JP2019192692A - コイル部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】負の値を有する所望の結合係数を安定的に得ることが可能なコイル部品を提供する。【解決手段】コイル部品10は、貫通孔を有する磁性コアと、貫通孔にそれぞれ挿入された本体部30A、30Bを含む導体板30とを備える。磁性コアは、貫通孔間に位置する中脚部23と、中脚部の両側に位置する外脚部24、25とを含み、中脚部23の面積よりも外脚部24、25の面積の方が大きい。【効果】導体板30の本体部30A、30Bがそれぞれ貫通孔に挿入されていることから、本体部30Aと本体部30Bの距離を固定することが可能となる。しかも、中脚部23の面積よりも外脚部24、25の面積の方が大きいことから、互いに強め合う磁束成分よりも互いに打ち消し合う磁束成分の方が優勢となり、その結果、カップルドインダクタに必要な負の結合係数を得ることが可能となる。【選択図】図3

Description

本発明はコイル部品に関し、特に、カップルドインダクタとして用いることが可能なコイル部品に関する。
DC/DCコンバータなどのスイッチング電源の平滑用コイルとして、カップルドインダクタと呼ばれるコイル部品が用いられることがある。カップルドインダクタは、互いに磁気結合する一対の電流経路を有しており、一方の電流経路に電流を流すと、起電力によって他方の電流経路にも電流が流れる。このため、スイッチング電源の平滑用コイルとして用いれば、突入電流のピークを低減することが可能となる。
例えば、特許文献1には、磁性コアの貫通孔に2つの導体板を挿入した構成を有するカップルドインダクタが記載されている。
特開2009−117676号公報 特許2951324号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたカップルドインダクタは、1つの貫通孔に2つの導体板が挿入されていることから、導体板間の距離が固定されず、このため結合係数が安定しないという問題があった。このような問題を解決するためには、特許文献2に記載されているように、磁性コアに2つの貫通孔を設け、2つの貫通孔に導体板をそれぞれ挿入する方法が考えられる。
しかしながら、特許文献2に記載されたコイル部品をカップルドインダクタとして用いた場合、いわゆる中脚部における磁気抵抗が低すぎるため、一方の導体板に流れる電流によって生じる磁束と、他方の導体板に流れる電流によって生じる磁束が互いに強め合ってしまう。その結果、結合係数が正となり、カップルドインダクタに必要な負の結合係数を得ることができなくなってしまう。
したがって、本発明は、負の値を有する所望の結合係数を安定的に得ることが可能なコイル部品を提供することを目的とする。
本発明によるコイル部品は、いずれも第1の方向に延在し、第1の方向と直交する第2の方向に配列された第1及び第2の貫通孔を有する磁性コアと、第1及び第2の貫通孔にそれぞれ挿入された第1及び第2の本体部を含む導体板とを備え、磁性コアは、第1の貫通孔と第2の貫通孔の間に位置する中脚部と、第1の貫通孔から見て中脚部とは反対側に位置する第1の外脚部と、第2の貫通孔から見て中脚部とは反対側に位置する第2の外脚部とを含み、第1及び第2の方向によって規定される平面の面積は、中脚部よりも第1及び第2の外脚部の方が大きいことを特徴とする。
本発明によれば、導体板の第1及び第2の本体部がそれぞれ第1及び第2の貫通孔に挿入されていることから、第1の本体部と第2の本体部の距離を固定することが可能となる。しかも、中脚部の面積よりも第1及び第2の外脚部の面積の方が大きいことから、互いに強め合う磁束成分よりも互いに打ち消し合う磁束成分の方が優勢となり、その結果、カップルドインダクタに必要な負の結合係数を得ることが可能となる。
本発明において、第1及び第2の外脚部における前記平面の面積は、いずれも中脚部における前記平面の面積の1倍超、5倍以下であっても構わない。これによれば、約−0.5〜約−0.8の結合係数を得ることが可能となる。
本発明において、第1及び第2の外脚部における前記平面の面積は、いずれも中脚部における前記平面の面積の1倍超、3倍以下であっても構わない。これによれば、約−0.5〜約−0.7の結合係数を得ることが可能となる。
