以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る給水装置を示す模式図である。この給水装置は主にマンション、オフィスビル、商業施設、又は、学校等の建物(給水対象)に液体を供給するための装置である。図1では、給水装置100が直結給水方式で使用されており、給水装置100の吸込口は、導入管5を介して水供給源4である水道本管に接続されている。ただし、給水装置100の水供給源4が受水槽である受水槽方式で使用されてもよい。給水装置100の吐出口には給水管7が接続されており、この給水管7は、各建物の給水栓(例えば蛇口)10に連通している。給水装置100は、水供給源4からの水を増圧し、建物の各給水栓10に水を供給する。建物の各給水栓10のうち、給水装置100から吐出した液の流路において配管抵抗が最大となる給水栓を末端の給水栓10aと記す。
給水装置100は、ポンプ2と、このポンプ2を駆動する駆動部としてのモータ3と、ポンプ2の可変速制御手段としてのインバータ20と、を備えている。なお、本実施形態では、インバータ20は、後述する制御部40とともに制御ユニット30を構成している。また、給水装置100は、ポンプ2の吐出し側(下流側)に、逆止弁22と、フロースイッチ24と、圧力センサ26と、圧力タンク28と、を備える。
図1に示す例では、ポンプ2、モータ3、逆止弁22、および、フロースイッチ24が2組設けられ、これらは並列に設けられている。なお、1組、または3組以上のポンプ2、モータ3、逆止弁22、およびフロースイッチ24が設けられてもよい。給水装置100は、複数台のポンプ2を設けることにより、一部のポンプ2が運転不可となった場合に、運転可能な他のポンプ2にて給水を継続し極力断水を避けることができる。
また、複数のポンプ2の上流側に、逆流防止装置25が設けられている。逆流防止装置
25は、給水装置100の吸込口に接続された導入管5に設けられており、給水装置100から水供給源4への水の逆流を防止する。逆流防止装置25の上流側には、圧力センサ21が設けられている。圧力センサ21は、ポンプ2の吸込圧力を測定するための圧力測定器である。なお、水供給源4が受水槽の場合、圧力センサ21は、なくてもよい。
逆止弁22は、ポンプ2の吐出口に接続された吐出管に設けられており、ポンプ2が停止したときの水の逆流を防止する。逆止弁22の下流側(二次側)には、フロースイッチ24が設けられている。フロースイッチ24は、吐出管を流れる水の流量が所定の値にまで低下したこと、すなわち過少水量(小水量)を検出する流量検出器である。なお、フロースイッチ24は、ポンプ2の吐出し合流管に設けられてもよい。吐出管におけるフロースイッチ24のさらに下流側には、圧力センサ26、及び、圧力タンク28が設けられている。圧力センサ26は、ポンプ2の吐出し圧力(以降、吐出し圧力とは、圧力センサ26によって計測された圧力を示す。)を測定するための圧力測定器である。圧力タンク28は、ポンプ2が停止している間、給水装置100の吐出し側の圧力を保持するための圧力保持器である。
給水装置100は、給水動作を制御する制御部40を備えている。図1および図2Aに示すように、制御部40は、記憶部47と、演算部48と、I/O部50と、設定部46と、表示部49と、を備えている。設定部46及び表示部49は、給水装置100の運転パネル51に備えられている。制御部40はインバータ20を介してモータ3を制御することによりポンプ2の駆動を制御する。本実施形態では、制御部40とインバータ20とを合わせて「制御ユニット30」という。
設定部46は、外部操作により、制御部40がポンプ2の制御に用いる各種設定値を設定するのに使用される。設定部46にて設定された各種設定値は、記憶部47に記憶される。一例として、ユーザーは、設定部46を介して、停止圧力Pf、始動圧力(始動圧)Ps、最大流量時の吐出し圧力PA、締切運転時の吐出し圧力PB、及び、その他制御に用いられる情報を入力できるようになっている。
表示部49は、ユーザーインターフェースとして機能し、記憶部47に格納されている設定値等の各種データや、現在のポンプ2の運転状況(運転状態)、例えば現在の制御モード(第1制御モード、第2制御モード、切替時制御モード(高モード、低モード))、ポンプ2の運転または停止、運転周波数(回転数)、電流、吸込圧力、吐出し圧力、および、入力電圧等を表示する。また、表示部49は、インバータトリップなど給水装置100に異常が生じているときには、警報ランプの点灯とブザー音とによってユーザーに異常を報知する。
図2Aは、運転パネルの具体的な一例を示す図である。図示するように、運転パネル51は、表示部49として、給水装置100の運転に関する情報(例えば、給水装置100の吐出し圧力、吸込圧力および入力電圧、ポンプ2の周波数(回転速度)、モータ3の電流等、各種異常)や、各種設定値等を表示する7セグメントLED510、警報ランプ511、ポンプ2の状態(運転・停止・故障)を示す表示器であって、ランプ512a、電力の消費レベル(ECOレベル、H・M・L)を示すECOランプ512b、切替時制御モード(高・低)を示すランプ512c、受水槽を有する場合の受水槽の状態(満水・減水・渇水)を示すランプ512d、及び、ポンプ2の駆動電源が蓄電器82であるか否かを表示するランプ512eを有する。また、運転パネル51は、設定部46として、ポンプ2を選択するための選択ボタン513、ポンプ2の試験運転と自動運転を切り替えるための試験自動ボタン514、警報発生時のブザー停止と警報解除のための警報解除ボタン515、各種設定値の表示と変更のための設定ボタン516、表示操作の機能を切り替えるための機能/モニタボタン517、表示の切替および各種設定値の増減を行うための上
下ボタン518、を有する。さらに、運転パネル51は、省電力の運転モードとするためのECOボタン(操作部)519、及び、ポンプ2の運転停止を選択する運転停止ボタン520を有する。また、運転パネル51は操作モードとして、各種設定値を設定変更する設定モードを有する。操作者は、設定ボタン516を所定時間(例えば1秒)長押しすると、運転パネル51が設定モードとなり、各種設定値の表示や変更ができる。
記憶部47としては、ROM、HDD、EEPROM、FeRAM、及び、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリが使用される。記憶部47には、各種データ、例えば演算部48における演算結果のデータ(運転時間、積算値等)、圧力値(吸込圧力、吐出し圧力)、自動給水制御にて用いられるデータ(停止圧力Pf、始動圧力(始動圧)Ps、最大流量時の吐出し圧力PA、締切運転時の吐出し圧力PB、設定圧Pt等)、設定部46を通じて入力されたデータ、及びI/O部50を通じて入力される、またはI/O部50を通じて出力されるデータ等が格納される。
I/O部50としては、ポート等が使用される。I/O部50は、インバータ20、圧力センサ21,26の信号、及び、フロースイッチ24の信号を取得する回路を有し、取得した信号情報を演算部48に送る。また、モータ3の回転速度を検出する図示しないセンサがモータ3に備えられていてもよい。I/O部50は、検出されたモータ3の回転速度をインバータ20を介して取得し、当該取得した信号情報を演算部48に送ってもよい。ただし、モータ3の回転速度は、モータ3に設けられたセンサによって検出されるものに限定されず、インバータ20の出力周波数から推定してもよい。本実施形態では、ポンプ2とモータ3とは同期しており、ポンプ2の回転速度とモータ3の回転速度とは同一である。ポンプ2とモータ3とに変速器が介在する場合には、変速器の変速比(可変である場合には現在の変速比)とモータ3の回転速度とに基づいて、ポンプ2の回転速度を取得してもよい。また、ポンプ2の回転速度は、モータ3の回転速度に基づいて取得されるものに限定されず、ポンプ2の回転速度を直接に検出するセンサから取得してもよい。なお、I/O部50は、通信によって各種信号の入出力を行ってもよいし、運転パネル51と同等の機能を持つ外部表示器52が接続されてもよい。なお、外部表示器52は、PDA(Personal Digital Assistant)等で構成された表示器であって、I/O部50とNFC(Near Field Communication)等の無線又は有線で接続されるとよい。なお、運転パネル51、I/O部50、および、外部表示器52等からの給水装置100への設定値入力や各種情報入力を外部入力と記す。
また、I/O部50とインバータ20は、RS422,RS232C,RS485等の通信手段により互いに接続される。I/O部50からインバータ20へ、各種設定値や周波数指令値、発停信号(運転・停止信号)などの制御信号が送られ、インバータ20からI/O部50へ、実際の周波数値や電流値等の運転状況(運転状態)が逐次送られる。
