JP2019183323A - ポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントおよびその製造方法 - Google Patents

ポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなるモノフィラメントの製造時の冷却工程で発生する真空ボイドの発生を解消し、水産資材、釣り糸として好適に利用し得る太物モノフィラメントを提供する。【解決手段】直径0.7〜4.0mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂のモノフィラメントであって、モノフィラメントの繊維軸方向に連通する中空部を有し、モノフィラメントの繊維軸方向に対して垂直な断面において、前記中空部の面積の占める割合が、モノフィラメントの断面積に対して0.05%以上0.14%以下であり、前記中空部はモノフィラメントの中央の面積が10%の領域内に存在するポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。【選択図】なし

Description

本発明は、直径が0.7mm以上4.0mm以下の太物ポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントに関するものであり、詳しくは、モノフィラメントの略中心部に中空部を有し、製糸性、耐摩耗性に優れ、高強度なポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントに関するものである。
従来からポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、高強力や耐摩耗性に優れる、及び耐候性、低吸水性に優れるなどに加えてナイロンに比べて高比重である、光の屈折率が水に近いなどから水産資材用、釣り糸などに使用されている。
特にカジキやマグロなど大型の魚をターゲットとしたトローリングのリーダー、大間のマグロに代表されるマグロの一本釣りの釣り糸、マグロ延縄用の枝縄に使用するためには太い号柄(太物)の釣り糸が必要となる。
この太物のモノフィラメントの作製工程では口金ノズルからポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶融押し出した後に、冷却固化した未延伸糸中にランダムに真空ボイド(空洞)が形成されることがある。このような真空ボイドが形成された未延伸糸では、モノフィラメントを製造する工程で延伸切れが多発したり、モノフィラメント中に形成された真空ボイドが欠陥となり、得られるモノフィラメントの強度が低下したりする弊害があった。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの真空ボイドを抑制する技術としては、例えばフッ化ビニリデンとフッ化オレフィンの共重合体、ポリフッ化ビニリデンとフッ化ビニリデンとフッ化オレフィンの共重合体をブレンドして糸中のフッ化オレフィンの含有量を1〜6質量%にする技術(特許文献1参照)。また、モノフィラメント中のフッ化オレフィンの含有量を0.3〜0.95質量%に調整する技術(特許文献2参照)が提案されている。
また、糸中の真空ボイドを抑制するもう一つの技術としては、例えば溶融粘度700ポイズ以上の合成樹脂を、中空口径rと吐出口径Rの比(r/R)が0.15〜0.35かつ中空口径が1〜2mmの範囲にある中空口金を用いて溶融紡糸する技術(特許文献3参照)、モノフィラメントの中心に略円形状の中空部を有し、モノフィラメントの繊維軸に垂直な断面に対して中空部の占める面積が0.2〜5%である技術(特許文献4)が提案されている。
特許第4728146号公報 特許第6186269号公報 特開昭55―148207号公報 特開2013―204176号公報
特許文献1および特許文献2の方法では真空ボイドの発生は抑制され、製糸時の延伸切れの発生は抑えられるが、完全になくなるものではなく、ボイドの部分が弱くなり、均一な強さのモノフィラメントが得られないばかりか、共重合成分を含有することにより糸表面が柔軟になり耐摩耗性が劣るという問題が残っていた。
また、特許文献3および特許文献4の方法では真空ボイドの発生は抑えられるが、中空径が大きくなりすぎて破断強度が低くなりすぎて水産資材用モノフィラメント及び釣り糸として使用した場合使用中に破断しやすい問題があり改善が望まれていた。
本発明は、上記従来技術における問題点の解消を課題として検討した結果達成されたものである。したがって、本発明の目的は、直径が0.7〜4.0mm範囲の太物のポリフッ化ビニリデン系樹脂のモノフィラメントの製造時の冷却工程で発生する真空ボイドの発生を解消し、高強力、高耐摩耗性に優れた水産資材、釣り糸として好適に利用し得る太物モノフィラメントを提供することにある。
