本発明は、側出入口付近の側構体や側梁を補強する鉄道車両に関するものである。
台枠の側梁に接合される側構体には、大きな開口となる乗降用の側出入口が設けられる。これにより、側出入口付近の側構体の剛性がその他の部分に比べて低下すると、側出入口の縁を構成する入口柱の下端部から側梁へ付加される荷重が増加する。また、入口柱の上端部から側構体の一部へ付加される荷重も増加する。
その入口柱の端部から荷重が付加される部分が、外面板と内面板とを複数のウェブで連結したダブルスキン構造であり、軽量化のために外面板や内面板、ウェブを薄くする場合、入口柱からの局所的に大きな荷重に耐えることができないおそれがある。そこで従来、側出入口の下部の側梁の外面板に外側から補強部材を接合して側梁を補強したり、側出入口を囲むように側構体の内側に梁を設けて側構体を補強したりすることが開示されている(特許文献1)。
しかしながら、上記従来の技術では、側梁の一部に外側から補強部材を接合しているので、入口柱が接合される側梁を補強できる一方、側梁の一部が外側に張り出して外観を損なうという問題点がある。また、側出入口を囲むように側構体の内側に梁を設ける場合には、客室空間が狭くなるという問題点がある。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、客室空間を狭めることなく外観を損なわずに、入口柱の端部が当接する側梁または側構体を補強できる鉄道車両を提供することを目的とする。
この目的を達成するために本発明の鉄道車両は、枕木方向の両側に設けられる一対の側梁を有する台枠と、一対の前記側梁にそれぞれ接合される一対の側構体とを備え、前記側構体は、側出入口のレール方向の縁を構成して前記側梁に当接する入口柱を備え、前記側梁は、車体外側の外面板と、前記外面板に対向配置される内面板と、前記外面板および前記内面板を互いに連結するウェブとでレール方向の全長に亘って材質および断面形状が同一に形成される本体部と、前記入口柱の下端部が当接する補強部材と、を備え、前記本体部には、前記本体部の一部分が取り除かれた除去部が形成され、前記補強部材は、前記除去部に接合されると共に、取り除かれた前記一部分よりも高剛性である。
また、本発明の鉄道車両は、台枠の枕木方向の両側に設けられる一対の側構体を備え、前記側構体は、車体外側の外面板と、前記外面板に対向配置される内面板と、前記外面板および前記内面板を互いに連結するウェブとでレール方向の全長に亘って材質および断面形状が同一に形成される本体部と、前記本体部に貫通形成される側出入口のレール方向の縁を構成する入口柱と、前記入口柱の上端部が当接する補強部材と、を備え、前記本体部には、前記本体部の一部分が取り除かれた除去部が形成され、前記補強部材は、前記除去部に接合されると共に、取り除かれた前記一部分よりも高剛性である。
請求項1記載の鉄道車両によれば、側梁の本体部の一部分が取り除かれた除去部が本体部に形成され、その除去部に補強部材が接合される。そして、取り除かれた一部分よりも高剛性の補強部材に、側出入口のレール方向の縁を構成する入口柱の下端部が当接する。これにより、入口柱を受ける側梁の耐荷重を補強部材によって大きくできると共に、除去部に接合される補強部材を外面板や内面板から張り出さないようにできる。さらに、客室空間に面しない側梁を補強部材により補強するため、補強部材によって客室空間を狭めないようにできる。これらの結果、補強部材によって客室空間を狭めたり外観を損なったりすることなく、入口柱の下端部が当接する側梁を補強部材によって補強できる。
請求項2記載の鉄道車両によれば、側構体の本体部の一部分が取り除かれた除去部が本体部に形成され、その除去部に補強部材が接合される。そして、取り除かれた一部分よりも高剛性の補強部材に、側出入口のレール方向の縁を構成する入口柱の上端部が当接する。これにより、入口柱から荷重を受ける側構体の耐荷重を補強部材によって大きくできると共に、除去部に接合される補強部材を外面板や内面板から張り出さないようにできる。その結果、補強部材によって客室空間を狭めたり外観を損なったりすることなく、入口柱の上端部が当接する側構体を補強部材によって補強できる。
請求項3記載の鉄道車両によれば、補強部材のうち入口柱が当接する端部とは上下逆側の端部が、外面板または内面板とウェブとの連結点に接合される。これにより、入口柱から補強部材に付加される荷重を、外面板や内面板、ウェブ単体よりも高剛性の連結点で受けることができる。その結果、請求項1又は2の効果に加え、入口柱の端部が当接する側梁や側構体の耐荷重を補強部材によって大きくできる。
請求項4記載の鉄道車両によれば、補強部材は、レール方向に垂直な断面において、入口柱の端部に当接する一辺と、連結点に接合される部分と、その部分および一辺の枕木方向の両側の端縁同士をそれぞれ結んだ各辺と、で囲まれた部分が中実である。これにより、補強部材の断面2次モーメントを確保できるので、請求項3の効果に加え、入口柱の端部が当接する側梁や側構体の耐荷重を補強部材によってさらに大きくできる。
請求項5記載の鉄道車両によれば、複数の窓がレール方向に連続して取り付けられる窓開口が側構体を貫通するので、側構体の剛性が低くなり、入口柱の端部から側梁や側構体へ付加される荷重が大きくなる。しかし、補強部材を設けることで入口柱から側梁や側構体への大きな荷重に耐えることができる。よって、請求項1から4のいずれかの効果に加え、複数の窓を連続して取り付ける窓開口を設けても、側梁や側構体の耐荷重を補強部材によって確保できる。
一実施の形態における鉄道車両の側面図である。
図1のII−II線における鉄道車両の切断部端面図である。
図1のIII部分を拡大して示した鉄道車両の部分拡大図である。
図3のIV−IV線における鉄道車両の切断部端面図である。
(a)及び(b)は側梁の製造工程を示す説明図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して一実施の形態における鉄道車両1について説明する。図1は鉄道車両1の側面図である。図2は図1のII−II線における鉄道車両1の切断部端面図である。なお、各図面における矢印U方向が鉄道車両1の上方向であり、同様に、矢印D方向が鉄道車両1の下方向、矢印L−L方向が鉄道車両1のレール方向(車体長さ方向)、矢印W−W方向が鉄道車両1の枕木方向(車体幅方向)である。
図1及び図2に示すように、鉄道車両1は、台枠2と、その台枠2のレール方向両側にそれぞれ配置される妻構体4と、台枠2の枕木方向両側にそれぞれ配置される側構体5と、妻構体4及び側構体5の上部に架け渡される屋根構体6とを備える。これらの台枠2、妻構体4、側構体5及び屋根構体6が互いにミグ溶接やレーザー溶接などの溶接、又は、摩擦撹拌接合などの固相接合によって接合され、内部に客室空間を有する箱状の車体が構成される。以後、本実施の形態における接合とは、特に指示がない限り溶接や固相接合を示す。
台枠2は、枕木方向の両側縁に設けられると共にレール方向に延びて設けられる一対の側梁10と、一対の側梁10の上部に架け渡されて床下部分を構成する床板部材11とを備える。側梁10には、レール方向の全長に亘って側構体5が接合される。
