JP2019218118A - 医療用容器および医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】電子線あるいはガンマ線照射による変色が少なく、かつ、透明性に優れる医療用容器を提供する。【解決手段】環状オレフィン系樹脂(A)と、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)と、を含む環状オレフィン系樹脂組成物を含む医療用容器であって、上記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の重量平均分子量(Mw)が500以上5000以下であり、上記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の溶解度パラメータが18.0MPa1/2以上21.0MPa1/2以下であり、上記環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる上記環状オレフィン系樹脂(A)および上記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の合計を100質量部としたとき、上記環状オレフィン系樹脂(A)の含有量が70質量部以上99質量部以下であり、上記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の含有量が1質量部以上30質量部以下である医療用容器。【選択図】なし

Description

本発明は、医療用容器および医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物に関する。
環状オレフィン系樹脂は、透明性や、耐薬品性等の性能バランスが優れている。よって、例えば、医療用容器等の成形体を形成する材料として用いられることが検討されている。このような環状オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物に関する技術としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載のものが挙げられる。
特許文献1には、特定の環状オレフィン系樹脂を2種含む環状オレフィン系樹脂組成物が記載されている。そして、その組成物により、スリップ性が改良され、透明性、表面光沢に優れ、さらに衛生面に優れた成形体を得ることが記載されている。
特許文献2には、環状オレフィン系樹脂60〜90重量部と、数平均分子量が75,000〜500,000である芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体および/またはその水素添加物10〜40重量部とからなる環状オレフィン系樹脂組成物が記載されている。そして、その組成物により、衝撃強度に優れるとともに防湿性にも優れた成形体を得ることが記載されている。
特開2001−26693号公報 特開平8−277353号公報
シリンジや薬液保存容器等の医療用容器は、通常、滅菌した後に内容物が充填される。この滅菌の際、容器に対して電子線あるいはガンマ線が照射される場合がある。
本発明者らの検討によれば、従来の環状オレフィン系樹脂を用いた医療用容器においては、電子線あるいはガンマ線照射によって変色が発生しうる場合があることが明らかになった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。つまり、本発明は、電子線あるいはガンマ線照射による変色が少なく、かつ、透明性に優れる医療用容器を提供するものである。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、環状オレフィン系樹脂に対して、特定の分子量および溶解度パラメータを持つ芳香族環状構造を有するオリゴマーを特定の割合で配合することにより、上記課題を解決しうることを見出した。そして、以下に示される本発明を完成させた。
すなわち、本発明によれば、以下に示す医療用容器および医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物が提供される。
[1]
環状オレフィン系樹脂(A)と、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)と、を含む環状オレフィン系樹脂組成物を含む医療用容器であって、
上記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の重量平均分子量(Mw)が500以上5000以下であり、
上記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の溶解度パラメータが18.0MPa1/2以上21.0MPa1/2以下であり、
上記環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる上記環状オレフィン系樹脂(A)および上記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の合計を100質量部としたとき、上記環状オレフィン系樹脂(A)の含有量が70質量部以上99質量部以下であり、上記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の含有量が1質量部以上30質量部以下である医療用容器。
[2]
上記[1]に記載の医療用容器において、
上記環状オレフィン系樹脂(A)が、
下記の[A−1]、[A−2]、[A−3]および[A−4]から選択される少なくとも一種を含む医療用容器。
[A−1]炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと下記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体;
Figure 2019218118
(上記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子またはハロゲンで置換されていてもよい炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とで、アルキリデン基を形成していてもよい。)、
Figure 2019218118
(上記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2であり、R〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、RおよびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のときR15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)、
[A−2]上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体、
[A−3]上記開環重合体または共重合体[A−2]の水素化物、
[A−4]上記[A−1]、[A−2]または[A−3]のグラフト変性物。
[3]
上記[1]または[2]に記載の医療用容器において、
上記環状オレフィン系樹脂(A)中の環状オレフィンが、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンから選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する繰り返し単位である医療用容器。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の医療用容器において、
上記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)がスチレン系化合物およびインデン系化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の繰り返し単位を有する医療用容器。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の医療用容器において、
シリンジまたは薬液保存容器である、医療用容器。
[6]
医療用容器を形成するための環状オレフィン系樹脂組成物であって、
環状オレフィン系樹脂(A)と、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)と、を含み、
上記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の重量平均分子量(Mw)が500以上5000以下であり、
上記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の溶解度パラメータが18.0MPa1/2以上21.0MPa1/2以下であり、
上記環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる上記環状オレフィン系樹脂(A)および上記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の合計を100質量部としたとき、上記環状オレフィン系樹脂(A)の含有量が70質量部以上99質量部以下であり、上記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の含有量が1質量部以上30質量部以下である医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物。
[7]
上記[6]に記載の医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記環状オレフィン系樹脂(A)が、
下記の[A−1]、[A−2]、[A−3]および[A−4]から選択される少なくとも一種を含む医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物。
[A−1]炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと下記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体;
Figure 2019218118
(上記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子またはハロゲンで置換されていてもよい炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とで、アルキリデン基を形成していてもよい。)、
