JP2019183912A - シールチェーン及びローラブシュ - Google Patents
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Abstract
【課題】ブシュの貫通孔からブシュの外側に潤滑剤を安定して供給することができるシールチェーン及びローラブシュを提供する。【解決手段】シールチェーン11は、一対の内リンクプレート12と、一対の内リンクプレート12に接合される筒状のブシュ18と、ブシュ18に挿入されるピン32と、ブシュ18が挿入される筒状のローラ26と、一対の内リンクプレート12の外側に配置されてピン32が接合される一対の外リンクプレート14とを備える。ピン32の内部には、ピン32の一端部に設けられたグリースニップル39とピン32の外周面32aに開口するピン孔40とを連通する連通路38が形成されている。ブシュ18におけるピン孔40と対応する位置には、ブシュ18の内外を貫通する長孔23が形成されている。ローラ26の内周面27には、長孔23と対応する位置にグリースの収容空間31を形成する筒状のローラブシュ28が設けられている。【選択図】図2
Description
本発明は、ブシュとローラとの間をシールするシール構造を有し、ブシュとローラとの間に潤滑剤を供給可能なシールチェーン及びシールチェーンに用いられるローラブシュに関する。
従来、この種のシールチェーンとして、例えば特許文献1に示すものが知られている。このようなシールチェーンは、円筒状のブシュの両端部が相対回転不能に組み付けられた一対のインナリンクプレートと、円柱状のピンの両端部が相対回転不能に組み付けられた一対のアウタリンクプレートとが、ブシュにピンが相対回転可能に挿通された状態で交互に組み合わされ、各ブシュに円筒状のローラが回転自在に装着されている。
ブシュにはブシュの内外を貫通する貫通孔が形成されている。アウタリンクプレートにはグリースニップルが装着され、グリースニップルからグリース(潤滑剤)を注入することで、ピンの外周面とブシュの内周面との間にグリースが供給される。ピンの外周面とブシュの内周面との間に供給されたグリースは貫通孔からブシュの外周面とローラの内周面との間に流れ、ブシュの外周面とローラの内周面との間がグリースによって潤滑される。
ところで、上述のようなシールチェーンでは、粉塵などの異物が外部からローラ用シール手段を越えてブシュの外周面とローラの内周面との間に進入すると、この異物がローラの内周面によって貫通孔に押し込まれるので、貫通孔内のグリースが異物と一緒に押し固められてしまう。この結果、貫通孔が詰まってしまうので、貫通孔からブシュの外周面とローラの内周面との間にグリースが供給されなくなるという問題がある。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされた。その目的は、ブシュの貫通孔からブシュの外側に潤滑剤を安定して供給することができるシールチェーン及びローラブシュを提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するシールチェーンは、互いに対向して離れて配置される一対の内リンクプレートと、前記一対の内リンクプレートに両端部がそれぞれ接合される筒状のブシュと、前記ブシュに回転可能に挿入されるピンと、前記ブシュが挿入されて前記ブシュによって回転可能に支持される筒状のローラと、前記一対の内リンクプレートを外側から挟むように配置されて前記ピンの両端部がそれぞれ接合される一対の外リンクプレートと、を備えたシールチェーンであって、前記ピンの内部には、前記ピンの一端部に設けられて潤滑剤を注入可能な注入部と前記ピンの周面における前記ローラと対応する位置に開口するピン孔とを連通する連通路が形成され、前記ブシュにおける前記ピン孔と対応する位置には、前記ブシュの内外を貫通する貫通孔が形成され、前記ローラの内周面には、少なくとも前記貫通孔と対応する位置に前記潤滑剤を収容可能な収容空間を形成する筒状のローラブシュが前記ローラと一体回転可能に設けられていることを要旨とする。
上記課題を解決するシールチェーンは、互いに対向して離れて配置される一対の内リンクプレートと、前記一対の内リンクプレートに両端部がそれぞれ接合される筒状のブシュと、前記ブシュに回転可能に挿入されるピンと、前記ブシュが挿入されて前記ブシュによって回転可能に支持される筒状のローラと、前記一対の内リンクプレートを外側から挟むように配置されて前記ピンの両端部がそれぞれ接合される一対の外リンクプレートと、を備えたシールチェーンであって、前記ピンの内部には、前記ピンの一端部に設けられて潤滑剤を注入可能な注入部と前記ピンの周面における前記ローラと対応する位置に開口するピン孔とを連通する連通路が形成され、前記ブシュにおける前記ピン孔と対応する位置には、前記ブシュの内外を貫通する貫通孔が形成され、前記ローラの内周面には、少なくとも前記貫通孔と対応する位置に前記潤滑剤を収容可能な収容空間を形成する筒状のローラブシュが前記ローラと一体回転可能に設けられていることを要旨とする。