側梁10及び床板部材11は、レール方向の全長に亘って断面形状が略同一のダブルスキン構造のアルミニウム合金で主に構成される。詳しくは、側梁10は、車体外側に面する外面板12と、その外面板12に対向配置される内面板13と、外面板12及び内面板13を互いに連結する複数のウェブ14とを備える。これらの外面板12と内面板13とウェブ14とからなる中空の押出形材により、レール方向の全長に亘って材質および断面形状が同一の本体部10aが構成される。
床板部材11も同様に、下面を構成する外面板15と、その外面板15に対向配置されて上面を構成する内面板16と、外面板15及び内面板16を互いに連結する複数のウェブ17とを備える。側梁10の内面板13と床板部材11の外面板15とが互いに連なり、側梁10の最も上側のウェブ14と床板部材11の内面板16とが互いに連なる。
また、側構体5も同様に、レール方向の全長に亘って断面形状が略同一のダブルスキン構造のアルミニウム合金で主に構成される。詳しくは、側構体5は、車体外側に面する外面板18と、その外面板18に対向配置される内面板19と、外面板18及び内面板19を互いに連結する複数のウェブ20とを備える。これらの外面板18と内面板19とウェブ20とからなる中空の押出形材により、レール方向の全長に亘って材質および断面形状が同一の本体部5aが構成される。
側構体5の本体部5aには、乗降用のドア23が取り付けられる側出入口26と、複数の窓27が取り付けられる窓開口28とが貫通形成される。側出入口26は、乗客用の出入口である。側出入口26には、引き戸としてのドア23が取り付けられる。
複数の窓27は、レール方向に連続して設けられる。そのため、窓開口28は、レール方向に長尺の開口となる。このようなレール方向に長尺の窓開口28に起因して側構体5の剛性が低下する。
そこで、窓27の客室側から窓開口28の上下を連結するように側構体5の内面板19に補強用の吹寄せ柱29を複数取り付けることで、特に窓開口28付近の側構体5の剛性を確保している。これにより、レール方向に連続した複数の窓27によるデザイン性と、吹寄せ柱29による側構体5の剛性の確保とを両立できる。
次に図3及び図4を参照して側出入口26の周辺について詳しく説明する。図3は図1のIII部分を拡大して示した鉄道車両1の部分拡大図である。図4は図3のIV−IV線における鉄道車両1の切断部端面図である。なお図4では、一対の側構体5の一方側のみを図示している。また図4では入口柱34の一部を省略して図示している。
図3及び図4に示すように、側構体5は、側出入口26の周縁を構成する出入口枠33を備える。出入口枠33は、アルミニウム合金製の四角枠である。出入口枠33は、側出入口26のレール方向の縁を構成する一対の入口柱34,35と、側出入口26の上側の縁を構成する鴨居部36と、側出入口の下側の縁を構成する敷居部37とを備え、各部が接合により一体化されている。入口柱35が窓開口28側に配置されている。
入口柱34,35と、鴨居部36や敷居部37との角は内縁が湾曲している。本実施の形態では、この内縁が湾曲した角も入口柱34,35の一部とし、図3に入口柱34,35と鴨居部36や敷居部37との境界Aを破線で示す。なお、入口柱34,35と、鴨居部36や敷居部37との角の内縁が屈曲していても良い。この場合には、入口柱34,35の側縁に沿って境界Aが設定される。
出入口枠33の入口柱34,35及び鴨居部36を側構体5の本体部5aに接合することによって、側構体5に出入口枠33及び側出入口26が形成される。また、側構体5を側梁10に接合するときには、入口柱34,35の下端部および敷居部37の下端も側梁10(本体部10a)に接合する。なお、側構体5の本体部5aや側梁10への出入口枠33の接合には、溶接や固相接合に限らず、ボルトやリベットによる機械的接合を用いても良い。
このようにして、側構体5には、大きな開口となる乗降用の側出入口26が設けられるため、側出入口26付近の側構体5の剛性がその他の部分に比べて低下する。そうすると、入口柱34,35の下端部から側梁10へ付加される荷重が大きくなる。また、入口柱34,35の上端部から側構体5の一部へ付加される荷重も大きくなる。ダブルスキン構造の側梁10や側構体5の軽量化または低コスト化のために、外面板12,18や内面板13,19、ウェブ14,20を薄くする場合、入口柱34,35の端部からの局所的に大きな荷重に側梁10や側構体5が耐えることができないおそれがある。
しかし本実施の形態では、側梁10は、入口柱34,35の下端部が当接して側梁10の耐荷重を大きくするための補強部材41を備えている。また、側構体5は、入口柱34,35の上端部が当接して側構体5の耐荷重を大きくするための補強部材51を備えている。ここで、図5(a)及び図5(b)を参照して補強部材41を有する側梁10の製造方法について説明する。図5(a)及び図5(b)は側梁10の製造工程を示す説明図である。
まず、上述したように、アルミニウム合金製の外面板12と内面板13とウェブ14とでレール方向の全長に亘って材質および断面形状が同一の本体部10aを形成する。次いで、図5(a)に示すように、入口柱34,35が接合される位置の本体部10aの一部分10bを取り除いて、側梁10(本体部10a)に除去部40を設ける。詳しくは、入口柱34,35が接合される位置の本体部10aにおいて、最も上側のウェブ14の外面板12側と、上から2番目のウェブ14と外面板12との連結点42よりも上方の外面板12とを取り除いて、除去部40を設ける。
次いで、除去部40に合う形状の補強部材41を用意し、図5(b)に示すように、除去部40に補強部材41を嵌めるようにして、除去部40内に補強部材41を配置する。その後、接合工具43によって補強部材41を除去部40(本体部10a)に接合する。詳しくは、連結点42に補強部材41の下端が接合され、最も上側のウェブ14の床板部材11側に補強部材41の上端が接合される。また、補強部材41のレール方向の端部が、レール方向に隣接する本体部10a(外面板12及びウェブ14)に接合される。
図3及び図4に戻って説明する。上述したように、本体部10aの一部分10b(図5(a)参照)が取り除かれた除去部40が本体部10aに形成され、その除去部40に補強部材41が接合されている。補強部材41は、取り除かれた一部分10bよりも高剛性かつ高強度である。なお、本体部10aの断面形状はレール方向の全長に亘って同一なので、除去部40の形状を見れば、取り除かれた一部分10bの形状は正確に把握できる。さらに、本体部10aの材質もレール方向の全長に亘って同一なので、取り除かれた一部分10bの材質も把握できる。これらの結果、取り除かれた一部分10bの剛性(ヤング率)を計算できる。
このように、取り除かれた一部分10bよりも高剛性の補強部材41によって、入口柱34,35の下端部が接合される側梁10の耐荷重を大きくできるので、入口柱34,35から側梁10への荷重の集中に耐えることができる。さらに、本体部10aの一部分10bが取り除かれた除去部40に補強部材41を接合しているので、外面板12や内面板13から補強部材41を張り出さないようにできる。また、客室空間に面しない側梁10を補強部材41により補強するため、補強部材41によって客室空間を狭めないようにできる。これらの結果、補強部材41によって客室空間を狭めたり側梁10の外観を損なったりすることなく、入口柱34,35が接合される側梁10を補強できる。
