JP2004198281A - 中性子遮へい材および使用済燃料収納容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属キャスクに用いられる耐熱性と遮へい性能に優れ、中性子遮へい材の添加量を最小限にした中性子遮へい材の提供。
【解決手段】単位体積当りに含まれる水素の原子数が4.5×1022〜5.6×1022個/cm3、単位体積当りに含まれるホウ素同位体である10Bの原子数が2×1019〜1.7×1020個/cm3である中性子遮へい材。
【選択図】 図1
【解決手段】単位体積当りに含まれる水素の原子数が4.5×1022〜5.6×1022個/cm3、単位体積当りに含まれるホウ素同位体である10Bの原子数が2×1019〜1.7×1020個/cm3である中性子遮へい材。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中性子遮へい材に係り、特に、使用済燃料の輸送用および貯蔵用の容器として使用する金属キャスクの遮へい部として好適な中性子遮へい材、および、それを用いた使用済燃料収納容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子炉から取出された使用済燃料集合体は、原子力発電所内の冷却プールで一定期間水冷却して、放射線量や発熱量を減衰させた後、燃料再処理工場等の処理施設に輸送される。
【0003】
また、近年、海外では使用済燃料集合体を集中貯蔵施設(乾式貯蔵施設)に輸送して、貯蔵することが行われている。使用済燃料集合体を原子力発電所からこれらの施設まで輸送し、さらに、貯蔵するために用いられる使用済燃料収納容器として金属キャスクがある。
【0004】
金属キャスクは、容器を構成する外筒内に内筒を設け、内筒の外面に熱伝導性が高い銅やアルミニウム等の金属板で構成された伝熱フィンが周方向に間隔を置いて取り付けられ、内筒の内側に金属製バスケットが設けられる。外筒と内筒との間には、中性子遮へい体である硬化されたレジンが存在する。
【0005】
内筒は、上方が開口した炭素鋼製の筒であり、γ線遮へい体である。金属製バスケットは、複数のセルを備え、それぞれのセル内に使用済燃料集合体が充填されている。
【0006】
金属製バスケットは、合計約30〜70体の使用済燃料集合体を収納する。内筒の開口部には、放射性物質の漏洩を防止する一次蓋が取り付けられ、さらにその外側に二次蓋が取り付けられる。
【0007】
中性子遮へい体であるレジンは、水素原子を多数含む、即ち、水素数密度が高い物質であり、一般に高分子化合物が使用される。種々の高分子化合物のうち、金属キャスクでは、耐熱性と水素数密度のバランスがよいと云う特徴を生かして、エポキシ樹脂が多用される。
【0008】
この場合には、液状のエポキシ樹脂主剤とアミン系硬化剤、これに難燃性を付与する水酸化アルミニウム、および、中性子吸収体である炭化ホウ素を均一になるように混合して得られる硬化物を、上記の内筒、外筒および伝熱フィンに囲まれる空間に設置して使用する。
【0009】
金属キャスクへの適用を目的としたエポキシ系中性子遮へい材としては、特許文献1では「中性子遮へい体およびこれを用いたキャスク」に記載がある。この中性子遮へい材では、主剤の水素含有量が7.6重量%と高く、中性子を減速させる性能に優れており、耐久性を向上させるために、ナトリウム等の不純物濃度が低い特殊な難燃剤を使用している。
【0010】
耐久性を保証するためには、難燃剤中のナトリウム不純物濃度を厳しく管理する必要がある。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−108787号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
冷却プール内での使用済燃料集合体の保管に余裕を持たせるために、原子力発電所内または原子力発電所外における乾式貯蔵が検討されている。将来的には、冷却プールでの冷却期間が短い使用済燃料集合体の乾式貯蔵、更には高燃焼度(45GWd/トン)の使用済燃料集合体の乾式貯蔵が行われる可能性もある。
【0013】
冷却プールでの冷却期間が短い使用済燃料集合体、および、その高燃焼度燃料集合体の使用済燃料集合体は、核分裂生成核種および超ウラン元素の崩壊に伴う発熱量が大きい。
【0014】
このような使用済燃料集合体を金属キャスクで貯蔵する場合、金属キャスク1基当りに収納する体数を増加すると、金属に比べて熱伝導度が低い中性子遮へい材にかかる熱負荷が大きくなる。
【0015】
