JP2019194390A - スルホン化微細セルロース繊維の製造方法およびスルホン化パルプ繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、特許文献1〜3のような製法では、化学処理工程において硫酸や過硫酸等を用いるので、取り扱い性の煩雑さに加え、反応後の排水処理の問題や、設備の配管等が腐食するなどの問題が発生している。また、塩素系酸化剤を使用する場合には、反応時に発生する塩素による環境への影響が懸念されている。
また、特許文献4には、固形分濃度0.2質量%に調製することにより透明性の高い(ヘイズ値が5〜15%)CNFを製造することができる旨が記載されている。
第1発明のスルホン化パルプ繊維の製造方法は、パルプからセルロースの水酸基の一部がスルホン化したパルプ繊維を製造する方法であって、前記パルプを化学的に処理する化学処理工程を含んでおり、該化学処理工程が、前記パルプを構成するパルプ繊維に対してスルホ基を有するスルホン化剤と尿素または/およびその誘導体を接触させる接触工程と、該接触工程後のパルプ繊維を構成するセルロースの水酸基の一部にスルホ基を導入する反応工程と、を含み、前記接触工程と前記反応工程との間に、前記接触工程後のパルプを乾燥する乾燥工程を含んでいることを特徴とする。
第2発明のスルホン化パルプ繊維の製造方法は、パルプからセルロースの水酸基の一部がスルホン化したパルプ繊維を製造する方法であって、前記パルプを化学的に処理する化学処理工程を含んでおり、該化学処理工程が、前記パルプを構成するパルプ繊維に対してスルホ基を有するスルホン化剤と尿素または/およびその誘導体を接触させる接触工程と、該接触工程後のパルプ繊維を構成するセルロースの水酸基の一部にスルホ基を導入する反応工程と、を含み前記接触工程と前記反応工程との間に、前記接触工程後のパルプを脱水する脱水工程を含んでいることを特徴とする。
第3発明のスルホン化パルプ繊維の製造方法は、第2発明において、前記脱水工程の後に、前記脱水処理した後のパルプを乾燥する乾燥工程を含むことを特徴とする。
第4発明のスルホン化パルプ繊維の製造方法は、第1発明、第2発明または第3発明のいずれかにおいて、前記接触工程が、前記パルプを構成するパルプ繊維を、前記スルホン化剤と前記尿素または/およびその誘導体を混合した反応液に接触させる工程であり、該反応液は、前記スルホン化剤と前記尿素または/およびその誘導体を、濃度(g/L)比において、4:1〜1:2.5となるように含有することを特徴とする。
第5発明のスルホン化パルプ繊維の製造方法は、第1発明、第2発明、第3発明または第4発明のいずれかにおいて、前記反応工程は、加熱して反応を進行させる工程であり、温度が100℃〜180℃、加熱する時間が1分以上となるように調整することを特徴とする。
第6発明のスルホン化パルプ繊維の製造方法は、第1発明、第2発明、第3発明、第4発明または第5発明のいずれかにおいて、前記反応工程後に、前記反応工程後のパルプを洗浄する洗浄工程を含むことを特徴とする。
第7発明のスルホン化パルプ繊維の製造方法は、第1発明、第2発明、第3発明、第4発明、第5発明または第6発明のいずれかにおいて、前記化学処理工程において、前記反応工程後のパルプ繊維は、平均繊維長が、前記接触工程に供給するパルプ繊維に対して50%以上となるように調製することを特徴とする
第8発明のスルホン化パルプ繊維の製造方法は、第1発明、第2発明、第3発明、第4発明、第5発明、第6発明または第7発明のいずれかにおいて、前記スルホン化剤が、スルファミン酸であることを特徴とする。
(スルホン化微細セルロース繊維の製造方法)
第9発明のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法は、パルプからセルロースの水酸基の一部がスルホン化した微細セルロース繊維を製造する方法であって、前記パルプを化学的に処理する化学処理工程と、該化学処理工程後のパルプを微細化する微細化処理工程と、を順に行う方法であり、前記化学処理工程後のパルプが第1発明〜第8発明のいずれかに記載の製造方法で製造されたスルホン化パルプ繊維を含んでいることを特徴とする。
第10発明のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法は、第9発明において、前記微細化処理工程において、前記スルホン化パルプ繊維は、保水度が150%以上のものであることを特徴とする。
第11発明のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法は、第9発明または第10発明において、前記微細化処理において、前記スルホン化パルプ繊維を含んだパルプを水溶性溶媒に固形分濃度が0.1質量%〜20質量%となるように分散させた状態で微細化することを特徴とする。
第1発明、第2発明、第3発明によれば、パルプに対してスルホ基を有するスルホン化剤と尿素または/およびその誘導体を接触させ、所定の状態のパルプを反応工程に供給するので、取り扱い性に優れたスルホン化パルプ繊維を製造することができる。しかも、スルホン化パルプ繊維の回収率を向上させることができる。
第4発明によれば、スルホン化剤と尿素または/およびその誘導体を所定の混合比となるように調整することによって、適切な繊維長を有するスルホン化パルプ繊維を製造することができる。しかも、スルホン化パルプ繊維の保水度を適切に制御することができるので、用途に応じたスルホン化パルプ繊維を適切に製造することができる。
第5発明によれば、スルホン化パルプ繊維の製造効率を向上させることができる。
第6発明によれば、スルホン化パルプ繊維の取り扱い性を向上させることができる。
第7発明によれば、平均繊維長を長くできるので、パルプ繊維の取り扱い性をより向上させることができる。
第8発明によれば、より適切にスルホン化パルプ繊維を製造することができる。
(スルホン化微細セルロース繊維の製造方法)
第9発明によれば、パルプに対してスルホ基を有するスルホン化剤と尿素または/およびその誘導体を接触させて反応させることによって、適切な繊維長と透明性とを有するスルホン化微細セルロース繊維を製造することができる。
第10発明、第11発明によれば、微細化処理を適切に行うことができる。
本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法は、取り扱い性に優れたスルホン化パルプ繊維を製造することができるようにしたことに特徴を有している。
また、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法は、透明性に優れ、繊維同士のからみあいを向上させたスルホン化微細セルロース繊維を効率的に製造することができるようにしたことに特徴を有している。
とくに、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法は、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法で製造されたスルホン化パルプ繊維を微細化すれば、簡単にしかも適切に所望の微細セルロース繊維を製造することができる。
また、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法は、パルプを化学処理工程に供した後、化学処理工程後のパルプを微細化する微細化処理工程と、を順に行う方法である。
本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法で得られるスルホン化パルプ繊維(以下、単にスルホン化パルプ繊維という)は、複数のセルロース繊維からなるパルプ繊維であって、含有するセルロース繊維を構成するセルロース(D−グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子)の水酸基(−OH基)の少なくとも一部が下記式(1)で示されるスルホ基でスルホン化されたものである。