なお、I/O部50とインバータ20との間で送受信される制御信号は、アナログ信号および/またはデジタル信号を用いることができる。例えば、回転周波数等にはアナログ信号を用い、運転停止指令等にはデジタル信号を用いることができる。
演算部48としては、例えばCPUが使用される。演算部48は、記憶部47に格納されているプログラム及び各種データ、並びにI/O部50から入力される信号に基づいて、ポンプ2を運転するための各種データの設定、計時、及び、演算等を行う。
続いて、制御部40(制御ユニット30)による給水装置100の自動給水制御について説明する。制御部40は、吐出し圧力と予め設定されている目標圧力SVとの偏差を0とするためのフィードバック制御に基づき、ポンプ2をモータ3により駆動する。ポンプ2が停止している状態で吐出し圧力が所定の始動圧Psにまで低下すると、制御部40は
ポンプ2を始動させる。具体的には、制御部40はモータ3の駆動を開始するようにインバータ20に指令を出す。ポンプ2の運転中は、設定された圧力(設定圧)Ptにより推定末端圧力一定制御または目標圧力一定制御などの制御が行われる。具体的には推定末端圧力一定制御の場合は、ポンプ2の回転速度と、最大流量時の吐出し圧力PA、締切運転時の吐出し圧力PBに基づく目標圧力制御カーブとを用いて末端の給水栓10aの圧力が一定となるよう目標圧(SV)を設定する。また、目標圧力一定制御の場合は、所定の設定圧Ptを目標圧(SV)とする。さらに、吐出し圧力を現在圧(PV)とする。そして、SVとPVの差に基づいて、比例ゲインGp、及び積分ゲインGiを用いたPI演算、もしくは、比例ゲインGp、積分ゲインGi、及び微分ゲインGdを用いたPID演算を行い、ポンプ2の指令回転数が設定される。また、制御部40は、本実施形態のようにポンプが複数台ある場合は、同時に起動可能なポンプ台数(ポンプ並列運転台数)にて水量に応じたポンプの台数制御も行われる。
ポンプ2の運転中に建物での水の使用が少なくなると、フロースイッチ24は、過少水量を検出し、その検出信号を制御部40に送る(小水量状態)。制御部40はこの検出信号を受け、ポンプ2に指令を出して吐出し圧力が所定の停止圧力Pfに達するまでポンプ2の回転数を増加させ、圧力タンク28に蓄圧した後ポンプ2を停止(小水量停止)させる。ポンプ2が小水量停止した後に、再び建物内で水が使用されると吐出し圧力が始動圧Ps以下まで低下しポンプ2が始動する。なお、本実施形態のようにポンプが複数台ある場合には、始動するポンプ2をローテーションさせ、ポンプ2内に水が滞留するのを防ぐことが好ましい。また、小水量を検知する方法としては、フロースイッチ24を用いずに、モータ3の電流値による低負荷や締切圧力等その他の手段を用いてもよい。
次に、本実施形態の給水装置100の自動給水における、更に具体的なポンプ2の回転数制御について説明する。図3は、第1実施形態の制御部40により実行される制御モード設定処理の一例を示すフローチャートである。この制御モード設定処理は、給水装置100の制御モードを、通常時の第1制御モードと、第1制御モードよりも消費電力を小さくするための低電力制御を行う第2制御モードと、の一方に設定するための処理である。制御モード設定処理は、給水装置100の自動給水制御中に制御部40によって繰り返し実行される。なお、一般的に、給水装置は、製品群として、ポンプ2の口径や出力等の組み合わせによる複数の機種を備え、当該複数の機種の中から計画使用水量と全揚程を基に、給水先の建物に適した機種である給水装置100が選定される。ここで、給水先の建物の計画使用水量は、給水対象の建物に応じた適正な使用水量(瞬時最大使用水量)に、ある程度安全サイドに立った計算により求められる。また、全揚程もある程度安全サイドに立った計算により求められる。そのため、通常時の第1制御モードでは、後述する圧力PA1とPB1に基づく標準制御用揚程曲線Bが用いられた推定末端圧力一定制御であり、なお且つ、圧力PA1とPB1は、建物の末端の給水栓10aで必要な圧力が不足しないよう安全サイドに立った値となることが多い。そのため、給水装置100はポンプ2にて消費される電力が省力化される低電力制御である第2制御モードを有することができる。
ここで、第2制御モードの一例を、図2Bを用いて説明する。図2Bは、設定部46を介して設定されて記憶部47に記憶されている複数の制御用揚程曲線を示す。この例では、例えば建物の揚程(最上階の高さ)H1、給水栓10に必要な圧力(給水栓の圧損)H2、及び流量に依存する配管損失H3の合計(H1+H2+H3)から求められる必要揚程曲線Aに対し、例えば十数%程度の余裕を持たせた標準制御用揚程曲線Bの他に、3つの全流量域省エネ型制御用揚程曲線C1,C2,C3の合計4つの制御用揚程曲線が使用されている。
全流量域省エネ型制御用揚程曲線C1,C2,C3は、標準制御用揚程曲線Bに対して略並行に、全流量域に亘って揚程が低く設定され、かつ必要揚程曲線Aよりも揚程が高く
設定されている。そして、全流量域省エネ型制御用揚程曲線C1,C2,C3の順に、揚程が順に低くなるように設定されている。そして、この4つの制御用揚程曲線B,C1,C2,C3の内の一つが選択され、この選択された制御用揚程曲線B,C1,C2またはC3に基づいてポンプ2の回転速度が制御される。
図2Aに示すように、運転パネル51のECOボタン519は、記憶部47に記憶されている4つの制御用揚程曲線B,C1,C2,C3を順次切換える。そして、ポンプ2の回転速度の制御に使用される制御用揚程曲線は、該制御用揚程曲線に対応したECOランプ512b(H・M・L)にて表示されるとともに記憶部47に記憶される。
これによって、ECOボタン519を押さない場合は、制御部40によって第1制御モードが実行される。第1制御モードは、ECOランプ512bが点灯することなく、標準制御用揚程曲線Bがポンプ2の回転速度の制御に使用される。そして、操作者がECOボタン519を押すことで、制御部40によって第2制御モードが実行される。第2制御モードでは、ECOボタン519を1回押すと、ECOランプ512の“L”に対応するランプが点灯して、全流量域省エネ型制御用揚程曲線C1がポンプ2の回転速度の制御に使用され、ECOボタン519を2回押すと、ECOランプ512bの“M”に対応するランプが点灯して、全流量域省エネ型制御用揚程曲線C2がポンプ2の回転速度の制御に使用され、ECOボタン519を3回押すと、ECOランプ512bの“H”に対応するランプが点灯して、全流量域省エネ型制御用揚程曲線C3がポンプ2の回転速度の制御に使用される。ECOボタン519を4回押すと第1制御モードに復帰する。
これにより、第1制御モードに使用される制御用揚程曲線Bと、第2制御モードに使用される制御用揚程曲線C1,C2またはC3の切換を使用者がECOボタン519を押して簡便に行い、この切換えた制御モードをECOランプ512bで確認することができる。なお、ECOボタン519の押下の度に、制御に使用される制御用揚程曲線をBからC1,C1からC2、C2からC3、C3からBの順に切換えたが、該切替え順や第2制御モードに使用される制御用揚程曲線の数(H、M、L)はこれに依らない。
次に、この給水装置によって、使用者の使用流量がQ1となるように、ポンプの回転速度を制御する場合について、図2Bを参照して説明する。先ず、ECOボタン519を押さない場合、標準制御用揚程曲線Bに基づいて、ポンプ2の回転速度が制御され、標準制御用揚程曲線Bと流量がQ1との交点U3がポンプ2の運転ポイントとなる。この時、ECOランプ512bのランプは点灯されない。
使用者がECOボタン519を1回押すと、全流量域省エネ型制御用揚程曲線C1に基づいて、ポンプ2の回転速度が制御され、全流量域省エネ型制御用揚程曲線C1と流量Q1との交点U4がポンプ2の運転ポイントとなる。この時、省エネ表示部23の“L”に対応するランプが点灯する。ECOボタン519を2回押すと、全流量域省エネ型制御用揚程曲線C2に基づいて、ポンプ2の回転速度が制御され、全流量域省エネ型制御用揚程曲線C2と流量Q1との交点U5がポンプ2の運転ポイントとなる。この時、ECOランプ512bの“M”に対応するランプが点灯する。そして、ECOボタン519を3回押すと、全流量域省エネ型制御用揚程曲線C3に基づいて、ポンプ2の回転速度が制御され、全流量域省エネ型制御用揚程曲線C3と流量Q1との交点U6がポンプ2の運転ポイントとなる。この時、ECOランプ512bの“H”に対応するランプが点灯する。このように、制御用揚程曲線がC1、C2、C3、の何れかである第2制御モードであれば、制御用揚程曲線がBの第1制御モードの場合に比べて、ポンプ2にて消費される電力が省力化される低電力制御となる。
なお、以下の説明における第2制御モードにおける低電力制御は、ポンプの回転数制御
