JP2019040675A - 非水系二次電池用正極活物質の製造方法及び遷移金属化合物 - Google Patents

非水系二次電池用正極活物質の製造方法及び遷移金属化合物 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウムイオン二次電池の内部抵抗が小さく、かつ高容量化が得られる非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法及び遷移金属化合物を提供することを目的とする。【解決手段】正極活物質の前駆体である遷移金属化合物から製造される非水系二次電池用正極活物質の製造方法であって、少なくとも、一次粒子及びその一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなる前記遷移金属化合物と、リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液とを混合させ混合物を得る混合工程S1と、前記混合物を乾燥させ乾燥物を得る乾燥工程S2と、前記乾燥物とリチウム化合物とを混合し、焼成する焼成工程S3とを有し、前記混合工程では、前記リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液を噴霧して混合し、前記遷移金属化合物の表面の少なくとも一部をリチウム及びタングステンを含む化合物で被覆させることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、正極活物質の前駆体である遷移金属化合物から製造される非水系二次電池用正極活物質の製造方法及び遷移金属化合物に関する。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な非水系電解質二次電池の開発が強く望まれている。このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、負極および正極の活物質に、リチウムが脱離および挿入できる材料が用いられている。
リチウムイオン二次電池は現在も研究開発が盛んに行われているが、中でも層状またはスピネル型のリチウム金属複合酸化物を正極活物質に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
これまでに提案されている正極活物質としては、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn) などが挙げられる。
このうちリチウムニッケル複合酸化物は、サイクル特性が良く、高容量が得られ電池特性に優れた正極活物質として注目され、近年の電気自動車向けとしてさらなる高容量化が試みられている。
リチウムニッケル複合酸化物の電池特性を改善する方法としては、各種元素の添加が検討されており、特にW、Mo、Nb、Ta、Reなどの高価数をとることができる遷移金属元素の添加が有効とされている。
例えば、特許文献1には、非水系電解質二次電池の正極材料としてリチウム金属複合酸化物粉末とタングステン酸リチウムを混合して用いることで、リチウムイオン二次電池内部の抵抗を小さくし、高出力をもたらすことができるとされている。
特開2016−225277号公報
しかし、リチウムニッケル複合酸化物を正極に用いたリチウムイオン二次電池を高容量化する異元素添加方法については提案されていない。また、今後リチウムイオン二次電池の内部抵抗値をさらに小さくすること及び高容量化が望まれる。
そこで本発明は、内部抵抗が小さく、かつ高容量が得られる非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法及び遷移金属化合物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、混合工程で、リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液を噴霧して混合し、遷移金属化合物の表面の少なくとも一部をリチウム及びタングステンを含む化合物で被覆させることで、内部抵抗が小さく、かつ高容量が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、正極活物質の前駆体である遷移金属化合物から製造される非水系二次電池用正極活物質の製造方法であって、少なくとも、一次粒子及びその一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなる前記遷移金属化合物と、リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液とを混合させ混合物を得る混合工程と、前記混合物を乾燥させ乾燥物を得る乾燥工程と、前記乾燥物とリチウム化合物とを混合し、焼成する焼成工程とを有し、前記混合工程では、前記リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液を噴霧して混合し、前記遷移金属化合物の表面の少なくとも一部をリチウム及びタングステンを含む化合物で被覆させることを特徴とする。
このようにすれば、遷移金属化合物の表面の少なくとも一部がリチウム及びタングステンを含む化合物で被覆されることで、焼成後の正極活物質がリチウムタングステン化合物で被覆されるので、内部抵抗が小さく、かつ高容量が得られる非水系電解質二次電池用正極活物質を提供することができる。
このとき、本発明の一態様では、前記遷移金属化合物は、Ni、Co、M(Mは、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Mo、Nb、Zrから選択される1種以上の元素)を含むニッケル複合酸化物もしくはニッケル複合水酸化物のいずれか1つ又はその混合物としてもよい。
このようにすれば、遷移金属化合物がNi、Co、Mを含むニッケル複合酸化物もしくはニッケル複合水酸化物から製造される非水系電解質二次電池用正極活物質を提供することができる。
