JP2019187329A - 茶の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】釜炒り以外の殺青処理方法を採用した場合にも、正常な葉の歩留りを維持しつつ、焦げ部となる部分、中でも大きな面積の焦げ部を効率良く除去することができる、茶の製造方法を提案する。【解決手段】茶葉を加熱して茶葉の水分量を50〜70%(W.B.)に調整する加熱処理を行った後、茶葉に力を加えて焦げ部分を正常部から分離する焦げ部分離処理を行い、当該焦げ部分を除去する焦げ部除去処理を行うことを特徴とする茶の製造方法を提案する。【選択図】なし

Description

本発明は、焦げた茶葉を効率良く除去することができる茶の製造方法に関する。
一般的な茶は、摘採された茶生葉を蒸気で蒸して茶生葉に含まれる酸化酵素を不活性化(殺青)させた後、粗揉、揉捻、中揉及び精揉等によって揉込み、乾燥させる一連の工程を経て製造するのが通常である(非特許文献1参照)。このように生葉を蒸気で蒸す蒸熱法によって茶葉を殺青すると、蒸熱によって茶葉全体が柔らかくなるため、茶葉中の成分の溶出性を高めることができ、濃いお茶を入れることができる。
中国茶や日本の釜炒り茶(かまいり製玉緑茶)などでは、蒸熱の代わりに、加熱した釜で茶葉を炒ることによって酸化酵素を不活性化(殺青)させる方法が採られている(非特許文献1参照)。直火加熱によって茶葉を殺青すると、釜炒り特有の香味を発揚できると同時に、すっきりとした味の茶に仕上げることができるため、最近では釜炒りで製造した原料茶葉を使った茶飲料も販売されている。
その他、嬉野茶などで採用されている炒り蒸や、湿度60〜90%、温度250〜390℃程度の高湿度熱風を当てて加熱処理を行う殺青方法(特許文献1、2参照)なども知られている。
他方、抹茶の原料に使用される碾茶の製造方法は、蒸気を用いて生茶葉を殺青し(蒸熱)、次に、茶葉についた蒸し露を取り除き、葉が重ならないように分散させた後(冷却・分散)、碾炉で輻射熱を用いて高温短時間で乾燥し(乾燥)、次に、葉脈及び茎を除いて葉肉のみとする(つる切り)ことによって製造するのが一般的であった。
碾茶の製造方法においても、近年、蒸熱による殺青処理の代わりに、熱風による殺青処理が提案されている(例えば特許文献3参照)。
ところで、上述のような各種茶の製造方法において、生茶葉を加熱して殺青又は乾燥させた際、若くて小さい葉乃至芽や葉の切れ端、さらには病変部分などが焦げてしまって香りや水色を損なうことがあった。特に碾茶の場合にはその影響が大きかった。
このような焦げた茶葉を除去する技術として、例えば特許文献4には、焦げた葉を含む細かい葉全体を取り除く技術が開示されている。
また、特許文献5には、生茶葉を炒る殺青工程と、殺青された茶葉から夾雑物を除く粉取り工程と、該粉取り工程後の茶葉から易破砕茶葉を除く除去工程と、該易破砕茶葉が除去された茶葉を揉み込む揉捻工程とを具備する製茶方法により、焦げ葉を含む易破砕茶葉を完全に除去することにより、荒茶の品質を向上させる製茶方法が開示されている。
特開平9−233997号公報 特開2001−136908号公報 特開2013−34405号公報 特許第3689404号公報 特開2007−159510号公報
静岡県茶業会議所編、1988、「新茶業全書」、静岡県茶業会議所、p275−276
特許文献4に開示されている方法は、生茶葉を高温で釜炒りすることにより殺青処理した後、処理後の茶葉を回転胴装置に通して篩分けすることによって焦げ部を除去するという処理である。しかし、釜炒りのように茶葉の水分量を極端に減らす殺青処理方法以外の殺青処理方法、例えば熱風乾燥処理などの殺青処理方法においては、殺青後の茶葉がある程度水分を含んでおり、焦げた葉が正常な葉に付着し易いため、特許文献4に開示されている焦げ部除去処理を適用しただけでは、焦げ部を効率良く分離できなかったり、正常な細かい葉まで取り除いてしまって歩留りが低下したりすることが明らかになってきた。また、正常な茶葉乃至その部分(「正常部」と称する)に比較して水分が少ない病変部や傷部の中でも大きな面積を有する部分が焦げた場合、大きな焦げ葉が生じ、上述のように回転胴装置に通して篩分けする技術では取り除くことができなかった。
