本発明は、金属材料でなる接合部材と被接合部材とを気密性を高くして接合してなる金属部材の非貫通接合構造に関するものである。
従来、金属材料でなる接合部材と被接合部材とを接合して複合部品を製造する場合には、当該接合部材の用途によってはその接合個所の気密性が要求されている。例えば、リチウム電池にあっては、電極端子に溶接等によりリード線等を取付けることから、電極端子には導電率の高い銅部材と耐食性の高いアルミ部材とを接合した複合部品が使用されている。通常、この種の複合部品の製造にあっては、一般的なかしめによる締結方法が用いられている。すなわち、溶接等の処理がされる部材を平板部材とし、この平板部材に貫通穴を穿設しておき、他方の部材を小径部が形成された段付き形状として、前述の貫通穴にこの小径部を差し込んでこの小径部をかしめることにより、両部材が接合されている。
この種の複合部品を電解液が充満するリチウム電池の外部電極端子として使用すると、経年劣化によりかしめ個所である接合部から電解液が漏洩する恐れがある。これを防止するため、図11(a)に示すように袋穴105aを持つアルミ部材でなる平板部材105と、図11(b)に示す突部104cを持つ銅部材でなる棒状の接合部材104とをあらかじめ成形しておき、その後に両部材を接合する方法が用いられている。
具体的には、図11(c)に示すように接合部材104を受け型106内に位置決めした状態で、その突部104cに平板部材105の袋穴105a(図11(a)参照)が嵌合するように平板部材105がプレス機により押圧される。この接合方法により、接合個所は平板部材105の袋穴105a内となるので、気密性の高い複合部品が製造される。そのため、液体が充満されたリチウム電池(図2参照)1の電池缶1bのような密閉された内部に通じる個所に当該複合部品を外部電源端子3として使用しても、接合個所から液体が漏洩する恐れは皆無となっている。
しかしながら、前述の金属部材の接合方法にあっては、棒状の接合部材104から平板部材105が抜け落ちないようにするため、接合部材104には図11(b)に示すように平板部材105の押圧時にその余肉が回り込む溝部104aを加工しておかねばならない。そのため、接合部材104の構造が複雑となるばかりか、接合部材104、平板部材105それぞれの製造工程のほかに、この接合部材104と平板部材105とを接合する接合工程が必要で、複合部品の製造コストが高くなるという問題が生じている。
本発明は、非貫通接合構造である。この非貫通接合構造は、突部を有する金属製の接合部材と、前記接合部材の突部を挿入可能な袋穴を有する被接合部材と、前記接合部材の突部を被接合部材の袋穴に挿入した状態で被接合部材を圧縮し、被接合部材を介して接合部材を塑性変形させることにより、接合部材の突部の上端外周に背面が斜めに変形して形成されるアンダーカット部と、塑性変形に伴い前記アンダーカット部の背面に回り込み、両部材同士を抜脱不能に接合する被接合部材の余肉と、を備えることを特徴としている。この構成により、接合部材のアンダーカット部が被接合部材の余肉の回り込む溝を形成することとなり、被接合部材の抜け止め効果がもたらされる。また、接合部材のアンダーカット部の背面により被接合部材の余肉がかしめられる状態となり、これら部材の密着性が向上して大きな軸線方向の強度が得られる。さらに、接合個所が穴部内で非貫通状態であるので、気密性の高い接合構造が得られる。
また、本発明の非貫通接合構造は軸方向の強さ、すなわち抜き強度を大きくするために、前記アンダーカット部において被接合部材と接合部材を密着させる構成であることが望ましい。
本発明に係る被接合部材は、被接合部材の流動性をよくして、被接合部材と接合部材との密着性を向上させるために、接合部材よりも柔らかい材料でなり、被接合部材の加工硬化を利用して接合部材の突部の変形を引き起こす構成であることが望ましい。
本発明に係る突部は、回転方向の抵抗を大きくして、大きな回転方向の強度を得るために、突端近傍に拡広した段部を有し、当該段部の外周が歯形状をなすことが望ましい。
以上説明した本発明によれば、金属材料でなる接合部材と被接合部材とを気密性を高くしてかつ安価に接合してなる金属部材の非貫通接合構造を提供することができる。
本発明の第1の実施形態に関連する金属部材の非貫通接合方法を説明する被接合部材の成形工程図。
本発明の第1の実施形態に関連する金属部品の非貫通接合方法により製造される複合部品の用途の一例であるリチウム電池の概略説明図。
本発明の第1の実施形態に係る被接合部材(a)、接合部材(b)それぞれの正面図。
本発明の第1の実施形態に関連する金属部材の非貫通接合方法を説明する被接合部材の嵌合工程(a)と被接合部材の予備成形工程(b)とを示す要部断面図。
本発明の第1の実施形態に係る金属部材の非貫通接合構造の要部断面図。
本発明の第1の実施形態に関連する金属部材の非貫通接合方法の効果を説明する非貫通接合構造(a)、従来構造(b)それぞれの拡大切断面の対比写真。
本発明の第1の実施形態に関連する金属部材の非貫通接合方法の効果を説明する非貫通接合構造(a)、従来構造(b)それぞれの抜き強度の対比特性図。
本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合構造の第1変形例(a)および第2変形例(b)を示す要部断面図。
本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合方法の変形例を説明する金属部材の接合工程図。
本発明の第2の実施形態に係る金属部材の接合方法の工程図。
従来の金属部材の接合方法を説明する工程図。
