本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下の説明において、同一符号を付した部分は同一の要素を表し、その基本的な構成および動作は同様であるものとする。
===発電出力予測システム1===
発電出力予測システム1は、積雪深を考慮するとともに、将来における天候または気温に基づいて、太陽光発電設備300の将来における発電出力を算出するシステムである。
図1は、発電出力予測システム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、発電出力予測システム1は、積雪予測装置10と、発電出力予測装置20と、を含んで構成されている。発電出力予測システム1は、例えば、通信ネットワーク1000を介して、気象庁データベース100と、各種センサー200(例えば、積雪センサー210、気温センサー220、雨量センサー230および日射センサー240)と、通信可能に接続されている。通信ネットワーク1000とは、インターネット回線でもよいし、発電出力予測システム1と直接無線通信可能な回線であってもよい。発電出力予測システム1は、積雪深を予測するための各種情報を気象庁データベース100から取得してよい。また、発電出力予測システム1は、各種センサー200から取得してデータを積雪予測装置10の記憶装置13や発電出力予測装置20の記憶装置23に格納して、積雪深の予測または発電出力の予測に利用してもよい。
積雪予測装置10は、太陽光発電設備300の発電出力を予測する予測日よりも前の将来の所定の時点(以下、「積雪予測時点」と称する。)における積雪深を算出する装置である。発電出力予測装置20は、積雪が太陽光発電設備300に及ぼす影響を考慮するように、天候または気温に基づいて、将来の所定の時点(以下、「予測日」と称する。)における発電出力を算出する装置である。発電出力予測装置20は、現在または積雪予測時点における積雪深が所定の閾値未満である場合には、積雪が太陽光発電設備300の発電に影響を及ぼさないとし、所定の閾値を超過する場合には、積雪により太陽光発電設備300が発電しないとして、予測日における発電出力を算出する。発電出力予測装置20は、積雪予測時点における積雪深を用いて上述した閾値と比較する場合、積雪予測装置10で算出した積雪予測時点における積雪深を用いる。
なお、図1においては、積雪予測装置10と発電出力予測装置20とが別々の装置として示されているが、1台の情報処理装置でそれぞれの機能を実現するように構成されていてもよい。
以下において、積雪予測装置10および発電出力予測装置20のそれぞれについて詳細に説明する。
==積雪予測装置10==
積雪予測装置10は、上述したように、積雪予測時点における積雪深を算出する装置である。積雪予測装置10は、現在の積雪深から積雪予測時点にかけて融雪する雪の量を削減し、現在の積雪深に現時点から積雪予測時点にかけて新たに積雪する雪の量を加算することにより、積雪予測時点における積雪深を算出する。
ここで、融雪する雪の量とは、現在から積雪予測時点までの期間における気温に関する値に、所定の係数を適用して算出される値である。気温に関する値とは、例えば、気温そのものを示す値か、又は、所定の時点における気温が予め定められた所定の基準気温を超過した分の値である。所定の係数とは、気温が融雪に影響を与える度合いを示す予め定められた係数であり、少なくとも、予め定められた所定の基準気温から超過した気温そのものに対する第1融雪高係数と、所定の時点における気温が予め定められた所定の基準気温を超過した分の積算値に対する第2融雪高係数と、が定められている。なお、以下において、融雪する雪の量を“融雪高”として説明する。融雪高の算出手法については、詳細に後述する。
また、積雪する雪の量とは、現在から積雪予測時点までの期間における天候、気温および降水量に、所定の係数を適用して算出される値である。所定の係数とは、所定の天候および気温において降水量が積雪に影響を与える度合いを示す予め定められた係数であり、少なくとも、天候に対する第1積雪高係数と、気温に対する第2積雪高係数と、が定められている。なお、以下において、積雪する雪の量を“積雪高”として説明する。積雪する雪の量の算出手法については、詳細に後述する。
なお、説明の便宜上、以下においては、一例として、積雪予測時点を現在から2日後の発電出力を予測する“予測日”として説明する。ただし、過去の所定の時点から積雪予測時点までの期間において、融雪高および積雪高を算出してもよい。また、積雪予測時点は、気温、天候および降水量を示す情報が取得できる将来の日であればよく、現在からの経過日数は限定されない。つまり、積雪予測時点は、例えば、現在の翌日でもよいし、現在の1週間後の日でもよい。
上述した機能を有する積雪予測装置10について、以下詳細に説明する。
図2は、積雪予測装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、積雪予測装置10のハードウェアは、プロセッサ11と、メモリ12と、記憶装置13と、入力装置14と、出力装置15と、第1通信装置16と、を含んで構成されている。プロセッサ11は、例えば、MPU、CPUなどである。メモリ12は、例えば、RAM、ROM、NVRAMなどである。記憶装置13は、例えば、RAM、ROM、NVRAMなどである。入力装置14は、ユーザから操作入力を受け付けるユーザインタフェースであり、例えば、操作入力装置(キーボード、マウス、タッチパネル等)、音声入力装置(マイクロフォン等)などである。出力装置15は、各種情報をユーザに提供するユーザインタフェースであり、例えば、表示装置(液晶モニタ等)、音声出力装置(スピーカ等)などである。第1通信装置16は、通信ネットワーク1000または発電出力予測装置20と通信可能に接続するためのインタフェースであり、例えば、無線LANアダプタ、NIC(Network Interface Card)などである。
図3は、積雪予測装置10のソフトウェア構成の一例を示す図である。図3に示すように、積雪予測装置10のソフトウェアは、第2取得部10aと、モード選択部10bと、第1判定部10cと、第2判定部10dと、第1融雪高算出部10eと、第2融雪高算出部10fと、積雪高算出部10gと、積雪算出部10hと、の機能部を有する。これらの機能部は、例えば、積雪予測装置10のプロセッサ11がメモリ12に格納されているプログラムを読み出して実行することで実現される。なお、これらの機能部は、例えば、ASICなどのハードウェアにより実現されてもよい。また、該プロセッサ11が外部記憶媒体に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現されてもよい。
