以下、本発明のスイッチング電源装置及びその制御方法の第一の実施形態について、図1〜図16に基づいて説明する。この実施形態のスイッチング電源装置10は、一定の出力電圧Voを出力する装置であり、直流の入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成し、この昇圧電圧Vcをさらに変圧することによって出力電圧Voを生成する。主要な回路構成は、昇圧チョッパ(2台)と電流共振型のフルブリッジコンバータ(1台)を複合させた独特な構成になっている。また、この実施形態の制御方法は、スイッチング電源装置10の図示しないスイッチング制御回路により実行され、スイッチング制御回路は、公知のアナログ回路、デジタル処理IC、またはそれらを組み合わせた回路により適宜構成することができる。
スイッチング電源装置10は、図1に示すように、複数のスイッチング素子12で構成された第1及び第2アーム14,16を備えている。第1アーム14は、ハイサイド側から順番に直列接続された第1、第2及び第3のスイッチング素子12(1)〜12(3)で成り、ローサイド側の端部がグランド18に接続されている。第2アーム16は、ハイサイド側から順番に直列接続された第4、第5及び第6のスイッチング素子12(4)〜12(6)で成り、ローサイド側の端部がグランド18に接続されている。スイッチング素子12(1)〜12(6)は、例えばNチャネルのMOS型FETが好適である。
第1及び第2のスイッチング素子12(1),12(2)の接続点には、第1の昇圧インダクタ20(1)の一端が接続されている。第1の昇圧インダクタ20(1)の他端は、入力電源22から入力電圧Viが印加される端子であり、この端子とグランド18との間に入力コンデンサ24が接続されている。同様に、第4及び第5のスイッチング素子12(4),12(5)の接続点には、第2の昇圧インダクタ20(2)の一端が接続されている。第2の昇圧インダクタ20(2)の他端は、入力電源22から入力電圧Viが印加される端子であり、入力コンデンサ24の一端に接続されている。第1及び第2の昇圧インダクタ20(1),20(2)は、同一の部品である。
第1アーム14のハイサイド側の端部とグランド18との間には、第1の昇圧コンデンサ26が接続されている。第2アーム14のハイサイド側の端部とグランド18との間にも第2の昇圧コンデンサが接続されるが、ここでは、第2の昇圧コンデンサが第1の昇圧コンデンサ26で兼用されている。
第1及び第2アーム14,16には、入力巻線28と出力巻線30との間で入出力を絶縁するトランス32が接続されている。出力巻線30は中間点を引き出して使用されるので、中間点を挟んで片側を出力巻線30(1)、反対側を出力巻線30(2)と称する。図1の中の各巻線に付したドットは、極性を示している。
入力巻線28は、第2及び第3のスイッチング素子12(2),12(3)の接続点と第5及び第6のスイッチング素子12(5),12(6)の接続点との間に接続され、入力巻線28と直列の位置に、共振用コンデンサ34及び共振用インダクタ36が挿入されている。共振用コンデンサ34及び共振用インダクタ36は、トランス32を通過する電流、すなわち入力巻線28に流入して出力巻線30(1),30(2)から流出する電流の波形を正弦波状にする働きをする。共振用インダクタ36は、トランス32内部のリーケージインダクタンスを利用してもよい。
出力巻線30(1),30(2)には、出力巻線30(1)及び30(2)に発生する電圧を整流平滑して直流の出力電圧Voを生成する整流平滑回路38が接続されている。この整流平滑回路38は、出力巻線30(1)に接続された整流素子40(1)、出力巻線30(2)に接続された整流素子40(2)、及び平滑コンデンサ42で構成されたセンタタップ型の整流平滑回路であり、平滑コンデンサ42の両端に出力電圧Voを生成し、負荷44に向けて出力電圧Vo及び出力電流Ioを供給する。整流素子40(1),40(2)はダイオードでもよいが、ここでは導通損失を小さくするため、導通時の電圧降下が小さいNチャネルのMOS型FETが使用されている。
スイッチング素子12(1)〜12(6)と整流素子40(1),40(2)は、図示しないスイッチング制御回路によって駆動される。スイッチング制御回路は、スイッチング素子12(1)〜12(6)と整流素子40(1),40(2)を所定のスイッチング周期Tswでオン・オフさせ、出力電圧Voが一定の値になるように制御する。
スイッチング制御回路には、次の表1に示すように、第1から第4の動作モードが設定されている。第1の動作モードは、第1のスイッチング素子12(1)をオフ、第2のスイッチング素子12(2)をオン、第3のスイッチング素子12(3)をオン、第4のスイッチング素子12(4)をオン、第5のスイッチング素子12(5)をオン、第6のスイッチング素子12(6)をオフとする動作モードである。第2の動作モードは、第1のスイッチング素子12(1)をオン、第2のスイッチング素子12(2)をオフ、第3のスイッチング素子12(3)をオン、第4のスイッチング素子12(4)をオン、第5のスイッチング素子12(5)をオン、第6のスイッチング素子12(6)をオフとする動作モードである。第3の動作モードは、第1のスイッチング素子12(1)をオン、第2のスイッチング素子12(2)をオン、第3のスイッチング素子12(3)をオフ、第4のスイッチング素子12(4)をオフ、第5のスイッチング素子12(5)をオン、第6のスイッチング素子12(6)をオンとする動作モードである。そして、第4の動作モードは、第1のスイッチング素子12(1)をオン、第2のスイッチング素子12(2)をオン、第3のスイッチング素子12(3)をオフ、第4のスイッチング素子12(4)をオン、第5のスイッチング素子12(5)をオフ、第6のスイッチング素子12(6)をオンとする動作モードである。
スイッチング制御回路は、1つのスイッチング周期Tswの中で、表1の第1から第4の動作モードを順番に実行し、これをスイッチング周期Tsw毎に繰り返す。
なお、このスイッチング制御回路は、各スイッチング素子12(1)〜12(6)をゼロボルトスイッチング(ZVS)させるため、各動作モードを開始する時に、オン・オフのタイミングを若干ずらす制御を行う。具体的には、第1の動作モードを開始する時は、第1及び第6のスイッチング素子12(1),12(6)をオフさせた後、第3及び第5のスイッチング素子12(3),12(5)の両端電圧が一定以下に低下したタイミングで第3及び第5のスイッチング素子12(3),12(5)をオンさせる制御を行う。第2の動作モードを開始する時は、第2のスイッチング素子12(2)をオフさせた後、第1のスイッチング素子12(1)の両端電圧が一定以下に低下したタイミングで第1のスイッチング素子12(1)をオンさせる制御を行う。第3の動作モードを開始する時は、第3及び第4のスイッチング素子12(3),12(4)をオフさせた後、第2及び第6のスイッチング素子12(2),12(6)の両端電圧が一定以下に低下したタイミングで第2及び第6のスイッチング素子12(2),12(6)をオンさせる制御を行う。そして、第4の動作モードを開始する時は、第5のスイッチング素子12(5)をオフさせた後、第4のスイッチング素子12(4)の両端電圧が一定以下に低下したタイミングで第4のスイッチング素子12(4)をオンさせる制御を行う。
その他、各動作モードには、整流素子40(1),40(2)のオン・オフの状態についても設定されており、詳しくは、後の動作説明の中で述べる。
図2は、スイッチング電源装置10の定常時の動作を示すタイムチャートである。期間T11〜T26が1つのスイッチング周期Tswであり、期間T11〜T13が第1の動作モード、期間T14〜T16が第2の動作モード、期間T21〜T23が第3の動作モード、期間T24〜T26が第4の動作モードの期間である。1つのスイッチング周期Tswの中では、期間T11〜T13(第1の動作モード)の長さと期間T21〜T23(第3の動作モード)の長さがほぼ同じで、期間T14〜T16(第3の動作モード)の長さと期間T24〜T26(第4の動作モード)の長さがほぼ同じである。
また図2では、動作波形を見やすくするため、期間T11及びT12、期間T14及びT15、期間T21及びT22、期間T24及びT25を実際よりも長く描いている。しかし、実際は、期間T11及びT12は、第1の動作モードを開始する時の過渡的な短い期間であり、期間T13が実質的な第1の動作モードの期間となる。同様に、期間T14及びT15は、第2の動作モードを開始する時の過渡的な短い期間であり、期間T16が実質的な第2の動作モードの期間となる。同様に、期間T21及びT22は、第3の動作モードを開始する時の過渡的な短い期間であり、期間T23が実質的な第3の動作モードの期間となる。同様に、期間T24及びT25は、第4の動作モードを開始する時の過渡的な短い期間であり、期間T26が実質的な第4の動作モードの期間となる。