に用いる制御用揚程曲線としてC1、C2、C3、の何れかを用いる場合について説明するが、第2制御モードにおける低電力制御は、制御用揚程曲線B、C1、C2、C3は同じ曲線を用いて、ECOボタン519の押下により、設定圧Ptを変更してもよい。なお、ECOボタン519の操作に代えてまたは加えて、例えば、制御部40は、深夜の時間帯や昼間などの給水量が少ない時間帯に全流量域省エネ型制御用揚程曲線C1、C2、C3の何れかを用い、朝や夕方など1日のうちで給水量が比較的大きい時間帯に標準制御用揚程曲線Bを用いるものとし、演算部48の計時によって制御用揚程曲線を選択し、該選択した制御用揚程曲線に対応するECOランプ512bの表示を行ってもよい。また、制御部40は、ポンプ2の運転日時や回転速度等を給水量の履歴として記憶部47に記憶し、当該給水量の履歴に基づいて、給水量が少ない時間帯では全流量域省エネ型制御用揚程曲線C1、C2、C3の何れかを用い、給水量が大きい時間帯では標準制御用揚程曲線Bを用いてもよい。
図3の制御モード設定処理では、制御部40は、まず、第2制御モードが要請されているか否かを判定する(S100)。第1実施形態では、制御部40は、運転パネル51のECOボタン519の操作等によって低電力制御が選択されているときに、第2制御モードが要請されていると判断する。具体的には、制御部40は、ECOボタン519の操作等に応じて記憶が行われる記憶部47の所定の記憶領域を参照し、ECOランプ512bのH、M、L、の何れか点灯中であれば第2制御モードが要請されている、ECOランプ512bが消灯中であれば第2制御モードが要請されていない、と判定する。
第2制御モードが要請されているときには(S100:Yes)、制御部40は、低電力制御を行う第2制御モードを制御モードとし(S110)、記憶部47に前回の制御モードを記憶(S130)して、制御モード設定処理を終了する。このとき、制御部40は、記憶部47の不揮発性記憶領域(不揮発性メモリ)に前回の制御モードを記憶することが好ましい。
第2制御モードが要請されていないときには(S100:No)、制御部40は、記憶部47に記憶された前回の制御モードが第2制御モードであるか否かを判定する(S112)。第2制御モードが要請されておらず、且つ前回の制御モードが第2制御モードでないとき、つまり前回の制御モードが第1制御モードであるときには(S112:No)、制御部40は、制御モードを変更することなく第1制御モードを制御モードとし(S120)、記憶部47に前回の制御モードを第1制御モードとして記憶(S130)し、制御モード設定処理を終了する。なお、前回の制御モードは記憶部47の不揮発性メモリに記憶することで、給水装置は起動前の制御モードの状態を前回の制御モードとすることができる。
一方、第2制御モードが要請されておらず、且つ記憶部47に記憶された前回の制御モードが第2制御モードであるときには(S112:Yes)、制御部40は、第2制御モードから第1制御モードへと切り替えるための切替時制御処理を実行する(S114)。そして、制御部40は、切替時制御処理の後に、第1制御モードを制御モードとし(S120)、記憶部47に前回の制御モードを記憶(S130)して、制御モード設定処理を終了する。つまり、本実施形態では、制御部40は、第2制御モードから第1制御モードに切り替えるときには、切替時制御処理を実行した後に第1制御モードによる制御を実行する。この切替時制御処理の詳細については後で説明する。
図4は、制御用数値設定処理の一例を示すフローチャートである。この制御用数値設定処理は、制御モードに第1制御モードまたは第2制御モードが設定されたときに、給水装置100の制御に使用する制御用数値を設定する処理である。本実施形態では、制御用数値設定処理は、図3のフローにて、制御部40によって制御モードが第1制御モードから
第2制御モード、第2制御モードから第1制御モードに設定変更されたときに実行されるとよい。具体的には、図3のフローのステップS110にて、記憶部47に記憶された前回の制御モードが第1制御モードである場合と、ステップS120で記憶部47に記憶された前回の制御モードが第2制御モードである場合に実行されるとよい。
制御用数値設定処理が実行されると、制御部40は、現在の制御モードを判定する(S200)。具体的には、制御部40は、記憶部47の所定の記憶領域を参照する。そして、制御モードが第1制御モードであるときには(S200:第1制御モード)、制御部40は、制御用揚程曲線HCに標準制御用揚程曲線Bを設定(S201)し、所定の第1設定圧Pt1を設定圧Ptに設定するとともに(S202)、第1電流制限値As1を所定の電流制限値Asに設定する(S204)。また、制御部40は、運転可能ポンプ台数Pnに値N1を設定(S206)して、制御用数値設定処理を終了する。ここで、第1設定圧Pt1は、例えば制御用揚程曲線Bにおける最大流量時の吐出し圧力PA(図2Bにおける最大流量Q0におけるPA1)とすることができる。電流制限値Asは、一例として、インバータ20に流れる電流の制限値であり、第1電流制限値As1は、モータ3の定格電流に基づくストール電流値を用いることができる。この場合、インバータ20は、インバータ20に流れる電流が電流制限値Asを越えないようにモータ3を制御する。また、電流制限値Asは、複数のインバータ20に流れる合計電流値に対する制限値であってもよい。この場合、制御部40は、複数のインバータ20に流れる合計電流値が電流制限値Asを越えないようにインバータ20に指令を送信すればよい。運転可能ポンプ台数Pnは、同時に運転することを許容するポンプ台数であり、値N1としては、例えば給水装置100が備えるポンプ2の台数(本実施形態では「2」)とすればよい。なお、第1設定圧Pt1、第1電流制限値As1、及び値N1のそれぞれは運転パネル51において設定可能としてもよい。
制御用数値設定処理が実行されたときに、制御モードが第2制御モードであるときには(S200:第2制御モード)、制御部40は、制御用揚程曲線HCに全流量域省エネ型制御用揚程曲線C1,C2,C3(C1,C2,C3≦B)の何れかを設定(S211)し、設定圧Ptに第2設定圧Pt2を設定するとともに(S212)、電流制限値Asに第2電流制限値As2を設定する(S214)。また、制御部40は、運転可能ポンプ台数Pnに値N2を設定(S216)して、制御用数値設定処理を終了する。ここで、第2設定圧Pt2は、第1設定圧Pt1以下の圧力(Pt2≦Pt1)であり、第2電流制限値As2は、第1電流制限値As1以下の値(As2≦As1)であり、それぞれ、全流量域省エネ型制御用揚程曲線C1,C2,C3にてポンプ2を運転した実験またはシミュレーション等によって定めた値を用いることができる。また、運転可能ポンプ台数Pnに設定される値N2は、値N1以下の値(N2≦N1)であり、例えば値1とすることができる。なお、第2設定圧Pt2、第2電流制限値As2、及び値N2のそれぞれは運転パネル51において設定可能としてもよい。ここで、第2制御モードで設定する制御用揚程曲線、設定圧Pt、電流制限値As、運転可能ポンプ台数Pnのうち少なくともひとつは、第1制御モードで設定する値よりも小さい。これにより、第2制御モードは第1制御よりもポンプ2における電力の消費が少ない低電力制御となる。
第2制御モードで、設定圧Ptに、第1制御モードの第1設定圧Pt1よりも小さい第2設定圧Pt2が設定された場合、制御部40が設定するポンプ2の目標圧(SV)が小さくなる。また、第2制御モードで、電流制限値Asに、第1制御モードの第1電流制限値As1よりも小さい第2電流制限値As2が設定された場合、制御部40またはインバータ20は、インバータ20に流れる電流が第2電流制限値As2を超えないようにモータ3を制御する。こうした制御により、第2制御モードにおいては、特にポンプ2の回転数を増加させるとき、または、ポンプ2が大きい回転数で駆動されるときに、インバータ20に流れる電流が制限される。さらに、第2制御モードで、ポンプ2が運転される台数
が制限される場合ポンプ2の運転台数が制限され給水装置100の消費電力を低減させることができる。なお、図4における制御用数値設定処理は一例であり、設定圧Pt、電流制限値As、及び運転可能ポンプ台数Pnが第1制御モードと第2制御モーとで変更されるものに限定されるものではない。例えば、これらの制御用数値の少なくとも一部に代えて、または加えて他の制御用数値が第1制御モードと第2制御モードとで変更されてもよい。制御用数値設定処理にて変更する制御用数値としての他の例は、比例ゲインGp、インバータ20の加速時間等がある。
