoら(2008年)、J Biol Regul Homeost Agents、22巻:211~216頁を参照されたい]を潜在的にもたらし、治療的RBC輸血の非存在下においてもなお、組織鉄過負荷[例えば、Pippardら(1979年)、Lancet、2巻:819~821頁を参照されたい]を潜在的にもたらす。したがって、赤血球生成の有効性を促進することにより、本開示のGDF11および/またはアクチビンBのアンタゴニストは、前述の悪循環を打破し、したがって、根底にある貧血だけでなく、エリスロポエチンレベルの上昇、脾腫、骨病態、および組織鉄過負荷といった関連する合併症も緩和することができる。一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のアンタゴニスト作用因子(例えば、GDF11、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、GDF8、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9、および/またはBMP10のアンタゴニスト)を使用して、貧血およびEPOレベルの上昇のほか、脾腫、赤芽球誘導性骨病態、鉄過負荷、およびそれらの付随する病態などの合併症を含む、無効赤血球生成を処置または予防することができる。脾腫に関して、このような病態は、胸痛または腹痛および網内系過形成を含む。髄外造血は、脾臓内だけでなく、潜在的には他の組織内でも、髄外造血性偽腫瘍の形態で生じる場合がある[例えば、Musallamら(2012年)、Cold Spring Harb Perspect Med、2巻:a013482頁を参照されたい]。赤芽球誘導性骨病態に関して、付随する病態は、低骨塩密度、骨粗鬆症、および骨疼痛を含む[例えば、Haidarら(2011年)、Bone、48巻:425~432頁を参照されたい]。鉄過負荷に関して、付随する病態は、ヘプシジン抑制および食餌中の鉄の過剰吸収[例えば、Musallamら(2012年)、Blood Rev、26巻(補遺1号):S16~S19頁を参照されたい]、複数の内分泌障害および肝線維症/肝硬変[例えば、Galanelloら(2010年)、Orphanet J Rare Dis、5巻:11頁を参照されたい]、ならびに鉄過剰性心筋症[Lekawanvijitら、2009年、Can J Cardiol、25巻:213~218頁]を含む。
無効赤血球生成の最も一般的な原因は、完全アルファヘモグロビン鎖の生成と完全ベータヘモグロビン鎖の生成との不均衡が赤芽球の成熟時におけるアポトーシスの増大をもたらす遺伝性異常ヘモグロビン症である、サラセミア症候群である[例えば、Schrier (2002年)、Curr Opin Hematol、9巻:123~126頁を参照されたい]。サラセミアは総体として、世界中で最も高頻度の遺伝子障害であり、疫学的パターンを変化させながら、米国および全世界のいずれにおいても増大しつつある公衆衛生問題に寄与することが予測されている[Vichinsky(2005年)、Ann NY Acad Sci、1054巻:18~24頁]。サラセミア症候群は、それらの重症度に応じて命名される。したがって、αサラセミアは、軽症型αサラセミア(αサラセミア形質としてもまた公知であり、2つのα-グロビン遺伝子が影響を受ける)、ヘモグロビンH症(3つのα-グロビン遺伝子が影響を受ける)、および重症型αサラセミア(胎児水腫としてもまた公知であり、4つのα-グロビン遺伝子が影響を受ける)を含む。βサラセミアは、軽症型βサラセミア(βサラセミア形質としてもまた公知であり、1つのβ-グロビン遺伝子が影響を受ける)、中間型βサラセミア(2つのβ-グロビン遺伝子が影響を受ける)、ヘモグロビンEサラセミア(2つのβ-グロビン遺伝子が影響を受ける)、および重症型βサラセミア(クーリー貧血としてもまた公知であり、2つのβ-グロビン遺伝子が影響を受ける結果として、β-グロビンタンパク質の完全な非存在がもたらされる)を含む。βサラセミアは、複数の機関に影響を及ぼし、無視できない罹患率および死亡率と関連し、現在のところ一生にわたるケアを必要とする。近年では、鉄のキレート化と組み合わせた定期的な輸血の使用に起因して、βサラセミアを有する患者の平均余命が延長されているが、輸血および消化管による鉄の吸収過剰の両方から生じる鉄過負荷は、心疾患、血栓症、性腺機能低下症、甲状腺機能低下症、糖尿病、骨粗鬆症、および骨減少症など、重篤な合併症を引き起こし得る[例えば、Rundら(2005年)、N Engl J Med、353巻:1135~1146頁を参照されたい]。ある特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を、任意選択で、EPO受容体活性化因子と組み合わせて使用して、サラセミア症候群を処置または予防することができる。
一部の実施形態では、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を、任意選択で、EPO受容体活性化因子と組み合わせて、サラセミア症候群に加えて、無効赤血球生成による障害を処置するために使用することができる。このような障害は、鉄芽球性貧血(siderblastic anemia)(遺伝性または後天性);赤血球生成異常性貧血(I型およびII型);鎌状赤血球貧血;遺伝性球状赤血球症;ピルビン酸キナーゼ欠損症;葉酸欠損症(先天性疾患、摂取の減少、または要求量の増加に起因する)、コバラミン欠損症(先天性疾患、悪性貧血、吸収障害、膵臓機能不全、または摂取の減少に起因する)、ある特定の薬物、または説明されていない原因(先天性赤血球生成異常性貧血、不応性巨赤芽球性貧血、または赤白血病)などの状態により潜在的に引き起こされる巨赤芽球性貧血;例えば、骨髄線維症(骨髄化生)および骨髄ろうを含む骨髄ろう性貧血;先天性赤芽球性ポルフィリン症;ならびに鉛中毒を含む。