通常、注入部から注入した潤滑剤は、連通路、ピン孔、貫通孔を経由してブシュの外周面とローラの内周面との間に供給されることで、ブシュの外周面とローラの内周面との間が潤滑剤によって潤滑される。しかしながら、ブシュの外周面とローラの内周面との間に外部から粉塵などの異物が進入すると、この異物がローラの内周面によって貫通孔に押し込まれるので、貫通孔内の潤滑剤が異物と一緒に押し固められてしまう。この結果、貫通孔が詰まってしまうので、貫通孔からブシュの外周面とローラの内周面との間に潤滑剤が供給されなくなるという問題がある。この点、この構成によれば、ローラの内周面には少なくとも貫通孔と対応する位置に潤滑剤を収容可能な収容空間を形成する筒状のローラブシュがローラと一体回転可能に設けられているため、外部からブシュの外周面とローラブシュの内周面との間に進入した異物がローラブシュの内周面によって貫通孔に押し込まれることが抑制される。このため、貫通孔内の潤滑剤が異物と一緒に押し固められることが抑制されるので、貫通孔が詰まり難くなる。したがって、ブシュの貫通孔からブシュの外側に潤滑剤を安定して供給することができる。
上記シールチェーンにおいて、前記収容空間は、前記ローラブシュの周方向の全体にわたって形成されていることが好ましい。
この構成によれば、ローラブシュがローラと一体回転しても、収容空間を常に貫通孔に対応させることができる。
この構成によれば、ローラブシュがローラと一体回転しても、収容空間を常に貫通孔に対応させることができる。
上記シールチェーンにおいて、前記貫通孔は、前記ブシュの周方向に延びる長孔によって構成されていることが好ましい。
この構成によれば、貫通孔を例えば丸孔によって構成する場合に比べて、貫通孔を詰まり難くすることができる。
この構成によれば、貫通孔を例えば丸孔によって構成する場合に比べて、貫通孔を詰まり難くすることができる。
上記シールチェーンにおいて、前記ローラブシュの軸方向における前記収容空間の幅は、前記ローラブシュの軸方向における前記貫通孔の幅よりも広いことが好ましい。
この構成によれば、ローラブシュ(収容空間)が軸方向に多少ずれた場合でも、収容空間を貫通孔に対応させることができる。
この構成によれば、ローラブシュ(収容空間)が軸方向に多少ずれた場合でも、収容空間を貫通孔に対応させることができる。
上記シールチェーンにおいて、前記ブシュの軸方向における前記貫通孔の幅は、前記ブシュの軸方向における前記ピン孔の幅よりも広いことが好ましい。
この構成によれば、潤滑剤をピン孔から貫通孔へ円滑に流動させることができる。
この構成によれば、潤滑剤をピン孔から貫通孔へ円滑に流動させることができる。
上記シールチェーンにおいて、前記ローラブシュは、前記ローラの内周面に一体形成されていることが好ましい。
この構成によれば、ローラブシュをローラと別体で構成する場合に比べて、部品点数を低減できる。
この構成によれば、ローラブシュをローラと別体で構成する場合に比べて、部品点数を低減できる。
上記課題を解決するシールチェーンは、互いに対向して離れて配置される一対の内リンクプレートと、前記一対の内リンクプレートに両端部がそれぞれ接合される筒状のブシュと、前記ブシュに回転可能に挿入されるピンと、前記ブシュが挿入されて前記ブシュによって回転可能に支持される筒状のローラと、前記一対の内リンクプレートを外側から挟むように配置されて前記ピンの両端部がそれぞれ接合される一対の外リンクプレートと、を備えたシールチェーンであって、前記ピンの内部には、前記ピンの一端部に設けられて潤滑剤を注入可能な注入部と前記ピンの周面における前記ローラと対応する位置に開口するピン孔とを連通する連通路が形成され、前記ブシュにおける前記ピン孔と対応する位置には、前記ブシュの内外を貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔は、長孔によって構成されていることを要旨とする。
