以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、同一また
は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、ポンプ装置の一例としての給水装置の構成概略に示す図である。本実施形態のポンプ装置は、戸建て、マンション、オフィスビル、商業施設、工場、又は、学校等の建物に水を供給するための給水装置10として使用される。ただし、ポンプ装置は、給水装置10として使用されるものに限定されず、スプリンクラー等に給水する消火ポンプ装置や、汚水や雑排水を排水する汚水ポンプ装置等の種々の使用態様において使用されればよい。図1では、給水装置10が直結給水方式で使用されており、給水装置10の吸込口102は、導入管105を介して水道管(水道本管)104に接続されている。ただし、給水装置10は、給水装置10の上流側の図示しない受水槽を介して水道管104の水を給水する受水槽方式で使用されてもよい。給水装置10の吐出口103には給水管107が接続されており、この給水管107は、各建物の給水栓(例えば蛇口110)に連通している。給水装置10は、水道管104(または受水槽)からの水を増圧または加圧し、建物の各給水栓に水を供給する。
図1に示すように、本実施形態の給水装置10は、水道管104(または受水槽)からの水を増圧または加圧する2台のモータポンプ40a、40bと、モータポンプ40a、40bの可変速制御器の一例であるインバータ装置50a、50bと、モータポンプ40a、40bを制御する制御ユニット60と、を備える。モータポンプ40a、40bのそれぞれは、図示しない羽根車を有するポンプ44と、ポンプ44に動力を供給する電動機の一例であるモータ42と、を有する。なお、本実施形態では、2台のモータポンプ40a、40bが設けられるものとしたが、1台または3台以上のモータポンプが設けられてもよい。
ポンプ44の上流側(吸込側)には、逆流防止装置25が設けられている。本実施形態では、逆流防止装置25は、給水装置10の吸込口102が設けられた吸込管101に設けられており、給水装置10から水道管104への水の逆流を防止する。逆流防止装置25の上流側には、圧力センサ21が設けられている。圧力センサ21は、ポンプ44(給水装置10)の吸込圧力を測定するための圧力測定器である。
ポンプ44の下流側(吐出し側)には、逆止弁23と、フロースイッチ24と、圧力センサ26と、圧力タンク28と、が設けられている。図1に示す例では、ポンプ44、逆止弁23、および、フロースイッチ24が2組設けられ、これらは並列に設けられている。複数台のポンプ44を設けることにより、一部のポンプ44が運転不可となった場合には、運転可能な他のポンプ44にて給水を継続し極力断水を避けるようになっている。
逆止弁23は、ポンプ44の吐出口に接続された吐出し管32に設けられており、ポンプ44が停止したときの水の逆流を防止する。逆止弁23の下流側(二次側)には、フロースイッチ24が設けられている。フロースイッチ24は、吐出管32を流れる水の流量が所定の値にまで低下したこと、すなわち過少水量(小水量)を検出する流量検出器である。ただし、フロースイッチ24は、吸込管101、または、吐出し管32の合流管33にひとつのみ設けられてもよいし、また、なくてもよい。また、一端に吐出し口103が形成される合流管33には、圧力センサ26、及び、圧力タンク28が設けられている。圧力センサ26は、ポンプ44(給水装置10)の吐出し圧力Poを測定するための圧力測定器である。圧力タンク28は、ポンプ44が停止している間の吐出し圧力Poを保持するための圧力保持器である。
詳細を後述するインバータ装置50a、50bは、制御ユニット60からの制御指令に基づいてモータ42を可変速制御する。具体的には、各インバータ装置50a、50bは制御ユニット60とRS485等の通信手段により接続される。制御ユニット60は、圧
力センサ26、圧力センサ21やフロースイッチ24等のセンサ類の信号に基づいて、それぞれのインバータ装置50a、50bの発停(始動・停止)判断、周波数指令値を演算する。インバータ装置50a、50bは、制御ユニット60より受信した当該演算結果、各種制御パラメータ等の制御信号に基づいてモータ42を可変速制御する。また、インバータ装置50a、50bから制御ユニット60へは、実際の周波数値や電流値等の運転状況が逐次送られる。
給水装置10の制御ユニット60は、給水装置10全体を制御するために設けられている。本実施形態の制御ユニット60は、記憶部(制御用メモリ)66と、演算部67と、I/O部68と、を備えている。また、運転パネル70と、外部通信部73と、を備えていてもよい。
制御ユニット60の記憶部66としては、ROM、HDD、EEPROM、FeRAM、及び、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリが使用される。記憶部66には、給水装置10を制御するための制御プログラム、装置情報、設定値情報、履歴情報、及び異常情報など、給水装置10に関する各種データが記憶される。
設定値情報は、主に給水装置10の使用環境、装置構成、および、給水方式等によって値が変更される情報であり、作業者が外部入力によって変更可能な情報である。制御ユニット60の設定値情報には、インバータ装置50a、50bの各種制御パラメータが含まれてもよい。なお、本実施形態で、設定値情報は、運転パネル70の設定部71、外部通信部73、またはI/O部68(図示しない外部入力端子)を通じた入力により設定可能である。本実施形態では、設定部71を通じた入力と、外部通信部73を通じた入力と、I/O部68の外部入力端子に入力された信号とを、「外部入力」という。なお、装置情報も外部入力により変更可能としてもよい。
異常情報は、給水装置10における異常に関する情報である。異常情報は、現在検出中の各種警報(インバータトリップ、吐出し圧力異常低下、各種センサ異常等)および異常(流入圧力低下または受水槽の満水渇水減水等)に関する情報等を含む。
履歴情報は、給水装置の各種履歴に関する情報である。履歴情報は、モータポンプ40a、40bの積算運転時間並びに積算運転回数、給水装置10にける警報履歴、各種通信の履歴、各種操作履歴等を含むとよい。
運転情報は、給水装置10における現在の状態を示す情報であり、一定の周期(数10mSECから数SECの間隔)にて更新される。運転情報は、現在のモータポンプ40a、40bのそれぞれの運転または停止状態、モータポンプ40a、40bの回転速度、モータ42に流れる電流値、給水装置10の入力電圧、モータポンプ40a、40bの吸込圧力、モータポンプ40a、40bの吐出し圧力Po、および、目標圧SV等を含む。また、I/O部68に入力される各種センサ類の値や出力信号等を含んでもよい。
制御ユニット60の演算部67としては、例えばCPUが使用される。演算部67は、記憶部66に格納されている制御プログラム及び各種データ、並びにI/O部68から入力される信号に基づいて、給水装置10を構成する各機器を制御するための演算等を行う。また、演算部67は、外部通信部73並びにI/O部68等における通信制御や運転パネル70における表示や操作の制御を行う。演算部67における演算結果は、記憶部66に記憶されるとともに、I/O部68、外部通信部73に出力される。
I/O部68としては、ポート等が使用される。I/O部68は、図示しない各種センサからの検出信号等を受け入れて演算部67に送る。また、I/O部68は通信部68a
を備え、通信部68aと各インバータ装置50a、50bとは、RS422,RS232C,RS485等のシリアル通信やEthernet等のパケット通信等の有線もしくは無線通信により互いに接続されている。インバータ装置50a、50bは、Modbus、またはTCP/IP、又はメーカー特有の通信プロトコルなどのメーカー毎に共通した通信プロトコルを用いて制御ユニット60と通信可能に構成されている。