一般に、高分子材料は水素含有率が高くなるに伴い耐熱性が低下する。そのため、中性子遮へい材への熱負荷が大きくなる場合には、遮へい性能と耐熱性のバランスのとれた遮へい材組成を見出す必要がある。
【0016】
本発明の目的は、遮へい性能を維持しつつ、高温度での使用に耐えられる中性子遮へい材を提供し、併せて中性子吸収剤の添加量を最小化した中性子遮へい材を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他の目的は、上記中性子遮へい材を用いた使用済燃料収納容器を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の特徴は、金属キャスクの遮へい性能と耐熱性の観点から、遮へい材料の水素密度とホウ素(10B)密度の範囲を特定したことにある。
【0019】
炭素と水素を含む高分子材料では、水素密度の高い材料は水素と炭素の比率が高い材料である。そのため、必然的に分子構造内の炭素同士の二重結合が少なくなり、熱によってその結合が相対的に切れ易いσ結合の割合が多くなる。そのため、水素密度と耐熱性とは、一般にトレードオフの関係になる。
【0020】
本発明では、この点を考慮して遮へい材組成範囲を決定し、150〜200℃の高温度で使用可能な中性子遮へい材を提供する。これは、熱劣化による水素数密度の減少度合いが著しく小さいので、初期の遮へい性能を長期に渡り維持することができる。
【0021】
金属キャスクでは、使用済燃料に含まれる放射性核種から放出される一次γ線と中性子、および中性子と遮へい材成分の核反応で発生する二次γ線を遮へいする。このうち、一次γ線は、炭素鋼製の内筒により遮へいされる。
【0022】
中性子遮へい材は、中性子と二次γ線の遮へいに寄与している。中性子は水素等の質量の小さな原子で散乱されて減速し、ホウ素等の中性子吸収断面積が大きな原子で吸収される。この反応の際に二次γ線が放出される。従って、中性子と二次γ線の遮へい性能は、原理的に材料の水素密度とホウ素密度に依存する。
【0023】
本発明者らは、金属キャスク体系において、中性子遮へい材の組成を種々変更したときの遮へい計算を行い、水素密度とホウ素(10B)密度の適切な範囲の設定を試みた。
【0024】
図1は、金属キャスク表面から1mの位置における中性子線量当量率(相対値)の水素密度(比重とCHN分析とから求められる)依存性を示す。この結果から、水素密度を5.6×1022個/cm3以上に高めても利得は小さくなることが分かる。
【0025】
その一方で、水素密度が高くなるに伴い耐熱性は低下することから、水素密度の上限は5.6×1022個/cm3となる。
【0026】
水素密度が4.5×1022個/cm3を下回ると中性子の線量当量率が高くなるために、遮へいを厚くする必要が生じる。キャスク設計には重量や寸法の制約があるので、水素密度を4.5×1022個/cm3よりも低くすることは好ましくない。また、10B密度を6×1019個/cm3以上にしておけば、中性子の遮へい性能は変わらない。
【0027】
図2は、金属キャスク表面から1mの位置における二次γ線線量当量率(相対値)の10B密度の依存性を示す。この結果から、水素密度が5×1022個/cm3以上であれば、10B密度を1.7×1020個/cm3以上に高めても利得は小さくなる。その一方で、10B密度が高くなるに従って、遮へい体内でホウ素化合物の偏在が生じる潜在的可能性が高くなる。
【0028】
以上より、本発明者らは、遮へい材の水素密度を4.5×1022〜5.6×1022個/cm3、ホウ素(10B)密度を6×1019〜1.7×1020個/cm3に設定した。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の中性子遮へい材の具体的な配合例を次に示す。
【0030】
〔実施例 1〕
本実施例では、汎用的なビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いて、本発明に係る組成の中性子遮へい材を得る方法について述べる。
【0031】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂と脂環式アミン系硬化剤を加えたベースレジンに、難燃剤としての水酸化アルミニウムを50重量%になるように加え、さらに炭化ホウ素を1.3重量%になるように加える。これらを良く攪拌して水酸化アルミニウムや炭化ホウ素を樹脂中に均一に分散させる。次いで、減圧脱泡して注型後、常温あるいは加熱しながら硬化させて遮へい材を得る。
【0032】