図2の中のVg(1)〜Vg(3)は、スイッチング素子12(1)〜12(3)の各ゲート・ソース間電圧の波形であり、ソース側を基準電位にしている。Vd(1),Vd(3)は、スイッチング素子12(1),12(3)の各ドレイン・ソース間電圧の波形であり、ソース側を基準電位にしている。また、I(20(1))は、第1の昇圧インダクタ20(1)の電流波形であり、第1アーム14に向かって流出する方向を正方向としている。
Vg(4)〜Vg(6)は、スイッチング素子12(4)〜12(6)の各ゲート・ソース間電圧の波形であり、ソース側を基準電位にしている。Vd(4),Vd(6)は、スイッチング素子12(4),12(6)の各ドレイン・ソース間電圧の波形であり、ソース側を基準電位にしている。また、I(20(2))は、第2の昇圧インダクタ20(2)の電流波形であり、第2アーム16に向かって流出する方向を正方向としている。
V(28)は、入力巻線28の電圧波形であり、ドットを付していない側を基準電位にしている。I(28)は、入力巻線28の電流波形であり、ドットを付した側に流入する方向を正方向としている。I(40(1)),I(40(2))は、整流素子40(1),40(2)の各電流波形であり、ドレインから流出する方向を正方向としている。Ioは出力電流の波形である。ここでは、負荷44は定電流負荷又は定抵抗負荷であり、出力電流Ioは電流I(40(1)),I(40(2))の平均値となる。
次に、スイッチング電源装置10の動作を、各期間T11〜T26の等価回路(図4〜図15)を用いて説明する。等価回路では、図3(a)に示すように、スイッチング素子12(1)〜12(6)はスイッチの記号で表し、ドレイン・ソース間の寄生ダイオードとドレイン・ソース間の寄生容量も合わせて記載している。また、図3(b)に示すように、整流素子40(1),40(2)はスイッチの記号で表している。
また、図3(c)に示すように、トランス32を、励磁インダクタンスLmと理想トランス32a(入力巻線28a、出力巻線30(1),30(2))で表している。図2に示す電流I(28)の波形は、励磁インダクタンスLmに流れる電流I(Lm)と入力巻線28aの電流I(28a)とを合成したものであり、電流I(28)の波形の中の破線で示した部分(三角波状の部分)が電流I(Lm)で、ハッチングで示した部分(円弧状の部分)が電流I(28a)である。
また、図4〜図15において、上段の等価回路は、入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作を示し、下段の等価回路は、昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作を示している。図中の矢印は主要な電流の流れであり、実際の回路では、上段の等価回路に書いた電流と下段に書いた電流が同時に流れている。
以下、期間T11〜T26の動作を順番に説明する。期間T11の直前の状態、つまり期間T26の状態は、第1のスイッチング素子12(1)がオン、第2のスイッチング素子12(2)がオン、第3のスイッチング素子12(3)がオフ、第4のスイッチング素子12(4)がオン、第5のスイッチング素子12(5)がオフ、第6のスイッチング素子12(6)がオンであり、整流素子40(1)がオン、整流素子40(2)がオフである。
期間T11は、整流素子40(1)の電流I(40(1))がゼロになったタイミングで、第1及び第6のスイッチング素子12(1),12(6)がターンオフし、整流素子40(1)がターンオフすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T26と同じである。
なお、第1及び第6のスイッチング素子12(1),12(6)のターンオフのタイミングは、厳密に一致している必要はない。しかし、グランド18に対するトランス32の電位の振れ幅を小さくして不要なノイズが放射されるのを防ぐため、ターンオフのタイミングは互いに一致していることが好ましい。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図4の下段の等価回路に示すように、スイッチング素子12(1),12(3),12(5),12(6)と整流素子40(1),40(2)がオフなので、第1の昇圧コンデンサ26から負荷44への電力伝送は行われず、出力電流Ioは平滑コンデンサ42から供給される。この期間は、第1の昇圧コンデンサ26から、第1及び第6のスイッチング素子12(1),12(6)の寄生容量を充電する実線矢印の電流が流れ、電圧Vd(1),Vd(6)が+Vcに向かって上昇し、電圧Vd(3),電圧Vd(5)がゼロに向かって低下し、電圧V(28)が正電圧から負電圧に反転する。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図4の上段の等価回路に示すように、第2の昇圧インダクタ20(2)がエネルギーを放出するため、破線矢印の電流I(20(2))が第1の昇圧コンデンサ26に向かって流れる。第1の昇圧インダクタ20(1)は、第1のスイッチング素子12(1)がオフなので、エネルギーを放出する電流I(20(1))は、第1の昇圧コンデンサ26には流れない。期間T11は、電圧Vd(3),Vd(5)がゼロクロスしたタイミングで終了し、次の期間T12に移行する。
期間T12は、電圧Vd(3),電圧Vd(5)がゼロクロスするタイミングで、第3及び第5のスイッチング素子12(3),12(5)の寄生ダイオードが導通し始め、さらに整流素子40(2)がターンオンすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T11と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図5の下段の等価回路に示すように、励磁インダクタンスLmに、期間T11の終了時に流していた電流を流し続けようとする逆起電力が発生し、実線矢印の電流I(Lm)が流れて第3及び第5のスイッチング素子12(3),12(5)の寄生ダイオードが導通し、その結果、入力巻線28a及び励磁インダクタンスLmの両端に-Vcが印加される。そして、整流素子40(2)がオンなので、共振用コンデンサ34から共振用インダクタ36への共振電流が破線矢印の経路にが流れる。この破線矢印の電流は、図2の中の電流I(28a)とI(40(2))の波形に現れている。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図5の上段の等価回路に示すように、第2の昇圧インダクタ20(2)がエネルギーを放出するため、破線矢印の電流I(20(2))が第1の昇圧コンデンサ26に向かって流れる。これは期間T11と同様である。一方、第1の昇圧インダクタ20(1)は、第3のスイッチング素子12(3)の寄生ダイオードが導通することによって両端に入力電圧Viが印加され、実線矢印の電流I(20(1))が流れてエネルギーが蓄積される。期間T12はごく短い時間であり、スイッチング制御回路の動作により、次の期間T13に速やかに移行する。
期間T13は、第3及び第5のスイッチング素子12(3),12(5)がターンオンすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T12と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図6の下段の等価回路に示すように、入力巻線28a及び励磁インダクタンスLmの両端に-Vcが印加され、第1の昇圧コンデンサ26から、励磁インダクタンスLmを励磁する実線矢印の電流I(Lm)が流れる。また、整流素子40(2)がオンなので、第1の昇圧コンデンサ26から破線矢印の電流が流れ、第1の昇圧コンデンサ26から負荷44への電力伝送が行われる。この破線矢印の電流は、図2の中の電流I(28a)とI(40(2))の波形に現れている。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図6の上段の等価回路に示す通りであり、期間T12(図5)を同様の動作が継続される。ただし、図2の中の電流I(20(1))の波形は、期間T13が開始するのとほぼ同時に電流I(20(1))の向きが負方向から正方向に反転しているので、図6の上段の等価回路では、実線矢印の向きを逆にしてある。電流I(20(1))の向きが反転するタイミングは、第1の昇圧インダクタタ20(1)のL値の設定によって前後する。
その他、期間T13で特徴的なのは、第3及び第5のスイッチング素子12(3),12(5)のターンオンが、両端電圧Vd(3),Vd(5)がほぼゼロボルトの時(寄生ダイオードが導通している時)に行われるという点である。このZVS動作により、第3及び第5のスイッチング素子12(3),12(5)のスイッチング損失が非常に小さくなり、スイッチングノイズの発生も大幅に抑えられる。期間T13を終了するタイミングは、出力電圧Voが一定の値になるようにスイッチング制御回路が決定し、次の期間T14に移行する。