運転パネル70は、記憶部66に記憶される各種データを、演算部67を介して表示ならびに変更することができるGUIである。具体的には、運転パネル70は、装置情報および設定値情報の表示および設定変更、異常情報の表示およびリセット、並びに、運転情報の表示等を行う。本実施形態の運転パネル70は、設定部71と表示部72を備える。なお、制御ユニット60と運転パネル70は別々の基板としてもよい。この場合、制御ユニット60と運転パネル70とは、シリアル通信もしくは信号線等の有線、または無線にて接続されるとよい。制御ユニット60と運転パネル70とを別々の基板とした場合は、運転パネル70を給水装置10から離れた場所(例えば、管理人室等)に設置してもよい。また、運転パネル70は、CPUを備えて該CPUにて表示操作の制御をしたり、制御ユニット60および外部装置との通信制御を行ったりしてもよい。また、運転パネル70は、警告音や操作音を鳴らすためのブザー(不図示)を備えてもよい。
運転パネル70の設定部71は、制御ユニット60の情報入力部であって、ユーザの外部操作により給水装置10における自動給水の運転/停止、警報リセット、及び、各種データの設定変更等の各種入力操作を行うために使用される。設定部71は、不図示の操作ボタンまたはタッチパネル等を備えるとよい。設定部71を通じて外部操作によって入力された情報は記憶部66に記憶される。運転パネル70の表示部72は、ユーザインターフェースとして機能し、記憶部66に格納されている各種データを表示できるように構成されている。給水装置10が機械室またはポンプ室などの電気的なノイズの多い環境に設置される場合に備えて、表示部72として、液晶表示およびタッチパネルよりも電気的ノイズに強い7セグメントLEDまたは表示灯、並びに、機械的な押圧ボタンなどにて構成された表示器が使用されてもよい。これにより、給水装置10を電気的ノイズの多い環境下にも設置することができる。ただし、表示部72としては、電気的ノイズに強い表示器に限定されず、ドットマトリクス方式による液晶表示器などが使用されてもよい。
外部通信部73は、有線通信または無線通信によって外部装置(外部端末)90と通信可能なように構成されている。外部通信部73における無線通信としては、例えば近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)の技術を利用することができる。また、Bluetooth(登録商標)およびWi−Fiなど、任意の方式の無線通信を利用することができる。ここで、NFCは、制御ユニット60と外部装置90とを近づけるだけで通信を完了させることができる点で有利である。また、有線通信としては、例えば制御ユニット60にUSB(Universal Serial Bus)のような外部接続端子が設けられ、ここに外部装置90が接続されることによって通信がなされてもよいし、RS422,RS232C,RS485等のシリアル通信を用いてもよい。
なお、上述した運転パネル70の機能は、外部装置90にて全て実施可能としてもよい。こうすれば、給水装置10が操作しにくい場所(例えば、運転パネル70が操作者の足元あたり)に設置されていても給水装置10の状態確認や設定値情報の変更等の操作が容易となる。
こうした給水装置10では、制御ユニット60によって以下の自動給水(ポンプ44の自動運転制御)が行われる。制御ユニット60内の全てのポンプ44が停止している状態で吐出し圧力Poが所定の始動圧力Pstart以下の条件で、制御ユニット60はポンプ44の始動条件が成立したものと判断して、ポンプ44のうち少なくとも1台を所定の
始動回転速度で始動させる。ポンプ44の始動制御については詳細を後述する。なお、ポンプ44の始動条件は、吐出し圧力が始動圧力Pstart以下に至ることに代えて、または加えて予め定められた種々の条件が用いられてもよい。ポンプ44の運転中、制御ユニット60は設定された圧力(設定圧)により推定末端圧力一定制御または目標圧力一定制御などのポンプ44の回転速度制御を行う。具体的に、制御ユニット60は推定末端圧力一定制御の場合はポンプ44の回転速度と目標圧力制御カーブとを用いて目標圧(SV)を設定し、目標圧力一定制御の場合は設定圧を目標圧(SV)とする。また、吐出し圧力Poを現在圧(PV)とする。そして、制御ユニット60は、SVとPVの差に基づいて、比例ゲインGp、及び、積分ゲインGiを用いたPI演算、もしくは、比例ゲインGp、積分ゲインGi、及び、微分ゲインGdを用いたPID演算を行い、ポンプ44の回転速度を算出する。また、制御ユニット60は、本実施形態のようにポンプ44が複数台ある場合は、同時に起動可能なポンプ台数(ポンプ並列運転台数)にて水量に応じたポンプの台数制御も行う。
ポンプ44にて給水中に建物での水の使用が少なくなると、フロースイッチ24は、過少水量を検出し、その検出信号を制御ユニット60に送る(小水量状態)。制御ユニット60はこの検出信号を受け、吐出し圧力Poが所定の停止圧力Pstopに達するまでポンプ44の回転速度を増加させ圧力タンク28に蓄圧した後、ポンプ44を停止(小水量停止)させる。ポンプ44が小水量停止した後に、再び建物内で水が使用されると吐出し圧力Poが始動圧力Pstart以下まで低下しポンプ44が始動する(小停再始動)。なお、本実施形態のようにポンプ44が複数台ある場合には、始動するポンプ44をローテーションさせ、ポンプ44内に水が滞留するのを防ぐことが好ましい。また、小水量を検知する方法としては、フロースイッチ24を用いずに、モータ42の電流値による低負荷や締切り圧力等その他の手段を用いてもよい。
図2は、図1の給水装置10におけるモータポンプ、インバータ装置、および、制御ユニットの構成の一例を示す図である。図2に示すように、給水装置10は、インバータ装置50a、50bのそれぞれに入力する商用電源100からの電力を遮断するスイッチSW1、SW2を備える。スイッチSW1、SW2は、制御ユニット60の出力または手動によってON状態(通電状態)とOFF状態(電源遮断状態)とが個別に切り替わる。本実施形態で、異常時またはメンテナンス時ではない通常時にSW1、SW2はON状態とされ、インバータ装置50a、50bに商用電源100からの電力が供給される。そして、インバータ装置50a、50bは、商用電源100からの交流電力を所望の周波数を持つ交流電力に変換してモータポンプ40a、40bの各モータ42に供給する。なお、本実施形態では、1つのポンプに対して1つのインバータ装置がそれぞれ設けられているが、2つ以上のモータポンプに対して1つのインバータ装置が設けられてもよい。また、本実施形態において、インバータ装置50aとインバータ装置50bとは同様の構成であり、以下では重複する説明を省略する。
図2に示すように、インバータ装置50aは、インバータ回路570と、制御ユニット60と通信可能な通信部561を備えたインバータ制御部560と、を有する。
インバータ回路570は、インバータ制御部560からのPWM信号に基づいて交流電圧を生成し、この交流電圧をモータ42に印加するインバータ回路である。インバータ回路570は、コンバータ部570aと、直流電圧平滑回路570bと、インバータ部570cと、ゲートドライバ570dと、を備えている。
コンバータ部570aは、商用電源100から供給される3相の交流電圧を直流電圧に変換するために、ダイオードなどにより構成される整流回路を有する。直流電圧平滑回路570bは、コンデンサを備えており、コンバータ部570aにより変換された直流電圧
を平滑化する。インバータ部570cは、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのパワー素子、およびパワー素子に並列に接続されるダイオードを複数有しており、直流電圧平滑回路570bによって平滑化された直流電圧から3相の交流電圧を生成するように構成されている。ゲートドライバ570dは、インバータ制御部560からのPWM信号に基づいて、インバータ部570cの各パワー素子をスイッチング動作させるためのゲートドライブ信号を生成する。
インバータ制御部560は、制御用メモリ562と、通信部561と、不図示の演算部とを備える。また、インバータ制御部560は、不図示のI/O部と、不図示の運転パネルと、を更に備えてもよい。インバータ制御部560の演算部としては、例えばCPUが使用される。該演算部は、制御用メモリ562に格納されている制御プログラム及び各種データ、並びに不図示のI/O部から入力される信号に基づいて、インバータ装置50aを構成する各機器を制御するための演算等を行う。インバータ制御部560のI/O部としては、デジタル信号やアナログ信号を入出力するためのポートや各種通信ポート等が使用される。該I/O部は、図示しない各種センサからの検出信号等を受け入れて演算部に送る。制御用メモリ562(記憶部)としては、ROM、HDD、EEPROM、FeRAM、及び、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリが使用される。制御用メモリ562は、演算部で実行するインバータ回路570の制御プログラムと、インバータ装置50aに関する情報を記憶している。
