JP2019178967A - 中性子遮蔽材及び使用済燃料集合体貯蔵容器 - Google Patents

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【課題】耐熱性が高く、高温環境下においても中性子遮蔽性能が低下し難い中性子遮蔽材、及び、これを備えた使用済燃料集合体貯蔵容器を提供する。【解決手段】中性子遮蔽材は、エポキシ樹脂を主成分の一つとする中性子遮蔽材であって、エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を二つ以上含む化合物を少なくとも一つの成分として含む主剤と、エポキシ基を開環重合させる硬化剤と、を含む樹脂組成物の硬化物で構成され、硬化剤が、フェノール樹脂である。使用済燃料集合体貯蔵容器1は、内側容器2と、内側容器2の外側に設置された外側容器3と、内側容器2内に設置されており、使用済燃料集合体を収納するためのバスケット5と、内側容器2を囲む中性子遮蔽材6と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、エポキシ樹脂製の中性子遮蔽材、及び、これを備えた使用済燃料集合体貯蔵容器に関する。
原子力発電の後、原子炉から取り出された使用済燃料集合体は、原子力発電所内の冷却プールで一定の期間、冷却されてから、燃料再処理工場等の処理施設、中間貯蔵施設等に輸送される。使用済核燃料の発生量が再処理能力を超える場合、使用済核燃料を長期間にわたって貯蔵する必要が生じるため、乾式貯蔵が検討されている。使用済核燃料を原子力発電所の内外で貯蔵したり、使用済核燃料を輸送したりする際には、使用済燃料集合体を貯蔵する容器として、金属製の乾式キャスクが使用される。
使用済核燃料は、冷却プールにおける冷却で核分裂反応や放射性崩壊がある程度減衰した後においても、高線量の中性子線やγ線の他、多量の崩壊熱を放出し続ける。また、濃縮度が高い高燃焼度用核燃料が使用された場合、使用済核燃料が生じる発熱量、中性子強度等は更に増加することが想定される。そのため、使用済燃料集合体を貯蔵ないし輸送するキャスクには、高い中性子遮蔽性能、密閉性能、耐熱性能等が要求される。
従来、軽量で固体の中性子遮蔽材として、合成樹脂製の中性子遮蔽材が利用されている。一般に、合成樹脂製の中性子遮蔽材は、樹脂マトリックス中に中性子吸収材や難燃剤が配合されて形成されている。合成樹脂としては、中性子の弾性散乱断面積が大きい水素原子を高密度で含有するものが用いられる。一方、貯蔵中の熱負荷が問題となるキャスク等の用途において、合成樹脂は、水素密度と相反する関係にある高い耐熱性を備える必要がある。
キャスク用の中性子遮蔽材としては、水素密度と耐熱性とのバランスが良く、常温硬化も可能であり、空間への充填性や機械強度に優れたエポキシ樹脂が多用されている。従来、合成樹脂の水素密度を向上させる観点等から、樹脂マトリックスを水添ビスフェノール型のエポキシ樹脂で形成し、硬化剤として水素数が多いアミン系を用いる技術が開発されてきた。しかし、アミン系の硬化剤は耐熱性が必ずしも高くないため、水素密度と耐熱性を両立させる種々の検討が重ねられている。
例えば、特許文献1には、エポキシ成分と、硬化剤成分と、中性子吸収剤であるホウ素化合物と、耐火材とを含む中性子遮蔽材用組成物が記載されている。エポキシ成分としては、CH、H、F、Cl又はBrを置換基として有する水素添加ビスフェノール型エポキシが挙げられている。また、硬化剤成分としては、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)や、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンや、イミダゾール化合物が挙げられている(請求項3等参照)。
特許第3643798号公報
特許文献1に記載されるように、硬化剤として、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イミダゾール化合物等を使用し、水添ビスフェノール型のエポキシ樹脂に架橋構造を導入すると、水素密度をある程度高く保ちつつ、耐熱性を向上させることができる。しかし、エポキシ樹脂製の中性子遮蔽材は、依然として、十分な耐熱性があるとはいえず、更なる耐熱化が望まれている。
中性子遮蔽材が設置される環境は、キャスク当たりに収容する使用済燃料集合体の装荷数を増やしたり、高燃焼度用の使用済燃料集合体を貯蔵したりする場合、150℃ないし200℃以上の高温になることが想定されている。合成樹脂は金属等と比較して熱伝導率が低いため、このような高温における貯蔵期間が長期化すると、中性子遮蔽材に膨大な熱負荷が加わる。そのため、熱負荷によって酸化劣化や放射線劣化が促進されて、エポキシ樹脂が熱分解することが問題となる。
中性子遮蔽材中のエポキシ樹脂が熱分解すると、成分中の水素原子が気化によって失われたり、中性子遮蔽材の形状が保たれ難くなったりするため、中性子遮蔽性能が著しく低下する。そのため、高い水素密度を有していながら、耐熱性も高く、キャスク等の用途において高温環境における貯蔵が続いた場合にも、熱老化に対して高い耐性を示す中性子遮蔽材やキャスクが求められている。
