以下、本発明の好ましい実施形態であるシート状マスク1を図面を参照しながら説明する。そして、本発明のシート状マスクの製造方法を、シート状マスク1の製造方法を例にとり図面を参照しながら説明する。
先にシート状マスク1について説明する。
シート状マスク1は、図1〜図2に示すように、二つ折りしたマスク本体2と、その内面側に配された一対の耳掛け部材3,3と、二つ折りしたマスク本体2の内部に配された発熱体4とを有するシート状のマスクである。シート状マスク1は、図2に示すように、二つ折りしたマスク本体2の内面側に一対の耳掛け部材3,3が固定されている一方、着用時には、図1に示すように、二つ折り状態のマスク本体2を開いて内面側に配された一対の耳掛け部材3,3を外方に折り返し、折り返した一対の耳掛け部材3,3を着用者の耳に掛けて着用するようになっている。このようなシート状マスク1は、使用前の形態は小型であり、着用状態においてマスク本体2が立体形状を有するようになっており、着用時にマスク本体2と着用者の口元との間に空間を形成する。
マスク本体2は、図3に示すように、着用者の肌対向面側に配される通気性の表面シート20tと、着用者の非肌対向面側に配される通気性の裏面シート20bと、それら20t,20bの間に発熱体4が挟まれた構成を有している。表面シート20t及び裏面シート20bは、着用状態のマスク本体2の輪郭と一致する輪郭を有している。マスク本体2は、表面シート20tと裏面シート20bとの間に一対の発熱体4,4が配されて形成されている。発熱体4は、その全体が、表面シート20t及び裏面シート20bに覆われている。発熱体4は、通気性シート40tが表面シート20t側に配され、非通気性シート40bが裏面シート20b側に配されている。またマスク本体2は、表面シート20tが内面側となるように二つ折りされている。
発熱体4は、二つ折りされたマスク本体2において、後述する折り線25aに対称に配された第1パネルP1及び第2パネルP2にそれぞれ配されている。各発熱体4は、枚葉の矩形状に形成されている。一対の発熱体4,4は、折り線25aに対称に配されており、着用状態において着用者の鼻を対称とした位置に配されるようになる。
発熱体4は、図3に示すように、非肌対向面側に配される非通気性シート40bと、肌対向面側に配される通気性シート40tと、それらのシート40b,40tの間に配される発熱組成物41とを備えている。発熱体4は、例えば、非通気性シート40bの一面に発熱組成物41を塗布又は散布し、塗布等された発熱組成物41の層を通気性シート40tで被覆して形成されている。発熱組成物41は、被酸化性磁性体粉末、電解質及び水等を含有しており、空気との接触による被酸化性磁性粉末の酸化反応を利用して熱を生じさせるものである。
マスク本体2は、図1に示すように、二つ折りによる折り線25aが、着用時に着用者の鼻筋に沿うように上下方向x1に延びている。マスク本体2は、折り線25aを中心として対称に配された第1パネルP1及び第2パネルP2を有している。マスク本体2は、図2に示すように、使用前の状態において、折り線25aに対称に二つ折りされており、折り線25aに対称に配された第1パネルP1と第2パネルP2とが重ねられている。折り線25a側である折り部位には、第1パネルP1と第2パネルP2とを融着した折り側接合部24が形成されている。使用前の状態のマスク本体2は、図2に示すように、折り線25a側の折り側辺25と、着用時に開口する側の開口側辺26と、折り側辺25及び開口側辺26を上方側で繋いで幅方向y1に延びる上縁辺27と、折り側辺25及び開口側辺26を下方側で繋いで幅方向y1に延びる下縁辺28とを有している。上下方向x1に延びる折り側辺25は、幅方向y1外方に湾曲した形状を有している。使用前の状態のマスク本体2では、折り側辺25は、上下方向x1の長さが開口側辺26の上下方向x1の長さよりも長くなっている。上縁辺27は、シート状マスク1の着用時に着用者の頬骨等の形状に沿う形状に形成されており、頬骨に密着するようになっている。また下縁辺28は、シート状マスク1の着用時に着用者の顎全体を覆う形状に形成されている。
図2に示すように、上下方向x1に延びる折り線25a寄りの位置には、外方に湾曲した折り側辺25に沿って延びる折り側接合部24が形成されている。折り側接合部24は、上下方向x1の上方に位置する上縁辺27側に配される鼻側折り接合部24aと、上下方向x1の下方に位置する下縁辺28側に配される顎側折り接合部24bとを有している。鼻側折り接合部24aと顎側折り接合部24bとの間では、折り線25aに対称に配された第1パネルP1と第2パネルP2とは接合されていない。
鼻側折り接合部24aは、シート状マスク1を着用した際の着用者の鼻先に向かう鼻筋のラインに沿うように形成されている。顎側折り接合部24bは、シート状マスク1を着用した際の着用者の鼻先から顎の先端に向かって外方に凸のライン形状に形成されている。