通常、注入部から注入した潤滑剤は、連通路、ピン孔、貫通孔を経由してブシュの外周面とローラの内周面との間に供給されることで、ブシュの外周面とローラの内周面との間が潤滑剤によって潤滑される。しかしながら、ブシュの外周面とローラの内周面との間に外部から粉塵などの異物が進入すると、この異物がローラの内周面によって貫通孔に押し込まれるので、貫通孔内の潤滑剤が異物と一緒に押し固められてしまう。この結果、貫通孔が詰まってしまうので、貫通孔からブシュの外周面とローラの内周面との間に潤滑剤が供給されなくなるという問題がある。この点、この構成によれば、貫通孔は、長孔によって構成されているので、外部からブシュの外周面とローラブシュの内周面との間に進入した異物がローラの内周面によって貫通孔に押し込まれても、貫通孔を例えば丸孔によって構成する場合に比べて、詰まり難くなる。したがって、ブシュの貫通孔からブシュの外側に潤滑剤を安定して供給することができる。
上記課題を解決するローラブシュは、上記構成のシールチェーンに用いられることを要旨とする。
この構成によれば、上記シールチェーンと同様の作用効果を得ることができる。
この構成によれば、上記シールチェーンと同様の作用効果を得ることができる。
本発明によれば、ブシュの貫通孔からブシュの外側に潤滑剤を安定して供給することができる。
以下、シールチェーンの一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、シールチェーン11は、例えば鋼材によって構成され、互いに幅方向Yで対向して離れて配置される一対の内リンクプレート12を各々有した複数の内リンク13と、一対の内リンクプレート12を幅方向Yの外側から挟むように配置される一対の外リンクプレート14を各々有した複数の外リンク15とを備えている。
図1に示すように、シールチェーン11は、例えば鋼材によって構成され、互いに幅方向Yで対向して離れて配置される一対の内リンクプレート12を各々有した複数の内リンク13と、一対の内リンクプレート12を幅方向Yの外側から挟むように配置される一対の外リンクプレート14を各々有した複数の外リンク15とを備えている。
内リンク13の内リンクプレート12及び外リンク15の外リンクプレート14は、シールチェーン11が幅方向Yと直交する長手方向の一方側から引っ張られて移動する場合の移動方向ともなる直列方向Xに沿って延びる略矩形板状をなしている。そして、幅方向Yで対向する内リンクプレート12及び外リンクプレート14は、互いに平行となるように配置されている。
したがって、本実施形態のシールチェーン11は、その直列方向Xにおける内リンク13及び外リンク15の一端側と他端側でそれぞれ内リンクプレート12間の間隔及び外リンクプレート14間の間隔が等しくなるように構成された所謂フラットタイプのチェーンである。なお、一対の外リンクプレート14のうちの一方には、他の部材を取り付けるための取付部16が一体形成されている。
図1及び図2に示すように、内リンクプレート12の直列方向Xにおける両端部には、それぞれ円形のブシュ挿入孔17が内リンクプレート12の厚さ方向ともなる幅方向Yに貫通するように形成されている。内リンク13において対向する一対の内リンクプレート12間には、これら一対の内リンクプレート12間の距離を保つように円筒状のブシュ18が2つ組み付けられる。
図2及び図4に示すように、ブシュ18は、両端部19の外径が両端部19以外の中間部20の外径よりも小さくなっており、両端部19が一対の内リンクプレート12のブシュ挿入孔17に対してそれぞれ回転不能に嵌合(接合)されている。ブシュ18の両端部19における先端部分は一対の内リンクプレート12よりも幅方向Yの外側に突出しており、当該突出した先端部分は突出部21とされている。突出部21の先端面は、外リンクプレート14の内側面14aと対向している。
ブシュ18における両端部19と中間部20との間には段差面22が形成されており、段差面22は内リンクプレート12の内側面12aと対向している。ブシュ18における中間部20の中央部にはブシュ18の内外を貫通する貫通孔の一例としての長孔23が形成されている。長孔23はブシュ18の周方向に延びている。
図2及び図3に示すように、内リンクプレート12の外側面12bと外リンクプレート14の内側面14aとの間であってブシュ18の突出部21の外周側には可撓性を有する円環状のOリング24が配置され、Oリング24の外周側には円環状をなす金属製のバックアップリング25が配置されている。Oリング24は、ブシュ18の突出部21の外周面、内リンクプレート12の外側面12b、及び外リンクプレート14の内側面14aに密着しており、内リンクプレート12の外側面12bと外リンクプレート14の内側面14aとの間をシールしている。