(ここで、rは、独立した1〜3の自然数であり、Zr+は、r=1のとき、水素イオン、アルカリ金属の陽イオン、アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオン、芳香族アンモニウムイオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。また、r=2または3のとき、アルカリ土類金属の陽イオンまたは多価金属の陽イオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。)
スルホン化パルプ繊維におけるスルホ基の導入量は、パルプ繊維がほぐれやすくなる程度に導入されていれば、とくに限定されない。
例えば、スルホン化パルプ繊維1g(質量)あたりの硫黄導入量は、0.42mmol/gよりも高くなるように調整するのが好ましく、より好ましくは、0.42mmol/g〜9.9mmol/gであり、さらに好ましくは0.5mmol/g〜9.9mmol/gであり、さらにより好ましくは0.6mmol/g〜9.9mmol/gである。
スルホン化パルプ繊維1g(質量)あたりの硫黄導入量が0.42mmol/g以下の場合には、スルホン化パルプ繊維を構成する微細繊維同士が強く結合した状態が維持されやすい。一方、硫黄導入量が9.9mmol/gに近づくほど結晶性の低下が懸念され、硫黄を導入する際のコストも増加する傾向にある。
したがって、スルホン化パルプ繊維へのスルホ基の導入量、つまりスルホ基に基づく硫黄導入量は、上記範囲となるように調整するのが好ましい。
また、スルホン化パルプ繊維を解繊して得られる後述する微細セルロース繊維における透明性の観点においても、上記範囲と同様の範囲となるように調整するのが好ましい。
なお、スルホン化パルプ繊維の硫黄導入量(つまりスルホ基の導入量)は、スルホン化パルプ繊維の所定量を燃焼させて、燃焼イオンクロマトグラフを用いて燃焼物に含まれる硫黄分をIEC 62321に準拠した方法で測定することができる。
スルホン化パルプ繊維は、上記硫黄導入量に加えて、所定の保水度を有する点においても特徴を有している。
具体的には、スルホン化パルプ繊維の保水度、つまり遠心脱水後に含有する水分量が、所定の状態となるようにスルホン化パルプ繊維は、調製されている。
このスルホン化パルプ繊維の保水度は、後述する利用目的や用途に応じて適宜調整されていれば、その範囲はとくに限定されない。
例えば、スルホン化パルプ繊維の保水度は、150%以上となるように調整するのが好ましい。より具体的には、200%よりも高くなるように調整するのが好ましく、より好ましくは220%以上であり、さらに好ましくは250%であり、よりさらに好ましくは300%以上であり、さらにより好ましくは500%以上である。
スルホン化パルプ繊維の保水度は、一般的なパルプ繊維の保水度試験(例えば、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.26:2000に準拠した方法)により求めることができる。
スルホン化パルプ繊維は、繊維形状が維持される程度の平均繊維長であれば、その長さはとくに限定されない。
具体的には、スルホン化パルプ繊維をスルホン化する前後において、平均繊維長が所定の長さを維持していればよい。より具体的には、スルホン化パルプ繊維にスルホ基を導入する前のパルプ繊維における平均繊維長と、スルホ基を導入した後のスルホン化パルプ繊維の平均繊維長を比較した際、後者(つまりスルホン化パルプ繊維)が前者に比べて50%以上となるように調整するのが好ましく、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上となるように調整する。言い換えれば、スルホン化パルプ繊維は、原料となるパルプの素材に関わらず、スルホ基を導入する前と後において、平均繊維長が所定の値以上となるように調製されているのである。
スルホン化パルプ繊維の平均繊維長は、公知の繊維分析器を用いて測定することができる。公知の繊維分析器として、例えば、ファイバーテスター(ローレンツェン&ベットレー(株)社製)を挙げることができる。
なお、スルホン化パルプ繊維は、複数のスルホン化パルプ繊維を水溶液に分散させて洗浄した後、乾燥する。この乾燥した際の白色度が所定の範囲となるように調整するのが好ましい。
例えば、スルホン化パルプ繊維は、白色度が30%以上となるように調製してもよく、好ましくは40%以上となるように調製してもよい。白色度が30%以上であれば、着色が目立ちにくくなるので、取り扱い性を向上させることができる。
つぎに、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法で得られるスルホン化微細セルロース繊維(以下、単にスルホン化微細セルロース繊維という)について説明する。
スルホン化微細セルロース繊維は、セルロース繊維が微細化された微細セルロース繊維であって、微細セルロース繊維を構成するセルロース(D−グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子)の水酸基(−OH基)の少なくとも一部が上記式(1)で示されるスルホ基でスルホン化されたものである。
スルホン化微細セルロース繊維のスルホ基の導入量は、スルホ基に基づく硫黄導入量で表すことができ、透明性や分散性をある程度維持することができれば、その導入量はとくに限定されない。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維1g(質量)あたりの硫黄導入量は、0.4mmol/gよりも高くなるように調整するのが好ましく、より好ましくは、0.42mmol/g〜9.9mmol/gであり、さらに好ましくは0.5mmol/g〜9.9mmol/gであり、さらにより好ましくは0.6mmol/g〜9.9mmol/gである。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維へのスルホ基の導入量、つまりスルホ基に基づく硫黄導入量は、上記範囲となるように調整するのが好ましい。
また、スルホン化微細セルロース繊維の透明性の観点においても、上記範囲と同様の範囲となるように調整するのが好ましい。
なお、スルホン化微細セルロース繊維の硫黄導入量(つまりスルホ基の導入量)は、スルホン化微細セルロース繊維の所定量を燃焼させて、燃焼イオンクロマトグラフを用いて燃焼物に含まれる硫黄分をIEC 62321に準拠した方法で測定することができる。
また、上述したスルホン化パルプ繊維を微細化処理する場合には、かかるスルホン化パルプ繊維の硫黄導入量から求めてもよい。
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維長は、重合度で間接的に表すことができる。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維の重合度は、上記範囲内となるように調整するのが好ましい。とくに、繊維同士のからみ易さの観点では、重合度が280以上となるように調製するのが好ましく、分散性や取り扱い性の観点では、重合度が600よりも低くなるように調製するのが好ましい。
この重合度の測定方法は、とくに限定されないが、例えば、銅エチレンジアミン法で測定することができる。具体的には、スルホン化微細セルロース繊維を0.5Mの銅エチレンジアミン溶液に溶解させて、かかる溶液の粘度を粘度法によって測定すれば、スルホン化微細セルロース繊維の重合度を測定することができる。
