JP2019210281A - 環状ポリエーテルエステル組成物及びそれを含有する抗菌性樹脂組成物 - Google Patents

環状ポリエーテルエステル組成物及びそれを含有する抗菌性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明である環状ポリエーテルエステルを抗菌成分と共に樹脂中へ配合することで、樹脂組成物に優れた抗菌持続性を付与する。【解決手段】特定の繰り返し単位である一般式(1)で表される2価の基を結合してなる環状ポリエーテルエステル(P)及びそれを含む環状ポリエーテルエステル組成物(Q)。前記(P)を含む組成物(Q)、SP値が4.0〜22(cal/cm3)1/2である高分子化合物(E)及び抗菌成分(G)を含有する抗菌性樹脂組成物(F)。抗菌成分(G)が第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤である抗菌性樹脂組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は環状ポリエーテルエステル組成物、その製造方法、及び抗菌性樹脂組成物に関する。
従来、衛生上のニーズ等から、樹脂に抗菌成分を添加して抗菌性を付与することが行われてきた。樹脂に抗菌機能を発現させる有効成分であって、低分子化合物のものを使用する場合、上記樹脂材料を水洗や浸漬することで、有効成分が容易に外部へと溶出し、これに伴う上記機能の低下や、毒性等の問題がある。そこで、抗菌成分である4級アンモニウム構造を特定の樹脂中に組み込み、樹脂中に混合することで抗菌性を持続させる方法が報告されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、樹脂末端にカチオン性部位を組み込むことから、抗菌成分の合成が煩雑である。さらに、抗菌成分の構造も限定されることから、市販の抗菌剤には適用することができず、汎用性にも課題があった。
特許第3086186号公報
本発明は、抗菌持続性に優れる抗菌性樹脂組成物、抗菌性樹脂組成物に用いる環状ポリエーテルエステルを提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。即ち本発明は、下記一般式(1)で表される基を結合してなる環状ポリエーテルエステル(P)を含む環状ポリエーテルエステル組成物(Q)及びその製造方法である。また、上記環状ポリエーテルエステル(P)を含む環状ポリエーテルエステル組成物(Q)、高分子化合物(E)及び抗菌成分(G)を含有する抗菌性樹脂組成物(F)である。
Figure 2019210281
[一般式(1)において、Rは、炭素数2〜21の2価の炭化水素基である。Rの水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されていても良い。;Aは、炭素数2〜8の2価の炭化水素基である。Aの水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていても良い。;mは4以上500以下の整数であり、それぞれの基に含まれるnは0以上、500以下の整数であり、少なくともnが1以上の基を1つ以上含む。;m個あるRは同じであっても異なっていてもよく、m×n個あるAは同じであっても異なっていてもよい。]
本発明の環状ポリエーテルエステルは、抗菌成分と共に樹脂中へ配合することで、樹脂に対して優れた抗菌持続性を付与する。
本発明の環状ポリエーテルエステルは、上記一般式(1)で表される基を構成単位とし、4単位以上結合してなる環状ポリエーテルエステルである。
一般式(1)において、Rは、炭素数2〜21の2価の炭化水素基である。Rの水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基)、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されていても良い。
炭素数2〜21の2価の炭化水素基としては、炭素数2〜21のアルキレン基、炭素数2〜21のアルケニレン基、炭素数4〜21のシクロアルキレン基、炭素数6〜21のアリーレン基及び炭素数7〜21のアラルキレン基等が挙げられる。
炭素数2〜21のアルキレン基としては、炭素数2〜21の直鎖アルキレン基(エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基及びn−ヘンイコサニレン基)、及び、炭素数3〜21の分岐アルキレン基(1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、1,1−ジメチルプロピレン基、1−ヘキシルプロピレン基、1−ヘキシルブチレン基、1−オクチルエチレン基、1−ウンデシルプロピレン基及び1−ウンデシルブチレン基等)等が挙げられる。
炭素数2〜21の直鎖アルケニレン基(エテニレン基、プロペニレン基、トリデセニレン基、ペンタデセニレン基及びヘンイコセニレン基等)及び炭素数3〜21の分岐アルケニレン基(1−エチルエテニレン基、1,2−ジメチルエテニレン基、1−ブチルエテニレン基、1−ヘキシルエテニレン基及び1−オクチルエテニレン基等)等が挙げられる。
炭素数4〜21のシクロアルキレン基としては、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、2−メチルシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、1,3−ジメチルシクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、1−エチルシクロペンチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロウンデシレン基、シクロドデシレン基、シクロトリデレン基、シクロテトラデシレン基、シクロペンタデシレン基、シクロヘキサデシレン基、シクロヘプタデシレン基、シクロオクタデシレン基、シクロノナデシレン基、シクロエイコシレン基、ノルボルニレン基、ジシクロペンチレン基、イソプロピリデンジシクロヘキシレン基及びシクロヘキサンジメチレン基等が挙げられる。
炭素数2〜21のアルケニレン基としては、炭素数2〜21の直鎖アルケニレン基(エテニレン基、プロペニレン基、トリデセニレン基、ペンタデセニレン基及びヘンイコセニレン基等)及び炭素数3〜21の分岐アルケニレン基(1−エチルエテニレン基、1,2−ジメチルエテニレン基、1−ブチルエテニレン基、1−ヘキシルエテニレン基及び1−オクチルエテニレン基等)等が挙げられる。
炭素数6〜21のアリーレン基としては、o−、p−又はm−フェニレン基、2,4−ナフチレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、フルオレニレン基及びピレニレン基等が挙げられる。
炭素数7〜21のアラルキレン基としては、フェニルメチレン基、ジフェニルメチン基、1−フェニルエチレン基、o−フェニレンエチル基及びナフチルメチレン基等が挙げられる。
これらの基の水素原子のうち、少なくとも1つがハロゲン基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換された基としては、1−ブロモ−トリメチレン基、1−アセチル−トリメチレン基、1−メトキシ−トリメチレン基及び1−フェノキシ−トリメチレン基等が挙げられる。
前記Rとして、反応効率の観点から好ましいのは炭素数3〜16の直鎖又は炭素数3〜16の分岐アルキレン基であり、更に好ましいのはトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、トリデセニレン基、ペンタデセニレン基、1−ヘキシルプロピレン基、1−ヘキシルブチレン基、1−ウンデシルプロピレン基及び1−ウンデシルブチレン基である。
一般式(1)において、Aは炭素数2〜8の2価の炭化水素基である。Aの水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン基で置換されていても良い。
炭素数2〜8の2価の炭化水素基のうち、後述する環状ポリエーテルエステルの製造方法において、その反応速度を高く保ち、製造を容易にする観点から好ましいものとしては、フェニルエチレン基、炭素数2〜4のアルキレン基が挙げられ、更に好ましいのは炭素数2〜4の直鎖アルキレン基(エチレン基、プロピレン基及びブチレン基等)及び炭素数3〜4の分岐アルキレン基(メチルエチレン基、エチルエチレン基、メチルプロピレン基及び2−メチルプロピレン等)であり、特に好ましいのは、炭素数2〜4の直鎖アルキレン基及び炭素数3〜4の分岐アルキレン基であり、最も好ましいのは、エチレン基及びプロピレン基である。
