図1には、本発明の基本技術に係る車両搭載用の電力変換装置の構成が示されている。電力変換装置は、力率改善回路10、電圧コンバータ回路14および制御部22を備えている。力率改善回路10には交流電圧源18が接続されている。交流電圧源18は、例えば、商用電源であり、電力変換装置の搭載先の車両がプラグイン機能を有する場合には、ACアウトレット等が交流電圧源18となる。電圧コンバータ回路14には負荷回路20が接続されている。負荷回路20は、例えば、バッテリ、あるいは車両搭載用バッテリを充電するための充電回路である。制御部22は、力率改善回路10および電圧コンバータ回路14が備える各スイッチング素子をオンオフ制御する。
力率改善回路10は、交流電圧源18から流入する電流の時間波形をスイッチングによって調整し、交流電圧源18から電力変換装置側を見た力率を改善する。力率改善回路10および電圧コンバータ回路14はトランスTによって結合されており、交流電圧源18から出力された電力は、力率改善回路10から電圧コンバータ回路14に伝送される。電圧コンバータ回路14は、トランスTのセカンダリ巻線T2から得られる交流電圧を直流電圧に変換し、適切な大きさの直流電圧を負荷回路20に出力する。力率改善回路10および電圧コンバータ回路14によれば、交流電圧源18から負荷回路20に効率的に電力が供給される。
力率改善回路10の構成について説明する。力率改善回路10は、フィルタコンデンサCin、プライマリ巻線T1、および第1スイッチング回路12を備えている。
第1スイッチング回路12は、スイッチング素子S1およびS2によって構成されるハーフブリッジU、スイッチング素子S3およびS4によって構成されるハーフブリッジV、ダイオードD1(第1整流素子)、ダイオードD2(第2整流素子)、およびバッファコンデンサCbufを備えている。ハーフブリッジUは、スイッチング素子S1の一端と、スイッチング素子S2の一端とを共通に接続したものである。スイッチング素子S1の両端には、スイッチング素子S2との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S2の両端には、スイッチング素子S1との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S1およびS2としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。この場合、スイッチング素子S1としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S2としてのIGBTのコレクタとが接続される。
同様に、ハーフブリッジVは、スイッチング素子S3の一端と、スイッチング素子S4の一端とを共通に接続したものである。スイッチング素子S3の両端には、スイッチング素子S4との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S4の両端には、スイッチング素子S3との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S3およびS4としては、例えば、IGBTが用いられる。この場合、スイッチング素子S3としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S4としてのIGBTのコレクタとが接続される。
スイッチング素子S1およびS2の接続点と、スイッチング素子S3およびS4の接続点との間には、プライマリ巻線T1が接続されている。プライマリ巻線T1のセンタータップm(中途接続点)は電源入力端子24−2に接続されている。
ハーフブリッジUおよびVは並列接続され、フルブリッジを構成している。すなわち、スイッチング素子S1のスイッチング素子S2側とは反対側の端子(図の上側の端子)と、スイッチング素子S3のスイッチング素子S4側とは反対側の端子(図の上側の端子)とが接続されている。また、スイッチング素子S2のスイッチング素子S1側とは反対側の端子(図の下側の端子)と、スイッチング素子S4のスイッチング素子S3側とは反対側の端子(図の下側の端子)とが接続されている。
ダイオードD1のアノードはダイオードD2のカソードに接続されている。ダイオードD1のカソードは、ハーフブリッジUおよびVの上側の端子に接続され、ダイオードD2のアノードは、ハーフブリッジUおよびVの下側の端子に接続されている。ダイオードD1およびD2の接続点は、電源入力端子24−1に接続されている。
スイッチング素子S1、スイッチング素子S3、およびダイオードD1の接続点と、スイッチング素子S2、スイッチング素子S4、およびダイオードD2の接続点との間には、バッファコンデンサCbufが接続されている。
プライマリ巻線T1は、電圧コンバータ回路14が備えるセカンダリ巻線T2に磁気的に結合し、プライマリ巻線T1およびセカンダリ巻線T2はトランスTを構成している。なお、プライマリ巻線T1の一端とスイッチング素子S1およびS2の接続点との間に第1のリアクトルが接続され、プライマリ巻線T1の他端とスイッチング素子S3およびS4の接続点との間に第2のリアクトルが接続されてもよい。この場合、第1のリアクトルと第2のリアクトルは磁気的に結合してもよい。また、電源入力端子24−2とセンタータップmとの間にもリアクトルが接続されてもよい。