次に、第2制御モードから第1制御モードへ切り替えるときに実行される切替時制御処理について説明する。切替時制御処理では、第1制御モードにおけるポンプ2の制御とは異なる切替時制御処理によってポンプ2が制御される。本実施形態では、切替時制御では、切替時制御モードでポンプ2が制御され、当該切替時制御モードは、高出力制御モード、低出力制御モード、急変化制御モード、および、緩変化制御モードを有する。なお、本実施形態の制御ユニット30は、切替時制御処理として、高出力制御モード、低出力制御モード、急変化制御モード、および、緩変化制御モードのうちひとつの切替時制御モードを選択するものとしたが、切替時制御処理は、高出力制御モードと急変化制御モードとの組み合わせ、または、低出力制御モードと緩変化制御モードを組み合わせでもよい。また、切替時制御処理では、緩変化制御モードから所定時間経過したら急変化制御モードに移行してもよいし、低出力制御モードから所定時間経過したら高出力制御モードに移行する等、経過時間や給水量によって適時切替時制御モードを組み合わせてもよい。このように、制御ユニット30は、切替時制御モードを複数有し、当該複数の切替時制御モードのうち少なくともひとつが、外部入力や給水状況等の判断によって選択される。複数の切替時制御モードのうち少なくともひとつが選択されることで、制御ユニット30は、使用者の要望または給水装置100が置かれた設置状況などに応じた切替時制御処理で、適切に給水することができる。
以下、ポンプ2の出力制御である高出力制御モードまたは低出力制御モードによる給水装置100の制御と、ポンプ2の出力の変化量を制御する急変化制御モードまたは緩変化制御モードによる給水装置100の制御について説明する。
図5Aは、制御ユニット30によって実行される高出力制御モード時制御処理の一例を示すフローチャートである。高出力制御モードでは、制御部40は第2制御モードから第1制御モードに切り替えるとき、第1制御モードとポンプ2の出力が異なる切替時制御処理によってポンプ2を制御する。この処理は、図3の切替時制御処理(S114)の一例であり、制御モードを第1制御モードから第2制御モードへと切り替えるときに実行される。
高出力制御モード時制御処理が実行されると、まず、制御部40は、給水装置100の制御に使用される制御用数値に高出力制御モード用の数値を設定する(S311〜318)。具体的には、制御部40は、制御用揚程曲線HCに高出力用標準制御用揚程曲線B1aを設定し(S311)、設定圧Ptに第3設定圧Pt3aを設定し(S312)、始動圧Psに第3始動圧Ps3aを設定する(S314)。また、制御部40は、始動ポンプ台数Pnsに値N3aを設定し(S316)、ポンプ始動回転数Nsに第3回転数Ns3aを設定する(S318)。ここで、高出力用標準制御用揚程曲線B1aは、図5Cに示すように、各流量における圧力値が標準制御用揚程曲線Bの圧力値以上(B1a≧B)である。高出力用標準制御用揚程曲線B1aは標準制御用揚程曲線Bと並行であることが好ましい。第3設定圧Pt3aは、第1制御モードにおける第1設定圧Pt1以上の圧力(Pt3a≧Pt1)であり、例えば最大流量時の吐出し圧力PAに所定の圧力を加えた圧力とすることができる。また、S312では、運転時の吐出し圧力PB1に所定の圧力を加えた圧力PB3aを設定してもよい。第3始動圧Ps3aは、第1制御モード及び第2制御モードにおける始動圧Ps0以上の圧力(Ps3a≧Ps0)であり、実験またはシ
ミュレーション等によって定めた値を用いることができる。始動ポンプ台数Pnsは、ポンプ2を同時に始動させる台数(N3a≧N1)であり、値N3aとして、例えば値2など予め定めた値を用いることができる。ポンプ始動回転数Nsは、ポンプ2を始動させるときに目標回転数として使用され、第3回転数Ns3aとしては、第1制御モード及び第2制御モードにおける始動回転数Ns0以上の回転数(Ns3a≧Ns0)を用いることができる。なお、高出力用標準制御用揚程曲線B1a、第3設定圧Pt3a、第3始動圧Ps3a、値N3a、及び第3回転数Ns3aのそれぞれは運転パネル51において設定可能としてもよい。
高出力制御モード用の制御用数値を設定すると、制御部40は、設定した制御用数値を用いてポンプ2の運転を制御する(S320)。具体的には、吐出し圧力が始動圧Ps以下で、制御部40はポンプ2を始動させる。そして、ポンプ2の運転中は、設定された圧力(設定圧)Ptにより推定末端圧力一定制御または目標圧力一定制御などの制御が行われる。その後、ポンプ2の運転中に建物での水の使用が少なくなると、ポンプ2を小水量停止させる。また、S320で、制御部40は、ポンプ2の運転に関する回転速度や吐出し圧力、電流値、及び発停時間、発停回数等の各種運転履歴を記憶部47に記憶するとよい。高出力制御モードで、制御用揚程曲線に高出力用標準制御用揚程曲線B1a、および、設定圧Ptに、第1制御モードの第1設定圧Pt1よりも大きい第3設定圧Pt3aが設定されると、制御部40が設定するポンプ2の目標圧(SV)が大きくなる。また、高出力制御モードで、始動圧Psに、第1制御モードの始動圧Ps0よりも大きい第3始動圧Ps3aが設定されると、第1制御モードよりも早くポンプ2が起動する。ポンプ始動回転数Nsに、第1制御モード時の始動回転数Ns0よりも大きい第3回転数Ns3aが設定されると、第1制御モード時よりも高い回転数を指定してポンプ2を始動する。始動ポンプ台数Pnsに、第1制御モード時よりも大きい値N3aが設定されると、第1制御モード時よりも給水量が増える。これらの作用により、第1制御モードに比して、ポンプ2が始動されるタイミングが早くなるとともに、始動ポンプ台数Pnsに基づく複数台のポンプ2が同時に始動され、更に、給水量が増える。また、ポンプ2を迅速に始動するとともに高い圧力にて給水することができる。したがって、高出力制御モードでは、上述した制御用数値のうち少なくともひとつを用いることで、第1制御モードに比して、ポンプ2の出力を大きくすることができるとともに、ポンプ2を迅速に始動することができ、低電力制御(第2制御モード)から復帰した時の給水圧力の低下を抑制できる。つまり、低電力制御や電力不足による断水が解除されたときに増加する給水量に対応できる。また、高出力制御モードによって駆動部が制御された後に第1制御モードに切り替えられることで、適切に給水することができる。
制御部40は、S320にてポンプ2が運転中の場合またはポンプ2を始動した場合、所定時間が経過する(S322)まで、高出力制御モードによるポンプ2の運転を継続する。ここで、所定時間としては、予め実験等により定められた時間を用いることができ、運転パネル51において設定可能としてもよい。そして、高出力制御モードによるポンプ2の制御を開始してから所定時間が経過(S322:Yes)した後、ポンプ2が小水量停止したら(S324:Yes)、制御部40はS320におけるポンプ2の運転に関する各種運転履歴を記憶部47の不揮発性メモリに記憶して(S326)、切替時制御処理を終了する。また、制御部40は、S320にて、吐出し圧力が始動圧Psより大きい状態が継続したためにポンプ2を始動せずに、所定時間が経過(S322:Yes)したら、ポンプ2は小水量停止中(S324:Yes)として、制御部40は、ポンプ2の運転に関する各種運転履歴を記憶部47の不揮発性メモリに記憶して(S326)、切替時制御処理を終了する。切替時制御処理が終了すると、図3の制御モード設定処理において、制御モードが第1制御モードに設定され(S120)、その後、図4の制御用数値設定処理を経て、制御部40によって第1制御モードによる給水装置100の制御が実行される。
上記したように、制御モードに第2制御モードが設定されているときには、給水装置100による消費電力が小さくなるが、それに伴い、ポンプ2が小さい出力で運転されるため、使用者が十分な水を使用することができないおそれがある。このため、第2制御モードが解除され、第1制御モードに切り替えられるときに、使用者が、短期間だけ通常時よりも大量の水を使用することが想定される。これに対して、本実施形態の給水装置100では、第2制御モードから第1制御モードに切り替えられるときには、所定時間は高出力制御モードによってポンプ2を制御し、その後、第1制御モードによってポンプ2を制御する。これにより、第2制御モードの解除後に、給水装置100による給水圧力が不足することを抑制し、適切に給水することができる。ここで、S322における所定時間は、切替時制御処理が実行される前に第2制御モードによってポンプ2が制御されていた時間に基づいて設定してもよい。すなわち、制御部40は、第2制御モードによってポンプ2が制御されていた時間を計測し、当該時間が長いほどS322の所定時間を長い時間に設定する。具体的には、第2制御モードによってポンプ2が制御されていた時間と、予め定めたマップまたは換算式とに基づいて、S322の所定時間が設定されてもよい。こうすれば、制御モードに第2制御モードが設定されてポンプ2が小さい出力で運転される時間が長いほど、第2制御モードが解除されたときの切替時制御処理を実行する時間を長くすることができ、より適切に給水することができる。
