JP2019204690A - 電池セルシート、電池 - Google Patents

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Masayuki Hirooka
誠之 廣岡
栄二 關
Eiji Seki
栄二 關
純 川治
Jun Kawaji
純 川治
宇根本篤
Atsushi UNEMOTO
篤 宇根本
西村 悦子
Etsuko Nishimura
悦子 西村
阿部 誠
Makoto Abe
阿部  誠
西村 勝憲
Katsunori Nishimura
勝憲 西村
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Abstract

【課題】電池の安全性を向上させる。【解決手段】電極と、電極上に形成された絶縁層と、を有する電池セルシートであって、先端角度が30°の釘を電池セルシートに刺した際、電池セルシートの面内方向において、絶縁層が釘と電極との間に形成され、釘を抜いた後に、電極の面内方向側面に絶縁層が形成される電池セルシート。【選択図】図1

Description

本発明は、電池セルシート、電池に関する。
釘刺しや圧壊等が生じた場合にも、被膜層4の伸びにより電極間に大電流が流れるのを防止し安全性を高めることができる電池を提供する技術として特許文献には以下が開示されている。正負電極1、2の表面に、200%以上の引張り伸び率を有し微多孔質で非電気伝導性の高分子化合物である被膜層4を形成した。
特開2000-021386号公報
非水電解質二次電池へ大きな短絡電流が流れるのを防止する技術として、特許文献1には以下の記載がある。200%以上の引張り伸び率を有し微多孔質で非電気伝導性の高分子化合物である被膜層を用いているため、釘を抜いたときに被膜層の弾性変形により、正負電極の側面に被膜層が形成されなくなり部分が生じ、正負電極間で短絡が起こし、電池の安全性が損なわれる可能性がある。
本発明は、電池の安全性を向上させることを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の特徴は、例えば以下の通りである。
電極と、電極上に形成された絶縁層と、を有する電池セルシートであって、先端角度が30°の釘を電池セルシートに刺した際、電池セルシートの面内方向において、絶縁層が釘と電極との間に形成され、釘を抜いた後に、電極の面内方向側面に絶縁層が形成される電池セルシート。
本発明により電池の安全性を向上できる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
二次電池の断面図。 二次電池の部分断面図。 実施例および比較例の構成及び結果。 実施例および比較例の電圧および温度変化。
以下、図面などを用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
本明細書に記載される「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的に記載されている上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に記載される数値範囲の上限値又は下限値は、実施例中に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書では、二次電池としてリチウムイオン二次電池を例にして説明する。リチウムイオン二次電池とは、電解質中における電極へのリチウムイオンの吸蔵・放出により、電気エネルギーを貯蔵または利用可能とする電気化学デバイスである。これは、リチウムイオン電池、非水電解質二次電池、非水電解液二次電池の別の名称で呼ばれており、いずれの電池も本発明の対象である。本発明の技術的思想は、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、カルシウムイオン二次電池、亜鉛二次電池、アルミニウムイオン二次電池などに対しても適用できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池の断面図である。図1は積層型の二次電池であり、二次電池1000は、正極100、負極200、外装体500及び絶縁層300を有する。外装体500は、絶縁層300、正極100、負極200、を収容する。外装体500の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼など、非水電解液に対し耐食性のある材料から選択することができる。本発明は、捲回型の二次電池にも適用できる。
二次電池1000内で正極100、絶縁層300、負極200で構成される電極体400が積層されている。正極100または負極200を電極と称する場合がある。正極100、負極200、または絶縁層300を二次電池用シートと称する場合がある。絶縁層300および正極100または負極200を有する、特に一体構造になっているものを電池セルシートと称する場合がある。
正極100は、正極集電体120及び正極合剤層110を有する。正極集電体120の両面に正極合剤層110が形成されている。負極200は、負極集電体220及び負極合剤層210を有する。負極集電体220の両面に負極合剤層210が形成されている。正極合剤層110または負極合剤層210を電極合剤層、正極集電体120または負極集電体220を電極集電体と称する場合がある。