ブシュ18は、円筒状のローラ26に挿入されることでローラ26を回転可能に支持している。すなわち、ブシュ18はローラ26に遊嵌されている。ローラ26の内周面27には、円筒状のローラブシュ28がローラ26と一体回転可能に設けられている。この場合、ローラブシュ28は一対の円筒部材29によって構成され、一対の円筒部材29は軸方向となる幅方向Yの両側からローラ26内に圧入されている。
したがって、一対の円筒部材29は、ブシュ18の中間部20の外周面20aとローラ26の内周面27との間に配置されている。このため、一対の円筒部材29は、ローラ26と一体回転することで、これらの内周面29aがブシュ18の中間部20の外周面20aを摺動する。一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間には、潤滑剤としてグリースが配置されている。
一対の円筒部材29における幅方向Yの外側の端面29bは、ローラ26における幅方向Yの両端面30とそれぞれ面一になっている。一対の円筒部材29における幅方向Yの内側の端面同士の間には、潤滑剤の一例としてのグリースを収容可能な収容空間31が形成されている。すなわち、一対の円筒部材29は、これらの幅方向Yの内側の端面同士が幅方向Yにおいて互いに離れて対向することで、円環状の収容空間31を形成している。
つまり、収容空間31は、一対の円筒部材29の周方向の全体にわたって形成されている。この場合、収容空間31は、ブシュ18の長孔23と対応する位置に位置している。さらにこの場合、一対の円筒部材29の軸方向となる幅方向Yにおける収容空間31の幅は、幅方向Yにおける長孔23の幅よりも広くなっている。なお、本実施形態における収容空間31の断面形状は、略四角形状になっている。
外リンクプレート14の直列方向Xにおける両端部には、それぞれブシュ18の内径よりも若干小さい外径を有した円柱状のピン32が挿嵌される円形のピン挿入孔33が外リンクプレート14の厚さ方向ともなる幅方向Yに貫通するように形成されている。ピン32の先端部には孔34が貫通するように形成され、孔34にはピン32がピン挿入孔33から抜けないようにするための抜止ピン35が挿入されている。抜止ピン35は、自身が孔34から抜けないように、先端部が屈曲されている。
そして、外リンク15の一対の外リンクプレート14は、ブシュ18が一対の内リンクプレート12間に組み付けられて形成された内リンク13における一対の内リンクプレート12を外側から挟むように配置された状態で、ピン32を介して内リンク13の内リンクプレート12に対して回動自在に連結される。この場合、ピン32は、両端部以外の中間部が内リンク13の一対の内リンクプレート12間に組み付けられたブシュ18に回転可能に挿入された状態で、両端部が外リンク15の一対の外リンクプレート14のピン挿入孔33に対してそれぞれ回転不能に嵌合(接合)されている。
したがって、ピン32の両端部は一対の外リンクプレート14をそれぞれ貫通しており、直列方向Xで隣り合う内リンク13の内リンクプレート12と外リンク15の外リンクプレート14とが直列方向Xの端部同士でピン32及びブシュ18を介して回動自在に連結されている。
ピン32の基端面36には、円形の凹部37が形成されている。ピン32の内部における凹部37の底面の中央部からピン32における軸方向となる幅方向Yの中央部にかけての位置には、連通路38が直線状に延びるように形成されている。連通路38における凹部37側の開口には、連通路38へグリースを注入するための注入部の一例としてのグリースニップル39が取り付けられている。つまり、グリースニップル39は、ピン32の基端部(一端部)に設けられている。
ピン32には、その外周面32aにおけるローラ26と対応する位置に開口するようにピン孔40が形成されている。すなわち、ピン孔40は、ピン32の外周面32aにおける幅方向Yの中央部であってブシュ18の長孔23と対応する位置に開口している。換言すれば、長孔23は、ブシュ18におけるピン孔40と対応する位置に形成されている。ピン孔40は、ピン32の径方向に延びており、連通路38における凹部37側とは反対側の端部とピン32の外周面32aとを連通している。したがって、連通路38は、グリースニップル39とピン孔40とを連通している。なお、ブシュ18の軸方向となる幅方向Yにおける長孔23の幅は、幅方向Yにおけるピン孔40の幅よりも広くなっている。
ピン32の凹部37には、ゴムなどの可撓性材料によって構成された円柱状のキャップ41が着脱自在に装着されている。キャップ41をピン32の凹部37に装着した状態では、キャップ41がグリースニップル39を覆うとともにキャップ41の外側の面がピン32の基端面36と面一になっている。キャップ41の中央部には、細孔41aが貫通するように形成されている。なお、ピン32の外周面32aとブシュ18の内周面18aとの間には、潤滑剤としてグリースが配置されている。