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に関連する金属部材の非貫通接合方法(以下、第1接合方法という)を図面に基づき説明する。図2に示すように、1は第1接合方法により製造される複合部品を外部電極端子として使用する用途の一例を示すリチウム電池である。このリチウム電池1は複数枚の電池パック1aを収納する電池缶1bを有し、この電池缶1bの上面には正極側外部電極端子(図示せず)と負極側外部電極端子(以下、負側外部端子という)3とが取付けられている。前記電池パック1aは上端に正、負の各電極端子1a1,1a2を有し、隣接する電池パック1a,1aの一方の負電極端子1a2と他方の電池パック1aの正電極端子1a1間にはバスバー1cが接続され、複数の電池パック1aが直列に接続されている。また、最後列の電池パック1aの負電極端子1a2にもバスバー1cが連接されており、このバスバー1cの端部には前述の負側外部端子3が接続されている。
前記負側外部端子3は、図5に示すように銅部材でなる接合部材4と、この接合部材4よりも柔らかいアルミ部材でなる被接合部材5とからなっている。前記接合部材4は、棒状の軸部4aと、外形状が非円形状の一例である歯形状の段部4bと、これに連続しかつこれから突出する突部4cとを有している。前記段部4bは、突部4cの突端近傍に拡広しており、その外周囲で回転方向の摩擦抵抗を確保している。また、前記被接合部材5は前記接合部材4の段部4bおよび突部4cを覆う所定厚さの平板部5bを有するが、図3(a)および(図3(b)に示すように当該成形が行われる前には前述の接合部材4の段部4bおよび突部4cが嵌合可能な穴部5aを有している。前記負側外部端子3は、図4(a)および図4(b)並びに図5に示すように被接合部材5の袋穴5a内に接合部材4の段部4bおよび突部4cが位置するように被接合部材5を接合部材4に被せ、後記受け型6との間で被接合部材5を圧縮することにより被接合部材5と接合部材4を同時に塑性変形させて、接合部材4に背面が斜めに変形したアンダーカット部4ccを形成しつつそのアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませて、両部材同士を抜脱不能に接合する非貫通接合構造Sを有している。
前述の構造により、接合部材4のアンダーカット部4ccが被接合部材5の余肉の回り込む溝を形成することとなり、被接合部材5の抜け止め効果がもたらされる。また、接合部材4のアンダーカット部4ccの背面により被接合部材5の余肉がかしめられる状態となり、これら部材の密着性が向上して大きな軸線方向の強度が得られる。さらに、被接合部材5の余肉が段部4bの歯形状の空隙に回り込むことにより回転方向の抵抗が大きくなり、大きな回転方向の強度が得られるばかりか、接合個所が穴部5a内で非貫通状態であるので、気密性の高い接合構造が得られる。これにより、当該負側外部端子3は液体が充満されるリチウム電池1の電池缶1bのような密閉される内部に通じる個所で使用されても、液体が漏洩することはない。同時に、リード線等を溶着するスペースを十分に確保でき、しかもその耐食性も確保できる平板部5bを得ることができる。その他、被接合部材5が接合部材4よりも柔らかい部材であることから、被接合部材5の流動性がよく、前述の密着性をさらに向上させることができる。なお、接合部材4および被接合部材5は同一材質であっても前記密着性向上の程度は異なるが、同様の効果が得られる。
前記負側外部端子3は、図1、図3および図4に示す第1接合方法により製造されている。すなわち、この第1接合方法は接合部材4の製造工程(図示せず)と、被接合部材5の製造工程(図示せず)とを有している。また、この第1接合方法は図4(a)に示すように接合部材4の段部4bおよび突部4cが被接合部材5の穴部5aに嵌合するように被接合部材5を接合部材4に被せる嵌合工程と、図4(b)に示すように被接合部材5を圧縮して仕上げ成形前の予備形状でなる予備成形部5cを成形する予備成形工程と、接合部材4の突部4cが露出しない範囲で被接合部材5の予備成形部5cを平板状に成形する成形工程とからなっている。前記嵌合工程は、接合部材4の軸部4aを受け型6内でノックアウトピン7により位置決めし、その上方から接合部材4の段部4bおよび突部4cが被接合部材5の袋穴5a内に位置するように被接合部材5を接合部材4に被せ、これらを嵌合させるように構成されている(図4(a)参照)。この場合、被接合部材5の前進方向は、上方からに限定されるものではなく、接合部材4と被接合部材5を横方向に配置することにより水平方向からとすることもできる。
前記被接合部材5の予備成形工程は、図4(b)に示すように接合部材4の段部4bおよび突部4cに嵌合する被接合部材5を仕上げ成形前の予備形状でなる予備成形部5cに成形する予備成形押し型(図示せず)を有している。この予備成形押し型は、受け型6に対して前進して被接合部材5の上部を予備成形押し型で圧縮し、予備成形押し型に形成される成形穴、すなわち予備形状に対応する予備成形部5cを成形する。この時、接合部材4の段部4bおよび突部4cと被接合部材5の穴部5aの内壁との間隙に被接合部材5の余肉が回り込み、接合部材4の軸部4aを受け型6で保持した状態でこれら部材が接合される。これにより、被接合部材5が延性の良好な材質でないときでも、成形工程での被接合部材5の確実な成形を補助している。この予備成形工程は、第1接合方法にあっては必須の工程ではなく、被接合部材5が延性の良好な柔らかい金属部材でなるときには、被接合部材5を嵌合工程から直接成形工程で成形してもよい。
前記成形工程は、図1に示すように被接合部材5の予備成形部5cから所定厚さの平板部5bを成形するための成形押し型(図示せず)を有している。この成形押し型は、前記予備成形部5cに対して上方から前進して予備成形部5cを所定の厚さまたは所定厚さと所定形状とを備える平板部5bに成形する。この時、成形押し型の下死点は平板部5bの厚さ、被接合部材5の延性、接合部材4の突部4cと被接合部材5の穴部5aとの嵌合深さ、接合部材4の硬度等から接合部材4の突部4cが露出しないように考慮されている。
上記第1接合方法において、図4(a)に示すように受け型6内で接合部材4の軸部4aがノックアウトピン7により位置決めされ、同時にその段部4bが受け型6の上面で保持される。その後、被接合部材5がその穴部5aを接合部材4の段部4bおよび突部4cに嵌合させるように前進した後に、図4(b)に示すように予備成形押し型が受け型6に対して前進し、被接合部材5の上部を圧縮して予備成形部5cを成形する。この時、予備成形押し型が接合部材4よりも柔らかい被接合部材5を介して接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その上端外周をわずかに外方に扁平させ、接合部材4にアンダーカット部4ccを形成しつつそのアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませる。