一般式(1)において、複数ある場合のR、A及びnは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
本発明の抗菌性樹脂組成物に含まれる環状ポリエーテルエステル(P)としては、mが4以上であれば、一般式(1)においてnで表されるオキシアルキレン基のモル数が特定の値である環状ポリエーテルエステル(P)を用いてもよく、nの値が異なる複数の環状ポリエーテルエステル(P)を併用してもよい。一般式(1)においてnで表されるオキシアルキレン基の付加モル数の値(n)が異なる複数の環状ポリエーテルエステル(P)を併用する場合、使用する環状ポリエーテルエステル(P)のオキシアルキレン基の付加モル数の値と比率は、樹脂や抗菌成分の種類等に応じて調整することができる。
一般式(1)中のm及びnの値の調整及び特定の範囲のnを有する環状ポリエーテルエステル(P)の含有量の調整は、後述のアルコキシル化反応において用いる活性水素含有基を有さないラクトンと炭素数2〜8のアルキレンオキサイドとの比率の調整及びアルキレンオキサイドの付加方法を変えること等で行うことができ、例えば活性水素含有基を有さないラクトンにアルキレンオキサイドを段階的に反応させると特定の値のnを有する環状ポリエーテルエステル(P)の含有量を多くすることができ、nが一定範囲の値をとる環状ポリエーテルエステル(P)の合計割合を増やすことができる。また、特定の範囲のmを有する環状ポリエーテルエステル(P)の含有量の調整は、後述の複合酸化物の焼成物及び/又はアルミニウムとマグネシウムとを有するハイドロタルサイトの焼成物の存在下で環状化合物(B)をアルコキシル化反応させた中間体を更に反応させることによっても得られる。なお、環状ポリエーテルエステル(P)のmの値、及びnの値は、Polym. Chem., 2014,5,6905.に記載のMALDI−TOF MSにより分
析し、確認することが出来る。
一般式(1)において、mは4以上の整数である。mの値は、抗菌成分を保持し、抗菌機能を維持する観点から好ましくは4以上、500以下の整数である。
m個あるR、及びn×m個あるAは同じであっても異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。mが3以下であると、抗菌成分の保持機能が低下し、析出しやすくなる。一方、mが500より大きくなると、粘度が上昇し、ハンドリング性が悪くなる。
一般式(1)において、nは(OA)で表されるオキシアルキレン基の付加モル数を意味し、反応性の観点から、0以上、500以下の整数である。また、粘度を抑えてハンドリングを向上させ、かつ、樹脂からの抗菌成分の析出を抑制する観点から、好ましくは5〜250、更に好ましくは5〜100の整数である。環状ポリエーテルエステル(P)1モルを構成する全てのオキシアルキレン基の合計付加モル数は、1以上2000以下の整数であり、粘度を抑えてハンドリングを向上させ、かつ、樹脂からの抗菌成分の析出を抑制する観点から、好ましくは20〜1000、更に好ましくは20〜500の整数である。
抗菌成分を有効に捕捉させる観点から、一般式(1)で表される基の中に含まれる(OA)の数nは1〜500が好ましく、更に好ましくは、1〜100、特に好ましくは5〜100である。
なお、環状ポリエーテルエステル(P)のオキシアルキレン基の付加モル数(m×n)及び比率は、使用する樹脂や抗菌成分に応じて調整することができる。
m個ある場合のR及びm×n個あるAの組成は、Polym.Chem.,2014,5,6905.に記載のマトリックス支援レーザー脱離イオン化法による飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MSともいう)により測定分析し、環状ポリエーテルエステルの構造を同定することができる。
なお、環状ポリエーテルエステル(P)の構成単位の繰り返し数等が異なる複数の環状化合物の混合物である場合は、「m」及び「n」の値は、環状化合物ごとに繰り返し数mと繰り返し単位ごとの平均付加モル数(n)を求め、全環状化合物について平均値を求めることで得られる。具体的には、以下の方法で確認できる。
1.まず、MALDI−TOF MSスペクトルにおけるi番目のピーク強度をIiとし、当該ピークの付加モル数をJiとする。また、この時の繰り返し単位数をKとする。
2.MALDI−TOF MSスペクトルの環状ポリエーテルエステル組成物(Q)中に含まれる環状ポリエーテルエステルについてピーク強度に基づき平均値を算出する。
繰り返し単位数の平均値m(平均)は関係式(1)で表される。
<関係式(1)>
m(平均) = [ΣK×I]/ΣI
本発明では断りのない限りMALDI−TOF MSスペクトルに基づき「m」の値を決定している。
繰り返し単位数あたりの付加モル数の平均値n(平均)は関係式(2)で表される。
<関係式(2)>
n(平均) = [ΣJ/K×I]/ΣI
本発明では断りのない限りMALDI−TOF MSスペクトルに基づき「m」の値を決定している。
また、「m×n」の平均値は関係式(3)に基づき、関係式(1)及び(2)の積から求めることができる。
<関係式(3)>
m×n (平均)= [ΣK×I]/ΣI×[ΣJ/K×I]/ΣI
また、「m×n(平均)」の値は関係式(4)に基づき、後述するGPC分析によっても求めることができる。
<関係式(4)>
m×n(平均)=[環状化合物組成物の数平均分子量(GPC測定値)]/[分子量比較用の環状化合物の数平均分子量(GPC)]×[比較用環状化合物の「m×n」の値]
環状ポリエーテルエステル組成物(Q)を構成する各環状化合物の「m」の範囲は、MALDI−TOF MSスペクトルにおいて特定される、最小の繰り返し単位数から最大の繰り返し単位数である。
また、環状ポリエーテルエステル組成物(Q)を構成する各環状化合物の「m」の範囲は、関係式(5)及び(6)に基づき、後述するGPC分析によっても求めることができる。
まず、環状化合物組成物の全クロマトグラムを縦方向かつ溶出時間順に、それぞれに2.5%、95%、2.5%の面積比になるように3分割する。
この時、3分割された各クロマトグラムの数平均分子量算出結果を溶出時間の早い順にMn(1)、Mn(2)、Mn(3)とする。
<関係式(5)>
m(最大値)= [環状ポリエーテルエステル組成物(Q)のMn(1)]/[分子量比較用の環状化合物のMn(1)]×[比較用環状化合物の「m」最大値]
<関係式(6)>
m(最小値)=[環状ポリエーテルエステル組成物(Q)のMn(3)]/[分子量比較用
の環状化合物のMn(3)]×[比較用環状化合物の「m」最小値]
本発明の環状ポリエーテルエステルは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明の環状ポリエーテルエステルとして好ましいものとしては、抗菌持続性の観点から、一般式(1)においてAがエチレン基、プロピレン基、メチルエチレン、クロロプロピレン基又はフェニルエチレン基であり、Rがトリメチレン基、ペンタメチレン基、テトラデカメチレン基又はビニレン基である2価の基の両末端を結合した環状化合物が挙げられる。
本発明の環状ポリエーテルエステル(P)の数平均分子量(以下、Mnと略記する)は、後述の併用する高分子化合物(E)の分子量等に応じて調整することができるが、環状ポリエーテルエステルを含有する樹脂組成物の耐ブリードアウト性の観点から、350〜300,000であることが好ましく、更に好ましくは1,000〜300,000、特に好ましくは2,000〜30,000である。また、ハンドリング性を向上させる観点からは、環状ポリエーテルエステル(P)のMnは350〜300,000が好ましく、更に好ましくは350〜170,000である。環状ポリエーテルエステル(P)のMnはアルキレン化合物の付加モル数及び、後述する多量化工程の反応条件を調整すること等によって、上記の好ましい範囲にすることができる。
環状ポリエーテルエステルのMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記)を用いて以下の条件で測定することができる。
環状ポリエーテルエステル(P)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記)を用いて以下の条件で測定することができる。