ある特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を、無効赤血球生成のための支持療法と組み合わせて使用することができる。このような療法は、貧血を処置するための、赤血球または全血液による輸血を含む。慢性貧血または遺伝性貧血では、鉄ホメオスタシスのための正常な機構が輸血の反復で圧倒され、最終的には、心臓、肝臓、および内分泌腺などの主要組織において、毒性であり、潜在的に致死性である鉄の蓄積がもたらされる。したがって、無効赤血球生成に慢性的に罹患する患者のための支持療法はまた、尿および/または糞便への鉄の排出を促進し、これにより、組織鉄過負荷を予防するかまたは転導する、1つまたは複数の鉄キレート化分子による処置も含む[例えば、Hershko(2006年)、Haematologica、91巻:1307~1312頁;Caoら(2011年)、Pediatr Rep、3巻(2号):e17頁を参照されたい]。有効な鉄キレート化剤は、触媒による、ヒドロキシルラジカルおよび酸化生成物の生成を介して、大半の鉄毒性の主因となる可能性が高い、非トランスフェリン結合鉄の酸化形態である第二鉄に選択的に結合し、これを中和することが可能であるべきである[例えば、Espositoら(2003年)、Blood、102巻:2670~2677頁を参照されたい]。これらの作用因子は構造的に多様であるが、全てが、八面体の中和配位錯体を形成することが可能な酸素供与体原子または窒素供与体原子を保有し、個々の鉄原子は1:1(六座キレート化剤)、2:1(三座)、または3:1(二座)の当量比である[Kalinowskiら(2005年)、Pharmacol Rev、57巻:547~583頁]。一般に、効果的な鉄キレート化剤はまた、比較的低分子量(例えば、700ダルトン未満)であり、水中および脂質中のいずれにおいても、罹患組織への接触を可能とする可溶性を有する。鉄キレート化分子の具体例は、毎日の非経口投与を必要とする、細菌起源の六座キレート化剤であるデフェロキサミン、ならびに経口活性合成剤であるデフェリプロン(二座)およびデフェラシロクス(三座)を含む。2つの鉄キレート化剤の同日投与からなる組合せ療法は、キレート化単剤療法に対して不応性の患者において有望であり、また、デフェロキサミン(dereroxamine)単剤に対する患者の服薬遵守不良の問題の克服においても有望である[Caoら(2011年)、Pediatr Rep、3巻(2号):e17頁;Galanelloら(2010年)、Ann NY Acad Sci、1202巻:79~86頁]。
本明細書で使用する場合、「~と組み合わせて」または「併用投与」とは、第2の治療が、体内でなおも効果的である(例えば、2つの化合物は、患者において同時に効果的であり、これは、2つの化合物の相乗効果を含み得る)ような、任意の投与形態を指す。有効性は、血中、血清中、または血漿中の作用因子の測定可能な濃度と相関しない場合もある。例えば、異なる治療用化合物は、同じ製剤において投与することもでき、別個の製剤において、共時的または逐次的に投与することもでき、異なるスケジュールで投与することもできる。したがって、このような処置を施される個体は、異なる治療の組合せ効果から利益を得ることができる。本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)は、1つまたは複数の他の追加の作用因子または支持療法と共時的に、これらの前に、またはこれらの後に投与され得る。一般に、各治療剤は、その特定の作用因子について決定された用量および/または時間スケジュールで投与される。レジメンにおいて利用する特定の組合せは、本開示のアンタゴニストの、治療および/または達成される所望の治療効果に対する適合性を考慮に入れる。
ある特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を、無効赤血球生成のために、ヘプシジンまたはヘプシジンアゴニストと組み合わせて使用することができる。主に肝臓で生成される循環ポリペプチドであるヘプシジンは、吸収腸細胞、肝細胞、およびマクロファージに局在化する鉄排出タンパク質であるフェロポーチンの分解を誘導するその能力のために、鉄代謝の主要な調節因子であると考えられている。大まかに述べると、ヘプシジンは、細胞外における鉄の利用可能性を低減するので、ヘプシジンアゴニストは、無効赤血球生成の処置において有益であり得る[例えば、Nemeth(2010年)、Adv Hematol、2010巻:750643頁を参照されたい]。この視点は、βサラセミアのマウスモデルにおけるヘプシジン発現増大の有益な効果により裏付けられている[Gardenghiら(2010年)、J Clin Invest、120巻:4466~4477頁]。
本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト), はまた、任意選択でEPO受容体活性化因子と組み合わせて、小型(小球性)、特大(大赤血球性)、奇形または異常な色(淡色性)のRBCを部分的に特徴とする、無秩序なRBC成熟の貧血の処置にも適当である。
ある特定の実施形態では、本開示は、貧血を処置または予防することを必要とする個体において、個体に、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)、ならびにEPO受容体活性化因子の治療有効量を投与することにより、貧血を処置または予防する方法を提供する。ある特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を、EPO受容体活性化因子と組み合わせて使用して、EPOの有害作用に感受性である患者において、これらの活性化因子の必要とされる用量を低減することができる。これらの方法は、患者の治療処理および予防処置のために使用することができる。
