JP2008285094A - 鉄道車両の車体構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】横衝突時における車体の変形量を抑制する。
【解決手段】側柱106の上端部が、車体前後方向に延びる長桁109にガセット13を介して連結されている。ガセット13は、断面コ字形状に形成されるもので、車体外板102にほぼ平行に延びる基板部13Aと、この基板部13Aの前後縁に連接され基板部13Aに直交する方向に延びる側板部13B,13Cとを有する。ガセット13の両側板部13B,13Cを補強部材23にて連結する。この補強部材23は、車体上下方向に傾斜して延びる第1の部分23aと、この第1の部分23aの下端縁に連接され水平方向に延びる第2の部分23bとを有する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、鉄道車両の車体構造に関し、特に横方向から側構体にかかる衝撃力に対する車両構体の剛性を高めて、上記衝撃力による客室の変形を抑制し、客室内の乗客の安全性を向上させるものである。
従来より、在来線において、鉄道車両の構体構造は、垂直荷重と車端圧縮荷重が主要な荷重条件だった。このため、側構体と屋根構体との結合は、生産性を優先させた構造とされ、屋根構体のタルキ(垂木)と側構体の側柱との連続性はあまり重要視されていないのが現状であった。
近年、鉄道車両が、車体の側面から地上構造物などに衝突する(横衝突)を想定して、構体構造の研究が進められている。そして、斜め方向から衝突する場合を想定して、その衝突による衝撃力を車両構体で効果的に吸収するようにしたものがいくつか提案されている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、車両構体は、屋根構体、左右の側構体、前後の妻構体および台枠によって構成される。発明者は、側構体が鉛直方向に延びる垂直壁などに衝突する横衝突時における車体の変形についての研究において、側構体の上端部と屋根構体との連結部分は、側構体の下端部と台枠との連結部分より剛性が低く、変形しやすいことから、その部分を補強して剛性を高めれば、車体の変形を小さくすることができるという着想に基づいて、後述するようにモデル解析を行った。
具体的には、図29(a)(b)に示すように、車体101において、屋根構体101Aに連結される側構体101Bは、車体外板102にドア開口103が形成され、その前後縁付近において車体上下方向に延びる断面略ハット形状の出入口柱104が設けられている。また、窓部105の前後縁付近に出入口柱104と平行に延びる断面略Z字形状の側柱106が設けられている。そして、出入口柱104と側柱106との間が戸袋となっている。窓部105の上側には、横骨部材110が車体前後方向に沿って配置されている。一方、屋根構体101Aは、屋根板107に左右方向に延びるタルキ108が所定の間隔でもって設けられ、両側縁には長桁109が設けられている。長桁109は、タルキ108に溶接により固定される上側基部109aと、この上側基部109aの上端部から上側基部109aに直交する方向に延びる上側リップ部109bと、上側基部109aの下端部から屋根板107の方に向かって延びる中間部分109cと、この中間部分109cに連接され屋根板107の内側に沿って延びる下側部分109dと、この下側部分109dに連接され屋根板107の雨樋部107aの下側に配置される断面逆L字形状の延長部分109eとを備える。なお、延長部分109eの下端部は車体外板102の上端部に接合されている。
この側柱106の上端部は、図30及び図31に示すように、断面L字形状のガセット111および補強プレート112を介して、長桁109に連結されている。側柱106は、断面略Z形状で、外板102に接合される取付部106Aと、この取付部106Aの窓部105側の端縁に一端縁が連接され取付部106Aと直交する方向に延びる中間部106Bと、この中間部106Bの他端縁に一端縁が連接され取付部106Aと略平行に延びる先端部106Cとを備える。この側柱106は、閉断面構造ではなく、開断面構造となっている。また、ガセット111は、側柱106に下端部が接合される本体部111Aと、この本体部111Aより上方に延長され長桁109にプラグ溶接により接合される幅広