なお、図3において、積雪予測装置10が1台の情報処理装置(コンピュータ)で各機能を実現しているように示しているがこれに限定されない。例えば、上述した各機能を2台以上の情報処理装置で分散して実現するように構成されていてもよい。以下においては、一例として1台の情報処理装置で各機能を実現することとして説明する。
積雪予測装置10は、第1通信装置16を介して気象庁データベース100や各種センサー200などから入力される各種情報、上述した各機能部で算出される各種情報を記憶装置13の各種テーブルに格納する機能を有する。
具体的に述べると、記憶装置13には、図4に例示するような、過去または現在における、積雪深を示す積雪深情報と、気温を示す気温情報と、天候を示す天候情報と、降水量を示す降水量情報と、が対応付けられた過去諸量情報テーブル10iと、図5に例示するような、将来における、気温を示す気温情報と、天候を示す天候情報と、降水量を示す降水量情報と、が対応付けられた第1予測諸量情報テーブル10jと、図6に例示するような、第1基準気温を示す気温情報と、予め定められた第1融雪高係数と、が対応付けられた第1融雪高係数情報テーブル10kと、図7に例示するような、第2基準気温を示す気温情報と、予め定められた第2融雪高係数と、が対応付けられた第2融雪高係数情報テーブル10Lと、図8に例示するような雪やみぞれ等の天候を示す天候情報と、予め定められた第1積雪高係数と、が対応付けられた第1積雪高係数情報テーブル10mと、図9に例示するような、気温と、予め定められた第2積雪高係数と、が対応付けられた第2積雪高係数情報テーブル10nと、が格納されている。なお、各テーブルに示されている数値は一例を示すものであり、また、説明の便宜上、各テーブルにおける第1融雪高係数、第2融雪高係数、第1積雪高係数および第2積雪高係数を記号列で示しているが、該各記号列には予め定められた数値が設定されているものとする。また、図8に示す第1積雪高係数情報テーブル10mでは天候情報として“雪”および“みぞれ”を示しているが、この表示は例示であり、例えば“雪”または“みぞれ”に対応する気象庁の予報文の表示を含むものとする。
以下、積雪予測装置10の各機能部について詳細に説明する。
第2取得部10aは、気象庁データベース100や各種情報を観測する各種センサー200から出力される各種情報を、第1通信装置16を介して取得する機能部である。
モード選択部10bは、融雪高を算出する際に、気温そのものから第1基準気温を減算したものを変数として利用するモード(以下、「第1モード」と称する。)と、気温と予め定められた第2基準気温との関係の積算値を変数として利用するモード(以下、「第2モード」と称する。)のいずれかを選択する機能部である。モード選択部10bは、例えば、積雪を予測する地域ごとに、第1モードを選択するのか、第2モードを選択するのか、を紐づけしていてもよい。これにより、予測地域における特有の状況に応じて最適な処理モードを選択できる。また、例えば、月ごとに、第1モードを選択するのか、第2モードを選択するのか、を紐づけしていてもよい。これにより、月ごとにおける天候および気温の特有の変化に応じて最適な処理モードを選択できる。さらに、積雪予測装置10を操作する操作者が、操作のたびに選択をしてもよい。
第1判定部10cは、現在の積雪深と所定の閾値とを比較する機能部である。後述する第1融雪高算出部10eおよび第2融雪高算出部10fは、第1判定部10cで比較した結果に基づいて、融雪高を算出する算出方法を切り替える。
なお、所定の閾値とは、例えば、現在から予測日までの日数に応じて、現在から予測日までの日数が大きいほど、大きく設定される値である。このことは、予測日までに経過する日数が大きいほど、現在から予測日までに融雪する量が多くなることを考慮したものである。
第2判定部10dは、第1モードにおいて第1判定部10cが現在の積雪深が所定の閾値よりも大きいと判定した場合に、現在から予測日までの気温が第1基準気温を超過、例えば0℃を超えるか否かを判定する機能部である。なお、現在から予測日までの気温とは、例えば、1日のうちの所定の時点における気温や1日の平均気温などであるが、以下においては1日の平均気温として説明する。
第1融雪高算出部10eは、第1判定部10cおよび第2判定部10dの判定結果に基づいて融雪高を算出する機能部である。第1融雪高算出部10eでは、気温が所定の第1基準気温を超過、例えば第1基準気温を“0℃”に設定した場合、0℃を超える融雪する日において、当該気温から第1基準気温を減算した結果を示す値に、所定の第1基準気温に応じた第1融雪高係数を適用して融雪高を算出する。第1融雪高係数とは、所定の気温が融雪に影響を与える度合いを示す係数であり、予め定められた値である。具体的な算出方法については、積雪予測装置10の処理手順において詳細に後述する。
第2融雪高算出部10fは、第2モードにおいて第1判定部10cの判定結果に基づいて融雪高を算出する機能部である。第2融雪高算出部10fでは、第1判定部10cが現在の積雪深が所定の閾値よりも大きいと判定した場合、翌日以降において、時刻毎の気温が所定の第2基準気温を超過する分の積算値を算出する。該積算値に、所定の第2基準気温に応じた第2融雪高係数を適用して融雪高を算出する。第2融雪高係数とは、所定の時点の気温が第2基準気温を超えた分に関する値が融雪に影響を与える度合いを示す係数であり、予め定められた値である。具体的な算出方法については、積雪予測装置10の処理手順において詳細に後述する。
積雪高算出部10gは、現在から予測日までに新たに積雪する積雪高を算出する機能部である。積雪高算出部10gでは、天候情報と、気温情報と、降水量情報と、天候が“雪”または“みぞれ”のときに降水量が積雪に影響を与える度合いを示す第1積雪高係数と、気温が所定の値以下(例えば氷点下等)のときに、降水量が積雪に影響を与える度合いを示す第2積雪高係数と、に基づいて、現在から予測日までの積雪高を算出する。第1積雪高係数および第2積雪高係数は、予め定められた値である。
