JP2019204870A - 太陽電池素子および太陽電池素子の製造方法 - Google Patents

太陽電池素子および太陽電池素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】製造コストが低く、変換効率の高い太陽電池素子を提供する。【解決手段】太陽電池素子は半導体基板とトンネルオキサイド層と半導体層と第1電極とパッシベーション層と第2電極とを備える。半導体基板は、p型の多結晶シリコン基板である。トンネルオキサイド層は半導体基板の第1主面の上に位置する。半導体層はn型の多結晶シリコン層であって、トンネルオキサイド層の上に位置する。第1電極は半導体層の上に位置する。パッシベーション層は半導体基板の第2主面の上に位置する。第2電極はパッシベーション層を通って前記第2主面に接続する。【選択図】図2

Description

本開示は、太陽電池素子および太陽電池素子の製造方法に関する。
シリコン基板を用いた太陽電池素子が知られている(例えば、特許文献1,2)。
特開2017−143279号公報 特表2017−526164号公報
製造コストが低く、変換効率が高い太陽電池素子が望まれている。
そこで本開示は、製造コストが低く、変換効率が高い太陽電池素子およびその製造方法を提供する。
太陽電池素子および太陽電池素子の製造方法が開示される。一実施の形態において、太陽電池素子は半導体基板とトンネルオキサイド層と半導体層と第1電極とパッシベーション層と第2電極とを備える。半導体基板は、p型の多結晶シリコン基板である。トンネルオキサイド層は半導体基板の第1主面の上に位置する。半導体層はn型の多結晶シリコン層であって、トンネルオキサイド層の上に位置する。第1電極は半導体層の上に位置する。パッシベーション層は半導体基板の第2主面の上に位置する。第2電極はパッシベーション層を通って前記第2主面に接続する。
一実施の形態において、太陽電池素子の製造方法は、p型の多結晶シリコンの半導体基板の第1主面の上にトンネルオキサイド層を形成し、トンネルオキサイド層の上、および、半導体基板の側面に、n型の多結晶シリコンの半導体層を形成し、エッチングにより、半導体基板の側面に形成される半導体層を除去し、半導体基板の第2主面の上に、パッシベーション層を形成し、半導体層の上に第1電極を、パッシベーション層の上に第2電極を、それぞれ形成する。
本開示の太陽電池素子によれば、製造コストが低く、変換効率が高い。
太陽電池モジュールの構成の一例を概略的に示す断面図である。 太陽電池素子の構成の一例を概略的に示す断面図である。 太陽電池素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。 太陽電池素子の製造途中の様子の一例を概略的に示す断面図である。 太陽電池素子の製造途中の様子の一例を概略的に示す断面図である。 太陽電池素子の製造途中の様子の一例を概略的に示す断面図である。 太陽電池素子の製造途中の様子の一例を概略的に示す断面図である。 太陽電池素子の一例を概略的に示す断面図である。 エッチング装置の構成の一例を概略的に示す図である。 比較例にかかる太陽電池素子の構成の一例を概略的に示す図である。
実施の形態.
