JP2019212794A - 蓄電デバイス - Google Patents

蓄電デバイス Download PDF

Info

Publication number
JP2019212794A
JP2019212794A JP2018108651A JP2018108651A JP2019212794A JP 2019212794 A JP2019212794 A JP 2019212794A JP 2018108651 A JP2018108651 A JP 2018108651A JP 2018108651 A JP2018108651 A JP 2018108651A JP 2019212794 A JP2019212794 A JP 2019212794A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrode
peak intensity
storage device
active material
layered structure
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018108651A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7181709B2 (ja
Inventor
由佳 牧野
Yuka Makino
由佳 牧野
信宏 荻原
Nobuhiro Ogiwara
信宏 荻原
幸義 上野
Yukiyoshi Ueno
幸義 上野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp, Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2018108651A priority Critical patent/JP7181709B2/ja
Publication of JP2019212794A publication Critical patent/JP2019212794A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7181709B2 publication Critical patent/JP7181709B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Electric Double-Layer Capacitors Or The Like (AREA)
  • Secondary Cells (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Abstract

【課題】層状構造体を電極活物質に用いたものにおいて、充放電容量が大きく、クーロン効率の良好な蓄電デバイスを提供する。【解決手段】蓄電デバイス20は、正極22と、芳香族ジカルボン酸金属塩の層状構造体を電極活物質として有する負極23と、一般式(1)で表される化合物を1.0質量%未満の範囲で含む非水電解液27とを備えたものである。この層状構造体は、芳香族ジカルボン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を噴霧乾燥装置を用いて噴霧乾燥することにより得られたものである。【選択図】図1