前記予備成形押し型を後退させた後に、図1に示すように成形押し型が受け型6に対して所定下死点まで前進する。この成形押し型の前進にともなって、成形押し型が前記予備成形部5cを圧縮して所定厚さの平板部5bを成形する。この時、予備成形部5c、すなわち被接合部材5は接合部材の突部4cが露出しないように成形され、同時に接合部材4と被接合部材5とが抜脱不能に接合される。しかも、これら部材は非貫通接合状態で、すなわち接合個所の気密性を保持して接合される。この時、外周が歯形状となっている段部4bの間隙には、予備成形部5c、すなわち被接合部材5の余肉が回り込んで、平板部5bの首下には大円柱段部4b1が形成されて回転方向の抵抗が大きくなる。これにより、接合部材4の段部4bの外周囲の摩擦抵抗に加えて、予備成形部5cの余肉が歯形状の段部の間隙に回り込むことによる回転方向の抵抗が大きくなり、回転方向の強度が向上する。
前記平板部5bの成形時には、前記成形押し型が予備成形部5cを介して接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その上端外周がさらに外方に扁平し、アンダーカット部4ccが成形される。この間、接合部材4のアンダーカット部4ccがその背部で予備成形部5cの余肉をかしめるとともに、この余肉を接合部材4の段部4bと予備成形部5cとの間隙に回り込ませることができる。この時、前記アンダーカット部4ccにあっては、被接合部材5による接合部材4の突部4cの圧縮と接合部材によるかしめとによって接合部材4と被接合部材5とが接合されることとなるので、両部材間に間隙が生じることなく、高い密着性が得られる。これは、図6(a)に示すように実際の接合部材4と被接合部材5との接合個所の拡大切断写真からも明確となっている。すなわち、図6(b)に示す従来方法に係る接合個所の拡大断面写真では、当該接合個所の所どころに間隙(境界部分の黒色部)が認められ、余肉の回りが十分でないことが窺がえる。これに対して、第1接合方法に係る接合個所には隙間が認められず、余肉は十分に回り込んで接合部材4と被接合部材5との間で高い密着性が得られていることが窺がえる。特に、図6(a)の被接合部材5にはA1070のアルミ部材を、また接合部材4には銅部材を使用し、被接合部材5を
接合部材4よりも柔らかい材料とすることにより、被接合部材5の加工硬化を利用して接合部材4の変形を引き起こすことになるので、被接合部材5の流動性がよくなって接合部材4と被接合部材5との良好な密着性が顕著に現れる。
なお、上記説明は、第1接合方法において、接合部材4に従来技術の溝部104aを予め成形しておくことを積極的に排除するものではない。
また、図1に示すように前記接合部材4のアンダーカット部4ccの背部は予備成形部5cの余肉を接合部材4の段部4bおよび受け型6の上面との間でかしめることとなって当該余肉を加工硬化させながら、接合部材4の段部4bおよび突部4cと予備成形部5cとの間隙側に押し込む。これにより、接合部材4に当該余肉が回り込むための溝加工等の抜け止め加工をあらかじめ施すことなく、両部材同士を抜脱不能に接合することができる。そのため、接合部材4は単純な構造でよいばかりか、前記余肉の加工硬化と相俟って接合部材4の軸線方向の強度、すなわち抜き方向の強度を高めることができる。これは、図
7(a)に示すように第1接合方法に係る抜き強度が2.5N以上であるのに対して、図7(b)に示すように従来方法に係る抜き強度が2.0N以下であることから明確となっている。
さらに、前記成形押し型は所定下死点まで前進して被接合部材5の予備成形部5cから所定厚さの平板部5bを成形するが、その際に被接合部材5の延性、接合部材4の突部4cと被接合部材5の穴部5aとの嵌合深さ等から接合部材4の突部4cが露出しないように考慮されている。これにより、接合部材4の突部4cが露出することなく、接合部材4と被接合部材5とは非貫通接合状態、すなわち接合個所の気密性を保持して接合され、気密性の高い負側外部端子3を製造することができる。また、被接合部材5をあらかじめ成形しておく工程が不要となるので、安価な負側外部端子3を製造することができる。
図8は、本発明の第1接合方法の第1変形例(a)、第2変形例(b)それぞれに係る非貫通接合構造S1,S2である。前記非貫通接合構造S1は、接合部材4の段部4bを受け型(図示せず)内に保持した状態で被接合部材5を成形して得られる構造である。また、この非貫通接合構造S1は受け型との間で被接合部材5を圧縮することにより被接合部材5と接合部材4とを同時に塑性変形させて、接合部材4に背面が斜めに変形したアンダーカット部4ccを形成しつつそのアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませて、両部材同士を抜脱不能に接合する構造である。前記被接合部材5が所定厚さの平板部5bを持つように成形される時、外周が歯形状となっている段部4bの間隙に、被接合部材5の余肉が回り込んで、平板部5bの首下に大円柱段部4b1が形成される。
また、前記非貫通接合構造S2は、接合部材4として段部4bと突部4cとの間に小円柱段部4b2を有する部材を使用している。この非貫通接合構造S2は、前述の第1変形例とはこの小円柱段部4b2の点で相違するのみで、その他は第1変形例と同構造である。これにより、いずれの非貫通接合構造S1,S2も、首下に大円柱段部4b1を有していることから、接合部材4の段部4bの外周囲の摩擦抵抗に加えて、予備成形部5cの余肉が歯形状の段部の外周囲に回り込んで回転方向の抵抗が大きくなり、回転方向の強度が大きい負側外部端子3a,3bを得ることができる。