本発明は、釜炒り以外の殺青処理方法を採用した場合にも、正常な葉の歩留りを維持しつつ、焦げ部となる部分、中でも大きな面積の焦げ部を効率良く除去することができる、茶の製造方法を提案するものである。
本発明は、茶葉を加熱して茶葉の水分量を50〜70%(W.B.)に調整する加熱処理を行った後、茶葉に力を加えて焦げ部分を正常部から分離する焦げ部分離処理を行い、当該焦げ部分を除去する焦げ部除去処理を行うことを特徴とする茶の製造方法を提案する。
本発明が提案する茶の製造方法では、加熱処理において、茶葉を加熱して茶葉の水分量を50〜70%(W.B.)に調整することで、後工程で焦げ部となる部分を含めて、大きな面積の焦げ部を大きいまま得ることができる。この際、水分量が少ないと、これらの部分が粉になってしまう。よって、加熱処理において、茶葉を加熱して茶葉の水分量を50〜70%(W.B.)に調整することで、細かい焦げ葉片の発生を抑制し、細かい焦げ葉が正常部に付着することによる分離不良を抑制することができる。
そして、上記加熱処理を行った後、茶葉に力を加えて焦げ部分を正常部から分離する焦げ部分離処理を行い、当該焦げ部分を除去する焦げ部除去処理を行うことで、大きな焦げ部をそのまま分離除去することができる。
このように、本発明が提案する茶の製造方法によれば、正常な葉の歩留りを維持しつつ、焦げ部、中でも大きな面積の焦げ部を効率良く除去することができる。
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
<本茶製造方法>
本発明が提案する茶の製造方法(「本茶製造方法」とも称する)は、茶葉を加熱して茶葉の水分量を50〜70%(W.B.)に調整する加熱処理を行った後、茶葉に力を加えて焦げ部分を正常部から分離する焦げ部分離処理を行い、当該焦げ部分を除去する焦げ部除去処理を行うことを特徴とする茶の製造方法である。
(加熱処理)
本茶製造方法における加熱処理は、茶葉の水分量を50〜70%(W.B.)に調整することができれば、釜炒りなどの直火加熱、炒り蒸、熱風を当てる熱風殺青又は乾燥など、任意の加熱手段を採用可能である。これらを組み合わせることも可能である。
本茶製造方法における加熱処理では、茶葉の水分量を50〜70%(W.B.)に調整することにより、細かい焦げ葉片の発生を抑制することができ、後工程で焦げ部となる部分を含めて、大きな面積の焦げ部を大きいまま得ることができるから、後工程において焦げ部、中でも大きな面積の焦げ部を効率良く除去することができる。
かかる観点から、加熱処理では、茶葉の水分量を50〜70%(W.B.)に調整することが好ましく、中でも52%(W.B.)以上或いは68%(W.B.)以下、その中でも55%(W.B.)以上或いは65%(W.B.)以下に調整することがさらに好ましい。
また、加熱処理では、上記同様の観点から、茶葉の水分量を7〜20%(W.B.)の割合で減らすことができるように処理条件を調整するのが好ましく、中でも8%(W.B.)以上或いは18%(W.B.)以下、その中でも9%(W.B.)以上或いは17%(W.B.)以下の割合で減らすことができるように加熱処理条件を調整するのがさらに好ましい。
さらに加熱処理では、焦げ部分離処理において分離除去されない茶葉(「正常部」とも称する)の水分量(A)に対する、分離除去される茶葉(「分離焦げ部」とも称する)の水分量(B)の比(B/A)が0.2〜0.7となるように実施することが好ましい。
焦げ部分離処理で分離除去される茶葉(分離焦げ部)の多くは、焦げた茶葉であるか若しくは後工程で焦げる可能性の高い茶葉であり、病変部の多くが含まれている。そのため、上記比率(B/A)になるように前記加熱処理を実施することで、正常な茶葉部に柔軟性を保たせつつ、焦げ部となる可能性の高い病変部などの異常な茶葉部を脆くすることができるため、後工程の焦げ部分離処理において、焦げた茶葉若しくは後工程で焦げる可能性の高い茶葉を容易に分離することができる。
更に、病変部の過度な乾燥を抑制することで、焦げ部が脆くなり過ぎることを防止し、病変部を大きな面積の焦げ部として得られるようにすることができる。加えて、正常部の柔軟性を保たせることで、焦げ部分離処理において茶葉に力を加えた場合であっても、正常部から葉切れ、葉こぼれなどの細かい葉が発生するのを抑制することができ、焦げ部を選択的かつ効率よく分離することができ、正常部の歩留りを向上させることができる。