Description

本明細書で開示する発明は、蓄電デバイスに関する。
従来、芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を有する層状構造体を蓄電デバイスの負極に用いることが提案されている(例えば特許文献1,2)。こうした負極では、充放電電位が黒鉛負極よりも高いため、リチウム金属の析出などが生じにくいという利点がある。また、こうした負極を用いた蓄電デバイスにおいて、リチウムビスオキサレートボラート(LiBOB)などの添加剤を0.5質量%より多く含む非水電解液を用い、内部抵抗を低減させることが提案されている(特許文献3)。
特開2017−22186号公報 特開2017−191864号公報 特開2016−219204号公報
しかしながら、特許文献1〜3の蓄電デバイスでは、充放電容量が小さいことや、クーロン効率が低いことがあった。このため、層状構造体を電極活物質に用いたものにおいて、充放電容量が大きく、クーロン効率の良好な蓄電デバイスを提供することが望まれていた。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、層状構造体を電極活物質に用いたものにおいて、充放電容量が大きく、クーロン効率の良好な蓄電デバイスを提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、噴霧乾燥によって得られた芳香族ジカルボン酸金属塩の層状構造体を含む電極と、所定の化合物を1.0質量%未満の範囲で含む非水電解液と、を用いることに想到した。そして、こうした電極及び非水電解液を用いることで、充放電容量が大きく、クーロン効率の良好な蓄電デバイスが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本開示の蓄電デバイスは、
芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体の剥片を電極活物質として含む電極と、
一般式(1)で表される化合物を1.0質量%未満の範囲で含み、キャリアイオンを伝導する非水電解液と、
を備えたものである。
(但し、Mは、遷移元素、周期表の13族、14族又は15族元素を表す;Aa+は金属イオンプロトン又はオニウムイオン、aは1〜3の整数、pはb/a;bは1〜3の整数、mは1〜4の整数、nは0〜8の整数、qは0又は1を表す;R1は、炭素数1〜10のアルキレン、炭素数1〜10のハロゲン化アルキレン、炭素数6〜20のアリーレン又は炭素数6〜20のハロゲン化アリーレン(これらのアルキレン及びアリーレンはその構造中に置換基、ヘテロ原子を持っていてもよく、またqが1でmが2〜4のときにはm個のR1はそれぞれが結合していてもよい)を表す;R2は、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル、炭素数6〜20のアリール、炭素数6〜20のハロゲン化アリール(これらのアルキル及びアリールはその構造中に置換基、ヘテロ原子を持っていてもよく、またnが2〜8のときにはn個のR2はそれぞれが結合して環を形成してもよい)又は−X33を表す;X1,X2及びX3は、それぞれが独立でO,S又はNR4を表す;R3及びR4は、それぞれが独立で水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル、炭素数6〜20のアリール、炭素数6〜20のハロゲン化アリール(これらのアルキル及びアリールはその構造中に置換基、ヘテロ原子を持っていてもよく、R3又はR4は複数個存在する場合にはそれぞれが結合して環を形成してもよい)を表す)
本開示の蓄電デバイスでは、層状構造体を電極活物質に用いたものにおいて、充放電容量が大きく、クーロン効率の良好な蓄電デバイスを提供できる。
蓄電デバイス20の一例を示す模式図。 溶媒乾固法と噴霧乾燥法により作製した活物質と電極の説明図。 溶媒乾固法と噴霧乾燥法により作製した電極と電極上の被膜の説明図。 参考例1のSEM写真。 参考例5のSEM写真。 参考例1、2、5、6、9の電極活物質のXRD測定結果。 参考例3、4、7、8、9の電極活物質のXRD測定結果。 参考例1〜9の電極表面のSEM写真。 参考例1、2、9の電極断面の酸素分布マップ。 参考例1〜9の電極のXRD測定結果。 参考例1〜9の充放電サイクルでの充放電曲線。 参考例1〜9の放電容量の評価結果。 参考例1〜9の充放電カーブから得られた微分曲線。 参考例1〜9のIV抵抗の評価結果。 ピーク強度比P(300)/P(111),P(300)/P(011)と、IV抵抗との関係図。 ピーク強度比P(100)/P(111),P(100)/P(011)と、IV抵抗との関係図。 ピーク強度比P(100)/P(300)と、IV抵抗との関係図。 層状構造体の結晶面(011)、(111)、(100)、(300)の説明図。 実施例1〜3及び比較例1の放電容量の変化を示すグラフ。 実施例1〜3及び比較例1のクーロン効率の変化を示すグラフ。 LiBOBの添加量と初期容量との関係を示すグラフ。 LiBOBの添加量と放電容量及びクーロン効率との関係を示すグラフ。 実施例1〜3及び比較例1〜3の1サイクル目の放電時の充放電カーブ。 実施例1〜3及び比較例1〜3の電位変化に対する電流の変化をプロットしたグラフ。
本開示の蓄電デバイスは、所定の層状構造体の剥片を電極活物質として含む電極と、一般式(1)で表される化合物を1.0質量%未満の範囲で含む非水電解液と、を備えている。この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、二次電池(リチウムイオン電池など)としてもよい。この蓄電デバイスにおいて、上述した電極は、正極負極のいずれに用いてもよいが、電極活物質の電位がリチウム金属基準で0.5−1.0V程度であるため、負極に用いることが好ましい。以下では、上述した電極を負極に用いた蓄電デバイスについて主に説明する。
この蓄電デバイスにおいて、非水電解液は、正極と負極との間に介在し、キャリアイオンを伝導する。キャリアイオンは、金属イオンであることが好ましく、アルカリ金属イオンであることがより好ましく、Liイオン、Naイオン及びKイオンのうちの1以上がさらに好ましい。非水電解液は、一般式(1)で表される化合物を1.0質量%未満の範囲で含む。一般式(1)において、Mは、遷移元素、周期表の13族、14族又は15族元素であり、このうちAl、B、V、Ti、Si、Zr、Ge、Sn、Cu、Y、Zn、Ga、Nb、Ta、Bi、P、As、Sc、Hf又はSbであることが好ましく、Al、B又はPであることがより好ましい。MがAl、B又はPの場合には、化合物に含まれるアニオンの合成が比較的容易になり、製造コストを抑えることができる。アニオンの価数bは1〜3であり、このうち1であることが好ましい。価数bが3より大きい場合には、化合物の塩が混合有機溶媒に溶解しにくくなる傾向があるので好ましくない。また、定数m,nは、配位子の数に関係する値であり、Mの種類によって決まってくるものであるが、mは1〜4の整数、nは0〜8の整数である。定数qは、0又は1である。qが0の場合には、キレートリングが五員環となる。
ここで、R1は、炭素数1〜10のアルキレン、炭素数1〜10のハロゲン化アルキレン、炭素数6〜20のアリーレン又は炭素数6〜20のハロゲン化アリーレンを表す。これらのアルキレン及びアリーレンはその構造中に置換基、ヘテロ原子を持っていてもよい。具体的には、アルキレン及びアリーレン上の水素の代わりに、ハロゲン、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、水酸基を置換基として持っていてもよいし、アルキレン及びアリーレン上の炭素の代わりに、窒素、硫黄、酸素が導入された構造であってもよい。またqが1でmが2〜4のときには、m個のR1はそれぞれが結合していてもよい。そのような例としては、エチレンジアミン四酢酸のような配位子を挙げることができる。
2は、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル、炭素数6〜20のアリール、炭素数6〜20のハロゲン化アリール又は−X33(X3,R3については後述)を表す。ここでのアルキル及びアリールも、R1と同様に、その構造中に置換基、ヘテロ原子を持っていてもよく、またnが2〜8のときにはn個のR2はそれぞれが結合して環を形成していてもよい。R2としては、電子吸引性の基が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。フッ素原子の場合には、アニオン化合物の塩の溶解度や解離度が向上し、これに伴ってイオン伝導度が向上するからである。また、耐酸化性が向上し、これにより副反応の発生を抑制することができるからである。
1,X2及びX3は、それぞれが独立でO,S又はNR4を表す。つまり、配位子はこれらのヘテロ原子を介してMに結合することになる。
3及びR4は、それぞれが独立で水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル、炭素数6〜20のアリール、炭素数6〜20のハロゲン化アリールを表す。これらのアルキル及びアリールも、R1と同様に、その構造中に置換基、ヘテロ原子を持っていてもよい。また、R3又はR4は複数個存在する場合にはそれぞれが結合して環を形成してもよい。
一般式(1)で表される化合物のカチオン(Aa+)において、aは、1〜3であり、pはb/aである。このカチオンとしては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、セシウム、ルビジウム、銀、亜鉛、銅、コバルト、鉄、ニッケル、マンガン、チタン、鉛、クロム、バナジウム、ルテニウム、イットリウム、ランタノイド、アクチノイドなどのカチオンが挙げられるほか、テトラアルキルアンモニウム(アルキルはメチル、エチル、ブチルなど)、トリエチルアンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウムなどのアンモニウムカチオン、プロトン等が挙げられる。このうち、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン又はカリウムカチオンが好ましい。特に、リチウムやカリウムを含む化合物は、非水系溶媒へ溶解しやすく、好ましい。このカチオンは、キャリアイオンと同種としてもよい。
一般式(1)で表される化合物は、式(2)〜(6)に示す、PTFO,PFO,PO,BFO及びBOBの1種以上のアニオンを含むことが好ましい。その理由は、負極活物質の表面に安定なSEIを形成しやすいためである。一般式(1)で表される化合物は、カチオンとしてリチウムやカリウムを含み、アニオンとしてPFOやBOBを含む化合物がより好ましい。このうち、カチオンとしてリチウムを含みアニオンとしてBOBを含むリチウムビスオキサレートボラート(LiBOB)がさらに好ましい。こうしたものでは、内部抵抗をより低減でき、さらにサイクル特性をより向上できる。