本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を、EPO受容体活性化因子と組み合わせて使用して、特により低用量範囲のEPO受容体活性化因子で、赤血球の増加を達成することができる。これは、高用量のEPO受容体活性化因子と関連する、公知のオフターゲット効果および危険性を低減するのに有益であり得る。EPOの主要な有害作用は、例えば、ヘマトクリットレベルまたはヘモグロビンレベルの過剰な上昇および多血症を含む。ヘマトクリットレベルの上昇は、高血圧症(より特定すれば、高血圧症の悪化)および血管内血栓症をもたらし得る。報告されている他のEPOの有害作用であって、それらの一部が高血圧症と関連する有害作用は、頭痛、インフルエンザ様症候群、シャントの閉塞、心筋梗塞、および血栓症に起因する脳痙攣、高血圧性脳症、および赤血球無形成である。例えば、Singibarti(1994年)、J. Clin Investig、72巻(補遺6号):S36~S43頁;Horlら(2000年)、Nephrol Dial Transplant、15巻(補遺4号):51~56頁;Delantyら(1997年)、Neurology、49巻、686~689頁;およびBunn(2002年)、N Engl J Med、346巻(7号)、522~523頁を参照されたい。
本開示のアンタゴニストが、EPOとは異なる機構で作用するという条件で、これらのアンタゴニストは、EPOに十分に応答しない患者における赤血球レベルおよびヘモグロビンレベルを高めるために有用であり得る。例えば、本開示のアンタゴニストは、通常用量~増量用量のEPO(>300IU/kg/週)の投与が標的レベルまでのヘモグロビンレベルの増加をもたらさない患者に有益であり得る。不適切なEPO応答を有する患者は、全てのタイプの貧血において見られるが、より多い数の不応者が、がんを有する患者および末期の腎疾患を有する患者において特に頻繁に観察されている。EPOに対する不適切な応答は、構成的(EPOでの最初の処置の際に観察される)、または後天的(EPOでの反復処置の際に観察される)のいずれかであり得る。
特定の実施形態では、本開示は、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を用いて処置されているか、または処置される候補の患者を、その患者における1つまたは複数の血液学的パラメータを測定することによって管理するための方法を提供する。血液学的パラメータは、本開示のアンタゴニストを用いた処置の候補である患者に対する適切な投薬を評価するため、処置中に血液学的パラメータをモニタリングするため、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた処置中に投薬量を調節するかどうかを評価するため、および/または本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの適切な維持用量を評価するために使用され得る。1つまたは複数の血液学的パラメータが正常レベルの外側である場合、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を用いた投薬は減少、延期または終了され得る。
本明細書中で提供される方法に従って測定され得る血液学的パラメータとしては、例えば、赤血球レベル、血圧、貯蔵鉄、および、当該分野で認識されている方法を使用する、赤血球レベルの増加と相関する体液中に見出される他の作用因子が挙げられる。そのようなパラメータは、患者からの血液試料を使用して決定され得る。赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、および/またはヘマトクリットレベルの増加により、血圧の上昇が引き起こされ得る。
一実施形態では、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を用いて処置される候補である患者において、1つまたは複数の血液学的パラメータが正常範囲の外側、または正常の高値側である場合、そのときは、血液学的パラメータが自然にまたは治療介入によってのいずれかで正常または許容されるレベルに戻るまで、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投与の開始が延期され得る。例えば、候補の患者が高血圧または前高血圧である場合、そのときは、患者は、患者の血圧を低下させるために血圧降下剤を用いて処置され得る。個々の患者の状態に適した任意の血圧降下剤が使用され得、例えば、利尿薬、アドレナリンインヒビター(アルファ遮断薬およびベータ遮断薬を含む)、血管拡張薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター、またはアンジオテンシンII受容体遮断薬が挙げられる。血圧は、食事および運動レジメンを使用して代替的に処置され得る。同様に、候補の患者が正常よりも低いか、または正常の低値側の貯蔵鉄を有する場合、そのときは、患者は、患者の貯蔵鉄が正常または許容されるレベルに戻るまで、適切な食事および/または鉄サプリメントのレジメンを用いて処置され得る。正常よりも高い赤血球レベルおよび/またはヘモグロビンレベルを有する患者に対して、そのときは、そのレベルが正常または許容されるレベルに戻るまで本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投与が延期され得る。
特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を用いて処置される候補である患者において、1つまたは複数の血液学的パラメータが正常範囲の外側、または正常の高値側である場合、そのときは、投与の開始が延期されないことがある。しかし、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投薬量または投薬の頻度は、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストが投与されると上昇する血液学的パラメータの許容されない増加リスクを低下させる量に設定され得る。あるいは、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)と、望ましくないレベルの血液学的パラメータに対処する治療剤を組み合わせた治療レジメンが患者のために開発され得る。例えば、患者の血圧が上昇している場合、そのときは、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)および血圧降下剤の投与を含む治療レジメンが設計され得る。所望より低い貯蔵鉄を有する患者に対して、1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)および鉄の補給の治療レジメンが開発され得る。