一対の円筒部材29における幅方向Yの外側のそれぞれの端面29b及びローラ26における幅方向Yの両端面30と、一対の内リンクプレート12の内側面12aとの間には、それぞれ円環状のシール部材42が円環状の金属製のリング43を介してブシュ18の中間部20に外嵌されている。この場合、ブシュ18の中間部20がリング43に圧入され、リング43がシール部材42に圧入されている。
シール部材42は、ゴムなどの可撓性材料によって構成された円環状のリップ部44と、リップ部44の大半を覆う円環状をなす金属製のケース部45とを有している。リップ部44はローラ26の端面30に接触し、ケース部45の一部はリップ部44よりも径方向の外側においてローラ26の端面30に形成された円環状の凹溝46に挿入されている。これにより、ローラ26の端面30と内リンクプレート12の内側面12aとの間がシール部材42によって効果的にシールされる。
次に、シールチェーン11の作用について説明する。
さて、無端状のシールチェーン11を互いに離れて配置された一対のスプロケット(図示略)に対して巻き掛けるように噛合させた状態で片方のスプロケットを回転させると、シールチェーン11が一対のスプロケットの回りを周回移動する。これにより、シールチェーン11は、ローラ26が走行面上を転動することにより、走行面上を走行する。このようにしてシールチェーン11を長期間使用していると、ピン32の外周面32aとブシュ18の内周面18aとの間や一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間に配置したグリースが徐々に外部に漏れ出してその量が減少する。
さて、無端状のシールチェーン11を互いに離れて配置された一対のスプロケット(図示略)に対して巻き掛けるように噛合させた状態で片方のスプロケットを回転させると、シールチェーン11が一対のスプロケットの回りを周回移動する。これにより、シールチェーン11は、ローラ26が走行面上を転動することにより、走行面上を走行する。このようにしてシールチェーン11を長期間使用していると、ピン32の外周面32aとブシュ18の内周面18aとの間や一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間に配置したグリースが徐々に外部に漏れ出してその量が減少する。
すると、ピン32の外周面32aとブシュ18の内周面18aとの間や一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間の潤滑性が低下して、ピン32、ブシュ18、及び円筒部材29が摩耗しやすくなる。このため、ピン32の外周面32aとブシュ18の内周面18aとの間や一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間には、定期的または不定期にグリースを補充する必要がある。
そして、グリースを補充する場合には、まず、ピン32からキャップ41を外した状態でグリースニップル39からグリースを注入する。すると、グリースニップル39から注入されたグリースは、連通路38を流れた後、ピン孔40及び長孔23を経由して収容空間31に流れ込む。これにより、収容空間31がグリースによって満たされる。このとき、グリースは、その流動圧によって、ピン32の外周面32aとブシュ18の内周面18aとの間及びブシュ18の突出部21の先端面と外リンクプレート14の内側面14aとの間を流れてOリング24に到達する。
さらにこのとき、グリースは、その流動圧によって、一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間及び円筒部材29における幅方向Yの外側の端面29bとリング43との間を流れてシール部材42に到達する。したがって、ピン孔40からOリング24及びシール部材42のそれぞれまでのグリースの流れた部分がグリースによって潤滑される。このように、グリースニップル39からグリースを注入するだけで、シールチェーン11の摺動部分全体にグリースが補充される。
なお、一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間のグリースが減った場合には、収容空間31に溜まったグリースによって自然に補充される。このため、一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間のグリースによる潤滑効果が長期間維持される。
