JP2019178628A - ジェットファン - Google Patents
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Abstract
【課題】ジェットファンの電動機をファンケーシングに内装して固定するときに使用するステンレス製締結部材について、応力腐食割れと全面腐食を抑制することが可能ジェットファンを提供することを目的とする。【解決手段】電動機3をファンケーシング2に内装し、道路トンネル内を換気もしくは排煙する目的で道路トンネル内に設置して使用するジェットファン1において、電動機3を固定するための締結部材4が二相系ステンレス鋼であることを特徴とし、応力腐食割れと全面腐食を抑制することが可能となる。【選択図】図2
Description
本発明は、道路トンネル内を換気もしくは排煙する目的で道路トンネル内に設置して使用するジェットファンに関するものである。
図5に示すようにジェットファン101は自動車道路トンネルの天井に取り付けられている換気機である。ジェットファン101内部には電動機102が内装され、この電動機102の軸に羽根車103が取り付けられている。この電動機102を回転駆動させることにより、羽根車103が回転し、空気流を発生させ、トンネル内を換気する機能を有するものである。
図6に示すように、電動機102は、締結部材111によりファンケーシング104に固定されている。締結部材111は、ボルト112とナット113で構成されていることが多い。また、この締結部材111は、全面腐食を抑制するために、オーステナイト系ステンレス鋼を用いることが多い。
オーステナイト系ステンレス鋼の特徴的な腐食形態として、応力腐食割れが挙げられる。応力腐食割れは、引張応力が加わっている金属において、腐食性成分環境下で発生しやすい腐食である。特に、オーステナイト系ステンレス鋼に関しては、腐食性成分である塩化物イオン環境下で応力腐食割れの発生事例報告が多くなされている。温度に関しては、70度程度以上であると発生しやすいと一般的に言われているが、室温であっても発生することもあるとの報告がある。
道路トンネルには、冬季の路面凍結の対策として融雪剤を散布することがある。その場合、塩化物イオン成分がジェットファン101の内部に流入することがある。また、海岸沿いの道路トンネルにおいても、塩化物イオン成分がジェットファン101内部に流入することがある。また、ジェットファン101の運転に伴い、電動機102の温度が徐々に上昇する。電動機102の温度上昇に伴い、締結部材111近傍の温度も上昇する。実験よると、温度上昇は10K程度である。
これらのことから、ジェットファン101の電動機102を固定する締結部材111にオーステナイト系ステンレス鋼を用いると、応力腐食割れの発生の可能性がある。万が一、応力腐食割れが発生すると、電動機102のジェットファン101への固定が不十分となり、不具合が生じる可能性がある。
前述のように、ジェットファンの電動機を固定する締結部材について、オーステナイト系ステンレス鋼を採用すると、全面腐食を抑制する一方、応力腐食割れが生じる可能性があるという課題がある。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、全面腐食と応力腐食割れを抑制する電動機締結方法を採用したジェットファンを提供することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明のジェットファンは、電動機をファンケーシングに内装し、道路トンネル内を換気もしくは排煙する目的で道路トンネル内に設置し、電動機を固定する締結部材として、二相系ステンレス鋼を用いることにより、所期の目的を達成するものである。
本発明によれば、ジェットファンの電動機を固定する締結部材を二相系ステンレス鋼にすることにより、全面腐食と応力腐食割れを抑制するジェットファンの電動機固定構造を提供することができる。
本発明にかかるジェットファンは、電動機をファンケーシングに内装し、道路トンネル内を換気もしくは排煙する目的で道路トンネル内に設置して使用するジェットファンにおいて、前記電動機を固定するための締結部材を二相系ステンレス鋼にすることにより、全面腐食と応力腐食割れを抑制することができる。
また、前記締結部材は、ボルトとナットの組であって、少なくとも前記ボルトは、二相系ステンレス鋼である。
また、前記締結部材は、二相系ステンレス鋼のボルトとナットの組であってもよい。
また、前記ボルトにおいて、不完全ネジ部を樹脂で覆っても良い。この樹脂により、塩化物イオンがステンレス鋼に直接接触する可能性が低くなり、応力腐食割れの発生を抑制できる。
また、前記締結部材のボルトおよびナットにおいて、締結することにより生じる構造体間の隙間に湿気硬化型樹脂を充填しても良い。この湿気効果方樹脂の充填により、塩化物イオンが構造体の隙間への侵入を防ぐことができるので、応力腐食割れの発生を抑制できる。
また、前記締結部材のボルトおよびナットにおいて、締結後にジェットファンの空気流に晒される表面に対し、塗装しても良い。この塗装により、塩化物イオンがステンレス鋼に直接接触する可能性が低くなり、応力腐食割れの発生を抑制できる。
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