一実施形態では、1つまたは複数の血液学的パラメータについてのベースラインパラメータは、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を用いて処置される候補である患者に対して確立され得、適切な投薬レジメンが、ベースライン値に基づいて患者に対して確立される。あるいは、患者の病歴に基づいて確立されたベースラインパラメータが、患者に対して適切なアンタゴニスト投薬レジメンを通知するために使用され得る。例えば、健康な患者が、規定の正常範囲を超える確立された血圧のベースライン数値を有する場合、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた処置の前に、その患者の血圧を一般集団について正常だとみなされる範囲に至らせる必要がないことがあり得る。患者の、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を用いた処置前の1つまたは複数の血液学的パラメータのベースライン値は、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた処置中の、血液学的パラメータの任意の変化をモニタリングするための関連性のある比較値としても使用され得る。
特定の実施形態では、1つまたは複数の血液学的パラメータは、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を用いて処置されている患者において測定される。血液学的パラメータは、処置中の患者をモニタリングし、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬または別の治療剤を用いた追加の投薬の調節または終了を可能にするために使用され得る。例えば、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)の投与によって血圧、赤血球レベル、またはヘモグロビンレベルが上昇したか、または貯蔵鉄が減少した場合、そのときは、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの用量は、1つまたは複数の血液学的パラメータに対する本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの作用を減少させるために、その量または頻度が減少され得る。本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)の投与によって、患者にとって不都合な1つまたは複数の血液学的パラメータの変化が生じた場合、そのときは、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投薬は、一時的に、血液学的パラメータが許容されるレベルに戻るまでか、または永久に、のいずれかで終了され得る。同様に、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストの投与の用量または頻度を減らした後、1つまたは複数の血液学的パラメータが許容される範囲内に至らない場合、そのときは、投薬は終了され得る。本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬を減らすかまたは終了する代わりに、またはそれに加えて、患者は、血液学的パラメータの望ましくないレベルに対処する追加の治療剤、例えば、血圧降下剤または鉄のサプリメントなどが投薬され得る。例えば、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を用いて処置されている患者の血圧が上昇している場合、そのときは、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬は同じレベルで継続され得、および処置レジメンに血圧降下剤が追加されるか、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬は減らされ得(例えば、量および/または頻度について)、および処置レジメンに血液降下剤が追加されるか、または、本開示の1つまたは複数のアンタゴニストを用いた投薬は終了され得、および患者は血圧降下剤を用いて処置され得る。
5.薬学的組成物
ある特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)は、単独で投与することもでき、医薬製剤(治療用組成物または薬学的組成物)の成分として投与することもできる。医薬形成とは、その中に含有される活性成分の生物活性が効果的であることを可能とするような形態にあり、製剤が投与される対象に対して許容不可能に毒性である、さらなる成分を含有しない調製物を指す。本主題の化合物は、ヒト医療または獣医療における使用のために好都合な任意の方式における投与のために製剤化され得る。例えば、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)は、薬学的に許容されるキャリアと共に製剤化することができる。薬学的に許容されるキャリアとは、医薬製剤中の、活性成分以外の成分であって、対象に対して一般に非毒性である成分を指す。薬学的に許容されるキャリアは、緩衝剤、賦形剤、安定化剤、または保存剤を含むがこれらに限定されない。一般に、本開示における使用のための医薬製剤は、対象に投与されるとき、発熱物質非含有であり、生理学的に許容される形態にある。本開示のアンタゴニスト以外の治療的に有用な作用因子であって、任意選択で、上記の製剤中に含まれ得る作用因子を、本開示の方法における主題の化合物と組み合わせて投与することができる。