そこで、本発明は、耐熱性が高く、高温環境下においても中性子遮蔽性能が低下し難い中性子遮蔽材、及び、これを備えた使用済燃料集合体貯蔵容器を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために本発明に係る中性子遮蔽材は、エポキシ樹脂を主成分の一つとする中性子遮蔽材であって、前記エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を二つ以上含む化合物を少なくとも一つの成分として含む主剤と、前記エポキシ基を開環重合させる硬化剤と、を含む樹脂組成物の硬化物で構成され、前記硬化剤が、フェノール樹脂である。
また、本発明に係る使用済燃料集合体貯蔵容器は、内側容器と、前記内側容器の外側に設置された外側容器と、前記内側容器内に設置されており、使用済燃料集合体を収納するためのバスケットと、前記内側容器を囲む前記の中性子遮蔽材と、を備える。
本発明によると、耐熱性が高く、高温環境下においても中性子遮蔽性能が低下し難い中性子遮蔽材、及び、これを備えた使用済燃料集合体貯蔵容器を提供することができる。
使用済燃料集合体貯蔵容器の一例を示す斜視図である。 エポキシ樹脂の樹脂組成物の加熱に伴う重量減少率を測定した結果を示す図である。 エポキシ樹脂の樹脂組成物のガラス転移温度を測定した結果を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る中性子遮蔽材、及び、これを備えた使用済燃料集合体貯蔵容器について、図を参照しながら説明する。
<中性子遮蔽材>
本実施形態に係る中性子遮蔽材は、エポキシ樹脂を主成分の一つとするエポキシ樹脂製の中性子遮蔽材である。本実施形態に係る中性子遮蔽材は、樹脂マトリックスを形成するエポキシ樹脂中に、難燃剤、中性子吸収材等が任意に配合され、適宜の形状に成形されて用いられる。この中性子遮蔽材は、中性子を遮蔽する各種の用途に用い得るが、特に、150℃ないし200℃以上の高温が継続する可能性がある用途、例えば、乾式キャスクの部材として好適に用いられる。
中性子遮蔽材の主成分であるエポキシ樹脂は、樹脂組成物を重合反応によって硬化させた硬化物で構成される。エポキシ樹脂を形成する樹脂組成物は、分子内にエポキシ基を二つ以上含むエポキシ化合物を少なくとも一つの成分として含む主剤と、エポキシ化合物のエポキシ基を開環重合させる硬化剤と、を含んで組成される。また、樹脂組成物には、エポキシ基を介した重合を促進する硬化促進剤が、主剤の種類、硬化条件等に応じて任意に添加される。
本実施形態に係る中性子遮蔽材は、硬化剤として、フェノール樹脂を用いるものである。硬化剤として一般的に用いられる酸無水物は、耐湿性が低く、200℃程度以下で熱分解する遊離酸を生成するため、中性子遮蔽材が150℃ないし200℃以上の高温に晒されたとき、十分な耐熱性が得られず、水素密度の低下等を引き起こす。また、酸無水物は、代表的な硬化促進剤であるイミダゾール系化合物をはじめ、塩基性の成分との反応性が高いため、反応により炭酸ガスを生成し、中性子遮蔽材を膨張させて密度の低下を引き起こす。また、硬化剤として一般的に用いられるポリアミン等は、柔軟な骨格を有することが多く、耐熱性に問題がある。これに対し、硬化剤として、フェノール樹脂を用いると、エポキシ樹脂のガラス転移温度が高くなるため、高温環境においても熱老化の進行を最小限に抑制し、高い水素密度や中性子遮蔽材の形状を維持することができる。
なお、本明細書において、「フェノール樹脂」とは、フェノール又はフェノール誘導体とアルデヒド類とを重合させて得られる高分子化合物を意味する。フェノール樹脂は、分子量や重合度が特に制限されるものではなく、フェノールやフェノール誘導体以外の環構造を有する構造単位によって変性されていてもよい。また、本明細書において、「硬化剤」及び「硬化促進剤」の用語は、互いに排他的な概念を意味するものではなく、それぞれ共通の化合物を含むことがあり得る。例えば、「硬化剤」は、それ自体が架橋を形成してもよいし、それ自体が架橋を形成しなくてもよい。
また、本明細書において、「耐熱性」の用語は、ガラス転移温度や熱ひずみ温度を指標として評価される特性を意味する。したがって、硬化物の耐熱性は、ガラス転移温度や熱ひずみ温度を測定することによって評価することができる。また、中性子遮蔽材の耐熱性は、温度変化に伴う水素密度ないし水素数の減少率や、重量減少率を指標として、間接的に評価することもできる。
(主剤)
主剤としては、分子内にエポキシ基を二つ以上含むエポキシ化合物を少なくとも一つの成分として用いる。主剤としては、エポキシ化合物のみを用いてもよいし、エポキシ化合物とその他の化合物とを併用してもよい。エポキシ樹脂は、常温付近で流動性を有し、常温硬化が可能であるため、中性子遮蔽材を配置すべき空間への充填性に優れている。そのため、中性子遮蔽材をキャスク等の用途に適用するとき、空間が狭隘な箇所や複雑形状の箇所を有している場合にも、充填率が高く、良好な中性子遮蔽性能を示す硬化物を形成することができる。