上記組成の遮へい材の加熱減量特性を調べた結果、200℃に1000時間保持したときの加熱減量は3重量%と非常に小さい値であった。また、比重とCHN分析とから求められる水素密度は5.5×1022個/cm3、比重とICP発光分光分析、および、天然ホウ素同位体組成から求められる10B密度は1.7×1020個/cm3である。
【0033】
なお、主剤としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂単独以外に、芳香族モノグリシジルエーテル型のエポキシ化合物を混合したものを用いてもよい。
【0034】
本実施例では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に対し、脂環式アミン系硬化剤を用いた例を示した。硬化剤としては、これ以外に脂肪族アミンやポリアミドアミン系の硬化剤も適用できる。
【0035】
主剤と硬化剤の割合は、主剤であるエポキシ樹脂のエポキシ当量と、硬化剤の活性水素当量とから決まる値にする。本実施例では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と脂環式アミン系硬化剤の配合比(重量)は100:約30である。また、難燃剤として添加する水酸化アルミニウムについては、40〜60重量%の範囲であればよい。
【0036】
ホウ素化合物の形態は炭化ホウ素に限らず、安定化合物であればよい。その場合、樹脂硬化物の密度および化合物の10B含有割合から10B密度が6×1019〜1.7×1020個/cm3になるよう化合物添加割合を逆算すればよい。
【0037】
各種の主剤と、芳香族アミン,脂環式アミン,ポリアミドアミンまたは酸無水物から選ばれる硬化剤を用いた場合の水素数密度を表1,2に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
また、本実施例の中性子遮へい材である金属キャスクへの設置方法としては、内筒,外筒および伝熱フィンに囲まれる空間に、液状の樹脂を注型して硬化させる方式、あるいは、硬化物成型体を前記空間に取り付ける方式のいずれを採用してもよい。
【0041】
本実施例によれば、耐熱性と遮へい性能が優れ、中性子吸収剤の添加量を最小限にした遮へい材を得ることができる。
【0042】
〔実施例 2〕
実施例1に示したビスフェノールA型エポキシ樹脂以外にも芳香族系の各種ノボラック型エポキシ樹脂,グリシジルエステル型エポキシ樹脂,グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が、本発明の中性子遮へい材の樹脂主剤として使用できる。
【0043】
これらは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と同等の水素含有率である。従って、実施例1と同様の配合により、所望の元素組成の遮へい材を得ることができる。
【0044】
上記の各種エポキシ樹脂から選んだ主剤に、硬化剤として脂肪族アミン,脂環式アミンあるいはポリアミドアミンを添加し、難燃材としての水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムを40〜60重量%添加する。さらに炭化ホウ素を1.3重量%になるように添加する。
【0045】
主剤と硬化剤との割合は、主剤のエポキシ当量と硬化剤の活性水素当量とから決まる値にする。一例としては、ノボラック型エポキシ樹脂と脂環式アミン系硬化剤の配合比は重量で100:約30である。また、難燃材として添加する水酸化アルミニウムについては、40〜60重量%の範囲であればよい。
【0046】
また、炭化ホウ素以外の安定なホウ素化合物も適用可能であり、添加割合を決定する考え方は実施例1と同じである。
【0047】
上記混合物をよく混練して、難燃材やホウ素化合物をよく分散させる。これを真空脱泡後注型して硬化することで、所望の水素および10Bの原子数密度を有する中性子遮へい材が得られる。本実施例の遮へい材は、実施例1と同様の設置方法が適用できる。
【0048】
本実施例によれば、耐熱性と遮へい性能が優れ、中性子吸収剤の添加量を最小限にした遮へい材を得ることができる。
【0049】
〔実施例 3〕
本実施例では、脂環式のエポキシ樹脂を使用した例を記載する。主剤の水素含有率が高いので、水素含有率が低い硬化剤、即ち、芳香族アミンや酸無水物を適用する。
【0050】
これに、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムを難燃材成分として40〜50重量%になるように添加し、さらに炭化ホウ素を1.3重量%になるよう添加する。
【0051】
これらを良く混練して均一に分散させ脱泡後、注型して硬化することで所望の元素組成の遮へい材が得られる。
