JP2019194944A - 蓄電デバイス用バインダー組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
有機溶剤系の蓄電デバイス電極用バインダーとしてもっとも広く使用されているのは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。
PVDFは良好な結着性と、耐酸化性を有するものの、N−メチルピロリドンなど高沸点の特定の溶媒にしか溶解しない。また、塩基性条件下で、脱HFに伴う、架橋体を形成することが知られている。以上から、PVDFを用いた電極ペーストは、高Ni系の活物質を用いると増粘し、ポットライフが短く、更に、電極板を作成する際に、乾燥に時間がかかり生産性が上がらないといった問題がある。
また、特許文献2は、カルボキシメチルセルロースをバインダーとした例を開示する。しかし、カルボキシメチルセルロースは水溶性であり、溶解できる有機溶媒がほとんどないため、水により劣化する活物質を有する正極には使用が困難である。
特許文献3は、セルロースを炭素数3〜18のアシル基でアシル化したセルロース誘導体を用いた例を開示する。しかし、セルロースはそれ自体が結晶化しており、有機溶剤にほとんど溶解しないため、反応性が悪く、高い置換率でアシル化を行う事が困難、すなわち、製造が困難である。
そこで、本開示は、結着性を保持しつつ、有機溶媒に溶解可能で、電極ペーストのポットライフを長くすることができるバインダーを提供する。
本開示は、一態様において、集電体、及び前記集電体上に形成された合材層を含む蓄電デバイス用電極であって、前記合材層が、活物質、本開示に係るバインダー化合物、及び導電助剤を含む蓄電デバイス用電極に関する。
本開示は、一態様において、本開示に係る蓄電デバイス用電極を備える蓄電デバイスに関する。
すなわち、本開示に係るバインダー化合物は、構造の中にフッ素原子を含んでいないことから、従来のPVDFを用いた場合に見られた、脱フッ素化に伴う架橋構造の形成に起因する電極ペーストのゲル化が発生しないと考えられる。また、本開示に係るバインダー化合物は、電極ペースト作製に使用する有機溶媒に溶解可能であるため、電極ペーストの粘度が上昇して分離が抑制され、ポットライフが安定すると考えられる。
ただし、これらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
本開示に係るバインダー化合物であるセルロース化合物(以下、「本開示のセルロース化合物」ともいう)は、一又は複数の実施形態において、複数の水酸基を有し、前記複数の水酸基の少なくとも1つの水酸基の水素原子がアシル基で置換され、前記複数の水酸基の少なくとも1つの水酸基がエーテル化されたセルロース化合物である。
本開示で用いる原料セルロース誘導体は、有機溶媒への溶解性及びポットライフの安定性の観点から、セルロースを含まないことが好ましく、セルロースの少なくとも1つの水酸基がエーテル化されたセルロース誘導体が好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(クロロホルム溶媒、直鎖ポリスチレンを標準として定められた較正曲線、屈折率検出器を用いる)測定によって求められるものである。
本開示に係るバインダー組成物は、一又は複数の実施形態において、本開示に係るバインダー化合物であるセルロース化合物からなるものであってもよく、あるいは、前記バインダー化合物に加えて有機溶媒を含むものであってもよい。
本開示に係るバインダー組成物は、一又は複数の実施形態において、有機溶媒に本開示に係るバインダー化合物であるセルロース化合物が十分に溶解している形態であり、また、その他の一又は複数の実施形態において、有機溶媒と本開示に係るバインダー化合物とが混合されることなく保存されている形態であってもよい。
本開示に係るバインダー組成物に含まれる有機溶媒としては、本開示に係るバインダー化合物であるセルロース化合物を上述の濃度範囲で溶解できるものであることが好ましい。
従来の正極電極バインダーPVDFを溶解する有機溶媒としては、一般的にN−メチルピロリドン(NMP)が使用される。PVDFは、NMP以外の有機溶媒には一般的に溶解しにくい。
本開示に係るバインダー化合物であるセルロース化合物は、PVDFを溶解できない有機溶媒、及び/又は、N−メチルピロリドンの沸点よりも低沸点の有機溶媒にも溶解することができる。低沸点有機溶媒にバインダー化合物を溶解することができれば、電極板作製の際の乾燥時間が短縮されるため、電極や電池の生産性を向上することができる。
なお、上記の溶媒にはPVDFは溶解しないことが好ましい。
本開示に係るバインダー組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、本開示に係るバインダー化合物及び有機溶媒以外にその他の任意成分を含有してもよい。その他の任意成分としては、例えば、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、及び中和剤から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
