JP2019210385A - 地盤改良剤組成物及びその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】 使用環境による重合反応の阻害を低減し、良好な反応性を確保することができる地盤改良剤組成物を提供する。【解決手段】 地盤改良剤組成物は、以下の(A)〜(D)成分:(A)ビニル系不飽和単量体又はその塩(B)重合開始剤(C)無機塩(D)水を含む。【選択図】なし

Description

本明細書は、地盤改良剤組成物及びその利用に関する。
軟弱な地盤等を改良する薬剤として従来から地盤改良剤が知られており、掘削作業時の一時的な補強、建築構造物の地盤改良、地下鉄や道路又は鉄道トンネル等の地下構造物の漏水防止(止水)、並びに液状化防止及び免震等を目的とした地盤改良などの幅広い用途で使用されている。
地盤改良剤としては、水ガラス系、アクリル系、ポリビニルアルコール系及びウレタン系等の各種薬剤が知られている。中でも、アクリル系の地盤改良剤は、アクリル系単量体及び重合開始剤等を含む組成物からなり、地盤への良好な浸透性を有するとともに、炭素−炭素結合からなる主鎖骨格による優れた耐久性を発揮することができる点において有用である。
例えば、特許文献1には、(メタ)アクリル酸の一価又は二価の金属塩、三価金属塩、酸化剤、還元力の異なる2種以上の還元剤及び水を含有する注入材用組成物が開示されている。特許文献2には、(メタ)アクリル酸の一価又は二価の金属塩水溶液、アルミニウム水溶性塩の水溶液及び重亜硫酸塩水溶液を含有する(メタ)アクリル酸系薬液が開示されている。特許文献3には、(メタ)アクリル酸金属塩、前記(メタ)アクリル酸金属塩以外の多価金属塩化合物、酸化剤、特定の還元剤及び水を含有する地盤注入剤組成物が開示されている。
特開2001−241288号公報 特開2006−104795号公報 特開2016−130286号公報
本発明者らによれば、特許文献1〜3に記載の地盤改良剤では、適用する地盤等の使用環境によっては(メタ)アクリル酸などのラジカル重合反応が阻害されて硬化不良を生じることがわかった。特に、地盤改良剤を、土と混合又は土に浸透させて硬化させる場合に、硬化不良が顕著となる場合があることが判明し、地盤を所望の強度に改良することが困難である上に、未反応の単量体が残存するなどの問題を生じてしまうことがわかった。
本明細書は、使用環境による重合反応の阻害を低減し、良好な反応性を確保することができる地盤改良剤組成物を提供する。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ビニル系不飽和単量体の硬化を用いる地盤改良剤組成物において、無機塩を添加することで、地盤の種類に関わらず、安定して前記単量体を重合させ硬化させ得るという知見を得た。本明細書は、かかる知見に基づき、以下の手段を提供する。
[1]地盤改良剤組成物であって、
以下の(A)〜(D)成分:
(A)ビニル系不飽和単量体又はその塩
(B)重合開始剤
(C)無機塩
(D)水
を含む、組成物。
[2]前記(C)成分の総量が、0.05質量%以上である、[1]に記載の組成物。
[3]pHが4.0以上9.0以下である、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]陽イオン交換容量が0.3meq/100g以上の地盤改良用である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5]さらに、(E)成分:
(E)架橋性多価金属塩化合物及びビニル系不飽和基を2以上有する単量体からなる群から選択される1種又は2種以上の架橋剤
を含む、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6]前記(A)成分及び前記(E)成分の総量が、1.0質量%以上40質量%以下である、[5]に記載の組成物。
[7]地盤改良のためのキットであって、
ビニル系不飽和単量体又はその塩と、
重合開始剤と、
無機塩と、
を備える、キット。
[8]地盤改良方法であって、
[1]〜[6]のいずれかに記載の地盤改良剤組成物を地盤中で硬化させる工程を備える、方法。
本明細書は、地盤改良剤組成物及びその利用を提供する。本明細書に開示される地盤改良剤組成物(以下、単に「本組成物」ともいう。)は、地盤改良のための硬化性成分であるビニル系不飽和単量体又はその塩と、重合開始剤と、水と、を含むほか、無機塩を含んでいる。本組成物によれば、無機塩を含有することによって、使用環境、概して土壌や地盤の粘土性や陽イオン交換容量等の性質等に関わらず、ビニル系不飽和単量体の重合・硬化を安定して促進し、地盤中において得られるゲル化物(ゲル物)の硬化不良を抑制又は回避することができる。このため、安定して十分な強度のゲル物を得ることができる。したがって、本組成物は、掘削作業時の一時的な地盤補強や建築構造物等の恒久的な地盤改良等、幅広い用途に亘って適用することができる。
本明細書に開示される地盤改良方法(以下、「本方法」ともいう。)やキット(以下、「本キット」ともいう。)等も本組成物によるものと同様の作用を生じさせることができる。
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタアクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミド及び/又はメタアクリルアミドを意味する。