以下、実施形態の各例ならびに各種変形例を図面に基づいて説明する。なお、図面においては同様な構成および機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。また、図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズおよび位置関係などは適宜変更され得る。また、各図において、各構成の位置関係を示すべく、適宜にXYZ座標が付記されている。以下では、Z軸方向の一方側を+Z側とも呼び、Z軸方向の他方側を−Z側とも呼ぶ。X軸およびY軸についても同様である。
<太陽電池モジュール>
図1は、太陽電池モジュール100の構成の一例を概略的に示す断面図である。太陽電池モジュール100は一対の基材110,120と複数の太陽電池素子10と充填材130と配線材140とを備えている。
基材110,120は、例えば板状の形状を有しており、その厚み方向がZ軸方向に沿う姿勢で配置されている。基材110,120は、Z軸方向において間隔を空けて互いに対向している。基材110,120の間の間隔(基材110の−Z側の主面110aと基材120の+Z側の主面120aとの間の距離)は、例えば1.2[mm]程度以下に設定され得る。基材110,120は、平面視において(つまりZ軸方向に沿って見て)、例えば長方形形状を有しており、その一辺がX軸方向に沿う姿勢で配置される。
基材110は、基材120に対して+Z側に位置している。ここでは、光源(例えば太陽)は、太陽電池モジュール100に対して+Z側に位置するものとする。言い換えれば、太陽電池モジュール100は、基材110が光源側に位置するように設置される。この場合、基材110は、高い透光性を有する基板である。ここでいう高い透光性とは、太陽電池素子10の光電変換の対象となる光(例えば太陽光)に対する透過率が高いことをいう。その透過率は、例えば60%以上である。基材110は、例えばガラス、あるいは、アクリルまたはポリカーボネートなどの樹脂などによって形成され得る。基材110の厚みは、例えば3.2[mm]程度以下に設定され得る。
基材120は、高い透光性を有していてもよく、あるいは、高い透光性を有していなくてもよい。基材120が高い透光性を有している場合には、基材120は基材110と同様に、例えばガラス、あるいは、アクリルまたはポリカーボネートなどの樹脂などによって形成され得る。基材120の厚みも、例えば3.2[mm]程度以下である。
基材120が高い透光性を有していない場合、基材120は、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)のうちの1種の樹脂、あるいはこれらの樹脂の少なくとも1種の樹脂等によって形成され得る。基材120の厚みは、例えば0.3[mm]から0.5[mm]程度である。
基材110,120は、その高い剛性、および/または、その低い透湿度等により、これらの間に位置する後述の構成(太陽電池素子10等)を保護することができる。
<太陽電池素子>
複数の太陽電池素子10は、一対の基材110,120の間に配置されている。複数の太陽電池素子10は、例えば略板状の形状を有しており、その厚み方向がZ軸方向に沿う姿勢で配置される。複数の太陽電池素子10は、平面視において間隔を空けて互いに隣り合って配置されている。つまり、複数の太陽電池素子10は、XY平面において2次元的に配置されている。より具体的な一例として、複数の太陽電池素子10は、X軸方向およびY軸方向をそれぞれ行方向および列方向としたマトリックス状に配置される。
複数の太陽電池素子10には、+Z側から基材110を透過した光が入射する。太陽電池素子10は自身に入射した光を電力に変換する。つまり、太陽電池素子10は入射した光を電力に変換する光起電力効果に基づいて発電する。太陽電池素子10の内部構成については後に詳述する。
<配線材>
図1を参照して、複数の太陽電池素子10は、配線材140を介して相互に電気的に接続されている。配線材140は、例えば金属によって形成され得る。図1の例では、X軸方向において互いに隣り合う一対の太陽電池素子10として太陽電池素子10A,10Bが示されており、太陽電池素子10A,10Bを接続する配線材140として、配線材140Aが示されている。太陽電池素子10Aは太陽電池素子10Bに対して−X側に位置している。