本発明において、磁性コアは、上面に第1及び第2の溝が設けられた第1のコアと、下面が平坦である第2のコアとを含み、第1のコアの上面と第2のコアの下面を接着することにより、第1及び第2の溝の上部が閉塞されて第1及び第2の貫通孔が形成され、第1のコアの上面のうち、第1の溝と第2の溝の間に位置する第1の上面部分によって中脚部における前記平面が定義され、第1の溝から見て中脚部とは反対側に位置する第2の上面部分によって第1の外脚部における前記平面が定義され、第2の溝から見て中脚部とは反対側に位置する第3の上面部分によって第2の外脚部における前記平面が定義されるものであっても構わない。これによれば、第2のコアの形状が単純化されることから、製造コストを低減することが可能となる。
本発明において、第1乃至第3の上面部分は、互いに同一平面を構成するものであっても構わない。これによれば、第1のコアの形状が単純化されることから、製造コストを低減することが可能となる。
本発明において、第1の上面部分は第2及び第3の上面部分よりも低く、これにより、第1及び第2の外脚部に形成される磁気ギャップよりも、中脚部に形成される磁気ギャップの方が大きくても構わない。これによれば、互いに強め合う磁束成分をより低減することが可能となる。
本発明において、導体板は、第1及び第2の本体部と、第1及び第2の貫通孔の外部に位置する端子部及び接続部とを有する金属素体を含み、端子部は、第1の本体部の一端側に位置する第1の端子部と、第2の本体部の一端側に位置する第2の端子部とを含み、接続部は、第1の本体部の他端と第2の本体部の他端を接続するものであっても構わない。これによれば、第1の端子部を電源回路の正極に接続し、第2の端子部を電源回路の負極に接続することにより、カップルドインダクタとして用いることが可能となる。
本発明において、端子部は、接続部から突出して設けられた第3及び第4の端子部をさらに含むものであっても構わない。これによれば、第1〜第4の端子部の熱容量の差を低減することが可能となる。
本発明において、第1乃至第4の端子部は、先端に向かうほど断面積が小さくなるテーパー形状を有していても構わない。これによれば、回路基板に実装した場合にハンダのフィレットが形成されやすくなることから、実装強度や接続信頼性を高めることが可能となる。
本発明において、導体板は、第1乃至第4の端子部の表面に形成され、金属素体よりも融点の低い金属からなる金属被膜と、金属被膜を介することなく第1の本体部、第2の本体部及び接続部の表面に形成された絶縁被膜とを含むものであっても構わない。これによれば、磁性コアの材料として導電性を有する材料を用いた場合であっても、磁性コアと金属素体が電気的に短絡することがない。しかも、金属素体の第1の本体部、第2の本体部及び接続部は、金属被膜を介することなく絶縁被膜で覆われていることから、リフロー時において絶縁被膜が破損または剥離することがない。これにより、信頼性の高いコイル部品を提供することが可能となる。
このように、本発明によるコイル部品は、負の値を有する所望の結合係数を安定的に得ることが可能となる。これにより、カップルドインダクタとして好適に利用することが可能となる。
図1は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品10の外観を説明するための斜視図である。 図2は、コイル部品10の外観を説明するための斜視図であり、図1とは反対側から見た外観を示している。 図3は、コイル部品10の構造を説明するための分解斜視図である。 図4は、導体板30のxz断面図である。 図5は、第1の端子部31の形状をより詳細に説明するための図である。 図6はコイル部品10の底面形状を示す平面図である。 図7(a)〜(c)は、それぞれ図6に示すA−A線、B−B線、C−C線に沿った部分断面図である。 図8は、コイル部品10が実装される回路基板上における導体パターンのパターン形状を示す平面図である。 図9は、コイル部品10の等価回路図である。 図10(a)〜(c)は、ハンダを用いてコイル部品10を回路基板90に実装した状態を説明するための図である。 図11は、本体部30Aと本体部30Bに逆方向の電流を流した場合に発生する磁束について説明するための図であり、(a)は中脚部を経由するルートを示し、(b)は中脚部を経由しないルートを示している。 図12は、中脚部の面積と第1又は第2の外脚部の面積の比(外脚/中脚)と、結合係数との関係についてのシミュレーション結果を示すグラフである。 図13は、コイル部品10の製造方法を説明するための工程図である。 図14は、コイル部品10の製造方法を説明するための工程図である。 図15は、コイル部品10の製造方法を説明するための工程図である。 図16は、コイル部品10の製造方法を説明するための工程図である。 図17は、コイル部品10の製造方法を説明するための工程図である。 図18は、コイル部品10の製造方法を説明するための工程図である。 図19は、コイル部品10の製造方法を説明するための工程図である。 図20は、本発明の第2の実施形態によるコイル部品60の構造を説明するための側面図である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品10の外観を説明するための斜視図であり、互いに反対側から見た構造を示している。また、図3は、コイル部品10の構造を説明するための分解斜視図である。