本明細書において、「地盤改良剤」とは、種々の目的のための地盤改良に用いる剤を包含する。ここで、「地盤改良」とは、例えば、漏水防止、止水、液状化防止、地盤強化のほか、例えば、工法としては、山岳トンネル工法又はその補助工法(先受工法、各種補強工法)、地山固結工法、止水工法、注入固化処理工法(又は薬液注入工法)、ジェットグラウト工法等が挙げられる。
以下、本組成物及び本方法等の実施態様について詳細に説明する。
<地盤改良剤組成物>
本組成物は、(A)成分:ビニル系不飽和単量体又はその塩、(B)成分:重合開始剤、(C)成分:無機塩、及び、(D)成分:水、を含有することができる。本組成物は、さらに、(E)成分:架橋性多価金属塩化合物及びビニル系不飽和基を2以上有する単量体からなる群から選択される1種又は2種以上の架橋剤を含有することができる。
<(A)成分:ビニル系不飽和単量体又はその塩>
本組成物が含有するビニル系不飽和単量体又はその塩におけるビニル系不飽和単量体は、イオン性単量体(アニオン性単量体又はカチオン性単量体)及び非イオン性単量体のいずれでもよく、これらを組み合わせて用いることもできる。なお、ビニル系不飽和単量体は、重合性の不飽和基を1つのみ備える単官能性単量体を意味する。
アニオン性単量体又はその塩としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸、無水イタコン酸及び無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体又はその塩若しくは無水物;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート硫酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、2−アクリロイルオキシアルキルホスホン酸等が挙げられる。特に限定するものではないが、例えば、重合性、水への溶解性の観点から(メタ)アクリル酸又はその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はその塩、を好ましく用いることができる。
また、アニオン性単量体の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩及びバリウム塩等のアルカリ土類金属塩;マグネシウム塩、アルミニウム塩、ジルコニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの単量体及びその塩は、単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。これらの金属塩の中でも、良好な強度と耐変形性を有するゲル物が得られる観点から、カルシウム塩、マグネシウム塩等が好ましい。
カチオン性単量体又はその塩としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びこれらの塩等の三級アミノ基含有化合物;(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム塩基含有化合物等を用いることができる。これらの単量体及びその塩は、単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
非イオン性単量体又はその塩としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル及びこれらの塩等が挙げられる。これらの単量体及びその塩は、単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。非イオン単量体としては、特に限定するものではないが、例えば、重合性、水への溶解性の観点から、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体を好ましく用いることができる。中でも、(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
本組成物中のビニル系不飽和単量体又はその塩の濃度としては、特に限定するものではないが、例えば0.5質量%以上であり、また例えば1.0質量%以上、また例えば2.0質量%以上、また例えば4.0質量%以上、また例えば6.0質量%以上である。ビニル系不飽和単量体又はその塩の濃度が、0.5質量%以上であれば、得られるゲル物の強度が十分なものとなる。また、本組成物中のビニル系不飽和単量体又はその塩の濃度は、特に限定するものではないが、例えば40質量%以下であり、また例えば30質量%以下であり、また例えば20質量%以下であり、また例えば15質量%以下である。同濃度が40質量%以下であれば、地盤改良剤組成物の安定性を確保しやすい。
特に限定するものではないが、本組成物に後述する架橋剤を併用する場合には、ビニル系不飽和単量体又はその塩の濃度としては、例えば39.5質量%以下であり、また例えば39.0質量%以下であり、また例えば38.5質量%以下である。上記濃度は、また例えば30質量%以下であり、また例えば20質量%以下であり、また例えば15質量%以下であり、また例えば10質量%以下である。
ビニル系不飽和単量体又はその塩の濃度の範囲は、これらの下限濃度及び上限濃度を組み合わせて設定することができるが、例えば0.5質量%以上40質量%以下であり、また例えば1.0質量%以上30質量%以下であり、また例えば2.0質量%以上15質量%以下とすることができる。なお、本組成物中におけるビニル系不飽和単量体又はその塩の濃度は、後述する架橋剤等の濃度との総量によっても規定される。