正極集電体120は正極タブ部130を有する。負極集電体220は負極タブ部230を有する。正極タブ部130または負極タブ部230を電極タブ部と称する場合がある。電極タブ部には電極合剤層が形成されていない。ただし、二次電池1000の性能に悪影響を与えない範囲で電極タブ部に電極合剤層を形成してもよい。正極タブ部130および負極タブ部230は、外装体500の外部に突出しており、突出した複数の正極タブ部130同士、複数の負極タブ部230同士が、例えば超音波接合などで接合されることで、二次電池1000内で並列接続が形成される。本発明は、二次電池1000中で電気的な直列接続を構成させたバイポーラ型の二次電池にも適用できる。
正極合剤層110は、正極活物質、正極導電剤、正極バインダ、を有する。負極合剤層210は、負極活物質、負極導電剤、負極バインダ、を有する。正極活物質または負極活物質を電極活物質、正極導電剤または負極導電剤を電極導電剤、正極バインダまたは負極バインダを電極バインダと称する場合がある。
<電極導電剤>
電極導電剤は、電極合剤層の導電性を向上させる。電極導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、黒鉛などが挙げられるが、これに限られない。これらの材料を単独または複数組み合わせて使用してもよい。
<電極バインダ>
電極バインダは、電極中の電極活物質や電極導電剤などを結着させる。電極バインダとして、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロ-ス、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体(P(VdF-HFP))などが挙げられるが、これらに限られない。これらの材料を単独または複数組み合わせて使用してもよい。
<正極活物質>
貴な電位を示す正極活物質は、充電過程においてリチウムイオンが脱離し、放電過程において負極活物質から脱離したリチウムイオンが挿入される。正極活物質として、遷移金属を含むリチウム複合酸化物が望ましい。正極活物質としては、LiMO2、Li過剰組成のLi[LiM]O2、LiM2O4、LiMPO4、LiMVOx、LiMBO3、Li2MSiO4(ただし、M = Co、Ni、Mn、Fe、Cr、Zn、Ta、Al、Mg、Cu、Cd、Mo、Nb、W、Ruなどを少なくとも1種類以上含む)が挙げられる。また、これら材料における酸素の一部をフッ素など、他の元素に置換してもよい。さらに、硫黄、TiS2、MoS2、Mo6S8、TiSe2などのカルコゲナイドや、V2O5などのバナジウム系酸化物、FeF3などのハライド、ポリアニオンを構成するFe(MoO43、Fe2(SO43、Li3Fe2(PO43など、キノン系有機結晶などが挙げられるが、これらに限られない。元素比は上記定比組成からずれていても良い。
<電極集電体>
電極集電体がアルミニウムの場合、電極集電体の厚さは15μm以下であることが望ましい。電極集電体の厚さが15μmより大きくなると、二次電池1000の体積エネルギー密度が低下する可能性がある。また、電極集電体の引張強度が高くなり、二次電池1000への釘刺し時の短絡抑制が困難となる可能性がある。
先端角度が30°の釘を用いたときの電極集電体の引張強度が、16N以下、好ましくは14N以下であることが望ましい。電極集電体の引張強度が16Nより大きくなると、電極集電体の引張強度が高くなり、二次電池1000への釘刺し時に電極集電体にバリが発生し、電極との短絡により白煙が生じるまたは発火する可能性がある。電極集電体の引張強度は、速度40mm/secで電極集電体を突き刺し、電極集電体が破断した時の強度で計測される。突き刺し治具には釘を用い、釘の先端角度が30°、釘の径は3mmを用いることができる。
電極集電体のヤング率によって望ましい電極集電体の厚さが変わる。例えば、ヤング率が70GPaのアルミニウムでは、電極集電体の厚さが15μmの場合、先端角度が30°の釘で刺さる部分の断面積が196μm2、引張強度が13.7Nである。対して、電極集電体の厚さが17μmの場合、先端角度が30°の釘で刺さる部分の断面積が251μm2、引張強度が17.6Nである。すなわち、電極集電体がアルミニウムの場合、電極集電体の厚さは15μm以下であることが望ましい。一方、ヤング率が200GPaのSUSでは、電極集電体の厚さが15μmの場合、引張強度が39Nである。対して、電極集電体の厚さが9μmの場合、先端角度が30°の釘で刺さる部分の断面積が70μm2、引張強度が14.1Nとなる。従って、ヤング率200GPaのSUS箔を用いる場合、電極集電体の厚さは9μm以下が望ましい。
<正極集電体120>
正極集電体120として、アルミニウム箔、孔径0.1〜10mmの孔を有するアルミニウム製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板、ステンレス鋼、チタンなどが挙げられるが、これらに限られない。
<負極活物質>