積雪高算出部10gでは、天候が雪のときに降水量がある場合や、気温が所定の値(例えば氷点下等)のときに降水量がある場合に、その状況において積雪が生じることを考慮して積雪高を算出する。なお、積雪高算出部10gでは、天候情報と、降水量情報と、第1積雪高情報と、のみで積雪高を算出してもよく、また、気温情報と、降水量情報と、第2積雪高情報と、のみで積雪高を算出してもよい。また、天候が雪のときの降水量に基づいて積雪を計算することにかえて、天候がみぞれのときの降水量に基づいて積雪を計算してもよい。具体的な算出方法については、積雪予測装置10の処理手順において詳細に後述する。
積雪算出部10hは、現在の積雪深情報と、融雪高を示す融雪高情報と、積雪高を示す積雪高情報と、に基づいて、予測日の積雪深を算出する機能部である。算出された予測日の積雪深を示す積雪深情報は、第1通信装置16を介して発電出力予測装置20に送信される。なお、積雪算出部10hでは、現在の積雪深情報と融雪高情報のみで予測日の積雪深を算出してもよい。具体的な算出方法については、積雪予測装置10の処理手順において詳細に後述する。
===積雪予測装置10の算出手順===
図11は、積雪予測装置10の動作手順の一例を示すフロー図である。図11を参照しつつ、積雪予測装置10の算出手順の一例について以下のとおり説明する。なお、以下においては、現在から2日後の積雪深を予測するものとし、現在の1日後を翌日、2日後を予測日として説明する。
操作者は、予測する予測地域を選定する。積雪予測装置10は、設定された予測地域ごとに全予測地域の処理を実行する(S1)。
積雪予測装置10は、現在から予測日までの融雪高を算出する処理を以下のとおり実行する(S2〜S14)。
まず、所定の予測地域において、モード選択部10bは、第1モードか第2モードを選択する(S2)。モード選択部10bは、所定の予測地域に予め紐づけされているモードを選択してもよいし、予測月に予め紐づけされているモードを選択してもよいし、操作者からの指示信号に基づいてモードを選択してもよい。
モード選択部10bにおいて平均気温に基づいて融雪高を算出する第1モードが選択された場合(S2:第1モード)、第1判定部10cは、現在の積雪深が所定の閾値を超えるか否かを判定する(S3)。このとき、第1判定部10cは、過去諸量情報テーブル10iから現在の積雪深情報を取得し、現在の積雪深と予め定められた所定の閾値とを比較する。具体的に述べると、第1判定部10cは、例えば、所定の閾値が“2cm”に設定されたとき、現在の積雪深が“1cm”である場合、現在の積雪深が予測日までに全て融雪するように、第1融雪高算出部10eまたは第2融雪高算出部10fに処理を移行させる。一方、現在の積雪深が“3cm”である場合、現在の積雪深が予測日までに全て融雪しないため、融雪高を計算させるように、第1融雪高算出部10eまたは第2融雪高算出部10fに処理を移行させる。
第1判定部10cにおいて現在の積雪深が所定の閾値以下と判定された場合(S3:閾値以下)、第1融雪高算出部10eは、融雪高に現在の積雪深を設定する(S4)。これにより、現在から予測日までに現在の積雪が全て融雪することとして予測日の積雪深が算出される。
第1判定部10cにおいて現在の積雪深が所定の閾値以下と判定された場合(S3:閾値超過)、第2判定部10dは、第1予測諸量情報テーブル10jから翌日の平均気温(以下、「翌日気温」と称する。)および予測日の平均気温(以下、「予測日気温」と称する。)を取得して、翌日気温および予測日気温が第1基準気温を超過、例えば0℃を超過するか否かを判定する(S5,S7,S9)。なお、平均気温は、例えば、第1予測諸量情報テーブル10jの例えば0時〜23時までの気温を平均した値である。また、第2判定部10dの説明のとおり、平均気温にかえて1日のうちの所定の時刻の気温が第1基準気温を超過、例えば0℃を超過するか否かを判定してもよい。
第2判定部10dにおいて翌日気温および予測日気温が第1基準気温を超過、例えば0℃を超過する場合(S5:YES)、第1融雪高算出部10eは、第1融雪高係数情報テーブル10kから第1融雪高係数を取得して、翌日および予測日における融雪高の合計を式(1)により算出する(S6)。なお、式(1)における第1融雪高係数は、所定の第1基準気温に対応する係数である。また、式(1)の第1項が翌日における融雪高であり、第2項が予測日における融雪高である。
[数1]
融雪高 =((翌日気温−第1基準気温)×第1融雪高係数)+((予測日気温−第1基準気温)×第1融雪高係数)・・(1)
第2判定部10dにおいて翌日気温が第1基準気温を超過、例えば0℃を超過し予測日気温が第1基準気温以下、例えば氷点下である場合(S7:YES)、第1融雪高算出部10eは、第1融雪高係数情報テーブル10kから第1融雪高係数を取得して、翌日における融雪高を式(2)により算出する(S8)。つまり、この場合、予測日においては気温が第1基準気温以下、例えば氷点下であるため融雪が生じないように算出する。
[数2]
融雪高 = (翌日気温−第1基準気温)×第1融雪高係数 ・・・・・・・・・・・・・・・(2)
第2判定部10dにおいて翌日気温が第1基準気温以下、例えば氷点下であり予測日気温が第1基準気温を超過、例えば0℃を超過する場合(S9:YES)、第1融雪高算出部10eは、第1融雪高係数情報テーブル10kから第1融雪高係数を取得して、予測日における融雪高を式(3)により算出する(S10)。つまり、この場合、翌日においては気温が第1基準気温以下、例えば氷点下であるため融雪が生じないように算出する。
[数3]
融雪高 = (予測日気温−第1基準気温)×第1融雪高係数 ・・・・・・・・・・・・・・(3)
第2判定部10dにおいて上述した条件以外である、翌日気温および予測日気温が第1基準気温以下、例えば氷点下である場合(S9:NO)、現在から予測日にかけて融雪しないため、融雪高を“0”とする(S11)。
上述したS5〜S11の処理により、各日の平均気温が第1基準気温を超過、例えば0℃を超過する場合は当該日において融雪が生じ、平均気温が第1基準気温以下、例えば0℃以下の場合は当該日において融雪が生じない、という状況を融雪高の算出に反映できる。
次に、モード選択部10bにおいて気温と第2基準気温との関係に基づいて融雪高を算出する第2モードが選択された場合(S2:第2モード)の融雪高の算出方法について説明する。
第1判定部10cは、現在の積雪深が所定の閾値を超えるか否かを判定する(S12)。このとき、第1判定部10cは、過去諸量情報テーブル10iから現在の積雪深情報を取得し、現在の積雪深と予め定められた所定の閾値とを比較する。
第1判定部10cにおいて現在の積雪深が所定の閾値以下と判定された場合(S12:閾値以下)、第1融雪高算出部10eは、融雪高に現在の積雪深を設定する(S13)。これにより、現在から予測日までに現在の積雪が全て融雪するように予測日の積雪深が算出される。