電源入力端子24−1と電源入力端子24−2との間には、フィルタコンデンサCinが接続されている。また、電源入力端子24−1と電源入力端子24−2との間には交流電圧源18が接続されている。交流電圧源18が商用電源である場合には、電源入力端子24−1および24−2は商用電源用のコネクタに接続される。また、電源入力端子24−1および24−2にはケーブルを介して電源用プラグが接続され、その電源用プラグがACアウトレットに差し込まれてもよい。
力率改善回路10の動作について説明する。交流電圧源18は電源入力端子24−1および24−2に、正弦波電圧である入力交流電圧Vacを出力する。フィルタコンデンサCinは、力率改善回路10で発生し、交流電圧源18側に流出する高周波電流を抑制する。
制御部22は、制御信号Cn1〜Cn4をそれぞれスイッチング素子S1〜S4に出力し、スイッチング素子S1〜S4をオンオフ制御する。制御信号Cniがハイであるときは、スイッチング素子Siはオンとなり、制御信号Cniがローであるときは、スイッチング素子Siはオフとなる。ただし、iは1〜4のうちいずれかの整数である。制御信号Cn2は制御信号Cn1に対してハイおよびローを反転したものであり、制御信号Cn4は、制御信号Cn3に対してハイおよびローを反転したものである。また、制御信号Cn3およびCn4は、それぞれ、制御信号Cn1およびCn2に対して位相が180°遅れている。
これによって、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S2は、交互にオンオフする。すなわち、スイッチング素子S1がオフからオンになったときは、スイッチング素子S2はオンからオフになり、スイッチング素子S1がオンからオフになったときは、スイッチング素子S2は、オフからオンになる。同様に、スイッチング素子S3およびスイッチング素子S4は交互にオンオフする。スイッチング素子S1およびS2のオンオフの位相に対し、スイッチング素子S3およびS4のオンオフの位相は180°遅れる。
制御部22は、バッファコンデンサCbufの端子間電圧とその目標値との差異、交流電圧源18と電源入力端子24−2との間の経路を流れる入力電流iL、および交流電圧源18が出力する入力交流電圧Vacに応じて、制御信号Cn1〜Cn4のデューティ比(時比率)を変化させる。これによって、電源入力端子24−1および24−2に流れる電流の時間波形を入力交流電圧Vacの時間波形に近似させ、または一致させると共に、電源入力端子24−1および24−2に流れる電流の位相を入力交流電圧Vacの位相に近似させ、または一致させる。
図2(a)〜(e)には、入力交流電圧Vacが正の値となる半周期における力率改善回路10の動作タイミングが示されている。図2(a)には制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2の時間波形が示されており、図2(b)には制御信号Cn3の反転値および制御信号Cn4の時間波形が示されている。符号の上に付された「−」の記号は、その符号で表される制御信号の反転値を意味する。図2(c)には、スイッチング素子S1およびS2の接続点の電位Vu(U相電位Vu)の時間波形が示されており、図2(d)には、スイッチング素子S3およびS4との接続点の電位Vv(V相電位Vv)の時間波形が示されている。さらに、図2(e)には、プライマリ巻線T1に印加される電圧Vuv(プライマリ巻線電圧Vuv)の時間波形が示されている。制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn3の反転値は、それぞれ、制御信号Cn2およびCn4と同一である。また、U相電位VuおよびV相電位Vvの基準は接地導体G1の電位である。
図2(a)に示されているように、制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2の周期はPであり、1周期Pの間に制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2は、ハイ時間δだけハイになる。図2(b)に示されているように、制御信号Cn3の反転値および制御信号Cn4は、制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2に対して半周期、すなわち、180°遅れている。デューティ比αは、α=δ/Pであり、ハイ時間δが入力交流電圧Vinの瞬時値に応じて変化し、デューティ比αはハイ時間δの変化に伴って変化する。
ここでは、バッファコンデンサCbufが一定の電圧Vbに充電されているものとして力率改善回路10の動作について説明する。
制御信号Cn1がハイであり、制御信号Cn2がローである間、スイッチング素子S1はオンになり、スイッチング素子S2はオフになる。これによってU相電位Vuは、バッファコンデンサCbufの充電電圧Vbとなる。一方、制御信号Cn1がローであり、制御信号Cn2がハイである間、スイッチング素子S1はオフになり、スイッチング素子S2はオンになる。これによってU相電位は0となる。したがって、図2(c)に示されているように、U相電位Vuは、周期Pで時間(P−δ)の間Vbとなり、その他の時間帯で0となる。
制御信号Cn3がハイであり、制御信号Cn4がローである間、スイッチング素子S3はオンになり、スイッチング素子S4はオフになる。これによって、V相電位VvはバッファコンデンサCbufの充電電圧Vbとなる。一方、制御信号Cn3がローであり、制御信号Cn4がハイである間、スイッチング素子S3はオフになり、スイッチング素子S4はオンになる。これによってV相電位は0となる。したがって、図2(d)に示されているように、V相電位Vvは、U相電位Vuと同一の時間波形を有し、U相電位Vuから180°位相が遅れた電位となる。