卑な電位を示す負極活物質は、放電過程においてリチウムイオンが脱離し、充電過程において正極合剤層110中の正極活物質から脱離したリチウムイオンが挿入される。負極活物質として、炭素系材料(黒鉛、易黒鉛化炭素材料、非晶質炭素材料、有機結晶、活性炭など)、導電性高分子材料(ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリアセチレンなど)、リチウム複合酸化物(チタン酸リチウム:Li4Ti5O12やLi2TiO4など)、金属リチウム、リチウムと合金化する金属(アルミニウム、シリコン、スズなどを少なくとも1種類以上含む)やこれらの酸化物などが挙げられるが、これらに限られない。
<負極集電体220>
負極集電体220として、銅箔、孔径0.1〜10mmの銅製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板、ステンレス鋼、チタン、ニッケルなどが挙げられるが、これらに限られない。
<電極>
電極活物質、電極導電剤、電極バインダ及び溶剤を混合した電極スラリーを、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法などの塗工方法によって電極集電体へ付着させることで電極合剤層が作製される。その後、溶剤を除去するために電極合剤層を乾燥し、ロールプレスによって電極合剤層を加圧成形することにより電極が作製される。
電極合剤層に非水電解液が含まれている場合、電極合剤層中の非水電解液の含有量は20〜40vol%であることが望ましい。非水電解液の含有量が少ない場合、電極合剤層内部でのイオン伝導経路が十分に形成されずレート特性が低下する可能性がある。また、非水電解液の含有量が多い場合、電極合剤層から非水電解液が漏れ出す可能性があることに加え、電極活物質が不十分となりエネルギー密度の低下を招く可能性がある。
電極が半固体電解質を有する場合、外装体500の空いている1辺や注液孔から二次電池1000に非水電解液を注入し、電極合剤層の細孔に非水電解液を充填させてもよい。これにより、半固体電解質に含まれる担持粒子を要せず、電極合剤層中の電極活物質や電極導電剤などの粒子が担持粒子として機能して、それらの粒子が非水電解液を保持する。電極合剤層の細孔に非水電解液を充填する別の方法として、非水電解液、電極活物質、電極導電剤、電極バインダを混合したスラリーを調製し、調整したスラリーを電極集電体上に一緒に塗布する方法などがある。
電極合剤層の厚さは、電極活物質の平均粒径以上とすることが望ましい。電極合剤層の厚さが小さいと、隣接する電極活物質間の電子伝導性が悪化する可能性がある。電極活物質粉末中に電極合剤層の厚さ以上の平均粒径を有する粗粒がある場合、ふるい分級、風流分級などにより粗粒を予め除去し、電極合剤層の厚さ以下の粒子とすることが望ましい。
<絶縁層300>
絶縁層300は、正極100と負極200の間にイオンを伝達させる媒体となる。絶縁層300は電子の絶縁体としても働き、正極100と負極200の短絡を防止する。絶縁層300は、塗布セパレータまたは半固体電解質層を有する。絶縁層300として、塗布セパレータまたは半固体電解質層を併用してもよい。塗布セパレータまたは半固体電解質層に樹脂セパレータを追加してもよい。
<樹脂セパレータ>
樹脂セパレータとして、多孔質シートを用いることができる。多孔質シートとして、セルロース、セルロースの変成体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)など)、ポリオレフィン(ポリプロピレン(PP)、プロピレンの共重合体など)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの樹脂、ガラスなどが挙げられるが、これらに限られない。これらの材料を単独または複数組み合わせて使用してもよい。樹脂セパレータを正極100または負極200より大面積にすることで、正極100と負極200の短絡を防止できる。
<塗布セパレータ>
セパレータ粒子、セパレータバインダ、および溶剤を有するセパレータ形成用混合物を電極合剤層等の基材上に塗布することにより、塗布セパレータが形成される。セパレータ形成用混合物を上記の多孔質シートに塗布してもよい。
セパレータ粒子として、以下の担持粒子中の酸化物無機粒子などが挙げられるが、これらに限られない。これらの材料を単独または複数組み合わせて使用してもよい。セパレータ粒子の平均粒子径は、セパレータの厚さの1/100〜1/2とすることが望ましい。セパレータバインダとして、以下の半固体電解質バインダなどが挙げられるが、これらに限られない。これらの材料を単独または複数組み合わせて使用してもよい。溶剤として、Nメチルピロリドン(NMP)、水などが挙げられるが、これらに限られない。
絶縁層300として樹脂セパレータまたは塗布セパレータを用いる場合、外装体500の空いている1辺や注液孔から二次電池1000に非水電解液を注入することで、セパレータ中に非水電解液が充填される。
<半固体電解質層>
半固体電解質層は、半固体電解質バインダおよび半固体電解質を有する。半固体電解質は、担持粒子および非水電解液を有する。半固体電解質は、担持粒子の集合体によって形成される細孔を有し、その中に非水電解液が保持されている。半固体電解質中に非水電解液が保持されることによって、半固体電解質はリチウムイオンを透過させる。絶縁層300として半固体電解質層を用い、電極合剤層に非水電解液が充填される場合、二次電池1000への非水電解液の注入は不要になる。絶縁層300がセパレータを有する場合など、外装体500の空いている1辺や注液孔から二次電池1000へ非水電解液を注入してもよい。