上記目的を達成するために本発明によれば、直径0.7〜4.0mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂のモノフィラメントであって、モノフィラメントの繊維軸方向に連通する中空部を有し、モノフィラメントの繊維軸方向に対して垂直な断面において、前記中空部の面積の占める割合が、モノフィラメントの断面積に対して0.05%以上0.14%以下であり、前記中空部はモノフィラメントの中央の面積が10%の領域内に存在するポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントが提供される。
なお、本発明のモノフィラメントにおいては、モノフィラメントの略中心部に繊維軸に垂直な断面において中空部の面積の占める面積割合が、モノフィラメントの断面積に対して0.05%以上0.14%以下であること、ポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントがポリフッ化ビニリデンホモポリマーからなること、及び水産資材用モノフィラメント、釣り糸であることがいずれも好ましい条件として上げられる。
本発明によれば、高強力、高耐摩耗性に優れた水産資材、釣り糸などに有用に利用できるポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを得ることができる。
本発明のモノフィラメントは、直径0.7〜4.0mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂のモノフィラメントであって、モノフィラメントの繊維軸方向に連通する中空部を有し、モノフィラメントの繊維軸方向に対して垂直な断面において、前記中空部の面積の占める割合が、モノフィラメントの断面積に対して0.05%以上0.14%以下であり、前記中空部はモノフィラメントの中央の面積が10%の領域内に存在するモノフィラメントである。
本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂のモノフィラメントは、直径0.7〜4.0mmである。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂のモノフィラメントの直径が0.7mmより細い場合は冷却工程で急冷しても真空ボイドの発生がないモノフィラメントを得ることできることから、本発明の課題がなく、4.0mmより太い場合は太さからくる剛性により取り扱いにくくなるためである。かかる観点から、直径が0.8〜3.5mmであることが好ましい。ここで直径とは、モノフィラメントの繊維軸方向の任意の5つの位置において繊維軸と垂直な横断面の長径と短径をそれぞれ5点測定してその平均を求めた値を言う。なお、長径・短径とは、モノフィラメントの断面の輪郭が外接する、面積が最小となる長方形の長辺の長さおよび短辺の長さとをいうものとする。
本発明において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂のモノフィラメントとは、モノフィラメントを構成する樹脂の主成分がポリフッ化ビニリデン系樹脂であるモノフィラメントであることを意味する。ここでモノフィラメントを構成する樹脂とは、モノフィラメントに含まれる樹脂成分をいい、モノフィラメントが樹脂以外の添加剤を含有することを妨げない。樹脂の主成分とは樹脂成分の内60%を超えて含まれる成分をいう(以下同様)。モノフィラメントを構成する樹脂としてポリフッ化ビニリデン系樹脂以外の樹脂を主成分として使用した場合には、高強度、耐摩耗性、高比重、耐候性、低吸水性に優れるなどの特徴を部分的に満たすことは可能であるが、これらの要求性能を総て兼ね備えるには至らず好ましくない。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂とは、フッ化ビニリデン単位を含む重合体であり、例えばポリフッ化ビニリデンホモポリマ、フッ化ビニリデンを構成単位とした共重合体ポリマ、さらには、これら重合体の混合物が挙げられるが、特に高強度、耐摩耗性の観点からポリフッ化ビニリデンホモポリマが好ましい。
本発明のモノフィラメントにはモノフィラメントの繊維軸方向に連通する中空部を有し、モノフィラメントの繊維軸方向に対して垂直な断面において、前記中空部の面積の占める割合が、モノフィラメントの断面積に対して0.05%以上0.14%以下であり、前記中空部はモノフィラメントの中央の面積が10%の領域内に存在する。ここで、モノフィラメントの中央の面積が10%の領域とは、モノフィラメントの繊維軸方向に対して垂直な断面において、外径の中心を同一とし形状が相似形であって面積が10%である領域をいうものとする。ここで、モノフィラメントの外径の中心とは、モノフィラメントの断面の輪郭が外接する、面積が最小となる長方形の重心と定義する。かかる態様の中空部を有することにより、ポリフッ化ビニリデン系樹脂のモノフィラメントを製造する際の真空ボイドの形成を防止でき、課題とする高強力、高耐摩耗性に優れたモノフィラメントを得ることが可能となった。かかる態様の中空部を有しない場合は、モノフィラメントの製造時にモノフィラメントの長手方向にランダムに真空ボイドが発生してしまうため、欠陥を有するモノフィラメントとなる。