図9(a)および図9(b)は、本発明の第1接合方法の変形例に係る金属部材の接合方法を示すもので、この接合方法は接合部材4として軸部4aとこれより膨径でかつその上面に非円形穴4c2を有する接合突部4c1とからなる部材を使用する。この接合方法は、この接合部材4の接合突部4c1に被接合部材5の穴部5aが嵌合するように接合部材4に被接合部材5をかぶせる嵌合工程と、被接合部材5の成形工程とからなっている。前記嵌合工程では、図9(a)に示すように接合部材4の接合突部4c1を受け型6の上面に当接させながら、その軸部4aが受け型6とノックアウトピン7により位置決めされる。この状態で、被接合部材5が受け型6内の接合部材4に対して前進し、その上方から接合部材4の突部4cが被接合部材5の袋穴5a内に位置するように被接合部材5を接合部材4に被せる。これにより、被接合部材5はその一部が接合部材4に嵌合することにより接合部材4に保持される。
前記成形工程では、成形押し型(図示せず)が配置されており、図9(b)に示すようにこの成形押し型が受け型6内で位置決めされた接合部材4とこれに嵌合する被接合部材5との上方からこれら部材に対して所定下死点まで前進する。この成形押し型の下死点は前述した第1接合方法に係る下死点と同様に被接合部材5が圧縮されて所定厚さの平板部5bが成形され、かつ接合突部4c1が露出しないように考慮されて設定される。
前記成形押し型の前進にともなって、成形押し型が被接合部材5を圧縮して所定厚さの平板部5bが成形される。この時、被接合部材5を介して接合部材4の接合突部4c1を塑性変形させ、その上端外周が外方に扁平し、背面が斜めに変形したアンダーカット部4ccが成形される。この接合部材4の接合突部4c1の成形と同時に、接合部材4と被接合部材5とが抜脱不能に接合され、しかもこれら部材は非貫通接合状態で、すなわち接合個所の気密性を保持して接合される。また、この成形工程では成形押し型が所定下死点まで前進する際には、被接合部材5を介して接合突部4c1を塑性変形させるが、接合突部4c1は非円形穴4c2を有しているため、その全周にわたって外方に扁平し易く、アンダーカット部4ccの成形が容易となっている。これにより、軸方向、すなわち抜き方向の強度を向上させることができる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る金属部材の非貫通接合方法(以下、第2接合方法という)を図面に基づき説明する(第1接合方法と同一部品、同一機能部品には同一の部品番号を付す)。図10(a)、図10(b)および図10(c)において、第2接合方法は接合部材4と被接合部材5の嵌合工程、被接合部材5の予備成形工程、被接合部材5の成形工程からなっている。前記嵌合工程は、図10(a)に示すように第1接合方法と同様の構成で、受け型6内に接合部材4の段部4bを保持する点および接合部材4の突部4cの形状の点で相違するのみであるので、この相違点について詳述する。前記突部4cは、受け型6の上面よりも上方に突出しており、その外周にはねじ山4eが形成されている。このねじ山4eには、その軸線に沿う方向に延びる縦溝4fが形成されている。なお、前記ねじ山4eに縦溝4fを設けなくてもよく、その場合には回転方向の強度が幾分低下するが、抜き強度に低下はない。
前記予備成形工程では、被接合部材5の上部を圧縮する予備成形押し型(図示せず)が配置されている。この予備成形押し型は被接合部材5に対して前進し、図10(b)に示すように接合部材4の突部4cを塑性変形させない範囲で、被接合部材5の上部を圧縮して予備成形押し型に形成される予備形状に対応する予備成形部5cを成形する。この時、前記接合部材4の突部4cと被接合部材5との間隙および隣接する二つのねじ山4e,4e間並びに縦溝4f内に被接合部材5の余肉が回り込む。
前記成形工程では、成形押し型(図示せず)が配置されており、図10(c)に示すようにこの成形押し型が所定下死点まで前進して、予備成形部5cを圧縮して所定厚さの平板部5bを成形する。同時に、この成形押し型が接合部材4の突部4cの突端を塑性変形させて外方に扁平させ、背面が斜めに変形したアンダーカット部4ccを成形する。これにより、第1接合方法と同様の効果が得られるばかりか、任意の長さの首下段部4b3を持つ負側外部端子3cを製造することができる。また、抜き方向、押し込み方向の両方向の軸方向強度はもとより、縦溝4fに回り込む余肉により回転方向の強度を向上させることができる。
本発明は、非貫通接合構造である突部4cを有する金属製の接合部材4と、前記接合部材4の突部4cを挿入可能な袋穴5aを有する被接合部材5と、前記接合部材4の突部4cを被接合部材5の袋穴5aに挿入した状態で被接合部材5を圧縮し、被接合部材5によって接合部材4を同時に塑性変形させることにより、接合部材4の突部4cの上端外周に背面が斜めに変形して形成されるアンダーカット部4ccと、塑性変形に伴い前記アンダーカット部4ccの背面に回り込み、両部材同士を抜脱不能に接合する被接合部材5の余肉と、を備えることを特徴としている。この構成により、接合部材4のアンダーカット部4ccが被接合部材5の余肉の回り込む溝を形成することとなり、被接合部材5の抜け止め効果がもたらされる。また、接合部材4のアンダーカット部4ccの背面により被接合部材5の余肉がかしめられる状態となり、これら部材の密着性が向上して大きな軸線方向の強度が得られる。さらに、接合個所が穴部5a内で非貫通状態であるので、気密性の高い接合構造が得られる。
本発明に係るアンダーカット部4ccは、軸方向の強さ、すなわち抜き強度を大きくするために、被接合部材5と接合部材4を密着させる構成であることが望ましい。
本発明に係る被接合部材5は、被接合部材5の流動性をよくして、被接合部材5と接合部材4との密着性を向上させるために、接合部材4よりも柔らかい材料でなり、被接合部材5の加工硬化を利用して接合部材4の突部4cの変形を引き起こす構成であることが望ましい。
本発明に係る突部4cは、回転方向の抵抗を大きくして、大きな回転方向の強度を得るために、突端近傍に拡広した段部4bを有し、当該段部4bの外周が歯形状をなすことが望ましい。