【0052】
なお、硬化剤として酸無水物を使用する際には、硬化促進剤としてイミダゾールを添加してもよい。また、炭化ホウ素以外の安定なホウ素化合物が適用できることは、実施例1,2と同じである。
【0053】
本実施例の遮へい体の設置方法は、実施例1と同じ方法が適用できる。本実施例によれば、耐熱性と遮へい性能が優れ、中性子吸収剤の添加量を最小限にした遮へい材を得ることができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性と遮へい性能に優れ、中性子吸収剤の添加量を最小限にした中性子遮へい材を得ることができる。金属キャスクに本発明の遮へい材を使用することにより、高発熱燃料を効率よく収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属キャスク表面から1mの位置における中性子線量当量率を示すグラフである。
【図2】金属キャスク表面から1mの位置における二次γ線線量当量率を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、中性子遮へい材に係り、特に、使用済燃料の輸送用および貯蔵用の容器として使用する金属キャスクの遮へい部として好適な中性子遮へい材、および、それを用いた使用済燃料収納容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子炉から取出された使用済燃料集合体は、原子力発電所内の冷却プールで一定期間水冷却して、放射線量や発熱量を減衰させた後、燃料再処理工場等の処理施設に輸送される。
【0003】
また、近年、海外では使用済燃料集合体を集中貯蔵施設(乾式貯蔵施設)に輸送して、貯蔵することが行われている。使用済燃料集合体を原子力発電所からこれらの施設まで輸送し、さらに、貯蔵するために用いられる使用済燃料収納容器として金属キャスクがある。
【0004】
金属キャスクは、容器を構成する外筒内に内筒を設け、内筒の外面に熱伝導性が高い銅やアルミニウム等の金属板で構成された伝熱フィンが周方向に間隔を置いて取り付けられ、内筒の内側に金属製バスケットが設けられる。外筒と内筒との間には、中性子遮へい体である硬化されたレジンが存在する。
【0005】
内筒は、上方が開口した炭素鋼製の筒であり、γ線遮へい体である。金属製バスケットは、複数のセルを備え、それぞれのセル内に使用済燃料集合体が充填されている。
【0006】
金属製バスケットは、合計約30〜70体の使用済燃料集合体を収納する。内筒の開口部には、放射性物質の漏洩を防止する一次蓋が取り付けられ、さらにその外側に二次蓋が取り付けられる。
【0007】
中性子遮へい体であるレジンは、水素原子を多数含む、即ち、水素数密度が高い物質であり、一般に高分子化合物が使用される。種々の高分子化合物のうち、金属キャスクでは、耐熱性と水素数密度のバランスがよいと云う特徴を生かして、エポキシ樹脂が多用される。
【0008】
この場合には、液状のエポキシ樹脂主剤とアミン系硬化剤、これに難燃性を付与する水酸化アルミニウム、および、中性子吸収体である炭化ホウ素を均一になるように混合して得られる硬化物を、上記の内筒、外筒および伝熱フィンに囲まれる空間に設置して使用する。
【0009】
金属キャスクへの適用を目的としたエポキシ系中性子遮へい材としては、特許文献1では「中性子遮へい体およびこれを用いたキャスク」に記載がある。この中性子遮へい材では、主剤の水素含有量が7.6重量%と高く、中性子を減速させる性能に優れており、耐久性を向上させるために、ナトリウム等の不純物濃度が低い特殊な難燃剤を使用している。
【0010】
耐久性を保証するためには、難燃剤中のナトリウム不純物濃度を厳しく管理する必要がある。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−108787号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
冷却プール内での使用済燃料集合体の保管に余裕を持たせるために、原子力発電所内または原子力発電所外における乾式貯蔵が検討されている。将来的には、冷却プールでの冷却期間が短い使用済燃料集合体の乾式貯蔵、更には高燃焼度(45GWd/トン)の使用済燃料集合体の乾式貯蔵が行われる可能性もある。
【0013】
冷却プールでの冷却期間が短い使用済燃料集合体、および、その高燃焼度燃料集合体の使用済燃料集合体は、核分裂生成核種および超ウラン元素の崩壊に伴う発熱量が大きい。
【0014】