例えば、ジェットファン1は、図1に示すように、自動車道路トンネル(図示せず)の天井に吊り下げられて設置される。そして、ジェットファン1は、円筒形のファンケーシング2とその前後に消音筒11を備えたものである。また、ジェットファン1は、ファンケーシング2に電動機3を内装して、固定している。電動機3の回転軸には、例えば、軸流型の羽根車が取り付けられている。ジェットファン1は、電動機3を回転駆動させることにより羽根車(図示せず)を回転させ、空気流を発生させ、トンネル内を換気もしくは排煙する機能を有するものである。また、電動機を正回転・逆回転させることにより、風向を切り替えることができるのが一般的である。
例えば、ジェットファン1は、図1に示すように、自動車道路トンネル(図示せず)の天井に吊り下げられて設置される。そして、ジェットファン1は、円筒形のファンケーシング2とその前後に消音筒11を備えたものである。また、ジェットファン1は、ファンケーシング2に電動機3を内装して、固定している。電動機3の回転軸には、例えば、軸流型の羽根車が取り付けられている。ジェットファン1は、電動機3を回転駆動させることにより羽根車(図示せず)を回転させ、空気流を発生させ、トンネル内を換気もしくは排煙する機能を有するものである。また、電動機を正回転・逆回転させることにより、風向を切り替えることができるのが一般的である。
図2に示すように、ファンケーシング2内には、電動機3を据え付けるための台座が設けられている。電動機3は、この台座に締結部材4として、ボルト5およびナット6を採用して、固定されている。本実施の形態における特徴的な部分は、このボルト5、ナット6を二相系ステンレス鋼製にしたことである。
二相系ステンレス鋼は、フェライト相にオーステナイト相が混合した組織である。オーステナイトは、面心立方格子構造(fcc構造)であり、フェライトは体心立方格子構造(bcc構造)である。
ステンレスの表面には、数nmオーダーのクロム酸化物(不動体皮膜)が存在する。不動態皮膜は強固な酸化皮膜であり、ステンレスが腐食しにくい特徴を有するのはこの皮膜によるものである。また、不動態皮膜は、空気中の酸素とクロムが結合し、即座に形成される。この不動態皮膜は、12%程度以上のクロムを含有することが基本的に必要である。また、18%クロムが含有する鋼に8%以上のニッケルを含有すると、組織がオーステナイトとなり、耐全面腐食性が向上する。しかし、高濃度の塩化物イオン環境下で、不動態皮膜が破壊されることがまれにある。不動態皮膜が破壊されるとステンレスであっても、腐食が進行する。
オーステナイト系ステンレス鋼が応力腐食割れを起こしやすい要因として、格子構造が面心立方格子であるためと言われている。オーステナイト系ステンレス鋼において、不動態皮膜が高濃度の塩化物イオンで破壊され、わずかな局所的な腐食(孔食など)が発生した場合、引張応力が加わっていれば、面心立方格子(格子の配列が体心立法格子と異なり層状)であるためにその局所的な腐食箇所に応力集中が生じて粗大すべりが発生し、その箇所に高濃度の塩化物イオンが存在すると、さらに割れが進展する。これが応力腐食割れである。一方、体心立法格子であるフェライト系ステンレス鋼の場合、格子の配列が層状ではないので、応力集中による割れが進展しにくく、応力腐食割れは発生しにくいと言われている。一方、オーステナイト系ステンレス鋼よりも腐食の起点は分散する。このことは、まさに「フェライト系ステンレスは、オーステナイト系ステンレス鋼より全面腐食しやすく、応力腐食割れが発生しにくい」理由である。二相系ステンレス鋼はオーステナイトとフェライトの2つを兼ね備えた鋼種であり、応力腐食割れと全面腐食を抑制する特徴を有する。ジェットファンの電動機を固定する締結部材の場合、融雪剤などによる塩化物イオン環境下で、電動機運転による温度上昇に伴い応力腐食割れが生じる可能性があるので、耐全面腐食性と耐応力腐食割れ性を有する二相系ステンレス鋼とすることが効果的である。すなわち、二相系ステンレス鋼の締結部材4(ボルト5およびナット6)を用いることによって、設置環境に対する腐食にも、使用状態(応力)による腐食にも耐性を有し、特にジェットファン1に用いると効果的である。
(実施の形態2)
第2の実施の形態によるジェットファン1は、締結部材4として、第1の実施の形態と同様、二相系ステンレス鋼のボルト5およびナット6を用いている。
第2の実施の形態によるジェットファン1は、締結部材4として、第1の実施の形態と同様、二相系ステンレス鋼のボルト5およびナット6を用いている。
そして、第2の実施の形態の特徴的な部分は、図3に示すように、ボルト5の不完全ネジ部を樹脂で覆ったことである。この樹脂は、円筒状で熱収縮性と可とう性を有するものを使用するとよい。例えば、いわゆる熱収縮チューブ7を用いることができる。以下、熱収縮チューブ7を例にして説明する。熱収縮チューブ7は、ボルト5の不完全ネジ部だけでなく、ネジ部であって締結したときにナット6の締め付け位置よりもボルト頭部側を覆ってもよい。
このボルト5は、製造過程において、まず、不完全ネジ部およびナット締結部に該当しないネジ部に熱収縮チューブ7を被せる。その後、ドライヤーなどで温風を熱収縮チューブ7に当てて、熱収縮チューブ7でボルト5を覆う。このとき、熱収縮チューブ7とボルト5の間に隙間がないようにする。この構成により、塩化物イオンがステンレス鋼に直接接触する可能性が低くなり、さらに応力腐食割れの発生を抑制できるのである。