半固体電解質層の作製方法として、半固体電解質の粉末を成型ダイスなどでペレット状に圧縮成型する方法や、半固体電解質バインダを半固体電解質の粉末に添加・混合し、シート化する方法などがある。半固体電解質に半固体電解質バインダの粉末を添加・混合することにより、柔軟性の高いシート状の半固体電解質層を作製できる。半固体電解質に、分散溶媒に半固体電解質バインダを溶解させた結着剤の溶液を添加・混合し、電極などの基材上に混合物を塗布し、乾燥により分散溶媒を留去することで、半固体電解質層を作製してもよい。
<担持粒子>
担持粒子としては、電気化学的安定性の観点から、絶縁性粒子であり非水電解液に不溶であることが好ましい。担持粒子として、例えば、SiO2粒子、Al2O3粒子、セリア(CeO2)粒子、ZrO2粒子などの酸化物無機粒子を好ましく用いることができる。担持粒子として固体電解質を用いてもよい。固体電解質としては、例えば、Li-La-Zr-Oなどの酸化物系固体電解質やLi10Ge2PS12などの硫化物系固体電解質などの無機系固体電解質の粒子が挙げられる。
非水電解液の保持量は担持粒子の比表面積に比例すると考えられるため、担持粒子の一次粒子の平均粒径は、1nm〜10μmが好ましい。担持粒子の一次粒子の平均粒径が大きいと、担持粒子が十分な量の非水電解液を適切に保持できず半固体電解質の形成が困難になる可能性がある。また、担持粒子の一次粒子の平均粒径が小さいと、担持粒子間の表面間力が大きくなって担持粒子同士が凝集し易くなって、半固体電解質の形成が困難になる可能性がある。担持粒子の一次粒子の平均粒径は、1〜50nmがより好ましく、1〜10nmが更に好ましい。担持粒子の一次粒子の平均粒径は、TEMを用いて測定できる。
<非水電解液>
非水電解液は、非水溶媒を有する。非水溶媒は、有機溶媒、イオン液体またはイオン液体に類似の性質を示すエーテル系溶媒および溶媒和電解質塩の混合物(錯体)を有する。有機溶媒、イオン液体またはエーテル系溶媒を主溶媒と称する場合がある。これらの材料を単独または複数組み合わせて使用してもよい。イオン液体とは、常温でカチオンとアニオンに解離する化合物であって、液体の状態を保持するものである。イオン液体は、イオン性液体、低融点溶融塩あるいは常温溶融塩と称されることがある。非水溶媒は、大気中での安定性や二次電池内での耐熱性の観点から、低揮発性、具体的には室温における蒸気圧が150Pa以下であるものが望ましいが、これに限られない。非水電解液にイオン液体またはイオン液体に類似の性質を示すエーテル系溶媒等の難揮発性の溶媒を用いることで、半固体電解質層からの非水電解液の揮発を抑制できる。
半固体電解質層中の非水電解液の含有量は特には限定されないが、40〜90vol%であることが望ましい。非水電解液の含有量が小さい場合、電極と半固体電解質層との界面抵抗増加する可能性がある。また、非水電解液の含有量が大きい場合、半固体電解質層から非水電解液が漏れ出してしまう可能性がある。半固体電解質層がシート状に形成されている場合、半固体電解質層中の非水電解液の含有量は50〜80Vol%、更には60〜80Vol%であることが望ましい。半固体電解質と分散溶媒に半固体電解質バインダを溶解させた溶液との混合物を電極上に塗布することにより半固体電解質層を形成する場合、半固体電解質層中の非水電解液の含有量は40〜60Vol%であることが望ましい。 非水電解液における主溶媒の重量比率は特には限定されないが、電池安定性および高速充放電の観点から非水電解液中の溶媒の総和に占める主溶媒の重量比率は30〜70wt%、特に40〜60wt%、さらには45〜55wt%であることが望ましい。
<有機溶媒>
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などの炭酸エステル、γ-ブチロラクトン(GBL)、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、リン酸トリメチル(TMP)、リン酸トリエチル(TEP)、亜リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)(TFP)、メチルホスホン酸ジメチル(DMMP)などが挙げられる。これらの材料を単独または複数組み合わせて使用してもよい。
イオン液体またはイオン液体に類似の性質を示すエーテル系溶媒が低粘度有機溶媒を追加することが望ましい場合がある。低粘度有機溶媒は、非水電解液の粘度を下げ、イオン伝導率を向上させる。非水電解液の内部抵抗は大きい場合、低粘度有機溶媒を添加して非水電解液のイオン伝導率を上げることにより、非水電解液の内部抵抗を下げることができる。低粘度有機溶媒は、例えばエーテル系溶媒および溶媒和電解質塩の混合物の25℃における粘度140Pa・sより粘度の小さい溶媒であることが望ましいが、これに限られない。低粘度有機溶媒として、PC、EC、TMP、TEP、TFP、GBL、DMMPなどが挙げられるが、これに限られない。これらの材料を単独または複数組み合わせて使用してもよい。
<イオン液体>