インバータ制御部560は、インバータ回路570を制御するための複数の制御パラメータを制御用メモリ562に記憶して有している。例えば、インバータ制御部560は、PID演算にて用いるゲイン、積分時間、微分時間等を制御パラメータとして有する。また、インバータ制御部560は、スイッチング動作させるためのキャリア周波数を制御パラメータとして有する。インバータ制御部560は、V/f特性を設定可能な制御パラメータを有し、設定されているV/f特性に基づいて、モータ42に出力する電圧と周波数がほぼ正比例関係となる「V/f制御」を行う。ここで、モータ42に出力する周波数が低いときには、電圧降下の影響が大きくなってモータ42から出力されるトルクが低下する。このため、インバータ制御部560は、当該影響を補償するために低周波数領域で出力電圧を上げるトルクブースト電圧制御を行う。インバータ制御部560は、このトルクブースト電圧を設定するための制御パラメータを有する。また、インバータ制御部560は、インバータ装置50aが出力する最高周波数を制御パラメータとして有する。さらに、インバータ制御部560は、加速時間、及び減速時間を制御パラメータとして有する。インバータ制御部560は、モータ42を加速・減速する際には、加速時間・減速時間に基づいてモータ42の周波数の増加、減少を制限する。ここで、加速時間・減速時間は、例えば、モータ42の周波数が、ゼロから所定の周波数(例えば、最高出力周波数)に到達する時間とするとよい。つまり、加速時間、及び減速時間は、これらの時間が長い程モータ42の加速・減速を抑制することができる制御パラメータである。
インバータ制御部560には、更に、インバータ回路570の二次側に配置された電圧センサ571と、電流センサ572とが接続されているとよい。電圧センサ571および電流センサ572で得られた電圧および電流の測定値は、インバータ制御部560に入力される。インバータ制御部560は、フィードバックされた電流の測定値と指令電流との差分を最小とするためのPWM信号を生成する。なお、インバータ制御部560がインバータ回路570の二次側の電圧と電流を予測できる場合には、電圧センサ571及び電流センサ572が設けられなくてもよい。さらに、インバータ制御部560は、電流制御機能を有し、ストール電流値にてモータ42に流れる電流を抑制するとよい。インバータ制御部560は、電流センサ572で得られた電流による電子サーマル機能によってモータ42の過負荷検出を行ってもよい。インバータ制御部560は、電子サーマルの機能の有効無効や動作レベル等を制御パラメータとして有するとよい。
なお、図2に示す例では、ポンプ44、モータ42、インバータ回路570に、これらの温度を測定する温度センサ80,81,82がそれぞれ取り付けられている。制御ユニット60もしくはインバータ制御部560は、温度センサ80,81,82のうちの少なくとも1つの温度の測定値が所定の上限値に達したときは、ポンプ44の回転速度を定常運転時よりも低下させる若しくはポンプ44を停止させるように、インバータ回路570に指令を発してもよい。
本実施形態の制御ユニット60の通信部68aとインバータ装置50a、50bの通信部561とは通信線68bにて接続されている。
ここで、一般的なインバータ装置は、製造元ごとに決められた通信プロトコル(例えばModbus Protocol)が採用されており、制御ユニット60は、インバータ装置の製造元や機種等で決められた通信コマンドとデータ形式とを用いることでインバータ装置と通信を行うことができる。本実施形態のインバータ装置50a、50bは、一例として、制御ユニット60から送信されるある通信コマンドによってモータポンプ40a、40bの運転/停止の指令を行い、別の通信コマンドによってモータポンプ40a、40bの回転速度などの運転状態の指令を行う。
本実施形態では、制御ユニット60の通信部68aとインバータ装置50a、50bの通信部561とは、RS485のシリアル通信にてModbusのようなマスタ・スレーブ方式にて通信を行う。また、マスタ・スレーブ方式のマスタ側を制御ユニット60、スレーブ側をインバータ装置50a、50bとする。
マスタ側である制御ユニット60から各種通信コマンドを送信し、通信コマンドを受信したスレーブ側であるインバータ装置50a、50bは自分に対する通信コマンドの場合のみレスポンスを送信し、それ以外の場合は無応答状態となるとよい。具体的には、制御ユニット60は、インバータ装置50a、50bのうちどちらか1つを問い合わせ(通信)先に指定して各種制御パラメータ、運転/停止信号(第1信号)、及び運転状態(第2信号)などの制御信号の書き込みを行う通信コマンドを定期的に送信する。問い合わせ先に該当するインバータ装置50a、50bは、通信コマンドの内容に基づき、レスポンスとして正常応答または異常応答を送信する。
また、制御ユニット60はインバータ装置50a、50bのうちどちらか1つを問い合わせ先に指定して、各種記憶部562に記憶されている情報、並びに、周波数値及び電流値等の現在値の読み込みを行うための通信コマンドを送信し、問い合わせ先に該当するインバータ装置50a、50bは、正常応答として、記憶部562に記憶する情報や実際の周波数値および電流値等を送信するか、通信コマンドが不正な場合は異常応答を送信する。
なお、スレーブ側は、通信コマンドを受信したときに、自身が問い合わせ先に該当しないと判断した問い合わせに対して無応答となる。
マスタ側(本実施形態では制御ユニット60)は、上述した異常応答を受信した、又は、インバータ装置50a、50bのいずれもが問い合わせに対して無応答となったと判断した時に、通信エラーが発生したと判断する。スレーブ側(本実施形態ではインバータ装置50a、50b)は、所定時間以上通信が途切れたと判断したら通信エラーが発生したと判断する。なお、通信エラーの判断は、制御ユニット60とインバータ装置50a、50bとの通信が行われている間に常時実施されるとよい。
なお、制御ユニット60とインバータ装置50a、50bとは、インバータ装置50a、50bの何れかをマスタ側とし、制御ユニット60をスレーブ側とするマスタ・スレーブ方式にて通信を行うものとしてもよい。また、スレーブ側の全ての機器を問い合わせ(通信)先に指定し、書き込みを行うブロードキャストの通信コマンドを備えてもよい。ブロードキャストの通信コマンドを受信したスレーブ側の機器は、無応答で受信した通信コマンドの処理を実行する。
インバータ装置50a、50bは、制御ユニット60からの制御指令に基づいてモータ42を制御する。本実施形態では、通電中、制御ユニット60は、制御指令として少なくとも、モータ42の運転/停止を指令するための第1信号Sg1と、モータ42の運転状態を指令するための第2信号Sg2とを、インバータ装置50a、50bに対して所定の順番で送信する。
本実施形態では、第1信号Sg1と第2信号Sg2とは、互いに異なる通信コマンドによる指令であり、制御ユニット60は、定期的(例えば数mSEC〜数SEC毎)に第1信号Sg1と第2信号Sg2とを異なるタイミングでインバータ装置50a、50bに送信する。換言すると、制御ユニット60は、第1通信コマンドによる第1信号Sg1を第1タイミングで送信し、第2通信コマンドによる第2信号Sg2を第2タイミングで送信する。ただし、こうした例に限定されず、第1信号Sg1と第2信号Sg2とが同一の通信コマンドによる指令であってもよいし、第1信号Sg1と第2信号Sg2とが同じタイミングで送信されてもよい。また、制御ユニット60がインバータ装置50a、50bに対して複数の通信部68aを有してもよい。