このとき、本発明の一態様では、前記リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、前記遷移金属化合物に含まれる前記Ni、Co及びMの合計のモル量に対し、0.05〜0.15mol%としてもよい。
このようにすれば、最適なリチウム及びタングステンを含む化合物の添加量となり、得られる正極活物質を、十分にリチウム及びタングステンを含む化合物で被覆することができる。
このとき、本発明の一態様では、前記リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液の重量は、前記遷移金属化合物の重量に対して、5〜20wt%としてもよい。
このようにすれば、遷移金属化合物の粒子間や表面にリチウム及びタングステンを含む化合物の溶液が十分に行き渡り、遷移金属化合物の表面により均一に被覆することができる。
このとき、本発明の一態様では、前記リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液は水溶液としてもよい。
このようにすれば、遷移金属化合物の表面の少なくとも一部をリチウム及びタングステンを含む化合物でより均一に被覆させることができる。
このとき、本発明の一態様では、前記リチウム及びタングステンを含む化合物が、タングステン酸リチウムであり、前記タングステン酸リチウムの組成式がLiWOとしてもよい。
このようにすれば、遷移金属化合物表面への相互作用が最適となり、タングステン酸リチウムをより均一に被覆することができる。
このとき、本発明の一態様では、前記焼成工程で混合される前記リチウム化合物は、リチウム水酸化物、リチウムオキシ水酸化物、リチウム酸化物、リチウム炭酸塩、リチウム硝酸塩およびリチウムハロゲン化物から選ばれる少なくとも1種またはその混合物としてもよい。
このようにすれば、焼成後に不純物が残留することを防止し、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が小さく、かつ高容量化が可能となる。
このとき、本発明の一態様では、前記リチウム化合物におけるリチウムのモル比率は、前記遷移金属化合物のモル量に対して、0.98〜1.25としてもよい。
このようにすれば、得られる焼成粉末の結晶性を向上させ、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が小さく、かつ高容量化が可能となる。
このとき、本発明の一態様では、前記焼成工程は、酸化性雰囲気で、最高温度が650℃以上、780℃以下で行われるとしてもよい。
このようにすれば、非水系二次電池用正極活物質の結晶構造が安定化させることができる。
このとき、本発明の一態様では、得られた非水系二次電池用正極活物質が、一般式:LiNi1−x−yCoで表されることとしてもよい。(式中、Mは、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Nb、ZrおよびMoから選ばれる少なくとも1種の元素である。aは、0.95≦a≦1.11、xは0<x≦0.15、yは0<y≦0.07、x+y≦0.2、0.05≦z≦0.15を満たす数値である。)
このようにすれば、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が小さく、かつ高容量化が得られる上記の一般式の非水系二次電池用正極活物質を提供することができる。
本発明の一態様では、Ni、Co、M(Mは、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Mo、Nb、Zrから選択される1種以上の元素)を含む遷移金属化合物であって、前記遷移金属化合物は、ニッケル複合酸化物もしくはニッケル複合水酸化物のいずれか1つ又はその混合物であって、前記遷移金属化合物は、一次粒子及びその一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなり、前記一次粒子及びその一次粒子が凝集して構成された二次粒子の表面の少なくとも一部がリチウム及びタングステンを含む化合物で被覆されていることを特徴とする。
このようにすれば、焼成後の正極活物質表面がリチウムタングステン化合物で被覆されるので、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が小さく、かつ高容量が得られる非水系電解質二次電池用正極活物質を提供することができる。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が小さく、かつ高容量が得られる非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法及び遷移金属化合物を提供することができる。また、その製造方法は、容易で工業的規模での生産に適したものであり、その工業的価値は極めて大きい。
図1は、本発明の一実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質の製造方法の概略を示す工程図である。 図2は、実施例におけるコイン型電池の構成を示す図である。 図3は、実施例におけるナイキストプロット図であり、図3(A)は溶液抵抗、負極抵抗とその容量、及び正極抵抗とその容量を示す特性曲線の和を示し、図3(B)は上記を回路図で示したものである。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。本発明の一実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質の製造方法及び遷移金属化合物について、下記の順に詳細に説明する。
1.非水系二次電池用正極活物質の製造方法
1−1.混合工程
1−2.乾燥工程
1−3.焼成工程
2.遷移金属化合物
<1.非水系二次電池用正極活物質の製造方法>