こうした化合物の合成方法としては、例えばPFOの場合には、非水系溶媒中でLiPF6と4倍モルのリチウムアルコキシドとを反応させた後、シュウ酸を添加して、リンに結合しているアルコキシドをシュウ酸で置換する方法等がある。また、BOBの場合には、非水系溶媒中でLiBF4と4倍モルのリチウムアルコキシドとを反応させた後、シュウ酸を添加して、ホウ素に結合しているアルコキシドをシュウ酸で置換する方法等がある。これらの場合には、一般式(1)で表される化合物は、アニオンのリチウム塩として得ることができる。
この化合物は、蓄電デバイスを少なくとも1回充電することにより、化合物のすべて又は一部(例えばアニオン)が分解して、負極活物質の表面に被覆して被膜を形成すると考えられる。この被覆物は、例えばX線光電子分光分析(XPS)やIR分析等により検出することができる。
非水電解液は、一般式(1)で表される化合物を、支持塩を溶解した非水系溶媒に対して、すなわち、支持塩及び非水系溶媒の総量に対して、1.0質量%未満の範囲で含む。この化合物を1.0質量%未満の範囲で含むものとすると、電極表面に薄くて安定な被膜が形成されると考えられる。この化合物の含有量は0.1質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
非水系溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類として、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸エチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフランなどのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。この組み合わせによると、充放電の繰り返しでの蓄電デバイスの特性を表すサイクル特性が優れているばかりでなく、非水電解液の粘度、得られる蓄電デバイスの電気容量、蓄電デバイスの出力などをバランスの取れたものとすることができる。なお、環状カーボネート類は、比誘電率が比較的高く、非水電解液の誘電率を高めていると考えられ、鎖状カーボネート類は、非水電解液の粘度を抑えていると考えられる。
支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO2)3などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。なかでもLiPF6が好ましい。支持塩には、一般式(1)で表される化合物は含まれない。支持塩を溶解した非水系溶媒における支持塩の濃度は0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、非水電解液をより安定させることができる。また、この非水系非水電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。
この蓄電デバイスにおいて、負極は、所定の層状構造体の剥片を負極活物質として含む。負極は、キャリアイオンを吸蔵放出するものとしてもよい。
負極活物質は、芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体の剥片を含む。負極活物質は、層状構造体の剥片の集合を内包して形成される中空球状構造を有する(後述図2参照)ものとしてもよいし、これを解砕して得られた剥片状構造を有するものとしてもよい。この負極活物質において、中空球状構造では、層状構造体の剥片が中心から不規則に外周側へ向かう構造を有するものとしてもよい。あるいは、中空球状構造では、層状構造体の剥片が外周側から不規則に中心へ向かう構造を有するものとしてもよい。このような中空球状構造を有する負極活物質は、芳香族ジカルボン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとを含む溶液を噴霧乾燥することにより得ることができる。この中空球状構造は、直径が10μm以下であるものとしてもよい。この中空球状構造の直径は、0.1μm以上であるものとしてもよい。噴霧乾燥法による層状構造体の中空粒子は、0.1μm以上10μm以下の範囲で得られる。中空球状構造や剥片状構造における剥片の厚みは、例えば1nm以上100nm以下であり、好ましくは、1nm以上20nm以下である。
この層状構造体は、1又は2以上の芳香環構造が接続した有機骨格層を有するものとしてもよい。この層状構造体は、芳香族化合物のπ電子相互作用により層状に形成され、空間群P21/cに帰属される単斜晶型の結晶構造を有するものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。この層状構造体は、式(7)〜(9)のうち1以上で表される構造を有するものとしてもよい。但し、この式(7)〜(9)において、aは1以上5以下の整数であり、bは0以上3以下の整数であり、これらの芳香族化合物は、この構造中に置換基、ヘテロ原子を有してもよい。具体的には、芳香族化合物の水素の代わりに、ハロゲン、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、水酸基を置換基として持っていてもよいし、芳香族化合物の炭素の代わりに、窒素、硫黄、酸素が導入された構造であってもよい。より具体的には、この層状構造体は、式(10)〜(12)に示す芳香族化合物としてもよい。なお、式(7)〜(12)において、Aはアルカリ金属である。また、層状構造体は、異なるジカルボン酸アニオンの酸素4つとアルカリ金属元素とが4配位を形成する式(13)の構造を備えているものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。但し、この式(13)において、Rは1又は2以上の芳香環構造を有し、複数あるRのうち2以上が同じであってもよいし、1以上が異なっていてもよい。また、Aはアルカリ金属である。このように、アルカリ金属元素によって有機骨格層が結合した構造を有することが好ましい。
この層状構造体において、有機骨格層は、2以上の芳香環構造を有する場合、例えば、ビフェニルなど2以上の芳香環が結合した芳香族多環化合物としてもよいし、ナフタレンやアントラセン、ピレンなど2以上の芳香環が縮合した縮合多環化合物としてもよい。この芳香環は、五員環や六員環、八員環としてもよく、六員環が好ましい。また、芳香環は、2以上5以下とするのが好ましい。芳香環が2以上では層状構造を形成しやすく、芳香環が5以下ではエネルギー密度をより高めることができる。この有機骨格層は、芳香環に1又は2以上のカルボキシアニオンが結合した構造を有するものとしてもよい。有機骨格層は、ジカルボン酸アニオンのうちカルボン酸アニオンの一方と他方とが芳香環構造の対角位置に結合されている芳香族化合物を含むものとするのが好ましい。カルボン酸が結合されている対角位置とは、一方のカルボン酸の結合位置から他方のカルボン酸の結合位置までが最も遠い位置としてもよく、例えば芳香環構造がナフタレンであれば2,6位が挙げられる。
アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属は、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができるが、Liが好ましい。なお、蓄電デバイスのキャリアであり、充放電により層状構造体に吸蔵・放出される金属イオンは、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素と異なるものとしてもよいし、同じものとしてもよく、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができる。また、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素は、層状構造体の骨格を形成することから、充放電に伴うイオン移動には関与しないもの、すなわち、充放電時に吸蔵放出されないものと推察される。エネルギー貯蔵メカニズムにおいては、層状構造体の有機骨格層はレドックス(e-)サイトとして機能する一方、アルカリ金属元素層はキャリアである金属イオンの吸蔵サイト(アルカリ金属イオン吸蔵サイト)として機能するものと考えられる。この層状構造体は、例えば、2、6−ナフタレンジカルボン酸アルカリ金属塩、4、4’−ビフェニルジカルボン酸アルカリ金属塩及びテレフタル酸アルカリ金属塩のうち1以上が好ましい。
この負極活物質は、芳香族ジカルボン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を噴霧乾燥装置を用いて噴霧乾燥する工程を経て得られたものとしてもよい。この負極活物質は、例えば、以下に示す負極活物質の製造方法によって得ることができる。この製造方法は、溶液調製工程と、析出工程とを含むものとしてもよい。なお、調製溶液を別途調製するものとして、溶液調製工程を省略してもよい。
溶液調製工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を調製する。この調製溶液の溶媒は、特に限定されないが、水系溶媒としてもよいし、有機系溶媒としてもよいが、水であることが好ましい。この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が0.1mol/L以上、寄り好ましくは0.2mol/L以上である調製溶液を調製することが好ましい。また、この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が5mol/L以下である調製溶液を調製することが好ましい。このような濃度範囲では、次工程の噴霧乾燥をより行いやすい。あるいは、この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が0.1mol%以上である調製溶液を調製することが好ましい。このような濃度範囲では、次工程の噴霧乾燥をより行いやすい。この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が0.4mol%以下である調製溶液を調製してもよい。また、この工程では、ベンゼン環、ナフタレン、ビフェニル、ナフタレン骨格またはビフェニル骨格が拡張された有機骨格を有する芳香族ジカルボン酸アニオンを用いるものとしてもよい。更に、この工程では、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上のアルカリ金属カチオンを含む調製溶液を調製することが好ましい。この工程では、例えば、芳香族ジカルボン酸アニオンのモル数A(mol)に対するアルカリ金属カチオンのモル数B(mol)であるモル比B/Aが2.0以上である調製溶液を得ることが好ましく、モル比B/Aが2.2以上である調製溶液を得ることがより好ましい。このように、アルカリ金属カチオンを当量又は過剰とすることにより、負極の抵抗をより低減することができ、好ましい。このモル比B/Aは2.5以上であるものとしてもよい。また、このモル比B/Aは、3.0以下であるものとしてもよいし、2.5以下であるものとしてもよい。