第1判定部10cにおいて現在の積雪深が所定の閾値よりも大きいと判定された場合(S12:閾値超過)、第2融雪高算出部10fは、現在から予測日にかけて気温が第2基準気温を超過した気温積算値を算出する。第2融雪高算出部10fは、第2融雪高係数情報テーブル10Lから第2基準気温に対応する第2融雪高係数を取得して、翌日および予測日における融雪高の合計を式(4)により算出する(S14)。なお、以下において、翌日の気温積算値を翌日気温積算値とし、予測日の気温積算値を予測日気温積算値として説明する。
[数4]
融雪高 = (翌日気温積算値×第2融雪高係数)
+(予測日気温積算値×第2融雪高係数) ・・・・・・・(4)
ここで、上述した気温積算値について、図10を参照しながら以下説明する。
図10は、気温と第2基準気温との関係の一例を示す基準グラフである。図10では、一例として、第2基準気温を“0℃”に設定している場合、各時刻における気温が第2基準気温を何度超えているかを棒グラフ上に数値で示している。この図10のグラフは、例えば、第1判定部10cが第1予測諸量情報テーブル10jから時刻情報と気温情報とを取得することにより作成される。気温積算値の算出方法について具体的に述べると、7時では1℃を示しているため、第2基準気温を超過する気温の値として“1”が算出される。同様に、各時刻における第2基準気温を超過する気温の値を算出し、この値を1日分積算する。このように積算して算出される図10の気温積算値は“26.6”となる。なお、設定される第2基準気温は、例えば融雪が生じにくい気温である“1℃”や“−1℃”などであってもよく、特に限定されない。
上述したS14の処理のように、各日の各時刻における気温が第2基準気温(例えば0℃)を超過する値を積算して気温積算値を用いることにより、1日における融雪する可能性のある状況を、適切に融雪高の算出に反映できる。
次に、積雪予測装置10は、現在から予測日までの積雪高を算出する積雪高算出部10gにおける処理を以下のとおり実行する(S15)。
積雪高算出部10gは、第1予測諸量情報テーブル10jから天候情報および降水量情報を取得し、第1積雪高係数情報テーブル10mから第1積雪高係数を取得し、第2積雪高係数情報テーブル10nから第2積雪高係数を取得し、翌日および予測日における合計の積雪高を式(5)により算出する(S15)。なお、以下において、翌日の天候を翌日天候とし、翌日の平均気温を翌日気温とし、翌日の降水量を翌日降水量とし、予測日の天候を予測日天候とし、予測日の平均気温を予測日気温とし、予測日の降水量を予測日降水量とする。
[数5]
積雪高 = (翌日天候×翌日降水量×第1積雪高係数)
+(翌日気温×翌日降水量×第2積雪高係数)
+(予測日天候×予測日降水量×第1積雪高係数)
+(予測日気温×予測日降水量×第2積雪高係数) ・・・・・・(5)
例えば、式(5)の第1項および第3項の翌日天候および予測日天候については“雪”の場合を“1”、それ以外の天候を”0”とする。第2項および第4項の翌日気温および予測日気温については“0℃以下”の場合を“1”、“0℃超過”の場合を“0”とする。ただし、上記の“雪”にかえて“みぞれ”などの場合に“1”としてもよい。また、上記の“0℃以下”、“0℃超過”にかえて“−1℃以下”、“−1℃超過”などの、降水量が積雪に影響する気温を設定してもよい。
次に、積雪算出部10hは、現在の積雪深と、S2〜S14の処理で算出された融雪高と、S15の処理で算出された積雪高と、に基づいて予測日の積雪深を算出する(S16)。積雪算出部10hは、翌日および予測日における積雪深の合計を式(6)により算出する。
[数6]
予測日積雪深 = 現在積雪深−融雪高+積雪高 ・・・・・・・・・・・(6)
これにより、現在から予測日までに現在の積雪が融雪する融雪高を減算し、現在の積雪に対して新たに積雪する積雪高を加算して、予測日の積雪深を算出できる。
上述したように、積雪予測装置10は、S2〜S16の処理を全予測地域に対して実行する(S1)。積雪予測装置10は、算出した予測日の積雪深情報を発電出力予測装置20に送信する。
==発電出力予測装置20==
発電出力予測装置20は、積雪が太陽光発電設備300に及ぼす影響を考慮するとともに、天候または気温に基づいて、予測日における発電出力を算出する装置である。発電出力予測装置20は、積雪予測時点(予測日)における積雪深情報を取得するために、積雪予測装置と通信可能に接続されている。
発電出力予測装置20は、現在および将来の時点における積雪深を示す積雪深情報を、積雪予測装置10から取得する。なお、発電出力予測装置20は、現在における積雪深情報を積雪センサー210から取得してもよい。また、気象庁データベース100から、予測日における天候に関する天候情報および予測日における日射量を示す日射量情報を取得する。なお、発電出力予測装置20は、積雪深情報および天候情報の両方を気象庁データベース100から取得してもよい。さらに、発電出力予測装置20は、予め、それぞれの情報を記憶装置23に格納していてもよい。ここで、積雪深情報とは、例えば、予測日の12時の積雪深を示す情報とする。
発電出力予測装置20が積雪予測装置10から取得する予測日における積雪深情報を用いることにより、現在の積雪深情報を用いるよりも、積雪が太陽光発電設備300の発電に全く影響しない状況であるか、積雪により太陽光発電設備300が発電できない状況であるか、を正確に判定できる。
発電出力予測装置20は、太陽光発電設備300のパネル上に積雪がある状況において、正確に発電出力を予測するために、天候情報または気温情報のいずれか一方に基づいて、積雪が継続している状態であるか否かを判定して、その判定結果に応じて積雪係数を算出する。ここで、積雪係数とは、太陽光発電設備300のパネル上の積雪が太陽光発電設備300の発電出力に及ぼす影響を経験的に算出した係数であり、詳細に後述する。発電出力予測装置20は、日射量情報と太陽光発電設備300の設備仕様に基づいて算出される発電出力に、積雪係数を適用して太陽光発電設備300のパネル上の積雪を考慮した予測日における発電出力を算出する。
上述した機能を有する発電出力予測装置20について、以下詳細に説明する。