以下、図面を使用しながら本発明の一実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質の製造方法を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質の製造方法の概略を示す工程図である。本発明の一実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質の製造方法は、正極活物質の前駆体である遷移金属化合物から製造される。そして、本発明の一実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質の製造方法は、少なくとも、混合工程S1と、乾燥工程S2と、焼成工程S3とを有する。また、上記混合工程S1では、上記リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液を噴霧して混合し、上記遷移金属化合物の表面の少なくとも一部をリチウム及びタングステンを含む化合物で被覆させることを特徴とする。以下、工程ごとに詳細に説明する。
<1−1.混合工程S1>
まず、本発明の一実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質の製造方法における混合工程S1を説明する。混合工程S1では、一次粒子及びその一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなる上記遷移金属化合物と、リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液とを混合させその混合物を得る。
ここで、上記混合工程S1では、上記リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液を噴霧して混合し、上記遷移金属化合物の表面の少なくとも一部をリチウム及びタングステンを含む化合物で被覆させることを特徴とする。
従来の、リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液をそのまま投入し、混合する方法では、リチウム及びタングステンを含む化合物が上記遷移金属化合物表面を均一に被覆し難いからである。よって、本発明の一実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質の製造方法における混合工程S1は、リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液を噴霧して混合させる。
この方法により、リチウム及びタングステンを含む化合物が、遷移金属化合物の粒子表面を広く均一に被覆する。ここで正極活物質の前駆体である遷移金属化合物は、合成後の正極活物質に比べて比表面積が大きく、大きい細孔が広範囲に存在する。しかし、そのような表面状態でも、リチウム及びタングステンの化合物の溶液を噴霧して混合することで、リチウム及びタングステンの化合物の粒子が微細となり、リチウム及びタングステンの化合物が細孔を通して前駆体内部にまで浸透でき、合成される正極活物質の内部の一次粒子表面をも容易にかつ効率良く被覆させることができる。
よって、遷移金属化合物の粒子表面を広く均一に被覆することで、合成される正極活物質の内部の一次粒子表面をも容易に被覆させることができ、リチウムイオン二次電池の充放電反応時のリチウムの伝導パスが良好となり、リチウムイオン二次電池の高容量化及び低抵抗化が可能となる。
上記遷移金属化合物は、Ni、Co、M(Mは、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Mo、Nb、Zrから選択される1種以上の元素)を含むニッケル複合酸化物もしくはニッケル複合水酸化物のいずれか1つ又はその混合物であることが好ましい。
このようにすれば、Ni、Co、Mを含むニッケル複合酸化物もしくはニッケル複合水酸化物から製造され、リチウムイオン二次電池の高容量化及び低抵抗化が可能な非水系電解質二次電池用正極活物質を提供することができる。上記リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、上記遷移金属化合物に含まれる上記Ni、Co及びMの合計のモル量に対し、0.05〜0.15mol%とすることが好ましい。
上記のタングステンのモル百分率が0.05mol%未満では、リチウム及びタングステンを含む化合物が、遷移金属化合物表面を十分に被覆することはできず、結果として得られる正極活物質表面を十分に被覆することはできず、リチウムイオン二次電池の充放電反応時のリチウムの伝導パスが十分に形成されないため、さらなる高容量化、低抵抗化が得られ難い。
一方、上記のタングステンのモル百分率が0.15mol%を超えると、遷移金属化合物表面を被覆するリチウム及びタングステンを含む化合物の量が増え、結果として得られる正極活物質表面を被覆するリチウム及びタングステンを含む化合物の割合が大きくなることにより重量当たりの容量が低下し、さらなる高容量化、低抵抗化が得られ難い。
よって上記の範囲とすれば、最適なリチウム及びタングステンを含む化合物の添加量となり、得られる正極活物質を、十分にリチウム及びタングステンを含む化合物で被覆することができる。
また、リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液の重量は、上記遷移金属化合物の重量に対して、5〜20wt%であることが好ましい。
リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液の重量が上記遷移金属化合物の重量に対して5wt%未満の場合、溶液が上記遷移金属化合物の表面に十分に行き渡らず、リチウム及びタングステンの化合物が上記遷移金属化合物の粒子表面を均一に被覆しないおそれがある。
一方、リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液の重量が上記遷移金属化合物の重量に対して20wt%を超える場合、混合時に遷移金属化合物と、リチウム及びタングステンを含む化合物との混合物が、ペースト状になってしまいハンドリング性が極端に悪化すると共に、得られた混合物の乾燥に時間がかかるおそれがある。
よって上記の範囲とすれば、最適なリチウム及びタングステンを含む化合物の添加量となり、得られる正極活物質を、十分にリチウム及びタングステンを含む化合物で被覆することができる。