なお、本実施の形態では熱収縮チューブ7を用いて説明したが、塩化物イオンに耐性を有するものであればよい。
また、チューブ状に限らず、例えば、テープ状の樹脂をボルト5の不完全ネジ部を含んだ円筒部、ネジ部に巻き付ける方法でもよい。この場合には、テープ状の樹脂の端部がはがれないような加工を行うとよい。
(実施の形態3)
第3の実施の形態によるジェットファン1についても、締結部材4として、第1の実施の形態と同様、二相系ステンレス鋼のボルト5およびナット6を用いている。
第3の実施の形態によるジェットファン1についても、締結部材4として、第1の実施の形態と同様、二相系ステンレス鋼のボルト5およびナット6を用いている。
そして、第3の実施の形態の特徴的な部分は、図4に示すように、ボルト5およびナット6において、電動機3をファンケーシング2に締結することにより生じる構造体間の隙間に湿気硬化型樹脂8を充填したものである。すなわち、ボルト5とナット6の間、図4に示すようにダブルナットとしたナット6の間、ボルト5あるいはナット6とファンケーシング2との間に湿気硬化型樹脂8を充填するのである。湿気硬化型樹脂8としては、例えば、変性シリコン系の建築用シーリング材を用いるとよい。
この湿気硬化型樹脂8の充填により、塩化物イオンが構造体の隙間への侵入を防ぐことができるので、応力腐食割れの発生を抑制できる。
また、ボルト5およびナット6において、締結後にそれらの外表面、すなわち、ジェットファン1の気流に晒される箇所に対して塗装しても良い。この塗装により、塩化物イオンがステンレス鋼に直接接触する可能性が低くなり、応力腐食割れの発生を抑制できる。塗料としては、エポキシ樹脂系塗料を用いるとよい。すなわち、塗料により、ボルト5、ナット6の表面を覆い、外界空気との接触を遮断する効果がある。そして、この構成により、塩化物イオンがステンレス鋼に直接接触する可能性が低くなり、応力腐食割れの発生を抑制できるのである。
トンネル用のジェットファン1は、第2の実施の形態と同様、使用される環境では、融雪剤などの塩化物イオンにさらされ、応力腐食割れと全面腐食が懸念される。二相系ステンレス鋼を用いたボルト5、ナット6を使用することにより、応力腐食割れと全面腐食の抑制は図れる。さらに、ボルト5の不完全ネジ部、ネジ部に(塩化物イオンを含んだ)空気が入りにくいようにすると、応力腐食割れおよび全面腐食の抑制に効果がある。あるいは、ボルト5、ナット6を塗料によって覆うことにより、同様の効果を得られる。このようにして、ボルト5、ナット6は、外界空気との接触を断たれ、耐久性の高いジェットファン1を提供することができる。
本発明は、道路トンネル用のジェットファンの電動機固定用の締結部材の応力腐食割れと全面腐食を抑制する方法に用いることが可能である。
1 ジェットファン
2 ファンケーシング
3 電動機
4 締結部材(二相系ステンレス鋼)
5 ボルト(二相系ステンレス鋼)
6 ナット(二相系ステンレス鋼)
7 熱収縮チューブ
8 湿気硬化型樹脂
101 ジェットファン
102 電動機
103 羽根車
104 ファンケーシング
111 締結部材(オーステナイト系ステンレス鋼)
112 ボルト(オーステナイト系ステンレス鋼)
113 ナット(オーステナイト系ステンレス鋼)
2 ファンケーシング
3 電動機
4 締結部材(二相系ステンレス鋼)
5 ボルト(二相系ステンレス鋼)
6 ナット(二相系ステンレス鋼)
7 熱収縮チューブ
8 湿気硬化型樹脂
101 ジェットファン
102 電動機
103 羽根車
104 ファンケーシング
111 締結部材(オーステナイト系ステンレス鋼)
112 ボルト(オーステナイト系ステンレス鋼)
113 ナット(オーステナイト系ステンレス鋼)
Claims (6)
- 電動機をファンケーシングに内装し、道路トンネル内を換気もしくは排煙する目的で道路トンネル内に設置して使用するジェットファンにおいて、
前記電動機を固定するための締結部材が二相系ステンレス鋼であることを特徴とするジェットファン。 - 前記締結部材は、ボルトとナットの組であって、
少なくとも前記ボルトは、二相系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1記載のジェットファン。 - 前記締結部材は、二相系ステンレス鋼のボルトとナットの組であることを特徴とする請求項1記載のジェットファン。
- 前記ボルトにおいて、不完全ネジ部を樹脂で覆ったことを特徴とする請求項2もしくは3記載のジェットファン。
- 前記ボルトおよびナットにおいて、締結することにより生じる構造体間の隙間に湿気硬化型樹脂を充填することを特徴とする請求項2から4記載のジェットファン。
- 前記ボルトおよびナットにおいて、締結後にジェットファンの空気流に晒される表面に対し、塗装を施すことを特徴とする請求項2から5記載のジェットファン。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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2018
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