JP2020036711A - 医療用容器および医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明者らの検討によれば、従来の環状オレフィン系樹脂を用いた医療用容器においては、電子線あるいはガンマ線照射によって変色が発生しうる場合があることが明らかになった。
炭素原子数が2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位(A)と、
環状オレフィンから導かれる構成単位(B)と、
一般式(C−1)で表される芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位(C)と、
を有する環状オレフィン系共重合体を含む医療用容器。
上記式(C−1)及び(D−1)中、m、nおよびqはいずれも0または正の整数であり、
mが2以上の場合、複数あるR1、R4はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数あるR6、R9はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
上記式(D−1)で表されるビニル基を有する炭化水素基以外のR1〜R10、並びに、R21、及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
R1とR2、R2とR3、R3とR4、R6とR7、R7とR8、R8とR9は互いに結合して単環を形成していてもよく、該単環が二重結合を有していてもよい。)
[2]
上記[1]に記載の医療用容器において、
上記環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(A)、上記構成単位(B)および上記構成単位(C)の合計含有量を100モル%としたとき、上記環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(A)の含有量が10モル%以上80モル%以下である医療用容器。
[3]
上記[1]または[2]に記載の医療用容器において、
上記環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(B)および上記構成単位(C)の合計含有量を100モル%としたとき、上記環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(C)の含有量が1.0モル%以上95モル%以下である医療用容器。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の医療用容器において、
上記環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(B)および上記構成単位(C)の合計含有量を100モル%としたとき、上記環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(C)の含有量が1.5モル%以上30モル%以下である医療用容器。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の医療用容器において、
上記環状オレフィンが、下記式(B−1)で示される化合物および下記式(B−2)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含む医療用容器。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の医療用容器において、
上記一般式(C−1)及び(D−1)において、m、nおよびqがいずれも0、1あるいは2である医療用容器。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の医療用容器において、
示差走査熱量計(DSC)で測定される、上記環状オレフィン系共重合体のガラス転移温度(Tg)が100℃以上180℃以下である医療用容器。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の医療用容器において、
上記環状オレフィン系共重合体の135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.05dl/g以上5.0dl/g以下である医療用容器。
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の医療用容器において、
上記芳香族ビニル化合物が、スチレン、アリルベンゼン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンおよび9−ビニルアントラセンから選択される少なくとも一種を含む医療用容器。
[10]
上記[1]乃至[9]のいずれか一つに記載の医療用容器において、
シリンジまたは薬液保存容器である医療用容器。
[11]
医療用容器を形成するための環状オレフィン系共重合体組成物であって、
炭素原子数が2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位(A)と、
環状オレフィンから導かれる構成単位(B)と、
一般式(C−1)で表される芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位(C)と、
を有する環状オレフィン系共重合体を含む医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。
上記式(C−1)及び(D−1)中、m、nおよびqはいずれも0または正の整数であり、
mが2以上の場合、複数あるR1、R4はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数あるR6、R9はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
上記式(D−1)で表されるビニル基を有する炭化水素基以外のR1〜R10、並びに、R21、及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
R1とR2、R2とR3、R3とR4、R6とR7、R7とR8、R8とR9は互いに結合して単環を形成していてもよく、該単環が二重結合を有していてもよい。)
[12]
上記[11]に記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
上記環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(A)、上記構成単位(B)および上記構成単位(C)の合計含有量を100モル%としたとき、上記環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(A)の含有量が10モル%以上80モル%以下である医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。