期間T14は、第2のスイッチング素子12(2)がターンオフすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T13と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図7の下段の等価回路に示す通りであり、期間T13(図6)と同様の動作が継続される。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図7の上段の等価回路に示すように、第2の昇圧インダクタ20(2)がエネルギーを放出するため、破線矢印の電流I(20(2))が第1の昇圧コンデンサ26に向かって流れる。これは期間T13と同様である。一方、第1の昇圧インダクタ20(1)は、第2のスイッチング素子12(2)がオフなので、エネルギーの蓄積が停止され、エネルギーを放出する実線矢印の電流I(20(1))が流れる。そして、第2のスイッチング素子12(2)の寄生容量が充電され、電圧Vd(2)が+Vcに向かって上昇し、電圧Vd(1)がゼロに向かって低下する。期間T14は、電圧Vd(1)がゼロクロスしたタイミングで終了し、次の期間T15に移行する。
期間T15は、電圧Vd(1)がゼロクロスするタイミングで、第1のスイッチング素子12(1)の寄生ダイオードが導通し始めることによって開始する。各スイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T14と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図8の下段の等価回路に示す通りであり、期間T14(図7)と同様の動作が継続される。ただし、図2の中の電流I(Lm)の波形は、期間T15の途中で電流I(Lm)の向きが正方向から負方向に反転しているので、図8の下段の等価回路では、実線矢印の向きを反転後の向きにしている。電流I(Lm)の向きが反転するタイミングは、励磁インダクタンスLmの設定によって前後する。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図8の上段の等価回路に示すように、第2の昇圧インダクタ20(2)がエネルギーを放出するため、破線矢印の電流I(20(2))が第1の昇圧コンデンサ26に向かって流れる。これは期間T14と同様である。ただし、図2の中の電流I(20(2))の波形では、期間T15の途中で電流の向きが正方向から負方向に反転しているので、図8の上段の等価回路では、破線矢印の向きを反転後の向きにしている。一方、第1の昇圧インダクタ20(1)は、第1のスイッチング素子12(1)の寄生ダイオードが導通するので、エネルギーを放出する電流I(20(1))の経路が実線矢印のように変化し、第1の昇圧コンデンサ26に向かって流れる。期間T15はごく短い時間であり、スイッチング制御回路の動作により、次の期間T16に速やかに移行する。
期間T16は、第1のスイッチング素子12(1)がターンオンすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T15と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図9の下段の等価回路に示す通りであり、期間T15(図8)と同様の動作が継続される。入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図9の上段の等価回路に示す通りであり、期間T15(図8)と同様の動作が継続される。
その他、期間T16で特徴的なのは、第1のスイッチング素子12(1)のターンオンが、両端電圧Vd(1)がほぼゼロボルトの時(寄生ダイオードが導通している時)に行われるという点である。このZVS動作により、第1のスイッチング素子12(1)のスイッチング損失が非常に小さくなり、スイッチングノイズの発生も大幅に抑えられる。期間T16は、整流素子40(2)の電流I(40(2))がゼロになったタイミングで終了し、次の期間T21に移行する。
期間T21は、整流素子40(2)の電流I(40(2))がゼロになったタイミングで、第3及び第4のスイッチング素子12(3),12(4)がターンオフし、整流素子40(2)がターンオフすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T16と同じである。
なお、第3及び第4のスイッチング素子12(3),12(4)のターンオフのタイミングは、厳密に一致している必要はない。しかし、グランド18に対するトランス32の電位の振れ幅を小さくして不要なノイズが放射されるのを防ぐため、ターンオフのタイミングは互いに一致していることが好ましい。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図10の下段の等価回路に示すように、スイッチング素子12(2),12(3),12(4),12(6)と整流素子40(1),40(2)がオフなので、第1の昇圧コンデンサ26から負荷44への電力伝送は行われず、出力電流Ioは平滑コンデンサ42から供給される。この期間は、第1の昇圧コンデンサ26から、第3及び第4のスイッチング素子12(3),12(4)の寄生容量を充電する実線矢印の電流が流れ、電圧Vd(3),Vd(4)が+Vcに向かって上昇し、電圧Vd(2),電圧Vd(6)がゼロに向かって低下し、電圧V(28)が負電圧から正電圧に反転する。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図10の上段の等価回路に示すように、第1の昇圧インダクタ20(1)がエネルギーを放出するため、実線矢印の電流I(20(1))が第1の昇圧コンデンサ26に向かって流れる。第2の昇圧インダクタ20(2)は、第4のスイッチング素子12(4)がオフなので、エネルギーを放出する電流I(20(2))は、第1の昇圧コンデンサ26には流れない。期間T21は、電圧Vd(2),Vd(6)がゼロクロスしたタイミングで終了し、次の期間T22に移行する。
期間T22は、電圧Vd(2),電圧Vd(6)がゼロクロスするタイミングで、第2及び第6のスイッチング素子12(2),12(6)の寄生ダイオードが導通し始め、さらに整流素子40(1)がターンオンすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T21と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図11の下段の等価回路に示すように、励磁インダクタンスLmに、期間T21の終了時に流していた電流を流し続けようとする逆起電力が発生し、実線矢印の電流I(Lm)が流れて第2及び第6のスイッチング素子12(2),12(6)の寄生ダイオードが導通し、その結果、入力巻線28a及び励磁インダクタンスLmの両端に+Vcが印加される。そして、整流素子40(1)がオンなので、共振用コンデンサ34から共振用インダクタ36への共振電流が破線矢印の経路に流れる。この破線矢印の電流は、図2の中の電流I(28a)とI(40(1))の波形に現れている。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図11の上段の等価回路に示すように、第1の昇圧インダクタ20(1)がエネルギーを放出するため、実線矢印の電流I(20(1))が第1の昇圧コンデンサ26に向かって流れる。これは期間T21と同様である。一方、第2の昇圧インダクタ20(2)は、第6のスイッチング素子12(6)の寄生ダイオードが導通することによって両端に入力電圧Viが印加され、破線矢印の電流I(20(2))が流れてエネルギーが蓄積される。期間T22はごく短い時間であり、スイッチング制御回路の動作により、次の期間T23に速やかに移行する。
期間T23は、第2及び第6のスイッチング素子12(2),12(6)がターンオンすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T22と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図12の下段の等価回路に示すように、入力巻線28a及び励磁インダクタンスLmの両端に+Vcが印加され、第1の昇圧コンデンサ26から、励磁インダクタンスLmを励磁する実線矢印の電流I(Lm)が流れる。また、整流素子40(1)がオンなので、第1の昇圧コンデンサ26から破線矢印の電流が流れ、第1の昇圧コンデンサ26から負荷44への電力伝送が行われる。この破線矢印の電流は、図2の中の電流I(28a)とI(40(1))の波形に現れている。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図12の上段の等価回路に示す通りであり、期間T22(図11)を同様の動作が継続される。ただし、図2の中の電流I(20(2))の波形は、期間T23が開始するのとほぼ同時に電流I(20(2))の向きが負方向から正方向に反転しているので、図12の上段の等価回路では、破線矢印の向きを逆にしてある。電流I(20(2))の向きが反転するタイミングは、第2の昇圧インダクタタ20(2)のL値の設定によって前後する。