また、リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液は水溶液が好ましい。例えば、エタノール、メタノール、プロパノール等の有機溶媒を用いると、噴霧する際に溶媒が揮発しやすくなり、溶液中のリチウム及びタングステン濃度が上昇することで溶液の粘度が増加するおそれがあり、混合する際にリチウム及びタングステンを含む化合物の溶液が、遷移金属化合物表面に均一に被覆しない可能性が高くなる。よって、水溶液にすることの優位性は、混合する際に噴霧するがゆえの特徴である。また水溶液であれば溶液の取扱いが容易である。これにより、遷移金属化合物の表面をリチウム及びタングステンを含む化合物でより均一に被覆させることができる。
上記リチウム及びタングステンを含む化合物は、タングステン酸リチウムが好ましい。また、さらに上記タングステン酸リチウムの組成式がLiWOであることが好ましい。このようにすれば、遷移金属化合物表面への相互作用が最適となり、タングステン酸リチウムをより均一に被覆することができる。なお、混合方法は公知の方法を用いればよい。
<1−2.乾燥工程S2>
次に、上記混合工程S1後に乾燥工程S2にて、上記混合物を乾燥させ乾燥物を得る。乾燥条件としては、公知の条件を用いることができる。つまり温度や時間は公知の温度や時間で乾燥させればよい。
<1−3.焼成工程S3>
次に、上記乾燥工程S2後に、上記乾燥物とリチウム化合物とを混合し、焼成する。上記乾燥物とリチウム化合物とを混合する際には、一般的な混合機を使用することができ、例えば、シェーカーミキサーやレーディゲミキサー、ジュリアミキサー、Vブレンダーなどを用いてリチウムとタングステンの化合物を被覆した遷移金属化合物の二次粒子形状が破壊されない程度で、リチウム化合物を均一に混合してやればよい。
焼成工程S3で混合される上記リチウム化合物は、特に限定されないが、リチウム水酸化物、リチウムオキシ水酸化物、リチウム酸化物、リチウム炭酸塩、リチウム硝酸塩およびリチウムハロゲン化物から選ばれる少なくとも1種またはその混合物であることが好ましい。このようにすれば、焼成後に不純物が残留することを防止し、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が小さく、かつ高容量化が可能となる。特に、ニッケル複合水酸化物あるいはニッケル複合酸化物との反応性が良好なリチウム水酸化物を用いることが、より好ましい。
混合工程S1で混合される、リチウム及びタングステンを含む化合物で被覆した遷移金属化合物とリチウム化合物の混合比は、特に限定されないが、下記に説明する焼成後の正極活物質におけるリチウムとリチウム以外の遷移金属元素の割合は、リチウム及びタングステンを含む化合物で被覆した遷移金属化合物と、焼成工程S3で混合されるリチウム化合物の混合物中のリチウムとリチウム以外の遷移金属元素の割合がほぼ維持される。
したがって、上記リチウム化合物におけるリチウムのモル比率は、上記遷移金属化合物のモル量に対して、0.98〜1.25であることが好ましい。
リチウム化合物におけるリチウムのモル比率は、上記遷移金属化合物のモル量に対して、0.98未満では、得られる焼成粉末の結晶性が非常に悪くなることがある。一方、上記モル比率が1.25を超えると、二次粒子同士の焼結が進みやすくなって粗大粒子が生成したり、未反応のリチウムが残留し内部抵抗を大きくしたりするため好ましくない。
よって、上記の範囲とすれば、焼成粉末の結晶性を良好に維持でき、また、焼成時の粒子同士の焼結の進行による粒子の粗大化を抑制することができる。従って、得られる焼成粉末の結晶性を向上させ、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が小さく、かつ高容量化が可能となる。
また、焼成工程S3は、酸化性雰囲気で、最高温度が650℃以上、780℃以下で行われることが好ましい。
最高温度が500℃を超える温度で焼成すれば、複合酸化物(リチウムニッケル複合酸化物)が生成されるものの、最高温度が650℃未満ではその結晶が未発達で構造的に不安定となる。このような複合酸化物(リチウムニッケル複合酸化物)を正極活物質として使用すると、充放電による相転移などにより容易に正極活物質の結晶構造が破壊されてしまう。また、一次粒子の成長も不十分となり、比表面積や空隙率が大きくなり過ぎることがある。
一方、最高温度が780℃を超えるような温度で焼成すれば、カチオンミキシングが生じやすくなり、リチウムニッケル複合酸化物の結晶内の層状構造が崩れ、リチウムイオンの挿入、脱離が困難となる可能性がある。しかも、リチウムニッケル複合酸化物の結晶が分解してしまい、酸化ニッケルなどが生成されてしまう可能性がある。さらに、複合酸化物粒子が焼結を起こし、粗大な複合酸化物粒子が形成されてしまい、リチウムニッケル複合酸化物の平均粒径が大きくなり過ぎることがある。そして、一次粒子が成長して、比表面積や空隙率が小さくなり過ぎることがある。結果として、上記の温度範囲にすることにより、さらなる高容量化、低抵抗化が可能となる。
焼成工程での保持時間は、1〜6時間とすることが好ましく、2〜4時間とすることがより好ましい。保持時間が1時間未満では、結晶化が不十分になり、6時間を越えると焼成が進みすぎ、カチオンミキシングが生じる場合がある。
この焼成は、非酸化性雰囲気でなければリチウムニッケル複合酸化物の合成が可能であり、18〜100容量%の酸素と不活性ガスの混合ガス雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度90容量%以上であることがより好ましい。
酸素濃度18容量%以上、すなわち、大気雰囲気より酸素含有量が多い雰囲気で焼成すれば、リチウム化合物とニッケル複合水酸化物あるいはニッケル複合酸化物との反応性を上げることができる。反応性をさらに上げて、結晶性に優れたリチウムニッケル複合酸化物を得るために、酸素濃度90容量%以上の混合ガス雰囲気とすることがより好ましく、酸素雰囲気(酸素濃度98%以上)とすることがさらに好ましい。また、除湿及び除炭酸処理された雰囲気とすることが好ましい。