図12は、発電出力予測装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。図12に示すように、発電出力予測装置20のハードウェアは、プロセッサ21と、メモリ22と、記憶装置23と、入力装置24と、出力装置25と、第2通信装置26と、を含んで構成されている。プロセッサ21は、例えば、MPU、CPUなどである。メモリ22は、例えば、RAM、ROM、NVRAMなどである。記憶装置23は、例えば、RAM、ROM、NVRAMなどである。入力装置24は、ユーザから操作入力を受け付けるユーザインタフェースであり、例えば、操作入力装置(キーボード、マウス、タッチパネル等)、音声入力装置(マイクロフォン等)などである。出力装置25は、各種情報をユーザに提供するユーザインタフェースであり、例えば、表示装置(液晶モニタ等)、音声出力装置(スピーカ等)などである。第2通信装置26は、通信ネットワーク1000または積雪予測装置10と通信可能に接続するためのインタフェースであり、例えば、無線LANアダプタ、NIC(Network Interface Card)などである。
図13は、発電出力予測装置20のソフトウェア構成の一例を示す図である。図13に示すように、発電出力予測装置20のソフトウェアは、第1取得部20aと、閾値判定部20bと、判定方法選択部20cと、雪判定部20dと、みぞれ判定部20eと、気温判定部20fと、積雪係数算出部20gと、発電出力算出部20hと、の機能部を有する。これらの機能部は、例えば、発電出力予測装置20のプロセッサ21がメモリ22に格納されているプログラムを読み出して実行することで実現される。なお、これらの機能部は、例えば、ASICなどのハードウェアにより実現されてもよい。また、該プロセッサ21が外部記憶媒体に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現されてもよい。
なお、図13において、発電出力予測装置20が1台の情報処理装置(コンピュータ)で各機能を実現しているように示しているがこれに限定されない。例えば、上述した各機能を2台以上の情報処理装置で分散して実現するように構成されていてもよい。以下においては、一例として1台の情報処理装置で各機能を実現することとして説明する。
発電出力予測装置20は、第2通信装置26を介して気象庁データベース100や各種センサー200などから入力される各種情報、上述した各機能部で算出される各種情報を記憶装置23の各種テーブルに格納する機能を有する。
具体的に述べると、記憶装置23には、図14に例示するような、現在または予測日(積雪予測時点)における、発電出力を予測する予測地点と、現在または予測日の積雪深を示す積雪深情報と、が対応付けられている積雪情報テーブル20iと、図15に示すような、各モードと、積雪が継続しているか否か(翌日から予測日にかけての、雪、みぞれ、気温の状況変化)の状況と、積雪係数を示すグラフと、が対応付けられている積雪係数情報テーブル20jと、図16に示すような、予測日における、予測地点と、気象庁データベース100から取得する、天候情報と、気温情報と、日射量情報と、が対応付けられている一例を示す第2予測諸量情報テーブル20kと、が格納されている。
以下、発電出力予測装置20の各機能部について詳細に説明する。なお、以下において、発電出力予測装置20は、現在から2日後の発電出力を予測することとし、現在の1日後を“翌日”と称し、現在の2日後を“予測日”と称して説明する。
第1取得部20aは、気象庁データベース100、各種情報を観測する各種センサー200および積雪予測装置10から出力される各種情報を、第2通信装置26を介して取得する機能部である。
閾値判定部20bは、太陽光発電設備300のパネル上の積雪が、その発電に影響を及ぼさない積雪深の上限値(以下、「第1基準積雪深」と称する。)と、太陽光発電設備300のパネル上の積雪により太陽光発電設備300が発電できない積雪深の下限値(以下、「第2基準積雪深」と称する。)と、に対して、現在または将来の積雪深(以下、「特定積雪深」と称する。)が大きいか否かを判定する機能部である。なお、以下においては、説明の便宜上、閾値判定部20bにおいては、積雪予測装置10から取得する予測日の積雪深を特定積雪深として、第1基準積雪深および第2基準積雪深と比較して判定するものとする。
具体的に述べると、閾値判定部20bは、特定積雪深が第1基準積雪深よりも小さい(以下、「第1積雪状況」と称する。)か、特定積雪深が第2基準積雪深よりも大きい(以下、「第2積雪状況」と称する。)か、特定積雪深が第1基準積雪深以上で第2基準積雪深以下である(以下、「第3積雪状況」と称する。)か、を判定する。これにより、発電出力予測装置20は、予測日(または現在)において、積雪が太陽光発電設備300の発電に影響を及ぼす状態か否かを判定できるため、その状態に応じて正確に発電出力を予測できる。それぞれの状況における積雪係数の算出方法については、発電出力予測装置20の処理手順において、詳細に説明する。
なお、上記における“発電に影響を及ぼさない”とは、パネル上の積雪により、パネルに到達する太陽光が実質的に遮られないことをいう。つまり、この状況においては、太陽光はパネル上の積雪により僅かに遮られることはあるものの、積雪が実質的に太陽光発電設備300の発電に影響を及ぼさない。また、上記における“発電できない”とは、パネル上の積雪により太陽光がパネル表面に到達できないことをいう。つまり、この状況においては、太陽光はパネル上の積雪により遮られるため、太陽光発電設備300は発電できない。
判定方法選択部20cは、積雪係数を算出する際に、天候が雪を示すか否かを判定する処理モード(以下、「第1モード」と称する。)か、天候がみぞれを示すか否かを判定する処理モード(以下、「第2モード」と称する。)か、気温が所定の値を下回るか否か判定する処理モード(以下、「第3モード」と称する。)か、のいずれかを選択する機能部である。判定方法選択部20cは、例えば、積雪を予測する予測地域ごとに、第1モード〜第3モードのいずれかを紐づけしてもよい。これにより、予測地域における特有の状況に応じて最適な処理モードが選択される。また、例えば、月ごとに、第1モード〜第3モードのいずれかを紐づけしてもよい。これにより、月ごとの天候および気温の特有の変化に応じて最適な処理モードが選択される。さらに言うと、積雪予測装置10を操作する操作者が、操作のたびに選択をしてもよい。
雪判定部20dは、翌日および予測日が雪か否かを判定する機能部である。具体的には、雪判定部20dは、翌日および予測日のそれぞれについて雪または雪以外であるかを特定し、翌日および予測日のどの組み合わせに該当するかを判定する。例えば、翌日が“雪”で予測日が“雪以外”である場合、後述する積雪係数算出部20gは、その組み合わせに対応する積雪係数グラフを適用する。これにより、翌日および予測日の天候(雪か否か)に応じた積雪係数グラフを適用できるため、正確な発電出力を算出できる。雪判定部20dの判定方法については、発電出力予測装置20の処理手順において、詳細に説明する。