よって、加熱処理は、焦げ部分離処理において分離除去されない茶葉(正常部)の水分量(A)に対する、分離除去される茶葉(分離焦げ部)の水分量(B)の比(B/A)が0.2〜0.7となるように実施することが好ましく、中でも0.22以上或いは0.60以下、その中でも0.25以上或いは0.50以下となるように実施することがさらに好ましい。
なお、「正常部」「病変部」の区別は、主に目視にて判断することができ、例えば、色、形、模様、芽の枯れなどにより判断することができる。
また、本発明において、「正常部」とは商品となり得る茶葉及びそのような部分を示し、「病変部」とは病変した茶葉若しくは茶葉の一部のほか、病気以外の要因、例えば外傷や害虫などの影響で損傷し、正常部と比較して水分量が少ない部分も包含する意である。
(焦げ部分離処理)
本茶製造方法における焦げ部分離処理において、茶葉に力を加えて焦げ部分を分離する方法としては、茶葉に打圧力を加える方法、茶葉に摩擦力を加える方法、茶葉を挟む又は押し付けるなどして圧力を加える方法など、焦げ部を正常部から分離することができれば任意の方法を採用可能である。なお、この際の正常部は焦げ部でない部分の意味である。
茶葉に打圧力を加える方法としては、攪拌羽や攪拌棒などで茶葉を攪拌したり、棒などで叩いたり、風力などを用いて茶葉同士または茶葉と障害物を衝突させたりする方法を挙げることができる。
(焦げ部除去処理)
上述したように正常部から分離した焦げ部を除去する方法としては、例えば篩い分け、風選、色彩選別などの公知の選別方法を採用することができる。具体的には、金網などの網からなる回転胴内に通して、篩下に分離除去したり、或いは、金網などの網からなる篩に入れて振動させて篩下に分離除去したりすることができる。
また、前記焦げ部分離処理と焦げ部除去処理とを同時に行うようにしてもよい。前記焦げ部分離処理と焦げ部除去処理とを同時に行うことにより、正常部に焦げ部が付着するのを抑制することができ、焦げ部の除去率を高めることができる。
(小茶葉分離処理)
本茶製造方法では、前記加熱処理後であって前記焦げ部分離処理の前に、細かい葉を除去する小茶葉分離処理を行うようにしてもよい。
この小茶葉分離処理を導入して、焦げ部分離処理の前に予め小さい茶葉片を除去しておくことにより、焦げ部分離処理において、乾燥が進んでいる小さい葉が混じらないため、茶葉に力を加えた際に、小さい葉が砕けて生じる細かい焦げ葉の発生を抑制し、正常部に細かい焦げ葉が付着することによる分離不良を抑制することができる。
なお、上記「小さい茶葉片」の目安としては、5mm四方〜10mm四方に相当する大きさのものであり、上記「細かい茶葉片」の目安としては、5mm四方に相当する大きさよりも小さい大きさのものである。
小茶葉分離処理の具体的手段としては、篩い分け、風選、色彩選別などの公知の選別機を用いて小さい茶葉片を分離するようにしてもよいし、また、網状若しくはメッシュ状の籠やベルトなどに入れて、搬送しながら小さい茶葉片を分離除去するようにしてもよい。
(本茶製造方法の利用)
本茶製造方法は、殺青処理や乾燥処理などの加熱処理を行う茶の製造方法であれば利用可能である。
例えば、煎茶や容器詰め緑茶飲料に用いる荒茶の製造においては、茶葉を加熱して茶葉の水分量を50〜70%(W.B.)に調整する殺青処理(加熱処理)を行った後、茶葉に力を加えて焦げ部分を分離する焦げ部分離処理を行い、当該焦げ部分を除去する焦げ部除去処理を行った後、揉捻、乾燥などを経て荒茶を製造することができる。
また、碾茶の製造においては、茶葉を加熱して茶葉の水分量を50〜70%(W.B.)に調整する殺青処理(加熱処理)を行った後、茶葉に力を加えて焦げ部分を分離する焦げ部分離処理を行い、当該焦げ部分を除去する焦げ部除去処理を行った後、碾炉による乾燥、つる切りなどを経て碾茶を製造することができる。
次に、本茶製造方法を、碾茶の製造方法に適用した場合の実施形態について具体的に説明する。
<本碾茶製造方法>
本発明の実施形態の一例に係る製造方法(「本碾茶製造方法」と称する)は、生茶葉を加熱して茶葉の殺青を行う殺青処理を実施した後、必要に応じて小さい葉を除去する小茶葉分離処理を行い、次いで、焦げ部分離処理を行うと共に焦げ部除去処理を行い、必要に応じて散茶処理を行い、次に、茶葉に熱を与えて茶葉の乾燥を行う乾燥処理を実施し、その後、つる切り処理を実施することを特徴とする碾茶の製造方法である。