また、シールチェーン11を粉塵などの異物が大量に漂う過酷な環境下で使用した場合には、こうした外部の異物がシール部材42を越えて一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間に進入しやすくなる。
ここで、一対の円筒部材29及び収容空間31が存在しない場合、ローラ26の内周面27がブシュ18の中間部20の外周面20aを摺動することになる。この場合、ブシュ18の中間部20の外周面20aとローラ26の内周面27との間に外部から粉塵などの異物が進入すると、この異物がローラ26の内周面27によって長孔23に押し込まれるので、長孔23内のグリースが異物と一緒に押し固められてしまう。この結果、長孔23が詰まってしまうので、長孔23からブシュ18の中間部20の外周面20aとローラ26の内周面27との間にグリースが供給されなくなるという問題がある。
この点、本実施形態のシールチェーン11では、ローラ26の内周面27に一対の円筒部材29を配置することにより、少なくとも長孔23と対応する位置にグリースを収容する収容空間31が形成されている。このため、外部から一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間に進入した異物が一対の円筒部材29の内周面29aによって長孔23に押し込まれることが抑制される。
したがって、長孔23内のグリースが異物と一緒に押し固められることが抑制されるので、長孔23が詰まり難くなる。この結果、ブシュ18の長孔23からブシュ18の外側(一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間など)にグリースが安定して供給される。
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)シールチェーン11は、ローラ26の内周面27に一対の円筒部材29を配置することにより、少なくとも長孔23と対応する位置にグリースを収容する収容空間31が形成されている。この構成によれば、外部から一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間に進入した異物が一対の円筒部材29の内周面29aによって長孔23に押し込まれることを抑制できる。このため、長孔23内のグリースが異物と一緒に押し固められることを抑制できるので、長孔23を詰まり難くすることができる。したがって、ブシュ18の長孔23からブシュ18の外側(一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間など)にグリースを安定して供給することができる。
(1)シールチェーン11は、ローラ26の内周面27に一対の円筒部材29を配置することにより、少なくとも長孔23と対応する位置にグリースを収容する収容空間31が形成されている。この構成によれば、外部から一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間に進入した異物が一対の円筒部材29の内周面29aによって長孔23に押し込まれることを抑制できる。このため、長孔23内のグリースが異物と一緒に押し固められることを抑制できるので、長孔23を詰まり難くすることができる。したがって、ブシュ18の長孔23からブシュ18の外側(一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間など)にグリースを安定して供給することができる。
(2)シールチェーン11において、収容空間31は、一対の円筒部材29の周方向の全体にわたって形成されている。この構成によれば、一対の円筒部材29がローラ26と一体回転しても、収容空間31を常に長孔23に対応させることができる。
(3)シールチェーン11において、ブシュ18に形成される貫通孔は、ブシュ18の周方向に延びる長孔23によって構成されている。この構成によれば、貫通孔を例えば丸孔によって構成する場合に比べて、貫通孔を詰まり難くすることができる。
(4)シールチェーン11において、一対の円筒部材29の軸方向(幅方向Y)における収容空間31の幅は、一対の円筒部材29の軸方向における長孔23の幅よりも広い。この構成によれば、一対の円筒部材29(収容空間31)が軸方向に多少ずれた場合でも、収容空間31を長孔23に対応させることができる。