析出工程では、調製溶液を噴霧乾燥装置を用いて噴霧乾燥することにより、層状構造体の剥片の集合を内包して形成される中空球状構造を有する負極活物質を析出させる。この層状構造体は、上記負極活物質で説明したものであり、芳香族骨格を有するジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、有機骨格層のカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備えるものである。この析出工程では、上記溶液調製工程で調整した調整溶液を用いる。噴霧乾燥は、スプレードライヤーにより行うものとしてもよい。噴霧乾燥条件は、例えば、装置の規模や作製する負極活物質の量によって適宜調整すればよい。乾燥温度は、例えば、100℃以上200℃以下の範囲とすることが好ましい。100℃以上では、溶媒を十分に除去することができ、200℃以下では、消費エネルギーをより低減でき好ましい。乾燥温度は、120℃以上がより好ましく、180℃以下がより好ましい。また、供給液量は、作製する規模にもよるが、例えば、0.1L/h以上2L/h以下の範囲としてもよい。また、調製溶液を噴霧するノズルサイズは、作製する規模にもよるが、例えば、直径0.5mm以上5mm以下の範囲としてもよい。このように噴霧乾燥して層状構造体を作製すると、層状構造体を含む上述した中空球状構造を有する負極活物質が得られる。中空球状構造を有する負極活物質は、そのまま用いてもよいし、解砕して剥片状構造にして用いてもよい。
負極は、上述した負極活物質である層状構造体と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。この負極において、上記負極活物質は、できるだけ多く含まれることが好ましく、例えば、負極合材中に60質量%以上95質量%以下の範囲で含まれるものとしてもよい。導電材は、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどを用いることができる。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
この負極は、電極をX線回折測定したときに、(111)のピーク強度に対する(300)のピーク強度比P(300)/P(111)が2.0以上を示すことが好ましい。即ち、(300)のピーク強度が(111)のピーク強度の2倍以上を示すものとしてもよい。この強度比は、2.5以上を示すことがより好ましく、3.0以上を示すことが更に好ましい。また、この強度比は、5.0以下であるものとしてもよい。この範囲では、層状構造体の層間隔などが良好であり、負極抵抗をより低減することができる。また、この負極は、電極をX線回折測定したときに、X線回折測定での(011)のピーク強度に対する(300)のピーク強度比P(300)/P(011)が2.0以上を示すことが好ましい。即ち、(300)のピーク強度が(011)のピーク強度の2倍以上を示すものとしてもよい。この強度比は、2.5以上を示すことがより好ましく、3.0以上を示すことが更に好ましい。また、この強度比は、5.0以下であるものとしてもよい。この範囲では、層状構造体の層間隔などが良好であり、負極抵抗をより低減することができる。また、この負極は、電極をX線回折測定したときに、X線回折測定での(111)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(111)が6.0以上を示すことが好ましい。即ち、(100)のピーク強度が(111)のピーク強度の6倍以上を示すものとしてもよい。この強度比は、6.5以上を示すことがより好ましく、6.6以上を示すことが更に好ましい。また、この強度比は、10.0以下であるものとしてもよい。この範囲では、層状構造体の層間隔などが良好であり、負極抵抗をより低減することができる。また、この負極は、電極をX線回折測定したときに、(011)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(011)が5.0以上を示すことが好ましい。即ち、(100)のピーク強度が(011)のピーク強度の5倍以上を示すものとしてもよい。この強度比は、6.0以上を示すことがより好ましく、6.5以上を示すことが更に好ましい。また、この強度比は、10.0以下であるものとしてもよい。この範囲では、層状構造体の層間隔などが良好であり、負極抵抗をより低減することができる。また、この負極は、電極をX線回折測定したときに、(300)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(300)が1.5以上を示すことが好ましい。即ち、(100)のピーク強度が(300)のピーク強度の1倍以上を示すものとしてもよい。この強度比は、1.8以上を示すことがより好ましく、2.0以上を示すことが更に好ましい。また、この強度比は、5.0以下であるものとしてもよい。この範囲では、層状構造体の層間隔などが良好であり、負極抵抗をより低減することができる。また、負極は、電極をX線回折測定したときに、このように、負極は、負極内部に存在する活物質の小さな剥片が特異的な配向をしており、n00面に相当するピーク強度が大きくなる傾向を示す。また、この負極は、表面を走査型電子顕微鏡で観察したときに平滑な面を有するものとしてもよい。この負極活物質は、容易に解砕され、剥片を高分散した負極とすることができるため、負極表面がより平滑になる。
この蓄電デバイスにおいて、正極は、キャリアイオンを吸蔵放出するものとしてもよい。この蓄電デバイスにおいて、正極は、キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどに用いられている公知の正極を用いてもよい。正極は、例えば、正極活物質として炭素材料を含むものとしてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、非水電解液に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着・脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、非水電解液に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入・脱離して蓄電するものとしてもよい。
あるいは、正極は、一般的なリチウムイオン電池に用いられる正極としてもよい。この場合、正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMnc2(a+b+c=1)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV23などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV25などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、正極活物質は、リン酸鉄リチウムなどとしてもよい。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiV23などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素を含んでもよい趣旨である。
正極は、例えば上述した正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極に用いる導電材、結着材、溶剤、集電体は、例えば、負極で例示したものなどを適宜用いることができる。
この蓄電デバイスは、正極と負極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、蓄電デバイスの使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
この蓄電デバイスの形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、蓄電デバイス20の一例を示す模式図である。この蓄電デバイス20は、カップ形状のケース21と、正極活物質を有しこのケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、ケース21の開口部に配設されガスケット25を介してケース21を密封する封口板26と、を備えている。この蓄電デバイス20は、正極22と負極23との間の空間に非水電解液27が満たされている。非水電解液27は、一般式(1)で表される化合物を1.0質量%未満の範囲で含む。また、負極23は、上述した層状構造体を負極活物質として有する。
以上詳述した蓄電デバイスでは、層状構造体を電極活物質に用いたものにおいて、充放電容量が大きく、クーロン効率の良好な蓄電デバイスを提供できる。このような効果が得られる理由は、以下のように推測される。図2は、従来の溶媒乾固法(a)と本開示の噴霧乾燥法(b)により作製した活物質と電極の説明図である。例えば、従来の溶媒乾固法では、芳香族ジカルボン酸とアルカリ金属とを溶解させ、溶媒乾固によって溶媒を除去して芳香族ジカルボン酸ジアルカリ金属塩の層状構造体を得る。この活物質を用いて電極を作製すると、活物質が電極内部に二次凝集体として存在し、その結果、凝集体内部の活物質と電解液が十分な界面を形成できずに有効に機能する反応界面が低減することで、内部抵抗が増加する。一方、本開示では、芳香族ジカルボン酸とアルカリ金属を溶解させた溶液を使いスプレイドライヤーを用いて噴霧乾燥法により活物質粒子を作製する。この手法で作製した電極活物質10は、図2に示すように剥片状の層状構造体12を内包した中空粒子11となり、解砕が容易であり、層状構造体の凝集が抑制され、一次粒子が電極内部に非常に高分散された構造を形成することができる。このため、内部抵抗の低減が可能となるものと推察される。また、従来の二次凝集した大きな粒子の電極活物質を用いると、電極内部で金属イオン(例えばリチウムイオン)の受け入れ界面の少ない電極構造になるため放電容量も十分に得られない。一方、この層状構造体の剥片を電極に用いると、金属イオンの受け入れ界面の多い電極構造になり、存在する電極活物質のより多くが機能するため、より大きな放電容量を得ることができる。
また、一般式(1)で表される化合物を1.0質量%未満の範囲で含む非水電解液を用いることによって、電極表面に安定な被膜が形成され、電極表面における充放電反応が円滑に行われるため、内部抵抗を低減できると推察される。また、この被膜は、充放電時に発生する漏れ電流や電解液との副反応などを防ぎ、それにより充放電時の不可逆容量が減少し、クーロン効率が向上し、サイクル寿命が増加すると考えられる。ところで、芳香族カルボン酸ジリチウムなどの層状構造体は、充放電電位が約0.5〜1.0V(vs Li/Li+)と高いため、一般的な電解液を用いた場合には、充放電電位が約0.1V(vs Li/Li+)の黒鉛上で起こるような電解液の十分な還元分解が起こらず、電極表面に安定な被膜(SEI被膜)を形成できないことがある。そこで、層状構造体の充放電電位より高い約1.0V(vs Li/Li+)で還元分解を起こして電極上に被膜を形成する一般式(1)で表される化合物(LiBOBなど)を用いることで、良好な被膜を形成することができると考えられる。