板状の延長部111Bとを有する。本体部111Aは、断面略L字形状で、側柱106の中間部106Bに溶接により接合される第1の部分111Aaと、先端部106Cに溶接により接合される第2の部分とを有する。なお、W1は補強プレート112の長桁109への溶接部分、W2はガセット111の本体部111Aへの溶接部分である。
このような構造(図31参照)であると、後述するように、横衝突の場合に、屋根構体と側構体の連結部分がなす角度が大きくなる方向に変形し、左右の側柱106の相対距離が小さくなることが確認された。ここで、出入口柱104は、ドアの出入り口を構成することになるため、断面ハット形状の部材を用いてはいるものの、断面高さをあまり高くできず、構造を工夫することも困難である。そのため、断面略Z字形状の側柱106の断面高さを高くして、戸袋付近の剛性は側柱106で主として受け持つようになっている。
そこで、発明者は、そのような変形を抑制するために、鋭意研究を重ねたところ、戸袋付近の剛性は側柱106で主として受け持つようになっているので、タルキ108と側柱106の連続性や結合強度を向上させることで、左右の側柱106の相対距離があまり小さくならず、屋根構体101Aと側構体101Bの連結部分がなす角度が大きくなる方向に変形するのを抑制する上で有効な対策であることを見い出した。よって、タルキ及び長桁と側柱との間に設けるガセットの構造を工夫することで、横衝突の車体の変形量を少なくすることができることを着想した。なお、結合ガセットの構造だけでなく、側柱106や出入口柱104、タルキ108などの構体周方向の骨部材の構成を高めれば、横衝突の車体の変形が小さくなるのは言うまでもない。例えば、側柱106は断面略Z字形状で開断面構造であるが、断面略ハット形状とすることで車体外板とで閉断面構造を構成することにより、剛性を高めることができる。
そこで、具体的には、まず、例えば図32(a)(b)に示すように、ガセット111Aをコ字型断面として、その先端縁を側柱106及び長桁109に溶接により接合して、閉断面構造とする車体構造を考えた。このようにすれば、剛性が高まり、結果として変形量は抑制できるが、長桁109の、屋根板107と接触する部分においては、ガセット111Aが長桁109及び屋根板107に溶接により接合されるので、その溶接による歪みや、焼け跡が屋根板107の外表面に生じるという不具合が判明した。
そこで、このような問題を解決するために、図32(a)(b)に示すように、長桁109の、屋根板107と接触する部分において、ガセット111Bと長桁109との間に隙間を設け、それらを溶接しないようにして、溶接による影響が、屋根板107に現れないようにした。
特開2007−62440号公報(段落0015及び図1)
しかしながら、長桁109の、屋根板107と接触する部分における溶接を廃止して、図33(a)(b)に示すようにすると、その部分の剛性が低下して、変形量が大きくなり、左右の側柱106の相対距離が小さくなる。
そこで、発明者は、ガセット自体の剛性を高めれば、長桁の、屋根板と接触する部分における溶接を廃止したことによる剛性の低下を回復できるのではないかとの着想に基づき、前記ガセットの内部に、補強部材を設ける構造(後述する図1〜図3参照)として、解析を行ったところ、前記変形量を抑制することができ、図31(a)(b)に示す構造と同程度の効果が得られることがわかり、本発明をなすに至ったものである。
本発明は、横衝突時における車体の変形量を抑制することができる鉄道車両の車体構造を提供することを目的とする。
請求項1の発明は、窓開口前後縁付近に車体上下方向に延びる側柱を設け、前記側柱の上端部をガセットを介して長桁に連結する鉄道車両の車体構造であって、前記ガセットは、車体前後方向に延びる基板部と、この基板部の前後縁に連接され前記基板部に直交する方向に延びる側板部とを有する断面コ字形状に形成され、前記ガセットの上端部が前記長桁に、下端部が前記側柱の上端部にそれぞれ溶接により接合され、前記ガセットの内部に、前記長桁にほぼ平行に延び前記左右の側板部を連結する第1の補強部材が設けられていることを特徴とする。