プライマリ巻線電圧Vuvは、U相電位VuからV相電位Vvを減じた電圧である。これによって、図2(e)に示されているように、プライマリ巻線電圧Vuvは、波高値Vbで正負対称の時間波形となる。
図3(a)〜(e)には、入力交流電圧が負の値となる半周期における力率改善回路10の動作タイミングが示されている。図3(a)には制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2の時間波形が示されており、図3(b)には制御信号Cn3の反転値および制御信号Cn4の時間波形が示されている。図3(c)にはU相電位Vuの時間波形が示されており、図3(d)にはV相電位Vvの時間波形が示されている。さらに、図3(e)にはプライマリ巻線電圧Vuvの時間波形が示されている。図2に示されている事項と同一の事項については同一の符号を付してその説明を省略する。
図3(a)に示されているように、制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2の周期はPであり、1周期Pの間に制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2は、ハイ時間γだけハイになる。図3(b)に示されているように、制御信号Cn3の反転値および制御信号Cn4は、制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2に対して半周期、すなわち、180°遅れている。デューティ比αは、α=γ/Pであり、ハイ時間γが入力交流電圧Vinの瞬時値に応じて変化し、デューティ比αはハイ時間γの変化に伴って変化する。
入力交流電圧Vinが正の値となる半周期と同様の動作によって、入力交流電圧Vinが負の値となる半周期においては、図3(c)に示されているように、U相電位Vuは、周期Pで時間(P−γ)の間Vbとなり、その他の時間帯で0となる。また、図3(d)に示されているように、V相電位Vvは、U相電位Vuと同一の時間波形を有し、U相電位Vuから180°位相が遅れた電位となる。プライマリ巻線電圧Vuvは、U相電位VuからV相電位Vvを減じた電圧である。これによって、図3(e)に示されているように、プライマリ巻線電圧Vuvは、波高値Vbで正負対称の時間波形となる。これによって、セカンダリ巻線T2には、プライマリ巻線電圧Vuvに基づくセカンダリ巻線電圧Vwxが発生する。
また、制御信号Cn1〜Cn4に従ってスイッチングS1〜S4がオンオフ制御されることで、スイッチング素子S1〜S4、ダイオードD1およびD2が整流回路として動作し、プライマリ巻線T1の端子間電圧Vuvが整流されてバッファコンデンサCbufに印加される。これによって、入力交流電圧Vacに基づいて、バッファコンデンサCbufが充電される。
制御信号Cn1〜Cn4の周期は、入力交流電圧Vinの周期よりも十分短い。リアクトルLおよびプライマリ巻線T1に流れる電流の時間波形は、スイッチング素子S1〜S4のスイッチングによって整形され、力率改善動作が実行される。
次に、電圧コンバータ回路14の構成について図1を参照して説明する。電圧コンバータ回路14は、セカンダリ巻線T2および第2スイッチング回路16を備えている。
第2スイッチング回路16は、スイッチング素子S5およびS6によって構成されるハーフブリッジW、スイッチング素子S7およびS8によって構成されるハーフブリッジX、および出力コンデンサCoを備えている。ハーフブリッジWは、スイッチング素子S5の一端と、スイッチング素子S6一端とを共通に接続したものである。スイッチング素子S5の両端には、スイッチング素子S6との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S6の両端には、スイッチング素子S5との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S5およびS6としては、例えば、IGBTが用いられる。この場合、スイッチング素子S5としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S6としてのIGBTのコレクタとが接続される。
同様に、ハーフブリッジXは、スイッチング素子S7の一端と、スイッチング素子S8の一端とを共通に接続したものである。スイッチング素子S7の両端には、スイッチング素子S8との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S8の両端には、スイッチング素子S7との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S7およびS8としては、例えば、IGBTが用いられる。この場合、スイッチング素子S7としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S8としてのIGBTのコレクタとが接続される。
スイッチング素子S5およびS6の接続点と、スイッチング素子S7およびS8の接続点との間にはセカンダリ巻線T2が接続されている。
ハーフブリッジWおよびXは並列接続され、出力フルブリッジを構成している。すなわち、スイッチング素子S5の上側の端子とスイッチング素子S7の上側の端子とが接続され、スイッチング素子S6の下側の端子とスイッチング素子S8の下側の端子とが接続されている。ハーフブリッジWおよびXの上側の端子と、ハーフブリッジWおよびXの下側の端子との間には、出力コンデンサCoが接続されている。また、ハーフブリッジWおよびXの上側の端子には正極負荷端子26Pが接続され、ハーフブリッジWおよびXの下側の端子には負極負荷端子26Nが接続されている。さらに、正極負荷端子26Pと負極負荷端子26Nとの間には負荷回路20が接続されている。