このような使用済燃料集合体を金属キャスクで貯蔵する場合、金属キャスク1基当りに収納する体数を増加すると、金属に比べて熱伝導度が低い中性子遮へい材にかかる熱負荷が大きくなる。
【0015】
一般に、高分子材料は水素含有率が高くなるに伴い耐熱性が低下する。そのため、中性子遮へい材への熱負荷が大きくなる場合には、遮へい性能と耐熱性のバランスのとれた遮へい材組成を見出す必要がある。
【0016】
本発明の目的は、遮へい性能を維持しつつ、高温度での使用に耐えられる中性子遮へい材を提供し、併せて中性子吸収剤の添加量を最小化した中性子遮へい材を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他の目的は、上記中性子遮へい材を用いた使用済燃料収納容器を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の特徴は、金属キャスクの遮へい性能と耐熱性の観点から、遮へい材料の水素密度とホウ素(10B)密度の範囲を特定したことにある。
【0019】
炭素と水素を含む高分子材料では、水素密度の高い材料は水素と炭素の比率が高い材料である。そのため、必然的に分子構造内の炭素同士の二重結合が少なくなり、熱によってその結合が相対的に切れ易いσ結合の割合が多くなる。そのため、水素密度と耐熱性とは、一般にトレードオフの関係になる。
【0020】
本発明では、この点を考慮して遮へい材組成範囲を決定し、150〜200℃の高温度で使用可能な中性子遮へい材を提供する。これは、熱劣化による水素数密度の減少度合いが著しく小さいので、初期の遮へい性能を長期に渡り維持することができる。
【0021】
金属キャスクでは、使用済燃料に含まれる放射性核種から放出される一次γ線と中性子、および中性子と遮へい材成分の核反応で発生する二次γ線を遮へいする。このうち、一次γ線は、炭素鋼製の内筒により遮へいされる。
【0022】
中性子遮へい材は、中性子と二次γ線の遮へいに寄与している。中性子は水素等の質量の小さな原子で散乱されて減速し、ホウ素等の中性子吸収断面積が大きな原子で吸収される。この反応の際に二次γ線が放出される。従って、中性子と二次γ線の遮へい性能は、原理的に材料の水素密度とホウ素密度に依存する。
【0023】
本発明者らは、金属キャスク体系において、中性子遮へい材の組成を種々変更したときの遮へい計算を行い、水素密度とホウ素(10B)密度の適切な範囲の設定を試みた。
【0024】
図1は、金属キャスク表面から1mの位置における中性子線量当量率(相対値)の水素密度(比重とCHN分析とから求められる)依存性を示す。この結果から、水素密度を5.6×1022個/cm3以上に高めても利得は小さくなることが分かる。
【0025】
その一方で、水素密度が高くなるに伴い耐熱性は低下することから、水素密度の上限は5.6×1022個/cm3となる。
【0026】
水素密度が4.5×1022個/cm3を下回ると中性子の線量当量率が高くなるために、遮へいを厚くする必要が生じる。キャスク設計には重量や寸法の制約があるので、水素密度を4.5×1022個/cm3よりも低くすることは好ましくない。また、10B密度を6×1019個/cm3以上にしておけば、中性子の遮へい性能は変わらない。
【0027】
図2は、金属キャスク表面から1mの位置における二次γ線線量当量率(相対値)の10B密度の依存性を示す。この結果から、水素密度が5×1022個/cm3以上であれば、10B密度を1.7×1020個/cm3以上に高めても利得は小さくなる。その一方で、10B密度が高くなるに従って、遮へい体内でホウ素化合物の偏在が生じる潜在的可能性が高くなる。
【0028】
以上より、本発明者らは、遮へい材の水素密度を4.5×1022〜5.6×1022個/cm3、ホウ素(10B)密度を6×1019〜1.7×1020個/cm3に設定した。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の中性子遮へい材の具体的な配合例を次に示す。
【0030】
〔実施例 1〕
本実施例では、汎用的なビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いて、本発明に係る組成の中性子遮へい材を得る方法について述べる。
【0031】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂と脂環式アミン系硬化剤を加えたベースレジンに、難燃剤としての水酸化アルミニウムを50重量%になるように加え、さらに炭化ホウ素を1.3重量%になるように加える。これらを良く攪拌して水酸化アルミニウムや炭化ホウ素を樹脂中に均一に分散させる。次いで、減圧脱泡して注型後、常温あるいは加熱しながら硬化させて遮へい材を得る。