本実施形態によるコイル部品10は、カップルドインダクタとして用いることが可能なコイル部品であり、図1〜図3に示すように、磁性コア20及び導体板30によって構成される。磁性コア20は、z方向における下側に位置する第1のコア21と、z方向における上側に位置する第2のコア22からなり、これらが互いに接着された構成を有している。磁性コア20の材料については特に限定されないが、NiZn系フェライト、MnZn系のフェライト、金属系磁性体などを用いることができる。一般的に、MnZn系のフェライトのように導電性を有する磁性材料は、NiZn系のフェライトなど絶縁性の高い磁性材料と比べて高い透磁率を有していることから、より大きなインダクタンスを得ることが可能である。磁性コア20は、バルク状の磁性材料を加工したものであっても構わないし、磁性粒子をプレス成形した圧粉磁心であっても構わない。さらに、磁性コア20を第1のコア21と第2のコア22の組み合わせによって構成するのではなく、単一の部材によって磁性コア20を構成しても構わない。
図3に示すように、第1のコア21の上面を構成するxy平面には、x方向に延在しy方向に配列された2つの溝21A,21Bが設けられている。そして、これら2つの溝21A,21Bによって、第1のコア21の上面が3つの上面部分23〜25に分割される。このうち、上面部分23は溝21A,21B間に位置し、上面部分24,25は溝21A又は21Bよりも外側に位置する。本実施形態においては、上面部分23〜25が互いに同一平面を構成している。また、上面部分23のy方向における幅W0は、上面部分24,25のy方向における幅W1,W2よりも広く、これにより、上面部分23の面積は上面部分24,25のそれぞれの面積よりも大きい。その意義については追って詳述する。
一方、第2のコア22は平板状であり、溝などは設けられていない。特に、第2のコア22の下面26は平坦であり、図示しない接着剤を介して第1のコア21の上面部分23〜25の少なくとも一つに接着される。接着剤は、第1のコア21と第2のコア22の間の磁気ギャップとして機能し、この部分から漏洩磁束が発生する。したがって、接着剤の厚みによって、コイル部品10の飽和磁束密度を調整することが可能である。また、第1のコア21と第2のコア22を組み合わせると、溝21A,21Bの上部が第2のコア22によって閉塞され、これによりx方向に延在する第1及び第2の貫通孔20A,20Bが形成される。
貫通孔20A,20Bには導体板30が挿入される。これにより、磁性コア20のうち、平面視で(z方向から見て)第1の上面部分23と重なる部分は中脚部を構成し、平面視で(z方向から見て)第2の上面部分24と重なる部分は第1の外脚部を構成し、平面視で(z方向から見て)第3の上面部分25と重なる部分は第2の外脚部を構成する。ここで、中脚部の面積は第1の上面部分23の面積によって定義され、第1の外脚部の面積は第2の上面部分24の面積によって定義され、第2の外脚部の面積は第3の上面部分25の面積によって定義される。
導体板30は、xz断面図である図4に示すように、Cu(銅)など導電性の高い金属素体30Sの表面に金属被膜31a〜34a及び絶縁被膜40が形成された構成を有している。金属素体30Sは、断面が略長方形である板状の金属板を略U字状に折り曲げてなるものであり、第1及び第2の本体部30A,30Bと、第1〜第4の端子部31〜34と、接続部35とを有している。第1及び第2の本体部30A,30Bは、x方向に延在する部分であり、図1及び図2に示すように、それぞれ第1及び第2の貫通孔20A,20Bの内部に位置する。