<(B)成分:重合開始剤>
重合開始剤は、本組成物中のビニル系不飽和単量体又はその塩を重合させる等のために添加され、ビニル系不飽和単量体又はその塩に適用される各種公知の重合開始剤を用いることができる。例えば、可使時間、地盤注入後から硬化(ゲル化)までの硬化時間のコントロール等の観点から、アゾ開始剤、ペルオキソ二硫酸塩等の無機過酸化物、過カルボン酸類、ヒドロペルオキシド等の有機過酸化物などを用いることができる。無機過酸化物及び有機過酸化物である酸化剤を用いる場合には、適宜還元剤を併用することができる。
アゾ開始剤としては、例えば、概して、レドックス系開始剤より分解が遅く、可使時間が、例えば、数日単位程度まで確保することもできる。アゾ開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス〔2−(イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス〔2−(イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、4,4’−アゾビス(4−シアノバレロ酸)などが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、適度な可使時間を得やすい点から、2,2’−アゾビス〔2−(イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス〔2−(イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジヒドロクロリドが好ましい。
無機過酸化物としては、特段の制限はなく、公知の無機過酸化物を使用することができる。例えば、過炭酸ソーダ、過ホウ酸ソーダ、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウム及び過酸化水素等の過酸化物、並びに過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の無機過硫酸塩化合物が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
有機過酸化物は、特に限定するものではないが、本組成物の組成や使用環境を考慮すると、親水性が高いものであることが好ましい。当該観点からすると、例えば、全体として炭素数15以下である有機過酸化物を用いることができ、また例えば、炭素数10以下の有機過酸化物、また例えば、炭素数8以下の有機過酸化物を用いることができる。なお、有機過酸化物の炭素数は、また例えば2以上とすることができ、また例えば、3以上とすることができる。有機過酸化物の全体の炭素数の好適な範囲は、既述の上限及び下限を適宜組み合わせることで設定できるが、例えば、2以上10以下であり、また例えば、3以上8以下である。
また、有機過酸化物は、親水性であることが好ましいが、例えば、ケトンペルオキシド類、ヒドロペルオキシド類、過カルボン酸類、ジアシルペルオキシド類などは概して水溶解性が高い傾向がある。中でも、ヒドロペルオキシド類は、水溶解性が一層高い傾向がある。
有機過酸化物としては、例えば、ジアシルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、ビス(4−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシカーボネート、ブチルペルオキシネオデカノエート、ジプロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジエトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジエトキシヘキシルペルオキシジカーボネート、ヘキシルペルオキシジカーボネート、ジメトキシブチルペルオキシジカーボネート、ビス(3−メトキシ−3−メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、ジブチルペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシピバレート、ヘキシルペルオキシピバレート、ブチルペルオキシピバレート、トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ジメチルヒドロキシブチルペルオキシネオデカノエート、アミルペルオキシネオデカノエート、ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ラウリルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカイルペルオキシドの他、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−クミルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類、過酢酸および過安息香酸などの過カルボン酸類、メチルエチルケトンペルオキシドまたは過酸化ベンゾイル(ベンゾイルペルオキシド)などが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。水溶解性の観点からは、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−クミルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類、メチルエチルケトンペルオキシドなどのケトンペルオキシド類、過酢酸および過安息香酸などの過カルボン酸類、過酸化ベンゾイルなどのジアシルペルオキシド類が好ましい。有機過酸化物などの有機系酸化剤は、無機系酸化剤よりも、地盤中において反応率を上昇させやすい傾向を有している点において好適である。