なお、図5Aにおける高出力制御モード時制御処理は一例であり、高出力制御モードは、設定圧Pt、始動圧Ps、始動ポンプ台数Pns、及びポンプ始動回転数Nsが変更されるものに限定されるものではない。例えば、これらの制御用数値の少なくとも一部に代えて、または加えて他の制御用数値が変更されてもよい。また、高出力制御モードでは、ポンプ2が小水量状態となったときに、所定期間にわたってポンプ2を停止させることなく強制的に運転させるものとしてもよい。さらに、高出力制御モードでポンプ2を制御してから所定時間が経過するまで(S322)、ポンプ2が小水量状態となっても、ポンプ2を停止させることなく強制的に運転させるものとしてもよい。こうすれば、急に多量の水が使用されることによって給水圧力が不足してしまうことを防止できる。ただし、ポンプ2の温度が所定の閾値以上に至ったときには、ポンプ2を停止させることが好ましい。
図5Bは、制御ユニット30によって実行される低出力制御モード時制御処理の一例を示すフローチャートである。低出力制御モードでは、制御部40は第2制御モードから第1制御モードに切り替えるとき、第1制御モードとポンプ2の出力が異なる切替時制御処理によってポンプ2を制御する。この処理は、図3の切替時制御処理(S114)の一例であり、制御モードを第2制御モードから第1制御モードへと切り替えるときに実行される。なお、図5Bでは、図5Aの高出力制御モード時制御処理と同一の処理に対して同一の符号を付している。
低出力制御モード時制御処理が実行されると、制御部40は、給水装置100の制御に使用される制御用数値に低出力制御モード用の数値を設定する(S331〜338)。具体的には、制御部40は、制御用揚程曲線HCに低出力用制御用揚程曲線B1bを設定し(S331)、設定圧Ptに第3設定圧Pt3bを設定し(S332)、始動圧Psに第3始動圧Ps3bを設定する(S314)。また、制御部40は、始動ポンプ台数Pnsに値N3bを設定し(S316)、ポンプ始動回転数Nsに第3回転数Ns3bを設定する(S318)。ここで、低出力用標準制御用揚程曲線B1bは、図5Cに示すように、各流量における圧力値が標準制御用揚程曲線Bの圧力値以下(B1b≦B)である。また、低出力用標準制御用揚程曲線B1bは標準制御用揚程曲線Bと並行であることが好ましい。第3設定圧Pt3bは、第1制御モードにおける第1設定圧Pt1以下の圧力(Pt3b≦Pt1)であり、例えば最大流量時の吐出し圧力PAに所定の圧力を減じた圧力とすることができる。また、S332での設定圧の設定は、締切運転時の吐出し圧力PB1
に所定の圧力を減じた圧力PB3bとしてもよい。第3始動圧Ps3bは、第1制御モード及び第2制御モードにおける始動圧Ps0以下の圧力(Ps3b≦Ps0)であり、実験またはシミュレーション等によって定めた値を用いることができる。値N3bとして、例えば値1など予め定めた値(N3b≦N1)を用いることができる。第3回転数Ns3bとしては、第1制御モード及び第2制御モードにおける始動回転数Ns0以下の回転数(Ns3≦Ns0)を用いることができる。なお、低出力用標準制御用揚程曲線B1b、第3設定圧Pt3b、第3始動圧Ps3b、値N3b、及び第3回転数Ns3bのそれぞれは運転パネル51において設定可能としてもよい。
低出力制御モード用の制御用数値を設定すると、制御部40は、設定した制御用数値を用いてポンプ2の運転を制御する(S320)。低出力制御モードで、設定圧Ptに、第1制御モードの第1設定圧Pt1よりも小さい第3設定圧Pt3bが設定されると、制御部40が設定するポンプ2の目標圧(SV)が小さくなる。また、低出力制御モードで、始動圧Psに、通常時の始動圧Ps0よりも小さい第3始動圧Ps3bが設定されると、通常時よりも遅くポンプ2が起動する。ポンプ始動回転数Nsに、通常時の始動回転数Ns0よりも小さい第3回転数Ns3bが設定されると、通常時よりも低い回転数を指定してポンプ2を始動する。始動ポンプ台数Pnsに、通常時よりも小さい値N3bが設定されると、通常時よりも給水量が減る。これらの作用により、第1制御モードに比して、ポンプ2の出力を抑えて始動することができる。これにより、制御モードが第2制御モードから第1制御モードへと切り替えられたときに、第1制御モードよりも低い圧力にて給水し、給水量や電力量を抑え、適切に給水することができる。つまり、低電力制御や電力不足による断水が解除されたときに、給水量や電力量を抑えることができ、ポンプの出力が意図しない大きなものとなることを抑制して適切に給水することができる。
そして、制御部40は、高出力制御モード時制御処理と同様に、所定時間が経過すると共に(S322)、ポンプが小水量停止するまで(S324)、低出力制御モードによるポンプ2の運転を継続する。そして、低出力制御モードによるポンプ2の制御を開始してから所定時間が経過すると共に(S322:Yes)、ポンプ2が小水量停止したら(S324:Yes)、制御部40は、S320におけるポンプ2の運転に関する各種運転履歴を記憶部47の不揮発性メモリに記憶して(S326)、切替時制御処理を終了する。また、制御部40は、S340にて吐出し圧力が始動圧Psより大きい状態が継続したためにポンプ2を始動せずに、所定時間が経過(S322:Yes)したら、ポンプ2は小水量停止中(S324:Yes)として、制御部40は、S320におけるポンプ2の運転に関する各種運転履歴を記憶部47の不揮発性メモリに記憶して(S326)、切替時制御処理を終了する。切替時制御処理が終了すると、図3の制御モード設定処理において、制御モードが第1制御モードに設定され(S120)、その後、図4の制御用数値設定処理を経て、制御部40によって第1制御モードによる給水装置100の制御が実行される。
上記したように、制御モードに第2制御モードが設定されているときには、ポンプ2が小さい出力で運転されるため、使用者が十分な水を使用することができずに給水栓を大きく開いていることが想定される。給水栓が大きく開かれている状態で、第2制御モードが解除されて、制御モードが第2制御モードから第1制御モードへと切り替えられると、給水栓から急に意図しない流量の水が出るおそれがある。つまり、給水装置100が過剰な反応を示すおそれがある。これに対して、本実施形態の給水装置100では、第2制御モードが解除された後、低出力制御モードによってポンプ2を制御した後に、第1制御モードによってポンプ2を制御する。これにより、第2制御モードの解除後に、ポンプ2の出力が過大となることを抑制し適切に給水することができ、更には、吐出し圧力の急変に伴う水道本管圧の低下や供給電力の不足を防止できる。つまり、低電力や電力不足による断水が解除されたときに一時的に増加する給水量に対応できる。
なお、図5Bにおける低出力制御モード時制御処理は一例であり、低出力制御モードは、設定圧Pt、始動圧Ps、始動ポンプ台数Pns、及びポンプ始動回転数Nsが変更されるものに限定されるものではない。例えば、これらの制御用数値の少なくとも一部に代えて、または加えて他の制御用数値が変更されてもよい。また、低出力制御モードでは、高出力制御モードと同様に、ポンプ2が小水量状態となったときに、所定期間にわたってポンプ2を停止させることなく強制的に運転させるものとしてもよい。さらに、低出力制御モードでポンプ2を制御してから所定時間が経過するまで(S322)、ポンプ2が小水量状態となっても、ポンプ2を停止させることなく強制的に運転させるものとしてもよい。こうすれば、低出力制御モード中に流量が急変しても吐出し圧力が急変してしまうことを抑制できる。ただし、ポンプ2の温度が所定の閾値以上に至ったときには、ポンプ2を停止させることが好ましい。
図6Aは、制御ユニット30によって実行される急変化制御モード時制御処理の一例を示すフローチャートである。急変化制御モードでは、制御部40は第2制御モードから第1制御モードに切り替えるとき、ポンプ2の出力の変化が第1制御モードと異なる切替時制御処理によってポンプ2を制御する。この処理は、図3の切替時制御処理(S114)の別の一例であり、制御モードを第2制御モードから第1制御モードへと切り替えるときに実行される。なお、図6Aでは、図5Aの高出力制御モード時制御処理と同一の処理に対して同一の符号を付している。
急変化制御モード時制御処理が実行されると、まず、制御部40は、給水装置100の制御に使用される制御用数値に急変化制御モード用の数値を設定する(S411〜416)。具体的には、制御部40は、制御用揚程曲線HCに急変化用標準制御用揚程曲線B4aを設定し(S411)、設定圧Ptに第4設定圧Pt4aを設定し(S412)、運転可能ポンプ台数Pnに値N4aを設定する(S414)。また、制御部40は、比例ゲインGpに値Gp4aを設定する(S416)。ここで、急変化用標準制御用揚程曲線B4aは、図6Cに示すように、所定の流量における接線の傾きが、標準制御用揚程曲線Bの傾きよりも大きい。第4設定圧Pt4aは、第1制御モードにおける第1設定圧Pt1以上の圧力(Pt4a≧Pt1)であり、例えば第3設定圧Pt3aと同一の圧力を用いることができる。また、S412では、締切運転時の吐出し圧力PB4aを設定してもよい。PB4aはPB1の値を設定することが好ましいが、PB4aとPt4aを結んだ揚程曲線の傾きが標準制御用揚程曲線Bの傾きよりも大きいのであれば、PB4aはPB1より小さくても大きくてもよい。運転可能ポンプ台数Pnに設定される値N4aは、第1制御モード時の値N1以上の値(N4a≧N1)であり、例えば値N3aと同一の値を用いることができる。比例ゲインGpに設定される値Gp4aは、第1制御モード時の比例ゲインGp0以上の値(Gp4a≧Gp0)であり、急変化用標準制御用揚程曲線B4a、および、第4設定圧Pt4aにてポンプ2を運転させた実験またはシミュレーション等によって定めた値を用いることができる。また、S416で、制御部40は、比例ゲインGpに値Gp4aを設定するのに、加えて又は代えて、インバータ20の加速時間を第1制御モード時よりも短く設定してもよい。なお、揚程曲線B4a、第4設定圧Pt4a、値N4a、及び値Gp4aのそれぞれは運転パネル51において設定可能としてもよい。