碾茶を製造する際は、揉み圧を加えない製法を採用するのが一般的である。よって、碾茶表面に細かい葉が露出したまま乾燥処理を行うため、焦げが生じやすい。そのため、本発明は、揉み圧を加えて茶葉表面の粉を内部に巻き込む煎茶よりも、碾茶の製造に用いる方が効果を生じやすいと言える。
なお、本碾茶製造方法は、上記処理を備えていれば、他の処理を追加することは可能である。例えば、粉砕処理、乾燥処理、冷却処理、その他の処理を適宜追加することが可能である。
本発明では、「碾茶」とは、生茶葉を殺青し、揉まずに乾燥して得られた茶をいうものである。
(生茶葉)
本碾茶製造方法の原料茶葉である生茶葉は、茶の品種、茶の栽培方法及び摘採時期を限定するものではない。例えば、収穫前に一定期間被覆栽培して摘採した覆下茶葉を使用することも可能であるし、被覆栽培しない茶葉を使用することもできる。また、一番茶、二番茶、三番茶、四番茶、秋冬番茶などを使用することもできる。
また、茶の品種や、茶の栽培方法や、摘採時期などが異なる二種類以上の茶葉を組み合わせて使用することも可能である。
なお、本発明における「生茶葉」とは、酵素の失活処理(殺青)が為されていない茶葉をいう。
摘採した茶葉は、必要に応じて、洗浄処理、乾燥処理、冷却処理を行った後、次に説明する殺青処理を行うことができる。
(殺青処理)
本碾茶製造方法の殺青処理では、上述した理由により、茶葉の水分量を50〜70%(W.B.)に調整することが好ましく、中でも52%(W.B.)以上或いは68%(W.B.)以下、その中でも55%(W.B.)以上或いは65%(W.B.)以下に調整することがさらに好ましい。
殺青処理では、上記同様の観点から、茶葉の水分量を7〜20%(W.B.)分、つまりその割合分を減らすことができるように処理条件を調整するのが好ましく、中でも8%(W.B.)以上或いは18%(W.B.)以下、その中でも9%(W.B.)以上或いは17%(W.B.)以下の割合分減らすことができるように処理条件を調整するのがさらに好ましい。
さらに殺青処理では、上述した理由により、焦げ部分離処理において分離除去されない茶葉(「正常部」とも称する)の水分量(A)に対する、分離除去される茶葉(「分離焦げ部」とも称する)の水分量(B)の比(B/A)が0.2〜0.7となるように実施することが好ましく、中でも0.22以上或いは0.60以下、その中でも0.25以上或いは0.50以下となるように実施することがさらに好ましい。
本碾茶製造方法における殺青処理は、熱風を用いて殺青と同時に乾燥を行うのが好ましい。このように熱風を用いて殺青と同時に乾燥を行うことにより、従来のように蒸熱によって殺青を行った後に乾燥を行う場合に比べて、緑色度合いを高めることができる。さらに、本殺青処理での乾燥温度は、従来の乾燥温度に比べて低いため、退色し難いという効果を得ることもできる。
以下、熱風を用いて殺青と同時に乾燥を行う場合の条件に付いて説明する。
殺青処理後の茶葉の水分量を調整するには、熱風の温度、生茶葉と熱風を接触させる時間、殺青処理を行う装置に供給する茶葉の単位時時間当たりの供給量、熱風の単位時時間当たりの供給量などを調整すればよい。但し、これらに限定するものではない。
殺青処理では、180℃以上の温度に調整した熱風を作製し、当該熱風を生茶葉に供給して接触させるのが好ましい。
180℃以上の温度の熱風を作製して生茶葉に供給すれば、生茶葉を必要十分に殺青することができ、且つ、茶葉の茶葉の水分量を好ましい範囲に調整することができる。但し、あまりに高い温度の熱風と接触させると、焦げる可能性がある。
かかる観点から、殺青処理では、180℃以上、中でも190℃以上或いは350℃以下、その中でも200℃以上或いは335℃以下の温度に調整した熱風を作製し、当該熱風を生茶葉に供給して接触させるのがさらに好ましい。
殺青処理において、熱風を生茶葉に接触させる時間は、生茶葉毎に90〜300秒とするのが好ましく、中でも120秒以上或いは250秒以内、その中でも150秒以上或いは200秒以内とするのがさらに好ましい。
殺青処理では、生茶葉の流量(kg/min)と熱風の風量(m/min)との比率(茶葉流量/熱風風量×100)を10〜17とするのが好ましい。
殺青処理における生茶葉の流量(kg/min)と熱風の風量(m/min)との比率(茶葉流量/熱風風量×100)を10〜17と調整することにより、殺青を的確に行いつつ、碾茶の緑色度合いを高めることができる。