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、水系溶媒に分散させた際に透明性を得やすい太さであれば、とくに限定されない。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察した際に、1nm〜1000nmとなるように調製するのが好ましく、より好ましくは2nm〜500nm、さらにより好ましくは2nm〜100nmであり、さらに好ましくは2nm〜30nmであり、よりさらに好ましくは2nm〜20nmである。
微細セルロース繊維の繊維幅が1nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細セルロース繊維としての物性(強度や剛性、又は寸法安定性)が発現しにくくなる。一方、1000nmを超えると微細セルロース繊維とは言えず、通常のパルプに含まれる繊維にすぎないため、微細セルロース繊維としての物性(透明性や強度や剛性、又は寸法安定性)が得られにくい傾向にある。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、上記範囲内となるように調製するのが好ましい。
とくに、スルホン化微細セルロース繊維の取り扱い性や透明性が求められる用途などの観点においては、さらに以下の範囲内となるように調製するのがより好ましい。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、取り扱い性や透明性の観点においては、2nm〜30nmが好ましく、より好ましくは2nm〜20nmであり、さらに好ましくは2nm〜10nmである。
とくに、透明性の観点では、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅が20nm以下となるように調製するのが好ましく、より好ましくは10nm以下となるように調製する。平均繊維幅が10nm以下となるように調製すれば、可視光の散乱をより少なくできるので、高い透明性を有するスルホン化微細セルロース繊維を得ることができる。
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、公知の技術を用いて測定することができる。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維を純水等の溶媒に分散させて、所定の質量%となるように混合溶液を調整する。そしてこの混合溶液を、PEI(ポリエチレンイミン)をコーティングしたシリカ基盤上にスピンコートを行い、このシリカ基盤上のスルホン化微細セルロース繊維を観察する。
観察方法としては、例えば、走査型プローブ顕微鏡(例えば、島津製作所製;SPM−700)を用いることができる。得られた観察画像中のスルホン化微細セルロース繊維をランダムに20本選び、各繊維幅を測定し平均化すればスルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅を求めることができる。
スルホン化微細セルロース繊維の透明性は、スルホン化微細セルロース繊維を分散液に分散させた状態の分散液のヘイズ値により評価することができる。
具体的には、スルホン化微細セルロース繊維を分散液に分散させた際の固形分濃度が所定の濃度となるように調整した分散液を視認した際の透明性をヘイズ値で評価することができる。
スルホン化微細セルロース繊維を分散させた分散液の固形分濃度は、とくに限定されないが、例えば、0.1質量%〜20質量%となるように調製することができる。そして、かかる分散液のヘイズ値が、20%以下であれば、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維は透明性を有しているといえる。逆をいうと、固形物濃度が上記範囲内となるように調製した分散液のヘイズ値が20%よりも高い場合には、透明性が適切に発揮されにくい状態にあるといえる。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維は、固形分濃度が0.1質量%〜20質量%となるように調製した分散液のヘイズ値が20%以下となるように調製するのが好ましく、より好ましくは固形分濃度が0.2質量%〜0.5質量%となるように調整した際の分散液のヘイズ値が上記範囲となるように調製するのが好ましい。
ヘイズ値は、下のようにして測定することができる。
上述した分散液にスルホン化微細セルロース繊維を所定の固形分濃度となるように分散させる。そして、この分散液をJIS K 7105に準拠して分光光度計を用いて測定すれば、スルホン化微細セルロース繊維の透明性であるヘイズ値を求めることができる。
なお、上記分散液のヘイズ値が上記範囲内において、全光線透過率が90%以上であり、より好ましくは95%以上となるように調整するのが好ましい。
全光線透過率は、下のようにして測定することができる。
上述した分散液にスルホン化微細セルロース繊維を所定の固形分濃度となるように分散させる。そして、この分散液を、JIS K 7105に準拠して分光光度計を用いて測定すれば、スルホン化微細セルロース繊維の全光線透過率を求めることができる。
本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法を用いて製造した複数のスルホン化パルプ繊維を集合させれば、スルホ基が導入したパルプ繊維を含む誘導体パルプとすることができる。
この誘導体パルプは、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法を用いて製造した複数のスルホン化パルプ繊維のみを集合させたものであってもよいし、セルロース以外の材質からなる繊維(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)や、ポリエステル等の合成繊維、羊毛等の天然繊維など)や、他のパルプ繊維等を含有するように集合させてもよい。
なお、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法を用いて製造した複数のスルホン化パルプ繊維の含有率が高くなるよう調整すれば、上述したスルホン化パルプ繊維と同様の効果を発揮させやすくなるので好ましい。
上述したスルホン化パルプ繊維は、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法を用いて製造される。
具体的には、上述したようにパルプを化学処理工程に供し、化学処理工程に供されたパルプは、接触工程、反応工程の順に処理される。
また、スルホン化微細セルロース繊維は、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法を用いて製造される。具体的には、上述したようにパルプを化学処理工程、微細化処理工程の順に処理される。
以下では、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法として、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法を用いて製造されたスルホン化パルプ繊維を微細化処理工程に供給されるパルプの代表として説明する。
なお、以下に示す製造方法は一例にすぎず、上述した特性を有するスルホン化パルプ繊維およびスルホン化微細セルロース繊維を製造することができる方法であれば、以下の方法に限定されない。
各工程を順に具体的に説明する。
まず、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法について説明する。
このスルホン化パルプ繊維の製造方法は、図1に示すように、セルロースを含む繊維原料を以下に示す方法で化学的に処理する化学処理工程を含んでいる。