電圧コンバータ回路14の動作について説明する。力率改善回路10のプライマリ巻線T1に印加された電圧に応じてセカンダリ巻線T2に電圧が発生し、セカンダリ巻線T2に発生した電圧がスイッチング素子S5およびS6の接続点と、スイッチング素子S7およびS8の接続点との間に印加される。
制御部22は、制御信号Cn5〜Cn8をそれぞれスイッチング素子S5〜S8に出力し、スイッチング素子S5〜S8をオンオフ制御する。制御信号Cniがハイであるときは、スイッチング素子Siはオンとなり、制御信号Cniがローであるときは、スイッチング素子Siはオフとなる。ただし、iは5〜8のうちいずれかの整数である。制御信号Cn6は制御信号Cn5に対してハイおよびローを反転させたものであり、制御信号Cn8は、制御信号Cn7に対してハイおよびローを反転させたものである。また、制御信号Cn7およびCn8は、それぞれ、制御信号Cn5およびCn6に対して位相が180°遅れている。
これによってスイッチング素子S5およびS6は交互にオンオフする。すなわち、スイッチング素子S5がオフからオンになったときは、スイッチング素子S6はオンからオフになり、スイッチング素子S5がオンからオフになったときは、スイッチング素子S6はオフからオンになる。同様に、スイッチング素子S7およびS8は交互にオンオフする。スイッチング素子S5およびS6のオンオフの位相に対し、スイッチング素子S7およびS8のオンオフの位相は180°遅れる。制御部22は、電圧コンバータ回路14におけるデューティ比を、力率改善回路10におけるデューティ比に一致させる。
制御部22は、出力コンデンサCoの端子間電圧とその目標値との差異に応じて、あるいは負荷回路20に流れる電流とその目標値との差異に応じて、第2スイッチング回路16をスイッチングする位相を、第1スイッチング回路12に対して遅らせる。
ここでは、出力コンデンサCoが一定の電圧Vdに充電されているものとして電圧コンバータ回路14の動作について説明する。
図4(a)には、プライマリ巻線電圧Vuvおよびセカンダリ巻線電圧Vwxの時間波形が示されている。ここで、セカンダリ巻線電圧Vwxは、スイッチング素子S7およびS8の接続点の電位を基準としたスイッチング素子S5およびS6の接続点の電圧である。プライマリ巻線電圧Vuvは波高値がVbの矩形波であり、セカンダリ巻線電圧Vwxは波高値がVdの矩形波である。セカンダリ巻線電圧Vwxはプライマリ巻線電圧Vuvに対して位相がφだけ遅れている。図4(b)には、セカンダリ巻線T2に流れる電流idの時間波形が示されている。セカンダリ巻線電流idは、ハーフブリッジXからハーフブリッジWに向かう方向を正とする。
プライマリ巻線電圧Vuvが0からVbに立ち上がり、セカンダリ巻線電圧Vwxが0である期間τ1の間、セカンダリ巻線電流idは0から正方向に急激に増加する。その後、セカンダリ巻線電圧VwxがVdに立ち上がり、プライマリ巻線電圧VuvがVbでありセカンダリ巻線電圧VwxがVdである期間τ2の間、セカンダリ巻線電流idの変化は緩やかになる。さらに、プライマリ巻線電圧VuvがVbから0に立ち下がり、セカンダリ巻線電圧VwxがVdである期間τ3の間、セカンダリ巻線電流idは0に向かってに急激に減少する。
プライマリ巻線電圧Vuvおよびセカンダリ巻線電圧Vwxが0である期間τ4では、セカンダリ巻線電流idは0である。
プライマリ巻線電圧Vuvが0から−Vbに立ち下がり、セカンダリ巻線電圧Vwxが0である期間τ5の間、セカンダリ巻線電流idは0から負方向に急激に増加する。その後、セカンダリ巻線電圧Vwxが−Vdに立ち下がり、プライマリ巻線電圧Vuvが−Vbでありセカンダリ巻線電圧Vwxが−Vdである期間τ6の間、セカンダリ巻線電流idの変化は緩やかになる。さらに、プライマリ巻線電圧Vuvが−Vbから0に立ち上がり、セカンダリ巻線電圧Vwxが−Vdである期間τ7の間、セカンダリ巻線電流idは0に向かって急激に減少する。
プライマリ巻線電圧Vuvが立ち上がってからセカンダリ巻線電圧Vwxが立ち上がる前までの期間τ1では、プライマリ巻線T1からセカンダリ巻線T2にエネルギーが供給されると共に、セカンダリ巻線T2はエネルギーを蓄える。同様に、プライマリ巻線電圧Vuvが立ち下がってからセカンダリ巻線電圧Vwxが立ち下がる前までの期間τ5では、プライマリ巻線T1からセカンダリ巻線T2にエネルギーが供給されると共に、セカンダリ巻線T2はエネルギーを蓄える。そして、期間τ2、τ3、τ6およびτ7の間、電圧コンバータ回路14は、セカンダリ巻線電圧Vwxおよびセカンダリ巻線電流idの積で定まる電力を負荷回路20に出力する。
プライマリ巻線電圧Vuvとセカンダリ巻線電圧Vwxとの位相差φが大きい程、セカンダリ巻線T2にエネルギーが蓄積される期間τ1およびτ5が長くなり、期間τ2、τ3、τ6およびτ7におけるセカンダリ巻線電流idの絶対値が大きくなる。ただし、位相差φは180°未満の値である。したがって、プライマリ巻線電圧Vuvとセカンダリ巻線電圧Vwxとの位相差φが大きい程、力率改善回路10から電圧コンバータ回路14に伝送され、電圧コンバータ回路14から負荷回路20に出力される電力が大きくなる。
なお、制御部22が、上述のようにスイッチング素子S5〜S8をスイッチング制御することで、セカンダリ巻線電流idが出力コンデンサCoの上端から下端に流れ、出力コンデンサCoは、所定の電圧Vdで充電される。
