JPH05272671A - 補強された合成樹脂製フランジ付管 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 プラント分野で用いられる大口径の複合管構
造のフランジ付管であって、使用に際してボルト締め等
により緊締固定した場合に、毀損することのない強度的
に優れたものを提供することを目的とする。 【構成】 図２において、管体１の端部に鍔部２が設け
られた本体部４と、管体１の外周面から鍔部２の裏面に
かけて形成された繊維強化合成樹脂からなる補強層５及
び１０とを有し、この補強層５と１０との間に、金属製
の芯材６が埋入されており、且つこの芯材６の管部外周
面及び内周面に、断面が半円条の凸条９が三本づつ突設
された構造を持っている。かくすることにより、芯材６
の該凸条９が補強層内でアンカーとなり、芯材６の移動
が防止され、ボルト・ナット締めに際して、溶接３、３
に剪断荷重が働かない。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、主として工場施設、機
械設備、船舶、車両、発電所等の分野で用いられる補強
された合成樹脂製フランジ付管に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、工場施設、機械設備、船舶、車
両、発電所等の分野で使用される合成樹脂製管体は、大
口径であって輸送流体も危険物が多い。しかも配管は外
気中に長期にわたって暴露される等比較的過酷な条件下
で使用されるので、耐蝕性にすぐれ、強度の大きい管体
や継手が要求される。そこでかかる用途には繊維強化合
成樹脂で補強した所謂複合管が用いられる。

【０００３】そして、その管体を相互に接続したり、バ
ルブその他の機器類と接続したりする場合には、フラン
ジを用いた接続方法を採ることが多い。この方法は、管
体や機器の接続部に予めフランジを設けたり、フランジ
付管継手を用いて、ボルト・ナットにより接続するので
あるが、このフランジ付管体やフランジ付管継手も、当
然繊維強化合成樹脂で補強されたものが用いられる。

【０００４】例えば、図４に示すものは、フランジ付管
継手の一例であって、左半分を省略した断面図である。
これを作るには、先ず定尺に切断した合成樹脂製短管か
らなる管体ａの一端に、別途射出成形等により製造した
同じく合成樹脂製の鍔部ｂを、合成樹脂の溶接法により
一体的に接合して本体部ｃを成形する。次にこの本体部
ｃの、管体ａの外周面から鍔部の裏面にかけて、ガラス
チョップと硬化性樹脂とを吹きつけるスプレーアップ法
や、ガラス繊維織布又は不織布に硬化性樹脂を含浸させ
て積層するハンドレイアップ法により、繊維強化合成樹
脂からなる補強内層ｄを形成する。次に、この補強内層
ｄがほぼ硬化したならば、予め用意した管体ａよりも太
径の鍔付短管からなる金属製の芯材ｅ（通称「バックア
ップフランジ」）を挿入し、然る後、同じ材料を用い、
同じ要領で補強外層ｆを形成する。尚、ｇ、ｇは溶接部
分である。

【０００５】この金属製芯材ｅは、溶接部分を補強する
ためにインサートするのであって、大口径の管体の場合
は、管継手のようなブロック状のものであっても射出成
形法により一体的に成形することができず、上述のよう
にそれぞれ別体に製作した後、上述のように溶接法によ
って一体にせざるを得ないのである。

【０００６】

【本発明が解決しようとする課題】ところで、この金属
製芯材は主として鋳鉄、鋼或いはこれらの合金等比較的
剛性に富む金属が用いられるが、この金属と繊維強化合
成樹脂層とは、元来接着性に乏しく、しかも繊維強化合
成樹脂層自体、硬化時に収縮が起こるので、芯材ｅと補
強内層ｄ間、あるいは芯材ｅと補強外層ｆとの間には、
隙間ｈが発生しやすい。このような隙間ｈが存在する
と、芯材ｅが遊嵌された状態となる。接続に際して、こ
の状態のままでボルト締めを行うと、溶接部ｇ、ｇに大
きな剪断力が働いてこわれやすいという問題があった。