また、補強部材41を有する側梁10の製造方法と同様にして、補強部材51を有する側構体5が製造される。詳しくは、側構体5の本体部5aの一部分5bが取り除かれた除去部50が本体部5aに形成され、その除去部50に補強部材51が接合される。
補強部材51は、取り除かれた一部分5bよりも高剛性かつ高強度である。なお、本体部5aの断面形状はレール方向の全長に亘って同一なので、除去部50の形状を見れば、取り除かれた一部分5bの形状は正確に把握できる。さらに、本体部5aの材質もレール方向の全長に亘って同一なので、取り除かれた一部分5bの材質も把握できる。これらの結果、取り除かれた一部分5bの剛性(ヤング率)を計算できる。
このように、取り除かれた一部分5bよりも高剛性の補強部材51によって、入口柱34,35の上端部が接合される側構体5の耐荷重を大きくできるので、入口柱34,35から側構体5への荷重の集中に耐えることができる。さらに、本体部5aの一部分5bが取り除かれた除去部50に補強部材51を接合しているので、外面板18や内面板19から補強部材51を張り出さないようにできる。これらの結果、補強部材51によって客室空間を狭めたり側構体5の外観を損なったりすることなく、入口柱34,35が接合される側構体5を補強できる。
特に、側構体5には、複数の窓27がレール方向に連続して取り付けられる窓開口28が貫通形成されているので、側構体5の剛性がさらに低くなり、入口柱34,35の上下端部から側梁10や側構体5へ付加される荷重がさらに大きくなる。また、ダブルスキン構造の本体部5aに側出入口26や窓開口28が貫通形成されるので、側構体5全体の剛性が低くなり易く、入口柱34,35の端部から側梁10や側構体5へ付加される荷重が大きくなり易い。
しかし、補強部材41,51の剛性を適切に調整することによって、入口柱34,35の端部から側梁10や側構体5への大きな荷重に耐えることができる。よって、複数の窓27が連続して取り付けられる窓開口28を設けたり、ダブルスキン構造の本体部5aに側出入口26や窓開口28を設けたりしても、入口柱34,35の端部が接合される側梁10や側構体5の耐荷重を補強部材41,51によって確保できる。
補強部材41,51は、本体部10a,5a(一部分10b,5b)と略同一材質のアルミニウム合金から構成される。このように接合される部材同士の材質を略同一にすることで、接合される部材同士の材質が異なる場合に比べて、接合条件などを簡易にでき、接合作業を容易にできる。
なお本実施の形態では、補強部材41,51のアルミニウム合金は、本体部10a,5aのアルミニウム合金と僅かに成分が異なり、本体部10a,5aのアルミニウム合金に比べて強度が高く設定されている。これにより、本体部10a,5aと同強度のアルミニウム合金を補強部材41,51に用いる場合に比べて、入口柱34,35の端部が接合される側梁10や側構体5の耐荷重をより大きくできる。
補強部材41は、レール方向に垂直な断面において、入口柱34,35の下端部が当接する一辺44と、連結点42に接合される部分45と、その部分45及び一辺44の枕木方向の両側の端縁同士をそれぞれ結んだ各辺46,47と、で囲まれた部分が少なくとも中実である略三角形状の部材である。また、補強部材51は、レール方向に垂直な断面において、四角形状の中実材料である。詳しくは、補強部材51は、レール方向に垂直な断面において、入口柱34,35の上端部が当接する一辺53と、ウェブ20及び内面板19の連結点52に接合される部分54と、その部分54及び一辺53の枕木方向の両側の端縁同士をそれぞれ結んだ各辺55,56と、で囲まれた部分が少なくとも中実である。なお、辺47,55は一点鎖線で図4に図示される仮想線である。
これにより、補強部材41,51の断面2次モーメントを、取り除かれた一部分10b,5bの断面2次モーメントよりも大きくできる。そのため、補強部材41,51の材質が本体部10a,5a(一部分10b,5b)と完全同一でも、取り除かれた一部分10b,5bより補強部材41,51を高剛性にできる。
但しこの場合、取り除かれた一部分10b,5bよりも補強部材41,51が重くなる。しかし、補強部材41,51が設けられる部分は、側梁10や側構体5のうち入口柱34,35の端部が接合される一部のみなので、補強部材41,51を設けずに本体部10a,5aの断面積をレール方向の全長に亘って大きくする場合や、レール方向の全長に亘って補強部材41,51を設ける場合に比べて、側梁10や側構体5を軽量化できる。
また、本体部10a,5aよりも高剛性の金属から補強部材41,51を構成した場合において、補強部材41,51の断面2次モーメントを大きくすることにより、補強部材41,51の剛性をさらに高くできる。その結果、入口柱34,35の端部が接合される側梁10や側構体5の耐荷重を補強部材41,51によってさらに大きくできる。
さらに、補強部材41の下端が連結点42に接合されている。また、補強部材51の上端の一部は、ウェブ20と内面板19との連結点52に接合されている。これにより、入口柱34,35から付加される荷重を、外面板12,18や内面板13,19、ウェブ14,20単体よりも高剛性の連結点42,52で受けることができる。その結果、入口柱34,35の端部が接合される側梁10や側構体5の耐荷重を補強部材41,51によってより大きくできる。
レール方向に垂直な断面において、鉄道車両1の車体外側の外形線は、補強部材41,51と、取り除かれた一部分10b,5b(一部分10b,5bや補強部材41,51に対してレール方向に隣接する本体部10a,5a)とで同一に設定される。これにより、一部分10b,5bが取り除かれた除去部40,50に補強部材41,51を配置しても、側梁10や側構体5の外観を、除去部40,50及び補強部材41,51がない場合と略同一にできる。
図3に示すように、補強部材41,51のレール方向寸法は、入口柱34,35の端部のレール方向寸法よりも大きく設定されている。これにより、入口柱34,35から補強部材41,51を介して本体部10a,5aに付加される荷重を広い範囲に分散させることができる。その結果、入口柱34,35の端部が接合される側梁10や側構体5の耐荷重を大きくでき、側梁10及び側構体5の剛性を十分に確保できる。
さらに、補強部材41のレール方向寸法が入口柱34,35の下端部のレール方向寸法よりも大きいので、補強部材41の一部を側構体5の本体部5aに接合することができる。これにより、本体部5aと入口柱34,35とのレール方向の境界に対して、補強部材41と本体部10aとのレール方向の境界をレール方向にずらすことができる。また、補強部材51のレール方向寸法が入口柱34,35の上端部のレール方向寸法よりも大きいので、本体部5aと入口柱34,35とのレール方向の境界に対して、補強部材51と本体部5aとのレール方向の境界をレール方向にずらすことができる。これらの結果、本体部5aと入口柱34,35との境界や、補強部材41,51と本体部10a,5aとのレール方向の境界にせん断応力を生じ難くできる。