Figure 2019218118
(上記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2であり、R〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、RおよびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のときR15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)、
[A−2]上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体、
[A−3]上記開環重合体または共重合体[A−2]の水素化物、
[A−4]上記[A−1]、[A−2]または[A−3]のグラフト変性物。
[8]
上記[6]または[7]に記載の医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記環状オレフィン系樹脂(A)中の環状オレフィンが、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンから選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する繰り返し単位である医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物。
[9]
上記[6]乃至[8]のいずれか一つに記載の医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)がスチレン系化合物およびインデン系化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の繰り返し単位を有する医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物。
[10]
上記[6]乃至[9]のいずれか一つに記載の医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記医療用容器がシリンジまたは薬液保存容器である医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物。
本発明によれば、電子線あるいはガンマ線照射による変色が少なく、かつ、透明性に優れる医療用容器を提供することができる。
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、本実施形態では、数値範囲を示す「A〜B」はとくに断りがなければ、A以上B以下を表す。
[環状オレフィン系樹脂組成物]
まず、本発明に係る実施形態の環状オレフィン系樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂(A)と、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)と、を含む。そして、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の重量平均分子量(Mw)が500以上5000以下であり、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の溶解度パラメータが18.0MPa1/2以上21.0MPa1/2以下である。さらに、環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる環状オレフィン系樹脂(A)および芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の合計を100質量部としたとき、環状オレフィン系樹脂(A)の含有量が70質量部以上99質量部以下であり、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の含有量が1質量部以上30質量部以下である。
芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の含有量、重量平均分子量(Mw)および溶解度パラメータを上記範囲内に高度に制御することにより、環状オレフィン系樹脂(A)と芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)との相容性が良好になり、その結果、電子線あるいはガンマ線照射による変色が少なく、かつ、透明性に優れる医療用容器が得られる。
環状オレフィン系樹脂(A)の含有量は70質量部以上99質量部以下であるが、得られる医療用容器の透明性および、耐ガンマ線または耐電子線性能の性能バランスをより向上させる観点から、75質量部以上95質量部以下が好ましく、80質量部以上90質量部以下がより好ましい。
また、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の含有量が1質量部以上30質量部以下であるが、得られる医療用容器の透明性および、耐ガンマ線または耐電子線性能の性能バランスをより向上させる観点から、5質量部以上25質量部以下が好ましく、10質量部以上20質量部以下がより好ましい。
また、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物中の環状オレフィン系樹脂(A)および芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の合計含有量は、得られる医療用容器の透明性および、耐ガンマ線または耐電子線性能の性能バランスをより向上させる観点から、当該環状オレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、特に好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂(A)および芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)を上記の比率で含むことにより、得られる医療用容器について、医療用容器に求められる良好な透明性を満足しながら、耐ガンマ線または耐電子線性能をより一層向上させることができる。
以下、各成分について具体的に説明する。
(環状オレフィン系樹脂(A))
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂(A)は、環状オレフィンに由来する繰り返し単位を必須構成単位とする樹脂である。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂(A)を構成する環状オレフィン化合物は特に限定はされないが、例えば、国際公開第2006/118261号の段落0037〜0063に記載の環状オレフィンモノマーを挙げることができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂(A)は、下記の[A−1]、[A−2]、[A−3]および[A−4]から選択される少なくとも一種を含む。
[A−1]炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと下記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体;
Figure 2019218118
(上記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子またはハロゲンで置換されていてもよい炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とで、アルキリデン基を形成していてもよい。)
Figure 2019218118
(上記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2であり、R〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、RおよびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のときR15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)
[A−2]上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体
[A−3]上記開環重合体または共重合体[A−2]の水素化物
[A−4]上記[A−1]、[A−2]または[A−3]のグラフト変性物
炭素原子数が2〜20のα−オレフィンについては、直鎖状でも分岐状でもよい。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素原子数が2〜20の直鎖状α−オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、等の炭素原子数が4〜20の分岐状α−オレフィン等が挙げられる。
これらの中では、炭素原子数が2〜4の直鎖状α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。このような直鎖状または分岐状のα−オレフィンは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
以下このような環状オレフィン系樹脂[A−1]、[A−2]、[A−3]および[A−4]を形成する式[I]または[II]で示される環状オレフィンについて説明する。
Figure 2019218118
上記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1である。なお、qが1の場合には、RおよびRは、それぞれ独立に、下記の原子または炭化水素基であり、qが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。
〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル基およびナフチル基等が挙げられる。これらの炭化水素基はハロゲン原子で置換されていてもよい。
さらに上記式[I]において、R15〜R18がそれぞれ結合して(互いに共同して)単環または多環を形成していてもよく、しかもこのようにして形成された単環または多環は二重結合を有していてもよい。ここで形成される単環または多環の具体例を下記に示す。