鼻側折り接合部24a及び顎側折り接合部24bは、例えば図8及び図9に示すように、それぞれ、複数の融着部241から形成されている。融着部241は、鼻側折り接合部24aを形成する鼻側融着部241aと、顎側折り接合部24bを形成する顎側融着部241bとを有している。
鼻側融着部241aの1個の面積と、顎側融着部241bの1個の面積は、折り側接合部24からの破れを防止するマスク使用上の観点から、異なっていることが好ましく、顎側融着部241bの1個の面積の方が鼻側融着部241aの1個の面積よりも大きいことが好ましい。ここで、鼻側融着部241aの1個の面積とは、鼻側折り接合部24aを形成する複数の鼻側融着部241aの中で、最も面積の大きな鼻側融着部241aの面積を意味する。同様に、顎側融着部241bの1個の面積とは、顎側折り接合部24bを形成する複数の顎側融着部241bの中で、最も面積の大きな顎側融着部241bの面積を意味する。具体的には、鼻側融着部241aの1個の面積は、0.5mm2以上200mm2以下であることが好ましく、1.0mm2以上50mm2以下であることが好ましい。また、顎側融着部241bの1個の面積は、0.5mm2以上300mm2以下であることが好ましく、1.0mm2以上100mm2以下であることが好ましい。鼻側折り接合部24aにおいて、隣り合う鼻側融着部241a,241aどうしの間隔は、0.3mm以上2.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上1.5mm以下であることが好ましい。顎側折り接合部24bにおいて、隣り合う顎側融着部241b,241bどうしの間隔は、0.3mm以上2.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
図8及び図9に示すように、鼻側融着部241aの延びる方向と、顎側融着部241bの延びる方向とが異なっていることが好ましい。ここで、鼻側融着部241aの延びる方向とは、鼻側折り接合部24aを形成する複数の鼻側融着部241aの中で、最も面積の大きな鼻側融着部241aを抽出し、該鼻側融着部241aの延びる方向を、鼻側融着部241aの延びる方向とする。同様に、顎側融着部241bの延びる方向とは、顎側折り接合部24bを形成する複数の顎側融着部241bの中で、最も面積の大きな顎側融着部241bを抽出し、該顎側融着部241bの延びる方向を、顎側融着部241bの延びる方向とする。このように、鼻側折り接合部24a及び顎側折り接合部24bが、それぞれ、複数の融着部241から形成されており、鼻側融着部241aの延びる方向と、顎側融着部241bの延びる方向とが異なっていると、シート状マスク1の着用状態においてマスク本体2が立体形状のときに、折り線25a寄りの位置に形成された折り側接合部24が破れ難くなる。また、シート状マスク1を折り畳んだ状態から展開するときにも、折り側接合部24が破れ難くなる。
シート状マスク1では、鼻側融着部241aは、例えば図8に示すように、上下方向x1に直交する幅方向y1に延びている。そして、顎側融着部241bは、例えば図9に示すように、上下方向x1に延びている。後述するように、シート状マスク1では、耳掛け接合部23の内方側の接合境界線23aが傾斜して延びるように、耳掛け接合部23が取り付けられているので、着用者の耳を耳掛け部材3に掛けて、シート状マスク1を着用する際に、折り線25a寄りの位置に形成された折り側接合部24が破れ難くなる。折り側接合部24を破れ難くする観点から、鼻側融着部241aは、マスク本体2を形成する表面シート20tの構成繊維の配向方向及び/又は裏面シート20bの構成繊維の配向方向に直交する方向に延びていることが好ましい。同様な観点から、顎側融着部241bは、マスク本体2を形成する表面シート20tの構成繊維の配向方向及び/又は裏面シート20bの構成繊維の配向方向に延びていることが好ましい。
一対の耳掛け部材3,3は、図2に示すように、幅方向y1に長い略矩形状に形成されている。各耳掛け部材3は、マスク本体2を二つ折りした状態において該マスク本体2の内面側に配されている。そして、各耳掛け部材3は、その幅方向y1の外方部分3sがマスク本体2の開口側辺26を含む部分と耳掛け接合部23にて接合されている。耳掛け接合部23は、マスク本体2の開口側辺26に沿って上縁辺27と下縁辺28とに亘って上下方向x1に延びて形成されている。耳掛け接合部23には、耳掛け接合部23の内方側の接合境界線23aが傾斜して延びて形成されている。折り線25aを通る上下方向x1に平行に延びる仮想直線IL(図2参照)と接合境界線23aから延出した第2仮想線IL2(図2参照)とのなす鋭角は、1度以上20度以下であることが好ましく、5度以上15度以下であることが更に好ましい。