以上、上記各実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、台枠2、側構体5、側出入口26、窓開口28、出入口枠33、補強部材41,51等の各部形状や各部寸法を適宜変更しても良い。また、敷居部37を省略して出入口枠33をコ字状に形成しても良い。
また、補強部材41,51には、本体部10a,5aに接合される端縁に面取りを施しても良い。この面取りによって、補強部材41,51と本体部10a,5aとを溶接するときには、溶接時の溶け込み量を確保できる。その結果、補強部材41,51と本体部10a,5aとの接合強度を確保できる。
上記一実施の形態では、入口柱34,35の下端部に当接する補強部材41が側梁10に設けられ、入口柱34,35の上端部に当接する補強部材51が側構体5に設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。補強部材51を設けずに補強部材41のみを設けたり、補強部材41を設けずに補強部材51のみを設けたりしても良い。補強部材51を設けない場合には、側構体5をシングルスキン構造としても良い。また、補強部材41を設けない場合には、側梁10(台枠2)をシングルスキン構造としても良い。
上記一実施の形態では、先頭構体を有しない鉄道車両1(中間車両)について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。先頭構体を有する鉄道車両1(先頭車両)に本発明を適用しても良い。
上記一実施の形態では、鉄道車両1の側構体5に乗客用の側出入口26が1箇所のみ設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。側構体5の複数箇所に側出入口26を設けても良い。また、乗務員用の側出入口を側構体5に1箇所以上設けても良い。乗務員用の側出入口は、側出入口26よりもレール方向寸法が小さいので、側出入口26付近の側構体5の剛性に比べて、乗務員用の側出入口付近の側構体5の剛性が高くなる。そのため、乗務員用の側出入口の縁を構成する出入口枠の2つの入口柱のうち、一方の入口柱の端部に補強部材41,51を設けることで、乗務員用の側出入口付近の側構体5や側梁10の剛性を十分に確保できる。また、乗務員用の側出入口の縁を構成する出入口枠の2つの入口柱のいずれにも補強部材41,51を当接させて、側構体5や側梁10の剛性をさらに高めても良い。
なお、乗務員用の側出入口の側縁を構成する2つの入口柱のうち、いずれの入口柱の端部に補強部材41,51を設けるかは、その2つの入口柱の周囲の構造に応じて決定すれば良い。また、乗客用の側出入口26付近の剛性によっては、2つの入口柱34,35のうちいずれか一方の端部のみに補強部材41,51を設けても良い。例えば、ダブルスキン構造の側構体5よりも剛性が低いシングルスキン構造から先頭構体が構成され、その先頭構体付近に配置される側出入口付近においては、剛性が低い先頭構体側の入口柱の端部に補強部材41,51を設けることが好ましい。また、妻構体4が台枠2に略垂直に設けられると、妻構体4付近の側構体5の剛性が高くなるので、妻構体4により剛性が高くなる位置の側構体5に側出入口を設ける場合、妻構体4とは反対側の入口柱の端部に補強部材41,51を設けることが好ましい。これらの結果、入口柱の端部が当接する側梁10や側構体5の耐荷重を補強部材によって十分に補強できる。
上記一実施の形態では、本体部10a(一部分10b)と補強部材41とが略同一材質である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。本体部10aの材質よりも高剛性の金属から補強部材41を構成しても良い。この場合、取り除かれた一部分10bと同一形状に補強部材41を形成しても良い。また、補強部材41の断面2次モーメントを大きくして、取り除かれた一部分10bの剛性よりも補強部材41の剛性が高ければ、本体部10aの材質よりも低剛性の金属から補強部材41を構成しても良い。
上記一実施の形態では、側梁10の外面板12やウェブ14の一部分10bを取り除いて除去部40を形成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。外面板12やウェブ14だけでなく内面板13の一部分を取り除いて除去部40を形成し、レール方向に垂直な断面が略四角形状の補強部材41を除去部40に接合しても良い。さらにこの場合、外面板12とウェブ14との連結点42だけでなく、内面板13とウェブ14との連結点にも四角形状の補強部材41の下端を接合しても良い。
また、側梁10や床板部材11、側構体5の形状、入口柱34,35と側梁10や側構体5との位置関係によっては、ウェブ14,20の一部分を取り除いて除去部40,50を設けたり、内面板13,19及びウェブ14,20の一部分を取り除いて除去部40,50を設けたりしても良い。さらに、外面板12,18をそのままに、内面板13,19及びウェブ14,20の一部分を取り除いて除去部40,50を設けることで、側梁10や側構体5の外観を全く変えないようにできる。また、内面板13,19及びウェブ14,20の一部分を取り除いて除去部40,50を設けた場合、補強部材41,51を内面板13,19とウェブ14,20との連結点に接合しても良い。
上記一実施の形態では、入口柱34,35の下端部が側梁10の補強部材41及び本体部10aに接合される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。入口柱34,35を有する側構体5が入口柱34,35以外の部分で側梁10に接合されていれば、入口柱34,35を補強部材41及び本体部10aに接合しなくても良い。なお、入口柱34,35を補強部材41及び本体部10aで受けるため、入口柱34,35を補強部材41及び本体部10aに当接させる必要がある。また同様に、入口柱34,35の上端部を側構体5の補強部材51に接合せず、入口柱34,35の上端部を補強部材51に当接させても良い。
上記一実施の形態では、レール方向に複数の窓27が連続した状態で窓開口28に取り付けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。複数の窓27に個別に窓開口28を設け、複数の窓27同士を離しても良い。
上記一実施の形態では、入口柱34の端部に当接する補強部材41,51と、入口柱35の端部に当接する補強部材41,51とがレール方向に離れている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。レール方向に離れた補強部材41同士、補強部材51同士を一体に構成し、側出入口26の上下に亘って補強部材41,51を設けても良い。
1 鉄道車両
2 台枠
5 側構体
5a,10a 本体部
5b,10b 一部分
10 側梁
12,18 外面板
13,19 内面板
14,20 ウェブ
26 側出入口
27 窓
28 窓開口
34,35 入口柱
40,50 除去部
41,51 補強部材
42,52 連結点
44,53 一辺
45,54 部分
46,47,55,56 辺