Figure 2019218118
なお、上記例示において、1または2の番号が付された炭素原子は、上記式[I]においてそれぞれR15(R16)またはR17(R18)が結合している炭素原子を示している。また、R15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。このようなアルキリデン基は、例えば炭素原子数2〜20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基の具体的な例としては、エチリデン基、プロピリデン基およびイソプロピリデン基を挙げることができる。
Figure 2019218118
上記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2である。またR〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基である。
ハロゲン原子は、上記式[I]におけるハロゲン原子と同じ意味である。また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはアリール基およびアラルキル基等、具体的にはフェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基等が挙げられる。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基等を挙げることができる。これらの炭化水素基およびアルコキシ基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されていてもよい。
ここで、RおよびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよい。すなわち上記二個の炭素原子がアルキレン基を介して結合している場合には、RおよびR13で示される基またはR10およびR11で示される基が互いに共同して、メチレン基(−CH−)、エチレン基(−CHCH−)またはプロピレン基(−CHCHCH−)のうちのいずれかのアルキレン基を形成している。さらに、n=m=0のとき、R15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。この場合の単環または多環の芳香族環として、例えば下記のようなn=m=0のときR15とR12がさらに芳香族環を形成している基が挙げられる。
Figure 2019218118
ここで、qは上記式[II]におけるqと同じ意味である。
上記のような式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、例えば、
Figure 2019218118
(上記式中、1〜7の数字は炭素の位置番号を示す。)およびこのビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンに炭化水素基が置換した誘導体等が挙げられる。この炭化水素基としては、例えば、5−メチル、5,6−ジメチル、1−メチル、5−エチル、5−n−ブチル、5−イソブチル、7−メチル、5−フェニル、5−メチル−5−フェニル、5−ベンジル、5−トリル、5−(エチルフェニル)、5−(イソプロピルフェニル)、5−(ビフェニル)、5−(β−ナフチル)、5−(α−ナフチル)、5−(アントラセニル)、5,6−ジフェニル等が挙げられる。
さらに、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン等のビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン誘導体等が挙げられる。
さらに、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、例えば、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、2−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、5−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン等のトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン誘導体、トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、10−メチルトリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン等のトリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン誘導体、
Figure 2019218118
(上記式中、1〜12の数字は炭素の位置番号を示す。)およびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンに炭化水素基が置換した誘導体等が挙げられる。この炭化水素基としては、例えば、8−メチル、8−エチル、8−プロピル、8−ブチル、8−イソブチル、8−ヘキシル、8−シクロヘキシル、8−ステアリル、5,10−ジメチル、2,10−ジメチル、8,9−ジメチル、8−エチル−9−メチル、11,12−ジメチル、2,7,9−トリメチル、2,7−ジメチル−9−エチル、9−イソブチル−2,7−ジメチル、9,11,12−トリメチル、9−エチル−11,12−ジメチル、9−イソブチル−11,12−ジメチル、5,8,9,10−テトラメチル、8−エチリデン、8−エチリデン−9−メチル、8−エチリデン−9−エチル、8−エチリデン−9−イソプロピル、8−エチリデン−9−ブチル、8−n−プロピリデン、8−n−プロピリデン−9−メチル、8−n−プロピリデン−9−エチル、8−n−プロピリデン−9−イソプロピル、8−n−プロピリデン−9−ブチル、8−イソプロピリデン、8−イソプロピリデン−9−メチル、8−イソプロピリデン−9−エチル、8−イソプロピリデン−9−イソプロピル、8−イソプロピリデン−9−ブチル、8−クロロ、8−ブロモ、8−フルオロ、8,9−ジクロロ、8−フェニル、8−メチル−8−フェニル、8−ベンジル、8−トリル、8−(エチルフェニル)、8−(イソプロピルフェニル)、8,9−ジフェニル、8−(ビフェニル)、8−(β−ナフチル)、8−(α−ナフチル)、8−(アントラセニル)、5,6−ジフェニル等が挙げられる。
さらに、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、例えば、(シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物)とシクロペンタジエンとの付加物、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4,10−ペンタデカジエン等のペンタシクロペンタデカジエン化合物、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセンおよびその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセンおよびその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセンおよびその誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]−5−ペンタコセンおよびその誘導体、ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]−6−ヘキサコセンおよびその誘導体等が挙げられる。
上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンから選ばれる少なくとも一種が好ましい。
すなわち、環状オレフィン系樹脂(A)中の環状オレフィンが、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンから選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する繰り返し単位であることが好ましい。
なお、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの具体例を上記に示したが、これら化合物のより具体的な構造例としては、特開平7−145213号公報の段落番号[0032]〜[0054]に示された環状オレフィンの構造例を挙げることができる。本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂(A)は、上記環状オレフィンから導かれる単位を2種以上含有していてもよい。
上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンは、例えば、シクロペンタジエンと対応する構造を有するオレフィン類とをディールス・アルダー反応させることによって製造することができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂(A)は、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンを用いて、例えば、特開昭60−168708号、特開昭61−120816号、特開昭61−115912号、特開昭61−115916号、特開昭61−271308号、特開昭61−272216号、特開昭62−252406号、特開昭62−252407号および国際公開第2008/068897号等の公報に記載された方法に従いってそれぞれ適宜条件を選択することにより製造することができる。
([A−1]炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと環状オレフィンとのランダム共重合体)
[A−1]炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体(以下、炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]とも呼ぶ。)は、共重合体を構成する構成単位の全体を100モル%としたとき、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンから導かれる単位の含有量が、例えば5モル%以上95モル%以下、好ましくは20モル%以上80モル%以下であり、環状オレフィンから導かれる単位の含有量が、例えば5モル%以上95モル%以下、好ましくは20モル%以上80モル%以下である。