一対の耳掛け部材3,3は、図2に示すように、マスク本体2が二つ折りされた状態において、マスク本体2の表面シート20tの内面に接触した状態で、マスク本体2内に収納されている。このように、耳掛け部材3が二つ折りされたマスク本体2内に収納されているので、使用前のシート状マスク1はコンパクトな形状となる。一対の耳掛け部材3,3は、図1に示すように、着用時には二つ折りされたマスク本体2を表面シート20tを露出させるように開くことで使用可能になる。各耳掛け部材3は、耳掛け接合部23の内方側の接合境界線23aを軸に外方に折り返して使用するようになっている。また各耳掛け部材3は、図2に示すように、幅方向y1に延びる横切れ線31aと、上下方向x1に延びる縦切れ線31bとを有している。縦切れ線31bは、横切れ線31aの一端に連結しており、横切れ線31a及び縦切れ線31bは、横切れ線31aと縦切れ線31bとでT字を形成するように配されている。横切れ線31aは、耳掛け部材3の中心を通る幅方向y1に延びる二等分線上に形成されている。そして、シート状マスク1の着用時には、横切れ線31a及び縦切れ線31bを開いて着用者の耳を入れて耳掛け部材3に耳を掛けるようになっている。
以上のように、横切れ線31a及び縦切れ線31bを開いて着用者の耳を耳掛け部材3に掛け、シート状マスク1を着用すると、着用者の鼻から口元を覆うマスク本体2が、着用者の口元との間に空間を有する立体形状に安定的になり易く、着用者の顔の形状にフィットする。
次に、本発明のシート状マスクの製造方法を、前述した一実施形態であるシート状マスク1の製造方法を例にとり図4〜図7を参照しながら説明する。シート状マスク1の製造方法は、耳掛け部材3を形成する耳掛け部材形成工程と、形成された耳掛け部材3を用いてシート状マスク1を形成する工程とに大別される。図4には、シート状マスク1の製造方法に好ましく用いられる製造装置100の概略が示されている。図5には、図4に示す製造装置100の有する耳掛け部材形成部110及び耳掛け部材接合部130を側面視した際の概略図が示されている。また、図6には、図4に示す製造装置100の有する折り接合形成部170及び切断分割部180を側面視した際の概略図が示されている。なお、以下の説明では、シート状マスク1を搬送する搬送方向をX方向、X方向と直交する幅方向をY方向として説明する。
シート状マスク1の製造方法では、図4に示すように、一対の耳掛け部材3,3用の帯状の基材シート30をカットして幅方向Yに並置された一対の耳掛け部材3,3を形成する耳掛け部材形成工程を行う。耳掛け部材形成工程は、図5に示すように、製造装置100の耳掛け部材形成部110を用いて行う。耳掛け部材形成部110は、裁断部111と、リピッチ部112とを備えている。
裁断部111は、図5に示すように、周面に複数のカッター刃(図示せず)を有するカッターロール111aと、該カッターロール111aの周面に対向配置されたカッター用アンビルロール111bとを備えている。カッターロール111aは、幅方向Yに並置された一対の耳掛け部材3,3を形成するパターン(図4参照)のカッター刃を周方向に複数有している。カッターロール111a及びカッター用アンビルロール111bは、図5に示す矢印方向に回転するようになっている。カッター用アンビルロール111bは基材シート30を吸引しながら回転するようになっている。
リピッチ部112は、図5に示すように、カッターロール111aとカッター用アンビルロール111bとのニップ部よりも下流側に配されており、カッター用アンビルロール111bと対向配置されるトランスファーロール112aを備えている。トランスファーロール112aは、カッター用アンビルロール111bよりも回転速度が速く且つカッターロール111aでカットされた一対の耳掛け部材3,3を吸引して吸着可能となっている。トランスファーロール112aは、カットされた一対の耳掛け部材3,3を吸引しながら図5に示す矢印方向に回転するようになっている。
耳掛け部材形成工程では、裁断部111において、図5に示すように、最初に、カッター用アンビルロール111bにより、帯状の基材シート30を吸引しながらカッターロール111aとカッター用アンビルロール111bとのニップ部に搬送し、該ニップ部にて、カッターロール111aのカッター刃をカッター用アンビルロール111bの周面に押し当てて、基材シート30をカットし、幅方向Yに並置された一対の耳掛け部材3,3を形成する。なお、本実施形態における耳掛け部材形成工程では、予め、着用時に耳を掛けるのに使用する横切れ線31a及び縦切れ線31bが形成された基材シート30が用いられている。