(5)シールチェーン11において、ブシュ18の軸方向(幅方向Y)における長孔23の幅は、ブシュ18の軸方向におけるピン孔40の幅よりも広い。この構成によれば、グリースをピン孔40から長孔23へ円滑に流動させることができる。
(変更例)
なお、上記実施形態は次のように変更してもよい。
・シールチェーン11において、ブシュ18の軸方向(幅方向Y)における長孔23の幅は、必ずしもブシュ18の軸方向におけるピン孔40の幅よりも広くする必要はない。
なお、上記実施形態は次のように変更してもよい。
・シールチェーン11において、ブシュ18の軸方向(幅方向Y)における長孔23の幅は、必ずしもブシュ18の軸方向におけるピン孔40の幅よりも広くする必要はない。
・シールチェーン11において、一対の円筒部材29の軸方向(幅方向Y)における収容空間31の幅は、必ずしも一対の円筒部材29の軸方向における長孔23の幅よりも広くする必要はない。
・シールチェーン11において、ブシュ18に形成される貫通孔は、必ずしもブシュ18の周方向に延びる長孔23によって構成する必要はない。すなわち、貫通孔は、例えば丸孔によって構成してもよい。
・シールチェーン11において、収容空間31は、必ずしも一対の円筒部材29の周方向の全体にわたって形成する必要はない。すなわち、収容空間31は、一対の円筒部材29の周方向において断続的に形成してもよい。
・収容空間31の断面形状は、任意に変更してもよい。例えば、収容空間31の断面形状を三角形状や半円形状にしてもよい。
シールチェーン11において、ローラブシュ28(一対の円筒部材29)は、ローラ26の内周面27に一体形成してもよい。すなわち、ローラ26の内周面27に周方向に延びる円環状の溝を形成し、この溝を、グリース(潤滑剤)を収容可能な収容空間31として機能させるようにしてもよい。この場合、ローラ26における溝を含む内周側の部分がローラブシュ28となる。このようにすれば、一対の円筒部材29をローラ26と別体で構成する場合に比べて、部品点数を低減できる。
シールチェーン11において、ローラブシュ28(一対の円筒部材29)は、ローラ26の内周面27に一体形成してもよい。すなわち、ローラ26の内周面27に周方向に延びる円環状の溝を形成し、この溝を、グリース(潤滑剤)を収容可能な収容空間31として機能させるようにしてもよい。この場合、ローラ26における溝を含む内周側の部分がローラブシュ28となる。このようにすれば、一対の円筒部材29をローラ26と別体で構成する場合に比べて、部品点数を低減できる。
・長孔23は、ブシュ18の径方向の外側に向かうほどブシュ18の軸方向となる幅方向Yにおける幅が広くなるテーパー状にしてもよい。
・シールチェーン11において、ローラブシュ28(一対の円筒部材29)を省略してもよい。このようにすれば、ブシュ18の貫通孔が長孔23によって構成されているので、外部から一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間に進入した異物が一対の円筒部材29の内周面29aによって貫通孔に押し込まれても、貫通孔を丸孔によって構成する場合に比べて詰まり難くすることができる。したがって、ブシュ18の貫通孔(長孔23)からブシュ18の外側にグリースを安定して供給することができる。
・シールチェーン11において、ローラブシュ28(一対の円筒部材29)を省略してもよい。このようにすれば、ブシュ18の貫通孔が長孔23によって構成されているので、外部から一対の円筒部材29の内周面29aとブシュ18の中間部20の外周面20aとの間に進入した異物が一対の円筒部材29の内周面29aによって貫通孔に押し込まれても、貫通孔を丸孔によって構成する場合に比べて詰まり難くすることができる。したがって、ブシュ18の貫通孔(長孔23)からブシュ18の外側にグリースを安定して供給することができる。
・シールチェーン11は、対向する2つのリンクプレートの直列方向Xにおける一端側の幅を他端側の幅よりも狭くなるように湾曲したリンクをブシュ18及びピン32によって回動可能に複数連結した所謂オフセットタイプのチェーンであってもよい。
11…シールチェーン、12…内リンクプレート、14…外リンクプレート、18…ブシュ、23…貫通孔の一例としての長孔、26…ローラ、28…ローラブシュ、29…ローラブシュ28を構成する円筒部材、31…収容空間、32…ピン、38…連通路、39…注入部の一例としてのグリースニップル、40…ピン孔。
Claims (8)
- 互いに対向して離れて配置される一対の内リンクプレートと、
前記一対の内リンクプレートに両端部がそれぞれ接合される筒状のブシュと、
前記ブシュに回転可能に挿入されるピンと、
前記ブシュが挿入されて前記ブシュによって回転可能に支持される筒状のローラと、
