JP2019189821A - ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム及び積層シート - Google Patents

ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム及び積層シート Download PDF

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Abstract

【課題】フィルムの劣化による変色を抑制し、フィルムから添加剤のブリードアウトするおそれが少なく、かつ、臭気の発生のないポリ塩化ビニル系樹脂フィルム及び積層シートの提供。【解決手段】ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム及び積層シートにおいて、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、アセチルアセトン亜鉛0.01〜1質量部と、ピペリジン骨格の窒素原子の置換基がOR(Rは炭素数2〜15のアルキル基)であるヒンダードアミン系光安定剤0.05〜1質量部と、を含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム及び該フィルムを含む積層シートに関する。より詳しくは、電子線照射による変色を抑制することができ、かつ、添加剤がブリードアウトするおそれの少ないポリ塩化ビニル系樹脂フィルム及び積層シートに関する。
ポリ塩化ビニル系樹脂は、加工性、柔軟性、耐薬品性などに優れた樹脂としてフィルムやシートに成形され広く使用されている。なかでも、表面保護や装飾を目的とした包装材や建材用の化粧シートとして多く使用されている。このような表面保護や装飾を目的としたポリ塩化ビニル系樹脂フィルムは、異なる性質の樹脂をコーティングしたり、積層したりすることによって多層化して、様々な用途に、より適したものとして使用されている。例えば、建材用の化粧シートとして、樹脂サッシ等の表面にポリ塩化ビニル系樹脂フィルムを貼り付けて用いる場合、耐傷付き性を考慮して、表面保護層を設けることが行われている。
ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムの前記表面保護層として、電子線硬化性樹脂層を形成し、電子線を照射して硬化性樹脂層を硬化させ、表面保護層とする方法がある。ところが、このような電子線を照射する工程を経て得られるポリ塩化ビニル系樹脂フィルムの場合、電子線の照射によりポリ塩化ビニル系樹脂の劣化が促進される。例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂は電子線の照射後に高温下に曝されると、変色や脆弱下するなどの問題が生じていた。
従来、これらポリ塩化ビニル系樹脂の劣化を抑制する手法としては、ポリ塩化ビニル系樹脂の熱劣化や光劣化に対する安定剤として、カルボン酸金属塩、バリウム/カドミウム化合物、有機化合物、鉛化合物などが知られている。
しかし、ポリ塩化ビニル系樹脂の劣化を抑制するための安定剤として提案されているカルボン酸金属塩、バリウム/カドミウム化合物、有機化合物、鉛化合物などの安定剤を使用した場合であっても、電子線照射による抑制効果は得られないという問題があった。
この電子線照射による劣化の抑制効果がある手法として、例えば特許文献1には、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、メルカプト錫1〜20重量部とエポキシ化合物0.1〜1.0重量部とを配合することが提案されている。しかしながら、この手法では、安定剤であるメルカプト錫の添加量が多いため、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムからブリードアウトするおそれがあり、またメルカプト錫は臭気があり、化粧シート等の用途に使用する場合、好ましくないという問題があった。また、黄変等による変色の抑制効果も十分ではなかった。
また、電子線照射による変色を抑制する手法として、例えば特許文献2には、アセチルアセトン亜鉛又はデヒドロ酢酸亜鉛を変色抑制剤として用いた医薬用具用塩化ビニル系樹脂組成物が開示されている。しかし、この手法であっても黄変等による変色抑制効果が十分とはいえず、特に十分な変色抑制効果が求められる建材用途の化粧シートでは更なる変色抑制効果が求められていた。
特開平8−176384号公報 国際公開2015/129534号公報
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、及び該フィルム上に電子線硬化性樹脂により形成してなる層を有する積層シートを得るに当り、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムの劣化による変色を抑制し、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムから添加剤のブリードアウトするおそれが少なく、臭気の発生のないポリ塩化ビニル系樹脂フィルム及び積層シートを提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討を進めた結果、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムを形成するポリ塩化ビニル系樹脂組成物として、アセチルアセトン亜鉛と特定構造を有するヒンダードアミン系光安定剤とを所定量含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用いることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[6]を要旨とする発明である。
[1]ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、アセチルアセトン亜鉛0.01〜1質量部と、ピペリジン骨格の窒素原子の置換基がOR(Rは炭素数2〜15のアルキル基)であるヒンダードアミン系光安定剤0.05〜1質量部と、を含有するポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