本実施形態における耳掛け部材形成工程では、カットにより生じた一対の耳掛け部材3,3を搬送方向Xに間隔を空けて、後述する耳掛け部材接合工程に導入するために、リピッチ部112において、図5に示すように、カッター用アンビルロール111bにより一対の耳掛け部材3,3を吸引しながら搬送し、一対の耳掛け部材3,3を、カッター用アンビルロール111bとトランスファーロール112aとのニップ部にてトランスファーロール112aに受け渡す。そして、トランスファーロール112aとカッター用アンビルロール111bとの回転速度差により、一対の耳掛け部材3,3と、該一対の該耳掛け部材3,3と搬送方向Xに隣り合う別の一対の耳掛け部材3,3との間隔を広げて搬送する。尚、耳掛け部材形成工程では、一対の耳掛け部材3,3のみをトランスファーロール112aに受け渡し、裁断部111にて基材シート30をカットすることで形成されるトリム(図示せず)はリピッチ部112でトランスファーロール112aに受け渡されることなく排出される。
以上が、耳掛け部材形成工程であり、一対の耳掛け部材3,3が形成されると共に、搬送方向Xに隣り合う耳掛け部材3,3どうしの間隔を空けて、一対の耳掛け部材3,3を順次、次のシート状マスク1を形成する工程に導入する。以下、シート状マスク1を形成する工程について図4〜図7を参照しながら説明する。
シート状マスク1の製造方法では、図4に示すように、一対の耳掛け部材3,3を、マスク本体2を構成する帯状のシート部材に接合する耳掛け部材接合工程を行う。該シート部材とは、一枚の基材シート、或いは基材シートが積層された積層体を含む部材を意味し、シート状マスク1の製造方法では、該シート部材として、表面シート20tの基材シートと裏面シート20bの基材シートとの間に発熱体4を配することによって、該2枚のシート間に発熱体4が挟まれた構成のマスク本体連続体20を用いている。耳掛け部材接合工程は、製造装置100の耳掛け部材接合部130を用いて行う。耳掛け部材接合部130は、図5に示すように、接合用アンビルロール132と、超音波シール133とを備えている。超音波シール133及び接合用アンビルロール132は、シート部材であるマスク本体連続体20と耳掛け部材3とを熱融着により固定するためのものである。
接合用アンビルロール132は、金属製のロールであり、図5に示すように、トランスファーロール112aとカッター用アンビルロール111bとのニップ部よりも下流側に配されている。接合用アンビルロール132はトランスファーロール112aの周面に対向配置されている。超音波シール133は、一対の耳掛け部材3,3及びマスク本体連続体20を介して接合用アンビルロール132と対向配置されている。
接合用アンビルロール132には、その周面に、一対の耳掛け部材3,3の接合パターン(図示せず)が形成されている。接合用アンビルロール132は、該接合用アンビルロール132とトランスファーロール112aとのニップ部にて、一対の耳掛け部材3,3を吸着可能となっている。接合用アンビルロール132は、一対の耳掛け部材3,3を吸引しながら図5に示す矢印方向に回転するようになっている。超音波シール133は、公知の超音波発振装置を用いることができる。
耳掛け部材接合工程では、耳掛け部材接合部130において、図4に示すように、マスク本体連続体20を搬送しながら、耳掛け部材3の外方部分3sが搬送されているマスク本体連続体20の搬送方向Xに沿う両側部20s,20s上に位置するように、図5に示すように、接合用アンビルロール132を用いて一対の耳掛け部材3,3を吸引しながら搬送し、一対の耳掛け部材3,3をマスク本体連続体20上に搬送方向Xに間欠的に配置する。ここで、一対の耳掛け部材3,3がマスク本体連続体20上に重なる位置にまで搬送されると、超音波シール133と接合用アンビルロール132との間でマスク本体連続体20の各側部20s及び各耳掛け部材3の外方部分3sを接合して耳掛け接合部23を形成する。尚、マスク本体連続体20上に一対の耳掛け部材3,3を間欠的に配置する工程、及び耳掛け接合部23を形成する工程は、同時であってもよく、別々の工程であってもよい。
次いで、シート状マスク1の製造方法では、図4に示すように、耳掛け部材3が接合されたマスク本体連続体20を二つ折りして二つ折りマスク連続体22を形成する二つ折り工程を行う。二つ折り工程は、製造装置100の二つ折り部140を用いて行う。二つ折り部140は、公知の二つ折り手段である二つ折りガイド(図示せず)を備えている。
二つ折り工程では、二つ折り部140において、図4に示すように、マスク本体連続体20の幅方向Y中央に配された二つ折りガイド(図示せず)によって、耳掛け部材3が接合されたマスク本体連続体20を、幅方向Yの中心部にて折り線25aを形成しながら折り線25aに対称に二つ折りして二つ折りマスク連続体22を形成する。