図3に、従来の溶媒乾固法(a)と本開示の噴霧乾燥法(b)により作製した電極と電極上の被膜の説明図を示す。本開示の噴霧乾燥法で作製した活物質を用いた電極では、従来の溶媒乾固法で作製した活物質を用いて作製した電極よりも電極表面が平滑になっており、電極表面に余分な凹凸がなく表面積が少ない。このため、薄く均一で安定した被膜を形成でき、充放電反応の抵抗成分となる層を減らすことができると推察される。また、一般式(1)で表される化合物の量を少なくできるため、コストを低減できる。なお、一般式(1)で表される化合物が1質量%以上の範囲では、初期容量が著しく小さくなる。これは、電極表面の被膜が厚くなりすぎて、被膜抵抗の影響が上述した被膜による効果を上回るためと推察される。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、本開示の蓄電デバイスを具体的に作製した例を実施例として説明する。この実施例では、対極をリチウム金属とした二極式セルについて検討したが、対極を任意の正極活物質を含む正極とすれば、蓄電デバイスとして作動することができる。
1.蓄電デバイスの作製
[実施例1]
(電極活物質:4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムの層状構造体の合成)
4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムの合成には、出発原料として4,4’−ビフェニルジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いた。0.44mol/Lとなるように水に水酸化リチウムを加え撹拌し、水溶液を調製した。そして、4,4’−ビフェニルジカルボン酸のモル数A(mol)に対する水酸化リチウムのモル数B(mol)の比であるモル比B/Aが2.2となるように、すなわち、4,4’−ビフェニルジカルボン酸が0.20mol/Lとなるように水溶液を調整した。調製した水溶液を用いてスプレードライヤー(Mini Spray Dryer B−290、日本ビュッヒ製)を用いて噴霧乾燥させ、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムを析出させた。用いたスプレードライヤーのノズル直径は1.4mm、溶液の噴霧量は0.4L/時間、乾燥温度は150℃で行い、4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウムを合成した。
(電極:4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム電極の作製)
上記手法で作製した4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムを85質量部、粒子状炭素導電材としてカーボンブラック(東海カーボン、TB5500)を15質量部、水系バインダーであるカルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセル,1120)を4.5質量部、ゴム系バインダーであるスチレンブタジエン共重合体(JSR、TRD102A)を3質量部、の割合で混合し、分散剤として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に単位面積当たりの4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム活物質が3.0mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2cm2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。
(非水電解液の調製)
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で30:40:30の割合で混合した非水溶媒に、支持電解質の六フッ化リン酸リチウムを1.0mol/Lになるように溶解させた。そこに、0.1質量%のリチウムビスオキサレートボラート(LiBOB)を添加して非水電解液を調製した。
(蓄電デバイス:二極式評価セルの作製)
上記の手法にて作製した4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚さ200μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたポリプロピレン製セパレータ(Polypore社製Celgard2500)を挟んで二極式評価セルを作製した。
[実施例2,3]
非水電解液の調製にあたり0.2質量%のLiBOBを添加した以外は実施例1と同じものを、実施例2とした。また、非水電解液の調製にあたり0.5質量%のLiBOBを添加した以外は実施例1と同じもの、を実施例3とした。
[比較例1〜4]
非水電解液の調製にあたりLiBOBを添加しなかった以外は実施例1と同じものを、比較例1とした。また、非水電解液の調製にあたり各々1.0質量%、2.0質量%、5.0質量%のLiBOBを添加した以外は実施例1と同じものを、比較例2〜4とした。
[参考例1,2]
(電極:4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム電極の作製)のスラリー状合材において、水系バインダーをポリビニルアルコール(ゴウセネックス,T−330,日本合成化学)とし、ゴム系バインダーをスチレンブタジエン共重合体(日本ゼオン、BM−400B)とした以外は、比較例1と同じものを、参考例1とした。スプレードライヤーにて4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムを合成した後に、120℃で真空乾燥を行った以外は参考例1と同じものを、参考例2とした。
[参考例3,4]
4,4’−ビフェニルジカルボン酸に対する水酸化リチウムのモル比を2.5として水溶液を調製し、スプレードライヤーにて合成した以外は参考例1と同じものを、参考例3とした。また、スプレードライヤーにて4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムを合成した後に、120℃で真空乾燥を行った以外は参考例3と同じものを、参考例4とした。
[参考例5〜8]
支持電解質に1.1mol/Lとなるように四フッ化ホウ酸リチウムを添加し作製した非水電解液を用いた以外は参考1と同じものを参考例5とした。支持電解質に1.1mol/Lとなるように四フッ化ホウ酸リチウムを添加し作製した非水電解液を用いた以外は、参考例2と同じものを参考例6とした。支持電解質に1.1mol/Lとなるように四フッ化ホウ酸リチウムを添加し作製した非水電解液を用いた以外は、参考例3と同じものを参考例7とした。支持電解質に1.1mol/Lとなるように四フッ化ホウ酸リチウムを添加し作製した非水電解液を用いた以外は、参考例4と同じものを参考例8とした。
[参考例9]
出発原料として4,4’−ビフェニルジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いて、水酸化リチウム1水和物(0.556g)にメタノール(100mL)を加え撹拌した後に4,4’−ビフェニルジカルボン酸1.0gを加え、1時間撹拌した。その後、撹拌後溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより、白色の粉末試料の4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウムを得た。これを用いた以外は、参考例1と同じものを参考例9とした。
2.実験
(SEM観察)
参考例1、9の電極活物質を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。なお、参考例1の電極活物質は、実施例1〜3及び比較例1〜4の電極活物質と同じである。SEM観察は、走査型電子顕微鏡(日本FEI社製Quanta200FEG)を用い、1000〜50000倍の条件で行った。また、電子線マイクロアナライザ分析装置(JEOL製JXA−8500F)により、電極の切断面の元素分布(酸素分布マッピング)を検討した。
(X線回折測定)
参考例1〜9の電極活物質及び電極のX線回折測定を行った。測定は、放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用し、X線回折装置(リガク製UltimaIV)を用いて行った。また、測定は、X線の単色化にはグラファイトの単結晶モノクロメーターを用い、印加電圧を40kV、電流30mAに設定し、5°/分の走査速度で、電極活物質については2θ=5°〜60°の角度範囲で行い、電極については2θ=5°〜30°の角度範囲で行った。
(充放電特性評価)
参考例1〜9の二極式評価セルを20℃の温度環境下、0.1mAで0.5Vまで還元した容量を放電容量とした。また、その後0.1mAで1.5Vまで酸化した容量を充電容量とした。また、得られた充放電カーブを用い、電位差に対して充放電カーブの微分値を算出し微分曲線を得た。また、この微分曲線にある2つの異なる内部抵抗性微分カーブのピーク差から充放電分極を算出し、印加電流を考慮してIV抵抗を算出した。なお、IV抵抗は、2サイクル目の充放電カーブを用いた。また、上記作製した二極式評価セルを用い、20℃の温度環境下、上記条件で10サイクルの連続充放電試験を行い、容量維持率を検討した。この充放電操作の1回目の充電容量をQ(1st)、10回目の充電容量をQ(10th)とし、Q(10th)/Q(1st)×100を充放電サイクル後の容量維持率(%)とした。
実施例1〜3及び比較例1〜4の二極式評価セルを用いて、1/10C相当となる電流密度dで充放電を行い、充放電容量とクーロン効率を評価した。具体的には、二極式評価セルを20℃の温度環境下、0.1mAで0.5Vまで還元した容量を放電容量とした。また、その後0.1mAで1.5Vまで酸化した容量を充電容量とした。また充電容量÷放電容量の値をクーロン効率とした。上記条件で10サイクルの連続充放電試験を行い、クーロン効率の変化を検討した。
(結果と考察1)
まず、参考例1〜9を用いて、活物質について検討した。表1に参考例1〜9の製造方法、Li組成、活物質の乾燥の有無、二次電池の支持塩、IV抵抗、参考例5を基準とした比抵抗、最大放電容量及び充放電サイクルの容量維持率をまとめて示す。図4は、参考例1のSEM写真である。図5は、参考例9のSEM写真である。図5に示すように、従来の溶媒乾固法で作製した層状構造体の電極活物質は、1μmの粒子が凝集した状態であった。これに対して、図4に示すように、スプレードライ法により作製した参考例の層状構造体の電極活物質は、粒径が10μm以下の大きさの中空粒子になっていることがわかった。また、内部が露出している粒子を拡大視すると、この電極活物質は、数nmの厚さの層状構造体の剥片の集合を内包して形成される中空球状構造を有することがわかった。また、この電極活物質は、層状構造体の剥片が中心から不規則に外周側へ向かう構造(剥片が外周側から不規則に中心へ向かう構造と同義)を有していることがわかった。
