JP2019210168A - 置換元素の選択方法、電池正極材料の製造方法 - Google Patents

置換元素の選択方法、電池正極材料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ニッケル酸リチウムの熱安定性を向上させることが可能な置換元素を効率的に選択できる、置換元素の選択方法の提供。【解決手段】LiNiO2のNiの一部を置換元素Mで置換したLiNi1−xMxO2とする置換元素の選択方法であり、候補元素を選択する候補元素選択ステップと、Niの一部を候補元素で置換したLiNi1−xMxO2について、安定構造での内部エネルギーA1と、候補元素の両隣の酸素原子2原子を剥離させ、最もエネルギーが大きくなる最不安定構造での内部エネルギーA2との差であるΔAを算出する第1の算出ステップと、LiNiO2について安定構造での内部エネルギーB1と、Niの両隣の酸素原子2原子を剥離させ、最もエネルギーが大きくなる最不安定構造での内部エネルギーB2との差であるΔBを算出する第2の算出ステップと、ΔA>ΔBの場合に候補元素を選択する選択ステップとを有する置換元素の選択方法の提供。【選択図】なし

Description

本発明は、置換元素の選択方法、電池正極材料の製造方法に関する。
リチウムイオン電池は高電圧・高容量であるため、高出力・小型化が求められるノートパソコン、携帯電話用の二次電池として、またハイブリット車等の車載用の電池として普及している。
リチウムイオン電池は、例えば正極、負極、電解質及びセパレータを有している。
そして、リチウムイオン電池の正極の材料の1つである、正極活物質としては、これまでに、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO)や、ニッケル酸リチウム(LiNiO)等が用いられている。中でもニッケル酸リチウムはエネルギー密度が高いため、正極の材料として有望である(例えば、特許文献1参照)。
ところで、ニッケル酸リチウムは、コバルト酸リチウムと比較して、熱安定性が劣っており、リチウムイオン電池の性能向上の観点から、熱安定性の向上が求められていた。
熱安定性を高める方法として、ニッケル酸リチウムのニッケル元素を他の置換元素により置換した、置換ニッケル酸リチウムとすることが考えられる。
特開2005−187326号公報
しかしながら、ニッケル酸リチウムについては、さらなる熱安定性の向上が求められている。そして、置換元素の候補は数多くあり、また、熱安定性は、組成のみではなく、結晶子径、粒径、リチウム(Li)欠損等にも依存する。このため、候補となる置換元素により置換した置換ニッケル酸リチウムを合成し、有効な置換元素を実験的に見出すためには多くの時間と、コストを要することになる。
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、ニッケル酸リチウムの熱安定性を向上させることが可能な置換元素を効率的に選択できる、置換元素の選択方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
ニッケル酸リチウムのニッケルの一部を、置換元素Mで置換した一般式LiNi1−xで表される置換ニッケル酸リチウムとするための置換元素の選択方法であって、
ニッケルを置換する前記置換元素Mの候補である候補元素を選択する候補元素選択ステップと、
ニッケルの一部を前記候補元素で置換した置換ニッケル酸リチウムについて、安定構造における内部エネルギーA1と、安定構造から前記候補元素の両隣にある酸素原子2原子を徐々に剥離させ、最もエネルギーが大きくなる最不安定構造における内部エネルギーA2との差であるΔAを算出する第1の算出ステップと、
ニッケル酸リチウムについて、安定構造における内部エネルギーB1と、安定構造からニッケルの両隣にある酸素原子2原子を徐々に剥離させ、最もエネルギーが大きくなる最不安定構造における内部エネルギーB2との差であるΔBを算出する第2の算出ステップと、
前記ΔAが、前記ΔBよりも大きい場合に、前記候補元素をニッケル酸リチウムの置換元素Mとして選択する選択ステップと、を有する置換元素の選択方法を提供する。
本発明の一態様によれば、ニッケル酸リチウムの熱安定性を向上させることが可能な置換元素を効率的に選択できる、置換元素の選択方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[置換元素の選択方法]