かかる観点から、殺青処理における生茶葉の流量(kg/min)と熱風の風量(m/min)との比率(茶葉流量/熱風風量×100)を10〜17(単位kg/m)と調整するのが好ましく、中でも11以上或いは16以下、その中でも12以上或いは15以下とするのがさらに好ましい。
なお、生茶葉の流量とは、殺青処理装置に単位時間当たりに供給する生茶葉量を意味し、熱風風量とは、単位時間当たりに供給する熱風の量を意味する。
殺青処理及び乾燥処理前には、茶葉を揉んだり、茶葉に対して打圧を加えたりしないことが、茶葉の重なりを作らず乾燥させ製品の色調を高める観点から好ましい。
殺青処理を実施する装置は、生茶葉に対して熱風を接触させることができる構成を有していれば任意の装置を採用することができる。一例としては、茶葉を一定方向に移動させることができる回転処理胴と、当該回転処理胴内の軸方向に配設され、多数の熱風噴出口を有する熱風供給管とを備えた装置を挙げることができる。
なお、本碾茶製造方法における殺青処理の方法として、熱風を用いて殺青と同時に乾燥を行う方法について上述した。しかし、茶葉の水分量を50〜70%(W.B.)に調整することができれば、釜炒りなどの直火加熱、炒り蒸、熱風を当てる熱風殺青又は乾燥など、任意の加熱手段を本碾茶製造方法の殺青方法として採用可能である。また、これらを組み合わせることも可能である。
(小茶葉分離処理)
本碾茶製造方法では、前記殺青処理後であって前記焦げ部分離処理の前に、小さい葉を除去する小茶葉分離処理を行うのが好ましい。但し、必要に応じて小茶葉分離処理を行えばよく、必ず必要な処理ではない。
本碾茶製造方法における小茶葉分離処理の具体的手段としては、網状若しくはメッシュ状の籠やベルトなどで、殺青後の茶葉を搬送しながら、小さい茶葉を分離除去するのが好ましい。
(焦げ部分離処理及び焦げ部除去処理)
乾燥処理の前に、焦げ部分離処理及び焦げ部除去処理を行うことで、病変部由来の焦げている葉や、水分量が少ないために乾燥処理で焦げる葉を、乾燥処理に供する量を減らすことができる。これにより、乾燥処理にて病変部が焦げたり、茶葉が碾炉内を移動する際に脆くなった病変部が正常部から分離して碾炉内に落下して焦げたりすることなどを少なくすることができ、碾茶への焦げ臭の付着を抑制することができる。
さらに、乾燥処理前の加熱処理、小茶葉分離処理、焦げ部分離処理及び焦げ部除去処理の各処理において、細かい焦げ葉が正常な茶葉に付着するのを抑制することができ、乾燥処理において正常な茶葉表面に焦げが発生することを抑制することができ、碾茶への焦げ臭の付着を抑制することができる。
本碾茶製造方法では、茶葉に力を加えて焦げ部分を正常部から分離する焦げ部分離処理と、当該焦げ部分を除去する焦げ部除去処理を別々の機械乃至装置で行ってもよいし、また、同じ機械乃至装置で同時に行ってもよい。
焦げ部分離処理及び焦げ部除去処理を同じ機械乃至装置で同時に行う方法としては、例えば、茶葉を一定方向に移動させることができる回転金網胴内に回転軸及び多数の攪拌羽根を備えた装置を用いて、殺青処理後の茶葉を、当該回転金網胴内に供給することにより、茶葉に打圧を加えて焦げ部分を分離させながら、当該焦げ部を除去するのが好ましい。
このような装置、すなわち回転金網胴内に回転軸及び多数の攪拌羽根を備えた装置を用いて茶葉を処理すれば、多数の攪拌羽根によって、茶葉に打圧を加えることができ、焦げ部分を、焦げていない部分から分離させることができるばかりか、回転羽根の先端部と回転金網胴の内周との隙間において、茶葉に摩擦圧を加えることができ、焦げ部分の分離を促進させることができる。
上記装置において、回転金網胴の回転速度と回転軸の回転速度には差を設けることも好ましい。この際、回転軸の回転速度を回転金網胴の回転速度よりも速くするのが好ましい。
また、回転金網胴の網目の形状は、正方形、長方形、菱形、円、楕円その他の形状であってもよく、網目の大きさは、長径が1〜10mmであるのが好ましく、中でも1.5mm以上或いは8mm以下、その中でも2mm以上或いは6mm以下であるのがさらに好ましく、短径が0.5〜8mmであるのが好ましく、中で1mm以上或いは7mm以下、その中でも2mm以上或いは5mm以下であるのがさらに好ましい。
(散茶処理)