請求項2の発明は、窓開口前後縁付近に車体上下方向に延びる側柱を設け、前記側柱の上端部をガセットを介して長桁に連結する鉄道車両の車体構造であって、前記ガセットは、車体前後方向に延びる基板部と、この基板部の前後縁に連接され前記基板部に直交する方向に延びる側板部とを有する断面コ字形状に形成され、前記ガセットの上端部が前記長桁に、下端部が前記側柱の上端部にそれぞれ溶接により接合され、前記ガセットの内部に、水平方向に延び前記左右の側板部を連結する第2の補強部材が設けられていることを特徴とする。
請求項3の発明は、窓開口前後縁付近に車体上下方向に延びる側柱を設け、前記側柱の上端部をガセットを介して長桁に連結する鉄道車両の車体構造であって、前記ガセットは、車体前後方向に延びる基板部と、この基板部の前後縁に連接され前記基板部に直交する方向に延びる側板部とを有する断面コ字形状に形成され、前記ガセットの上端部が前記長桁に、下端部が前記側柱の上端部にそれぞれ溶接により接合されるともに、前記ガセットの内部に第3の補強部材が設けられ、前記第3の補強部材は、前記長桁にほぼ平行に延び前記左右の側板部を連結する第1の補強部と、この第1の補強部に対して角度をなして延び前記左右の側板部を連結する第2の補強部とを備えることを特徴とする。ここで、第2の補強部は、第1の補強部に対して角度をなして、例えば略断面略L字形状を構成していればよい。第1及び第2の補強部がなす角度は制限されず、鋭角、直角、鈍角のいずれでもよい。
これらの場合には、側柱の上端部と長桁にガセットの内部に補強部材を設けることでガセットの剛性を高められるので、横衝突後において左右の側柱の上端部の相対距離があまり減少せず、客室の容積が確保され、横衝突時における車体の変形量が抑制される。
請求項4に記載のように、前記側柱の上端部、ガセット及び長桁に対して、それらとの間に第1の閉断面構造を構成する第4の補強部材が設けられ、前記第4の補強部材は、前記ガセットより車体上下方向の寸法が大きく、前記長桁と前記側柱それぞれに溶接により接合されている構成とすることが望ましい。
このようにすれば、ガセットによって長桁と側柱の上端部を連結するだけでなく、第4の補強部材で、それらとの間に第1の閉断面構造が構成されるので、さらに剛性が高められる。また、第4の補強部材で長桁と側柱とを連結しているので、第4の補強部材又はガセットの溶接が破断するようなことがあっても、残っている方で強度を保持するため、冗長性のある構造とすることができる。
この場合、請求項5に記載のように、前記長桁は、車体左右方向に延びるタルキに接合され、前記タルキに対し前記タルキとの間に、前記第1の閉断面構造に連続する第2の閉断面構造を構成する第5の補強部材が設けられる構成とすることが望ましい。
このようにすれば、前記タルキに対し前記タルキとの間に、前記第1の閉断面構造に連続する第2の閉断面構造を構成する第5の補強部材が設けられることで、長桁とタルキの溶接部分が、前記第5の補強部材によって補強される。また、従来は、タルキはその下フランジで長桁とスポット溶接により接合されているが、横衝突時にはスポット溶接継手に大きな引き剥がし荷重が生じて破断し、大きな変形が生じるおそれがある。第5の補強部材でタルキと長桁とを連結することで、冗長性のある構造とし、いずれが破断しても大きな変形が生じない構造とすることができる。なお、スポット溶接継手は、せん断方向の荷重に対しては強いが、引き剥がし方向の荷重に対しては強度が劣る。このため、一般にスポット溶接はせん断方向の荷重を支えるように構造設計が行われる。
請求項6に記載のように、前記第4の補強部材と第5の補強部材との間に、前記第1及び第2の閉断面構造を仕切る分割板が設けられている構成とすることも可能である。
このようにすれば、製造上の誤差でタルキと側柱が前後にずれた場合でも、分割板を設けることで、その誤差を吸収し、剛性を低下させることなく、第5の補強部材を設けて、第1の閉断面構造に連続する第2の閉断面構造を形成することができる。
請求項7に記載のように、前記側柱の、台枠との連結部分に、第3の閉断面構造を構成する第6の補強部材が取り付けられている構成とすることが望ましい。
このようにすれば、側柱の下側部分の座屈あるいは倒れを防止し、変形を防止する上でより有利な構造となる。