次いで、シート状マスク1の製造方法では、図4に示すように、二つ折りマスク連続体22を折り線25a寄りの折り部位にて融着して、二つ折り状態を維持する折り側接合部24を形成する折り側接合部形成工程を行う。折り側接合部形成工程は、製造装置100の折り接合形成部170を用いて行う。折り接合形成部170は、アンビルロール172と、該アンビルロール172の周面に対向配置されるエネルギー付与部とを備えている。エネルギー付与部としては、超音波を付与する超音波シール、高周波を付与する高周波シール等が挙げられ、製造装置100では、超音波シール171が用いられている。アンビルロール172は、図6に示す矢印方向に回転するようになっている。
超音波シール171は、金属製のものであり、超音波シール171を含む超音波発振装置は公知の装置を用いることができる。アンビルロール172は、金属製のものであり、ロールの周面に、図7に示すように、複数の凸部による凹凸パターンを有する凹凸パターン部173を備えている。凹凸パターン部173は、凹凸パターン部173の頂部の外周形状が、鼻側折り接合部24aの形状に対応する鼻側凹凸パターン部173aと、顎側折り接合部24bの形状に対応する顎側凹凸パターン部173bとを有している。鼻側凹凸パターン部173aは、ロール回転方向上流側に配され、顎側凹凸パターン部173bは、ロール回転方向下流側に配されている。鼻側凹凸パターン部173aと顎側凹凸パターン部173bとは、アンビルロール172の回転方向に間隔を空けて配されており、鼻側凹凸パターン部173aと顎側凹凸パターン部173bとからなる凹凸パターン部173が、アンビルロール172の回転方向に間欠的に配されている。鼻側凹凸パターン部173aを構成する凸部の頂部は、鼻側折り接合部24aを構成する鼻側融着部241aの形状(図8参照)に対応している。同様に、顎側凹凸パターン部173bを構成する凸部の頂部は、顎側折り接合部24bを構成する顎側融着部241bの形状(図9参照)に対応している。鼻側凹凸パターン部173a及び顎側凹凸パターン部173bは、耳掛け部材3及び発熱体4と重ならない位置に対応する位置に配されていることが好ましい。
折り側接合部形成工程では、折り接合形成部170において、図4及び図6に示すように、形成された二つ折りマスク連続体22を、超音波シール171とアンビルロール172との間のニップ部に搬送する。そして、二つ折により相対向している部位同士を、折り線25a寄りの位置にて融着して、鼻側折り接合部24a及び顎側折り接合部24bを有する折り側接合部24を、二つ折りマスク連続体22に搬送方向Xに間隔を空けて形成する。尚、鼻側折り接合部24a及び顎側折り接合部24bを、二つ折りマスク連続体22に配された耳掛け部材3及び発熱体4と重ならない位置に形成する。二つ折りマスク連続体22の折り線25a寄りの位置に折り側接合部24を形成することで、二つ折り状態が維持されたシート状マスク1の前駆体が形成される。
具体的に、折り側接合部形成工程では、折り接合形成部170において、図4及び図6に示すように、超音波シール171とアンビルロール172の凸部との間に二つ折りマスク連続体22を挟んで振動を印加して、鼻側凹凸パターン部173aの凸部の形状に対応する複数の鼻側融着部241aを形成し、複数の鼻側融着部241aからなる鼻側折り接合部24aを形作ると共に、顎側凹凸パターン部173bの凸部の形状に対応する複数の顎側融着部241bを形成し、複数の顎側融着部241bからなる顎側折り接合部24bを形作る。このように、鼻側折り接合部24aと顎側折り接合部24bとが、二つ折りマスク連続体22の搬送方向Xに間隔を空けて2か所に形成される。シート状マスク1の製造方法では、ロールの周面に複数の凸部による凹凸パターンを有する凹凸パターン部173を備えたアンビルロール172と(図7参照)、超音波シール171とを用いて、二つ折りマスク連続体22に複数の融着部241からなる折り側接合部24を形成しているので、着用時に立体形状となるマスク本体2の折り側接合部24から着用時に破れ難い立体形状のシート状マスク1を連続して効率的に製造することができる。
シート状マスク1の製造方法では、アンビルロール172の凹凸パターン部173は、図7に示すように、鼻側凹凸パターン部173aと顎側凹凸パターン部173bとを含んでおり、鼻側凹凸パターン部173aは、搬送方向X上流側の鼻側折り接合部24aを形成する上流側凹凸パターン部であり、顎側凹凸パターン部173bは、搬送方向X下流側の顎側折り接合部24bを形成する下流側凹凸パターン部である。ここで、鼻側凹凸パターン部173aを構成する凸部の頂部は、製造されるシート状マスク1の幅方向y1に延びる鼻側融着部241aの形状(図8参照)に対応している。そして、顎側凹凸パターン部173bを構成する凸部の頂部は、製造されるシート状マスク1の上下方向x1に延びる顎側融着部241bの形状(図9参照)に対応している。このように、鼻側凹凸パターン部173aの凸部の延びる方向と、顎側凹凸パターン部173bの凸部の延びる方向とが異なっているので、着用時に立体形状となるマスク本体2の鼻側折り接合部24a及び顎側折り接合部24bから、更に剥がれ難く、このようなシート状マスク1を連続して製造することができる。