以下の説明では、制御ユニット60は、第1信号Sg1として、ポンプ44の運転を指令する「運転」(例えば、値1)、または、停止を指令する「停止」(例えば、値0)を送信する。また、制御ユニット60は、第2信号Sg2として、ポンプ44の「目標回転速度」を送信する。ここで、「目標回転速度」は、制御ユニット60がインバータ装置50a、50bに対して指令する回転速度(ポンプ44の始動時における始動回転速度、SVとPVに基づいて設定したポンプ44の回転速度等)である。そして、インバータ装置50a、50bは、第1信号Sg1にて「運転」を示す指令を受信し、且つ第2信号Sg2として所定の下限回転速度以上の目標回転速度を示す指令を受信しているときに、モータ42(ポンプ44)を目標回転速度に基づいて運転させる。つまり、インバータ装置50a、50bは、第1信号として「停止」を示す指令を受信しているときには、第2信号としていかなる目標回転速度を受信しても、モータ42を停止させる。同様に、インバータ装置50a、50bは、第2信号として所定の下限回転速度よりも小さい目標回転速度を示す指令(例えば、目標回転速度が「0」を示す指令)を受信したときには、第1信号として「運転」を受信しても、モータ42を停止させる。
インバータ装置50a、50bは、第1信号Sg1として「運転」を示す指令が受信され且つ第2信号Sg2として所定の下限回転速度以上の目標回転速度を受信しているときには、第2信号によるポンプ44の目標回転速度に基づいて、モータ42の制御を実行する。一例として、インバータ装置50a、50bは、ポンプ44の目標回転速度と加速時間、減速時間等の制御パラメータに基づいて指令周波数を算出し、この指令周波数とV/f特性に基づいて算出された指令電圧を出力するためのPWM信号を生成する。
次に、本実施形態における給水装置10の自動運転におけるポンプ44の始動制御について詳細に説明する。図3は、制御ユニット60によって実行される始動制御処理の一例を示すフローチャートである。この始動制御処理は、ポンプ44が小水量停止したときに開始される。以下の説明では、吐出し圧力Poが始動圧力Pstart以下となったときに、つまりポンプ44の始動条件が成立したときに、先発機としてモータポンプ40aを
始動するものとして説明する。
始動制御処理では、制御ユニット60は、始動制御処理モードを第1通信モードとする(S11)。第1通信モードで制御ユニット60は、まず、ポンプ44を停止状態とする指令をインバータ装置50a、50bに送信する(S12)。本実施形態では、ポンプ44の「停止状態」とは、運転/停止信号である第1信号Sg1として「停止」を示す指令と、ポンプ44の目標回転速度を示す第2信号Sg2として「0」(目標回転速度=0)を示す指令をインバータ装置50a、50bが受信した状態を示す。制御ユニット60から第1信号Sg1として「停止」指令並びに第2信号Sg2として「0」(目標回転速度=0)を受信したインバータ装置50a、50bは、ポンプ44を停止状態で維持する。
続いて、制御ユニット60は、ポンプ44の始動待機条件が成立しているか否かを判定し(S14)、始動待機条件が成立するまで(S16:No)、S12、S14の処理を繰り返し実行する。いまは、ポンプ44が小水量停止しており建物内で水が使用されることにより吐出し圧力Poが徐々に低下する状態を想定している。そして、S14、S16の処理は、まもなく吐出し圧力Poが始動圧力Pstart以下になることが予測される状態であるか否かを、吐出し圧力Poに基づいて判定する。
始動条件が成立することを予測した始動待機条件は、制御ユニット60とインバータ装置50a、50bとの通信頻度、及び圧力タンク28の容量などに基づいて予め定められた条件が用いられるとよい。一例として、制御ユニット60は、吐出し圧力Poが、停止圧力Pstop以下且つ始動圧力Pstartよりも大きい所定の圧力Pkより大きいときには始動待機条件が成立していないと判定し、吐出し圧力Poが、圧力Pk以下に至ると、始動待機条件が成立したと判定してもよい。また、制御ユニット60は、吐出し圧力Poに代えて、または加えて、吐出し圧力Poの変化速度に基づいて、始動待機条件の成立を判定してもよい。一例として、始動待機条件は、吐出し圧力Poの変化速度(減少速度)が大きいほど成立しやすい条件とすることができる。また、制御ユニット60は、吐出し圧力Poとその変化速度とに基づいて吐出し圧力Poが始動圧力Pstart以下となるまでの予想時間を算出し、当該予想時間が所定時間以下であるときに始動待機条件が成立したと判定してもよい。
ここで、予め定められた規定時間内で小水量停止と再始動が規定回数以上繰り返される場合等は、制御ユニット60は停止圧力Pstopと圧力Pkを等しい圧力値として第1制御モードを省略してもよい。また、吐出し圧力PoがPstart以下となることを始動待機条件とし当該始動待機条件が成立した次のコマンド送信のタイミングを始動条件としてもよい。始動待機条件の他の例としては、工場などでポンプ44が定刻に始動する等、予めポンプの始動が予測できる場合には、吐出し圧力Poに関わらず、例えば、ポンプが始動する数m秒から数分前に始動待機条件が成立しているとしてもよい。
制御ユニット60は、始動待機条件が成立したと判定すると(S16:Yes)、始動制御処理モードを第2通信モードとする(S17)。第2通信モードで、制御ユニットは、運転/停止信号である第1信号Sg1として「運転」を示す指令をインバータ装置50aに送信する(S18)。つまり、制御ユニット60は、始動条件が成立する前に、第1信号として「運転」を示す指令とポンプ44の目標回転速度を示す第2信号として「0」を示す指令をインバータ装置50aに送信する。これにより、モータポンプ40aは始動されず停止状態で維持される。以下、当該状態をインバータ装置50a又はモータポンプ40aが「始動待機状態」であるという。なお、インバータ装置50aは、モータポンプ40aを始動する前に、始動準備を要するような場合には、この始動待機状態において始動準備を開始するとよい。
なお、第2通信モードで、制御ユニットは、次発機であるインバータ装置50bに対して第1信号Sg1として「停止」を示す指令と目標回転速度を示す第2信号として「0」を示す指令とを送信するとよい。これにより、インバータ装置50bは停止状態を継続する。
続いて、制御ユニット60は、吐出し圧力Poを始動圧力Pstartと比較して(S20)、吐出し圧力Poが始動圧力Pstartより大きいときには(S20:No)、引き続きモータポンプ40aを始動待機状態とする(S18)。
なお、第2通信モードで制御ユニット60は、ポンプ44の第2信号として下限回転速度より低い所定の待機回転速度を示す目標回転速度をインバータ装置50aに送信してもよい。この場合にも、モータポンプ40aは始動されることなく停止状態で維持される。このように、「0」より大きい待機回転速度を目標回転速度として指令することにより、特にインバータ装置50aが目標回転速度の変化上限を設けているような場合に、モータポンプ40aをより迅速に始動できる。また、ポンプ44の第2信号として、下限回転速度より高く、始動回転速度Nstartより低い、ポンプ44の特性上、吐出し圧力Poが上昇しない予め定められた低回転速度を指令してもよい。この場合も、モータポンプ40aをより迅速に始動できる。
説明を図3に戻す。吐出し圧力Poが始動圧力Pstart以下に至ると(S20:Yes)、制御ユニット60は始動条件が成立したとして、始動制御処理モードを第3通信モードにする(S21)。第3通信モードで制御ユニット60は、モータポンプ40aを始動するための第2信号Sg2をインバータ装置50aに指令する(S22)。つまり、制御ユニット60は、第2信号として、始動回転速度Nstartを示す指令をインバータ装置50aに送信する。ここで、始動回転速度Nstartは下限回転速度よりも大きい回転速度であって、予め実験等により定められた値や、目標圧や設定圧から算出した回転速度を用いることができる。
なお、第3通信モードで、制御ユニットは、次発機であるインバータ装置50bに対して第1信号Sg1として「停止」を示す指令および/または目標回転速度を示す第2信号として「0」を示す指令とを送信するとよい。これにより、インバータ装置50bは停止状態を継続する。
S22でモータポンプ40aを始動したら、始動時制御処理を終了する。始動制御処理において、第2通信モードで既に制御ユニット60からインバータ装置50aに、第1信号Sg1として「運転」を示す指令が送信されており、インバータ装置50aおよびモータポンプ40aが始動待機状態にされている。このため、第3通信モードでインバータ装置50aは、モータポンプ40aを始動するための第2信号(始動回転速度Nstart)を受信すると、直ちに始動回転速度Nstartを目標の周波数としてモータポンプ40aを始動する。したがって、制御ユニット60が始動条件成立後に第1信号と第2信号の両方をインバータ装置50aに送信するのに比べて、吐出し圧力Poが始動圧力Pstart以下に至ったときにモータポンプ40aの始動を迅速に開始することができる。