本実施形態の置換元素の選択方法の一構成例について説明する。
本実施形態の置換元素の選択方法は、ニッケル酸リチウム(LiNiO)のニッケルの一部を、置換元素Mで置換した一般式LiNi1−xで表される置換ニッケル酸リチウムとするための置換元素の選択方法であって、以下のステップを有することができる。
ニッケルを置換する置換元素Mの候補である候補元素を選択する候補元素選択ステップ。
ニッケルの一部を候補元素で置換した置換ニッケル酸リチウムについて、安定構造における内部エネルギーA1と、安定構造から候補元素の両隣にある酸素原子2原子を徐々に剥離させ、最もエネルギーが大きくなる最不安定構造における内部エネルギーA2との差であるΔAを算出する第1の算出ステップ。
ニッケル酸リチウムについて、安定構造における内部エネルギーB1と、安定構造からニッケルの両隣にある酸素原子2原子を徐々に剥離させ、最もエネルギーが大きくなる最不安定構造における内部エネルギーB2との差であるΔBを算出する第2の算出ステップ。
上記ΔAが、上記ΔBよりも大きい場合に、候補元素をニッケル酸リチウムの置換元素として選択する選択ステップ。
ニッケル酸リチウムの熱分解は、ニッケル原子の周囲に配置された酸素原子が脱離することで生じていると考えられる。このため、ニッケル酸リチウムの熱安定性を向上させることが可能な置換元素とは、酸素の脱離が生じにくい置換ニッケル酸リチウムとすることができる置換元素を意味すると考えられる。
そこで、以下の第1の算出ステップでは、候補元素により置換した置換ニッケル酸リチウムにおける、候補元素に隣接する酸素の脱離に要する活性化エネルギーを算出することができる。また、第2の算出ステップにおいて、無置換のニッケル酸リチウムにおける酸素の脱離に要する活性化エネルギーを算出できる。そして、選択ステップでは、無置換ニッケル酸リチウムの場合よりも酸素の脱離に要する活性化エネルギーが大きくなる候補元素を選択することができる。
なお、置換元素の選択は第一原理計算を用いて行うことで、置換元素の探索に要する時間の短縮や、コストを低減することが可能になる。このため、本実施形態の置換元素の選択方法は、第一原理計算を用いて実施することが好ましい。
以下、各ステップについて説明する。
(候補元素選択ステップ)
ニッケルを置換する置換元素Mの候補である候補元素を選択することができる。この際選択する元素の数や、種類等は特に限定されず、任意に選択することができる。
候補元素としては、特に限定されるものではないが、ニッケルと置換されるという観点から、陽イオンとなる元素が好ましく、例えばマグネシウム(Mg)等の遷移金属以外の元素、コバルト(Co)、マンガン(Mn)等の遷移金属の元素を用いることができる。
なお、複数の候補元素を選択した場合には、例えば後述する第1の算出ステップや、第2の算出ステップ、選択ステップを候補元素毎に複数回実施することもできる。
(第1の算出ステップ)
第1の算出ステップでは、ニッケルの一部を候補元素で置換した置換ニッケル酸リチウムについて、安定構造における内部エネルギーA1と、安定構造から候補元素の両隣にある酸素原子2原子を徐々に剥離させ、最もエネルギーが大きくなる最不安定構造における内部エネルギーA2との差であるΔA(ΔA=A2−A1)を算出できる。係るΔAは基底状態と、遷移状態とのエネルギー差に相当することから、置換ニッケル酸リチウムから酸素が脱離する際、すなわち熱分解する際の活性化エネルギーに当たる。
置換ニッケル酸リチウムは、上述のように一般式LiNi1−xで表され、置換割合xは特に限定されるものではないが、例えば0<x≦0.2を満たすように選択することが好ましい。特に置換元素Mが遷移金属以外の場合、過剰に置換されると結晶構造が不安定になり、電池特性に悪影響を及ぼす恐れがあるため、置換割合xは0<x≦0.1であることが好ましく、0<x≦0.05であることがより好ましい。
第1の算出ステップにおいて、置換ニッケル酸リチウムの安定構造は例えば以下の手順により求めることができる。
まず、置換前のニッケル酸リチウムについて、その結晶構造にあわせて各原子を配置する。この際、少なくとも48原子以上のユニットセルを作製することが好ましい。次いで、ニッケル酸リチウムの最表面に配置されたニッケル原子のうちの1つを候補元素により置換する。そして、構造緩和計算を行うことで安定構造を求めることができる。
構造緩和計算の方法は特に限定されないが、密度汎関数理論(DFT:Density Functional Theory)に基づく平面波基底第一原理計算を用いることが好ましい。