典型的に、化合物は、非経口投与される[例えば、静脈内(I.V.)注射、動脈内注射、骨内注射、筋内注射、髄腔内注射、皮下注射、または皮内注射により]。非経口投与に適する薬学的組成物は、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、およびBMP6の1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を、1つまたは複数の薬学的に許容される無菌かつ等張の水性もしくは非水性の溶液、分散液、懸濁液、もしくはエマルジョン、または使用直前に無菌の注射可能な溶液もしくは分散液へと再構成され得る無菌粉末と組み合わせて含み得る。注射可能な溶液または分散液は、抗酸化物質、緩衝剤、静菌剤、懸濁剤、増粘剤、または製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る。本開示の医薬製剤において利用され得る、適切な水性および非水性のキャリアの例は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、植物油(例えば、オリーブ油)、注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)、およびこれらの適切な混合物を含む。適正な流動性は、例えば、コーティング材料(例えば、レシチン)の使用によって、分散剤の場合には必要とされる粒子径の維持によって、および、界面活性剤の使用によって維持することができる。
ある特定の実施形態では、本開示の治療法は、インプラントもしくはデバイスから製剤を全身投与または局所投与する工程を包含する。さらに、組成物は、カプセル化され得、または、標的組織部位(例えば、骨髄または筋肉)へと送達するための形態で注射され得る。特定の実施形態では、本開示の組成物は、標的組織部位(例えば、骨髄または筋肉)に本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を送達し得、成長中の組織のための構造を提供し得、そして、最適には身体内へと再吸収され得るマトリクスを含み得る。例えば、マトリクスは、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)の遅速放出を提供し得る。このようなマトリクスは、他の移植医療用途に現在使用される材料から形成され得る。
マトリクス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、見かけ上の様相および界面の特性のうちの1つまたは複数に基づいてもよい。本主題の組成物の特定の用途が、適切な製剤を画定する。組成物のための可能性のあるマトリクスは、生分解性でかつ化学的に画定された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ無水物であり得る。他の可能性のある材料は、生分解性でかつ生物学的に十分に画定されたもの(例えば、骨または皮膚のコラーゲンが挙げられる)である。さらなるマトリクスは、純粋なタンパク質または細胞外マトリクスの成分から構成される。他の可能性のあるマトリクスは、非生分解性でかつ化学的に規定されたもの(例えば、焼結ヒドロキシアパタイト、バイオグラス、アルミン酸塩、または他のセラミクスが挙げられる)である。マトリクスは、上述のタイプの材料のいずれかの組合せ(例えば、ポリ乳酸およびヒドロキシアパタイト、または、コラーゲンおよびリン酸三カルシウム)を含み得る。バイオセラミクスは、組成物(例えば、カルシウム-アルミン酸-リン酸)中で変化され得、孔径、粒子径、粒子の形状および生分解性のうちの1つまたは複数を変更するように加工され得る。
ある特定の実施形態では、本開示の製剤(組成物)は、例えば、カプセル、カシェ、丸剤、錠剤、ロゼンジ(スクロースおよびアカシアまたはトラガントなどの矯味矯臭基材を使用する)、散剤、顆粒剤、水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液、水中油もしくは油中水の液体エマルジョン、またはエリキシルもしくはシロップ、または香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基材を使用する)、かつ/またはマウスウォッシュの形態で経口投与することもでき、各々が、所定量の、本開示の化合物と、任意選択で、1つまたは複数の他の活性成分とを含有する。本開示の化合物と、任意選択で、1つまたは複数の他の活性成分とはまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとしても投与することができる。
経口投与のための固体投薬形態(例えば、カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤および顆粒剤)において、本開示の1または複数の化合物は、1または複数の薬学的に受容可能なキャリア(例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸二カルシウム、充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸)、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシア)、湿潤剤(例えば、グリセロール)、崩壊剤(例えば、アガー-アガー、炭酸カルシウム、ポテトもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ケイ酸塩、および炭酸ナトリウム)、溶液抑制因子(solution retarding agent)(例えば、パラフィン)、吸収加速剤(例えば、四級アンモニウム化合物)、加湿剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール)、吸着剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ)、潤滑剤(例えば、滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、着色剤およびこれらの混合物を含む)と共に混合され得る。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、医薬製剤(組成物)はまた、緩衝剤も含み得る。また、同様の種類の固形組成物も、例えば、ラクトースまたは乳糖のほか、高分子量ポリエチレングリコールを含む、1つまたは複数の賦形剤を使用して、軟充填ゼラチンカプセル中および硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として利用することができる。