なお、本発明の第1接合方法の各変形例はもちろんのこと、第2接合方法においても、受け型6の水平方向配置、接合部材4よりも柔らかい材質の被接合部材5は適用可能である。また、本発明の各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
3…負極側外部電極端子、
4…接合部材、
4a…軸部、
4b…段部、
4c…突部、
4cc…アンダーカット部
5…被接合部材、
5a…穴部、
5b…平板部、
本発明は、金属材料でなる接合部材と被接合部材とを気密性を高くして接合してなる金属部材の接合方法に関するものである。
従来、金属材料でなる接合部材と被接合部材とを接合して複合部品を製造する場合には、当該接合部材の用途によってはその接合個所の気密性が要求されている。例えば、リチウム電池にあっては、電極端子に溶接等によりリード線等を取付けることから、電極端子には導電率の高い銅部材と耐食性の高いアルミ部材とを接合した複合部品が使用されている。通常、この種の複合部品の製造にあっては、一般的なかしめによる締結方法が用いられている。すなわち、溶接等の処理がされる部材を平板部材とし、この平板部材に貫通穴を穿設しておき、他方の部材を小径部が形成された段付き形状として、前述の貫通穴にこの小径部を差し込んでこの小径部をかしめることにより、両部材が接合されている。
この種の複合部品を電解液が充満するリチウム電池の外部電極端子として使用すると、経年劣化によりかしめ個所である接合部から電解液が漏洩する恐れがある。これを防止するため、図11(a)に示すように袋穴105aを持つアルミ部材でなる平板部材105と、図11(b)に示す突部104cを持つ銅部材でなる棒状の接合部材104とをあらかじめ成形しておき、その後に両部材を接合する方法が用いられている。
具体的には、図11(c)に示すように接合部材104を受け型106内に位置決めした状態で、その突部104cに平板部材105の袋穴105a(図11(a)参照)が嵌合するように平板部材105がプレス機により押圧される。この接合方法により、接合個所は平板部材105の袋穴105a内となるので、気密性の高い複合部品が製造される。そのため、液体が充満されたリチウム電池(図2参照)1の電池缶1bのような密閉された内部に通じる個所に当該複合部品を外部電源端子3として使用しても、接合個所から液体が漏洩する恐れは皆無となっている。
しかしながら、前述の金属部材の接合方法にあっては、棒状の接合部材104から平板部材105が抜け落ちないようにするため、接合部材104には図11(b)に示すように平板部材105の押圧時にその余肉が回り込む溝部104aを加工しておかねばならない。そのため、接合部材104の構造が複雑となるばかりか、接合部材104、平板部材105それぞれの製造工程のほかに、この接合部材104と平板部材105とを接合する接合工程が必要で、複合部品の製造コストが高くなるという問題が生じている。
本発明に係る金属部材の接合方法は、凹凸部が形成された外周面を有する金属製の接合部材に、前記凹凸部を覆うように金属製の被接合部材を配置し、前記被接合部材に対して前記接合部材に向かって外力を加えることにより、前記接合部材の前記凹部内に前記被接合部材の一部を入り込ませて両部材を接合することを特徴とする。
また、本発明に係る金属部材の接合方法において、前記凹部は、前記接合部材の外周面に形成された歯形状の段部の間隙であることが望ましい。
また、本発明に係る金属部材の接合方法において、前記凹部は、前記接合部材の外周面に形成されたねじ山における隣接する2つのねじ山間にそれぞれ形成されることが望ましい。
以上説明した本発明によれば、金属材料でなる接合部材と被接合部材とを気密性を高くしてかつ安価に接合してなる金属部材の接合方法を提供することができる。
本発明の第1の実施形態に関連する金属部材の非貫通接合方法を説明する被接合部材の成形工程図。
本発明の第1の実施形態に関連する金属部品の非貫通接合方法により製造される複合部品の用途の一例であるリチウム電池の概略説明図。
本発明の第1の実施形態に係る被接合部材(a)、接合部材(b)それぞれの正面図。
本発明の第1の実施形態に関連する金属部材の非貫通接合方法を説明する被接合部材の嵌合工程(a)と被接合部材の予備成形工程(b)とを示す要部断面図。
本発明の第1の実施形態に係る金属部材の非貫通接合構造の要部断面図。
本発明の第1の実施形態に関連する金属部材の非貫通接合方法の効果を説明する非貫通接合構造(a)、従来構造(b)それぞれの拡大切断面の対比写真。
本発明の第1の実施形態に関連する金属部材の非貫通接合方法の効果を説明する非貫通接合構造(a)、従来構造(b)それぞれの抜き強度の対比特性図。
本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合構造の第1変形例(a)および第2変形例(b)を示す要部断面図。
本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合方法の変形例を説明する金属部材の接合工程図。
本発明の第2の実施形態に係る金属部材の接合方法の工程図。
従来の金属部材の接合方法を説明する工程図。
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に関連する金属部材の非貫通接合方法(以下、第1接合方法という)を図面に基づき説明する。図2に示すように、1は第1接合方法により製造される複合部品を外部電極端子として使用する用途の一例を示すリチウム電池である。このリチウム電池1は複数枚の電池パック1aを収納する電池缶1bを有し、この電池缶1bの上面には正極側外部電極端子(図示せず)と負極側外部電極端子(以下、負側外部端子という)3とが取付けられている。前記電池パック1aは上端に正、負の各電極端子1a1,1a2を有し、隣接する電池パック1a,1aの一方の負電極端子1a2と他方の電池パック1aの正電極端子1a1間にはバスバー1cが接続され、複数の電池パック1aが直列に接続されている。また、最後列の電池パック1aの負電極端子1a2にもバスバー1cが連接されており、このバスバー1cの端部には前述の負側外部端子3が接続されている。