イオン液体はカチオンおよびアニオンで構成される。イオン液体としては、カチオン種に応じ、イミダゾリウム系、アンモニウム系、ピロリジニウム系、ピペリジニウム系、ピリジニウム系、モルホリニウム系、ホスホニウム系、スルホニウム系などに分類される。イミダゾリウム系イオン液体を構成するカチオンには、例えば、1-butyl-3-methylimidazorium(BMI)などのアルキルイミダゾリウムカチオンなどがある。アンモニウム系イオン液体を構成するカチオンには、例えば、tetraamylammoniumなどのほかに、N,N,N-trimethyl-N-propylammoniumなどのアルキルアンモニウムカチオンがある。ピロリジニウム系イオン液体を構成するカチオンには、例えば、N-methyl-N-propylpyrrolidinium(Py13)や1-butyl-1-methylpyrrolidiniumなどのアルキルピロリジニウムカチオンなどがある。ピペリジニウム系イオン液体を構成するカチオンには、例えば、N-methyl-N-propylpiperidinium(PP13)や1-butyl-1-methylpiperidiniumなどのアルキルピペリジニウムカチオンなどがある。ピリジニウム系イオン液体を構成するカチオンには、例えば、1-butylpyridiniumや1-butyl-4-methylpyridiniumなどのアルキルピリジニウムカチオンなどがある。モルホリニウム系イオン液体を構成するカチオンには、例えば、4-ethyl-4-methylmorpholiniumなどのアルキルモルホリニウムなどがある。ホスホニウム系イオン液体を構成するカチオンには、例えば、tetrabutylphosphoniumやtributylmethylphosphoniumなどのアルキルホスホニウムカチオンなどがある。スルホニウム系イオン液体を構成するカチオンには、例えば、trimethylsulfoniumやtributhylsulfoniumなどのアルキルスルホニウムカチオンなどがある。これらカチオンと対になるアニオンとしては、例えば、bis(trifluoromethanesulfonyl)imide(TFSI)、bis(fluorosulfonyl)imide、tetrafluoroborate(BF4)、hexafluorophosphate(PF6)、bis(pentafluoroethanesulfonyl)imide(BETI)、trifluoromethanesulfonate(トリフラート)、acetate、dimethyl phosphate、dicyanamide、trifluoro(trifluoromethyl)borateなどがある。これらの材料を単独または複数組み合わせて使用してもよい。
<電解質塩>
非水溶媒が有機溶媒またはイオン液体を有する場合、非水電解液は電解質塩を有する。電解質塩として、主溶媒に均一に分散できるものが望ましい。カチオンがリチウム、上記アニオンからなるものがリチウム塩として使用することができ、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(LiBETI)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムヘキサフルオロフォスファート(LiPF6)、リチウムトリフラートなどが挙げられるが、これに限られない。これらの材料を単独または複数組み合わせて使用してもよい。
<エーテル系溶媒>
エーテル系溶媒は、溶媒和電解質塩と溶媒和イオン液体を構成する。エーテル系溶媒として、イオン液体に類似の性質を示す公知のグライム(R-O(CH2CH2O)n-R’(R、R’は飽和炭化水素、nは整数)で表される対称グリコールジエーテルの総称)を利用できる。イオン伝導性の観点から、テトラグライム(テトラエチレンジメチルグリコール、G4)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル、G3)、ペンタグライム(ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、G5)、ヘキサグライム(ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル、G6)を好ましく用いることができる。また、エーテル系溶媒として、クラウンエーテル((-CH2-CH2-O)n(nは整数)で表わされる大環状エーテルの総称)を利用できる。具体的には、12-クラウン-4、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6などを好ましく用いることができるが、これに限らない。これらの材料を単独または複数組み合わせて使用してもよい。溶媒和電解質塩と錯体構造を形成できる点で、テトラグライム、トリグライムを用いることが好ましい。
溶媒和電解質塩としては、LiFSI、LiTFSI、LiBETI、LiBF4、LiPF6などのリチウム塩を利用できるが、これに限らない。非水溶媒として、エーテル系溶媒および溶媒和電解質塩の混合物を単独または複数組み合わせて使用してもよい。
<負極界面安定化剤>