シート状マスク1の製造方法では、ロール回転方向上流側に配された鼻側凹凸パターン部173aは、例えば構成する凸部がアンビルロール172の軸方向に延びている。尚、鼻側凹凸パターン部173aを構成する凸部は、アンビルロール172の軸方向に沿って平行に延びていていることが好ましいが、軸方向にさえ延びていればよい。そして、ロール回転方向下流側に配された顎側凹凸パターン部173bは、例えば構成する凸部がアンビルロール172の周方向に延びている。尚、顎側凹凸パターン部173bを構成する凸部は、アンビルロール172の周方向に沿って延びていていることが好ましいが、周方向に延びてさえいればよい。このようなアンビルロール172を用いて鼻側折り接合部24a及び顎側折り接合部24bが形成されるので、着用時に立体形状となるマスク本体2の鼻側折り接合部24a及び顎側折り接合部24bから、更に剥がれ難くなる。
また、アンビルロール172は、図7に示すように、鼻側凹凸パターン部173aと顎側凹凸パターン部173bとを有する凹凸パターン部173と、凹凸パターン部173以外に、凹凸パターン部173から軸方向に間隔を空けた位置に第2凹凸パターン部174を備えている。第2凹凸パターン部174は、アンビルロール172の周方向に連続して延びている。第2凹凸パターン部174は、凹凸パターン部173と同様に、ロールの周面に、複数の第2凸部17bによる凹凸パターンを有している。各第2凸部17bは同じ方向に延びており、周方向に隣り合う第2凸部17b,17bどうしの間隔を同じ間隔にして第2凹凸パターン部174の凹凸パターンを形成している。凹凸パターン部173及び第2凹凸パターン部174を備えたアンビルロール172を用いる折り側接合部形成工程では、図4に示すように、アンビルロール172の凸部及び第2凸部17bと超音波シール171との間に二つ折りマスク連続体22を挟んで振動を印加して、折り側接合部24を形成すると共に、第2凹凸パターン部174の第2凸部17bの形状に対応する複数の融着部が搬送方向Xに間欠的に配された連続接合部24Lを形成する。アンビルロール172は、ロールの周面に、凹凸パターン部173から軸方向に間隔を空けた位置に周方向に連続する第2凹凸パターン部174を有しているので、アンビルロール172と超音波シール171との間で二つ折りマスク連続体22を挟んで振動を印加する際の凹凸パターン部173の凸部への圧力負担が軽減する。その為、凸部の頂部の形状が崩れ難く、シート状マスク1を精度良く製造することができる。連続接合部24Lは、鼻側折り接合部24a及び顎側折り接合部24bを有する折り側接合部24から幅方向Yに間隔を空けた位置に形成されており、後述する切断分割工程で生じる廃棄部位10となる部位形成されることが好ましい。
アンビルロール172の第2凹凸パターン部174は、図7に示すように、各第2凸部17bが、ロール回転方向上流側から下流側へ、ロールの周方向に延びる中心線である第3仮想線IL3に向かって延びている。このような方向に向かって各第2凸部17bが延びているので、超音波シール171とアンビルロール172とで二つ折りマスク連続体22に折り側接合部24と連続接合部24Lとを形成する際に、しわを抑制しつつ、シート状マスク1を連続して製造することができる。このような観点から、第3仮想線IL3と第2凸部17bの延びる方向とのなす鋭角βは、10度以上60度以下であることが好ましく、20度以上40度以下であることが更に好ましい。
凸部の頂部の形状を崩れ難くする観点から、鼻側凹凸パターン部173aと顎側凹凸パターン部173bとを有する凹凸パターン部173のアンビルロール172の軸方向の長さと、第2凹凸パターン部174のアンビルロール172の軸方向の長さとの総和が、アンビルロール172の回転方向の何れの位置においても、略同じとなっており、一定していることが好ましい。図7に示すように、第2凹凸パターン部174におけるアンビルロール172の軸方向の長さは、鼻側凹凸パターン部173a及び顎側凹凸パターン部173bが配されていない部分で、最も長く形成されており、顎側凹凸パターン部173bのロール回転方向下流側に対応する部分で最も短く形成されている。このような関係で凹凸パターン部173と第2凹凸パターン部174とが形成されているので、アンビルロール172と超音波シール171との間で、二つ折りマスク連続体22を加圧している際のロール軸方向の線圧が略一定となっており、凸部の頂部の形状が崩れ難い。