【０００７】本発明は、上述の如き従来技術の欠点を解
消し、ボルト締め等の外力に充分耐えることができる補
強された合成樹脂製フランジ付管を提供することを目的
としてなされたものである。

【０００８】

【課題を解決する為の手段】本発明は、「管体の端部に
鍔部が設けられた合成樹脂製の本体部と、管体外周面か
ら鍔部の裏面にかけて形成された繊維強化合成樹脂から
なる補強層とを有し、該補強層内に鍔付短管からなる金
属製の芯材が埋入されてなる合成樹脂製フランジ付管に
おいて、芯材の少なくとも管部の表面に、凸条もしくは
多数の突起が設けられていることを特徴とする補強され
た合成樹脂製フランジ付管」をその要旨とするものであ
る。

【０００９】即ち、本発明は金属製芯材の補強層内にお
ける固定の手段として、少なくとも、その管部の表面に
設けた凸条もしくは多数の突起により、補強層内へのア
ンカー効果が得られるようになし、該補強層内での芯材
の移動を阻止させることを狙いとしたものである。

【００１０】本発明の補強された合成樹脂製フランジ付
管の対象となる管体は、通常円管体であるが、卵形管の
ようなほぼ楕円形状の管体、円形に近い多角形の管体等
の各種管体がその対象となる。しかし、本発明の補強さ
れた合成樹脂製フランジ付管は、その他の横断面形状を
有する管体に採用することを妨げるものではない。

【００１１】本発明において、芯材の表面に設けられる
凸条もしくは多数の突起は、少なくとも芯材の管部の表
面に設ける必要があるが、併せて芯材の鍔部に設けても
よい。また芯材の管部の表面とは、その内周面もしくは
外周面、またはその両面をいう。また、凸条や突起の形
状、大きさ、数等については、補強層を形成する合成樹
脂や補強繊維の種類、補強層の表面の粗さ、芯材の製造
方法、或いはフランジ付管の用途、その他の要素により
適宜設定される。

【００１２】例えば、複数本の凸条を設けるときは、各
凸条は、各々独立して管軸方向に適当な間隔で環状に突
設したもの、或いは螺旋状に巻回したもの、格子状に突
設したもの等が挙げられ、これらの凸条は無論連続した
ものでも、或いは、適宜間隔を隔てて不連続とされたも
のであってもよい。また、多数の突起を設けるときは、
小突起をランダムに、いぼいぼ状に設けてもよく、規則
正しい模様状に設けてもよい。 また、凸条や突起の先
端形状が錨状や針状になされたものは、アンカー効果に
勝るものの、補強層を傷つけ易く、逆に先端形状が丸み
を帯びたものは、アンカー効果は、前者に比べてやや劣
るが、補強層を傷めることが少ない傾向にあり、上述の
各要素を勘案して、最も適切なものを選択すればよい。
また更に、芯材の管部表面からの高さは、均一であって
も不均一であってもよいが、補強層の中に埋没する程度
の高さでなければならない。

【００１３】尚、金属製芯材の補強層に対する接着性を
高める為に、両者の界面に、金属と繊維強化合成樹脂層
との両方に対して、良好な接着性を示すとともに、耐熱
性、耐低温性等にも優れた性質を有する硬化性結合剤を
用いるのは任意である。該硬化性結合剤としては、例え
ば、ビスフェノール型エポキシ樹脂に、メタクリル酸等
を反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂が好適
なものとして推奨される。通常、これに硬化剤、硬化促
進剤、防錆剤等が配合したものである。

【００１４】

【作用】本発明の補強された合成樹脂製フランジ付管
は、芯材の少なくとも管部の表面に設けられた凸条や突
起が補強層内に食い込み、これがアンカーとなって補強
層内での芯材の移動を防ぐので、芯材としての本来の機
能を発揮する。

【００１５】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に
説明する。図１は、本発明の一実施例を示す斜視図であ
って、フランジ付管継手の例を示す図である。図２は、
図１におけるＩＩ−ＩＩ線にて縦断し矢印方向にみた、
同上の要部拡大断面図である。