本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法における化学処理工程は、セルロースを含む繊維原料に対してスルホ基を有するスルホン化剤と尿素または/およびその誘導体を接触させる接触工程と、この接触工程後の繊維原料に含まれるセルロースの水酸基の少なくとも一部にスルホ基を導入する反応工程とを含んでいる。
つまり、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法は、繊維原料に含まれるセルロースにスルホ基を導入させる方法において、尿素または/およびその誘導体を用いる点に特徴を有している。このため、以下に示すような従来の製法では得られなかった優れた効果を奏する。
しかし、スルホン化剤のみで反応させた場合には、1)スルホ基の導入に要する時間が長くなったり、2)スルホン化剤の酸の影響により繊維の短繊維化が起こりやすくなったり、3)スルホン化剤の酸の影響により反応後の繊維に着色が生じてしまう、この着色を処理するために様々な化学処理を行う必要があり着色除去に労力とコストがかかる、などの問題が発生する。
A)スルホ基の導入量を促進させることができる。つまり、尿素を触媒として機能させることによって、反応時間を短くすることができ、
B)一方で、酸による短繊維化という作用を尿素によって抑制することができる。つまり、酸による繊維の短繊維化を防止することができ、
C)酸による繊維の着色を尿素によって抑制することができる。つまり、酸で処理したにも関わらず繊維への着色を抑制した繊維を調製できる、という従来では得られなかった効果を奏するようにしたことに特徴を有している。
しかも、D)得られるスルホン化パルプ繊維は、上述したような保水度を有するように調整することができるという効果も奏する。
通常、このような微細化処理工程で行われる効率化向上の方法としては、微細化前の繊維の重合度を低下させて(つまり解繊機等に供給する繊維の繊維長を短くして)解繊機等に供給した際の解繊等への負荷を低下させるという方法が採用されている。
かかる方法では、微細化効率を向上させることができるものの、得られる微細繊維の平均繊維長が短くなるといった問題が生じている。
一方、得られる微細繊維の平均繊維長を長くするには、微細化前の繊維の重合度を高く維持した状態(つまり解繊機等に供給する繊維の繊維長を長くした状態)で解繊機等に供給する必要がある。
かかる方法では、微細繊維の繊維長をある程度は長くできるものの、繊維が非常に硬い状態(例えば、繊維を構成する微細繊維同士が強固に結合しているような状態)となっているので、解繊機等では容易に微細化することができない。このため、解繊する際に多大なエネルギー(例えば、高圧ホモジナイザーを用いた場合にはその圧力を200MPa以上にする)と時間(例えば、高速カッターを有する剪断装置(エムテクニック社製、クレアミックス)を用いた場合には30分程度)を要することになり、作業効率の悪化はもちろん、微細化効率も非常に悪くなるといった問題が生じる。しかも、均質な繊維長を有する微細繊維を得にくいといった問題も発生している。
しかも、微細化処理をスムースに行うことができるので、微細化処理に要する時間を短くできるので、生産性を向上させることができる。言い換えれば、生産性を向上させることができるので、製造コスト(生産コスト)を従来の技術で製造する場合と比べて安価にできるようになる。
スルホン化パルプ繊維の保水度が低くなるように製造すれば、かかる繊維中の水分量を少なくできるので、脱水性を向上させることができる。この場合、脱水がし易くなるので、固形分濃度が高いスルホン化パルプ繊維を製造することができる。すると、製造したスルホン化パルプ繊維を運搬する際における輸送コストを抑制することができるようになる。
しかも、製造工程において、スルホン化パルプ繊維を洗浄する工程を含む場合には、洗浄工程後の脱水がし易くなるので、操作性および作業性を向上させることができる。このため、上記目的でスルホン化パルプ繊維を製造する場合には、生産性を向上させることができる。言い換えれば、生産性を向上させることができるので、製造コスト(生産コスト)を従来の技術で製造する場合と比べて安価にできるようになる。
しかも、高品質なスルホン化パルプ繊維を安定して製造することができるので、所望の利用目的や用途に応じたスルホン化パルプ繊維を効率よく生産することができる。さらに、その製造コストも抑制することができる。
本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程における接触工程は、セルロースを含む繊維原料に対してスルホン化剤と尿素または/およびその誘導体を接触させる工程である。この接触工程は、上記接触を起こさせることができる方法であれば、とくに限定されない。
例えば、スルホン化剤と尿素または/およびその誘導体を共存させた反応液に繊維原料を浸漬等させて反応液を含浸させてもよいし、繊維原料に対してかかる反応液を塗布してもよいし、繊維原料に対してスルホン化剤と尿素または/およびその誘導体をそれぞれ別々に塗布したり、含浸させたりしてもよい。
これらの方法のうち、上記反応液に繊維原料を浸漬させて繊維原料に反応液を含浸させる方法を採用すれば、均質にスルホン化剤と尿素または/およびその誘導体を繊維原料に対して接触させることができるので好ましい。
また、上記反応液に繊維原料を浸漬させて繊維原料に反応液を含浸させる方法を採用する場合、反応液に含まれるスルホン化剤と尿素または/およびその誘導体の混合比は、とくに限定されない。
例えば、スルホン化剤と尿素を純水に溶解してそれぞれの濃度が、200g/Lと100g/Lになるように調整すれば、濃度比(g/L)において、スルホン化剤:尿素が2:1の反応液を調製することができる。言い換えれば、尿素は、スルファミン酸100重量部に対して50重量部となるように調製すれば、スルホン化剤:尿素が2:1の反応液を調製することができる。また、スルホン化剤と尿素を純水に溶解してそれぞれの濃度が、200g/Lと500g/Lになるように調整すれば、濃度比(g/L)において、スルホン化剤:尿素が1:2.5の反応液を調製することができる。
また、繊維原料に接触させる反応液の量は、とくに限定されない。
例えば、反応液と繊維原料を接触させた状態において、反応液に含まれるスルホン化剤が、繊維原料の乾燥重量100重量部に対して、1重量部〜20,000重量部であり、反応液に含まれる尿素または/およびその誘導体が、繊維原料の乾燥重量100重量部に対して、1重量部〜100,000重量部となるように調製することができる。
本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程における反応工程は、上述したように繊維原料に含まれるセルロースの水酸基に接触させたスルホン化剤のスルホ基を置換して、繊維原料に含まれるセルロースにスルホ基を導入する工程である。
この反応工程は、セルロースの水酸基にスルホ基を置換するスルホン化反応が可能な方法であれば、とくに限定されない。例えば、上記反応液を含浸させた繊維原料を所定の温度で加熱すれば、繊維原料に含まれるセルロースにスルホ基を導入することができる。
反応工程における加熱温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、上記繊維原料を構成するセルロースにスルホ基を導入できる温度であれば、とくに限定されない。具体的には、接触工程後の繊維原料を直接的または間接的に上記要件を満たしながら加熱することができるものであればよい。このようなものとしては、公知の乾燥機や、減圧乾燥機、マイクロ波加熱装置、オートクレーブ、赤外線加熱装置等を採用することができる。とくに、反応工程において、ガスが発生する可能性があるので、循環送風式の乾燥機を使用するのが好ましい。