・装置:「TOSOH ECO HLC−8320 GPC」[東ソー(株)製]
・カラム:「Guardcolumn Super AW−H」(1本)、「TSKgel SuperAW2500、TSKgel SuperAW3000、TSKgel SuperAW4000を各1本連結したもの」[いずれも東ソー(株)製]
・試料溶液:0.125重量%のDMF(LiBr0.01mol/L)溶液
・溶液注入量:20μL
・流量:0.6mL/分
・測定温度:40℃
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリエチレンオキサイド
本発明の環状ポリエーテルエステルは、以下に詳述する本発明の製造方法により製造することができる。
本発明の環状ポリエーテルエステルの製造方法は、環状化合物(B)と、水素原子がハロゲン原子で置換されていても良い炭素数2〜8の環状エーテル化合物(C)とを反応させ、中間体(P’)を得る工程(以下アルコキシ化工程と略記する)とアルコキシ化反応で得た中間体を多量化し、環状ポリエーテルエステル(P)を得る工程を含む製造方法により製造することができる。また、前記アルコキシ化工程と多量化の工程は同時におこなうこともできる。
環状化合物(B)は、一般式(2)で表され、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
Figure 2019210281
一般式(2)において、Rは炭素数2〜21の2価の炭化水素基である。Rの水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されていても良く、上記Rと同様の基を用いることができる。
環状化合物(B)は具体例としては、以下に例示する活性水素含有基を有さないラクトンが挙げられる。例えば、β−ラクトン(β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン等)、γ−ラクトン(γ−ブチロラクトン等)、δ−ラクトン(δ−バレロラクトン等)、ε−ラクトン(ε−カプロラクトン等)、長鎖アルキル基を有するラクトン(γ−エナントラクトン、γ−ウンデカノラクトン、γ−ドデカラクトン及びδ−ドデカノラクトン等)、γ−クロトノラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−メチレン−γ−ブチロラクトン、α−ブロモ−γ−ブチロラクトン、α−クロロ−γ−ブチロラクトン、α−ヨード−γ−ブチロラクトン、テトロン酸、大環状ラクトン(15−ペンタデカノラクトン)及び芳香族ラクトン(3,4−ジヒドロクマリン)等が挙げられる。
また、カルボニル構造を2つ以上含むラクトンとしてはD、L及びD/L−ラクチド、ポリ−εカプロラクトン等も好適に用いることができる。反応性の観点から、β−ラクトン(β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン等)、γ−ラクトン(γ−ブチロラクトン等)、δ−ラクトン(δ−バレロラクトン等)、ε−ラクトン(ε−カプロラクトン等)、テトロン酸、大環状ラクトン(15−ペンタデカノラクトン)及び芳香族ラクトン(3,4−ジヒドロクマリン)が好ましく、更に好ましくはγ−ラクトン(γ−ブチロラクトン、γ−クロトノラクトン等)、δ−ラクトン(δ−バレロラクトン等)、ε−ラクトン(ε−カプロラクトン等)である。
これらのラクトンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
環状化合物(B)は、試薬として購入する以外に、以下の分子内縮合反応等によって製造することで入手できる。
例えば、一般式(2)で表される化合物は、Rで表される基の片末端に、カルボキシ基を結合させ、Rで表される基の反対側の末端に、水酸基を結合させた化合物を用い、カルボキシ基、及び水酸基が結合した1価の基を分子内縮合することで、得ることができる。
分子内脱水してラクトン等を合成する方法としては、公知の方法で加熱脱水する方法、J.S.Nimitz,R.H.Wollemberg,Tetrahedron Lett.1978,19,3523に記載方法、及びリパーゼ等の酵素を用いる方法の公知の合成方法を用いることができる。
前記の「Rで表される基の片末端にカルボキシル基を結合させ、Rで表される基の反対側の末端に水酸基を結合させた化合物」として好ましいものとしては、炭素数4〜22のモノヒドロキシモノカルボン酸等が挙げられる。
炭素数4〜22のモノヒドロキシモノカルボン酸としては、炭素数4〜22の直鎖ヒドロキシカルボン酸(3−ヒドロキシプロパン酸、4−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシペンタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、15−ヒドロキシペンタデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸及び4−ヒドロキシ−2−ブテン酸等)及び炭素数3〜22の分岐ヒドロキシカルボン酸(3−ヒドロキシブタン酸、5−ヒドロキシトリデカン酸、2−メチレン−4−ヒドロキシ酪酸、4−フェニル−4−ヒドロキシ酪酸、2,2−ジメチル−4−ヒドロキシ酪酸、4−ヘキシル−4−ヒドロキシ酪酸及び4−ヒドロキシ−2−メチル−2−ブテン酸等)等が挙げられる。
前記の炭素数4〜22のモノヒドロキシモノカルボン酸の炭素原子に結合した水素原子のうち、少なくとも1つの水素原子がハロゲン基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されたヒドロキシカルボン酸が分子内脱水した構造を有するラクトンも用いることもできる。 前記の炭素数4〜22のモノヒドロキシモノカルボン酸のうち、炭素原子に結合した水素原子の少なくとも1つがハロゲン基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−ブロモ−4−ヒドロキシ酪酸等が挙げられ、アセチル基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−アセチル−4−ヒドロキシブタン酸等が挙げられ、アルコキシ基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−メトキシ−4−ヒドロキシ酪酸等が挙げられ、フェノキシ基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−フェニル−4−ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。
炭素数2〜8の環状エーテル化合物(C)としては、エチレンオキサイド、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド、1,2−、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレンオキサイド、1,2−ジクロロオキセタン1,2−ペンチレンオキサイド、1,2−ヘキシレンオキサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、エピクロルヒドリン及びエピブロモヒドリン等が挙げられる。これらのうち、後述する抗菌性樹脂に用いる場合には、樹脂との相溶性と抗菌成分との親和性の観点から、エチレンオキサイド、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド、1,2−、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレンオキサイドが好ましい。炭素数2〜8の環状エーテルは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記(C)を2種以上併用する場合、得られる環状ポリエーテルエステルが有するAで表される2価の基は、使用した環状エーテルの種類に対応した異なる種類を有する。
本発明の製造方法に含まれるアルコキシ化反応工程において、環状化合物(B)が有するカルボニル基とエーテル結合性酸素原子との間に、炭素数2〜8の環状エーテルが挿入される反応(カルボニル基と酸素原子との間にオキシアルキレン基を挿入する反応の場合、アルコキシル化反応という)が生じる。