次いで、シート状マスク1の製造方法では、図4及び図6に示すように、シート状マスク1の前駆体を所定の形状にカットして個々のシート状マスク1に分割する切断分割工程を行う。切断分割工程は、製造装置100の切断分割部180を用いて行う。切断分割部180は、カッターロール181と、該カッターロール181の周面に対向配置されるアンビルロール182とを備えている。
カッターロール181は、図2に示す二つ折りされたシート状マスク1の形状に倣ったパターンのカッター刃を周方向に複数有している。該カッター刃は、折り側接合部24と一部重なる形状に形成されている。
切断分割工程では、切断分割部180において、図4に示すように、シート状マスク1の前駆体を、カッターロール181とアンビルロール182とのニップ部に搬送して、二つ折りマスク連続体22に形成された折り側接合部24の一部を含む位置にてカットして、鼻側折り接合部24a及び顎側折り接合部24bが形成された二つ折りされたシート状マスク1を、間欠的に形成すると共に、目的とするシート状マスク1以外の廃棄部位10を形成する。形成された廃棄部位10には、折り側接合部24から幅方向Yに間隔を空けた位置に形成された連続接合部24Lが配されていることが好ましい。このように、切断分割部180において、シート状マスク1の前駆体を、目的とするシート状マスク1と、連続接合部24Lが配された廃棄部位10とに分離することができれば、アンビルロール172に第2凹凸パターン部174を配置でき、凹凸パターン部173を構成する凸部の頂部の形状が崩れ難くなる。
以上のように、製造装置100を用いたシート状マスク1の製造方法は、図4、図6及び図7に示すように、ロールの周面に複数の凸部による凹凸パターンを有する凹凸パターン部173を備えたアンビルロール172と、超音波シール171とを用いて、二つ折りマスク連続体22に複数の融着部241からなる折り側接合部24を形成しているので、着用時に立体形状となるマスク本体2の折り側接合部24から着用時に破れ難い立体形状のシート状マスク1を連続して効率的に製造することができる。
シート状マスク1の製造方法では、図4に示すように、一対の耳掛け部材3,3を、マスク本体2を構成する帯状のシート部材に接合する耳掛け部材接合工程の前に、該シート部材に発熱体4を配する発熱体配置工程を行っている。該シート部材とは、シート状マスク1の製造方法では、表面シート20tの基材シートと裏面シート20bの基材シートとを重ね合わせた部材のことである。そして、該2枚のシート間に発熱体4を配することによって、該2枚のシート間に発熱体4が挟まれた構成のマスク本体連続体20となる。発熱体配置工程は、製造装置100の発熱体配置部120を用いて行う。発熱体配置部120は、図4に示すように、発熱体形成部121と、発熱体リピッチ部122とを備えている。
発熱体形成部121は、幅方向Yに並置された一対の発熱体4,4を搬送方向Xに間欠的に配した発熱体の連続体4aを形成するものであり、公知の発熱体形成手段を用いることができる。発熱体リピッチ部122は、一対の発熱体4,4と、該一対の該発熱体4,4の搬送方向Xに隣り合う別の一対の発熱体4,4との間隔を広げて搬送するものであり、公知のリピッチ手段を用いることができる。
発熱体配置部120を用いる発熱体配置工程では、図4に示すように、最初に、発熱体形成部121にて、非通気性シート40bの一面に発熱組成物41を塗布又は散布し、塗布又は散布された発熱組成物41の層を通気性シート40tで被覆して、一対の発熱体の連続体4aを形成する。その後、発熱体の連続体4aをカットして、幅方向Yに並置された一対の枚葉の発熱体4,4が搬送方向Xに間欠的に配される複数の発熱体4を形成する。その後、発熱体リピッチ部122にて、幅方向Yに並置される一対の発熱体4,4と、搬送方向Xに隣り合う別の発熱体4,4との搬送方向Xの間隔を広げ、マスク本体連続体20を構成する裏面シート20bの基材シート上に配置する。発熱体配置工程では、製造するシート状マスク1における発熱体4にダメージを与えない観点から、後述する耳掛け接合部23及び折り側接合部24を予め避ける位置に、一対の発熱体4,4を配置することが好ましい。
発熱体配置工程の後、図4に示すように、裏面シート20bの基材シート上に配置された複数の一対の発熱体4,4の全体を覆うように、裏面シート20bの基材シート上に表面シート20tの基材シートを重ね合わせて帯状のマスク本体連続体20が形成できる。
次に、シート状マスク1に用いられる部材の形成材料について説明する。