例えば、雰囲気温度が250℃以下が好ましく、より好ましくは雰囲気温度が200℃以下であり、さらに好ましくは雰囲気温度が180℃以下である。加熱時における雰囲気温度が250℃よりも高くなると、上述したように熱分解が起こったり、繊維の変色の進行が早くなったりする。一方、加熱温度が100℃よりも低くなると、反応時間が長くなる傾向にある。したがって、作業性の観点から、加熱時における加熱温度(具体的には雰囲気温度)が100℃以上250℃以下、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは100℃以上180℃以下となるように調整する。
また、反応工程として上記加熱方法を採用した場合の加熱時間は、とくに限定されない。例えば、反応工程における加熱時間は、反応温度を上記範囲となるように調整した場合、1分以上となるように調整する。より具体的には、5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは20分以上とする。
加熱時間が1分よりも短い場合は、反応がほとんど進行していなと推察される。一方、加熱時間をあまり長くしてもスルホ基の導入量の向上が期待できない傾向にある。
したがって、反応工程として上記加熱方法を採用した場合の加熱時間は、とくに限定されないが、反応時間や操作性の観点から、5分以上300分以内が好ましく、より好ましくは5分以上120分以内とするのがよい。
反応工程におけるスルホン化剤は、スルホ基を有する化合物であればとくに限定されない。例えば、スルファミン酸、スルファミン酸塩、硫黄と共有結合する2つの酸素を持つスルホニル基を有するスルフリル化合物などを挙げることができる。
なお、スルホン化剤として、これらの化合物を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
スルホン化剤は、上記のような化合物であればとくに限定されないが、硫酸等と比べて酸性度が低く、スルホ基の導入効率が高く、低コストで、安全性が高いので取り扱い性の観点から、スルファミン酸を採用するのが好ましい。
反応工程における尿素とその誘導体のうち、尿素の誘導体は、尿素を含有する化合物であればとくに限定されない。例えば、カルボン酸アミド、イソシアネートとアミンの複合化合物、チアミドなどを挙げることができる。なお、尿素とその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよいし、両者を混合して用いてもよい。また、尿素の誘導体は、上記化合物を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
尿素とその誘導体は、上記のような化合物であればとくに限定されないが、低コストで、環境負荷の影響が少なく、安全性が高いので取り扱い性の観点から、尿素を採用するのが好ましい。
スルホン化パルプ繊維の製造方法に用いられる繊維原料は、セルロースを含むものであればとくに限定されない。
例えば、木材系のパルプ(以下単に木材パルプという)や、溶解パルプ、コットンリンタなどの綿系のパルプ、麦わらや、バガス、楮、三椏、麻、ケナフのほか、果物等などの非木材系のパルプ、ホヤや海藻などから単離されるセルロースや、新聞古紙、雑誌古紙やダンボール古紙などから製造された古紙系のパルプなどのパルプを繊維原料として使用することができる。なお、入手のし易さの観点から、木材パルプを使用することが好ましい。
なお、繊維原料として、上記パルプを使用する場合に上述した種類のパルプ1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程は、接触工程と反応工程の間に乾燥工程を含んでいてもよい。
この乾燥工程は、反応工程の前処理工程として機能する工程であり、接触工程後の繊維原料の含水率が平衡状態となるように乾燥する工程である。接触工程後の繊維原料を湿潤状態のまま反応工程に供給して加熱してもよいが、スルファミン酸や尿素等の一部が加水分解を受ける可能性がある。このため、反応工程におけるスルホン化反応を適切に進行させる上では、反応工程前に乾燥工程を設けることが好ましい。
したがって、上述した反応を適切に行う上では加熱時における雰囲気温度が100℃以下が好ましく、操作性の観点では加熱時における雰囲気温度が20℃以上が好ましい。
また、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程における反応工程の後には、スルホ基を導入した後の繊維原料を洗浄する洗浄工程を含んでもよい。
例えば、スルホ基を導入した後の繊維原料が中性になるまで純水等で洗浄するという方法を採用することができる。
スルホン化微細セルロース繊維は、図1に示すように、上記のごとく調製したスルホン化パルプ繊維を本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法における微細化処理工程に供給し、微細化することによって得られる。
本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法における微細化処理工程は、スルホン化パルプ繊維を微細化して所定の大きさの(例えば、ナノレベル)微細繊維にする工程である。
この微細化処理工程に用いられる処理装置は、上記機能を有するものであれば、とくに限定されない。例えば、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー(石臼型粉砕機)、ボールミル、カッターミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用のミキサーなどを使用することができるが、処理装置は、これらの装置に限定されるものはない。
これらのうち、材料に均等に力を加えることができ、均質化に優れているという点で、高圧ホモジナイザーを用いるのが望ましいが、かかる装置に限定されない。
このスラリーのスルホン化パルプ繊維の固形分濃度は、とくに限定されない。例えば、このスラリーのスルホン化パルプ繊維の固形分濃度が、0.1質量%〜20質量%となるように調整した溶液を高圧ホモジナイザー等の処理装置に供給すればよい。
例えば、微細化の処理効率や使用エネルギーの削減といった観点では、保水度を高くなるように調製したスルホン化パルプ繊維を使用するのが望ましい。このような観点では、スルホン化パルプ繊維の保水度としては、150%以上となるように調整するのが好ましい。とくに、200%よりも高くなるように調製されたものを用いるのが好ましく、より好ましくは220%以上であり、さらに好ましくは250%であり、よりさらに好ましくは300%以上であり、さらにより好ましくは500%となるように調製されたものを用いるのがよい。
ただし、保水度が10,000%よりも高くなるとスルホン化処理後のスルホン化パルプ繊維の回収率が低下する傾向にある。
したがって、微細化効率の観点および回収率の観点においては、微細化処理工程に供給する際のスルホン化パルプ繊維の保水度は、150%〜10,000%が好ましく、より好ましくは200%〜10,000%であり、さらに好ましくは220%〜10,000%であり、さらにより好ましくは250%〜5,000%であり、よりさらに好ましくは250%〜2,000%である。
しかも、スムースな微細化(解繊)を行うことができるようになるので、微細化処理工程に要する時間をより短縮することができる。例えば、解繊機を使用する場合には少ない回数のパスで微細化することができる。
実験1では、繊維原料として、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)(平均繊維長が2.6mm)を使用した。以下では、実験に供したNBKPを単にパルプとして説明する。
パルプは、大量の純水で洗浄後、200メッシュのふるいで水を切り、固形分濃度を測定後、乾燥させることなく実験に供した。
パルプを以下のように調製した反応液に加え撹拌してスラリー状にした。