例えば、環状化合物(B)としてγ−ブチロラクトンを用い、炭素数2〜8の環状エーテルとしてエチレンオキサイドを用いた場合は、一般式(1)において、(OA)基で表される基はオキシエチレン基であり、Rがトリメチレン基である化学式で表される構成単位、即ち、−[(OCHCHOCCO]−で表される2価の基の両末端を直接結合してなる環状化合物が生成する。
前記のアルコキシ化反応工程で生成した環状ポリエーテルエステルは、環上のカルボニル基とエーテル結合性酸素原子を直接結ぶ結合が一旦開裂する反応を生じ、更に、カルボニル基とエーテル結合性酸素原子を直接結ぶ結合が開裂した他の環状ポリエーテルエステルと反応し、一方の環状ポリエーテルエステルのエーテル結合性酸素原子と、他方の環状ポリエーテルエステルのカルボニル基とが結合する挿入付加反応も生じる。
例えば、環状化合物(B)としてγ−ブチロラクトンを用い、炭素数2〜8の環状エーテル化合物としてエチレンオキサイドを用いた場合は、上記の通り、−[(OCHCHOCCO]−で表される2価の基の両末端を直接結合してなる環状化合物が生成する。
そして、この環状化合物2分子が上記の開裂反応及び挿入付加反応し、この2価の基を1分子中に2個有する2量体である環状化合物が生成する反応、また、この環状化合物3分子が反応し、この2価の基を一分子中に3個有する3量体である環状化合物が生成する。更に、多量化反応が進行することによって、上記2価の基を1分子中に4個以上有する4量体以上の環状ポリエーテルエステルが生じる。
前記多量化反応は、アルコキシ化反応と同時に進行させてもよく、後述するように環状化合物組成物を熟成させることによって進行させてもよい。また、多量化反応の後に、更にアルコキシ化反応をおこなってもよい。
前記のアルコキシ化及び多量化工程は、触媒の存在下で行うことが好ましい。反応工程で用いる触媒としては、金属(錫、ニッケル、亜鉛及びアルミニウム等)のハロゲン化物、無機酸(硫酸及びリン酸等)、ホウ素化合物(トリスペンタフルオロフェニルボラン等)、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウム等)の水酸化物、アミン化合物(ジエチルアミン及びトリエチルアミン等)、ホスファゼン、複合金属シアン化物錯体触媒(特開2005−53952号公報及び特開2016−6203号公報等に記載された亜鉛ヘキサシアノコバルテート等の2種類の金属を分子内に含有する金属錯体触媒等)、特開2000−354763号公報に記載された酸化物複合体、AlとMgとの複合酸化物(D1)及び層状複水酸化物並びにその焼成物等を用いて行うことができる。
本発明の製造方法で用いる層状複水酸化物とは、2価の金属(マグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、ニッケル、コバルト及び銅等)と3価の金属(Al、Fe及びMn等)の水酸化物とが複合して積層構造を形成した無機の層状化合物を意味し、一般式が[M2+ 1−h3+ (OH)][(Wi−h/i・jHO][ここで、M2+は2価の金属、M3+は3価の金属、Wi−はi価の陰イオン(HCO 、CO 2−、PO 3−、SO 2−、Cl、NO 及びNO 等)、h、i及びjはそれぞれ独立の正数である。]で表さる化合物であり、ハイドロタルサイト、モツコレアイト、マナセイト、スティッヒタイト、パイロアウライト、タコバイト、イヤードライト及びメイキセネライト等が含まれる。これらの層状複水酸化物は、粘土鉱物として知られており、天然に産する鉱物に含まれたものであっても、合成によって得られたものであってもよい。
触媒は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの内、反応効率の観点から好ましいのは、AlとMgとの複合酸化物(D1)の焼成物及びAlとMgを有するハイドロタルサイト(D2)の焼成物である。
本発明において用いられる複合酸化物(D1)は、AlとMgを有する酸化物であれば、特に限定されないが、好ましい複合酸化物としては下記組成式(1)又は(2)で示される化合物等が挙げられる。
〔aMgO・Al・bHO〕 (1)
〔MgsAltOu〕 (2)
組成式(1)において、a及びbは、それぞれ独立の正数である。組成式(2)において、s、t及びuは、それぞれ独立の正数である。反応性の観点から、t/sは0.1以上0.9未満であることが好ましい。複合酸化物(D1)としては、2.5MgO・Al・bHO及びMg0.7Al0.31.15等が挙げられ、それぞれキョーワード300[協和化学工業(株)製]及びキョーワード2000[協和化学工業(株)製]等として市場から入手することができる。
本発明に用いるハイドロタルサイト(D2)としては、下記組成式(3)で示される化合物等が挙げられる。
〔Mg1−cAl(OH)c+ 〔CO3c/2・dHO〕c− (3)
また、一般式(3)において、cは0<c≦0.33を満たす数であり、dは0<d≦1.0を満たす数である。
ハイドロタルサイト(D2)としては、MgAl(OH)16CO・4HO及びMg4.5Al(OH)13CO・3.5HO等が挙げられ、それぞれキョーワード500[協和化学工業(株)製]及びキョーワード1000[協和化学工業(株)製]等として市場から入手することができる。
本発明に用いるハイドロタルサイト(D2)としては、上記の化合物以外にも、西ドイツ特許公告第1592126号及びヨーロッパ特許公開第0207811号等に記載の既知の鉱物も使用することができる。
(D1)及び(D2)は、それぞれ1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの内、反応性の観点から好ましいのは複合酸化物(D1)であり、更に好ましいのは2.5MgO・Al・bHO(bは正数)及びMg0.7Al0.31.15である。
AlとMgとの複合酸化物(D1)の焼成物又はAlとMgを有するハイドロタルサイト(D2)の焼成物は、前記(D1)又は前記(D2)を空気雰囲気下、好ましくは窒素気流下で、好ましくは400〜1500℃(更に好ましくは600〜1000℃)にて1〜48時間加熱処理する方法等で得ることができる。
なお、前記(D1)又は前記(D2)の焼成物は以降、触媒(D’)と記載する。
アルコキシ化及び多量化工程において、触媒の含有量は特に限定されないが、反応速度及び濾過効率の観点から、環状化合物(B)と環状エーテル化合物(C)との合計重量に対して0.0001〜60重量%が好ましく、更に好ましくは0.001〜20重量%であり、特に好ましくは0.01〜20.0重量%である。
また、アルコキシ化及び多量化工程において、攪拌を容易にする等の観点から、環状化合物(B)、環状エーテル化合物(C)及び触媒以外に、溶剤を添加してもよい。
前記溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジグリム、トリグリム、1,4−ジオキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、四塩化炭素、N−メチルピロリドン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジクロロエタン、o−ジクロロベンゼン及びクロロホルム等が挙げられる。
前記溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの内、環状化合物(B)及び環状エーテル化合物(C)等との混和性、高沸点、ハンドリングのしやすさ等の観点から、トルエン及びキシレンが好ましい。
前記アルコキシ化工程に用いる溶剤の重量は、反応速度等の観点から、環状化合物(B)と環状エーテル化合物(C)と触媒との合計重量に対して、0〜99重量%が好ましく、更に好ましくは0〜90重量%である。
前記アルコキシ化工程においては、環状化合物(B)及び環状エーテル化合物(C)並びに必要に応じて、触媒及び溶媒の混合物の温度が90〜250℃となることが好ましく、更に好ましくは100〜190℃である。また、上記の温度とする時間は、1〜200時間が好ましい。
本発明の多量化工程において、攪拌を容易にする等の観点から、中間体(P’)、及び触媒以外に、溶剤を添加してもよい。
溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジグリム、トリグリム、1,4−ジオキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、四塩化炭素、N−メチルピロリドン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジクロロエタン、o−ジクロロベンゼン及びクロロホルム等が挙げられる。
溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの内、混和性、高沸点、ハンドリングのしやすさ等の観点から、トルエン及びキシレンが好ましい。
多量化工程に用いる溶剤の重量は、反応速度等の観点から、環状化合物(B)と環状エーテル化合物(C)と触媒との合計重量に対して、0〜99重量%が好ましく、更に好ましくは0〜90重量%である。
多量化工程においては、反応混合物の温度が90〜250℃となることが好ましく、更に好ましくは100〜190℃である。
アルコキシ化及び多量化工程は、各種反応原料[環状化合物(B)及び環状エーテル化
合物(C)又は中間体(P’)並びに必要に応じて、触媒及び溶媒]を反応装置へ入れ不
活性ガス(窒素及びアルゴン等)により系内を置換・密閉し、前記の反応温度と反応時間とで撹拌混合することで行うことができる。
反応装置としては撹拌装置及び加熱装置の付属した混合容器(スターラー付きフラスコ及びオートクレーブ等)等の公知の反応装置を用いることができる。
多量化工程は、アルコキシ化工程によって中間体(P’)を製造したのち、反応混合物の温度が90〜250℃(更に好ましくは100〜190℃)で熟成させることによっても行うことができる。
本発明の製造方法は、多量化工程で得られる生成物[すなわち、環状ポリエーテルエステルを含む混合物]を、更に濾過操作(特開2011−213864号公報に記載の方法等)、ゲル透過法及びシリカゲルカラムクロマトグラフィー等の公知の方法により精製する工程(以下精製工程と略記する)を含んでいてもよい。
上記の精製工程により、特定の構造を有する環状ポリエーテルエステルのみを抽出することができる。
本発明の環状ポリエーテルエステル組成物の製造工程は、触媒の除去操作を含んでいてもよい。触媒を除去する方法として公知の方法を用いることができるが、具体的には特開2010−6964号公報に記載の方法の他、ろ過用薬剤である珪藻土(ダイカライト6000、ラヂオライト#700等)、シリカゲル(ワコーゲル等)、ケイ酸マグネシウム(キョーワード600、キョーワード700)等を用いてろ過する方法が挙げられる。ろ過操作では前記ろ過用薬剤を単一で用いても複数種類を併用してもよいが、ろ過効率の観点から複数種類を用いることが好ましい。
また、ろ過速度を向上させる観点から、珪藻土を使用することが好ましく、触媒の除去効率を向上させるために、ケイ酸マグネシウムを用いることが好ましい。
ろ過操作は公知の方法で行うことができるが、珪藻土とケイ酸マグネシウムを層状に積層させた濾層に環状ポリエステル組成物又はその溶液を通過させる方法が挙げられる。ろ過に用いる溶剤は環状ポリエステルを溶解させるものであれば限定されないが、溶解効率の観点から、THF,DMF、酢酸エチル、トルエン等が好ましい。
本発明の環状ポリエーテルエステルは、後述する抗菌性樹脂組成物(F)等に含有させることで、樹脂に可塑性を付与し、かつ、後述する抗菌性樹脂組成物(F)からの耐ブリードアウト性が優れている。
本発明の抗菌性樹脂組成物(F)は、環状ポリエーテルエステル(P)及び高分子化合物(E)を含有する。
本発明の抗菌性樹脂組成物(F)は、樹脂添加剤の分散、バインダーとしての機能に優れる。よって、樹脂添加剤の樹脂からの耐ブリード性と、耐脱落性に優れる。
なお、樹脂添加剤としては、各種フィラー(カーボン等)、界面活性剤、金属イオン(銀イオン等)が挙げられる。これらのうち、界面活性剤(カチオン性、アニオン性、両性の陽イオン部位をもつもの)と金属イオンが、環状ポリエーテルエステル(P)と配位することで、効率的に分散し、かつ、環状ポリエーテルエステル(P)がバインダーとして機能しやすいことから好ましい。
抗菌性樹脂組成物(F)が含有するSP値が4〜22(cal/cm1/2である高分子化合物(E)としては、セルロース(トリ)アセテート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、ポリN−イソプロピルアミド、ポリスルホン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリアミド、変成ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンビニルアルコール、ポリヘキサンアジパミド及びポリウレタン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等が挙げられる。
これらの内、相溶性の観点から、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、ポリN−イソプロピルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリアミド、変成ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリトニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、エチレンビニルアルコール、ポリヘキサンアジパミド、ポリウレタン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)が好ましい。
これらの高分子は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
環状ポリエーテルエステル(P)の高分子化合物(E)への相溶性の観点から、高分子化合物(E)のSP値は、4〜22(cal/cm1/2であり、更に好ましくは4〜12(cal/cm1/2、特に好ましくは6〜10(cal/cm1/2である。
ここにおいてSP値とは、凝集エネルギー密度をΔE(単位はcal/モル)、分子容をV(単位はcm/モル)とするとき、下記の式で定義される量を意味するものとする。
SP値=(ΔE/V)1/2[単位は(cal/cm1/2
具体的なSP値の求め方は例えばFedorsの方法が知られており、該方法は、該方法で得られたSP値とともに、「A Method for Estimating both the Solubility PPrameters and Molar Volumes of Liquids,POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,FEBRUARY,1974,vol.14,Issue2、p.147−154」に記載されており、これに従った。
また、高分子化合物(E)は、反応性官能基を導入した高分子であってもよく、導入する反応性官能基としては、イソシアネート基、アルケニル基、アルキニル基、(メタ)アクリレート基、水酸基、カルボキシ基、エステル基、アルデヒド基、カルボニル基、ハロゲン基、スルホ基、ホスホ基、ジスルフィド基、トリアジド基、シアノ基、イミン置換基、アミジン基、オキシム基、シリル基、シロキシ基、アミノ基、チオ基、水酸基及びマレイミド基等が挙げられる。
高分子化合物(E)の数平均分子量に特に制限はないが、合成し易さ等の観点から、1,000〜1,000,000であることが好ましい。
高分子化合物(E)の数平均分子量は、以下のGPCを用いて以下の条件で測定することができる。
・装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
・カラム:「Guardcolumn Super H−L」(1本)、「TSKgel
SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000を各1本連結したもの」[いずれも東ソー(株)製]
・試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
・溶液注入量:10μL
・流量:0.6mL/分
・測定温度:40℃
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリスチレン
高分子化合物(E)は、公知の重合方法で製造することができる。