電圧コンバータ回路14は、プライマリ巻線T1およびセカンダリ巻線T2によって構成されるトランスTによって、力率改善回路10に磁気的に結合している。したがって、力率改善回路10は、電圧コンバータ回路14から電気的に絶縁され、電圧コンバータ回路14で発生した高電圧による電流が、力率改善回路10側に流れることが回避される。また、上述のように、プライマリ巻線T1に印加されるプライマリ巻線電圧Vuvは、正負対称の時間波形を有しているため、力率改善回路10から電圧コンバータ回路14に電力が伝送される際にトランスTにおいて生じる損失が低減される。
図5には、制御部22の構成例が示されている。制御部22は、図5に示されている構成要素をプログラムを実行することによって実現するプロセッサを備えていてもよい。また、各構成要素が、ハードウエアとしての電子回路によって個別に構成されてもよい。
制御部22が、各制御信号を生成するに際しては、バッファコンデンサCbufの端子間電圧Vbの計測値Vbm、入力交流電圧Vacの計測値Vim、入力電流iLの計測値IL、および負荷回路20に流れる電流Ibの計測値Ibmが用いられる。電力変換装置には、これらを計測するための各センサ(図示せず)が設けられている。
制御部22は、バッファコンデンサCbufの端子間電圧の計測値であるバッファ電圧計測値Vbmとその目標値であるバッファ電圧目標値Vb*との差異に基づいてデューティ比目標値α0*を求める。また、制御部22は、負荷回路20に流れる電流の計測値である負荷電流計測値Ibmとその目標値である負荷電流目標値Ib*との差異に基づいて、第2スイッチング回路16をスイッチングする位相を、第1スイッチング回路12に対して遅らせる各制御信号を生成する。
デューティ比目標値α0*を求める処理について説明する。減算器28は、バッファ電圧目標値Vb*からバッファ電圧計測値Vbmを減算して第1誤差を求め、電圧PI制御部30に出力する。電圧PI制御部30は、比例積分制御による第1制御値を求め、乗算器32に出力する。乗算器32は、入力交流電圧Vinの計測値の絶対値|Vim|を第1制御値に乗じ、さらに、入力交流電圧計測値Vimの時間平均値の自乗の逆数を乗じて得られる入力電流目標値iL*を減算器34に出力する。減算器34は、入力電流目標値iL*から入力電流計測値ILの絶対値|IL|を減算して第2誤差を求め、電流PI制御部36に出力する。電流PI制御部36は、比例積分制御による第2制御値を求め加算器38に出力する。加算器38は、第2制御値に半周期目標値1−|Vim|/Vbmを加算して調整前目標値α0を求める。半周期目標値1−|Vim|/Vbmは、入力交流電圧Vacが正の半周期の値であるときに、力率改善回路10において力率改善効果が得られるデューティ比としての意義を有する。
デューティ比決定部40は、入力交流電圧Vacの測定値Vimが0または正の値であるときは、α0*=α0としてデューティ比目標値α0*を求める。また、デューティ比決定部40は、入力交流電圧Vacの測定値Vimが負の値であるときは、α0*=1−α0としてデューティ比目標値α0*を求める。
第2スイッチング回路16をスイッチングする位相を、第1スイッチング回路12に対して遅らせる制御信号を生成する処理について説明する。減算器42は、負荷電流目標値Ib*から負荷電流計測値Ibmを減算した第3誤差を求め、位相PI制御部44に出力する。位相PI制御部44は、比例積分制御による第3制御値を求め、位相調整部48に出力する。第3制御値に対しては、デューティ比目標値α0*および負荷電流目標値Ib*に基づいて求められたフィードフォワード補正値を加算してもよい。キャリア生成部46は、パルス幅変調を行うためのキャリア信号を位相調整部48に出力する。キャリア信号は、例えば、三角波を時間波形とする信号である。
位相調整部48は、さらに、キャリア生成部46から出力されたキャリア信号の位相を、第3制御値に基づいて変化させて、UV相バッファアンプ50に出力する。例えば、位相調整部48は、第3制御値が大きい程、キャリア信号の位相を進める。UV相バッファアンプ50は、位相調整部48から出力されたキャリア信号をU相キャリア信号CUとしてUV相制御信号生成部54に出力する。また、UV相バッファアンプ50は、位相調整部48から出力されたキャリア信号を180°遅延させてV相キャリア信号CVとしてUV相制御信号生成部54に出力する。
位相調整部48は、キャリア信号をWX相バッファアンプ52に出力する。WX相バッファアンプ52は、位相調整部48から出力されたキャリア信号をW相キャリア信号CWとしてWX相制御信号生成部56に出力する。また、WX相バッファアンプ52は、位相調整部48から出力されたキャリア信号を180°遅延させてX相キャリア信号CXとしてWX相制御信号生成部56に出力する。
ここでは、位相調整部48が、UV相バッファアンプ50に出力する信号の位相を第3制御値に基づいて進める処理について説明したが、位相調整部48が、WX相バッファアンプ52に出力する信号の位相を第3制御値に基づいて遅らせる処理が採用されてもよい。
UV相制御信号生成部54は、デューティ比目標値α0*、U相キャリア信号CUおよびV相キャリア信号CVに基づいて、図2に示されるような制御信号Cn1〜Cn4を生成する。WX相制御信号生成部56は、デューティ比目標値α0*、W相キャリア信号CWおよびX相キャリア信号CXに基づいて、制御信号Cn1〜Cn4に対して位相を異ならせた制御信号Cn5〜Cn8を生成する。