【0032】
上記組成の遮へい材の加熱減量特性を調べた結果、200℃に1000時間保持したときの加熱減量は3重量%と非常に小さい値であった。また、比重とCHN分析とから求められる水素密度は5.5×1022個/cm3、比重とICP発光分光分析、および、天然ホウ素同位体組成から求められる10B密度は1.7×1020個/cm3である。
【0033】
なお、主剤としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂単独以外に、芳香族モノグリシジルエーテル型のエポキシ化合物を混合したものを用いてもよい。
【0034】
本実施例では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に対し、脂環式アミン系硬化剤を用いた例を示した。硬化剤としては、これ以外に脂肪族アミンやポリアミドアミン系の硬化剤も適用できる。
【0035】
主剤と硬化剤の割合は、主剤であるエポキシ樹脂のエポキシ当量と、硬化剤の活性水素当量とから決まる値にする。本実施例では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と脂環式アミン系硬化剤の配合比(重量)は100:約30である。また、難燃剤として添加する水酸化アルミニウムについては、40〜60重量%の範囲であればよい。
【0036】
ホウ素化合物の形態は炭化ホウ素に限らず、安定化合物であればよい。その場合、樹脂硬化物の密度および化合物の10B含有割合から10B密度が6×1019〜1.7×1020個/cm3になるよう化合物添加割合を逆算すればよい。
【0037】
各種の主剤と、芳香族アミン,脂環式アミン,ポリアミドアミンまたは酸無水物から選ばれる硬化剤を用いた場合の水素数密度を表1,2に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
また、本実施例の中性子遮へい材である金属キャスクへの設置方法としては、内筒,外筒および伝熱フィンに囲まれる空間に、液状の樹脂を注型して硬化させる方式、あるいは、硬化物成型体を前記空間に取り付ける方式のいずれを採用してもよい。
【0041】
本実施例によれば、耐熱性と遮へい性能が優れ、中性子吸収剤の添加量を最小限にした遮へい材を得ることができる。
【0042】
〔実施例 2〕
実施例1に示したビスフェノールA型エポキシ樹脂以外にも芳香族系の各種ノボラック型エポキシ樹脂,グリシジルエステル型エポキシ樹脂,グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が、本発明の中性子遮へい材の樹脂主剤として使用できる。
【0043】
これらは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と同等の水素含有率である。従って、実施例1と同様の配合により、所望の元素組成の遮へい材を得ることができる。
【0044】
上記の各種エポキシ樹脂から選んだ主剤に、硬化剤として脂肪族アミン,脂環式アミンあるいはポリアミドアミンを添加し、難燃材としての水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムを40〜60重量%添加する。さらに炭化ホウ素を1.3重量%になるように添加する。
【0045】
主剤と硬化剤との割合は、主剤のエポキシ当量と硬化剤の活性水素当量とから決まる値にする。一例としては、ノボラック型エポキシ樹脂と脂環式アミン系硬化剤の配合比は重量で100:約30である。また、難燃材として添加する水酸化アルミニウムについては、40〜60重量%の範囲であればよい。
【0046】
また、炭化ホウ素以外の安定なホウ素化合物も適用可能であり、添加割合を決定する考え方は実施例1と同じである。
【0047】
上記混合物をよく混練して、難燃材やホウ素化合物をよく分散させる。これを真空脱泡後注型して硬化することで、所望の水素および10Bの原子数密度を有する中性子遮へい材が得られる。本実施例の遮へい材は、実施例1と同様の設置方法が適用できる。
【0048】
本実施例によれば、耐熱性と遮へい性能が優れ、中性子吸収剤の添加量を最小限にした遮へい材を得ることができる。
【0049】
〔実施例 3〕
本実施例では、脂環式のエポキシ樹脂を使用した例を記載する。主剤の水素含有率が高いので、水素含有率が低い硬化剤、即ち、芳香族アミンや酸無水物を適用する。
【0050】
これに、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムを難燃材成分として40〜50重量%になるように添加し、さらに炭化ホウ素を1.3重量%になるよう添加する。