[2]ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、1〜4質量部のバリウム亜鉛系安定剤を含む、上記[1]に記載のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
[3]ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部の紫外線吸収剤を含む、上記[1]又は[2]に記載のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
[4]ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、10〜40質量部の可塑剤を含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
[5]ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.1〜12質量部のエポキシ基含有アクリルポリマーを含む、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリ塩化ビニル系樹脂フィルムと、電子線硬化性樹脂により形成してなる層を有する、積層シート。
本発明によれば、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムが電子線照射を受けた場合においても、劣化による変色を抑制することができ、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムから添加剤がブリードアウトするおそれが少ないので、外観に優れ、また、臭気の発生がないフィルム及び該フィルムを含む積層シートが得られる。
以下、本発明の実施形態の一例としてのポリ塩化ビニル系樹脂フィルム(以下、「本発明のフィルム」ともいう。)及び積層シートについて説明する。
ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、数値AおよびBについて「A〜B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。
本発明のフィルムは、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、アセチルアセトン亜鉛0.01〜1質量部と、ピペリジン骨格の窒素原子の置換基がOR(Rは炭素数2〜15のアルキル基)であるヒンダードアミン系光安定剤0.05〜1質量部と、を含有するフィルムである。
[ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム]
本発明のフィルムは、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる。以下、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物について説明する。
<ポリ塩化ビニル系樹脂>
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、ポリ塩化ビニル系樹脂が使用される。使用されるポリ塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルを主モノマーとする種々のポリマーであって、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。共重合体としてはウレタン−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル共重合体等が挙げられる。塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと他のモノマーとの共重合体は1種類のみで使用してもよく、2種以上を混合して使用しても良い。これらの塩化ビニル系樹脂の製造方法は、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等のいずれでもよく、重合法方法により限定されない。
ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定するものではないが、加工性、成形性の点からJIS K6721に基づいた平均重合度が700〜1500であることが好ましく、750〜1300であることがより好ましい。
<アセチルアセトン亜鉛>
上記ポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、アセチルアセトン亜鉛を含む。アセチルアセトン亜鉛は、亜鉛−2,4−ペンタンジオネート[Zn(C]、亜鉛−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート[Zn(C1119]等が挙げられるが、基本的には、溶剤に溶解し、電子線又はγ線を照射した際に、ポリ塩化ビニル系樹脂の架橋による変色を抑制することができるものであればよい。アセチルアセトン亜鉛は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.01〜1質量部の範囲で含む。
本発明のフィルムにおいて、アセチルアセトン亜鉛の割合がポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上であれば、得られるポリ塩化ビニル系樹脂フィルムの電子線照射時の架橋による変色を抑制することができる。また、アセチルアセトン亜鉛の割合がポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して1質量部以下であれば、得られるポリ塩化ビニル系フィルムの耐熱性の低下と亜鉛溶出を抑えられるため好ましい。
本発明においては、アセチルアセトン亜鉛は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.03質量以上であることが好ましくは、0.05質量部以上であることがさらに好ましく、また上限値は0.8質量部以下であることが好ましく、0.7質量部以下であればさらに好ましい。