密度汎関数理論における汎関数としては、GGA−PBE(Generalized Gradient Approximation―Perdew,Burke,Ernzerhof)、またはより高精度な汎関数を用いることが好ましい。また、平面波のカットオフやk点のサンプリングはエネルギーが十分に収束するように、具体的には収束残差が1.0×10−5eV以下になるように選択し、構造緩和は少なくとも原子に加わる力が0.02eV/Å以下になるまで行うことが好ましい。
安定構造における置換ニッケル酸リチウムの内部エネルギーについても、構造緩和計算の場合と同様に、密度汎関数理論に基づく平面波基底第一原理計算により算出することができる。
そして、安定構造から候補元素の両隣にある酸素原子2原子を徐々に剥離させ、最もエネルギーが大きくなる最不安定構造における内部エネルギーA2を算出できる。酸素原子の位置を移動させつつ、エネルギーを計算し、最も大きくなった時のエネルギーを最不安定構造における内部エネルギーA2とすることができる。
最不安定構造における置換ニッケル酸リチウムの内部エネルギーについても、構造緩和計算の場合と同様に、密度汎関数理論に基づく平面波基底第一原理計算により算出することができる。
そして、最不安定構造における内部エネルギーA2と、安定構造における内部エネルギーA1との差であるΔAを算出でき、係るΔAが候補元素により置換した置換ニッケル酸リチウムにおける酸素の脱離に要するエネルギーとなる。
(第2の算出ステップ)
第2の算出ステップでは、ニッケル酸リチウムについて、安定構造における内部エネルギーB1と、安定構造からニッケル元素の両隣にある酸素原子2原子を徐々に剥離させ、最もエネルギーが大きくなる最不安定構造における内部エネルギーB2との差であるΔBを算出できる。係るΔBは基底状態と、遷移状態とのエネルギー差に相当することから、ニッケル酸リチウムから酸素が脱離する際、すなわち熱分解する際の活性化エネルギーに当たる。
第2の算出ステップは、置換ニッケル酸リチウムではなく、無置換のニッケル酸リチウムを用いる点以外は第1の算出ステップと同様にして実施することができる。
すなわち、ニッケル酸リチウムについて、その結晶構造にあわせて各原子を配置する。この際、少なくとも48原子以上のユニットセルを作製することが好ましい。そして、構造緩和計算を行うことで安定構造を求めることができる。
構造緩和計算については既述のため、説明を省略する。
また、最不安定構造におけるニッケル酸リチウムの内部エネルギーB2についてもニッケル酸リチウムを用い、ニッケルの両隣の酸素原子を移動させる点を除いては、第1の算出ステップにおける最不安定構造における置換ニッケル酸リチウムの内部エネルギーB2と同様にして算出できる。
そして、安定構造におけるニッケル酸リチウムの内部エネルギーB1、及び最不安定構造におけるニッケル酸リチウムの内部エネルギーB2を、例えばそれぞれ密度汎関数理論に基づく平面波基底第一原理計算により算出することができる。
以上の計算により得られた、最不安定構造における内部エネルギーB2と、安定構造における内部エネルギーB1との差であるΔBを算出でき、係るΔBがニッケル酸リチウムにおける酸素の脱離に要するエネルギーとなる。
なお、ここまで説明したように、ΔA、及びΔBを、密度汎関数理論に基づく平面波基底第一原理計算を利用して算出することが好ましい。すなわち内部エネルギーA1、内部エネルギーA2、内部エネルギーB1、内部エネルギーB2は、それぞれ密度汎関数理論に基づく平面波基底第一原理計算を利用して算出し、得られた数値を用いて、活性化エネルギーに相当するΔA、ΔBを求めることが好ましい。
(選択ステップ)
選択ステップでは、第1の算出ステップで求めたΔAが、第2の算出ステップで求めたΔBよりも大きい場合に、候補元素をニッケル酸リチウムの置換元素として選択することができる。
これはΔA>ΔBの関係にある場合、候補元素で置換することで酸素の脱離により多くのエネルギーを要することになり、候補元素によるニッケル原子の置換により、酸素の脱離が生じにくく、熱安定性が高くなっていることを意味するからである。
本実施形態の置換元素の選択方法においては、第1の算出ステップにおける置換ニッケル酸リチウム、及び第2の算出ステップにおけるニッケル酸リチウムは、リチウムの少なくとも一部が引き抜かれた状態として計算を行うことが好ましい。
これはリチウムの少なくとも一部が引き抜かれた状態、すなわち充電された状態においては特に熱安定性が低くなっており、係る状態での熱安定性を高めることが特に求められているからである。