上述した工程を経て得られた非水系二次電池用正極活物質が、一般式:LiNi1−x−yCoで表されることを特徴とする。(式中、Mは、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Nb、ZrおよびMoから選ばれる少なくとも1種の元素である。aは、0.95≦a≦1.11、xは0<x≦0.15、yは0<y≦0.07、x+y≦0.2、0.05≦z≦0.15を満たす数値である。)このようにすれば、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が小さく、かつ高容量化が得られる上記の一般式の非水系二次電池用正極活物質を提供することができる。
<2.遷移金属化合物>
次に、本発明の一実施形態に係る遷移金属化合物について説明する。本発明の一実施形態に係る遷移金属化合物は、Ni、Co、M(Mは、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Mo、Nb、Zrから選択される1種以上の元素)を含む遷移金属化合物である。そして、上記遷移金属化合物は、ニッケル複合酸化物もしくはニッケル複合水酸化物のいずれか1つ又はその混合物であって、上記遷移金属化合物は、一次粒子及びその一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなる。また、上記一次粒子及びその一次粒子が凝集して構成された二次粒子の表面の少なくとも一部がリチウム及びタングステンを含む化合物で被覆されていることを特徴とする。
このようにすれば、遷移金属化合物の粒子表面を広く均一に被覆することで、合成される正極活物質の内部の一次粒子表面をも容易に被覆させることができ、リチウムイオン二次電池の充放電反応時のリチウムの伝導パスが良好となり、リチウムイオン二次電池の高容量化及び低抵抗化が可能となる。
また、上記リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、上記遷移金属化合物に含まれる上記Ni、Co及びMの合計のモル量に対し、0.05〜0.15mol%とすることが好ましい。この範囲における臨界的意義は、本発明の一実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質の製造方法で説明したものと同様である。
さらに、上記リチウム及びタングステンを含む化合物が、タングステン酸リチウムであり、上記タングステン酸リチウムの組成式がLiWOであることが好ましい。好ましい理由も、本発明の一実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質の製造方法で説明したものと同様である。
次に、本発明の一実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質の製造方法及び遷移金属化合物について、実施例により詳しく説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(非水系二次電池用正極活物質の製造)
正極活物質の前駆体である遷移金属化合物は公知の方法で合成し、ニッケル複合酸化物(Ni0.88Co0.06Al0.06O)を用いた。そして、上記ニッケル複合酸化物と混合するリチウム及びタングステンを含む化合物の溶液は、下記のように作製した。
粉末状の酸化タングステン115.9gに粉末状水酸化リチウム23.9gを混合し、白金坩堝中で200℃、2時間焼成し、タングステン酸リチウムを得た。得られたタングステン酸リチウムはXRD定性分析によりLiWOであることを確認した。坩堝ごと純水7.3lを入れたビーカーに投入し、タングステン酸リチウムを全量溶解させ、タングステン酸リチウム水溶液を得た。計算されるLiWOの生成から求めたタングステン酸リチウム水溶液の濃度は0.068mol/Lであった。
混合工程として、上記ニッケル複合酸化物100gに、上記タングステン酸リチウム水溶液20g(ニッケル複合酸化物に対して20wt%)を噴霧して混合させ、混合物を得た。噴霧したタングステン酸リチウム水溶液中のタングステンの、ニッケル複合酸化物中のニッケル、コバルト、アルミの合計モル量に対するモル百分率(W/(NI+Co+Al))は、0.10mol%である。このタングステンの百分率濃度は、得られた正極活物質中のタングステン濃度となる。そして、乾燥工程として、上記混合物を120℃・12時間真空下で乾燥させた。
焼成工程として、上記で得られたタングステン酸リチウムで被覆されたニッケル複合酸化物99.89gと水酸化リチウム32.64gをシェイカーミキサーで混合し、酸素雰囲気で、最高温度を675℃とし、3時間焼成して、タングステン酸リチウムで被覆されたリチウムニッケル複合酸化物を得て正極材料とした。
この正極材料中のタングステン含有量をICP法により分析し、ニッケル、コバルトおよび添加元素Mの合計に対して0.10mol%の組成であることを確認した。
(電池の製造及び評価)
正極活物質の評価には、図2に示す2032型コイン電池1(以下、コイン型電池1という)を使用した。図2に示すように、コイン型電池1は、ケース2と、このケース2内に収容された電極3とから構成されている。
ケース2は、中空かつ一端が開口された正極缶2aと、この正極缶2aの開口部に配置される負極缶2bとを有しており、負極缶2bを正極缶2aの開口部に配置すると、負極缶2bと正極缶2aとの間に電極3を収容する空間が形成されるように構成されている。
電極3は、正極3a、セパレータ3cおよび負極3bとからなり、この順で並ぶように積層されており、正極3aが正極缶2aの内面に接触し、負極3bが負極缶2bの内面に接触するようにケース2に収容されている。
なお、ケース2はガスケット2cを備えており、このガスケット2cによって、正極缶2aと負極缶2bとの間が非接触の状態を維持するように相対的な移動が固定されている。また、ガスケット2cは、正極缶2aと負極缶2bとの隙間を密封してケース2内と外部との間を気密液密に遮断する機能も有している。