なお、パルプを反応液に加えてスラリー状にする工程が、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程における接触工程に相当する。
スルホン化剤と尿素または/およびその誘導体が以下の濃度となるように調製した。
実験1では、スルホン化剤として、スルファミン酸(純度98.5%、扶桑化学工業製)を使用し、尿素またはその誘導体として、尿素溶液(純度99%、和光純薬工業製、型番;特級試薬)を使用した。
両者の混合比は、濃度比(g/L)において、4:1(1:0.25)、2:1(1:0.5)、1:1、1:2.5となるように混合し水溶液を調整した。
スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/50、200/100、200/200、200/500、50/25、100/50、200/100
反応液の調製の一例を以下に示す。
容器に水100mlを加えた。ついで、この容器にスルファミン酸20g、尿素10gを加えて、スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))が200/100(1:0.5)の反応液を調製した。つまり、尿素は、スルファミン酸100重量部に対して50重量部となるように加えた。
つまり、上記スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))が200/100(1:0.5)の反応液の場合、スルファミン酸はパルプ100重量部に対して、1000重量部、尿素は500重量部となるように調製した。
また、ブランクパルプとして、反応液に接触させていないNBKPを使用した。
吸引ろ過後、ろ紙からパルプを剥がし、ろ過したパルプを恒温槽の温度を50℃に設定した乾燥機(いすゞ製作所製、型番;VTR−115)に入れて含水率が平衡状態になるまで乾燥した。つまり、加熱反応の前に乾燥を行った状態のものを次工程に供給した。なお、以下では、この乾燥を行った条件のものを単に「乾燥工程有条件」という。
なお、このろ過後のパルプを乾燥させる工程が、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程における乾燥工程に相当する。
加熱反応は、乾燥機(いすゞ製作所製、型番;VTR−115)を用いた。
反応条件は以下の通りである。
恒温槽の温度:100℃、120℃、140℃、加熱時間:5分、25分、60分、120分
なお、この加熱反応が、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法の化学処理工程における反応工程に相当する。
また、スルファミン酸/尿素処理パルプが本実施形態の誘導体パルプに相当し、スルファミン酸/尿素処理パルプを構成する反応パルプ繊維が、本実施形態のスルホン化パルプ繊維の製造方法で得られるスルホン化パルプ繊維に相当する。
高圧ホモジナイザー(GEAニロソアビ社製、型番;Panda Plus 200)を用いてスルファミン酸/尿素処理パルプのナノ化を行い、ナノセルロースを調製した。
高圧ホモジナイザーの処理条件は、以下の通りとした。
スルファミン酸/尿素処理パルプは、固形分濃度が0.5質量%となるように調製したものを高圧ホモジナイザーに供給した。圧力は、120〜140MPaとした。
なお、各スルファミン酸/尿素処理パルプは、高圧ホモジナイザーで3パス処理することによってナノセルロース繊維を得た。
化学処理前後でのパルプの収率を以下の式から求めた。
化学処理後のパルプの回収は300meshワイヤーを用いて行った。
収率=化学処理工程後に回収したパルプの固形分重量/化学処理工程前に仕込んだパルプの固形分重量
化学処理後のパルプに含まれる硫黄分を燃焼イオンクロマトグラフにより求めた。測定方法はIEC 62321の測定条件に準拠して測定した。
燃焼装置:三菱ケミカルアナリテック社製、型番;AQF−2100 H
イオンクロマト:サーモフィッシャーサイエンス社製、型番;ICS−1600
化学処理後の繊維の保水度の測定は、TAPPI No.26に準拠して行った。
化学処理後のパルプの表面観察は、FE−SEM(日本電子(株)社製、型番;JSM−7610)を用いて行った。試料は、微細繊維分散液の溶媒をt−ブチルアルコールに置換し、凍結乾燥したものをオスミウムによりコーティングして観察に供した。
パルプのFE−SEM画像を画像解析し、繊維の配向性を評価した。
画像解析ソフトにはFiberOri8s03を用いた。このソフトは紙表面の繊維配向を学術的に評価することにも用いられている。
白色度の測定は、JIS P 8148:2001 紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)に準拠して測定した。
測定に用いるサンプルは、化学処理後のパルプを水で洗浄し、凍結乾燥後のものを用いた。
高圧ホモジナイザー処理後のスルホン化微細セルロース繊維を純水で固形分濃度0.001〜0.005質量%に調製し、PEI(ポリエチレンイミン)をコーティングしたシリカ基盤上にスピンコートを行った。
このシリカ基盤上のナノセルロースの観察を、走査型プローブ顕微鏡(島津製作所製、型番;SPM−700)を用いて行った。
繊維幅の測定は、観察画像中の繊維をランダムに20本選び測定した。
ヘイズ値の測定および全光線透過率の測定は、スルホン化微細セルロース繊維を純水で、固形分濃度が0.5質量%となるように調製して測定溶液とした。
なお、微細化処理工程において、固形分濃度が0.5質量%となるように調製したスルファミン酸/尿素処理パルプを高圧ホモジナイザーに供給して得られたスルホン化微細セルロース繊維においては、得られたスルホン化微細セルロース繊維が分散した分散液の濃度は供給前の固形分濃度と同じであることから、そのまま測定溶液として測定に供した。
測定溶液を分取して分光光度計(日本分光(株)社製、型番;V−570)を用いて測定した。なお、測定方法は、JIS K 7105の方法に準拠して行った。
なお、上記測定溶液が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法における分散液に相当する。
JIS P 8215(1998)に従い、スルホン化微細セルロース繊維の極限粘度(固有粘度)を測定した。その後、固有粘度(η)から、下記式により、スルホン化微細セルロース繊維の重合度(DP)を算出した。なお、この重合度は、粘度法によって測定された平均重合度であることから、「粘度平均重合度」と称されることもある。
DP=1.75×[η]
図2、図3は、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の特性表である。
図2は、加熱反応前に乾燥を行った条件下(乾燥工程有条件)でのスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の特性表である。
図3は、加熱反応前に乾燥を行わなかった条件下(乾燥工程無条件)でのスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の特性表である。
図4〜図8は、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の特性を具体的に示したものである。
図4は、乾燥工程有条件下で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の硫黄導入量(mmol/g)および保水度(%)と反応液のスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))との関係を示した図である。