太物のポリフッ化ビニリデン系樹脂のモノフィラメントにおいて真空ボイドが発生するメカニズムは、以下の様に推測している。溶融押し出しされたモノフィラメントを冷却する工程では、急激に冷却を受け、外層からポリマの融点以下に冷却されて固化を開始し、徐々に中央に向かい冷却固化が進行していく。モノフィラメントが太物の場合、押し出される溶融ポリマの体積が大きいため、外層部の冷却固化開始から内層部の冷却固化完了に至るまでの時間差が大きくなる。ここで、溶融ポリマと固化したポリマの密度と体積の関係を考えると、溶融ポリマの密度は、固化したポリマの密度より低いため質量が同じ場合に、体積は大きいことになる。このことを外層部から徐々に冷却を受け冷却固化が進行していく状態に置き換えて考えてみると、溶融押し出しされたポリマは、押し出された際の形状と体積を維持しつつ、冷媒と接触する外層部から固化し未延伸糸となるが、この時の未延伸糸の外径(直径)はポリマ溶融時の体積が支配的に作用する。外層部のみ冷却固化した未延伸は、さらに冷却を受けながら強固な外骨格状の外層部となり、その後、徐々に外層部から内層部に向かって冷却固化は進行する。この状態の未延伸糸は依然として最内層部の樹脂は溶融状態にあり密度は低く、冷却固化の進行に従い溶融ポリマの密度変化により、その体積は次第に小さくなっていく。すなわち、先に冷却固化を終えた未延伸糸の外径は、低密度状態の押し出しポリマの体積によって決まるため、この未延伸糸の外層部が強固な外骨格状の未延伸糸となった場合、内層部の溶融ポリマの冷却固化により体積減少が生じても外層部の変形が起こりにくく、内層ポリマの体積が減じた分だけ、未延伸糸中心部に微細な亀裂や真空ボイドが生じて未延伸糸のところどころに固まって真空ボイドが形成されてしまうことになる。
ポリフッ化ビニリデン系樹脂のモノフィラメントが、本発明の態様の中空部を有することにより、モノフィラメント製造時における上記推測メカニズムによる真空ボイドの形成を防止できるものと推測している。かかる効果の観点から、モノフィラメントの繊維軸方向に対して垂直な断面において、前記中空部の面積の占める割合が、モノフィラメントの断面積に対して0.05%以上0.14%以下であり、0.08%以上0.12%未満であることが好ましい条件として挙げられる。断面積割合が0.05%より低くなると冷却工程で出来る真空ボイドを完全になくすことができず、未延伸糸の所々に小さな真空ボイドが発生してしまい延伸後のモノフィラメントが弱くなってしまうため好ましくなく、逆に断面積割合が0.14%より大きくなると真空ボイドの発生はなくなるが、同一直径のモノフィラメントに対して破断強力が低くなってしまうため好ましくない。
また、前記中空部はモノフィラメントの中央の面積が10%の領域内に存在するモノフィラメントであることにより、製造工程で外側から冷却固化が進行することにより生じる体積変化に起因する歪を吸収し、真空ボイド発生を抑制できることにより、欠陥のないモノフィラメントとなる。中空部が中心より大きくずれてしまった場合、上記の冷却固化の進行に起因する歪が吸収しきれない部分が生じ、未延伸糸中に真空ボイドが発生し、欠陥のあるモノフィラメントとなる。
本発明のモノフィラメントはJIS L1013:2010に準じて測定した引張強度が2cN/dtex以上であることが好ましく、2.5cN/dtex以上であることがより好ましい。また、下記試験法で測定した擦過後の引張強力保持率が60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。
試験法:一辺が10mm角の四角断面ステンレス棒(角のRが0.2mm公差±0.1mm、各面の鏡面仕上げが#400)からなる擦過棒6本を、直径130mm、長さ240mmの回転枠に角の部分が外周に来るように、平行かつ等間隔で取付けた装置を用い、長さ400mmのモノフィラメントの一端にモノフィラメントの単位断面積(mm)当り3Kgの重りを取り付け、その他端をスライドシャフトに接続したサンプルを、上記6本の擦過棒の角部に接触するようにして、上記回転枠に懸下する。次に釣糸に水をシャワリングしつつ、上記スライドシャフトを軸方向に往復運動することにより、釣糸に対し幅20mm、片道60秒の速度の往復移動を与えながら、上記回転枠を250rpmの回転速度で重り方向に回転させる。上記回転枠を60秒間回転させた後の釣糸を採取して、その引張強力をJIS L1013:2010の規定に準じて測定(測定条件は実施例を参照)し、初期の引張強力に対する強力保持率(%)を算出する。