前記一対の内リンクプレートを外側から挟むように配置されて前記ピンの両端部がそれぞれ接合される一対の外リンクプレートと、
を備えたシールチェーンであって、
前記ピンの内部には、前記ピンの一端部に設けられて潤滑剤を注入可能な注入部と前記ピンの周面における前記ローラと対応する位置に開口するピン孔とを連通する連通路が形成され、
前記ブシュにおける前記ピン孔と対応する位置には、前記ブシュの内外を貫通する貫通孔が形成され、
前記ローラの内周面には、少なくとも前記貫通孔と対応する位置に前記潤滑剤を収容可能な収容空間を形成する筒状のローラブシュが前記ローラと一体回転可能に設けられていることを特徴とするシールチェーン。 - 前記収容空間は、前記ローラブシュの周方向の全体にわたって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシールチェーン。
- 前記貫通孔は、前記ブシュの周方向に延びる長孔によって構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシールチェーン。
- 前記ローラブシュの軸方向における前記収容空間の幅は、前記ローラブシュの軸方向における前記貫通孔の幅よりも広いことを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のシールチェーン。
- 前記ブシュの軸方向における前記貫通孔の幅は、前記ブシュの軸方向における前記ピン孔の幅よりも広いことを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のシールチェーン。
- 前記ローラブシュは、前記ローラの内周面に一体形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のシールチェーン。
- 互いに対向して離れて配置される一対の内リンクプレートと、
前記一対の内リンクプレートに両端部がそれぞれ接合される筒状のブシュと、
前記ブシュに回転可能に挿入されるピンと、
前記ブシュが挿入されて前記ブシュによって回転可能に支持される筒状のローラと、
前記一対の内リンクプレートを外側から挟むように配置されて前記ピンの両端部がそれぞれ接合される一対の外リンクプレートと、
を備えたシールチェーンであって、
前記ピンの内部には、前記ピンの一端部に設けられて潤滑剤を注入可能な注入部と前記ピンの周面における前記ローラと対応する位置に開口するピン孔とを連通する連通路が形成され、
前記ブシュにおける前記ピン孔と対応する位置には、前記ブシュの内外を貫通する貫通孔が形成され、
前記貫通孔は、長孔によって構成されていることを特徴とするシールチェーン。 - 請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載のシールチェーンに用いられるローラブシュ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018073367A JP2019183912A (ja) | 2018-04-05 | 2018-04-05 | シールチェーン及びローラブシュ |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2018073367A JP2019183912A (ja) | 2018-04-05 | 2018-04-05 | シールチェーン及びローラブシュ |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2019183912A true JP2019183912A (ja) | 2019-10-24 |
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ID=68340379
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JP2018073367A Pending JP2019183912A (ja) | 2018-04-05 | 2018-04-05 | シールチェーン及びローラブシュ |
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2018
- 2018-04-05 JP JP2018073367A patent/JP2019183912A/ja active Pending
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