配線材140Aのうち−X側の部分は、太陽電池素子10Aの+Z側の第1面10aに接続されている。例えば配線材140Aは半田または導電性樹脂等により、太陽電池素子10Aに接続される。この配線材140Aは太陽電池素子10Aの第1面100aから太陽電池素子10A,10Bの間を延在して、太陽電池素子10Bの−Z側の第2面10bへと延在する。配線材140Aの+X側の部分は太陽電池素子10Bの第2面10bに接続される。例えば、配線材140Aは半田または導電性樹脂等により、太陽電池素子10Bに接続される。これにより、配線材140Aは太陽電池素子10A,10Bを直列に接続することができる。他の配線材140も同様に、互いに隣り合う太陽電池素子10を接続する。これにより、X軸方向に沿って並ぶ複数の太陽電池素子10が相互に直列に接続される。
なお複数の太陽電池素子10の全てが直列に接続されている必要はない。例えば、いくつかの太陽電池素子10が相互に直列接続され、その直列接続体の複数が互いに並列に接続されていてもよい。
太陽電池モジュール100には、複数の太陽電池素子10が発電した電力を外部に出力するための一対の配線材(不図示)が設けられる。この一対の配線材は、例えば直列接続体の両端に位置する太陽電池素子10にそれぞれ接続され、例えば基材120を貫通して外部へと延在する。
<充填材>
一対の基材110,120の間には、充填材130が充填されている。この充填材130は、基材110,120の互いに向かい合う主面110a,120aと、太陽電池素子10と、配線材140とに密着している。充填材130は透光性を有する絶縁樹脂であり、このような充填材130は有機材料で形成され得る。より具体的な一例として、充填材130の素材には、例えば、高い透光性を有するエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、トリアセチルセルロース(TAC)またはポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂などが適用される。充填材130は例えば2種類以上の素材によって構成されていてもよい。
充填材130は、例えばラミネート処理を行うことで形成され得る。具体的には、溶融することで充填材130となるシートを、太陽電池素子10および配線材140とともに、基材110,120の間に載置し、その構造体に対してラミネート処理を行うことで、充填材130が形成される。充填材130は基材110,120、太陽電池素子10および配線材140の位置関係を固定することができるとともに、外部から太陽電池モジュール100の内部へ進入する水分等の量を低減することができる。
<太陽電池素子の詳細>
図2は、太陽電池素子10の構成の一例を概略的に示す断面図である。この太陽電池素子10はp型の半導体基板1を備えている。この半導体基板1は多結晶シリコン基板であり、p型用のドーパント(例えばホウ素またはアルミニウムなどの3価元素)を含んでいる。p型の多結晶シリコン基板はn型に比して安価であり、また、単結晶シリコンに比して異物が混入しても問題を生じにくい。よって、このようなp型の多結晶シリコン基板を採用することで、容易に太陽電池素子10を製造できる。つまり、太陽電池素子10の製造コストを低減することができる。
半導体基板1の厚みは、例えば100〜250[μm]程度に設定され得る。半導体基板1の平面視における形状は、特に限定されるものではないものの、例えば1辺の長さが150〜180mm程度の長方形形状(正方形状を含む)である。
図2に例示するように、半導体基板1の+Z側(表面側)の主面(第1主面)には、微細な凹凸構造(テクスチャ)が形成されてもよい。テクスチャの凸部は図示のようにピラミッド形状であってもよいし、あるいは、例えばテクスチャの凹部が球面形状に沿う形状であってもよい。このテクスチャの凸部の高さは、例えば0.1〜10[μm]程度に設定され得る。また隣接する凸部同士の間隔は、例えば0.1〜20[μm]程度に設定され得る。半導体基板1の+Z側の主面よりも上方に位置する各層(後述)も、その下地の凹凸構造を反映した形状を有する。つまり各層の+Z側の主面も凹凸構造を有する。このような凹凸構造によって、太陽電池素子10の+Z側の主面における光の反射率を低減することができ、光をより効率よく太陽電池素子10の内部に取り込むことができる。
太陽電池素子10は半導体基板1に対して+Z側(受光側)の主面(第1主面)において、トンネルオキサイド層2とn型の半導体層3と透明電極4とキャップ層5と電力取り出し用の電極6とを備えている。トンネルオキサイド層2は、半導体基板1の+Z側の主面の上に位置しており、例えばその全面に形成される。トンネルオキサイド層2は例えば酸化シリコン層(シリコン酸化膜ともいう)である。トンネルオキサイド層2はトンネル現象が生じる程度に薄く形成され、例えばその厚みは0.5〜4[nm]程度に設定され得る。トンネルオキサイド層2の成膜方法は特に限定されないが、例えば熱酸化法を採用することができる。