なお、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンの組成および環状オレフィン組成は、13C−NMRによって測定することができる。
炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]は、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンから導かれる単位と環状オレフィンから導かれる単位とがランダムに配列して結合し、実質的に線状構造を有していることが好ましい。この共重合体が実質的に線状であって、実質的にゲル状架橋構造を有していないことは、この共重合体が有機溶媒に溶解した際に、この溶液に不溶分が含まれていないことにより確認することができる。例えば極限粘度[η]を測定する際に、この共重合体が135℃のデカリンに完全に溶解することにより確認することができる。
炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]において、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの少なくとも一部は下記式[III]または[IV]で示される繰り返し単位を構成していると考えられる。
Figure 2019218118
上記式[III]において、n、m、q、R〜R18、RおよびRは上記式[I]と同じ意味である。
Figure 2019218118
上記式[IV]において、n、m、p、qおよびR〜R19は上記式[II]と同じ意味である。
また、炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]は、本発明の目的を損なわない範囲であれば必要に応じて他の共重合可能なモノマーから導かれる単位を有していてもよく、具体的には他のモノマーから導かれる単位を、通常20モル%以下、好ましくは10モル%以下の量で含有していてもよい。
このような他のモノマーとしては、上記のような炭素原子数が2〜20のα−オレフィンまたは環状オレフィン以外のオレフィンを挙げることができ、具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、および3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン等のシクロオレフィン、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエンおよび5−ビニル−2−ノルボルネン等の非共役ジエン類を挙げることができる。
炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]は、上記他のモノマーから導かれる単位を2種以上含有していてもよい。
炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]は、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとを用いて上記公報に開示された製造方法により製造することができる。これらのうちでも、共重合反応を炭化水素溶媒中で行い、触媒として該炭化水素溶媒に可溶性のバナジウム化合物および有機アルミニウム化合物から形成される触媒を用いて炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]を製造することが好ましい。
また、固体状IVA族メタロセン系触媒を用いて炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]を製造することもできる。この固体状IVA族メタロセン系触媒は、少なくとも1個のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物(メタロセン化合物)と、有機アルミニウムオキシ化合物と、必要に応じて有機アルミニウム化合物とから形成される。ここでIVA族の遷移金属は、ジルコニウム、チタンまたはハフニウムである。シクロペンタジエニル骨格を含む配位子としてはアルキル基が置換していてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フロオレニル基等が挙げられる。これらの基はアルキレン基等の他の基を介して結合していてもよい。またシクロペンタジエニル骨格を含む配位子以外の配位子は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等である。
また、有機アルミニウムオキシ化合物および有機アルミニウム化合物は、例えば、オレフィン系重合体の製造に使用されるものを用いることができる。このような固体状IVA族メタロセン系触媒については、例えば、特開昭61−221206号、特開昭64−106号および特開平2−173112号公報等に詳細に記載されている。
また、フェノキシイミン系触媒(FI触媒)やピロールイミン系触媒(PI触媒)を用いて炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]を製造することもできる。これらの触媒は、特開2001−72706号、特開2002−332312号、特開2003−313247号、特開2004−107486号、特開2004−107563号に記載のように、(a)フェノキシイミンまたはピロールイミンを配位子とする遷移金属化合物と、(b)(b−1)有機金属化合物、(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(b−3)遷移金属化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、からなる。ここで遷移金属化合物に含まれる遷移金属としては、周期表第3〜11族の遷移金属を用いることができる。
([A−2]環状オレフィンの開環重合体または共重合体)
[A−2]上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体(以下、環状オレフィンの開環(共)重合体[A−2]とも呼ぶ。)において、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンから導かれる単位の少なくとも一部は、下記式[V]または[VI]で示される。
Figure 2019218118
上記式[V]において、n、m、q、R〜R18、RおよびRは上記式[I]と同じ意味である。
Figure 2019218118
上記式[VI]において、n、m、p、qおよびR〜R19は上記式[II]と同じ意味である。
環状オレフィンの開環(共)重合体[A−2]は、上記公報に開示された製造方法により製造することができ、例えば、上記式[I]で示される環状オレフィンを開環重合触媒の存在下に、重合または共重合させることにより製造することができる。
このような開環重合触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、インジウムおよび白金等から選ばれる金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、パラジウム、ジルコニウムおよびモリブテン等から選ばれる金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
環状オレフィンの開環(共)重合体[A−2]は、例えば、特開平7−324108号公報に記載の方法でも得ることができる。
([A−3]環状オレフィンの開環(共)重合体[A−2]の水素化物)
環状オレフィンの開環(共)重合体[A−2]の水素化物(以下、開環(共)重合体の水素化物[A−3]とも呼ぶ。)は、環状オレフィンの開環(共)重合体[A−2]を、従来公知の方法、例えば、特開平7−324108号公報の水素添加触媒の存在下で水素化することにより得ることができる。
開環(共)重合体の水素化物[A−3]は、上記式[I]または[II]から導かれる単位の少なくとも一部は、下記式[VII]または[VIII]で示されると考えられる。
Figure 2019218118
上記式[VII]において、n、m、q、R〜R18、RおよびRは上記式[I]と同じ意味である。
Figure 2019218118
上記式[VIII]において、n、m、p、qおよびR〜R19は上記式[II]と同じ意味である。
開環(共)重合体の水素化物[A−3]としては、例えば、日本ゼオン社製のZeonex1020R、690R、790R等を用いることができる。
([A−4]グラフト変性物)
[A−4]上記[A−1]、[A−2]または[A−3]のグラフト変性物(グラフト変性物[A−4]とも呼ぶ。)は、炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]、環状オレフィンの開環(共)重合体[A−2]または開環(共)重合体の水素化物[A−3]のグラフト変性物である。
グラフト変性物[A−4]を得るための変性剤としては、例えば、不飽和カルボン酸類が用いられ、具体的に、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸TM)等の不飽和カルボン酸;上記不飽和カルボン酸の誘導体、例えば、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミド、不飽和カルボン酸のエステル化合物等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、より具体的に、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、塩化マレニル、マレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられる。
これらの変性剤のうちでも、α,β−不飽和ジカルボン酸およびα,β−不飽和ジカルボン酸無水物、例えば、マレイン酸、ナジック酸およびこれら酸の無水物が好ましく用いられる。これらの変性剤は、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グラフト変性物[A−4]における変性率は、通常10モル%以下であることが望ましい。
炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]、環状オレフィンの開環(共)重合体[A−2]または開環(共)重合体の水素化物[A−3]と、変性剤と、を用いてグラフト変性物[A−4]を得るには、従来公知のポリマーの変性方法を広く適用することができる。例えば、溶融状態にある環状オレフィンランダム共重合体[A−1]、環状オレフィンの開環(共)重合体[A−2]または開環(共)重合体の水素化物[A−3]に変性剤を添加してグラフト重合(反応)させる方法;あるいは環状オレフィンランダム共重合体[A−1]、環状オレフィンの開環(共)重合体[A−2]、または開環(共)重合体の水素化物[A−3]の溶液に変性剤を添加してグラフト反応させる方法等によりグラフト変性物[A−4]を得ることができる。このようなグラフト反応は、例えば、60〜350℃の温度で行われる。また、グラフト反応は有機過酸化物およびアゾ化合物等のラジカル開始剤の共存下で行うことができる。
また、上記のような変性率のグラフト変性物[A−4]は、未変性の炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]、環状オレフィンの開環(共)重合体[A−2]または開環(共)重合体の水素化物[A−3]と変性剤とのグラフト反応によって直接得ることができる。また、炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]、環状オレフィンの開環(共)重合体[A−2]または開環(共)重合体の水素化物[A−3]と変性剤とのグラフト反応によって予め高変性率の変性物を調製し、次いでこの変性物を未変性の炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]、環状オレフィンの開環(共)重合体[A−2]、または開環(共)重合体の水素化物[A−3]で所望の変性率となるように希釈することによって得ることもできる。
本実施形態において、環状オレフィン系樹脂(A)として、上記のような炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]、環状オレフィンの開環(共)重合体[A−2]、開環(共)重合体の水素化物[A−3]およびグラフト変性物[A−4]のいずれかを単独で用いてもよく、同種を2種以上用いてもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、環状オレフィン系樹脂(A)としては、炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体[A−1]が好ましい。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂(A)の分子量は特に限定されないが、135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]が、好ましくは0.03dl/g〜10dl/g、より好ましくは0.05dl/g〜5dl/g、さらに好ましくは0.10dl/g〜2dl/gを示す分子量である。
分子量が上記下限値以上であると、医療用容器の機械的強度を向上させることができる。また、分子量が上記上限値以下であると、成形性を向上させることができる。
(芳香族環状構造を有するオリゴマー(B))
芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の重量平均分子量(Mw)は500以上5000以下であるが、得られる医療用容器の透明性および、耐ガンマ線または耐電子線性能の性能バランスをより向上させる観点から、800以上4000以下が好ましく、1000以上3500以下がより好ましく、1500以上3000以下が特に好ましい。
ここで、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の値である。
芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の溶解度パラメータは18.0MPa1/2以上21.0MPa1/2以下であるが、得られる医療用容器の透明性および、耐ガンマ線または耐電子線性能の性能バランスをより向上させる観点から、18.5MPa1/2以上20.5MPa1/2以下が好ましく、19.0MPa1/2以上20.0MPa1/2以下がより好ましい。
本実施形態において、溶解度パラメータはMaterials StudioのSynthiaモジュールを用いて計算したFedorsのパラメータである。
本実施形態に係る芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)は、スチレン系化合物およびインデン系化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の繰り返し単位を有することが好ましい。
このようなスチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−イソプロペニルトルエン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等が挙げられる。
このようなインデン系化合物としては、例えば、インデン、メチルインデン、エチルインデン、プロピルインデン、ブチルインデン等が挙げられる。
本実施形態に係る芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)は、前述のスチレン系化合物またはインデン系化合物と共重合可能な他の単量体由来の繰り返し単位をさらに有していてもよい。
本実施形態に係る芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)において、透明性および、耐ガンマ線または耐電子線性能をより向上させる観点から、スチレン系化合物およびインデン系化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の繰り返し単位の含有量が、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
芳香族ビニル化合物の重合方法には格別な制限はなく、公知の方法に従って行なうことができる。
本実施形態に係る芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の軟化点は、得られる医療用容器の耐熱性を向上させる観点から、80℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましい。
(その他の成分)
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、塩酸吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、天然油、合成油、ワックス、有機または無機の充填剤等を本発明の目的を損なわない程度に配合することができ、その配合割合は適宜量である。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、必要に応じて、ヒンダードアミン系化合物[C]を含んでもよい。
ヒンダードアミン系化合物[C](以下、単に、化合物[C]、あるいは、[C]とも表記する)としては、ヒンダードアミン構造(具体的には、以下の式(b1)で表される部分構造)を、1つまたは2つ以上有する化合物を適宜用いることができる。
式(b1)中、*は、他の化学構造との結合手を表す。
Figure 2019218118
化合物[C]として具体的には、公知のヒンダードアミン系光安定剤(Hindered Amine Light Stabilizers:略称HALS)として知られている化合物などを用いることができる。
化合物[C]としては、例えば、国際公開第2006/112434号の段落0058〜0082に記載のヒンダードアミン系化合物、国際公開第2008/047468号の段落0124〜0186に記載のヒンダードアミン系化合物、国際公開第2008/047468号の段落0187〜0226に記載のピペリジン誘導体またはその塩、特開2006−321793号公報に記載のポリアミン誘導体またはその塩などを例示することができる。
また、Chimassorb 2020、Chimassorb 944、Tinuvin 622、Tinuvin PA144 Tinuvin 765、Tinuvin
770(以上、BASF社製)、Cyasorb UV−3853、Cyasorb UV−3529、Cyasorb UV−3346、Cyasorb UV−531(以上、Cytec社製)、アデカスタブ LA−52、アデカスタブ LA−57、アデカスタブ LA−63P、アデカスタブ LA−68、アデカスタブ LA−72、アデカスタブ LA−77Y、アデカスタブ LA−81、アデカスタブ LA−82、アデカスタブ LA−87(以上、ADEKA社製)等の市販品を用いることができる。
本実施形態では、化合物[C]は、以下一般式(b2)で表される構造単位を有する化合物であることが好ましい。
この化合物は、典型的にはポリマーまたはオリゴマーである。この化合物のような、ポリマーまたはオリゴマーである化合物[C]を用いることで、環状オレフィン系樹脂(A)との相溶性を高められ、組成物をより均一にすることができると考えられる。また、照射により特性吸収を有するような構造に変化しにくいと考えられる。これにより、電子線あるいはガンマ線照射による変色をより少なくし、また、電子線あるいはガンマ線照射によるラジカルの発生をより少なくできると考えられる。
Figure 2019218118
一般式(b2)において、XおよびXは、それぞれ独立に、2価の連結基を表す。
およびXの2価の連結基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、これらの基が連結された基、などを挙げることができる。これらの中でも、アルキレン基が好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましい。
一般式(b2)で表される構造単位を有する化合物については、市販品を用いてもよいし、対応するジオールおよびジカルボン酸などを縮重合させることで得てもよい。
化合物[C]については、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