(還元剤)
無機過酸化物及び有機過酸化物と併用できる還元剤としては、特段の制限はなく、公知の無機還元剤及び有機還元剤を使用することができる。無機還元剤の具体的な化合物としては、チオ硫酸ナトリウム及びチオ硫酸カリウム等のチオ硫酸塩化合物、重亜硫酸ナトリウム及び重亜硫酸カリウム等の重亜硫酸塩化合物、次亜リン酸ナトリウム及び次亜リン酸カリウム等の次亜リン酸化合物、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸カリウム等の亜硫酸化合物、第一鉄塩、並びに、硫酸銅等の銅塩が挙げられる。有機還元剤の具体的な化合物としては、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム(ロンガリット)などのヒドロキシメタンスルフィン酸塩、アスコルビン酸ナトリウムなどのアスコルビン酸又はその塩、エリソルビン酸ナトリウムなどのエリソルビン酸又はその塩、二酸化チオ尿素、二硫化チオ尿素のほか、並びに、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ジメチルアミノプロピオニトリル、ジメチルアミノプロパノール、ピペラジン及びモルホリン等のアミン類等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
重合開始剤の濃度や使用量は、ビニル系不飽和単量体又はその塩の種類及び濃度、後述する架橋剤の種類及び濃度、地盤・土壌の種類、pH、水温等の条件、硬化時間等の設定値を考慮し、本組成物の用途によって適宜選択すればよい。また、レドックス系開始剤の場合には、酸化剤と還元剤の組み合わせも適宜選択することができる。
本組成物中における重合開始剤(還元剤を併用する場合、還元剤量は除く。)の濃度は、例えば0.1mM以上200mM以下程度とすることができ、また例えば1mM以上100mM以下程度とすることができ、また例えば1mM以上50mM以下程度とすることができ、また例えば1mM以上20mM以下程度とすることができる。また、還元剤を併用する場合の本組成物中における無機過酸化物及び有機過酸化物の濃度は、例えば0.1mM以上100mM以下であり、また例えば1mM以上100mM以下であり、また例えば1mM以上20mM以下である。また、本組成物中における還元剤の濃度は、例えば1mM以上100mM以下程度とすることができ、また例えば1mM以上40mM以下程度とすることができる。
<(C)成分:無機塩>
本組成物は、無機塩を含有することができる。本組成物は、無機塩を含有することにより、高い陽イオン交換容量を有する土壌に適用した場合であっても、重合反応が阻害されることなく進行し、また、硬化性成分が未反応のまま残存することを抑制又は回避することができる。無機塩を含有することにより上記効果が得られる理由は明確ではないが、本組成物が土壌に適用されたときに、無機塩に含有されるカチオン成分が土壌中の負電荷に吸着することにより、(A)成分の重合阻害を抑制又は低減するものと考えられる。なお、上記の理由は推察であり、本発明の範囲を限定するものではない。
無機塩は、金属塩であってもよいし、非金属塩であってもよい。金属塩としては、水への溶解性が高く、長期保存安定性にも優れる点で、一価又は二価の金属を用いることが好ましい。無機塩に関し、一価又は二価の金属としては、特に限定するものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム等が挙げられる。非金属塩としては、特に限定するものではないが、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。なお、(C)成分としての無機塩には、(B)成分に該当する無機過酸化物及び無機還元剤等の化合物は含まれない。
また、本組成物が含有する無機塩は、上記のような正塩に限られず、例えば、酸性塩や塩基性塩であってもよい。
無機塩の濃度や使用量は、ビニル系不飽和単量体又はその塩の種類及び濃度、後述する架橋剤の種類及び濃度、地盤・土壌の種類、pH、水温等の条件を考慮し、適宜選択すればよい。本組成物中における無機塩の濃度は、特に限定するものではないが、例えば0.05質量%以上であり、また例えば0.1質量%以上であり、また例えば0.5質量%以上であり、また例えば1.0質量%以上であり、また例えば1.5質量%以上であり、また例えば2.0質量%以上であり、また例えば5.0質量%以上である。本組成物における無機塩の濃度が0.05質量%以上であれば、本組成物の重合反応の阻害を好適に低減することができる。また、本組成物における無機塩の濃度は、特に限定するものではないが、例えば20質量%以下であり、また例えば15質量%以下であり、また例えば10質量%以下である。さらにまた、無機塩の濃度の範囲は、これらの下限及び上限を適宜組み合わせて設定できるが、例えば0.1質量%以上10質量%以下であり、また例えば0.5質量%以上5質量%以下である。