主剤としては、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、及び、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテルのうちの一以上のエポキシ化合物を用いることが好ましい。主剤としては、一種のエポキシ化合物を用いてもよいし、複数種のエポキシ化合物を混合して用いてもよい。これらのエポキシ化合物は、剛直な環構造を有し、核水素化されていて高い水素密度を示す。そのため、高い中性子遮蔽性能と高い耐熱性とを両立するのに好適である。主剤としては、より高い水素密度が得られる点で、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルが特に好ましい。
主剤としては、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルや、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテルに加え、更に、その他のエポキシ化合物や、エポキシ化合物を重合させて得られるエポキシ樹脂を併用することもできる。例えば、核水素化されていないビスフェノール型エポキシ化合物や、このようなエポキシ化合物を重合させて得られるプレポリマ等を併用すると、樹脂組成物の粘度の調整や、硬化物の強度、靭性等の向上を図れる場合がある。
その他のエポキシ化合物としては、分子内にエポキシ基を二つ含む二官能エポキシ化合物を用いてもよいし、分子内にエポキシ基を三つ以上含む多官能エポキシ化合物を用いてもよい。その他のエポキシ化合物としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物等が挙げられる。また、その他のエポキシ樹脂としては、これらのエポキシ化合物を重合させて得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等や、これらのエポキシ樹脂の変性物等であって、プレポリマに相当するエポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、4,4’−ビフェニルジイルビス(グリシジルエーテル)、ナフタレンジイルビス(グリシジルエーテル)、ジシクロペンタジエンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンジグリシジルエーテル、シアヌル酸トリグリシジルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタントリグリシジルエーテル、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパントリグリシジルエーテル、1,1,2,2−テトラ(p−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル等や、これらの誘導体等が挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、これらのエポキシ化合物を重合させて得られる臭素化エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノール樹脂型エポキシ樹脂等が挙げられる。
フェノール樹脂型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを重合させて得られるフェノールノボラックや、クレゾールとアルデヒド類とを重合させて得られるクレゾールノボラックや、1,2−キシリレン基、1,3−キシリレン基又は1,4−キシリレン基が導入されたキシリレンノボラックや、ビスフェノールAとアルデヒド類とを重合させて得られるビスフェノールAノボラックや、フェノール類とサリチルアルデヒドとヒドロキシベンズアルデヒドとを重合させて得られるトリフェニルメタンノボラックや、ビフェニル類で変性させたビフェニルノボラックや、ジシクロペンタジエン類で変性させたジシクロペンタジエンフェノールノボラックや、テルペン類で変性させたテルペンフェノールノボラック等のフェノール樹脂を、エピクロルヒドリン等と反応させてエポキシ化したエポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリグリシジルエステル、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリグリシジルエステル、トリメリット酸グリシジルエステル、ピロメリット酸グリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル等や、これらの誘導体等が挙げられる。グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、これらのエポキシ化合物を重合させて得られる環状グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、1,3−フェニレンビス(N,N−ジグリシジルメタンアミン)、4,4’−メチレンビス[N,N−ビス(オキシラニルメチル)アニリン]、N,N,N’−トリグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンジ(メタンアミン)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノフェノール、ジグリシジルアミノクレゾール、トリグリシジルアミノクレゾール、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−4−オキシラニルオキシアニリン、N,N−ジグリシジル−4−フェノキシアニリン、ジグリシジルピぺラジン、N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)アニリン等や、これらの誘導体等が挙げられる。グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、これらのエポキシ化合物を重合させて得られる芳香族アミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族アミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
脂環型エポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6メチル−シクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6メチル−シクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6メチル−シクロヘキシルメチル)アジペート、エチレンオキシ−3,4−エポキシシクロヘキサン、カルボン酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イルメチル)エステル、1,1’−ビ(2,3−エポキシシクロヘキサン)、4,4’−ビ(1,2−エポキシシクロヘキサン)、リモネンジエポキシド、ジシクロペンタジエンジエポキシド、1,4−シクロヘキサジエンジエポキシド、4−ビニルシクロヘキサンジエポキシド、1,5−シクロオクタジエンジエポキシド等や、これらの誘導体等が挙げられる。脂環型エポキシ樹脂としては、例えば、これらのエポキシ化合物を重合させて得られるオリゴマー型脂環エポキシ樹脂等が挙げられる。
(硬化剤・硬化促進剤)
硬化剤ないし硬化促進剤としては、エポキシ化合物のエポキシ基を開環重合させる化合物を用いる。硬化剤としては、フェノール樹脂のみを用いてもよいし、フェノール樹脂とその他の化合物とを併用してもよい。その他の硬化剤ないし硬化促進剤としては、それ自体が付加反応、縮合反応等によって架橋を形成する化合物を用いてもよいし、塩基性触媒や酸性触媒として作用する化合物を用いてもよい。
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、キシリレンノボラック、ビスフェノールAノボラック、ビスフェノールFノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンノボラック、テルペンフェノールノボラック等が挙げられる。フェノール樹脂としては、一種のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。フェノール樹脂は、フェノール若しくは核置換されたフェノール誘導体と、架橋基となる環構造を有する化合物や、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類と、を酸触媒の存在下に重合させて得ることができる。フェノール樹脂は、重合反応を促進する他の硬化促進剤と併用することが好ましい。フェノール樹脂を用いると、剛直な環構造が導入されるため、中性子遮蔽材の耐熱性や機械強度を向上させることができる。フェノール樹脂としては、水素密度や剛直性が高い樹脂が好ましく、フェノールノボラックが特に好ましい。
硬化促進剤としては、イミダゾール類、イミダゾール塩、ホスフィン類、ホスホニウム塩、三級アミン、及び、三級アミン塩のうちの一以上を用いることが好ましく、ホスフィン類、ホスホニウム塩、三級アミン、及び、三級アミン塩のうちの一以上を用いることがより好ましい。ホスフィン類や三級アミンは、イミダゾール構造を有しないため、5員環の1,3位に窒素原子を有するイミダゾール系化合物とは異なり、硬化後に活性点が残存し難い。そのため、中性子遮蔽材が150℃ないし200℃以上の高温に晒されたとしても、反応活性が顕著に高くなることが無く、硬化物中に存在するエポキシ樹脂等の熱分解が低減される。よって、熱老化に対してより高い耐性を示す耐熱性が高い中性子遮蔽材を得ることができる。
硬化剤ないし硬化促進剤としては、フェノール樹脂と三級アミン及び三級アミン塩のうちの一以上との組み合わせ、フェノール樹脂とイミダゾール類及びイミダゾール塩のうちの一以上との組み合わせ等が好ましい。このような、一般的な硬化促進剤との組み合わせによると、常温硬化や低温硬化であっても、重合反応を短時間に確実に進めて、耐熱性が高い硬化物を得ることができる。また、このような組み合わせによると、フェノール樹脂の配合比を加減したり、水素数が多い種類を選択したりすることにより、硬化剤ないし硬化促進剤による水素密度の希釈を最小限に抑制することができる。
主剤と硬化剤とは、エポキシ当量と活性水素当量との当量比で0.7以上1.3以下の範囲で配合されることが好ましい。当量比は、より好ましくは0.8以上1.2以下、更に好ましくは0.9以上1.1以下である。このような範囲であれば、重合反応後、未反応のエポキシ化合物や硬化剤の残留量が少なくなる。そのため、未反応のエポキシ化合物や硬化剤の気化に起因して水素密度が低下するのを防ぐことができる。なお、主に触媒として作用する硬化促進剤については、種類や硬化条件等に応じて、適宜の配合量とすることができる。