ポリウレタンの場合は、ポリイソシアネート(トルエンジイソシアネート及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等)とポリオール(ポリプロピレングリコール等)との重縮合反応;ポリエステルの場合は、ポリカルボン酸とポリオールとの重縮合反応;ポリポリアクリル酸の場合は、アクリル酸及び/又はアクリル酸エステルのラジカル重合反応;ポリシロキサンの場合は、アルコキシシランの加水分解重縮合反応;ポリエーテルの場合は、活性水素基を有する化合物(アルコール、カルボン酸及びアミン等)に対するアルキレンオキサイド付加反応等の公知の方法を用いて製造することができる。
高分子化合物(E)の合成は、上記の環状ポリエーテルエステル(P)と高分子化合物(E)の複合構造を形成しやすくする観点から、後にも記載するように、環状ポリエーテルエステル(P)存在下で行うことが好ましい。
本発明の抗菌性樹脂組成物(F)は、環状ポリエーテルエステル(P)及び高分子化合物(E)以外に、溶剤を含有していてもよい。
溶剤を用いる場合には、環状ポリエーテルエステル(P)の溶解性が高い溶媒を適宜選択することが好ましい。好ましい溶剤としてはトルエン、キシレン、ベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジグリム、トリグリム、1,4−ジオキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、水、四塩化炭素、N−メチルピロリドン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジクロロエタン及びクロロホルム等が挙げられる。
本発明の抗菌性樹脂組成物(F)は、環状ポリエーテルエステル(P)の環成分を、軸成分である高分子化合物(E)が貫通した構造を有することは、公知の粉末X線回折及びNMRスペクトルの測定並びに原子間力顕微鏡による観察等を行うことで確認することができる。
粉末X線回折の測定においては、既知のロタキサンが示す回折ピークと比較をすることで、ロタキサン生成の有無、即ち、環状ポリエーテルエステル(P)の環成分を軸成分である高分子化合物(E)が貫通したか否かを確認することができ、NMRスペクトルにより、高分子化合物(E)1分子に対して貫通する環状ポリエーテルエステル(P)の数を算出することができる。
本発明の抗菌性樹脂組成物(F)は、環状ポリエーテルエステル(P)に高分子化合物(E)が1分子以上貫通することによって複合構造を形成することが好ましい。
本発明の抗菌性樹脂組成物(F)は、環状ポリエーテルエステル(P)と高分子化合物(E)と必要によりその他の添加剤(溶剤等)とを混合する方法及び環状ポリエーテルエステルの存在下で高分子化合物(E)を前記の方法で重合する方法等により製造することができる。
本発明の抗菌性樹脂組成物(F)の製造に用いる環状ポリエーテルエステル(P)としては、前記の本発明の環状ポリエーテルエステル(P)の製造方法において、前記の精製工程をせずに得た反応生成物をそのまま用いても、精製工程を実施し、反応生成物を分画、精製して得られた特定の構造を持つ環状ポリエーテルエステル(P)を用いてもよい。
環状ポリエーテルエステル(P)と高分子化合物(E)とを混合する方法としては、無溶媒又は溶媒中で環状ポリエーテルエステル(P)と高分子化合物(E)を攪拌・混合する方法があげられ、攪拌・混合する際の温度は、0〜250℃、好ましくは10〜200℃であり、混合時間は、1秒〜1週間、好ましくは10秒〜3日である。高分子化合物(E)が環状ポリエーテルエステル(P)を貫通した抗菌性樹脂組成物(F)は、撹拌混合後の溶液を再沈殿、濾過、遠心分離、膜分離及びカラムクロマトグラフィー等の公知の分離方法によって単離できる。
抗菌性樹脂組成物(F)中の環状ポリエーテルエステル組成物(Q)の重量%は、樹脂の強度を維持する観点から、抗菌性樹脂組成物(F)の全体重量に対して、0.001〜50重量%が好ましく、更に好ましくは、1〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。
本発明の抗菌組成物が含む抗菌成分(G)としては、動植物から抽出又は菌類等が分泌する天然抗菌成分[トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、オフロキサシン、アレキシジン、ヘキセチジン、ヨウ素、ポピドンヨ−ド、フッカナトリウムやフッカスズ、モノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッカ物、チモール、メントール、オイゲノール、タンニン、ポリフェノール、ラタニア、カミツレ、ミルレ、セージ、茶エキス、ヒノキエキス、油溶性甘草エキス、桑白皮エキス、アロエエキス、プロタミン、プロポリス、リゾチーム及び抗生物質(ミノサイクリン及びテトラサイクリン等)等]及び合成抗菌成分を用いることができる。
抗菌成分(G)として好ましくは、ビグアナイド化合物含有抗菌成分、水溶性銀塩、酸素含有抗菌成分、パラオキシ安息香酸エステル、フェノール性抗菌成分、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
ビグアナイド化合物含有抗菌成分としては、ポリヘキサメチレンビグアナイド及びグルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられる。
水溶性銀塩としては、硫酸銀、硝酸銀及び酢酸銀等が挙げられる。
酸素系抗菌成分としては、過酸化水素、過炭酸ナトリウム及び過ホウ酸ナトリウム等が挙げられる。
パラオキシ安息香酸エステルとしては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン及びベンジルパラベン等が挙げられる。
フェノール性抗菌成分としては、トリクロサン、クロルチモール、カルバクロル、クロロフェン、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、クロロキシレノール、クロロクレゾール、o−フェニルフェノール及びイソプロピルメチルフェノール等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、第1級アミン塩型カチオン性界面活性剤、第2級アミン塩型カチオン性界面活性剤、第3級アミン塩型カチオン性界面活性剤及び第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤が挙げられる。
第1級アミン塩型カチオン性界面活性剤としては、第1級アミンを無機酸(塩酸、硝酸、硫酸及びヨウ化水素酸等)又は有機酸(酢酸、ギ酸、シュウ酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸及びアルキルリン酸等)で中和することにより得られる化合物が使用でき、第1級アミンとしては、炭素数2〜21であるモノアルキルアミン(エチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、セチルアミン及びヘンイコシルアミン等)等が挙げられる。
第2級アミン塩型カチオン性界面活性剤としては、第2級アミンを無機酸(塩酸、硝酸、硫酸及びヨウ化水素酸等)又は有機酸(酢酸、ギ酸、シュウ酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸及びアルキルリン酸等)で中和することにより得られる化合物が使用でき、第2級アミンとしては、炭素数2〜20の脂肪族2級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルプロピルアミン、メチルペンチルアミン及びエチルオクタデシルアミン)及び前記のモノアルキルアミンが有する窒素原子に結合した1つの水素原子にアルキレンオキサイドを付加したアミン等が挙げられる。
第3級アミン塩型カチオン性界面活性剤としては、第3級アミンを無機酸(塩酸、硝酸、硫酸及びヨウ化水素酸等)又は有機酸(酢酸、ギ酸、シュウ酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸及びアルキルリン酸等)で中和することにより得られる化合物が使用でき、第3級アミンとしては、炭素数6〜20の脂肪族3級アミン(トリエチルアミン、エチルジメチルアミン及びN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等)、脂環式アミン[N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルヘキサメチレンイミン、N−メチルモルホリン及び1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン等]、含窒素ヘテロ環芳香族アミン(4−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール及び4,4’−ジピリジル等)、水酸基含有第3級アミン(トリエタノールアミンモノステアレート等)及び前記の第2級アミンが有する窒素原子に結合した1つの水素原子にアルキレンオキサイドを付加したアミン等が挙げられる。