n型の半導体層3はトンネルオキサイド層2の+Z側の主面の上に位置しており、例えばその全面に形成される。半導体層3は多結晶シリコン層であり、n型用のドーパント(例えばリンまたはヒ素などの5価元素)を高濃度に含む。例えば半導体層3のドーパントの濃度は半導体基板1のドーパントの濃度よりも高く設定され得る。半導体層3の厚みは例えば5〜30[nm]程度に設定され得る。半導体層3の成膜方法は特に限定されないが、例えばプラズマ化学気相成長(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition:PECVD)法を採用することができる。より具体的な一例として、PECVD法によってトンネルオキサイド層2の上に非晶質シリコン層を成膜し、その後、数百℃でアニール処理を行うことで非晶質シリコンを多結晶シリコンに変質させる。
透明電極4は半導体層3の+Z側の主面の上に位置しており、例えばその全面に形成される。透明電極4は、太陽電池素子10の光電変換の対象となる光についての透光性を有する電極であり、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)または酸化亜鉛(ZnO)などによって形成される。透明電極4の厚みは、例えば数十[nm]〜数百[nm]程度に設定され得る。透明電極4の成膜方法は特に限定されないが、例えばスパッタリング法を採用できる。
キャップ層5は透明電極4の+Z側の主面の上に位置しており、後述の電極6と透明電極4との接続箇所を除いて全面に形成されている。キャップ層5は例えば透明電極4を保護する層であり、例えば窒化シリコン層(シリコン窒化膜ともいう)である。キャップ層5の厚みは、例えば数[nm]〜20[nm]程度に設定され得る。キャップ層5の成膜方法は特に限定されないが、例えばプラズマCVD法またはスパッタリング法を採用できる。
電極6は透明電極4の+Z側の主面の上に位置しており、キャップ層5とXY平面において隣接する。つまり、キャップ層5には自身をZ軸方向に沿って貫通する貫通孔が形成されており、電極6はその貫通孔の内部において透明電極4と接触する。このような貫通孔は、例えば、レーザービーム照射またはフォトリソグラフィ法を用いたエッチングなどの方法で形成できる。特に、YAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット)レーザーなどを用いたレーザービーム照射方法は簡便でよい。あるいは、電極6の形成時にキャップ層5がファイヤスルーされることで、当該貫通孔が形成されてもよい。そして、透明電極4と電極6とで、半導体層3の第1主面の上に位置する第1電極が構成される。
図2の例では、2つの電極6が形成されており、この2つの電極6は一方向(例えばX軸方向)に沿って延在する。この電極6が配線材140(図1)と接続されることで、配線材140が太陽電池素子10の第1面10aに電気的に接続される。電極6は、例えばその主成分に金属(具体的には例えば銀)を含んでいる。ここでいう主成分とは、含有割合が50%以上であることを意味する。電極6の厚みは、例えば10〜30[μm]程度に設定され得る。電極6の形成方法は特に限定されないが、例えば塗布法を採用することができる。なおキャップ層5は必要に応じて省略してもよい。
太陽電池素子10は半導体基板1に対して−Z側(裏面側)の主面(第2主面)において、パッシベーション層7と保護層8と電極9とを備えている。パッシベーション層7は半導体基板1の−Z側の主面の上に位置しており、後述する電極9と半導体基板1との接続箇所を除いて全面に形成されている。パッシベーション層7は、半導体基板1において生じる少数キャリアの表面再結合を低減させる層である。パッシベーション層7は例えば酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン、窒化シリコンおよび酸窒化シリコンなどから選択される1種類以上の素材が採用される。パッシベーション層7は、例えば、1種類の素材の1層の膜であってもよいし、異なる素材の2層以上の膜が積層された状態のものであってもよい。具体的には、パッシベーション層7として、例えば、酸化アルミニウムの1層の膜などが採用されてもよいし、酸化シリコンの膜と酸化アルミニウムの膜とがこの記載順に積層された状態のものなどが採用されてもよい。パッシベーション層7は、例えば、原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法で形成され得る。