なお、正確に比較を行うため、第1の算出ステップにおける置換ニッケル酸リチウムのリチウムの引き抜かれている程度と、第2の算出ステップにおける置換ニッケル酸リチウムのリチウムの引き抜かれている程度は同じであることが好ましい。
そして、評価を行う際に、リチウムを引き抜く程度については特に限定されないが、例えば、モデル構造における個数割合でリチウムが30%以上70%以下引き抜かれている状態であることが好ましく、50%以上70%以下引き抜かれている状態であることがより好ましい。
本実施形態の置換元素の選択方法は、上述の各ステップ以外にも任意のステップを有することもできる。例えば候補元素が複数ある場合には、計算に用いる候補元素を変更し、既述の第1の算出ステップ、第2の算出ステップ、及び選択ステップを繰り返し実施する繰り返しステップを有することもできる。
なお、複数の候補元素のうち、置換により熱安定性を最も高めることができる置換元素を選択する場合には、例えば繰り返しステップにおいて、各候補元素について、第1の算出ステップ、第2の算出ステップ、選択ステップを実施した後、ΔAと、ΔBとの差が最も大きくなる候補元素を、熱安定性を最も高めることができる置換元素として選択することもできる。
以上に説明したように、本実施形態の置換元素の選択方法によれば、酸素原子が脱離する際の活性化エネルギーが、無置換の場合と比較して大きくなる置換元素を理論的に正確に選択できる。従って、本実施形態の置換元素の選択方法によれば、ニッケル酸リチウムの熱安定性を向上させることが可能な置換元素を効率的に選択できる。
[電池正極材料の製造方法]
次に、本実施形態に係る電池正極材料の製造方法について説明する。
本実施形態の電池正極材料の製造方法は、以下の工程を有することができる。
既述の置換元素の選択方法により置換元素Mを選択する選択工程。
置換元素Mを有する置換ニッケル酸リチウムを合成する合成工程
本実施形態の電池正極材料の製造方法は、既述の置換元素の選択方法により、置換元素Mを選択する選択工程を有することができる。
選択工程は、既述の置換元素の選択方法において、既に説明したため、ここでは説明を省略する。
合成工程は、選択工程において選択された置換元素Mを有する置換ニッケル酸リチウム、すなわち電池正極材料を合成する工程である。
合成工程における具体的な操作については特に限定されるものではないが、例えばLi源、Ni源、M源を含有する原料組成物を混合し、酸素雰囲気中において加熱する固相反応を用いることができる。各金属源の種類としては、特に限定されるものではなく、各金属を含む無機塩(例えば炭酸塩、硝酸塩)、有機塩(錯体)等を用いることができる。加熱温度及び加熱時間としては、特に限定されるものではないが、所望の固相反応が進む条件に設定することができる。
合成工程でLi源、Ni源、M源を含有する原料組成物を調製する際、例えばNi源および置換元素Mを含有するニッケル複合化合物と、リチウム化合物とを混合して、該原料混合物を調製することもできる。
ニッケル複合化合物としては、例えばニッケル複合化合物を構成する金属元素、すなわちNi元素および置換元素Mを共沈殿させて得られるニッケル複合水酸化物、もしくは該ニッケル複合水酸化物さらに熱処理して得られるニッケル複合酸化物を用いることができる。また、リチウム化合物としては特に限定されないが、例えば炭酸リチウムや、水酸化リチウム等から選択された1種類以上を用いることができる。
本実施形態の電池正極材料の製造方法により得られた電池正極材料、すなわち置換ニッケル酸リチウムは、例えば結着剤や、導電材と混合して正極合材とすることができる。また、正極合材には、さらに必要に応じて活性炭や、粘度調整などの目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストとすることができる。
そして、例えば正極合材を所望の形状に成形したり、正極合材ペーストを、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して溶剤を飛散させること等により正極とすることができる。
以上に説明した本実施形態の電池正極材料の製造方法によれば、選択工程において、ニッケル酸リチウムの熱安定性を向上させることが可能な置換元素を選択し、合成工程で該置換元素によりニッケルの一部が置換された置換ニッケル酸リチウムを合成している。このため、本実施形態の電池正極材料の製造方法によれば、ニッケル酸リチウムの熱安定性を向上させることが可能な置換元素によりニッケルの一部が置換された置換ニッケル酸リチウムを得ることができる。