引張強度が2cN/ dtexを下回るようなモノフィラメントでは釣り糸として使用した場合強力が不足して魚の引きに耐えられず糸が破断してしまうため掛けた魚を取り逃がしてしまう場合があるため好ましくなく、強力保持率が60%を下回る場合は掛けた魚が暴れた時マグロの歯やエラ、船縁、または巻き上げ機などの漁具などに糸が接触して糸の表面に傷が入り強度低下を起こす場合があり、それにより掛けた魚を取り逃がしてしまう場合があるため好ましくない。
本発明のモノフィラメントの製造方法は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を吐出口径Rと中空パイプ径rの比(r/R)が0.03〜0.1である中空口金から溶融押し出しし、モノフィラメントの繊維軸方向に対して垂直な断面において、前記中空部の面積の占める割合が、モノフィラメントの断面積に対して0.05%以上0.14%以下である繊維軸方向に連通する中空部を有する直径0.7〜4.0mmのモノフィラメントを得る製造方法である。
まず、ポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを溶融紡糸するに際しては、例えばエクストルーダー型溶融紡糸機を使用して、ポリマ温度、押出圧力、口金孔径、紡糸速度などの各条件を適宜選択することができる。
なお、ポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを溶融紡糸するに際して溶融押し出しする工程で、中空パイプ径rと吐出口径Rの比(r/R)が0.03〜0.1である中空口金を使用することにより、モノフィラメントの繊維軸方向に対して垂直な断面において、前記中空部の面積の占める割合が、モノフィラメントの断面積に対して0.05%以上0.14%以下である繊維軸方向に連通する中空部を有する本発明のモノフィラメントを得ることができる。ここで適用される中空口金は、通常中空部が吐出口の中央にあり、かかる口金を適用することによりモノフィラメントの繊維軸方向に連通する中空部は、モノフィラメントの中央の面積が10%の領域内に存在するものとなる。
すなわち、中空口金から紡出されたポリマ溶融物は、短い気体ゾーンを通過した後、例えば水、グリセリン、ポリエチレングリコールなどの冷媒中で冷却固化されて、未延伸糸となる。
冷却固化された未延伸糸は、引き続き1段乃至多段延伸されることが好ましい。この際、未延伸糸は、温水、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびシリコーンオイルなどの熱媒浴、熱気体浴、または水蒸気浴中で、全延伸倍率5.0倍以上で延伸されることがより好ましく、5.5倍以上に延伸されることがさらに好ましい。
さらに、延伸されたモノフィラメントは、延伸歪みの除去を目的として、適宜定長および/または弛緩熱処理を行なってもよい。
こうして得られたポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを水産資材もしくは釣糸として使用した場合には、従来のポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントからなる釣糸に比べて高強度、高耐摩耗性、さらに強度の均一性に優れた特性とを兼ね備えた釣り糸となることから、特にマグロや、カジキなど大型魚類を捕獲する釣り糸として有用である。
以下に、本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例におけるモノフィラメントの評価は以下の方法で行った。
[引張強度]
JIS L1013:2010の規定に準じて測定した。すなわち、モノフィラメントを20℃、65%RHの温湿度調整室で24時間放置後、株式会社島図製作所社製「オートグラフAG−1000G型」引張試験機を使用して、試長250mm、引張速度300mm/分の条件で引張破断強力を1サンプルに対して5回測定し、その平均を求め強度を算出した。
[直径]
デジタルマイクロメーター(MITUTOMO製)でモノフィラメントの直径を繊維軸方向にランダムに5点測定しその平均値で表示した。
なお、モノフィラメントの直径については本文にて定義した長径、短径を各5点測定してその平均で表示した。
[中空径測定]
モノフィラメントを繊維軸に対して垂直にカットしたサンプルを作製し、キーエンス社製マイクロスコープVHX−5000を使い中空部の直径を画面に対して水平、垂直、ななめ45°(左右)の4点について測定し、その平均値で中空径を求めた。
[中空比率]
前記直径測定で求めた糸径をもとにモノフィラメントの断面積Aを求め、前記中空径測定で求めた中空径をもとに中空部の断面積Bを求め下式により中空比率を算出した。
式:B/A×100
[擦過後の引張強力保持率]