本製剤(組成物)の経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁物、シロップおよびエリキシルが挙げられる。活性成分に加え、液体投薬形態は、当該分野で一般に用いられる不活性希釈剤(例えば、水または他の溶媒が挙げられる)、可溶化剤および/または乳化剤[例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(例えば、綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物]を含み得る。不活性な希釈剤に加え、経口用組成物はまた、例えば、加湿剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤、芳香剤、保存剤およびこれらの組み合わせを含む佐剤を含み得る。
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、ソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガー-アガー、トラガント、およびこれらの組合せを含む懸濁剤を含有し得る。
微生物の作用および/または増殖の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、およびソルビン酸フェノールを含む、種々の抗細菌剤および抗真菌剤を組み入れることにより確保することができる。
ある特定の実施形態では、例えば、糖、または塩化ナトリウムを含む等張化剤を組成物中に組み入れることも望ましいと考えられる。加えて、注射可能な医薬形態の吸収の遅延も、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含む、吸収を遅延させる作用因子を組み入れることにより、もたらすことができる。
投薬レジメンは、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)の作用を修飾する種々の要因を考慮して主治医によって決定されることが理解される。種々の要因として、患者の赤血球数、ヘモグロビンレベル、所望の標的赤血球数、患者の年齢、患者の性別、および患者の食餌、赤血球レベルの低下に寄与し得る任意の疾患の重症度、投与時間、ならびに他の臨床的要因が挙げられるがこれらに限定されない。他の公知の活性の作用因子の、最終組成物への添加もまた、投与量に影響を及ぼし得る。進行は、赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、網状赤血球レベル、および造血プロセスの他の指標のうちの1つまたは複数の定期的な評価によりモニタリングすることができる。
特定の実施形態では、本開示はまた、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)のインビボ産生のための遺伝子治療を提供する。このような治療は、上に列挙したような障害のうち1つまたは複数を有する細胞または組織中にアンタゴニスト配列を導入することによってその治療作用を達成する。アンタゴニスト配列の送達は、例えば、キメラウイルスのような組換え発現ベクターまたはコロイド分散系を用いることによって達成され得る。本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)の好ましい治療的送達は、標的化されたリポソームの使用である。
本明細書中で教示されるような遺伝子治療に利用され得る種々のウイルスベクターとしては、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、または、RNAウイルス(例えば、レトロウイルス)が挙げられる。レトロウイルスベクターは、マウスもしくはトリのレトロウイルスの誘導体であり得る。単一の外来遺伝子が挿入され得るレトロウイルスベクターの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベーマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺癌ウイルス(MuMTV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)。多数のさらなるレトロウイルスベクターが多数の遺伝子を組み込み得る。これらのベクターは全て、形質導入された細胞が同定および生成され得るように、選択マーカーについての遺伝子を移送または組み込み得る。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質またはタンパク質を付着させることによって、標的特異的とされ得る。好ましい標的化は、抗体を用いて達成される。当業者は、本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)を含むレトロウイルスベクターの標的特異的な送達を可能にするために、特定のポリヌクレオチド配列がレトロウイルスゲノム中に挿入され得るか、または、ウイルスエンベロープに付着され得ることを認識する。
あるいは、組織培養細胞は、従来のリン酸カルシウムトランスフェクション法によって、レトロウイルスの構造遺伝子(gag、polおよびenv)をコードするプラスミドを用いて直接トランスフェクトされ得る。これらの細胞は、次いで、関心のある遺伝子を含むベクタープラスミドでトランスフェクトされる。得られた細胞は、培養培地中にレトロウイルスベクターを放出する。