みぞれ判定部20eは、翌日および予測日がみぞれか否かを判定する機能部である。具体的には、雪判定部20dと同様に、みぞれ判定部20eは、翌日および予測日のそれぞれについてみぞれ又はみぞれ以外であるかを特定し、翌日および予測日のどの組み合わせに該当するかを判定する。これにより、翌日および予測日の天候(みぞれか否か)に応じた積雪係数グラフを適用できるため、正確な発電出力を算出できる。なお、みぞれ判定部20eは、みぞれのみを判定するのではなく、みぞれまたは雪であるか否かを判定してもよい。みぞれに雪を含めることで、より良好な判定が可能となるためである。ただし、以下においては、説明の便宜上、みぞれ判定部20eは、みぞれのみを判定することとして説明する。みぞれ判定部20eの判定方法については、発電出力予測装置20の処理手順において、詳細に説明する。
気温判定部20fは、翌日および予測日の気温が所定の値未満か否かを判定する機能部である。具体的には、気温判定部20fは、翌日および予測日のそれぞれについて、気温が0℃未満または0℃以上であるかを特定し、翌日および予測日におけるどの気温の組み合わせに該当するかを判定する。これにより、翌日および予測日の気温に応じた積雪係数グラフを適用できるため、正確な発電出力を算出できる。気温判定部20fの判定方法については、発電出力予測装置20の処理手順において、詳細に説明する。
積雪係数算出部20gは、積雪深情報と、雪判定部20d、みぞれ判定部20eまたは気温判定部20fにおける判定結果と、に基づいて積雪係数を算出する機能部である。具体的に説明すると、積雪係数算出部20gは、閾値判定部20bで第1積雪状況と判定された場合、積雪が“発電に影響を及ぼさない”と判断して例えば積雪係数を“1”に設定する。これにより、予測日の発電出力を算出するときに、積雪の影響を除外できる。また、積雪係数算出部20gは、閾値判定部20bで第2積雪状況と判定された場合、積雪により“発電できない”と判断して例えば積雪係数を“0”に設定する。これにより、予測日の発電出力は、積雪の影響により“0kW”として算出される。上記の判定により、太陽光発電設備300のパネル上に積雪があったとしても、所定の予測積雪深では発電に影響を及ぼさず、また、所定の積雪深を超えると発電できなくなるという傾向を発電出力の予測に反映できる。さらに、積雪係数算出部20gは、閾値判定部20bで第3積雪状況と判定された場合、翌日および予測日の天候または気温により、積雪が発電出力に及ぼす影響が変化することから、雪判定部20d、みぞれ判定部20eまたは気温判定部20fにおける判定結果に基づいて積雪係数情報テーブル20jを参照しつつ、予め定められている積雪係数グラフに基づいて最適な積雪係数を算出する。積雪係数算出部20gの算出方法については、発電出力予測装置20の処理手順において、詳細に説明する。
発電出力算出部20hは、積雪係数算出部20gで算出された積雪係数に基づいて、予測日の発電出力を算出する機能部である。具体的には、発電出力算出部20hは、式(6)に積雪係数および予測日における日射量を入力する。なお、設備係数および発電容量は、予め記憶装置23に記憶されている情報である。これにより、予測日における太陽光発電設備300の発電出力を算出できる。
[数7]
(但し、Wは発電出力、Rは設備係数、Vは発電容量、Sは日射量、Qは積雪係数を表す。)
==発電出力予測装置20の処理手順==
図17は、発電出力予測装置20の動作手順の一例を示すフロー図である。図17を参照しつつ、発電出力予測装置20の動作手順の一例について以下のとおり説明する。なお、以下においては、現在から2日後の発電出力を予測するものとし、上述したように、現在の1日後を翌日、2日後を予測日として説明する。
操作者は、予測する予測地域を選定する。発電出力予測装置20は、設定された予測地域ごとに全予測地域の処理を実行する(S20)。
発電出力予測装置20は、予測日の積雪係数を算出する処理を以下のとおり実行する(S21〜S46)。
まず、第1取得部20aは、現在および予測日の積雪深情報を積雪予測装置10から取得し、予測日の日射量情報を気象庁データベース100から取得する(S21)。
次に、閾値判定部20bは、積雪情報テーブル20iに格納されている予測日の積雪深を示す特定積雪深と、予め定められている第1基準積雪深および第2基準積雪深と、を比較する(S22)。
特定積雪深が第1基準積雪深よりも小さい第1積雪状況である場合(S22:特定積雪深<第1基準積雪深)、積雪係数算出部20gは、積雪が太陽光発電設備300の発電に影響を及ぼさない状況であるとして、積雪係数に“1”を設定する(S23)。
特定積雪深が第2基準積雪深よりも大きい第2積雪状況である場合(S22:第2基準積雪深<特定積雪深)、積雪係数算出部20gは、積雪により太陽光発電設備300が発電できない状況であるとして、積雪係数に“0”を設定する(S24)。
特定積雪深が第1基準積雪深以上で第2基準積雪深以下である第3積雪状況の場合(S22:第1基準積雪深≦特定積雪深≦第2基準積雪深)、積雪係数算出部20gは、現在から予測日における天候または気温に基づいて、積雪係数情報テーブル20jを参照して特定される積雪係数グラフに基づいて積雪係数を算出する(S25〜S46)。以下、積雪係数の算出手順について、具体的に説明する。
判定方法選択部20cは、第1モード乃至第3モードのいずれかを選択する(S25)。判定方法選択部20cは、所定の予測地域に予め紐づけされているモードを選択してもよいし、予測日が該当する月に予め紐づけされているモードを選択してもよいし、操作者からの指示信号に基づいてモードを選択してもよい。
判定方法選択部20cにおいて天候が雪か否かを判定する第1モードが選択された場合(S25:第1モード)、雪判定部20dは、翌日および予測日が雪か否かを判定する。