図6は、参考例1、2、5、6、9の電極活物質のXRD測定結果である。図7は、参考例3、4、7、8、9の電極活物質のXRD測定結果である。図6に示すように、4,4’−ビフェニルジカルボン酸に対する水酸化リチウムのモル比が2.2の水溶液を用いてスプレードライ法により作製した活物質である参考例1では、参考例9や乾燥後の参考例2とは異なる結晶構造と考えられるXRDパターンを示した。一方、この参考例1の活物質粒子に対して120℃真空乾燥を行った参考例2においては、従来の作製手法と同じ2θの位置にピークが出現した。このため、参考例1では、乾燥すると従来と同じ結晶構造を有するものとなることがわかった。また、図7に示すように、4,4’−ビフェニルジカルボン酸に対する水酸化リチウムのモル比が2.5である参考例3およびそれを120℃真空乾燥した参考例4においても参考例1および参考例2と同様の結果を示した。
図8は、参考例1〜9の電極表面のSEM写真であり、図8(a)が参考例1,5、図8(b)が参考例2,6、図8(c)が参考例3,7、図8(d)が参考例4,8、図8(e)が参考例9である。図8に示すように、参考例5の活物質を用いて電極を作製した場合、表面の凹凸が大きいことがわかった。これは、図2に示すように、溶媒乾固法で作製した層状構造体は、大きな粒子の凝集体となっており、電極にする際にその大きな粒子のまま集電体上に形成されるためであると推察された。一方、スプレードライ法により作製した参考例1,2の活物質を用いた電極では表面が平滑となることがわかった。これは、図2に示すように、剥片状の層状構造体の中空粒子では、非常に脆く、電極合材として集電体上に形成される際に、解砕されて高分散となりやすいためであると推察された。
図9は、電子線マイクロアナライザ分析による、参考例1、2、9の電極断面の酸素分布マップであり、図9(a)が参考例1、図9(b)が参考例2、図9(c)が参考例9である。なお、電極合材中の酸素は層状構造体のカルボン酸に含まれるものであり、酸素の分布は層状構造体の分布を示すものである。図9に示すように、作製した電極の断面観察から、参考例1の活物質を用いて作製した電極では、大きな塊状の部分(図中点線参照)の外周側に酸素濃度が濃く存在することがわかり、作製時に形成された層状構造体の凝集状態が残ったままであることがわかった。一方、スプレードライ法により作製した活物質を用いた参考例1〜8の電極では、活物質が均一に分散した状態を形成することが分かった。このことより、溶媒乾固法で作製した活物質を用いて電極を作製した場合、活物質の凝集の力が強いために活物資を解砕することなく電極内部に存在する一方、スプレードライ法により作製した剥片の集合により形成される中空球状構造を有する層状構造体は、電極作製時に容易に解砕され、電極内部に小さな薄片状態で均一分散するものと推察された。
図10は、参考例1〜9の電極のXRD測定結果である。図10に示すように、スプレードライ法により作製した活物質である参考例1〜8の電極においては、活物質の120℃真空乾燥の有無にかかわらず、従来の溶媒乾固法と同じ2θ位置にピークが出現した。これは、電極作製後に120℃で真空乾燥するため、活物質の120℃真空乾燥と同様の効果をもたらしたものと考える。ピーク強度においてはスプレードライ法により作製した電極において、n00面に相当するピーク強度が大きくなる傾向を示した。これは電極内部に存在する活物質の小さな剥片が特異的な配向をしていることを示す。特に、参考例1〜8の電極では、X線回折測定において(300)のピーク強度が(111)や(011)のピーク強度の2倍以上を示し、また、(100)のピーク強度が(111)や(011)のピーク強度の5倍以上を示すことがわかった。
図11は、参考例1〜9の充放電サイクルでの充放電曲線である。図12は、参考例1〜9の放電容量の評価結果である。図11に示すように、スプレードライ法により作製した活物質である参考例1〜8の電極は、可逆な充放電カーブを示すことが分かった。そして、図12、表1に示すように、可逆な充放電容量も大きくなることが分かった。これは電極内部に小さな剥片状態で均一分散した活物質の電極構造をとるため、充放電に有効に活用される界面が多くなり、その結果、利用率が向上し、充放電容量が大きくなったと推察された。
また、充放電曲線の微分曲線からIV抵抗を求めた。図13は、参考例1〜9の充放電カーブから得られた微分曲線である。図14は、参考例1〜9のIV抵抗の評価結果である。充放電カーブの結果からdQ/dVを算出したところ、スプレードライ法により作製した活物質を用いた電極においてピーク電位差が小さくなることが分かった。また、図14に示すように、スプレードライ法により作製した活物質を用いた電極は、従来の溶媒乾固法により作製した活物質を用いた電極に比べ、IV抵抗を低減することが分かった。これは電極内部に小さな剥片状態で活物質が均一分散した電極構造をとるため充放電に有効に活用される界面が多くなり、その結果、抵抗が下がったものと推察された。
また、XRD測定によるピーク強度比とIV抵抗との関係について検討した。図15は、X線回折測定での(111)のピーク強度に対する(300)のピーク強度比P(300)/P(111)、及び(011)のピーク強度に対する(300)のピーク強度比P(300)/P(011)と、IV抵抗との関係図である。図16は、X線回折測定での(111)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(111),及び(011)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(011)と、IV抵抗との関係図である。図17は、X線回折測定での(300)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(300)と、IV抵抗との関係図である。図18は、層状構造体の結晶面(011)、(111)、(100)、(300)の説明図である。表2には、参考例1〜4,9のピーク強度比とIV抵抗値とをまとめて示した。図15〜17に示すように、各ピーク強度比は、大きくなるほどIV抵抗が低くなる傾向を示した。また、ピーク強度比P(300)/P(111)やピーク強度比P(300)/P(011)は、2.0以上を示すことが好ましいことがわかった。また、ピーク強度比P(100)/P(111)は6.0以上を示し、ピーク強度比P(100)/P(011)は5.0以上を示すことが好ましいことがわかった。また、ピーク強度比P(100)/P(300)が1.5以上を示すことが好ましいことがわかった。図18に示すように、(100)、(300)は、層状構造体のアルカリ金属元素層の結晶面を反映したものであり、(011)、(111)は、有機骨格層の結晶面を反映したものである。したがって、この電極では、アルカリ金属元素層の結晶面のピーク強度がより高いことが、IV抵抗をより低減するなど、蓄電デバイスの特性をより向上するのに好ましいことがわかった。
以上より、提案するスプレードライ法により作製した上記提案の活物質を用いた電極材料は、電極作製時に電極内部に活物質が均一分散した状態の電極構造をとり、電気化学的に活性な界面を多く形成することで、電極抵抗の大幅な低減および利用率の向上をもたらすことが分かった。
(結果と考察2)
次に、実施例1〜3及び比較例1〜4を用いて、非水電解液について検討する。なお、実施例1〜3及び比較例1〜4で用いた活物質は、いずれも参考例1,5で用いた活物質と同じである。表3に、実施例1〜3及び比較例1〜4のLiBOBの添加割合、3サイクル目の放電容量、3サイクル目のクーロン効率を示した。図19は、実施例1〜3及び比較例1の10サイクル中の放電容量の変化を示すグラフである。図20は、実施例1〜3及び比較例1の10サイクル中のクーロン効率の変化を示すグラフである。図21は、LiBOBの添加量と初期容量との関係を示すグラフである。図22は、実施例1〜3及び比較例1のLiBOBの添加量と放電容量及びクーロン効率との関係を示すグラフである。
LiBOBを0.1質量%以上1質量%未満の範囲で添加した実施例1〜3では、負極の初期容量が増加し(図19)、充放電時のクーロン効率も増加した(図20)。これに対して、LiBOBを1質量%以上添加した比較例2〜4では、初期容量の急激な低下が起こり、電極性能は低下したため(図21)、添加量は1質量%未満とするのが好ましいことがわかった。なかでも、実施例2,3でクーロン効率が特に高かったことから(図23)、添加量は0.2質量%以上0.5質量%以下がより好ましいことがわかった。
こうした効果が得られた理由は、ビフェニルジカルボン酸ジリチウムへLiが吸蔵を開始するよりも高電位でLiBOBが分解し、電極表面に好適な被膜を形成したためと推察された。以下、この点について説明する。図23は、実施例1〜3及び比較例1〜3の1サイクル目の放電時(ビフェニルジカルボン酸ジリチウムへのLi吸蔵反応)の充放電カーブである。図24は、実施例1〜3及び比較例1〜3の電位変化に対する電流量の変化をプロットしたグラフである。図24からは、どの電位で分解電流や反応電流が流れているかが分かる。
図23の充放電カーブから、実施例1〜3及び比較例1では初期には300mAhg-1の放電容量を発現することがわかる。一方、LiBOBを1質量%以上添加した比較例2,3では、放電容量が150mAhg-1程度まで下がっている。これは、LiBOBの添加量が多すぎるために、電極表面に分厚い被膜ができ、電極抵抗が上がったことで充放電容量が低下したものと推察された。
この点について、図24から、LiBOBの分解反応と電解液分解反応の抑制が起こっていることが推察された。すなわち、LiBOBを添加しなかった比較例1では、Li基準で0.7−1.3Vの範囲で電解液の分解に相当する分解電流が流れ、電解液の分解が起こったのちに、0.7V付近でビフェニルジカルボン酸ジリチウムへのLi吸蔵が起こった。一方、LiBOBを添加した実施例1〜3及び比較例2,3では、Li基準で1.7Vのところに電流のピークが現れている(図24)。1.7Vのピークは、LiBOBの添加量が多くなると大きくなっていることから、LiBOBが電極表面で還元分解していると推察された。実施例1〜3では、電解液の分解に相当する0.7−1.3Vのピークが比較例1と比べて減少しており、LiBOBが電極表面で分解し安定な被膜を作ることで、電解液の分解が抑制されていると推察された。
以上より、LiBOBを1質量%未満の範囲で添加することで電極表面に安定なSEI被膜を形成し、電解液の分解を抑制して副反応を防ぎ、クーロン効率を向上させていると推察された。また、LiBOBと同様に被膜を形成可能な一般式(1)であらわされる化合物を用いた場合にも、LiBOBを用いた場合と同様の結果が得られると推察された。
本発明は、電池産業等の分野に利用可能である。
10 電極活物質、11 中空粒子、12 層状構造体、20 蓄電デバイス、21 ケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 非水電解液。