以上のように、本発明は、側柱の上端部と長桁とを、内部に補強部材を有する断面コ字形状のガセットでもって連結するようにしているので、側柱の上端部と長桁との連結部分の剛性を高め、横衝突時における車体の前記連結部分の変形量を抑制することができる。よって、左右の出入口柱の上端部の相対距離があまり狭くならず、客室の容積を確保することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。なお、図30〜図32に示す構造と同一の構成要素については同一の符号を用い、その詳細な説明を省略する。
ー実施例1−
図1は本発明に係る実施例1の鉄道車両の車体構造であって、側柱の上端部と長桁との連結部分を示し、(a)は断面図,(b)は車体内方側から見た図である。
図1(a)(b)に示すように、側柱106の上端部が、車体前後方向に延びる長桁109にガセット11を介して連結されている。
ガセット11は、断面コ字形状に形成されるもので、車体前後方向に延びる基板部11Aと、この基板部11Aの前後縁に連接され基板部11Aに直交する方向に延びる側板部11B,11Cとを有する。そして、このガセット11は、上端縁部が溶接により長桁109の上側基部109aの下端部付近及び中間部分109cに接合される一方、下端部(基板部11A及び側板部11Bの下端部)が、側柱106の中間部106B及び先端部106Cの上端部に溶接により接合されている。つまり、ガセット11の上端縁が長桁109に接した状態で溶接により接合され、下端部が側柱106の外側に重複され、下端縁が溶接により接合されている。
そして、ガセット11の側板部11B,11Cの外側縁11Ba,11Caは、長桁109の下側部分109dとは間隔を開けて接触しないように配置されている。そして、その外側縁11Ba,11Caの少し内側の部位であってガセット11の内部に、長桁109の下側部分109dにほぼ平行に延び左右の側板部11B,11Cを連結する板状の第1の補強部材21が設けられている。つまり、第1の補強部材21は、車体上下方向ではあるが傾斜して取り付けられている。
ー実施例2−
上記実施例1(図1(a)(b))においては、ガセット内に車体上下方向の第1の補強部材を設けるようにしているが、それに代えて、実施例2では、水平方向の補強部材を設けている。
この実施例2では、図2(a)(b)に示すように、ガセット12の両側板部12B,12Cが、水平方向に延びる板状の第2の補強部材22にて連結されている。この補強部材22は、長桁109と雨樋部107aとが接合する部分に対応する位置付近に設けられている。なお、ガセット12の側板部12B,12Cの、基板部12Aと連結される側縁とは反対側の側縁(外側縁)は、実施例1,2と同様に、長桁109の下側部分109dとは間隔を開けて接触していない。
ー実施例3−
この実施例3は、ガセット内に、第1の補強部材と第2の補強部材とを組み合わせた形状に相当する断面略L字形状の補強部材を設け、より剛性を高めたものである。
この実施例3では、図3(a)(b)に示すように、ガセット13の両側板部13B,13Cを連結する第3の補強部材23が、車体上下方向に傾斜して前記長桁にほぼ平行に延びる第1の部分23a(第1の補強部材21に対応する第1の補強部)と、この第1の部分23aの下端縁に連接され水平方向に延びる第2の部分23b(第2の補強部材22と対応する第2の補強部)とを有する。この実施例3では、第2の部分23bは、水平方向に延びているが、第1の部分23aに対して角度をなして延びていればよい。また、第1の部分23aの下端縁が第2の部分23bの外側縁に連接されているが、これの部分が離れていても差し支えない。なお、ガセット13の側板部13B,13Cの、基板部13Aと連結される側縁とは反対側の側縁(外側縁)は、実施例1,2と同様に、長桁109の下側部分109dとは間隔を開けて接触していない。
ー実施例4−
この実施例4は、実施例3の構造において、側柱の上端部、ガセット及びタルキに対し、第4の補強部材を溶接により接合し、それらの上側に第1の閉断面構造を構成するようにしたものである。
図4(a)(b)に示すように、第4の補強部材24は断面コ字形状で、基板部24Aと、左右の側板部24B,24Cを有し、それの上部開口は長桁109の上側リップ部109bにて閉塞されている。側板部24B,24Cの先端縁は上側から順に、長桁109の取付基部109a及び上側リップ部109b、ガセット13の基板部13A及び側柱106の先端部分106Cに溶接により接合され、第1の閉断面構造が構成されている。この第4の補強部材は、ガセット13の基板部13Aより幅が狭く、側柱106の先端部分106Cより幅が狭くなっている。なお、W11,W12はガセット13への溶接部分、W13,W14,W15は側柱106への溶接部分である。これらは、断続溶接とすることで、溶接歪みの低減を意図している。