このような制御によれば、バッファ電圧計測値Vbmがバッファ電圧目標値Vb*に満たないときは、デューティ比目標値α0*が増加し、バッファ電圧計測値Vbがバッファ電圧目標値Vb*を超えたときは、デューティ比目標値α0*が減少する。これによって、バッファコンデンサCbufの端子間電圧が電圧目標値Vb*に近付き、または、一致する。
さらに、負荷電流計測値Ibmが負荷電流目標値Ib*に満たないときは、第1スイッチング回路12をスイッチングする位相に対し、第2スイッチング回路16をスイッチングする位相の遅れが大きくなる。また、負荷電流計測値Ibmが負荷電流目標値Ib*を超えるときは、第1スイッチング回路12をスイッチングする位相に対し、第2スイッチング回路16をスイッチングする位相の進みが大きくなる。これによって、負荷電流が負荷電流目標値Ib*に近付き、または、一致する。
図6には、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置が示されている。この電力変換装置は、図1に示されている第2スイッチング回路16と同一構成の第3スイッチング回路60を追加したものである。図1に示されている構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。なお、上記のセカンダリ巻線T2については、本実施形態において第1セカンダリ巻線T21という。
第3スイッチング回路60は、ハーフブリッジY、ハーフブリッジZおよび出力コンデンサCo3を備えている。ハーフブリッジYはスイッチング素子S9およびS10によって構成され、ハーフブリッジZはスイッチング素子S11およびS12によって構成されている。ハーフブリッジYおよびZは、それぞれ、ハーフブリッジWおよびXに対応する。スイッチング素子S9〜S12は、それぞれ、スイッチング素子S5〜S8に対応し、出力コンデンサCo3は出力コンデンサCoに対応する。第3スイッチング回路60を構成する各スイッチング素子の両端には、第2スイッチング回路16を構成する各スイッチング素子と同様、ダイオードが接続されている。
スイッチング素子S9およびS10の接続点と、スイッチング素子S11およびS12の接続点との間には第2セカンダリ巻線T22が接続されている。第2セカンダリ巻線T22は、第1セカンダリ巻線T21と同様、プライマリ巻線T1に磁気的に結合している。プライマリ巻線T1、第1セカンダリ巻線T21および第2セカンダリ巻線T22は、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路16を磁気的に結合し、第1スイッチング回路12および第3スイッチング回路60を磁気的に結合するトランスTAを構成する。
第2スイッチング回路16におけるスイッチング素子S6、スイッチング素子S8および出力コンデンサCoの接続点は、第3スイッチング回路60におけるスイッチング素子S9、スイッチング素子S11および出力コンデンサCo3の接続点に接続されている。第2スイッチング回路16におけるスイッチング素子5、スイッチング素子S7および出力コンデンサCoの接続点と、第3スイッチング回路60におけるスイッチング素子S10、スイッチング素子S12および出力コンデンサCo3の接続点との間には、出力コンデンサCoutが接続されている。また、第2スイッチング回路16におけるスイッチング素子S5、スイッチングS7および出力コンデンサCoの接続点には正極負荷端子62Pが接続されている。そして、第3スイッチング回路60におけるスイッチング素子S10、スイッチング素子S12および出力コンデンサCo3の接続点には負極負荷端子62Nが接続されている。正極負荷端子62Pと負極負荷端子62Nとの間には、負荷回路20が接続されている。
第2セカンダリ巻線T22、ハーフブリッジY、ハーフブリッジZおよび出力コンデンサCo3は、電圧コンバータ回路64を構成している。
制御部58は、制御信号Cn1〜Cn12をそれぞれスイッチング素子S1〜S12に出力し、スイッチング素子S1〜S12をオンオフ制御する。制御部58がスイッチング素子S1〜S8を制御するタイミングは、図1に示された電力変換装置において、制御部22がスイッチング素子S1〜S8を制御するタイミングと同一である。また、制御部58がスイッチング素子S9〜S12を制御するタイミングは、制御部58がスイッチング素子S5〜S8を制御するタイミングと同一である。すなわち、第2スイッチング回路16および第3スイッチング回路60のスイッチングタイミングは同期しており、スイッチング素子S9〜S12の動作タイミングは、スイッチング素子S5〜S8の動作タイミングと同一である。
このように、本実施形態に係る電力変換装置は、力率の調整によって、交流電圧源18からの入力交流電力を調整する第1スイッチング回路12と、第1スイッチング回路12に磁気的に結合する第2スイッチング回路16と、第1スイッチング回路12に磁気的に結合し、第2スイッチング回路16のスイッチングに同期したスイッチングをする第3スイッチング回路60とを備えている。また、本実施形態に係る電力変換装置は、第1スイッチング回路12に両端が接続されたプライマリ巻線T1と、第2スイッチング回路16に両端が接続された第1セカンダリ巻線T21と、第3スイッチング回路60に両端が接続された第2セカンダリ巻線T22と、を備えている。第1セカンダリ巻線T21および第2セカンダリ巻線T22は、プライマリ巻線T1に磁気的に結合する
。