第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤としては、前記の第3級アミンを公知の4級化剤[ハロゲン化アルキル(メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド及びベンジルクロライド等)、ジメチル硫酸、ジメチルカーボネート及びアルキレンオキサイド等]を用いて4級化したアミン等があげられ、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ジオクチルジメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム(塩化ベンザルコニウム)、塩化セチルピリジニウム及びポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロライド、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
なお、第1級〜第3級アミン塩型カチオン性界面活性剤としては、上記の他に「新・界面活性剤入門」[藤本武彦著、三洋化成工業(株)発行(1992年)、P71−74]に記載のソロミンA型カチオン界面活性剤、サパミンA型界面活性剤、アーコベルA型界面活性剤及びイミダゾリン型界面活性剤等も用いることができ、第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤としては、上記の他に「新・界面活性剤入門」[藤本武彦著、三洋化成工業(株)発行(1992年)、P76−78]に記載のソロミンA型4級アンモニウム塩及びピリジニウム塩等も用いることができる。
両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤及びベタイン型界面活性剤、及びアミンオキシド型界面活性剤を各種カチオン性界面活性剤と併用することができる。これらの両性界面活性剤のうち抗菌性の観点から、アミノ酸型両性界面活性剤が好ましい。
アミノ酸型両性界面活性剤としては、アルキルジアミノエチルグリシン又はその塩、ミリスチルジアミノエチルグリシン又はその塩、ラウリルジアミノエチルグリシン、高級アルキル(炭素数12〜18)アミノプロピオン酸又はその塩等が挙げられる。これらの内、抗菌性の観点からアルキルジアミノエチルグリシン又はその塩が好ましく、レボンLAG−40[三洋化成工業(株)製]40%ドテシルアミノエチルアミノエチルグリシン塩酸塩を用いることができる。
ベタイン型両性界面活性剤としては、アルキルベタイン型活性剤(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなど)、アミドプロピルベタイン型界面活性剤(椰子油脂肪酸アミドプロピルベタイン)、イミダゾリニウムベタイン型界面活性剤(2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなど)、スルホベタイン型界面活性剤(ラウリルヒドロキシスルホベタインなど)、ホスホベタイン型界面活性剤(ラウロイルアミド−エチルヒドロキシエチルカルボキシメチル−ベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウムなど)が挙げられる。
アミンオキシド型界面活性剤としてはトリアルキルN−オキシド(ラウリルジメチルアミンN−オキシド、オレイルジメチルアミンN−オキシド)が挙げられる。
抗菌成分(G)としては、なかでも第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が好ましく、塩化ジメチルジ−n−デシルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド)、ドテシルアミノエチルアミノエチルグリシン塩酸塩が更に好ましい。
抗菌成分(G)は、市販されているものを用いても、公知の方法で合成して得られたものを用いてもよい。例えば、カチオン性界面活性剤は特開2003−306698号公報、特開2002−53893号公報、及び特開2001−316209号公報等に記載の公知方法で得ることができ、抗菌成分として市販されているもの、及び試薬として入手できるものを用いてもよい。
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部を示す。
(製造例1)
「キョーワード300」〔化学式:2.5MgO・Al・bHO(bは正数)、協和化学工業(株)製〕を電気炉にて窒素気流下900℃で24時間加熱処理し、焼成物(以下、触媒(D′−1)を調製した。
(製造例2)
製造例1において、キョーワード300をキョーワード500〔MgAl(OH)16CO・4HO、協和化学工業(株)製〕に変更した以外は製造例1と同様の方法で触媒(D′−2)を得た。
(製造例3)
製造例1において、キョーワード300をキョーワード1000〔Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、協和化学工業(株)製〕に変更した以外は製造例1と同様の方法で触媒(D′−3)を得た。
(製造例4)
製造例1において、キョーワード300をキョーワード2000〔Mg0.7Al0.31.15、協和化学工業(株)製〕に変更した以外は製造例1と同様の方法で触媒(D′−4)を得た。
(製造例5)
攪拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、モレキュラーシーブスを用いて脱水したε−カプロラクトン20.0部[東京化成工業(株)製]と製造例1で得られた触媒(D′−1)10部を投入した。窒素通気を1時間行った後、減圧(ゲージ圧−0.1 MPa)した後、150℃に昇温し、プロピレンオキサイド67.4部を1時間かけて圧入し、0.5h熟成させることで、原料のε−カプロラクトンにプロピレンオキサイドが付加反応した化合物(X’−1)が得られた。得られた化合物(X’−1)の一部をサンプリングして、MALDI−TOF MS[MALDI質量分析装置AXIMA−Performance、(株)島津製作所製、以下同様]による分析を行った結果、化合物(X’−1)は、一般式(1)におけるRがトリメチレン基、Aがプロピレン基、平均付加モル数(n)=5でありmが1〜3である、化学式(3)及び(4)で表される環状ポリエーテルエステルである。
Figure 2019210281
Figure 2019210281
(製造例6)
攪拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、モレキュラーシーブスを用いて脱水したε−カプロラクトン20.0部[東京化成工業(株)製]と製造例1で得られた触媒(D′−1)10部を投入した。窒素通気を1時間行った後、減圧(ゲージ圧−0.1MPa)した後、150℃に昇温し、エチレンオキサイド51.1部を1時間かけて圧入し、0.5h熟成させることで、原料のε−カプロラクトンにエチレンオキサイドが付加反応した化合物(X’−2)が得られた。得られた化合物(X’−2)の一部をサンプリングして、MALDI−TOF MS[MALDI質量分析装置AXIMA−Performance、(株)島津製作所製、以下同様]による分析を行った結果、化合物(X’−2)は、一般式(1)におけるRがトリメチレン基、Aがエチレン基、平均付加モル数(n)=5でありmが1〜3である、化学式(5)で表される環状ポリエーテルエステルである。
Figure 2019210281
(実施例1〜11)
攪拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、表1にしたがって、原料と触媒を投入し、減圧(ゲージ圧−0.1MPa)した後、90℃に昇温し、窒素通気を1時間行った後、表1の条件に従って加熱撹拌した。
得られた組成物(PP−1〜PP−10)20部にキシレン200部を加えて50℃に温調し、均一に攪拌した後、濾過助剤であるラヂオライト#700[昭和化学工業(株)製]50部及びキョーワード600[協和化学工業(株)製]50部を層状に充填した吸引漏斗で濾過して触媒を濾別した。次いで、キシレンを減圧留去し、濃縮し、環状化合物(P−1〜11)を含む組成物を得た。