ここで、パッシベーション層7は、例えば、半導体基板1の−Z側の主面におけるダングリングボンドの終端化および電界効果などによって、少数キャリアの再結合を低減することができる。例えば、パッシベーション層7の素材として酸化アルミニウムが採用される場合には、酸化アルミニウムは負の固定電荷を有する。このため、電界効果によって、半導体基板1の−Z側の主面で生じる少数キャリア(この場合は電子)が、p型の半導体基板1とパッシベーション層7との界面から遠ざけられる。これにより、半導体基板1のうちの−Z側の主面の近傍における少数キャリアの再結合が低減され得る。その結果、太陽電池素子10の変換効率が向上し得る。パッシベーション層7の厚さは、例えば、10〜60[nm]程度に設定され得る。
保護層8はパッシベーション層7の−Z側の主面の上に位置しており、パッシベーション層7と同様に、電極9と半導体基板1との接続箇所を除いて全面に形成される。保護層8は、パッシベーション層7を保護するための層であり、例えば、湿度などの影響によるパッシベーション層7の変質を低減し、あるいは、電極9の形成時における電極9の金属成分のパッシベーション層7への拡散を低減する。保護層8はパッシベーション層7とは異なる材質で形成され、例えば酸化シリコン層または窒化シリコン層である。保護層8の厚みは、例えば0.05〜10[μm]程度に設定される。保護層8の成膜方法は特に限定されないが、例えばPECVD法またはALD法を採用することができる。なお保護層8は必要に応じて省略してもよい。
図2の例では、電極9は保護層8の−Z側の主面の上に位置しており、例えば全面に形成される。電極9はXY平面において複数の位置で保護層8およびパッシベーション層7を貫通して、半導体基板1の−Z側の主面に接触している。つまり、パッシベーション層7および保護層8には、自身をZ軸方向に沿って連続して貫通する複数の貫通孔が形成されており、電極9はこれらの貫通孔を貫通して半導体基板1の主面に接触する。当該貫通孔の形状は、孔状(またはドット状)であってもよいし、溝状(またはライン状)であってもよい。貫通孔の径(幅)は、例えば10〜150[μm]程度に設定され、ピッチは、例えば0.05〜2[mm]程度に設定され得る。また、これらの貫通孔は、例えば、レーザービーム照射またはフォトリソグラフィ法を用いたエッチングなどの方法で形成できる。特に、YAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット)レーザーなどを用いたレーザービーム照射方法は簡便でよい。
電極9はその主成分として金属(例えばアルミニウムまたは銀)を有している。電極9が配線材140(図1)と接続されることにより、配線材140は太陽電池素子10の第2面10bと電気的に接続される。電極9の厚みは例えば15〜50[μm]に設定され得る。また半導体基板1において電極9との接触部分にはBSF(Back Surface Field)層が形成されていてもよい。BSF層は半導体基板1と同じp型の半導体であって、そのドーパントの濃度は、半導体基板1のうちBSF層以外の部分が含有するドーパントの濃度よりも高い。このBSF層は、例えばボロンまたはアルミニウムなどのドーパントを拡散させることによって形成され得る。例えば電極9の主成分としてアルミニウムを採用する場合には、金属ペーストの焼成によって、金属ペースト中のアルミニウムが拡散してBSF層が形成され得る。このBSF層により、電極9付近の再結合を抑制することができる。また、BSF層の抵抗値は低い。そして、電極9が、半導体基板1の第2主面の上にパッシベーション層7を介して位置する第2電極が構成される。
このような太陽電池素子10に対して+Z側から光(例えば太陽光)が入射されると、その太陽電池素子10の内部において光起電力効果が生じて、電力が発生する。太陽電池素子10は、発生した電力を電極6,9から出力することができる。
太陽電池素子10において、半導体基板1よりも+Z側の構造はTOPCon(Tunnel Oxide Passivated Contact)構造とも呼ばれる。この構造では、トンネルオキサイド層2が界面準位を低下させるので、太陽電池素子10は高い変換効率で電力を出力できる。また半導体基板1よりも−Z側の構造はPERC(Passivated Emitter and Rear Cell)構造とも呼ばれる。この構造では、パッシベーション層7が少数キャリアの表面再結合を低減できるので、太陽電池素子10は高い変換効率で電力を出力できる。つまり、太陽電池素子10において、受光面側の構造としてTOPCon構造を採用し、裏面側の構造としてPERC構造を採用するので、太陽電池素子10はより高い変換効率で電力を出力できる。
<太陽電池素子の製造方法>