上記焦げ部除去処理後、散茶機などを用いて、茶葉を攪拌して、茶葉を冷却させると共に茶葉を分散させる散茶処理を行うのが好ましい。
このように、茶葉を冷却させると共に、茶葉を分散させて茶葉同士が重なって付着するのを抑制することにより、乾燥処理の効果を均一に付与することができるばかりか、茶葉の色沢が黒くなることを抑制することができる。
冷却処理における攪拌は、公知の散茶機を用いて行うことができる。但し、茶葉を冷却させることができ、同時に、茶葉同士が重なって付着している状態を解消することができる装置であれば、散茶機に限定するものではない。
(乾燥処理)
乾燥処理では、茶葉を加熱して茶葉の水分量を3〜50%(W.B.)に乾燥するのが好ましい。
本碾茶製造方法において、茶葉を乾燥させる方法としては、熱媒体を用いた間接加熱が好ましく、更に空気、蒸気、加熱した無機固形物や有機物固形物に接触させる方法が好ましく、更に赤外線や遠赤外線を用いる方法、熱風を用いる方法、加熱水蒸気を用いる方法、加熱した容器に茶葉を接触させる方法が好ましく、特に碾炉などを用いて、輻射熱を利用して茶葉に熱を与えて乾燥を行うのが好ましい。輻射熱を利用して茶葉を加熱することにより、茶葉に独特の炙り香を付けることができる。
碾炉は、煉瓦で囲まれており、煉瓦の輻射熱すなわち遠赤外線による熱を利用した炉である。
乾燥処理では、炉内を上段、中段、下段など複数の段に分けて、各段を順に茶葉を移動させながら乾燥する例を挙げることができる。
この際、複数の段のうち最も温度の高い領域の雰囲気温度を170〜220℃、中でも180℃以上或いは210℃以下とし、その領域を通過する時間を90〜210秒、中でも100秒以上或いは200秒以下、その中でも150秒以上或いは190秒以下とするのが好ましい。
また、全ての段を移動する全段移動時間は、10〜21分、中でも12分以上或いは19分以下、その中でも13分以上或いは19分以下とするのが好ましい。
(つる切り処理)
つる切り処理では、乾燥処理した後、葉脈及び茎を除いて葉肉のみとして選別するのが好ましい。
(粉砕及び選別)
さらに、必要に応じて、葉肉を選別した際の茶葉の径(最長部分の幅×長さ)が25×35mm、中でも幅が2mm以上或いは15mm以下、長さが2mm以上30mm以下となるように、粉砕及び選別するのが好ましい。
<本碾茶製造方法により得られる碾茶>
本碾茶製造方法により得られる碾茶は、緑色度合いに優れた碾茶であるから、粉状に挽いて抹茶として利用することができる。
さらに本碾茶製造方法によれば、秋冬番茶などのより安価な原料茶を使用して緑色度合いを効果的に高めることができるため、安価な加工食品用原料を提供することができる。
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。但し、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
原料茶葉として、奈良県産品種やぶきた(一番茶、被覆あり、摘採日5月30日)を使用した。この原料茶葉(生葉)の水分量は80.4%(W.B.)であった。
なお、茶葉の水分量は、水分計測計(株式会社島津製作所水分計「MOC63u」)を用いて105℃の常圧乾燥で計測した(後も同様)。
上記原料茶葉を、次に説明するように生茶葉に熱風を接触させて殺青処理を行った後、回転攪拌羽根付きの回転金網胴内を通して、当該回転金網胴内において茶葉に打圧を加えて、当該金網を通して焦げ部を正常部から分離させると共に当該焦げ部を除去し、次いで、散茶機を用いて茶葉を散茶処理した後、碾炉に供給して茶葉に熱を与えて茶葉の乾燥処理を行い、次に、つる切り、粉砕及び選別を行って碾茶(サンプル)を得た。
殺青処理では、茶葉を一定方向に移動させることができる回転処理胴と、当該回転処理胴内の軸方向に配設され、多数の熱風噴出口を有する熱風供給管とを備えた装置を使用して、280℃の熱風を作製し、当該熱風を前記熱風供給管及び熱風噴出口を通じて、回転処理胴内の生茶葉に接触させた。
この際、殺青処理時間、すなわち熱風を生茶葉に接触させる時間、すなわち回転処理胴内を生茶葉が通過する時間は3分であり、生茶葉の流量は280kg/h(4.7kg/min)であり、熱風の風量(m/min)は33.9であり、茶葉流量/熱風風量×100は13.8(kg/m)であった。
殺青処理後の茶葉(D)の水分量は64.8%(W.B.)であった。