第1の端子部31は、第1の本体部30Aのx方向における一端をz方向に折り曲げた部分であり、実使用時においては、例えば電源回路の正極に接続される。第2の端子部32は、第2の本体部30Bのx方向における一端をz方向に折り曲げた部分であり、実使用時においては、例えば電源回路の負極に接続される。本体部30A,30Bのx方向における他端は、z方向に折り曲げられてそれぞれ第3及び第4の端子部33,34を構成するとともに、これら第3及び第4の端子部33,34は接続部35によって短絡されている。第3及び第4の端子部33,34は、接続部35からz方向に突出して設けられており、これにより、本実施形態によるコイル部品10は4端子構造を有する。第3及び第4の端子部33,34の一方又は両方は、例えば負荷回路に接続される。尚、第1及び第2の本体部30A,30Bと第1〜第4の端子部31〜34及び接続部35の境界は、金属素体30Sを約90°折り曲げた部分によって定義される。また、第1〜第4の端子部31〜34の先端部は、磁性コア20の底面よりも若干突出していることが好ましい。
そして、第1の本体部30A、第2の本体部30B及び接続部35の全表面は絶縁被膜40によって覆われている一方、第1〜第4の端子部31〜34の表面の一部はそれぞれ第1〜第4の金属被膜31a〜34aによって覆われている。第1〜第4の金属被膜31a〜34aは、実装時においてハンダのぬれ性を確保するために設けられ、Snまたはこれを含む合金(NiSn合金など)など、金属素体よりも融点の低い金属材料によって構成される。第1〜第4の金属被膜31a〜34aの膜厚は、4μm〜20μm程度であることが好ましく、絶縁被膜40よりも薄いことがより好ましい。また、厚さ1μm〜3μm程度の下地Niメッキと、その表面に形成された厚さ4μm〜20μm程度のSnメッキからなる2層構造であっても構わない。
本実施形態においては、第1及び第2の端子部31,32の表面のうち、先端部の近傍のみが金属被膜31a,32aによって覆われており、付け根に位置する残りの部分は絶縁被膜40で覆われている。絶縁被膜40は、金属素体30Sの表面に直接形成されており、両者間には他の膜、特に第1〜第4の金属被膜31a〜34aと同じ金属材料は介在していない。特に限定されるものではないが、絶縁被膜40の材料としては、ポリイミドやエポキシ樹脂などの樹脂材料を用いることが好ましい。また、絶縁被膜40の膜厚については5μm〜50μm程度であることが好ましく、5μm〜30μm程度であることがより好ましい。
図3に示すように、磁性コア20には第1及び第2の貫通孔20A,20Bの端部近傍に3つの切り欠き部20N〜20Nが設けられており、切り欠き部20N,20Nに第1及び第2の端子部31,32がそれぞれ収容され、切り欠き部20Nに第3及び第4の端子部33,34と接続部35が収容されている。これにより、第1〜第4の端子部31〜34及び接続部35は、磁性コア20からそのままx方向に突出するのではなく、y方向における両側が磁性コア20によって挟まれる状態となる。これにより、第1〜第4の端子部31〜34及び接続部35が磁性コア20からそのまま突出する構造と比べ、外形寸法を大型化することなく、磁性コア20の体積をより大きく確保することが可能となる。
図5は、第1の端子部31の形状をより詳細に説明するための図である。
図5に示すように、第1の端子部31は、先端に向かうほど断面積が小さくなるテーパー形状を有している。つまり、第1の端子部31は、xy平面を構成する先端面S1と、先端面S1に対して角度θ1だけ傾いた一対のテーパー面S2と、yz平面を構成する一対の側面S3とを有し、これら表面S1〜S3が金属被膜31aで覆われた構成を有している。第1の端子部31のその他の部分は、金属被膜31aを介することなく、金属素体30Sの表面が絶縁被膜40によって覆われている。テーパー面S2の角度θ1の具体的な値については特に限定されないが、60°〜80°の範囲であることが好ましい。
図示しないが、他の端子部32〜34についても同様であり、いずれも先端面S1、テーパー面S2及び側面S3を有し、これら表面S1〜S3が金属被膜32a〜34aで覆われた構成を有している。上述の通り、第1の本体部30A、第2の本体部30B及び接続部35を含むその他の部分は、いずれも金属被膜31a〜34aを介することなく、金属素体30Sの表面が絶縁被膜40によって覆われた構成を有している。
図6はコイル部品10の底面形状を示す平面図であり、図7(a)〜(c)は、それぞれ図6に示すA−A線、B−B線、C−C線に沿った部分断面図である。
図6及び図7に示すように、磁性コア20には3つの切り欠き部20N〜20Nが設けられており、切り欠き部20Nに第1の端子部31が収容され、切り欠き部20Nに第2の端子部32が収容され、切り欠き部20Nに第3の端子部33、第4の端子部34及び接続部35が収容される。