このようにすれば、ガセット13の基板部13A上に、第4の補強部材24による第1の閉断面構造が形成されることになり、ガセット13を設けるだけの構造よりも剛性を高めることができる。
ー実施例5−
この実施例5は、第4の補強部材のさらに上側に第5の補強部材を設け、前記第1の閉断面構造に連続する第2の閉断面構造を構成するようにしたものである。
図5(a)(b)に示すように、長桁109の上側リップ部109bを挟んでさらに上側に、断面コ字形状の第5の補強部材25が配置され、第2の閉断面構造が形成されている。この補強部材25による第2の閉断面構造は、第4の補強部材24による第1の閉断面構造に連続している。この補強部材25も、基板部25Aと、この基板部25Aの両側縁から外方に延びる側板部25B,25Cとを有する。なお、基板部25Aの中央下端には水抜き穴を意図した半円形の切り欠きが形成されている。そして、第5の補強部材25は、両側板部25B,25Cの外側縁がタルキ108に、下側縁が長桁109の上側リップ部109bにそれぞれ溶接により接合されている。第4の補強部材24と長桁109の上側リップ部109bとの接合はスポット溶接によりなされているので、第5の補強部材25を設けることで、補強部材24と上側リップ部109bとの接合部分(スポット接合部分)にそれらを剥離する方向に大きな力が作用するのを抑制することができる。
ー実施例6−
この実施例6では、実施例5の構造(図5(a)(b)参照)に加えて、側柱の下端部側にも、ガセットを設けたものである。
この実施例6では、側柱106の上端部にガセット13及び補強部材24,25を設けるのに加えて、図6(a)〜(c)に示すように、側柱106の下端部側に、断面略コ字形状のガセット26を設け、第3の閉断面構造を配置するようにしている。このガセット26は、断面略コ字形状で、中間部106Bと平行に延びる基部26Aと、基板部26Aの両側縁より延び先端部106C及び中間部106Bに接合される側板部26B,26Cとを有する。側板部26Bは側板部26Cよりも長さが短くなっている。
このようにすれば、側柱106の上端部側だけでなく下端部側も剛性を高めて、側柱106周辺における車体の変形をより小さくすることも可能である。
(解析)
続いて、車体を、図7(a)(b)に示すように、車体前後方向におけるドア開口と窓部との周期的な配置を考慮して、ドア開口103及び窓部105の中心部位で切断して、一部(図28(a)のD部分参照)を解析モデルとして切り出し、その一部の外側面を、初速度を与えて垂直壁Sに衝突させて、変形の状態を調べた。ここで、従来例、比較例1,2及び実施例1〜6の解析モデル(輪切りモデル)を図8〜図16に示し、それらをA1〜A9で表示する。
前記解析において、出入口柱及び側柱の変位検出位置は、それぞれ、図17に示す出入口柱及び側柱の上端部の位置で、圧壊前の出入口柱及び側柱の上端部間の距離を1とし(図18参照)、圧壊後の距離を指数で表した結果を図19及び図20に、その変形状態を図21に示す。図22(a)(b)は、それぞれ側柱下端にガセット26を設けていない場合(A8)と、それを設けた場合(A9)とにおける側柱の下端部付近の変形の状態を示す図である(側柱相対距離は指数表示)。図23(a)(b)それぞれ、出入口柱および側柱の幅方向相対距離の時刻歴波形を示す図である。
この解析結果より、本実施の形態では、いずれも、従来構造よりも少なくとも20%程度変形量が少なくなっていることがわかる。
また、実施例4(A7)と実施例5(A8)について、スポット溶接継手(タルキー長桁)に作用する力を比較した結果を図24に示す。ここで、図25及び図26に示すように、A,B断面のうちA断面側が衝突側で、A断面側にはスポット溶接点1〜12が図26(a)に示すように配置され、B断面側にはスポット点13〜24が図26(b)に示すように配置されている。
この図24に示す結果より、実施例5(A8)では、第5の補強部材25を設けることで、側柱の部位でスポット溶接部(スポット溶接点5,6,17,18)に作用する引き剥がし力を最大で20%低減する効果があることがわかる。