本開示の1つまたは複数のGDF11および/またはアクチビンBアンタゴニスト作用因子(任意選択で、GDF8、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、GDF15、Nodal、GDF3、BMP3、BMP3B、BMP9およびBMP10のうちの1つまたは複数のさらなるアンタゴニスト)のための別の標的化送達システムは、コロイド分散系である。コロイド分散系としては、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズおよび脂質ベースの系(水中油エマルジョン、ミセル、混合型ミセルおよびリポソームを含む)が挙げられる。特定の実施形態において、本開示の好ましいコロイド系は、リポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボで送達ビヒクルとして有用な人工の膜小胞である。RNA、DNAおよびインタクトなビリオンが、水性の内部に封入され得、そして、生物学的に活性な形態で細胞へと送達され得る[例えば、Fraleyら(1981年)、Trends Biochem. Sci.、6巻:77頁を参照のこと]。リポソームビヒクルを用いた効率的な遺伝子移入のための方法は当該分野で公知である[例えば、Manninoら(1988年)、Biotechniques、6巻:682頁、1988を参照のこと]。
リポソームの組成は通常、リン脂質の組合せであり、ステロイド(例えば、コレステロール)を含み得る。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。また、他のリン脂質または他の脂質であって、例えば、ホスファチジル化合物(例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシド)、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンを含むリン脂質または脂質も使用することができる。例えば、器官特異性、細胞特異性および細胞小器官特異性に基づいたリポソームの標的化もまた可能であり、当該分野で公知である。
(実施例)
本発明は、ここで、一般的に記載されるが、単に特定の実施形態および本発明の実施形態を例示する目的のために含められ、本発明を限定することは意図されない以下の実施例を参照するとより容易に理解される。
(実施例1)
ActRIIB(L79D 20~134)-FcおよびActRIIB(L79D 25~131)-Fcのリガンド結合特異性の特徴付け
本明細書の配列番号1のアミノ酸20~134を含む、改変体ActRIIB-Fc融合タンパク質であって、配列番号1に照らして、79位に酸性アミノ酸を有する改変体[本明細書では、「ActRIIB(L79D 20~134)-Fc」融合タンパク質、構築物、改変体などと呼ばれる;本開示の配列番号23を参照されたい]は、インビトロおよびインビボにおける固有の生物学的特性を特徴とすることが既に報告されている(例えば、米国特許第8,058,229号を参照されたい)。対応する試料の非改変融合タンパク質(ActRIIB(20~134)-Fc融合タンパク質)と比較して、ActRIIB(L79D 20~134)-Fc改変体は、一部において、アクチビンAに対する結合アフィニティーの実質的な喪失を特徴とし、したがって、アクチビンA活性に拮抗する能力の著明な低減を特徴とするが、GDF11に対する結合および阻害の野生型に近いレベルを保持する。インビボにおいて、ActRIIB(L79D 20~134)-Fc改変体は、赤血球レベルを高める能力が、非改変ActRIIB(20~134)-Fc融合タンパク質と比較して、著明により強力であることが見出された。したがって、これらのデータは、観察された生物活性が、アクチビンAの阻害に依存しないことを指し示す。
同様の結果は、既に、二重短縮型改変体ActRIIB(L79D 25~131)-Fc(例えば、本開示の配列番号49のほか、米国特許第8,058,229号も参照されたい)について報告されており、ActRIIB(L79D 25~131)-Fcについてのリガンド結合プロファイルを、表面プラズモン共鳴により、種々のActRIIリガンド(例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、BMP10、BMP6、およびBMP9)に関して、さらに特徴付けた。結果を、図13に描示する。
このデータおよび他のデータを検討して、本出願者らは、赤血球レベルの上昇を促進するように阻害されるActRIIリガンドは、GDF11およびアクチビンBであることを決定した。このデータはさらに、対象において赤血球レベルを高めるための方法の文脈では、アクチビンA、アクチビンC、アクチビンE、BMP6、およびGDF8に拮抗(を阻害)することも可能であることを示唆する。
(実施例2)
GDF-11、GDF-8、アクチビンB、アクチビンC、およびアクチビンEに媒介されるシグナル伝達についてのバイオアッセイ
A-204レポーター遺伝子アッセイを使用して、抗GDF11/アクチビンB二特異性抗体の、GDF11、アクチビンB、アクチビンAおよび/またはGDF8によるシグナル伝達に対する効果を評価する。当該分野では、このアッセイは既に記載されている(例えば、米国特許出願第2013/0243743号を参照されたい)。略述すると、A-204レポーター遺伝子アッセイでは、Dennlerら(1998年)、EMBO、17巻:3091~3100頁において記載されているように、筋肉に由来するヒト横紋筋肉腫細胞株と、レポーターベクターであるpGL3(CAGA)12とを使用する。CAGA12モチーフは、TGF-β応答性遺伝子(例えば、PAI-1遺伝子)内に存在するため、このベクターは、Smad2および3を介してシグナル伝達する因子(例えば、GDF11、アクチビンB、アクチビンA、およびGDF8)に一般に使用される。