上記回転攪拌羽根付きの回転金網胴は、長さ1.2m、直径21cm、網目:長径3mm×短径3mmの回転金網胴内に回転軸及び多数の攪拌羽根を備えた装置であり、回転金網胴の回転速度42r.p.mに対して、回転軸の回転速度は320r.p.mに設定した。また、回転金網胴の傾斜角度を2°に設定した。更に、回転金網胴と攪拌羽根の間隙を8mmに設定した。
回転金網胴が回転しながら茶葉を移動させることができ、多数の攪拌羽根によって茶葉はたたかれ、細かくなった茶葉片は回転金網胴の網目から下に篩い落されるようになっている。
この際、原料茶葉(生葉)の0.94質量%相当の茶葉が、網目から下に篩い落されて除去された。すなわち、分離焦げ部の原料生葉に対する除去率は0.94質量%であった(表には「除去率」として示されている)。そして、篩上の茶葉(「正常部」)及び篩下に分離除去された茶葉(「分離焦げ部」)それぞれの中から任意に20gを抽出し、正常部の水分量(A)及び分離焦げ部の水分量(B)をそれぞれ測定し、正常部の水分量(A)に対する分離焦げ部の水分量(B)の比(B/A)を算出した。
なお、上記分離焦げ部の茶葉を観察したところ、焦げ部であるか、後工程で焦げ部となる病変部であった。この点は、他の実施例についても同様であった。
上記のように回転金網胴から出た茶葉は、金網からなる箱体に入れて乾燥させながら散茶機に搬送され、該散茶機を用いて茶葉を攪拌して、茶葉を冷却させると共に茶葉を分散させた後、続いて、次に説明する碾炉に供給して、茶葉に熱を与えて茶葉の乾燥を行い、続いてつる切りにより葉と茎を分離して得た乾燥処理後の茶葉(つる切唐箕後葉)の水分量を4.4%(W.B.)とした。
この際用いた碾炉は、側壁が断熱性能に優れた耐火煉瓦からなり、炉内が上段、二段、取出し段、下段に区画され、下段のコンベヤの下の耐火煉瓦で囲われた地下空間に重油燃焼式のバーナーを備えており、バーナーの火焔によって加熱された高温ガスは、火炉から分岐した複数本の煙道に沿って下段からその他の段へと折り返され、碾茶機の側面に設けられた煙突から外部へ排気される構成になっていた。そして、この碾炉内をベルトコンベヤ式の搬送手段に乗せて茶葉を、下段、上段、二段、取出し段の順に移動させながら乾燥し、下段領域の雰囲気温度を211℃、下段領域を通過する時間を1分50秒とし、上段領域の雰囲気温度を118℃、上段領域を通過する時間を3分50秒とし、二段領域の雰囲気温度を104℃、二段領域を通過する時間を4分57秒とし、そして取出し段領域の雰囲気温度を101℃、取出し段領域を通過する時間を5分23秒とし、全段移動時間を16分とした。
上記乾燥処理後、つる切りにより碾炉から出てきた茶葉の葉脈及び茎を葉肉と分離し、更に葉肉のみを選別し、さらに茶葉の径(最長部分の幅×長さ)が25×35mmとなるように粉砕及び選別し、碾茶(サンプル)を得た。
<実施例2>
小茶葉分離処理を追加した以外、実施例1と同様に碾茶(サンプル)を得た。すなわち、殺青処理を行った後、回転攪拌羽根付きの回転金網胴に搬送しながら小茶葉分離処理を行った以外は、実施例1と同様に碾茶(サンプル)を得た。
この際、小茶葉分離処理は、殺青処理済の茶葉を、ワイヤネットコンベヤ(網目:長径8mm×短径6mm)に載せて、搬送速度25cm/秒、搬送時間10秒で搬送しながら小茶葉分離処理を行った。
原料茶葉(生葉)の0.22質量%相当の茶葉が篩下に除去された。すなわち、分離された小茶葉の原料生葉に対する除去率は0.22質量%であった(表には「除去率」として示されている)。そして、除去された小茶葉の水分量(E)は38.4%(W.B.)であった。
上記小茶葉分離処理によって篩下に除去された小茶葉の茶葉を観察したところ、焦げ部であるか、後工程で焦げ部となる病変部又は小さい茶葉片であった。この点は、小茶葉分離処理を行った他の実施例についても同様であった。
<実施例3>
原料茶葉として、奈良県産品種やぶきた(一番茶、被覆あり、摘採日5月30日、水分量は78.3%(W.B.))を使用した以外、実施例1と同様に碾茶(サンプル)を得た。
<実施例4>
原料茶葉として、奈良県産品種やぶきた(二番茶、被覆あり、摘採日7月18日、水分量は79.3%(W.B.))を使用した以外、実施例2と同様に碾茶(サンプル)を得た。
<実施例5>