前記実施の形態のほか、本発明は次のように構成することも可能である。
(i)図27(a)(b)(c)に示すように、長桁109’が上側リップ部を有さない構造である場合には、第1の閉断面構造を構成するガセット31を、長桁109’の上端縁付近まで延長し、ガセット31と長桁109’とで形成される開口部分を分割板32で閉塞し、その分割板32を挟んでさらに上側にタルキ108’に溶接により固定される断面コ字形状の補強部材33(第5の補強部材)を設けることも可能である。この補強部材33により、ガセット31による第1の閉断面構造に連続するように、補強部材33による第2の閉断面構造が形成され、前記第1及び第2の閉断面構造が分割板32によって仕切られている。なお、分割板32には、結露などで生じた水分を逃し腐食を防ぐための水抜き穴32aが形成されている。また、ガセット31内には、実施例3等と同様に、それの両側板部を連結する補強部材34が設けられ、この補強部材34が、長桁109’にほぼ平行に延びる第1の第1の補強部34aと、この第1の補強部34aの下端縁に連接され角度(この例では略90度)をなして延びる第2の第2の補強部34bとを有する。
(ii)前記実施の形態では、側柱を断面略Z字形状の部材としているが、図28(a)(b)に示すように、出入口柱と同様に断面略ハット形状の側柱41とすることも可能である。側柱41は、断面コ字形状の本体部41aと、この本体部41Aの各側縁に連接され互いに反対方向に延び外板102に接合される取付フランジ部41B,41Cとを有する。側柱自体の剛性を高め、車体の変形量を小さくする上でより有利な構造とすることもできる。
(iii)前記実施の形態では、ドア開口前後縁付近に車体上下方向に延びる出入口柱を、その出入口柱と平行に前記出入口柱との間に戸袋が形成される側柱をそれぞれ設け、この側柱に隣接して窓部を設ける場合の前記側柱の補強構造について説明しているが、そのようなドア開口がなく窓開口を並んで設け、その窓開口前後縁付近に車体上下方向に延びる前後側柱を設ける場合の前記前後側柱の少なくとも一方に対しても同様に適用することができる。
本発明に係る実施例1の鉄道車両の車体構造であって、側柱の上端部と長桁との連結部分を示し、(a)は断面図,(b)は車体内方側から見た図である。 (a)(b)はそれぞれ実施例2についての図1(a)(b)と同様の図である。 (a)(b)はそれぞれ実施例3についての図1(a)(b)と同様の図である。 (a)(b)はそれぞれ実施例4についての図1(a)(b)と同様の図である。 (a)(b)はそれぞれ実施例5についての図1(a)(b)と同様の図である。 (a)(b)はそれぞれ実施例6についての図1(a)(b)と同様の図であり、(c)は図6(b)のB−B線における断面図である。 (a)(b)はそれぞれ解析の説明図である。 従来例の解析モデル(A1)を示す図である。 比較例1の解析モデル(A2)を示す図である。 比較例2の解析モデル(A3)を示す図である。 実施例1の解析モデル(A4)を示す図である。 実施例2の解析モデル(A5)を示す図である。 実施例3の解析モデル(A6)を示す図である。 実施例4の解析モデル(A7)を示す図である。 実施例5の解析モデル(A8)を示す図である。 実施例6の解析モデル(A9)を示す図である。 出入口柱及び側柱の変位検出位置を示す説明図である。 圧壊前の出入口柱及び側柱の上端部間の距離の説明図である。 圧壊後の距離を指数で表した結果を示す図である。 圧壊後の距離を指数で表した結果を示す図である。 圧壊後の状態を示す図である。 (a)(b)は、それぞれ側柱の下端部にガセットを設けていない場合(A8)と、それを設けた場合(A9)とにおける側柱の下端部付近の変形の状態を示す図である。 (a)(b)はそれぞれ、出入口柱および側柱の幅方向相対距離の時刻歴波形を示す図である。 実施例4(A7)と実施例5(A8)について、スポット溶接継手(タルキ−長桁)に作用する力を比較した結果を示す図である。 車体の側面とスポット溶接点との関係を示す図である。 (a)(b)はそれぞれ車体の側面A,Bにおけるスポット溶接点の配置を示す図である。 他の実施例を示し、(a)(b)はそれぞれ図1(a)(b)と同様の図,(c)は図25(a)のC−C線における断面図である。 (a)(b)はそれぞれ変形例についての図1(a)(b)と同様の図である。 (a)(b)はそれぞれ車体の側面図及び、車室内から屋根構体を見た図である。 図26(a)のD部分を拡大して示す図である。 (a)(b)はそれぞれ従来例を示し、(a)は図27のA−A線における断面図、(b)は車体内方側から見た図である。 (a)(b)はそれぞれ比較例1を示す図28(a)(b)と同様の図である。 (a)(b)はそれぞれ比較例2を示す図28(a)(b)と同様の図である。