その他、期間T23で特徴的なのは、第2及び第6のスイッチング素子12(2),12(6)のターンオンが、両端電圧Vd(2),Vd(6)がほぼゼロボルトの時(寄生ダイオードが導通している時)に行われるという点である。このZVS動作により、第2及び第6のスイッチング素子12(2),12(6)のスイッチング損失が非常に小さくなり、スイッチングノイズの発生も大幅に抑えられる。期間T23を終了するタイミングは、出力電圧Voが一定の値になるようにスイッチング制御回路が決定し、次の期間T24に移行する。
期間T24は、第5のスイッチング素子12(5)がターンオフすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T23と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図13の下段の等価回路に示す通りであり、期間T23(図12)と同様の動作が継続される。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図13の上段の等価回路に示すように、第1の昇圧インダクタ20(1)がエネルギーを放出するため、実線矢印の電流I(20(1))が第1の昇圧コンデンサ26に向かって流れる。これは期間T23と同様である。一方、第2の昇圧インダクタ20(2)は、第5のスイッチング素子12(5)がオフなので、エネルギーの蓄積が停止され、エネルギーを放出する破線矢印の電流I(20(2))が流れる。そして、第5のスイッチング素子12(5)の寄生容量が充電され、電圧Vd(5)が+Vcに向かって上昇し、電圧Vd(4)がゼロに向かって低下する。期間T24は、電圧Vd(4)がゼロクロスしたタイミングで終了し、次の期間T25に移行する。
期間T25は、電圧Vd(4)がゼロクロスするタイミングで、第4のスイッチング素子12(4)の寄生ダイオードが導通し始めることによって開始する。各スイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T24と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図14の下段の等価回路に示す通りであり、期間T24(図13)と同様の動作が継続される。ただし、図2の中の電流I(Lm)の波形は、期間T25の途中で電流I(Lm)の向きが負方向から正方向に反転しているので、図14の下段の等価回路では、実線矢印の向きを反転後の向きにしている。電流I(Lm)の向きが反転するタイミングは、励磁インダクタンスLmの設定によって前後する。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図14の上段の等価回路に示すように、第1の昇圧インダクタ20(1)がエネルギーを放出するため、実線矢印の電流I(20(1))が第1の昇圧コンデンサ26に向かって流れる。これは期間T24と同様である。ただし、図2の中の電流I(20(1))の波形では、期間T25の途中で電流の向きが正方向から負方向に反転しているので、図14の上段の等価回路では、実線矢印の向きを反転後の向きにしている。一方、第2の昇圧インダクタ20(2)は、第4のスイッチング素子12(4)の寄生ダイオードが導通するので、エネルギーを放出する電流I(20(2))の経路が破線矢印のように変化し、第1の昇圧コンデンサ26に向かって流れる。期間T25はごく短い時間であり、スイッチング制御回路の動作により、次の期間T26に速やかに移行する。
期間T26は、第4のスイッチング素子12(4)がターンオンすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T25と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図15の下段の等価回路に示す通りであり、期間T25(図14)と同様の動作が継続される。入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図15の上段の等価回路に示す通りであり、期間T25(図14)と同様の動作が継続される。
その他、期間T26で特徴的なのは、第4のスイッチング素子12(4)のターンオンが、両端電圧Vd(4)がほぼゼロボルトの時(寄生ダイオードが導通している時)に行われるという点である。このZVS動作により、第4のスイッチング素子12(4)のスイッチング損失が非常に小さくなり、スイッチングノイズの発生も大幅に抑えられる。期間T26は、整流素子40(1)の電流I(40(1))がゼロになったタイミングで終了し、次の期間T11に移行する。
このように、スイッチング電源装置10は、1つのスイッチング周期Tswの中で、第1の動作モード(期間T11〜T13)、第2の動作モード(期間T14〜T16)、第3の動作モード(期間T21〜T23)、第4の動作モード(期間T24〜T26)を順番に実行し、これをスイッチング周期Tsw毎に繰り返す。
次に、スイッチング制御回路が行う出力電圧Voの制御方法の一例を説明する。ここでは、説明を簡単にするため、各期間の長さについて「T13>>T11,T12」、「T16>>T14,T15」、「T23>>T21,T22」、「T26>>T24,T25」と仮定すると、各動作モードにおける第1及び第2の昇圧インダクタ20(1),20(2)の状態、及び入力巻線28の状態は、表2のように整理することができる。定常時の各期間の長さは、T13≒T23かつT16≒T26となる。
表2に示す第1及び第2の昇圧インダクタ20(1),20(2)の状態の変化から、昇圧比Vc/Viは、時比率T13/TswとT23/Tswを高くすれば高くなり、低くすれば低くなることが分かる。これは、通常の昇圧チョッパと同じ原理である。また、入力巻線28の状態の変化から、変圧比Vo/Vcはほぼ一定に固定されることが分かる。これは、通常の共振型フルブリッジコンバータと同じ原理である。
したがって、スイッチング制御回路は、例えば入力電圧Viが固定された状態で、出力電流Ioが増加した場合は、共振条件を調整するためにスイッチング周期Tswを長くし、昇圧比Vc/Viが変化しないように、期間T13とT23をスイッチング周期Tswと同じ比率で長くする。これによって、出力電圧Voを一定の値に制御することができる。
また、例えば出力電流Ioが固定された状態で入力電圧Viが高くなった場合は、スイッチング周期Tswを一定に保持しつつ、入力電圧Viが高くなった分だけ昇圧比Vc/Viを低くするため、期間T13,T23を短くして期間T16,T26を長くする。これによって、出力電圧Voを一定の値に制御することができる。
以上説明したように、スイッチング電源装置10及びその制御方法によれば、特許文献1(図2)の直流電源装置よりも少ない数のスイッチング素子で、ほぼ同様の機能を実現することができる。また、すべてのスイッチング素子12(1)〜12(6)を容易にZVS動作せることができ、高効率化及び低ノイズ化を図ることができる。
また、スイッチング電源装置10は、特許文献2のコンバータよりもスイッチング素子の数が1つ多いが、インターリーブ動作(電流I(20(1))とI(20(2))の位相がずれる動作)によって第1の昇圧コンデンサ26のリップル電流が小さくなり、第1の昇圧コンデンサ26を小型化することができる。また、昇圧比Vc/Viは変圧比Vo/Vcと関係なく調節できるのでき、トランスの利用効率を高くしたまま昇圧比Vc/Viを高くすることができる。したがって、電源装置の電力損失を大きく低下させることなく昇圧比Vc/Viの可変幅を広くすることができ、入力電圧Viの範囲が広い電源装置にも適用しやすいものである。
その他、スイッチング電源装置10は、変形例のスイッチング電源装置46のように、構成の一部を変更することにより、力率改善機能を付与することができる。スイッチング電源装置46は、図16に示すように、スイッチング電源装置10の入力段に、入力電源48から供給された交流電圧Veを整流する整流回路50を設けたものであり、第1及び第2の昇圧インダクタ20(1),20(2)の一端に入力される電圧(入力電圧Vi)が、正弦波を全波整流した波形になるという特徴がある。そして、図示しないスイッチング制御回路が、出力電圧Voを一定の値に制御するとともに、入力電流Iiの波形を入力電圧Viの波形に近づけて力率を改善する制御を並行して行う。スイッチング電源装置46によれば、スイッチング電源装置10と同様の効果を得ることができ、さらに力率改善機能を備えた電源装置を容易に構成することができる。
次に、本発明のスイッチング電源装置及びその制御方法の第二の実施形態について、図17〜図21に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のスイッチング電源装置52は、一定の出力電圧Voを出力する装置であり、直流の入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成し、この昇圧電圧Vcをさらに変圧することによって出力電圧Voを生成する。回路構成は、概して言うと、昇圧チョッパ(2台)と非共振型のフルブリッジコンバータ(1台)を複合させた独特な構成になっている。また、この実施形態の制御方法は、スイッチング電源装置52のスイッチング制御回路により実行される。