【００１６】これらの図において、１は、硬質塩化ビニ
ル樹脂製であって、口径４４４ｍｍの管体であり、その
一端に同じ材質からなる鍔部２が、溶接３、３により一
体的に設けられ、長さが４７０ｍｍの本体部４を形成し
ている。５は、本体部４の管体１の外周面から鍔部２の
裏面にかけて形成されたガラス繊維強化不飽和ポリエス
テル樹脂からなる補強内層であり、厚みは３ｍｍであ
る。

【００１７】６は、この補強内層５が未硬化の段階で積
層された鋼製の鍔付短管からなる芯材であり、図３にも
示すように、管部７と鍔部８とからなっている。９、
９′は、この芯材６の管部内周面及び外周面の周方向に
設けられ、断面が半円状であって、ｒ＝１．５ｍｍの凸
条であり、且つ内外の凸条９、９′は、管部７の肉厚方
向に背向するように、各三本づつ、管軸方向に一定間隔
を隔てて一体的に設けられている。

【００１８】１０は補強内層５と同じ材料、同じ方法で
形成された補強外層であり、厚みは８ｍｍである。尚、
１１はパテであって、補強内層５と補強外層１０との間
に埋入された芯材６を設けた後に、なお残されると予測
できる箇所に、補強外層１０を形成する前段階で充填し
ておくものである。パテの代わりに樹脂を含浸したガラ
スチョップを用いてもよい。１２はボルト孔である。

【００１９】次に、上述の本発明フランジ付管について
行った物性試験について述べる。尚、せん断接着強度
は、１００℃の温度条件下で、２００時間オーブン中に
連続静置し、せん断引っ張り試験法により行った。

【００２０】また、耐熱衝撃強度は、冷熱サイクル試験
機を使用し、１サイクルが１００℃が１時間、−１０℃
で１時間の、冷熱条件下に静置し、これを４０サイクル
繰り返した後の接着強度を測定した。

【００２１】その結果、芯材と補強層界面のせん断接着
強度は１３４kg・f/cm² であり、同じく、芯材と補強層
界面の耐熱衝撃強度は、１２８kg・f/cm² であって、充
分使用に耐え得るものであった。

【００２２】本発明の上記実施例では、フランジ付管継
手の例を示したが、直管の長いフランジ付管体の場合で
も、全く同様の作用効果を奏するものである。

【００２３】

【発明の効果】本発明の補強された合成樹脂製フランジ
付管は、芯材の少なくとも管部の表面に設けられた凸条
や突起が補強層内に食い込み、これがアンカーとなって
補強層内での芯材の移動を防ぐので、芯材としての本来
の機能を発揮する。

【００２４】従って、接続に際してボルト締めを行って
も、溶接部に大きな剪断荷重がかからず、破損すること
がない。また、芯材と補強層の界面に硬化性結合剤を用
いた場合は、両者の接着力のより優れたものが得られ
る。また、硬化性結合剤の中に防錆剤を配合したもの
は、併せて、芯材の耐食性が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す斜視図であって、フラ
ンジ付管継手の例を示す図である。

【図２】同上のＩＩ−ＩＩ線にて縦断し矢印方向にみた
要部拡大断面図である。

【図３】同上において、芯材のみを取り出して示す斜視
図である。

【図４】従来のフランジ付管継手の一例を示す要部拡大
断面図である。

【符号の説明】

１ 管体 ２ 鍔部 ３ 溶接 ４ 本体部 ５ 補強内層 ６ 芯材 ７ 管部 ８ 鍔部 ９、９′凸条 10 補強外層

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 管体の端部に鍔部が設けられた合成樹脂
   製の本体部と、管体外周面から鍔部の裏面にかけて形成
   された繊維強化合成樹脂からなる補強層とを有し、該補
   強層内に鍔付短管からなる金属製の芯材が埋入されてな
   る合成樹脂製フランジ付管において、芯材の少なくとも
   管部の表面に、凸条もしくは多数の突起が設けられてい
   ることを特徴とする補強された合成樹脂製フランジ付
   管。