急変化制御モード用の制御用数値を設定すると、制御部40は、設定した制御用数値を用いてポンプ2の回転速度を制御する(S320)。急変化制御モードでは、設定圧Ptに、第1制御モードの第1設定圧Pt1よりも変化の割合が大きい第4設定圧Pt4aが設定され、ポンプ2の目標圧(SV)の変化が大きくなる。また、一般的にポンプ2の回転速度と吐出し流量は比例するため、急変化制御モードでは、比例ゲインGpに、第1制御モードの比例ゲインGp0以上の値Gp4aが設定されるため、ポンプ2の吐出し流量が迅速に変化する。したがって第2制御から第1制御へ切り替わった直後の流量不足は迅
速に解消されるので、適切に給水することができる。つまり、低電力制御や電力不足による断水が解除されたときに急激に増加する給水量に対応できる。また、急変化制御モードによって駆動部が制御された後に第1制御モードに切り替えられることで、迅速に給水することができる。
制御部40は、所定時間が経過すると共に(S322)、ポンプ2が小水量停止するまで(S324)、急変化制御モードによるポンプ2の制御を継続する。そして、急変化制御モードによるポンプ2の制御を開始してから所定時間が経過して(S322:Yes)、ポンプ2が小水量停止したら(S324:Yes)、制御部40は、ポンプ2の運転に関する各種運転履歴を記憶部47に記憶して(S326)、切替時制御処理を終了する。
こうした急変化制御モードにより、第2制御から第1制御へ切り替わった直後の給水装置100による給水量が不足することを抑制し、適切に給水することができる。なお、図6Aにおける急変化制御モード時制御処理は一例であり、急変化制御モードは、設定圧Pt、運転可能ポンプ台数Pn、及び比例ゲインGpが変更されるものに限定されるものではない。例えば、インバータ20の加速時間や減速時間など、上述した制御用数値の少なくとも一部に代えて、または加えて他の制御用数値が変更されてもよい。また、急変化制御モードでは、高出力制御モードと同様に、ポンプ2が小水量状態となったときに、所定期間にわたってポンプ2を停止させることなく強制的に運転させるものとしてもよい。さらに、急変化制御モードでポンプ2を制御してから所定時間が経過するまで(S322)は、ポンプ2が小水量状態となっても、ポンプ2を停止させることなく強制的に運転させるものとしてもよい。こうすれば、給水装置100による給水量が一時的に不足してしまうことを抑制できる。ただし、ポンプ2の温度が所定の閾値以上に至ったときには、ポンプ2を停止させることが好ましい。
図6Bは、制御部40によって実行される緩変化制御モード時制御処理の一例を示すフローチャートである。緩変化制御モードで、制御部40は第2制御モードから第1制御モードに切り替えるとき、ポンプ2の出力の変化が第1制御モードと異なる切替時制御処理によってポンプ2を制御する。この処理は、図3の切替時制御処理(S114)の別の一例であり、制御モードを第2制御モードから第1制御モードへと切り替えるときに実行される。なお、図6Bでは、図5Aの高出力制御モード時制御処理と同一の処理に対して同一の符号を付して説明を省略する。
切替時制御処理にて、緩変化制御モード時制御処理が実行されると、まず、制御部40は、給水装置100の制御に使用される制御用数値に緩変化制御モード用の数値を設定する(S431〜436)。具体的には、制御部40は、制御用揚程曲線HCに暖変化用標準制御用揚程曲線B4bを設定し(S431)、設定圧Ptに第4設定圧Pt4bを設定し(S432)、運転可能ポンプ台数Pnに値N4bを設定する(S434)。また、制御部40は、比例ゲインGpに値Gp4bを設定する(S436)。ここで、暖変化用標準制御用揚程曲線B4bは、図6Cに示すように、所定の流量における接線の傾きが、標準制御用揚程曲線Bの傾きよりも小さい。第4設定圧Pt4bは、第1制御モードにおける第1設定圧Pt1以下の圧力(Pt4b≦Pt1)であり、例えば、第3設定圧Pt3bと同一の圧力を用いることができる。また、S432では、締切運転時の吐出し圧力PB4bを設定してもよい。PB4bとPt4bを結んだ揚程曲線の傾きが標準制御用揚程曲線Bの傾きよりも小さいのであれば、PB4bはPB1以上でも以下でもよい。運転可能ポンプ台数Pnに設定される値N4bは、第1制御モード時の値N1以下の値(N4≦N1)であり、例えば第2制御モード時の値N2と同一の値を用いることができる。比例ゲインGpに設定される値Gp4bは、第1制御モード時の比例ゲインGp0以下の値(Gp4≦Gp0)であり、暖変化用標準制御用揚程曲線B4bや第4設定圧Pt4bにてポンプ2を運転した実験またはシミュレーション等によって定めた値を用いることもでき
る。また、S436で、制御部40は、比例ゲインGpに値Gp4aを設定するのに、加えて又は代えて、インバータ20の加速時間を第1制御モード時よりも長く設定してもよい。なお、第4設定圧Pt4b、値N4b、及び値Gp4bのそれぞれは運転パネル51において設定可能としてもよい。
緩変化制御モード用の制御用数値を設定すると、制御部40は、設定した制御用数値を用いてポンプ2の回転速度を制御する(S320)。緩変化制御モードでは、設定圧Ptに、第1制御モードの第1設定圧Pt1よりも流量の変化に対して目標圧変化が小さくなる第4設定圧Pt4bが設定されると、制御部40が設定するポンプ2の目標圧(SV)の変化が小さくなる。また、緩変化制御モードでは、比例ゲインGpに、第1制御モード時の比例ゲインGp0よりも小さい値Gp4が設定されると、ポンプ2の回転速度が緩やかに変化する。これにより、緩変化制御モードでは、第1制御モードに比して、ポンプ2の出力を緩やかに変化させることができる。
制御部40は、所定時間が経過すると共に(S322)、ポンプ2が小水量停止するまで(S324)、緩変化制御モードによるポンプ2の制御を継続する。そして、緩変化制御モードによるポンプ2の制御を開始してから所定時間が経過して(S322:Yes)、ポンプ2が小水量停止したら(S324:Yes)、制御部40は、ポンプ2の運転に関する各種運転履歴を記憶部47に記憶して(S326)、切替時制御処理を終了する。
上記したように、制御モードに第2制御モードが設定されているときには、ポンプ2が第1制御モードよりも消費電力の小さい状態で運転されるため、制御部40によって給水量が制限され、使用者は十分な量の水を使用できず、給水栓を大きく開いている(例えば全開)ことも想定される。給水栓が大きく開かれている状態で、第2制御モードが解除されて第1制御モードへと切り替えられると、給水栓から急に意図しない流量の水が出るおそれがある。つまり、給水量の制限が解除された給水装置100が過剰な反応を示し、制御部40はポンプ2の回転速度を急激に加速するおそれがある。これに対して、本実施形態の給水装置100では、第2制御モードが解除されて第1制御モードに切り替えられるときには、ポンプ2の吐出し流量が緩やかに変化する緩変化制御モードによってポンプ2を制御した後に、第1制御モードによってポンプ2を制御する。これにより、制御モードが第2制御モードから第1制御モードへと切り替えられたときに、ポンプ2の吐出し流量が一時的に急変することを抑制し、適切に給水することができる。つまり、低電力制御や電力不足による断水が解除されたときに、給水量や電力量を抑えることができ、ポンプの出力の意図しない変化を抑制して適切に給水することができる。
なお、図6Bにおける緩変化制御モード時制御処理は一例であり、緩変化制御モードは、設定圧Pt、運転可能ポンプ台数Pn、及び比例ゲインGpが変更されるものに限定されるものではない。例えば、これらの制御用数値の少なくとも一部に代えて、または加えて他の制御用数値が変更されてもよい。また、緩変化制御モードでは、高出力制御モードと同様に、ポンプ2が小水量状態となったときに、所定期間にわたってポンプ2を停止させることなく強制的に運転させるものとしてもよい。さらに、緩変化制御モードでポンプ2を制御してから所定時間が経過するまで(S322)、ポンプ2が小水量状態となっても、ポンプ2を停止させることなく強制的に運転させるものとしてもよい。ただし、ポンプ2の温度が所定の閾値以上に至ったときには、ポンプ2を停止させることが好ましい。こうすれば、ポンプ2の吐出し流量が急変してしまうことを抑制できる。