図4は、ポンプを始動するときの通信指令およびポンプの運転状態の一例を説明するための図である。図4中、横軸は時間の経過を示している。また、図4では、上段に吐出し圧力Poの変化の一例が示され、その下に、制御ユニット60からの通信指令、モータポンプ40a(No.1ポンプ)の運転/停止の状態、及びモータポンプ40b(No.2ポンプ)の運転/停止の状態が示されている。図4に示す例で制御ユニット60は、原則として、
(1)「No.1ポンプに対する第1信号」
(2)「No.2ポンプに対する第1信号」
(3)「No.1ポンプに対する第2信号」
(4)「No.2ポンプに対する第2信号」
の4種の指令を、この順番でインバータ装置50a、50bに繰り返し送信している。なお、図4では、理解の容易のため、通信指令における時間間隔を非常に大きくして示している。実際には、制御ユニット60は、1つの信号を含む指令(1つの通信コマンドによる指令)を例えば50msec毎にインバータ装置50a、50bに送信する。また、実際には、制御ユニット60は、インバータ装置50a、50bからの情報の読み込みを行うための指令などの他の指令を、上記4種の指令に加えて所定の順番で送信するが、理解の容易のために図4では省略している。
図4では、時刻t0からt1において、No.1ポンプが停止中であり、No.2ポンプが運転されている状態が示されている。また、No.2ポンプは、フロースイッチ24によって小水量が検出されて圧力タンク28への蓄圧を行っている状態を想定している。この状態では、制御ユニット60は、No.1ポンプを停止状態とすべく、(1)「No.1ポンプに対する第1信号」として「停止」を示す指令を送信し、(3)「No.1ポンプに対する第2信号」として「0Hz」を示す指令を送信する。また、制御ユニット60は、圧力タンク28への蓄圧が行われるようにNo.2ポンプを運転させるべく、(2)「No.2ポンプに対する第1信号」として「運転」を示す指令を送信し、(4)「No.2ポンプに対する第2信号」として下限回転速度より大きい目標回転速度「FHz」を示す指令を送信する。
そして、吐出し圧力Poが停止圧力Pstopに達して蓄圧運転が終了すると(時刻t1)、制御ユニット60は、No.2ポンプを小水量停止させるように通信指令を送信する。具体的には、制御ユニット60は、時刻t1以降、「No.2ポンプに対する第1信号」として「停止」を示す信号を送信し、「No.2ポンプに対する第2信号」として「0Hz」を示す指令を送信する。インバータ装置50bは、これらのどちらか一方の信号を受信すると、モータポンプ40b(No.2ポンプ)を停止させる。
ここで、給水装置10では、ポンプ44内に水が長時間滞留するのを防止するため、小水量停止後に先に始動するポンプ44(先発機)はローテーションされる。本実施形態では、モータポンプ40bが小水量停止されたため、先発機はモータポンプ40aであり、先発機運転中の追加ポンプである次発機はモータポンプ40bである。
No.1ポンプ及びNo.2ポンプが停止されて建物内で水が使用されると、吐出し圧力Poは徐々に低下する。そして、図4に示す例では、吐出し圧力Poが、始動圧力Pstartよりも大きい所定の圧力Pk以下に至ったときに(時刻t2)、制御ユニット60は、始動待機条件が成立したと判断して(図3、S16:Yes)、次の通信のタイミングで先発機であるNo.1ポンプに対する第1信号を「運転」に変更する(S18)。ただし、「No.1ポンプに対する第2信号」としては、引き続き「0Hz」を示す指令が送信されるため、No.1ポンプは始動待機状態であって始動されない。
なお、図4では、時刻t2の直後に、制御ユニット60は、強制的に通信の順番を入れ替えて、「No.1ポンプに対する第1信号」として「運転」を示す指令を優先して送信(割込通信)しているが、通常の通信順番にしたがって送信してもよい。また、図4では、吐出し圧力Poが圧力Pk以下に至ったときに始動待機条件が成立したと判断されているが、上記したように、吐出し圧力Poの変化速度等の条件に基づいて、始動待機条件が成立したか否か判定されてもよい。
そして、吐出し圧力Poが始動圧力Pstart以下に至ると(時刻t3)、制御ユニ
ット60は、始動条件が成立したと判断して(S20:Yes)、No.1ポンプを始動するための第2信号を割込送信する。具体的には、制御ユニット60は、割込送信として強制的に通信の順番を入れ替えて、始動回転速度を目標回転速度「FHz」として、当該「FHz」を示す指令をインバータ装置50aに送信する。
ここで、通常の通信順番に従うと、時刻t3以降の通信は(4)「No.2ポンプに対する第2信号」、(1)「No.1ポンプに対する第1信号」、(2)「No.2ポンプに対する第1信号」、(3)「No.1ポンプに対する第2信号」の順であり、インバータ装置50aは当該(3)「No.1ポンプに対する第2信号」を受信後にモータポンプ40aを始動する。図4に示す例で制御ユニット60は、時刻t3の次の通信で(3)「No.1ポンプに対する第2信号」を割込送信する。インバータ装置50aには、t2にて既に第1信号として「運転」を示す信号が送られているため、第2信号「FHz」を受信したインバータ装置50aは、モータポンプ40a(No.1ポンプ)を即座に始動できる。したがって、こうした制御により、吐出し圧力Poが始動圧力Pstart以下に至ったタイミングに依らず、迅速にポンプ44を始動することができる。
以上説明した実施形態の給水装置10では、ポンプ44の始動条件が成立する前に、制御ユニット60がポンプ44の運転を指令するための第1信号をインバータ装置50aに送信し始動待機状態とする。これにより、ポンプ44の始動条件が成立したときに、ポンプ44を始動するための第2信号をインバータ装置50aに送信するだけでポンプ44を始動することができるので、ポンプ44の始動条件が成立したときに第1信号と第2信号の両方をインバータ装置50aに送信するのに比べて、ポンプ44を迅速に始動することができる。
なお、図3の始動制御処理では、制御ユニット60は、ポンプ44の始動条件が成立したときに、ポンプ44を始動するための第2信号を割込送信するものとしたが、こうした例に限定されず、通常の通信順番に従ってインバータ装置50a、50bに指令を送信してもよい。ポンプ44を始動するための指令を割込送信しない場合であっても、ポンプ44を始動する前にインバータ装置50aが始動準備を要するような場合には、始動待機状態において始動準備を開始することができ、始動条件が成立したときにポンプ44を始動するのに要する時間を短縮することができる。
また、図4に示す例では、制御ユニット60は、第1信号による指令と、第2信号による指令とを別々に送信するものとしたが、こうした例に限定されず、第1信号による指令と第2信号による指令とが同時に送信されてもよい。こうした形態においても、ポンプ44を始動する前にインバータ装置50aが始動準備を要するような場合には、始動待機状態において始動準備を開始することができ、始動条件が成立したときにポンプ44を始動するのに要する時間を短縮することができる。
また、図3の始動制御処理では、制御ユニット60は、始動待機条件が成立したときに第1信号として「運転」を示す指令を送信するものとしたが、これに代えて、第2信号としてポンプ44を始動するための指令(始動回転数を目標回転数とした「FHz」)を送信してもよい。この場合、インバータ装置50aは、第1信号として「運転」を示す指令を受信するまでポンプ44を停止状態で維持する。そして、制御ユニット60は、始動条件が成立したら第1信号として「運転」を示す情報をインバータ装置50aに送信することにより、上記した実施形態と同様にポンプ44を迅速に始動することができる。
図4で、制御ユニット60がインバータ装置50a、50bへ送信する通信コマンドを時系列に沿って説明する。