原料茶葉として、奈良県産品種やぶきた(秋冬番茶、無被覆、摘採日10月26日、水分量は69.6%(W.B.))を使用した以外、実施例2と同様に碾茶(サンプル)を得た。
<実施例6>
原料茶葉として、奈良県産品種やぶきた(秋冬番茶、無被覆、摘採日10月26日、水分量は69.6%(W.B.))を使用した以外、実施例1と同様に碾茶(サンプル)を得た。
<実施例7>
原料茶葉として、奈良県産品種やぶきた(秋冬番茶、無被覆、摘採日10月26日、水分量は71.2%(W.B.))を使用した以外、実施例2と同様に碾茶(サンプル)を得た。
<比較例1>
焦げ部分離処理を行わなかった以外、実施例1と同様に、碾茶(サンプル)を得た。
<比較例2>
原料茶葉として、奈良県産品種やぶきた(二番茶、被覆あり、摘採日7月18日、水分量は79.3%(W.B.))を使用した以外、比較例1と同様に碾茶(サンプル)を得た。
<比較例3>
原料茶葉として、奈良県産品種やぶきた(秋冬番茶、無被覆、摘採日10月26日、水分量は69.6%(W.B.))を使用した以外、比較例1と同様に碾茶(サンプル)を得た。
<碾茶製造方法の評価>
碾茶製造方法を次の指標で評価した。
<正常な葉の歩留まり>
上記実施例において、焦げ部除去処理で除去された茶葉を目視にて、製品となり得る正常な茶葉すなわち正常部を選別して「除去された葉のうち正常部が占める割合」を求めて下記基準で評価した。
◎:焦げ部除去処理後の除去率が1.5質量%未満であり、除去された葉のうち正常部が占める割合が10%未満である(各割合は生葉換算。以下同じ)
○:焦げ部除去処理後の除去率が1.5質量%未満であり、除去された葉のうち正常部が占める割合が30%未満である
×:焦げ部除去処理後の除去率が1.5質量%以上、又は除去された葉のうち正常部が占める30%以上
<焦げ葉の除去率>
上記実施例・比較例で得た碾茶(つる切り唐箕後葉)から任意に200gを抽出し、目視にて焦げ葉を選別して焦げ葉の割合(質量%)を測定し、下記基準で焦げ葉の除去率を評価した。
◎:焦げ葉の割合が0.25質量%未満
○:焦げ葉の割合が0.25質量%以上0.30質量%未満
×:焦げ葉の割合が0.30質量%以上
<焦げ臭の強さ>
上記実施例・比較例で得た碾茶(サンプル)を、茶葉の製造に従事する10人のパネラーを選出し、下記の基準で評価し、最も評価の多かったものを採用した。
◎:焦げ臭を全く感じなかった。
○:焦げ臭をほとんど感じなかった。
×:焦げ臭を感じた。
Figure 2019187329
Figure 2019187329
(考察)
上記実施例及び本発明者がこれまでおこなってきた試験結果から、茶葉の水分量を50〜70%(W.B.)に調整する加熱処理を行った後、茶葉に力を加えて焦げ部分を分離する焦げ部分離処理を行い、当該焦げ部分を除去する焦げ部除去処理を行うことにより、例えば後工程の加熱乾燥などで焦げ部となる部分を含めて、大きな面積の焦げ部を大きいまま得ることができ、正常な葉の歩留りを維持しつつ、焦げ部、中でも大きな面積の焦げ部を効率良く除去することができることが分かった。

Claims (5)

  1. 茶葉を加熱して茶葉の水分量を50〜70%(W.B.)に調整する加熱処理を行った後、茶葉に力を加えて焦げ部分を正常部から分離する焦げ部分離処理を行い、当該焦げ部分を除去する焦げ部除去処理を行うことを特徴とする茶の製造方法。
  2. 前記加熱処理は、焦げ部分離処理において分離除去されない茶葉の水分量(A)に対する、分離除去される茶葉の水分量(B)の比(B/A)が0.2〜0.7となるように実施することを特徴とする請求項1に記載の茶の製造方法。
  3. 前記焦げ部分離処理と前記焦げ部除去処理とを同時に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の茶の製造方法。
  4. 前記加熱処理後であって前記焦げ部分離処理の前に、小さい葉を除去する小茶葉分離処理を行うことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の茶の製造方法。
  5. 前記焦げ部除去処理後に、茶葉を乾燥する乾燥処理を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の茶の製造方法。
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