非水電解液は負極界面安定化剤を有していてもよい。非水電解液が負極界面安定化剤を有することにより、二次電池1000のレート特性の向上や電池寿命の向上できる。負極界面安定化剤の添加量は、非水電解液の重量に対して30wt%以下、特に10wt%以下が好ましい。30wt%より大きいと、イオン伝導率を阻害、あるいは電極と反応して抵抗が上昇する可能性がある。負極界面安定化剤として、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などが挙げられるが、これらに限らない。これらの材料を単独または複数組み合わせて使用してもよい。
<腐食防止剤>
非水電解液は腐食防止剤を有していてもよい。腐食防止剤により、正極集電体120が高い電気化学電位に晒されても金属が溶出しにくい皮膜が形成される。腐食防止剤としては、PF6やBF4といったアニオン種を含むこと、および水分を含んだ大気で安定な化合物を形成するための強い化学結合を有するカチオン種を含んだ材料が望ましい。
大気で安定な化合物であることを示す一指標としては、水に対する溶解度や加水分解の有無を挙げることができる。腐食防止剤が固体の場合、水に対する溶解度が1%未満であることが望ましい。また、加水分解の有無は、水と混合後の試料の分子構造解析で評価できる。ここでは、加水分解しない、とは、腐食防止剤が吸湿あるいは水と混和した後、100℃以上で加熱し水分を除去した後の残留物の95%が添加剤と同じ分子構造を示していることを意味する。
腐食防止剤は(M−R)+An-で表される(M−R)+An-のカチオンは、(M−R)+であり、Mは窒素(N)、ホウ素(B)、リン(P)、硫黄(S)のいずれかからなり、Rは炭化水素基から構成される。また、(M−R)+An-のアニオンはAn-であり、BF4−やPF6−が好適に用いられる。腐食防止剤のアニオンをBF4−やPF6−にすることで、正極集電体120の溶出を効率的に抑制できる。これは、BF4−やPF6−のFアニオンが電極集電体のSUSやアルミニウムと反応し、不動態皮膜を形成することが影響すると考えられる。
腐食防止剤の例として、テトラブチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート(NBu4PF6)、テトラブチルアンモニウム テトラフルオロボレート(NBu4BF4)の4級アンモニウム塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMI−BF4)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート(EMI−PF6)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(BMI−BF4)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート(BMI−PF6)などのイミダゾリウム塩が挙げられる。特に、アニオンがPF6であれば、正極集電体120の溶出を抑制できる。これらの材料を単独または複数組み合わせて使用してもよい。
腐食防止剤の含有量は、非水電解液の総重量に対して、0.5〜20wt%、好ましくは、1〜10wt%であることが望ましい。腐食防止剤の含有量が少ないと、電極集電体の溶出を抑制する効果が低下し、充放電に伴い電池容量が低下しやすい。また、腐食防止剤の含有量が多いと、リチウムイオン伝導度が低下し、さらに、腐食防止剤を分解させるために多くの蓄電エネルギーが消費されてしまい、結果として電池容量が低下する可能性がある。
<半固体電解質バインダ>
半固体電解質バインダとして、低融点材料を有することが望ましい。低融点材料とは、融点が正極活物質の価数減少温度以下の材料を意味する。正極活物質の価数減少温度とは、充電状態の正極活物質粒子表面の金属元素の価数が温度上昇に伴い低くなる温度である。二次電池1000が正極活物質の価数減少温度を超えると、正極100から酸素が放出され、正極100と負極200との短絡により火花等が生じ、発火する可能性がある。それに対して、半固体電解質バインダとして融点が正極活物質の価数減少温度以下の材料を用いることにより、正極活物質の価数減少温度以下で材料が溶解し、二次電池1000への釘刺しで現れた正極100または負極200断面を絶縁保護できる。
正極活物質がLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2の場合、正極活物質の価数減少温度は約170℃である。よって、半固体電解質バインダとして、融点が170℃以下、好ましくは160℃以下、更に好ましくは155℃の材料を有することが望ましい。
低融点材料として、ポリエチレン(PE)、エチレン・酢酸ビニル(EVAC)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PA)、アクリロニトリル・スチレン(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカーボネート(PC)、アセタール樹脂(PCM)、SBR、P(VdF-HFP)等の樹脂が挙げられる。これらの材料を単独または複数組み合わせて使用してもよい。P(VdF-HFP)を用いることで、絶縁層300と電極集電体の密着性が向上するため、電池性能が向上する。半固体電解質バインダ内に、低融点材料以外にPVDF等の融点が正極活物質の価数減少温度より大きい材料を含めてもよい。