なお、図5A、図5B、図6A、及び図6Bに示す例では、所定時間が経過する条件(第1条件)と、ポンプ2が小水量停止する条件(第2条件)とが共に成立したら、切替時制御を終了して第1制御モードによる制御を開始するものとした。しかし、こうした例に限定されず、例えば、制御部40は、切替時制御処理を終了する条件として、上述した第1条件または第2条件のうち少なくとも一方のみを有し、第1条件と第2条件のどちらか
一方が成立したら、切替時制御を終了して第1制御モードによる制御を開始するものとしてもよい。
切替時制御処理において、図5A、図5B、図6A、及び図6Bに示す何れのモードにて制御を実行するかは、運転パネル51で設定できるとよい。また、運転パネル51(表示部49)のランプ512cによって、切替時制御処理が実行されていることが表示されるとよい。こうすれば、ECOボタン519を操作したユーザーが、制御モードの切替時制御処理が実行されていることを認識できる。なお、運転パネル51は、切替時制御処理の各モードによる制御が実行されていることの表示と合わせて、当該制御モードによる制御の継続時間と、当該制御モードによる制御が変更されるまでの予測時間と、の少なくとも一方を表示できるとよい。ここで、予測時間は、一例として、切替時制御処理が開始されてから所定時間が経過するまでの時間とすることができ、当該時間にマージンを加えた時間とすることもできる。
また、切替時制御処理において、図5A、図5B、図6A、及び図6Bに示す何れの切替時制御モードによる制御を実行するかは、制御部40が選択するものとしてもよい。図7は、制御部40により実行される切替時制御モード判定処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、切替時制御処理が終了するときに実行され、次回に切替時制御処理が実行されるときの切替時制御処理の切替時制御モードが選択される。なお、図7の処理では、制御部40は、切替時制御処理として、高出力制御モードまたは緩変化制御モードを選択しているが、こうした例には限定されない。例えば、高出力制御モードに代えて、または加えて急変化制御モードを選択してもよいし、緩変化制御モードに代えて、または加えて低出力制御モードを選択してもよい。つまり、制御部40は、切替時制御モードを複数(例えば、低出力制御モード、高出力制御モード、緩変化制御モード、および、急変化制御モードの4つのモード)有し、当該切替時制御モードのうち何れの切替時制御モードによる切替時制御を実行するか、および/または、切替時制御モードを、どのような組み合わせ(切替時制御モードの組み合わせや実行するタイミング等)で実行するか、等を選択できるとよい。または、制御部40は、切替時制御モードを少なくともひとつ有し、当該切替時制御モードを実行するか否か、を選択できるとよい
切替時制御処理が実行されると、制御部40は、まず、前回に切替時制御処理が実行されたときのポンプ2の運転に関する情報を参照する(S600)。制御部40は、切替時制御処理S320を実行しているときのポンプ2の運転に関する情報を記憶部47の所定領域に記憶(S326)しており、S600の処理において、S326にて記憶した記憶部47の当該所定領域を参照するものとすればよい。つまり、制御部40は、切替時制御処理が実行されたとき(S320)の運転履歴情報を参照する。ここで、本実施形態では、ポンプ2の運転に関する情報としてポンプ2の回転速度が参照されるものとしたが、回転速度に代えて、または加えて、流量、吐出し圧力、および、モータ3の電流値、など種々の情報が参照されてもよい。
続いて、制御部40は、前回に実行された切替時制御処理におけるポンプ2の最大回転速度Nmaxを閾値Nrefと比較するとともに(S602)、回転速度の最大変化aを閾値arefと比較する(S610)。ここで、ポンプ2の回転速度と流量は比例するので、閾値Nrefは、ポンプ2が大流量にて運転したか否かを判定するための値であり、インバータ20の最高周波数や予め実験等により定めた値を用いることができる。回転速度の最大変化aは、前回の切替時制御処理のポンプ運転(ステップS320)における、回転速度の単位時間における変化の最大値を意味する。閾値arefとしては、前回の切替時制御処理時にポンプ2の回転速度が急増したか否かを判定するための値であり、予め実験等により定めた値を用いることができる。また、閾値Nref及び閾値arefは、運転パネル51において設定可能としてもよい。
制御部40は、前回の切替時制御処理におけるポンプ2の最大回転数Nmaxが閾値Nrefよりも大きいときには(S602:Yes)、第2制御モードから第1制御モードに切り替えると、水が大量に使用されると予測し、ポンプ2に大きな出力が必要と判断する。このため、第2制御モードから第1制御モードに切り替えられるときには、切替時制御処理において高出力制御モードによる制御がなされるように、高出力制御モードを切替時制御モードに設定して(S604)、本判定処理を終了する。
また、制御部40は、前回の切替時制御処理におけるポンプ2の回転数の最大変化aが閾値arefよりも大きいときには(S610:Yes)、第2制御モードから第1制御モードに切り替えると、吐出し流量が急変する建物であり、吐出し流量の急変に伴い水道本管圧の低下や供給電力不足のおそれがあると予測して、ポンプ2の出力の急変を抑える必要がある、と判断する。このため、第2制御モードから第1制御モードに切り替えられるときには、切替時制御モードにおいて緩変化制御モードによる制御がなされるように、緩変化制御モードを切替時制御モードに設定して(S614)、本判定処理を終了する。
制御部40は、前回の切替時制御処理においてポンプ2の最大回転数Nmaxが閾値Nref以下であり(S602:No)、回転数の最大変化aが閾値aref以下であるときには(S610:No)、第2制御モードから第1制御モードに切り替えるときにポンプ2が大きな出力で運転されていないと共に急変していないと判断する。このため、次回に第2制御モードから第1制御モードに切り替えられるときには、切替時制御処理を実行することなく、直接に第1制御モードが実行されるものとし(S616)、本判定処理を終了する。
こうした切替時制御モード判定処理により、制御部40によって、高出力制御モードによる切替時制御処理、緩変化制御モードによる切替時制御処理、又は切替時制御処理を実行することなく直接に第1制御モードが実行されること、が選択される。これにより、ポンプ2の運転履歴に基づいて、給水装置100による適切な給水を行うことができる。なお、切替時制御処理を実行することなく直接に第1制御モードが実行された場合、第1制御モードが実行された直後から所定の時間間隔で制御部40は運転履歴情報を記憶部47に記憶し、次に図7のフローを実行するときに、当該運転履歴情報を用いて切り替え時制御モードを判定するとよい。
さらに、制御部40は、給水装置100への電力供給が遮断されて復旧された場合に、記憶部47の不揮発性記憶領域(不揮発性メモリ)に記憶された電力供給が遮断される前の制御モードに基づいて制御モードを選択してもよい。図8は、制御部40によって実行される復電時制御モード設定処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、電源起動時の制御モードが第1制御モード、第2制御モードの何れかである給水装置100において、給水装置100への電力供給が復旧されたときに実行される。なお、図8の復電時制御モード設定処理は、S112AとS130Aの処理が図1の制御モード設定処理と異なり、その他は図1の復電時制御モード設定処理と同一である。
復電時制御モード設定処理では、制御部40は、まず、第2制御モードが要請されているか否かを判定する(S100)。そして、第2制御モードが要請されているときには(S100:Yes)、第2制御モードを制御モードとして設定して(S110)、記憶部47に停電時の制御モードを記憶(S130A)して、復電時制御モード設定処理を終了する。
つまり、第2制御モードが要請されているときには、電力供給が遮断される前の制御モードにかかわらず、第2制御モードを制御モードとして設定する。
第2制御モードが要請されていないときには(S100:No)、電力供給が遮断される前の制御モードが第1制御モードであったか否かを判定する(S112A)。そして、電力供給が遮断される前の制御モードが第1制御モードであった場合には(S112A:Yes)、第1制御モードを制御モードとし(S120)、記憶部47に停電時の制御モードを記憶(S130A)して、本処理を終了する。
一方、電力供給が遮断される前の制御モードが第1制御モードでない場合には(S112A:No)、つまり、制御モードが第2制御モードであるか、もしくは切替時制御モードが実行されている場合には、上記した切替時制御処理を実行する(S114)。そして、切替時制御処理が終了した後に第1制御モードを制御モードとし(S120)、記憶部47に停電時の制御モードを記憶(S130A)して、本処理を終了する。