前記負側外部端子3は、図5に示すように銅部材でなる接合部材4と、この接合部材4よりも柔らかいアルミ部材でなる被接合部材5とからなっている。前記接合部材4は、棒状の軸部4aと、外形状が非円形状の一例である歯形状の段部4bと、これに連続しかつこれから突出する突部4cとを有している。前記段部4bは、突部4cの突端近傍に拡広しており、その外周囲で回転方向の摩擦抵抗を確保している。また、前記被接合部材5は前記接合部材4の段部4bおよび突部4cを覆う所定厚さの平板部5bを有するが、図3(a)および(図3(b)に示すように当該成形が行われる前には前述の接合部材4の段部4bおよび突部4cが嵌合可能な穴部5aを有している。前記負側外部端子3は、図4(a)および図4(b)並びに図5に示すように被接合部材5の袋穴5a内に接合部材4の段部4bおよび突部4cが位置するように被接合部材5を接合部材4に被せ、後記受け型6との間で被接合部材5を圧縮することにより被接合部材5と接合部材4を同時に塑性変形させて、接合部材4に背面が斜めに変形したアンダーカット部4ccを形成しつつそのアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませて、両部材同士を抜脱不能に接合する非貫通接合構造Sを有している。
前述の構造により、接合部材4のアンダーカット部4ccが被接合部材5の余肉の回り込む溝を形成することとなり、被接合部材5の抜け止め効果がもたらされる。また、接合部材4のアンダーカット部4ccの背面により被接合部材5の余肉がかしめられる状態となり、これら部材の密着性が向上して大きな軸線方向の強度が得られる。さらに、被接合部材5の余肉が段部4bの歯形状の空隙に回り込むことにより回転方向の抵抗が大きくなり、大きな回転方向の強度が得られるばかりか、接合個所が穴部5a内で非貫通状態であるので、気密性の高い接合構造が得られる。これにより、当該負側外部端子3は液体が充満されるリチウム電池1の電池缶1bのような密閉される内部に通じる個所で使用されても、液体が漏洩することはない。同時に、リード線等を溶着するスペースを十分に確保でき、しかもその耐食性も確保できる平板部5bを得ることができる。その他、被接合部材5が接合部材4よりも柔らかい部材であることから、被接合部材5の流動性がよく、前述の密着性をさらに向上させることができる。なお、接合部材4および被接合部材5は同一材質であっても前記密着性向上の程度は異なるが、同様の効果が得られる。
前記負側外部端子3は、図1、図3および図4に示す第1接合方法により製造されている。すなわち、この第1接合方法は接合部材4の製造工程(図示せず)と、被接合部材5の製造工程(図示せず)とを有している。また、この第1接合方法は図4(a)に示すように接合部材4の段部4bおよび突部4cが被接合部材5の穴部5aに嵌合するように被接合部材5を接合部材4に被せる嵌合工程と、図4(b)に示すように被接合部材5を圧縮して仕上げ成形前の予備形状でなる予備成形部5cを成形する予備成形工程と、接合部材4の突部4cが露出しない範囲で被接合部材5の予備成形部5cを平板状に成形する成形工程とからなっている。前記嵌合工程は、接合部材4の軸部4aを受け型6内でノックアウトピン7により位置決めし、その上方から接合部材4の段部4bおよび突部4cが被接合部材5の袋穴5a内に位置するように被接合部材5を接合部材4に被せ、これらを嵌合させるように構成されている(図4(a)参照)。この場合、被接合部材5の前進方向は、上方からに限定されるものではなく、接合部材4と被接合部材5を横方向に配置することにより水平方向からとすることもできる。
前記被接合部材5の予備成形工程は、図4(b)に示すように接合部材4の段部4bおよび突部4cに嵌合する被接合部材5を仕上げ成形前の予備形状でなる予備成形部5cに成形する予備成形押し型(図示せず)を有している。この予備成形押し型は、受け型6に対して前進して被接合部材5の上部を予備成形押し型で圧縮し、予備成形押し型に形成される成形穴、すなわち予備形状に対応する予備成形部5cを成形する。この時、接合部材4の段部4bおよび突部4cと被接合部材5の穴部5aの内壁との間隙に被接合部材5の余肉が回り込み、接合部材4の軸部4aを受け型6で保持した状態でこれら部材が接合される。これにより、被接合部材5が延性の良好な材質でないときでも、成形工程での被接合部材5の確実な成形を補助している。この予備成形工程は、第1接合方法にあっては必須の工程ではなく、被接合部材5が延性の良好な柔らかい金属部材でなるときには、被接合部材5を嵌合工程から直接成形工程で成形してもよい。
前記成形工程は、図1に示すように被接合部材5の予備成形部5cから所定厚さの平板部5bを成形するための成形押し型(図示せず)を有している。この成形押し型は、前記予備成形部5cに対して上方から前進して予備成形部5cを所定の厚さまたは所定厚さと所定形状とを備える平板部5bに成形する。この時、成形押し型の下死点は平板部5bの厚さ、被接合部材5の延性、接合部材4の突部4cと被接合部材5の穴部5aとの嵌合深さ、接合部材4の硬度等から接合部材4の突部4cが露出しないように考慮されている。
上記第1接合方法において、図4(a)に示すように受け型6内で接合部材4の軸部4aがノックアウトピン7により位置決めされ、同時にその段部4bが受け型6の上面で保持される。その後、被接合部材5がその穴部5aを接合部材4の段部4bおよび突部4cに嵌合させるように前進した後に、図4(b)に示すように予備成形押し型が受け型6に対して前進し、被接合部材5の上部を圧縮して予備成形部5cを成形する。この時、予備成形押し型が接合部材4よりも柔らかい被接合部材5を介して接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その上端外周をわずかに外方に扁平させ、接合部材4にアンダーカット部4ccを形成しつつそのアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませる。