スイッチング電源装置52は、上記のスイッチング電源装置10と構成が類似しており、異なるのは、共振用コンデンサ34及び共振用インダクタ36が省略されている点と、整流平滑回路38に平滑インダクタ54が追加され、整流後の電圧を平滑する部分が、平滑インダクタ54と平滑コンデンサ42とで成るローパスフィルタで構成されている点である。
図18は、スイッチング電源装置52の定常時の動作を示すタイムチャートである。図18の中のI(54)は、平滑インダクタ54の電流波形であり、平滑コンデンサ42側の一端から流出する方向を正方向としている。ここでも、負荷44は定電流負荷又は定抵抗負荷であり、出力電流Ioは三角波状に連続している電流I(54)の平均値となる。
スイッチング電源装置52は、上記のスイッチング電源装置10と同様に、表1に示す4つの動作モードを有し、1つのスイッチング周期Tswの中で、第1の動作モード(期間T11〜T13)、第2の動作モード(期間T14〜T16)、第3の動作モード(期間T21〜T23)、第4の動作モード(期間T24〜T26)、を順番に実行し、これをスイッチング周期Tsw毎に繰り返す。
スイッチング電源装置52は非共振型のコンバータなので、トランス32の電流I(28)は正弦波状にならないが、各スイッチング素子12(1)〜12(6)のZVS動作は同様に行われる。
また、整流素子40(1),40(2)の動作が期間T11とT21において少し異なる。期間T11では、図19の下段の等価回路に示すように、整流素子40(1),40(2)がオンの状態になり、平滑インダクタ54がエネルギーを放出する電流が出力巻線30(1),30(2)に流れる(実線矢印の電流)。同様に、期間T21でも、図21の下段の等価回路に示すように、整流素子40(1),40(2)がオンの状態になり、平滑インダクタ54がエネルギーを放出する電流が出力巻線30(1),30(2)に流れる(実線矢印の電流)。
各動作モードにおける第1及び第2の昇圧インダクタ20(1),20(2)の状態、及び入力巻線28の状態は、上記のスイッチング電源装置10と同様に、表2のように整理することができる。したがって、スイッチング電源装置52の場合も同様に、昇圧比Vc/Viは、時比率T13/TswとT23/Tswを高くすれば高くなり、低くすれば低くなる。これは、通常の昇圧チョッパと原理は同じである。また、変圧比Vo/Vcはほぼ一定に固定されることになる。これは、通常の非共振型フルブリッジコンバータと原理は同じである。
スイッチング電源装置52は非共振型なので、スイッチング制御回路は、入力電圧Viが固定された状態で出力電流Ioが増加した場合には、各期間の長さをそのまま保持することによって昇圧比Vc/Viが変化しないようにする。これは、共振条件を調整する必要がないからであり、出力電圧Voを容易に制御することができる。出力電流Ioが固定された状態で入力電圧Viが高くなった場合は、スイッチング電源装置10と同様に、入力電圧Viが高くなった分だけ昇圧比Vc/Viを低くするため、期間T13,T23を長くして期間T16,T26を短くする。これによって、出力電圧Voを一定の値に制御することができる。
以上説明したように、スイッチング電源装置56及びその制御方法によれば、上記のスイッチング電源装置10と同様の効果を得ることができ、さらにスイッチング制御回路による制御が容易になる。また、スイッチング電源装置52は、変形例のスイッチング電源装置56のように、構成の一部を変更することにより、力率改善機能を付与することができる。スイッチング電源装置56は、図21示すように、スイッチング電源装置52の入力段に、入力電源48から供給された交流電圧Veを整流する整流回路50を設けたものであり、第1及び第2の昇圧インダクタ20(1),20(2)の一端に入力される電圧(入力電圧Vi)が、正弦波を全波整流した波形になるという特徴がある。そして、図示しないスイッチング制御回路が、出力電圧Voを一定の値に制御するとともに、入力電流Iiの波形を入力電圧Viの波形に近づけて力率を改善する制御を並行して行う。スイッチング電源装置56によれば、スイッチング電源装置52と同様の効果を得ることができ、さらに力率改善機能を備えた電源装置を容易に構成することができる。
次に、本発明のスイッチング電源装置及びその制御方法の第三の実施形態について、図22〜図33に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。この実施形態のスイッチング電源装置58は、一定の出力電圧Voを出力する装置であり、直流の入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成し、この昇圧電圧Vcをさらに変圧することによって出力電圧Voを生成する。回路構成は、概して言うと、昇圧チョッパ(1台)と共振型のハーフブリッジコンバータ(1台)を複合させた独特な構成になっている。また、この実施形態の制御方法は、スイッチング電源装置58のスイッチング制御回路により実行される。
スイッチング電源装置58は、図22に示すように、複数のスイッチング素子12で構成された第1アーム14を備えている。第1アーム14は、ハイサイド側から順番に直列接続された第1、第2及び第3のスイッチング素子12(1)〜12(3)で成り、ローサイド側の端部がグランド18に接続されている。スイッチング素子12(1)〜12(3)は、例えばNチャネルのMOS型FETが好適である。
第1及び第2のスイッチング素子12(1),12(2)の接続点には、第1の昇圧インダクタ20(1)の一端が接続されている。第1の昇圧インダクタ20(1)の他端は、入力電源22から入力電圧Viが印加される端子であり、この端子とグランド18との間に入力コンデンサ24が接続されている。同様に、第4及び第5のスイッチング素子12(4),12(5)の接続点には、第2の昇圧インダクタ20(2)の一端が接続されている。
第1アーム14のハイサイド側の端部とグランド18との間には、第1の昇圧コンデンサ26が接続されている。第1の昇圧コンデンサ26は、同じ静電容量を有した2つの昇圧コンデンサ26(1),26(2)を直列接続したものであり、その接続点に昇圧電圧Vcのほぼ半分の電圧Vc/2を発生させるバイアス回路としても動作する。
第1アーム14には、入力巻線28と出力巻線30とで入出力を絶縁するトランス32が接続されている。出力巻線30は中間点を引き出して使用されるので、中間点を挟んで片側を出力巻線30(1)、反対側を出力巻線30(2)と称する。図22の中の各巻線に付したドットは、極性を示している。
入力巻線28は、第2及び第3のスイッチング素子12(2),12(3)の接続点と昇圧コンデンサ26(1),26(2)の接続点との間に接続され、ドットを付していない側の一端がバイアス回路の+Vc/2でバイアスされる。そして、入力巻線28と直列の位置に、共振用コンデンサ34及び共振用インダクタ36が挿入されている。共振用コンデンサ34及び共振用インダクタ36は、トランス32に流れる電流波形を正弦波状にする働きをする。共振用インダクタ36は、トランス32内部のリーケージインダクタンスを利用してもよい。
出力巻線30(1),30(2)には、出力巻線30(1)及び30(2)に発生する電圧を整流平滑して直流の出力電圧Voを生成する整流平滑回路38が接続されている。この整流平滑回路38は、スイッチング電源装置10の整流平滑回路38と同様の構成である。
スイッチング素子12(1)〜12(3)と整流素子40(1),40(2)は、図示しないスイッチング制御回路によって駆動される。スイッチング制御回路は、スイッチング素子12(1)〜12(3)と整流素子40(1),40(2)を所定のスイッチング周期Tswでオン・オフさせ、出力電圧Voが一定の値になるように制御する。
スイッチング制御回路には、次の表3に示すように、第1から第3の動作モードが設定されている。第1の動作モードは、第1のスイッチング素子12(1)をオフ、第2のスイッチング素子12(2)をオン、第3のスイッチング素子12(3)をオンとする動作モードである。第2の動作モードは、第1のスイッチング素子12(1)をオン、第2のスイッチング素子12(2)をオフ、第3のスイッチング素子12(3)をオンとする動作モードである。そして、第3の動作モードは、第1のスイッチング素子12(1)をオン、第2のスイッチング素子12(2)をオン、第3のスイッチング素子12(3)をオフとする動作モードである。
スイッチング制御回路は、1つのスイッチング周期Tswの中で、表3の前記第1から第3の動作モードを順番に実行し、これをスイッチング周期Tsw毎に繰り返す。