【0051】
これらを良く混練して均一に分散させ脱泡後、注型して硬化することで所望の元素組成の遮へい材が得られる。
【0052】
なお、硬化剤として酸無水物を使用する際には、硬化促進剤としてイミダゾールを添加してもよい。また、炭化ホウ素以外の安定なホウ素化合物が適用できることは、実施例1,2と同じである。
【0053】
本実施例の遮へい体の設置方法は、実施例1と同じ方法が適用できる。本実施例によれば、耐熱性と遮へい性能が優れ、中性子吸収剤の添加量を最小限にした遮へい材を得ることができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性と遮へい性能に優れ、中性子吸収剤の添加量を最小限にした中性子遮へい材を得ることができる。金属キャスクに本発明の遮へい材を使用することにより、高発熱燃料を効率よく収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属キャスク表面から1mの位置における中性子線量当量率を示すグラフである。
【図2】金属キャスク表面から1mの位置における二次γ線線量当量率を示すグラフである。
Claims (7)
- 高分子材料とホウ素化合物を含む中性子遮へい材において、単位体積当りに含まれる水素の原子数が4.5×1022〜5.6×1022個/cm3、単位体積当りに含まれるホウ素同位体である10Bの原子数が6×1019〜1.7×1020個/cm3であることを特徴とする中性子遮へい材。
- 前項高分子材料が、分子内にエポキシ基を二つ以上含む化合物を少なくとも一つの成分として含む主剤を、前記エポキシ基を開環重合させる硬化剤を添加して硬化して得られるエポキシ系樹脂である請求項1に記載の中性子遮へい材。
- 前記主剤に添加された難燃剤が樹脂硬化物に含まれている請求項2に記載の中性子遮へい材。
- エポキシ系樹脂の主剤がビスフェノールA型エポキシ化合物,ノボラック型エポキシ樹脂,各種のグリシジルエステル型エポキシ化合物,グリシジルアミン型エポキシ化合物およびビフェニル型エポキシ化合物から選ばれ、前記硬化剤が芳香族アミン,環式アミンまたはポリアミドアミンのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤およびイミダゾール系硬化促進剤を単独または混合したもので、ホウ素化合物が炭化ホウ素または窒化ホウ素であり、難燃剤が水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムである請求項2に記載の中性子遮へい材。
- エポキシ系樹脂の主剤が脂環式グリシジルエーテル型エポキシ化合物であり、硬化剤が酸無水物系硬化剤およびイミダゾール系硬化促進剤を単独あるいは混合したもので、ホウ素化合物が炭化ホウ素や窒化ホウ素であり、難燃剤が水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムである請求項2に記載の中性子遮へい材。
- 前記主剤に添加された分子内にエポキシ基を少なくとも一つ含むエポキシ化合物が、樹脂硬化物に含まれている請求項1〜5のいずれかに記載の中性子遮へい材。
- 外側容器と、該外側容器内に設置された内側容器と、前記内側容器内に設置され、使用済燃料集合体を収納するバスケットと、前記外側容器と前記内側容器との間に配置された請求項1〜6のいずれかに記載の中性子遮へい材を備えて成ることを特徴とする使用済燃料収納容器。
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JP2002367870A JP2004198281A (ja) | 2002-12-19 | 2002-12-19 | 中性子遮へい材および使用済燃料収納容器 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012220354A (ja) * | 2011-04-11 | 2012-11-12 | Fuji Electric Co Ltd | 遮蔽材の組成評価方法 |
CN105624475A (zh) * | 2015-12-28 | 2016-06-01 | 哈尔滨工业大学 | 一种Al基硼10复合材料及其制备方法 |
-
2002
- 2002-12-19 JP JP2002367870A patent/JP2004198281A/ja active Pending
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