図8は、コイル部品10が実装される回路基板上における導体パターンのパターン形状を示す平面図である。
図8に示す符号10aはコイル部品10の実装領域であり、この部分に4つのランドパターン51〜54が形成されている。ランドパターン51〜54は、それぞれ端子部31〜34に接続される部分である。このうち、ランドパターン51〜53にはそれぞれ配線パターンL1〜L3が接続されているが、ランドパターン54には配線パターンが接続されておらず、もっぱら機械的な固定用として用いられる。但し、ランドパターン54に配線パターンL3を接続することも可能である。これにより、コイル部品10を回路基板に実装すると、図9に示す回路図の通り、配線パターンL1,L3間にインダクタンスが挿入されるとともに、配線パターンL2,L3間にインダクタンスが挿入され、且つ、これらインダクタンスが結合した状態を得ることができる。このように、本実施形態によるコイル部品10は、いわゆるカップルドインダクタとして用いることができる。
図10(a)〜(c)は、ハンダを用いてコイル部品10を回路基板90に実装した状態を説明するための図であり、それぞれ図7(a)〜(c)に示す部分断面に対応している。
図10に示すように、端子部31〜34とランドパターン51〜54がそれぞれ重なるよう、コイル部品10を回路基板90に搭載し、両者をハンダ55によって接続すると、ハンダ55はテーパー面S2及び側面S3を覆うフィレットを形成する。ここで、端子部31〜34のテーパー面S2は回路基板90に対して垂直ではなく、より小さな角度θ1を有していることから、回路基板90に対して垂直である場合に比べ、ハンダ55のフィレットがより形成されやすくなる。
図11は、本体部30Aと本体部30Bに逆方向の電流を流した場合に発生する磁束について説明するための図であり、(a)は中脚部を経由するルートを示し、(b)は中脚部を経由しないルートを示している。
図11に示す例では、本体部30Aに流れる電流によって磁性コア20に反時計回り(左回り)の磁束φA1,φA2が発生し、本体部30Bに流れる電流によって磁性コア20に時計回り(右回り)の磁束φB1,φB2が発生している。図11においては、本体部30Aに流れる電流によって発生する磁束φA1,φA2を実線で示し、本体部30Bに流れる電流によって発生する磁束φB1,φB2を破線で示している。
そして、図11(a)に示すように、中脚部を経由する磁束φA1,φB1は、中脚部において互いに強め合うことから、この磁束ルートは正の結合係数を増大させる。これに対し、図11(b)に示すように、中脚部を経由しない磁束φA2,φB2は、互いに打ち消し合うことから、この磁束ルートは負の結合係数を増大させる。したがって、磁束φA1,φB1の量と、磁束φA2,φB2の量を制御すれば、所望の結合係数を得ることが可能となる。
図12は、中脚部の面積と第1又は第2の外脚部の面積の比(外脚/中脚)と、結合係数との関係についてのシミュレーション結果を示すグラフである。シミュレーションの条件としては、磁性コア20の材料としてMnZn系のフェライトを用い、x方向における長さを4mm、y方向における幅を4mm、z方向における高さを4mmとし、インダクタンスが100nH又は180nHとなるよう設計した。また、第1の外脚部の面積と第2の外脚部の面積は同じであり、「外脚部の面積」とは、第1及び第2の外脚部の一方の面積を意味する。
図12に示すように、外脚/中脚の値が大きくなるほど、つまり、外脚部の面積に対して中脚部の面積が小さくなるほど、負の結合係数が増大することが分かる。したがって、カップルドインダクタとして用いるべく負の結合係数を大きくするためには、外脚/中脚の値をより大きくすればよい。具体的には、インダクタンスの設計値にもよるが、外脚/中脚の値が1を超えると結合係数がおよそ−0.5以下となり、カップルドインダクタとして適した結合係数を得ることができる。特に、外脚/中脚の値が約3である場合には結合係数が約−0.7となり、外脚/中脚の値が約5である場合には結合係数が約−0.8となる。したがって、約−0.5〜約−0.8の結合係数を得るためには、外脚/中脚の値を1倍超、5倍以下とすればよく、約−0.5〜約−0.7の結合係数を得るためには、外脚/中脚の値を1倍超、3倍以下とすればよい。