図5は、乾燥工程無条件下で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の保水度(%)と反応液のスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))との関係を示した図である。
図6(A)は、乾燥工程有条件下で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維のパルプ繊維長(mm)と反応液のスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))との関係を示した図であり、図6(B)は、乾燥工程有条件下で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の化学処理前後の繊維長維持率(%)と反応液のスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))との関係を示した図である。
図7は、乾燥工程有条件下で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の硫黄導入量(mmol/g)と反応温度との関係を示した図である。
図8(A)は、乾燥工程有条件下で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の繊維長(mm)と反応温度と処理時間の関係を示した図であり、図8(B)は、乾燥工程有条件下で得られたスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の化学処理前後の繊維長維持率(%)と反応温度と処理時間の関係を示した図である。
また、図4または図5に示すように、スルファミン酸と尿素の濃度比において、尿素の混合割合を調整することによって、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の保水度を250%〜4600%の範囲で調整することができることが確認できた。
つまり、スルファミン酸と尿素の濃度比を調整することによって、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の硫黄導入量および保水度を制御できることが確認できた。
図7に示すように、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の硫黄導入量を0.5mmol/g以上とするには、120℃または140℃の条件下において、15分以上とすればよく、両者よりも温度が低い100℃の条件下においては、35分以上とすればよいことが確認できた。
また、図8に示すように、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の繊維長を長くするには、温度が低い条件のものが好ましいことが確認できた。
図9(A)〜(D)は、それぞれスルファミン酸/尿素比が200/50(1:0.25)、200/100(1:0.5)、200/200(1:1)、200/500(1:2.5)の表面拡大写真である。
図9(E)は、比較例として示したNBKPの表面拡大写真である。
図9(A)〜(D)のスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の保水度は、それぞれ(A)980%、(B)1920%、(C)1120%、(D)250%であった。
図11(A)〜(D)は、それぞれスルファミン酸/尿素比が200/50(1:0.25)、200/100(1:0.5)、200/200(1:1)、200/500(1:2.5)の表面拡大写真である。
図11(E)は、比較例として示したNBKPの表面拡大写真である。
図11(A)〜(D)のスルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の配向度は、それぞれ(A)1.18、(B)1.04、(C)1.10、(D)1.30であった。
スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維は、解繊回数3回(3パス)で平均繊維幅を20nm以下にできることが確認できた。
一方、化学処理を行っていない微細繊維(つまりブランクパルプのNBKP)は、解繊回数20回(20パス)しても平均繊維幅が30nm〜50nmであり、平均繊維幅20nm以下にすることはできなかった。
反応液に尿素を混合することによって、スルファミン酸による繊維への着色を抑制できることが確認できた。
また、スルファミン酸と尿素の濃度比において、尿素の混合割合を調整することによって、スルファミン酸/尿素処理パルプ繊維の白色度を制御できることが確認できた。
図14、図15は、ナノセルロース繊維の特性表である。
図14は、乾燥を行った条件下(乾燥工程有条件)で得られたナノセルロース繊維の特性表である。
図15は、乾燥を行わなかった条件下(乾燥工程無条件)で得られたナノセルロース繊維の特性表である。
図16〜図18は、ナノセルロースの特性を具体的に示したものである。
図16は、乾燥工程有条件下で得られたナノセルロース繊維の全光線透過率(%)およびヘイズ値(%)と反応液のスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))との関係を示した図である。
図17は、乾燥工程無条件下で得られたナノセルロース繊維の全光線透過率(%)およびヘイズ値(%)と反応液のスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))との関係を示した図である。
図18は、乾燥工程有条件下で得られたナノセルロース繊維の重合度(つまりナノセルロース繊維の平均繊維長に相当するもの)と反応液のスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))との関係を示した図である。
また、図14、図15、図16、図17に示すように、測定溶液(つまり分散液)のナノセルロース繊維の固形分濃度が0.5質量%となるように調製した場合、全てにおいて全光線透過率(%)が90%以上となっており、しかもヘイズ値(%)が、15%以下のナノセルロース繊維を調製することができることが確認できた。
つまり、分散液における分散性を向上させ、しかも非常に高い透明度を有するナノセルロース繊維を調製することができることが確認できた。
なお、重合度を400、グルコース1分子の軸方向の長さを約5Å(約0.5nm)とした場合、繊維長が約200nmのナノセルロース繊維を調製できることが確認できた。
実験では、スルファミン酸に類似した化合物として、硫酸塩(硫酸水素アンモニウム)を使用した。実験方法としては、スルファミン酸の代わりに硫酸水素アンモニウムを用いた以外は同様の方法で行った。
図19に示すように、解繊回数3回(3パス)では、硫酸塩(硫酸水素アンモニウム)/尿素系パルプ繊維を解繊することができなかった。
かかる実験結果から、尿素は、硫酸塩(硫酸水素アンモニウム)を用いたスルホン化において、スルファミン酸/尿素の系と同様の機能(例えば、触媒として機能など)を発揮しないか、または発揮しても十分に機能していないことが確認できた。
したがって、スルファミン酸/尿素の系では、硫酸塩(硫酸水素アンモニウム)を用いてスルホン化する場合と比べて、微細化効率を向上させることができ、しかも、スルホン化の程度を向上させることができることが確認できた。
実験2では、スルファミン酸/尿素処理パルプの保水度を調整することによって、解繊をし易くできることを確認した。
また、かかる固形分濃度における全光線透過率(%)およびヘイズ値(%)もそれぞれ確認した。
高圧ホモジナイザー(株式会社コスにじゅういち社製、型番;N2000−2C−045型)を用い、予備解繊として処理圧力10MPaで2回、50MPaで1回処理した。この予備解繊を行ったものを解繊処理した。解繊処理は、処理圧力を、実験1の約半分の60MPaとした。