(難燃剤)
難燃剤としては、エポキシ樹脂の機械的特性等を損なわず、化学的に安定である限り、適宜の種類を用いることができる。但し、加熱硬化を行う場合は、加熱温度において安定な化合物を用いることが好ましい。具体的には、150℃以上で作用を示す化合物が好ましく、200℃以上で作用を示す化合物がより好ましい。難燃剤としては、一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。難燃剤は、中性子遮蔽材の用途、使用条件、使用環境等によっては、配合しなくてもよい。
難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物や、三水和アルミナ等の金属酸化物の水和物や、ポリリン酸アンモニウム等の無機リン酸化合物、リン酸エステル等の有機リン化合物等のリン化合物や、ヘキサブロモベンゼン、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化合物等が挙げられる。
難燃剤としては、特に、水酸化マグネシウム、又は、水酸化アルミニウムが好ましい。これらの難燃剤は、200℃程度まで安定であり、更に高温になると吸熱反応を生じる。例えば、水酸化マグネシウムは290℃から310℃程度で脱水を開始する。そのため、これらの難燃剤であれば、高温硬化を行う場合であっても、難燃剤の作用が失われ難くなる。よって、中性子遮蔽材が150℃ないし200℃以上の高温に晒された場合にも、エポキシ樹脂の熱劣化や燃焼をより確実に抑制することができる。
難燃剤は、中性子遮蔽材当たり、20質量%以上70質量%以下の配合量とすることが好ましく、30質量%以上60質量%以下の配合量とすることが好ましい。難燃剤を配合すると、中性子遮蔽材の水素密度が低下したり、樹脂組成物の粘度が増大したりする場合がある。しかし、このような配合量であれば、中性子遮蔽材の水素密度や樹脂組成物の流動性を高く保ちつつ、エポキシ樹脂の熱劣化や燃焼を抑制することができる。
(中性子吸収材)
中性子吸収材としては、エポキシ樹脂の機械的特性等を損なわず、化学的に安定である限り、中性子の吸収断面積が大きい適宜の物質を用いることができる。中性子吸収材としては、一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。中性子吸収材は、中性子遮蔽材の用途、使用条件、使用環境等によっては、配合しなくてもよい。
中性子吸収材としては、例えば、炭化ホウ素、窒化ホウ素、無水ホウ酸、メタホウ酸、灰ホウ石等のホウ素化合物や、カドミウム、ガドリニウム、サマリウム等の単体金属や、これらの元素を含む酸化物等の化合物が挙げられる。
中性子吸収材としては、特に、炭化ホウ素、又は、窒化ホウ素が好ましい。これらの中性子吸収材は、高温硬化を行う場合であっても、エポキシ化合物、酸無水物等の硬化剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤と反応し難い。そのため、機械的特性、水素密度、耐熱性等を大きく損なうことなく、中性子遮蔽性能をより向上させることができる。
中性子吸収材は、中性子遮蔽材当たり、0.1質量%以上10質量%以下の配合量とすることが好ましい。このような配合量であれば、中性子遮蔽材の減速性能、樹脂組成物の混練性等を大きく損なうことなく、中性子を効率的に吸収させることができる。
<中性子遮蔽材の製造方法>
中性子遮蔽材は、エポキシ化合物を少なくとも一つの成分として含む主剤と、エポキシ化合物のエポキシ基を開環重合させる硬化剤と、任意に添加される硬化促進剤と、を含んで組成される樹脂組成物を、エポキシ基を介した重合反応で硬化させて得ることができる。硬化剤として、フェノール樹脂を用いることにより、ガラス転移温度が高い硬化物が得られる。
重合反応は、中性子遮蔽材の用途、使用条件、使用環境等に応じて、適宜の温度で行うことができる。硬化温度としては、例えば、5℃以上50℃未満の低温域、50℃以上80℃未満の中温域、80℃以上200℃以下の高温域等、いずれを用いることも可能である。硬化温度が常温であると、加熱コストや硬化物の寸法変化を低減できるが、硬化温度が高いほど、エポキシ樹脂の耐熱性が高くなる傾向がある。
常温よりも高い温度の加熱硬化を行う場合は、例えば、50℃以上200℃以下、好ましくは130℃以上170℃以下で、1時間以上12時間以下、好ましくは1時間以上3時間以下の加熱を行う。また、加熱硬化は、熱ひずみを低減し、均一に硬化させる観点等から、段階的に行うことがより好ましい。例えば、80℃以上130℃以下で、2時間以上4時間以下の一次加熱と、140℃以上170℃以下で、4時間以上12時間以下の二次加熱との二段加熱や、室温で1日以上7日程度の一次加熱と、120℃以上150℃以下の二次加熱と、180℃以上200℃以下の三次加熱との三段加熱や、これらと同等の加熱を行うことが好ましい。