まず、t1以前のポンプ44運転中は、通常の通信順番である上記(1)〜(4)の順に従って通信を行っている。ここで、図4に示す例では、制御ユニット60が(1)「No.1ポンプに対する第1信号」として「停止」を示す指令を送信したときに、吐出し圧力Poが停止圧力Pstopに達しNo.2ポンプの停止条件が成立(t1)した。そこで、制御ユニット60は、(1)の次の(2)「No.2ポンプに対する第1信号」で「停止」を送信し、(3)「No.1ポンプに対する第2信号」で目標回転速度「0Hz」を送信し、次に(4)「No.2ポンプに対する第2信号」で目標回転速度「0Hz」の指令を送信した。このように、制御ユニット60は通常の通信順番に従って、No.2ポンプの停止指令ならびに目標回転速度「0Hz」を指令する。
次に、(1)「No.1ポンプに対する第1信号」として「停止」を示す指令を送信したときに、吐出し圧力Poが圧力Pk以下に至り始動待機条件が成立(t2)したため、制御ユニット60は当該始動待機条件が成立したモータポンプ40aが接続されたインバータ装置50aとの通信を優先する割込通信を行う。具体的には、割込通信として、制御ユニット60は、強制的に通信の順番を入れ替えて(1)の次に、(1)「No.1ポンプに対する第1信号」で「運転」を送信する。当該「運転」を受信したインバータ装置50aにて駆動されるモータポンプ40aは始動待機状態となる。そして、制御ユニット60は、次の通信タイミングで通常の通信順番に戻って(2)「No.2ポンプに対する第1信号」で「停止」を送信し、次に、(3)「No.1ポンプに対する第2信号」として目標回転速度「0Hz」を示す指令を送信している。
その後、t3で吐出し圧力Poが圧力Pstart以下に至り始動条件が成立したため、制御ユニット60は当該始動条件が成立したモータポンプ40aが接続されたインバータ装置50aとの通信を優先する割込通信を行う。具体的には、割り込み通信として制御ユニット60は、t3の次の通信タイミングにて強制的に通信の順番を入れ替えて始動回転速度を目標回転速度「FHz」として、当該「FHz」を示す指令をインバータ装置50aに送信する。図4に示す例では、(3)「No.1ポンプに対する第2信号」として「0Hz」を送信したときに始動条件が成立しており、(3)の次に、「FHz」を示す(3)「No.1ポンプに対する第2信号」を割込通信している。t2以降「運転」を受信しているインバータ装置50aはt3で「FHz」を受信し、モータポンプ40aを直ちに始動させることができる。
ポンプ44のうち何れかが始動した後は、制御ユニット60は、通常の通信順番にてポンプ44の自動運転制御を行う。具体的には、制御ユニット60は、t3にて(3)「No.1ポンプに対する第2信号」として始動回転速度「FHz」を送信した後、通常の通信順番に戻って(3)の次の(4)「No.2ポンプに対する第2信号を送信」する。そして、(1)から(4)の送信を繰り返す。なお、ポンプ44が始動した後の第2信号としては、目標圧SVと吐出し圧力Poに基づいて設定した目標回転速度「FHz」を送信する。
更に、制御ユニット60は、ポンプ追加条件が成立したら、通常の通信順番で(2)「No.2ポンプに対する第1信号」で「運転」を送信し、次の(4)「No.2ポンプに対する第2信号」を送信時に始動回転速度を目標回転速度「FHz」としてモータポンプ40bを始動するとよい。ただし、制御ユニット60は、追加ポンプの始動条件が成立したときに、当該始動条件が成立したポンプ44が接続されたインバータ装置50a、50bに割込通信を行ってもよい。また、小水量停止からポンプ始動するのと同様に、追加時の始動条件が成立することを予測した追加時の始動待機条件を備え、当該追加時の始動待機条件が成立したポンプ44を始動待機状態にするとよい。そうすれば、直ちに追加ポンプが起動されるため、追加時の圧力変動が抑制される。
なお、通電中の制御ユニット60は、上述した割込通信、電源起動時および設定値の変更等の例外を除いて、通常の通信順番でインバータ装置50a、50bとの通信を定期的(例えば、数msec〜数sec)に繰り返すのが好ましい。更に、割込通信の次に制御ユニット60が送信する通信コマンドは、上記に依らず、例えば、割込通信前の通信順番に戻ってもよいし、通常通信の初順(1)としてもよい。また、通常の通信順番としては所定の順番であればよい。ただし、通常の通信順番は、給水装置10に備えられた全てのインバータ装置50a、50bに均等のタイミングとなるのが好ましい。また、上述した「FHz」は下限回転速度より大きい値とし、「0Hz」は下限回転速度以下の値とする。
また、上記した図4に示す例では、制御ユニット60は、ポンプ44の始動条件が成立したときに1つのポンプ44(No.1ポンプ)を始動するものとした。しかし、こうした例に限定されず、制御ユニット60は、2つ以上のポンプ44を同時に始動させてもよい。例えば、学校などの施設でトイレ洗浄用のフラッシュバルブを一斉に使用した場合、始動条件が成立する時に瞬間的に大量の水が流れるため、ポンプ44のうち1台のみの始動では給水が不足するおそれがある。このように始動時に大量の水が使用されることが予め把握されるような場合には、制御ユニット60は、2つ以上のポンプ44を同時に始動させることが好ましい。
図5は、小停再始動時に複数のポンプを始動するときの通信指令およびポンプの運転状態の一例を説明するための図である。なお、図5では、時刻t0〜t2においては図4と同一としている。図5に示す例では、制御ユニット60は、時刻t2において始動待機条件が成立したと判断すると(図3、S16:Yes)、「No.1ポンプに対する第1信号」および「No.2に対する第1信号」のそれぞれを「運転」に変更する(S18)。ただし、No.1ポンプ及びNo.2に対する第2信号は、引き続き「0Hz」を示す指令が送信されるため、ポンプ44は始動されない。そして、吐出し圧力Poが始動圧力Pstart以下に至ると(時刻t3)、制御ユニット60は、始動条件が成立したと判断して(S20:Yes)、No.1ポンプ及びNo.2ポンプを始動するための第2信号を割込送信する。図5に示す例では、時刻t3以降に、「No.1ポンプに対する第2信号」、「No.2ポンプに対する第2信号」がこの順で割込送信されている。インバータ装置50a、50bのそれぞれには、既に第1信号として「運転」を示す信号が送られているため、ポンプを始動するための第2信号が受信されることにより、インバータ装置50a、50bのそれぞれはポンプ44(No.1ポンプ及びNo.2ポンプ)を即座に始動する。このように複数のポンプを迅速に始動させることにより、大量の水が使用されるような場合に、給水圧力が不足してしまうことを抑制できる。
図5で、制御ユニット60がインバータ装置50a、50bへ送信する通信コマンドを時系列に沿って説明する。モータポンプ40a、40bが停止している状態で吐出し圧力Poが圧力Pk以下に至り始動待機条件が成立(t2)すると、制御ユニット60は、モータポンプ40a、40bを始動待機状態とすべく、インバータ装置50a、50bに割込通信を行う。具体的には、割込通信として、制御ユニット60は、強制的に通信の順番を入れ替えて、(1)「No.1ポンプに対する第1信号」で「運転」を送信すると共に、続けて(2)「No.2ポンプに対する第2信号」で「運転」を送信する。これにより、モータポンプ40a、40bのそれぞれは始動待機状態となる。そして、制御ユニット60は、次の通信タイミングで通常の通信順番に戻って(3)「No.1ポンプに対する第2信号」で「0Hz」を送信している。
その後、吐出し圧力Poが圧力Pstart以下に至り始動条件が成立すると(t3)、制御ユニット60は、モータポンプ40a、40bを始動すべく、インバータ装置50a、50bに割込通信を行う。具体的には、割込通信として制御ユニット60は、t3の
次の通信タイミングにて強制的に通信の順番を入れ替えて始動回転速度を目標回転速度「FHz」として、当該「FHz」を示す指令をインバータ装置50a、50bのそれぞれに送信する。図4に示す例では、(3)「No.1ポンプに対する第2信号」として「0Hz」を送信したときに始動条件が成立しており、(3)の次に、強制的に通信の順番を入れ替えて、「FHz」を示す(3)「No.1ポンプに対する第2信号」、「FHz」を示す(4)「No.2ポンプに対する第2信号」を送信している。t2以降「運転」を受信しているインバータ装置50a、50bはt3で「FHz」を受信し、モータポンプ40a、40bを直ちに始動させることができる。ポンプ44のうち何れかが始動した後は、制御ユニット60は、通常の通信順番にてポンプ44の自動運転制御を行う。具体的には、制御ユニット60は、t3後に(3)、(4)を割込通信すると、その後は(1)から(4)の送信を繰り返す。