なお、高圧ホモジナイザー以外の装置は、実験1で使用した装置を使用した。
また、実験2の測定方法において、実験1と重複する説明については割愛する。
高圧ホモジナイザーで解繊処理した後に得られたナノセルロース繊維の分散液に含まれる未解繊の繊維の割合を以下の方法によって算出した。
未解繊の繊維の繊維残存率(%)は、解繊処理前と後における固形分0.05g中の測定繊維に基づいて算出した。
使用した装置は、ファイバーテスター(ローレンツェン&ベットレー(株)社製)である。
ついで、上記装置を使用して、解繊処理後のナノセルロース繊維の分散液から、固形分0.05g中に測定可能な繊維が何本存在しているかを測定した。
そして、繊維残存率(%)=(解繊処理後の測定値/解繊処理前の測定値)×100を求めた。
図20は、スルファミン酸/尿素処理パルプの保水度(%)と繊維残存率(%)および高圧ホモジナイザーのパス数との関係を示した図である。
なお、繊維残存率(%)が10%以下の場合には、分散液中に含まれる繊維を目視観察で確認することはできなかった。
さらに、図22に示すように、2回のパスによってヘイズ値(%)が15%以下のナノセルロース繊維を調製できることが確認できた。とくに、スルファミン酸/尿素処理パルプの保水度(%)が1000%以上の場合には、1回のパスでヘイズ値(%)が5%以下のナノセルロース繊維を調製できることが確認できた。
また、パス回数を増加させて解繊を行った場合にも比較例Dでは十分な解繊結果が得られなかった。
しかも、スルファミン酸/尿素処理パルプの保水度(%)を比較例の180%よりも高くし、かつスルファミン酸/尿素処理パルプの硫黄導入量を比較例の0.42mmol/gよりも高くなるように調製すれば、透明性の高いナノセルロース繊維を容易に調製(製造)することができることが確認できた。
とくに、スルファミン酸/尿素処理パルプの保水度(%)が1000%以上となるように調製すれば、解繊圧力60MPa下、1回のパスで容易にヘイズ値(%)が5%以下のナノセルロース繊維を調製できることが確認できた。
図23および図24は、高圧ホモジナイザーに供給するスラリー中のスルファミン酸/尿素処理パルプの固形分濃度と得られるナノセルロース繊維への影響について確認したものである。
この実験では、上述したスルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))が200/100(1:0.5)の反応液を用いて上記のごとき製法(乾燥工程有、反応条件:温度120℃、時間25分、保水度1920%)で調製したスルファミン酸/尿素処理パルプを固形分濃度が、それぞれ0.5質量%と0.2質量%となるように調製したスラリーを高圧ホモジナイザーに供給した。そして、得られたナノセルロース繊維の品質を全光線透過率(%)、ヘイズ値(%)および解繊後の未解繊繊維数で評価した。
図23および図24の実験結果に示すように、解繊時における1パス処理、2パス処理においても、いずれも全光線透過率(%)が約100%であり、ヘイズ値(%)が5%と以下であった。また、未解繊繊維数においては、1パス処理ではいずれも30本以下であり大きな差は確認できなかった。
したがって、高圧ホモジナイザーに供給するスラリー中のスルファミン酸/尿素処理パルプの固形分濃度は、0.2質量%〜0.5質量%の範囲内においては、解繊のし易さに影響を与えないことが確認できた。そして、得られたナノセルロース繊維においても、その品質に影響を与えないことが確認できた。
Claims (11)
- パルプからセルロースの水酸基の一部がスルホン化したパルプ繊維を製造する方法であって、
前記パルプを化学的に処理する化学処理工程を含んでおり、
該化学処理工程が、
前記パルプを構成するパルプ繊維に対してスルホ基を有するスルホン化剤と尿素または/およびその誘導体を接触させる接触工程と、
該接触工程後のパルプ繊維を構成するセルロースの水酸基の一部にスルホ基を導入する反応工程と、を含み、
前記接触工程と前記反応工程との間に、前記接触工程後のパルプを乾燥する乾燥工程を含んでいる
ことを特徴とするスルホン化パルプ繊維の製造方法。 - パルプからセルロースの水酸基の一部がスルホン化したパルプ繊維を製造する方法であって、
前記パルプを化学的に処理する化学処理工程を含んでおり、
該化学処理工程が、
前記パルプを構成するパルプ繊維に対してスルホ基を有するスルホン化剤と尿素または/およびその誘導体を接触させる接触工程と、
該接触工程後のパルプ繊維を構成するセルロースの水酸基の一部にスルホ基を導入する反応工程と、を含み
前記接触工程と前記反応工程との間に、前記接触工程後のパルプを脱水する脱水工程を含んでいる
ことを特徴とするスルホン化パルプ繊維の製造方法。 - 前記脱水工程の後に、前記脱水処理した後のパルプを乾燥する乾燥工程を含む
ことを特徴とする請求項2記載のスルホン化パルプ繊維の製造方法。 - 前記接触工程が、
前記パルプを構成するパルプ繊維を、前記スルホン化剤と前記尿素または/およびその誘導体を混合した反応液に接触させる工程であり、
該反応液は、
前記スルホン化剤と前記尿素または/およびその誘導体を、濃度(g/L)比において、4:1〜1:2.5となるように含有する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のスルホン化パルプ繊維の製造方法。 - 前記反応工程は、
加熱して反応を進行させる工程であり、
温度が100℃〜180℃、加熱する時間が1分以上となるように調整する
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のスルホン化パルプ繊維の製造方法。 - 前記反応工程後に、前記反応工程後のパルプを洗浄する洗浄工程を含む
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のスルホン化パルプ繊維の製造方法。 - 前記化学処理工程において、
前記反応工程後のパルプ繊維は、平均繊維長が、前記接触工程に供給するパルプ繊維に対して50%以上となるように調製する
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載のスルホン化パルプ繊維の製造方法。 - 前記スルホン化剤が、スルファミン酸である
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載のスルホン化パルプ繊維の製造方法。 - パルプからセルロースの水酸基の一部がスルホン化した微細セルロース繊維を製造する方法であって、
前記パルプを化学的に処理する化学処理工程と、該化学処理工程後のパルプを微細化する微細化処理工程と、を順に行う方法であり、
前記化学処理工程後のパルプが請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法で製造されたスルホン化パルプ繊維を含んでいる
ことを特徴とするスルホン化微細セルロース繊維の製造方法。 - 前記微細化処理工程において、
前記スルホン化パルプ繊維は、保水度が150%以上のものである
ことを特徴とする請求項9記載のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法。 - 前記微細化処理において、
前記スルホン化パルプ繊維を含んだパルプを水溶性溶媒に固形分濃度が0.1質量%〜20質量%となるように分散させた状態で微細化する
ことを特徴とする請求項9または10記載のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法。
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