用いたコイン型電池1は、以下のようにして製作した。まず、上記正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mgおよびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚み100μmにプレス成型して、正極3aを作製した。
次に作製した正極3aを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。乾燥した正極3aと、負極3b、セパレータ3cおよび電解液とを用いて、図2のコイン型電池1を、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
なお、負極3bには、直径14mmの円盤状に打ち抜かれた平均粒径20μm程度の黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンが銅箔に塗布された負極シートを用いた。また、セパレータ3cには、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。電解液は、1MのLiClOを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
製造したコイン型電池1の性能を示す初期放電容量、正極抵抗は、以下の方法により評価した。初期放電容量は、コイン型電池1を製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(open circuit voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとしてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電した時の容量を初期放電容量とした。
正極抵抗は、コイン型電池1を充電電位4.1Vで充電して、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン社製、1255B)を使用して交流インピーダンス法により測定して図3(A)に示すナイキストプロットを得た。なお図3(B)は図3(A)の回路図を示す。
図3(A)に示す得られたナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、および、正極抵抗とその容量を示す特性曲線の和として表しているため、このナイキストプロットに基づき等価回路を用いてフィッティング計算して、正極抵抗の値を算出した。
その結果、得られた正極活物質を用いたコイン型電池から求められた初期放電容量は201.0mAh/g、正極抵抗は2.1Ωであった。
(実施例2)
実施例2として、タングステン酸リチウム水溶液の重量濃度は、20wt%とした。リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、0.10mol%とした。焼成工程における最高温度を710℃とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
また、実施例1と同様に電池の製造及び評価を行った。その結果、得られた正極活物質を用いたコイン型電池から求められた初期放電容量は202.0mAh/g、正極抵抗は2.1Ωであった。
(実施例3)
実施例3として、タングステン酸リチウム水溶液の重量濃度は、20wt%とした。リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、0.10mol%とした。焼成工程における最高温度を750℃とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
また、実施例1と同様に電池の製造及び評価を行った。その結果、得られた正極活物質を用いたコイン型電池から求められた初期放電容量は203.0mAh/g、正極抵抗は2.0Ωであった。
(実施例4)
実施例4として、混合工程におけるタングステン酸リチウム水溶液の濃度は0.034mol/Lとした。また、タングステン酸リチウム水溶液の重量濃度は、20wt%とした。リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、0.05mol%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
また、実施例1と同様に電池の製造及び評価を行った。その結果、得られた正極活物質を用いたコイン型電池から求められた初期放電容量は204.0mAh/g、正極抵抗は2.0Ωであった。
(実施例5)
実施例5として、混合工程におけるタングステン酸リチウム水溶液の濃度は0.102mol/Lとした。タングステン酸リチウム水溶液の重量濃度は、20wt%とした。リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、0.15mol%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
また、実施例1と同様に電池の製造及び評価を行った。その結果、得られた正極活物質を用いたコイン型電池から求められた初期放電容量は202.0mAh/g、正極抵抗は2.0Ωであった。
(実施例6)
実施例6として、混合工程におけるタングステン酸リチウム水溶液の濃度は0.278mol/Lとした。タングステン酸リチウム水溶液の重量濃度は、5wt%とした。リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、0.10mol%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
また、実施例1と同様に電池の製造及び評価を行った。その結果、得られた正極活物質を用いたコイン型電池から求められた初期放電容量は201.0mAh/g、正極抵抗は2.1Ωであった。
(実施例7)
実施例7として、混合工程におけるタングステン酸リチウム水溶液の濃度は0.139mol/Lとした。タングステン酸リチウム水溶液の重量濃度は、10wt%とした。リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、0.10mol%とした。