なお、上記した実施形態では、モータ42として誘導電動機や位置センサ付きの同期電動機などが使用され、ポンプ44を始動する際に特に始動準備などが行われないものとした。しかし、例えばモータ42として位置検出センサの無い同期電動機が用いられてモータ42を始動するための始動準備制御が必要とされるなど、ポンプ44を始動する際に始動準備が行われる場合、給水装置10は、始動待機状態とされたときにポンプ44を始動するための始動準備を開始するとよい。つまり、例えばモータ42として位置センサの無い同期電動機が用いられる場合、停止したモータ42を始動する際には、インバータ装置50a、50bは、モータ42の回転子の位置を推定する、又はモータ42の回転子を所定の位置へ回転させるなど、始動準備制御を行う必要がある。そこで、インバータ装置50a、50bは、制御ユニット60にて始動待機条件が成立して制御ユニット60から第1信号として「運転」を示す指令または第2信号の「FHz」を受信したら、こうした始動準備制御を開始する。
図6は、モータ42として位置センサの無い同期電動機を有する構成において、ポンプ44を始動するときの通信指令およびポンプの運転状態の一例を説明するための図である。なお、図6は、時刻t2〜t3においてモータ42の回転位置を推定する処理が行われている点を除いて、図4と同一である。図6に示すように、時刻t2において始動待機条件が成立したと判断されると、制御ユニット60は、インバータ装置50aに第1信号として「運転」を示す指令を送信する。このときには、第2信号としては引き続き「0Hz」を示す指令が送信されるため、ポンプ44は始動されず停止状態とされる。そして、インバータ装置50aは、第1信号として「運転」を示す指令を受信すると、同期電動機であるモータ42を始動するための回転位置を推定する処理を開始する。このように、始動待機状態とされたときにポンプ44を始動するための始動準備を行うことで、始動条件が成立したときにポンプ44を迅速に始動することができる。
上記した実施形態では、始動待機条件または始動条件が成立したときに第1信号または第2信号を割込送信することを除いて、制御ユニット60は、一定の通信順番でインバータ装置50a、50bに制御指令を送信するものとした。しかし、こうした例に限定されず、制御ユニット60は、ポンプ44の運転状態に応じて通信順番を変更したり、通信頻度を変更したりしてもよい。たとえば、制御ユニット60は、ポンプ44が停止しているときには、当該ポンプ44に対応するインバータ装置50aに対して第1頻度で通信を行い、ポンプ44を始動するときには、インバータ装置50aに対して第1頻度よりも高い第2頻度で通信を行うとよい。これは、ポンプ44を始動するときにはインバータ装置50aに大きな電流が流れ、制御ユニット60とインバータ装置50aとの通信に対してスイッチングノイズ等による影響が大きくなり、通信エラーが生じやすくなることに基づく。なお、制御ユニット60は、ポンプ44の始動が完了したら、インバータ装置50aに対して第1頻度で通信を行うものとしてもよいし、インバータ装置50aに対して第1頻度より高く第2頻度より低い第3頻度で通信を行うものとしてもよい。
図7は、吐出し圧力Poが始動圧力Pstart以下になることを始動待機条件とし、当該始動待機条件が成立した次のコマンド送信のタイミングを始動条件とした一例を説明するための図である。図7を参照すると、まず図4と同様に、時刻t1において吐出し圧力Poが停止圧力Pstopに至り、モータポンプ40bが小水量停止している。そして、建物で水が使用されることにより吐出し圧力Poが始動圧力Pstart以下に至ると(t2)、制御ユニット60は、始動条件が成立したと判断して、「運転」を示す第1信号をインバータ装置50aに割込送信する。これにより、No.1ポンプは、始動待機状態となる。そして、制御ユニット60は、No.1ポンプを始動すべく、第1信号に続けて第2信号をインバータ装置50aに割込送信する。具体的には、制御ユニット60は、割込送信として強制的に通信の順番を入れ替えて、始動回転速度を目標回転速度「FHz」として、当該「FHz」を示す指令をインバータ装置50aに送信する。
図7で、制御ユニット60がインバータ装置50a、50bへ送信する通信コマンドを時系列に沿って説明する。図7に示す例では、(3)「No.1ポンプに対する第2信号」として「0Hz」を送信したときに、吐出し圧力Poが始動圧力Pstart以下に至り始動待機条件が成立(t2)している。このため、制御ユニット60は、強制的に通信の順番を入れ替えて、(3)の次に、(1)「No.1ポンプに対する第1信号」で「運転」を送信する。当該「運転」を受信したインバータ装置50aにて駆動されるモータポンプ40aは始動待機状態となる。そして、制御ユニット60は、次の通信タイミングで再び強制的に通信の順番を入れ替えて、(1)の次に、(3)「No.1ポンプに対する第2信号」として始動回転速度「FHz」を送信する。これにより、モータポンプ40aを直ちに始動させることができる。
なお、t2にて全てのポンプ44を起動する場合、制御ユニット60はブロードキャストの通信コマンドを使ってインバータ装置50a、50bに割込通信を行ってもよい。
(変形例)
図8にて給水装置10の変形例を示す。以下に示す構成以外については、図1並びに図2に示した構成と同様であるため、説明を省略する。図8における変形例で制御ユニット60のI/O部68は、接続可能な可変速制御器の台数分だけ不図示のアナログ出力部および/またはデジタル出力部を有する。そして、図2に示す例では、制御ユニット60とインバータ装置50aは通信線68bにて接続されたが、図8に示す変形例では、通信線68bに代えてまたは加えて、I/O部68のアナログ出力部とインバータ装置50aのインバータ制御部560のI/O部がアナログ信号線68c1および/またはデジタル信号線68d1にて接続される。同様に、図8に示す変形例では、通信線68bに代えてまたは加えて、I/O部68のアナログ出力部とインバータ装置50bのインバータ制御部560のI/O部はアナログ信号線68c2および/またはデジタル信号線68d2にて接続される。
図8に示す変形例の制御ユニット60は、可変速制御器に対して、運転/停止を指令するための第1信号をデジタル信号線68d1、68d2を介したデジタル信号で指令する。制御ユニット60は可変速制御器に対して、運転状態を指令するための第2信号をアナログ信号線68c1、68c2を介したアナログ信号で指令する。そして、可変速制御器は入力された第1信号のデジタル値が停止、または、第2信号のアナログ値が所定の下限回転数以下の場合、ポンプ44を停止する。可変速制御器は、入力された第1信号が「運転」且つ第2信号である目標回転速度が「所定の下限回転数より大きい」アナログ値の場合は、モータ42を目標回転速度で運転する。
制御ユニット60は、全てのポンプ44が停止しているときに、ポンプ44のうち少な
くとも1台を始動させる所定の始動条件と、当該始動条件が成立することを予測した始動待機条件と、を有し、始動待機条件が成立したポンプ44の可変速制御器に、ポンプの運転を指令するための第1信号とポンプ44の始動を指令するための第2信号との何れか一方を指令して始動待機状態にする。具体的には、モータポンプ40aの始動待機条件が成立したら、運転を指令するための第1信号がI/O部68のデジタル出力部よりデジタル信号線68d1を介してインバータ制御部560のI/O部に出力される、または、モータポンプ40aの運転状態を指令するための第2信号である目標回転速度が、I/O部68のアナログ出力部よりアナログ信号線68c1を介してインバータ制御部560のI/O部に出力される。これにより、インバータ装置50aは始動待機状態となる。
その後、制御ユニット60は、始動条件が成立したときに、始動条件が成立したポンプ44の可変速制御器に、ポンプ44の運転を指令するための第1信号とポンプ44の始動を指令するための第2信号とのうち、始動待機条件が成立したときに指令した信号とは他方の信号を指令し、始動条件が成立したポンプ44を始動する。具体的には、モータポンプ40aの始動条件が成立したら、運転を指令するための第1信号がI/O部68のデジタル出力部よりデジタル信号線68d1を介してインバータ制御部560のI/O部に出力され、更に、モータポンプ40aの運転状態を指令するための第2信号である目標回転速度がI/O部68のアナログ出力部よりアナログ信号線68c1を介してインバータ制御部560のI/O部に出力される。これにより、インバータ装置50aはモータポンプ40aを始動する。