Figure 2019210281
(実施例12〜15)
実施例12〜15における環状化合物の中間体(PP−_−1〜3)を合成し、得られた中間体を含む反応混合物を下記精製工程で精製することにより、本発明の環状化合物(P−1〜9)を含む混合物を得ることができる。以下の表2に詳細を示す。表中の記載で、[PP−_−1〜4]は中間体を示し、精製後の環状化合物を[P−_]と記載する。アンダーバー部分には各実施例の番号が入る。
各実施例11〜14において、工程1を経て得られた中間体を[PP−_−1]と記載し、工程2を経て得られた中間体を[P−_−2]と記載し、工程3を経て得られた中間体を[PP−_−3]と記載する。
下記の精製工程1又は2の方法で精製することにより、本発明の環状化合物[P−_]を得た。
(工程1):攪拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに表2に記載の原料及び製造例1で得た触媒を導入し、減圧(ゲージ圧−0.1 MPa)し、窒
素通気を1時間行った後、150℃に昇温し、表1に記載のアルキレンオキサイドを表2に記載の反応時間をかけて導入し、表1に記載の時間熟成させることで中間体(PP−_−1)を得た。
実施例13については、前記(工程1)に加えて(工程2)及び(工程3)を含む。
(工程2):攪拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに表2に記載の原料及び触媒を導入し、減圧(ゲージ圧−0.1 MPa)し、窒素通気を1時間
行った後、150℃に昇温し、表2に記載のアルキレンオキサイドを表2に記載の反応時間をかけて導入し、表2に記載の時間熟成させることで中間体(PP−13−2)を得た。
(工程3):攪拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに表2に記載の原料及び触媒を導入し、減圧(ゲージ圧−0.1 MPa)し、窒素通気を1時間
行った後、150℃に昇温し、表1に記載のアルキレンオキサイドを表1に記載の反応時間をかけて導入し、表2に記載の時間熟成させることで中間体(PP−13−3)を得た。
Figure 2019210281
(反応混合物の精製)
実施例12〜15で得られた各中間体(PP−_−1〜3)20部にキシレン100部を加えて50℃に温調し、均一に攪拌した後、濾過助剤であるラヂオライト#700[昭和化学工業(株)製]50部及びキョーワード600[協和化学工業(株)製]50部を層状に充填した吸引漏斗で濾過して触媒を濾別した。次いで、キシレンを減圧留去し、濃縮した。濃縮物にメタノール20部を加えて撹拌し、水100部を加えて再沈殿させ、デカンテーションによって沈殿物を分離し、更に沈殿物を減圧乾燥することで、環状化合物(P−11〜15)を含む組成物を得た。
下記の通り、製造例5及び各実施例において精製により得られた組成物が、本発明の環状化合物(P−1〜P−15)を含むことをMALDI−TOF MS[MALDI質量分析装置AXIMA−Performance、(株)島津製作所製による分析により確認した。また必要によりGPC測定を行った。結果を表3に示す。
Figure 2019210281
<数平均分子量測定>
以下の条件にて環状ポリエーテルエステル組成物(Q)のGPC測定をおこなった。
・装置:「TOSOH ECO HLC−8320 GPC」[東ソー(株)製]
・カラム:「Guardcolumn Super AW−H」(1本)、「TSKgel SuperAW2500、TSKgel SuperAW3000、TSKgel SuperAW4000を各1本連結したもの」[いずれも東ソー(株)製]
・試料溶液:0.125重量%のDMF(LiBr0.01mol/L)溶液
・溶液注入量:20μL
・流量:0.6mL/分
・測定温度:40℃
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリエチレンオキサイド
実施例16〜36
<抗菌性樹脂作製方法>
表4に示す部数の抗菌成分及び表1に示す部数の樹脂をヘンシェルミキサーで混合した後、ベント付き2軸押出機にて200℃で溶融混練してペレット状の抗菌性樹脂組成物を得た。さらにこれらのペレットを射出成型形して、実施例及び比較例の成形体(50mm×50mm×2mm)を得た。 尚、樹脂としては電気化学工業(株)製の透明ABS樹脂「TE−10」(以下ABSと略)と(株)プライムポリマー社製のポリプロピレン樹脂「E−105GM」(以下PPと略)をもちいた。
<抗菌性試験方法>
本発明の樹脂用抗菌成分からなる成形体(実施例16〜36)及び比較の成形体(比較例1〜5)の洗浄前後の抗菌性をJIS Z 2801(抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果)に従って評価した。
即ち、普通ブイヨン培地を滅菌精製水で500倍希釈した液で菌数を2.5×105〜10×105個/mlとなるように調製した試験菌液を、試験片(成形体試験片;50mm×50mm×2mm)上に0.4ml滴下して、乾かないように上からフィルムをかぶせ温度35±1℃、相対湿度90%以上で24±1時間培養した。その後、試験片とフィルムを10mlのSCDLP培地で洗いだし、その液を速やかに生菌数測定に供して生菌数を求めた。結果を表4に示す。本評価では、洗浄後の生菌数が少ないものが抗菌持続性に優れることを示している。
Figure 2019210281
本発明の環状化合物は各種可塑剤、架橋剤、樹脂改質剤、帯電防止剤、ウレタンエラストマー、ハードコート、フィルム、ウレタンフォーム、塗料、ゴム、医療材料、電子材料、潤滑油添加物、その他工業に用いられる機能性材料として有用である。

Claims (5)

  1. 一般式(1)で表される基を結合してなる環状ポリエーテルエステル(P)を含む環状ポリエーテルエステル組成物(Q)。
    Figure 2019210281
    [一般式(1)において、Rは、炭素数2〜21の2価の炭化水素基である。Rの水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されていても良い。;Aは、炭素数2〜8の2価の炭化水素基である。Aの水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていても良い。;mは4以上500以下の整数であり、それぞれの基に含まれるnは0以上、500以下の整数であり、少なくともnが1以上の基を一つ以上含む。;m個あるRは同じであっても異なっていてもよく、m×n個あるAは同じであっても異なっていてもよい。]
  2. 一般式(1)において、Rが炭素数3〜16の直鎖アルキレン基又は炭素数3〜16の分岐アルキレン基であり、Aがフェニルエチレン基、炭素数2〜4の直鎖アルキレン基及び炭素数3〜4の分岐アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の環状ポリエーテルエステル組成物。
  3. 一般式(2)で表される環状化合物(B)と炭素数2〜8の環状エーテル化合物とを、アルミニウムとマグネシウムとの複合酸化物(D1)の焼成物及び/又はアルミニウムとマグネシウムとを有するハイドロタルサイト(D2)の焼成物の存在下で反応させる工程を含む請求項1又は2に記載の環状ポリエーテルエステル(P)を含む環状ポリエーテルエステル組成物の製造方法。
    Figure 2019210281
    [一般式(2)において、Rは炭素数2〜21の2価の炭化水素基である。Rの水素
    原子は、それぞれ独立に、ハロゲン基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されていても良い。]
  4. 請求項1又は2に記載の環状ポリエーテルエステル(P)を含む環状ポリエーテルエステル組成物(Q)、SP値が4.0〜22(cal/cm1/2である高分子化合物(E)及び抗菌成分(G)を含有する抗菌性樹脂組成物(F)。
  5. 抗菌成分(G)が第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤である請求項4に記載の抗菌性樹脂組成物。
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