本開示に係るバインダー化合物は、蓄電デバイス用電極(正極及び/又は負極)の合材層の作製に使用することができる。すなわち、本開示は、一態様において、集電体、及び前記集電体上に形成された合材層を含む蓄電デバイス用電極であって、前記合材層が、活物質、本開示に係るバインダー化合物、及び導電助剤を含む、蓄電デバイス用電極(以下、「本開示に係る電極」ともいう)に関する。
活物質としては、蓄電デバイスの種類等に応じて適宜選択できる。例えば、本開示に係る電極がリチウムイオン二次電池用正極である場合、活物質としては、金属酸化物、金属リン酸塩、硫黄材料等が挙げられる。また、例えば、本開示に係る電極がリチウムイオン二次電池用負極である場合、活物質としては、炭素材料、珪素材料、チタン材料、スズ材料等が挙げられる。
導電助剤としては、蓄電デバイスに使用可能な公知の導電助剤であればよく、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ等の炭素材料が挙げられる。
溶媒としては、本開示に係るバインダー化合物を溶解できる溶媒であればよく、例えば、上述した有機溶媒が挙げられる。
集電体としては、導電性を有する材料から選ぶことができ、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔等の金属箔が挙げられる。
本開示は、一態様において、本開示に係る電極を備える蓄電デバイス(以下、「本開示に係る蓄電デバイス」ともいう)に関する。
本開示に係る蓄電デバイスとしては、一又は複数の実施形態において、リチウムイオン二次電池、リチウム空気二次電池、ナトリウムイオン電池、ナトリウム-硫黄二次電池、ナトリウム-塩化ニッケル二次電池、有機ラジカル電池、亜鉛-空気二次電池、全固体電池等が挙げられる。
[実施例1:バインダー化合物1の合成]
撹拌機、ジムロート還流器、温度計を備えた4つ口セパラブルフラスコ中、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製、HPC−H、重量平均分子量:約90万)10gをクロロホルム720gに溶解した。ピリジン100g、4−ジメチルアミノピリジン0.35gを添加し、50℃まで昇温した。塩化パルミトイル55gを30分かけて添加し、50℃で15時間反応させた。エタノールで洗浄後、乾燥して、淡い黄色無臭のヒドロキシプロピルセルロースパルミチン酸エステル(バインダー化合物1)約22gを得た。得られた化合物の置換率は95%であり、重量平均分子量は90万であった(表1)。
撹拌機、ジムロート還流器、温度計を備えた4つ口セパラブルフラスコ中、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製、HPC−M、重量平均分子量:約60万)10gをクロロホルム720gに溶解した。ピリジン100g、4−ジメチルアミノピリジン0.35gを添加し、50℃まで昇温した。塩化パルミトイル15gを30分かけて添加し、50℃で15時間反応させた。エタノールで洗浄後、乾燥して、淡い黄色無臭のヒドロキシプロピルセルロースパルミチン酸エステル(バインダー化合物2)約22gを得た。得られた化合物の置換率は60%であり、重量平均分子量は60万であった(表1)。
撹拌機、ジムロート還流器、温度計を備えた4つ口セパラブルフラスコ中、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製、HPC−H、重量平均分子量:約90万)10gをクロロホルム720gに溶解した。ピリジン100g、4−ジメチルアミノピリジン0.35gを添加し、50℃まで昇温した。塩化ラウロイル55gを30分かけて添加し、50℃で15時間反応させた。エタノールで洗浄後、乾燥して、淡い黄色無臭のヒドロキシプロピルセルロースラウリン酸エステル(バインダー化合物3)約22gを得た。得られた化合物の置換率は95%であり、重量平均分子量は90万であった(表1)。
原料セルロース誘導体及びバインダー化合物(セルロース化合物)の重量平均分子量(Mw)は、日立L−6000型高速液体クロマトグラフィーを使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。溶離液流路ポンプは日立L−6000、検出器はショーデックスRI SE−61示差屈折率検出器、カラムはGMHHR−Hをダブルに接続したものを用いた。サンプルは、溶離液で0.5g/100mLの濃度に調整し、20μLを用いた。溶離液には、1mmol/LのN,N‐ジメチルドデシルアミン(ファーミンDM20、花王社製)のクロロホルム溶液を使用した。カラム温度は40℃で、流速は1.0mL/分で行った。
有機溶媒に溶解前のバインダー化合物0.2gに、トルエン20gと0.5N水酸化ナトリウムエタノール溶液6gを加え、100℃で7時間加熱撹拌し、エステル結合を切断した。溶液1gを測り取り、リン酸エタノール溶液1を加えて中和した後、溶液をフィルターろ過した。溶液中に含まれるカルボン酸量をガスクロマトグラフィーにより定量することで水酸基のアシル化率を算出した。
得られたバインダー化合物1から3及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を表1に示す有機溶媒にバインダー化合物を8質量%の濃度添加し、50℃で5時間撹拌溶解し、その溶解性を目視で確認した。その結果を表1に示す。