なお、このスイッチング制御回路は、各スイッチング素子12(1)〜12(3)をゼロボルトスイッチング(ZVS)させるため、各動作モードを開始する時に、オン・オフのタイミングを若干ずらす制御を行う。具体的には、第1の動作モードを開始する時は、第1のスイッチング素子12(1)をオフさせた後、第3のスイッチング素子12(3)の両端電圧が一定以下に低下したタイミングで第3のスイッチング素子12(3)をオンさせる制御を行う。第2の動作モードを開始する時は、第2のスイッチング素子12(2)をオフさせた後、第1のスイッチング素子12(1)の両端電圧が一定以下に低下したタイミングで第1のスイッチング素子12(1)をオンさせる制御を行う。そして、第3の動作モードを開始する時は、第3のスイッチング素子12(3)をオフさせた後、第2のスイッチング素子12(2)の両端電圧が一定以下に低下したタイミングで第2のスイッチング素子12(2)をオンさせる制御を行う。
その他、各動作モードには、整流素子40(1),40(2)のオン・オフの状態についても設定されており、詳しくは、後の動作説明の中で述べる。
図23は、スイッチング電源装置58の定常時の動作を示すタイムチャートである。期間T51〜T63が1つのスイッチング周期Tswであり、期間T51〜T53が第1の動作モード、期間T54〜T56が第2の動作モード、期間T61〜T63が第3の動作モードの期間である。1つのスイッチング周期Tswの中では、期間T51〜T53(第1の動作モード)及び期間T54〜T56(第2の動作モード)の合計長さと期間T61〜T63(第3の動作モード)の長さとがほぼ同じである。
また図23では、動作波形を見やすくするため、期間T51及びT52、期間T54及びT55、期間T61及びT62を実際よりも長く描いている。しかし、実際は、期間T51及びT52は、第1の動作モードを開始する時の過渡的な短い期間であり、期間T53が実質的な第1の動作モードの期間となる。同様に、期間T54及びT55は、第2の動作モードを開始する時の過渡的な短い期間であり、期間T56が実質的な第2の動作モードの期間となる。同様に、期間T61及びT62は、第3の動作モードを開始する時の過渡的な短い期間であり、期間T63が実質的な第3の動作モードの期間となる。
図23の中のVg(1)〜Vg(3)は、スイッチング素子12(1)〜12(3)の各ゲート・ソース間電圧の波形であり、ソース側を基準電位にしている。また、I(20(1))は、第1の昇圧インダクタ20(1)の電流波形であり、第1アーム14に向かって流出する方向を正方向としている。V(28)は、入力巻線28の電圧波形であり、ドットを付していない側を基準電位にしている。I(28)は、入力巻線28の電流波形であり、ドットを付した側に流入する方向を正方向としている。I(40(1)),I(40(2))は、整流素子40(1),40(2)の各電流波形であり、ドレインから流出する方向を正方向としている。Ioは出力電流の波形である。ここでは、負荷44は定電流負荷又は定抵抗負荷であり、出力電流Ioは電流I(40(1)),I(40(2))の平均値となる。
次に、スイッチング電源装置58の動作を、各期間T51〜T63の等価回路(図24〜図32)を用いて説明する。等価回路では、図3(a)に示すように、スイッチング素子12(1)〜12(6)はスイッチの記号で表し、ドレイン・ソース間の寄生ダイオードとドレイン・ソース間の寄生容量も合わせて記載している。また、図3(b)に示すように、整流素子40(1),40(2)はスイッチの記号で表している。
また、図3(c)に示すように、トランス32を、励磁インダクタンスLmと理想トランス32a(入力巻線28a、出力巻線30(1),30(2))で表している。図23に示す電流I(28)の波形は、励磁インダクタンスLmに流れる電流I(Lm)と入力巻線28aの電流I(28a)とを合成したものであり、電流I(28)の波形の中の破線で示した部分(三角波状の部分)が電流I(Lm)で、ハッチングで示した部分(円弧状の部分)が電流I(28a)である。
また、図24〜図32において、上段の等価回路は、入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作を示し、下段の等価回路は、昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作を示している。図中の矢印は主要な電流の流れであり、実際の回路では、上段の等価回路に書いた電流と下段に書いた電流が同時に流れている。
以下、期間T51〜T63の動作を順番に説明する。期間T51の直前の状態、つまり期間T63の状態は、第1のスイッチング素子12(1)がオン、第2のスイッチング素子12(2)がオン、第3のスイッチング素子12(3)がオフであり、整流素子40(1)がオン、整流素子40(2)がオフである。
期間T51は、整流素子40(1)の電流I(40(1))がゼロになったタイミングで、第1のスイッチング素子12(1)がターンオフし、整流素子40(1)がターンオフすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T63と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図24の下段の等価回路に示すように、スイッチング素子12(1),12(3)と整流素子40(1)、40(2)がオフなので、昇圧コンデンサ26(1),26(2)から負荷44への電力伝送は行われず、出力電流Ioは平滑コンデンサ42から供給される。この期間は、昇圧コンデンサ26(1)から、第1のスイッチング素子12(1)の寄生容量を充電する実線矢印の電流が流れ、電圧Vd(1)が+Vcに向かって上昇し、電圧Vd(3)がゼロに向かって低下し、電圧V(28)が正電圧から負電圧に反転する。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は停止する。つまり、図24の上段の等価回路に示すように、第1の昇圧インダクタ20(1)はエネルギーを放出する電流I(20(1))は流すが、第1のスイッチング素子12(1)がオフなので、昇圧コンデンサ26(1),26(2)には流れない。期間T51は、電圧Vd(3)がゼロクロスしたタイミングで終了し、次の期間T52に移行する。
期間T52は、電圧Vd(3)がゼロクロスするタイミングで、第3のスイッチング素子12(3)の寄生ダイオードが導通し始め、さらに整流素子40(2)がターンオンすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T51と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図25の下段の等価回路に示すように、励磁インダクタンスLmに、期間T51の終了時に流していた電流を流し続けようとする逆起電力が発生し、実線矢印の電流I(Lm)が流れて第3のスイッチング素子12(3)の寄生ダイオードが導通し、その結果、入力巻線28a及び励磁インダクタンスLmの両端に-Vc/2が印加される。そして、整流素子40(2)がオンなので、共振用コンデンサ34から共振用インダクタ36への共振電流が破線矢印の経路に流れる。この破線矢印の電流は、図23の中の電流I(28a)とI(40(2))の波形に現れている。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図25の上段の等価回路に示すように、第3のスイッチング素子12(3)の寄生ダイオードが導通することによって第1の昇圧インダクタ20(1)の両端に入力電圧Viが印加され、実線矢印の電流I(20(1))が流れてエネルギーが蓄積される。期間T52はごく短い時間であり、スイッチング制御回路の動作により、次の期間T53に速やかに移行する。
期間T53は、第3のスイッチング素子12(3)がターンオンすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T52と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図26の下段の等価回路に示すように、入力巻線28a及び励磁インダクタンスLmの両端に-Vc/2が印加され、昇圧コンデンサ26(2)から、励磁インダクタンスLmを励磁する実線矢印の電流I(Lm)が流れる。また、整流素子40(2)がオンなので、昇圧コンデンサ26(2)から破線矢印の電流が流れ、昇圧コンデンサ26(2)から負荷44への電力伝送が行われる。この破線矢印の電流は、図23の中の電流I(28a)とI(40(2))の波形に現れている。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図26の上段の等価回路に示す通りであり、期間T52(図25)と同様の動作が継続される。ただし、図23の中の電流I(20(1))の波形は、期間T53が開始するのとほぼ同時に電流I(20(1))の向きが負方向から正方向に反転しているので、図26の上段の等価回路では、実線矢印の向きを逆にしてある。電流I(20(1))の向きが反転するタイミングは、第1の昇圧インダクタタ20(1)のL値の設定によって前後する。
その他、期間T53で特徴的なのは、第3のスイッチング素子12(3)のターンオンが、両端電圧Vd(3)がほぼゼロボルトの時(寄生ダイオードが導通している時)に行われるという点である。このZVS動作により、第3のスイッチング素子12(3)のスイッチング損失が非常に小さくなり、スイッチングノイズの発生も大幅に抑えられる。期間T53を終了するタイミングは、出力電圧Voが一定の値になるようにスイッチング制御回路が決定し、次の期間T54に移行する。