以上の中性子遮蔽材によると、硬化剤として、フェノール樹脂が用いられているため、エポキシ樹脂のガラス転移温度が高くなり、中性子遮蔽材が150℃ないし200℃以上の高温に晒された場合にも、エポキシ樹脂等の成分が熱分解し難くなる。そのため、使用済核燃料が発熱を続ける乾式貯蔵等のような高温環境においても、気化による水素密度の低下や、中性子遮蔽材の変形による非遮蔽部の発生が防止される。よって、耐熱性が高く、高温環境下においても中性子遮蔽性能が低下し難い中性子遮蔽材を得ることができる。
以上の中性子遮蔽材は、例えば、使用済燃料集合体貯蔵容器、放射性物質輸送容器、放射性物質貯蔵容器、原子炉容器等、放射性物質を貯蔵ないし輸送するための容器の放射線遮蔽部に適用することができる。また、原子燃料再処理施設、使用済核燃料貯蔵施設、加速器施設等、放射性物質取り扱い施設に設けられる放射線遮蔽部に適用することができる。
次に、前記の中性子遮蔽材を備えたキャスク(使用済燃料集合体貯蔵容器)について説明する。
図1は、使用済燃料集合体貯蔵容器の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、キャスク1は、内筒(内側容器)2と、内筒(内側容器)2の外側に設置された外筒(外側容器)3と、内筒(内側容器)2内に設置されており、使用済燃料集合体を収納するためのバスケット5と、内筒(内側容器)2を囲む中性子遮蔽材6と、を備えている。なお、図1においては、略円柱形状を呈するキャスク1の一部を切り欠いて、その内部構造及び断面構造を示している。
キャスク1は、使用済燃料集合体の貯蔵ないし輸送に用いる貯蔵容器であり、容器本体が、有底の内筒2と、外筒3とで構成されている。内筒2は、ガンマ線を遮蔽するため、炭素鋼等で形成される。内筒2の側面には、使用済燃料集合体からの熱を放熱する伝熱フィン4が設けられている。伝熱フィン4は、例えば、銅、アルミニウムや、これらの合金等の金属板により形成される。内筒2の側面は、伝熱フィン4よりも外側に設置された外筒3で覆われている。
バスケット5は、内筒2の内側に設置されており、格子状の区画を有している。バスケット5には、キャスク1に貯蔵される不図示の使用済燃料集合体が、例えば、30〜70体程度の装荷数となるように収容される。使用済燃料集合体は、格子状に設けられた金属製の仕切板によって、互いに隔てられた状態で貯蔵される。
キャスク1の容器本体を構成する内筒2は、上部の開口に、一次蓋7と二次蓋8が取り付けられるようになっている。キャスク1に収容された使用済燃料集合体は、内側の一次蓋7と外側の二次蓋8との二重構造で内筒2に密閉される。外筒3の側面には、キャスク1を支持架台等に支持したり、キャスク1を搬送用吊具等に固定したりする部位として、多数のトラニオン9が設けられる。
図1に示すキャスク1において、内筒2と外筒3との間には、容器本体の周方向に沿って複数の伝熱フィン4が延在している。伝熱フィン4は、互いに間隔を空けて配置されており、内筒2と外筒3との間に、内筒2を囲むように空間が設けられている。また、一次蓋7等の蓋体は、使用済燃料集合体からの放射線や二次ガンマ線等に対する遮蔽性能を確保しつつ、中空構造に設けることができる。前記のエポキシ樹脂を主成分とする中性子遮蔽材は、これらの空間のうち、一箇所以上に、内筒2を囲むように配置することができる。
中性子遮蔽材6は、水素密度が5×1022個/cm以上であることが好ましい。また、150℃ないし170℃の高温に10000時間晒されたとき、最高到達温度150℃の条件下の重量減少率が0.02%以下、最高到達温度170℃の条件下の重量減少率が0.1%以下であることが好ましい。一般に、乾式キャスクの最高使用温度は、170℃ないし200℃程度が想定される。中性子遮蔽材6が、このような重量減少率であれば、キャスク1の使用温度範囲で熱老化を十分に抑制しつつ、高い中性子遮蔽能を維持することができる。
中性子遮蔽材6は、内筒2を囲む空間に樹脂組成物を充填し、常温硬化又は加熱硬化によって形成してよい。或いは、成形型に樹脂組成物を充填し、常温硬化又は加熱硬化によって所定形状に成形し、成形された硬化物を内筒2を囲む空間に配置してもよい。難燃剤及び中性子吸収材は、中性子遮蔽材6の使用条件、使用環境等に応じて、樹脂組成物に配合してもよいし、樹脂組成物に配合しなくてもよい。
以上のキャスク(使用済燃料集合体貯蔵容器)によると、内筒2を囲む位置に、耐熱性が高く、高温環境下においても中性子遮蔽性能が低下し難い中性子遮蔽材が備えられる。そのため、一般に50年程度の貯蔵期間が想定される使用済燃料集合体が貯蔵中に発熱を続けた場合であっても、中性子遮蔽材の熱老化が抑制され、キャスクの中性子遮蔽性能が低下し難くなり、使用済燃料集合体の貯蔵を長期間にわたって安全に継続することができる。
例えば、以上のキャスクによると、キャスクへの使用済核燃料集合体の装荷数を増加させた場合や、高燃焼度の使用済核燃料集合体を貯蔵する場合等にも、中性子遮蔽性能が低下し難い貯蔵容器を提供することができる。すなわち、原子力発電所内の冷却プールにおける冷却期間が短い場合や、高燃焼度の使用済核燃料集合体を貯蔵する場合等であっても、キャスクへの使用済核燃料集合体の装荷数を増やすことが可能であり、キャスクの軽量化、貯蔵のための占有体積の縮小等を図ることができる。