図3は、太陽電池素子10の製造方法の一例を示すフローチャートであり、図4〜図8は製造方法における途中の構成の一例を概略的に示す図である。まずステップS1にて、半導体基板1のスライス面に対してエッチング処理を行う。ここでいうスライス面とは、半導体のインゴットから半導体基板1を切り出した際の切断面である。例えばエッチング液としてNaOH、KOH、またはフッ硝酸などの水溶液を用いて、半導体基板1のスライス面を微量にエッチングする。これにより、半導体基板1のスライス面の機械的ダメージ層および汚染層を除去することができる。
次にステップS2にて、半導体基板1の+Z側の主面に凹凸構造(テクスチャ)を形成する。具体的には、例えばウエットエッチング法、またはRIE(Reactive Ion Etching)法などのドライエッチング法を用いて、当該主面に凹凸構造を形成する。
次にステップS3にて、半導体基板1の+Z側の主面の上にトンネルオキサイド層2を形成する(図4も参照)。例えば、酸化用の処理液(例えば高温(100℃前後)の硝酸)に半導体基板1を浸漬することで、半導体基板1の表面を熱酸化させる。これにより、半導体基板1の表面に酸化シリコン層が形成される。この酸化シリコン層のうち半導体基板1の+Z側の主面の上に位置する部分が、トンネルオキサイド層2として機能する。
次にステップS4にて、トンネルオキサイド層2の+Z側の主面の上にn型の半導体層3を形成する。例えば、PECVD法により、n型の非晶質シリコンをトンネルオキサイド層2の+Z側の主面の上に形成する。このPECVD法では、半導体基板1の側面にも非晶質シリコンが形成される(図5も参照)。次に、例えば850℃程度以下でアニール処理を行って、非晶質シリコンを結晶化させて多結晶シリコンに変質させる。この多結晶シリコンのうち半導体基板1の主面とZ軸方向において対向する部分が、半導体層3として機能する。
次にステップS5にて、半導体層3の+Z側の主面の上に透明電極4を形成する(図6も参照)。例えば直流スパッタリング法により、ITO膜を透明電極4として半導体層3の上に形成する。
次にステップS6にて、透明電極4の+Z側の主面の上にキャップ層5を形成する。例えばCVD法により、窒化シリコン層をキャップ層5として形成する(図6も参照)。以下では、ステップS1〜S6によって作製される構造体を構造体30と呼ぶ。
次にステップS7にて、構造体30の−Z側の主面および側面をエッチングする。具体的には、ステップS3で形成された半導体基板1の−Z側の主面上および側面上の酸化シリコンと、ステップS4で形成された半導体基板1の側面上のn型の多結晶シリコンとを除去すべく、エッチング処理を行う。なお、このとき同時に半導体基板1の−Z側の主面もエッチングされ、半導体基板1の当該主面に洗浄および化学研磨を用いた平坦化も行われることになる。このような半導体基板1への作用によって、後に行う当該主面におけるパッシベーションの効果の向上も期待できる。
このエッチング処理としては、構造体30の搬送中にエッチングを行う方法を採用し得る。図9は、このエッチング方法を説明するための図である。エッチング装置20は貯留槽21と複数のローラ22とを備えている。貯留槽21には、エッチング液23が貯留されている。このエッチング液23は、トンネルオキサイド層2および半導体層3の両材料に対するエッチング性に優れた液である。ここでは、トンネルオキサイド層2は酸化シリコン層であり、半導体層3は多結晶シリコンであるので、シリコンに対するエッチング性に優れたエッチング液23が採用され得る。例えばエッチング液23は硝酸およびフッ酸を含んでいてもよい。
各ローラ22は円柱形状を有しており、貯留槽21の内部に配置されている。各ローラ22はその回転軸が水平方向に沿う姿勢で配置されている。複数のローラ22は構造体30の搬送方向に沿って並んで配置される。複数のローラ22は不図示の駆動部によって駆動される。複数のローラ22は互いに同期して同じ方向に回転することにより、このローラ22の上に載置された構造体30を搬送方向に搬送する。このエッチング装置20においては、複数のローラ22の鉛直下方の一部がエッチング液23に浸ることによって、ローラ22がエッチング液23を含浸している。より具体的には、ローラ22のうち鉛直下方の一部はエッチング液23の液面の水平部分よりも下側に位置しており、ローラ22のうち残りの一部(鉛直上方の部分)は当該水平部分より上側に位置している。各ローラ22が回転することにより、ローラ22の鉛直上方の表面には、エッチング液23による膜が形成される。