この場合、雪判定部20dが第2予測諸量情報テーブル20kを参照することにより翌日が“雪”で予測日も“雪”と判定する場合(S26:YES)、積雪係数算出部20gは積雪係数情報テーブル20jを参照して先の天候に対応する第1積雪係数を算出する(S27)。同様に、雪判定部20dが第2予測諸量情報テーブル20kを参照することにより翌日が“雪以外”で予測日が“雪”と判定する場合(S28:YES)、積雪係数算出部20gは積雪係数情報テーブル20jを参照して先の天候に対応する第2積雪係数を算出する(S29)。同様に、雪判定部20dが第2予測諸量情報テーブル20kを参照することにより翌日が“雪”で予測日が“雪以外”と判定する場合(S30:YES)、積雪係数算出部20gは積雪係数情報テーブル20jを参照して先の天候に対応する第3積雪係数を算出する(S31)。同様に、雪判定部20dが第2予測諸量情報テーブル20kを参照することにより翌日が“雪以外”で予測日も“雪以外”と判定する場合(S30:NO)、積雪係数算出部20gは積雪係数情報テーブル20jを参照して先の天候に対応する第4積雪係数を算出する(S32)。
このように第1積雪係数乃至第4積雪係数を算出することにより、翌日および予測日の天候に応じた最適な積雪係数を算出できる。以下において、第1積雪係数乃至第4積雪係数についてより具体的に説明する。
図18は、積雪が継続している状況における積雪深と積雪係数との関係の一例を示す第1積雪係数グラフである。第1積雪係数および第2積雪係数は、予測日は雪であり、つまり、予測日に未だ降雪している状況における係数である。積雪係数算出部20gは、図18に示すような第1積雪係数グラフに基づいて第1積雪係数および第2積雪係数を算出する。図18に示す第1積雪係数グラフは、例えば、縦軸を積雪係数とし、横軸を積雪深とする座標に、積雪係数と積雪深との関係をプロットしたグラフである。第1積雪係数グラフは、所定の積雪深(LおよびH)の間において、積雪深が大きくなるにつれて積雪係数が小さくなるグラフである。なお、所定の積雪深とは、任意に設定される値である。なお、一例を示すと、所定の積雪深は、小さい方(L)を第1基準積雪深と等しい値とし、大きい方(H)を第2基準積雪深と等しい値として設定される。これにより、予測日に降雪しているため、予測日には融雪しないという状況を、積雪係数に反映することができる。
図19は、予測日において天候が回復している状況における積雪深と積雪係数との関係の一例を示す第2積雪係数グラフである。第3積雪係数は、翌日は雪であり、予測日には降雪していない状況(雪以外)、つまり、予測日には天候が回復している状況における係数である。積雪係数算出部20gは、図19に示すような第2積雪係数グラフに基づいて第3積雪係数を算出する。第2積雪係数グラフは、所定の積雪深(LおよびH)の間において、積雪深が大きくなるにつれて積雪係数が所定の値(Q)まで小さくなるグラフである。第2積雪係数グラフは、所定の値まで積雪係数が低下すると、積雪深が大きくなっても積雪係数は一定値を示す。なお、所定の積雪深とは、任意に設定される値である。これにより、翌日は雪であるため融雪しないが、予測日には天候が回復している(雪以外)ため融雪するという状況を、積雪係数に反映することができる。
図20は、予測日において天候が回復している状況における積雪深と積雪係数との関係の一例を示す第3積雪係数グラフである。第4積雪係数は、翌日および予測日ともに降雪していない状況(雪以外)、つまり、翌日および予測日ともに天候が回復している状況における係数である。積雪係数算出部20gは、図20に示すような第3積雪係数グラフに基づいて第4積雪係数を算出する。第3積雪係数グラフは、例えば、現在から予測日にかけて降雪していない状況(雪以外)が継続しているため、積雪係数が“1”で一定となるグラフである。これにより、現在から予測日にかけて天候が回復しているため、パネル上の積雪が発電に影響しない程度まで融雪するという状況を、積雪係数に反映することができる。なお、第3積雪係数グラフは、積雪深が大きくなるにしたがって、僅かに積雪係数が小さくなるようなグラフであってもよい。
なお、第1積雪係数グラフ乃至第3積雪係数グラフにおいて、積雪深が大きくなるにつれて積雪係数が直線的に小さくなるように示しているが、これに限定されず、二次曲線のように小さくなるようなものでもよい。さらにいうと、第1積雪係数グラフ乃至第3積雪係数グラフは、過去の実績に基づいて決定される関数であってもよい。
次に、判定方法選択部20cにおいて天候がみぞれか否かを判定する第2モードが選択された場合(S25:第2モード)、みぞれ判定部20eは翌日および予測日がみぞれか否かを判定する。
この場合、みぞれ判定部20eが第2予測諸量情報テーブル20kを参照することにより翌日が“みぞれ”で予測日も“みぞれ”と判定する場合(S33:YES)、積雪係数算出部20gは先の天候に対応する第5積雪係数を算出する(S34)。同様に、みぞれ判定部20eが第2予測諸量情報テーブル20kを参照することにより翌日が“みぞれ以外”で予測日が“みぞれ”と判定する場合(S35:YES)、積雪係数算出部20gは先の天候に対応する第6積雪係数を算出する(S36)。同様に、みぞれ判定部20eが第2予測諸量情報テーブル20kを参照することにより翌日が“みぞれ”で予測日が“みぞれ以外”と判定する場合(S37:YES)、積雪係数算出部20gは先の天候に対応する第7積雪係数を算出する(S38)。同様に、みぞれ判定部20eが第2予測諸量情報テーブル20kを参照することにより翌日が“みぞれ以外”で予測日も“みぞれ以外”と判定する場合(S37:NO)、積雪係数算出部20gは先の天候に対応する第8積雪係数を算出する(S39)。
第5積雪係数乃至第8積雪係数の算出手法については、上述した第1積雪係数乃至第4積雪係数の算出手法における“雪”と説明したところを“みぞれ”に置き換えたものと同じであるため、その説明を省略する。ただし、図18〜図20における所定の積雪深(LおよびH)や所定の値(Q)については、みぞれ特有の性質に応じて設定される。
次に、判定方法選択部20cにおいて気温が所定の値を下回るか否かを判定する第3モードが選択された場合(S25:第3モード)、気温判定部20fは翌日および予測日の気温が所定の値を下回るか否か、例えば0℃未満か否かを判定する。なお、以下説明においては、気温判定部20fで用いる所定の値を“0℃”として説明する。
この場合、気温判定部20fが第2予測諸量情報テーブル20kを参照することにより翌日が“0℃未満”で予測日も“0℃未満”と判定する場合(S40:YES)、積雪係数算出部20gは先の気温に対応する第9積雪係数を算出する(S41)。同様に、気温判定部20fが第2予測諸量情報テーブル20kを参照することにより翌日が“0℃以上”で予測日が“0℃未満”と判定する場合(S42:YES)、積雪係数算出部20gは先の気温に対応する第10積雪係数を算出する(S43)。同様に、気温判定部20fが第2予測諸量情報テーブル20kを参照することにより翌日が“0℃未満”で予測日が“0℃以上”と判定する場合(S44:YES)、積雪係数算出部20gは先の気温に対応する第11積雪係数を算出する(S45)。同様に、気温判定部20fが第2予測諸量情報テーブル20kを参照することにより翌日が“0℃以上”で予測日も“0℃以上”と判定する場合(S44:NO)、積雪係数算出部20gは先の気温に対応する第12積雪係数を算出する(S46)。