以上、本発明に係る中性子遮蔽材及び使用済燃料集合体貯蔵容器の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、技術的範囲を逸脱しない限り、様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、実施形態の構成に他の構成を加えたりすることが可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、構成の削除、構成の置換をすることも可能である。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
硬化剤や硬化促進剤の種類を変えて中性子遮蔽材を作製し、熱重量測定による重量減少率に基づいて耐熱性を評価した。
主剤としては、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(アデカ社製EP−4080E)を使用した。
硬化剤としては、酸無水物、又は、フェノール樹脂を使用した。酸無水物としては、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸(MNA)を使用した。フェノール樹脂としては、表1に示すフェノール樹脂を使用した。硬化剤の配合量は、酸無水物については、主剤100重量部に対して65重量部とした。また、フェノール樹脂については、エポキシ当量と活性水素当量とが1:1となる等量とした。
Figure 2019178967
硬化促進剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)(四国化成工業社製)を使用した。硬化促進剤の配合量は、主剤100重量部に対して5重量部とした。
難燃剤としては、水酸化アルミニウム「CL−310」(住友化学社製)を使用した。難燃剤の配合量は、樹脂組成物100重量部に対して170重量部とした。
中性子吸収材としては、炭化ホウ素粉末「F−400」(デンカ社製)を使用した。中性子吸収材の配合量は、樹脂組成物100重量部に対して4重量部とした。
はじめに、主剤と硬化剤と硬化促進剤とを含む樹脂組成物について、示差熱重量分析測定装置を使用してガラス転移温度の測定を行った。測定試料としては、加熱硬化させた硬化物から切り出した10〜15mgの細片を用いた。加熱硬化は、45℃に調温した乾燥器で2日間乾燥させた後、80℃で2時間加熱し、更に、150℃で2時間加熱して行った。ガラス転移温度は、測定条件を、初期温度から250℃まで10℃/分の昇温とし、昇温過程における吸熱変化を測定して求めた。その結果を表2に示す。
Figure 2019178967
次に、主剤と硬化剤と硬化促進剤とを含む樹脂組成物について、示差熱重量分析測定装置を使用して熱重量測定を行った。測定試料としては、硬化剤としてフェノールノボラックを用いて常温硬化させた硬化物、及び、加熱硬化させた硬化物のいずれかから切り出した10〜15mgの細片を用いた。常温硬化は、樹脂組成物を20〜25℃の室温に放置して行った。また、加熱硬化は、45℃に調温した乾燥器で2日間乾燥させた後、80℃で2時間加熱し、更に、150℃で2時間加熱して行った。
熱重量測定は、最高到達温度を150℃、160℃及び170℃のうちのいずれかとして行った。作製した各測定試料について、初期温度から40℃まで5℃/分の昇温、40℃で10分間の保持、40℃から各最高到達温度まで5℃/分の昇温、各最高到達温度で600分の保持の後、測定試料の重量を測定した。
そして、熱重量測定の結果に基づいて、600分間の加熱後の重量減少率を求めた。重量減少率は、加熱試験前の重量をX、600分間の加熱後の重量をXとして、下記数式(1)に従って計算した。
重量減少率(%)=(X−X)/X×100・・・(1)
また、同様の測定試料を用いて、常温硬化させた硬化物、及び、加熱硬化させた硬化物のそれぞれについて、ガラス転移温度の測定を行った。加熱条件は、表2に示した測定と同様の条件とした。
図2は、エポキシ樹脂の樹脂組成物の加熱に伴う重量減少率を測定した結果を示す図である。また、図3は、エポキシ樹脂の樹脂組成物のガラス転移温度を測定した結果を示す図である。
図2及び図3に示すように、硬化剤として酸無水物を用いた場合(グラフ右参照)と比較して、硬化剤としてフェノールノボラックを用いた場合(グラフ左参照)は、150℃、160℃及び170℃のいずれの加熱においても、重量減少率が大きく減少し、ガラス転移温度は顕著に上昇した。また、エポキシ樹脂を常温硬化させた場合(グラフ中央参照)と比較して、エポキシ樹脂を加熱硬化させた場合(グラフ左参照)は、重量減少率が減少すると共に、ガラス転移温度が上昇した。表2に示したように、各種のフェノール樹脂を配合したエポキシ樹脂は、いずれも、150℃前後の高いガラス転移温度を示しており、硬化剤としてフェノール樹脂を用いると、エポキシ樹脂の耐熱性が高くなり、加熱硬化するほど、耐熱性が大きく向上することが確認された。
次に、エポキシ樹脂の樹脂組成物に難燃剤と中性子吸収材を配合した中性子遮蔽材について、熱重量測定を行った。中性子遮蔽材は、次の手順で作製した。はじめに、主剤、硬化剤及び硬化促進剤を所定の配合量となるように秤量し、これらの成分をプラネタリミキサを用いて混練した。そして、所定の配合量となるように難燃剤と中性子遮蔽材を加え、更に混練することによって、難燃剤と中性子遮蔽材が混合された樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を、直径20mm、長さ100mmのSUS製パイプに充填し、加熱硬化させることによって、エポキシ樹脂の硬化物で構成される中性子遮蔽材を得た。