符号の説明
11,12,13,31 ガセット
11A,12A,13A 基板部
11B,11C,12B,12C,13C,13C 側板部
21,22,23,24,25,33,34 補強部材
23a 第1の部分(第1の補強部)
23b 第2の部分(第2の補強部)
34a 第1の補強部
34b 第2の補強部
103 ドア開口
104 出入口柱
105 窓部
41,106 側柱
108 タルキ
109 長桁

Claims (7)

  1. 窓開口前後縁付近に車体上下方向に延びる側柱を設け、前記側柱の上端部をガセットを介して長桁に連結する鉄道車両の車体構造であって、
    前記ガセットは、車体前後方向に延びる基板部と、この基板部の前後縁に連接され前記基板部に直交する方向に延びる側板部とを有する断面コ字形状に形成され、
    前記ガセットの上端部が前記長桁に、下端部が前記側柱の上端部にそれぞれ溶接により接合され、
    前記ガセットの内部に、前記長桁にほぼ平行に延び前記左右の側板部を連結する第1の補強部材が設けられていることを特徴とする鉄道車両の車体構造。
  2. 窓開口前後縁付近に車体上下方向に延びる側柱を設け、前記側柱の上端部をガセットを介して長桁に連結する鉄道車両の車体構造であって、
    前記ガセットは、車体前後方向に延びる基板部と、この基板部の前後縁に連接され前記基板部に直交する方向に延びる側板部とを有する断面コ字形状に形成され、
    前記ガセットの上端部が前記長桁に、下端部が前記側柱の上端部にそれぞれ溶接により接合され、
    前記ガセットの内部に、水平方向に延び前記左右の側板部を連結する第2の補強部材が設けられていることを特徴とする鉄道車両の車体構造。
  3. 窓開口前後縁付近に車体上下方向に延びる側柱を設け、前記側柱の上端部をガセットを介して長桁に連結する鉄道車両の車体構造であって、
    前記ガセットは、車体前後方向に延びる基板部と、この基板部の前後縁に連接され前記基板部に直交する方向に延びる側板部とを有する断面コ字形状に形成され、
    前記ガセットの上端部が前記長桁に、下端部が前記側柱の上端部にそれぞれ溶接により接合されるともに、前記ガセットの内部に第3の補強部材が設けられ、
    前記第3の補強部材は、前記長桁にほぼ平行に延び前記左右の側板部を連結する第1の補強部と、この第1の補強部に対して角度をなして延び前記左右の側板部を連結する第2の補強部とを備えることを特徴とする鉄道車両の車体構造。
  4. 前記側柱の上端部、ガセット及び長桁に対して、それらとの間に第1の閉断面構造を構成する第4の補強部材が設けられ、
    前記第4の補強部材は、前記ガセットより車体上下方向の寸法が大きく、前記長桁と前記側柱それぞれに溶接により接合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鉄道車両の車体構造。
  5. 前記長桁は、車体左右方向に延びるタルキに接合され、
    前記タルキに対し前記タルキとの間に、前記第1の閉断面構造に連続する第2の閉断面構造を構成する第5の補強部材が設けられることを特徴とする請求項4に記載の鉄道車両の車体構造。
  6. 前記第4の補強部材と第5の補強部材との間に、前記第1及び第2の閉断面構造を仕切る分割板が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の鉄道車両の車体構造。
  7. 前記側柱の、台枠との連結部分に、第3の閉断面構造を構成する第6の補強部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の鉄道車両の車体構造。
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