前記予備成形押し型を後退させた後に、図1に示すように成形押し型が受け型6に対して所定下死点まで前進する。この成形押し型の前進にともなって、成形押し型が前記予備成形部5cを圧縮して所定厚さの平板部5bを成形する。この時、予備成形部5c、すなわち被接合部材5は接合部材の突部4cが露出しないように成形され、同時に接合部材4と被接合部材5とが抜脱不能に接合される。しかも、これら部材は非貫通接合状態で、すなわち接合個所の気密性を保持して接合される。この時、外周が歯形状となっている段部4bの間隙には、予備成形部5c、すなわち被接合部材5の余肉が回り込んで、平板部5bの首下には大円柱段部4b1が形成されて回転方向の抵抗が大きくなる。これにより、接合部材4の段部4bの外周囲の摩擦抵抗に加えて、予備成形部5cの余肉が歯形状の段部の間隙に回り込むことによる回転方向の抵抗が大きくなり、回転方向の強度が向上する。
前記平板部5bの成形時には、前記成形押し型が予備成形部5cを介して接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その上端外周がさらに外方に扁平し、アンダーカット部4ccが成形される。この間、接合部材4のアンダーカット部4ccがその背部で予備成形部5cの余肉をかしめるとともに、この余肉を接合部材4の段部4bと予備成形部5cとの間隙に回り込ませることができる。この時、前記アンダーカット部4ccにあっては、被接合部材5による接合部材4の突部4cの圧縮と接合部材によるかしめとによって接合部材4と被接合部材5とが接合されることとなるので、両部材間に間隙が生じることなく、高い密着性が得られる。これは、図6(a)に示すように実際の接合部材4と被接合部材5との接合個所の拡大切断写真からも明確となっている。すなわち、図6(b)に示す従来方法に係る接合個所の拡大断面写真では、当該接合個所の所どころに間隙(境界部分の黒色部)が認められ、余肉の回りが十分でないことが窺がえる。これに対して、第1接合方法に係る接合個所には隙間が認められず、余肉は十分に回り込んで接合部材4と被接合部材5との間で高い密着性が得られていることが窺がえる。特に、図6(a)の被接合部材5にはA1070のアルミ部材を、また接合部材4には銅部材を使用し、被接合部材5を
接合部材4よりも柔らかい材料とすることにより、被接合部材5の加工硬化を利用して接合部材4の変形を引き起こすことになるので、被接合部材5の流動性がよくなって接合部材4と被接合部材5との良好な密着性が顕著に現れる。
なお、上記説明は、第1接合方法において、接合部材4に従来技術の溝部104aを予め成形しておくことを積極的に排除するものではない。
また、図1に示すように前記接合部材4のアンダーカット部4ccの背部は予備成形部5cの余肉を接合部材4の段部4bおよび受け型6の上面との間でかしめることとなって当該余肉を加工硬化させながら、接合部材4の段部4bおよび突部4cと予備成形部5cとの間隙側に押し込む。これにより、接合部材4に当該余肉が回り込むための溝加工等の抜け止め加工をあらかじめ施すことなく、両部材同士を抜脱不能に接合することができる。そのため、接合部材4は単純な構造でよいばかりか、前記余肉の加工硬化と相俟って接合部材4の軸線方向の強度、すなわち抜き方向の強度を高めることができる。これは、図
7(a)に示すように第1接合方法に係る抜き強度が2.5N以上であるのに対して、図7(b)に示すように従来方法に係る抜き強度が2.0N以下であることから明確となっている。
さらに、前記成形押し型は所定下死点まで前進して被接合部材5の予備成形部5cから所定厚さの平板部5bを成形するが、その際に被接合部材5の延性、接合部材4の突部4cと被接合部材5の穴部5aとの嵌合深さ等から接合部材4の突部4cが露出しないように考慮されている。これにより、接合部材4の突部4cが露出することなく、接合部材4と被接合部材5とは非貫通接合状態、すなわち接合個所の気密性を保持して接合され、気密性の高い負側外部端子3を製造することができる。また、被接合部材5をあらかじめ成形しておく工程が不要となるので、安価な負側外部端子3を製造することができる。
図8は、本発明の第1接合方法の第1変形例(a)、第2変形例(b)それぞれに係る非貫通接合構造S1,S2である。前記非貫通接合構造S1は、接合部材4の段部4bを受け型(図示せず)内に保持した状態で被接合部材5を成形して得られる構造である。また、この非貫通接合構造S1は受け型との間で被接合部材5を圧縮することにより被接合部材5と接合部材4とを同時に塑性変形させて、接合部材4に背面が斜めに変形したアンダーカット部4ccを形成しつつそのアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませて、両部材同士を抜脱不能に接合する構造である。前記被接合部材5が所定厚さの平板部5bを持つように成形される時、外周が歯形状となっている段部4bの間隙に、被接合部材5の余肉が回り込んで、平板部5bの首下に大円柱段部4b1が形成される。
また、前記非貫通接合構造S2は、接合部材4として段部4bと突部4cとの間に小円柱段部4b2を有する部材を使用している。この非貫通接合構造S2は、前述の第1変形例とはこの小円柱段部4b2の点で相違するのみで、その他は第1変形例と同構造である。これにより、いずれの非貫通接合構造S1,S2も、首下に大円柱段部4b1を有していることから、接合部材4の段部4bの外周囲の摩擦抵抗に加えて、予備成形部5cの余肉が歯形状の段部の外周囲に回り込んで回転方向の抵抗が大きくなり、回転方向の強度が大きい負側外部端子3a,3bを得ることができる。
図9(a)および図9(b)は、本発明の第1接合方法の変形例に係る金属部材の接合方法を示すもので、この接合方法は接合部材4として軸部4aとこれより膨径でかつその上面に非円形穴4c2を有する接合突部4c1とからなる部材を使用する。この接合方法は、この接合部材4の接合突部4c1に被接合部材5の穴部5aが嵌合するように接合部材4に被接合部材5をかぶせる嵌合工程と、被接合部材5の成形工程とからなっている。前記嵌合工程では、図9(a)に示すように接合部材4の接合突部4c1を受け型6の上面に当接させながら、その軸部4aが受け型6とノックアウトピン7により位置決めされる。この状態で、被接合部材5が受け型6内の接合部材4に対して前進し、その上方から接合部材4の突部4cが被接合部材5の袋穴5a内に位置するように被接合部材5を接合部材4に被せる。これにより、被接合部材5はその一部が接合部材4に嵌合することにより接合部材4に保持される。