組成物中の化合物[C]の含有量は、環状オレフィン系樹脂(A)の含有量を100質量部としたとき、例えば0.01〜2.0質量部、好ましくは0.05〜1.5質量部、より好ましくは0.10〜1.0質量部である。この範囲とすることで、他の性能(例えば成形性や機械強度など)を維持しつつ、電子線あるいはガンマ線照射による変色、ラジカルの発生などを効果的に低減することができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、必要に応じて、リン系化合物[D]を含んでもよい。
使用可能なリン系化合物[D](以下、単に、化合物[D]、または、[D]とのみ表記することもある)については、特に制限は無い。例えば、公知のリン系酸化防止剤を用いることができる。
リン系酸化防止剤としては、特に制限はなく、従来公知のリン系酸化防止剤(例えば、ホスファイト系酸化防止剤)を用いることができる。
具体的には、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(C12〜C15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(イソデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジメチルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。
好ましく用いられる化合物[D]は、3価の有機リン化合物である。より具体的には、化合物[D]は、亜リン酸(P(OH))の3つの水素原子が、各々同一または異なる有機基で置換された構造を有する化合物である。
より具体的には、化合物[D]は、好ましくは、下記一般式(c1)、(c2)または(c3)で表される化合物である。
Figure 2019218118
一般式(c1)、(c2)および(c3)中、
は、複数ある場合はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、
は、複数ある場合はそれぞれ独立に、芳香族基を表し、
は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、
Xは、単結合または2価の連結基を表す。
のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜10であり、より好ましくはt−ブチル基である。
の芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、これらがアルキル基等で置換された基などが挙げられる。
の炭素数は、好ましくは1〜30、より好ましくは3〜20、さらに好ましくは6〜18である。
として好ましくはアリール基またはアラルキル基であり、より好ましくはアラルキル基である。これらアリール基またはアラルキル基は、さらに置換基(例えば、炭素数1〜6のアルキル基やヒドロキシ基など)で置換されていてもよい。
Xが2価の連結基である場合、その具体例としては、アルキレン基(メチレン基など)やエーテル基(−O−)などが挙げられる。Xとして好ましくは単結合である。
化合物[D]については、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
組成物中の化合物[D]の含有量は、環状オレフィン系樹脂(A)の量を100質量部としたとき、例えば0.01〜1.5質量部、好ましくは0.02〜1.0質量部、より好ましくは0.05〜0.5質量部である。この範囲とすることで、他の性能(例えば成形性や機械強度など)を維持しつつ、電子線あるいはガンマ線照射による変色、ラジカルの発生などを効果的に低減することができる。
一方、別観点として、環状オレフィン系樹脂(A)の量を100質量部としたとき、リン系化合物[D]の含有量は、好ましくは0.05質量部未満、より好ましくは0.03質量部以下、さらに好ましくは0.02質量部以下である。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂(A)および芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)を、押出機およびバンバリーミキサー等の公知の混練装置を用いて溶融混練する方法;環状オレフィン系樹脂(A)および芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)を共通の溶媒に溶解した後、溶媒を蒸発させる方法;貧溶媒中に環状オレフィン系樹脂(A)および芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の溶液を加えて析出させる方法;等の方法により得ることができる。
[医療用容器]
次に、本発明に係る実施形態の医療用容器について説明する。
本実施形態に係る医療用容器は本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を含んでいる。
本実施形態に係る医療用容器は本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を含むため、透明性および、耐ガンマ線または耐電子線性能の性能バランスに優れている。この医療用容器は、電子線あるいはガンマ線照射による変色が少ない。
ここで、本発明者らの別の検討によれば、従来の医療用容器は、電子線あるいはガンマ線照射によってラジカルが発生する場合があることが明らかになった。これにより、医療用容器に内容物の充填後に内容物が変質するリスクがあることが懸念される。
これに対して、本実施形態に係る医療用容器は、電子線あるいはガンマ線照射によるラジカルの発生量を少なくすることができる。そのため、本実施形態に係る医療用容器によれば、内容物が変質するリスクを低減することが可能である。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を成型して医療用容器を得る方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。その用途および形状にもよるが、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、パウダースラッシュ成形、カレンダー成形、発泡成形等が適用可能である。これらの中でも、成形性、生産性の観点から射出成形法が好ましい。また、成形条件は使用目的、または成形方法により適宜選択されるが、例えば射出成形における樹脂温度は、通常150℃〜400℃、好ましくは200℃〜350℃、より好ましくは230℃〜330℃の範囲で適宜選択される。
また、例えば上記で製造された医療用容器に、ガンマ線または電子線を照射することで、医療用容器のガンマ線または電子線照射物(ガンマ線または電子線が照射された医療用容器)を得ることができる。この医療用容器は、照射により、殺菌または滅菌がなされているため清潔であり、かつ、変色やラジカルの発生が抑えられている。照射線量は特に限定されないが、通常は5〜100キログレイ、好ましくは10〜80キログレイである。
医療用容器としては、例えば、注射器の注射筒外筒(以下、シリンジ)および薬液や薬剤を充填してなる注射筒(以下、プレフィルドシリンジとも呼ぶ。)に使用されるシリンジ、薬液や薬剤を充填してなる保存容器に使用される保存容器(以下、薬液保存容器とも呼ぶ。)等が挙げられる。
ここで、プレフィルドシリンジとは、薬液や薬剤があらかじめ充填されているシリンジ形状の製剤であり、1種類の液が充填されたシングルチャンバータイプのものと、2種の薬剤が充填されたダブルチャンバータイプがある。ほとんどのプレフィルドシリンジはシングルチャンバータイプであるが、ダブルチャンバータイプについては、粉末とその溶解液からなる液・粉タイプの製剤と2種類の液からなる液・液タイプの製剤がある。シングルチャンバータイプの内溶液の例としては、ヘパリン溶液等が挙げられる。シリンジ及びプレフィルドシリンジに使用されるシリンジとして、例えば、プレフィラブル・シリンジ、ワクチン用プレフィルドシリンジ、抗がん剤用プレフィルドシリンジ、ニードルレス・シリンジ等が挙げられる。
薬液保存容器としては、例えば、広口瓶、狭口瓶、薬ビン、バイアルビン、輸液ボトル、バルク容器、シャーレ、試験管、分析セル等を挙げることができる。より具体的には、アンプル、プレス・スルー・パッケージ、輸液用バッグ、点滴薬容器、点眼薬容器などの液体、粉体または固体の薬品容器;血液検査用のサンプリング用試験管、採血管、検体容器などのサンプル容器;紫外線検査セルなどの分析容器;メス、カン子、ガーゼ、コンタクトレンズなどの医療器具の滅菌容器;ディスポーザブルシリンジ、プレフィルドシリンジなどの医療用具;ビーカー、バイアル、アンプル、試験管フラスコなどの実験器具;人工臓器のハウジング等が挙げられる。
本実施形態に係る医療用容器は透明性が良好である。透明性は、内部ヘイズで評価される。
また、さらに光線透過率が良好であることが好ましい。光線透過率は用途に応じて分光光線透過率または全光線透過率により規定される。
全光線、あるいは複数波長域での使用が想定される場合、全光線透過率が良いことが必要であり、反射防止膜を表面に設けていない状態での全光線透過率は85%以上、好ましくは88〜93%である。全光線透過率が85%以上であれば必要な光量を確保することができる。全光線透過率の測定方法は公知の方法が適用でき、測定装置等も限定されないが、例えば、ASTM D1003に準拠して、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を厚み3mmのシートに成形し、ヘーズメーターを用いて、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を成形して得られるシートの全光線透過率を測定する方法等が挙げられる。
また、本実施形態に係る医療用容器は、450nm〜800nmの波長の光の光線透過率に優れる。
なお、公知の反射防止膜を表面に設けることにより、光線透過率をさらに向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何等制限されるものではない。
<実施例1〜6および比較例1〜3>
各実施例および比較例において、各種物性は下記の方法によって測定または評価し、得られた結果を表2に示した。
(環状オレフィン系樹脂組成物の評価)
[ペレット化]