本発明は、側出入口付近の側構体や側梁を補強する鉄道車両に関するものである。
台枠の側梁に接合される側構体には、大きな開口となる乗降用の側出入口が設けられる。これにより、側出入口付近の側構体の剛性がその他の部分に比べて低下すると、側出入口の縁を構成する入口柱の下端部から側梁へ付加される荷重が増加する。また、入口柱の上端部から側構体の一部へ付加される荷重も増加する。
その入口柱の端部から荷重が付加される部分が、外面板と内面板とを複数のウェブで連結したダブルスキン構造であり、軽量化のために外面板や内面板、ウェブを薄くする場合、入口柱からの局所的に大きな荷重に耐えることができないおそれがある。そこで従来、側出入口の下部の側梁の外面板に外側から補強部材を接合して側梁を補強したり、側出入口を囲むように側構体の内側に梁を設けて側構体を補強したりすることが開示されている(特許文献1)。
しかしながら、上記従来の技術では、側梁の一部に外側から補強部材を接合しているので、入口柱が接合される側梁を補強できる一方、側梁の一部が外側に張り出して外観を損なうという問題点がある。また、側出入口を囲むように側構体の内側に梁を設ける場合には、客室空間が狭くなるという問題点がある。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、客室空間を狭めることなく外観を損なわずに、入口柱の端部が当接する側梁または側構体を補強できる鉄道車両を提供することを目的とする。
この目的を達成するために本発明の鉄道車両は、枕木方向の両側に設けられる一対の側梁を有する台枠と、一対の前記側梁にそれぞれ接合される一対の側構体とを備え、前記側構体は、側出入口のレール方向の縁を構成して前記側梁に当接する入口柱を備え、前記側梁は、車体外側の外面板と、前記外面板に対向配置される内面板と、前記外面板および前記内面板を互いに連結するウェブとでレール方向の全長に亘って材質および断面形状が同一に形成される本体部と、前記入口柱の下端部が当接する補強部材と、を備え、前記本体部には、前記本体部の一部分が取り除かれた除去部があり、前記補強部材は、前記除去部に接合されていると共に、前記除去部の形状に基づく前記一部分の剛性よりも高剛性である。
また、本発明の鉄道車両は、台枠の枕木方向の両側に設けられる一対の側構体を備え、前記側構体は、車体外側の外面板と、前記外面板に対向配置される内面板と、前記外面板および前記内面板を互いに連結するウェブとでレール方向の全長に亘って材質および断面形状が同一に形成される本体部と、前記本体部に貫通形成される側出入口のレール方向の縁を構成する入口柱と、前記入口柱の上端部が当接する補強部材と、を備え、前記本体部には、前記本体部の一部分が取り除かれた除去部があり、前記補強部材は、前記除去部に接合されていると共に、前記除去部の形状に基づく前記一部分の剛性よりも高剛性である。
請求項1記載の鉄道車両によれば、側梁の本体部の一部分が取り除かれた除去部が本体部にあり、その除去部に補強部材が接合されている。そして、除去部の形状に基づく一部分の剛性よりも高剛性の補強部材に、側出入口のレール方向の縁を構成する入口柱の下端部が当接する。これにより、入口柱を受ける側梁の耐荷重を補強部材によって大きくできると共に、除去部に接合される補強部材を外面板や内面板から張り出さないようにできる。さらに、客室空間に面しない側梁を補強部材により補強するため、補強部材によって客室空間を狭めないようにできる。これらの結果、補強部材によって客室空間を狭めたり外観を損なったりすることなく、入口柱の下端部が当接する側梁を補強部材によって補強できる。
請求項2記載の鉄道車両によれば、側構体の本体部の一部分が取り除かれた除去部が本体部にあり、その除去部に補強部材が接合されている。そして、除去部の形状に基づく一部分の剛性よりも高剛性の補強部材に、側出入口のレール方向の縁を構成する入口柱の上端部が当接する。これにより、入口柱から荷重を受ける側構体の耐荷重を補強部材によって大きくできると共に、除去部に接合される補強部材を外面板や内面板から張り出さないようにできる。その結果、補強部材によって客室空間を狭めたり外観を損なったりすることなく、入口柱の上端部が当接する側構体を補強部材によって補強できる。
請求項3記載の鉄道車両によれば、補強部材のうち入口柱が当接する端部とは上下逆側の端部が、外面板または内面板とウェブとの連結点に接合される。これにより、入口柱から補強部材に付加される荷重を、外面板や内面板、ウェブ単体よりも高剛性の連結点で受けることができる。その結果、請求項1又は2の効果に加え、入口柱の端部が当接する側梁や側構体の耐荷重を補強部材によって大きくできる。
請求項4記載の鉄道車両によれば、補強部材は、レール方向に垂直な断面において、入口柱の端部に当接する一辺と、連結点に接合される部分と、その部分および一辺の枕木方向の両側の端縁同士をそれぞれ結んだ各辺と、で囲まれた部分が中実である。これにより、補強部材の断面2次モーメントを確保できるので、請求項3の効果に加え、入口柱の端部が当接する側梁や側構体の耐荷重を補強部材によってさらに大きくできる。
請求項5記載の鉄道車両によれば、複数の窓がレール方向に連続して取り付けられる窓開口が側構体を貫通するので、側構体の剛性が低くなり、入口柱の端部から側梁や側構体へ付加される荷重が大きくなる。しかし、補強部材を設けることで入口柱から側梁や側構体への大きな荷重に耐えることができる。よって、請求項1から4のいずれかの効果に加え、複数の窓を連続して取り付ける窓開口を設けても、側梁や側構体の耐荷重を補強部材によって確保できる。
一実施の形態における鉄道車両の側面図である。
図1のII−II線における鉄道車両の切断部端面図である。
図1のIII部分を拡大して示した鉄道車両の部分拡大図である。
図3のIV−IV線における鉄道車両の切断部端面図である。
(a)及び(b)は側梁の製造工程を示す説明図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して一実施の形態における鉄道車両1について説明する。図1は鉄道車両1の側面図である。図2は図1のII−II線における鉄道車両1の切断部端面図である。なお、各図面における矢印U方向が鉄道車両1の上方向であり、同様に、矢印D方向が鉄道車両1の下方向、矢印L−L方向が鉄道車両1のレール方向(車体長さ方向)、矢印W−W方向が鉄道車両1の枕木方向(車体幅方向)である。
図1及び図2に示すように、鉄道車両1は、台枠2と、その台枠2のレール方向両側にそれぞれ配置される妻構体4と、台枠2の枕木方向両側にそれぞれ配置される側構体5と、妻構体4及び側構体5の上部に架け渡される屋根構体6とを備える。これらの台枠2、妻構体4、側構体5及び屋根構体6が互いにミグ溶接やレーザー溶接などの溶接、又は、摩擦撹拌接合などの固相接合によって接合され、内部に客室空間を有する箱状の車体が構成される。以後、本実施の形態における接合とは、特に指示がない限り溶接や固相接合を示す。
台枠2は、枕木方向の両側縁に設けられると共にレール方向に延びて設けられる一対の側梁10と、一対の側梁10の上部に架け渡されて床下部分を構成する床板部材11とを備える。側梁10には、レール方向の全長に亘って側構体5が接合される。