[13]
上記[11]または[12]に記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
上記環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(B)および上記構成単位(C)の合計含有量を100モル%としたとき、上記環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(C)の含有量が1.0モル%以上95モル%以下である医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。
[14]
上記[11]乃至[13]のいずれか一つに記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
上記環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(B)および上記構成単位(C)の合計含有量を100モル%としたとき、上記環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(C)の含有量が1.5モル%以上30モル%以下である医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。
[15]
上記[11]乃至[14]のいずれか一つに記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
上記環状オレフィンが、下記式(B−1)で示される化合物および下記式(B−2)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含む医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。
[16]
上記[11]乃至[15]のいずれか一つに記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
上記一般式(C−1)及び(D−1)において、m、nおよびqがいずれも0、1あるいは2である医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。
[17]
上記[11]乃至[16]のいずれか一つに記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
示差走査熱量計(DSC)で測定される、上記環状オレフィン系共重合体のガラス転移温度(Tg)が100℃以上180℃以下である医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。
[18]
上記[11]乃至[17]のいずれか一つに記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
上記環状オレフィン系共重合体の135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.05dl/g以上5.0dl/g以下である医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。
[19]
上記[11]乃至[18]のいずれか一つに記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
上記芳香族ビニル化合物が、スチレン、アリルベンゼン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンおよび9−ビニルアントラセンから選択される少なくとも一種を含む医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。
[20]
上記[11]乃至[19]のいずれか一つに記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
上記医療用容器がシリンジまたは薬液保存容器である医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。
まず、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(P)について説明する。
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(P)は、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位(A)と、環状オレフィンから導かれる構成単位(B)と、下記式(C−1)で表される芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位(C)と、を有する。
上記式(C−1)及び(D−1)中、m、nおよびqはいずれも0または正の整数であり、
mが2以上の場合、複数あるR1、R4はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数あるR6、R9はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
上記式(D−1)で表されるビニル基を有する炭化水素基以外のR1〜R10、並びに、R21、及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
R1とR2、R2とR3、R3とR4、R6とR7、R7とR8、R8とR9は互いに結合して単環を形成していてもよく、該単環が二重結合を有していてもよい。)
以上から、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(P)によれば、電子線あるいはガンマ線照射による変色が少なく、かつ、透明性に優れる医療用容器を得ることが可能となる。
本実施形態に係る構成単位(A)は炭素原子数が2〜20のα−オレフィン由来の構成単位である。
ここで、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとしては、直鎖状でも分岐状でもよく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素原子数が2〜20の直鎖状α−オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン等の炭素原子数が4〜20の分岐状α−オレフィン等が挙げられる。これらの中では、炭素原子数が2〜4の直鎖状α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。このような直鎖状または分岐状のα−オレフィンは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記構成単位(A)の含有量が上記下限値以上であることにより、医療用容器の耐熱性や寸法安定性を向上させることができる。また、上記構成単位(A)の含有量が上記上限値以下であることにより、得られる医療用容器の透明性等を向上させることができる。