一辺が10mm角の四角断面ステンレス棒(角のRが0.2mm、公差±0.1mm、各面の鏡面仕上げが#400)からなる擦過棒6本を、直径130mm、長さ240mmの回転枠に角の部分が外周に来るように、平行かつ等間隔で取付けた装置を用い、長さ400mmの釣糸の一端に釣糸の単位断面積(mm)当り3Kgの重りを取り付け、その他端をスライドシャフトに接続したサンプルを、上記6本の擦過棒の角部に接触するようにして、上記回転枠に懸下した。次に釣糸に水をシャワリングしつつ、上記スライドシャフトをトラバースすることにより、釣糸に対し幅20mm、片道60秒の速度の往復移動を与えながら、上記回転枠を250rpmの回転速度で重り方向に回転させた。上記回転枠を60秒間回転させた後のモノフィラメントを採取して、その引張強力をJIS L1013:2010の規定に準じて測定(測定条件は上記引張強度と共通)し、初期の引張強力に対する強力保持率(%)を算出した。
[製糸性]
実際にポリフッ化ビニリデン系樹脂を使用してモノフィラメントを作製した時の製糸性を下記の2段階で評価した。
○・・・未延伸糸でのボイドの発生、延伸時の糸切れもなく安定してモノフィラメントが得られた。
×・・・冷却工程で真空ボイドが発生し、延伸時に糸切れが多発し、安定してモノフィラメントが得られなかった。
[総合評価]
以下の基準で評価した。
○・・・モノフィラメントの強度が、2cN/dtex以上、かつ、擦過後の強力保持率が60%以上であるもの
×・・・モノフィラメントの強度が、2cN/dtex未満、または、擦過後の強力保持率が60%未満であるもの
[実施例1]
ソルベイスペシャルティポリマーズ製(SOLEF6013:ホモポリマ)をエクストルーダー型紡糸機へ供給し、紡糸温度260℃で溶融混練した後、ギヤポンプを経て、紡糸パック内の濾過層を通過して口径5.0mm、中空パイプ径0.23mmの中空口金から空気中に紡出し、ただちに75℃の温水浴中で冷却固化させたポリフッ化ビニリデン未延伸糸を得た。引き続き、得られた未延伸糸を160℃のポリエチレングリコール浴で4.5倍に一次延伸し、次いで155℃の乾熱雰囲気下で1.3倍に二次延伸を行ってトータル延伸倍率5.85倍とし、さらに、150℃の乾熱雰囲気下、0.95倍で弛緩処理することにより、直径1.80mmのポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメントの評価結果を表1に示す。
[実施例2]
使用した口金を口径3.5mm中空パイプ径0.16mmに変更して糸径を0.7mmにした以外は実施例1と同様の製法でポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメントの評価結果を表1に示す。
[実施例3]
使用した口金を口径10.0mm中空パイプ径0.39mmに変更して糸径を3.0mmにした以外は実施例1と同様の製法でポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメントの評価結果を表1に示す。
[実施例4]
使用した口金を口径15.0mm中空パイプ径0.45mmに変更して糸径を4.0mmにした以外は実施例1と同様の製法でポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメント評価結果を表1に示す。
[実施例5]
使用原料をソルベイスペシャルティポリマーズ製(SOLEF11010:共重合ポリマ)に変更した以外は実施例1と同様の製法でポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメントの評価結果を表1に示す。
[比較例1]
使用した口金を口径5.0mmの口金に変更して実施例1と同様の製法でポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを得ようとしたが、得られた未延伸糸には所々ランダムに真空ボイドの発生が見られ、得られた未延伸糸を160℃のポリエチレングリコール浴で4.5倍に一次延伸し、次いで155℃の乾熱雰囲気下で1.3倍に二次延伸を行ったところ、真空ボイドの部分で糸切れが発生してしまいモノフィラメントを得ることができなかった。
[比較例2]
使用した原料を東レ製(M1041:ポリアミド6)に変更した以外は実施例1と同様の製法でポリアミドモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメントの評価結果を表1に示す。
[比較例3]
使用した口金を口径3.0mm中空パイプ径0.25mmに変更して糸径0.5mmにした以外は実施例1と同様の製法でポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメントの評価結果を表1に示す。
[比較例4]
使用した口金を口径20mm中空パイプ径0.65mmに変更して糸径5.0mmにした以外は実施例1と同様の製法でポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを得た。
得られたモノフィラメントの評価を表1に示す。
Figure 2019183323
表1の結果から明らかなように、本発明の条件を満たしたポリフッ化ビニリデン系モノフィラメント(実施例1〜5)は、何れも高強力、高耐摩耗性に優れた水産資材、釣り糸などに有用に利用できるポリフッ化ビニリデン系樹脂太物モノフィラメントであることがわかる。