期間T54は、第2のスイッチング素子12(2)がターンオフすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T53と同じである。昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図27の下段の等価回路に示す通りであり、期間T53(図26)と同様の動作が継続される。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図27の上段の等価回路に示すように、第2のスイッチング素子12(2)がオフなので、第1の昇圧インダクタ20(1)へのエネルギーの蓄積が停止され、エネルギーを放出する実線矢印の電流I(20(1))が流れる。そして、第2のスイッチング素子12(2)の寄生容量が充電され、電圧Vd(2)が+Vcに向かって上昇し、電圧Vd(1)がゼロに向かって低下する。期間T54は、電圧Vd(1)がゼロクロスしたタイミングで終了し、次の期間T55に移行する。
期間T55は、電圧Vd(1)がゼロクロスするタイミングで、第1のスイッチング素子12(1)の寄生ダイオードが導通し始めることによって開始する。各スイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T54と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図28の下段の等価回路に示す通りであり、期間T54(図27)と同様の動作が継続される。ただし、図23の中の電流I(Lm)の波形は、期間T55の途中で電流I(Lm)の向きが正方向から負方向に反転しているので、図28の下段の等価回路では、実線矢印の向きを反転後の向きにしている。電流I(Lm)の向きが反転するタイミングは、励磁インダクタンスLmの設定によって前後する。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図28の上段の等価回路に示すように、第1のスイッチング素子12(1)の寄生ダイオードが導通するので、第1の昇圧インダクタ20(1)がエネルギーを放出する電流I(20(1))の経路が実線矢印のように変化し、昇圧コンデンサ26(1),26(2)に向かって流れる。期間T55はごく短い時間であり、スイッチング制御回路の動作により、次の期間T56に速やかに移行する。
期間T56は、第1のスイッチング素子12(1)がターンオンすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T55と同じである。昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図29の下段の等価回路に示す通りであり、期間T55(図28)と同様の動作が継続される。入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図29の上段の等価回路に示す通りであり、期間T55(図28)と同様の動作が継続される。
その他、期間T56で特徴的なのは、第1のスイッチング素子12(1)のターンオンが、両端電圧Vd(1)がほぼゼロボルトの時(寄生ダイオードが導通している時)に行われるという点である。このZVS動作により、第1のスイッチング素子12(1)のスイッチング損失が非常に小さくなり、スイッチングノイズの発生も大幅に抑えられる。期間T56は、整流素子40(2)の電流I(40(2))がゼロになったタイミングで終了し、次の期間T61に移行する。
期間T61は、整流素子40(2)の電流I(40(2))がゼロになったタイミングで、第3のスイッチング素子12(3)がターンオフし、整流素子40(2)がターンオフすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T56と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図30の下段の等価回路に示すように、スイッチング素子12(2),12(3)と整流素子40(1),40(2)がオフなので、昇圧コンデンサ26(1),26(2)から負荷44への電力伝送は行われず、出力電流Ioは平滑コンデンサ42から供給される。この期間は、昇圧コンデンサ26(2)から、第3のスイッチング素子12(3)の寄生容量を充電する実線矢印の電流が流れ、電圧Vd(3)が+Vcに向かって上昇し、電圧Vd(2)がゼロに向かって低下し、電圧V(28)が負電圧から正電圧に反転する。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図30の上段の等価回路に示すように、第1の昇圧インダクタ20(1)がエネルギーを放出するため、実線矢印の電流I(20(1))が昇圧コンデンサ26(1),26(2)に向かって流れる。期間T61は、電圧Vd(2)がゼロクロスしたタイミングで終了し、次の期間T62に移行する。
期間T62は、電圧Vd(2)がゼロクロスするタイミングで、第2のスイッチング素子12(2)の寄生ダイオードが導通し始め、さらに整流素子40(1)がターンオンすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T61と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図31の下段の等価回路に示すように、励磁インダクタンスLmに、期間T21の終了時に流していた電流を流し続けようとする逆起電力が発生し、実線矢印の電流I(Lm)が流れて第2及び第6のスイッチング素子12(2),12(6)の寄生ダイオードが導通し、その結果、入力巻線28a及び励磁インダクタンスLmの両端に+Vcが印加される。そして、整流素子40(1)がオンなので、共振用コンデンサ34から共振用インダクタ36への共振電流が破線矢印の経路に流れる。この破線矢印の電流は、図2の中の電流I(28a)とI(40(1))の波形に現れている。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図11の上段の等価回路に示すように、第1の昇圧インダクタ20(1)がエネルギーを放出するため、実線矢印の電流I(20(1))が第1の昇圧コンデンサ26に向かって流れる。これは期間T61と同様である。期間T62はごく短い時間であり、スイッチング制御回路の動作により、次の期間T63に速やかに移行する。
期間T63は、第2スイッチング素子12(2)がターンオンすることによって開始する。その他のスイッチング素子及び整流素子のオン・オフの状態は、前の期間T62と同じである。
昇圧電圧Vcから出力電圧Voを生成する動作は、図32の下段の等価回路に示すように、入力巻線28a及び励磁インダクタンスLmの両端に+Vc/2が印加され、昇圧コンデンサ26(1)から、励磁インダクタンスLmを励磁する実線矢印の電流I(Lm)が流れる。この電流I(Lm)の向きは、期間T63の途中で負方向から正方向に反転する。また、整流素子40(1)がオンなので、昇圧コンデンサ26(1)から破線矢印の電流が流れ、昇圧コンデンサ26(1)から負荷44への電力伝送が行われる。この破線矢印の電流は、図23の中の電流I(28a)とI(40(1))の波形に現れている。
入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成する動作は、図32の上段の等価回路に示す通りであり、期間T62(図31)と同様の動作が継続される。この電流I(Lm)の向きは、期間T63の途中で正方向から負方向に反転する。
その他、期間T63で特徴的なのは、第2のスイッチング素子12(2)のターンオンが、両端電圧Vd(2)がほぼゼロボルトの時(寄生ダイオードが導通している時)に行われるという点である。このZVS動作により、第2のスイッチング素子12(2)のスイッチング損失が非常に小さくなり、スイッチングノイズの発生も大幅に抑えられる。期間T62は、整流素子40(1)の電流I(40(1))がゼロになったタイミングで終了し、次の期間T51に移行する。
このように、スイッチング電源装置58は、1つのスイッチング周期Tswの中で、第1の動作モード(期間T51〜T53)、第2の動作モード(期間T54〜T56)、第3の動作モード(期間T61〜T63)を順番に実行し、これをスイッチング周期Tsw毎に繰り返す。
次に、スイッチング制御回路が行う出力電圧Voの制御方法の一例を説明する。ここでは、説明を簡単にするため、各期間の長さについて、「T53>>T51,T52」、「T56>>T54,T55」、「T63>>T61,T62」と仮定すると、各動作モードにおける第1の昇圧インダクタ20(1)と入力巻線28の状態は、上記の表3のように整理することができる。定常時の各期間の長さは、T53+T56≒T63となる。