本実施形態において、構成単位(A)の含有量は、例えば、1H−NMRまたは13C−NMRによって測定することができる。
本実施形態に係る構成単位(B)は環状オレフィン由来の構成単位である。本実施形態に係る構成単位(B)としては、医療用容器のガスバリア性をさらに向上させる観点から、下記式(B−1)で示される化合物由来の構成単位および下記式(B−2)で示される化合物由来の構成単位から選択される少なくとも一種の構成単位を含むことが好ましい。
ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
R1〜R18ならびにRaおよびRbは炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。
また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル基およびナフチル基等が挙げられる。これらの炭化水素基はハロゲン原子で置換されていてもよい。
本実施形態において、構成単位(B)の含有量は、例えば、1H−NMRまたは13C−NMRによって測定することができる。
本実施形態に係る構成単位(C)は上記一般式(C−1)で表される芳香族ビニル化合物由来の構成単位である。
本実施形態に係る芳香族ビニル化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記式(C−1)及び(D−1)中、m、nおよびqはいずれも0または正の整数であり、
mが2以上の場合、複数あるR1、R4はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数あるR6、R9はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
上記式(D−1)で表されるビニル基を有する炭化水素基以外のR1〜R10、並びに、R21、及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
R1とR2、R2とR3、R3とR4、R6とR7、R7とR8、R8とR9は互いに結合して単環を形成していてもよく、該単環が二重結合を有していてもよい。
上記式(C−1)中のR1〜R10で表されるRのうち上記式(D−1)で表されるビニル基を有する炭化水素基以外のR1〜R10、並びに、上記式(D−1)中のR21、及びR22は、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
本実施形態において、構成単位(B)および構成単位(C)の含有量は、例えば、1H−NMRまたは13C−NMRによって測定することができる。
極限粘度[η]が上記下限値以上であると、医療用容器の機械的強度を向上させることができる。また、極限粘度[η]が上記上限値以下であると、成形性を向上させることができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物は医療用容器を形成するための環状オレフィン系共重合体組成物であって、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(P)を含み、必要に応じて、環状オレフィン系共重合体(P)以外のその他の成分を含んでもよい。なお、本実施形態において、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物が環状オレフィン系共重合体(P)のみしか含まない場合も環状オレフィン系共重合体組成物と呼ぶ。
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物は、環状オレフィン系共重合体(P)を上記の比率で含むことにより、得られる医療用容器について、医療用容器に求められる良好な透明性を満足しながら、耐ガンマ線または耐電子線性能をより一層向上させることができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物には、必要に応じて、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、塩酸吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、天然油、合成油、ワックス、有機または無機の充填剤等を本発明の目的を損なわない程度に配合することができ、その配合割合は適宜量である。
ヒンダードアミン系化合物[D](以下、単に、化合物[D]、あるいは、[D]とも表記する)としては、ヒンダードアミン構造(具体的には、以下の式(b1)で表される部分構造)を、1つまたは2つ以上有する化合物を適宜用いることができる。
式(b1)中、*は、他の化学構造との結合手を表す。
770(以上、BASF社製)、Cyasorb UV−3853、Cyasorb UV−3529、Cyasorb UV−3346、Cyasorb UV−531(以上、Cytec社製)、アデカスタブ LA−52、アデカスタブ LA−57、アデカスタブ LA−63P、アデカスタブ LA−68、アデカスタブ LA−72、アデカスタブ LA−77Y、アデカスタブ LA−81、アデカスタブ LA−82、アデカスタブ LA−87(以上、ADEKA社製)等の市販品を用いることができる。
この化合物は、典型的にはポリマーまたはオリゴマーである。この化合物のような、ポリマーまたはオリゴマーである化合物[D]を用いることで、環状オレフィン系共重合体(P)との相溶性を高められ、組成物をより均一にすることができると考えられる。また、照射により特性吸収を有するような構造に変化しにくいと考えられる。これにより、電子線あるいはガンマ線照射による変色をより少なくし、また、電子線あるいはガンマ線照射によるラジカルの発生をより少なくできると考えられる。
X1およびX2の2価の連結基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、これらの基が連結された基、などを挙げることができる。これらの中でも、アルキレン基が好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましい。
一般式(b2)で表される構造単位を有する化合物については、市販品を用いてもよいし、対応するジオールおよびジカルボン酸などを縮重合させることで得てもよい。
組成物中の化合物[D]の含有量は、環状オレフィン系共重合体(P)の含有量を100質量部としたとき、例えば0.01〜2.0質量部、好ましくは0.05〜1.5質量部、より好ましくは0.10〜1.0質量部である。この範囲とすることで、他の性能(例えば成形性や機械強度など)を維持しつつ、電子線あるいはガンマ線照射による変色、ラジカルの発生などを効果的に低減することができる。
使用可能なリン系化合物[E](以下、単に、化合物[E]、または、[E]とのみ表記することもある)については、特に制限は無い。例えば、公知のリン系酸化防止剤を用いることができる。