一方、本発明の条件を満たさないポリフッ化ビニリデン系モノフィラメント(比較例1〜4)は、水産資材、釣り糸としての効果を十分に発揮することができないものばかりであった。
例えば、モノフィラメントの略中心部にモノフィラメントの繊維軸に対して垂直な断面に対して中空部を設けていない(比較例1)は、冷却工程で真空ボイドの発生のため続く延伸工程で糸切れが多発してしまいモノフィラメントを作製することができなかった。また、実施例1のモノフィラメントの素材をポリアミド6に変更した(比較例2)は、モノフィラメントの糸表面に傷が入りやすく、擦過後の強力保持率が低くなり魚が暴れた時マグロの歯やエラ、船縁、漁具に糸が接触して糸表面に傷が入りそれにより強度低下を起こし糸が切れてしまうことから実用性に欠けるものであった。さらに、ポリフッ化ビニリデン系モノフィラメントの直径が0.5mmと本発明の範囲より細い(比較例3)は、カジキやマグロなど大型魚類用に使用した場合糸が細すぎて絶対強力が足りないことから魚の引きに耐えられず糸が切れてしまうことから実用性に欠けるものであった。一方、ポリフッ化ビニリデン系モノフィラメントの直径が5.0mmと本発明の範囲より太い(比較例4)は、太さからくる剛性により取り扱いがしにくくなり実用性に欠けるものであった。
以上、説明したとおり、本発明のポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントは、略中心に中空部を設けることにより、製造の冷却工程で発生する真空ボイドの発生がなく、高強力、高耐摩耗性に優れた水産資材、釣り糸等としての実用が大いに期待される。

Claims (6)

  1. 直径0.7〜4.0mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂のモノフィラメントであって、
    モノフィラメントの繊維軸方向に連通する中空部を有し、
    モノフィラメントの繊維軸方向に対して垂直な断面において、前記中空部の面積の占める割合が、モノフィラメントの断面積に対して0.05%以上0.14%以下であり、前記中空部はモノフィラメントの中央の面積が10%の領域内に存在するポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
  2. JIS L1013:2010に準じて測定した引張強度が2cN/dtex以上かつ下記試験法により得た擦過後の引張強力保持率が60%以上である請求項1に記載のポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
    試験法:一辺が10mm角の四角断面ステンレス棒(角のRが0.2mm、各面の鏡面仕上げが#400)からなる擦過棒6本を、直径130mm、長さ240mmの回転枠に角の部分が外周に来るように、平行かつ等間隔で取付けた装置を用い、長さ400mmのモノフィラメントの一端にモノフィラメントの単位断面積(mm)当り3Kgの重りを取り付け、その他端をスライドシャフトに接続したサンプルを、上記6本の擦過棒の角部に接触するようにして、上記回転枠に懸下する。次に釣糸に水をシャワリングしつつ、上記スライドシャフトを軸方向に往復運動することにより、釣糸に対し幅20mm、片道60秒の速度の往復移動を与えながら、上記回転枠を250rpmの回転速度で重り方向に回転させる。上記回転枠を60秒間回転させた後の釣糸を採取して、その引張強力をJIS L1013:2010の規定に準じて測定し、初期の引張強力に対する強力保持率(%)を算出する。
  3. 前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂のモノフィラメントを構成する樹脂が、ポリフッ化ビニリデンホモポリマからなる請求項1または2に記載のポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメント。
  4. 請求項1〜3いずれか1項に記載のポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを用いた、水産資材。
  5. 請求項1〜3いずれか1項に記載のポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントを用いた、釣り糸。
  6. ポリフッ化ビニリデン系樹脂を吐出口径Rと中空パイプ径rの比(r/R)が0.03〜0.1である中空口金から溶融押し出しし、モノフィラメントの繊維軸方向に対して垂直な断面において、前記中空部の面積の占める割合が、モノフィラメントの断面積に対して0.05%以上0.14%以下である繊維軸方向に連通する中空部を有するモノフィラメントを得る直径0.7〜4.0mmのポリフッ化ビニリデン系樹脂モノフィラメントの製造方法。
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