環状オレフィン系樹脂(A)および芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)を表2の配合量で混合して得られた樹脂組成物100質量部に対して、リン系化合物[D]として、トリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.2質量部、ヒンダードアミン系化合物[C]として、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンの重縮合物(BASF社製、TINUVIN622LD)を0.5質量部配合した。次いで、プラスチック工学研究所製の2軸押出機BT−30(スクリュー径30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度270℃、樹脂押出量80g/minおよびスクリュー回転数200rpmの条件で造粒し、各種測定用ペレットを得た。
[射出成形]
上記で得られたペレットを、東芝機械社製の射出成形機IS−55を用いて、シリンダ温度=270〜290℃、射出速度=70〜90%、スクリュー回転数70〜100rpm、金型温度120℃の条件にて射出成形し、厚み2mm射出角板試験片およびHDT射出試験片(1/4インチ)をそれぞれ作製した。
[ガンマ線照射]
上記で得られた厚み2mm角板試験片に、ガンマ線50キログレイを照射した。
[透明性]
得られた厚み2mmの角板試験片と、ガンマ線照射直後の試験片の内部ヘイズを測定し、以下の基準で透明性をそれぞれ評価した。
内部ヘイズは、ヘイズ計(日本電色工業社製NDH−20D)を用い、ベンジルアルコール中でそれぞれ測定した。
〇:内部ヘイズが6.0%未満
×:目視で試験片が白濁しているもの、または内部ヘイズが6.0%以上
[荷重たわみ温度(HDT)]
射出成形で成形したASTM用のHDT試験片(1/4インチ)を用いて、ASTM D648に準じて曲げ応力0.45MPa、昇温速度2℃/minで測定した。
[評価:ガンマ線照射直後の色相]
ガンマ線照射直後の試験片を、20mmの厚みで白色紙上に積み上げた。このときの色相および明度を目視評価した。色相はマンセル表色系に準じた。評価の基準は以下のとおりとした。
○(良い):明度が7〜9.5で、かつ、色相が5.0GY〜10GYの間である。
△(普通):明度が5〜9.5で、かつ、色相が5Y〜10GYの間である。ただし、上記の○(良好)に該当する場合を除く。
×(悪い):明度が0以上5未満である、かつ/または、色相が2.5Y〜5Yの間である。ただし、上記の△(普通)に該当する場合を除く。
上記の評価基準について補足しておく。
明度については、その値が大きいほうが、白色に近く、変色が抑えられていることが明らかである。
色相については、特に医療容器として用いることを考慮した場合、黄色は患者に不潔な印象を与えるとして敬遠されることから、黄色より緑色のほうが好ましいとした。
[評価:ラジカル発生量]
ガンマ線照射後の試料のラジカル量は、電子スピン共鳴法(Electron Spin Rssonance(ESR))により測定した。
具体的には、ガンマ線照射直後の試験片を約6mg切り出し、それを試験管(詳細は以下)に入れて、以下条件でESRスペクトルを測定した。
・装置:日本電子製電子スピン共鳴装置 JES−TE200
・共振周波数:9.2GHz
・マイクロ波入力:1mW
・中心磁場:326.5mT
・掃引幅:±15mT
・変調周波数:100kHz
・掃引時間:8min.
・時定数:0.1sec
・増幅度:25
・試料管:Xバンド対応の先端部石英の試料管
・外部照準:酸化マグネシウムに担持されたMn2+標準サンプル
・外部標準メモリ:0、700
・測定温度:室温
・測定雰囲気:大気
ラジカル発生量の相対比較には、下記式に示される規格化値を用いた。
Figure 2019218118
なお、ESRスペクトルのベースラインについては、Mn2+(第2シグナル)を基準とし補正した。
通常、ラジカル量の相対比較において、基準となるMn2+由来シグナルの面積はMn2+(第3シグナル)を用いる。しかし、有機ラジカル由来ラジカルのスペクトルと、Mn2+(第3シグナル)とが重なるため、今回の測定ではすべてMn2+(第2シグナル)を用いた(外部標準メモリ=700)。
また、有機ラジカル由来シグナルがMn2+(第3シグナル)と重なった場合は、外部標準メモリ=0のESRスペクトルを用いて算出した。
以下に、実施例および比較例で用いた成分を示す。
[環状オレフィン系樹脂(A)]
A−1:エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体(エチレン含量:66mol%、ガラス転移温度:145℃、極限粘度[η]:0.60dl/g)
A−2:エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体(エチレン含量:44mol%、ガラス転移温度:135℃、極限粘度[η]:0.60dl/g)
ここで、上記の環状オレフィン系樹脂(A)は、国際公開第2008/068897号の実施例に記載の合成例に準じた方法によりそれぞれ合成した。ここで、各環状オレフィン系樹脂(A)のコモノマー(環状オレフィンモノマー)の種類並びに含有量および各物性は表1に示した。表1中、TDはテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンを示し、NBはビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンを示す。
TDは上記式[I]において、n=0、m=1、R〜R18が水素原子であり、NBは上記式[I]において、n=0、m=0、R〜R18が水素原子である。
[環状オレフィン系重合体以外の成分]
B−1:芳香族環状構造含有オリゴマー(重量平均分子量:2000、溶解度パラメータ:19.3MPa1/2
B−2:芳香族環状構造含有オリゴマー(重量平均分子量:2105、溶解度パラメータ:19.6MPa1/2
B−3:芳香族環状構造含有オリゴマー(重量平均分子量:2590、溶解度パラメータ:19.7MPa1/2
B−4:ポリスチレン(重量平均分子量:35000、溶解度パラメータ:20.1MPa1/2
[合成例1:芳香族環状構造含有オリゴマー(B−1)の合成]
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、α−メチルスチレンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:モノマーの合計/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。このとき、触媒量は全モノマーに対し0.20wt%の割合とし、モノマーの供給量が1.0リットル/時間となるように原料を供給した。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、芳香族環状構造含有オリゴマー(B−1)を得た。得られた芳香族環状構造含有オリゴマー(B−1)は、重量平均分子量Mw=2000であった。
[合成例2:芳香族環状構造含有オリゴマー(B−2)の合成]
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、イソプロペニルトルエン、インデンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:モノマーの合計/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。このとき、イソプロペニルトルエンとインデンの重量比は50/50、触媒量は全モノマーに対し0.20wt%の割合とし、モノマーの供給量が1.0リットル/時間となるように原料を供給した。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、芳香族環状構造含有オリゴマー(B−2)を得た。得られた芳香族環状構造含有オリゴマー(B−2)は、重量平均分子量Mw=2105であった。
[合成例3:芳香族環状構造含有オリゴマー(B−3)の合成]
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、α−メチルスチレン、スチレンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:モノマーの合計/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。このとき、α−メチルスチレンとスチレンの重量比は63/37、触媒量は全モノマーに対し0.11wt%の割合とし、モノマーの供給量が1.0リットル/時間となるように原料を供給した。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、芳香族環状構造含有オリゴマー(B−3)を得た。得られた芳香族環状構造含有オリゴマー(B−3)は、重量平均分子量Mw=2590であった。
[重量平均分子量]
ここで、環状オレフィン系重合体以外の成分の重量平均分子量は、GPC測定により測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。GPC測定は以下の条件で行った。
装置:GPC HLC−8320(東ソー株式会社製)
溶剤:テトラヒドロフラン
カラム:TSKgel G7000×1、TSKgel G4000×2、TSKgel G2000×1(何れも東ソー社製)
流速:1.0ml/分
試料:20mg/mL テトラヒドロフラン溶液
温度:室温
標準ポリスチレン:東ソー社製標準ポリスチレン
[溶解度パラメータ]
環状オレフィン系重合体以外の成分の溶解度パラメータは、Materials StudioのSynthiaモジュールを用いて計算したFedorsのパラメータを採用した。
[極限粘度]
極限粘度([η])は、135℃、デカリン中で測定した。
具体的には、樹脂(約20mg)をデカリン溶媒(15mL)に溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒(5mL)を追加して希釈し、その後、前述のやり方と同様に比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、サンプルの濃度(C)を0に外挿したときのηsp/Cの値を極限粘度[η]とした。
極限粘度[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
[ガラス転移温度Tg(℃)]
以下の条件でDSC測定を行い求めた。
・装置:エスアイアイナノテクノロジー社製、DSC7000
・測定条件:窒素雰囲気下、室温から10℃/分の昇温速度で260℃まで昇温した後に5分間保持した。次いで、10℃/分の降温速度で30℃まで降温した後に5分保持した。その後、10℃/分の昇温速度で260℃まで昇温する過程のDSC曲線を取得した。