そして、本実施形態によるコイル部品10は、中脚部の面積よりも外脚部の面積の方が大きいことから、負の結合係数、例えば−0.5以下の結合係数を得ることが可能となる。これにより、カップルドインダクタとしての利用が好適なコイル部品を提供することが可能となる。しかも、本実施形態によるコイル部品10は、第1及び第2の本体部30A,30Bが接続部35を介して一体化されているとともに、第1の本体部30Aが第1の貫通孔20Aに挿入され、第1の本体部30Aが第1の貫通孔20Aに挿入されていることから、第1の本体部30Aと第2の本体部30Bの位置関係にずれが生じない。これにより、設計通りの結合係数を安定的に得ることが可能となる。
しかも、本実施形態においては、第1のコア21の上面部分23〜25が同一平面を構成し、且つ、第2のコア22の下面26が平坦面であることから、第1及び第2のコア21,22を容易に作製することができる。このため、製造コストを低減することも可能となる。
また、本実施形態においては、金属素体30Sの表面のうち、第1及び第2の本体部30A,30Bと接続部35が絶縁被膜40で覆われていることから、磁性コア20の材料として導電性を有するMnZn系のフェライトなどの磁性材料を用いた場合であっても、金属素体30Sと磁性コア20の電気的短絡を防止することができる。しかも、本実施形態においては、絶縁被膜40が金属素体30Sの表面に直接形成されており、両者間には第1〜第4の金属被膜31a〜34aと同じ金属材料からなる金属被膜が介在しない。これにより、リフロー時の熱によって絶縁被膜40が破損または剥離することがないため、製品の信頼性を高めることも可能となる。
さらに、本実施形態によるコイル部品10は、電気的には3端子構成であるものの、4つの端子部31〜34を有していることから、端子部31〜34間における熱容量の差が低減される。これにより、ハンダリフロー時におけるハンダ55の融解が各端子部31〜34においてほぼ同時に発生することから、融解タイミングの差に起因する部品の意図しない回転を防止することも可能となる。
次に、本実施形態によるコイル部品10の製造方法について説明する。
図13〜図19は、本実施形態によるコイル部品10の製造方法を説明するための工程図である。
まず、図13に示すように、打抜き工程によって所定の平面形状に加工したCu(銅)などからなる金属板を用意し、金属板を所定の位置で折り曲げ加工することによって金属素体30Sを形成する。上述の通り、金属素体30Sは、第1の本体部30A、第2の本体部30B、第1〜第4の端子部31〜34及び接続部35を有している。この段階では、接続部35のy方向における略中心部に支持部36が接続されており、複数の支持部36がフレーム部37に連結された状態となっている。支持部36はその後の工程で除去されるため、接続部35と支持部36の境界部分には、切れ込みなどを設けておくことが好ましい。
次に、図14に示すように、金属素体30Sの全表面にポリイミドやエポキシ樹脂などの樹脂材料からなる絶縁被膜40を電着法により形成する。電着法を用いれば、角部を含む金属素体30Sの全表面に絶縁被膜40を均一に形成することが可能である。これに対し、スプレー法やディップ法によってフッ素系の絶縁被膜を形成すると、膜厚の均一性を十分に確保することができず、特に角部における膜厚が非常に薄くなり、場合によっては角部において金属素体30Sが露出してしまう。これに対し、電着法によって絶縁被膜40を形成すれば、角部を含む金属素体30Sの全表面に均一な絶縁被膜40を形成することができる。
次に、図15に示すように、第1〜第4の端子部31〜34の先端部近傍に形成された絶縁被膜40を選択的に除去する。絶縁被膜40を除去する方法については特に限定されないが、レーザービームの照射によるアブレーション又はヤスリを用いた物理的な除去によって行うことができる。特に、レーザービームを用いれば、絶縁被膜40を高精度に除去することが可能となる。レーザービームを用いて絶縁被膜40を除去する場合、少なくとも図15に示す方向X1、X2及びZ3からレーザービームを照射する。方向X1からレーザービームを照射すると、端子部31〜34の一方の側面S3に形成された絶縁被膜40が除去され、方向X2からレーザービームを照射すると、端子部31〜34の他方の側面S3に形成された絶縁被膜40が除去される。そして、方向Z3からレーザービームを照射すると、端子部31〜34の先端面S1及びテーパー面S2に形成された絶縁被膜40が同時に除去される。これは、図5に示すように、z方向から見てテーパー面S2が露出しているからである。これにより、端子部31〜34の先端面S1、テーパー面S2及び両側面S3に形成された絶縁被膜40が除去され、各部分において金属素体30Sが再び露出する。