第2スイッチング回路16の出力コンデンサCoの両端(一対の出力点)のうちの一方、第3スイッチング回路60の出力コンデンサCo3の両端(一対の出力点)うちの一方が共通に接続されており、第2スイッチング回路16の一対の出力点のうちの他方、および第3スイッチング回路60の一対の出力点のうちの他方から直流電力が出力される。
正極負荷端子62Pおよび負極負荷端子62Nから負荷回路20に印加される電圧を、図1の負荷回路20に印加される電圧と同一とした場合、本実施形態におけるスイッチング素子S5〜S12のそれぞれに印加される電圧は、図1のスイッチング素子S5〜S8のそれぞれに印加される電圧の半分となる。したがって、図1のスイッチング素子S5〜S8に比べて、本実施形態におけるスイッチング素子S5〜S12の耐電圧は半分でよい。すなわち、本実施形態におけるスイッチング素子S5〜S12には、図1のスイッチング素子S5〜S8に比べて耐電圧が小さいものが用いられてもよい。耐電圧が小さいスイッチング素子には、オンのときの抵抗値が小さいものが多く、電力損失の低減に有利であることが多い。
また、本実施形態におけるスイッチング素子S5〜S12に、図1のスイッチング素子S5〜S8と同一の耐電圧を有するものを用いた場合には、本実施形態における負荷回路20に印加される電圧を2倍まで大きくしてもよい。
図7には、本実施形態の電力変換装置についてのシミュレーション結果が示されている。このシミュレーションでは負荷回路20がバッテリとされ、トランスTの巻線比Nが1とされている。なお、巻線比は、第1セカンダリ巻線T21の巻き数に対するプライマリ巻線T1の巻き数の比N1、または第2セカンダリ巻線T22の巻き数に対するプライマリ巻線T1の巻き数の比N2として定義され、本実施形態ではN1=N2=1である。
図7(a)〜(c)の横軸は時間を示している。図7(a)には、バッテリ出力電圧Vbat、バッファコンデンサCbufの充電電圧Vb、および出力コンデンサCoの端子間電圧Vcが示されている。図7(b)には、電源入力端子24−2からプライマリ巻線T1の中途接続点との間の経路を流れる入力電流iL、および入力交流電圧Vacが示されている。図7(c)には、スイッチング素子S5の端子間電圧VS5、およびスイッチング素子S6の端子間電圧VS6が示されている。
図7(b)に示されているように、入力電流iLの時間波形は、入力交流電圧Vacの時間波形に合わせられている。また、図7(a)および(c)に示されているように、スイッチング素子S5の端子間電圧VS5およびスイッチング素子S6の端子間電圧VS6の各波高値は、バッテリ出力電圧Vbatの半分となっている。
図8には、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置が示されている。この電力変換装置は、図1に示されている力率改善回路10と同一構成の第2力率改善回路70を追加したものである。図1および図6に示されている構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。なお、上記のプライマリ巻線T1については、本実施形態において第1プライマリ巻線T11という。また、上記の力率改善回路10については、本実施形態において第1力率改善回路68という。
第2力率改善回路70は、フィルタコンデンサCin2、第2プライマリ巻線T12、および第4スイッチング回路66を備えている。
第4スイッチング回路66は、ハーフブリッジα、ハーフブリッジβ、ダイオードD3、ダイオードD4、およびバッファコンデンサCbuf2を備えている。ハーフブリッジαはスイッチング素子S13およびS14によって構成され、ハーフブリッジβはスイッチング素子S15およびS16によって構成されている。ハーフブリッジαおよびβは、それぞれ、ハーフブリッジUおよびVに対応し、スイッチング素子S13〜S16は、それぞれ、スイッチング素子S1〜S4に対応する。ダイオードD3およびD4は、それぞれ、ダイオードD1およびD2に対応し、バッファコンデンサCbuf2は、バッファコンデンサCbufに対応する。フィルタコンデンサCin2はフィルタコンデンサCinに対応し、電源入力端子24−3および24−4は、それぞれ、電源入力端子24−1および24−2に対応する。第4スイッチング回路66を構成する各スイッチング素子の両端には、第1スイッチング回路12を構成する各スイッチング素子と同様、ダイオードが接続されている。
スイッチング素子S13およびS14の接続点と、スイッチング素子S15およびS16の接続点との間には第2プライマリ巻線T12が接続されている。第2プライマリ巻線T12は、第1セカンダリ巻線T21および第2セカンダリ巻線T22に磁気的に結合している。第2プライマリ巻線T12のセンタータップm(中途接続点)は電源入力端子24−4に接続されている。第1プライマリ巻線T11、第2プライマリ巻線T12、第1セカンダリ巻線T21および第2セカンダリ巻線T22は、トランスTBを構成する。トランスTBは、第1スイッチング回路12を第2スイッチング回路16および第3スイッチング回路60に磁気的に結合し、第4スイッチング回路66を第2スイッチング回路16および第3スイッチング回路60に磁気的に結合する。
電源入力端子24−3は、電源入力端子24−1と共に交流電圧源18の一端に接続され、電源入力端子24−4は、電源入力端子24−2と共に交流電圧源18の他端に接続されている。