また、実施例1と同様に電池の製造及び評価を行った。その結果、得られた正極活物質を用いたコイン型電池から求められた初期放電容量は201.0mAh/g、正極抵抗は2.1Ωであった。
(実施例8)
実施例8として、混合工程におけるタングステン酸リチウム水溶液の濃度は0.091mol/Lとした。タングステン酸リチウム水溶液の重量濃度は、15wt%とした。リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、0.10mol%とした。
また、実施例1と同様に電池の製造及び評価を行った。その結果、得られた正極活物質を用いたコイン型電池から求められた初期放電容量は202.0mAh/g、正極抵抗は2.0Ωであった。
(実施例9)
実施例9として、タングステン酸リチウム水溶液の重量濃度は、20wt%とした。リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、0.10mol%とした。焼成工程における最高温度を640℃とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
また、実施例1と同様に電池の製造及び評価を行った。その結果、得られた正極活物質を用いたコイン型電池から求められた初期放電容量は197.0mAh/g、正極抵抗は2.4Ωであった。
(実施例10)
実施例10として、タングステン酸リチウム水溶液の重量濃度は、20wt%とした。リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、0.10mol%とした。焼成工程における最高温度を800℃とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
また、実施例1と同様に電池の製造及び評価を行った。その結果、得られた正極活物質を用いたコイン型電池から求められた初期放電容量は196.5mAh/g、正極抵抗は2.4Ωであった。
(実施例11)
実施例11として、混合工程におけるタングステン酸リチウム水溶液の濃度は0.139mol/Lとした。タングステン酸リチウム水溶液の重量濃度は、20wt%とした。リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、0.20mol%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
また、実施例1と同様に電池の製造及び評価を行った。その結果、得られた正極活物質を用いたコイン型電池から求められた初期放電容量は196.5mAh/g、正極抵抗は2.2Ωであった。
(実施例12)
実施例12として、混合工程におけるタングステン酸リチウム水溶液の濃度は0.021mol/Lとした。タングステン酸リチウム水溶液の重量濃度は、20wt%とした。リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、0.03mol%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
また、実施例1と同様に電池の製造及び評価を行った。その結果、得られた正極活物質を用いたコイン型電池から求められた初期放電容量は197.0mAh/g、正極抵抗は2.5Ωであった。
(実施例13)
実施例13として、混合工程におけるタングステン酸リチウム水溶液の濃度は0.056mol/Lとした。タングステン酸リチウム水溶液の重量濃度は、25wt%とした。リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、0.10mol%とした。その他の条件は実施例1と同様とした。
また、実施例1と同様に電池の製造及び評価を行った。その結果、得られた正極活物質を用いたコイン型電池から求められた初期放電容量は197.0mAh/g、正極抵抗は2.4Ωであった。
(比較例1)
比較例1として混合工程におけるタングステン酸リチウム水溶液を噴霧して混合しなかった。その他の条件は実施例1と同様とした。
また、実施例1と同様に電池の製造及び評価を行った。その結果、得られた正極活物質を用いたコイン型電池から求められた初期放電容量は196.0mAh/g、正極抵抗は2.5Ωであった。以上の条件における結果を表1に示した。

Figure 2019040675
混合工程におけるタングステン酸リチウム水溶液を噴霧して混合した全ての実施例では、タングステン酸リチウム水溶液を噴霧して混合しない比較例と比べると、電池の初期放電容量が高くなり、かつ正極抵抗も小さい値となった。
また、噴霧したタングステンのモル百分率が0.05〜0.15mol%の範囲である実施例1と、上記の範囲外である実施例11、12を比べると、実施例1の方が電池の初期放電容量が高く、正極抵抗も小さい値となった。よって、リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、0.05〜0.15mol%とすると、さらに電池の初期放電容量が高く、かつ正極抵抗も小さい値となることが分かった。
また、リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液の重量濃度が5〜20wt%である実施例1,6,7,8と上記の範囲外である実施例13を比べると、実施例1,6,7,8の方が電池の初期放電容量が高く、正極抵抗も小さい値となった。よって、リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液の重量濃度が5〜20wt%とすると、さらに電池の初期放電容量が高く、かつ正極抵抗も小さい値となることが分かった。
また、焼成工程における最高温度が650〜780℃である実施例1,2,3と上記の範囲外である実施例9,10を比べると、実施例1,2,3の方が電池の初期放電容量が高く、正極抵抗も小さい値となった。よって、焼成工程における最高温度が650〜780℃とすると、さらに電池の初期放電容量が高く、かつ正極抵抗も小さい値となることが分かった。