<ヒンダードアミン系光安定剤>
上記ポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、ピペリジン骨格の窒素原子の置換基がOR(Rは炭素数2〜15のアルキル基)であるヒンダードアミン系光安定剤を含む。本発明者は、ヒンダードアミン系光安定剤の中から、ピペリジン骨格の窒素原子の置換基がOR(Rは炭素数2〜15のアルキル基)であるヒンダードアミン系光安定剤を選択し、この所定量とアセチルアセトン亜鉛とを併用した場合に、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムの電子線又はγ線照射による変色を効果的に抑えられ、加えて一般の光安定剤と比べてブリードアウトしにくく、長期の耐候性を付与し得ることを見出した。すなわち、本発明者は、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムにおいて、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、ピペリジン骨格の窒素原子の置換基がOR(Rは炭素数2〜15のアルキル基)であるヒンダードアミン系光安定剤を0.05〜1質量部の範囲で含ませることにより、電子線又はγ線照射時のポリ塩化ビニル系樹脂の変色を効果的に抑え、かつ、ブリードアウトしにくく、耐候性が得られることを見出した。
本発明のフィルムで使用されるピペリジン骨格の窒素原子の置換基がOR(Rは炭素数2〜15のアルキル基)であるヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(1−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−プロポキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−ペントキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−ヘキソキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−ヘプトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−ノナキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−デカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−ドデカノキシエトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−トリデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−テトラデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−ペンタデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネートが挙げられる。好ましくは、Rが炭素数10〜13のアルキル基である、ビス(1−デカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−ドデカノキシエトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ビス(1−トリデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネートであり、さらに好ましくは、ビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネートである。
<バリウム亜鉛系(BaZn系)安定剤>
本発明のフィルムで用いられるポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、さらにバリウム亜鉛系安定剤を含むことが好ましい。バリウム亜鉛系安定剤は、有機酸のバリウム塩および亜鉛塩の複合安定剤であり、液状、ペースト状のいずれでもよい。有機酸としては、オクチル酸、オレイン酸、リシノール酸、ナフテン酸、安息香酸などのカルボン酸が挙げられる。
バリウム亜鉛系安定剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、1〜4質量部の範囲で含むことができ、好ましくは1.5〜3.5質量部、さらに好ましくは2〜3.5質量部の範囲である。バリウム亜鉛系安定剤を1質量部以上含有することにより、生産時の熱安定性、透明性を得ることができ、また4質量部以下とすることで、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムからのブリードアウトや着色性を抑制することができる。
<その他の安定剤>
本発明に使用されるポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、上記アセチルアセトン亜鉛とバリウム亜鉛系安定剤のほかに、亜鉛系熱安定剤やバリウム系熱安定剤やカルシウム系熱安定剤を含むことができる。
亜鉛系熱安定剤としては、特に限定されるものではないが、酸化亜鉛や、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、2エチルヘキソイン酸亜鉛などの脂肪酸亜鉛等を使用することができる。
前記亜鉛系熱安定剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.01〜1質量部含有することが好ましく、0.01〜0.8質量部含有することがより好ましく、0.02〜0.6質量部含有することが特に好ましい。 亜鉛系熱安定剤を0.01質量部以上含有することにより、生産時の熱安定性を好ましいものとすることができ、また、1質量部以下とすることで、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムからのブリードアウトや着色性を抑制することができる。