<溶解性の評価基準>
Yes:溶け残りが確認されなかった
No :溶け残りが確認された
正極ペーストに用いた材料の略号は次の通りである。
正極活物質: LCO(シグマアルドリッチ製、組成LiCoO2)
正極導電材:アセチレンブラック(電気化学工業製、品名:デンカブラックHS−100)
正極バインダー:実施例1のバインダー化合物1(実施例4)、実施例2のバインダー化合物2(実施例5)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(クレハ製、L#7208;8%NMP溶液)(比較例2)
調製した正極電極ペーストの流動性を、調製直後と25℃で7日間保存した後とで比較した。その結果を表2に示す。
(流動性試験)
調製した正極電極ペースト 20gを50mLガラス容器に入れ、調製直後と25℃で7日間保存した後にそれぞれ傾け、ペーストが流動するかどうかを確認した。結果を表2に示す。
<評価基準>
あり:傾けた際にペーストが流動する
ゲル化:傾けた際にもペーストが流動せず、液面に変化が無い
作製した正極ペーストを集電体であるアルミ箔上に乾燥後8mg/cm2となるように厚さを調節してバーコーターで塗工した。塗膜は、送風乾燥器を用いて100℃で20分乾燥し、さらに80℃で10分乾燥した。その後、密度が1.5g/cm3になるように電極をプレスし、正極合材層を有する正極を作製した。
作製した正極を45mm×45mmに打ち抜き、角と角を合わせて三角形に谷折りにしたのち、指で折り目を付け、再度開いた際に塗膜(正極合材層)の剥がれのないものをA、剥がれが見られるものをBとした。結果を表2に示した。
[リチウムイオン二次電池(コインセル)の作製]
作製した正極を直径13mmに打ち抜き、評価用正極を得た。当該正極上に、直径19mmのセパレータ、直径15mm厚さ0.5のコイン状金属リチウムを配置して、2032型コインセルを作製した。電解液には、1M LiPF6 EC/DEC(体積比)=3/7を用いた。
作製したリチウムイオン二次電池を用いて、25℃の環境下で、電圧4.2Vまで電流値0.5Cで定電流充電した後、4.2V固定で0.05Cになるまで定電圧充電した。放電は、電流値0.5Cで、電圧3.0Vまで定電流放電した。この充放電を1サイクルとして50サイクル繰り返した。1サイクル目の放電容量に対する各サイクル後の放電容量の比を容量維持率(%)として算出した。結果を図1に示す。
Claims (10)
- バインダー化合物としてセルロース化合物を含む蓄電デバイス用バインダー組成物であって、
前記セルロース化合物は、複数の水酸基を有し、前記複数の水酸基の少なくとも1つの水酸基の水素原子がアシル基で置換され、前記複数の水酸基の少なくとも1つの水酸基がエーテル化されたセルロース化合物である、蓄電デバイス用バインダー組成物。 - 前記セルロース化合物は、原料セルロース誘導体の少なくとも1つの水酸基の水素原子がアシル基で置換されたセルロース化合物であり、
前記原料セルロース誘導体は、セルロースの少なくとも1つの水酸基がエーテル化されたセルロース誘導体である、請求項1に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。 - 前記原料セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロースである、請求項2に記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
- 前記セルロース化合物における水酸基のアシル化率は、55モル%以上である、請求項1から3のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
- 前記アシル基は、炭素数3〜40のアシル基である、請求項1から4のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
- 前記セルロース化合物の重量平均分子量が、12万以上400万以下である、請求項1から5のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
- さらに、前記セルロース化合物が溶解可能な有機溶媒を含む、請求項1から6のいずれかに記載の蓄電デバイス用バインダー組成物。
- 活物質、請求項1から7のいずれかに記載のバインダー化合物、導電助剤、及び有機溶媒を含む、蓄電デバイス電極用ペースト。
- 集電体、及び前記集電体上に形成された合材層を含む蓄電デバイス用電極であって、
前記合材層が、活物質、請求項1から7のいずれかに記載のバインダー化合物、及び導電助剤を含む、蓄電デバイス用電極。 - 請求項9に記載の蓄電デバイス用電極を備える、蓄電デバイス。
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JP2015191864A (ja) * | 2014-03-28 | 2015-11-02 | 富士フイルム株式会社 | 全固体二次電池、これに用いる固体電解質組成物および電池用電極シート、ならびに全固体二次電池の製造方法 |
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