次に、図16に示すように、絶縁被膜40の除去によって露出した第1〜第4の端子部31〜34の表面に、それぞれ金属被膜31a〜34aをメッキにより形成する。本工程においては、絶縁被膜40がメッキマスクとして機能するため、第1〜第4の端子部31〜34の露出面のみに金属被膜31a〜34aを選択的に形成することができる。第1〜第4の端子部31〜34の露出面とは、先端面S1、テーパー面S2及び両側面S3である。ここで、メッキマスクとなる絶縁被膜40は電着法によって形成されており、角部を含む全面が均一に覆われていることから、意図しない部分に金属被膜がメッキ形成されることがない。これに対し、上述の通り、スプレー法やディップ法によってフッ素系の絶縁被膜を形成すると、角部において金属素体30Sが露出するおそれがあり、この場合、角部に露出する金属素体30Sに金属被膜が形成されてしまう。これを防止するためには、先に金属素体30Sの全表面にスズなどの金属被膜を形成しておき、その後、必要な部分(本体部30A,30B及び接続部35)に絶縁被膜40を形成すれば良いが、この場合には、金属素体30Sと絶縁被膜40の間に金属被膜が介在してしまう。しかしながら、本実施形態においては、電着法によって絶縁被膜40を形成した後、絶縁被膜40で覆われていない露出面に対してメッキを行っていることから、このような問題が生じることはない。
次に、図17に示すように、溝21A,21Bに第1及び第2の本体部30A,30Bが収容されるよう、導体板30と第1のコア21を組み合わせた後、図18に示すように、接続部35と支持部36を切り離す。そして、図19に示すように、第2のコア22を第1のコア21に接着すれば、本実施形態によるコイル部品10が完成する。
このように、上述したコイル部品10の製造工程では、絶縁被膜40の電着及び部分的な除去を行った後、メッキによって金属被膜31a〜34aを形成していることから、絶縁被膜40と金属被膜31a〜34aを金属素体30Sの互いに異なる表面に形成することが可能となる。これにより、金属素体30Sと絶縁被膜40の間に金属被膜が介在することがないため、リフロー時の熱によって絶縁被膜40が破損または剥離することがない。しかも、絶縁被膜40がメッキマスクとして機能することから、別途メッキマスクを形成することなく、金属被膜31a〜34aを選択的にメッキ形成することができる。
また、本実施形態においては、端子部31〜34の先端部近傍がテーパー面S2を有していることから、方向Z3からレーザービームを照射することによって、端子部31〜34の先端面S1及びテーパー面S2に形成された絶縁被膜40が同時に除去される。これにより、絶縁被膜40を剥離するために必要な工程数が減少することから、製造コストを削減することも可能となる。
<第2の実施形態>
図20は、本発明の第2の実施形態によるコイル部品60の構造を説明するための側面図である。
図20に示すように、第2の実施形態によるコイル部品60は、第1のコア21の代わりに第1のコア71が用いられている点において、第1の実施形態によるコイル部品10と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態によるコイル部品10と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態において使用する第1のコア71は、第1の上面部分23が第2及び第3の上面部分24,25よりも低い点において、第1の実施形態において使用する第1のコア21と相違している。かかる構成により、中脚部に形成される磁気ギャップGが選択的に拡大されることから、中脚部を経由する磁束φA1,φB1がより減少する。これにより、中脚部を経由しない磁束φA2,φB2が増大することから、負の結合係数をより増大させることが可能となる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、上述した製造工程においては、金属素体30Sの全面に絶縁被膜40を形成した後(図14参照)、絶縁被膜40の一部を除去しているが(図15参照)、本発明がこれに限定されるものではなく、第1〜第4の端子部31〜34の所定の部分をマスク部材で覆った状態で絶縁被膜40を電着しても構わない。この方法によれば、金属素体30Sをマスクする工程が追加される一方、絶縁被膜40を部分的に除去する工程を省略することが可能となる。
10,60 コイル部品