具体的には、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(C12〜C15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(イソデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジメチルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。
より具体的には、化合物[E]は、好ましくは、下記一般式(c1)、(c2)または(c3)で表される化合物である。
R1は、複数ある場合はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、
R2は、複数ある場合はそれぞれ独立に、芳香族基を表し、
R3は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、
Xは、単結合または2価の連結基を表す。
R2の芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、これらがアルキル基等で置換された基などが挙げられる。
R3の炭素数は、好ましくは1〜30、より好ましくは3〜20、さらに好ましくは6〜18である。
R3として好ましくはアリール基またはアラルキル基であり、より好ましくはアラルキル基である。これらアリール基またはアラルキル基は、さらに置換基(例えば、炭素数1〜6のアルキル基やヒドロキシ基など)で置換されていてもよい。
Xが2価の連結基である場合、その具体例としては、アルキレン基(メチレン基など)やエーテル基(−O−)などが挙げられる。Xとして好ましくは単結合である。
組成物中の化合物[E]の含有量は、環状オレフィン系共重合体(P)の量を100質量部としたとき、例えば0.01〜1.5質量部、好ましくは0.02〜1.0質量部、より好ましくは0.05〜0.5質量部である。この範囲とすることで、他の性能(例えば成形性や機械強度など)を維持しつつ、電子線あるいはガンマ線照射による変色、ラジカルの発生などを効果的に低減することができる。
次に、本発明に係る実施形態の医療用容器について説明する。
本実施形態に係る医療用容器は本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(P)または実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物を含んでいる。
本実施形態に係る医療用容器は本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(P)を含むため、透明性および、耐ガンマ線または耐電子線性能の性能バランスに優れている。この医療用容器は、電子線あるいはガンマ線照射による変色が少ない。
ここで、本発明者らの別の検討によれば、従来の医療用容器は、電子線あるいはガンマ線照射によってラジカルが発生する場合があることが明らかになった。これにより、医療用容器に内容物の充填後に内容物が変質するリスクがあることが懸念される。
これに対して、本実施形態に係る医療用容器は、電子線あるいはガンマ線照射によるラジカルの発生量を少なくすることができる。そのため、本実施形態に係る医療用容器によれば、内容物が変質するリスクを低減することが可能である。
また、さらに光線透過率が良好であることが好ましい。光線透過率は用途に応じて分光光線透過率または全光線透過率により規定される。
なお、公知の反射防止膜を表面に設けることにより、光線透過率をさらに向上させることができる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
[製造例1]
攪拌装置を備えた容積500mlのガラス製反応容器に不活性ガスとして窒素を100Nl/hrの流量で30分間流通させた。その後、ガラス製反応容器に、シクロヘキサン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(9.8mmol、以下、テトラシクロドデセンとも呼ぶ。)、スチレン(5.4mmol)を加えた後に、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(0.70mmol、濃度1.0mM/ml)を加えた。次いで回転数600rpmで重合溶媒を攪拌しながら溶媒温度を50℃に昇温した。溶媒温度が所定の温度に達した後、流通ガスを窒素からエチレンに切り替え、エチレンを50Nl/hr、水素を0.05Nl/hrの供給速度で反応容器に流通させ、10分経過した後に、イソプロピリデンビスインデニルジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(0.0020mmol)、トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレート(0.0080mmol)のトルエン溶液をガラス製反応容器に添加し、重合を開始させた。
10分間経過した後、メタノールを5ml添加して重合を停止させ、エチレン、テトラシクロドデセン、およびスチレンの共重合体を含む重合溶液を得た。その後、重合溶液を別に用意した容積2Lのビーカーに移液し、さらに濃塩酸5mlと攪拌子を加え、強攪拌下で2時間接触させ脱灰操作を行った。この重合液に対して体積で約3倍のアセトンを入れたビーカーに脱灰後の重合溶液を攪拌下加えて共重合体を析出させ、さらに析出した共重合体を濾過により濾液と分離した。得られた溶媒を含む重合体を130℃で10時間減圧乾燥を行ったところ、白色パウダー状のエチレン・テトラシクロドデセン・スチレン共重合体(環状オレフィン系共重合体(P−1))を得た。
環状オレフィン系共重合体を構成する各構成単位の含有量の値が表1に記載の値になるように調整した以外は、製造例1と同様に操作を行い、表1に記載の環状オレフィン系共重合体(P−2)〜(P−6)をそれぞれ得た。
各実施例および比較例において、各種物性は下記の方法によって測定または評価し、得られた結果を表1に示した。
エチレン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンおよび芳香族ビニル化合物の含有量は、日本電子社製「ECA500型」核磁気共鳴装置を用い、下記条件で測定することにより行った。
溶媒:重テトラクロロエタン
サンプル濃度:50〜100g/l−solvent
パルス繰り返し時間:5.5秒
積算回数:6000〜16000回
測定温度:120℃
上記のような条件で測定した13C−NMRスペクトルにより、エチレン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンおよび芳香族ビニル化合物の組成をそれぞれ定量した。
以下の条件でDSC測定を行い求めた。
・装置:エスアイアイナノテクノロジー社製、DSC7000