1日目に、A-204細胞を、1つまたは複数の48ウェルプレートに移す。2日目に、A-204細胞に、10μgのpGL3(CAGA)12またはpGL3(CAGA)12(10μg)+pRLCMV(1μg)およびFugeneをトランスフェクトする。3日目に、培地+0.1%のBSAへと希釈されたリガンド因子(例えば、GDF11、アクチビンB、アクチビンA)を、抗GDF11/アクチビンB二特異性抗体と共に、細胞に添加する。典型的には、抗GDF11/アクチビンB二特異性抗体は、細胞に添加する前に、因子と共に1時間にわたりプレインキュベートすることを必要とする。およそ6時間後、細胞をPBSですすぎ、溶解させる。
次いで、細胞溶解物を、ルシフェラーゼアッセイにかけて、Smad2/3活性化の程度を決定する。抗GDF11/アクチビンB二特異性抗体の阻害の程度を、適切な対照と比べて決定する。
(実施例3)
抗GDF11/抗アクチビンB二特異性抗体による処置
19週齢の雄C57BL/6NTacマウスを、2つの群のうちの1つにランダムに割り当てる。マウスに、ビヒクル(10mMのトリス緩衝生理食塩液;TBS)または抗GDF11/抗アクチビンB二特異性抗体を、皮下注射により、毎週2回ずつ3週間にわたり投薬する。血液を、ベースラインおよび投薬の3週間後に回収する。血液解析器(例えば、HM2、Abaxis,Inc.)を使用して、血液試料を、細胞分布について解析する。特に、マウスは、例えば、赤血球数(RBC)、ヘモグロビン(HGB)、およびヘマトクリット(HCT)を含む、赤血球パラメータの変化についてモニタリングする。
(実施例4)
抗GDF11抗体と、抗アクチビンB抗体との併用投与
19週齢の雄C57BL/6NTacマウスを、4つの群のうちの1つにランダムに割り当てる。マウスに、ビヒクル(10mMのTBS)、抗GDF11抗体、抗アクチビンB抗体、または抗GDF11および抗アクチビンB抗体の両方を投薬する。血液を、ベースラインおよび投薬の3週間後に回収する。血液解析器(例えば、HM2、Abaxis,Inc.)を使用して、血液試料を、細胞分布について解析する。特に、マウスは、例えば、赤血球数(RBC)、ヘモグロビン(HGB)、およびヘマトクリット(HCT)を含む、赤血球パラメータの変化についてモニタリングする。
(実施例5)
抗アクチビンB抗体、抗GDF8抗体、および抗GDF8/GDF11抗体の、赤血球生成に対する効果
3つの抗体、抗アクチビンB、抗GDF8抗体、および二特異性抗GDF8/GDF11抗体を、マウスにおける赤血球生成を刺激する(例えば、赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、およびヘマトクリットレベルを高める)それらの能力について評価した。C57BL6マウス(8~10週齢)を、5つの処置群:i)ビヒクルによる処置(TBS、毎週2回;皮下)、ii)抗アクチビンB抗体による処置(10mg/kg;毎週2回;皮下)、iii)抗GDF8抗体による処置(10mg/kg、毎週2回;皮下)、iv)二特異性抗GDF8/GDF11抗体による処置(10mg/kg、毎週2回;皮下)、およびv)抗アクチビンB抗体(10mg/kg、毎週2回;皮下)と、二特異性抗GDF8/GDF11抗体(10mg/kg、毎週2回;皮下)との組合せによる処置のうちの1つに分けた。2週間の処置後に、マウスを安楽死させ、全血算パラメータを測定した。
ビヒクル処置(対照)対象と比較して、抗アクチビンB抗体単独および抗GDF8抗体単独で処置されたマウスでは、赤血球レベルのわずかな増大が見られた。図16を参照されたい。赤血球レベルに対するより実質的な効果は、二特異性抗GDF8/GDF11抗体で処置したマウスにおいて観察された。図16を参照されたい。しかし、赤血球生成に対する最大の効果は、抗アクチビンB抗体と、二特異性抗GDF8/GDF11抗体との組合せで処置されたマウスにおいて観察され、例えば、この組合せ治療は、赤血球レベルを、対照の対象と比較して著明に高めた(8.8%)。図16を参照されたい。加えて、抗アクチビンB抗体と、二特異性抗GDF8/GDF11抗体とによる組合せ処置は、対照の対象と比較してヘモグロビン(9.6%)およびヘマトクリット(9.1%)のレベルの上昇を結果としてもたらすことが観察された。
したがって、検討したリガンドには、追加のActRIIリガンドアンタゴニスト(阻害剤)を動物に投与するのに応じて、血球レベル、ヘマトクリットレベル、およびヘモグロビンレベルが上昇する、明確な傾向が見られる。興味深いことに、単一のActRIIリガンドの阻害は、赤血球レベルに対する著明な効果を及ぼさなかった。しかし、少なくとも2つのActRIIリガンドの阻害は、赤血球生成を刺激し得ると考えられ、3つのActRIIリガンドを阻害すると、赤血球レベルのほか、ヘモグロビンレベルおよびヘマトクリットレベルに対しても、さらに大きな効果が観察される。まとめると、これらのデータは、複数のActRIIリガンドが、赤血球生成に寄与することを実証し、さらに、これらのリガンドのうちの1つだけを阻害しても、ヘマトクリットレベル、ヘモグロビンレベル、および/または赤血球レベルの著明な上昇を達成するのに十分ではない可能性があることを指し示す。したがって、これらの実験から、対象において赤血球生成を促進するための効果的な戦略は、複数の(すなわち、少なくとも2つの)ActRIIリガンドを標的とすることであると考えられる。
(参考としての援用)
本明細書中で言及される全ての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が、具体的かつ個別に参考として援用されると示されるかのように、その全体が本明細書に参考として援用される。
本主題の特定の実施形態が考察されてきたが、上記明細書は、例示的であり、限定的なものではない。本明細書および以下の特許請求の範囲を精査すれば、多くの変更が当業者に明らかとなる。本発明の完全な範囲は、その等価物の完全な範囲と共に特許請求の範囲を、そして、このような変更と共に明細書を参照することによって決定されるべきである。