Claims (8)

  1. 芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体の剥片を電極活物質として含む電極と、
    一般式(1)で表される化合物を1.0質量%未満の範囲で含み、キャリアイオンを伝導する非水電解液と、
    を備えた、蓄電デバイス。
    (但し、Mは、遷移元素、周期表の13族、14族又は15族元素を表す;Aa+は金属イオンプロトン又はオニウムイオン、aは1〜3の整数、pはb/a;bは1〜3の整数、mは1〜4の整数、nは0〜8の整数、qは0又は1を表す;R1は、炭素数1〜10のアルキレン、炭素数1〜10のハロゲン化アルキレン、炭素数6〜20のアリーレン又は炭素数6〜20のハロゲン化アリーレン(これらのアルキレン及びアリーレンはその構造中に置換基、ヘテロ原子を持っていてもよく、またqが1でmが2〜4のときにはm個のR1はそれぞれが結合していてもよい)を表す;R2は、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル、炭素数6〜20のアリール、炭素数6〜20のハロゲン化アリール(これらのアルキル及びアリールはその構造中に置換基、ヘテロ原子を持っていてもよく、またnが2〜8のときにはn個のR2はそれぞれが結合して環を形成してもよい)又は−X33を表す;X1,X2及びX3は、それぞれが独立でO,S又はNR4を表す;R3及びR4は、それぞれが独立で水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル、炭素数6〜20のアリール、炭素数6〜20のハロゲン化アリール(これらのアルキル及びアリールはその構造中に置換基、ヘテロ原子を持っていてもよく、R3又はR4は複数個存在する場合にはそれぞれが結合して環を形成してもよい)を表す)
  2. 前記非水電解液は、前記一般式(1)で表される化合物を0.5質量%以下の範囲で含む、請求項1に記載の蓄電デバイス。
  3. 前記一般式(1)で表される化合物は、ビスオキサレートボラート塩である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
  4. 前記電極活物質は、前記層状構造体の剥片の集合を内包して形成される中空球状構造を有するか、前記中空球状構造を解砕した剥片状構造を有するか、の少なくとも一方を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
  5. 前記電極は、下記(1)〜(5)のうち1以上を満たす、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
    (1)X線回折測定での(111)のピーク強度に対する(300)のピーク強度比P(300)/P(111)が2.0以上を示す。
    (2)X線回折測定での(011)のピーク強度に対する(300)のピーク強度比P(300)/P(011)が2.0以上を示す。
    (3)X線回折測定での(111)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(111)が6.0以上を示す。
    (4)X線回折測定での(011)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(011)が5.0以上を示す。
    (5)X線回折測定での(300)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(300)が1.5以上を示す。
  6. 前記電極活物質は、式(2)〜(4)のうち1以上で表される構造を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
  7. 前記電極は負極である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
  8. 前記電極活物質は、芳香族ジカルボン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を噴霧乾燥装置を用いて噴霧乾燥する工程を経て得られたものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
JP2018108651A 2018-06-06 2018-06-06 蓄電デバイス Active JP7181709B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018108651A JP7181709B2 (ja) 2018-06-06 2018-06-06 蓄電デバイス