・測定条件:窒素雰囲気下、室温から10℃/分の昇温速度で260℃まで昇温した後に5分間保持した。次いで、10℃/分の降温速度で30℃まで降温した後に5分保持した。その後、10℃/分の昇温速度で260℃まで昇温する過程のDSC曲線を取得した。
得られたDSC曲線において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度を、ガラス転移温度とした。
極限粘度([η])は、135℃、デカリン中で測定した。
具体的には、樹脂(約20mg)をデカリン溶媒(15mL)に溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒(5mL)を追加して希釈し、その後、前述のやり方と同様に比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、サンプルの濃度(C)を0に外挿したときのηsp/Cの値を極限粘度[η]とした。
極限粘度[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
[ペレット化]
得られた環状オレフィン系共重合体(P−1)〜(P−6)を、プラスチック工学研究所製の2軸押出機BT−30(スクリュー径30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度270℃、樹脂押出量80g/minおよびスクリュー回転数200rpmの条件で造粒し、各種測定用ペレットを得た。
上記で得られたペレットを、東芝機械社製の射出成形機IS−55を用いて、シリンダ温度=270〜290℃、射出速度=70〜90%、スクリュー回転数70〜100rpm、金型温度120℃の条件にて射出成形し、厚み2mm射出角板試験片を作製した。
上記で得られた厚み2mm角板試験片に、ガンマ線20キログレイまたは50キログレイを照射した。
得られた厚み2mmの角板試験片について、以下の基準で透明性を評価した。
〇:目視で試験片が白濁しないもの
×:目視で試験片が白濁しているもの
ガンマ線照射直後の試験片を、20mmの厚みで白色紙上に積み上げた。このときの色相および明度を目視評価した。色相はマンセル表色系に準じた。評価の基準は以下のとおりとした。
○(良い):明度が7〜9.5で、かつ、色相が5.0GY〜10GYの間である。
△(普通):明度が5〜9.5で、かつ、色相が5Y〜5GYの間である。ただし、上記の○(良好)に該当する場合を除く。
×(悪い):明度が0以上5未満である、かつ/または、色相が2.5Y〜5Yの間である。ただし、上記の△(普通)に該当する場合を除く。
明度については、その値が大きいほうが、白色に近く、変色が抑えられていることが明らかである。
色相については、特に医療容器として用いることを考慮した場合、黄色は患者に不潔な印象を与えるとして敬遠されることから、黄色より緑色のほうが好ましいとした。
ガンマ線照射5日後および1カ月後の試料のラジカル量は、電子スピン共鳴法(Electron Spin Rssonance(ESR))により測定した。
具体的には、20キログレイおよび50キログレイの線量のガンマ線を照射した5日後および1カ月後の試験片を約6mg切り出し、それを試験管(詳細は以下)に入れて、以下条件でESRスペクトルを測定した。
・共振周波数:9.2GHz
・マイクロ波入力:1mW
・中心磁場:326.5mT
・掃引幅:±15mT
・変調周波数:100kHz
・掃引時間:8min.
・時定数:0.1sec
・増幅度:25
・試料管:Xバンド対応の先端部石英の試料管
・外部照準:酸化マグネシウムに担持されたMn2+標準サンプル
・外部標準メモリ:0、700
・測定温度:室温
・測定雰囲気:大気
通常、ラジカル量の相対比較において、基準となるMn2+由来シグナルの面積はMn2+(第3シグナル)を用いる。しかし、有機ラジカル由来ラジカルのスペクトルと、Mn2+(第3シグナル)とが重なるため、今回の測定ではすべてMn2+(第2シグナル)を用いた(外部標準メモリ=700)。
また、有機ラジカル由来シグナルがMn2+(第3シグナル)と重なった場合は、外部標準メモリ=0のESRスペクトルを用いて算出した。
Claims (20)
- 炭素原子数が2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位(A)と、
環状オレフィンから導かれる構成単位(B)と、
一般式(C−1)で表される芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位(C)と、
を有する環状オレフィン系共重合体を含む医療用容器。
上記式(C−1)及び(D−1)中、m、nおよびqはいずれも0または正の整数であり、
mが2以上の場合、複数あるR1、R4はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数あるR6、R9はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
上記式(D−1)で表されるビニル基を有する炭化水素基以外のR1〜R10、並びに、R21、及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
R1とR2、R2とR3、R3とR4、R6とR7、R7とR8、R8とR9は互いに結合して単環を形成していてもよく、該単環が二重結合を有していてもよい。) - 請求項1に記載の医療用容器において、
前記環状オレフィン系共重合体中の前記構成単位(A)、前記構成単位(B)および前記構成単位(C)の合計含有量を100モル%としたとき、前記環状オレフィン系共重合体中の前記構成単位(A)の含有量が10モル%以上80モル%以下である医療用容器。 - 請求項1または2に記載の医療用容器において、
前記環状オレフィン系共重合体中の前記構成単位(B)および前記構成単位(C)の合計含有量を100モル%としたとき、前記環状オレフィン系共重合体中の前記構成単位(C)の含有量が1.0モル%以上95モル%以下である医療用容器。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医療用容器において、
前記環状オレフィン系共重合体中の前記構成単位(B)および前記構成単位(C)の合計含有量を100モル%としたとき、前記環状オレフィン系共重合体中の前記構成単位(C)の含有量が1.5モル%以上30モル%以下である医療用容器。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の医療用容器において、
前記環状オレフィンが、下記式(B−1)で示される化合物および下記式(B−2)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含む医療用容器。
- 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の医療用容器において、