また、本組成物中の(A)成分の総量に対する無機塩の比率の下限は、特に限定するものではないが、例えば1質量%以上であり、また例えば5質量%以上であり、また例えば10質量%以上であり、また例えば40質量%以上であり、また例えば80質量%以上であり、また例えば100質量%以上である。また、当該比率の上限は、特に限定するものではないが、例えば300質量%以下であり、また例えば250質量%以下であり、また例えば200質量%以下であり、また例えば150質量%以下である。さらにまた、当該比率の範囲は、これらの下限及び上限を適宜組み合わせて設定できるが、例えば1質量%以上250質量%以下であり、また例えば10質量%以上150質量%以下である。
<(D)成分:水>
本組成物は、水を含有することができる。本組成物は、水溶液又は懸濁液等の形態で地盤に適用される。本組成物において水は、各種成分を溶解又は分散して、地盤へのこれらの成分の運搬媒体等として機能することができる。また、水は、硬化時間等の調整剤として機能することもできる。なお、本組成物は、水の他に、上記した各種成分を溶解し分散する有機溶媒を、本組成物の効果を損なわない範囲で含むことができる。
本組成物中における水は、概して、本組成物中における(A)成分ないし(C)成分、さらに必要に応じて含まれる後述する(E)成分及びその他の成分を除く残分に相当する。本組成物中における水の濃度は、特に限定されるものではないが、例えば50質量%以上であり、また例えば60質量%以上であり、また例えば70質量%以上であり、また例えば80質量%以上などとすることができる。
<(E)成分:架橋剤>
本組成物は、架橋性多価金属塩化合物及びビニル系不飽和基を2以上有する単量体からなる群から選択される1種又は2種以上の架橋剤を含有することができる。
(架橋性多価金属塩化合物)
架橋性多価金属塩化合物は、三価以上の多価金属塩化合物(以下、単に本多価金属塩化合物ともいう。)である。本多価金属塩化合物は、(A)成分の重合体を架橋して、水中で高分子化して安定したゲル物を形成し、その強度、寸法安定性及び耐久性を向上させることができる。
本多価金属塩化合物に関し、三価以上の金属としては、特に限定するものではないが、アルミニウム、ジルコニウム、チタン及びセリウム等が挙げられる。具体的な化合物としては、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、ミョウバン、ナトリウムミョウバン、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(塩基性塩化アルミニウム)及びポリ硫酸塩化アルミニウム(塩基性硫酸塩化アルミニウム)などのアルミニウム塩、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム及びオキシ硫酸ジルコニウムなどのジルコニウム塩、塩化チタン及び硝酸セリウム等が挙げられ、これらの中でもアルミニウム塩及びジルコニウム塩がより好ましく、さらに好ましくはアルミニウム塩である。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
本多価金属塩化合物の本組成物中の濃度は特に限定するものではない。本多価金属塩化合物の濃度は、本多価金属塩化合物が含む金属の酸化物、すなわち、本多価金属塩化合物に対応する金属酸化物に換算して(以下、本多価金属塩化合物の濃度については、当該換算を用いる。)、例えば0.1質量%以上であり、また例えば0.5質量%以上であり、また例えば1.0質量%以上であり、また例えば1.5質量%以上である。同濃度が0.1質量%以上であれば、得られるゲル物の強度が十分なものとなる。また、同濃度は、特に限定するものではないが、例えば10質量%以下であり、また例えば8.0質量%以下であり、また例えば6.0質量%以下であり、また例えば4.0質量%以下である。同濃度が10質量%以下であれば、地盤への良好な浸透性等を確保することができる。同濃度の範囲は、これらの下限濃度及び上限濃度を組み合わせて設定することができるが、例えば0.5質量%以上10質量%以下であり、また例えば1.0質量%以上8.0質量%以下であり、また例えば1.0質量%以上4.0質量%以下である。なお、本多価金属塩化合物は、上述した(C)成分と比較して溶解性が低い。このため、同濃度が10質量%よりも大きい場合、本多価金属塩化合物が好適に溶解せずに析出する場合がある。また、本多価金属塩化合物は、(A)成分に対して架橋剤として作用するため、同濃度を(A)成分の総量以下とすることが好ましい。
また、本多価金属塩化合物の含有量としては、用いる(A)成分の種類及び(E)成分の種類にもよるが、その効果の観点から、ビニル系不飽和単量体又はその塩に対して、60質量%以下とすることができ、また例えば50質量%以下とすることができ、また例えば40質量%以下とすることができ、また例えば30質量%以下とすることができ、また例えば20質量%以下とすることができる。
(ビニル系不飽和基を2以上有する単量体)
ビニル系不飽和基を2以上有する単量体(以下、単に「本多価ビニル系不飽和単量体」ともいう。)は、(A)成分の重合体を架橋して、水中で高分子化して安定したゲル物を形成し、その強度、寸法安定性及び耐久性を向上させることができる。