表3に示す第1の昇圧インダクタ20(1)の状態の変化から、昇圧比Vc/Viは、時比率T53/Tswを高くすれば高くなり、低くすれば低くなることが分かる。これは、通常の昇圧チョッパと同じ原理である。また、入力巻線28の状態の変化から、変圧比Vo/Vcはほぼ一定に固定されることが分かる。これは、通常の共振型ハーフブリッジコンバータと同じ原理である。
したがって、スイッチング制御回路は、例えば入力電圧Viが固定された状態で、出力電流Ioが増加した場合は、共振条件を調整するためにスイッチング周期Tswを長くし、昇圧比Vc/Viが変化しないように、期間T53をスイッチング周期Tswと同じ比率で長くする。これによって、出力電圧Voを一定の値に制御することができる。
また、例えば出力電流Ioが固定された状態で入力電圧Viが高くなった場合は、スイッチング周期Tswを一定に保持しつつ、入力電圧Viが高くなった分だけ昇圧比Vc/Viを低くするため、期間T53を短くして期間T56,T63を長くする。これによって、出力電圧Voを一定の値に制御することができる。
スイッチング電源装置58は、昇圧チョッパ(1台)と電流共振型のハーフブリッジコンバータ(1台)を複合させた独特な構成を有し、上記のスイッチング電源装置10と同様の効果を得ることができる。ただし、スイッチング電源装置58の場合、スイッチング電源装置10のようなインターリーブ動作を行わないため、昇圧コンデンサ26(1),26(2)のリップル電流は、従来の直流電源装置と同様に大きくなる。
また、スイッチング電源装置58は、変形例のスイッチング電源装置60のように、構成の一部を変更することにより、力率改善機能を付与することができる。スイッチング電源装置60は、図33に示すように、スイッチング電源装置58の入力段に、入力電源48から供給された交流電圧Veを整流する整流回路50を設けたものであり、第1の昇圧インダクタ20(1)の一端に入力される電圧(入力電圧Vi)が、正弦波を全波整流した波形になるという特徴がある。そして、図示しないスイッチング制御回路が、出力電圧Voを一定の値に制御するとともに、入力電流Iiの波形を入力電圧Viの波形に近づけて力率を改善する制御を並行して行う。スイッチング電源装置60によれば、スイッチング電源装置58と同様の効果を得ることができ、さらに力率改善機能を備えた電源装置を容易に構成することができる。
次に、本発明のスイッチング電源装置及びその制御方法の第四の実施形態について、図34〜図38に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のスイッチング電源装置62は、一定の出力電圧Voを出力する装置であり、直流の入力電圧Viから昇圧電圧Vcを生成し、この昇圧電圧Vcをさらに変圧することによって出力電圧Voを生成する。回路構成は、概して言うと、昇圧チョッパ(1台)と非共振型のハーフブリッジコンバータ(1台)を複合させた独特な構成になっている。また、この実施形態の制御方法は、スイッチング電源装置62のスイッチング制御回路により実行される。
スイッチング電源装置62は、上記のスイッチング電源装置58と構成が類似しており、異なるのは、共振用コンデンサ34及び共振用インダクタ36が省略されている点と、整流平滑回路38に平滑インダクタ54が追加され、整流後の電圧を平滑する部分が、平滑インダクタ54と平滑コンデンサ42とで成るローパスフィルタで構成されている点である。
図35は、スイッチング電源装置62の定常時の動作を示すタイムチャートである。図35の中のI(54)は、平滑インダクタ54の電流波形であり、平滑コンデンサ42側の一端から流出する方向を正方向としている。ここでも、負荷44は定電流負荷又は定抵抗負荷であり、出力電流Ioは三角波状に連続している電流I(54)の平均値となる。
スイッチング電源装置62は、上記のスイッチング電源装置58と同様に、表3に示す3つの動作モードを有し、1つのスイッチング周期Tswの中で、第1の動作モード(期間T51〜T53)、第2の動作モード(期間T54〜T56)、第3の動作モード(期間T61〜T63)を順番に実行し、これをスイッチング周期Tsw毎に繰り返す。
スイッチング電源装置62は非共振型のコンバータなので、トランス32に流れる電流I(28)は正弦波状にならないが、各スイッチング素子12(1)〜12(6)のZVS動作は同様に行われる。
また、整流素子40(1),40(2)の動作が期間T51とT61において少し異なる。期間T51では、図36の下段の等価回路に示すように、整流素子40(1),40(2)がオンの状態になり、平滑インダクタ54がエネルギーを放出する電流が出力巻線30(1),30(2)に流れる(実線矢印の電流)。同様に、期間T61でも、図37の下段の等価回路に示すように、整流素子40(1),40(2)がオンの状態になり、平滑インダクタ54がエネルギーを放出する電流が出力巻線30(1),30(2)に流れる(実線矢印の電流)。
各動作モードにおける第1の昇圧インダクタ20(1)及び入力巻線28の状態は、上記のスイッチング電源装置58と同様に、表3のように整理することができる。したがって、スイッチング電源装置62の場合も同様に、昇圧比Vc/Viは、時比率T53/Tswを高くすれば高くなり、低くすれば低くなる。これは、通常の昇圧チョッパと原理は同じである。また、変圧比Vo/Vcはほぼ一定に固定されることになる。これは、通常の非共振型ハーフブリッジコンバータと原理は同じである。
スイッチング電源装置62は非共振型なので、スイッチング制御回路は、入力電圧Viが固定された状態で出力電流Ioが増加した場合には、各期間の長さをそのまま保持することによって昇圧比Vc/Viが変化しないようにする。これは、共振条件を調整する必要がないからであり、出力電圧Voを容易に制御することができる。出力電流Ioが固定された状態で入力電圧Viが高くなった場合は、スイッチング電源装置58と同様に、入力電圧Viが高くなった分だけ昇圧比Vc/Viを低くするため、期間T53を長くして期間T56,T63を短くする。これによって、出力電圧Voを一定の値に制御することができる。
以上説明したように、スイッチング電源装置62及びその制御方法によれば、上記のスイッチング電源装置58と同様の効果を得ることができ、さらにスイッチング制御回路による制御が容易になる。また、スイッチング電源装置62は、変形例のスイッチング電源装置64のように、構成の一部を変更することにより、力率改善機能を付与することができる。スイッチング電源装置64は、図38示すように、スイッチング電源装置58の入力段に、入力電源48から供給された交流電圧Veを整流する整流回路50を設けたものであり、第1の昇圧インダクタ20(1)の一端に入力される電圧(入力電圧Vi)が、正弦波を全波整流した波形になるという特徴がある。そして、図示しないスイッチング制御回路が、出力電圧Voを一定の値に制御するとともに、入力電流Iiの波形を入力電圧Viの波形に近づけて力率を改善する制御を並行して行う。スイッチング電源装置64によれば、スイッチング電源装置58と同様の効果を得ることができ、さらに力率改善機能を備えた電源装置を容易に構成することができる。
なお、本発明のスイッチング電源装置及びその制御方法は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態は、個々のスイッチング素子のZVS動作を行うため、対象のスイッチング素子の寄生ダイオードが導通した後、そのスイッチング素子がターンオンする構成になっている。しかし、寄生ダイオードに電流が流れることによって発生する損失が無視できない場合は、寄生ダイオードに電流が流れ始める少し前、つまり、両端電圧が所定の低い値に低下した時にターンオンするようにしてもよい。このようなソフトスイッチング動作を行う構成に変更しても、スイッチング素子のクロス損失やスイッチングノイズを十分に低減することができる。
上記のスイッチング電源装置10,46,52,56は、第2の昇圧コンデンサを第1の昇圧コンデンサ26で兼用させてインターリーブ動作を行う構成になっているが、昇圧コンデンサのリップル電流の許容値が大きい場合は、第2の昇圧コンデンサを第1の昇圧コンデンサ26とは別々に設けてもよい。また、2つの昇圧インダクタ20(1),20(2)を適度な結合度で磁気結合させ、電流I(20(1)),I(20(2))の波形やリップル成分の大きさを微調整できるようにしてもよい。
各実施形態が有する整流平滑回路38はいわゆるセンタタップ型であるが、ブリッジ型、電流ダブラ型、その他の形式に変更することも可能である。また、本発明の目的の動作が妨げられない範囲で、各種の付属回路(例えば、ノイズフィルタ、突入電流抑制回路、過電流保護回路等)を付設してもよい。また、スイッチング制御回路は、どのようなハードウエアを用いて構成してもよく、例えば、専用IC内に構成したり、デジタル処理とアナログ回路とを組み合わせて構成することもできる。
その他、上述した各スイッチング制御回路が実行する出力電圧の制御方法(各動作モードの期間の長さの可変方法)は、定常時に出力電圧を一定の値に制御する場合の好ましい例を示したものであり、定常時は勿論のこと、入力投入時、入力電圧急変時、出力電流急変時などの状況に応じて、上記とは異なる制御方法で出力電圧を制御してもよい。