前記一般式(C−1)及び(D−1)において、m、nおよびqがいずれも0、1あるいは2である医療用容器。 - 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医療用容器において、
示差走査熱量計(DSC)で測定される、前記環状オレフィン系共重合体のガラス転移温度(Tg)が100℃以上180℃以下である医療用容器。 - 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の医療用容器において、
前記環状オレフィン系共重合体の135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.05dl/g以上5.0dl/g以下である医療用容器。 - 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の医療用容器において、
前記芳香族ビニル化合物が、スチレン、アリルベンゼン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンおよび9−ビニルアントラセンから選択される少なくとも一種を含む医療用容器。 - 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の医療用容器において、
シリンジまたは薬液保存容器である医療用容器。 - 医療用容器を形成するための環状オレフィン系共重合体組成物であって、
炭素原子数が2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位(A)と、
環状オレフィンから導かれる構成単位(B)と、
一般式(C−1)で表される芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位(C)と、
を有する環状オレフィン系共重合体を含む医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。
上記式(C−1)及び(D−1)中、m、nおよびqはいずれも0または正の整数であり、
mが2以上の場合、複数あるR1、R4はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合、複数あるR6、R9はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
上記式(D−1)で表されるビニル基を有する炭化水素基以外のR1〜R10、並びに、R21、及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
R1とR2、R2とR3、R3とR4、R6とR7、R7とR8、R8とR9は互いに結合して単環を形成していてもよく、該単環が二重結合を有していてもよい。) - 請求項11に記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
前記環状オレフィン系共重合体中の前記構成単位(A)、前記構成単位(B)および前記構成単位(C)の合計含有量を100モル%としたとき、前記環状オレフィン系共重合体中の前記構成単位(A)の含有量が10モル%以上80モル%以下である医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。 - 請求項11または12に記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
前記環状オレフィン系共重合体中の前記構成単位(B)および前記構成単位(C)の合計含有量を100モル%としたとき、前記環状オレフィン系共重合体中の前記構成単位(C)の含有量が1.0モル%以上95モル%以下である医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。 - 請求項11乃至13のいずれか一項に記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
前記環状オレフィン系共重合体中の前記構成単位(B)および前記構成単位(C)の合計含有量を100モル%としたとき、前記環状オレフィン系共重合体中の前記構成単位(C)の含有量が1.5モル%以上30モル%以下である医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。 - 請求項11乃至14のいずれか一項に記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
前記環状オレフィンが、下記式(B−1)で示される化合物および下記式(B−2)で示される化合物から選択される少なくとも一種を含む医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。
- 請求項11乃至15のいずれか一項に記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
前記一般式(C−1)及び(D−1)において、m、nおよびqがいずれも0、1あるいは2である医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。 - 請求項11乃至16のいずれか一項に記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
示差走査熱量計(DSC)で測定される、前記環状オレフィン系共重合体のガラス転移温度(Tg)が100℃以上180℃以下である医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。 - 請求項11乃至17のいずれか一項に記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
前記環状オレフィン系共重合体の135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.05dl/g以上5.0dl/g以下である医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。 - 請求項11乃至18のいずれか一項に記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
前記芳香族ビニル化合物が、スチレン、アリルベンゼン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンおよび9−ビニルアントラセンから選択される少なくとも一種を含む医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。 - 請求項11乃至19のいずれか一項に記載の医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物において、
前記医療用容器がシリンジまたは薬液保存容器である医療用容器用環状オレフィン系共重合体組成物。
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