側梁10及び床板部材11は、レール方向の全長に亘って断面形状が略同一のダブルスキン構造のアルミニウム合金で主に構成される。詳しくは、側梁10は、車体外側に面する外面板12と、その外面板12に対向配置される内面板13と、外面板12及び内面板13を互いに連結する複数のウェブ14とを備える。これらの外面板12と内面板13とウェブ14とからなる中空の押出形材により、レール方向の全長に亘って材質および断面形状が同一の本体部10aが構成される。
床板部材11も同様に、下面を構成する外面板15と、その外面板15に対向配置されて上面を構成する内面板16と、外面板15及び内面板16を互いに連結する複数のウェブ17とを備える。側梁10の内面板13と床板部材11の外面板15とが互いに連なり、側梁10の最も上側のウェブ14と床板部材11の内面板16とが互いに連なる。
また、側構体5も同様に、レール方向の全長に亘って断面形状が略同一のダブルスキン構造のアルミニウム合金で主に構成される。詳しくは、側構体5は、車体外側に面する外面板18と、その外面板18に対向配置される内面板19と、外面板18及び内面板19を互いに連結する複数のウェブ20とを備える。これらの外面板18と内面板19とウェブ20とからなる中空の押出形材により、レール方向の全長に亘って材質および断面形状が同一の本体部5aが構成される。
側構体5の本体部5aには、乗降用のドア23が取り付けられる側出入口26と、複数の窓27が取り付けられる窓開口28とが貫通形成される。側出入口26は、乗客用の出入口である。側出入口26には、引き戸としてのドア23が取り付けられる。
複数の窓27は、レール方向に連続して設けられる。そのため、窓開口28は、レール方向に長尺の開口となる。このようなレール方向に長尺の窓開口28に起因して側構体5の剛性が低下する。
そこで、窓27の客室側から窓開口28の上下を連結するように側構体5の内面板19に補強用の吹寄せ柱29を複数取り付けることで、特に窓開口28付近の側構体5の剛性を確保している。これにより、レール方向に連続した複数の窓27によるデザイン性と、吹寄せ柱29による側構体5の剛性の確保とを両立できる。
次に図3及び図4を参照して側出入口26の周辺について詳しく説明する。図3は図1のIII部分を拡大して示した鉄道車両1の部分拡大図である。図4は図3のIV−IV線における鉄道車両1の切断部端面図である。なお図4では、一対の側構体5の一方側のみを図示している。また図4では入口柱34の一部を省略して図示している。
図3及び図4に示すように、側構体5は、側出入口26の周縁を構成する出入口枠33を備える。出入口枠33は、アルミニウム合金製の四角枠である。出入口枠33は、側出入口26のレール方向の縁を構成する一対の入口柱34,35と、側出入口26の上側の縁を構成する鴨居部36と、側出入口の下側の縁を構成する敷居部37とを備え、各部が接合により一体化されている。入口柱35が窓開口28側に配置されている。
入口柱34,35と、鴨居部36や敷居部37との角は内縁が湾曲している。本実施の形態では、この内縁が湾曲した角も入口柱34,35の一部とし、図3に入口柱34,35と鴨居部36や敷居部37との境界Aを破線で示す。なお、入口柱34,35と、鴨居部36や敷居部37との角の内縁が屈曲していても良い。この場合には、入口柱34,35の側縁に沿って境界Aが設定される。
出入口枠33の入口柱34,35及び鴨居部36を側構体5の本体部5aに接合することによって、側構体5に出入口枠33及び側出入口26が形成される。また、側構体5を側梁10に接合するときには、入口柱34,35の下端部および敷居部37の下端も側梁10(本体部10a)に接合する。なお、側構体5の本体部5aや側梁10への出入口枠33の接合には、溶接や固相接合に限らず、ボルトやリベットによる機械的接合を用いても良い。
このようにして、側構体5には、大きな開口となる乗降用の側出入口26が設けられるため、側出入口26付近の側構体5の剛性がその他の部分に比べて低下する。そうすると、入口柱34,35の下端部から側梁10へ付加される荷重が大きくなる。また、入口柱34,35の上端部から側構体5の一部へ付加される荷重も大きくなる。ダブルスキン構造の側梁10や側構体5の軽量化または低コスト化のために、外面板12,18や内面板13,19、ウェブ14,20を薄くする場合、入口柱34,35の端部からの局所的に大きな荷重に側梁10や側構体5が耐えることができないおそれがある。
しかし本実施の形態では、側梁10は、入口柱34,35の下端部が当接して側梁10の耐荷重を大きくするための補強部材41を備えている。また、側構体5は、入口柱34,35の上端部が当接して側構体5の耐荷重を大きくするための補強部材51を備えている。ここで、図5(a)及び図5(b)を参照して補強部材41を有する側梁10の製造方法について説明する。図5(a)及び図5(b)は側梁10の製造工程を示す説明図である。
まず、上述したように、アルミニウム合金製の外面板12と内面板13とウェブ14とでレール方向の全長に亘って材質および断面形状が同一の本体部10aを形成する。次いで、図5(a)に示すように、入口柱34,35が接合される位置の本体部10aの一部分10bを取り除いて、側梁10(本体部10a)に除去部40を設ける。詳しくは、入口柱34,35が接合される位置の本体部10aにおいて、最も上側のウェブ14の外面板12側と、上から2番目のウェブ14と外面板12との連結点42よりも上方の外面板12とを取り除いて、除去部40を設ける。
次いで、除去部40に合う形状の補強部材41を用意し、図5(b)に示すように、除去部40に補強部材41を嵌めるようにして、除去部40内に補強部材41を配置する。その後、接合工具43によって補強部材41を除去部40(本体部10a)に接合する。詳しくは、連結点42に補強部材41の下端が接合され、最も上側のウェブ14の床板部材11側に補強部材41の上端が接合される。また、補強部材41のレール方向の端部が、レール方向に隣接する本体部10a(外面板12及びウェブ14)に接合される。
図3及び図4に戻って説明する。上述したように、本体部10aの一部分10b(図5(a)参照)が取り除かれた除去部40が本体部10aに形成され、その除去部40に補強部材41が接合されている。補強部材41は、取り除かれた一部分10bよりも高剛性かつ高強度である。なお、本体部10aの断面形状はレール方向の全長に亘って同一なので、除去部40の形状を見れば、取り除かれた一部分10bの形状は正確に把握できる。さらに、本体部10aの材質もレール方向の全長に亘って同一なので、取り除かれた一部分10bの材質も把握できる。これらの結果、取り除かれた一部分10bの剛性(ヤング率)を計算できる。
このように、取り除かれた一部分10bよりも高剛性の補強部材41によって、入口柱34,35の下端部が接合される側梁10の耐荷重を大きくできるので、入口柱34,35から側梁10への荷重の集中に耐えることができる。さらに、本体部10aの一部分10bが取り除かれた除去部40に補強部材41を接合しているので、外面板12や内面板13から補強部材41を張り出さないようにできる。また、客室空間に面しない側梁10を補強部材41により補強するため、補強部材41によって客室空間を狭めないようにできる。これらの結果、補強部材41によって客室空間を狭めたり側梁10の外観を損なったりすることなく、入口柱34,35が接合される側梁10を補強できる。