作製した中性子遮蔽材の熱重量測定を、示差熱重量分析測定装置を使用して行った。中性子遮蔽材の硬化条件、測定試料、測定条件は、前記の樹脂組成物についてと同様にして最高到達温度を150℃に設定して行った。表3に、中性子遮蔽材の組成と、600分間の加熱後の重量減少率の結果を示す。
Figure 2019178967
表3に示すように、硬化剤として、酸無水物を使用したNo.3と比較して、フェノール樹脂を使用した中性子遮蔽材では、150℃における重量減少率が大きく低減しており、耐熱性が向上していることが確認された。また、難燃剤を配合したNo.2では、難燃剤を配合していないNo.1と比較して、重量減少率が低減し、耐熱性がより高くなった。
1 キャスク(使用済燃料集合体貯蔵容器)
2 内筒(内側容器)
3 外筒(外側容器)
4 伝熱フィン
5 バスケット
6 中性子遮蔽材
7 一次蓋
8 二次蓋
9 トラニオン

Claims (9)

  1. エポキシ樹脂を主成分の一つとする中性子遮蔽材であって、前記エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を二つ以上含む化合物を少なくとも一つの成分として含む主剤と、前記エポキシ基を開環重合させる硬化剤と、を含む樹脂組成物の硬化物で構成され、前記硬化剤が、フェノール樹脂である中性子遮蔽材。
  2. 前記主剤が、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、及び、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテルのうちの一以上を含む請求項1に記載の中性子遮蔽材。
  3. 前記フェノール樹脂が、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスフェノールAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンノボラック、及び、テルペンフェノールノボラックのうちの一以上である請求項1に記載の中性子遮蔽材。
  4. 前記エポキシ樹脂が、前記エポキシ基を介した重合を促進する硬化促進剤を含み、
    前記硬化促進剤が、イミダゾール類、イミダゾール塩、ホスフィン類、ホスホニウム塩、三級アミン、及び、三級アミン塩のうちの一以上である請求項1に記載の中性子遮蔽材。
  5. 前記主剤が、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、及び、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテルのうちの一以上を含み、
    更に、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノール樹脂型エポキシ化合物、フェノール樹脂型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ化合物、及び、グリシジルアミン型エポキシ樹脂のうちの一以上を含む請求項1に記載の中性子遮蔽材。
  6. 前記主剤が、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、及び、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテルのうちの一以上を含み、
    分子内にエポキシ基を三つ以上含む多官能エポキシ化合物、及び、前記エポキシ化合物を重合させて得られる多官能エポキシ樹脂のうちの一以上を含む請求項1に記載の中性子遮蔽材。
  7. 前記樹脂組成物が、難燃剤を含み、
    前記難燃剤が、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ポリリン酸アンモニウム、無機リン酸化合物、リン酸エステル、ヘキサブロモベンゼン、及び、テトラブロモビスフェノールAのうちの一以上である請求項1に記載の中性子遮蔽材。
  8. 前記樹脂組成物が、中性子吸収材を含み、
    前記中性子吸収材が、炭化ホウ素、及び、窒化ホウ素のうちの一以上である請求項1に記載の中性子遮蔽材。
  9. 内側容器と、前記内側容器の外側に設置された外側容器と、前記内側容器内に設置されており、使用済燃料集合体を収納するためのバスケットと、前記内側容器を囲む中性子遮蔽材と、を備え、
    前記中性子遮蔽材は、エポキシ樹脂を主成分の一つとする中性子遮蔽材であって、前記エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を二つ以上含む化合物を少なくとも一つの成分として含む主剤と、前記エポキシ基を開環重合させる硬化剤と、を含む樹脂組成物の硬化物で構成され、前記硬化剤が、フェノール樹脂である使用済燃料集合体貯蔵容器。
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