シート状マスク1のマスク本体2の表面シート20t及び裏面シート20bとしては、シート同士を融着させる観点から、熱融着性繊維を含んで形成されていることが好ましい。熱融着性繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリエチレン−ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン−ポリエステル複合繊維、低融点ポリエステル−ポリエステル複合繊維、繊維表面が親水性であるポリビニルアルコール−ポリプロピレン複合繊維、並びにポリビニルアルコール−ポリエステル複合繊維等が挙げられる。複合繊維を用いる場合には、芯鞘型複合繊維及びサイド・バイ・サイド型複合繊維の何れをも用いることができる。これらの熱融着性繊維は、各々単独で用いることもでき、又は2種以上を混合して用いることもできる。
一対の耳掛け部材3,3としては、マスク本体2の表面シート20tに融着させる観点から、熱融着性繊維を含んで形成されていることが好ましい。熱融着性繊維としては、マスク本体2の表面シート20t及び裏面シート20bに用いるものと同種のものを用いることができる。
また一対の耳掛け部材3,3は、伸縮性を有していることが好ましい。一対の耳掛け部材3,3が伸縮性を有する場合、一対の耳掛け部材3,3の基材シート30としては、例えば伸縮性を有する不織布を用いることが、伸縮の容易さや、良好な肌触りの点から好ましい。伸縮性を有する不織布としては、構成繊維として少なくとも弾性繊維を含む不織布、例えばエアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布及びスパンレース不織布などを用いることができる。
発熱体の通気性シート40tは、熱融着繊維を含んで形成されていることが好ましい。熱融着性繊維としては、マスク本体2の表面シート20t及び裏面シート20bに用いるものと同種のものを用いることができる。
発熱体4の発熱組成物41としては、被酸化性金属、炭素成分及び水等を含んでいることが好ましい。発熱組成物41を構成する被酸化性金属の粒子としては、酸化反応熱を生ずる金属が用いられ、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、及びカルシウムから選ばれる1種又は2種以上の粉末や繊維が挙げられる。中でも、取扱い性、安全性、製造コスト、保存性及び安定性の点から鉄が好ましく、特に鉄粉が好ましい。鉄粉としては、例えば、還元鉄粉、及びアトマイズ鉄粉などが挙げられる。発熱体4の発熱組成物41を構成する被酸化性金属の粒子の粒径は、例えば0.1〜300μm程度とすることができる。発熱組成物41を構成する炭素成分は、保水能、酸素供給能、及び触媒能の少なくとも1つの機能を有するものであり、この3つを兼ね備えているものが好ましい。炭素成分として、例えば、活性炭、アセチレンブラック、及び黒鉛から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、湿潤時に酸素を吸着しやすいことや、発熱体4中の水分を一定に保てる観点から、活性炭が好ましく用いられる。より好ましくは、椰子殻炭、木粉炭及びピート炭から選ばれる1種又は2種以上の微細な粉末状物又は小粒状物が用いられる。中でも、発熱体4の水分量を所望の範囲に保ちやすいことから、木粉炭が好ましい。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は製造装置100を用いる本実施形態に限定されない。例えば、シート状マスク1の製造方法では、マスク本体2の裏面シートに非通気性のシート40bを用いたが、通気性のシートであってもよい。
また、上述した製造装置100を用いる本実施形態では、折り側接合部形成工程において、鼻側凹凸パターン部173aと顎側凹凸パターン部173bとからなる凹凸パターン部173を有するアンビルロール172を用いて、二つ折りマスク連続体22に、鼻側折り接合部24a及び顎側折り接合部24bを有する折り側接合部24を形成しているが、鼻側凹凸パターン部173a及び顎側凹凸パターン部173bの少なくとも一方を有するロール形状でもよく、また鼻側凹凸パターン部173aの凸部の形状、或いは顎側凹凸パターン部173bの凸部の形状は、特に限定されるものではない。
また、上述した製造装置100を用いる本実施形態では、折り側接合部形成工程において、凹凸パターン部173と第2凹凸パターン部174を有するアンビルロール172を用いて、二つ折りマスク連続体22に、折り側接合部24を形成すると共に、連続接合部24Lを形成しているが、第2凹凸パターン部174を有していないロール形状でもよい。
また、二つ折りされたマスク本体2の内面側に一対の耳掛け部材3,3が配された使用前に小型となるシート状マスク1でなくてもよく、二つ折りされたマスク本体2を備えるシート状マスクであればよい。