以上より、本発明の一実施形態に係る非水系二次電池用正極活物質の製造方法、遷移金属化合物によれば、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が小さく、かつ高容量化が得られる非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法及び遷移金属化合物を提供することができた。また、その製造方法は、容易で工業的規模での生産に適したものであり、その工業的価値は極めて大きい。
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また非水系二次電池用正極活物質の製造方法、遷移金属化合物の構成、動作も本発明の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
S1 混合工程、S2 乾燥工程、S3 焼成工程
1 2032型コイン電池、2 ケース、2a 正極缶、2b 負極缶、2c ガスケット、3 電極、3a 正極、3b 負極、3c セパレータ

Claims (11)

  1. 正極活物質の前駆体である遷移金属化合物から製造される非水系二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    少なくとも、一次粒子及びその一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなる前記遷移金属化合物と、リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液とを混合させ混合物を得る混合工程と、
    前記混合物を乾燥させ乾燥物を得る乾燥工程と、
    前記乾燥物とリチウム化合物とを混合し、焼成する焼成工程とを有し、
    前記混合工程では、前記リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液を噴霧して混合し、前記遷移金属化合物の表面の少なくとも一部をリチウム及びタングステンを含む化合物で被覆させることを特徴とする非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  2. 前記遷移金属化合物は、Ni、Co、M(Mは、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Mo、Nb、Zrから選択される1種以上の元素)を含むニッケル複合酸化物もしくはニッケル複合水酸化物のいずれか1つ又はその混合物であることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  3. 前記リチウム及びタングステンを含む化合物中のタングステンのモル百分率は、前記遷移金属化合物に含まれる前記Ni、Co及びMの合計のモル量に対し、0.05〜0.15mol%であることを特徴とする請求項2に記載の非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  4. 前記リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液の重量濃度は、前記遷移金属化合物の重量に対して、5〜20wt%であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  5. 前記リチウム及びタングステンを含む化合物の溶液は水溶液であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  6. 前記リチウム及びタングステンを含む化合物が、タングステン酸リチウムであり、
    前記タングステン酸リチウムの組成式がLiWOであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  7. 前記焼成工程で混合される前記リチウム化合物は、リチウム水酸化物、リチウムオキシ水酸化物、リチウム酸化物、リチウム炭酸塩、リチウム硝酸塩およびリチウムハロゲン化物から選ばれる少なくとも1種またはその混合物であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  8. 前記リチウム化合物におけるリチウムのモル比率は、前記遷移金属化合物のモル量に対して、0.98〜1.25であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  9. 前記焼成工程は、酸化性雰囲気で、最高温度が650℃以上、780℃以下で行われることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
  10. 得られた非水系二次電池用正極活物質が、一般式:LiNi1−x−yCoで表されることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の非水系二次電池用正極活物質の製造方法。
    (式中、Mは、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Nb、ZrおよびMoから選ばれる少なくとも1種の元素である。aは、0.95≦a≦1.11、xは0<x≦0.15、yは0<y≦0.07、x+y≦0.2、0.05≦z≦0.15を満たす数値である。)
  11. Ni、Co、M(Mは、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Mo、Nb、Zrから選択される1種以上の元素)を含む遷移金属化合物であって、
    前記遷移金属化合物は、ニッケル複合酸化物もしくはニッケル複合水酸化物のいずれか1つ又はその混合物であって、
    前記遷移金属化合物は、一次粒子及びその一次粒子が凝集して構成された二次粒子からなり、
    前記一次粒子及びその一次粒子が凝集して構成された二次粒子の表面の少なくとも一部がリチウム及びタングステンを含む化合物で被覆されていることを特徴とする遷移金属化合物。
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