絶縁層300における低融点材料の添加量は4〜15wt%であることが望ましい。低融点材料の添加量が少ないと正極100または負極200断面の絶縁性を確保することが難しくなる可能性がある。低融点材料の添加量が多いと、非水電解液を保持する担持粒子が少なくなり、非水電解液が十分でなくなり、二次電池1000の抵抗が高くなる可能性がある。低融点材料の添加量の測定方法は以下のとおりである。まず、二次電池1000を解体し、メタノール洗浄により二次電池1000中の非水電解液を除去し、電極を乾燥させた後、半固体電解質のみをかきだして、重量を測定する。その後、半固体電解質をNMPに浸漬し、遠心分離後に上澄み液をNMR分析し、各種低融点バインダ由来のピーク比により低融点材料の添加量が算出される。
<半固体電解質>
非水電解液が担持粒子に担持または保持されることにより半固体電解質が構成される。半固体電解質の作製方法として、非水電解液と担持粒子とを特定の体積比率で混合し、メタノールなどの有機溶媒を添加し・混合して、半固体電解質のスラリーを調合した後、スラリーをシャーレに広げ、有機溶媒を留去して半固体電解質の粉末を得る、などが挙げられる。
<釘刺し>
二次電池1000への釘刺しによる絶縁層300の変化を図2に示す。図2(a)〜(d)は、二次電池の部分断面図である。図2(a)は、釘2000を刺す前の二次電池1000の状態である。電極の積層方向から二次電池1000に釘2000を刺した直後、図2(b)のように、釘2000を介して正極100および負極200が導通状態になり、正極100および負極200が短絡し、二次電池1000の電圧が下がる。その後、正極100および負極200の短絡で生じた熱により絶縁層300中のバインダ成分が溶融する。図2(c)のように、溶融した絶縁層300は電極の側面および釘2000の周辺に形成され、釘2000および電極がほぼ絶縁される。換言すれば、先端角度が30°の釘を電池セルシートに刺した際、電池セルシートの面内方向において、絶縁層300が釘2000と電極との間に形成される。これにより、正極100および負極200の短絡が抑制される。溶融した絶縁層300が電極の側面に形成された後、二次電池1000の電圧が釘2000を刺す前の電圧とほぼ等しくなる。二次電池1000から釘2000を抜いた後でも、図2(d)のように、電極の側面に溶融した絶縁層300が形成されている。換言すれば、釘2000を抜いた後に、電極の面内方向側面に絶縁層300が形成される。その際、正極100および負極200間で微小短絡が生じており、二次電池1000の電圧は安全性を損なわない程度に徐々に低下していく。これにより、二次電池1000の安全性を向上できる。
電極の積層方向から二次電池1000に釘2000を刺した直後の二次電池1000の電圧降下は0.01〜0.07V、好ましくは0.02〜0.07Vとなることが望ましい。溶融した絶縁層300が電極の側面に形成された後に回復した二次電池1000の電圧は釘2000を刺す前の二次電池1000の電圧の50%以上となることが望ましい。二次電池1000の電圧が低下していく程度として、釘2000を刺す前の二次電池1000の電圧と釘2000を刺した30秒後の二次電池1000の電圧との差が0.04V以下、好ましくは0.03V以下、更に好ましくは0.02V以下であることが望ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、正極導電剤としてアセチレンブラック(電気化学製:HS100)、正極バインダとしてポリフッカビニリデン(PVDF)を94:4:2の割合で混練機を用いて均一に混合した。この混合物にNメチル2ピロリドン(NMP)を入れスラリー化し、所定の固形分比に調整した後、Al製の正極集電体120上に卓上コーター(サンクメタル製)にて120℃の乾燥炉を通して塗工して、正極100を作製した。塗工量は、両面30.1mg/cm2とした。ロールプレスで密度を調整し、電極密度を3.15g/cm3とした。
負極活物質として黒鉛、負極バインダとしてスチレン・ブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシルメチルセルロース(CMC)を98:1:1の割合で混練機を用いて均一に混合した。この混合物に水を入れ、所定の固形分比に調整した後、Cu製の負極集電体220上に卓上コーターにて100℃の乾燥炉を通して塗工して、負極200を作製した。塗工量は両面18.1mg/cm2とした。ロールプレスで密度を調整し、電極密度を1.55g/cm3とした。
セパレータ粒子として1μmのSiO2とセパレータバインダとしてP(VdF-HFP)の割合が89.3:10.7になるように混練機を用いて均一に混合した。この混合物にNMPを入れスラリー化し、所定の固形分比に調整した。その後、卓上コーターにて100℃の乾燥炉を通して、電極の両面にスラリーを塗工し、塗布セパレータである絶縁層300を作製した。
電極をエアー式打ち抜き機で正極合剤層110が178×178mm、負極合剤層210が182×183mmとなるように打ち抜き、電極タブ部を作製した。電極を100℃で2h乾燥し、電極中のNMPを除去した。厚みが30μmでPP/PE/PPの3層構造である樹脂セパレータに正極100を挟み込み、正極タブ部130が形成されている辺以外の3辺を熱溶着した。
正極100および負極200を所定枚数交互に積層した(電極体400)後、最外層の負極200上に厚さ50μmのポリテトラフルオロエチレン製のシートを配置した。電極の端部に形成された電極タブ部を束ねて、束ねた電極タブ部とAl製の正極端子およびNi製の負極端子をそれぞれ超音波で溶接した。