制御部59は、制御信号Cn1〜Cn16をそれぞれスイッチング素子S1〜S16に出力し、スイッチング素子S1〜S16をオンオフ制御する。制御部59がスイッチング素子S1〜S12を制御するタイミングは、図6に示された電力変換装置において、制御部58がスイッチング素子S1〜S12を制御するタイミングと同一である。また、制御部59がスイッチング素子S13〜S16を制御するタイミングは、制御部59がスイッチング素子S1〜S4を制御するタイミングと同一である。すなわち、第1スイッチング回路12および第4スイッチング回路66のスイッチングタイミングは同期しており、スイッチング素子S13〜S16の動作タイミングは、スイッチング素子S1〜S4の動作タイミングと同一である。
このように、本実施形態に係る電力変換装置は、力率の調整によって、交流電圧源18からの入力交流電力を調整する第1スイッチング回路12(入力スイッチング回路)と、第1スイッチング回路12と共通の一対の電源入力端子24−3および24−4(一対の入力点)を有する第4スイッチング回路66(並列スイッチング回路)と、第1スイッチング回路12および第4スイッチング回路66に磁気的に結合する第2スイッチング回路16および第3スイッチング回路60(いずれも出力スイッチング回路に対応)とを備えている。
また、本実施形態に係る電力変換装置は、第1スイッチング回路12に両端が接続された第1プライマリ巻線T11と、第4スイッチング回路66に両端が接続された第2プライマリ巻線T12とを備えている。さらに、本実施形態に係る電力変換装置は、第2スイッチング回路16に両端が接続された第1セカンダリ巻線T21、および、第3スイッチング回路60に両端が接続された第2セカンダリ巻線T22を備えている。第1プライマリ巻線T11および第2プライマリ巻線T12のそれぞれは、第1セカンダリ巻線T21および第2セカンダリ巻線T22に磁気的に結合する。
第4スイッチング回路66は、第1スイッチング回路12のスイッチングに同期したスイッチングをし、力率の調整によって、交流電圧源18からの入力交流電力を調整する。第2スイッチング回路16の出力コンデンサCoの両端(一対の出力点)および第3スイッチング回路60の出力コンデンサCo3の両端(一対の出力点)から直流電力が出力される。なお、出力スイッチング回路は、第2スイッチング回路16および第3スイッチング回路60のうち一方のみを含むものであってもよい。
本実施形態に係る電力変換装置では、交流電圧源18から電力変換装置に流れる電流は、第1力率改善回路68および第2力率改善回路70に分流する。したがって、第1力率改善回路68および第2力率改善回路70の各スイッチング素子に流れる電流は、図6に示されている力率改善回路10の各スイッチング素子に流れる電流の半分になる。したがって、本実施形態における負荷回路20に供給される電力を、図6の負荷回路20に供給される電力と同一とした場合、図6のスイッチング素子S1〜S4に比べて、本実施形態におけるスイッチング素子S1〜S4およびスイッチング素子S13〜S16の許容電流は半分でよい。すなわち、本実施形態におけるスイッチング素子S1〜S4およびスイッチング素子S13〜S16には、図6のスイッチング素子S1〜S4に比べて、許容電流が小さいものが用いられてもよい。
また、本実施形態におけるスイッチング素子S1〜S4およびスイッチング素子S13〜S16に、図6のスイッチング素子S1〜S4と同一の許容電流を有するもの用いた場合には、本実施形態に係る電力変換装置から負荷回路20に出力される電力を2倍まで大きくしてもよい。
なお、上記では、セカンダリ側の回路を、電圧コンバータ回路14および64を備える回路構成について説明した。このような構成の他、セカンダリ側の回路を電圧コンバータ回路14のみとしてもよい。この場合、図1に示された力率改善回路10を、図8に示された第1力率改善回路68および第2力率改善回路70に置き換え、第1プライマリ巻線T11および第2プライマリ巻線T12をセカンダリ巻線T2に結合させればよい。
上記の第1および第2の実施形態に係る電力変換装置では、負荷回路20をバッテリとした場合、次に説明する循環電流が抑制される。ここで、循環電流とは、トランスを構成する巻線の両端の電圧が0である期間に、その巻線に流れる電流をいう。循環電流は電力伝送に寄与しない電流であり、ジュール熱等の損失を増加させる。
図1に示される電力変換装置(基本技術に係る電力変換装置)について循環電流の性質について説明する。バッファコンデンサCbufの充電電圧をVb、出力コンデンサCoの充電電圧をVdとし、トランスTの巻線比をNとした場合、Vb<N・Vdが成立する場合に、セカンダリ巻線T2に流れる循環電流が大きくなる。その理由は、図4に示される期間τ1,τ3,τ5,・・・・におけるセカンダリ巻線電流idの増加または減少が急峻となり、セカンダリ巻線T2の両端の電圧が0となるゼロ電圧期間(例えば、期間τ4)に、セカンダリ巻線電流idが0とならず、ゼロ電圧期間のセカンダリ巻線電流idが循環電流となってしまうためである。
さらに、負荷回路20がバッテリである場合において、その出力電圧が変動すると、VbとN・Vdとの相違が大きくなり、循環電流が増加する傾向が強くなる。
第1および第2の実施形態に係る電力変換装置(図6および図8)では、負荷回路20としてのバッテリの出力電圧が変動した場合、第1セカンダリ巻線T21および第2セカンダリ巻線T22の両端の電圧の変動は、図1のセカンダリ巻線T2の両端の電圧の変動に比べて小さい。したがって、第1および第2の実施形態に係る電力変換装置では、基本技術に係る電力変換装置に比べて、各セカンダリ巻線側の循環電流が抑制され、各セカンダリ巻線側の循環電流に基づく損失が低減される。なお、循環電流を低減する効果は、負荷回路20がバッテリである場合の他、コンデンサ等の蓄電回路を含む場合にも得られる。