得られたDSC曲線において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度を、ガラス転移温度とした。
Figure 2019218118
Figure 2019218118
以上のように、実施例1〜6で得られた環状オレフィン系樹脂組成物により構成された成形体(シート)は透明性および、耐ガンマ線性能の性能バランスに優れていた。一方、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の含有量が多い比較例1や、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の代わりにポリスチレンを含む比較例2の成形体は透明性に劣っていた。芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)を含まない比較例3は、ラジカル発生量や変色について、実施例よりも劣る結果であった。

Claims (10)

  1. 環状オレフィン系樹脂(A)と、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)と、を含む環状オレフィン系樹脂組成物を含む医療用容器であって、
    前記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の重量平均分子量(Mw)が500以上5000以下であり、
    前記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の溶解度パラメータが18.0MPa1/2以上21.0MPa1/2以下であり、
    前記環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる前記環状オレフィン系樹脂(A)および前記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の合計を100質量部としたとき、前記環状オレフィン系樹脂(A)の含有量が70質量部以上99質量部以下であり、前記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の含有量が1質量部以上30質量部以下である医療用容器。
  2. 請求項1に記載の医療用容器において、
    前記環状オレフィン系樹脂(A)が、
    下記の[A−1]、[A−2]、[A−3]および[A−4]から選択される少なくとも一種を含む医療用容器。
    [A−1]炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと下記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体;
    Figure 2019218118
    (前記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子またはハロゲンで置換されていてもよい炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とで、アルキリデン基を形成していてもよい。)、
    Figure 2019218118
    (前記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2であり、R〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、RおよびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のときR15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)、
    [A−2]前記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体、
    [A−3]前記開環重合体または共重合体[A−2]の水素化物、
    [A−4]前記[A−1]、[A−2]または[A−3]のグラフト変性物。
  3. 請求項1または2に記載の医療用容器において、
    前記環状オレフィン系樹脂(A)中の環状オレフィンが、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンから選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する繰り返し単位である医療用容器。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医療用容器において、
    前記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)がスチレン系化合物およびインデン系化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の繰り返し単位を有する医療用容器。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の医療用容器において、
    シリンジまたは薬液保存容器である、医療用容器。
  6. 医療用容器を形成するための環状オレフィン系樹脂組成物であって、
    環状オレフィン系樹脂(A)と、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)と、を含み、
    前記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の重量平均分子量(Mw)が500以上5000以下であり、
    前記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の溶解度パラメータが18.0MPa1/2以上21.0MPa1/2以下であり、
    前記環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる前記環状オレフィン系樹脂(A)および前記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の合計を100質量部としたとき、前記環状オレフィン系樹脂(A)の含有量が70質量部以上99質量部以下であり、前記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の含有量が1質量部以上30質量部以下である医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物。
  7. 請求項6に記載の医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物において、
    前記環状オレフィン系樹脂(A)が、
    下記の[A−1]、[A−2]、[A−3]および[A−4]から選択される少なくとも一種を含む医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物。
    [A−1]炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと下記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体;
    Figure 2019218118
    (前記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子またはハロゲンで置換されていてもよい炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とで、アルキリデン基を形成していてもよい。)、
    Figure 2019218118
    (前記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2であり、R〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、RおよびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のときR15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)、
    [A−2]前記式[I]または[II]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体、
    [A−3]前記開環重合体または共重合体[A−2]の水素化物、
    [A−4]前記[A−1]、[A−2]または[A−3]のグラフト変性物。
  8. 請求項6または7に記載の医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物において、
    前記環状オレフィン系樹脂(A)中の環状オレフィンが、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンから選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する繰り返し単位である医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物。
  9. 請求項6乃至8のいずれか一項に記載の医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物において、
    前記芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)がスチレン系化合物およびインデン系化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の繰り返し単位を有する医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物。
  10. 請求項6乃至9のいずれか一項に記載の医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物において、
    前記医療用容器がシリンジまたは薬液保存容器である医療用容器用環状オレフィン系樹脂組成物。
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