またバリウム系熱安定剤は、特に限定されるものではないが、例えば、バリウム芳香族酸塩、t−ブチル安息香酸バリウムや、2エチルヘキサン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、オレイン酸バリウムなどの脂肪酸バリウム等を使用することができる。前記バリウム系熱安定剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.3〜3質量部含有することが好ましく、0.5〜2.5質量部含有することがより好ましく、0.7〜2.0質量部含有することが特に好ましい。バリウム系熱安定剤を0.3質量部以上含有することにより、生産時の熱安定性を好ましいものとすることができ、また、3質量部以下とすることで、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムからバリウム系熱安定剤がブリードアウトすることなく、着色性を抑制することができる。
また、カルシウム系熱安定剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ナフテン酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸カルシウム、Ca−Zn系、Ca−Mg−Zn系などが挙げられる。前記カルシウム熱安定剤はポリ塩化ビニル系油脂100質量部に対して、0.3〜3質量部含有することが好ましく、0.5〜2.5質量部含有することがより好ましく、0.7〜2.0質量部含有することが特に好ましい。カルシウム系熱安定剤を0.3質量部以上含有することにより、熱安定剤本来の耐熱性向上効果を十分に発揮させることができ、また、3質量部以下とすることで、カルシウムに由来するフィルムの色相が低下することなく好ましい。
<紫外線吸収剤>
本発明に使用されるポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、さらに紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール等のトリアジン類等があげられる。中でも、ポリ塩化ビニル系樹脂には、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤を使用することが好ましい。これらの紫外線吸収剤は、一種又は二種以上で用いられる。
前記紫外線吸収剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部含有することが好ましく、1〜8質量部含有することがより好ましく、2〜6質量部含有することが特に好ましい。紫外線吸収剤を0.1質量部以上含有することにより、本発明のフィルムの紫外線による劣化を防止することができ、また上限値を10質量部以下とすることにより、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムから紫外線吸収剤がブリードアウトすることなく、十分な紫外線による劣化を防止することができる。
<可塑剤>
本発明で用いられるポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、可塑剤が使用される。使用される可塑剤としては、特に限定されるものではなく、公知の可塑剤を使用することができる。例えば、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジオチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、イソフタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどのフタル酸系可塑剤、アジピン酸−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−2−デシル、セバチン酸ジブチル、セバチン酸−2−エチルヘキシルなどの脂肪酸エステル可塑剤、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸−2−エチルヘキシルジフェニル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチルなどのトリメリット酸エステル系可塑剤、アジピン酸系ポリエステル可塑剤、フタル酸系ポリエステル可塑剤などのポリエステル系可塑剤、テレフタル酸系可塑剤が使用することができる。上記可塑剤の中でも、ポリエステル系可塑剤を使用することが、耐候性や可塑剤の移行性の観点から好ましい。
本発明のフィルムを構成するポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、上記可塑剤を10〜40質量部含むことが好ましい。可塑剤を10質量部以上とすることで、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の成形性や加工性が好ましくなる。また、可塑剤が40質量部以下とすることで2次加工する際の加工性がより良好となる。可塑剤は、好ましくは、15〜35質量部、より好ましくは、20〜30質量部である。
<エポキシ化合物>
本発明のフィルムに使用されるポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、さらにエポキシ化合物を含むことが好ましい。エポキシ化合物を含むことにより、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなるポリ塩化ビニル系樹脂フィルムの熱安定性を改善することができる。
前記エポキシ化合物は、特に限定されるものではなく、エポキシ化植物油、ビスフェノール型エポキシ化合物、エポキシ基含有アクリルポリマー等のエポキシ化合物を使用することができる。なかでもエポキシ化アマニ油、エポキシ基含有アクリルポリマーは好ましく使用することができる。エポキシ化合物は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.1〜12質量部含有することが好ましく、0.3〜10質量含有することがより好ましく、0.5〜8質量部含有することがさらに好ましい。
<その他の添加剤>