第9積雪係数乃至第12積雪係数の算出手法において、気温が0℃以上になると融雪する状況であると認定し、気温が0℃未満であると融雪しない状況であると認定することと、上述した第1積雪係数乃至第4積雪係数の算出手法において、天候が雪以外のときは融雪する状況であると認定し、天候が雪のときは融雪しない状況であると認定することと、は同じことを意味する。したがって、第9積雪係数乃至第12積雪係数の算出手法は、上述した第1積雪係数乃至第4積雪係数の算出手法における“雪”と説明したところを“0℃未満”に置き換え“雪以外”と説明したところを“0℃以上”に置き換えた算出手法と同じであるとし、その説明を省略する。ただし、図18〜図20における所定の積雪深(LおよびH)や所定の値(Q)については、気温が融雪に及ぼす影響に応じて設定される。
次に、発電出力算出部20hは、式(6)により、予測日の発電出力を算出する(S47)。S21〜S47の処理を、予測地域分繰り返す(S20)。
===まとめ===
以上説明したように、本実施形態に係る発電出力予測装置20は、現在または将来の積雪深を示す積雪深情報と、将来における、天候を示す天候情報と、気温を示す気温情報と、太陽光発電設備300が設置されている地点における日射量を示す日射量情報と、を取得する第1取得部20aと、積雪が太陽光発電設備300の発電に影響を及ぼさない積雪深を示す第1基準積雪深と、第1基準積雪深よりも大きく、積雪により太陽光発電設備300が発電できない積雪深を示す第2基準積雪深と、に対する積雪深の大小関係を判定する閾値判定部20bと、第1判定部において積雪深が第1基準積雪深と第2基準積雪深との間の値であると判定された場合、天候情報または気温情報のいずれか一方に基づいて、太陽光発電設備300の発電に対して積雪が及ぼす影響度合いを示す積雪係数を算出する積雪係数算出部20gと、積雪係数と、日射量情報と、に基づいて太陽光発電設備300の発電出力を算出する発電出力算出部20hと、を備える。本実施形態によれば、将来の天候または気温を考慮することにより、予測日における積雪による太陽光発電設備300の発電出力への影響を正確に予測することができるため、発電出力の予測精度を向上できる。
又、本実施形態に係る発電出力予測装置20が用いる天候は、雪またはみぞれである。本実施形態によれば、融雪に影響する天候を限定するためシステム構築費用を縮減できる。
又、本実施形態に係る発電出力予測装置20における積雪係数は、将来における、太陽光発電設備300の発電出力を予測する予測日の天候を示す天候情報と、予測日の前日の天候を示す天候情報と、の組み合わせに応じた第1積雪係数乃至第8積雪係数(天候積雪係数)、又は、予測日の気温を示す気温情報と、予測日の前日の気温を示す気温情報と、の組み合わせに応じた第9積雪係数乃至第12積雪係数(気温積雪係数)のいずれかである。本実施形態によれば、雪、みぞれ、気温のそれぞれの特徴に応じて積雪係数を算出できるため、発電出力の予測精度をより向上できる。
又、本実施形態に係る発電出力予測システム1は、積雪深の予測値を示す積雪深情報に基づいて太陽光発電設備300の発電出力を算出する発電出力予測装置20と、積雪深の予測値を算出する積雪予測装置10と、を備え、積雪予測装置10は、現在または過去の第1時点における積雪深を示す積雪深情報と、第1時点から予測日までの期間における気温に関する気温情報と、を取得する第2取得部10aと、気温情報と、気温が融雪に影響を与える度合いを示す第1,第2融雪高係数と、に基づいて、第1時点から予測日までに融雪した高さを示す融雪高を算出する第1,第2融雪高算出部10e,10fと、積雪深情報と、融雪高を示す融雪高情報と、に基づいて、予測日の積雪深の予測値を算出する積雪算出部10hと、を有する。本実施形態によれば、現在の積雪深情報を用いるよりも、積雪深の予測値を用いる方が、積雪が太陽光発電設備300の発電に全く影響しない状況であるか、積雪により太陽光発電設備300が発電できない状況であるか、を正確に判定できるため、発電出力の予測精度をより向上できる。
又、本実施形態に係る発電出力予測システム1における気温情報は、第1時点から第2時点までの期間において、所定の時点の気温が所定の基準気温を超過した分に関する値の情報であり、第2融雪高算出部10fは、該気温情報と、所定の時点の気温が基準気温を超えた分に関する値が融雪に影響を与える度合いを示す第2融雪高係数と、に基づいて第1時点から第2時点までの融雪高を算出する。本実施形態によれば、各時刻における気温が基準気温を超過した分を積算することにより、1日における各時刻の気温が融雪に影響を与える度合いを、融雪を算出するにあたり、より正確に反映できる。
又、本実施形態に係る発電出力予測システム1における気温情報は、1日の平均気温を示す情報であり、第1融雪高算出部10eは、平均気温が所定の気温を超過している場合に、気温情報と、第1融雪高係数と、に基づいて融雪高を算出する。本実施形態によれば、取得容易な気温情報だけで単純に融雪高を算出できるため、容易にシステムを構築できる。
又、本実施形態に係る発電出力予測システム1における第2取得部10aは、第1時点から予測日までの期間における、天候を示す天候情報と、気温を示す気温情報と、降水量を示す降水量情報と、を取得し、天候情報と、気温情報と、降水量情報と、天候が“雪”または“みぞれ”のときに降水量が積雪に影響を与える度合いを示す第1積雪高係数と、気温が所定の値以下(例えば氷点下)のときに降水量が積雪に影響を与える度合いを示す第2積雪高係数と、に基づいて、第1時点から予測日までに積雪した高さを示す積雪高を算出する積雪高算出部10gをさらに備え、積雪算出部10hは、積雪深情報と、融雪高情報と、積雪高を示す積雪高情報と、に基づいて、予測日の積雪深を算出する。本実施形態によれば、融雪高に加えて、現在から予測日までに新たに積雪した分を予測日の積雪深に反映することにより、より正確に予測日の積雪深を算出できる。
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。