本変形例においても、ポンプ44の始動条件が成立する前にインバータ装置50aは始動待機状態とすることができ、モータ42の回転位置を推定する、および/または、モータ42の回転位置を所定回転位置へと移動させる等の始動準備を行うことができる。また、制御ユニット60のI/O部の出力処理のタイミング等に依らずに、始動条件が成立したポンプ44を迅速に始動することができる。
上述した実施形態並びに変形例では、異常時またはメンテナンス時ではない通常時には、SW1、SW2はON状態とされ、インバータ装置50a、50bに商用電源100からの電力が供給された。しかしながら、モータポンプの台数に対してインバータ装置の台数が少ない場合、例えば、2つ以上のモータポンプに対して1つのインバータ装置が設けられる場合、インバータ装置の商用電源100からの電力供給を遮断にして接続されるモータポンプを切り替える。また、インバータの台数に関わらすポンプ44の停止中は接続されたインバータ装置50a、50bへの商用電源100からの電力供給が遮断されてもよい。このように、インバータ装置50a、50bへの商用電源100からの電力供給が遮断される場合、始動待機条件が成立したら、制御ユニットは該当するポンプ44を始動待機状態とすべく、インバータ装置50a、50bへの商用電源100からの電力供給を開始して始動待機状態としてもよい。
上記した実施形態および変形例では給水装置10は、2つのモータポンプ40a、40b及びインバータ装置50a、50bを備えるものとした。しかし、給水装置10は、1つのインバータ装置およびモータポンプを備えてもよいし、3つ以上のインバータ装置およびモータポンプを備えてもよい。インバータ装置及びモータポンプが1台の場合であっても、ポンプの始動条件が成立することを予測した始動待機条件が成立したときにポンプを始動待機状態とすることにより、実施にポンプの始動条件が成立したときに迅速にポンプを始動することができる。
本発明は、以下の形態としても記載することができる。
[形態1]形態1によれば、少なくとも1台の可変速制御器によって少なくとも1台の電動機駆動のポンプを可変速制御するポンプ装置の制御ユニットが提案される。前記制御ユ
ニットは、運転/停止を指令するための第1信号と運転状態を指令するための第2信号とを前記可変速制御器に指令して前記電動機駆動のポンプを制御し、前記制御ユニットは、全ての前記ポンプが停止しているときに、前記ポンプのうち少なくとも1台を始動させる始動条件と、前記始動条件が成立することを予測した始動待機条件と、を有し、前記始動待機条件が成立した前記ポンプの前記可変速制御器に、前記ポンプの運転を指令するための前記第1信号と前記ポンプの始動を指令するための前記第2信号との何れか一方を指令して前記始動待機条件が成立した前記ポンプを始動待機状態にする。
形態1によれば、始動待機条件が成立したときに、ポンプの運転を指令するための第1信号と、ポンプの始動を指令するための第2信号との一方が可変速制御器に指令される。これにより、ポンプの始動条件が成立したときに制御ユニットは、ポンプの運転を指令するための第1信号と、ポンプの始動を指令するための第2信号とのうち、他方を可変速制御器に指令すれば、可変速制御器が始動してポンプを始動することができ、ポンプの始動条件が成立したときに第1信号と第2信号との両方を指令するのに比べてポンプを迅速に始動することができる。
[形態2]形態2によれば、形態1の制御ユニットにおいて、前記制御ユニットは、前記始動条件が成立したときに、前記始動条件が成立した前記ポンプの前記可変速制御器に、前記ポンプの運転を指令するための前記第1信号と前記ポンプの始動を指令するための前記第2信号とのうち、前記始動待機条件が成立したときに指令した信号とは他方の信号を指令し、前記始動条件が成立した前記ポンプを始動する。
形態2によれば、始動条件が成立したときに、ポンプの運転を指令するための第1信号と、ポンプの始動を指令するための第2信号とのうち、始動待機状態にて指令した信号とは他方の信号を可変速制御器に送信して、ポンプを迅速に始動することができる。
[形態3]形態3によれば、形態1又は2の制御ユニットにおいて、前記始動条件は、前記ポンプの吐出し圧力が所定の始動圧力よりも低下することを含む。
[形態4]形態4によれば、形態1から3の何れかの制御ユニットにおいて、前記始動待機条件は、前記ポンプの吐出し圧力に基づく条件を含む。
[形態5]形態5によれば、形態4の制御ユニットにおいて、前記始動待機条件は、前記ポンプの吐出し圧力が、所定の始動圧力よりも高い所定の圧力値よりも低下することを含む。
[形態6]形態6によれば、形態1から5の何れかの制御ユニットにおいて、前記少なくとも1台の可変速制御器と前記制御ユニットはシリアル通信にて接続され、前記制御ユニットは、前記第1信号並びに前記第2信号を前記可変速制御器に対して通信にて指令する。
[形態7]形態7によれば、形態6の制御ユニットにおいて、前記制御ユニットは、前記始動条件または/および前記始動待機条件が成立したら、始動する前記ポンプの可変速制御器への送信を優先する割込送信を行う。
形態7によれば、始動条件または始動待機条件が成立した時に、可変速制御器へ割込送信されるので、ポンプを迅速に始動待機状態とする、又はポンプを迅速に始動することができる。
[形態8]形態8によれば、形態6または7の何れかの制御ユニットにおいて、前記少なくとも1台のポンプは、複数台のポンプであり、前記制御ユニットは、所定の通信順番にしたがって全ての前記可変速制御器に信号を送信し、前記制御ユニットは、前記複数台のポンプのうち停止且つ前記始動条件または/および前記始動待機条件が成立していないポ
ンプの前記可変速制御器に第1頻度で信号を送信し、前記始動条件または/および前記始動待機条件が成立した前記ポンプの前記可変速制御器に前記第1頻度より高い第2頻度で信号を送信する。
形態8によれば、ポンプの始動時に制御ユニットと可変速制御器とに通信エラーが生じることを抑制することができ、ポンプの始動を安定させることができる。
[形態9]形態9によれば、ポンプ装置が提案される。前記ポンプ装置は、形態1から8の何れかの制御ユニットと、前記少なくとも1台の可変速制御器と、前記少なくとも1台の電動機駆動のポンプと、を備える。
形態9によれば、上記した制御ユニットと同様の効果を奏することができる。
[形態10]形態10によれば、形態9のポンプ装置において、前記電動機は、同期電動機であり、前記可変速制御器は、前記制御ユニットから前記ポンプの運転を指令するための前記第1信号と前記ポンプの始動を指令するための前記第2信号との少なくとも一方を受信したら、前記同期電動機の回転位置を推定する、又は前記同期電動機の回転位置を所定回転位置へと移動させる。
形態10よれば、始動条件が成立する前に、同期電動機を始動するための処理を開始することができ、始動条件が成立したときにポンプを迅速に始動することができる。
[形態11]形態11によれば、少なくとも1台の可変速制御器によって少なくとも1台の電動機駆動のポンプを可変速制御するポンプ装置の制御ユニットが提案され、前記制御ユニットは、前記少なくとも1台の可変速制御器とシリアル通信にて接続され、前記制御ユニットは、停止中の前記ポンプを始動するための始動条件を有し、前記始動条件が成立したとき、前記始動条件が成立した前記ポンプが接続された前記可変速制御器との通信を優先する割込通信にて運転指令を送信して当該ポンプを始動させることを特徴とする。
かかる制御ユニットによれば、ポンプの始動条件が成立したときに、割込み通信にて運転指令が送信されてポンプが始動し、ポンプを迅速に始動することができる。
[形態12]形態12によれば、ポンプ装置が提案される。前記ポンプ装置は、形態11の制御ユニットと、前記少なくとも1台の可変速制御器と、前記少なくとも1台の電動機駆動のポンプと、を備える。
形態12によれば、上記した制御ユニットと同様の効果を奏することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。