前記成形工程では、成形押し型(図示せず)が配置されており、図9(b)に示すようにこの成形押し型が受け型6内で位置決めされた接合部材4とこれに嵌合する被接合部材5との上方からこれら部材に対して所定下死点まで前進する。この成形押し型の下死点は前述した第1接合方法に係る下死点と同様に被接合部材5が圧縮されて所定厚さの平板部5bが成形され、かつ接合突部4c1が露出しないように考慮されて設定される。
前記成形押し型の前進にともなって、成形押し型が被接合部材5を圧縮して所定厚さの平板部5bが成形される。この時、被接合部材5を介して接合部材4の接合突部4c1を塑性変形させ、その上端外周が外方に扁平し、背面が斜めに変形したアンダーカット部4ccが成形される。この接合部材4の接合突部4c1の成形と同時に、接合部材4と被接合部材5とが抜脱不能に接合され、しかもこれら部材は非貫通接合状態で、すなわち接合個所の気密性を保持して接合される。また、この成形工程では成形押し型が所定下死点まで前進する際には、被接合部材5を介して接合突部4c1を塑性変形させるが、接合突部4c1は非円形穴4c2を有しているため、その全周にわたって外方に扁平し易く、アンダーカット部4ccの成形が容易となっている。これにより、軸方向、すなわち抜き方向の強度を向上させることができる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る金属部材の非貫通接合方法(以下、第2接合方法という)を図面に基づき説明する(第1接合方法と同一部品、同一機能部品には同一の部品番号を付す)。図10(a)、図10(b)および図10(c)において、第2接合方法は接合部材4と被接合部材5の嵌合工程、被接合部材5の予備成形工程、被接合部材5の成形工程からなっている。前記嵌合工程は、図10(a)に示すように第1接合方法と同様の構成で、受け型6内に接合部材4の段部4bを保持する点および接合部材4の突部4cの形状の点で相違するのみであるので、この相違点について詳述する。前記突部4cは、受け型6の上面よりも上方に突出しており、その外周にはねじ山4eが形成されている。このねじ山4eには、その軸線に沿う方向に延びる縦溝4fが形成されている。なお、前記ねじ山4eに縦溝4fを設けなくてもよく、その場合には回転方向の強度が幾分低下するが、抜き強度に低下はない。
前記予備成形工程では、被接合部材5の上部を圧縮する予備成形押し型(図示せず)が配置されている。この予備成形押し型は被接合部材5に対して前進し、図10(b)に示すように接合部材4の突部4cを塑性変形させない範囲で、被接合部材5の上部を圧縮して予備成形押し型に形成される予備形状に対応する予備成形部5cを成形する。この時、前記接合部材4の突部4cと被接合部材5との間隙および隣接する二つのねじ山4e,4e間並びに縦溝4f内に被接合部材5の余肉が回り込む。
前記成形工程では、成形押し型(図示せず)が配置されており、図10(c)に示すようにこの成形押し型が所定下死点まで前進して、予備成形部5cを圧縮して所定厚さの平板部5bを成形する。同時に、この成形押し型が接合部材4の突部4cの突端を塑性変形させて外方に扁平させ、背面が斜めに変形したアンダーカット部4ccを成形する。これにより、第1接合方法と同様の効果が得られるばかりか、任意の長さの首下段部4b3を持つ負側外部端子3cを製造することができる。また、抜き方向、押し込み方向の両方向の軸方向強度はもとより、縦溝4fに回り込む余肉により回転方向の強度を向上させることができる。
本発明は、非貫通接合構造である突部4cを有する金属製の接合部材4と、前記接合部材4の突部4cを挿入可能な袋穴5aを有する被接合部材5と、前記接合部材4の突部4cを被接合部材5の袋穴5aに挿入した状態で被接合部材5を圧縮し、被接合部材5によって接合部材4を同時に塑性変形させることにより、接合部材4の突部4cの上端外周に背面が斜めに変形して形成されるアンダーカット部4ccと、塑性変形に伴い前記アンダーカット部4ccの背面に回り込み、両部材同士を抜脱不能に接合する被接合部材5の余肉と、を備えることを特徴としている。この構成により、接合部材4のアンダーカット部4ccが被接合部材5の余肉の回り込む溝を形成することとなり、被接合部材5の抜け止め効果がもたらされる。また、接合部材4のアンダーカット部4ccの背面により被接合部材5の余肉がかしめられる状態となり、これら部材の密着性が向上して大きな軸線方向の強度が得られる。さらに、接合個所が穴部5a内で非貫通状態であるので、気密性の高い接合構造が得られる。
本発明に係るアンダーカット部4ccは、軸方向の強さ、すなわち抜き強度を大きくするために、被接合部材5と接合部材4を密着させる構成であることが望ましい。
本発明に係る被接合部材5は、被接合部材5の流動性をよくして、被接合部材5と接合部材4との密着性を向上させるために、接合部材4よりも柔らかい材料でなり、被接合部材5の加工硬化を利用して接合部材4の突部4cの変形を引き起こす構成であることが望ましい。
本発明に係る突部4cは、回転方向の抵抗を大きくして、大きな回転方向の強度を得るために、突端近傍に拡広した段部4bを有し、当該段部4bの外周が歯形状をなすことが望ましい。
なお、本発明の第1接合方法の各変形例はもちろんのこと、第2接合方法においても、受け型6の水平方向配置、接合部材4よりも柔らかい材質の被接合部材5は適用可能である。また、本発明の各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
3…負極側外部電極端子、
4…接合部材、
4a…軸部、
4b…段部、
4c…突部、
4cc…アンダーカット部
5…被接合部材、
5a…穴部、
5b…平板部、