本発明に使用されるポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、上述した各成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲において必要に応じて、その他の安定剤、滑剤、帯電防止剤、耐候助剤、着色剤等公知の添加剤を含有してもよい。いずれの添加剤においても公知のものを用いて添加することができる。
また、添加剤のブリードアウトを抑制する観点から、その他の添加剤の含有量は、ポリ化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、10質量部以下とすることが好ましい。
本発明に使用されるポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、前記の各成分を所定量添加して攪拌機でブレンドし、バンバリーミキサー、1軸押し出し機、ロール、ニーダー等の公知の混練機を用いて加熱溶融状態で混練りすることによってポリ塩化ビニル系樹脂組成物を得ることができる。このようにして得られるポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、ペレット状、粒子状、フレーク状、粉末状等の形状で得ることができる。
[ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムの製造方法]
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂フィルムは、前述したポリ塩化ビニル系樹脂組成物をカレンダーロールや、Tダイ成形機でフィルムやシートに成形することにより得ることができる。このポリ塩化ビニル系樹脂フィルム又はシートは、単層であってもよく、多層であってもよい。このポリ塩化ビニル系樹脂フィルム又はシートの厚みは、特に限定されるものではないが、0.03〜5mmが好ましく、0.05〜4mmがより好ましく、0.05〜2mmがさらに好ましい。このポリ塩化ビニル系樹脂フィルム又はシートの厚みが、本発明の積層シートに使用されるポリ塩化ビニル系樹脂層の厚みとなる。また、該ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を型に流し、層状に成形したものでもよく、また、他の基材の上に溶融させたポリ塩化ビニル系樹脂組成物をコーティングし、冷却固化させポリ塩化ビニル系樹脂層を形成させたものでもよい。なかでも、フィルムやシート状に成形したものを使用することが、その後の2次加工性などにも優れるため好ましい。
[電子線硬化性樹脂により形成してなる層]
<電子線硬化性樹脂>
本発明に使用される電子線硬化性樹脂により形成してなる層に用いられる電子線硬化性樹脂としては、特に限定されるものではなく、各種の電子線硬化性樹脂を使用することができる。具体的には、アクリルアミド、アクリルニトリル、アクリル酸、アクリル酸エステルなどのアクリロイル基をもつ化合物からなるラジカル重合系、エポキシ、環状エーテル、環状アセタール、ラクトン、ビニルモノマー、環状シロキサンとアリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩などとの組合せからなるカチオン重合系、チオール基を有する化合物例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコールとポリエン化合物からなるポリエン・チオール系などが使用でき、これらの化合物を必要に応じて1種もしくは2種以上混合して用いてもよい。なお、この電子線硬化性樹脂には、各種の添加剤を配合して用いることができる。
[積層シートの製造]
本発明の積層シートは、前述したポリ塩化ビニル系樹脂フィルムと、電子線硬化性樹脂により形成してなる層とを有する積層シートである。
前記電子線硬化性樹脂により形成してなる層とは、電子線硬化性樹脂をポリ塩化ビニル系樹脂層となるポリ塩化ビニル系樹脂フィルムに塗布等により加工する工程中または、その加工後に電子線照射を行い、電子線硬化性樹脂を硬化させる層のことをいう。
本発明の積層シートを製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、前記にて説明したポリ塩化ビニル系樹脂層となるポリ塩化ビニル系樹脂フィルムに前記の電子線硬化性樹脂を塗布し、電子線照射を行い、該電子線硬化性樹脂を硬化させるか、または、該ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムに電子線硬化性樹脂を塗布し、塗布された電子線硬化性樹脂の表面に離型性賦形用フィルムを積層して形成し、電子線照射を行い、該電子線硬化性樹脂を硬化させて得ることができる。このように、電子線照射により電子線硬化性樹脂を硬化させた本発明の積層シートは、成型品や他部材の表面に貼合せて使用することができる。
なお、賦形用フィルムを用いた場合は、賦形用フィルムを剥離した後、成型品や他部材の表面に貼合せて使用することができる。本発明の積層シートを用いることにより、外観良好な表面保護層を付与できる。
また、前記電子線硬化性樹脂層を塗工するには、公知の各種方法、例えば、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、ロールコート、リバースロールコート、ナイフコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、ディップコート、ホイラーコート、スピンナーコート、スプレーコート、シルクスクリーン、かけ流しコート、刷毛塗り等が適用され、塗工厚は乾燥時で0.1〜100μm程度である。
電子線照射を行う際の電子線とは、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合、架橋しうるエネルギーを有するものを言い、使用されるものとしては、通常、紫外線、電子線、ガンマ線が用いられる。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプなどの光源を使用できる。電子線源としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用い、30〜1000kV、好ましくは、50〜200kVのエネルギーをもつ電子を照射するものを使用できる。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の測定評価は以下に示す方法で行った。また、実施例及び比較例で使用した原料は、下記の通りである。