本多価ビニル系不飽和単量体としては、公知の2価以上のビニル系不飽和単量体を用いることができるが、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド及びヒドロキシエチレンビスアクリルアミド等の水溶性ジビニル単量体、並びにペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の多官能アリルエーテル化合物が挙げられる。
本多価ビニル系不飽和単量体の本組成物中における濃度は、特に限定するものではないが、例えば0.5質量%以上であり、また例えば1.0質量%以上であり、また例えば1.5質量%以上であり、また例えば2.0質量%以上である。本多価ビニル系不飽和単量体の濃度が、0.5質量%以上であれば、得られるゲル物の強度が十分なものとなる。また、本多価ビニル系不飽和単量体の濃度は、特に限定するものではないが、例えば10質量%以下であり、また例えば8質量%以下であり、また例えば6質量%以下であり、また例えば4質量%以下である。本多価金属塩化合物の濃度が10質量%以下であれば、地盤への良好な浸透性等を確保することができる。本多価ビニル系不飽和単量体の濃度の範囲は、これらの下限濃度及び上限濃度を組み合わせて設定することができるが、例えば0.5質量%以上10質量%以下であり、また例えば1.0質量%以上8.0質量%以下であり、また例えば1.0質量%以上4.0質量%以下である。
また、本多価ビニル系不飽和単量体の濃度としては、多価でない、すなわち、ビニル系不飽和基を1つのみ有する非架橋性のビニル系不飽和単量体(以下、「非架橋性単量体」ともいう。)に対して、例えば0.1質量%以上であり、また例えば0.3質量%以上であり、また例えば0.5質量%以上であり、また例えば1.0質量%以上である。非架橋性単量体に対する本多価ビニル系不飽和単量体の濃度が0.1質量%以上であれば、得られるゲル物の強度が十分なものとなる。また、非架橋性単量体に対する本多価ビニル系不飽和単量体の濃度は、特に限定するものではないが、例えば2000質量%以下であり、また例えば1000質量%以下であり、また例えば500質量%以下であり、また例えば100質量%以下であり、また例えば50質量%以下である。
<(A)成分及び(E)成分の総濃度>
本組成物における(A)成分であるビニル系不飽和単量体又はその塩と、(E)成分である架橋性多価金属塩化合物及びビニル系不飽和基を2以上有する単量体からなる群から選択される1種又は2種以上の架橋剤と、の総濃度は、特に限定するものではないが、得られるゲル物の強度や重合・硬化反応の速度を考慮すると、例えば1.0質量%以上であることが好ましい。さらに好適なゲル物の強度及び硬化速度の観点からは、同総濃度は、例えば2.0質量%以上であり、また例えば3.0質量%以上であり、また例えば4.0質量%以上であり、また例えば5.0質量%以上であり、また例えば6.0質量%以上である。析出物の生成の抑制や地盤への浸透性を考慮すると、同総濃度は、特に限定するものではないが、例えば50質量%以下であることが好ましい。より良好な地盤への浸透性の観点からは、同総濃度は、例えば45質量%以下であり、また例えば40質量%以下であり、また例えば35質量%以下であり、また例えば30質量%以下であり、また例えば25質量%以下であり、また例えば20質量%以下であり、また例えば18質量%以下であり、また例えば16質量%以下であり、また例えば14質量%以下であり、また例えば12質量%以下である。同総濃度の範囲は、これらの下限濃度及び上限濃度を組み合わせて設定することができるが、例えば1.0質量%以上40質量%以下であり、また例えば2.0質量%以上30質量%以下であり、また例えば3.0質量%以上20質量%以下であり、また例えば4.0質量%以上16質量%以下である。
<その他の成分>
本組成物は、本組成物の効果を損なわない範囲で種々の成分を含有することができる。例えば、公知の水ガラス等の他の地盤改良剤を含むこともできる。また、4級アンモニウム塩、有機酸アミン塩、芳香族化合物、亜硝酸塩、アルコール、ヘキサメチレンテトラミンなどの公知の防錆剤、シリコーン系、鉱物油系、植物油系、高級アルコール系などの公知の消泡剤、公知の乳化剤及び公知の金属封止剤から選択される1種又は2種以上を適宜含有することができる。
また、本組成物は、ゲル物の増量又は補強のために、必要に応じて骨材を配合することもできる。骨材としては、セメント、フライアッシュ、珪藻土、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、ベントナイト、パーライト、蛭石、高炉スラグ、石膏、珪砂、パルプ及び炭素粉等の粉体や各種繊維等を用いることができる。骨材は、使用量が多過ぎると、組成物の流動性やゲル物の曲げ強度を低減させる場合があるので、ビニル系不飽和単量体又はその塩の質量の10倍以下とすることが好ましい。組成物中に骨材が沈殿する場合は、沈殿防止剤等を併用することもできる。
<本組成物のpH>
本組成物は、中性領域に近いpHを有することが好ましい。具体的なpHの値としては、例えば3.5超10.0未満であり、また例えば4.0以上9.5未満である。この範囲であると、本組成物の良好な反応性を確保することができる。より好適な反応性の確保の観点からは、例えば4.0以上9.0以下であり、また例えば4.5以上8.5以下であり、また例えば5.0以上8.0以下であり、また例えば5.5以上7.0以下である。
<本組成物の使用>