このように、電力供給が遮断される前の制御モードに基づいて復電時の制御モードを設定することにより、復電時に給水装置10からの給水の開始をより適正なものとすることができる。
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る給水装置100の概略構成を示す図である。第2実施形態の給水装置100は、基本的に第1実施形態の給水装置100と同一の構成を有している。第2実施形態の給水装置100は、蓄電装置80を介して商用電源90に接続されており、商用電源90から直接に電力供給を受けられるとともに、蓄電装置80の蓄電器82から電力供給を受けられる。蓄電装置80は、直流化インバータ84、蓄電器82、交流化インバータ85、スイッチ88、および、制御部86を備えている。なお、スイッチ88は蓄電装置80の外部に設けられてもよい。
直流化インバータ84は、商用電源90から受電した商用電力を直流電力へ変換するインバータであり、変換した直流電力を蓄電器82へ供給する。蓄電器82は、商用電源90から給水装置100に電力供給がない時に用いられる非常用電源であって、直流化インバータ84から供給された直流電力を蓄電する蓄電池である。蓄電器82としては、リチウムイオン電池など、公知の蓄電池を用いることができる。交流化インバータ85は、蓄電器82から出力された直流電力を交流電力へ変換するインバータである。
スイッチ88は、制御部86により制御され、給水装置100の電力供給源を商用電源90(第1電力供給源)と蓄電器82(第2電力供給源)とで切り替える。第2実施形態で、スイッチ88は、商用電源90から蓄電装置80へ電力が供給されている通常時には、商用電源90から供給された交流電力を給水装置100に供給する。一方、スイッチ88は、商用電源90から蓄電装置80へ電力が供給されない停電時には、交流化インバータ85から出力された交流電力を給水装置100に供給する。
制御部86は、直流化インバータ84、交流化インバータ85、および、スイッチ88を制御する。制御部86は、商用電源90の停電に応じてスイッチ88を制御することにより、給水装置100への電力供給を継続させる。また、制御部86は、スイッチ88の接続状態、つまり給水装置100の電力供給源が商用電源90と蓄電器82とのいずれに選択されているか、および、蓄電器82の状態(例えば、蓄電残量など)を示す制御信号を信号線89を介して給水装置100の制御部40に送信する。制御部40は受信した蓄電器82の状態をランプ512eにて表示するとよい。
第2実施形態の給水装置100の制御部40は、給水装置100の電力供給源が商用電源90から蓄電器82へと切り替わったことを知らせる信号が蓄電装置80の制御部86から入力されたときに、図3において、第2制御モードが要請されていると判断(S10
0:Yes)する。そして、制御部40は、第2制御モードを実行する。ここで、本実施形態で、制御部40は、図4におけるステップS211〜S216において、少なくともひとつの設定値を第1制御モードの設定値よりも小さな値とすることが好ましい。こうした制御により、第2実施形態の給水装置100では、蓄電器82から給水装置100に電力が供給されているときに、つまり商用電源90が停電時に、給水対象への給水を確保しつつ給水装置100で消費される電力を低減させることができる。ただし、図4におけるステップS211〜S216において、全ての制御用数値の設定値が第1制御モードの値と等しい、または、ひとつ以上の設定値が第1制御モードの設定値よりも大きくてもよい。
そして、給水装置100が蓄電器82にて電源供給されている間に、商用電源90が復電したら、給水装置100の電力供給源が蓄電器82から商用電源90へと切り替わったことを知らせる信号が蓄電装置80の制御部86から入力され、図3で、制御部40は、第2制御モードの要請がなく(S100:No)、前回の制御モードが第2制御モードである(S112:Yes)と判断し、切替時制御処理S114を実行する。
また、商用電源90の停電が長時間継続すると蓄電器82が消耗し、給水装置100の供給電源が遮断されて給水先の建物は断水となる。その後、商用電源90が復電し、給水装置100が復電したら、制御モードは第1制御モードであり、図8に示すように、制御部40は第2制御モードの要請がなく(S100:No)、停電時の制御モード=第2制御モード(S112A:No)と判断する。そして、切替時制御処理S114を実行する。ここで、給水装置100の設置時やメンテナンス等で、給水装置100を停電させた後に復電した場合、給水装置100の電力供給源として非常用電源は用いられておらず、停電時の制御モードは第1制御(ステップS112A=Yes)である。通常、給水装置100の設置やメンテナンス等による停電は、事前に計画されメンテナンス者から給水先にアナウンスされるため、これらの要因で停電し復電した時に給水量が急変することは考えにくい。それに比べて、災害等で非常用電源が用いられた後に給水装置100が復電した場合は、上述したように水使用者による急激な需要の増加や給水量の変化が懸念される。制御部40は、停電時の制御モードを記憶(S130A)し、当該停電時の制御モードによって切替時制御処理を行うか否かの判断を行う(S112A)ことにより、非常用電源を用いたか否かを判断できるため、本実施形態の給水装置100は、より適切な給水を行うことができる。
第2実施形態では、給水装置100の電力供給源が商用電源90と蓄電器82とで切り替えられるものとした。しかし、これに代えて、または加えて、給水装置100は、商用電源90から給水装置100に電力供給がない時に用いられる非常用電源として、発電機から電力が供給可能であってもよい。そして、発電機または他の外部装置からの入力に基づいて給水装置100の電力供給源が商用電源90から発電機に切り替えられたときに、給水装置100の制御部40は第2制御モードが要請されている(図3のS100:Yes)と判断してもよい。そして、発電機にて電力供給されている第2制御モードから商用電源90にて電源が供給される第1制御モードへと切り替える(図3のS112:No)ときに切替時制御処理が実行(図3のS114)される。また、商用電源90の停電が長時間継続し発電機が消耗して給水装置100の供給電源が遮断された後、商用電源90が復電したら第2制御モードから第1制御モードへと切り替えた(図3のS112:No)として、切替時制御処理が実行(図3のS114)されるとよい。
一般的に、給水装置100は建物毎に設置される。よって、都心の建物が密集した地域では、該地域内に複数の給水装置が多数設置されている。このような地域で自然災害などによる大規模な停電が発生した場合に、停電復旧後の急激な給水量の増加で水道本管圧が低下したり、ポンプ2の急激な加速で大量の電力を消費し、復電直後で不安定な電力が再
び不足し停電してしまうことが懸念される。そこで、図3のS114における切替時制御処理として低出力制御モードまたは緩変化制御モードが実行されるとよい。これにより、地域内の急激な給水量の増加を抑えることができる。
また、地域内で給水装置100が設置されている建物が少ない場合や、建物高さが低く全揚程が低い場合、戸数が少なく給水量や使用電力が少ない給水装置100の場合は、通常以上に給水装置の出力が高くなっても水道本管圧や電力不足には影響しない。そこで、図3のS114における切替時制御処理として高出力制御モードまたは急変化制御モードが実行されるとよい。これにより、給水装置100は、建物内で一時的に増加する給水量に対応できる。
このように、給水装置100が設置される環境や給水先の建物の規模によって、図3のS114の切替時制御処理における最適な制御モードは異なる。よって、表示パネル51による設定変更もしくは、不図示の操作スイッチ等にて、操作者が切替時制御処理の各モードを選択し、該選択した切替時制御処理の各モードがランプ512cに表示されるとよい。
なお、上述では、ポンプ2の回転数制御に制御用揚程曲線を用いた推定末端圧一定制御について説明したが、ポンプ2の回転数制御が圧力一定制御や末端圧一定制御の場合も同様である。具体的には、制御用揚程曲線において、流量ゼロの圧力と最大流量時の圧力が等しい(例えば、PA1=PB1)場合、圧力一定制御となり、更に、圧力センサ26が末端の給水栓10aの圧力を計測すれば末端圧一定制御となる。この場合、制御用揚程曲線を用いずに、第2制御モードでは、第1制御モードでの設定圧Pt0より低い設定圧Pt1、Pt2、Pt3(Pt0>Pt1>Pt2>Pt3)等を用いて低電力制御を実行し、当該設定圧は、運転パネル51のECOボタン519等によって切換えられると共に、対応したECOランプ512b(H・M・L)で表示されるとよい。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。