係る置換ニッケル酸リチウムをリチウムイオン電池等の電池正極材料として用いることで、該電池の熱安定性を高めることが可能になる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
また、以下の実施例及び比較例においては、密度汎関数理論に基づく平面波基底第一原理計算を利用して、安定構造、および各内部エネルギーを算出した。
第一原理計算は平面波基底第一原理計算ソフトであるVASP(Vienna Ab initio Simulation Package)を用いて行った。
また、第一原理計算は、密度汎関数理論(DFT:Density Functional Theory)の範疇で行った。平面波基底のカットオフエネルギーは400eVとし、k点を3×3×3とした。なお、計算は基底状態で行っている。
[実施例]
以下の手順に従い、候補元素についてニッケル酸リチウムの熱安定性を高めることができるかを検討し、さらに、置換ニッケル酸リチウムの調製を行った。
(1)選択工程
以下の候補元素選択ステップ、第1の算出ステップ、第2の算出ステップ、選択ステップを実施することで選択工程を実施した。
(候補元素選択ステップ)
ニッケル酸リチウムのニッケルの一部を置換する置換元素Mの候補である候補元素として、アルミニウム(Al)を選択した。
(第1の算出ステップ)
ニッケル酸リチウム(LiNiO)の(110)面の表面モデルを作成した。なお、この際、モデル内にLiを18個、Niを18個、Oを36個含むようにモデルを作成した。
次いで、最表面に位置するニッケル原子の1個を候補元素であるアルミニウム原子で置換した置換ニッケル酸リチウム(Li18Ni17Al36)のモデルを作成した。
そして、66%充電時における、すなわちLiが12個引き抜かれた状態(LiNi17Al36)としてから、構造緩和計算を行い、置換ニッケル酸リチウムの安定構造を求め、さらに該安定構造における内部エネルギーA1を算出した。
続いて、安定構造の状態から、アルミニウム原子に隣接する酸素原子2原子を、置換ニッケル酸リチウムの(110)面と垂直方向に、上記アルミニウム原子との距離が遠くなるように0.25Åずつ移動させ、アルミニウム原子から酸素原子を乖離させた際の最不安定構造の内部エネルギーA2を算出した。
そして、内部エネルギーA1と、内部エネルギーA2との差であるΔA=A2−A1を算出した。
(第2の算出ステップ)
第1の算出ステップの場合と同様にして、ニッケル酸リチウム(LiNiO)の(110)面の表面モデルを作成した。なお、この際、モデル内にLiを18個、Niを18個、Oを36個含むようにモデルを作成した。
次いで、66%充電時における、すなわちLiが12個引き抜かれた状態(LiNi1836)としてから、構造緩和計算を行い、ニッケル酸リチウムの安定構造を求め、さらに該安定構造における内部エネルギーB1を算出した。
続いて、安定構造の状態から、ニッケル原子に隣接する酸素原子2原子を、ニッケル酸リチウムの(110)面と垂直方向に、上記ニッケル原子との距離が遠くなるように0.25Åずつ移動させ、ニッケル原子から酸素原子を乖離させた際の最不安定構造の内部エネルギーB2を算出した。
そして、内部エネルギーB1と、内部エネルギーB2との差であるΔB=B2−B1を算出した。
算出した結果を下記の表1に示す。
Figure 2019210168
(選択ステップ)
表1に示すように、ニッケル酸リチウムのニッケル原子の一部をアルミニウム原子で置換することにより、酸素原子脱離の活性化エネルギーであるΔAの値が置換前の値であるΔBより大きくなることが確認できた。このため、選択ステップでは、候補元素であるアルミニウムを熱安定性の向上に有効な置換元素Mとして選択した。
(2)合成工程
次に、ニッケル酸リチウムに含まれるニッケルについて、物質量の比で1.5%をアルミニウムで置換した置換ニッケル酸リチウムであるLiNi1−xAlと、置換していないLiNiOとを実際に合成し、LiNi1−xAl及びLiNiOを電池正極材料として用いたリチウムイオン電池を作製した。なお、上記置換ニッケル酸リチウムの式中のxは0.015となる。
酸化ニッケルと、水酸化アルミニウムと、水酸化リチウムとを量論比となるように混合し、酸素雰囲気下で焼成することで置換ニッケル酸リチウムを合成した。