<電子線照射後の色差測定>
得られたフィルムを使用し、縦30mm、横30mmの寸法でカットサンプルを作製する。次に電子線照射装置(アイグラフィックス社製「CB175」)を使用し、165kV、5Mradの条件でカットサンプルの表面に照射し、照射前と照射後のカットサンプルの表面の色差をコニカミノルタ社製「分光測色計CM−2500d」を使用して測定する。得られた結果をΔEとした。ΔEの値が小さいほど電子線照射前と電子線照射後の色差が少なく、耐変色性に優れていることを示す。
本発明のフィルムのΔEは、0.4未満であることが好ましく、0.3未満であることがより好ましく、0.2未満であることがさらに好ましい。
<ブリードアウトの有無>
得られたフィルムを使用し、縦10cm、横10cmの寸法のカットサンプルを50℃×80%RHに保たれる恒温恒湿機内に2日間吊した後、10℃に保たれるオーブン内に1日間吊るし、再度、50℃×80%RHに保たれる恒温恒湿機内に1日間吊した後、カットサンプルの表面の一部を拭き取り外観表面状態を目視にて観察した。拭き取り跡が見られなかったものを○、拭き取り跡が見られたものを×とした。
<実施例及び比較例で使用した原料>
1.ポリ塩化ビニル系樹脂
(A):ポリ塩化ビニル系樹脂(大洋塩ビ(株)製:「TH-800」)、平均重合度800、
2.可塑剤
(B):ポリエステル系可塑剤((株)ジェイ・プラス製:「D620」)
3.熱安定剤
(C−1):アセチルアセトン亜鉛(東京化成工業(株)製:「Z0002」)
(C−2):バリウム亜鉛系安定剤(堺化学工業(株)製)
(C−3):BaZnSn系安定剤(堺化学工業(株)製:「LBZ2038」)
(C−4):Zn系安定剤(堺化学工業(株)製:「OW7025」)
4.ヒンダードアミン系光安定剤
(D−1):アデカスタブLA−81((株)ADEKA製:「LA−81」)、ピペリジン骨格のNの置換基がOR(Rは炭素数11のアルキル基)。
(D−2):アデカスタブLA−57N((株)ADEKA製:「LA−57N」)、ピペリジン骨格のNの置換基がH。
5.紫外線吸収剤
(E):ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(BASF社製:「CHIMA81」)
6.エポキシ化合物
(F):エポキシ基含有アクリルポリマー(日油(株)製:「G-0150M」)
実施例1〜3及び比較例1〜3
表1に示す配合割合となるように調整した原料を、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、次いで160℃で3分間、バンバリーミキサーで混練りした。得られた混練物を170℃で7分間、カレンダー成形にて混練し、2本ロールを用い、厚さ0.07mmのポリ塩化ビニル系樹脂フィルムを作製した。得られたポリ塩化ビニル系樹脂フィルムについて、電子線照射後の色差を測定した。その測定結果を表1に示す。
Figure 2019189821
表1より、実施例1〜3はいずれも、電子線照射後において色差ΔEが小さく、変色が少ない結果が示されていることから、劣化を抑制できる優れたポリ塩化ビニル系樹脂フィルムであることが示されている。
一方、比較例1〜3はいずれも、電子線照射後の色差ΔEが0.4以上であり、黄変が大きい結果が示されている。このように、電子線照射に対して、劣化を抑制できないことが示されている。
また、得られたフィルムは、いずれもブリードアウトのないことが示されている。
本発明のフィルム及び積層シートは、電子線照射による劣化が小さいので変色が少なく、耐変色性に優れており、ポリ塩化ビニル系樹脂層から添加剤がブリードアウトするおそれが少ないので、外観上優れた効果を有し、また、臭気の発生がない。従って、サッシ等の建材の化粧シートとして使用される表面保護層として好適に用いることができる。特に、ポリ塩化ビニル系樹脂製等の樹脂サッシの表面保護層として好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、
    アセチルアセトン亜鉛0.01〜1質量部と
    ピペリジン骨格の窒素原子の置換基がOR(Rは炭素数2〜15のアルキル基)であるヒンダードアミン系光安定剤0.05〜1質量部と、
    を含有するポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
  2. ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、1〜4質量部のバリウム亜鉛系安定剤を含む、請求項1に記載のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
  3. ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部の紫外線吸収剤を含む、請求項1又は2に記載のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
  4. ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、10〜40質量部の可塑剤を含む、請求項1〜3のいずかに記載のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
  5. ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.1〜12質量部のエポキシ基含有アクリルポリマーを含む、請求項1〜4のいずれかに記載のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のポリ塩化ビニル系樹脂フィルムと、電子線硬化性樹脂により形成してなる層を有する、積層シート。
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