電極体400をラミネートフィルムに挟み込み、注液用の1辺を残し、電極タブ部が形成された辺を含む3辺をラミネート封止装置にて200℃で熱封止し、60℃で20h真空乾燥させた。注液用の1辺から電解液を注液し、注液用の1辺を真空封止した。電解液は、1MのLiPF6、EC(エチレンカーボネート)、EMC(エチルメチルカーボネート)にVC(ビニレンカーボネート)を1wt%添加したものである。ECとEMCの体積比率は1:2とした。
<釘刺し試験>
作製したラミネート型の二次電池1000を周辺温度25℃、電圧4.2V、電流0.05CAの定電流で充電させた後、20時間定電圧充電を行った。また、二次電池1000を電圧2.7V、電流0.05CAの定電流で放電させた後、再度、電圧4.2V、電流0.05CAの定電流で充電させた後、20時間定電圧充電を行った。
その後、二次電池1000を中央部が空いた固縛治具を用いて固縛し、二次電池1000の中央を釘刺し速度40mm/secで二次電池1000が貫通するまで釘2000を刺し、1分保持した。先端角度は30°、釘径は3mmの釘2000を用いた。釘2000が刺さっている間の二次電池1000の電圧を測定した。釘刺し試験によるラミネート型の二次電池1000からの白煙の有無を目視により確認した。
<温度測定>
釘2000の先端に内蔵された熱電対と、二次電池1000表面に貼り付けた熱電対により、釘2000が刺さる前後の温度を測定した。
<実施例2〜4>
非水電解液等を図3のようにした以外は実施例1と同様にした。
<比較例1〜3>
絶縁層300を有さない場合等、図3のようにした以外は実施例1と同様にした。
<結果と考察>
実施例及び比較例の結果を図3および図4に示す。実施例1〜4では、釘刺し試験による二次電池1000の白煙は見られなかった。比較例1〜3では、釘刺し試験による二次電池1000の白煙gが発生した。実施例1〜4では、二次電池1000は釘刺し試験により図2(a)〜(d)の挙動を示したと考えられる。一方で、比較例1〜3では、釘刺し試験により二次電池1000中の電極が短絡し、二次電池1000から白煙が発生したものと考えれる。
実施例1〜2における二次電池1000に釘刺し試験を実施した場合には、釘刺し直後に0.2V程度の電圧低下が瞬間的に生じたものの、すぐに電圧が回復し、緩やかに電圧が低下する傾向がみられた。また、実施例1〜2における二次電池1000の表面温度は釘刺しの前後でほとんど変化せず、釘2000の先端の温度は実施例1では40℃まで上昇した後一定温度を保持しつづけ、実施例2では温度がほとんど上昇しなかった。30分以上放置しても更なる温度上昇はみられず、非水電解液の噴出や、発煙・発火は認められなかった。また、釘刺し後の緩やかな電圧低下により、徐々に二次電池1000エネルギーが失われたことで、釘刺し後の電池の安全も担保されることがわかった。
実施例1〜2における二次電池1000の温度は最高で40℃までしか上昇しなかったにも係わらず、釘刺し試験後の断面構造の観察から絶縁層300が溶融し、正極100と負極200の側面を絶縁層300が覆っていることが確認された。これは、釘刺し直後の電圧低下時に流れた突入電流により、釘2000と電極体400の間で局所的に150℃の高温状態が実現され、絶縁層300が溶融し、短絡が防止されたと考えられる。
一方、比較例1における二次電池に対して充電状態で釘刺し試験を実施すると、釘刺し後数秒で、電圧は0Vに低下し、二次電池1000の温度も最高540℃まで上昇した。
100 正極、110 正極合剤層、120 正極集電体、130 正極タブ部
200 負極、210 負極合剤層、220 負極集電体、230 負極タブ部
300 絶縁層、400 電極体、500 外装体
1000 二次電池
2000 釘

Claims (7)

  1. 電極と、
    前記電極上に形成された絶縁層と、を有する電池セルシートであって、
    先端角度が30°の釘を前記電池セルシートに刺した際、前記電池セルシートの面内方向において、前記絶縁層が前記釘と前記電極との間に形成され、
    前記釘を抜いた後に、前記電極の面内方向側面に前記絶縁層が形成される電池セルシート。
  2. 請求項1の電池セルシートであって、
    前記絶縁層は、低融点材料を有する電池セルシート。
  3. 請求項1の電池セルシートであって、
    前記電池セルシートは、腐食防止剤を有する電池セルシート。
  4. 請求項1の電池セルシートであって、
    前記電池セルシートは、負極界面安定化剤を有する電池セルシート。
  5. 請求項1の電池セルシートであって、
    前記電極は正極であり、
    前記正極は、正極集電体を有し、
    前記釘を用いたときの前記正極集電体の引張強度が16N以下である電池セルシート。
  6. 請求項2の電池セルシートにおいて、
    前記低融点材料の添加量は4〜15wt%である電池セルシート。
  7. 請求項1の電池セルシートを有する電池であって、
    前記釘を刺す前の前記電池の電圧と前記釘を刺した30秒後の前記電池の電圧との差が0.04V以下である電池。
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