また、補強部材41を有する側梁10の製造方法と同様にして、補強部材51を有する側構体5が製造される。詳しくは、側構体5の本体部5aの一部分5bが取り除かれた除去部50が本体部5aに形成され、その除去部50に補強部材51が接合される。
補強部材51は、取り除かれた一部分5bよりも高剛性かつ高強度である。なお、本体部5aの断面形状はレール方向の全長に亘って同一なので、除去部50の形状を見れば、取り除かれた一部分5bの形状は正確に把握できる。さらに、本体部5aの材質もレール方向の全長に亘って同一なので、取り除かれた一部分5bの材質も把握できる。これらの結果、取り除かれた一部分5bの剛性(ヤング率)を計算できる。
このように、取り除かれた一部分5bよりも高剛性の補強部材51によって、入口柱34,35の上端部が接合される側構体5の耐荷重を大きくできるので、入口柱34,35から側構体5への荷重の集中に耐えることができる。さらに、本体部5aの一部分5bが取り除かれた除去部50に補強部材51を接合しているので、外面板18や内面板19から補強部材51を張り出さないようにできる。これらの結果、補強部材51によって客室空間を狭めたり側構体5の外観を損なったりすることなく、入口柱34,35が接合される側構体5を補強できる。
特に、側構体5には、複数の窓27がレール方向に連続して取り付けられる窓開口28が貫通形成されているので、側構体5の剛性がさらに低くなり、入口柱34,35の上下端部から側梁10や側構体5へ付加される荷重がさらに大きくなる。また、ダブルスキン構造の本体部5aに側出入口26や窓開口28が貫通形成されるので、側構体5全体の剛性が低くなり易く、入口柱34,35の端部から側梁10や側構体5へ付加される荷重が大きくなり易い。
しかし、補強部材41,51の剛性を適切に調整することによって、入口柱34,35の端部から側梁10や側構体5への大きな荷重に耐えることができる。よって、複数の窓27が連続して取り付けられる窓開口28を設けたり、ダブルスキン構造の本体部5aに側出入口26や窓開口28を設けたりしても、入口柱34,35の端部が接合される側梁10や側構体5の耐荷重を補強部材41,51によって確保できる。
補強部材41,51は、本体部10a,5a(一部分10b,5b)と略同一材質のアルミニウム合金から構成される。このように接合される部材同士の材質を略同一にすることで、接合される部材同士の材質が異なる場合に比べて、接合条件などを簡易にでき、接合作業を容易にできる。
なお本実施の形態では、補強部材41,51のアルミニウム合金は、本体部10a,5aのアルミニウム合金と僅かに成分が異なり、本体部10a,5aのアルミニウム合金に比べて強度が高く設定されている。これにより、本体部10a,5aと同強度のアルミニウム合金を補強部材41,51に用いる場合に比べて、入口柱34,35の端部が接合される側梁10や側構体5の耐荷重をより大きくできる。
補強部材41は、レール方向に垂直な断面において、入口柱34,35の下端部が当接する一辺44と、連結点42に接合される部分45と、その部分45及び一辺44の枕木方向の両側の端縁同士をそれぞれ結んだ各辺46,47と、で囲まれた部分が少なくとも中実である略三角形状の部材である。また、補強部材51は、レール方向に垂直な断面において、四角形状の中実材料である。詳しくは、補強部材51は、レール方向に垂直な断面において、入口柱34,35の上端部が当接する一辺53と、ウェブ20及び内面板19の連結点52に接合される部分54と、その部分54及び一辺53の枕木方向の両側の端縁同士をそれぞれ結んだ各辺55,56と、で囲まれた部分が少なくとも中実である。なお、辺47,55は一点鎖線で図4に図示される仮想線である。
これにより、補強部材41,51の断面2次モーメントを、取り除かれた一部分10b,5bの断面2次モーメントよりも大きくできる。そのため、補強部材41,51の材質が本体部10a,5a(一部分10b,5b)と完全同一でも、取り除かれた一部分10b,5bより補強部材41,51を高剛性にできる。
但しこの場合、取り除かれた一部分10b,5bよりも補強部材41,51が重くなる。しかし、補強部材41,51が設けられる部分は、側梁10や側構体5のうち入口柱34,35の端部が接合される一部のみなので、補強部材41,51を設けずに本体部10a,5aの断面積をレール方向の全長に亘って大きくする場合や、レール方向の全長に亘って補強部材41,51を設ける場合に比べて、側梁10や側構体5を軽量化できる。
また、本体部10a,5aよりも高剛性の金属から補強部材41,51を構成した場合において、補強部材41,51の断面2次モーメントを大きくすることにより、補強部材41,51の剛性をさらに高くできる。その結果、入口柱34,35の端部が接合される側梁10や側構体5の耐荷重を補強部材41,51によってさらに大きくできる。
さらに、補強部材41の下端が連結点42に接合されている。また、補強部材51の上端の一部は、ウェブ20と内面板19との連結点52に接合されている。これにより、入口柱34,35から付加される荷重を、外面板12,18や内面板13,19、ウェブ14,20単体よりも高剛性の連結点42,52で受けることができる。その結果、入口柱34,35の端部が接合される側梁10や側構体5の耐荷重を補強部材41,51によってより大きくできる。
レール方向に垂直な断面において、鉄道車両1の車体外側の外形線は、補強部材41,51と、取り除かれた一部分10b,5b(一部分10b,5bや補強部材41,51に対してレール方向に隣接する本体部10a,5a)とで同一に設定される。これにより、一部分10b,5bが取り除かれた除去部40,50に補強部材41,51を配置しても、側梁10や側構体5の外観を、除去部40,50及び補強部材41,51がない場合と略同一にできる。
図3に示すように、補強部材41,51のレール方向寸法は、入口柱34,35の端部のレール方向寸法よりも大きく設定されている。これにより、入口柱34,35から補強部材41,51を介して本体部10a,5aに付加される荷重を広い範囲に分散させることができる。その結果、入口柱34,35の端部が接合される側梁10や側構体5の耐荷重を大きくでき、側梁10及び側構体5の剛性を十分に確保できる。
さらに、補強部材41のレール方向寸法が入口柱34,35の下端部のレール方向寸法よりも大きいので、補強部材41の一部を側構体5の本体部5aに接合することができる。これにより、本体部5aと入口柱34,35とのレール方向の境界に対して、補強部材41と本体部10aとのレール方向の境界をレール方向にずらすことができる。また、補強部材51のレール方向寸法が入口柱34,35の上端部のレール方向寸法よりも大きいので、本体部5aと入口柱34,35とのレール方向の境界に対して、補強部材51と本体部5aとのレール方向の境界をレール方向にずらすことができる。これらの結果、本体部5aと入口柱34,35との境界や、補強部材41,51と本体部10a,5aとのレール方向の境界にせん断応力を生じ難くできる。