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018108651A JP7181709B2 (ja) 2018-06-06 2018-06-06 蓄電デバイス

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019212794A true JP2019212794A (ja) 2019-12-12
JP7181709B2 JP7181709B2 (ja) 2022-12-01

Family

ID=68847013

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018108651A Active JP7181709B2 (ja) 2018-06-06 2018-06-06 蓄電デバイス

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7181709B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7472700B2 (ja) 2020-07-21 2024-04-23 株式会社豊田中央研究所 電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009123605A (ja) * 2007-11-16 2009-06-04 Sony Corp 非水電解質電池
JP2016103324A (ja) * 2014-11-27 2016-06-02 石原産業株式会社 非水電解質二次電池
JP2016193816A (ja) * 2015-03-31 2016-11-17 日本ケミコン株式会社 チタン酸化物粒子、チタン酸化物粒子の製造方法、チタン酸化物粒子を含む蓄電デバイス用電極、チタン酸化物粒子を含む電極を備えた蓄電デバイス
JP2016207851A (ja) * 2015-04-23 2016-12-08 日本ケミコン株式会社 金属化合物粒子群、金属化合物粒子群を含む蓄電デバイス用電極および金属化合物粒子群の製造方法
JP2016219204A (ja) * 2015-05-19 2016-12-22 株式会社豊田中央研究所 非水系二次電池
JP2017228664A (ja) * 2016-06-22 2017-12-28 日本ケミコン株式会社 ハイブリッドキャパシタ及びその製造方法
JP2018166060A (ja) * 2017-03-28 2018-10-25 株式会社豊田中央研究所 電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009123605A (ja) * 2007-11-16 2009-06-04 Sony Corp 非水電解質電池
JP2016103324A (ja) * 2014-11-27 2016-06-02 石原産業株式会社 非水電解質二次電池
JP2016193816A (ja) * 2015-03-31 2016-11-17 日本ケミコン株式会社 チタン酸化物粒子、チタン酸化物粒子の製造方法、チタン酸化物粒子を含む蓄電デバイス用電極、チタン酸化物粒子を含む電極を備えた蓄電デバイス
JP2016207851A (ja) * 2015-04-23 2016-12-08 日本ケミコン株式会社 金属化合物粒子群、金属化合物粒子群を含む蓄電デバイス用電極および金属化合物粒子群の製造方法
JP2016219204A (ja) * 2015-05-19 2016-12-22 株式会社豊田中央研究所 非水系二次電池
JP2017228664A (ja) * 2016-06-22 2017-12-28 日本ケミコン株式会社 ハイブリッドキャパシタ及びその製造方法
JP2018166060A (ja) * 2017-03-28 2018-10-25 株式会社豊田中央研究所 電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7472700B2 (ja) 2020-07-21 2024-04-23 株式会社豊田中央研究所 電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP7181709B2 (ja) 2022-12-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6889582B2 (ja) 電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法
JP5348170B2 (ja) リチウム二次電池用負極及びリチウム二次電池
WO2012053553A1 (ja) 非水系二次電池用電極、それを備えた非水系二次電池及び組電池
JP5897971B2 (ja) 電極活物質、非水系二次電池用電極、非水系二次電池及び非水系二次電池用電極の製造方法
JP6138916B2 (ja) 非水電解質二次電池用正極活物質及びこれを用いた非水電解質二次電池
JP2012038562A (ja) 前駆体、活物質の製造方法及びリチウムイオン二次電池
JP2012038561A (ja) 前駆体、前駆体の製造方法、活物質の製造方法及びリチウムイオン二次電池
JP2014186937A (ja) 非水電解質二次電池用正極活物質及びこれを用いた非水電解質二次電池
JP6565323B2 (ja) 非水系二次電池
JP6958053B2 (ja) 電極活物質、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法
JP6346733B2 (ja) 電極、非水系二次電池及び電極の製造方法
JP7152965B2 (ja) 蓄電デバイス
JP7087855B2 (ja) 電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法
JP6954249B2 (ja) 電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法
US20210143420A1 (en) Cathode active material, cathode comprising same, and secondary battery
JP2021028957A (ja) 蓄電デバイス及び電極
JP7181709B2 (ja) 蓄電デバイス
JP5942716B2 (ja) リチウム内包炭素化合物の製法、リチウム内包炭素化合物粉末、負極活物質及びリチウムイオン二次電池
JP2020161771A (ja) 評価方法、蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイス
JP2021128848A (ja) 電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法
JP2020150213A (ja) 蓄電デバイス
JP2020149941A (ja) 蓄電デバイス
JP7311973B2 (ja) 蓄電デバイス
JP7180499B2 (ja) 電極用組成物、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス及び電極用組成物の製造方法
US11201330B2 (en) Power storage device electrode, power storage device, and method of producing power storage device electrode

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210510

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220127

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220208

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220329

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20220621

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220808

C60 Trial request (containing other claim documents, opposition documents)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C60

Effective date: 20220808

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20220815

C21 Notice of transfer of a case for reconsideration by examiners before appeal proceedings

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C21

Effective date: 20220816

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20221025

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20221118

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7181709

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150