本組成物は、重合開始剤により重合反応が進行し、ゲル物を生じるものである。したがって、本組成物は、そのまま地盤に注入して地盤内でゲル化させるために使用することができる。本組成物によれば、地盤・土壌の性質にかかわらず、安定してビニル系不飽和単量体又はその塩の重合を促進できるため、強固なゲル物を地盤中に形成することができる。したがって、本組成物は、種々の態様の掘削作業や地盤改良に広く適用することができる。
<地盤改良のためのキット>
本明細書に開示されるキットは、ビニル系不飽和単量体又はその塩と、重合開始剤と、無機塩と、を備えることができる。本キットによれば、これらのうち1又は2以上の成分を、それぞれ水溶液等の水性組成物として備えて、用時混合して本組成物を調製することもできるし、別途準備した成分である水を用いて、用時にビニル系不飽和単量体又はその塩、重合開始剤及び無機塩を混合及び/又は溶解して本組成物を調製することもできる。本組成物を調製後は、本組成物による種々の特性を発揮することができる。なお、本キットは、水を備えることもできる。
また、本キットは、用時調製のためにビニル系不飽和単量体又はその塩、重合開始剤及び無機塩を備える場合、ビニル系不飽和単量体又はその塩及び無機塩とは別に重合開始剤を備えることで、本組成物を簡易に十分な可使時間を確保して利用することができるようになる。本キットによれば、製造、流通、保管等に関する問題、地盤改良工事等における可使時間の短さなどを解決できる。
本キットは、ビニル系不飽和単量体又はその塩に対して重合開始剤が作用しない態様で分離して備えるキット態様を採ることができる。このような分離収容態様は、特に限定するものではないが、例えば、2以上の包装体に各種成分を分離してもよいし、あるいは2以上の区画や収納領域を有する一つの包装体等に各種成分を分離してもよい。
また、地盤注入時前に、本キットから本組成物を調製して、注入管を介して地盤に注入するようにしてもよいし、本キットの1又は2以上の成分を別個に注入管に注入して、注入管内で混合して本組成物を調製するようにしてもよい。
本キットにおける、ビニル系不飽和単量体又はその塩、重合開始剤及び無機塩の含有量は特に限定するものでない。調製時に、各成分の所要量を計量するようにしてもよいし、予め本組成物として好適な濃度やpHとなるように計量されていてもよい。また、所要量を簡易に計量できるように、一定量ずつに小分けされていてもよい。
本キットにおいては、例えば、調製しようとする本組成物において意図する各成分の濃度となるように、各成分が予め計量等されていることが好ましい。
また、ビニル系不飽和単量体又はその塩、重合開始剤及び無機塩は、適宜水等で溶液としてもよいしそれ自体(粉末や液体等)であってもよい。各成分の取扱性、安定性、物性に応じて適宜選択される。
本組成物及び本キットは、例えば、陽イオン交換容量が0.3meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば同0.4meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば同0.5meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば同1.0meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば同2.0meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば同3.0meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば同4.0meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば同6.0meq/100g以上の土壌にも適用することができ、また例えば同8.0meq/100g以上の土壌にも適用することができる。なお、土壌の陽イオン交換容量の上限は特に限定するものではないが、例えば20meq/100g以下であり、また例えば15meq/100g以下である。
なお、土壌の陽イオン交換容量は、乾燥させた土壌試料につき、Shollen-berger氏法に従って測定することができる。具体的には、インドフェノール青吸光光度法(JIS K 0102)にてアンモニウムイオン濃度を測定することにより実施できる。
<地盤改良方法>
本明細書に開示される地盤改良方法は、本組成物を地盤中で硬化させる工程を備えることができる。本方法によれば、適用される土壌の性質等にかかわらず、あるいは適用する土壌の性質に合わせて、安定してビニル系不飽和単量体の重合反応を進行させて重合・硬化させることができ、優れた特性のゲル物を得ることができる。
本方法は、既述の各種の地盤改良に適用が可能である。具体的な工法としては、既に説明した各種工法が挙げられる。本方法における、本組成物の導入工程は、適用する用途や工法に応じた公知の態様で本組成物を地盤に注入することによって実施することができる。一般的には、ポンプ等によって、注入すべき1種又は2種以上の液体を、地盤内に配置した注入管を介して、別個にあるいは注入管内等で混合しつつ圧送することによって、地盤に導入する。
本方法は、注入固化工法(薬液注入工法)に好適である。注入固化工法(薬液注入工法)は、本組成物を砂地盤に浸透注入し、砂地盤の間隙に存在する水を注入剤に置換した後、注入剤がゲル化することにより砂地をバインディングすると共に漏水防止、止水、液状化防止及び地盤強化等の機能を奏する地盤改良工法である。比較的小規模な装置を用いて注入管から必要な箇所に薬液を注入し、固化させる工法であり、例えば、タンクや橋脚等の移動困難な既設構造物の直下の地盤の液状化対策に有効な地盤改良工法である。本組成物は、十分な又は適切なゲルタイムを確保することができるとともに、優れたゲル物強度を得ることができるため、注入固化工法(薬液注入工法)に適用した場合に優れた性能を発揮することができる。