以上、上記各実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、台枠2、側構体5、側出入口26、窓開口28、出入口枠33、補強部材41,51等の各部形状や各部寸法を適宜変更しても良い。また、敷居部37を省略して出入口枠33をコ字状に形成しても良い。
また、補強部材41,51には、本体部10a,5aに接合される端縁に面取りを施しても良い。この面取りによって、補強部材41,51と本体部10a,5aとを溶接するときには、溶接時の溶け込み量を確保できる。その結果、補強部材41,51と本体部10a,5aとの接合強度を確保できる。
上記一実施の形態では、入口柱34,35の下端部に当接する補強部材41が側梁10に設けられ、入口柱34,35の上端部に当接する補強部材51が側構体5に設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。補強部材51を設けずに補強部材41のみを設けたり、補強部材41を設けずに補強部材51のみを設けたりしても良い。補強部材51を設けない場合には、側構体5をシングルスキン構造としても良い。また、補強部材41を設けない場合には、側梁10(台枠2)をシングルスキン構造としても良い。
上記一実施の形態では、先頭構体を有しない鉄道車両1(中間車両)について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。先頭構体を有する鉄道車両1(先頭車両)に本発明を適用しても良い。
上記一実施の形態では、鉄道車両1の側構体5に乗客用の側出入口26が1箇所のみ設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。側構体5の複数箇所に側出入口26を設けても良い。また、乗務員用の側出入口を側構体5に1箇所以上設けても良い。乗務員用の側出入口は、側出入口26よりもレール方向寸法が小さいので、側出入口26付近の側構体5の剛性に比べて、乗務員用の側出入口付近の側構体5の剛性が高くなる。そのため、乗務員用の側出入口の縁を構成する出入口枠の2つの入口柱のうち、一方の入口柱の端部に補強部材41,51を設けることで、乗務員用の側出入口付近の側構体5や側梁10の剛性を十分に確保できる。また、乗務員用の側出入口の縁を構成する出入口枠の2つの入口柱のいずれにも補強部材41,51を当接させて、側構体5や側梁10の剛性をさらに高めても良い。
なお、乗務員用の側出入口の側縁を構成する2つの入口柱のうち、いずれの入口柱の端部に補強部材41,51を設けるかは、その2つの入口柱の周囲の構造に応じて決定すれば良い。また、乗客用の側出入口26付近の剛性によっては、2つの入口柱34,35のうちいずれか一方の端部のみに補強部材41,51を設けても良い。例えば、ダブルスキン構造の側構体5よりも剛性が低いシングルスキン構造から先頭構体が構成され、その先頭構体付近に配置される側出入口付近においては、剛性が低い先頭構体側の入口柱の端部に補強部材41,51を設けることが好ましい。また、妻構体4が台枠2に略垂直に設けられると、妻構体4付近の側構体5の剛性が高くなるので、妻構体4により剛性が高くなる位置の側構体5に側出入口を設ける場合、妻構体4とは反対側の入口柱の端部に補強部材41,51を設けることが好ましい。これらの結果、入口柱の端部が当接する側梁10や側構体5の耐荷重を補強部材によって十分に補強できる。
上記一実施の形態では、本体部10a(一部分10b)と補強部材41とが略同一材質である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。本体部10aの材質よりも高剛性の金属から補強部材41を構成しても良い。この場合、取り除かれた一部分10bと同一形状に補強部材41を形成しても良い。また、補強部材41の断面2次モーメントを大きくして、取り除かれた一部分10bの剛性よりも補強部材41の剛性が高ければ、本体部10aの材質よりも低剛性の金属から補強部材41を構成しても良い。
上記一実施の形態では、側梁10の外面板12やウェブ14の一部分10bを取り除いて除去部40を形成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。外面板12やウェブ14だけでなく内面板13の一部分を取り除いて除去部40を形成し、レール方向に垂直な断面が略四角形状の補強部材41を除去部40に接合しても良い。さらにこの場合、外面板12とウェブ14との連結点42だけでなく、内面板13とウェブ14との連結点にも四角形状の補強部材41の下端を接合しても良い。
また、側梁10や床板部材11、側構体5の形状、入口柱34,35と側梁10や側構体5との位置関係によっては、ウェブ14,20の一部分を取り除いて除去部40,50を設けたり、内面板13,19及びウェブ14,20の一部分を取り除いて除去部40,50を設けたりしても良い。さらに、外面板12,18をそのままに、内面板13,19及びウェブ14,20の一部分を取り除いて除去部40,50を設けることで、側梁10や側構体5の外観を全く変えないようにできる。また、内面板13,19及びウェブ14,20の一部分を取り除いて除去部40,50を設けた場合、補強部材41,51を内面板13,19とウェブ14,20との連結点に接合しても良い。
上記一実施の形態では、入口柱34,35の下端部が側梁10の補強部材41及び本体部10aに接合される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。入口柱34,35を有する側構体5が入口柱34,35以外の部分で側梁10に接合されていれば、入口柱34,35を補強部材41及び本体部10aに接合しなくても良い。なお、入口柱34,35を補強部材41及び本体部10aで受けるため、入口柱34,35を補強部材41及び本体部10aに当接させる必要がある。また同様に、入口柱34,35の上端部を側構体5の補強部材51に接合せず、入口柱34,35の上端部を補強部材51に当接させても良い。
上記一実施の形態では、レール方向に複数の窓27が連続した状態で窓開口28に取り付けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。複数の窓27に個別に窓開口28を設け、複数の窓27同士を離しても良い。
上記一実施の形態では、入口柱34の端部に当接する補強部材41,51と、入口柱35の端部に当接する補強部材41,51とがレール方向に離れている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。レール方向に離れた補強部材41同士、補強部材51同士を一体に構成し、側出入口26の上下に亘って補強部材41,51を設けても良い。
1 鉄道車両
2 台枠
5 側構体
5a,10a 本体部
5b,10b 一部分
10 側梁
12,18 外面板
13,19 内面板
14,20 ウェブ
26 側出入口
27 窓
28 窓開口
34,35 入口柱
40,50 除去部
41,51 補強部材
42,52 連結点
44,53 一辺
45,54 部分
46,47,55,56 辺