構造体30は、半導体基板1の−Z側の主面が鉛直下方を向く姿勢で、ローラ22に載置される。構造体30はローラ22の回転に伴ってローラ22の上を移動するので、その移動によって、ローラ22の表面に付着したエッチング液23が構造体30の−Z側の主面の全体にも付着する。また、このとき構造体30の側面にもエッチング液23が付着する。つまり、エッチング液23は構造体30の−Z側の主面および側面に作用する。よって、半導体基板1の−Z側の主面およびその側面に形成された酸化シリコン、ならびにその側面に形成された多結晶シリコンがエッチングされて除去される。
なおステップS7は必ずしもステップS6の後に実行される必要はなく、ステップS4とステップS5との間、または、ステップS5とステップS6との間において実行されてもよい。
次にステップS8にて、半導体基板1の−Z側の主面の上にパッシベーション層7を形成する(図7も参照)。例えばALD法により、酸化アルミニウム層を半導体基板1の−Z側の主面および側面ならびにキャップ層5の+Z側の主面の上に形成する。この酸化アルミニウム層のうち半導体基板1の−Z側の主面上に位置する部分がパッシベーション層7として機能する。酸化アルミニウム層のうち残りの部分はエッチング等により除去してもよいし、除去しなくてもよい。酸化アルミニウム層のうち残りの部分は太陽電池素子10の性能にあまり悪影響を与えないからである。ここでは一例として、残りの部分を除去しない場合を示している。
次にステップS9にて、パッシベーション層7の−Z側の主面の上に保護層8を形成する(図7も参照)。例えばCVD法またはスパッタリング法により、酸化シリコン層を保護層8としてパッシベーション層7の上に形成する。そして、フォトリソグラフィまたはレーザービーム照射により、保護層8に対して電極9用の複数の貫通孔を形成する。
次にステップS10にて、電極6,9をそれぞれ形成する(図8も参照)。例えば、金属ペーストをスクリーン印刷法によりキャップ層5の上(パッシベーション層7の成膜時の窒化シリコン層がキャップ層5の上に形成される場合には、その窒化シリコン層の上)に塗布する。そして当該金属ペーストを焼成することにより、電極6を形成する。なお金属ペーストにはガラスフリットが含まれており、このガラスフリットが溶融してキャップ層5(あるいは更にその上の窒化シリコン層)をファイヤスルー(浸食あるいは焼成貫通)する。これにより、電極6はキャップ層5(あるいは更にその上の窒化シリコン層)を貫通して透明電極4と接続される。
なお、必ずしもファイヤスルーによって電極6が透明電極4に接続される必要はない。例えば電極6の形成前に、電極6が形成されるべき領域において、フォトリソグラフィまたはレーザービーム照射等により、キャップ層5(あるいは更にその上の窒化シリコン層)を除去してもよい。
次に電極9を半導体基板1に接続するための貫通孔をパッシベーション層7および保護層8に形成する。次に電極9用の金属ペーストを例えばスクリーン印刷法により塗布し、当該金属ペーストを焼成することにより、電極9を形成する。この金属ペーストにはガラスフリットが含まれており、パッシベーション層7をファイヤスルーし、電極9と半導体基板1の−Z側の主面とが互いに接続される。なお、電極9の形成前に、電極9が形成されるべき領域において、フォトリソグラフィまたはレーザービーム照射等により、貫通孔部分のパッシベーション層7を除去してもよい。
<太陽電池素子>
上述のように、太陽電池素子10においては、半導体基板1にp型の多結晶シリコンを採用しつつ、TOPCon構造およびPERC構造を併用している。これによれば、低い製造コストで高い変換効率を実現できる。
ここで比較のために、受光側および裏面側の両方にTOPCon構造を採用した太陽電池素子10’を説明する。図10は、太陽電池素子10’の構成の一例を概略的に示す断面図である。図10の例では、太陽電池素子10’は半導体基板1とトンネルオキサイド層2,2’と半導体層3,3’と透明電極4とキャップ層5と電極6,6’とを備えている。半導体基板1、トンネルオキサイド層2、半導体層3、透明電極4、キャップ層5および電極6は上述と同様である。ただし、図10の例では、n型の半導体層3が半導体基板1の側面にも形成されている。
図10の例では、半導体層3を分離するスリット11が形成されている。スリット11は、半導体基板1の+Z側の主面上の半導体層3と、半導体基板1の側面上の半導体層3とを分離する。トンネルオキサイド層2は薄く設定されるので、図10の例では、スリット11はトンネルオキサイド層2および半導体基板1の+Z側の部分にも延在している。スリット11は例えばレーザービーム照射等により形成され得る。