以下、本明細書の開示について具体例を挙げて具体的に説明する。ただし、本明細書の開示は、以下の具体例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、特に断らない限り、「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味する。
以下に、地盤改良剤組成物の評価方法について記載し、その後、各実施例等について説明する。
[1]組成物のpH
pHメータにて測定した。
[2]モノマー反応率
50mL樹脂製ビンに、後述する各組成物50gと、試験用土壌12gを加え、組成物と試験用土壌をなじませた混合物を作製した。その後、23℃で3日静置して、ビン内の混合物を取り出し、水で未反応のモノマーを抽出した。抽出液をイオン交換樹脂で処理してアクリル酸塩を酸型に戻した後、ガスクロマトグラフィーにて定量し、モノマー反応率に換算した。
<実施例1>
水17.9gに、塩化カルシウム2.5g(5.0質量%)と、濃度35%のアクリル酸マグネシウム塩水溶液5.71g(4.0質量%)と、架橋剤として濃度23%のポリ塩化アルミニウム4.35g(2.0質量%)を溶解した。この溶液に酸化剤として濃度69%のt−ブチルヒドロペルオキサイド(PBH)0.065g(10mM)と、チオ硫酸ナトリウム0.16g(20mM)と水19.3gとの混合液を加えて、実施例1の地盤改良剤組成物を調製した。試験用土壌として精製ベントナイト(クニミネ工業、クニピアF、陽イオン交換容量1meq/100g)を用い、モノマー反応率の評価を行った。
<実施例2〜12、比較例1〜2>
実施例2〜12及び比較例1〜2は、表1に示す通りとなるように各成分を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、それぞれ地盤改良剤組成物を調製した。なお、実施例9では塩化アンモニウム、実施例10では硫酸アンモニウム、実施例11及び12では塩化カリウムを、それぞれ無機塩として用いた。比較例1及び2では、無機塩を添加しなかった。
Figure 2019210385
<実施例13〜14、比較例3〜4>
実施例13〜14、比較例3〜4、表2に示す通りとなるように各成分を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、それぞれ地盤改良剤組成物を調製した。なお、実施例13及び比較例3では、豊浦硅砂(豊浦硅石鉱業社製)9g及びクニピアF3gを混合したものを試験用土壌として用いた(陽イオン交換容量0.51meq/100g)。また、実施例14及び比較例4では、上記豊浦硅砂6g及びクニピアF6gを混合したものを試験用土壌として用いた(陽イオン交換容量0.74meq/100g)。
Figure 2019210385
以下、表1及び表2中の記載について補足する。
AAMg:アクリル酸マグネシウム
TAH:t−アミルヒドロペルオキシド
PBH:t−ブチルヒドロペルオキシド
Thio:チオ硫酸ナトリウム
PAC:ポリ塩化アルミニウム(塩基度83%)
CEC:陽イオン交換容量
表1及び表2に示す通り、実施例1〜14は、無機塩を含まない対応する比較例よりも高いモノマー反応率を示すことが解った。また、モノマー反応率は、無機塩の濃度に応じて向上すること(例えば、実施例1〜5)、及び無機塩の種類によらずモノマー反応率に寄与することがわかった(実施例9〜12)。さらに、土壌の陽イオン交換容量に着目すると、高い陽イオン交換容量を有する土壌に適用した場合に、本組成物により奏される効果がより顕著なものとなることが確認できた。

Claims (8)

  1. 地盤改良剤組成物であって、
    以下の(A)〜(D)成分:
    (A)ビニル系不飽和単量体又はその塩
    (B)重合開始剤
    (C)無機塩
    (D)水
    を含む、組成物。
  2. 前記(C)成分の総量が、0.05質量%以上である、請求項1に記載の組成物。
  3. pHが4.0以上9.0以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 陽イオン交換容量が0.3meq/100g以上の地盤改良用である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. さらに、(E)成分:
    (E)架橋性多価金属塩化合物及びビニル系不飽和基を2以上有する単量体からなる群から選択される1種又は2種以上の架橋剤
    を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 前記(A)成分及び前記(E)成分の総量が、1.0質量%以上40質量%以下である、請求項5に記載の組成物。
  7. 地盤改良のためのキットであって、
    ビニル系不飽和単量体又はその塩と、
    重合開始剤と、
    無機塩と、
    を備える、キット。
  8. 地盤改良方法であって、
    請求項1〜6のいずれかに記載の地盤改良剤組成物を地盤中で硬化させる工程を備える、方法。
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