得られた置換ニッケル酸リチウム52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形して、正極を作製した。作製した正極を真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。
この正極と、負極、セパレータおよび電解液とを用いて、コイン型電池を、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
なお、負極には、直径14mmの円盤状に打ち抜かれた、平均粒径20μm程度の黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンとの混合物が銅箔に塗布された負極シートを用いた。セパレータには膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。電解液には1MのLiClOを支持電解質(支持塩)とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液を用いた。
作製したリチウムイオン電池であるコイン型電池に対して、4.5Vの過充電領域まで充電を行った後、該電池を分解し、正極を取出した。
そして、取出した正極に電解液を加え、示差走査熱量測定装置(DSC、NETZSCH JAPAN株式会社製 型式:DSC3100SA)を用いて室温から400℃まで、10℃/minの昇温速度で昇温し、加熱した際の発熱量を測定し、熱安定性を評価した。
なお、測定は置換していないニッケル酸リチウムと、上記合成工程で合成したアルミニウムにより置換した置換ニッケル酸リチウムとについて実施した。無置換のニッケル酸リチウムについても、同様にコイン型電池として、充電を行ってから評価を行っている。
無置換のニッケル酸リチウムについて、充電後に実施したDSC測定結果と、アルミニウムで置換した置換ニッケル酸リチウムについて、充電後に実施したDSC測定結果とを比較すると、置換ニッケル酸リチウムの場合、180℃近傍に表れる発熱ピークが5℃高温側にシフトしていた。係る180℃近傍に表れる発熱ピークは、分解したニッケル酸リチウムと、電解液とが反応する際に生じるものであり、そのピークが高温側にシフトしていたことから、アルミニウムで置換した置換ニッケル酸リチウムとすることで、熱安定性を高められることを実験的にも確認できた。

Claims (4)

  1. ニッケル酸リチウムのニッケルの一部を、置換元素Mで置換した一般式LiNi1−xで表される置換ニッケル酸リチウムとするための置換元素の選択方法であって、
    ニッケルを置換する前記置換元素Mの候補である候補元素を選択する候補元素選択ステップと、
    ニッケルの一部を前記候補元素で置換した置換ニッケル酸リチウムについて、安定構造における内部エネルギーA1と、安定構造から前記候補元素の両隣にある酸素原子2原子を徐々に剥離させ、最もエネルギーが大きくなる最不安定構造における内部エネルギーA2との差であるΔAを算出する第1の算出ステップと、
    ニッケル酸リチウムについて、安定構造における内部エネルギーB1と、安定構造からニッケルの両隣にある酸素原子2原子を徐々に剥離させ、最もエネルギーが大きくなる最不安定構造における内部エネルギーB2との差であるΔBを算出する第2の算出ステップと、
    前記ΔAが、前記ΔBよりも大きい場合に、前記候補元素をニッケル酸リチウムの置換元素Mとして選択する選択ステップと、を有する置換元素の選択方法。
  2. 前記ΔA、及び前記ΔBを、密度汎関数理論に基づく平面波基底第一原理計算を利用して算出する請求項1に記載の置換元素の選択方法。
  3. 前記第1の算出ステップにおける前記置換ニッケル酸リチウム、及び前記第2の算出ステップにおける前記ニッケル酸リチウムは、リチウムの少なくとも一部が引き抜かれた状態として計算を行う請求項1または2に記載の置換元素の選択方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の置換元素の選択方法により置換元素Mを選択する選択工程と、
    前記置換元素Mを有する置換ニッケル酸リチウムを合成する合成工程と、を有する電池正極材料の製造方法。
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JP7420039B2 (ja) 2020-09-30 2024-01-23 住友金属鉱山株式会社 界面構造探索方法
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