10a 実装領域
20 磁性コア
20A,20B 貫通孔
20N〜20N 切り欠き部
21,71 第1のコア
21A,21B 溝
22 第2のコア
23 第1の上面部分
24 第2の上面部分
25 第3の上面部分
26 下面
30 導体板
30A,30B 本体部
30S 金属素体
31〜34 端子部
31a〜34a 金属被膜
35 接続部
36 支持部
37 フレーム部
40 絶縁被膜
51〜54 ランドパターン
54 ランドパターン
55 ハンダ
90 回路基板
G 磁気ギャップ
L1〜L3 配線パターン
S1 先端面
S2 テーパー面
S3 側面

Claims (10)

  1. いずれも第1の方向に延在し、前記第1の方向と直交する第2の方向に配列された第1及び第2の貫通孔を有する磁性コアと、
    前記第1及び第2の貫通孔にそれぞれ挿入された第1及び第2の本体部を含む導体板と、を備え、
    前記磁性コアは、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔の間に位置する中脚部と、前記第1の貫通孔から見て前記中脚部とは反対側に位置する第1の外脚部と、前記第2の貫通孔から見て前記中脚部とは反対側に位置する第2の外脚部とを含み、
    前記第1及び第2の方向によって規定される平面の面積は、前記中脚部よりも前記第1及び第2の外脚部の方が大きいことを特徴とするコイル部品。
  2. 前記第1及び第2の外脚部における前記平面の面積は、いずれも前記中脚部における前記平面の面積の1倍超、5倍以下であることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
  3. 前記第1及び第2の外脚部における前記平面の面積は、いずれも前記中脚部における前記平面の面積の1倍超、3倍以下であることを特徴とする請求項2に記載のコイル部品。
  4. 前記磁性コアは、上面に第1及び第2の溝が設けられた第1のコアと、下面が平坦である第2のコアとを含み、
    前記第1のコアの前記上面と前記第2のコアの前記下面を接着することにより、前記第1及び第2の溝の上部が閉塞されて前記第1及び第2の貫通孔が形成され、
    前記第1のコアの前記上面のうち、前記第1の溝と前記第2の溝の間に位置する第1の上面部分によって前記中脚部における前記平面が定義され、前記第1の溝から見て前記中脚部とは反対側に位置する第2の上面部分によって前記第1の外脚部における前記平面が定義され、前記第2の溝から見て前記中脚部とは反対側に位置する第3の上面部分によって前記第2の外脚部における前記平面が定義されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコイル部品。
  5. 前記第1乃至第3の上面部分は、互いに同一平面を構成することを特徴とする請求項4に記載のコイル部品。
  6. 前記第1の上面部分は前記第2及び第3の上面部分よりも低く、これにより、第1及び第2の外脚部に形成される磁気ギャップよりも、前記中脚部に形成される磁気ギャップの方が大きいことを特徴とする請求項4に記載のコイル部品。
  7. 前記導体板は、前記第1及び第2の本体部と、前記第1及び第2の貫通孔の外部に位置する端子部及び接続部とを有する金属素体を含み、
    前記端子部は、前記第1の本体部の一端側に位置する第1の端子部と、前記第2の本体部の一端側に位置する第2の端子部とを含み、
    前記接続部は、前記第1の本体部の他端と前記第2の本体部の他端を接続することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコイル部品。
  8. 前記端子部は、前記接続部から突出して設けられた第3及び第4の端子部をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のコイル部品。
  9. 前記第1乃至第4の端子部は、先端に向かうほど断面積が小さくなるテーパー形状を有していることを特徴とする請求項8に記載のコイル部品。
  10. 前記導体板は、前記第1乃至第4の端子部の表面に形成され、前記金属素体よりも融点の低い金属からなる金属被膜と、前記金属被膜を介することなく前記第1の本体部、前記第2の本体部及び前記接続部の表面に形成された絶縁被膜とを含むことを特徴とする請求項8又は9に記載のコイル部品。
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