トンネルオキサイド層2’は半導体基板1の−Z側の主面の上に位置している。トンネルオキサイド層2’は酸化シリコン層であり、その厚みはトンネル現象が生じる程度に薄く形成される。例えば、トンネルオキサイド層2’の厚みは0.5〜4[nm]程度に設定され得る。トンネルオキサイド層2’はトンネルオキサイド層2と同様に熱酸化によって形成され得る。図10の例では、トンネルオキサイド層2,2’は分離しているものの、熱酸化によって酸化シリコン層を形成する場合には、半導体基板1の側面にも酸化シリコン層が形成されて連続する。
半導体層3’は、p型の半導体層であり、多結晶シリコンによって形成される。半導体層3’はトンネルオキサイド層2の−Z側の主面の上に位置しており、また、半導体基板1の側面において、n型の半導体層3の上にも位置している。半導体層3は半導体層3’と同様にPECVD法およびアニール処理により形成される。
電極6’は半導体層3’の−Z側の主面の上に位置しており、例えばその全面に形成される。電極6’は例えば主成分に金属(より具体的には例えばアルミニウム)を含んでいる。
このような太陽電池素子10’においては、太陽電池素子10とは異なって、半導体層3,3’が半導体基板1の側面に存在している。なぜなら、半導体基板1の両主面側の半導体層3,3’を残しつつ、その側面の半導体層3,3’のみを除去することは困難だからである。例えば半導体層3,3’を形成した後にエッチング装置20によってエッチングを行えば、その側面の半導体層3,3’を除去できるものの、主面側の半導体層3,3’のどちらかにもエッチング液23が付着するので、その半導体層も除去される。つまり、半導体基板1の側面側の半導体層3,3’を削除しようとすると、半導体基板1の主面側の半導体層3,3’の一方も除去されてしまう。
太陽電池素子10’において、スリット11が形成されていなければ、半導体基板1の側面側において半導体層3,3’が互いに短絡し、太陽電池素子10’が発電した電力を効果的に外部に取り出すことができない。よって、太陽電池素子10’の変換効率が低下する。
そこで図10の例では、半導体層3,3’の短絡を防止するためのスリット11が形成されている。しかしながら、スリット11を形成すると、そのスリット11の周辺には、発電に寄与しない部分が生じる。よって、効果的に発電する有効エリアが狭くなる。したがって、太陽電池素子10’の変換効率には改善の余地がある。
これに対して、太陽電池素子10においては、TOPCon構造およびPERC構造を併用している。よって、スリットを形成することなく、太陽電池素子10’のような半導体層3,3’の短絡を回避することができる。したがって、半導体基板1における有効エリアは広く、太陽電池素子10はより高い変換効率で電力を出力することができる。
以上のように、太陽電池モジュールおよびその製造方法は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
1 半導体基板
2 トンネルオキサイド層
3 半導体層
4 第1電極(透明電極)
6 第1電極(電極)
7 パッシベーション層
9 第2電極(電極)
10 太陽電池素子

Claims (4)

  1. 太陽電池素子であって、
    p型の多結晶シリコン基板である半導体基板と、
    前記半導体基板の第1主面の上に位置するトンネルオキサイド層と、
    前記トンネルオキサイド層の上に位置し、n型の多結晶シリコン層である半導体層と、
    前記半導体層の上に位置する第1電極と、
    前記半導体基板の第2主面の上に位置するパッシベーション層と、
    前記パッシベーション層を通って前記第2主面に接続する第2電極と
    を備える、太陽電池素子。
  2. 請求項1に記載の太陽電池素子であって、
    前記トンネルオキサイド層は、酸化シリコンを含む、太陽電池素子。
  3. p型の多結晶シリコンの半導体基板の第1主面の上にトンネルオキサイド層を形成し、
    前記トンネルオキサイド層の上、および、前記半導体基板の側面に、n型の多結晶シリコンの半導体層を形成し、
    エッチングにより、前記半導体基板の側面に形成される前記半導体層を除去し、
    前記半導体基板の第2主面の上に、パッシベーション層を形成し、
    前記半導体層の上に第1電極を、前記パッシベーション層の上に第2電極を、それぞれ形成する、太陽電池素子の製造方法。
  4. 請求項3に記載の太陽電池素子の製造方法であって、
    前記トンネルオキサイド層および前記半導体層が形成された前記半導体基板を、貯留槽に貯留されたエッチング液を含浸した複数のローラの上で搬送することにより、前記エッチングを行う、太陽電池素子の製造方法。
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